(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494962
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】柑橘由来の苦味及び渋みを抑制した柑橘系非アルコール或いはアルコール飲料
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20190325BHJP
【FI】
C12G3/04
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-183212(P2014-183212)
(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公開番号】特開2016-54678(P2016-54678A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】307027577
【氏名又は名称】麒麟麦酒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】竹重 元気
(72)【発明者】
【氏名】荒木 祥恵
(72)【発明者】
【氏名】網谷 安夫
(72)【発明者】
【氏名】田口 文子
【審査官】
山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−098968(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/067702(WO,A1)
【文献】
特許第5128710(JP,B2)
【文献】
特開平09−094080(JP,A)
【文献】
特開2005−143461(JP,A)
【文献】
特開2010−136658(JP,A)
【文献】
特開2012−095616(JP,A)
【文献】
特開2012−095615(JP,A)
【文献】
特開2012−090598(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/103596(WO,A1)
【文献】
特開2000−083654(JP,A)
【文献】
アキラ,“【スプモーニ】(カンパリベースのカクテル)簡単で美味しい!おうちカクテル隊♪”,[online],2010 年3 月10 日,[平成30 年11 月2 日検索],インターネット,URL,https://ameblo.jp/yamasita-94nsr/entry-10478176138.html
【文献】
アキラ,“おうちカクテル隊♪【スプモーニ】(カンパリベースのカクテル)の作り方”,[online],2011 年9 月14 日,[平成30 年11 月2 日検索],インターネット,URL,https://ameblo.jp/yamasita-94nsr/entry-11017674329.html
【文献】
“カンパリ”,[online],2014年8月20日,[平成30 年11 月2 日検索],インターネット<,URL,URL:https://web.archive.org/web/20140820042811/https://ja.wikipedia.org/wiki/カンパリ
【文献】
株式会社主婦の友社「料理食材大事典」,1996年,第193頁「カンパリ」の項
【文献】
Natural Lemon & Lime Drink, Firefly Tonics, UK,2014年 5月,http://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2462823/from_search/a2sgxNL4iZ/?page=1
【文献】
Lemon Tonic, Casalbor, Spain,2012年10月,http://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1898745/from_search/LO7tmv6dwg/?page=1
【文献】
Bitter Orange Carbonated Drink, Sanpellegrino, Italy,2013年 2月,http://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2010484/from_search/LO7tmv6dwg/?page=1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C12G1/00−3/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有するアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、飲料中に、飲料に対し、0.015〜1w/v%の範囲で、キナ抽出物を含有させることを特徴とする柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制したアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料。
【請求項2】
柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを、飲料に対し、0.01〜50.0w/w%の範囲で含有させることを特徴とする請求項1に記載の柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制したアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料。
【請求項3】
アルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料が、炭酸ガス圧0.1〜0.4MPa(20℃におけるガス圧)の炭酸ガスを含み、pHが2.3〜4.0に調整されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制したアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料。
【請求項4】
柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有するアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料の製造方法において、飲料中に、飲料に対し、0.015〜1w/v%の範囲で、キナ抽出物を含有させ、該飲料のpHを2.3〜4.0に調整し、かつ、飲料の炭酸ガス圧を0.1〜0.4MPa(20℃におけるガス圧)に調整することを特徴とする柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制したアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料の製造方法。
【請求項5】
柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有するアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、飲料中に、飲料に対し、0.015〜1w/v%の範囲で、キナ抽出物を含有させ、該飲料のpHを2.3〜4.0に調整し、かつ、飲料の炭酸ガス圧を0.1〜0.4MPa(20℃におけるガス圧)に調整することを特徴とする、アルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料における柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール飲料、特にアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、該飲料における柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制した非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
旧来より、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーは、飲食品の嗜好性を増大するための香味付材料として用いられてきた。特に、近年は飲料の分野においても、各種香味及び味覚の飲料が提供される中で、柑橘類の特有の爽やかな香味、味覚を採りいれて、飲料の嗜好性を増大する試みがなされている。柑橘類は、柑橘類特有の爽やかな香味、味覚を有するものであるが、その反面、該柑橘類に由来する独特の苦味及び渋みを有している。したがって、柑橘類を飲料等の香味付材料として用いる場合に、この柑橘類に由来する苦味及び渋みが、飲料等の香味、味覚に悪影響を及ぼすことがある。
【0003】
そこで、従来より、柑橘類を飲食品の香味付材料として用いるに際し、柑橘類に由来する苦味及び渋みを除去或いは抑制する方法が開示されている。例えば、特開平11−318379号公報には、柑橘類を含有する飲食品における苦味又は酸味を低減するために、ヘスペルジン配糖体を添加する方法が開示されている。特開2010−57428号公報には、グレープフルーツのような柑橘類成分を含有する飲食品に、マメ科シカクマメ属の植物の抽出物を含有させることにより、該柑橘類成分の苦味等を抑制する方法が、特開2010−119344号公報には、柑橘を冷凍処理することにより、果皮中の不溶性ペクチンと結合している苦味質のナリンギンを可溶化分離する方法が開示されている。
【0004】
また、特開2010−136658号公報には、柑橘類由来の果汁或いは柑橘類果実成分を含有する、炭酸ガス圧が0.8〜3.1kg/cm
2のようなアルコール飲料において、グリセリンを含有させることにより、柑橘類由来の苦味を軽減する方法について、特開2011−160790号公報には、柑橘類の果皮乾燥ペーストの製造において、ポリフェノール分解酵素を用いて、柑橘類の果皮に含まれる苦味成分のヘスペルジンを分解除去する方法について、特開2013−223482号公報及び特開2014−110765号公報には、柑橘系果実汁等を含有する容器詰炭酸飲料において、ナリルチンを含有させることにより、フラボノイド化合物に由来する苦味を抑制することについて、開示されている。
【0005】
これらの柑橘類由来の果汁や柑橘類果実成分を、飲料や食品に含有させた場合に感ずる柑橘類に由来する苦味や渋みの抑制或いは除去の方法は、柑橘類由来の果汁や柑橘類果実成分を飲料や食品に含有させるに際して、特定成分を添加し、苦味や渋みの抑制を行ったり、或いは、特定の処理を行って苦味や渋みの成分を除去たりするものであるが、これらの方法は、例えば、柑橘類由来の果汁や柑橘類果実成分を含有する飲料の製造に適用しても、添加成分や、柑橘類の処理による、飲料自体の香味及び味覚への影響が避けられず、飲料に柑橘類由来の果汁や柑橘類果実成分由来の香味、味覚を採りいれ、しかも、柑橘類に由来する苦味や渋みの抑制された、爽やかな香味、味覚の柑橘系飲料を提供することは難しい。特に、非アルコールの清涼飲料、或いは、低アルコール飲料においては、これまでに、柑橘系の果汁感を強調する商品が多く提供されているが、従来の該柑橘系飲料においては、果汁感が増すほど後口に柑橘特有の苦さや、渋さが残る問題があった。これらへの対応として、該飲料の調製において、甘味料や酸味料の添加により、甘味料の甘さや、酸味料の酸味で、苦さ、渋さを抑制し、飲みやすさの改善を図ることが行われるが、該方法によっても、後口の雑味は残り、味のキレが改善できないという問題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−318379号公報。
【特許文献2】特開2010−57428号公報。
【特許文献3】特開2010−119344号公報。
【特許文献4】特開2010−136658号公報。
【特許文献5】特開2011−160790号公報。
【特許文献6】特開2013−223482号公報。
【特許文献7】特開2014−110765号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール飲料、特にアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、該飲料における柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制し、後口の雑味、及び、味のキレを改善した非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール飲料の製造において、該柑橘類由来の爽やかな香味、味覚を保持し、柑橘類由来の苦味や渋みを抑制し、後口の雑味、及び、味のキレを改善した柑橘系非アルコール或いはアルコール飲料の製造について、鋭意検討する中で、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いは柑橘系アルコール飲料において、該飲料に対し、特定の範囲で、花又はハーブの抽出物を含有させることにより、柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制した非アルコール柑橘系飲料或いは柑橘系アルコール飲料を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、飲料中に、飲料に対し、0.0001〜1w/v%の範囲で、花又はハーブの抽出物を含有させることを特徴とする柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制した非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料を製造することからなる。本発明の方法により、柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制することにより、柑橘類由来の果汁や柑橘類果実成分由来の爽やかな香味、味覚はそのまま保持し、柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制することができ、後口の雑味、及び、味のキレを改善した柑橘系非アルコール或いはアルコール飲料を提供することができる。
【0010】
本発明の非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーは、飲料に対し、0.1〜50.0w/w%の範囲で含有させることができる。また、本発明の非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料は、炭酸ガス圧0.1〜0.4MPa(20℃におけるガス圧)の炭酸ガスを含み、pHが2.3〜4.0に調整された非アルコール柑橘系飲料或いは柑橘系アルコール飲料として調製される。
【0011】
本発明は、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料の製造方法において、飲料中に、飲料に対し、0.0001〜1w/v%の範囲で、花又はハーブの抽出物を含有させ、該飲料のpHを2.3〜4.0に調整し、かつ、飲料の炭酸ガス圧を0.1〜0.4MPa(20℃におけるガス圧)に調整することを特徴とする柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制した非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料の製造方法の発明を包含する。
【0012】
また、本発明は、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、飲料中に、飲料に対し、0.0001〜1w/v%の範囲で、花又はハーブの抽出物を含有させ、該飲料のpHを2.3〜4.0に調整し、かつ、飲料の炭酸ガス圧を0.1〜0.4MPa(20℃におけるガス圧)に調整することを特徴とする、非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料における柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制する方法の発明を包含する。
【0013】
すなわち、具体的には本発明は、[1]柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、飲料中に、飲料に対し、0.0001〜1w/v%の範囲で、花又はハーブの抽出物を含有させることを特徴とする柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制した非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料や、[2]柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを、飲料に対し、0.01〜50.0w/w%の範囲で含有させることを特徴とする上記[1]に記載の柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制した非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料や、[3]非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料が、炭酸ガス圧0.1〜0.4MPa(20℃におけるガス圧)の炭酸ガスを含み、pHが2.3〜4.0に調整されていることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制した非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料からなる。
【0014】
また、本発明は、[4]柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料の製造方法において、飲料中に、飲料に対し、0.0001〜1w/v%の範囲で、花又はハーブの抽出物を含有させ、該飲料のpHを2.3〜4.0に調整し、かつ、飲料の炭酸ガス圧を0.1〜0.4MPa(20℃におけるガス圧)に調整することを特徴とする柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制した非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料の製造方法や、[5]柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、飲料中に、飲料に対し、0.0001〜1w/v%の範囲で、花又はハーブの抽出物を含有させ、該飲料のpHを2.3〜4.0に調整し、かつ、飲料の炭酸ガス圧を0.1〜0.4MPa(20℃におけるガス圧)に調整することを特徴とする、非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料における柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制する方法からなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール飲料、特にアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、飲料中に、飲料に対し、0.0001〜1w/v%の範囲で、花又はハーブの抽出物を含有させ、更には、飲料のpHの調整、及び、飲料の炭酸ガス圧の調整という方法により、飲料自体の香味及び味覚への影響を回避して、柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制することにより、柑橘類由来の果汁や柑橘類果実成分由来の爽やかな香味、味覚はそのまま保持し、柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制し、後口の雑味、及び、味のキレを改善した柑橘系非アルコール或いはアルコール飲料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施例において、柑橘果汁として柚子果汁を用い、ハーブとしてキナを用いた場合の後味(渋み・苦味)及び味のキレについての評価結果を示すグラフである。
【
図2】
図2は、本発明の実施例において、柑橘果汁としてグレープフルーツ果汁を用い、ハーブとしてキナを用いた場合の後味(渋み・苦味)及び味のキレについての評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、飲料中に、飲料に対し、0.0001〜1w/v%の範囲で、花又はハーブの抽出物を含有させることにより、柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制した非アルコール柑橘系飲料或いは柑橘系アルコール飲料を提供することからなる。また、本発明は、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、該飲料のpHを2.3〜4.0に調整し、飲料の炭酸ガス圧を0.1〜0.4MPa(20℃におけるガス圧)に調整し、柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制した非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料を製造することからなる。
【0018】
本発明の非アルコール柑橘系飲料及び柑橘系アルコール飲料において、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーの調製に用いられる柑橘類としては、特に限定はされないが、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、マンダリン、シークヮーサー、イヨカン、ブンダン、キンカン、ベルガモット、ライム、ユズ(柚子)、スダチ、カボス等を挙げることができる。
【0019】
本発明の非アルコール柑橘系飲料及び柑橘系アルコール飲料においては、該飲料中に花又はハーブの抽出物を、飲料に対し、0.0001〜1w/v%の範囲で含有させることにより、柑橘特有の後口の苦味や渋みの抑制効果を更に改善し、キレの良い非アルコール柑橘系飲料或いは柑橘系アルコール飲料を提供することができる。かかる花又はハーブとしては、カルダモン、コリアンダー、クローブ、シナモン、オリス、キナ、ナツメグ、カモミール、ペパーミント、スペアミント、タイム、タラゴン、オレガノ、エストラゴン、セルフィーユ、ディル、バジル、フェンネル、マジョラム、レモングラス、レモンバーム、ラベンダー、ローズ、ローズマリー、ローズヒップ、ジンジャー、サフラン、セージ、マテ、ユーカリ、ジャスミン、エルダーフラワー、ハイビスカス、オレンジフラワー、リンデン、ダンテリオン、マローブルー、キャットニップ、ディル、ヤロー、キャラウェイ、エキナセア、マリーゴールド、サンフラワー、カカオ等を挙げることができる。
【0020】
また、本発明の非アルコール柑橘系飲料及び柑橘系アルコール飲料においては、飲料の炭酸ガス圧、及び、pHを調整して、柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制することができる。例えば、炭酸ガス圧0.1〜0.4MPA、好ましくは0.13〜0.35MPA(20℃におけるガス圧)の炭酸ガスを含み、pHが2.3〜4.0に調整することにより、柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制し、後口の雑味、及び、味のキレを改善した柑橘系非アルコール或いはアルコール飲料を提供することができる。該pHの調整は、乳酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、及びそれらの塩から選択される1又は2以上のpH調製剤によって行なうことができる。
【0021】
本発明において、アルコール濃度は1〜10v/v%であり、好ましくは3〜9v/v%、更に、好ましくは5〜8v/v%である。アルコール飲料としては例えばチューハイ、カクテル、又は、ハイボールを挙げることができる。また、アルコール飲料は、糖類ゼロ飲料(飲料100mlあたり糖類0.5g未満)として提供することができる。
【0022】
本発明の非アルコール柑橘系飲料及び柑橘系アルコール飲料には、本発明の構成を変更しない範囲において、通常、非アルコール柑橘系飲料及び柑橘系アルコール飲料の製造に用いられる甘味料、酸味料、香料、安定化剤、及びその他の添加剤を用いることができる。
【0023】
本発明の柑橘特有の後口の苦みや渋みが抑制され、かつキレのよい後口のある柑橘系非アルコール又はアルコール飲料の製造は、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを、飲料に対し、0.01〜50.0w/w%の範囲で含有させた、非アルコール柑橘系飲料溶液或いはアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料溶液に、花又はハーブの抽出物を飲料に対し0.0001〜1w/v%の範囲で添加含有させ、該飲料溶液のpHを2.3〜4.0に調整し、該飲料溶液に炭酸ガスを圧入して、炭酸ガス圧0.1〜0.4MPa(20℃におけるガス圧)に調整することにより実施することができる。
【0024】
本発明において、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーは、飲料に対し、0.01〜50.0w/w%、好ましくは0.1〜30.0w/w%、更に好ましくは1〜20.0w/w%含有させることができる。
【0025】
本発明の非アルコール柑橘系飲料及び柑橘系アルコール飲料の製造方法は、上記のような処理を、通常の非アルコール柑橘系飲料又は柑橘系アルコール飲料の製造工程において、適宜実施することができる。該非アルコール柑橘系飲料又は柑橘系アルコール飲料の通常の工程における実施の具体例としては、次のとおりのものが挙げられる:まず、タンク中において、非アルコール或いはアルコールを含有した水溶液に、柑橘系果汁、糖又は甘味料、酸味料、香料と共に花又はハーブ抽出物を加え、香味を調整して、非アルコール柑橘系飲料溶液又は柑橘系アルコール飲料溶液を調製する。次いで、香味を整えた飲料溶液に炭酸ガスを加えて、炭酸ガス含有飲料を製造することができる。ただし、該具体例は、その飲料成分や、飲料成分の加える順序、或いは配合量等は、本発明の構成の範囲内で適宜変更し得るものであり、また、花や、ハーブ抽出物の添加も、適宜選択することも可能であり、抽出物の調製には、水或いはアルコールのような溶媒を用いることができ市販の調製品を使用することができる。調製された抽出物は、高アルコール飲料の原材料として例えば香料として使用できるものも含むことができる。
【0026】
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、該実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
<試験方法>
官能評価に用いる高アルコールチューハイ試作サンプルを下記のようにして調製した:まず、アルコール、甘味料、酸味料、香料を含有した水溶液に、ユズ果汁を0.1w/v%、キナ抽出物を0〜0.06w/v%に調整して加え、その水溶液に炭酸ガス0.20MPa(at20℃)を付加した。アルコール濃度は8v/v%となるようにした(柚子チューハイ1〜4)。アルコールにグレープフルーツ果汁を28w/v%、キナ抽出物を0〜0.06w/v%に調整して加え、その水溶液に炭酸ガス0.18MPa(at20℃)を付加した。アルコール濃度は6v/v%となるようにした(グレープフルーツチューハイ1〜4)。
【0028】
各サンプルを官能評価試験に供した。官能評価は、良く訓練され、ビール、チューハイおよびカクテル系飲料の評価に熟練したパネル5名により、後口の雑味(苦み・渋み)、味のキレの各項目について、9段階の強度[強度1(弱い)〜強度9(強い)の9段階の強度]で官能評価を行なった。
【0029】
<結果>
官能評価試験の結果を、表1、及び、
図1(柚子チューハイの香味変化:後口の雑味(渋み、苦味);味のキレ)及び
図2(グレープフルーツチューハイの香味変化:後口の雑味(渋み、苦味);味のキレ)に示す。結果から、0.1w/v%果汁の柚子チューハイ、及び、28w/v%果汁のグレープフルーツチューハイ何れにおいても、キナ抽出物を使用することにより、後口の雑味(苦み・渋み)が減り、味のキレが増す傾向がみられた。
【0030】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、柑橘系果汁或いは柑橘類由来の抽出フレーバーを含有する非アルコール柑橘系飲料或いはアルコール飲料、特にアルコール濃度1〜10v/v%の柑橘系アルコール飲料において、飲料中に、飲料に対し、0.0001〜1w/v%の範囲で、花又はハーブの抽出物を含有させ、更には、飲料のpHの調整、及び、飲料の炭酸ガス圧の調整という方法により、飲料自体の香味及び味覚への影響を回避して、柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制することにより、柑橘類由来の果汁や柑橘類果実成分由来の爽やかな香味、味覚はそのまま保持し、柑橘類由来の苦味及び渋みを抑制し、後口の雑味、及び、味のキレを改善した柑橘系非アルコール或いはアルコール飲料を提供する。