(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転体が前記キャスター軸線を中心として前記固定体に対して前記第1角度だけ回転したときの、前記筒部の内面が前記キャスター軸の外周面に接触し得る位置は、前記回転体が前記キャスター軸線を中心として前記固定体に対して前記第2角度だけ回転したときの、前記筒部の内面が前記キャスター軸の外周面に接触し得る位置と、異なっている、請求項1に記載の手押し車用のキャスター。
前記キャスター軸線に直交する断面における前記筒部の前記キャスター軸を挿入される部分の内面の形状は、前記キャスター軸線に直交する断面における前記キャスター軸の外周面の形状と、異なり且つ非相似である、請求項1または2に記載の手押し車用のキャスター。
前記キャスター軸線に直交する断面における前記キャスター軸の外周面の形状は、同一形状の円弧を奇数個接続してなる形状を有し、且つ、各円弧の曲率半径は、2つの円弧が接続された頂部のうち、当該円弧に対面する頂部までの距離と等しい、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の手押し車用のキャスター。
前記キャスター軸線に直交する断面において、前記キャスター軸の外周面の形状は、同一の円弧を3個接続してなる形状を有し、且つ、前記筒部の前記キャスター軸と接するようになる部分は、1つの仮想の正方形の各辺上にそれぞれ位置する4つの直線部を含む、
請求項6に記載の手押し車用のキャスター。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手押し車の走行中に、車輪が接地面にある凹凸や段差を乗り越えると、車輪を保持する回転体にも接地面にある凹凸や段差の影響が及ぶ。回転体に接地面にある凹凸や段差の影響が及ぶと、回転体が固定体およびキャスター軸に対して微振動するウォブル現象を生じるおそれがある。回転体にウォブル現象が発生すると、回転体の固定体に対する回転状態が不安定となり、直進走行性が低下してしまう。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、直進走行性が改善された手押し車用のキャスターを提供することを目的とする。また、本発明は、この直進走行性が改善された手押し車用のキャスターを取り付けられた乳母車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による手押し車用のキャスターは、手押し車の脚に固定される固定体と、
キャスター軸線を中心として前記固定体に回転可能に保持された回転体と、
回転軸線を中心として前記回転体に回転可能に保持された車輪と、を備え、
前記固定体及び前記回転体の一方が、前記キャスター軸線を画定するキャスター軸を有し、
前記固定体及び前記回転体の他方が、前記キャスター軸を挿入された筒部を有し、
前記回転体が前記キャスター軸線を中心として前記固定体に対して或る第1角度だけ回転したときの前記キャスター軸線と前記回転軸線との間の距離は、前記回転体が前記キャスター軸線を中心として前記固定体に対して前記第1角度とは異なる第2角度だけ回転したときの前記キャスター軸線と前記回転軸線との間の距離と、異なっている。
【0008】
本発明による手押し車用のキャスターにおいて、前記回転体が前記キャスター軸線を中心として前記固定体に対して前記第1角度だけ回転したときの、前記筒部の内面が前記キャスター軸の外周面に接触し得る位置は、前記回転体が前記キャスター軸線を中心として前記固定体に対して前記第2角度だけ回転したときの、前記筒部の内面が前記キャスター軸の外周面に接触し得る位置と、異なっていてもよい。
【0009】
本発明による手押し車用のキャスターにおいて、前記キャスター軸線に直交する断面における前記筒部の前記キャスター軸を挿入される部分の内面の形状は、前記キャスター軸線に直交する断面における前記キャスター軸の外周面の形状と、異なり且つ非相似であってもよい。
【0010】
本発明による手押し車用のキャスターにおいて、前記キャスター軸線に直交する断面における前記キャスター軸の外周面の形状は、非円形であり、前記キャスター軸線に直交する断面における前記筒部の前記キャスター軸を挿入される部分の内面の形状は、非円形であってもよい。
【0011】
本発明による手押し車用のキャスターにおいて、前記キャスター軸線に直交する断面における前記キャスター軸の外周面の形状は、同一形状の円弧を奇数個接続してなる形状を有し、且つ、各円弧の曲率半径は、2つの円弧が接続された頂部のうち、当該円弧に対面する頂部までの距離と等しくてもよい。
【0012】
本発明による手押し車用のキャスターにおいて、前記円弧の数をn個とすると、前記筒部の前記キャスター軸と接するようになる部分は、前記キャスター軸線に直交する断面において、1つの仮想の正(n+1)角形の各辺上にそれぞれ位置する(n+1)個の直線部を含んでもよい。
【0013】
本発明による手押し車用のキャスターにおいて、前記キャスター軸線に直交する断面において、前記キャスター軸の外周面の形状は、同一の円弧を3個接続してなる形状を有し、且つ、前記筒部の前記キャスター軸と接するようになる部分は、1つの仮想の正方形の各辺上にそれぞれ位置する4つの直線部を含んでもよい。
【0014】
本発明による乳母車は、前記いずれかの特徴を有する手押し車用のキャスターと、前記手押し車用のキャスターを取り付けられた乳母車本体と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、手押し車の直進走行性を改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1〜
図6Dは本発明による乳母車およびキャスターの一実施の形態を説明するための図である。なお、以下の説明では、本発明による手押し車用のキャスターを乳母車に適用した例を用いて説明するが、手押し車用のキャスターを適用する対象は乳母車に限定されない。本発明によるキャスターは、操作者の手によって押されて操作される車両であれば広く適用可能である。例えば手押し車の他の例として、ショッピングカートのような運搬台車や、ペットを収容して運ぶためのペット用キャリーが挙げられる。
【0018】
図1および
図2には、乳母車1の全体構成が示されている。
図1および
図2に示された乳母車1は、乳母車本体2と、乳母車本体2に取り付けられたキャスター3と、を有している。このうち、乳母車本体2は、一対の前脚11および一対の後脚12を有するフレーム部10と、フレーム部10に揺動可能に連結されたハンドル20と、を有している。
【0019】
一対の前脚11の下端には、後に詳述するキャスター3が取り付けられている。このキャスター3は、回転軸線Lbを中心として車輪80を回転可能に保持すると共に、回転軸線Lbに交差する方向に延びるキャスター軸線Laを中心として、車輪80を回転させることができる。一方、一対の後脚12の下端には、車輪保持体4が取り付けられている。この車輪保持体4は、車輪80の向きを一定に保ちながら当該車輪80を回転可能に保持する。
【0020】
乳母車1において、ハンドル3は、
図2に二点鎖線で示す背面押し位置と、
図2に実線で示す対面押し位置と、に固定され得るように構成されている。背面押し位置では、側面視において、ハンドル3の上方部分が後方に位置するようハンドル3が鉛直軸に対して傾斜する。この場合、操作者(保護者)が乳幼児の背面となる後脚12側からハンドル3を把持することになる。そして、操作者は、乳幼児が進行方向の前方を向くようにして乳母車1を走行させる(
図1の状態、および、
図2の二点鎖線で示す状態)。他方、対面押し位置では、側面視において、ハンドル3の上方部分が前方に位置するようハンドル3が鉛直軸に対して傾斜する。この場合、操作者が乳幼児に対面する前脚11側からハンドル3を把持することになる。そして、操作者は、乳母車1の後脚12側が進行方向の前方となるようにして乳母車1を走行させる(
図2の実線で示す状態)。
【0021】
なお、
図1に示す乳母車1においては、後脚12に取り付けられた車輪保持体4も、所謂キャスターとして構成され、車輪80の向きが変更可能となるようにしてもよい。そして、このような乳母車1において、前脚11および後脚12のうちの移動方向の前方に位置する脚に取り付けられたキャスターについては、キャスター軸線を中心とした車輪および車輪保持体の回転が可能となり、移動方向の後方に位置する脚に取り付けられたキャスターについては、キャスター軸線を中心とした車輪および車輪保持体の回転が規制されるようにすることが、乳母車1の操縦性の観点から好ましい。
【0022】
なお、ハンドル20をフレーム部材20に対して揺動可能とする構成や、キャスター軸線を中心とした車輪および車輪保持体の回転をハンドル20の位置に応じて自動的に規制する構成は、既知の構成、例えば、JP2008−254688Aに開示された構成を、採用することができる。したがって、本明細書においては、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0023】
また、本実施の形態において、乳母車1は、広く普及しているように、折り畳み可能に構成されている。乳母車1を折り畳み可能にする構成も、既知の構成、例えば、上述したJP2008−254688Aに開示された構成を、採用することができる。したがって、本明細書においては、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0024】
次に、主として
図3〜
図6Dを参照しながら、乳母車本体2の前脚11に取り付けられたキャスター3について説明する。
図3〜
図5は、それぞれ、一実施の形態におけるキャスター3を示す斜視図、側面図及び分解図である。なお、一対の前脚11の下端には、前脚用のキャスター3がそれぞれ設けられている。二つの前脚用のキャスター3は互いに同一または対称に構成されている。
【0025】
図3〜
図5に示すように、キャスター3は、乳母車1の脚に固定される固定体40と、固定体40に対して回転可能な回転体60と、を備えている。固定体40は、下方に突出したキャスター軸51を有している。回転体60は、キャスター軸51の軸方向に延びるキャスター軸線Laを中心としてキャスター軸51に対して回転可能に支持されている。また、回転体60は、車軸85を介して車輪80を回転可能に保持している。車輪80は、車軸85の軸方向に一致する回転軸線Lbを中心として、回転体60に対して回転する。
【0026】
図4に示すように、回転軸線Lbは、概ね水平方向に沿っており、キャスター軸線Laは、乳母車1の接地面(路面)に略直交している。また、回転軸線Lbは、キャスター軸線Laから水平方向に離間している。このため、操作者から乳母車1に加えられる推進力の方向を調節することにより、回転体60が固定体40に対して回転し、乳母車1の旋回が可能となる。
【0027】
以下、キャスター3の各構成要素について詳述していく。
【0028】
上述したように、固定体40は、乳母車本体2の脚に固定され、回転体60を回転可能に支持する。本実施の形態において、固定体40は、乳母車1の脚に固定される固定体本体41と、固定体本体41から下方に延び出す前述のキャスター軸51と、を有している。また、回転体60は、固定体本体41に下方から挿入される頭部61aを有する回転ホルダ61と、回転ホルダ61内に収容され、キャスター軸51に対して摺動可能な筒部材71と、回転ホルダ61及び筒部材71の下方に配置された車輪ホルダ62と、を有している。
【0029】
図5に示すように、固定体本体41は、部分的に曲がった経路に沿って延びる軸状の部材にて構成されており、上方に開口した脚収容凹部42に脚11が挿入されることにより、固定体本体41が脚11に保持される。
【0030】
また、固定体本体41の下方には、回転体収容凹部43が形成され、この回転体収容凹部43内に、回転ホルダ61に形成された円筒状の頭部61aが挿入されている。この頭部61aには、同心状に貫通孔61bが形成され、この貫通孔61bの下方に貫通孔61bと連続的に筒状凹部61cが形成されている。この筒状凹部61c内には筒部材71が収容され、この筒部材71の内面71a及び貫通孔61bを
図5中下方よりキャスター軸51を貫通させる。そして、キャスター軸51の先端部(図中上端部)と固定体本体41を、キャスター軸線Laに直交する方向に延びる軸線を有したピン45が貫通し、このピン45を介してキャスター軸51が固定体本体41に固定される。
【0031】
ここで、回転ホルダ61に設けられた貫通孔61bの径は、筒部材71の内面71aの径よりも大きくなっている。したがって、キャスター軸51は、回転ホルダ61の頭部61aに接触しない程度の遊びをもって頭部61aを貫通する一方で、筒部材71の内面71aに対しては摺動可能となる。キャスター軸51の外周面51aと筒部材71の内面71aとが互いに摺動することで、回転体60がキャスター軸線Laを中心として固定体40に対して回転することができる。この点、回転体60が固定体40に対して円滑に回転することができるよう、筒部材71は、例えば自己潤滑性に優れた円筒状の樹脂部品から構成されているのが好ましい。なお、本実施の形態では、筒部材71は、キャスター軸51を挿入される部分のみから構成されているが、筒部材71内に、キャスター軸51を挿入されない部分が設けられていてもよい。
【0032】
一方、キャスター軸51の基端部(
図4中下端部)には、拡径つば52が形成され、この拡径つば52が内面71aの径よりも大きな径を有することから、回転体60が固定体40に保持される。
【0033】
さらに、回転ホルダ61には、固定体40に対する回転体60の相対回転を規制するためのロック部材64が取り付けられている。ロック部材64は、回転ホルダ61のうちの、他の部分よりも水平方向に突出した部分に、ピン65を介して揺動可能に保持されている。ロック部材64は、
図3に示す固定体40の凹部44内に選択的に挿入可能な凸部64aを有している。ロック部材64を操作して、当該ロック部材64の凸部64aを固定体40の凹部44内に収容させることにより、固定体40に対する回転体60の回転を規制することができる。
【0034】
また、この回転ホルダ61にはピン63を介して車輪ホルダ62が支持され、この車輪ホルダ62には、車軸85を介して車輪80が回転軸線Lbを中心に回転可能に保持されている。本実施の形態では、車輪ホルダ62に孔62aが形成され、この孔62aに車軸85が挿入されている。
【0035】
また、ピン63から離間した位置となる回転ホルダ61と車輪ホルダ62との間にクッション材66が配置されている。クッション材66は、ピン63を中心とする回転体60の車輪ホルダ62に対する相対揺動により弾性変形し、接地面からの衝撃を吸収するサスペンション機能を発揮する。クッション材66によれば、乳母車1に乗車した乳幼児に快適な乗り心地を提供することができる。
【0036】
ところで、背景技術の欄にて説明したように、回転体60に接地面にある凹凸や段差の影響が及ぶと、回転体60が固定体40に対して微振動するウォブル現象を生じるおそれがある。接地面にある凹凸等から車輪80に伝わる力は、回転体60に伝わった後、回転体60の筒部材71からキャスター軸51に伝わってキャスター軸51によって受け止められる。したがって、接地面にある凹凸等から車輪80に伝わる力によって回転体60が共振してウォブル現象が発生する場合、キャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rが、共振波長(固有波長)と相関をもつと考えられる。そこで、本件発明者は、ウォブル現象が発生し得るような状態において、キャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rを変更するようにキャスター3を構成することに着目した。このような形態によれば、或る状態で回転体60が共振してウォブル現象が発生したとしても、回転体60が共振した状態とは異なる回転軸線Lbとキャスター軸線Laとの間の距離rに変更することで、ウォブル現象を抑えることができる。
【0037】
以下、
図6A〜
図6Dを参照して、キャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rを変更する方法について説明する。
図6Aは、キャスター軸線Laに直交する断面における、筒部材71の内面71a及びキャスター軸51の外周面51aを示す概略断面図であり、
図6B〜
図6Dは、キャスター軸線Laに直交する断面における各状態での、筒部材71の内面71a及びキャスター軸51の外周面51aの形状を示している。以下の説明では、
図6A〜
図6Dに示すキャスター軸線Laに直交する断面を、単に主断面と呼ぶ。
図6A〜
図6Dに示すように、本実施の形態では、キャスター3は、回転体60がキャスター軸線Laを中心として固定体40に対して回転した角度θ1〜θ3に応じて、キャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rを変更可能になっている。上述のように、ウォブル現象が発生したときには回転体60の固定体40に対する回転状態が不安定となる。したがって、回転体60の固定体40に対する回転角度θ1〜θ3に応じてキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rを変更することにより、ウォブル現象を効果的に抑えることが可能となる。
【0038】
ただし、一般的に相対回転する筒の内面と軸の外面との間には、互いに相対回転可能且つ組付可能にするための遊びが設けられている。したがって、本明細書における「回転体60の固定体40に対する回転角度θ1〜θ3に応じてキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rを変更可能」とは、回転体60の固定体40に対する回転角度θ1〜θ3に応じて前記変更対象の距離rが取り得る値の範囲が異なることを意味する。言い換えると、回転体60が固定体40に対して或る角度θ1〜θ3だけ回転したときに前記変更対象の距離rが取り得る値の中に、回転体60が固定体40に対して別の角度θ1〜θ3だけ回転したときに前記変更対象の距離rが取り得る値とは異なる値が存在することを意味する。
【0039】
具体的には、回転体60の固定体40に対する回転角度θ1〜θ3に応じて前記変更対象の距離rが変化するように、筒部材71の内面71aの形状と、キャスター軸51の外周面51aの形状とが、決定されている。従来では、主断面における前記内面71aの形状及び主断面における前記外周面51aの形状は、円形であり、ゆえに、同一または類似の形状であった。一方、本実施の形態では、主断面における前記内面71aの形状及び主断面における前記外周面51aの形状は、非円形で互いに異なり且つ非相似となっている。このような形態によれば、筒部材71の内面71aの形状とキャスター軸51の外周面51aの形状とを適切に設計することで、回転体60の固定体40に対する回転角度θ1〜θ3に応じて前記変更対象の距離rを変化させることが可能となる。このため、回転角度θ1〜θ3に応じて前記変更対象の距離rを変化させるために、別個の機構や装置をキャスター3に設ける必要がない。したがって、このような形態によれば、構造の複雑化及び重量の増加を回避しながらウォブル現象を効果的に抑えることが可能となる。
【0040】
具体的な形状として、主断面におけるキャスター軸51の外周面51aの形状は、ルーローのn角形からなり、主断面における筒部材71の内面71aの形状は、角が面取りされた正(n+1)角形からなる。ただし、nを奇数とする。図示する例では、主断面における筒部材71の内面71aの形状は、角が面取りされた正方形からなり、主断面におけるキャスター軸51の外周面51aの形状は、ルーローの三角形からなる。
【0041】
先ず、筒部材71の内面71aの形状について説明する。
図6Aに示すように、筒部材71の内面71aは、主断面において、1つの仮想の正方形Xの各辺上にそれぞれ位置する4つの直線部74a〜dと、隣り合う2つの直線部74a〜dの間を延びる隅部75a〜dと、からなる。各直線部74a〜dは、筒部材71の内面71aのうちキャスター軸51と接するようになる部分73を構成し、各隅部75a〜dは、筒部材71の内面71aのうちキャスター軸51と接しない部分を構成している。
【0042】
本実施の形態において、筒部材71の内面71a、とりわけキャスター軸51と接するようになる部分73は、キャスター軸線Laを中心として4回対称に配置されている。したがって、4つの直線部74a〜dは、互いに合同に構成され、各隅部75a〜dも、互いに合同に構成されている。このような形態によれば、筒部材71の内面71aの対称性により、キャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rをバランスよく変更することに寄与する。この結果、乳母車1に乗車した乳幼児に快適な乗り心地を提供する点でメリットをもつ。
【0043】
本実施の形態の各隅部75a〜dは、隣り合う2つの直線部74a〜dの端部に接続され円弧状の形状を有している。なお、隅部75a〜dは、筒部材71の内面71aに必ずしも設けられなくてもよい。隅部75a〜dが設けられない場合、各直線部74a〜dは1つの仮想の正方形Xの対応する辺に重ねられ、筒部材71のキャスター軸51と接するようになる部分73は正方形の形状をもつ。
【0044】
また、
図6Aに示すように、対向する2つの直線部74a、74cの中点同士を結ぶ直線L1と、別の対向する2つの直線部74b、74dの中点同士を結ぶ直線L2と、の交点をc1とする。この点c1は、筒部材71の内面71aの中心となる。筒部材71の中心c1と回転軸線Lbとの距離は一定であるため、中心c1と回転軸線Lbとの相対位置の変化を評価することにより、キャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rを評価することができる。
【0045】
なお、とりわけ、主断面におけるキャスター軸51の外周面51aの形状がルーローの多角形からなる場合、各隅部75a〜dがキャスター軸51と接することを避けるためには、中心c1と各隅部75a〜dとの距離は、中心c1と各直線部74a〜dとの距離よりも長くなるべきである。
【0046】
次に、キャスター軸51の外周面51aの形状について説明する。上述のように、キャスター軸51の外周面51aは、主断面において、ルーローの多角形の形状をもつ。ルーローの多角形(n角形)は、同一形状の円弧53a〜cを奇数個(n個)接続してなる形状を有し、円弧53a〜cの相隣接する円弧によって頂部54a〜cが特定される。ルーローの多角形において、各円弧53a〜cの曲率半径Rは、当該円弧53a〜cに対面する頂部54a〜cまでの距離と等しくなっている。
図6A〜
図6Dに示す例では、主断面におけるキャスター軸51の外周面51aの形状は、同一の円弧53a〜cを3個接続してなるルーローの三角形からなる。
【0047】
主断面におけるキャスター軸51の外周面51aの形状がルーローの多角形からなる場合、キャスター軸線Laは、各頂部54a〜cを通る円の中心となる位置を通る。言い換えると、キャスター軸線Laは、各頂部54a〜cからの距離が等しくなる位置を通る。
【0048】
次に、回転体60の固定体40に対する回転角度θ1〜θ3に応じてキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rが変化する作用について
図6A〜
図6Dを参照して説明する。なお、
図6A〜
図6Dにおいて、回転体60の固定体40に対する回転角度を、一例として20°づつずらして示してある。前提として、上述のように、主断面において、キャスター軸51と接するようになる部分73が、1つの仮想の正方形Xの各辺上にそれぞれ位置する4つの直線部74a〜dからなるため、ルーローの三角形からなるキャスター軸51の外周面51aが、仮想の正方形Xからなる筒部材71の内面71aに収容されるものとみなすことができる。また、以下の説明では、説明の簡略化のために、前記主断面において、ルーローの三角形からなるキャスター軸51の外周面51aが、正方形からなる筒部材71の内面71aに内接されるものとして説明する。しかしながら、これらの間に遊びが設けられていても当然に同様の機能を発揮することが可能である。また、キャスター3において、回転体60が固定体40に対して回転移動するが、
図6A〜
図6Dでは、理解を容易にするために、回転体60の位置を基準として示してある。したがって、
図6A〜
図6Dでは、固定体40が回転体60に対して相対的に回転することになる。
【0049】
図6A〜
図6Dに示すように、ルーローの三角形からなるキャスター軸51の外周面51aが、内接する正方形からなる筒部材71の内面71aに対して相対的に回転する場合、キャスター軸51の中心を通るキャスター軸線Laの位置は、固定体40が回転体60に対して相対的に回転する角度θ1〜θ3に応じて変化する。したがって、回転体60の固定体40に対する回転角度θ1〜θ3に応じて、筒部材71の内面71aの中心c1に対するキャスター軸線Laの位置が連続的に変化する。筒部材71の内面71aの中心c1と回転軸線Lbとの距離は、一定である。したがって、キャスター3によれば、回転体60の固定体40に対する回転角度θ1〜θ3に応じて、キャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rが連続的に変化する。
【0050】
具体的には、
図6Aに示す状態において、ルーローの三角形の第1〜第3頂部54a〜cが、正方形上の対応する第1、2、4直線部74a、74b、74dにそれぞれ接触している。加えて、第1頂部54aに対面する円弧53aが、第3直線部74cに接触している。
図6Aに示す状態から、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1(図示する例では20°)だけ回転すると、第1頂部54aが第1直線部74aに接触する位置が紙面における左側にずれ、第3頂部54cが第4直線部74dに接触する位置が紙面における上側にずれる。そして、第1頂部54aに対面する円弧53aが第3直線部74cに接触し、第3頂部54cに対面する円弧53cが第2直線部74bに接触する。このルーローの三角形の接触位置の変化に応じて、キャスター軸51の中心を通るキャスター軸線Laの位置も変化する。したがって、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rは、
図6Aに示す相対回転する前のキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rと異なっている。
【0051】
さらに、
図6Bに示す状態から回転体60が固定体40に対してさらに回転し、
図6Aに示す状態から合計で第2角度θ2(図示する例では40°)だけ回転すると、第3頂部54cが第4直線部74dに接触する位置が紙面における上側にさらにずれ、第2頂部54bが第3直線部74cに接触する。そして、第2頂部54bに対面する円弧53bが第1直線部74aに接触し、第3頂部54cに対面する円弧53cが第2直線部74bに接触する。したがって、回転体60が固定体40に対して第2角度θ2だけ回転したときの筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置は、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1だけ回転したときの筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置と、異なっている。また、ルーローの三角形の接触位置の変化に応じて、キャスター軸51の中心を通るキャスター軸線Laの位置もさらに変化する。したがって、回転体60が固定体40に対して第2角度θ2だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rは、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rと異なっている。
【0052】
さらに、
図6Cに示す状態から回転体60が固定体40に対してさらに回転し、
図6Aに示す状態から合計で第3角度θ3(図示する例では60°)だけ回転すると、第1〜第3頂部54a〜cが、第2〜第4直線部74b〜dにそれぞれ接触し、第2頂部54bに対面する円弧53bが、第1直線部74aに接触する。したがって、回転体60が固定体40に対して第3角度θ3だけ回転したときの筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置は、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1または第2角度θ2だけ回転したときの筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置と、異なっている。また、ルーローの三角形の接触位置の変化に応じて、キャスター軸51の中心を通るキャスター軸線Laの位置もさらに変化する。したがって、回転体60が固定体40に対して第3角度θ3だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rは、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1または第2角度θ2だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rと異なっている。
【0053】
以上のように、本実施の形態によれば、固定体40及び回転体60の一方が、キャスター軸線Laを画定するキャスター軸51を有し、固定体40及び回転体60の他方が、キャスター軸51を挿入された筒部材71を有し、回転体60がキャスター軸線Laを中心として固定体40に対して或る第1角度θ1だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rは、回転体60がキャスター軸線Laを中心として固定体40に対して或る第2角度θ2だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rと、異なっている。すなわち、ある状態で回転体60が共振してウォブル現象が発生したとしても、回転体60が固定体40に対して回転することにより、キャスター軸線Laの位置が変化する。このため、結果として、回転軸線Lbとキャスター軸線Laとの間の距離rが変化する。この距離rが変化することにより、ウォブル現象を発生させている振動数が変化し、ウォブル現象を抑えることができる。この結果、ウォブル現象による直進走行性の低下を抑制することができ、直進走行性を改善することができる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、回転体60がキャスター軸線Laを中心として固定体40に対して或る第1角度θ1だけ回転したときの、筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置は、回転体60がキャスター軸線Laを中心として固定体40に対して第1角度θ1とは異なる第2角度θ2だけ回転したときの、筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置と、異なっている。このような形態によれば、筒部材71の内面71aが接触するキャスター軸51の外周面51aの位置を、回転体60の固定体40に対する回転角度θ1〜θ3に応じて変えることができる。これにより、キャスター軸51の外周面51aが偏摩耗することを抑制することができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、主断面におけるキャスター軸51の外周面51aの形状は、ルーローのn角形からなり、筒部材71のキャスター軸51と接するようになる部分73は、1つの仮想の正(n+1)角形の各辺上にそれぞれ位置する(n+1)の直線部74a〜dを含む。この場合、回転体60の固定体40に対する回転角度θ1〜θ3に応じてキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rを連続的に滑らかに変化させることが可能となる。この結果、乳母車1に乗車した乳幼児に快適な乗り心地を提供することに寄与する。とりわけ、本実施の形態によれば、主断面におけるキャスター軸51の外周面51aの形状は、ルーローの三角形からなり、筒部材71のキャスター軸51と接するようになる部分73は、1つの仮想の正方形Xの各辺上にそれぞれ位置する4つの直線部74a〜dを含む。この場合、回転体60の固定体40に対する回転角度θ1〜θ3に応じたキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rの変化を大きくすることができる。これにより、回転体60を一層共振し難くすることができ、ウォブル現象をさらに効果的に抑えることができる。
【0056】
≪変形例≫
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0057】
例えば、上述した実施の形態では、
図5に示すように、キャスター軸51に対して摺動する筒部材71が回転ホルダ61と別個の部品にて構成された例を示したが、回転体60の構成例は、このような例に限定されない。筒部材71が回転ホルダ61と一体の部品であってもよい。
【0058】
また、上述した実施の形態では、
図4に示すように、固定体40がキャスター軸線Laを画定するキャスター軸51を有し、回転体60がキャスター軸51を挿入された筒部材71を有する例を示したが、このような例に限定されない。回転体60がキャスター軸線Laを画定するキャスター軸を有し、固定体40がキャスター軸を挿入された筒部を有してもよい。この場合、固定体の筒部の内面に対してキャスター軸の外周面が摺動することで、回転体60がキャスター軸線Lbを中心として固定体40に対して回転することができる。
【0059】
また、上述した実施の形態では、
図6A〜
図6Dに示すように、主断面におけるキャスター軸51の外周面51aの形状は、ルーローの三角形からなる例を示したが、このような例に限定されない。
図7A〜
図7Eに、キャスター軸51の外周面51aの形状の他の例を示す。なお、
図7A〜
図7Eにおいて、回転体60の固定体40に対する回転角度を、一例として18°づつずらして示してある。
図7A〜
図7Eに示す例では、主断面におけるキャスター軸51の外周面51aの形状は、ルーローの五角形からなり、筒部材71のキャスター軸51と接するようになる部分73は、1つの仮想の正六角形の各辺上にそれぞれ位置する6つの直線部74a〜fを含む。
【0060】
図7Aに示す状態において、ルーローの多角形の第1頂部54a、第2頂部54b及び第5頂部54eが、正六角形上の対応する第1直線部74a、第2直線部74b及び第6直線部74fにそれぞれ接触している。加えて、第1頂部54aに対面する円弧53a、第2頂部54bに対面する円弧53b及び第5頂部54eに対面する円弧53eが、第4直線部74d、第5直線部74e及び第3直線部74cにそれぞれ接触している。
図7Aに示す状態から、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1(図示する例では18°)だけ回転すると、
図7Bに示すように、第1頂部54aが第1直線部74aに接触する位置が紙面における左側にずれ、第5頂部54eが第6直線部74fに接触する位置が紙面における左上側にずれる。そして、第3頂部54c及び第4頂部54dが第4直線部74d及び第5直線部74eにそれぞれ接触し、第4頂部54dに対面する円弧53dが第2直線部74bに接触し、第5頂部54eに対面する円弧53eが第3直線部74cに接触する。
【0061】
さらに、
図7Bに示す状態から回転体60が固定体40に対してさらに回転し、
図7Aに示す状態から合計で第2角度θ2(図示する例では36°)だけ回転すると、
図7Cに示すように、第3頂部54cが第4直線部74dに接触する位置が紙面における右側にずれ、第4頂部54dが第5直線部74eに接触する位置が紙面における右上側にずれる。そして、第2頂部54bが第3直線部74cに接触し、第2頂部54bに対面する円弧53bが第6直線部74eに接触する。また、第3頂部54cに対面する円弧53cが第1直線部74aに接触し、第4頂部54dに対面する円弧53dが第2直線部74bに接触する。したがって、回転体60が固定体40に対して第2角度θ2だけ回転したときの筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置は、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1だけ回転したときの筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置と、異なっている。また、上述のように、ルーローの多角形の接触位置の変化に応じて、キャスター軸51の中心を通るキャスター軸線Laの位置も変化する。したがって、回転体60が固定体40に対して第2角度θ2だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rは、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rと異なっている。
【0062】
同様にして、さらに、
図7Cに示す状態から回転体60が固定体40に対してさらに回転し、
図7Aに示す状態から合計で第3角度θ3(図示する例では54°)だけ回転すると、
図7Dに示す状態となる。回転体60が固定体40に対して第3角度θ3だけ回転したときの筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置は、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1または第2角度θ2だけ回転したときの筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置と、異なっている。また、回転体60が固定体40に対して第3角度θ3だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rは、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1または第2角度θ2だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rと異なっている。
【0063】
さらに、
図7Dに示す状態から回転体60が固定体40に対してさらに回転し、
図7Aに示す状態から合計で第4角度θ4(図示する例では72°)だけ回転すると、
図7Eに示す状態となる。回転体60が固定体40に対して第4角度θ4だけ回転したときの筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置は、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1、第2角度θ2または第3角度θ3だけ回転したときの筒部材71の内面71aがキャスター軸51の外周面51aに接触し得る位置と、異なっている。また、回転体60が固定体40に対して第4角度θ4だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rは、回転体60が固定体40に対して第1角度θ1、第2角度θ2または第3角度θ3だけ回転したときのキャスター軸線Laと回転軸線Lbとの間の距離rと異なっている。
【0064】
以上のことから、
図7A〜
図7Eに示す形態であっても、上述した形態と同様に、ウォブル現象による直進走行性の低下を抑制することができ、直進走行性を改善することができる。