(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494988
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】コンデンサ素子用の金属化フィルムおよびそれを用いた金属化フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
H01G4/32 511A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-248941(P2014-248941)
(22)【出願日】2014年12月9日
(65)【公開番号】特開2016-111261(P2016-111261A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】北島 崇雄
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−012082(JP,A)
【文献】
特開2013−219399(JP,A)
【文献】
特開2013−219216(JP,A)
【文献】
特開2013−105804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルム長手方向に沿って相対的な小面積分割状態で展開する小面積電極列領域と誘電体フィルム長手方向に沿って連続状態または相対的な大面積分割状態で展開する大面積電極列領域とのセットが誘電体フィルム幅方向に沿って繰り返し配列され、
かつ、前記小面積電極列領域の各分割電極が第1の絶縁スリットの切れ目における金属蒸着膜による第1のヒューズを介する状態で、前記大面積電極列領域が当該小面積電極列領域の両側にある状態ではこの両側の大面積電極列領域に対して、また、前記大面積電極列領域が当該小面積電極列領域の片側のみにある状態ではその片側の大面積電極列領域に対して、電気的に接続されて蒸着電極が構成され、
この蒸着電極が前記誘電体フィルムの少なくとも片面に形成され、
前記小面積電極列領域における各分割電極において、さらに誘電体フィルム幅方向の中間部で第2の絶縁スリットと第2のヒューズとが配列されて前記各分割電極が一対の細分化小電極に形成され、誘電体フィルム幅方向における前記一対の細分化小電極どうしは前記第2のヒューズを介して電気的に接続され、
さらに、両側が前記大面積電極列領域に挟まれている前記小面積電極列領域において、前記第1のヒューズと前記第2のヒューズとは、そのヒューズ幅の大小関係について、前記第2のヒューズのヒューズ幅は前記第1のヒューズのヒューズ幅以下に設定されているコンデンサ素子用の金属化フィルム。
【請求項2】
前記第2の絶縁スリットが誘電体フィルム長手方向に伸びるように形成され、前記第2の絶縁スリットは前記各分割電極の誘電体フィルム長手方向中央部に切れ目を有し、当該切れ目における金属蒸着膜によって前記第2のヒューズが形成されている請求項1に記載のコンデンサ素子用の金属化フィルム。
【請求項3】
前記蒸着電極がアルミニウム、亜鉛またはそれらの合金からなり、電極引出し接続部の電極厚みが他領域の電極厚みよりも厚肉に構成されている請求項1または請求項2に記載のコンデンサ素子用の金属化フィルム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコンデンサ素子用の金属化フィルムを2枚重ね合わせて一対の金属化フィルムを構成した金属化フィルムコンデンサにおいて、
前記一対の金属化フィルムのうち一方の金属化フィルムにおける前記大面積電極列領域のすべてが他方の金属化フィルムにおける前記細分化小電極に対向することを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンデンサ素子用の金属化フィルムの蒸着パターンに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)や産業機械に用いられる金属化フィルムコンデンサの技術分野においては、小型・軽量化、低コスト化のために誘電体フィルムの厚みを薄くすることが求められている。誘電体フィルムの薄膜化に当たっては耐電圧性能の向上が求められ、そのための手段として、材料の改良とともに、誘電体フィルム上に形成される蒸着電極の蒸着パターンの改良が行われている。
【0003】
金属化フィルムコンデンサは、金属化フィルムの絶縁破壊により、周辺の蒸着金属が飛散することで絶縁破壊部の絶縁を回復させる(自己回復機能(セルフヒーリング動作))。周囲の蒸着電極が飛び散ってなくなってしまうので、そこで絶縁破壊の進行がストップし、絶縁が回復される。しかし、絶縁破壊数が増える高温・高電圧では自己回復機能が充分に得られないために、コンデンサがショートモードに陥るおそれがある。つまり、誘電体フィルム上に蒸着金属膜を有する金属化フィルムが積層・巻回されてなる金属化フィルムコンデンサにおいては、蒸着金属の飛散が不充分であると、誘電体フィルムの破壊箇所を介して積層2層の蒸着金属どうしが導通してしまう。
【0004】
そこで、複数の分割電極とヒューズからなる保安機構が考案された。金属化フィルムにおいて分割電極を形成すると、金属化フィルムの自己回復機能を超えた絶縁破壊を起こした場合でも、周囲の分割電極から絶縁破壊を起こした分割電極に電流が流れ込み、ヒューズの蒸着金属を飛散させるヒューズ動作により、絶縁破壊を起こした分割電極を他の分割電極から切り離して絶縁を回復させ、高い安全性を確保できる。
【0005】
ところで、分割電極の面積を小さくするほどヒューズ動作による容量減少を抑制することができ、コンデンサの長寿命化が可能になる。しかし、細分化し過ぎると、分割電極のエネルギーが小さくなり、絶縁破壊を起こした場合にヒューズ動作がしにくくなって、コンデンサの安全性が低下する。この現象は温度が高くなるほど顕著になる。
【0006】
また、分割電極の面積を小さくするとヒューズの数が増加することになるが、ヒューズは分割電極と比較して高抵抗であるため、コンデンサの発熱が増加する。このような自己発熱の増加は、耐電圧性能や保安性能が低下する原因となる。特に金属化フィルムを巻回または積層してなるコンデンサ素子の中心は自己発熱により温度上昇が激しく、他の部分よりも耐電圧性能や保安性能が劣化する。
【0007】
そこで、誘電体フィルム長手方向(以下、単に「フィルム長手方向」という)に沿って相対的な小面積分割状態で展開する小面積電極列領域とフィルム長手方向に沿って連続状態または相対的な大面積分割状態で展開する大面積電極列領域とを集約配置する手段が考案されている(例えば特許文献1参照)。そのコンデンサ素子用の金属化フィルムでは、絶縁マージン側に絶縁スリットによって区画された複数の分割電極が設けられ、電極引き出し部(メタリコン)側に大面積電極列領域が設けられている。
【0008】
さらに、前記の小面積電極列領域と大面積電極列領域のセットとして、このセットが誘電体フィルム幅方向(以下、単に「フィルム幅方向」という)に沿って繰り返し配列され、かつ、小面積電極列領域の各分割電極が絶縁スリットの切れ目における金属蒸着膜によるヒューズを介する状態で電気的に接続されて蒸着電極が構成されたコンデンサ素子用の金属化フィルムが開発されている。
【0009】
図6はこのように高温・高電圧下で使用されるゆえに安全性が強く要求されるコンデンサ素子用の金属化フィルムの従来例を示す。
図7はその金属化フィルムの一部を拡大して示す平面図である。
図6、
図7において、1は金属化フィルム、2は誘電体フィルム(蒸着電極の一部を剥がした状態を図示)、3は蒸着電極、4は絶縁スリット(第1の絶縁スリット)、5Bは分割電極、6はヒューズ(第1のヒューズ)、7は電極引き出し接続部、8は絶縁マージンである。A1,A2はフィルム長手方向Xに沿って連続的に展開される大面積電極列領域、B1,B2はフィルム長手方向Xに所定の間隔で配列された絶縁スリット4により分割形成された複数の分割電極5Bを有する小面積電極列領域であり、大面積電極列領域A1と小面積電極列領域B1とのセット(A1,B1)と大面積電極列領域A2と小面積電極列領域B2とのセット(A2,B2)がフィルム幅方向Yに沿って配列されている。この例では、大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットの繰り返し配列は2列となっている。フィルム幅方向Yの中間部の小面積電極列領域B1の各分割電極5Bが絶縁スリット4の切れ目における金属蒸着膜によるヒューズ6,6を介する状態でフィルム幅方向Yの両側の大面積電極列領域A1,A2に対して電気的に接続されている。すなわち、小面積電極列領域B1に対して大面積電極列領域A1,A2がフィルム幅方向Yの両側にあり、この両側の大面積電極列領域A1,A2に対して各分割電極5Bがヒューズ6,6を介して電気的に接続されている。また、フィルム幅方向Yの端に位置する小面積電極列領域B2の各分割電極5Bが絶縁スリット4の切れ目における金属蒸着膜によるヒューズ6を介する状態でフィルム幅方向Yの片側の大面積電極列領域A2に対して電気的に接続されている。すなわち、小面積電極列領域B2に対して大面積電極列領域A2がフィルム幅方向Yの片側にしかなく、この片側の大面積電極列領域A2に対して各分割電極5Bがヒューズ6を介して電気的に接続されている。
【0010】
以上のような大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットの2組(A1,B1),(A2,B2)を有するパターンの蒸着電極3が誘電体フィルム2上に構成される。そして、このような蒸着電極3が誘電体フィルム2の少なくとも片面に形成され、これによって金属化フィルム1が構成される。
【0011】
図6、
図7に示す金属化フィルム1においては、フィルム幅方向Yの一方端縁に電極引き出し部(メタリコン)が接続される電極引き出し接続部7が形成され、他方端縁に絶縁マージン8が形成されている。金属化フィルム1の絶縁マージン8側でフィルム長手方向Xに沿って一定ピッチで配列された絶縁スリット4はY字形に形成されており、このY字形の絶縁スリット4の基端部は絶縁マージン8に接続されている。また、フィルム幅方向Yのほぼ中央には、Y字形の絶縁スリット4とほぼ同じピッチで、Y字形の絶縁スリット4の配列方向と平行に配列された絶縁スリット4はミュラー・リヤー形状に形成されている。いわゆるミュラー・リヤー形というのは、所定長さの線分の両端にそれぞれ内向きの矢羽根を有する形状のことである。小面積電極列領域B1は、ミュラー・リヤー形の絶縁スリット4により蒸着電極膜が分割形成された複数の分割電極5Bを有している。小面積電極列領域B2は、Y字形の絶縁スリット4により蒸着電極膜が分割形成された複数の分割電極5Bを有している。
【0012】
また、小面積電極列領域B1の電極引き出し接続部7側には蒸着電極膜がフィルム長手方向Xに連続した大面積電極列領域A1が隣接配置されており、小面積電極列領域B1の絶縁マージン8側(小面積電極列領域B1と小面積電極列領域B2の間)には大面積電極列領域A2が隣接配置されている。
【0013】
小面積電極列領域B1における分割電極5Bは、電極引き出し接続部7側のヒューズ6を介して大面積電極列領域A1に接続され、かつ絶縁マージン8側のヒューズ6を介して大面積電極列領域A2に接続されている。また、小面積電極列領域B2における分割電極5Bは、電極引き出し接続部7側のヒューズ6を介して大面積電極列領域A2に接続されている。
【0014】
このような構成の金属化フィルム1が巻回または積層されて金属化フィルム多層体(断面小判状の柱状体)が構成され、この金属化フィルム多層体の両端面に電極引き出し部(メタリコン)が接続され、金属化フィルムコンデンサ素子が構成される(例えば特許文献2参照)。
【0015】
かかる構成のコンデンサ素子用の金属化フィルム1では、例えば小面積電極列領域B1における分割電極5Bで絶縁破壊を起こした場合、両側のヒューズ6,6を介して大面積電極列領域A1,A2から絶縁破壊を起こした分割電極5Bに大電流が流れ込む。これにより、両側のヒューズ6,6が動作(蒸着金属が飛散)して、絶縁破壊を起こした分割電極5Bが大面積電極列領域A1,A2から切り離される。したがって、このコンデンサ素子用の金属化フィルム1によれば、高い安全性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−12082号公報
【特許文献2】特開2010−182848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
コンデンサ素子用の金属化フィルムにおいては、従来より分割電極を小面積化することによって耐電圧性能の向上が図られている。その手法の一つに、特許文献2に示すような大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットを区画単位として、電極面全体を複数の区画単位から構成する場合に、区画単位をフィルム幅方向で複数列並べる構造がある。つまり、大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットを幅方向に交互に繰り返すパターンである。そして、耐電圧性能の向上のために分割電極を小面積化するに当たり、フィルム幅方向での大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットの繰り返し回数を増やすことが考えられている。
図8は
図6に示した従来例において改良案として提案された金属化フィルムの構成を示す平面図である。大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットの数を2セットから4セットへと倍増し、併せて分割電極のフィルム長手方向Xに沿った配列数も倍増し、そのことによって分割電極を小面積化している。
【0018】
上記したように1つの分割電極当たり2つのヒューズが付随する関係から、
図8に示す従来例の改良案のパターンにおいては、フィルム幅方向Yにおいて、大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットの数を1つ増やすたびにヒューズの数(単位列当たり)は2個ずつ増える。図示のようにセット数を2セットから4セットへと増やすと、ヒューズの数はフィルム幅方向で2・2−1=3から2・4−1=7へと、4つ増える。一般的にセット数をnとすると、ヒューズの数はフィルム幅方向で(2n−1)個となる。また、フィルム長手方向Xにおいて、分割電極の分割数を倍増すると、ヒューズ数も倍増する。そして、ヒューズ数が増えると、コンデンサの等価直列抵抗(ESR)が大きくなってしまうという問題がある。
【0019】
また、フィルム幅方向の分割数を2倍にすると、絶縁スリットの数も2倍に増え、有効電極面積が小さくなることから、金属化フィルムコンデンサの小型化が阻害されるという問題もある。特に、高電圧用の金属化フィルムコンデンサの場合は、絶縁スリット巾が大きいため、有効電極面積はより大きく減少する。
【0020】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、コンデンサ素子用の金属化フィルムに関して、等価直列抵抗(ESR)の増加と有効電極面積の減少を抑制しつつ、耐電圧性能、保安性能の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0022】
本発明によるコンデンサ素子用の金属化フィルムは、
誘電体フィルム長手方向に沿って相対的な小面積分割状態で展開する小面積電極列領域と誘電体フィルム長手方向に沿って連続状態または相対的な大面積分割状態で展開する大面積電極列領域とのセットが誘電体フィルム幅方向に沿って繰り返し配列され、
かつ、前記小面積電極列領域の各分割電極が第1の絶縁スリットの切れ目における金属蒸着膜による第1のヒューズを介する状態で、前記大面積電極列領域が当該小面積電極列領域の両側にある状態ではこの両側の大面積電極列領域に対して、また、前記大面積電極列領域が当該小面積電極列領域の片側のみにある状態ではその片側の大面積電極列領域に対して、電気的に接続されて蒸着電極が構成され、
この蒸着電極が前記誘電体フィルムの少なくとも片面に形成され、
前記小面積電極列領域における各分割電極において、さらに誘電体フィルム幅方向の中間部で第2の絶縁スリットと第2のヒューズとが配列されて前記各分割電極が一対の細分化小電極に形成され、誘電体フィルム幅方向における前記一対の細分化小電極どうしは前記第2のヒューズを介して電気的に接続され
、
さらに、両側が前記大面積電極列領域に挟まれている前記小面積電極列領域において、前記第1のヒューズと前記第2のヒューズとは、そのヒューズ幅の大小関係について、前記第2のヒューズのヒューズ幅は前記第1のヒューズのヒューズ幅以下に設定されている、という構成を有するものである。
【0023】
ここで、小面積電極列領域を構成する各分割電極(面積小の分割電極)の面積は、大面積電極列領域を構成する各分割電極(面積大の分割電極)の面積に比べて小さく、両者の面積比を大きく
することで、後述するように面積小の分割電極における絶縁破壊発生時に当該面積小の分割電極にヒューズを介して流入する電流が増加し、ヒューズを確実に動作(ヒューズを構成する蒸着電極を飛散)させることができる。その結果、絶縁破壊を起こした面積小の分割電極を他の電極から切り離し絶縁を回復することができる。
【0024】
なお、上記構成における「第1の絶縁スリット」は従来例との対比では「絶縁スリット」に対応し、「第1のヒューズ」は従来例との対比では「ヒューズ」に対応するものである。本発明では新規の構成要素として「第2の絶縁スリット」「第2のヒューズ」の用語を用いることになり、これと区別する必要上「第1の絶縁スリット」「第1のヒューズ」と記載している。
【0025】
上記のように構成された本発明のコンデンサ素子用の金属化フィルムにおいては、分割電極を小面積化するのに、第1の絶縁スリットで区画された分割電極自体においてその内部に新たに第2の絶縁スリットと第2のヒューズを設けることにより一対の細分化小電極を作っている。個々の細分化小電極の面積は元の分割電極の面積の約2分の1であり、小面積化が実現される。すなわち、絶縁破壊発生時に蒸着金属の飛散によって分断され無効化される電極面積が小さくなることから、静電容量の減少が抑制され、耐電圧性能が向上する。
【0026】
細分化小電極に絶縁破壊が発生したときに、その細分化小電極に対して隣接する電極領域から電流を流入させるヒューズについては、隣接する大面積電極列領域との境界にある第1のヒューズと隣接するもう一つの細分化小電極との境界にある第2のヒューズとがある。
【0027】
分割電極を細分化して一対の細分化小電極を形成するに当たり、もし得られた一対の細分化小電極どうし間に第2のヒューズを形成せず、両細分化小電極が完全に分断されているとすると、個々の細分化小電極に流入する電流が少なくなって絶縁破壊の際にヒューズ動作が起きにくくなり、安全性の低下を招来する。そこで、隣接する細分化小電極どうし間に第2のヒューズを設けて、この第2のヒューズの存在により、絶縁破壊の際に隣接する細分化小電極から第2のヒューズを介して電流の流入を生じさせてヒューズ動作を起こしやすくしている。絶縁破壊を起こした細分化小電極に対しては、大面積電極列領域から第1のヒューズを介して電流が流入するとともに、隣接する細分化小電極から第2のヒューズを介して電流が流入する。そして、第1のヒューズの部分においても第2のヒューズの部分においても絶縁破壊の細分化小電極を切り離すことで、絶縁を回復することができる。
【0028】
また、分割タイプの電極の数を倍増する対策として、分割電極をそれ自体の内部で2分割(細分化)するので、増加するヒューズの数については、1つの分割電極当たり1つのみとすることが可能である。これは、大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットの数を倍増する従来例の場合の少なくとも2つのヒューズ増加に比べて半減することができている。このようにヒューズ数の増加を抑制することが可能であるため、等価直列抵抗(ESR)の増加を抑制し、温度上昇を抑えることが可能となっている。
【0029】
さらに、分割タイプの電極の数を倍増する対策として、分割電極をそれ自体の内部で2分割(細分化)するので、増加する絶縁スリットの数については、1つの分割電極当たり1つのみとすることが可能である。これは、大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットの数を倍増する従来例改良案の場合の少なくとも4つの絶縁スリット増加に比べて4分の1へ削減することができている。このように絶縁スリットの数の増加ひいては絶縁スリットの面積の増加を抑制することが可能であるため、有効電極面積の減少を抑制し、コンデンサ素子の小型化を進めることが可能となっている。
【0030】
加えて、上記の構成において、前記の第1のヒューズと第2のヒューズとは、そのヒューズ幅の大小関係について、第2のヒューズのヒューズ幅は第1のヒューズのヒューズ幅以下に設定されている。
このように、容量の大きな大面積電極列領域に臨む第1のヒューズのヒューズ幅を大きくし、容量の小さな隣接する細分化小電極に臨む第2のヒューズのヒューズ幅を小さくするという構成によって、絶縁破壊の細分化小電極を大面積電極列領域から切り離す動作と隣接する細分化小電極から切り離す動作とをともに確実なものにすることが可能になる。
以上の相乗により、本発明によれば、コンデンサ素子用の金属化フィルムに関して、等価直列抵抗(ESR)の増加と有効電極面積の減少を抑制しつつ、耐電圧性能、保安性能の向上を図ることが可能となる。
【0033】
上記の構成における好ましい態様としては、前記第2の絶縁スリットが誘電体フィルム長手方向に伸びるように形成され、前記第2の絶縁スリットは前記各分割電極の誘電体フィルム長手方向中央部に切れ目を有し、当該切れ目における金属蒸着膜によって前記第2のヒューズが形成されている、という態様がある。
【0034】
さらにまた、別の好ましい態様としては、前記蒸着電極がアルミニウム、亜鉛またはそれらの合金からなり、電極引出し接続部の電極厚みが他領域の電極厚みよりも厚肉に構成されている、という態様がある。このように構成すれば、電極引き出し接続部と電極引き出し部との接続信頼性が高いものとなる。
【0035】
さらに本発明にかかわる金属化フィルムコンデンサは、上記のいずれかのコンデンサ素子用の金属化フィルムを2枚重ね合わせて一対の金属化フィルムを構成した金属化フィルムコンデンサにおいて、前記一対の金属化フィルムのうち一方の金属化フィルムにおける前記大面積電極列領域のすべてが他方の金属化フィルムにおける前記細分化小電極に対向する構成となっている。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、コンデンサ素子用の金属化フィルムに関して、小面積電極列領域における各分割電極をそれ自身の内部で分割し一対の細分化小電極を形成した上で、両者を第2のヒューズを介して接続した構成とし
、さらに小面積電極列領域において第2のヒューズのヒューズ幅を第1のヒューズのヒューズ幅以下に設定したので、等価直列抵抗(ESR)の増加と有効電極面積の減少を抑制しつつ、耐電圧性能、保安性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の実施例におけるコンデンサ素子用の金属化フィルムの構成を示す平面図と断面図
【
図2】本発明の実施例における金属化フィルムの一部を拡大して示す平面図
【
図3】本発明の実施例における重ね合わされた2シートの金属化フィルムを示す平面図
【
図4】本発明の実施例にかかわる金属化フィルムを用いたコンデンサ素子の斜視図
【
図5】本発明の別の実施例におけるコンデンサ素子用の金属化フィルムの構成を示す平面図
【
図6】従来例におけるコンデンサ素子用の金属化フィルムの構成を示す平面図
【
図7】従来例における金属化フィルムの一部を拡大して示す平面図
【
図8】従来例において改良案として提案された金属化フィルムの構成を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、上記構成の本発明のコンデンサ素子用の金属化フィルムにつき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0039】
図1(a)は本発明の実施例におけるコンデンサ素子用の金属化フィルムの構成を示す平面図、
図1(b)はその断面図、
図2は金属化フィルムの一部を拡大して示す平面図である。本実施例では
図8に示す従来例改良案とは異なる新構成を当然に有しているが、説明の都合上、従来例改良案を踏襲する構成について説明し、次いで本実施例特有の構成について言及することとする(つまり、新構成要素である符号4bで示す第2の絶縁スリットと符号6bで示す第2のヒューズについては、後半説明でのみ言及する。)。
【0040】
図1および
図2において、1は金属化フィルム、2は誘電体フィルム(蒸着電極の一部を剥がした状態を図示)、3はアルミニウム、亜鉛またはそれらの合金などの金属からなる蒸着電極、4は第1の絶縁スリット、5Bは分割電極、5bは細分化小電極、6は第1のヒューズ、7は電極引き出し接続部、8は絶縁マージン、A1〜A4は蒸着電極3の一部を構成する大面積電極列領域、B1〜B4は蒸着電極3の残りの部分を構成する小面積電極列領域である。金属化フィルム1は、誘電体フィルム2の表面に蒸着電極3をパターン形成したものである。その蒸着電極3は、4列の大面積電極列領域・小面積電極列領域のセット(A1,B1),(A2,B2),(A3,B3),(A4,B4)で構成されている。A1は1列目の大面積電極列領域、B1は1列目の小面積電極列領域であり、これらは1列目の大面積電極列領域・小面積電極列領域のセット(A1,B1)を構成する。A2は2列目の大面積電極列領域、B2は2列目の小面積電極列領域であり、これらは2列目の大面積電極列領域・小面積電極列領域のセット(A2,B2)を構成する。A3は3列目の大面積電極列領域、B3は3列目の小面積電極列領域であり、これらは3列目の大面積電極列領域・小面積電極列領域のセット(A3,B3)を構成する。A4は4列目の大面積電極列領域、B4は4列目の小面積電極列領域であり、これらは4列目の大面積電極列領域・小面積電極列領域のセット(A4,B4)を構成する。この例では、大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットの繰り返し配列は4列となっている。
【0041】
2列目と3列目と4列目の大面積電極列領域A2,A3,A4は同じ構成となっている。1列目の大面積電極列領域A1は、金属化フィルム1のフィルム幅方向Yの一方端縁において金属溶射電極(メタリコン)を接続するための電極引き出し接続部7を含んでいる。この電極引き出し接続部7は、誘電体フィルム2のフィルム幅方向Yの一方端縁においてフィルム長手方向Xに沿って連続的に展開している領域(
図1の破線の外側の横方向に細長い導電体領域)であり、1列目の大面積電極列領域A1と一体的に連接されている。
図1(b)に示すように、電極引き出し接続部7は、その電極厚みが蒸着電極3の他領域と比べて厚くなっている。そのため、電極引き出し接続部7と電極引き出し部(メタリコン)との接続信頼性が高いものとなっている。この厚肉な電極引出し接続部7のことをヘビーエッジ部と呼び、それ以外の蒸着電極3の薄肉な領域をアクティブ部と呼ぶ。
【0042】
1列目と2列目と3列目の小面積電極列領域B1,B2,B3は同じ構成となっている。これら3つの小面積電極列領域B1,B2,B3では、その第1の絶縁スリット4がいわゆるミュラー・リヤー形に形成されている。すなわち、第1の絶縁スリット4は、所定長さの線分の両端にそれぞれ内向きの矢羽根を有する形状を有している。4列目の小面積電極列領域B4では、その第1の絶縁スリット4がY字形(ミュラー・リヤー形において一端側の内向きの矢羽根が欠損した形状)に形成されている。この4列目の小面積電極列領域B4は、その第1の絶縁スリット4が金属化フィルム1のフィルム幅方向Yの他方端縁において絶縁マージン8と連接している。この絶縁マージン8は、誘電体フィルム2のフィルム幅方向Yの他方端縁においてフィルム長手方向Xに連続して展開している横方向に細長い絶縁領域である。その他の構成は1列目ないし3列目と同様である。
図2では3列目と4列目の小面積電極列領域B3,B4および4列目の大面積電極列領域A4を拡大して示しているが、1列目および2列目の小面積電極列領域B1,B2のパターンは3列目の小面積電極列領域B3と同様のものとなっている。
【0043】
大面積電極列領域Ai(i=1,2,3,4)はフィルム長手方向Xに沿って連続的に展開している領域である。小面積電極列領域Bi(i=1,2,3,4)は、その基本構成として従来例改良案と同様に、フィルム長手方向Xに所定の間隔で配列されたミュラー・リヤー形またはY字形の第1の絶縁スリット4により分割形成された複数の分割電極5Bを有する領域である。個々の分割電極5Bは、細長い六角形状または細長い五角形状を呈するものである(ここでは新構成として、フィルム幅方向Yの中間部に形成されることになる第2の絶縁スリット4bには触れていない)。そして、大面積電極列領域・小面積電極列領域(Ai,Bi)のセットがフィルム幅方向Yに沿って4セット繰り返し配列されている。また、1列目ないし3列目の小面積電極列領域B1〜B3では、その基本構成としての各分割電極5Bは、フィルム幅方向Yの両側で第1の絶縁スリット4の切れ目における金属蒸着膜による第1のヒューズ6,6を介する状態で、両側の大面積電極列領域Ai,Ai+1に対して、電気的に接続されている。4列目の小面積電極列領域B4では、その基本構成としての各分割電極5Bは、フィルム幅方向Yの一側で第1の絶縁スリット4の切れ目における金属蒸着膜による第1のヒューズ6を介する状態で、その片側にある大面積電極列領域A4に対して、電気的に接続されている。
【0044】
そして、上記のような大面積電極列領域・小面積電極列領域の4セットからなる蒸着電極3が誘電体フィルム2の少なくとも片面に形成されて金属化フィルム1が構成されている。
【0045】
ここまでの構成説明は
図8に示す従来例改良案の構成と同じものに相当するが、本発明ではさらに、次のような構成を採用している。以下、本実施例での新構成(第2の絶縁スリット4bおよび第2のヒューズ6b)について説明する。
【0046】
すなわち、各小面積電極列領域Bi(i=1,2,3)は、従来例改良案相当の第1の絶縁スリット4によってフィルム長手方向Xで区画された複数の分割電極5Bを基本とした上で、その分割電極5Bにおいて、さらにフィルム幅方向Yの中間部で第2の絶縁スリット4bと金属蒸着膜による第2のヒューズ6bとが配列されて、各分割電極5Bがフィルム幅方向Yで2つに分かれた一対の細分化小電極5b,5bに構成され、フィルム幅方向Yにおける一対の細分化小電極5b,5bどうしは第2のヒューズ6bを介して電気的に接続された構成となっている。第2の絶縁スリット4bがフィルム長手方向Xに伸びるように形成され、第2の絶縁スリット4bは各分割電極5Bのフィルム長手方向Xの中央部に切れ目を有し、当該切れ目における金属蒸着膜によって第2のヒューズ6bが形成されている。第2の絶縁スリット4bは、第1の絶縁スリット4の主体をなす所定長さの線分の中央においてフィルム長手方向Xに沿って両側に短く突出する。
【0047】
そして、第1のヒューズ6と第2のヒューズ6bとのヒューズ幅の大小関係について、第2のヒューズ6bのヒューズ幅W2は第1のヒューズ6のヒューズ幅W1以下に設定されている(W2≦W1)。なお、絶縁破壊に至った細分化小電極5bを大面積電極列領域Aiから切り離す動作と、隣接する細分化小電極5bから切り離す動作とを確実にするためには、第2のヒューズ6bのヒューズ幅W2は第1のヒューズ6のヒューズ幅W1よりも小さくすること(W2<W1)が好ましく、 ヒューズ幅W1に対するヒューズ幅W2の比率を0.7〜1未満に設定することがさらに好ましい。
【0048】
上記のように誘電体フィルム2に蒸着電極3が形成されて構成された金属化フィルム1を2シート用意し、
図3に示すように、両シートの金属化フィルム1,1どうしを180°反転状態で一方の金属化フィルムの電極引き出し部7が他方の金属化フィルムの蒸着電極と重ならないように上下2層に重ね合わせる。上層の金属化フィルム1の側縁に沿う1列目の大面積電極列領域A1に対し、その直下に下層の金属化フィルム1の4列目の小面積電極列領域B4が対向する。電極引き出し接続部7は絶縁マージン8に対向する。上層の金属化フィルム1における2列目、3列目および4列目の大面積電極列領域A2,A3,A4はそれぞれ下層の金属化フィルム1における3列目、2列目および1列目の小面積電極列領域B3,B2,B1に対向する。また、上層の金属化フィルム1における1列目、2列目および3列目の小面積電極列領域B1,B2,B3はそれぞれ下層の金属化フィルム1における4列目、3列目および2列目の大面積電極列領域A4,A3,A2に対向する。上層の金属化フィルム1の4列目の小面積電極列領域B4に対し、その直下に下層の金属化フィルム1の側縁の1列目の大面積電極列領域A1が対向している。絶縁マージン8は電極引き出し接続部7に対向する。要するに、一方の金属化フィルムにおける小面積電極列領域は他方の金属化フィルムにおける大面積電極列領域に対し対向している。
【0049】
ここで、一方の金属化フィルムにおける大面積電極列領域と他方の金属化フィルムにおける大面積電極列領域とが対向すると短絡破壊するおそれがあるため、一方の金属化フィルムにおける大面積電極列領域のすべてが他方の金属化フィルムにおける小面積電極列領域(一対の細分化小電極)に対向することが好ましい。なお、一方の金属化フィルムにおける大面積電極列領域と他方の金属化フィルムにおける大面積電極列領域とが対向するのを回避する観点からは、一方の金属化フィルムにおける大面積電極列領域のすべてが他方の金属化フィルムにおける細分化小電極(一対の細分化小電極のいずれか一方)に対向していればよい。
【0050】
上記のように上層の金属化フィルム1と下層の金属化フィルム1とを重ね合わせた状態で、
図4に示すように、巻芯9の外周部に多重に巻回し、さらに最外層に外装フィルム10を巻回した上でプレスによって図示のように細長小判状に扁平化し(扁平率が0.7以上)、金属化フィルム多層体11を得る。さらに、金属化フィルム多層体11の軸方向両端において金属溶射により電極引き出し部(メタリコン)12,12が形成され、高扁平の金属化フィルムコンデンサ素子Cを得る。電極引き出し部12,12は軸方向両側の電極引き出し接続部7,7に電気的に接続される。
【0051】
なお、上記のように2枚重ねにした長尺な金属化フィルム1,1を巻回する代わりに、2枚重ねの短尺な金属化フィルム1,1を積層するタイプのコンデンサ素子もある。
【0052】
上記のように本実施例においては、分割電極5Bを小面積化するに際して、第1の絶縁スリット4で区画された分割電極5B自体においてその内部に新たに第2の絶縁スリット4bと第2のヒューズ6bを設けることにより一対の細分化小電極5b,5bを作っている。個々の細分化小電極5bの面積は元の分割電極5Bの面積の約2分の1であって、小面積化が実現されている。その結果、細分化小電極5bの絶縁破壊発生時に蒸着金属の飛散によって分断され無効化される電極面積は、元の分割電極5Bの場合に比べて減少することになり、もって静電容量の減少が抑制され、耐電圧性能が向上する。
【0053】
また、分割タイプの電極の数を倍増するに当たり、基礎とする分割電極5B自体の内部で2分割(細分化)するので、第2のヒューズ6bの増加に関して、1つの分割電極5B当たり1つのみの第2のヒューズ6bの増加で済ませることができる。すなわち、大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットの数を倍増する従来例改良案(
図8)の場合の少なくとも2つのヒューズ増加に比べて半減できる。このようにしてヒューズ数の増加を抑制できるため、等価直列抵抗(ESR)の増加を抑制でき、また温度上昇を抑えることができる。
【0054】
さらに、分割タイプの電極の数を倍増するに当たり、基礎とする分割電極5B自体の内部で2分割(細分化)するので、増加する第2の絶縁スリット4bの数は、1つの分割電極5B当たり1つのみで済む。すなわち、大面積電極列領域・小面積電極列領域のセットの数を倍増する従来例改良案(
図8)の場合の少なくとも4つの絶縁スリット増加に比べて4分の1へ削減できる。その結果、第2の絶縁スリット4bの数の増加ひいては第2の絶縁スリット4bの面積の増加が抑制される。すなわち、有効電極面積の減少を抑制し、コンデンサ素子の小型化を進めることが可能となる。
【0055】
また、上記の実施例においては、第2のヒューズ6bのヒューズ幅W2を第1のヒューズ6のヒューズ幅W1以下に設定しており、これにより次のような利点がさらに発揮される。
【0056】
ある細分化小電極5bに絶縁破壊が発生したとき、その細分化小電極5bに対して隣接する電極領域から電流を流入させるヒューズについては、隣接する大面積電極列領域Ai(i=1,2…)との境界にある第1のヒューズ6と隣接するもう一つの細分化小電極5bとの境界にある第2のヒューズ6bとがある。分割電極5Bを細分化して細分化小電極5b,5bを形成するに当たり、もし、得られた一対の細分化小電極5b,5bどうし間に第2のヒューズ6bを形成しないで、両細分化小電極5b,5bが完全に分断されているとすると、個々の細分化小電極5bでは面積減少のためにエネルギーが少なくなり、絶縁破壊の際にヒューズ動作が起きにくくなり、安全性の低下を招来する。この現象は高温になるほど顕著に現れる。そこで、隣接する細分化小電極5bからエネルギーをもらってヒューズ動作が起きやすくするために、隣接する細分化小電極5b,5bどうし間の第2の絶縁スリット4bに切り目を入れて、そこを第2のヒューズ6bとする。絶縁破壊を起こした細分化小電極5bに対しては、大面積電極列領域Ai(i=1,2…)から第1のヒューズ6を介して電流が流入するとともに、隣接する細分化小電極5bから第2のヒューズ6bを介して電流が流入する。そして、第1のヒューズ6の部分においても第2のヒューズ6bの部分においても絶縁破壊の細分化小電極5bを切り離すことで、絶縁を回復する。ここにおいて、容量の大きな大面積電極列領域Ai(i=1,2…)に臨む第1のヒューズ6のヒューズ幅W1を大きくし、容量の小さな隣接する細分化小電極5bに臨む第2のヒューズ6bのヒューズ幅W2を小さくしてあるので、絶縁破壊の細分化小電極5bを大面積電極列領域Ai(i=1,2…)から切り離す動作と隣接する細分化小電極5bから切り離す動作とをともに確実なものにすることが可能になる。
【0057】
大面積電極列領域Ai(i=1,2…)の構成については、別態様として、
図5に示すように構成してもよい。すなわち、フィルム長手方向Xに沿って、小面積電極列領域Bi(i=1,2…)の分割電極5Bのピッチよりも大きなピッチの相対的により大面積分割状態で複数の分割電極5Aに区画されている。詳しくは、2列目、3列目および4列目の大面積電極列領域A2,A3,A4は、フィルム幅方向Yに伸びる直線状の絶縁スリット4cによってフィルム長手方向Xで区画されるが、この直線状の絶縁スリット4cのピッチは小面積電極列領域Biにおける第1の絶縁スリット4のピッチよりも大きなものとなっている。ここでは一例として、分割電極5Bの6ピッチ分が1ピッチ分の分割電極5Aに相当している。直線状の絶縁スリット4cは第1の絶縁スリット4の中央線分の延長線として形成されている(なお、これのみに限定されない)。直線状の絶縁スリット4cの配列は、2列目と3列目とで分割電極5Bの3ピッチ分ずつずれており、また、3列目と4列目とでも分割電極5Bの3ピッチ分ずつずれている。結果として、2列目と4列目は同相関係となっている。なお、直線状の絶縁スリット4cの配列はこれのみに限定されない。1列目の大面積電極列領域A1については、先の実施例と同様に、フィルム長手方向Xに連続した領域となっている。
【0058】
分割電極5Aの面積としては上記以外にも可能であって、最小面積としては1つの細分化小電極5bの面積より大きければよく、より好ましくは一対の細分化小電極5b,5bの合計面積より大きいものがよい。
【0059】
以上をまとめると、コンデンサ素子用の金属化フィルムに関して、小面積電極列領域Bi(i=1,2…)における各分割電極5Bをそれ自身の内部で分割し一対の細分化小電極5b,5bを形成した上で、両者を第2のヒューズ6bを介して接続した構成としたので、等価直列抵抗(ESR)の増加と有効電極面積の減少を抑制しつつ、耐電圧性能、保安性能を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、コンデンサ素子用の金属化フィルムに関して、その耐電圧性能および保安性能を向上させる上で、等価直列抵抗(ESR)の増加と有効電極面積の減少とを抑制する技術として有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 金属化フィルム
2 誘電体フィルム
3 蒸着電極
4 第1の絶縁スリット
4b 第2の絶縁スリット
5B 分割電極
5b 細分化小電極
6 第1のヒューズ
6b 第2のヒューズ
7 電極引き出し接続部
8絶縁マージン
Ai(i=1,2…) 大面積電極列領域
Bi(i=1,2…) 小面積電極列領域
X 誘電体フィルム長手方向
Y 誘電体フィルム幅方向