(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遮蔽カーテンは、切り込み同士の間隔が広く、帯幅が大きいと、X線の漏れが少ないが、通り抜けの抵抗が増大し、被検査物の搬送性が劣る。これに対し、帯幅が小さいと、被検査物が通過しやすく、搬送性がよいが、切り込みの数が増すことからもX線が漏れやすくなる。また、帯幅が小さい遮蔽カーテンは、捩れが生じやすく、破損、例えば切れてしまうことがある。遮蔽カーテンが破損すれば、商品に異物の混入する虞が生じる。さらに、帯幅が小さい遮蔽カーテンは、経時変化によって素材のクセが出たり、繰り返し被検査物に摺接することなどにより、平滑な状態から捩れが生じ易く、その結果、切り込み部分で間隙が発生してX線が漏洩しやすくなる。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、被検査物の良好な搬送性とX線遮蔽性を両立させることができる遮蔽カーテンを具備したX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のX線検査装置1は、X線発生手段2及びX線検出手段8を内部に収納して漏洩X線を遮蔽する筐体10と、
被検査物7を前記筐体10の一端の入口11から他端の出口12まで搬送する搬送手段4と、
前記筐体10の内部で前記搬送手段4の上方に吊設され、X線3を遮蔽する物質を有する可撓性シート状部材よりなり、前記入口11及び前記出口12からX線3が漏洩するのを防止する複数枚の遮蔽カーテン20と、
を備え、
前記遮蔽カーテン20は、上部が幅方向に帯状となって切れ目の無い基端部25とされ、
該基端部25の下側が、下端縁21から垂直方向に前記基端部25まで到達する長さAを有し、前記幅方向に沿って設けられる複数の第1の切り込み22と、
互いに隣り合う前記第1の切り込み22の間に設けられ、前記下端縁21から垂直方向に沿って、前記第1の切り込み22よりも短い長さBを有する少なくとも1以上の第2の切り込み23と、
を具備することを特徴とする。
【0008】
このX線検査装置1では、第1の切り込み22が、可撓性シート状部材の下端縁21から上部の基端部25までの長さAを有する。第2の切り込み23は、可撓性シート状部材の下端縁21から、第1の切り込み22よりも短い長さBを有する。すなわち、遮蔽カーテン20は、可撓性シート状部材の上部,中部,下部において、分割数を異ならせる形状となり、下方側がより狭い幅となる暖簾形状を形成している。これによって、遮蔽カーテン20は、上部を基端部25とし、中部となる第2の切り込み23よりも上方の第1の切り込み同士の間が、幅の広い部分である幅広帯部26となる。また、下部となる第2の切り込み23同士の間及び第1の切り込み22と第2の切り込み23との間となる全ての切り込み22,23の各間は、幅広帯部26よりも横幅が狭い幅狭帯部27となる。つまり、幅広帯部26の下方が、第2の切り込み23によって分けられた複数の幅狭帯部27となる。幅広帯部26は、被検査物7の通過時に、幅狭帯部27に比べて剛性が高いことで、少ない撓みで幅狭帯部27の撓みを許容する。これにより、幅広帯部26は、幅狭帯部27を撓みやすくしながら、漏洩X線を抑制できる。一方、幅狭帯部27は、被検査物7の通過時に、幅広帯部26に比べ剛性が低いことで、容易に大きく撓む。これにより、被検査物7の通過時に、幅広帯部26と幅狭帯部27とが共働して、搬送抵抗を抑制しながら、帯部間、特に、幅広帯部26同士の間の開きを小さく抑制することが可能となる。
【0009】
本発明の請求項2記載のX線検査装置1は、請求項1記載のX線検査装置1であって、
予め判っている前記被検査物7の高さhよりも、前記第2の切り込み23の長さBを長く設定し構成されていることを特徴とする。
【0010】
このX線検査装置1では、被検査物7の通過時に、被検査物7が第2の切り込み23によって形成される幅狭帯部27のみに干渉する。被検査物7は、幅広帯部26には直接には干渉しない。従って、幅広帯部26は、被検査物7に直接当たって撓み、幅広帯部26同士の間が被検査物7の当接によって開くことがない。そして、幅狭帯部27の撓みで許容できない撓み分を幅広帯部26が撓むことで被検査物7の通過を可能とし、幅広帯部26は必要以上に撓むことがない。これにより、幅広帯部26間が大きく開くことによる漏洩X線の発生が抑制される。
【0011】
本発明の請求項3記載のX線検査装置1は、請求項1または2記載のX線検査装置1であって、
前記第1の切り込み22と前記第2の切り込み23とが交互に設けられていることを特徴とする。
【0012】
このX線検査装置1では、第1の切り込み22と第2の切り込み23とが交互となることで、幅広帯部26の下部が2つの幅狭帯部27に分けられる構成となる。下部の幅狭帯部27は、外側縁部28が、幅広帯部26の外側縁部28と連続する。つまり、幅狭帯部27は、幅広帯部26と共有する外側縁部28を有する。これにより、遮蔽カーテン20は、幅狭帯部27が2つ以上で形成された場合の幅広帯部26と共有する外側縁部28を有しない幅狭帯部27が形成されない。その結果、幅狭帯部27は、全てが適度な剛性、すなわち捩れ難さを有して形成されることになる。
【0013】
本発明の請求項4記載のX線検査装置1は、請求項1,2,3のいずれか1つに記載のX線検査装置1であって、
前記第2の切り込み23の長さBが、前記第1の切り込み22の長さAの略半分であることを特徴とする。
【0014】
このX線検査装置1では、幅広帯部26に、適度な腰、すなわち幅狭帯部27の撓みを適度に許容する弾性機能を付与することが可能となる。また、幅狭帯部27に、適度な剛性を付与することが可能となる。これに対し、第2の切り込み23の長さBが、第1の切り込み22の長さAに近い長さ、或いは同じになるような場合には、幅狭帯部27が捩れやすくなり、且つ幅広帯部26に腰がなくなる。また、第2の切り込み23の長さBが、第1の切り込み22の長さAよりも小さすぎる場合には、幅狭帯部27の剛性が高くなりすぎ、幅広帯部26の撓み量が大きくなって漏洩X線の抑制作用が低下する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る請求項1記載のX線検査装置によれば、遮蔽カーテンに第1の切り込みよりも短い第2の切り込みを設けたことで、幅の広い部分の先端である下端縁側に幅の狭い部分を形成した形状となり、被検査物が搬送され通過する際に、幅の広い部分は、幅の狭い部分に比べ剛性を高く保たれることとなって、少ない撓みで幅の狭い部分の撓みを許容し、これにより、幅の狭い部分を撓みやすくしながら、漏洩X線を抑制することが可能となる。また、第2の切り込みで形成されることとなる幅の狭い部分は、被検査物の通過時に、幅の広い部分に比べて幅が狭いことで剛性が低くなり、容易に大きく撓むことが可能となって、これにより、被検査物の通過する際に、幅の広い部分と幅の狭い部分とが共働して、搬送抵抗を抑制しながら、幅の広い部分同士の間の開きを小さく抑制することが可能となる。すなわち、被検査物の通過時に、被検査物への抵抗を減らして被検査物の搬送性を向上させ、且つX線の漏洩を防ぎ遮蔽性を良好とすることができる。
【0016】
本発明に係る請求項2記載のX線検査装置によれば、被検査物の通過時に、被検査物が第2の切り込みによって形成される幅の狭い部分のみに干渉することとなり、この第2の切り込みよりも上方の幅の広い部分には直接には干渉しないこととなって、幅の広い部分は、幅の広い部分同士の間が被検査物の当接によって開くことがなく、これにより、幅の広い部分を形成する第1の切り込みの部分では、第2の切り込みでの被検査物による撓みに追従するのみで大きく開くことがなく漏洩X線の発生を抑制することが可能となる。また、第2の切り込みが第1の切り込みの数よりも多いことからも、被検査物に当接する幅の狭い部分が容易に撓むこととなり、被検査物の通過に抵抗が小さくなり、搬送性を向上させることが可能となる。
【0017】
本発明に係る請求項3記載のX線検査装置によれば、第1の切り込みと第2の切り込みとが交互となることで、幅の広い部分の下部が2つの幅の狭い部分に分けられる構成となり、幅の狭い部分が2つ以上の多数に分けられる場合に比べて、幅の狭い部分の捩れが生じ難くなる。また、切り込みの長さが長・短の交互で繰り返されることから製造が容易なものとなる。
【0018】
本発明に係る請求項4記載のX線検査装置によれば、第1の切り込みにより形成される幅の広い部分に、適度な腰、すなわち第2の切り込みにより形成される幅の狭い部分の撓みを適度に許容する弾性機能を付与することが可能となり、第2の切り込みで形成される幅の狭い部分を捩れにくくし、且つ第1の切り込みで形成される幅の広い部分の撓み量を小さくして、漏洩X線を抑制できる。このことから、撓み易い幅長と長さに形成される第2の切り込みによる幅の狭い部分と、捩れ難い幅長と長さに形成される第1の切り込みによる幅の広い部分とがバランスよく配置されて構成され、切り込みによる捩れを防ぎつつ被検査物の搬送性を良好とし、且つ切り込みの数を増やすことなくX線の漏洩を防ぐことを可能としている。また、切り込みの長さを長・短とし、その比である、第1の切り込み:第2の切り込みをおよそ2:1としていることから遮蔽カーテンの幅方向にわたっての撓み易さが偏ることがなく、搬送性やX線遮蔽性を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係るX線検査装置の概略斜視図、
図2は
図1に示したX線検査装置の正面図、
図3は
図2のX線検査装置を入口側から見た側面図である。
本実施形態に係るX線検査装置1は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの各品種の被検査物内等の異物、例えば金属,骨,ガラス,石,合成樹脂材等を検出するために好適に用いられる。このX線検査装置1の上側には、X線発生手段であるX線発生部2が設けられている。X線発生部2は、装置本体の下側に向けてX線3を照射する。
【0021】
X線検査装置1の下側には、搬送手段である搬送部4が設けられている。搬送部4は、複数のローラ5と、これらのローラ間に掛け回された搬送ベルト6を有している。搬送部4は、装置本体に取り付けられたモータ等の駆動手段によりいずれかのローラ5が駆動され、これによって搬送ベルト6が循環して移動し、上側の搬送ベルト6に載った被検査物7が移動する。X線3は、搬送ベルト6の略中央に照射され、このX線3の面は、搬送ベルト6による被検査物7の移動方向と互いに交差(直交)している。
【0022】
被検査物7を搬送する上側の搬送ベルト6の下面側には、X線検出手段であるX線検出部8が設けられている。X線検出部8は、搬送ベルト6の幅方向に平行であって、照射されたX線3の面に沿うスリット9を有している。このスリット9に沿ってX線検出部8の内部には、多数のX線検知素子が配置されている。
【0023】
X線検査装置1では、X線発生部2、X線検出部8及び搬送部4は、X線3の漏洩を防ぐように全体として防護構造の筐体10で覆われている。この防護構造の筐体10において、搬送部4の搬送方向の両端には、被検査物7を通過させる入口11及び出口12が開口して設けられている。また、筐体10の入口11と出口12の間には、搬送方向に沿って設けられた正面開口13を開閉可能な遮蔽構造の正面扉14が設けられている。
【0024】
筐体10の内部において、搬送ベルト6の上方には、搬送方向に沿って複数枚の遮蔽カーテン20が所定の間隔で取り付けられている。遮蔽カーテン20は、鉛などのX線3の吸収量が高くX線3の遮蔽効果を有する材料を含んで構成されたシート状の部材であり、その面が筐体10の入口11及び出口12からX線3が漏洩しないように、被検査物7の搬送方向(図中矢線G)と直交するように配置されている。
【0025】
以上の構成において、X線発生部2からX線3を照射し、被検査物7を搬送部4で搬送すれば、被検査物7がX線3の面を通過する。すなわち、X線3は被検査物7と搬送ベルト6を透過し、スリット9を介してX線検出部8に入射して検出される。X線検出部8が得た信号は、図示しない制御手段で処理され、被検査物に含まれる異物や欠陥の有無等の検査が行われ、検査結果が、表示部等で所定の表示が行なわれる。
【0026】
図4は遮蔽カーテンの構成図である。
ところで、X線遮蔽用の遮蔽カーテン20は、搬送部4の上方で、搬送方向(
図2中矢線G)に沿って複数箇所に天板部15(
図5参照)から吊り下げ配置されている。遮蔽カーテン20は、本実施の形態では、搬入側となる入口11の近傍と、搬出側となる出口12の近傍とに、搬送ベルト6の搬送方向Gに所定間隔を隔てて複数枚、例えば
図2に示す本実施形態では四枚、吊り下げ配置されている。それぞれの遮蔽カーテン20の配置間隔Pは、被検査物7の搬送方向Gの長さLよりも大きく設定されている。これによって、X線検査装置1は、X線3の照射される部分に対して、入口11側と出口12側とにそれぞれ二重の遮蔽構造を構成している。
【0027】
この遮蔽カーテン20は、X線3を遮蔽する物質を有する可撓性シート状部材よりなる。可撓性シート状部材は、X線3を遮蔽する鉛粉を混入したゴムシート等で構成され、装置内部のX線3が入口11や出口12から漏れることを防止する。この他、可撓性シート状部材は、鉛粉を混入した樹脂シートによって形成されてもよい。また、X線3を遮蔽する物質としては、鉛の他、硫酸バリウム等が混入されてもよい。さらに、可撓性シート状部材は、鉛を練り込んだ樹脂シートの面に、樹脂シートを張り合わせた多層構造としてもよい。この場合、外側の樹脂シートに代えて繊維素材樹脂シートや織布が用いられてもよい。
【0028】
遮蔽カーテン20は、X線発生部2から発生したX線3を遮蔽し外部へ漏洩させないために、X線3が照射されるX線発生部2とX線検出部8との間を通過する被検査物7に当接するように設けられている。なお、遮蔽カーテン20は、下端縁21が搬送ベルト6に接触するように配置される。
【0029】
この遮蔽カーテン20は、第1の切り込み22と、第2の切り込み23と、を有し、上部が幅方向に帯状となって切れ目のない基端部25とされている。第1の切り込み22は、可撓性シート状部材の下端縁21から垂直方向に沿って、上端縁24に到達せず、基端部25まで到達する長さAを有する。つまり、可撓性シート状部材は、第1の切り込み22によって分断されず、基端部25によって一体に接続され、この基端部25の下側に第1の切り込み22が形成されている。また、第1の切り込み22は、被検査物7の搬送方向Gに交差する横方向(
図4の左右方向)である幅方向に複数設けられる。具体的には、第1の切り込み22の長さAは、150mm程度に設定される。すなわち、搬送部4としては、高さがおよそ150mmとなる。
【0030】
一方、第2の切り込み23は、遮蔽カーテン20の隣り合う第1の切り込み22の間に少なくとも1以上で設けられる。第2の切り込み23は、下端縁21から垂直方向に沿って、第1の切り込み22よりも短い長さBに形成される。本実施形態において、第2の切り込み23の長さBは、搬送される被検査物7の高さhよりも長く設定されている。
本実施形態においては、第1の切り込み22と第2の切り込み23とは、交互に設けられている。
【0031】
また、本実施形態において、第2の切り込み23の長さBは、第1の切り込み22の長さAの略半分である。すなわち、第2の切り込み23の長さBは、略A/2となる。
より具体的には、隣接する第1の切り込み22の間隔w1は、例えば20mmに設定される。また、第1の切り込み22と第2の切り込み23との間、或いは隣接する第2の切り込み23の間となる全ての切り込み22,23の各間の間隔d1は、10mmに設定される。従って、本実施形態では、20mm毎に長い第1の切り込み22が位置し、その中間位置に短い第2の切り込み23が位置する。
【0032】
遮蔽カーテン20は、上記した第1の切り込み22の長さAが、入口11及び出口12の開口高さにほぼ一致するように設定される。すなわち、入口11及び出口12の開口上端16が、第1の切り込み22の長さAの上端になる。また、遮蔽カーテン20は、横幅方向の長さCが、入口11及び出口12の横方向の開口幅とほぼ一致する。具体的には、横方向の長さCは、240mm程度に設定される。なお、遮蔽カーテン20の第1の切り込み22の長さAまでの面積(A×C)、つまり筐体10側に固定される部分である基端部25を除いた遮蔽カーテン20の面積は、入口11及び出口12の開口面積よりもやや大きく設定される。これは、筐体10の内外を通ずる部分である入口11及び出口12の開口部分に対して、それを覆いオーバーラップするような配置位置となり、遮蔽カーテン20と筐体10との隙間からの漏洩X線を抑制するためである。
【0033】
なお、遮蔽カーテン20の全幅長や全高さは、X線検査装置1の入口11、出口12の大きさに応じて変えられるものである。
【0034】
図5は
図4に示した遮蔽カーテンの取付構造例を示す装置入口近傍の拡大図である。
遮蔽カーテン20は、例えば基端部25を、天板部15と平行にして取り付けることができる。X線検査装置1は、複数枚、図例では入口11側または出口12側の2枚の遮蔽カーテン20を一体に固定したカーテンユニット30として取り付けることができる。カーテンユニット30は、板状或いは枠状の共通の基体31の下面に複数枚の遮蔽カーテン20が所定の姿勢で所定の間隔をおいて連結され垂下される。一方、筐体10の天板部15には、搬送部4の上方の所定位置に、カーテンユニット30の基体31の前後縁部32,32に対応して、一対のレール33,33がそれぞれ固定されている。レール33は、断面L字形で前後縁部32に対応して内向きにして取り付けられる。
【0035】
X線検査装置1は、正面扉14を開いて正面開口13を開放し、カーテンユニット30の前後縁部32をレール33に係合させ、カーテンユニット30を筐体内に押し込む。カーテンユニット30はスライドして筐体10内に挿入され、所定の位置に設置される。取り外しはこれと逆の手順で行なうことができ、すなわちメンテナンスや交換作業を容易なものとしている。
【0036】
カーテンユニット30において、遮蔽カーテン20は、基体31に下面から基端部25の面を当てて、その下から帯状固定板34を止着、例えば螺着し、すなわち板面同士で挟着するように固定する。遮蔽カーテン20は、略水平姿勢となる基端部25から下端側が自重で湾曲するように逆さJ字状となって固定される。このように固定された遮蔽カーテン20は、被検査物7が当たることによる撓み方向が、固定部分(基端部25)の湾曲方向と逆になる。つまり、被検査物7の移動に沿う方向が、湾曲を解消する方向となる。これにより、遮蔽カーテン20は、搬送抵抗を減らすことができる。また、その湾曲方向によって、被検査物7の通過後に遮蔽カーテン20が元の位置に戻る際に逆方向に振れるのを抑止する。
【0037】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係るX線検査装置1では、第1の切り込み22が、可撓性シート状部材の下端縁21から基端部25まで到達する長さを有する。第2の切り込み23は、可撓性シート状部材の下端縁21から、第1の切り込み22よりも短い長さを有する。これによって、遮蔽カーテン20は、基端部25の下側で第2の切り込み23よりも上方の中部である第1の切り込み同士の間が、幅の広い部分として幅広帯部26(
図4参照)となる。また、第2の切り込み同士の間と第1の切り込みと第2の切り込みとの間は、幅広帯部26よりも横幅が狭い幅の狭い部分として幅狭帯部27となる。つまり、幅広帯部26の下方となる下部が、第1の切り込み22と第2の切り込み23によって分けられた複数の幅狭帯部27(
図4参照)となる。すなわち、遮蔽カーテン20は、可撓性シート状部材の上部,中部,下部において、分割数を異ならせる形状となり、下方側がより狭い幅となる暖簾形状を形成している。本実施形態では、これら第1の切り込み22と第2の切り込み23とは交互に設けられており、このことから、第1の切り込み22の部分では切り込みの数が少なく、第2の切り込み23の部分では切り込みの数が多いこととなって、幅広帯部26の2倍の数の幅狭帯部27を備える構成となる。
【0038】
幅広帯部26は、被検査物7の通過時に、幅狭帯部27に比べ剛性が高いことで、少ない撓みで幅狭帯部27の撓みを許容する。これにより、幅広帯部26は、幅狭帯部27を撓みやすくしながら、漏洩X線を抑制できる。一方、幅狭帯部27は、被検査物7の通過時に、幅広帯部26に比べ剛性が低いことで、容易に大きく撓む。これにより、被検査物7の通過時に、幅広帯部26と幅狭帯部27とが共働して、搬送抵抗を抑制しながら、帯部間、特に、幅広帯部同士の間の開きを小さく抑制することが可能となる。
【0039】
また、X線検査装置1では、被検査物7の高さhよりも第2の切り込み23の長さBが大きい。このため、被検査物7の通過時に、被検査物7が第2の切り込み23によって形成される幅狭帯部27のみに干渉する。被検査物7は、幅広帯部26には直接には干渉しない。従って、幅広帯部26は、被検査物7に直接当たって撓み、幅広帯部26同士の間が開くことがない。これにより、幅広帯部26間が大きく開くことによる漏洩X線の発生が抑制される。
【0040】
また、X線検査装置1では、第1の切り込み22と第2の切り込み23とが交互となることで、幅広帯部26の下部が2つの幅狭帯部27に分けられる。下部の幅狭帯部27は、外側縁部28が、幅広帯部26の外側縁部28と連続する。つまり、幅狭帯部27は、幅広帯部26と共有する外側縁部28を有する。これにより、遮蔽カーテン20は、幅狭帯部27が2つ以上で形成された場合の幅広帯部26と共有する外側縁部28を有しない幅狭帯部27が形成されない。その結果、幅狭帯部27は、全てが適度な剛性、すなわち捩れ難さを有して形成されることになる。このように、遮蔽カーテン20は、上部の幅広帯部26が下部において2つの幅狭帯部27に分けられることで、幅狭帯部27が2つ以上の多数に分けられる場合に比べ、幅狭帯部27に捩れが生じにくくなる。
【0041】
さらに、X線検査装置1では、第2の切り込み23の長さBが、第1の切り込み22の長さAの略半分である。これにより、幅広帯部26に、適度な腰、すなわち幅狭帯部27の撓みを適度に許容する弾性機能を付与することが可能となる。また、幅狭帯部27に、適度な剛性を付与することが可能となる。これに対し、第2の切り込み23の長さが、第1の切り込み22の長さAの略半分よりも大きすぎる場合には、幅狭帯部27が捩れやすくなり、且つ幅広帯部26に腰がなくなる。また、第2の切り込み23の長さが、第1の切り込み22の長さAの略半分よりも小さすぎる場合には、幅狭帯部27の剛性が高くなりすぎ、幅広帯部26の撓み量が大きくなって漏洩X線の抑制作用が低下する。その結果、幅狭帯部27を捩れにくくし、且つ幅広帯部26の撓み量を小さくして、漏洩X線を抑制できる。
【0042】
このように、X線検査装置1では、幅広帯部26と幅狭帯部27の共働によって被検査物7の搬送性が良好となる。搬送性が良好となることで、被検査物7は、遮蔽カーテン20によって押し戻されるようなことがなく、すなわち遮蔽カーテン20の自重や真直な吊り下げ形状に復帰しようとする力などの影響を受け難く、抵抗なく通過できる。コンベアベルト上で被検査物7が滑ってしまうと、検査において誤差、不具合が発生する。例えば重量の軽いものや、背の高い被検査物7は、遮蔽カーテン20の部分で、ベルト上を滑ってしまうことがある。被検査物7が滑って移動してしまうと、X線検査の後段の選別装置において、選別の動作タイミングがずれてしまう虞もある。しかし、本構成による遮蔽カーテン20では、幅狭帯部27が形成されていることで、被検査物当接時の可撓性、追従性が向上し、被検査物7の通過の妨げにならない。その結果、被検査物7がベルト上を滑らずに移送され、検査精度や選別精度の低下を招くことがない。
【0043】
これに加え、遮蔽カーテン20は、幅広帯部26によって、X線3の漏洩を防ぐことができる。幅広帯部26は、被検査物7の通過時に隙間が発生しにくく、また幅広帯部26を形成する第1の切り込み22の数が少ないことからもX線漏洩を抑制する。
また、遮蔽カーテン20は、幅広帯部26と幅狭帯部27とが共働することで、捩れが発生しにくく、このことからもX線3の漏洩を抑制することができる。さらに、遮蔽カーテン20は、捩れが起きにくいことで、耐久性が向上する。
【0044】
次に、上記した遮蔽カーテン20の変形例を説明する。
図6は第1の変形例に係る遮蔽カーテンの構成図である。
第1の変形例に係る遮蔽カーテン40は、隣接する第1の切り込み22の間に、短い第2の切り込み23が2つ設けられる。具体的には、隣接する第1の切り込み22の間隔w2は、例えば30mmに設定される。隣接する第2の切り込み23の間隔d2は、10mmに設定される。つまり30mm毎に3つの幅狭帯部27が位置する。
【0045】
この他、本発明に係るX線検査装置1は、図示しないが、遮蔽カーテンにおける第1の切り込み22の長さAと第2の切り込み23の長さBとの長短の組合せは、長・短・長・短・短・長・…など、変則的なものであってもよい。すなわち、遮蔽カーテンにおける第1の切り込み22と第2の切り込み23との長・短(A・B)の組合せは、被検査物7の形状や状態によって適宜に変えることも可能である。
【0046】
図7は第2の変形例に係る遮蔽カーテンの構成図である。
第2の変形例に係る遮蔽カーテン50は、第1の切り込み22の長さAを、可撓性シート状部材の下端縁21から上端縁24或いは上端縁近傍までの長さの略半分とし、第2の切り込み23の長さBを、第1の切り込み22の長さAの略半分、すなわち、可撓性シート状部材の下端縁21から上端縁24或いは上端縁近傍までの長さの略1/4とされ、可撓性シート状部材の略上半部が切り込みの無い基端部25となる。この例においても、遮蔽カーテン50は、可撓性シート状部材の上部(基端部25),中部(幅広帯部26),下部(幅狭帯部27)において、分割数を異ならせる形状となり、下方側がより狭い幅となる暖簾形状を形成することとなる。なお、この遮蔽カーテン50を取り付け固定する際には、上部である基端部25の上端縁24に沿う帯状の一部(
図7中二点鎖線)29を固定することとすればよい。
【0047】
この遮蔽カーテン50によれば、X線検査装置1の入口11及び出口12の開口高さに比べ各切り込み22,23が小さく設定されることとなり、このことから、開口高さに比べて高さhの小さい薄い形状の被検査物7に対応させるのに有効となる。すなわち、上述したようにX線検査装置1の入口11、出口12の大きさに応じて遮蔽カーテン20を変更可能としたが、対象である被検査物7の大きさに応じて遮蔽カーテン50を取り替えることも可能となり、X線検査装置1としてより汎用性を得ることができる。
【0048】
図8は第3の変形例に係る遮蔽カーテンの構成図である。
この第3の変形例に係る遮蔽カーテン60は、上述した各例のように1枚のシート状部材に下端縁21から切り込み22,23を設け各帯部26,27を形成する構成と異なり、複数の縦長な短冊状のシート状部材よりなる帯状部材51と、この複数の帯状部材51を一体化するフレーム材25bとで構成される。各帯状部材51には、下部に切り込みが形成され、この切り込みは、上述した各例における第2の切り込み23に相当し、帯状部材51の長手方向に沿う方向である下端縁21から垂直方向に形成され、遮蔽カーテン60としての第2の切り込み23となる。そして、複数の帯状部材51を縦長状態とし短幅な横幅方向に複数並列させて、各上端25a側を、横方向に長い1つの板材等よりなるフレーム材25bで固定し、これら複数の帯状部材51を一体化して、遮蔽カーテン60を構成している。
【0049】
この遮蔽カーテン60では、各帯状部材51を一体的に固定するフレーム材25bが上部となり遮蔽カーテン60としての基端部25となる。また、フレーム材25bの下縁から下方では各帯状部材51の左右側縁22aが隣り合うこととなり、この側縁22a同士が、上記各例における第1の切り込み22に相当しており、遮蔽カーテン60としての第1の切り込み22となる。そして、これら第1の切り込み22の間に、上記した第2の切り込み23が配置形成されることとなる。なお、フレーム材25bの下縁から各帯状部材51の下端縁21までの長さが第1の切り込み22の長さAとなり、第2の切り込み23の長さBは、この第1の切り込み22の長さの略半分で設定される。また、この第2の切り込み23は、帯状部材51の幅長に対して少なくとも1以上で設けられ、例えば幅長の中間位置に設けられ、帯状部材51の略下半部を2つに形成する。
【0050】
このように構成された遮蔽カーテン60では、帯状部材51の略上半部が幅広帯部26となり、下半部が幅狭帯部27となる。そして、フレーム材25bを筐体10内の搬送ベルト6上方に取り付け、吊り下げる構成となる。
【0051】
この遮蔽カーテン60によれば、複数の帯状部材51を一体化して構成されることから、この帯状部材51の数で遮蔽カーテン60の全幅長を構成することが可能となり、X線検査装置1の入口11、出口12の幅方向の大きさに合わせて組み合わせ、必要な幅長の遮蔽カーテン60を構成することが可能となる。また、各帯状部材51毎に、帯状部材51自体の幅長、すなわち第1の切り込み22による幅広帯部26の幅長を変えたり、第2の切り込み23の長さBを変えて、遮蔽カーテン60を構成することができ、例えば搬送方向に直交する被検査物7の幅方向の形状において、高さhが大きく異なるような、例えば三角形などの形状であったり凹部や凸部があるような形状の被検査物7であることが予め判っている場合に、その形状に沿わせた幅広帯部26(帯状部材51)の幅長や第2の切り込み23の長さBを備えて構成させることで、被検査物7の良好な搬送性とX線遮蔽性とをより良好なものとすることができる。
【0052】
従って、本実施形態に係るX線検査装置1によれば、被検査物の良好な搬送性とX線遮蔽性を両立させることができる遮蔽カーテン20が得られる。