【実施例1】
【0012】
図1(a)は、実施例1の灯具10の構成を示す断面図である。灯具10は、光源部20と灯体部30と制御回路40とからなる。本実施例においては、灯具10が車両用前照灯に用いられる車両用灯具である場合について説明する。
図1(b)は、灯体部30内における光路を模式的に示す図である。光源部20は、白色化されかつ空間的又は時間的にコヒーレントな入力光WLを生成する光源21を有している。光源21には、入力光WLを出力する出力部22と、光源21から発生する熱を放熱する放熱部23とが設けられている。また、光源21には、電源(図示せず)及び制御部(図示せず)などに接続された配線CBが設けられている。また、入力光WLは、導光部24によって灯体部30に導光される。
【0013】
灯体部30は、光源21からの入力光WLを反射し、パターン化(フレーム化)された反射光RLを生成する反射部31と、反射光RLを拡散するスクリーン32と、反射光RLを投影して投影光PLを生成する投影レンズ33と、を有している。また、制御回路40は、入力光WLの光出力、反射部31の動作を制御するように構成されている。スクリーン32は、例えば、反射部31と投影レンズ33との間の投影レンズ33の焦点位置に配置され、反射光RLを投影レンズ33に向けて拡散させるように構成されている。
【0014】
反射部31は、入力光WLを走査する走査ミラーを有している。走査ミラーは、例えばMEMSミラーからなる。スクリーン32は、例えば入力光WLに対して半透光性を有するアルミナからなる。スクリーン32は、金属やセラミックなどの枠に固定されていてもよい。投影レンズ33は、例えばガラス、ポリカーボネート、アクリルなど、入力光WLに対して透光性を有する材料からなる。
【0015】
導光部24によって光源部20から導光された入力光WLは、導光部24の出射端部LPから反射部31に向けて出射される。反射部31は、その一方の主面(以下、受光面と称する)31Sにおいて入力光WLを受光する。入力光WLは、反射部31によってパターン化され、投影レンズ33に向けて反射される。
【0016】
灯体部30は、入力光WLの出射端部LP、反射部31、スクリーン32及び投影レンズ33を収容するハウジングHSを有している。また、入力光WLの出射端部LP、反射部31、スクリーン32及び投影レンズ33は、支持部SUによって灯体部30内において支持されている。また、ハウジングHSのうち、投影レンズ33から投影光PLが出射する側の領域にはアウターレンズOLが設けられている。投影光PLは、アウターレンズOLを介して外部に取出される。
【0017】
また、灯体部30は、灯体部30における投影光PLの光軸を調整する光軸調整部AJを有している。光軸調整部AJは、支持部SUを介して、出射端部LP、反射部31、スクリーン32及び投影レンズ33を移動させる機能を有している。また、支持部SUには、反射部31から生じた熱を放熱する放熱部HDが設けられている。
【0018】
図2(a)は、光源部20の構成を示す図である。まず、光源21は、パルス発振した励起光ELを生成するレーザ装置LSRと、励起光ELに基づいて入力光WLを生成する非線形な材料からなる非線形部材NLMとを有している。ここで、光源21について説明する。例えばフェムト秒のパルス幅を有するパルス化されたレーザ光を非線形媒体に入射させると、レーザ光のスペクトル幅が連続的に拡大する現象が知られている。これはスーパーコンティニウム現象と言われ、これによって得られた光は、広帯域なスペクトルを有するような特性を示す。また、このスーパーコンティニウム光は、自然光よりも高い空間的及び時間的コヒーレント性を有している。
【0019】
光源21は、このスーパーコンティニウム光を生成するスーパーコンティニウム光源である。すなわち、入力光WLは、広帯域なスペクトル、例えば可視域の全域に亘るスペクトル幅を有するスーパーコンティニウム光である。具体的には、非線形材料NLMは、レーザ装置LSRからの励起光ELを受けて、スーパーコンティニウム光を生成する。このスーパーコンティニウム光は、太陽光に近い光であり、高い演色性を有している。従って、灯具10は、蛍光体を必要とせず、また、蛍光体を用いて白色化された場合よりも高い演色性を有する白色光を生成及び照射する。
【0020】
出力部22は、入力光WLにおける紫外成分UVを除去する紫外成分除去部22Aと、入力光WLにおける赤外成分IRを除去する赤外成分除去部22Bとを有している。紫外成分除去部22Aは、例えば紫外線カットフィルタやダイクロイックミラーなどからなる。赤外成分除去部22Bは、例えば赤外線カットフィルタやダイクロイックミラーなどからなる。なお、紫外成分及び赤外成分除去部22A及び22Bの構成は一例に過ぎず、例えば双方同様な構成を有していてもよく、また、図示した構成とは反対の構成及び配置を有していても良い。すなわち、入力光WLの紫外成分UV及び赤外成分IRが紫外及び赤外成分除去部22A及び22Bによって除去されればよい。
【0021】
光源21からのスーパーコンティニウム光は、可視域のみならず紫外及び赤外領域に亘るスペクトル幅を有する場合がある。出力部22が紫外及び赤外成分除去部22A及び22Bを有することによって、紫外線及び赤外線が灯具10から外部に取出されることが抑制される。従って、照射に不要な紫外及び赤外成分を除去することができる。また、紫外線は、投影レンズ33やアウターレンズOLなどに用いられる樹脂などを劣化させるため、紫外線を除去することによって灯具10が長寿命化する。
【0022】
なお、出力部22は、
図2(a)に示すように、赤外線を吸収する赤外線吸収部ABを有する。例えば赤外成分除去部22Bがダイクロイックミラーから構成される場合、ダイクロイックミラーによって分離された赤外線を吸収する赤外線吸収部ABが設けられることが好ましい。また、出力部22は、集光レンズLZ1を有していても良い。集光レンズLZ1は、赤外線及び紫外線が除去された入力光WLを集光して導光部24に導く。導光部24は、例えば光ファイバからなる。導光部24は例えばマルチモード光ファイバからなり、コアの断面は例えば円形又は矩形の形状を有する。
【0023】
図2(b)は、入力光WLのスペクトルを示す図である。図の横軸は波長を、縦軸は光出力を示している。
図2(b)に示すように、入力光WLは、可視域の全体を含む400nm〜1600nmの波長範囲に亘るスペクトル幅を有する。従って、白色光を得るために蛍光体を用いる必要がない。また、灯体部30には、紫外及び赤外成分除去部22A及び22Bによって紫外線及び赤外線が除去された入力光WLを投影する。また、入力光WLは、レーザ発振した励起光ELを用いているため、高い光出力を有している。従って、高い光出力及び高い演色性を有する入力光WLが生成される。
【0024】
図3(a)及び(b)は、それぞれ反射部31の構成を示す上面図及び断面図である。
図3(a)は、受光面31Sを含む反射部31の主面を示す図である。本実施例においては、反射部31は、MEMSミラーからなり、その表面の中心部に反射ミラーMLが設けられている。また、MEMSミラー31は、X軸及びY軸にそれぞれ沿ったXX線及びYY線の周りに反射ミラーMLを傾斜(回転)させるX軸ステーXS及びY軸ステーYSを有している。X軸ステー及びY軸ステーXS及びYSは、走査部31の基体BS上に動作可能なように支持されている。
【0025】
図3(b)は、
図3(a)のW−W線に沿った断面図である。
図3(b)は、走査ミラー31のX軸方向の断面図である。
図3(b)に示すように、X軸ステー及びY軸ステーXS及びYS上には、X軸ステー及びY軸ステーXS及びYSを収縮させる圧電素子XE及びYEが形成されている。圧電素子XE及びYEにそれぞれ電圧が印加されると、圧電素子XE及びYEが変形し、これに応じてX軸及びY軸ステーXS及びYSが変形する。
【0026】
本実施例においては、反射ミラーMLは、Y軸ステーYSの一端に接続されたミラー部MP上に形成されている。反射ミラーMLは、入力光WLを受光する受光面31Sとして機能する。また、X軸ステーXSは、その一端が基体BSに接続され、他端がY軸ステーYSの他端に接続されている。これによって、X軸及びY軸ステーXS及びYSの変形に応じて、反射ミラーMLの角度(すなわちミラーの走査位置)はXX線及びYY線(それぞれ
図3(a)において破線で示している)の周りに互いに無関係に変化する。
【0027】
なお、本実施例においては反射部31がMEMSミラーからなる場合について説明したが、反射部31は、MEMSミラーからなる場合に限定されない。例えば、反射部31は、例えばポリゴンミラー及びガルバノミラーから構成されていてもよい。例えばポリゴンミラーを用いて反射部31を構成する場合、回転軸が直交するように配置した2つのポリゴンミラーを用い、一方のミラーに入力光WLを入射させ、その反射光を他方のミラーに入射させた後、投影レンズ33に向けて反射させればよい。すなわち、反射部31は、入力光WLを走査する走査ミラーであればよい。なお、部品点数の低減を考慮すると、MEMSミラーで反射部31を構成することが望ましい。
【0028】
図4(a)は、灯体部30に設けられた入力光WLの出射端部LP及び反射部31(反射ミラーML)に入射した入力光WLのビーム形状(入力ビームの断面形状)を模式的に示す図である。出射端部LPには、入力光WLのビーム形状を成形する集光レンズLZ2が設けられている。本実施例においては、集光レンズLZ2は、入力光WLのビーム形状を正方形に成形して反射部31に入射させるように構成されている。また、集光レンズLZ2は、入力光WLをコリメートする機能を有している。入力光WLのビーム形状を正方形にコリメートすることで、前照灯の配光パターンの形成が容易になる。なお、集光レンズLZ2は、
図3(b)に示すように、入力光WLのビーム形状(入力ビームの断面形状)を円形に成形するように構成されていてもよい。
【0029】
図5は、灯具10を車両VEに搭載した場合の制御回路40の構成を模式的に示す図である。
図5に示すように、車両VEは、対象部(非照射対象物)を検出する検出回路DEを有している。また、車両VEは、車両VEの速度を感知する速度センサVS、車両VEの加速度を感知する加速度センサAS、及び車両VEの傾きを感知する傾きセンサSSを有している。検出回路DEは、例えばレーダ及びカメラなどからなる。傾きセンサSSは、例えば車両VEのロール、車両のピッチ、車両のヨーを感知するように構成されている。
【0030】
車両VEは、検出回路DEによって対象物(例えば前走車や対向車)を検出し、対象物の位置及びサイズ、移動速度などを示す情報OSを灯具10の制御回路40に送信する。例えば、検出回路DEは、車両VEの前方の画像を撮像し、当該撮像画像を制御回路40に送信する。また、車両VEは、速度センサVS、加速度センサAS、及び傾きセンサSSによって自身の速度、加速度及び傾きを感知(測定、認識)し、これを示す情報を制御回路40に送信する。
【0031】
制御回路40は、灯具10の外部から対象物の位置情報OSを受信し、その位置情報OSに基づいて、投影光PL内に形成される減光領域を算出する演算部41を有している。また、制御回路40は、演算部41によって検出回路DE(演算部41の外部)から減光領域DKを示す情報を受信し、光源21の光出力(入力光WLの光量)を制御する光源制御部42と、反射部31における入力光WLの走査を制御する走査制御部43とを有している。
【0032】
光源制御部42は、反射部31(走査ミラー)の走査に合わせた入力光WLの出力強度を示す光源情報LSを生成する。走査制御部43は、反射部31(走査ミラー)の走査情報を示す駆動情報DSを生成する。光源制御部42及び走査制御部43は、光源情報LS及び駆動情報DSをそれぞれ光源21及び反射部31に送信する。
【0033】
次に、
図6及び
図7を用いて、演算部41の動作フローについて説明する。まず、ステップS1において、検出回路DEからの検出情報(対象物の存在及びその位置などを示す情報)を取得する。例えば演算部41は、検出回路DEから対象物の位置情報OSを取得する。次に、演算部41は、ステップS2において、投影光PLの投影範囲PR内において投影光PLが照射されるべきではない物体(非照射対象物)の位置を演算する(
図7(a))。
【0034】
例えば、
図7(a)に示すように、非照射対象物として、前走車OJ1、対向車OJ2及び歩行者OJ3が検出された場合を考える。演算部41は、検出回路DEからの検出情報(例えば画像)を投影範囲PR内にマッピングする。そして、演算部41は、投影範囲PRを構成する複数の投影領域PAのうち、減光対象となる領域DCを算出する。演算部41は、例えば
図7(a)に破線で示す領域を減光対象領域DCとして算出する。
【0035】
次に、ステップS3において、演算部41は、減光対称領域DCに基づいて、投影範囲PR内における減光されるべき投影領域PA(減光領域DK)を演算する(
図7(b))。例えば、演算部41は、
図7(a)に示す減光対象領域DCに基づいて、
図7(b)にハッチングで示す投影領域PAを減光領域DKとして算出する。なお、演算部41は、車両VEの速度や加速度、傾きなどを考慮して、例えば前走車のルームミラーの位置を含む所定領域を減光領域DKとして演算ことができる。そして、演算部41は、減光領域DKに基づいた反射部31(走査ミラー)の走査座標を演算する。
【0036】
続いて、ステップS4において、演算部41は、光源21及び反射部31の駆動データを作成する。演算部41は、例えば入力光WLの光出力を示すデータや反射部31の走査位置及び走査速度を示すデータを駆動データとして作成する。駆動データは、光源情報LS及び駆動情報DSを含んでいてもよい。次に、演算部41は、この駆動データを光源制御部42及び走査制御部43に送信する。このようにして、制御回路40は、投影光PLの投影範囲PR内における対象物の位置情報OSに基づいて、投影光PL内に当該対象物の位置に応じた減光領域DKが形成されるように光源21(入力光WL)及び反射部42を制御し、反射光RLのパターンを形成する。パターン化された反射光RLは、スクリーン32及び投影レンズ33を透過して外部に取出される。
【0037】
灯具10は、この動作をリアルタイムで行い、投影光PLの配光パターン(反射光RLのパターン)を順次変化させていく。これによって、例えば非照射対象物の移動に合わせて減光領域DKの位置(座標)を変化させ、投影光PLが非照射対象物に照射されないようにする。また、一定のコヒーレント性を有する入力光WLを用いて投影光PLを形成するため、不要な光が非照射対象物に照射されず、グレアの防止となる。
【0038】
図8(a)及び(b)は、反射部31(走査ミラー)及び光源21の出力動作例を示す図である。
図8(a)及び(b)は、それぞれ走査ミラー31のX軸方向(例えば車両VEの水平方向)とY軸方向(例えば車両VEの鉛直方向)における走査例とその際の入力光WLの出力例を示している。なお、
図8(a)及び(b)は、投影範囲PR内に非照射対象物が存在しない場合、すなわち減光領域DKを形成せずに投影光PLを生成する際の走査ミラー31及び光源21の動作例である。また、投影範囲PRを水平方向に折り返し走査を行う場合を示している。なお、減光領域DKを形成する場合、それぞれの図の下部のグラフに示す光出力を光源制御部43によって変化させ、減光領域DKの座標の走査時において入力光WLは減光又は消灯される。
【0039】
なお、
図8(a)及び(b)においては、減光領域DKを形成しない場合は入力光WLの出力を一定とする場合について説明したが、減光領域DK以外の投影領域PA内においても入力光WLの出力を変化させてもよい。例えば、前照灯は遠方を照射するホット領域や車両近傍を広く照射するワイド領域などを形成することが求められる。これらの領域は、従来リフレクタやレンズによって形成されている場合が多い。しかし、光源制御部42及び走査制御部43によって入力光WLの出力を変化させる(例えばホット領域となる走査位置では入力光WLの出力を他の走査位置よりも高くする)ことで投影光PLの強度に分布を生じさせることができる。従って、投影光PLの投影範囲PR内でホット領域などを容易に形成することができ、リフレクタやレンズの設計を単純化させることができる。
【0040】
すなわち、制御回路40は、入力光WLの出力を減光領域DKのみならず他の投影領域PAでも変化させるように構成されていることが望ましい。また、入力光WLは高い出力を有しているため、ホット領域の照射可能距離、すなわち遠方視認性が大きくなる。また、例えば投影範囲PRの上部全体を非照射とするように光源21を制御することで、すれ違い用配光(ロービーム)を形成することもできる。
【0041】
また、スクリーン32は、反射光RLを所定の拡散率で前方(出射方向)に透過拡散させるように構成されている。例えば、出射端部LPの集光レンズLZ2によってビームの断面形状が正方形に形成された入力光WLは、反射部31で反射されてスクリーン32に入射する。ここで、スーパーコンティニウム光はコヒーレント性を有するため、そのコリメートされたビームは高い直線性を維持している。従って、入力光WLは、集光レンズLZ2から出射したビーム形状を保持したままスクリーン32に入射する。
【0042】
一方で、スクリーン32は透過拡散性を有するので、投影レンズ33側の出射ビーム断面の縁が若干滲む。具体的には、スクリーン32への入射ビームの縁の光強度は急峻な減衰特性を有するが、スクリーン32からの出射ビームの縁の光強度は緩やかな減衰特性になる。従って、反射部31の走査位置及び走査速度の誤差によって投影光PLに重なりによる明部が形成されること、また減光領域DK以外の意図しない暗部が形成されることが抑制される。
【0043】
また、スーパーコンティニウム光は広い波長帯域において指向特性が等価であり、スクリーン32を透過する際に透過拡散を受けても一定の等価な指向特性を保つ。従って、色度ムラの発生を抑制することができる。
【0044】
このような前方への透過拡散を可能にするスクリーン32は、例えば透光性の低屈折率ガラス(屈折率1.4程度)内に粒径1μm〜5μm程度の透光性の高屈折率の酸化チタン(屈折率2.5程度)粒子を分散させることで得られる。
【0045】
また、スクリーン32はスーパーコンティニウム光のコリメートされたビームを前方に透過拡散させる機能を有するのみであり、スクリーン32から出射された反射光RLの指向角は狭い(例えば10°程度)。従って、投影レンズ33サイズはスクリーン32の出射光に応じた形状まで小型化できる。
【0046】
なお、スクリーン32は必ずしも設けられる必要は無い。例えば、コリメートされたスーパーコンティニウム光は発散しない(直線性が高い)ので、反射部31から投影レンズ33の焦点位置(スクリーン32の位置)までの距離を長くすることができる。また、焦点位置の投影範囲PRに対応する大きさは一定なので、焦点位置と反射部31の距離を長くすることで反射ミラーMLの傾斜角を小さくでき、走査位置及び走査速度の誤差を抑制できる。またMEMSミラー31のステー(X軸ステーXS、及びY軸ステーYS)の動作負荷を低減でき、信頼性を向上できる。
【実施例2】
【0047】
図9(a)は、実施例2に係る灯具50の構成を示す断面図である。灯具50は、灯体部60及び制御回路70の構成を除いては、灯具10と同様の構成を有している。具体的には、灯具50においては、反射部61の構成、入力光WLの出射端部LPの構成、及び制御回路40の構成が灯具10とは異なる。
【0048】
図9(b)は、灯具50における入力光WLの出射端部LPの構成及び反射部61の構成を示す図である。灯具50における入力光WLの出射端部LPには、入力光WLを拡大してコリメートするように構成されたコリメートレンズLZ3が設けられている。また、反射部61は、複数の個別動作可能なミラー素子MEからなるミラー素子群GMLを有している。入力光WLは、ミラー素子MEの全体で受光される。複数のミラー素子MEの各々は、入力光WLを反射し、全体としてパターン化された反射光RLを形成する。また、ミラー素子MEの各々は、入力光WLを投影レンズ33に向けて反射する位置(オン位置)と、入力光WLを投影レンズ外に向けて反射する位置(オフ位置)との間で移動可能なように構成されている。
【0049】
本実施例においては、反射部61は、例えばDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)からなる。また、灯具50は、ミラー素子MEの各々に応じた投影領域PA(
図7参照)からなる投影光PLを形成する。また、ミラー素子MEがオフ位置の場合、そのミラー素子MEに対応する投影領域PAは減光領域DK(
図7参照)となる。また、コリメートレンズLZ3は、全てのミラー素子ME(ミラー素子群GMLの全体)を包含する大きさに入力光WLを拡大コリメートするように構成及び配置されている。
【0050】
図10は、灯具50が車両VEに搭載された場合の制御回路70の構成を示す図である。車両VEは、灯具10が搭載される場合と同様の構成を有している。灯具50は、減光領域DKを形成するためにオフ位置とするべきミラー素子MEを選択する選択部71と、光源制御部72と、ミラー制御部73とを有している。光源制御部72は、光源制御部42と同様に光源情報LSを生成するように構成されている。ミラー制御部73は、各ミラー素子MEのオン位置及びオフ位置を切り換える駆動信号DSを生成するように構成されている。ミラー制御部73は、減光領域DKに対応する入力光WLを投影レンズ33外に向けて反射するようにミラー素子MEの各々を制御する。
【0051】
図11は、制御回路70の選択部71における動作フローを示す図である。選択部71は、ステップS3までは演算部41と同様の動作を行う。選択部71は、ステップ4Aにおいて、ミラー素子群GMLのうち、入力光WLを投影レンズ33外に向けて反射させるべきミラー素子MEを選択する。そして、この選択したミラー素子MEの情報を駆動データとして作成する。また、選択部71は、ステップS5Aにおいて、作成した駆動データをミラー制御部73に送信する。
【0052】
反射部61は、このようにしてミラー素子群GMLによってパターン化された反射光RLを生成する。また、灯具50においても、この反射部61の動作はリアルタイムで行われ、順次投影光PLのパターンが変化することとなる。例えば、前照灯は遠方を照射するホット領域や車両近傍を広く照射するワイド領域などを形成することが求められる。これらの領域は、従来リフレクタやレンズによって形成されている場合が多い。しかし、入力光WLをコリメートレンズLZ3で拡大コリメート光にする段階でコリメート光の中心部を高強度領域とすることでホット領域を形成できる。例えば、光学回折素子を用いてコリメートレンズLZ3を構成することで、コリメートされた入力光WL内に強度分布を生じさせることができる。
【0053】
また、光源制御部72及びミラー制御部73によって各ミラー素子MEを短い周期でオン位置及びオフ位置を切り替え、また、そのオン位置及びオフ位置の切り替え比率を変化させること(例えばホット領域に対応するミラー素子MEにおいてはオン位置時間を長くすること)で、反射光RL(すなわち投影光PL)内に強度分布を形成することができる。従って、リフレクタやレンズの設計が単純化され、コンパクトな配光可変型の灯具50を構成することができる。また、本実施例に係る灯具50においても、スクリーン32を設けることで、実施例1に係る灯具10と同様な効果を得ることができる。
【0054】
なお、上記においては、光源21としてスーパーコンティニウム光源を用いた場合について説明したが、蛍光体を用いることなく空間的又は時間的にコヒーレントで広帯域なスペクトルが得られる光源を、スーパーコンティニウム光源に代えて用いることができる。例えば赤色光、緑色光及び青色光をそれぞれ出射するレーザを光源としてそれぞれの光を重ね合わせることで白色光を得ることが可能である。すなわち、光源21は、互いに異なる発光色を有する複数のレーザからなるレーザ装置LSRを有していても良い。この場合、非線形材料NLMが設けられる必要は無い。また、スーパーコンティニウム光を生成する他の装置をレーザ装置LSR及び非線形材料NLMに代えて用いても良い。
【0055】
なお、上記においては灯具10及び50が光源21を有する場合について説明したが、灯具10及び50が光源21を有する場合に限定されない。例えば、外部の光源を用いてもよい。すなわち、灯具10及び50は、灯体部30及び60と制御回路40及び70とから構成されていてもよい。
【0056】
上記においては、空間的又は時間的にコヒーレントな入力光WLを反射してパターン化された反射光RLを生成する反射部31(61)と、反射光RLを投影して投影光PLを生成する投影レンズ33と、投影光PLの投影範囲PR内における対象物の位置情報OSに基づいて、投影光PL内に対象物の位置に応じた減光領域DKが形成されるように入力光WL及び反射部31(61)を制御する制御回路40(70)と、を有している。従って、蛍光体を不要とし、少ない部品点数で高輝度及び高演色性な配光可変型灯具を提供することが可能となる。