【実施例】
【0060】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨ではない。
【0061】
(実施例1)
冷却管と滴下ロートを装着したフラスコにジメチルカーボネート25.0gを投入し、その後水酸化リチウム5.0gを投入した。続いて、20℃(反応開始温度)、窒素雰囲気下にてフラスコ内を攪拌しながら、38.4gの塩化ホスホリルをゆっくりと滴下した。このときフラスコ内にて激しく反応している様子が確認された。尚、塩化ホスホリルは、水酸化リチウム1当量に対し、1.2当量であった。また、ジメチルカーボネートは、水酸化リチウムの質量1に対し、5倍量であった。
【0062】
その後、フラスコ内を約30分間攪拌し、ガスの発生がほぼ収まり、室温まで冷却されたところで、窒素気流下130℃にてジメチルカーボネートと余剰の塩化ホスホリルの留去を行った。これにより、29.2gの白色結晶が得られた。
【0063】
この白色結晶をアニオンクロマトグラフィー(メトローム社製、商品名:IC−850)、カチオンクロマトグラフィー(ダイオネクス社製、商品名:ICS−1500)、FT−IR(パーキンエルマー社製、商品名:SPECTRUM2000)、TG−DTA(セイコーインスツルメンツ社製、商品名:EXSTAR6000 TG/DTA6300)を用いて分析した。
【0064】
前記カチオンクロマトグラフィーによる分析の結果、Liイオンのみが検出された。また、アニオンクロマトグラフィーによる分析の結果、Clイオン、PO
4イオンが検出された。各イオン濃度より、Li、Cl、P元素についてそれぞれ含有量を求めたところLiイオン:4.9%、Clイオン:49.9%、P元素:21.9%となった。この値は、LiPO
2Cl
2の各元素の含有量(Li:4.9%、Cl:50.3%、P:22.0%)と極めて近い値となった。
【0065】
また、FT−IRを用いて赤外吸収スペクトルを確認したところ、得られた化合物には1100cm
−1付近にO=P−O結合由来の吸収が確認された。これにより、塩化ホスホリルのO=P−Cl骨格がO=P−O骨格へ変換されていることが示唆された。
【0066】
さらに、TG−DTAの測定結果より、当該化合物の熱分解温度は199℃であることが確認された。原料である塩化ホスホリルの沸点は105℃であり、水酸化リチウムの分解点は924℃ある。従って、白色結晶の生成物とは熱物性が異なっていることが確認された。
【0067】
以上の分析結果に基づき総合的に判断した結果、得られた白色結晶の固体はジクロロリン酸リチウムであると判定した。また、得られた白色結晶の個体のジクロロリン酸リチウムから換算した質量収率は99.3質量%であった。
【0068】
(実施例2)
冷却管と滴下ロートを装着したフラスコにジメチルカーボネート25.0gを投入し、その後水酸化リチウム5.0gを投入した。続いて、100℃(反応開始温度)、窒素雰囲気下にてフラスコ内を攪拌しながら、38.4gの塩化ホスホリルをゆっくりと滴下した。このときフラスコ内にて激しく反応している様子が確認された。尚、塩化ホスホリルは、水酸化リチウム1当量に対し、1.2当量であった。また、ジメチルカーボネートは、水酸化リチウムの質量1に対し、5倍量であった。
【0069】
その後、フラスコ内を約30分間攪拌し、ガスの発生がほぼ収まり、室温まで冷却されたところで、窒素気流下130℃にてジメチルカーボネートと余剰の塩化ホスホリルの留去を行った。これにより、29.1gの白色結晶が得られた。
【0070】
この白色結晶をアニオンクロマトグラフィー(メトローム社製、商品名:IC−850)、カチオンクロマトグラフィー(ダイオネクス社製、商品名:ICS−1500)、FT−IR(パーキンエルマー社製、商品名:SPECTRUM2000)、TG−DTA(セイコーインスツルメンツ社製、商品名:EXSTAR6000 TG/DTA6300)を用いて分析した。
【0071】
前記カチオンクロマトグラフィーによる分析の結果、Liイオンのみが検出された。また、アニオンクロマトグラフィーによる分析の結果、Clイオン、PO
4イオンが検出された。各イオン濃度より、Li、Cl、P元素についてそれぞれ含有量を求めたところLiイオン:4.9%、Clイオン:50.1%、P元素:22.1%となった。この値は、LiPO
2Cl
2の各元素の含有量(Li:4.9%、Cl:50.3%、P:22.0%)と極めて近い値となった。
【0072】
また、FT−IRを用いて赤外吸収スペクトルを確認したところ、得られた化合物には1100cm
−1付近にO=P−O結合由来の吸収が確認された。これにより、塩化ホスホリルのO=P−Cl骨格がO=P−O骨格へ変換されていることが示唆された。
【0073】
さらに、TG−DTAの測定結果より、当該化合物の熱分解温度は199℃であることが確認された。原料である塩化ホスホリルの沸点は105℃であり、水酸化リチウムの分解点は924℃ある。従って、白色結晶の生成物とは熱物性が異なっていることが確認された。
【0074】
以上の分析結果に基づき総合的に判断した結果、得られた白色結晶の固体はジクロロリン酸リチウムであると判定した。また、得られた白色結晶の個体のジクロロリン酸リチウムから換算した質量収率は99.0質量%であった。
【0075】
(実施例3)
冷却管と滴下ロートを装着したフラスコにジメチルカーボネート10gを投入し、その後水酸化リチウム0.5gを投入した。続いて、20℃(反応開始温度)、窒素雰囲気下にてフラスコ内を攪拌しながら、臭化ホスホリル6.0gをジメチルカーボネート20gに溶解させた溶液を、ゆっくりと滴下した。このときフラスコ内にて激しく反応している様子が確認された。尚、臭化ホスホリルは、水酸化リチウム1当量に対し、1.0当量であった。また、ジメチルカーボネートは、水酸化リチウムの質量1に対し、20倍量であった。
【0076】
その後、フラスコ内を約30分間攪拌し、ガスの発生がほぼ収まり、室温まで冷却されたところで、窒素気流下130℃にてジメチルカーボネートの留去を行った。これにより、4.77gの白色結晶の固体が得られた。
【0077】
得られた白色結晶の個体について、FT−IR(パーキンエルマー社製、商品名:SPECTRUM2000)、TG−DTA(セイコーインスツルメンツ社製、商品名:EXSTAR6000 TG/DTA6300)を用いて分析を行った。
【0078】
前記FT−IRを用いて赤外吸収スペクトルを確認したところ、得られた化合物には1100cm
−1付近にO=P−O結合由来の吸収が確認された。これにより、臭化ホスホリルのO=P−Br骨格がO=P−O骨格に変換されていることが示唆された。また、得られた結晶のジブロモリン酸リチウムから換算した質量収率は99.5質量%であった。
【0079】
(実施例4)
フラスコにジメトキシエタン30gを投入し、続いて、トリエチルアミン7.19g及び無水フッ化水素酸2.9gを順次加え、ジメトキシエタン中でトリエチルアミンフッ化水素酸塩を調整した。
【0080】
次に、実施例1で得られたジクロロリン酸リチウム5.0gをジメトキシエタン20gに懸濁させた。さらに、この懸濁液を窒素雰囲気下で、トリエチルアミンフッ化水素酸塩/ジメトキシエタン溶液に、攪拌しながら滴下した。このときの反応温度は25℃であり、撹拌は3時間行った。反応は、白色の沈殿を生じさせながら進行した。
【0081】
次に、得られた白色沈殿物を減圧ろ過により濾液と分離した。さらに、この濾液を減圧下留去することにより、白色固体を得た。この白色固体を、イオンクロマトグラフィー(ダイオネクス製、商品名:ICS−1000)を用いてアニオン分析を行った。その結果、得られた白色固体はジフルオロリン酸リチウムであることが確認された。また、ジフルオロリン酸イオンの相対面積比をジフルオロリン酸リチウムの純度の指標とした。得られたジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で94.0%であった。
【0082】
(実施例5)
冷却管と固体ロートを装着したフラスコに塩化ホスホリル48.1gを投入し、氷冷下水酸化リチウム5.0gを少しずつ投入した。続いて、20℃(反応開始温度)、窒素雰囲気下にてフラスコ内を攪拌していると、フラスコ内にて激しく反応している様子が確認された。尚、塩化ホスホリルは、水酸化リチウム1当量に対し1.5当量であった。
【0083】
その後、フラスコ内を約30分間攪拌し、ガスの発生がほぼ収まり、室温まで冷却されたところで、窒素気流下130℃にて余剰の塩化ホスホリルの留去を行った。これにより、29.0gの白色結晶が得られた。
【0084】
前記カチオンクロマトグラフィーによる分析の結果、Liイオンのみが検出された。また、アニオンクロマトグラフィーによる分析の結果、Clイオン、PO
4イオンが検出された。各イオン濃度より、Li、Cl、P元素についてそれぞれ含有量を求めたところLiイオン:4.9%、Clイオン:50.1%、P元素:21.9%となった。この値は、LiPO
2Cl
2の各元素の含有量(Li:4.9%、Cl:50.3%、P:22.0%)と極めて近い値となった。
【0085】
また、FT−IRを用いて赤外吸収スペクトルを確認したところ、得られた化合物には1100cm
−1付近にO=P−O結合由来の吸収が確認された。これにより、塩化ホスホリルのO=P−Cl骨格がO=P−O骨格へ変換されていることが示唆された。
【0086】
さらに、TG−DTAの測定結果より、当該化合物の熱分解温度は199℃であることが確認された。原料である塩化ホスホリルの沸点は105℃であり、水酸化リチウムの分解点は924℃ある。従って、白色結晶の生成物とは熱物性が異なっていることが確認された。
【0087】
以上の分析結果に基づき総合的に判断した結果、得られた白色結晶の固体はジクロロリン酸リチウムであると判定した。また、得られた白色結晶の個体のジクロロリン酸リチウムから換算した質量収率は98.6質量%であった。
【0088】
(実施例6)
冷却管と固体ロートを装着したフラスコに塩化ホスホリル16.0gを投入し、氷冷下水酸化リチウム0.5gを少しずつ投入した。続いて、20℃(反応開始温度)、窒素雰囲気下にてフラスコ内を攪拌していると、フラスコ内にて激しく反応している様子が確認された。尚、塩化ホスホリルは、水酸化リチウム1当量に対し5当量であった。
【0089】
その後、フラスコ内を約30分間攪拌し、ガスの発生がほぼ収まり、室温まで冷却されたところで、窒素気流下130℃にて余剰の塩化ホスホリルの留去を行った。
これにより、2.8gの白色結晶が得られた。
【0090】
前記カチオンクロマトグラフィーによる分析の結果、Liイオンのみが検出された。また、アニオンクロマトグラフィーによる分析の結果、Clイオン、PO
4イオンが検出された。各イオン濃度より、Li、Cl、P元素についてそれぞれ含有量を求めたところLiイオン:4.9%、Clイオン:49.7%、P元素:21.8%となった。この値は、LiPO
2Cl
2の各元素の含有量(Li:4.9%、Cl:50.3%、P:22.0%)と極めて近い値となった。
【0091】
また、FT−IRを用いて赤外吸収スペクトルを確認したところ、得られた化合物には1100cm
−1付近にO=P−O結合由来の吸収が確認された。これにより、塩化ホスホリルのO=P−Cl骨格がO=P−O骨格へ変換されていることが示唆された。
【0092】
さらに、TG−DTAの測定結果より、当該化合物の熱分解温度は199℃であることが確認された。原料である塩化ホスホリルの沸点は105℃であり、水酸化リチウムの分解点は924℃ある。従って、白色結晶の生成物とは熱物性が異なっていることが確認された。
【0093】
以上の分析結果に基づき総合的に判断した結果、得られた白色結晶の固体はジクロロリン酸リチウムであると判定した。また、得られた白色結晶の個体のジクロロリン酸リチウムから換算した質量収率は96.6質量%であった。
【0094】
(実施例7)
冷却管と固体ロートを装着したフラスコに塩化ホスホリル64.0gを投入し、氷冷下水酸化リチウム0.5gを少しずつ投入した。続いて、20℃(反応開始温度)、窒素雰囲気下にてフラスコ内を攪拌していると、フラスコ内にて激しく反応している様子が確認された。尚、塩化ホスホリルは、水酸化リチウム1当量に対し20当量であった。
【0095】
その後、フラスコ内を約30分間攪拌し、ガスの発生がほぼ収まり、室温まで冷却されたところで、窒素気流下130℃にて余剰の塩化ホスホリルの留去を行った。
これにより、28.7gの白色結晶が得られた。
【0096】
前記カチオンクロマトグラフィーによる分析の結果、Liイオンのみが検出された。また、アニオンクロマトグラフィーによる分析の結果、Clイオン、PO
4イオンが検出された。各イオン濃度より、Li、Cl、P元素についてそれぞれ含有量を求めたところLiイオン:4.9%、Clイオン:49.9%、P元素:21.6%となった。この値は、LiPO
2Cl
2の各元素の含有量(Li:4.9%、Cl:50.3%、P:22.0%)と極めて近い値となった。
【0097】
以上の分析結果に基づき総合的に判断した結果、得られた白色結晶の固体はジクロロリン酸リチウムであると判定した。また、得られた白色結晶の個体のジクロロリン酸リチウムから換算した質量収率は97.6質量%であった。