特許第6495076号(P6495076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495076
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】連結車両の後退運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 99/00 20090101AFI20190325BHJP
   B62D 13/06 20060101ALN20190325BHJP
【FI】
   B60R99/00 352
   !B62D13/06
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-75620(P2015-75620)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2016-193703(P2016-193703A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134212
【弁理士】
【氏名又は名称】提中 清彦
(72)【発明者】
【氏名】長野 英治
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−291751(JP,A)
【文献】 特表2006−527359(JP,A)
【文献】 特開2016−137802(JP,A)
【文献】 特開2011−152830(JP,A)
【文献】 特開2006−027343(JP,A)
【文献】 特開2003−034261(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/019730(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0277941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 99/00
B62D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車両と、該牽引車両に対して略垂直方向に延びる連結軸廻りに回転可能に連結される被牽引車両と、からなる連結車両の後退運転支援装置であって、
牽引車両の操舵角を取得する操舵角取得手段と、
牽引車両に対する被牽引車両の連結軸廻りの回転角である連結角を取得する連結角取得手段と、
を備え、
現在の操舵角を維持して車両を後退させたときの連結角の変化具合を、音に関する情報に変換し、当該音に関する情報を運転者に報知することにより、連結車両の後退運転を支援するものにおいて、
前記現在の操舵角を維持して車両を後退させたときの連結角の変化具合は、連結角が所定以上に増加する場合、連結角が所定範囲内に収まる場合、連結角が所定以上に減少する場合に分けられ、それぞれの場合に応じた音の情報を運転者に報知することを特徴とする連結車両の後退運転支援装置。
【請求項2】
前記牽引車両に対する被牽引車両の連結軸廻りの回転角である連結角θを、
【数1】
δ:実操舵角(実舵角)
L1:トラクタの車軸間距離
L2:連結点からトレーラの後輪軸までの距離
Lh:カプラオフセット(連結点からトラクタの後輪軸までの距離)
V1:トラクタの後輪の車輪速(トラクタの旋回中心に関する後輪軸の旋回速度)
V2:トレーラの後輪の車輪速(トレーラの旋回中心に関する後輪軸の旋回速度)

により取得することを特徴とする請求項1に記載の連結車両の後退運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ(牽引車)及びこれに牽引されるトレーラ(被牽引車)等の連結車両の連結角を取得(検出)し、取得(検出)した連結角を利用して連結車両の後退運転を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、動力を備えたトラクタ(牽引車)に、略垂直な枢軸廻りに回動可能にトレーラ(被牽引車)を連結した連結車両がある(なお、連結は切り離し可能に構成されることが多い)。
【0003】
ところで、ドライバー不足などのために輸送効率の向上を図ることが望まれることから、エンジン等の動力源と被輸送物(荷物)の積載部分とが一体となったトラック等に代えて、動力を備えたトラクタ(牽引車)と被輸送物を積載するトレーラ(被牽引車)とを切り離し可能に連結した連結車両の利用の拡大が予測される。
【0004】
すなわち、ドライバーが不足するような状況下では、ドライバーはある特定のトラクタにて、被輸送物を積載した一のトレーラを牽引してある目的地まで走行し、そこでトレーラをそのトラクタから切り離した後、そのトラクタに、次の被運搬物を積載した別のトレーラ(被牽引車)を連結して別の場所に被輸送物を輸送するといったような輸送形態が拡がることが想定される。
【0005】
しかし、一方で、トラクタにトレーラを連結した連結車両は運転が難しく、ドライバーには経験と技量が要求される(特に、後退は経験の浅いドライバーには難易度が高い)といった実情があり、ドライバーの育成には時間が掛かるため、輸送形態が変化したとしても、熟練したドライバーの不足を解消することはなかなか困難な状況であることには変わりがない。
【0006】
このようなことから、連結車両の運転を支援するシステムも提案されている。
例えば、特許文献1では、トレーラの予想移動軌跡を表示することで連結車両の運転を支援するシステムが記載されている。
【0007】
具体的には、特許文献1の連結車両の運転支援システムは、トラクタとトレーラから成る連結車両のトレーラ側にカメラを設置し、カメラは、トレーラの後方を撮影する。運転支援システムは、各撮影画像を路面に平行な鳥瞰図座標上に投影することによって各撮影画像を鳥瞰図画像に変換する一方で、複数の撮影画像から成る動画像のオプティカルフローを鳥瞰図座標上で導出し、このオプティカルフローとトラクタの移動情報からトラクタとトレーラの連結角を推定し、更に、連結角とトラクタの移動情報からトレーラの移動予想軌跡を導出するようになっている。そして、この移動予想軌跡を鳥瞰図画像に重畳した画像を表示装置に出力するように構成されている。
【0008】
また、特許文献2には、被牽引物を牽引する車両の後退運転支援装置であって、車両の後方に備えられた第一撮影手段(カメラ)により撮影された第一画像と、被牽引物の後方に備えられた第二撮影手段(カメラ)によって撮影された第二画像と、に基づいて、車両と被牽引物との相対位置関係を延在し、この相対位置関係に応じて車両の後退時における被牽引物の予想移動奇跡を演算し、前記第二画像とこの予想移動奇跡との合成画像を運転者に視認可能に表示するようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−60499号公報
【特許文献2】特開2006−256544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
すなわち、特許文献1や特許文献2などに記載されているように、従来においては、連結車両の後退運転時にモニターなどの表示装置に情報を表示するものであった。
【0011】
しかし、実際の連結車両の後退運転は非常に難しいため、周囲の安全を目視確認などしながらの運転であるので、モニターに注視する余裕がなく、有効な運転支援を行えているとは言い難いものであった。
【0012】
また、トラクタ(牽引車)とトレーラ(被牽引車)は連結角を持って屈曲されているため、予測される後退時の車両進行方向と車両の位置関係が複雑であることから、モニターに表示された内容から視覚によって現状を直ちに把握することが難しく、現状ではドライバーの腕(熟練)によるところが大きいといった実情がある。
【0013】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、トラクタ(牽引車両)とトレーラ(被牽引車両)からなる連結車両の後退運転の際に、連結角に関連する情報を、音声、ビープ音、効果音、音楽その他の音に関連する情報として、運転者に提供することにより連結車両の後退運転を支援する連結車両の後退運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、本発明に係る連結車両の後退運転支援装置は、
牽引車両と、該牽引車両に対して略垂直方向に延びる連結軸廻りに回転可能に連結される被牽引車両と、からなる連結車両の後退運転支援装置であって、
牽引車両の操舵角を取得する操舵角取得手段と、
牽引車両に対する被牽引車両の連結軸廻りの回転角である連結角を取得する連結角取得手段と、
を備え、
現在の操舵角を維持して車両を後退させたときの連結角の変化具合を、音に関する情報に変換し、当該音に関する情報を運転者に報知することにより、連結車両の後退運転を支援するものにおいて、
前記現在の操舵角を維持して車両を後退させたときの連結角の変化具合は、連結角が所定以上に増加する場合、連結角が所定範囲内に収まる場合、連結角が所定以上に減少する場合に分けられ、それぞれの場合に応じた音の情報を運転者に報知する
ことを特徴とする。
【0016】
本発明において、
前記牽引車両に対する被牽引車両の連結軸廻りの回転角である連結角θを、
【数2】
δ:実操舵角(実舵角)
L1:トラクタの車軸間距離
L2:連結点からトレーラの後輪軸までの距離
Lh:カプラオフセット(連結点からトラクタの後輪軸までの距離)
V1:トラクタの後輪の車輪速(トラクタの旋回中心に関する後輪軸の旋回速度)
V2:トレーラの後輪の車輪速(トレーラの旋回中心に関する後輪軸の旋回速度)
により取得することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、トラクタ(牽引車両)とトレーラ(被牽引車両)からなる連結車両の後退運転の際に、連結角に関連する情報を、音声、ビープ音、効果音、音楽その他の音に関連する情報として、運転者に提供することにより連結車両の後退運転を支援する連結車両の後退運転支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態に係る連結車両の連結角検出装置が適用される連結車両(トラクタ及びトレーラ)の一例を示す側面図である。
図2】同上実施の形態に係る連結車両の連結角検出装置が適用される連結車両(トラクタ及びトレーラ)の一例を示す平面図である。
図3】(A)は連結車両の後退運転での旋回のきっかけを与える運転操作を説明する平面図であり、(B)は連結車両の後退運転において連結車両の連結角を一定に保つ場合の運転操作について説明する平面図であり、(C)は連結車両の後退運転においてハンドル(ステアリング)を直進状態に戻す運転操作について説明する平面図である。
図4】後退運転の際に、操舵角に対して連結角が所定以上に増加する領域、略一定に維持される領域、所定以上に減少する領域を説明する図である。
図5】同上実施の形態に係る連結車両の連結角検出装置における連結角θを幾何学モデルに基づき検出(取得)するための説明図である。
図6】(A)は本実施の形態に係る連結車両の運転支援システムの一構成例を示す斜視図であり、(B)は連結車両の後退運転における低速旋回時の幾何学モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0020】
本発明の一実施の形態を、添付の図面に基づいて説明する。
図1図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る連結車両10は、トラクタ(牽引車両)1とトレーラ(被牽引車両)2とからなり、トラクタ(牽引車)1とトレーラ(被牽引車)2は、連結器3により、略垂直方向に延在される連結軸廻りに回転可能に連結された構成となっている。なお、連結器3は、トラクタ(牽引車両)1とトレーラ(被牽引車両)2とを切り離し可能に構成することができる。
【0021】
なお、トレーラ(被牽引車両)2はトラクタ(牽引車両)1に対して略垂直方向に延びる連結軸廻りに回転可能に連結され、トラクタ(牽引車両)1に対するトレーラ(被牽引車両)2の連結軸廻りの回転角を連結角と称する。
【0022】
なお、図1において、符号4は、ステアリングの操舵角を検出するための操舵角センサ(ステアリングセンサ)であり、符号5は、ドライバー(運転者)に、音や音声やなどの音に関する情報を聴覚を通じて伝達するためのスピーカーである。
【0023】
ここで、運転が難しいとされる連結車両10の後退での方向転換(車庫入れなど)の際の運転操作について説明する。
(1)後退での車庫入れのように、連結車両10をある目的の方向に後退させる場合には、まず初めに、トレーラ2の後端側が目的の方向を向くようにトレーラ2を旋回(回転)させる必要がある。そのために、図3(A)に示すように、トラクタ1を、トレーラ2に旋回(回転)のきっかけを与えるために、目的の方向とは逆方向にハンドルを切る。
【0024】
(2)次に、トレーラ2の回転(後退方向)の方向付けができたら、図3(B)に示すように、トラクタ1のハンドル操作量(操舵角)を一定に保ちつつ、連結角θを一定に維持しながら連結車両10を後退させていく。
【0025】
(3)そして、図3(C)に示すようにトレーラ2側が目的の方向と一致したら(例えば、車庫入れの枠線等と平行になったら)、ハンドルを直進状態に戻し目定位置まで直線的に後退させる。
【0026】
従って、連結車両10のトラクタ1とトレーラ2の連結角θを取得することができれば、ドライバーに連結角θやトレーラ2の予測進行方向(図6(B)参照)などに関する情報を提供することができ、後退での車庫入れの際の運転を支援することに貢献することができる。
【0027】
ここで、連結車両10の後退運転は非常に難しいことに加え、周囲の安全確認なども行ないながらの操作であるので、ドライバーは後退運転中にモニター等に注視する余裕がなく、モニター等の視覚を介した情報の提示では有効な運転支援を行えていない、といった実情があった。
【0028】
また、本発明者は、種々の検討、実験等を行った結果、連結車両10の後退運転を円滑に行うためには、現在の操舵角に対する連結角の増減(変化)が重要な情報の一つであり、かかる情報を提供するだけでも十分にドライバーに対する後退運転の支援に貢献可能であるという知見を得た。言い換えると、現在の操舵角δであれば、連結角θを一定に維持しながら連結車両10を後退させることができる状態(図3(B)の状態)であることをドライバーに教えることは、非常に有益な情報となり得ることに想到した。
【0029】
このため、本実施の形態に係る連結車両の後退運転支援システム(装置)では、ドライバーに対する情報の提供方法として、視覚による情報の提供と共に、或いは視覚による情報の提供に代えて、連結角θに関する情報を、音声、ビープ音、効果音、音楽その他の音に関連する情報としてスピーカー5等を介してドライバーに提供することとした。
【0030】
その内容の一例としては、例えば、低速域(後退時の車速は3km/m以下)において幾何学的に算出できる操舵角δと連結角θの関係より、連結角θが所定以上に増加する領域(図4の領域A参照)、連結角θが所定範囲内に維持される(略一定に維持される)領域(図4の領域B及び一定曲線参照)、連結角θが所定以上に減少する領域(図4の領域C参照)を求め、図4に示すような関係を予めECU(電子制御ユニット)内のROMなどに記憶しておく。
【0031】
すなわち、本実施の形態では、例えば、現在の操舵角δを維持して車両を後退させたときの連結角θの変化具合として、連結角θが所定以上に増加する場合(図4の領域A参照)、連結角θが所定範囲内に収まる場合(図4の領域B参照)、連結角θが所定以上に減少する場合(図4の領域C参照)に区分けする。
【0032】
そして、ECUでは、現在の操舵角δにて後退すると(現在の操舵角δを維持して後退すると)、連結角θが増えるのか、減るのか、一定(略一定)であるのかを、音や音声にてドライバーに知らせるようにする。
【0033】
例えば、図4に示したように、連結角θが増加する場合には比較的長い間隔でスピーカー5等からビープ音(警告音)(例えば、ピーーーッ、ピーーーッ、ピーーーッ、・・・)を発し、連結角θが減少する場合には比較的短い間隔でビープ音(警告音)(例えば、ピッ、ピッ、ピッ・・・)を発し、連結角θが略一定(変化しない)場合には、無音としたり或いは小さい音で鳴り続けるなど、状態に応じて音の発し方を変化させることで、ドライバーに連結角θの変化具合(変化度合い)を報知するようにする。
【0034】
また、現在の操舵角δに対する連結角θの増減が比較的大きい場合(現在の操舵角δを維持すると、現在の連結角θから急激に離れていくといった状態の場合)には、その変化度合いの大きさに応じて音量を徐々に大きくしたりすることで、その状態をドライバーに報知して認知させる構成とすることも可能である。
【0035】
なお、録音した音声などによって、連結角θが増加する場合にはその旨を報知し、連結角θが減少する場合にはその旨を報知し、連結角θが略一定(変化しない)場合にはその旨を報知するようにする構成とすることもできる。
【0036】
ドライバーは、このように現在の操舵角δにて後退を行うと、連結角θがどのように変化するのか、或いは現在の連結角θがそのまま一定に維持されるのか、についての連結角θの変化に関連する情報を、モニターなどを見ることなく、音の情報として聴覚を介して正確かつ即座に知ることができるため、その後のハンドル操作をどのようにすべきかについて即座に判断することができる。
【0037】
このため、ドライバーは、特に図3(B)のような場面において、モニターなどを注視しなくても、トレーラ側の進行方向(後退運転状況)を容易かつ即座に把握することができることになり、ドライバーは、周辺の安全などを目視確認しながら、円滑な後退運転を行うことができることになる。
【0038】
すなわち、連結車両の後退運転の際に連結角θの変化に関連する情報を音の情報として聴覚を介して正確かつ即座にドライバーに伝えることができるため、その後のハンドル操作をどのようにすべきかなどについてドライバーを支援することができるので(連結車両の後退運転を支援することができるので)、従来のようなモニター表示などの視覚によりドライバーに情報を伝達する場合に比べて、ドライバーの腕(熟練)によることなく、円滑な後退運転の実現に貢献可能である。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、トラクタ(牽引車両)とトレーラ(被牽引車両)からなる連結車両の後退運転の際に、連結角に関連する情報を、音声、ビープ音、効果音、音楽その他の音に関連する情報として、運転者に提供することにより連結車両の後退運転を効果的に支援することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、図6(A)に示すような連結車両の後退運転支援システム(装置)が採用され、例えば、連結角取得装置(本発明に係る連結角取得手段に相当)では、以下のようにして連結車両10のトラクタ1とトレーラ2の連結角θを取得する構成とすることができる。
【0041】
また、本実施の形態に係る連結車両の後退運転支援システム(装置)における連結角取得装置では、
既知の情報であるとトラクタ1の車軸間距離L1(操舵輪軸と後輪軸の間の距離)と、トレーラ2の連結点(連結軸)と後輪軸の間の距離L2と、トラクタ1の連結点(連結軸)と後輪軸の間の距離Lhと、を用いて、図5に示すような幾何学モデルに基づいて演算により連結角θを取得(算出)する。
【0042】
ここで、連結角θは、トラクタ(牽引車)1とトレーラ(被牽引車)2との連結器3による連結点(鉛直な連結軸)廻りの回転角度である(或いは、平面図上におけるトラクタ(牽引車)1の長手方向中心軸と、トレーラ(被牽引車)2の長手方向中心軸と、が交差する角度である)。
【0043】
そして、本実施の形態に係る連結角検出装置では、トラクタ1の前輪(操舵輪)の実操舵角δを、ステアリングの操舵角センサ(ステアリング船さ)4により取得される実舵角(実際の操舵角)に基づいて取得する。具体的には、実操舵角δは、例えば、ステアリングの操舵角センサ4により取得される舵角にステアリングギヤボックスのギヤ比をかけることで取得することができる。
なお、操舵角センサ4は、連結車両10に他の目的(DSC(ダイナミック・スタビリティー・コントロール)など)のために既に搭載されているセンサである。
本実施の形態において実操舵角を取得する構成が、本発明に係る操舵角取得手段に相当する。
【0044】
また、本実施の形態では、トラクタ1の後輪の車輪速度V1を車輪速度センサにより取得すると共に、トレーラ2の後輪の車輪速度V2を車輪速度センサにより取得する。例えば、回転速度にタイヤ径を考慮することで取得することができる。また、左右輪で速度差がある場合は、左右輪の平均値を代表値として利用することができる。
なお、トラクタ1の後輪の車輪速度センサ、トレーラ2の後輪の車輪速度センサは、他の目的(DSC(ダイナミック・スタビリティー・コントロール)、アンチロックブレーキシステムなど)のために既に搭載されているセンサである。
【0045】
なお、図5において、
θ:連結角(演算により取得)
δ:実操舵角(実舵角)(操舵角センサ4の出力に基づき取得)
L1:トラクタの車軸間距離(ホイールベース)(既知の値)(コンピュータに入力或いは記憶)
L2:連結点からトレーラの後輪軸までの距離(既知の値)(コンピュータに入力或いは記憶)
Lh:カプラオフセット(連結点からトラクタの後輪軸までの距離)(既知の値)(コンピュータに入力或いは記憶)
V1:トラクタの後輪の車輪速(トラクタの旋回中心に関する後輪軸の旋回速度)(車輪速センサの出力に基づき取得)
V2:トレーラの後輪の車輪速(トレーラの旋回中心に関する後輪軸の旋回速度)(車輪速センサの出力に基づき取得)
Vc:連結点の速度(演算により取得)
R1:連結点からトラクタの旋回中心までの距離(演算により取得)
R2:連結点からトレーラの旋回中心までの距離(演算により取得)
R3:トラクタの車両中心線X(後輪軸の幅方向中心線)からトラクタ旋回中心までの最短距離(演算により取得)
R4:トレーラの車両中心線Y(後輪軸の幅方向中心線)からトレーラ旋回中心までの最短距離(演算により取得)
α:トラクタの車両中心線Xと、連結点とトラクタ旋回中心を結ぶ線と、のなす角(交差角)(演算により取得)
と定義する。
【0046】
図5の幾何学モデルによると、
Vc/V1=R1/R3、 V2/Vc=R4/R2の関係から、
V2/V1=R4/R2・R1/R3 …(式1)

R4/R2=cos(π/4+θ−α) …(式2)

また、
R3=L1/tanδ
R1=(Lh+R31/2=(Lh+(L1/tanδ)1/2より、
R1/R3=((Lh・tanδ)+L11/2/L1 …(式3)

α=tan−1(L1/(Lh・tanδ)) …(式4)

ここで、式1に、式2、式3、式4を代入し変形すると、
cos(π/4+θ−α)=V2/V1・L1/((Lh・tanδ)+L11/2

θ=cos−1(V2/V1・L1/((Lh・tanδ)+L11/2−π/4+α
=cos−1(V2/V1・L1/((Lh・tanδ)+L11/2−π/4+
tan−1(L1/(Lh・tanδ))
となる。
すなわち、
【数3】
…(数式A)
これにより、連結角θを演算により取得(検出)することができる。
【0047】
このように、本実施の形態に係る連結角取得(検出)装置によれば、既に車両に搭載されているセンサ類を活用すると共に、上述した幾何学モデルに基づく演算により、簡単かつ低コストで、連結車両10のトラクタ1とトレーラ2の連結角θを取得(検出)することができる。
【0048】
なお、本実施の形態に係る連結車両の連結角取得(検出)装置によれば、長さ(L2)が異なるトレーラ2を連結するような場合でも、L2の値を変更するだけで、簡単に連結車両10のトラクタ1とトレーラ2の連結角θを取得(検出)することができる。
【0049】
但し、本発明に係る連結角取得手段は、上記に限らず、連結角センサなどを用いて連結角θを取得する構成とすることも可能である。
なお、連結角センサ(連結角検出装置)としては、例えば、実開2002−145133号公報、特開平11−160063号公報、特開平08−332973号公報などに記載されているようなものを利用することもできる。
【0050】
上述したような本実施の形態に係る連結車両の連結角取得(検出)装置によれば、比較的簡単かつ低コストな構成で、トラクタとトレーラからなる連結車両の連結角の取得(検出)のために別途特殊なハードウェアを必要とすることなく、連結角を取得(検出)することができる。
【0051】
ところで、上記各実施の形態において、連結車両はセミトレーラに限定されるものではなく、フルトレーラ(牽引機能と搭載機能を有するトラクタが、牽引機能が無く搭載機能のみを有するトレーラを連結し牽引するような連結車両)にも適用可能である。
【0052】
また、トレーラ2の後輪軸が前後方向に並ぶ2軸(図3図6(A))の場合には、図5の幾何学モデルにおいては後輪前後2軸の平均値をL2やV2の値として用いることで、上記と同様に処理する(取り扱う)ことができる。
【0053】
以上で説明した各実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 トラクタ(牽引車両)
2 トレーラ(被牽引車両)
3 連結器
4 ステアリングセンサ(操舵角センサ)
5 スピーカー
10 連結車両(セミトレーラ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6