(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1はワイパ装置の車両への搭載状態を示す概要図を、
図2は
図1のDR側ワイパモータを出力軸側から見た斜視図を、
図3はモータ部の構造を説明する部分拡大断面図を、
図4は
図3のA−A線に沿う断面図を、
図5はハウジング内の詳細を示す斜視図(ギヤカバー無し)を、
図6は減速機構、回転軸およびロータを示す斜視図を、
図7はギヤカバーの内側を示す分解斜視図を、
図8は軽自動車、中級車および高級車の車室内(運転席近傍)における音響感度[dB]を比較したグラフをそれぞれ示している。
【0022】
図1に示すように、自動車等の車両10の前方側には、フロントガラス(ウィンドシールド)11が設けられている。フロントガラス11の前端部側(図中下側)で、かつ車両10の車幅方向(図中左右方向)に沿う運転席側および助手席側には、それぞれDR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30が搭載されている。このように、本実施の形態に係るワイパ装置は、運転席側および助手席側にそれぞれワイパ装置を備えた対向払拭式ワイパ装置を採用している。ここで、DR側は運転席側を、AS側は助手席側をそれぞれ示している。
【0023】
DR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30は、それぞれDR側ワイパモータ21およびAS側ワイパモータ31を備えている。各ワイパモータ21,31は、フロントガラス11上に設けられたDR側ワイパアーム22およびAS側ワイパアーム32(詳細図示せず)を、それぞれ所定の揺動角度で揺動駆動する。これにより、各ワイパアーム22,32の先端部にそれぞれ設けた各ワイパブレード(図示せず)が、フロントガラス11上を往復払拭動作し、ひいてはフロントガラス11に付着した雨水等(付着物)を払拭して良好な視界が確保される。ここで、各ワイパアーム22,32および各ワイパブレードは、本発明におけるワイパ部材を構成している。
【0024】
車両10の前方側で、かつフロントガラス11の前端部分の近傍には、車両10の車体を形成するカウルトップパネル12が設けられている。カウルトップパネル12は、車両10のDR側とAS側との間、つまり車両10の左右方向を横切るようにして延びており、本発明における車体固定部を構成している。また、車両10のDR側およびAS側には、車両10の前後方向(図中上下方向)に延び、かつ車体を形成するフロントサイドメンバー13がそれぞれ設けられている。さらに、カウルトップパネル12の前方側には、ダッシュパネルアッパー14が設けられている。ダッシュパネルアッパー14においても、車両10の左右方向を横切るようにして延びており、本発明における車体固定部を構成している。
【0025】
ここで、カウルトップパネル12およびダッシュパネルアッパー14の長手方向両側は、DR側およびAS側のフロントサイドメンバー13にそれぞれ溶接等によって強固に固定されている。なお、カウルトップパネル12、フロントサイドメンバー13およびダッシュパネルアッパー14は、いずれも高張力鋼板(高強度部材)によって所定形状に形成されている。
【0026】
DR側ワイパ装置20は、ダッシュパネルアッパー14に溶接等により固定されたDR側差し込み固定部14aと、DR側のフロントサイドメンバー13に溶接等により固定されたDR側第1ねじ固定部13a、DR側第2ねじ固定部13bに固定されている。一方、AS側ワイパ装置30は、ダッシュパネルアッパー14に溶接等により固定されたAS側第1ねじ固定部14bと、AS側のフロントサイドメンバー13に溶接等により固定されたAS側第2ねじ固定部13cと、AS側のフロントサイドメンバー13およびカウルトップパネル12の双方に溶接等により固定されたAS側差し込み固定部12aに固定されている。ここで、AS側差し込み固定部12aは、
図10に示す第1ブラケット3と同様の形状を成している。
【0027】
このように、DR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30は、車両10の車体にそれぞれ3点支持で固定されている。なお、DR側ワイパモータ21およびAS側ワイパモータ31は、
図1に示すようにそれぞれ同じものを用いている。そして、各ワイパモータ21,31は、それぞれ3つの取付部a,b,cを備えており、各取付部a,b,cのうちの取付部aは、差し込み式で車体に固定されている。これに対し、各取付部a,b,cのうちの各取付部b,cは、それぞれ固定ボルト(図示せず)を介して車体に固定されている。
【0028】
各ワイパモータ21,31は、それぞれ同じものであるため、以下、DR側ワイパモータ21を代表して、その詳細構造について図面を用いて説明する。
【0029】
図2ないし
図7に示すように、DR側ワイパモータ(ブラシレスワイパモータ)21は、アルミニウム製のハウジング40、プラスチック製のモータカバー60およびプラスチック製のギヤカバー80を備えている。これらのハウジング40、モータカバー60およびギヤカバー80は、互いに複数の締結ねじS(
図2において2つのみ示す)によって互いに連結されている。ここで、ハウジング40とモータカバー60との間、およびハウジング40とギヤカバー80との間には、それぞれOリング等のシール部材(図示せず)が設けられ、これによりDR側ワイパモータ21の内部への雨水等の進入が防止される。
【0030】
ハウジング40は、溶融したアルミ材料を鋳造成形等することで所定形状に形成され、モータ収容部41と減速機構収容部42とを備えている。モータ収容部41は、
図3に示すように有底筒状に形成されている。モータ収容部41の軸方向一端側(
図3中右側)は開口されており、当該開口部分には、モータカバー60の装着部62aが装着される段付形状かつ環状のカバー装着部41aが設けられている。一方、モータ収容部41の軸方向他端側(
図3中左側)には、環状底部41bが設けられ、当該環状底部41bの中心部分には、回転軸46が回転自在に貫通される貫通孔41cが形成されている。
【0031】
モータ収容部41の内側には、環状の段差部43が設けられている。段差部43は、環状の底壁43aと筒状の側壁43bとから構成されている。そして、段差部43の内側には、ステータ(固定子)44が収容されている。ステータ44は、磁性体よりなる複数の鋼板44aを積層して互いに接着することで略円筒形状に形成されている。ステータ44の外周部の軸方向に沿う減速機構収容部42側の略半分が、モータ収容部41の内周部を形成する側壁43bに圧入され、これにより両者は強固に固定されている。なお、ステータ44の外周部と側壁43bの内周部との間には、凹凸係合部(図示せず)が設けられている。これによりDR側ワイパモータ21の駆動時において、ステータ44がハウジング40に対して相対回転することが無い。
【0032】
ステータ44の軸方向両側には、絶縁体である樹脂製のコイルボビン44bが突出して設けられている。コイルボビン44bには、U相,V相,W相(3相)のコイル44cが所定の巻き数で巻かれている。これらのU相,V相,W相のコイル44cにおける端部(図示せず)は、スター結線(Y結線)の巻き方となるように電気的に接続されている。ただし、各コイル44cの結線方法としては、スター結線に限らず、例えばデルタ結線(三角結線)等、他の結線方法を採用しても良い。
【0033】
また、
図4に示すように、ステータ44を形成する複数の鋼板44aは、環状の本体部44dを備えている。本体部44dの外径寸法は、モータ収容部41の内径寸法よりも若干大きく設定されている。これにより、ステータ44は、モータ収容部41の内側に圧入されている。
【0034】
本体部44dの径方向内側には、コイル44cが巻かれた6つのティース44eが一体に設けられている。これらのティース44eは、本体部44dの周方向に等間隔(60度間隔)で配置されている。また、隣り合うティース44eの間には、絶縁体であるコイルボビン44bを介してコイル44cが配置された6つのスロットSL1〜SL6が配置されている。
【0035】
そして、各コイル44cは、ハウジング40の内部に設けられた配線ユニット(図示せず)を介して、ギヤカバー80の内側に固定された制御基板90(
図7参照)に電気的に接続されている。各コイル44cには、制御基板90に設けられたFETモジュール96(
図7参照)から、所定のタイミングで駆動電流が供給される。これにより、ステータ44に電磁力が発生して、当該ステータ44の内側にあるロータ45が、所定の回転方向に所定の駆動トルク(駆動力)で回転駆動される。
【0036】
図3および
図4に示すように、ステータ44の径方向内側には、所定の隙間(エアギャップ)を介してロータ(回転子)45が回転自在に設けられている。ロータ45は、磁性体である複数の鋼板(図示せず)を積層して互いに接着することで略円柱形状に形成されている。そして、ロータ45の径方向外側の表面には、略円筒形状に形成された永久磁石45aが装着されている。
【0037】
永久磁石45aは、ロータ45の回転方向に沿って磁極が交互に配置(N極→S極→N極→S極)されるように4極に着磁されている。このように、DR側ワイパモータ21は、ロータ45の表面に永久磁石45aが装着されたSPM(Surface Permanent Magnet)構造のブラシレスモータを採用している。ただし、SPM構造のブラシレスモータに限らず、ロータ45に複数の永久磁石を埋め込んだIPM構造のブラシレスモータを採用しても良い。
【0038】
また、略円筒形状の1つの永久磁石45aに換えて、ロータ45の軸線と交差する方向の断面形状が略円弧形状に形成された4つの永久磁石を、ロータ45の周方向に沿って磁極が交互に配置されるように等間隔で設けたものを採用しても良い。
【0039】
このように、本実施の形態に係るDR側ワイパモータ21は、4極6スロット型のブラシレスモータを駆動源に用いている。これにより、
図4に示すように、ロータ45を中心としてステータ44の形状が鏡像対称となる。したがって、ロータ45の回転時に発生するステータ44による磁気吸引力Fが、
図4の太線矢印に示すように、ロータ45の回転方向に沿って相殺するように作用することになる。これにより、ロータ45の加振が抑えられて、ロータ45および回転軸46の回転振れが抑制される。その結果、メカノイズの発生が効果的に抑制される。
【0040】
さらに、ロータ45の回転時に発生する磁気ノイズの周波数が、DR側ワイパモータ21の通常作動時(Lo作動時)において、概ね160Hz〜400Hzの低周波数となる。ここで、磁気ノイズの周波数をより低周波数側にオフセットさせることで、より聞き取り難くすることができる。一般的に人間の聴覚としては、低周波数よりも高周波数の方が音を捉え易く、かつ知覚され易い。このような磁気ノイズの低減という観点に着目すると、2極3スロット型のブラシレスモータが理想型となる。しかしながら、DR側ワイパモータ21においては、上述のようにメカノイズの発生についても抑制する必要がある。そのため、メカノイズの発生抑制および磁気ノイズの発生抑制を両立できる最小の組み合わせとして、4極6スロットル型のブラシレスモータを採用している。
【0041】
図3,
図4および
図6に示すように、ロータ45の軸心には、回転軸46の軸方向一端側(
図6中右側)が固定されている。回転軸46の軸方向他端側(
図6中左側)には、転造加工等により形成された螺旋状の歯部46aを備えたウォーム46bが一体に設けられている。ここで、回転軸46に設けられるウォーム46bは、貫通孔41cよりも減速機構収容部42側に配置され、ウォーム46bに噛み合うウォームホイール50とともに減速機構SDを構成している。
【0042】
回転軸46の軸方向に沿うロータ45とウォーム46bとの間には、第1ボールベアリング47が設けられている。第1ボールベアリング47は、鋼材よりなる外輪47aおよび内輪47bと、外輪47aと内輪47bとの間に設けられる複数の鋼球47cとから形成されている。そして、内輪47bは、回転軸46に止め輪やカシメ等の固定手段(図示せず)によって固定されている。外輪47aは、ハウジング40のモータ収容部41と減速機構収容部42との間にある第1軸受装着部48に装着されている。
【0043】
ここで、第1ボールベアリング47は、第1軸受装着部48に対して、弾性を有するストッパ部材48aにより押圧されて固定されている。これにより、第1ボールベアリング47を第1軸受装着部48に固定することで、回転軸46は軸方向へ移動不能となる。したがって、ハウジング40の内部において、回転軸46は軸方向にがたつくこと無くスムーズに回転可能となっている。
【0044】
図6に示すように、回転軸46の軸方向他端側には、第2ボールベアリング49が装着されている。第2ボールベアリング49は、第1ボールベアリング47と同様に、鋼材よりなる外輪49aおよび内輪49bと、外輪49aと内輪49bとの間に設けられる複数の鋼球(図示せず)とから形成されている。そして、第2ボールベアリング49は、第1ボールベアリング47よりも小型のボールベアリングを採用している。
【0045】
ここで、第1ボールベアリング47は、回転軸46を回転自在に支持し、かつ回転軸46を軸方向に移動不能に支持する機能を有するため、大型として頑丈にしている。一方、第2ボールベアリング49は、回転軸46の軸方向他端側の回転振れを抑制する機能のみを有するため、小型で十分に対応することができる。
【0046】
本実施の形態においては、DR側ワイパモータ21にブラシレスモータを採用し、かつ減速機構SDの減速比を大きくすることで、DR側ワイパモータ21の小型化を実現している。したがって、ウォーム46bの歯部46aのピッチは狭く、かつウォーム46bは高速回転するようになっている。そのため、本実施の形態では、回転軸46のウォーム46b側の回転振れを抑えて静粛性を向上させつつ回転効率を上げるために、第2ボールベアリング49を設けている。ここで、必要とされる減速機構SDの減速比(ワイパモータの仕様)によっては、第2ボールベアリング49を省略することもできる。
【0047】
図6に示すように、回転軸46の軸方向に沿うウォーム46bと第1ボールベアリング47との間には、環状の第1センサマグネットMG1が固定されている。つまり、ウォーム46bおよび第1センサマグネットMG1は、いずれも第1ボールベアリング47と第2ボールベアリング49との間に設けられている。
【0048】
ここで、ロータ45(永久磁石45a)の軸方向寸法L1は、ウォーム46bの軸方向寸法L2よりも小さい寸法とされている(L1<L2)。これにより、DR側ワイパモータ21の回転軸46の軸方向に沿う寸法を小さくしている。また、DR側ワイパモータ21はブラシレスモータであるため、整流子やブラシを備えない分、この点からもDR側ワイパモータ21の回転軸46の軸方向に沿う寸法を小さくしている。
【0049】
第1センサマグネットMG1は、回転軸46の回転方向に沿って複数の磁極(S極,N極)が着磁されている。そして、制御基板90(
図7参照)の第1センサマグネットMG1との対向部分には、第1ホールIC94a、第2ホールIC94b、第3ホールIC94cが配置されている。これにより、各ホールIC94a,94b,94cによって回転軸46の回転状態(回転数や回転方向等)が検出される。
【0050】
図2および
図5に示すように、減速機構収容部42は、有底の略バスタブ形状に形成されている。減速機構収容部42は、底部42aおよび当該底部42aを囲うようにして側壁42bが設けられている。また、側壁42bの底部42a側とは反対側(
図5中上側)には開口部42cが設けられている。底部42aおよび開口部42cは、ウォームホイール50の軸方向に対向しており、開口部42cは、ギヤカバー80(
図7参照)によって密閉される。
【0051】
減速機構収容部42の底部42aには、減速機構収容部42の外部(
図2中上側)に向けて突出されたボス部42dが一体に設けられている。また、減速機構収容部42の側壁42bには、ボス部42dを中心に放射状に突出された3つの取付脚(固定脚)42eが一体に設けられている。これらの取付脚42eのうちの2つには、固定ボルト(図示せず)が貫通するゴムブッシュRBがそれぞれ装着されている。また、各取付脚42eのうちの1つには、DR側差し込み固定部14a(
図1参照)に差し込まれる差し込みゴムIRが装着されている。
【0052】
これにより、DR側ワイパモータ21は、各ゴムブッシュRBおよび差し込みゴムIRを介して車両10に固定され、各ゴムブッシュRBおよび差し込みゴムIRが緩衝部材として機能する。よって、DR側ワイパモータ21を車両10(
図1参照)に固定した際に、DR側ワイパモータ21の振動が車両10に伝達され難くなって、より静粛性が向上する。また、これとは逆に、車両10の振動もDR側ワイパモータ21に伝達され難くなって、DR側ワイパモータ21を振動から保護することができる。
【0053】
図3および
図5に示すように、減速機構収容部42の内部には、ウォームホイール50が回転自在に収容されている。ウォームホイール50は、例えばPOM(ポリアセタール)プラスチック等により略円板状に形成され、外周部分にはギヤ歯(歯部)50aが形成されている。そして、ウォームホイール50のギヤ歯50aには、ウォーム46bの歯部46aが噛み合わされている。
【0054】
ウォームホイール50の回転中心には、出力軸51の軸方向一端側が固定されており、当該出力軸51は、減速機構収容部42のボス部42dにより回転自在に支持されている。出力軸51の軸方向他端側は、減速機構収容部42の外部に延在しており、出力軸51の軸方向他端部には、DR側ワイパアーム22(
図1参照)の基端部が固定されている。これにより、出力軸51はロータ45(
図3参照)によって回転される。具体的には、回転軸46の回転速度が減速機構SDによって減速され、減速されて高トルク化された回転力が、出力軸51から外部のDR側ワイパアーム22に伝達される。このように、減速機構SDは、ロータ45の回転を減速して、減速されて高トルク化された回転力をDR側ワイパアーム22に伝達する。
【0055】
ウォームホイール50の回転中心であって、かつ出力軸51が設けられる側とは反対側には、
図5に示すように、円盤状の第2センサマグネットMG2が固定されている。第2センサマグネットMG2は、出力軸51の回転方向に沿って複数の磁極(S極,N極)が着磁されている。第2センサマグネットMG2は、出力軸51の軸方向一端側に設けられ、出力軸51およびウォームホイール50と一体回転するようになっている。そして、制御基板90(
図7参照)の第2センサマグネットMG2との対向部分には、MRセンサ95が配置されている。これにより、MRセンサ95によって出力軸51およびウォームホイール50の回転状態(回転方向や回転位置等)が検出される。
【0056】
図5に示すように、減速機構収容部42の側壁42bには、第2軸受装着部52が設けられている。第2軸受装着部52は第1軸受装着部48(
図3参照)と同軸上に配置され、第2軸受装着部52の内部には、第2ボールベアリング49が収容されている。ここで、第2ボールベアリング49の第2軸受装着部52への装着は、第2ボールベアリング49を回転軸46の軸方向他端側に装着した状態のもとで、第2ボールベアリング49を貫通孔41cと第1軸受装着部48とを通過させることにより行われる。
【0057】
なお、第2ボールベアリング49は、第2軸受装着部52に対して、圧入嵌合させるのでは無く、若干のクリアランスを持って遊嵌させている。これにより、例えば、ハウジング40の製造時等において、第1軸受装着部48と第2軸受装着部52とが若干軸ズレを起こした場合であっても、回転軸46の回転抵抗が増大するようなことが無い。これによっても、DR側ワイパモータ21から発生するメカノイズの発生が抑制されて静粛性が向上する。
【0058】
図2,
図3および
図5に示すように、モータカバー60は有底筒状に形成され、略円盤状に形成された底部61と、当該底部61を囲うようにして設けられた筒状壁部62とを備えている。底部61の中心部分には、筒状壁部62側に窪んだ凹部61aが設けられ、当該凹部61aは、底部61の強度を高めるために設けられている。つまり、底部61に凹部61aを設けることで、底部61が撓み難くなる。これにより、DR側ワイパモータ21の作動時の振動等により、モータカバー60が共振するのを防止して、DR側ワイパモータ21の静粛性を向上させている。
【0059】
筒状壁部62のモータ収容部41側には、
図3に示すように、当該モータ収容部41のカバー装着部41aに装着される装着部62aが設けられている。この装着部62aは環状に形成され、カバー装着部41aに整合するように、カバー装着部41aと同様に段付き形状に形成されている。
【0060】
図7に示すように、ギヤカバー80は、減速機構収容部42の開口部42c(
図5参照)を密閉するものであって、開口部42cと同様の外郭形状を成している。ギヤカバー80は、底壁部81および側壁部82を備えている。ギヤカバー80の内側で、かつ底壁部81には、第1固定ねじSC1によって制御基板(基板)90が固定されている。
【0061】
また、ギヤカバー80の側壁部82には、車両10側の外部コネクタ(図示せず)が接続されるコネクタ接続部82aが一体に設けられている。コネクタ接続部82aの内側には、複数の導電部材CMの一端側の端子(図示せず)が露出されている。一方、複数の導電部材CMの他端側の端子TMは、制御基板90に電気的に接続される。なお、車両10側の外部コネクタには、車載バッテリやワイパスイッチ(図示せず)が電気的に接続されている。
【0062】
図7に示すように、制御基板90は、ギヤカバー80の底壁部81側とは反対側、つまり回転軸46および出力軸51がある側(図中上側)に向けられる第1面91と、ギヤカバー80の底壁部81側、つまり第1面91側とは反対側(図中下側)に向けられる第2面92とを備えている。
【0063】
制御基板90の第1面91には、DR側ワイパモータ21を統括的に制御するCPU93と、第1センサマグネットMG1(
図6参照)と対向する第1ホールIC94a,第2ホールIC94b,第3ホールIC94cと、第2センサマグネットMG2(
図5参照)と対向するMRセンサ95とが設けられている。なお、3つの各ホールIC94a,94b,94cは、第1センサマグネットMG1の回転方向に沿って所定間隔で配置されている。
【0064】
一方、制御基板90の第2面92には、駆動系の電子部品であるFETモジュール96と、他の電子部品であるキャパシタCPとが設けられている。ここで、FETモジュール96は、3相の各コイル44c(
図4参照)への通電状態を高速で切り替える複数のスイッチング素子によって構成されている。したがって、FETモジュール96は発熱し易くなっている。よって、FETモジュール96の放熱性を向上させるために、当該FETモジュール96は、熱伝導部材97aおよび熱伝導シート97bを介してハウジング40に接続されている。
【0065】
なお、
図7に示すように、FETモジュール96は、制御基板90をギヤカバー80の底壁部81に装着する前に、一対の第2固定ねじSC2によってギヤカバー80の底壁部81に固定される。その後、FETモジュール96は、はんだ付け等の接続手段によって、制御基板90の第2面92に実装される。
【0066】
ここで、CPU93およびFETモジュール96は、DR側ワイパモータ21に駆動電流を供給して、ロータ45(
図4参照)の回転を制御するようになっている。そして、CPU93は、各ホールIC94a,94b,94cおよびMRセンサ95で検出された検出値(矩形波信号)に基づいて、FETモジュール96を制御する。これにより、ロータ45の回転が制御される。
【0067】
ここで、軽自動車,中級車および高級車の車室内(運転席近傍)における音響感度[dB]を比較すると、通常作動時(Lo作動時)において、
図8のグラフに示すような傾向があることが分かった。つまり、軽自動車(車両重量が1t未満等)においては、例えば、軽量化重視で設計されるため、車体剛性が低い箇所が存在する。そのため、特に、1kHz前後の高周波ノイズが、高級車や中級車に比して車室内に響き易くなっている。
【0068】
一方、高級車(車両重量が2tクラス等)においては、例えば、車室内の静粛性を重視して設計されるため、高剛性の鋼板を多く採用しつつ防音シートを付加することが多い。そのため、1kHz前後の高周波ノイズは、車室内に響き難くなっている。なお、中級車(車両重量が1.5t未満等)においては、軽自動車と高級車との間の音響感度[dB]となっている。
【0069】
これに対し、減速機構SDのメカノイズの周波数である、概ね150Hz〜300Hz前後の低周波領域では、軽自動車から高級車まで、それほど変わらない音響感度[dB]となる。つまり、概ね150Hz〜300Hz前後の低周波ノイズは、車体剛性等に関わらず、車室内に響き難くかつ聞き取り難い周波数であると言える。
【0070】
ここで、本発明のDR側ワイパモータ21は、4極6スロット型のブラシレスモータであり、かつステータ44を車両10に固定されるハウジング40に固定している。したがって、DR側ワイパモータ21の磁気ノイズを、概ね150Hz〜500Hz前後の低周波数で、かつ概ね160Hz〜400Hzの低周波数領域に容易に合わせ込むことができる。
【0071】
よって、DR側ワイパモータ21が発生する磁気ノイズおよびメカノイズの双方を合わせて、概ね150Hz〜500Hz、より好ましくは比較的狭い領域の概ね160Hz〜400Hz前後の低周波数領域に統合して、軽自動車と高級車とで音響感度[dB]の差(図中網掛部(a)の面積,音響感度の最大値と最小値との差)を小さくすることができ、ひいては軽自動車から高級車まで問題無く対応することができる。つまり、本発明のDR側ワイパモータ21においては、DR側ワイパモータ21が発生する周波数領域を低周波側で統合することで、汎用性を大幅に向上させることができる。
【0072】
またさらに、周波数のばらつき(モータ全体としての周波数領域の幅)が少なくなることで、ノイズ対策を施すための周波数領域を限定できるため、緩衝部材(差し込みゴムIRやゴムブッシュRB等)によるさらなるノイズ対策が容易となる。ここで、一般的に緩衝部材としては高周波対策のもの、低周波対策のもの等、緩衝を狙う領域が緩衝部材に使われる材料によりある程度決まっている。そのため、対象となるモータの周波数のばらつき(モータ全体としての周波数領域の幅)が大きい場合、そのモータ全体としてノイズ対策が困難となる。
【0073】
また、参考例として記載したブラシ付きのモータは、小型軽量化に伴って磁極数が多く(例えば4極)、かつ払拭速度を「Hi」または「Lo」に可変とするために3つのブラシを備えている。このブラシ付きのモータの磁気ノイズは、高周波ノイズである、特に、1kHz前後の周波数となる。そのため、軽自動車と高級車とで音響感度[dB]の差(図中網掛部(b)の面積,音響感度の最大値と最小値との差)が大きくなり、軽自動車への採用が困難となる。
【0074】
さらに、上述した従前の技術においては、本発明よりも磁極数およびスロット数が多いブラシレスモータ(6極9スロット型)を採用しつつ、かつステータがギヤハウジングとは別体のヨークに固定されている。したがって、従前の技術における磁気ノイズは、本発明よりも高周波ノイズである、特に、600Hz前後の周波数となる。そのため、軽自動車と高級車とで音響感度[dB]の差(図中網掛部(c)の面積,音響感度の最大値と最小値との差)が、本発明よりも大きくなる。また、ステータは、ヨークおよびギヤハウジングの2つの部材を介して車両に固定されるため、これらのヨークとギヤハウジングとの固定強度のばらつき等に起因して、本発明よりも広い領域の概ね150Hz〜775Hzの周波数領域内で、製品毎に発生するノイズにばらつきが生じることになる。
【0075】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、4極6スロット型とすることで、ロータ45を中心としてステータ44の形状を鏡像対称にすることができる。よって、ロータ45の回転振れを抑制することができる。また、ロータ45の回転振れを抑制し得る必要最小限の極数およびスロット数として、回転時に生じる磁気ノイズの周波数を、減速機構SDのメカノイズ(概ね150Hz〜300Hz近傍の低周波数)に近付けることができる。これにより、DR側ワイパモータ21が発生する磁気ノイズおよびメカノイズの周波数を、それぞれ低周波数側で統合することができ、ひいては車室内での音響感度[dB]を小さくして、静粛性を向上させることができる。よって、軽自動車から高級車まで容易に対応することができ、さらには電気自動車やハイブリッド車両等にも適用することができる(汎用性向上)。
【0076】
また、ハウジング40の内側にステータ44を固定しつつ、ハウジング40には、カウルトップパネル12,フロントサイドメンバー13およびダッシュパネルアッパー14に固定される取付脚42eを設けたので、磁気ノイズの発生源であるステータ44を、ハウジング40のみを介して車両10に固定できる。よって、例えば、ハウジング40の剛性計算のみにより、車室内における音響感度[dB]を容易に予測できるようになる。つまり、静粛性の向上に有利な構造のブラシレスワイパモータを、確実かつ容易に設計できるようになり、さらに静粛性を追求したブラシレスワイパモータを提供できるようになる。
【0077】
さらに、本実施の形態によれば、減速機構SDは、ロータ45により回転されるウォーム46bと、出力軸51が回転中心に設けられ、ウォーム46bに噛み合わされるギヤ歯50aを備えたウォームホイール50と、を有し、ロータ45の軸方向寸法L1を、ウォーム46bの軸方向寸法L2よりも小さくした(L1<L2)。これにより、DR側ワイパモータ21の回転軸46の軸方向に沿う寸法を小さくして、さらなる小型軽量化を図ることが可能となり、軽自動車にも容易に適用することができる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、各取付脚42eが、各ゴムブッシュRBおよび差し込みゴムIRを介して、カウルトップパネル12,フロントサイドメンバー13およびダッシュパネルアッパー14に固定されている。したがって、DR側ワイパモータ21の振動が車両10に伝達され難くなって、車室内における音響感度[dB]をより小さくすることができる。また、車両10の振動からDR側ワイパモータ21を保護して、当該DR側ワイパモータ21が早期に損傷するのを防止することができる。
【0079】
さらに、本実施の形態によれば、DR側ワイパモータ21が発生する周波数領域を、低周波側で統合することができるため、汎用性を大幅に向上させることができる。またさらに、周波数のばらつき(モータ全体としての周波数領域の幅)が少なくなることで、ノイズ対策を施すための周波数領域を限定できるため、緩衝部材(差し込みゴムIRやゴムブッシュRB等)によるさらなるノイズ対策が容易となる。
【0080】
さらに、本実施の形態によれば、DR側ワイパモータ21が発生する周波数を低周波側で統合することができるので、車両による作動音の影響を小さくすることができる。つまり、モータ全体としての周波数領域の幅を狭めることで、DR側ワイパモータ21は、車両からの振動等の影響を受けにくくなる。そのため、共振や振動増幅の発生を抑制し、結果としてDR側ワイパモータ21の作動音を小さくすることができる。
【0081】
なお、本実施の形態によれば、DR側ワイパモータ21の周波数(Hz)の算出式としては、(スロット数もしくはティース数×出力軸回転数(rpm)×減速比)/60として算出している。これはスロットもしくはティースに起因する周波数成分に重点を置いた算出式である。
【0082】
次に、本発明の実施の形態2について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0083】
図9は実施の形態2に係るワイパ装置の斜視図を示している。
【0084】
上述した実施の形態1においては、
図1に示すように、車両10の車幅方向に沿う運転席側および助手席側に、それぞれDR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30を配置し、DR側ワイパアーム22およびAS側ワイパアーム32を所定の揺動角度でそれぞれ揺動駆動させた、所謂対向払拭式ワイパ装置であるものを示した。これに対し、実施の形態2においては、
図9に示すように、ブラシレスワイパモータ100を、モジュラー型ワイパ装置101に適用した場合を示している。
【0085】
モジュラー型ワイパ装置101は、パイプフレーム102を備えている。このパイプフレーム102の長手方向に沿う略中央部分には、ブラシレスワイパモータ100の略重心となる部分が固定されている(詳細図示せず)。したがって、モジュラー型ワイパ装置101は、ワイパ装置単体で搬送し易い等、重量バランスに優れたものとなっている。ここで、モジュラー型ワイパ装置101に適用されるブラシレスワイパモータ100は、固定ボルト(図示せず)によって固定される1つの取付脚42eのみを備えている。この取付脚42eは、ゴムブッシュRBを介して、車体固定部としてのダッシュパネルアッパー14(
図1参照)に固定される。また、取付脚42eに備えられるゴムブッシュRBを、差し込みゴムIRに換えて車両に固定するようにしても良い。なお、ブラシレスワイパモータ100のその他の構造は、実施の形態1のDR側ワイパモータ21と同じ構造である。
【0086】
パイプフレーム102の長手方向両側には、第1,第2ピボットホルダ103a,103bが固定され、これらの第1,第2ピボットホルダ103a,103bは、第1,第2ピボット軸104a,104bを回動自在に支持している。ここで、第1,第2ピボットホルダ103a,103bには、フロントサイドメンバー13(
図1参照)にそれぞれ固定される第1,第2取付部105a,105bが設けられている。
【0087】
第1,第2ピボット軸104a,104bの基端部には、出力軸51の揺動運動を第1,第2ピボット軸104a,104bに伝達するリンク機構106が設けられている。第1,第2ピボット軸104a,104bの先端部には、各ワイパアーム22,32(
図1参照)の基端部が固定されている。つまり、出力軸51と各ワイパアーム22,32との間にリンク機構106が設けられている。
【0088】
そして、リンク機構106は、出力軸51に固定されるクランクアーム106aと、第1,第2ピボット軸104a,104bの基端部に固定される一対の駆動レバー106b,106cと、各駆動レバー106b,106cの間に設けられる連結ロッド106dと、一方の駆動レバー106cとクランクアーム106aとの間に設けられる駆動ロッド106eとから構成されている。
【0089】
ここで、リンク機構106を構成する、クランクアーム106a,各駆動レバー106b,106c,連結ロッド106d,駆動ロッド106eは、それぞれ鋼板をプレス加工することで所定形状に形成されており、この点においても軽量化が図られている。
【0090】
以上のように形成した実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0091】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態1においては、DR側ワイパモータ21に3つの取付脚42eを設け、3つの取付脚42eのうちの1つを差し込み式とし、他の2つをボルト固定式としたが、本発明はこれに限らず、3つの取付脚42eの全てをボルト固定式としても構わない。
【0092】
また、上記各実施の形態においては、DR側ワイパモータ21およびブラシレスワイパモータ100を、それぞれフロントガラス11上を揺動するDR側ワイパアーム22およびAS側ワイパアーム32を駆動するものとしたが、本発明はこれに限らず、リヤガラス上を揺動するワイパアームを駆動するものにも採用することができる。
【0093】
さらに、上記各実施の形態においては、ステータ44の内側にロータ45を回転自在に配置したインナロータ型のブラシレスワイパモータとしたが、本発明はこれに限らず、ステータの外側にロータを配置したアウタロータ型のブラシレスワイパモータにも適用することができる。