【文献】
鈴木貴之,回転翼を用いた振動流の軸出力化,第17回スターリングサイクルシンポジウム講演論文集,日本,一般社団法人日本機械学会,2014年12月 5日,p.65-66
【文献】
長谷川 真也,細円管を対象としたTwo-sensor法の導出と音場測定,東海大学紀要工学部,日本,2011年 3月31日,Vol.50 No.2,p.155-160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
環状に構成された環状配管と、前記環状配管から分岐し前記環状配管からの分岐点に位置する一方端から他方端まで長尺状に延在し且つ前記環状配管に連通する分岐配管とによって構成され、前記環状配管及び前記分岐配管の双方に所定の作動気体が封入された配管構成部と、
前記配管構成部の前記環状配管の管内に組み込まれいずれも配管長手方向に延びる複数の流路を有する蓄熱器と、前記作動気体を自励振動させるために前記蓄熱器の前記複数の流路の両端部間に温度勾配が生じるように前記作動気体との間で熱交換を行う熱交換器と、を含む熱音響エンジンと、
前記配管構成部の前記分岐配管に設けられ前記熱音響エンジンにおける前記作動気体の自励振動によって生じた音響エネルギーを受けて回転するタービンと、
前記タービンの回転による運動エネルギーを電力に変換するための発電機と、
を備え、
前記タービンは、前記配管構成部の前記分岐配管の各領域のうち、前記一方端と前記他方端の中間位置である第1の位置と、前記第1の位置と前記他方端の中間位置である第2の位置との間の領域に属する所定位置に設けられている、熱音響発電システム。
【発明の概要】
【0004】
上記のように、熱音響エンジンで生じた作動気体の自励振動を利用して発電を行う際にリニア型の発電機を用いると、このリニア型の発電機自体が高価であるためコスト面で不利である。そこで、本発明者は、分岐配管にタービンを配置してこのタービンの作動時の運動エネルギーを利用して発電を行うタービン型の発電機を用いる技術について鋭意検討した。その検討の結果、タービンを単に分岐配管に設けるのみでは発電機を駆動できない場合があり、発電機を確実に駆動するためには分岐配管のどの位置にタービンを設置するかが極めて重要であることを見出すことに成功した。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、熱音響エンジンで生じた作動気体の自励振動を利用して発電を行う熱音響発電システムにおいて、タービン型の発電機を確実に駆動するのに有効な技術を提供することである。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る熱音響発電システム(100)は、配管構成部(101)、熱音響エンジン(110)、タービン(140)及び発電機(150)を備える。配管構成部(101)は、環状に構成された環状配管(102)と、環状配管(102)から分岐し環状配管(102)からの分岐点に位置する一方端(103a)から他方端(103b)まで長尺状に延在し且つ環状配管(102)に連通する分岐配管(103)と、を含み、環状配管(102)及び分岐配管(103)の双方に所定の作動気体が封入される。熱音響エンジン(110)は、配管構成部(101)の環状配管(102)の管内に組み込まれいずれも配管長手方向に延びる複数の流路(111c)を有する蓄熱器(111)と、作動気体を自励振動させるために蓄熱器(111)の複数の流路(111c)の両端部間に温度勾配が生じるように作動気体との間で熱交換を行う熱交換器(112,113)と、を含む。タービン(140)は、配管構成部(101)の分岐配管(103)に設けられ熱音響エンジン(110)における作動気体の自励振動によって生じた音波を受けて回転する。発電機(150)は、タービン(140)の回転による運動エネルギーを電力に変換する機能を果たす。タービン(140)は、配管構成部(101)の分岐配管(103)の各領域のうち、一方端(103a)と他方端(103b)の中間位置である第1の位置(P3)と、第1の位置(P3)と他方端(103b)の中間位置である第2の位置(P4)との間の領域に属する所定位置に設けられている。
【0007】
本構成の熱音響発電システムについて、本発明者の検討によれば、配管構成部の分岐配管のうち前記の領域は、作動気体の流速振幅(作動気体の配管長手方向についての単位時間あたりの変位)が相対的に大きい領域であるためタービンを連続的且つ確実に回転させるのに効果的であり、且つ熱音響エンジンの発振開始温度(作動気体の自励振動が実際に発生し始める温度)が相対的に低い領域であるためエネルギー効率が良い、という知見が得られた。従って、前記の領域に属する所定位置にタービンを設置することで、発電機を確実に駆動して発電を行うことができ、しかも発電についてのエネルギー効率の良い状態を実現できる。
【0008】
上記構成の熱音響発電システム(100)では、配管構成部(101)の分岐配管(103)は、他方端(103b)に作動気体の自励振動によって生じた音響エネルギーを管外に取り出すためのエネルギー取り出し部(160)を備え、エネルギー取り出し部(160)は、分岐配管(103)の配管長手方向の圧力振動を受けて電気エネルギーを出力することが可能なスピーカー型発電機或いはリニア型発電機によって構成されるのが好ましい。
【0009】
本構成の熱音響発電システムについて、本発明者の検討によれば、配管構成部の分岐配管の他方端は、分岐配管の各領域の中で作動気体の圧力振幅(圧力変動の大きさ、即ち圧力の最大値と最小値との間の変動幅)が最大となる位置であり、スピーカー型発電機やリニア型発電機の駆動に適した位置であるという知見が得られた。従って、分岐配管の他方端にスピーカー型発電機やリニア型発電機型の発電機を設けることによって、タービン型発電機によって回収しきれなかった音響エネルギーを電気エネルギーとして回収することが可能になる。
【0010】
尚、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、熱音響エンジンで生じた作動気体の自励振動を利用して発電を行う熱音響発電システムにおいて、タービン型の発電機を確実に駆動することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、当該図面において、同一の符号を付して説明している同一の要素の各構成部位については、説明のための符号を必要に応じて省略している。
【0014】
図1に示されるように、熱音響発電システム100は、金属製の配管からなる配管構成部101を備えている。この配管構成部101は、環状(ループ状)の配管部分である環状配管102と、環状配管102から分岐し且つその管内空間が環状配管102の管内空間と連通する分岐配管103と、によって構成されている。この配管構成部101が本発明の「配管構成部」に相当する。また、環状配管102及び分岐配管103がそれぞれ、本発明の「環状配管」及び「分岐配管」に相当する。尚、配管構成部101の環状配管102は環状であればよく、その側面視の形状として円形、楕円形、多角形等、種々の形状のものを採用することができる。
【0015】
分岐配管103は、環状配管102から分岐する分岐点を一方端103aとし、この一方端103aから他方端103bまで長尺状に延びる配管部分である。分岐配管103が他方端103bにてエネルギー取り出し部160によって封止されることによって、環状配管102及び分岐配管103の双方に所定の作動気体(本実施の形態ではヘリウム)が所定圧力下で封入されている。尚、作動気体としては、ヘリウムに代えて或いは加えて、窒素、アルゴン、ヘリウム及びアルゴンの混合気体、空気等を用いることができる。
【0016】
配管構成部101の環状配管102には、直列に接続された3つの熱音響エンジン(「原動機」ともいう)110が設けられている。これら3つの熱音響エンジン110によって、所謂「多段型の熱音響エンジン」が構成されている。各熱音響エンジン110は、環状配管102の管内に組み込まれた蓄熱器111と、蓄熱器111の高温部である一端部111aに対向して配置された加熱器112と、蓄熱器111の常温部(或いは低温部)である他端部111bに対向して配置された冷却器113と、を備えている。ここでいう熱音響エンジン110が本発明の「熱音響エンジン」に相当する。尚、この熱音響エンジン110の設置数は、3つに限定されるものではなく、必要に応じてその他の設置数を選択することもできる。
【0017】
図2に示されるように、各蓄熱器111は、一端部111aと他端部111bとの間でいずれも環状配管102の配管長手方向(配管の延在方向)に沿って互いに平行に延びる複数の流路111cを有する構造体として構成されている。この蓄熱器111において、一端部111aと他端部111bとの間に所定の温度勾配が生じると、環状配管102内の作動気体が不安定になって自励振動することで、作動気体の進行方向と平行に振動する縦波による振動波(「音波」、「振動流」或いは「仕事流」ともいう)が形成され、この振動波が環状配管102の管内から分岐配管103の管内へと伝わる。この蓄熱器111として、典型的にはセラミック製のハニカム構造体や、ステンレス鋼によるメッシュ薄板の複数を微小ピッチで平行に積層した構造体、金属繊維からなる不織布状物などを用いることができる。この蓄熱器111が本発明の「蓄熱器」に相当する。
【0018】
各加熱器112は、加熱源120に接続されている。加熱源120は、温風、温水等の加熱媒体を各加熱器112に供給する機能を果たす。各加熱器112は、相対的に高温の加熱媒体が流れる通路112aと、相対的に低温の作動気体が流れる通路(図示省略)と、を備え、加熱媒体と作動気体との間の熱交換によって加熱媒体から作動気体へと熱を移動させることができる加熱用の熱交換器として構成されている。このため、加熱源120から各加熱器112に供給された加熱媒体によって、各蓄熱器111の一端部111a周辺の作動気体が加熱される。
【0019】
各冷却器113は、冷却源130に接続されている。冷却源130は、冷風、冷水、大気等の冷却媒体を各冷却器113に供給する機能を果たす。各冷却器113は、相対的に低温の冷却媒体が流れる通路113aと、相対的に高温の作動気体が流れる通路(図示省略)と、を備え、作動気体と冷却媒体との間の熱交換によって作動気体から冷却媒体へと熱を移動させることができる冷却用の熱交換器として構成されている。このため、冷却源130から各冷却器113に供給された冷却媒体によって、各蓄熱器111の他端部111b周辺の作動気体が冷却される。
【0020】
上記の加熱器112による加熱作用と上記の冷却器113による冷却作用との協働によって、各蓄熱器111において一端部111aと他端部111bとの間に所定の温度勾配が生じる。上記の加熱器112及び冷却器113は、配管構成部101に封入された作動気体を自励振動させるために各蓄熱器111の複数の流路111cの両端部間に温度勾配が生じるように作動気体との間で熱交換を行う熱交換器となる。これら加熱器112及び冷却器113によって本発明の「熱交換器」が構成される。
【0021】
図1に戻り、分岐配管103は、環状配管102とタービン140との間に直線状に延在する第1配管部104と、タービン140を挟んで環状配管102とは反対側に直線状に延在する第2配管部105と、第1配管部104と第2配管部105を連結するようにクランク状に屈曲したクランク配管部106と、を備えている。
【0022】
詳細については後述するが、タービン140は、分岐配管103の管内に連通するように構成され、分岐配管103の管内を流れる作動気体の振動波による音響エネルギー(「振動エネルギー」ともいう)を機械的な回転エネルギーに変換する機能を果たす。要するに、このタービン140は、分岐配管103に設けられ熱音響エンジン110における作動気体の自励振動によって生じた音響エネルギーを受けて回転する。タービン140には、このタービン140の回転による運動エネルギー(回転エネルギー)を電力に変換するための発電機150が接続されている。ここでいうタービン140及び発電機150がそれぞれ、本発明の「タービン」及び「発電機」に相当する。これらタービン140及び発電機150は、タービンで駆動されて発電を行うタービン型の発電機を構成している。
【0023】
分岐配管103の他方端103b、即ち第2配管105の両側の管端部のうちタービン140とは反対側の管端部には、作動気体の音響エネルギーを分岐配管103から管外に取り出すためのエネルギー取り出し部160が設けられている。このエネルギー取り出し部160が本発明の「エネルギー取り出し部」に相当する。本実施の形態では、このエネルギー取り出し部160として、分岐配管103の配管長手方向の圧力振動を受けて電気エネルギー(電力)を出力することが可能なスピーカー型発電機が用いられている。このスピーカー型発電機は、電気エネルギーを空気等の振動に変換する通常のスピーカーの逆現象を使用したものであり、作動気体の振動流を受けることによって電気エネルギーを出力するように構成されている。
【0024】
図3に示されるように、タービン発電機を構成するタービン140は、タービンハウジング141、タービン回転軸144及びタービン翼145を備えている。タービンハウジング141は、タービン回転軸144の一部とタービン翼145を収容するとともに、分岐配管103の一部を構成する部位であり、分岐配管103のうち第2配管105及びクランク配管部106の双方に連通している。タービン回転軸144は、軸受142,143を介して軸回転可能に支持された円柱状の部材として構成されている。このタービン回転軸144は、タービンハウジング141の内部、即ち分岐配管103の管内に位置する一端部144aから、クランク配管部106の管壁を貫通して分岐配管103の管内から管外へと他端部144bまで配管長手方向に長尺状に延在している。このタービン回転軸144は、タービン翼145に連結されており、このタービン翼145の回転中心となる。
【0025】
タービン翼145は、分岐配管103(クランク配管部106)の管内に設けられ、熱音響エンジン110における作動気体の自励振動によって生じた音響エネルギーを受け、その衝動力の作用によって回転する。このタービン翼145は、タービン回転軸144に固定された円環状の動翼部146と、動翼部146を挟んでその両側に配置された円環状の固定翼部147と、各固定翼部147を挟んで動翼部146とは反対側に設けられたコーン部148と、を備えている。このタービン翼145は、タービン回転軸144と一体回転する動翼部146を備えた回転羽根として構成される。このため、タービン翼145を有するタービン140は、「衝動タービン」とも称呼される。
【0026】
固定翼部147は、動翼部146が回転しても回転しない。
図4に示されるように、この固定翼部147では、径方向に延びるブレード147aが周方向に一定間隔で複数配置されており、これら複数のブレード147a間に作動気体が流通可能な流通空間が形成されている。
【0027】
図3及び
図4が参照されるように、コーン部148は、対応する固定翼部147から遠ざかるにつれて外径が徐々に小さくなるような円錐形状であり、その外表面はタービン回転軸144の軸線に対して傾斜した傾斜面148aを構成している。コーン部148の傾斜面148aは、固定翼部147に向けて作動気体の振動波を円滑に導入する機能を果たす。このコーン部148によれば、作動気体の振動波を所定の進入角度θ(コーン部148の外表面に沿って傾斜した傾斜面148aとタービン回転軸144の軸線とのなす鋭角)で固定翼部147へと導入することができる。
【0028】
上記構成のタービン翼145は、所謂「双方向タービン翼」であり、
図5に示されるように、作動気体が矢印D1で示される第1方向に流れる場合と矢印D2で示される第2方向(第1方向の逆方向)に流れる場合のいずれの場合であっても、固定翼部147の流通空間を経て動翼部146へと流れて動翼部146が所定の一方向に回転するように構成されている。
【0029】
図3に戻り、タービン発電機を構成する発電機150は、配管構成部101の前記分岐配管103の管外に設けられ、タービン140のタービン回転軸144に連結されてタービン翼145の回転エネルギーを電力に変換する機能を果たす。この発電機150は、発電機ハウジング151を備えている。この発電機ハウジング151は、クランク配管106に溶接接合された第1ハウジング部152と、第1ハウジング部152にボルト部材154を介して取り付けられた第2ハウジング部153と、を備えている。
【0030】
この発電機ハウジング151では、第1ハウジング部152に第2ハウジング部153が取り付けられることによって、発電機150の構成要素である電気モータ156を気密状態で収容するための収容空間151aが形成される。第1ハウジング部152には、収容空間151aを分岐配管103のクランク配管部106の管内に連通させるための連通穴152aが設けられている。
【0031】
タービン140では、タービン回転軸144のうち分岐配管103の管外に位置する部位は、発電機ハウジング151の連通穴152aを通じて収容空間151aに導入されて、カップリング部155によって他端部144bが電気モータ154のモータ軸154aに連結されている。即ち、タービン140のタービン翼145がタービン回転軸144を介して発電機150に連結されている。この発電機150によれば、タービン140の機械的な回転運動によってタービン回転軸144が軸回転した場合、このタービン回転軸144の回転運動によってモータ軸154aが回転することで電気モータ154が電気を発生する。この場合、電気モータ154が実質的な発電機としての機能を果たす。
【0032】
また、タービン140のタービン回転軸144は、その一部が分岐配管103の管内から管外へと延出しているものの、その延出部分が発電機ハウジング151の収容空間151aに密閉状態で収容されている。その結果、タービン回転軸144の全体は、分岐配管103の管内から発電機ハウジング151の収容空間151aにわたる密閉領域に置かれる。従って、タービン回転軸144に対して専用の軸シール構造を設ける必要がなく、タービン回転軸144に関する構造を簡素化することができる。
【0033】
上記のカップリング部155では、タービン回転軸144の他端部144bと電気モータ156のモータ軸156aとの連結を解除することによって、必要に応じて発電機150をタービン140から容易に切り離すことができる。このように、本実施の形態のタービン140では、タービン回転軸144を分岐配管103の管内から管外へと延出させることによって、発電機150を分岐配管103の管外に配置した状態でタービン回転軸144の他端部144bに連結することが可能になる。この場合、タービン140からの発電機150の切り離しが容易になる結果、発電機150のメンテナンス性が向上する。また、上記のカップリング部155によれば、タービン回転軸144の他端部144bを、電気モータ154とは別のモータのモータ軸に付け替えて連結することで、タービン140の能力等に応じて、タービン140に連結される電気モータ(発電機)を最適なものに交換することができる。これにより、タービン発電機における発電能力の変更を容易に行うことが可能になる。
【0034】
次に、上記構成の熱音響発電システム100の動作を前述の内容に基づいて説明する。
【0035】
図1に示されるように、各熱音響エンジン110において、蓄熱器111の一端部111aが加熱器112によって加熱され、且つ蓄熱器111の他端部111bが冷却器113によって冷却されると、蓄熱器111のうち高温側領域である一端部111aと低温側領域である他端部111bとの間に温度差が生じる。この温度差によって、各蓄熱器111では主として作動気体の自励振動による振動波が形成される。この振動波(音波)による音響エネルギーE(振動エネルギー)は、配管構成部101の環状配管102から分岐配管103を通じてタービン140に伝達され、更にはエネルギー取り出し部160に伝達される。この場合、分岐配管103は、熱音響エンジン110において発生した作動気体の音響エネルギーEを導くための共鳴管(導波管)として構成される。音響エネルギーEの一部は、エネルギー取り出し手段であるタービン140によって取り出され当該タービン140に接続された発電機150によって電気エネルギー(電力)に変換され、またエネルギー取り出し部160のスピーカー型発電機によって取り出されて電気エネルギー(電力)に変換される。
【0036】
ところで、上記構成の熱音響発電システム100では、タービン140を単に分岐配管103に設けるのみでは発電機150を駆動できない場合があり、発電機150を確実に駆動するためにはタービン140を分岐配管103のどの位置に設置するかが極めて重要である。そこで、本発明者は、分岐配管103におけるタービン140の設置位置について鋭意検討の結果、発電機150を確実に駆動するのに有効なタービン設置位置(具体的には、タービン140のうち音響エネルギーを受けて動くタービン翼145の好適な設置位置)についての知見を得た。以下に、本発明者がこの知見を得るために実施した計測方法及びその計測結果を
図6〜
図8を参照しつつ説明する。
【0037】
図6に示されるように、配管長(一端端103aと他方端103bとの間の距離)がLである分岐配管103の各領域のうち図面下方に示されるような5つの位置P1〜P5に、タービン140の好適な設置位置を定めるための計測を行う計測点を設定した。尚、この
図6では、
図1中の分岐配管103が直線状に伸ばされた状態を模式的に示している。位置P1は、分岐配管103の各部位のうち環状配管102側の一方端103aに相当する位置である。位置P2は、分岐配管103の各部位のうち一方端103aから配管長Lの4分の1の長さ((1/4)L)分だけ他方端103b側へ移動した位置である。位置P3は、分岐配管103の各部位のうち一方端103aから配管長Lの4分の2の長さ((2/4)L)分だけ他方端103b側へ移動した位置である。位置P4は、分岐配管103の各部位のうち一方端103aから配管長Lの4分の3の長さ((3/4)L)分だけ他方端103b側へ移動した位置である。位置P5は、分岐配管103の各部位のうち一方端103aから配管長Lの4分の4の長さ((4/4)L)分だけ他方端103b側へ移動した位置、即ち他方端103bに相当する位置である。
【0038】
第1の計測では、分岐配管103にタービン140が設置されていない設置前の状態で、この分岐配管103の5つの位置P1〜P5のそれぞれの圧力振幅及び流速振幅を2センサ法(2箇所での圧力計測を用いる方法)によって計測した。ここでいう「圧力振幅」とは、作動気体の自励振動による振動波が分岐配管103の管内に形成されているときのある地点における圧力変動の大きさ(圧力の最大値と最小値との間の変動幅)として示される。また、ここでいう「流速振幅」とは、分岐配管103の管内における作動気体の配管長手方向についての単位時間あたりの変位として示される。
ある
【0039】
更に、第2の計測では、分岐配管103の5つの位置P1〜P5のそれぞれに実際にタービン140を設置した状態での熱音響エンジン110の発振開始温度を温度センサによって計測した。ここでいう「発振開始温度」とは、熱音響エンジン110において作動気体の自励振動が実際に発生し始める温度(作動気体の自励振動が発生する温度の最低値)として示される。
【0040】
図7に示されるように、第1の計測によれば、圧力振幅は位置P1及び位置P5において最も大きくなり、位置P3において最も小さくなる一方で、流速振幅は位置P1及び位置P5において最も小さくなり、位置P3において最も大きくなるという計測結果(以下、「第1の計測結果」ともいう)が得られた。また、配管長Lの絶対値が変化した場合でも本計測結果と同様の傾向、即ち位置P3において圧力振幅が最も小さく且つ流速振幅が最も大きくなることが確認された。
【0041】
また、
図8に示されるように、第2の計測によれば、熱音響エンジン110の発振開始温度は、位置P1が270℃で最も高く、次いで位置P2が200℃、位置P5が190℃となり、位置P3及び位置P4がいずれも120℃で最も低いという計測結果(以下、「第2の計測結果」ともいう)が得られた。また、配管長Lの絶対値が変化した場合でも本計測結果と同様の傾向、即ち位置P3及び位置P4における発振開始温度が最も低くなることが確認された。
【0042】
上記の第1の計測結果及び第2の計測結果に基づいた場合、本発明者は、位置P3から位置P4までの領域に属する位置がタービン140の好適な設置位置であると判定した。この判定の根拠について具体的に説明すると、タービン140のタービン翼145を連続的且つ確実に回転させるには、流速振幅が相対的に大きい領域(位置P2から位置P4までの領域)が好ましく、その中でも流速振幅が最も大きい位置P3が最も有利である。一方で、エネルギー効率の良い条件で熱音響エンジン110を作動させるには、発振開始温度が最も低くなる領域(位置P3から位置P4までの領域)が有利である。ここで、位置P3は、分岐配管103の各領域のうち一方端103aと他方端103bの中間位置(一方端103aから配管長Lの半分の長さ分だけ他方端103b側へ移動した位置)であり、本発明の「第1の位置」に相当する。また、位置P4は、分岐配管103の各領域のうち位置P3と他方端103b(位置P5)の中間位置(位置P3から配管長Lの4分の1の長さ分だけ他方端103b側へ移動した位置)であり、本発明の「第2の位置」に相当する。
【0043】
従って、タービン型の発電機を用いて発電を行う場合には、第1の計測結果及び第2の計測結果の双方を満足する領域である位置P3から位置P4までの領域に属する複数の位置の中から所定位置を定めて、この所定位置にタービン140を設置するのが好ましいと判定することができる。この判定結果に基づいてタービン140を設置することによって、発電機150を確実に駆動して発電を行うことができ、しかも発電についてのエネルギー効率の良い状態を実現できる。このようなアプローチは、分岐配管103におけるタービン140のタービン設置位置を定めることによって設計支援を行う、熱音響発電システムの設計支援方法として有効である。
【0044】
更に、第1の計測結果に基づいた場合、エネルギー取り出し部160を設置した分岐配管103の他方端103b(位置P5)は、分岐配管103の各領域の中で作動気体の圧力振幅が最大となる位置であり、このエネルギー取り出し部160として配管長手方向の圧力振動を受けて作動するスピーカー型発電機を用いるのが有利である。これにより、タービン型の発電機150によって回収しきれなかった音響エネルギーEを電気エネルギーとして回収することが可能になる。尚、エネルギー取り出し部160として、スピーカー型発電機に代えて公知のリニア型発電機を用いることもできる。リニア型発電機を用いる場合も、スピーカー型発電機を用いる場合と同様に分岐配管103の配管長手方向の圧力振動を受けて電気エネルギーを出力することが可能になる。
【0045】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0046】
上記の実施形態の熱音響エンジン110では、蓄熱器111の一端部111aと他端部111bとの間に所定の温度勾配を生じさせるために蓄熱器111に対して2つの熱交換器(加熱器112及び冷却器113)を設ける場合について記載したが、本発明では上記の温度勾配を達成することができれば、加熱器112及び冷却器113のいずれか一方の熱交換器を省略することもできる。
【0047】
上記の実施形態では、分岐配管103の管外に発電機150が設置される場合について記載したが、本発明では、必要に応じて分岐配管103の管内に発電機150をタービン140とともに設置した構造を採用することもできる。
【0048】
上記の実施形態では、分岐配管103の他方端103bにエネルギー取り出し部160を設置する場合について記載したが、本発明では、このエネルギー取り出し部160に代えて、作動気体の振動吸収が可能な振動吸収材(スポンジ、ウレタン等)を設置してもよい。
【0049】
上記の実施形態や種々の変更例の記載に基づいた場合、本発明では以下の態様(アスペクト)を採り得る。
【0050】
本発明では、
「環状に構成された環状配管と、前記環状配管から分岐し前記環状配管からの分岐点に位置する一方端から他方端まで長尺状に延在し且つ前記環状配管に連通する分岐配管とによって構成され、前記環状配管及び前記分岐配管の双方に所定の作動気体が封入された配管構成部と、
前記配管構成部の前記環状配管の管内に組み込まれいずれも配管長手方向に延びる複数の流路を有する蓄熱器と、前記作動気体を自励振動させるために前記蓄熱器の前記複数の流路の両端部間に温度勾配が生じるように前記作動気体との間で熱交換を行う熱交換器と、を含む熱音響エンジンと、
前記配管構成部の前記分岐配管に設けられ前記熱音響エンジンにおける前記作動気体の自励振動によって生じた音響エネルギーを受けて回転するタービンと、
前記タービンの回転による運動エネルギーを電力に変換するための発電機と、
を備える熱音響発電システムにおいて、
前記配管構成部の前記分岐配管における前記タービンのタービン設置位置を定めることによって設計支援を行う、熱音響発電システムの設計支援方法であって、
前記タービンの設置前の状態で、前記分岐配管の管内における作動気体の配管長手方向についての単位時間あたりの変位である流速振幅を計測し、前記分岐配管の各領域のうち計測した流速振幅が相対的に大きい領域を前記タービン設置位置として定める、熱音響発電システムの設計支援方法。」
という態様を採り得る。