(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記セメントが、中庸熱ポルトランドセメント又は低熱ポルトランドセメントを構成する粒子を研磨処理してなる、角張った表面部分を丸みを帯びた形状に変形させてなる粒径20μm以上の粗粒子、及び、上記研磨処理によって生じる粒径20μm未満の微粒子を含み、50%累積粒径が10〜18μmで、かつブレーン比表面積が2,100〜2,900cm2/gのものである請求項1に記載の耐震壁ブロック。
上記セメント組成物が、金属繊維、有機繊維及び炭素繊維からなる群より選ばれる一種以上の繊維を含み、かつ上記セメント組成物中の上記繊維の割合が、3体積%以下である請求項1又は2に記載の耐震壁ブロック。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の耐震壁ブロックは、セメント質硬化体からなる耐震壁ブロックであって、セメント質硬化体が、セメント、BET比表面積が15〜25m
2/gのシリカフューム(以下、「シリカフューム」と略すことがある。)、50%累積粒径が0.8〜5μmの無機粉末(以下、「無機粉末」と略すことがある。)、最大粒径が1.2mm以下の骨材(以下、「骨材」と略すことがある。)、高性能減水剤、消泡剤及び水を含み、かつセメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、セメントの割合が55〜65体積%、シリカフュームの割合が5〜25体積%、無機粉末の割合が15〜35体積%であるセメント組成物を硬化してなるものである。
なお、本明細書中、累積粒径は、体積基準である。
【0011】
セメントの種類は、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントを使用することができる。
中でも、セメント組成物の流動性を向上させる観点から、中庸熱ポルトランドセメント又は低熱ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
【0012】
また、セメント組成物の流動性を向上させ、かつセメント質硬化体の圧縮強度を高くする観点から、セメントとして、中庸熱ポルトランドセメント又は低熱ポルトランドセメントを構成する粒子を研磨処理してなる、角張った表面部分を丸みを帯びた形状に変形させてなる粒径20μm以上の粗粒子、及び、上記研磨処理によって生じる粒径20μm未満の微粒子を含み、50%累積粒径が10〜18μmで、かつブレーン比表面積が2,100〜2,900cm
2/gであるセメント(以下、「セメントの研磨処理物」ともいう。)を使用することがより好ましい。
【0013】
上記粗粒子の粒径の上限は、特に限定されるものではないが、研磨処理されるセメントの一般的な粒径を考慮すると、通常200μm以下であり、セメント質硬化体の圧縮強度を高くする観点から、好ましくは100μm以下である。
上記微粒子の粒径の下限は、特に限定されるものではないが、セメント組成物の流動性の向上、及び、耐震壁ブロックを製造する際の作業性向上の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。
【0014】
セメントの研磨処理物に関し、50%累積粒径は、好ましくは10〜18μm、より好ましくは12〜16μmであり、ブレーン比表面積は、好ましくは2,100〜2,900cm
2/g、より好ましくは2,200〜2,700cm
2/gである。
上記50%累積粒径が10μm以上であれば、セメント組成物の流動性が向上する。上記50%累積粒径が18μm以下であれば、セメント質硬化体の圧縮強度がより高くなる。
上記ブレーン比表面積が2,100cm
2/g以上であれば、セメント質硬化体の圧縮強度がより高くなる。上記ブレーン比表面積が2,900cm
2/g以下であれば、セメント組成物の流動性が向上する。
【0015】
上記研磨処理は、セメント(中庸熱ポルトランドセメント又は低熱ポルトランドセメント)を構成する粒子を研磨することが可能な公知の研磨処理装置を用いればよい。研磨処理装置としては、市販の高速気流撹拌装置(例えば、奈良機械製作所社製、商品名「ハイブリタイザーNHS−3型」)等が挙げられる。
以下、高速気流撹拌装置について、
図3を参照しながら詳しく説明する。
原料であるセメントは、高速気流撹拌装置10の上部の投入口14から、開閉弁18を開いた状態で投入される。投入後、開閉弁18を閉じる。
投入されたセメントは、循環回路13の途中に設けられた開口部から循環回路13内に入り、その後、循環回路13の出口13bから、被処理物を収容する空間である衝突室17内に入る。
原料を投入後、固定体であるステーター16の内部に配設されているローター(回転体)11を高速回転させることで、ローター11及びローター11に固着されたブレード12によって高速気流が発生し、衝突室17内のセメントが撹拌される。撹拌中、セメントを構成する粒子は、衝突室17内に設けられた、循環回路13の入口13aから、循環回路13内に入り、衝突室17の中央部分に設けられた、循環回路13の出口13bから、再び衝突室17内に投入されることで循環する。
なお、
図3中、点線で示す矢印は、粒子(セメントを構成する粒子、並びに、研磨処理によって生じた粗粒子および微粒子を含む。)の流れを示す。
【0016】
撹拌によって、セメントを構成する粒子が衝突室17の内壁面、ローター11及びブレード12と衝突すること、並びに、セメントを構成する粒子同士が衝突することにより、セメントを構成する粒子が研磨されて、該粒子表面の角張った部分が丸みを帯びた形状に変化した粗粒子(粒径が20μm以上である粒子)、及び、微粒子(粒径が20μm未満である粒子)が生じる。
【0017】
ローター11の回転速度は、好ましくは3,000〜4,200rpm、より好ましくは3,500〜4,000rpmである。該回転速度が3,000rpm以上であれば、セメント組成物の流動性が向上する。該回転速度が4,200rpmを超える場合、セメント組成物の流動性の向上効果が頭打ちとなる。また、高速気流撹拌装置の性能上、回転速度が4,200rpmを超えることは、困難である。
研磨処理の時間は、好ましくは10〜60分間、より好ましくは20〜50分間、さらに好ましくは20〜40分間、特に好ましくは20〜30分間である。該時間が10分間以上であれば、セメント組成物の流動性が向上する。該時間が60分間を超える場合、セメント組成物の流動性の向上効果が頭打ちとなる。
得られた研磨処理物(粗粒子と微粒子の混合物)は、排出弁19を開くことによって、排出口15から排出される。
【0018】
シリカフュームのBET比表面積は、15〜25m
2/g、好ましくは17〜23m
2/g、特に好ましくは18〜22m
2/gである。該比表面積が15m
2/g未満の場合、セメント質硬化体の圧縮強度が低下する。該比表面積が25m
2/gを超える場合、セメント組成物の流動性が低下する。
【0019】
50%累積粒径が0.8〜5μmの無機粉末としては、例えば、石英粉末(珪石粉末)、火山灰、及びフライアッシュ(分級または粉砕したもの)等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、セメント組成物の流動性を向上させ、セメント質硬化体の圧縮強度を高くする観点から、石英粉末またはフライアッシュを使用することが好ましい。
なお、本明細書中、50%累積粒径が0.8〜5μmの無機粉末には、セメントは含まれないものとする。
【0020】
無機粉末の50%累積粒径は、0.8〜5μm、好ましくは1〜4μm、より好ましくは1.1〜3.5μm、特に好ましくは1.2μm以上、3μm未満である。該粒径が0.8μm未満の場合、セメント組成物の流動性が低下する。該粒径が5μmを超える場合、セメント質硬化体の圧縮強度が低下する。
無機粉末の50%累積粒径は、市販の粒度分布測定装置(例えば、日機装社製、製品名「マイクロトラックHRA モデル9320−X100」)を用いて求めることができる。
具体的には、粒度分布測定装置を用いて、累積粒度曲線を作成し、該累積粒度曲線から50%累積粒径を求めることができる。この際、試料を分散させる溶媒であるエタノール20cm
3に対して、試料0.06gを添加し、90秒間、超音波分散装置(例えば、日本精機製作所社製、製品名「US300」)を用いて超音波分散したものを測定する。
【0021】
無機粉末の最大粒径は、セメント質硬化体の圧縮強度をより高くする観点から、好ましくは15μm以下、より好ましくは14μm以下、特に好ましくは13μm以下である。
無機粉末の95%体積累積粒径は、セメント質硬化体の圧縮強度をより高くする観点から、好ましくは8μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは6μm以下である。
【0022】
無機粉末としては、SiO
2を主成分とするもの(例えば、石英粉末)が好ましい。無機粉末中のSiO
2の含有率が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であれば、セメント質硬化体の圧縮強度がより高くなる。
【0023】
セメント組成物において、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、セメントの割合は55〜65体積%(好ましくは、57〜63体積%)、シリカフュームの割合は5〜25体積%(好ましくは、7〜23体積%)、無機粉末の割合は15〜35体積%(好ましくは17〜33体積%)である。
セメントの割合が55体積%未満の場合、セメント質硬化体の圧縮強度が低下する。セメントの割合が65体積%を超える場合、セメント組成物の流動性が低下する。
シリカフュームの割合が5体積%未満の場合、セメント質硬化体の圧縮強度が低下する。シリカフュームの割合が25体積%を超える場合、セメント組成物の流動性が低下する。
無機粉末の割合が15体積%未満の場合、セメント質硬化体の圧縮強度が低下する。無機粉末の割合が35体積%を超える場合、セメント組成物の流動性が低下する。
【0024】
骨材としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂またはこれらの混合物等が挙げられる。
骨材の最大粒径は、1.2mm以下、好ましくは1.0mm以下である。該最大粒径が1.2mm以下であれば、セメント質硬化体の圧縮強度が高くなる。
骨材の粒度分布は、セメント組成物の流動性を向上させ、セメント質硬化体の圧縮強度を高くする観点から、0.6mm以下の粒径の骨材の割合が、95質量%以上、0.3mm以下の粒径の骨材の割合が、40〜50質量%、及び、0.15mm以下の粒径の骨材の割合が、6質量%以下であることが好ましい。
セメント組成物中の骨材の割合は、好ましくは30〜40体積%、より好ましくは32〜38体積%である。該割合が30体積%以上であれば、セメント組成物の発熱量が小さくなり、かつ、セメント質硬化体の収縮量が小さくなる。該割合が40体積%以下であれば、セメント質硬化体の圧縮強度がより高くなる。
【0025】
高性能減水剤としては、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の高性能減水剤を使用することができる。中でも、セメント組成物の流動性を向上させ、セメント質硬化体の圧縮強度を高くする観点から、ポリカルボン酸系の高性能減水剤が好ましい。
高性能減水剤の配合量は、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100質量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.2〜1.5質量部であり、より好ましくは0.4〜1.2質量部である。該量が0.2質量部以上であれば、減水性能が向上し、セメント組成物の流動性が向上する。該量が1.5質量部以下であれば、セメント質硬化体の圧縮強度がより高くなる。
【0026】
消泡剤としては、市販品を使用することができる。
消泡剤の配合量は、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001〜0.1質量部、より好ましくは0.01〜0.07質量部、特に好ましくは0.01〜0.05質量部である。該量が0.001質量部以上であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。該量が0.1質量部を超えると、セメント組成物の強度発現性の向上効果が頭打ちとなる。
【0027】
セメント組成物は、セメント質硬化体の曲げ強度や破壊エネルギー等を向上させる観点から、金属繊維、有機繊維及び炭素繊維からなる群より選ばれる一種以上の繊維を含んでもよい。セメント組成物中の繊維の割合は、好ましくは3体積%以下、より好ましくは0.3〜2.5体積%、特に好ましくは0.5〜2.3体積%である。該割合が3体積%以下であれば、セメント組成物の流動性や作業性を低下させることなく、セメント質硬化体の曲げ強度や破壊エネルギー等を向上させることができる。
【0028】
金属繊維としては、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。中でも、鋼繊維は、強度に優れており、また、コストや入手のし易さの観点から好適である。
金属繊維の寸法は、セメント組成物中における金属繊維の材料分離の防止や、セメント質硬化体の曲げ強度の向上の観点から、直径が0.01〜1.0mm、長さが2〜30mmであることが好ましく、直径が0.05〜0.5mm、長さが5〜25mmであることがより好ましい。また、金属繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは40〜150である。
さらに、金属繊維の形状は、直線状よりも、何らかの物理的付着力を付与する形状(例えば、螺旋状や波形)であることが好ましい。螺旋状等の形状であれば、金属繊維とマトリックスとが、引き抜けながら応力を担保するため、セメント質硬化体の曲げ強度が向上する。
【0029】
有機繊維としては、後述する耐震壁ブロックの製造過程における加熱に耐えうるものであればよく、例えば、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリート繊維等が挙げられる。
炭素繊維としては、PAN系炭素繊維やピッチ系炭素繊維が挙げられる。
有機繊維及び炭素繊維の寸法は、セメント組成物中におけるこれらの繊維の材料分離の防止や、セメント質硬化体の破壊エネルギーの向上の観点から、直径が0.005〜1.0mm、長さ2〜30mmであることが好ましく、直径が0.01〜0.5mm、長さが5〜25mmであることがより好ましい。また、有機繊維及び炭素繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは30〜150である。
【0030】
水としては、水道水等を使用することができる。
水の配合量は、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100質量部に対して、好ましくは10〜20質量部、より好ましくは11〜18質量部、特に好ましくは14〜16質量部である。該量が10質量部以上であれば、セメント組成物の流動性が向上する。該量が20質量部以下であれば、セメント質硬化体の圧縮強度がより高くなる。
【0031】
セメント組成物の硬化前のフロー値は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において15回の落下運動を行わないで測定した値(以下、「0打ちフロー値」ともいう。)として、好ましくは200mm以上、より好ましくは220mm以上である。該フロー値が200mm以上であれば、耐震壁ブロックを製造する際の作業性を向上させることができる。
【0032】
以下、上述したセメント組成物を硬化してなるセメント質硬化体からなる耐震壁ブロックの製造方法について詳しく説明する。
本発明の耐震壁ブロックの製造方法の一例は、セメント組成物を型枠内に打設して、未硬化の成形体を得る成形工程と、未硬化の成形体を、10〜40℃で24時間以上、封緘養生または気中養生した後、型枠から脱型し、硬化した成形体を得る常温養生工程と、硬化した成形体を、70〜95℃で24時間以上、蒸気養生または温水養生し、加熱養生後の硬化体を得る加熱養生工程と、加熱養生後の硬化体を、150〜200℃で24時間以上、加熱して、セメント質硬化体からなる耐震壁ブロックを得る高温加熱工程を含むものである。
【0033】
[成形工程]
本工程は、セメント組成物を型枠内に打設して、未硬化の成形体を得る工程である。
打設を行う前に、セメント組成物を混練する方法としては、特に限定されるものではない。また、混練に用いる装置も特に限定されるものではなく、オムニミキサ、パン型ミキサ、二軸練りミキサ、傾胴ミキサ等の慣用のミキサを使用することができる。さらに、打設(成形)方法も特に限定されるものではない。
【0034】
[常温養生工程]
本工程は、未硬化の成形体を、10〜40℃(好ましくは15〜30℃)で24時間以上(好ましくは24〜72時間、より好ましくは24〜48時間)、封緘養生または気中養生した後、型枠から脱型し、硬化した成形体を得る工程である。
養生温度が10℃以上であれば、養生時間をより短くすることができる。養生温度が40℃以下であれば、セメント質硬化体(耐震壁ブロック)の圧縮強度をより高くすることができる。
養生時間が24時間以上であれば、脱型の際に、硬化した成形体に欠けや割れ等の欠陥が生じにくくなる。
また、本工程において、硬化した成形体が、好ましくは20〜100N/mm
2、より好ましくは30〜80N/mm
2の圧縮強度を発現した時に、硬化した成形体を型枠から脱型することが好ましい。該圧縮強度が20N/mm
2以上であれば、脱型の際に、硬化した成形体に欠けや割れ等の欠陥が生じにくくなる。該圧縮強度が100N/mm
2以下であれば、後述する吸水工程において、少ない労力で、硬化した成形体に吸水させることができる。
【0035】
[加熱養生工程]
本工程は、前工程で得られた硬化した成形体を、70〜95℃(好ましくは75〜92℃)で24時間以上(好ましくは24〜96時間、より好ましくは36〜72時間)、蒸気養生または温水養生し、加熱養生後の硬化体を得る工程である。
養生温度が70℃以上であれば、養生時間をより短くすることができる。養生温度が95℃以下であれば、セメント質硬化体の圧縮強度をより高くすることができる。
養生時間が24時間以上であれば、セメント質硬化体の圧縮強度をより高くすることができる。
【0036】
[高温加熱工程]
本工程は、加熱養生後の硬化体を、150〜200℃(好ましくは170〜190℃)で24時間以上(好ましくは24〜72時間、より好ましくは36〜48時間)、加熱して、セメント組成物を硬化してなるセメント質硬化体からなる耐震壁ブロックを得る工程である。
加熱温度が150℃以上であれば、加熱時間をより短くすることができる。加熱温度が200℃以下であれば、セメント質硬化体の圧縮強度をより高くすることができる。
加熱時間が24時間以上であれば、セメント質硬化体の圧縮強度をより高くすることができる。
【0037】
[吸水工程]
常温養生工程と加熱養生工程の間に、常温養生工程において得られた硬化した成形体に吸水させる吸水工程を含んでもよい。
硬化した成形体に吸水させる方法としては、該成形体を水中に浸漬させる方法が挙げられる。また、該成形体を水中に浸漬させる方法において、短時間で吸水量を増やし、セメント質硬化体の圧縮強度を大きくする観点から、(1)該成形体を、減圧下の水の中に浸漬させる方法、(2)該成形体を、沸騰している水の中に浸漬させた後、該成形体を浸漬させたまま、水温を40℃以下に低下させる方法、又は(3)該成形体を、沸騰している水の中に浸漬させた後、該成形体を沸騰している水から取り出して、次いで、40℃以下の水に浸漬させる方法、が好ましい。
【0038】
上記成形体を、減圧下の水の中に浸漬させる方法としては、真空ポンプや大型の減圧容器等の設備を利用する方法等が挙げられる。
上記成形体を、沸騰している水の中に浸漬させる方法としては、高温高圧容器や熱温水水槽等の設備を利用する方法等が挙げられる。
硬化した成形体を、減圧下の水または沸騰している水の中に浸漬させる時間は、吸水率を高くする観点から、好ましくは3分間以上、より好ましくは8分間以上、特に好ましくは20分間以上である。該時間の上限は特に限定されるものではないが、セメント質硬化体の圧縮強度をより高くする観点から、好ましくは60分間、より好ましくは45分間である。
【0039】
吸水工程における吸水率は、φ50×100mmの硬化した成形体100体積%に対して吸収される水の割合として、好ましくは0.2体積%以上、より好ましくは0.3〜2.0体積%、特に好ましくは0.35〜1.7体積%である。該吸水率が0.2体積%以上であれば、セメント質硬化体の圧縮強度をより高くすることができる。
【0040】
本発明の耐震壁ブロックの形状は、特に限定されるものではなく、耐震補強に用いられている耐震壁ブロックの一般的な形状であればよい。以下、本発明の耐震壁ブロックの一例について、
図1〜2を参照しながら詳しく説明する。
図1中、耐震壁ブロック1は、外枠部1aと補強部1bとからなる。外枠部1aはロの字状に形成され、補強部1bは、ロの字状に形成された外枠部1aの内側に、対角線状に形成されている。外枠部1aと補強部1bに囲まれた開口部1cは、採光性及び通気性の観点から設けられた開口部分である。
【0041】
耐震壁5は、建物の柱2、梁3、及び床4で囲まれた空間に、複数の耐震壁ブロック1を組み合わせて構築されている。
耐震壁ブロック1は、ビス、ボルト、ナット、接着剤等の接合手段(接合用部材)を使用して、隣接する耐震壁ブロック1、柱2、梁3、又は床4と接合させることによって、固定されている。
耐震壁ブロック1と、柱2、梁3、又は床4との間には、耐震壁ブロックを固定する目的で、モルタル等を敷設してもよい。また、耐震壁ブロック1と、柱2、梁3又は床4との間に、空隙を塞ぐ目的で、調整用のブロック(スペーサ)を配設してもよい。
【0042】
耐震壁ブロック1の寸法は、特に限定されないが、通常、縦および横が200〜500mmであり、厚さが100〜200mmである。
外枠部1a(
図1中の合計4本の中の1本)の長さは、耐震壁ブロック1の寸法(縦または横)に応じて定まるものである。外枠部1aの幅は、強度の観点からは、好ましくは15mm以上、より好ましくは18mm以上、特に好ましくは20mm以上であり、軽量化による作業性の向上や、採光性および通気性の向上の観点からは、好ましくは40mm以下、より好ましくは35mm以下、特に好ましくは30mm以下である。
補強部1b(
図1中のX字状に交差している4本の中の1本)の長さは、耐震壁ブロック1の寸法(縦または横)に応じて定まるものである。補強部1bの幅は、強度の観点からは、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、特に好ましくは20mm以上であり、軽量化による作業性の向上や、採光性および通気性の向上の観点からは、好ましくは40mm以下、より好ましくは35mm以下、特に好ましくは30mm以下である。
【0043】
上記セメント質硬化体の圧縮強度は、好ましくは330N/mm
2以上、より好ましくは350N/mm
2以上、特に好ましくは370N/mm
2以上である。
また、上記セメント質硬化体が繊維を含む場合、上記セメント質硬化体の「土木学会基準 JSCE−G 552−2010(鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネス試験方法)」に準拠して測定した曲げ強度は、好ましくは20N/mm
2以上、より好ましくは30N/mm
2以上、特に好ましくは35N/mm
2以上である。
本発明の耐震壁ブロック1は、高い圧縮強度を有するセメント質硬化体からなるため、耐震壁ブロック1の厚み、外枠部1aの幅および補強部1bの幅を小さくすることができ、耐震壁ブロック1の軽量化を図ることができる。また、外枠部1aの幅および補強部1bの幅を小さくすることで、開口部1cが大きくなり、複数の耐震壁ブロック1からなる耐震壁8の通風性、採光性および美観をより向上することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
実施例1〜10及び比較例1における使用材料は、以下に示すとおりである。
(1)セメント:低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(2)シリカフュームA:BET比表面積20m
2/g
(3)シリカフュームB:BET比表面積17m
2/g
(4)無機粉末A:珪石粉末、50%累積粒径2μm、最大粒径12μm、95%累積粒径5.8μm
(5)無機粉末B:珪石粉末、50%累積粒径7μm、最大粒径67μm、95%累積粒径27μm
(6)細骨材:珪砂(最大粒径1.0mm、0.6mm以下の粒径のもの:98質量%、0.3mm以下の粒径のもの:45質量%、0.15mm以下の粒径のもの:3質量%)
(7)ポリカルボン酸系高性能減水剤:固形分量27.4質量%、フローリック社製、商品名「フローリックSF500U」
(8)消泡剤:BASFジャパン社製、商品名「マスターエア404」
(9)水:水道水
(10)金属繊維:鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:15mm)
【0045】
[実施例1]
セメント、シリカフュームA及び無機粉末Aを、粉体原料(セメント、シリカフューム及び無機粉末)の合計量100体積%中、セメント等の各割合が表1に示す割合となるように混合した。得られた混合物と、セメント組成物中の細骨材の割合が表1に示す割合となる量の細骨材を、オムニミキサに投入して、15秒間空練りを行った。
次いで、水、ポリカルボン酸系高性能減水剤、及び消泡剤を、表1に示す量でオムニミキサに投入して、2分間混練した。
混練後、オムニミキサ内の側壁に付着した混練物を掻き落とし、さらに4分間混練を行った。
混練後のセメント組成物のフロー値を、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行わないで測定した。なお、本明細書中、該フロー値を「0打ちフロー値」という。
【0046】
得られた混練物を、φ50×100mmの円筒形の型枠に打設して、未硬化の成形体を得た。打設後、未硬化の成形体について、20℃で48時間、封緘養生を行い、次いで、脱型して、硬化した成形体を得た。脱型時の圧縮強度は50N/mm
2であった。
この成形体を、表2に示す時間、減圧したデシケーター内で水に浸漬した(表2中、「減圧下」と示す。)。なお、減圧は、アズワン社製の「アスピレーター(AS−01)」を使用して行った。浸漬前後の成形体の質量を測定し、得られた測定値から、吸水率を算出した。
浸漬後、この成形体を90℃で48時間蒸気養生を行い、次いで、20℃まで降温した後、180℃で48時間加熱を行った。
加熱後の成形体(セメント質硬化体)の圧縮強度を、「JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準じて測定した。
【0047】
[実施例2]
粉体原料100質量部当たりの水の配合量を、13質量部から15質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、セメント組成物の0打ちフロー値の測定等を行った。なお、脱型時の圧縮強度は45N/mm
2であった。
【0048】
[実施例3]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で水に浸漬する代わりに、沸騰している水(沸騰水)に、表2に示す時間浸漬した後、該成形体を水に浸漬させたまま、水温が25℃となるまで冷却した以外は、実施例1と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、吸水率の算出、及び、セメント質硬化体の圧縮強度の測定を行った。
[実施例4]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で水に浸漬する代わりに、実施例3と同様に沸騰水への浸漬等を行った以外は、実施例2と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、吸水率の算出、及び、セメント質硬化体の圧縮強度の測定を行った。
【0049】
[実施例5]
シリカフュームAの配合割合を10体積%から20体積%に変更し、かつ、無機粉末Aの配合割合を30体積%から20体積%に変更する以外は、実施例1と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、0打ちフロー値の測定等を行った。なお、脱型時の圧縮強度は50N/mm
2であった。
[実施例6]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で水に浸漬する代わりに、実施例3と同様に沸騰水への浸漬等を行った以外は、実施例5と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、吸水率の算出、及び、セメント質硬化体の圧縮強度の測定を行った。
【0050】
[実施例7]
シリカフュームAの配合割合を10体積%から20体積%に変更し、かつ、無機粉末Aの配合割合を30体積%から20体積%に変更する以外は、実施例2と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、0打ちフロー値の測定等を行った。なお、脱型時の圧縮強度は45N/mm
2であった。
[実施例8]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で水に浸漬する代わりに、実施例3と同様にして沸騰水への浸漬等を行った以外は、実施例7と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、吸水率の算出、及び、セメント質硬化体の圧縮強度の測定を行った。
【0051】
[実施例9]
セメント、シリカフュームA及び無機粉末Aを、粉体原料(セメント、シリカフューム及び無機粉末)の合計量100体積%中、セメント等の各割合が表1に示す割合となるように混合した。得られた混合物と、セメント組成物中の細骨材の割合が表1に示す割合となる量の細骨材を、オムニミキサに投入して、15秒間空練りを行った。
次いで、水、ポリカルボン酸系高性能減水剤、及び消泡剤を、表1に示す量でオムニミキサに投入して、2分間混練を行った後、オムニミキサ内の側壁に付着した混練物を掻き落とし、さらに4分間混練を行った。その後、セメント組成物中の金属繊維の割合が表1に示す割合となる量の金属繊維を、オムニミキサに投入して、さらに2分間混練を行った。
得られたセメント組成物について、実施例1と同様にして、0打ちフロー値を測定した。
また、得られたセメント組成物を材料として用いて、実施例1と同様の方法で、セメント質硬化体(成形体)を得た。
得られたセメント質硬化体(成形体)について、実施例1と同様にして、吸水率の算出、及び、圧縮強度の測定を行った。
さらに、得られたセメント質硬化体の曲げ強度を、「土木学会基準 JSCE−G 552−2010(鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネス試験方法)」に準じて測定した。
【0052】
[実施例10]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で水に浸漬する代わりに、実施例3と同様に沸騰水への浸漬等を行った以外は、実施例9と同様にして、セメント組成物及びその硬化体を得た。
セメント組成物及びその硬化体について、実施例9と同様にして、各種物性を測定した。
【0053】
[比較例1]
セメント、シリカフュームB及び無機粉末Bを、粉体原料(セメント、シリカフューム及び無機粉末)の合計量100体積%中、セメント等の各割合が表1に示す割合となるように混合した。得られた混合物と、セメント組成物中の細骨材の割合が表1に示す割合となる量の細骨材を、オムニミキサに投入して、15秒間空練りを行った。
次いで、水、ポリカルボン酸系高性能減水剤、及び消泡剤を、表1に示す量でオムニミキサに投入して、2分間混練した。
混練後、オムニミキサ内の側壁に付着した混練物を掻き落とし、さらに4分間混練を行った。
得られた混練物を材料として用いて、実施例1と同様にして、セメント質硬化体を得た。
得られた混練物(セメント組成物)及びその硬化体について、実施例1と同様にして、各種物性を測定した。
以上の結果を表2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
[使用材料]
実施例11〜20及び比較例2〜4における使用材料は、以下に示すとおりである。
(1)中庸熱ポルトランドセメント:太平洋セメント社製
(2)低熱ポルトランドセメント:太平洋セメント社製
(3)シリカフュームC:BET比表面積14m
2/g
(4)シリカフュームD:BET比表面積20m
2/g
(5)無機粉末:珪石粉末、50%累積粒径2μm、最大粒径12μm、95%累積粒径5.8μm(実施例1〜10で用いた無機粉末Aと同じもの)
(6)細骨材A:掛川産山砂
(7)細骨材B:珪砂(最大粒径1.2mm以下、0.6mm以下の粒径のもの:98質量%、0.3mm以下の粒径のもの:45質量%、0.15mm以下の粒径のもの:3質量%)
(8)ポリカルボン酸系高性能減水剤:固形分量27.4質量%;フローリック社製、商品名「フローリックSF500U」
(9)消泡剤:BASFジャパン社製、商品名「マスターエア404」
(10)水:上水道水
(11)金属繊維:鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:15mm)
【0057】
[中庸熱ポルトランドセメント及び低熱ポルトランドセメントの各研磨処理物の製造]
中庸熱ポルトランドセメント又は低熱ポルトランドセメントを、高速気流撹拌装置(奈良機械製作所社製、商品名「ハイブリタイザーNHS−3型」)を用いて、回転速度4,000rpmの条件で、30分間研磨処理した。なお、研磨処理において、中庸熱ポルトランドセメント又は低熱ポルトランドセメントの仕込み量は、1バッチあたり800gとした。中庸熱ポルトランドセメント又は低熱ポルトランドセメント、及び、中庸熱ポルトランドセメント又は低熱ポルトランドセメントの研磨処理物の、50%累積粒径及びブレーン比表面積を測定した。結果を表3に示す。
また、走査型電子顕微鏡を用いて、研磨処理物の二次電子像を観察したところ、研磨処理物の粗粒子(粒径20μm以上の粒子)は、中庸熱ポルトランドセメント又は低熱ポルトランドセメントの粒子(研磨処理前のもの)と比べて、角張った表面部分が少なく、表面部分が丸みを帯びた形状に変形していた。また、粗粒子と粗粒子の間の空隙には、微粒子(粒径20μm未満の粒子)が存在している様子が見られた。
【0058】
【表3】
【0059】
[実施例11]
低熱ポルトランドセメントの研磨処理物、シリカフュームD、無機粉末、及び細骨材Bを、低熱ポルトランドセメントの研磨処理物等の各割合が表4に示す割合となるように、オムニミキサに投入して、15秒間空練りを行った。
次いで、水、ポリカルボン酸系高性能減水剤、及び消泡剤を、表4に示す量でオムニミキサに投入して、2分間混練した。なお、消泡剤の添加量は、粉体原料100質量部に対して0.02質量部とした。
混練後、オムニミキサの側面に付着した混練物を掻き落とし、さらに4分間混練を行った。
混練後のセメント組成物のフロー値を、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行わないで測定した。
また、混練後のセメント組成物を、φ50×100mmの円筒形の型枠に打設して、未硬化の成形体を得た。打設後、未硬化の成形体について、20℃で72時間静置した。次いで、脱型して、硬化した成形体を得た。該成形体の脱型時の圧縮強度は52N/mm
2であった。
さらに、上記成形体を90℃で48時間蒸気養生を行い、次いで、20℃になるまで降温させた後、さらに、乾燥炉を用いて180℃で48時間加熱した。加熱後の硬化体の圧縮強度を、「JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準じて測定した。なお、圧縮強度は、島津製作所社製の100t万能試験機(油圧式)を使用して測定した。
【0060】
[実施例12]
低熱ポルトランドセメントの研磨処理物の代わりに中庸熱ポルトランドセメントの研磨処理物を使用した以外は、実施例11と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。該成形体の脱型時の圧縮強度は55N/mm
2であった。
実施例11と同様にして、セメント組成物のフロー値(0打ち)等を測定した。
[実施例13]
粉体原料100質量部当たりの水の量を、12質量部から15質量部に変更した以外は、実施例12と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。該成形体の脱型時の圧縮強度は50N/mm
2であった。
実施例11と同様にして、セメント組成物のフロー値(0打ち)等を測定した。
【0061】
[実施例14]
脱型後の成形体を、沸騰している水(沸騰水)に、30分間浸漬した後、該成形体を水に浸漬させたまま、水温が25℃となるまで冷却した(表5中、「沸騰水」と示す。)後に蒸気養生を行った以外は、実施例11と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例11と同様にして、セメント組成物のフロー値(0打ち)等を測定した。なお、硬化体の圧縮強度は、測定装置の測定限界(511N/mm
2)を超えていた。
また、浸漬前後の成形体の質量を測定し、得られた測定値から、吸水率を算出した。
[実施例15]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で30分間水に浸漬した(表5中、「減圧下」と示す。)後に蒸気養生を行った以外は、実施例11と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例14と同様にして、セメント組成物のフロー値(0打ち)等を測定した。なお、硬化体の圧縮強度は、測定装置の測定限界(511N/mm
2)を超えていた。
【0062】
[実施例16]
シリカフュームDの配合割合を10体積%から20体積%に変更し、かつ、無機粉末の配合割合を30体積%から20体積%に変更した以外は、実施例11と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。該成形体の脱型時の圧縮強度は51N/mm
2であった。
実施例11と同様にして、セメント組成物のフロー値(0打ち)等を測定した。
[実施例17]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で30分間水に浸漬した後に蒸気養生を行った以外は、実施例16と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例14と同様にして、セメント組成物のフロー値(0打ち)等を測定した。なお、硬化体の圧縮強度は、測定装置の測定限界(511N/mm
2)を超えていた。
【0063】
[実施例18]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で30分間水に浸漬した後に蒸気養生を行った以外は、実施例13と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例14と同様にして、セメント組成物のフロー値(0打ち)等を測定した。
【0064】
[実施例19]
低熱ポルトランドセメントの研磨処理物、シリカフュームD、無機粉末、及び細骨材Bを、低熱ポルトランドセメントの研磨処理物等の各割合が表4に示す割合となるように、オムニミキサに投入して、15秒間空練りを行った。
次いで、水、ポリカルボン酸系高性能減水剤、及び消泡剤を、表4に示す量でオムニミキサに投入して、2分間混練した。なお、消泡剤の添加量は、粉体原料100質量部に対して0.02質量部とした。
混練後、オムニミキサの側面に付着した混練物を掻き落とし、さらに4分間混練を行った。その後、セメント組成物中の金属繊維の割合が表4に示す割合となる量の金属繊維を、オムニミキサに投入して、さらに2分間混練を行った。
得られたセメント組成物について、実施例11と同様にして0打ちフロー値を測定した。
また、得られたセメント組成物を材料として用いて、実施例14と同様の方法で、セメント質硬化体(成形体)を得た。
得られたセメント質硬化体(成形体)について、実施例14と同様にして、吸水率及び圧縮強度を測定した。なお、硬化体の圧縮強度は、測定装置の測定限界(511N/mm
2)を超えていた。
また、得られたセメント質硬化体の曲げ強度を、「土木学会基準 JSCE−G 552−2010(鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネス試験方法)」に準じて測定した。
【0065】
[実施例20]
脱型後の成形体を、沸騰している水に30分間浸漬する代わりに、減圧したデシケーター内で30分間水に浸漬した後に蒸気養生を行った以外は、実施例19と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
セメント組成物及びその硬化体(成形体)について、実施例19と同様にして、各種物性を測定した。なお、硬化体の圧縮強度は、測定装置の測定限界(511N/mm
2)を超えていた。
【0066】
[比較例2]
中庸熱ポルトランドセメントの研磨処理物、シリカフュームC、細骨材A、高性能減水剤、及び水を、表4に示す割合となるように、一括してホバートミキサに投入した後、低速で12分間混練して、セメント組成物を調製した以外は、実施例11と同様にして、セメント組成物の硬化体を得た。実施例11と同様にして、セメント組成物のフロー値(0打ち)等を測定した。
[比較例3]
中庸熱ポルトランドセメントの研磨処理物、細骨材A、高性能減水剤、及び水を、表4に示す割合となるように、一括してホバートミキサに投入して、セメント組成物を調製しようとしたが、混練することができなかった。
[比較例4]
中庸熱ポルトランドセメント、シリカフュームC、細骨材A、高性能減水剤、及び水を、表4に示す配合で一括してホバートミキサに投入して、セメント組成物を調製しようとしたが、混練することができなかった。
以上の結果を表5に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
表2及び表5から、実施例1〜20のセメント質硬化体の圧縮強度は350N/mm
2以上と、高いものである。特に、研磨処理したセメントを用いた場合(実施例11〜20)のセメント質硬化体の圧縮強度は420N/mm
2以上であり、より高いものである。また、セメント組成物が金属繊維を含む場合(実施例9〜10及び実施例19〜20)のセメント質硬化体の圧縮強度は445N/mm
2以上であり、特に高く、かつ、該セメント質硬化体の曲げ強度は40N/mm
2以上である。
これらの結果から、本発明の耐震壁ブロックは、高い圧縮強度を有することがわかる。
一方、比較例1〜2のセメント質硬化体の圧縮強度は290N/mm
2であり、実施例1〜20と比べて小さいことがわかる。また、比較例3〜4のセメント組成物は、混練できないことがわかる。