特許第6495103号(P6495103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495103
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】電圧検出プローブおよび測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/06 20060101AFI20190325BHJP
   G01R 1/067 20060101ALI20190325BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   G01R15/06 A
   G01R1/067 E
   G01R19/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-109358(P2015-109358)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-223866(P2016-223866A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】笠井 真
【審査官】 小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−38871(JP,U)
【文献】 実開平2−103274(JP,U)
【文献】 特開2003−204371(JP,A)
【文献】 米国特許第6756799(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/06
G01R 1/067
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が測定対象導体に引っ掛ける引掛け部に形成されると共に基端部が接続ケーブルに接続される棒状の検出電極を備え、
前記検出電極の表面には、絶縁体層が形成され、
前記引掛け部における前記測定対象導体との対向面の少なくとも一部に規定された非形成領域を除く前記絶縁体層の表面には、前記検出電極に対して電気的に絶縁された導電体層が形成され、
前記検出電極は、前記引掛け部に引っ掛けられた前記測定対象導体と前記非形成領域を介して容量結合可能に構成されている電圧検出プローブ。
【請求項2】
前記引掛け部は、前記検出電極の軸線に対して交差する方向に沿って前記先端部に凹溝が設けられることによって形成されている請求項1記載の電圧検出プローブ。
【請求項3】
前記凹溝における前記交差する方向と平行であって互いに対向する一対の内壁面のうちの前記検出電極の先端側に位置する先端側内壁面は、前記軸線と直交する基準平面を基準として前記基端部側に傾斜している請求項2記載の電圧検出プローブ。
【請求項4】
前記一対の内壁面のうちの前記基端部側に位置する基端側内壁面は、前記基準平面を基準として、前記先端側内壁面よりも前記基端部側に傾斜している請求項3記載の電圧検出プローブ。
【請求項5】
前記非形成領域は、前記先端側内壁面に規定されている請求項3または4記載の電圧検出プローブ。
【請求項6】
前記導電体層は、電気的絶縁性を有する被覆層で覆われている請求項1から5のいずれかに記載の電圧検出プローブ。
【請求項7】
前記検出電極は、前記基端部において前記絶縁体層および前記導電体層から露出し、
前記導電体層は、前記基端部において前記被覆層から露出している請求項6記載の電圧検出プローブ。
【請求項8】
前記接続ケーブルが接続され、かつ前記基端部側が挿入されると共に前記引掛け部が露出した状態で前記検出電極が固定されたグリップ部と、
筒状に形成されると共に後端開口部から前記グリップ部における前記引掛け部の露出する端部が挿入された状態で当該グリップ部に装着され、かつ前記検出電極の軸線に沿って前記引掛け部が先端開口部から突出する第1位置と当該引掛け部が当該先端開口部内に没入する第2位置との間でスライド自在なシース部と、
前記グリップ部と前記シース部との間に配設されて当該シース部を前記第2位置方向に常時付勢する付勢部材とを備えている請求項1から7のいずれかに記載の電圧検出プローブ。
【請求項9】
前記接続ケーブルは同軸ケーブルで構成され、
前記基端部は、前記グリップ部内において、前記同軸ケーブルの芯線に直接接続されると共に当該同軸ケーブルの外部導体の電位と同電位に規定されたシールド部材で覆われている請求項8記載の電圧検出プローブ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の電圧検出プローブと、
芯線が前記基端部に直接接続された同軸ケーブルで構成された前記接続ケーブルを介して前記電圧検出プローブに接続された本体ユニットと、
前記本体ユニット内に配設されて、前記同軸ケーブルの前記芯線および前記検出電極を介して前記測定対象導体の電圧を検出すると共に当該電圧に応じて変化する電圧信号を出力する電圧検出部と、
前記本体ユニット内に配設されて、前記電圧信号に基づいて前記測定対象導体の前記電圧に追従する電圧を生成すると共に前記同軸ケーブルの外部導体に印加する電圧生成部と、
前記本体ユニット内に配設されて、前記電圧生成部で生成される前記電圧に基づいて前記測定対象導体の前記電圧を測定する処理部とを備え、
前記電圧検出部は、前記電圧生成部で生成される前記電圧の電位を基準とするフローティング電圧で作動する測定装置。
【請求項11】
前記電圧検出部は、演算増幅器を備えて構成された電流電圧変換回路を有し、
前記演算増幅器は、反転入力端子が前記芯線を介して前記基端部に接続されると共に、非反転入力端子が前記電圧生成部で生成される前記電圧の前記電位に規定され、
前記同軸ケーブルの外部導体は、前記電圧生成部で生成される前記電圧の前記電位に規定されると共に、前記電圧検出プローブ側において前記導電体層に接続されている請求項10記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象導体の電圧を検出可能に構成された電圧検出プローブ、およびこの電圧検出プローブを備えた測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電圧検出プローブとして、本願出願人は、下記の特許文献1〜3において、種々の形態の電圧検出プローブ(以下、単に「検出プローブ」ともいう)を開示している。例えば、特許文献1では、閉状態において測定対象電線を取り囲んで環状の閉磁路を形成する磁気コアが内蔵されたクランプ部を備えた検出プローブを開示している。また、特許文献2では、電圧測定用センサ基板を収容するセンサ基板収容部と、回動軸を介してセンサ基板収容部に回動可能に軸支されて、測定対象導線をセンサ基板収容部との間で挟持する測定対象電線押付け部とを備えた構成の検出プローブを開示している。また、特許文献3では、内部に電圧検出用の検知電極と磁石とが配置された電圧検出部を備え、電圧検出部が設けられた測定プローブの先端部を磁石の磁力によって位置決めしつつ測定対象電線に押し当てる構成の検出プローブを開示している。これらの検出プローブは、いずれも、その検出用の電極を測定対象電線の導電部位に直接接触させることなく互いに容量結合させるだけで、この導電部位の電圧を検出し得る検出プローブ(いわゆる非接触型電圧検出プローブ)として構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−137496号公報(第5頁、第1図)
【特許文献2】特開2014−52329号公報(第5−8頁、第1−3図)
【特許文献3】特開2014−163670号公報(第5−8頁、第1−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した各検出プローブには、以下のような改善すべき課題が存在している。すなわち、これらの検出プローブは、電圧検出用の電極の近傍に、磁気コアが配置されていたり、クランプや挟持のための機構が配置されていたり、磁石が配置されていたりする構成のため、外形、特に電圧検出用の電極を含む部位の形状が大きくなっている。
【0005】
したがって、これらの検出プローブは、例えば、架線や、架線から屋内への引込線や、屋内配線などに使用される電線(通常は被覆電線)のように、検出プローブを装着する部位の近傍(周囲)にある程度の広さの空間が存在している測定対象導体には使用することは可能となっている。ところが、これらの検出プローブでは、例えば、電子機器内に配設された回路基板に作動用電圧を供給するための小径(例えば、直径が2mm以下)の配線材であって、通常は他の同じような小径の配線材と共に結束された状態で引き回される配線材の1本や、回路基板に実装されたディスクリート部品であってある程度の長さのリード線が露出している電子部品のこのリード線の1本や、回路基板に実装されている柱状のテストポイントの1本のように、他の導体(他の配線材や、他のリード線や、テストポイントが実装された配線パターンに近接する他の配線パターン)と極めて近接した状態で存在している1本の導体に装着するのは難しく、この点を改善すべきとの課題が存在している。
【0006】
本発明は、かかる課題を改善するためになされたものであり、他の導体と極めて近接した状態で存在している測定対象導体に装着し得る電圧検出プローブ、およびこの電圧検出プローブを備えた測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の電圧検出プローブは、先端部が測定対象導体に引っ掛ける引掛け部に形成されると共に基端部が接続ケーブルに接続される棒状の検出電極を備え、前記検出電極の表面には、絶縁体層が形成され、前記引掛け部における前記測定対象導体との対向面の少なくとも一部に規定された非形成領域を除く前記絶縁体層の表面には、前記検出電極に対して電気的に絶縁された導電体層が形成され、前記検出電極は、前記引掛け部に引っ掛けられた前記測定対象導体と前記非形成領域を介して容量結合可能に構成されている。
【0008】
請求項2記載の電圧検出プローブは、請求項1記載の電圧検出プローブにおいて、前記引掛け部は、前記検出電極の軸線に対して交差する方向に沿って前記先端部に凹溝が設けられることによって形成されている。
【0009】
請求項3記載の電圧検出プローブは、請求項2記載の電圧検出プローブにおいて、前記凹溝における前記交差する方向と平行であって互いに対向する一対の内壁面のうちの前記検出電極の先端側に位置する先端側内壁面は、前記軸線と直交する基準平面を基準として前記基端部側に傾斜している。
【0010】
請求項4記載の電圧検出プローブは、請求項3記載の電圧検出プローブにおいて、前記一対の内壁面のうちの前記基端部側に位置する基端側内壁面は、前記基準平面を基準として、前記先端側内壁面よりも前記基端部側に傾斜している。
【0011】
請求項5記載の電圧検出プローブは、請求項3または4記載の電圧検出プローブにおいて、前記非形成領域は、前記先端側内壁面に規定されている。
【0012】
請求項6記載の電圧検出プローブは、請求項1から5のいずれかに記載の電圧検出プローブにおいて、前記導電体層は、電気的絶縁性を有する被覆層で覆われている。
【0013】
請求項7記載の電圧検出プローブは、請求項6記載の電圧検出プローブにおいて、前記検出電極は、前記基端部において前記絶縁体層および前記導電体層から露出し、前記導電体層は、前記基端部において前記被覆層から露出している。
【0014】
請求項8記載の電圧検出プローブは、請求項1から7のいずれかに記載の電圧検出プローブにおいて、前記接続ケーブルが接続され、かつ前記基端部側が挿入されると共に前記引掛け部が露出した状態で前記検出電極が固定されたグリップ部と、筒状に形成されると共に後端開口部から前記グリップ部における前記引掛け部の露出する端部が挿入された状態で当該グリップ部に装着され、かつ前記検出電極の軸線に沿って前記引掛け部が先端開口部から突出する第1位置と当該引掛け部が当該先端開口部内に没入する第2位置との間でスライド自在なシース部と、前記グリップ部と前記シース部との間に配設されて当該シース部を前記第2位置方向に常時付勢する付勢部材とを備えている。
【0015】
請求項9記載の電圧検出プローブは、請求項8記載の電圧検出プローブにおいて、前記接続ケーブルは同軸ケーブルで構成され、前記基端部は、前記グリップ部内において、前記同軸ケーブルの芯線に直接接続されると共に当該同軸ケーブルの外部導体の電位と同電位に規定されたシールド部材で覆われている。
【0016】
請求項10記載の測定装置は、請求項1から9のいずれかに記載の電圧検出プローブと、芯線が前記基端部に直接接続された同軸ケーブルで構成された前記接続ケーブルを介して前記電圧検出プローブに接続された本体ユニットと、前記本体ユニット内に配設されて、前記同軸ケーブルの前記芯線および前記検出電極を介して前記測定対象導体の電圧を検出すると共に当該電圧に応じて変化する電圧信号を出力する電圧検出部と、前記本体ユニット内に配設されて、前記電圧信号に基づいて前記測定対象導体の前記電圧に追従する電圧を生成すると共に前記同軸ケーブルの外部導体に印加する電圧生成部と、前記本体ユニット内に配設されて、前記電圧生成部で生成される前記電圧に基づいて前記測定対象導体の前記電圧を測定する処理部とを備え、前記電圧検出部は、前記電圧生成部で生成される前記電圧の電位を基準とするフローティング電圧で作動する。
請求項11記載の測定装置は、請求項10記載の測定装置において、前記電圧検出部は、演算増幅器を備えて構成された電流電圧変換回路を有し、前記演算増幅器は、反転入力端子が前記芯線を介して前記基端部に接続されると共に、非反転入力端子が前記電圧生成部で生成される前記電圧の前記電位に規定され、前記同軸ケーブルの外部導体は、前記電圧生成部で生成される前記電圧の前記電位に規定されると共に、前記電圧検出プローブ側において前記導電体層に接続されている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の電圧検出プローブおよび請求項10記載の測定装置では、検出電極は、先端部が引掛け部に形成され、基端部に接続ケーブルが接続された棒状に形成され、検出電極の表面には、引掛け部における測定対象導体との対向面に非形成領域が規定された状態で、かつ検出電極と電気的に絶縁された状態で導電体層が形成されている。
【0018】
したがって、この電圧検出プローブおよび測定装置によれば、測定対象導体とする1本の導体に引っ掛け得る引掛け部を先端部に形成し得る限りにおいて、細い棒状体で検出電極を形成することができ、かつこの検出電極の表面に上記の構成の導電体層を形成するという簡易な構成でありながら、測定対象導体と検出電極との間の容量結合を可能としつつ検出電極のシールドも可能となることから、他の導体と極めて近接した状態で存在している測定対象導体に対しても、外乱の検出電極への影響を導電体層によって低減しつつ、引掛け部を引っ掛けて検出電極を装着することができる結果、測定対象導体の電圧を確実かつ容易に測定することができる。
【0019】
請求項2記載の電圧検出プローブおよび請求項10記載の測定装置によれば、棒状の検出電極の先端部に切削加工などの簡易な手法で凹溝を設けて引掛け部を形成する構成のため、例えば、棒状の検出電極の先端部を折曲して形成した引掛け部とは異なり、引掛け部の大きさを検出電極の太さと同程度とすることができる。したがって、この検出プローブおよびこの測定装置によれば、近接する他の導体との間の距離がより短い測定対象導体に対しても装着してその電圧を測定することができる。
【0020】
請求項3記載の電圧検出プローブおよび請求項10記載の測定装置によれば、先端側内壁面を基端部側に傾斜させる構成としたことにより、検出プローブを測定対象導体に引っ掛けた際に、引掛け部から測定対象導体を外れにくくすることができる。
【0021】
請求項4記載の電圧検出プローブおよび請求項10記載の測定装置によれば、基端側内壁面を先端側内壁面よりも基端部側に傾斜させる構成としたことにより、先端側内壁面を基端部側に傾斜させたときの効果(引掛け部から測定対象導体を外れにくくできるとの効果)を維持しつつ、測定対象導体の凹溝内への収容の更なる容易性を実現することができる。
【0022】
請求項5記載の電圧検出プローブおよび請求項10記載の測定装置によれば、検出プローブを測定対象導体に引っ掛けた際に、測定対象導体と主として接触することになる先端側内壁面全体を導電体層の非形成領域とする構成や、先端側内壁面の一部のみを非形成領域とする構成を採用することで、凹溝の内面におけるこの部位以外の部位についても導電体層を形成することができる。したがって、検出電極と測定対象導体とのこの非形成領域を介した容量結合を可能としつつ、検出電極に対する導電体層のシールド効果を一層高めて、測定対象導体の電圧の測定精度をさらに向上させることができる。
【0023】
請求項6記載の電圧検出プローブおよび請求項10記載の測定装置によれば、測定対象導体に隣接して他の導体が存在しているときであっても、この被覆層の存在により、測定対象導体とこの他の導体が検出電極の表面に形成された導電体層を介して短絡するといった事態の発生を確実に防止することができる。
【0024】
請求項7記載の電圧検出プローブおよび請求項10記載の測定装置によれば、検出電極はその基端部において絶縁体層および導電体層から露出し、導電体層は検出電極の基端部において被覆層から露出する構成のため、グリップ部に挿入された検出電極の基端部側での接続ケーブルと、検出電極および導電体層との接続を容易に行うことができる。
【0025】
請求項8記載の電圧検出プローブおよび請求項10記載の測定装置によれば、凹溝内に収容された状態の測定対象導体を、付勢部材の付勢力により、凹溝の先端側内壁面とシース部における先端開口部の口縁との間で挟持することができるため、検出プローブから手を放した状態においても、引掛け部を測定対象導体に引っ掛けた状態が維持される結果、測定対象導体の電圧の測定作業についての作業性を向上させることができる。
【0026】
請求項9記載の電圧検出プローブおよび請求項10記載の測定装置によれば、検出電極の基端部側を、グリップ部内において、同軸ケーブルの外部導体の電位と同電位に規定されたシールド部材で覆う構成としたことにより、凹溝の内面に規定された導電体層の非形成領域を除く他のすべての検出電極の表面、および検出電極への接続のために露出状態となっている同軸ケーブルの芯線を、隙間無くシールドすることができる結果、測定対象導体の電圧の測定精度の更なる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】検出プローブ1の構成図である。
図2図1の検出電極11およびプランジャ2の構造を説明するための軸線Lに沿った断面図である。
図3図1のプランジャ2の基端側でのシールド構造を説明するための軸線Lに沿った断面図である。
図4図1のプランジャ2の基端側での他のシールド構造を説明するための軸線Lに沿った断面図である。
図5】検出プローブ1による測定対象導体8に対する引っ掛け操作を説明するための説明図(シース部4が第1位置に位置する状態での図)である。
図6図5の状態のプランジャ2の凹溝22内に測定対象導体8を収容する操作を説明するための説明図である。
図7】シース部4と検出電極11とによって凹溝22内の測定対象導体8を挟持した状態を説明するための説明図である。
図8】測定装置MDの構成図である。
図9】検出電極11の他の凹溝22の構成を説明するための要部拡大図である。
図10図9の検出電極11の斜視図である。
図11】シース部4と図9,10に示す検出電極11とによって凹溝22内の測定対象導体8を挟持した状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、電圧検出プローブおよび測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0029】
最初に、図1に示す電圧検出プローブとしての電圧検出プローブ(以下、単に「検出プローブ」ともいう)1の構成について、図面を参照して説明する。
【0030】
この検出プローブ1は、一例として、図1に示すように、プランジャ2、グリップ部3、シース部4および付勢部材5を備え、後述の本体ユニット6(図8参照)と共に測定装置MDを構成する。また、検出プローブ1は、接続ケーブル7の一例としての同軸ケーブル(以下、同軸ケーブル7ともいう)を介して本体ユニット6と接続されると共に、測定対象導体8(図6,7参照)にプランジャ2の先端部(同図中の左端部)を引っ掛けて使用される。この場合、接続ケーブルとしては、同軸ケーブル7に限定されるものではなく、ツイストペア線などを使用することができる。
【0031】
プランジャ2は、図2に示すように、検出電極11、絶縁体層12、導電体層13および被覆層14を備えている。
【0032】
具体的には、検出電極11は、プランジャ2の本体を構成する部材であって、図1,2に示すように、導電性材料(導電性を有する金属材料)を用いて外形が棒状の剛性体(言い換えれば、剛性を有する棒状体)に形成されると共に、先端部が測定対象導体8を引っ掛ける引掛け部21に形成されている。本例では一例として、引掛け部21は、検出電極11の軸線Lに対して交差する方向(本例では一例として直交する方向。つまり、図紙面の手前側から奥側に向かう方向)に沿って検出電極11の先端部に凹溝22が設けられることで、全体としてフック状に形成されている。なお、本例の凹溝22は、一例として図1,2に示すように、底面側が弧状に湾曲する側面視U字状に形成される構成であるが、これに限定されるものではなく、図示はしないが、底面側が平面状に形成された側面視コ字状に形成される構成であってもよい。また、凹溝22は、例えば切削加工などの手法によって形成されている。
【0033】
また、検出電極11の先端部をフック状の引掛け部21に形成する構成としては、上記したように、検出電極11の先端部を曲げることなく凹溝22を形成するだけでフック状の引掛け部21に形成する構成だけでなく、図示はしないが、例えば、細い棒状体で構成された検出電極11の先端部をL字状やU字状やV字状に折曲するという構成を採用することもできる。この構成の引掛け部では、検出電極の先端部における折曲部位と、この折曲部位に隣接する非折曲部位のそれぞれの対向面が、測定対象導体8との対向面となる。このため、導電体層13における後述の非形成領域は、これらの対向面の少なくとも一部に規定するようにする。
【0034】
本例の検出プローブ1が使用される測定対象導体8は、背景技術で説明した各種の検出プローブでは装着することが困難であった導体、例えば、通常は他の同じような小径な配線材と共に結束された状態で引き回される小径な配線材の1本や、回路基板に実装された電子部品のリード線の1本や、回路基板に実装された1本のテストポイントなどのように、他の導体(他の配線材や、他のリード線や、テストポイントが実装された配線パターンに近接する他の配線パターンなど)と極めて近接した状態で存在している1本の小径な導体である。
【0035】
このため、この検出プローブ1の検出電極11では、このような小径の導体が測定対象導体8として収容可能な幅および深さの凹溝22を先端部に形成し得る限りにおいて、より細い棒状体を使用することが可能となっている。また、測定対象導体8とこの測定対象導体8に隣接する他の導体との間の距離が短い状態であっても測定対象導体8に引っ掛けることができるようにするためにも、検出電極11に使用する棒状体は、なるべく細いものであるのが好ましい。また、検出電極11は、凹溝22を形成して引掛け部21とする先端部だけが細い棒状であって、後述するようにグリップ部3内に挿入される基端部側が先端部側よりも太い棒状とする構成を採用することもできるが、図1,2に示すように、より加工の手間の少ないほぼ均一な太さの棒状とするのが好ましい。例えば、上記のような小径(直径が約2mm)の配線材を収容するためには、凹溝22は、例えば、2mmよりも若干深い深さで、かつ2mmよりも若干広い幅(開口幅)に形成する必要がある。このため、例えば、断面円形の棒状の部材(つまり、円柱部材)で検出電極11を構成するときには、例えば直径が約3mm〜4mm程度の円柱状の部材を使用するのが好ましい。なお、より小径の導体だけを測定対象導体8とするときには、この測定対象導体8の太さに合わせて凹溝22の深さや開口幅を縮めることができることから、より細い棒状体(例えば、約2mm前後の太さの棒状体)で検出電極11を構成できるのは勿論である。
【0036】
凹溝22は、本例では一例として、図2に示すように、この凹溝22における上記の交差する方向と平行であって互いに対向する一対の内壁面22a,22bのうちの検出電極11の先端側(同図中の左端側)に位置する先端側内壁面としての内壁面22aは軸線Lと直交する基準平面PL(図紙面と直交する平面)とほぼ平行に形成され、また一対の内壁面22a,22bのうちの検出電極11の基端側(同図中の右端側)に位置する基端側内壁面としての内壁面22bもこの基準平面PLとほぼ平行に形成されている。
【0037】
絶縁体層12は、一例として、図1,2に示すように、検出電極11の表面における基端側の部位(本例では一例として、基端側の端面、およびこの端面から一定の距離(例えば数mm)内に含まれる外周面)を除く他のすべての部位に形成されている。一例として、本例では、絶縁体層12は、電気的絶縁性を有する合成樹脂材料を用いて、例えばコンマ数mm程度(一例として0.1mm程度)の厚みで検出電極11の表面に形成されている。
【0038】
導電体層13は、一例として、図2に示すように、引掛け部21における測定対象導体8との対向面SUに非形成領域(導電体層13を形成しない領域)が規定された状態で、かつ検出電極11の表面との間に絶縁体層12を介在させることによって検出電極11に対して電気的に絶縁された状態で検出電極11の表面(つまり、絶縁体層12の表面)に形成されている。本例では、検出電極11に凹溝22を形成することによって引掛け部21が形成されて、この凹溝22内に測定対象導体8を収容することで、測定対象導体8に検出プローブ1を引っ掛ける。このため、この検出プローブ1では、凹溝22の内面全体(各内壁面22a,22bおよび凹溝22の底壁面22c)が対向面SUとなっている。
【0039】
本例の検出プローブ1では、一例として、この対向面SU全体(つまり、凹溝22の内面全体)を導電体層13についての上記の非形成領域として規定して、凹溝22の内面全体に亘って導電体層13を形成しないようにつつ、検出電極11の表面におけるこの内面を除く他の殆どの部位については導電体層13を形成する構成を採用している。この構成により、この検出プローブ1では、導電体層13によって検出電極11を良好にシールドしつつ(検出電極11への外乱の影響を導電体層13で大幅に低減しつつ)、凹溝22内に収容された測定対象導体8と検出電極11とを、対向面SU(凹溝22の内面)に規定された導電体層13の非形成領域を介して容量結合させることが可能となっている。
【0040】
また、上記したように、凹溝22の内面全体が測定対象導体8との対向面SUであることから、凹溝22の内面のうちの非形成領域として規定する部位は、凹溝22の内面を構成する各内壁面22a,22bおよび底壁面22cのうちの少なくとも1つの壁面の部位であればよい。このため、凹溝22の内面全体を導電体層13についての非形成領域と規定する構成に代えて、凹溝22の各内壁面22a,22bおよび底壁面22cのうちの一部(いずれか1つの壁面の全体若しくは一部、いずれか2つの壁面の全体若しくは一部、またはいずれか3つの壁面の一部)を非形成領域と規定する構成を採用することもできる。
【0041】
このように、凹溝22の内面のうちの一部のみを導電体層13についての非形成領域として規定し、かつ凹溝22の内面におけるこの一部を除く他の部位については導電体層13を形成する構成を採用することで、凹溝22に収容された測定対象導体8と検出電極11とを凹溝22の内面に規定された非形成領域を介して容量結合させつつ、より多くの検出電極11の表面を導電体層13で覆うことが可能となることから、導電体層13によるシールド効果を一層高めることが可能となる。
【0042】
また、特に、本例の検出プローブ1では、後述するように、検出プローブ1を測定対象導体8に引っ掛けた際には、測定対象導体8は、シース部4によって凹溝22の内壁面22aに押し付けられる構成となっている。したがって、本例の検出プローブ1では、この内壁面22a全体、またはこの内壁面22aの一部(測定対象導体8が押し付けられる部位を含むその近傍の部位)を非形成領域とする構成が好ましい。
【0043】
また、導電体層13は、一例として、図1,2に示すように、検出電極11の基端側においては、絶縁体層12の基端側の外周面および検出電極11の基端側の外周面が露出する状態に形成されている。一例として、本例では、導電体層13は、導電性金属材料を用いて、例えば0.1mm未満(一例として0.01mm程度)の厚みで絶縁体層12の表面に形成されている。
【0044】
被覆層14は、一例として、図1,2に示すように、導電体層13の基端側の外周面、絶縁体層12の基端側の外周面および検出電極11の基端側の外周面が露出する状態で、この露出する部位を除く導電体層13の他のすべての部位の表面に、電気的絶縁性を有する合成樹脂材料などを用いて、例えば0.1mm未満(一例として0.05mm程度)の厚みで形成されている。なお、被覆層14については、後述するようにしてシース部4の先端開口部32から突出するプランジャ2の先端部(引掛け部21)の表面にのみ形成するようにしてもよい。
【0045】
以上の構成により、検出プローブ1では、図1,2に示すように、検出電極11の基端側において、検出電極11の外周面が絶縁体層12から露出し、絶縁体層12が導電体層13から露出し、導電体層13が被覆層14から露出した状態になっている。
【0046】
グリップ部3は、電気的絶縁性を有する合成樹脂材料を用いて、外形が一例として、図1に示すように、筒状(本例では一例として円筒状)に形成されている。また、グリップ部3には、プランジャ2(絶縁体層12、導電体層13および被覆層14が表面に形成された検出電極11)が、その基端部側(検出電極11の基端部側)がグリップ部3の一端側(同図中の左端側:先端部側)からグリップ部3の内部に挿入され、かつ引掛け部21がグリップ部3から露出した状態で固定されている。
【0047】
また、グリップ部3の他端側(同図中の右端側:後端側)には、同軸ケーブル7が接続されている。また、グリップ部3の内部において、同軸ケーブル7の芯線(内部導体)7aが検出電極11の基端側における絶縁体層12から露出する部位に電気的に接続され、同軸ケーブル7の外部導体7b(例えば編組線で構成されたシールド用導体)が導電体層13における被覆層14から露出する部位に電気的に接続されている。この構成により、芯線7aに接続された検出電極11は、外部導体7bと同電位に規定された導電体層13により、導電体層13の非形成領域を除くほぼ全域がシールドされる。
【0048】
また、同軸ケーブル7の外部導体7bを導電体層13における被覆層14から露出する部位に接続する場合には、芯線7aおよび検出電極11の基端側の外周面と、外部導体7bとを電気的に確実に絶縁しつつ、芯線7aおよび検出電極11の基端側の外周面を外部導体7bと同電位に規定されたシールド部材で覆う(シールド)する構成とするのが好ましい。この構成としては、例えば、図3に示すように、芯線7aおよび検出電極11の基端側の外周面を絶縁チューブ23で覆い、この状態において、同軸ケーブル7の筒状の外部導体7bを、絶縁チューブ23上を筒状のままシールド部材として通過させて、先端部分を絶縁チューブ23と被覆層14との間の隙間から露出する導電体層13に接続させる構成を採用することができる。
【0049】
また、図4に示すように、芯線7aおよび検出電極11の基端側の外周面を絶縁チューブ23で覆った状態において、プランジャ2の基端側から同軸ケーブル7の先端側に掛けて、これらの表面をシールド部材としての導電体(導電性フィルムや導電性薄板など)24で覆い、この導電体24を外部導体7bと電気的に接触させる構成を採用することができる。この図3,4に示す構成を採用することにより、凹溝22の内面に規定された導電体層13の非形成領域を除く他のすべての検出電極11の表面、および検出電極11への接続のために露出状態となっている同軸ケーブル7の芯線7aを導電体層13およびシールド部材で隙間無くシールドすることが可能となる。
【0050】
シース部4は、電気的絶縁性を有する合成樹脂材料を用いて、外形が一例として、図1に示すように、筒状に形成されている。具体的には、シース部4は、一例として、一端側(同図中の左端側:先端側)の形状が、内部にプランジャ2が摺動自在に挿入される貫通孔31が形成された円錐筒状に形成され、他端側(同図中の右端側:後端側)の形状が、内部にグリップ部3の一端側が挿入可能な内径の円筒状に形成されている。このシース部4は、円筒状の他端側の開口部(他端側開口部)からグリップ部3の一端側(プランジャ2の引掛け部21が露出する端部側)が挿入され、かつプランジャ2の引掛け部21が貫通孔31内に挿入された状態で、グリップ部3に装着される。
【0051】
また、シース部4は、この装着状態において、検出電極11の軸線Lに沿って、引掛け部21全体が先端開口部(シース部4における貫通孔31の一端側の開口部32。以下、「先端開口部32」ともいう)から突出する第1位置(図5に示す位置)と引掛け部21が先端開口部32内に没入する第2位置(図1に示す位置。引掛け部21全体が貫通孔31内に収容された位置)との間でスライド可能に構成されている。
【0052】
付勢部材5は、一例として、スプリングコイルで構成されて、グリップ部3の先端側から突出するプランジャ2に外嵌され、かつグリップ部3とシース部4との間で押し縮められた状態で、シース部4の円筒状に形成された他端側の内部に配設されている。この構成により、付勢部材5は、グリップ部3に対してシース部4を、第2位置方向(図1中の左方向)に常時付勢する。
【0053】
本体ユニット6は、図8に示すように、一例として、主電源回路51、DC/DCコンバータ(以下、単に「コンバータ」ともいう)52、電圧検出部53、電流電圧変換用の抵抗54、電圧生成部55、電圧計56、処理部57および表示部58を備えている。
【0054】
主電源回路51は、本体ユニット6の上記の各構成要素53〜58を作動させるための正電圧Vddおよび負電圧Vss(第1基準電位としてのグランドG1の電位を基準として生成される絶対値が同じで、互いの極性の異なる直流電圧)を出力する。コンバータ52は、一例として互いに電気的に絶縁された一次巻線および二次巻線を有する絶縁型のトランスと、このトランスの一次巻線を駆動する駆動回路と、トランスの二次巻線に誘起される交流電圧を整流平滑する直流変換部(いずれも図示せず)とを備えて、一次側に対して二次側が電気的に絶縁された絶縁型電源として構成されている。
【0055】
このコンバータ52では、入力した正電圧Vddおよび負電圧Vssに基づいて駆動回路が作動して、正電圧Vddが印加された状態にあるトランスの一次巻線を駆動して二次巻線に交流電圧を誘起させる。また、直流変換部が、この交流電圧を整流して平滑する。これにより、コンバータ52の二次側から、この二次側の内部基準電位(第2基準電位)G2を基準とする正電圧Vf+および負電圧Vf−がフローティング状態(グランドG1、正電圧Vddおよび負電圧Vssと電気的に分離された状態)で生成される。このようにして生成されたフローティング電圧としての正電圧Vf+および負電圧Vf−は、第2基準電位G2と共に電圧検出部53に供給される。なお、正電圧Vf+および負電圧Vf−は、絶対値がほぼ同一で、極性が互いに異なる直流電圧として生成される。
【0056】
電圧検出部53は、電流電圧変換回路53a、積分回路53b、駆動回路53cおよび絶縁回路53d(一例として駆動回路53cによって駆動されるフォトカプラを図示しているが、例えば、図示はしないが、フォトカプラに代えて絶縁トランスを使用する構成など、他の種々の構成を採用することができる)を備え、電圧検出部53における基準電位が上記の第2基準電位G2に規定された状態で、コンバータ52から正電圧Vf+および負電圧Vf−の供給を受けて作動する。
【0057】
電流電圧変換回路53aは、一例として、非反転入力端子が抵抗を介して電圧検出部53における第2基準電位G2に規定された部位に接続(以下、「第2基準電位G2に接続」ともいう)されると共に、反転入力端子が同軸ケーブル7の芯線7a(つまり、この芯線7aを介して検出プローブ1の検出電極11)に接続され、かつ帰還抵抗が反転入力端子と出力端子との間に接続された第1演算増幅器を備えて構成されている。この電流電圧変換回路53aは、第1演算増幅器が正電圧Vf+および負電圧Vf−で作動して、測定対象導体8の電圧V1と第2基準電位G2(電圧生成部55から出力される電圧信号V4の電圧でもある)との電位差Vdi(図8参照)に起因して、この電位差Vdiに応じた電流値で測定対象導体8と検出電極11との間に流れる検出電流(電流信号)Iを検出電圧信号V2に変換して出力する。この場合、検出電圧信号V2は、その振幅が電流信号Iの振幅に比例して変化する。
【0058】
積分回路53bは、一例として、非反転入力端子が抵抗を介して第2基準電位G2に接続されると共に、反転入力端子が入力抵抗を介して第1演算増幅器の出力端子に接続され、かつ帰還コンデンサが反転入力端子と出力端子との間に接続された第2演算増幅器を備えて構成されている。この積分回路53bは、第2演算増幅器が正電圧Vf+および負電圧Vf−で作動して、検出電圧信号V2を積分することにより、上記の電位差Vdiに比例して電圧値が変化する積分信号V3を生成して出力する。
【0059】
駆動回路53cは、積分信号V3のレベルに応じて絶縁回路53dをリニア領域で駆動し、駆動された絶縁回路53dは、この積分信号V3を電気的に分離して新たな積分信号(第1信号)V3aとして出力する。つまり、電圧検出部53は、検出プローブ1と相俟って、測定対象導体8の電圧V1を示す積分信号V3aを出力する。
【0060】
電流電圧変換用の抵抗54は、一端が負電圧Vssに接続されると共に、他端が電圧検出部53内の対応する絶縁回路53d(本例ではフォトカプラにおけるフォトトランジスタのコレクタ端子)に接続されている。
【0061】
電圧生成部55は、積分信号V3aを入力して増幅することにより、電圧信号V4を生成して、電圧検出部53における第2基準電位G2に規定された部位に印加する。この電圧信号V4はその電圧が後述するように測定対象導体8の電圧V1に応じて変化する。これにより、第2基準電位G2を基準とするフローティング電圧である正電圧Vf+および負電圧Vf−は、電圧信号V4の電圧に応じて変化するフローティング電圧となる。
【0062】
この電圧生成部55は、一例として、電圧検出部53の第2基準電位G2(第2基準電位G2と同電位の同軸ケーブル7の外部導体7b)、検出電極11および電圧検出部53(電流電圧変換回路53a、積分回路53b、駆動回路53cおよび絶縁回路53d(本例ではフォトカプラ))と共にフィードバックループを形成して、電位差Vdiを減少させるように積分信号V3aを増幅する増幅動作を行うことにより、電圧信号V4を生成する。
【0063】
本例では、一例として、電圧生成部55は、図8に示すように、増幅回路55a、位相補償回路55bおよび昇圧回路55cを備えて構成されている。ここで、増幅回路55aは、積分信号V3aを入力して増幅することにより、電圧信号V4aを生成する。この場合、増幅回路55aは、積分信号V3aの電圧値についての絶対値の増加・減少に対応して、電圧値の絶対値が変化する電圧信号V4aを増幅動作によって生成する。位相補償回路55bは、フィードバック制御動作の安定化(発振防止)を図るため、電圧信号V4aを入力してその位相を調整して電圧信号V4bとして出力する。昇圧回路55cは、一例として昇圧トランスを用いて構成されて、電圧信号V4bを所定の倍率で昇圧することにより(極性は変えずに絶対を増加させることにより)、電圧信号V4を生成して第2基準電位G2に印加する。電圧計56は、グランドG1の電位を基準として電圧信号V4を測定すると共に、その電圧値をディジタルデータに変換して電圧データDvとして出力する。
【0064】
処理部57は、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えて構成されて、電圧計56から出力される電圧データDvに基づいて測定対象導体8の電圧V1を算出する電圧算出処理を実行する。また、処理部57は、電圧算出処理で算出した電圧V1を表示部58に表やグラフの形式で表示させる。表示部58は、一例として、液晶ディスプレイなどのモニタ装置で構成されている。
【0065】
この検出プローブ1および本体ユニット6を備えた測定装置MDを用いて測定対象導体8の電圧V1を測定する際には、測定対象導体8にプランジャ2の先端部(引掛け部21)を引っ掛ける。
【0066】
具体的には、まず、図5に示す矢印方向の外力をシース部4に手で加えることにより、シース部4を図1に示す第2位置から図5に示す第1位置まで付勢部材5の付勢力に抗してスライドさせる(矢印方向にスライドさせる)ことで、図5に示すようにシース部4の開口部32からプランジャ2の引掛け部21全体を突出させる。次いで、図6に示すように、引掛け部21の凹溝22内に測定対象導体8を収容する(測定対象導体8に引掛け部21を引っ掛ける)。
【0067】
この場合、この検出プローブ1では、シース部4の開口部32から突出するプランジャ2の先端部(引掛け部21全体)の表面全体が電気的絶縁性を有する被覆層14で覆われているため、測定対象導体8に隣接して他の導体が存在しているときでも、測定対象導体8とこの他の導体とがプランジャ2(具体的には、導電体層13)を介して短絡するといった事態の発生が防止されている。
【0068】
続いて、シース部4に外力を加えていた手を外す。これにより、シース部4は、加えられていた外力がなくなるため、付勢部材5の付勢力により、図7に示す矢印方向(第2位置方向)に、凹溝22の内壁面22aとシース部4における先端開口部32の口縁との間で測定対象導体8が挟持されるまでスライドする。以上により、測定対象導体8への検出プローブ1の引っ掛け作業が完了する。
【0069】
この検出プローブ1では、このようにして測定対象導体8が挟持されることにより、引掛け部21を測定対象導体8に引っ掛けた状態が維持される。したがって、検出プローブ1から手を放した状態においても、測定対象導体8の電圧V1を測定する際に重要となる測定対象導体8と検出電極11との間に形成される静電容量C0(図8参照)の容量値が大きく変動するといった事態の発生が十分に回避されている。これにより、この検出プローブ1は、その検出用の電極である検出電極11を測定対象導体8に直接接触させることなく互いに容量結合させるだけで、この測定対象導体8の電圧V1を正確に検出し得るいわゆる非接触型の電圧検出プローブとして機能することが可能に構成されている。
【0070】
この状態において、測定対象導体8の電圧V1と、電圧検出部53の第2基準電位G2の電圧(第2基準電位G2と同電位となる同軸ケーブル7の外部導体7bおよびプランジャ2の導電体層13の各電圧。つまり、電圧信号V4の電圧)との電位差Vdiが増加しているとき(例えば、電圧V1の上昇に起因して電位差Vdiが増加しているとき)には、本体ユニット6の電圧検出部53では、測定対象導体8から検出電極11を介して電流電圧変換回路53aに流れ込む電流信号Iの電流量が増加する。この場合、電流電圧変換回路53aは、出力している検出電圧信号V2の電圧値を低下させる。積分回路53bでは、この検出電圧信号V2の低下に起因して、第2演算増幅器の出力端子からコンデンサを介して反転入力端子に向けて流れる電流が増加する。このため、積分回路53bは、積分信号V3の電圧を上昇させる。また、この積分信号V3の電圧上昇に伴い、駆動回路53cのトランジスタが深いオン状態に移行する。これにより、絶縁回路53d(フォトカプラ)では、その発光ダイオードに流れる電流が増加し、フォトトランジスタの抵抗が減少する。したがって、抵抗54の抵抗値とフォトトランジスタの抵抗値とで電位差(Vdd−Vss)が分圧されて生成される積分信号V3aは、その電圧値が低下する。
【0071】
また、本体ユニット6では、電圧生成部55が、この積分信号V3aに基づいて、生成している電圧信号V4の電圧値を上昇させる。この測定装置MDでは、このようにしてフィードバックループを構成する電流電圧変換回路53a、積分回路53b、駆動回路53c、絶縁回路53dおよび電圧生成部55が、測定対象導体8の電圧V1の上昇を検出して、電圧信号V4の電圧値を上昇させるフィードバック制御動作を実行することにより、電圧検出部53の第2基準電位G2等の電圧(電圧信号V4の電圧)を電圧V1に追従させる。
【0072】
また、電圧V1の低下に起因して電位差Vdiが増加したときには、検出電極11を介して電流電圧変換回路53aから測定対象導体8に流れ出る(流出する)電流信号Iの電流量が増加する。この際には、フィードバックループを構成する電流電圧変換回路53a等が上記のフィードバック制御動作とは逆の動作でのフィードバック制御動作を実行して、電圧信号V4の電圧を低下させることにより、電圧検出部53の第2基準電位G2等の電圧(電圧信号V4の電圧)を電圧V1に追従させる。
【0073】
このようにして、測定装置MDでは、電圧検出部53の第2基準電位G2等の電圧(電圧信号V4の電圧)を電圧V1に追従させるフィードバック制御動作が短時間に実行されて、電圧検出部53の第2基準電位G2等の電圧(電流電圧変換回路53aの第1演算増幅器のバーチャルショートにより、検出電極11の電圧でもある)が電圧V1に一致させられる(収束させられる)。電圧計56は、電圧信号V4の電圧値をリアルタイムで計測して、その電圧値を示す電圧データDvを出力する。また、電圧信号V4は、測定対象導体8の電圧V1に一旦収束した後は、フィードバックループを構成する各構成要素が上記のように動作することにより、電圧V1の変動に追従する。したがって、測定対象導体8の電圧V1を示す電圧データDvが電圧計56から連続して出力される。
【0074】
処理部57は、電圧計56から出力された電圧データDvを入力してメモりに記憶する。次いで、処理部57は、電圧算出処理を実行して、電圧データDvに基づいて測定対象導体8の電圧V1を算出してメモリに記憶する。最後に、処理部57は、メモリに記憶されている測定結果(電圧V1)を表示部58に表示させる。これにより、測定装置MDによる測定対象導体8の電圧V1の測定が完了する。
【0075】
引き続き、他の測定対象導体8の電圧V1を測定する際には、まず、図5に示す矢印方向の外力をシース部4に手で加えることにより、シース部4を図7に示す位置から図5に示す第1位置方向に向けて(同図に示す矢印方向に向けて)スライドさせることで、凹溝22の内壁面22aとシース部4における先端開口部32の口縁との間での測定対象導体8の挟持状態を解消する。次いで、凹溝22内から測定対象導体8を外すことで、測定対象導体8への検出プローブ1の引っ掛け状態を解消する。これにより、検出プローブ1を次の測定対象導体8に引っ掛けることが可能となる。
【0076】
このように、この検出プローブ1およびこの検出プローブ1を備えた測定装置MDでは、検出電極11は、先端部が引掛け部21に形成され、基端部に同軸ケーブル7の芯線7aが接続された棒状に形成され、検出電極11の表面には、引掛け部21における測定対象導体8との対向面SUに非形成領域が規定された状態で、かつ検出電極11と電気的に絶縁された状態で導電体層13が形成されると共にこの導電体層13に同軸ケーブル7の外部導体7bが接続されている。
【0077】
したがって、この検出プローブ1およびこの検出プローブ1を備えた測定装置MDによれば、測定対象導体8とする1本の導体に引っ掛け得る引掛け部21を先端部に形成し得る限りにおいて、細い棒状体で検出電極11を形成することができ、かつこの検出電極11の表面に上記の構成の導電体層13を形成するという簡易な構成でありながら、測定対象導体8と検出電極11との間の容量結合を可能としつつ検出電極11のシールドも可能となることから、背景技術で説明した各種の検出プローブでは装着することが困難であった他の導体と極めて近接した状態で存在している測定対象導体8に対しても、外乱の検出電極11への影響を導電体層13によって低減しつつ、引掛け部21を引っ掛けて検出電極11を装着することができる結果、その電圧V1を確実かつ容易に測定することができる。
【0078】
また、この検出プローブ1およびこの測定装置MDによれば、細い棒状の検出電極11の先端部に切削加工などの簡易な手法で凹溝22を設けて引掛け部21を形成する構成のため、例えば、細い棒状の検出電極11の先端部を折曲して形成した引掛け部21とは異なり、引掛け部21の大きさを検出電極11の太さと同程度とすることができる。したがって、この検出プローブ1およびこの測定装置MDによれば、近接する他の導体との間の距離がより短い測定対象導体8に対しても装着して、その電圧V1を測定することができる。
【0079】
また、この検出プローブ1およびこの測定装置MDによれば、凹溝22内に収容された状態の測定対象導体8を、付勢部材5の付勢力により、凹溝22の内壁面22aとシース部4における先端開口部32の口縁との間で挟持することができるため、検出プローブ1から手を放した状態においても、引掛け部21を測定対象導体8に引っ掛けた状態が維持される結果、電圧V1の測定作業についての作業性を向上させることができる。
【0080】
また、このように測定対象導体8を、凹溝22の内壁面22a(先端側内壁面)とシース部4における先端開口部32の口縁との間で挟持する構成のときには、この検出プローブ1およびこの測定装置MDによれば、上記したように、内壁面22a全体を導電体層13の非形成領域とする構成や、内壁面22aの一部のみ(測定対象導体8が押し付けられる部位を含むその近傍の部位のみ)を非形成領域とする構成を採用して、凹溝22の内面におけるこの部位以外の部位に導電体層13を形成することができる。したがって、この検出プローブ1およびこの測定装置MDによれば、検出電極11と測定対象導体8とのこの非形成領域を介した容量結合を可能としつつ、導電体層13によってより多くの検出電極11の表面を覆うようにできることから、検出電極11に対する導電体層13のシールド効果(外乱の低減効果)を一層高めることができ、電圧V1の測定精度をさらに向上させることができる。
【0081】
なお、グリップ部3を手で持った状態のままで、引掛け部21を測定対象導体8に引っ掛けて電圧V1を測定する作業を常時行う構成のときには、シース部4および付勢部材5を省く構成とすることもできるが、この構成においても、手からグリップ部3に対してグリップ部3を引き下げる方向の外力が通常は作用することから、引掛け部21の内面を構成する内壁面22aが主として測定対象導体8と接触する。したがって、上記のように、内壁面22a全体を導電体層13の非形成領域とする構成や、内壁面22aの一部のみを非形成領域とする構成を採用することで、検出電極11と測定対象導体8とのこの非形成領域を介した容量結合を可能としつつ、検出電極11に対する導電体層13のシールド効果を一層高めて、電圧V1の測定精度を向上させることができる。
【0082】
また、この検出プローブ1およびこの測定装置MDでは、電気的絶縁性を有する被覆層14で導電体層13を覆う構成のため、シース部4の開口部32から突出するプランジャ2の先端部(引掛け部21全体)の表面全体も被覆層14で覆われている。したがって、この検出プローブ1およびこの測定装置MDによれば、測定対象導体8に隣接して他の導体が存在しているときであっても、測定対象導体8とこの他の導体がプランジャ2(具体的には、導電体層13)を介して短絡するといった事態の発生を確実に防止することができる。
【0083】
また、この検出プローブ1およびこの測定装置MDでは、検出電極11は、その基端部において絶縁体層12および導電体層13から露出し、導電体層13は、検出電極11の基端部において被覆層14から露出している。したがって、この検出プローブ1およびこの測定装置MDによれば、グリップ部3に挿入されたプランジャ2の基端部側での同軸ケーブル7の芯線7aと検出電極11との接続、および同軸ケーブル7の外部導体7bと導電体層13との接続を容易に行うことができる。
【0084】
また、この検出プローブ1およびこの測定装置MDによれば、プランジャ2(つまり、検出電極11)の基端部側を、グリップ部3内において、同軸ケーブル7の外部導体7bの電位と同電位に規定されたシールド部材(筒状の状態の外部導体7bや導電体24)で覆う構成としたことにより、凹溝22の内面に規定された導電体層13の非形成領域を除く他のすべての検出電極11の表面、および検出電極11への接続のために露出状態となっている同軸ケーブル7の芯線7aを、隙間無くシールドすることができる結果、電圧V1の測定精度の更なる向上を図ることができる。
【0085】
また、上記の例では、凹溝22の内面を構成する各内壁面22a,22bを、検出電極11の軸線Lと直交する基準平面PLとほぼ平行に形成する構成を採用しているが、図9、10に示す検出電極11のように、検出電極11の先端側に位置する内壁面22aを、軸線Lと直交する基準平面PLを基準として検出電極11の基端部側に傾斜させる構成(つまり、軸線L(軸線Lを含む仮想平面)と内壁面22aとの角度θ1を鋭角にする構成)を採用することもできる。この構成によれば、検出プローブ1を測定対象導体8に引っ掛けた際に、引掛け部21から測定対象導体8を外れにくくすることができる。また、図11に示すように、例えば、先端開口部32の口縁全体を含む仮想平面PL1が基準平面PLに対して平行であるとしたときに、凹溝22の内壁面22aとシース部4における先端開口部32の口縁との間で測定対象導体8を挟持した際における内壁面22aと先端開口部32の口縁全体を含む仮想平面PL1との間の距離を、凹溝22の底壁面22cから離間するに従って短くなるように規定することができ、これにより、挟持された測定対象導体8が内壁面22aと先端開口部32の口縁との間から抜脱するという事態の発生をより確実に防止することができる。
【0086】
なお、このように内壁面22aを検出電極11の基端部側に傾斜させる構成を採用したときには、図2に示す構成の凹溝22を採用したときと同程度の測定対象導体8の凹溝22内への収容の容易性を確保するためには、図示はしないが、内壁面22aと対向する他の内壁面22bについても、内壁面22aと同程度に傾斜させるのが好ましい。
【0087】
また、上記のような内壁面22aを傾けたときの効果(引掛け部21から測定対象導体8を外れにくくできるとの効果)を維持しつつ、測定対象導体8の凹溝22内への収容の更なる容易性を実現するためには、図9,10に示すように、一対の内壁面22a,22bのうちの基端部側に位置する内壁面22bを、基準平面PLを基準として内壁面22aよりも基端部側に傾斜させる構成(軸線L(軸線Lを含む仮想平面)と内壁面22bとの角度θ2を角度θ1よりも鋭角にする構成)を採用することもできる。
【符号の説明】
【0088】
1 検出プローブ
2 プランジャ
3 グリップ部
4 シース部
5 付勢部材
7 同軸ケーブル
7a 芯線
7b 外部導体
8 測定対象導体
11 検出電極
12 絶縁体層
13 導電体層
14 被覆層
21 引掛け部
22 凹溝
22a,22b 内壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11