【0018】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)本発明は、キャリアシート(フィルムキャリア)付きガスケットに係る。
(2)ラバーオンリーガスケット作製時にキャリア用のフィルムを同時成形したキャリアシート付きガスケット。尚、本ガスケットはスタッキング時にキャリアフィルムを取り外せる構成である。
(3)キャリアフィルムによりスタック組み付け性が向上する。ガスケット中央もしくは端部のキャリアフィルムをスタッキング組み付け時の自動搬送で使用する。キャリアフィルムによりガスケットが矯正されているため、捩れの問題がない。スタッキング時にキャリアフィルムを取り外せるため、重量の低減につながる。
(4)キャリアシート付きガスケットに剥離用の穴を設ける。
(5)剥離用の穴は、部分的にフィルムに穴を有しているものであり、その穴にエアを吹き込むことでフィルムからガスケットを剥離する。
(6)穴は例えば、φ3mmの大きさとし、5cm間隔で複数設ける。
(7)穴の作製方法としては、フィルムを突起形状に変形させ、その部分を切り取ることで穴を作製する方法や、フィルムにあらかじめ穴をあけておく方法がある。
【実施例】
【0019】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0020】
図1に示すように当該実施例に係るガスケット11は、ラバーオンリータイプのガスケット本体21と、このガスケット本体21を非接着状態で保持する樹脂フィルムよりなるキャリアシート(フィルムキャリア)31との組み合わせにより構成されている。ガスケット本体21は、燃料電池用ガスケットとして用いられる。
【0021】
ガスケット本体21は、所定のゴム状弾性体(例えばVMQ、PIB、EPDM、FKMなど)によって平面状(平板状)に成形されており、その構成要素として、燃料電池の反応面の周りを全周に亙ってシールするための枠状の外周シール部22と、燃料電池の反応面と各マニホールド部の仕切り部をシールするための内側シール部23とを一体に有している。ガスケット本体21の断面形状は
図1(B)に示すように、例えば断面円形とされている。符号24は、ガスケット本体21をその厚み方向に貫通する貫通部(空間部)を示している。ガスケット本体21は、平面長方形状に成形され、例えばその平面的な大きさを外形略400mm(縦)×略300mm(横)とされ、その厚みすなわち線径を略1mmとされている。
【0022】
キャリアシート31は、所定の樹脂フィルムによって平面状(平板状)に成形され、ガスケット本体21よりも一回り大きな平面長方形状に成形されている。樹脂フィルムとしては例えば、厚さ0.2mmのポリプロピレンフィルムを使用し、これを上記した大きさの平面形状に裁断して使用する。樹脂フィルムとしてはポリプロピレンの他に、ポリエチレン、ポリスチレンなど一般樹脂材が使用可能である。フィルムの厚さについては、ガスケット本体21の線径や断面形状にもよるが、0.1mm〜0.3mm程度とするのが好ましい。
【0023】
キャリアシート31の平面上一部であってガスケット本体21と平面上重なる部位に、ガスケット本体21の外形形状(ガスケット本体21の断面形状における外郭線)に沿って変形した立体形状のガスケット保持部32が設けられ、このガスケット保持部32にガスケット本体21の厚み方向の一部が収められている。当該実施例では上記したようにガスケット本体21の断面形状が断面円形とされているので、これに対応してガスケット保持部32の断面形状は断面円弧形(半円形)とされ、このように断面円弧形のガスケット保持部32を設けることによってその裏面側に設けられる溝状の空間部(凹部)33内に、ガスケット本体21の厚み方向片方の一部が収められている。
【0024】
ガスケット本体21はキャリアシート31に対し非接着とされるため、スタッキングに際してキャリアシート31から取り外すことが可能とされている。但し、後記するようにガスケット本体21を成形する金型41にキャリアシート31をインサートした状態でガスケット本体21を成形すると、成形したガスケット本体21が材質上粘着性を備えているため、この粘着性によってガスケット本体21はキャリアシート31に対し粘着された状態とされることがある。粘着は、チャッキング装置による取り外しができるほどに粘着力が小さいものである。したがってこの場合、ラバーオンリータイプのガスケット本体21は、樹脂フィルムよりなるキャリアシート31に対し非接着ではあるが、剥離可能に粘着していることになる。
【0025】
また、キャリアシート31の平面上一部であってガスケット本体21と平面上重なる部位に、キャリアシート31からガスケット本体21を取り外すときにキャリアシート31およびガスケット本体21間にエアを流入させるためのエア流入口34が設けられており、当該実施例ではこのエア流入口34がガスケット保持部32の底面位置に設けられている。
【0026】
また、このエア流入口34はガスケット保持部32の長手方向に沿って複数が設けられており、当該実施例では
図1(A)の平面図に示すように、ガスケット本体21における外周シール部22の角部(4箇所)および長手側辺中央部(2箇所)ならびに外周シール部22と内側シール部23が交差する部位(8箇所)の都合14箇所に対応する位置にそれぞれエア流入口34が設けられている。
【0027】
上記構成のガスケット11においては、ラバーオンリータイプのガスケット本体21が樹脂フィルムよりなるキャリアシート31によって保持されるため、ガスケット11の搬送に際してガスケット本体21に捩れが生じにくく、搬送しやすい。また、ガスケット本体21がキャリアシート31に対し非接着とされるため、スタッキングに際してガスケット本体21をキャリアシート31から容易に取り外すことが可能とされる。したがってガスケット11の取扱い作業性を向上することができる。
【0028】
また、キャリアシート31に立体形状のガスケット保持部32が設けられて、このガスケット保持部32内にガスケット本体21の一部が収められているため、ガスケット本体21はキャリアシート31に対し平面上位置決めされる。したがってガスケット11の搬送に際してガスケット本体21がキャリアシート31に対しずれることがないため、ガスケット本体21をキャリアシート31によってしっかりと保持することができる。
【0029】
また、キャリアシート31にエア流入口34が設けられているため、ガスケット本体21をキャリアシート31から取り外すに際して、エア流入口34からキャリアシート31およびガスケット本体21間にエアを流入させる(吹き込む)ことにより、ガスケット本体21をキャリアシート31から容易に取り外す(剥離する)ことができる。したがってガスケット本体21をキャリアシート31によってしっかりと保持しながらも、ガスケット本体21をキャリアシート31から容易に取り外すことができるガスケット製品を提供することができる。
【0030】
ガスケット本体21の断面形状やこれに対応するガスケット保持部32の断面形状については、ガスケット本体21の使用条件等に応じて様々なものが考えられ、例えば以下のようなものであっても良い。
【0031】
図2(A)の例では、断面長方形のガスケット本体21の上面に断面円弧形(半円形)のシールリップ25が一体成形されている。この場合、ガスケット本体21の厚み方向片方の下半分の部位は断面角形とされるので、ガスケット保持部32の断面形状も断面角形とされている。また、ガスケット保持部32の平面的な底部にエア流入口34が設けられている。
【0032】
図2(B)の例では、断面長方形のガスケット本体21の上面に断面円弧形(半円形)のシールリップ25が一体成形されるとともにガスケット本体21の側面部に平面状の張り出し部26が一体成形されている。この場合、ガスケット本体21の厚み方向片方の下半分の部位は断面角形とされるので、ガスケット保持部32の断面形状も断面角形とされている。また、キャリアシート31におけるガスケット保持部32の脇の、張り出し部26と平面上重なる位置にエア流入口34が設けられている。
【0033】
つぎに、ガスケットの製造方法を説明する。
【0034】
当該実施例に係るガスケットの製造方法は、上記
図2(A)に示したガスケット11を製造するものである。製造に際しては、ラバーオンリータイプのガスケット本体21を射出成形する金型を用いる。
【0035】
工程としては先ず、所定の大きさの平面状のキャリアシート31を用意し、
図3(A)に示すように、このキャリアシート31を金型41のパーティング部44に挟み込んだ状態で金型41を型締めする。
【0036】
金型41は、上型(一方の分割型)42および下型(他方の分割型)43の組み合わせを有し、両型42,43のパーティング部44にそれぞれキャビティ部45が例えば半分ずつ対応して設けられている。キャリアシート31は当初その全面が平面状であるため、キャビティ部45内を横切る状態とされる。下型43におけるキャビティ部45の底面部には、のちにエア流入口34とされる中空の突起部35をキャリアシート31に成形するための突起成形部46がキャビティ部45の一部として設けられている。
【0037】
次いで、
図3(B)に示すように、キャビティ部45へガスケット本体21を成形するための成形材料を充填し、加熱する等して、ガスケット本体21を成形する。キャビティ部45へ成形材料を充填したとき、キャリアシート31はその平面上一部(キャビティ内の部分)が成形材料充填圧力によってキャビティ部45の内面に押し付けられ、キャビティ部45の内面に沿ったかたちに変形(塑性変形)し、これによりガスケット保持部32および中空の突起部35が成形される。
【0038】
次いで、
図3(C)に示すように、ガスケット本体21の成形後、型開きし、
図4(A)に示すように、ガスケット本体21およびキャリアシート31を同時に金型41から取り出す。取り出したガスケット本体21およびキャリアシート31は、ガスケット本体21がキャリアシート31によって保持された組み合わせ状態とされる。
【0039】
次いで、
図4(B)に示すように、キャリアシート31から中空の突起部35をその内部に充填されたゴムとともに切除(カット)し、これによりキャリアシート31にエア流入口34を形成し、以上の工程をもってガスケット11の製造を完了する。
【0040】
ガスケット本体21およびキャリアシート31は互いに組み合わされた状態で製品の搬送や保管などを行う。キャリアシート31によって保持されたガスケット本体21には捩れ等が生じにくく、よってガスケット本体21を単品で取り扱う場合よりも取扱い作業性が向上する。また、上記したようにキャリアシート31にエア流入口34が設けられているため、ガスケット本体21をキャリアシート31から取り外すに際して、エア流入口34からキャリアシート31およびガスケット本体21間にエアを流入させる(吹き込む)ことにより、ガスケット本体21をキャリアシート31から容易に取り外す(剥離する)ことができる。したがってガスケット本体21をキャリアシート31によってしっかりと保持しながらも、ガスケット本体21をキャリアシート31から容易に取り外すことができるガスケット製品を提供することができる。
【0041】
上記
図2(B)に示したガスケット11を製造するに際しては、エア流入口34の形成位置に照らして、
図5(A)に示すようにキャリアシート31におけるガスケット保持部32の脇の、張り出し部26と平面上重なる位置に中空の突起部35を成形し、
図5(B)に示すように、のちの工程でこの突起部35をその内部に充填されたゴムとともに切除(カット)することによりエア流入口34を形成する。
【0042】
また、エア流入口34の形成方法としては、
図6に示すようにキャリアシート31の所定位置にあらかじめエア流入口34を設けるようにしても良く、この場合には、ガスケット本体21の成形時に一部のゴム材料(成形材料)がエア流入口34に侵入することがないように、エア流入口34に係合してこれを閉塞する閉塞用突起47を金型41(下型43)のパーティング面に設けておくのが好ましい。
【0043】
また、ガスケット本体21を燃料電池スタックに組み付ける際には、キャリアシート31を真空引き装置などでベース側へ吸着固定した状態で、ガスケット本体21をチャッキング装置などで掴んで持ち上げ、所定の位置へ移動させる。捩れが生じていないガスケット本体21はチャッキング装置などで掴みやすく、作業を円滑に進行させることができるものである。