特許第6495106号(P6495106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495106
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】ガスケット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/00 20060101AFI20190325BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20190325BHJP
   H01M 8/0276 20160101ALI20190325BHJP
【FI】
   F16J15/00 C
   F16J15/00 B
   F16J15/10 Y
   H01M8/0276
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-113596(P2015-113596)
(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公開番号】特開2016-223616(P2016-223616A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】佐宗 秀寿
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 慶宏
(72)【発明者】
【氏名】堀本 隆之
(72)【発明者】
【氏名】浦川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大場 健一
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】由井 元
【審査官】 内山 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−159552(JP,A)
【文献】 特開昭55−144134(JP,A)
【文献】 特開2005−003181(JP,A)
【文献】 特開2003−056704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00、15/10
H01M 8/0271−8/0276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラバーオンリータイプのガスケット本体と、前記ガスケット本体を非接着状態で保持する樹脂フィルムよりなるキャリアシートとの組み合わせよりなり、
前記キャリアシートから前記ガスケット本体を取り外すときに前記キャリアシートおよび前記ガスケット本体間にエアを流入させるためのエア流入口を前記キャリアシートに設けたことを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1記載のガスケットにおいて、
前記キャリアシートにおける前記ガスケット本体と平面上重なる部位に、前記ガスケット本体の外形形状に沿って変形した立体形状のガスケット保持部が設けられ、前記ガスケット本体はその厚み方向一部が前記ガスケット保持部に収められ、前記ガスケット保持部の底面位置に前記エア流入口が設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1記載のガスケットにおいて、
前記キャリアシートにおける前記ガスケット本体と平面上重なる部位に、前記ガスケット本体の外形形状に沿って変形した立体形状のガスケット保持部が設けられ、前記ガスケット本体はその厚み方向一部が前記ガスケット保持部に収められ、前記ガスケット本体の側面に張り出し部が設けられ、前記キャリアシートにおける前記張り出し部と平面上重なる位置に前記エア流入口が設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載したガスケットにおいて、
前記ガスケット本体は、燃料電池スタックに組み込まれる燃料電池用ガスケットとして用いられることを特徴とするガスケット。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載したガスケットを製造する方法であって、
前記ガスケット本体を成形する金型のパーティング部に平面状の前記キャリアシートを挟み込んだ状態で前記金型を型締めする工程と、
前記金型で前記ガスケット本体を成形し、このとき成形材料充填圧力で前記キャリアシートの平面上一部を金型キャビティ内面に沿って変形させることにより前記ガスケット本体の外形形状に沿って変形した立体形状のガスケット保持部を成形する工程と、
前記ガスケット本体の成形後、型開きしてから、前記ガスケット本体および前記キャリアシートを同時に前記金型から取り出す工程と、を順次実施し、
前記金型で前記ガスケット本体を成形する工程で前記キャリアシートの平面上一部に中空の突起部を成形し、のちの工程で前記突起部をカットすることにより前記エア流入口を形成することを特徴とするガスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール技術に係るガスケットとその製造方法に関する。本発明のガスケットは例えば、燃料電池用ガスケットとして用いられ、またはその他の用途の一般ガスケットとして用いられる。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用ガスケットには、ゴム状弾性体(ラバー)製のガスケット単品よりなるラバーオンリータイプのガスケット、ゴム状弾性体製のガスケットをセパレータに一体成形したセパレータ一体ガスケット、ゴム状弾性体製のガスケットをGDL(ガス拡散層)に一体成形したGDL一体ガスケット等さまざまな構成のガスケットがある。
【0003】
これらのガスケットはそれぞれ特徴を有しているが、近年、低コスト化の要求が強いことから、この要求を満足できるラバーオンリータイプのガスケットが注目されている。
【0004】
ラバーオンリータイプのガスケットは例えば、図7に示すように構成されている。
【0005】
すなわち、ガスケット11の全体としては平面状(平板状)とされ、燃料電池の反応面の周りを全周に亙ってシールする外周シール部12が枠状に設けられている。また、燃料電池の反応面と各マニホールド部を仕切る必要があることから、外周シール部12の内側に内側シール部13が一体成形されている。ガスケット11の断面形状は図7(B)に示すように、断面円形とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−60133号公報(図1等におけるガスケット3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらこの燃料電池用ガスケット11には、以下の点で更なる改良の余地がある。
【0008】
すなわち燃料電池用ガスケット11は、例えば外形400mm×300mm程度の大きさとされる一方でその断面形状(線径)を小さく設定されている(例えば、線径1mm程度)。したがって搬送時やスタッキング時にガスケット11単体では捩れが生じやすいものであって、その取扱い作業性(ハンドリング性)が良くない。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みて、ラバーオンリータイプガスケットの取扱い作業性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のガスケットは、ラバーオンリータイプのガスケット本体と、前記ガスケット本体を非接着状態で保持する樹脂フィルムよりなるキャリアシートとの組み合わせよりなり、前記キャリアシートから前記ガスケット本体を取り外すときに前記キャリアシートおよび前記ガスケット本体間にエアを流入させるためのエア流入口を前記キャリアシートに設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明では、ラバーオンリータイプのガスケット本体を樹脂フィルムよりなるキャリアシートで保持することにより、ガスケットの取扱い作業性を向上する。ガスケット本体はキャリアシートに対し非接着とされるため、スタッキングに際しキャリアシートから取り外すことが可能とされる。ガスケット本体をキャリアシートから取り外すに際しては、キャリアシートに設けたエア流入口からキャリアシートおよびガスケット本体間にエアを流入させる(吹き込む)ことにより、ガスケット本体をキャリアシートから容易に取り外す(剥離する)ことが可能とされる。
【0012】
ガスケット本体は平面状(平板状)であり、樹脂フィルムよりなるキャリアシートも平面状(平板状)であることから、ガスケット本体をキャリアシート上に載せただけでは、ガスケット本体をキャリアシートによってしっかりと保持できないことが懸念される。したがってこれに対策するには、キャリアシートにおけるガスケット本体と平面上重なる部位に、ガスケット本体の外形形状に沿って変形した形状のガスケット保持部を設けて、このガスケット保持部内にガスケット本体の一部を収めるようにするのが好適であり、これによればガスケット本体がキャリアシートに対し平面上位置決めされるため、ガスケット本体をキャリアシートによってしっかりと保持することが可能とされる。このとき、エア流入口はこれをガスケット保持部の底面位置に設けることにする(請求項2)。
【0013】
また、ガスケット本体がその側面に張り出し部を有する場合には、エア流入口をキャリアシートにおける張り出し部と平面上重なる位置に設けることにしても良い(請求項3)。
【0014】
本発明のガスケットは例えば、燃料電池用ガスケットとして用いられる。燃料電池はスタック積層数が多いことからガスケットにはその厚みが小さいことが求められ、厚みの小さなガスケットは捩れやすいため、取扱い作業性が良くない。したがってこのように厚みが小さく捩れやすい燃料電池用ガスケットの分野において、ガスケット本体を樹脂フィルムよりなるキャリアシートと組み合わせて取扱い作業性を向上させることは、スタッキング作業の効率化を図るうえで、きわめて有効である(請求項4)。
【0015】
ガスケットの製造方法としては、ガスケット本体を成形する金型のパーティング部に平面状のキャリアシートを挟み込んだ状態で金型を型締めする工程と、金型でガスケット本体を成形し、このとき成形材料充填圧力でキャリアシートの平面上一部を金型キャビティ内面に沿って変形させることによりガスケット本体の外形形状に沿って変形した立体形状のガスケット保持部を成形する工程と、ガスケット本体の成形後、型開きしてから、ガスケット本体およびキャリアシートを同時に金型から取り出す工程とを順次実施する。キャリアシートは当初、平面状であったものが、成形材料充填圧力を利用して一部立体化され、立体化された部位においてガスケット本体とフィットするため、保持力が高いものである。また、上記工程のうち金型でガスケット本体を成形する工程で、キャリアシートの平面上一部に中空の突起部を成形し、のちの工程でこの突起部をカットすることによりエア流入口を形成する(請求項5)。エア流入口の形成方法としてはこのほか、キャリアシートにあらかじめ穴を設け、このあらかじめ設けた穴をエア流入口として利用するようにしても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ラバーオンリータイプのガスケット本体と樹脂フィルムよりなるキャリアシートとを組み合わせるようにしたため、ラバーオンリータイプのガスケットの取扱い作業性を向上することができる。また、キャリアシートにエア流入口を設けたため、ガスケット本体をキャリアシートから取り外しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係るガスケットを示す図で、(A)はその平面図、(B)は(A)におけるC−C線拡大断面図
図2】(A)および(B)共それぞれガスケット断面形状の他の例を示す断面図
図3】本発明の実施例に係るガスケットの製造方法の工程説明図1
図4】本発明の実施例に係るガスケットの製造方法の工程説明図2
図5】本発明の他の実施例に係るガスケットの製造方法の工程説明図
図6】本発明の他の実施例に係るガスケットの製造方法の工程説明図
図7】従来例に係るガスケットを示す図で、(A)はその平面図、(B)は(A)におけるB−B線拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)本発明は、キャリアシート(フィルムキャリア)付きガスケットに係る。
(2)ラバーオンリーガスケット作製時にキャリア用のフィルムを同時成形したキャリアシート付きガスケット。尚、本ガスケットはスタッキング時にキャリアフィルムを取り外せる構成である。
(3)キャリアフィルムによりスタック組み付け性が向上する。ガスケット中央もしくは端部のキャリアフィルムをスタッキング組み付け時の自動搬送で使用する。キャリアフィルムによりガスケットが矯正されているため、捩れの問題がない。スタッキング時にキャリアフィルムを取り外せるため、重量の低減につながる。
(4)キャリアシート付きガスケットに剥離用の穴を設ける。
(5)剥離用の穴は、部分的にフィルムに穴を有しているものであり、その穴にエアを吹き込むことでフィルムからガスケットを剥離する。
(6)穴は例えば、φ3mmの大きさとし、5cm間隔で複数設ける。
(7)穴の作製方法としては、フィルムを突起形状に変形させ、その部分を切り取ることで穴を作製する方法や、フィルムにあらかじめ穴をあけておく方法がある。
【実施例】
【0019】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0020】
図1に示すように当該実施例に係るガスケット11は、ラバーオンリータイプのガスケット本体21と、このガスケット本体21を非接着状態で保持する樹脂フィルムよりなるキャリアシート(フィルムキャリア)31との組み合わせにより構成されている。ガスケット本体21は、燃料電池用ガスケットとして用いられる。
【0021】
ガスケット本体21は、所定のゴム状弾性体(例えばVMQ、PIB、EPDM、FKMなど)によって平面状(平板状)に成形されており、その構成要素として、燃料電池の反応面の周りを全周に亙ってシールするための枠状の外周シール部22と、燃料電池の反応面と各マニホールド部の仕切り部をシールするための内側シール部23とを一体に有している。ガスケット本体21の断面形状は図1(B)に示すように、例えば断面円形とされている。符号24は、ガスケット本体21をその厚み方向に貫通する貫通部(空間部)を示している。ガスケット本体21は、平面長方形状に成形され、例えばその平面的な大きさを外形略400mm(縦)×略300mm(横)とされ、その厚みすなわち線径を略1mmとされている。
【0022】
キャリアシート31は、所定の樹脂フィルムによって平面状(平板状)に成形され、ガスケット本体21よりも一回り大きな平面長方形状に成形されている。樹脂フィルムとしては例えば、厚さ0.2mmのポリプロピレンフィルムを使用し、これを上記した大きさの平面形状に裁断して使用する。樹脂フィルムとしてはポリプロピレンの他に、ポリエチレン、ポリスチレンなど一般樹脂材が使用可能である。フィルムの厚さについては、ガスケット本体21の線径や断面形状にもよるが、0.1mm〜0.3mm程度とするのが好ましい。
【0023】
キャリアシート31の平面上一部であってガスケット本体21と平面上重なる部位に、ガスケット本体21の外形形状(ガスケット本体21の断面形状における外郭線)に沿って変形した立体形状のガスケット保持部32が設けられ、このガスケット保持部32にガスケット本体21の厚み方向の一部が収められている。当該実施例では上記したようにガスケット本体21の断面形状が断面円形とされているので、これに対応してガスケット保持部32の断面形状は断面円弧形(半円形)とされ、このように断面円弧形のガスケット保持部32を設けることによってその裏面側に設けられる溝状の空間部(凹部)33内に、ガスケット本体21の厚み方向片方の一部が収められている。
【0024】
ガスケット本体21はキャリアシート31に対し非接着とされるため、スタッキングに際してキャリアシート31から取り外すことが可能とされている。但し、後記するようにガスケット本体21を成形する金型41にキャリアシート31をインサートした状態でガスケット本体21を成形すると、成形したガスケット本体21が材質上粘着性を備えているため、この粘着性によってガスケット本体21はキャリアシート31に対し粘着された状態とされることがある。粘着は、チャッキング装置による取り外しができるほどに粘着力が小さいものである。したがってこの場合、ラバーオンリータイプのガスケット本体21は、樹脂フィルムよりなるキャリアシート31に対し非接着ではあるが、剥離可能に粘着していることになる。
【0025】
また、キャリアシート31の平面上一部であってガスケット本体21と平面上重なる部位に、キャリアシート31からガスケット本体21を取り外すときにキャリアシート31およびガスケット本体21間にエアを流入させるためのエア流入口34が設けられており、当該実施例ではこのエア流入口34がガスケット保持部32の底面位置に設けられている。
【0026】
また、このエア流入口34はガスケット保持部32の長手方向に沿って複数が設けられており、当該実施例では図1(A)の平面図に示すように、ガスケット本体21における外周シール部22の角部(4箇所)および長手側辺中央部(2箇所)ならびに外周シール部22と内側シール部23が交差する部位(8箇所)の都合14箇所に対応する位置にそれぞれエア流入口34が設けられている。
【0027】
上記構成のガスケット11においては、ラバーオンリータイプのガスケット本体21が樹脂フィルムよりなるキャリアシート31によって保持されるため、ガスケット11の搬送に際してガスケット本体21に捩れが生じにくく、搬送しやすい。また、ガスケット本体21がキャリアシート31に対し非接着とされるため、スタッキングに際してガスケット本体21をキャリアシート31から容易に取り外すことが可能とされる。したがってガスケット11の取扱い作業性を向上することができる。
【0028】
また、キャリアシート31に立体形状のガスケット保持部32が設けられて、このガスケット保持部32内にガスケット本体21の一部が収められているため、ガスケット本体21はキャリアシート31に対し平面上位置決めされる。したがってガスケット11の搬送に際してガスケット本体21がキャリアシート31に対しずれることがないため、ガスケット本体21をキャリアシート31によってしっかりと保持することができる。
【0029】
また、キャリアシート31にエア流入口34が設けられているため、ガスケット本体21をキャリアシート31から取り外すに際して、エア流入口34からキャリアシート31およびガスケット本体21間にエアを流入させる(吹き込む)ことにより、ガスケット本体21をキャリアシート31から容易に取り外す(剥離する)ことができる。したがってガスケット本体21をキャリアシート31によってしっかりと保持しながらも、ガスケット本体21をキャリアシート31から容易に取り外すことができるガスケット製品を提供することができる。
【0030】
ガスケット本体21の断面形状やこれに対応するガスケット保持部32の断面形状については、ガスケット本体21の使用条件等に応じて様々なものが考えられ、例えば以下のようなものであっても良い。
【0031】
図2(A)の例では、断面長方形のガスケット本体21の上面に断面円弧形(半円形)のシールリップ25が一体成形されている。この場合、ガスケット本体21の厚み方向片方の下半分の部位は断面角形とされるので、ガスケット保持部32の断面形状も断面角形とされている。また、ガスケット保持部32の平面的な底部にエア流入口34が設けられている。
【0032】
図2(B)の例では、断面長方形のガスケット本体21の上面に断面円弧形(半円形)のシールリップ25が一体成形されるとともにガスケット本体21の側面部に平面状の張り出し部26が一体成形されている。この場合、ガスケット本体21の厚み方向片方の下半分の部位は断面角形とされるので、ガスケット保持部32の断面形状も断面角形とされている。また、キャリアシート31におけるガスケット保持部32の脇の、張り出し部26と平面上重なる位置にエア流入口34が設けられている。
【0033】
つぎに、ガスケットの製造方法を説明する。
【0034】
当該実施例に係るガスケットの製造方法は、上記図2(A)に示したガスケット11を製造するものである。製造に際しては、ラバーオンリータイプのガスケット本体21を射出成形する金型を用いる。
【0035】
工程としては先ず、所定の大きさの平面状のキャリアシート31を用意し、図3(A)に示すように、このキャリアシート31を金型41のパーティング部44に挟み込んだ状態で金型41を型締めする。
【0036】
金型41は、上型(一方の分割型)42および下型(他方の分割型)43の組み合わせを有し、両型42,43のパーティング部44にそれぞれキャビティ部45が例えば半分ずつ対応して設けられている。キャリアシート31は当初その全面が平面状であるため、キャビティ部45内を横切る状態とされる。下型43におけるキャビティ部45の底面部には、のちにエア流入口34とされる中空の突起部35をキャリアシート31に成形するための突起成形部46がキャビティ部45の一部として設けられている。
【0037】
次いで、図3(B)に示すように、キャビティ部45へガスケット本体21を成形するための成形材料を充填し、加熱する等して、ガスケット本体21を成形する。キャビティ部45へ成形材料を充填したとき、キャリアシート31はその平面上一部(キャビティ内の部分)が成形材料充填圧力によってキャビティ部45の内面に押し付けられ、キャビティ部45の内面に沿ったかたちに変形(塑性変形)し、これによりガスケット保持部32および中空の突起部35が成形される。
【0038】
次いで、図3(C)に示すように、ガスケット本体21の成形後、型開きし、図4(A)に示すように、ガスケット本体21およびキャリアシート31を同時に金型41から取り出す。取り出したガスケット本体21およびキャリアシート31は、ガスケット本体21がキャリアシート31によって保持された組み合わせ状態とされる。
【0039】
次いで、図4(B)に示すように、キャリアシート31から中空の突起部35をその内部に充填されたゴムとともに切除(カット)し、これによりキャリアシート31にエア流入口34を形成し、以上の工程をもってガスケット11の製造を完了する。
【0040】
ガスケット本体21およびキャリアシート31は互いに組み合わされた状態で製品の搬送や保管などを行う。キャリアシート31によって保持されたガスケット本体21には捩れ等が生じにくく、よってガスケット本体21を単品で取り扱う場合よりも取扱い作業性が向上する。また、上記したようにキャリアシート31にエア流入口34が設けられているため、ガスケット本体21をキャリアシート31から取り外すに際して、エア流入口34からキャリアシート31およびガスケット本体21間にエアを流入させる(吹き込む)ことにより、ガスケット本体21をキャリアシート31から容易に取り外す(剥離する)ことができる。したがってガスケット本体21をキャリアシート31によってしっかりと保持しながらも、ガスケット本体21をキャリアシート31から容易に取り外すことができるガスケット製品を提供することができる。
【0041】
上記図2(B)に示したガスケット11を製造するに際しては、エア流入口34の形成位置に照らして、図5(A)に示すようにキャリアシート31におけるガスケット保持部32の脇の、張り出し部26と平面上重なる位置に中空の突起部35を成形し、図5(B)に示すように、のちの工程でこの突起部35をその内部に充填されたゴムとともに切除(カット)することによりエア流入口34を形成する。
【0042】
また、エア流入口34の形成方法としては、図6に示すようにキャリアシート31の所定位置にあらかじめエア流入口34を設けるようにしても良く、この場合には、ガスケット本体21の成形時に一部のゴム材料(成形材料)がエア流入口34に侵入することがないように、エア流入口34に係合してこれを閉塞する閉塞用突起47を金型41(下型43)のパーティング面に設けておくのが好ましい。
【0043】
また、ガスケット本体21を燃料電池スタックに組み付ける際には、キャリアシート31を真空引き装置などでベース側へ吸着固定した状態で、ガスケット本体21をチャッキング装置などで掴んで持ち上げ、所定の位置へ移動させる。捩れが生じていないガスケット本体21はチャッキング装置などで掴みやすく、作業を円滑に進行させることができるものである。
【符号の説明】
【0044】
11 ガスケット
21 ガスケット本体
22 外周シール部
23 内側シール部
24 貫通部
25 シールリップ
26 張り出し部
31 キャリアシート
32 ガスケット保持部
33 空間部
34 エア流入口
35 突起部
41 金型
42 上型
43 下型
44 パーティング部
45 キャビティ部
46 突起成形部
47 閉塞用突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7