特許第6495110号(P6495110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6495110-抵抗測定装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495110
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】抵抗測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/09 20060101AFI20190325BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   G01R15/09
   G01R27/02 R
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-120091(P2015-120091)
(22)【出願日】2015年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-3512(P2017-3512A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】長井 秀行
【審査官】 名取 乾治
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−088756(JP,U)
【文献】 特開2013−092417(JP,A)
【文献】 特開2014−228350(JP,A)
【文献】 米国特許第06094045(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/09
G01R 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に供給する測定用電流の電流値が予め規定されている複数種類の抵抗測定レンジのうちのいずれかの当該抵抗測定レンジで当該測定対象の抵抗値を測定する測定部と、
前記測定部を制御して前記いずれかの抵抗測定レンジを指定して前記測定対象の抵抗値を測定させる処理部とを備えた抵抗測定装置であって、
前記処理部は、前記測定対象に対する印加が許容されている最大電圧値、および当該測定対象について測定され得る最大抵抗値が指定されたときに、当該最大抵抗値が測定可能範囲に含まれる前記各抵抗測定レンジの中で最も低抵抗側の当該抵抗測定レンジを特定する第1処理と、特定した前記抵抗測定レンジに規定されている前記測定用電流を前記最大抵抗値の前記測定対象に供給したときに当該測定対象に印加される電圧の電圧値を演算する第2処理とを実行し、当該第2処理において演算した電圧値が前記最大電圧値以下のときには、前記第1処理において特定した前記抵抗測定レンジを指定して前記測定対象の抵抗値を測定させ、前記第2処理において演算した電圧値が前記最大電圧値を超えているときには、前記第1処理において特定した前記抵抗測定レンジよりも小さな電流値の前記測定用電流を供給するように規定されている高抵抗側の前記抵抗測定レンジを指定して前記測定対象の抵抗値を測定させる抵抗測定装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記測定対象の基準抵抗値および当該測定対象の抵抗値の許容誤差が指定されたときに、指定された当該基準抵抗値および当該許容誤差に基づいて前記最大抵抗値を演算する第3処理を前記第1処理に先立って実行する請求項1記載の抵抗測定装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記測定部によって測定された前記測定対象の抵抗値が、前記基準抵抗値に対する前記許容誤差の範囲内の抵抗値であるか否かを特定可能に報知する測定結果報知処理を実行する請求項2記載の抵抗測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の測定レンジのうちのいずれかで測定対象の抵抗値を測定可能に構成された抵抗測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献に開示されているインピーダンス測定器(以下、単に「測定器」ともいう)は、10Ω、100Ω、1kΩ、10kΩ、100kΩ、1MΩ、10MΩ、100MΩおよび1000MΩの9つの測定レンジを有する測定部を備え、測定対象の抵抗値に応じて各測定レンジのうちから予め規定された条件に合致する測定レンジが自動的に選択される構成が採用されている。この場合、この種の測定器では、一例として、測定処理時に測定対象に対して供給する測定用電流の電流値が各測定レンジ毎に予め規定されている。
【0003】
具体的には、一例として、10Ωレンジおよび100Ωレンジの測定用電流が10mAに規定され、1kΩレンジおよび10kΩレンジの測定用電流が1mAに規定され、100kΩレンジの測定用電流が100μAに規定され、1MΩレンジの測定用電流が10μAに規定され、10MΩレンジの測定用電流が1μAに規定され、100MΩレンジの測定用電流が100nAに規定され、かつ1000MΩレンジの測定用電流が10nAに規定されている。
【0004】
また、この測定器では、上記の9つの測定レンジのうちから切替え対象とする測定レンジを予め指定しておくことにより、切替え対象に指定されている測定レンジのなかから条件に合致する測定レンジが自動的に選択される構成が採用されている。一例として、1kΩ、10kΩ、100kΩおよび1MΩの4つの測定レンジが切替え対象として指定されているときには、1MΩレンジから順に下位の測定レンジ(低抵抗側の測定レンジ)に切り替えつつ、予め規定された条件に合致する測定レンジを特定して測定処理を実行する構成が採用されている。
【0005】
この際に、一例として、上記の4つの測定レンジが切替え対象として指定されているときに、抵抗値が4kΩの抵抗体を対象とする測定が開始されたときには、1MΩレンジおよび100kΩを経て10kΩレンジに切り替えられた状態で4kΩとの抵抗値が測定される。これにより、測定対象の抵抗値の測定処理が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−288778号公報(第2−3頁、第1−2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来の測定器には、以下の解決すべき問題点が存在する。すなわち、従来の測定器では、切替え対象として指定されている測定レンジのうちの最も高抵抗側の測定レンジから順に測定レンジを切替え、予め規定された条件を満たす測定レンジに切り替えられた状態において、測定対象の抵抗値を測定する構成が採用されている。この場合、抵抗値が4kΩの抵抗体を対象とする上記の例では、1MΩレンジにおいて10μAの測定用電流が供給されることで測定対象に対して0.04Vの電圧が印加され、100kΩレンジにおいて100μAの測定用電流が供給されることで測定対象に対して0.4Vの電圧が印加され、かつ10kΩレンジにおいて1mAの測定用電流が供給されることで測定対象に対して4Vの電圧が印加されることとなる。
【0008】
一方、例えば、抵抗値が8kΩの抵抗体を測定対象とする測定に際しては、4kΩの抵抗体の測定時と同様にして1MΩレンジおよび100kΩを経て10kΩレンジに切り替えられた状態で8kΩとの抵抗値が測定される。この際には、1MΩレンジにおいて10μAの測定用電流が供給されることで測定対象に対して0.08Vの電圧が印加され、100kΩレンジにおいて100μAの測定用電流が供給されることで測定対象に対して0.8Vの電圧が印加され、かつ10kΩレンジにおいて1mAの測定用電流が供給されることで測定対象に対して8Vの電圧が印加されることとなる。
【0009】
この場合、例えば、測定対象としての抵抗体のなかには、定格電圧が5V程度の小さな電圧値のものが存在する。しかしながら、例えば、定格電圧が5Vで抵抗値が4kΩの抵抗体については、測定用電流が供給されることで印加される電圧の最大値が、10kΩレンジに切り替えられた際に1mAの測定用電流が供給されたときの4Vで、定格電圧を超える電圧値が印加されることがないものの、定格電圧が5Vで抵抗値が8kΩの抵抗体については、10kΩレンジに切り替えられた際に1mAの測定用電流が供給されることで定格電圧を超える8Vの電圧が印加されることとなる。このため、従来の測定器では、定格電圧の電圧値が小さい抵抗体等を測定対象とするときに、その抵抗値によっては、測定対象が破損するおそれがあるという問題点が存在する。
【0010】
一方、上記のような測定対象の破損を回避するために、利用者が、測定作業に先立ち、測定対象に印加される電圧値を算出して定格電圧を超えるか否かを判別し、印加される電圧値が定格電圧を超えるときには、小さな電流値の測定用電流を供給するように規定されている高抵抗側の測定レンジを手動で指定する必要がある。しかしながら、特に、この種の測定器(測定装置)を利用した抵抗値の測定作業に不慣れな利用者にとっては、各測定レンジ毎に規定されている測定用電流の電流値を把握することや、把握した電流値と測定対象の抵抗値とに基づいて測定時に印加される電圧の電圧値を正確に算出することが困難となっている。したがって、測定対象の破損を確実に回避するのが困難となっている現状がある。
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、測定対象の破損を招くことなく、その抵抗値を確実かつ容易に測定し得る抵抗測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の抵抗測定装置は、測定対象に供給する測定用電流の電流値が予め規定されている複数種類の抵抗測定レンジのうちのいずれかの当該抵抗測定レンジで当該測定対象の抵抗値を測定する測定部と、前記測定部を制御して前記いずれかの抵抗測定レンジを指定して前記測定対象の抵抗値を測定させる処理部とを備えた抵抗測定装置であって、前記処理部は、前記測定対象に対する印加が許容されている最大電圧値、および当該測定対象について測定され得る最大抵抗値が指定されたときに、当該最大抵抗値が測定可能範囲に含まれる前記各抵抗測定レンジの中で最も低抵抗側の当該抵抗測定レンジを特定する第1処理と、特定した前記抵抗測定レンジに規定されている前記測定用電流を前記最大抵抗値の前記測定対象に供給したときに当該測定対象に印加される電圧の電圧値を演算する第2処理とを実行し、当該第2処理において演算した電圧値が前記最大電圧値以下のときには、前記第1処理において特定した前記抵抗測定レンジを指定して前記測定対象の抵抗値を測定させ、前記第2処理において演算した電圧値が前記最大電圧値を超えているときには、前記第1処理において特定した前記抵抗測定レンジよりも小さな電流値の前記測定用電流を供給するように規定されている高抵抗側の前記抵抗測定レンジを指定して前記測定対象の抵抗値を測定させる。
【0013】
また、請求項2記載の抵抗測定装置は、請求項1記載の抵抗測定装置において、前記処理部は、前記測定対象の基準抵抗値および当該測定対象の抵抗値の許容誤差が指定されたときに、指定された当該基準抵抗値および当該許容誤差に基づいて前記最大抵抗値を演算する第3処理を前記第1処理に先立って実行する。
【0014】
さらに、請求項3記載の抵抗測定装置は、請求項2記載の抵抗測定装置において、前記処理部は、前記測定部によって測定された前記測定対象の抵抗値が、前記基準抵抗値に対する前記許容誤差の範囲内の抵抗値であるか否かを特定可能に報知する測定結果報知処理を実行する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の抵抗測定装置では、処理部が、測定対象についての最大電圧値および最大抵抗値が指定されたときに、最大抵抗値が測定可能範囲に含まれる各抵抗測定レンジの中で最も低抵抗側の抵抗測定レンジを特定する第1処理と、特定した抵抗測定レンジの測定用電流を最大抵抗値の測定対象に供給したときに印加される電圧の電圧値を演算する第2処理とを実行し、演算した電圧値が最大電圧値以下のときには、第1処理において特定した抵抗測定レンジを指定し、演算した電圧値が最大電圧値を超えているときには、第1処理において特定した抵抗測定レンジよりも小さな電流値の測定用電流を供給するように規定されている高抵抗側の抵抗測定レンジを指定して測定対象の抵抗値を測定させる。
【0016】
したがって、請求項1記載の抵抗測定装置によれば、測定処理に先立って最大電圧値および最大抵抗値を指定するだけで、最大電圧値を超えることのない電流値の測定用電流を供給する抵抗測定レンジが自動的に指定されて抵抗値が測定されるため、測定対象に印加される電圧の電圧値を算出する作業や、手動で抵抗測定レンジを切り替える作業が不要となるため、この種の装置を利用した抵抗値の測定に不慣れな利用者であっても、測定対象の破損を招くことなく、その抵抗値を確実かつ容易に測定することができる。
【0017】
請求項2記載の抵抗測定装置によれば、処理部が、測定対象の基準抵抗値およびその許容誤差が指定されたときに、指定された基準抵抗値および許容誤差に基づいて最大抵抗値を演算する第3処理を第1処理に先立って実行することにより、測定対象に対して規定されている基準抵抗値およびその許容誤差を指定するだけで最大抵抗値が演算され、その演算結果に応じて最大電圧値を超える電圧が印加されることのない抵抗測定レンジが自動的に選択されるため、この種の装置を利用した抵抗値の測定に不慣れな利用者であっても、測定対象の破損を招くことなく、その抵抗値を確実かつ一層容易に測定することができる。
【0018】
請求項3記載の抵抗測定装置によれば、処理部が、測定部によって測定された測定対象の抵抗値が、基準抵抗値に対する許容誤差の範囲内の抵抗値であるか否かを特定可能に報知する測定結果報知処理を実行することにより、基準抵抗値および許容誤差に基づいて特定される抵抗値範囲と、測定部による測定結果とを比較して測定対象が良品であるか否かを判別する作業が不要となるため、この種の装置を利用した測定作業(測定対象の良否を検査する作業)に不慣れな利用者であっても、測定対象が良品であるか否かを確実かつ容易に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】抵抗測定装置1の構成を示す構成図である。
図2】各抵抗測定レンジ毎に規定された測定用電流の電流値について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る抵抗測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1に示す抵抗測定装置1は、「抵抗測定装置」の一例であって、測定部2、操作部3、表示部4、記憶部5および処理部6を備え、測定対象Xについての抵抗値の測定が可能に構成されている。
【0022】
測定部2は、処理部6の制御に従い、図示しない一対のテストリードを介して図示しない定電流源から測定対象Xに測定用電流を供給した状態において測定対象Xにおける測定対象端点間の電圧値を測定する。また、測定部2は、測定した電圧値、および供給した測定用電流の電流値に基づいて測定対象Xの抵抗値を演算し、その演算結果を測定値データDとして処理部6に出力する。また、測定部2は、図2に示すように、一例として、100mΩレンジ、1000mΩレンジ、10Ωレンジ、100Ωレンジ、1000Ωレンジ、10kΩレンジ、100kΩレンジ、1000kΩレンジ、10MΩレンジ、および100MΩレンジの10種類の抵抗測定レンジを備えている。
【0023】
この場合、本例の抵抗測定装置1における測定部2では、一例として、100mΩレンジおよび1000mΩレンジの測定用電流が100mAに規定され、10Ωレンジおよび100Ωレンジの測定用電流が10mAに規定され、1000Ωレンジおよび10kΩレンジの測定用電流が1mAに規定され、100kΩレンジの測定用電流が100μAに規定され、1000kΩレンジの測定用電流が10μAに規定され、10MΩレンジの測定用電流が1μAに規定され、かつ100MΩレンジの測定用電流が100nAに規定されている。
【0024】
操作部3は、測定条件の入力操作を行うための操作スイッチや、測定開始/停止を指示したり測定レンジを手動で切り替えたりするための操作スイッチなどを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部6に出力する。表示部4は、処理部6の制御に従い、後述する測定条件の設定画面や、測定結果の表示画面などの各種の表示画面を表示する。記憶部5は、処理部6の動作プログラムや測定値データDなどを記憶する。
【0025】
処理部6は、抵抗測定装置1を総括的に制御する。具体的には、処理部6は、後述するように、指定された条件に基づいて測定部2を制御することにより、上記の各抵抗測定レンジのうちのいずれかを指定して測定対象Xの抵抗値を測定させる。また、処理部6は、測定部2から出力される測定値データDを記憶部5に記憶させると共に、測定値データDに基づいて特定される抵抗値(測定部2による測定結果)を表示部4に表示させる。
【0026】
さらに、本例の抵抗測定装置1では、各種の「測定対象」の抵抗値を測定する処理だけでなく、「測定対象(検査対象)」の抵抗体等が良品であるか否かを検査することができるように構成されている。具体的には、処理部6は、測定値データDに基づいて特定される抵抗値が、予め指定された「基準抵抗値」に対する「許容誤差」の範囲内であるか否かを判別し、その判別結果を報知する「測定結果報知処理」を実行する。
【0027】
この抵抗測定装置1を用いて「測定対象(検査対象)」の一例であるチップ抵抗の抵抗値を測定し、その良否を検査する際には、まず、操作部3を操作して測定条件(検査条件)の設定画面を表示部4に表示させる。この場合、本例の抵抗測定装置1では、この設定画面において「ボルトリミット機能」を有効にすることにより、抵抗値の測定に際して測定対象Xに印加される電圧の上限値(最大電圧値)を制限することが可能となっている。また、「ボルトリミット機能」を有効にしたときには、一例として、印加される電圧値を、5V、12Vおよび30Vのうちのいずれの電圧値に制限するかを選択することができる状態となる。
【0028】
この際に、測定対象Xの定格電圧が5Vに規定されているときには、操作部3を操作して「ボルトリミット機能」を有効にすると共に、「最大電圧値」の候補から「5V」を選択する(「[測定対象に対する印加が許容されている最大電圧値]が指定されたとき」の一例)。
【0029】
次いで、操作部3を操作して、測定対象Xの「基準抵抗値」およびその「許容誤差」を入力操作する。この際には、一例として、「4kΩ」との「基準抵抗値」、および「±4%」との「許容誤差」を入力する(「[測定対象について測定され得る最大抵抗値]が指定されたとき」の一例である「[測定対象の基準抵抗値および測定対象の抵抗値の許容誤差]が指定されたとき」の一例)。これに応じて、処理部6は、指定された「基準抵抗値」および「許容誤差」に基づき、測定対象Xの「最大抵抗値」を演算する(「第3処理」の一例)。この際には、「4kΩ+4kΩ×4%=4.16kΩ」との値が「最大抵抗値」として演算される。
【0030】
続いて、処理部6は、演算した「最大抵抗値(本例では、4.16kΩ)」が測定可能範囲に含まれる各抵抗測定レンジの中で最も低抵抗側の抵抗測定レンジを特定する(「第1処理」の一例)。この際に、「4.16kΩ」との抵抗値を測定可能な抵抗測定レンジは、10kΩレンジ、100kΩレンジ、1000kΩレンジ、10MΩレンジ、および100MΩレンジの5種類であるため、これらのなかで、10kΩレンジが最も低抵抗側の抵抗測定レンジとして特定される。
【0031】
次いで、処理部6は、特定した抵抗測定レンジに規定されている測定用電流を「最大抵抗値」の測定対象Xに供給したときに測定対象Xに印加される電圧の電圧値を演算する(「第2処理」の一例)。この際には、10kΩレンジの測定用電流の電流値が「1mA」で、測定対象Xの最大抵抗値が「4.16kΩ」のため、「4.16V」との電圧値が演算される。
【0032】
続いて、処理部6は、演算した電圧値が測定対象Xに対して規定されている「最大電圧値」以下であるか、「最大電圧値」を超えているかを判別する。この際には、測定対象Xに対して規定されている定格電圧(最大電圧値)が「5V」で、「最大抵抗値」の「4.16kΩ」の測定対象Xに対して「1mA」の測定用電流を供給することで印加される電圧の電圧値が「4.16V」のため、処理部6は、演算した電圧値が「最大電圧値」以下であると判別する(「第2処理において演算した電圧値が最大電圧値以下のとき」の一例)。
【0033】
この際に、処理部6は、測定部2を制御することにより、測定対象Xの「最大抵抗値」が測定可能範囲に含まれる抵抗測定レンジの中で最も低抵抗側の抵抗測定レンジであると特定した10kΩレンジを指定して抵抗値を測定させる。これに応じて、測定部2は、測定対象Xにおける両電極の間に「1mA」の測定用電流を供給しつつ、両電極の間の電圧値を測定する。この結果、測定対象Xの抵抗値が「基準抵抗値」に対する「許容誤差」の範囲内の最大値(本例では、「4.16kΩ」)であったとしても、その測定対象Xに印加される電圧は、最大で4.16Vとなり、定格電圧を超えることなく、電圧値が測定される。また、測定部2は、測定した電圧値、および供給した測定用電流の電流値に基づいて測定対象Xの抵抗値を演算し、その演算結果を測定値データDとして処理部6に出力する。
【0034】
これに応じて、処理部6は、出力された測定値データDを記憶部5に記憶させると共に、測定値データDに基づいて特定される抵抗値を表示部4に表示させる(図示せず)。また、処理部6は、測定値データDに基づいて特定される抵抗値が、「基準抵抗値」に対する「許容誤差」の範囲内の抵抗値であるか否かを判別する。
【0035】
この際に、「4kΩ」との「基準抵抗値」に対して「±4%」との「許容誤差」が規定されている本例では、処理部6は、特定される抵抗値が「3.84kΩ以上4.16kΩ以下」の範囲内の抵抗値であるときに、測定値データDに基づいて特定される抵抗値を示す文字列(一例として「4.01kΩ」との文字列)と共に「Pass」との文字列を表示部4に表示させ(「基準抵抗値に対する許容誤差の範囲内の抵抗値」であることを特定可能に報知する「測定結果報知処理」の一例)、その測定対象X(チップ抵抗)についての測定処理(検査処理)を終了する。
【0036】
また、処理部6は、特定される抵抗値が「3.84kΩ以上4.16kΩ以下」の範囲内の抵抗値ではないときに、測定値データDに基づいて特定される抵抗値を示す文字列(一例として「3.75kΩ」との文字列)と共に「Fail」との文字列を表示部4に表示させ(「基準抵抗値に対する許容誤差の範囲内の抵抗値」ではないことを特定可能に報知する「測定結果報知処理」の一例)、その測定対象X(チップ抵抗)についての測定処理(検査処理)を終了する。
【0037】
一方、例えば、4kΩ±4%のチップ抵抗に代えて、8kΩ±4%のチップ抵抗を「測定対象(検査対象)」とする測定処理(検査処理)を実行する際には、操作部3を操作して、「8kΩ」との「基準抵抗値」、および「±4%」との「許容誤差」を入力する(「[測定対象について測定され得る最大抵抗値]が指定されたとき」の他の一例である「[測定対象の基準抵抗値および測定対象の抵抗値の許容誤差]が指定されたとき」の他の一例)。これに応じて、処理部6は、指定された「基準抵抗値」および「許容誤差」に基づき、測定対象Xの「最大抵抗値」を演算する(「第3処理」の他の一例)。この際には、「8kΩ+8kΩ×4%=8.32kΩ」との値が「最大抵抗値」として演算される。
【0038】
続いて、処理部6は、演算した「最大抵抗値(本例では、8.32kΩ)」が測定可能範囲に含まれる各抵抗測定レンジの中で最も低抵抗側の抵抗測定レンジを特定する(「第1処理」の他の一例)。この際に、「8.32kΩ」との抵抗値を測定可能な抵抗測定レンジは、10kΩレンジ、100kΩレンジ、1000kΩレンジ、10MΩレンジ、および100MΩレンジの5種類であるため、これらのなかで、10kΩレンジが最も低抵抗側の抵抗測定レンジとして特定される。
【0039】
次いで、処理部6は、特定した抵抗測定レンジに規定されている測定用電流を「最大抵抗値」の測定対象Xに供給したときに測定対象Xに印加される電圧の電圧値を演算する(「第2処理」の他の一例)。この際には、10kΩレンジの測定用電流の電流値が「1mA」で、測定対象Xの最大抵抗値が「8.32kΩ」のため、「8.32V」との電圧値が演算される。
【0040】
続いて、処理部6は、演算した電圧値が測定対象Xに対して規定されている「最大電圧値」以下であるか、「最大電圧値」を超えているかを判別する。この際には、測定対象Xに対して規定されている定格電圧(最大電圧値)が「5V」で、「最大抵抗値」の「8.32kΩ」の測定対象Xに対して「1mA」の測定用電流を供給することで印加される電圧の電圧値が「8.32V」のため、処理部6は、演算した電圧値が「最大電圧値」を超えていると判別する(「第2処理において演算した電圧値が最大電圧値を超えているとき」の一例)。
【0041】
この際に、処理部6は、測定対象Xの「最大抵抗値」が測定可能範囲に含まれる抵抗測定レンジの中で最も低抵抗側の抵抗測定レンジであると特定した10kΩレンジよりも1つ高抵抗側の100kΩレンジに規定されている測定用電流の電流値を特定する。また、処理部6は、特定した電流値の測定用電流を「最大抵抗値」の測定対象Xに供給したときに測定対象Xに印加される電圧の電圧値を演算する。この際には、100kΩレンジの測定用電流の電流値が「100μA」で、測定対象Xの最大抵抗値が「8.32kΩ」のため、「0.832V」との電圧値が演算される。
【0042】
この場合、本例では、演算される電圧値が「最大電圧値(本例では、5V)」を下回るため、処理部6は、測定部2を制御することにより、測定対象Xの「最大抵抗値」が測定可能範囲に含まれる抵抗測定レンジの中で最も低抵抗側の抵抗測定レンジであると特定した10kΩレンジよりも1つ高抵抗側の100kΩレンジ(10kΩレンジの測定用電流よりも小さな電流値である100μAの測定用電流を供給するように規定されている抵抗測定レンジ:「高抵抗側の抵抗測定レンジ」の一例)を指定して抵抗値を測定させる。これに応じて、測定部2は、測定対象Xにおける両電極の間に「100μA」の測定用電流を供給しつつ、両電極の間の電圧値を測定する。
【0043】
この際に、最初に特定された10kΩレンジが指定されて抵抗値が測定されたときには、測定対象Xに対して1mAの測定用電流が供給される。したがって、測定対象Xの抵抗値が「基準抵抗値」に対する「許容誤差」の範囲内の最小値(本例では、「7.68kΩ」)であったとしても、その測定対象Xに対して定格電圧の「5V」を超える「7.68V」が印加されることとなる。
【0044】
これに対して、本例の抵抗測定装置1では、最初に特定された10kΩレンジよりも高抵抗側の100kΩレンジが指定されて測定対象Xに対して100μAの測定用電流が供給された状態で抵抗値が測定されるため、測定対象Xの抵抗値が「基準抵抗値」に対する「許容誤差」の範囲内の最大値(本例では、「8.32kΩ」)であったとしても、その測定対象Xに対しては、定格電圧の「5V」を下回る「0.832V」が印加されることとなる。したがって、本例の抵抗測定装置1では、定格電圧を超えることなく、測定対象Xの電圧値が測定される。また、測定部2は、測定した電圧値、および供給した測定用電流の電流値に基づいて測定対象Xの抵抗値を演算し、その演算結果を測定値データDとして処理部6に出力する。
【0045】
なお、上記の例とは相違するが、測定対象Xの「最大抵抗値」が測定可能範囲に含まれる抵抗測定レンジの中で最も低抵抗側の抵抗測定レンジ(上記の例では、10kΩレンジ)よりも1つ高抵抗側の抵抗測定レンジ(上記の例では、100kΩレンジ)に規定されている測定用連流では、「最大抵抗値」の測定対象Xに対して「最大電圧値」を超える電圧が印加されると演算したときに、処理部6は、その抵抗測定レンジよりもさらに1つ高抵抗側の抵抗測定レンジを特定し、特定した抵抗測定レンジに規定されている測定用電流を「最大抵抗値」の測定対象Xに対して供給したときに「最大電圧値」を超える電圧が印加されるか否かを確認する処理を、「最大電圧値」を超える電圧が印加されることのない測定用電流値が規定された抵抗測定レンジが特定されるまで繰り返し実行する。
【0046】
一方、100kΩレンジでの抵抗値の測定が行われた本例では、処理部6は、測定部2から出力された測定値データDを記憶部5に記憶させると共に、測定値データDに基づいて特定される抵抗値を表示部4に表示させる(図示せず)。また、処理部6は、測定値データDに基づいて特定される抵抗値が、「基準抵抗値」に対する「許容誤差」の範囲内の抵抗値であるか否かを判別する。
【0047】
この際に、「8kΩ」との「基準抵抗値」に対して「±4%」との「許容誤差」が規定されている本例では、処理部6は、特定される抵抗値が「7.68kΩ以上8.32kΩ以下」の範囲内の抵抗値であるときに、測定値データDに基づいて特定される抵抗値を示す文字列(一例として「7.98kΩ」との文字列)と共に「Pass」との文字列を表示部4に表示させ(「基準抵抗値に対する許容誤差の範囲内の抵抗値」であることを特定可能に報知する「測定結果報知処理」の他の一例)、その測定対象X(チップ抵抗)についての測定処理(検査処理)を終了する。
【0048】
また、処理部6は、特定される抵抗値が「7.68kΩ以上8.32kΩ以下」の範囲内の抵抗値ではないときに、測定値データDに基づいて特定される抵抗値を示す文字列(一例として「8.41kΩ」との文字列)と共に「Fail」との文字列を表示部4に表示させ(「基準抵抗値に対する許容誤差の範囲内の抵抗値」ではないことを特定可能に報知する「測定結果報知処理」の一例)、その測定対象X(チップ抵抗)についての測定処理(検査処理)を終了する。
【0049】
このように、この抵抗測定装置1では、処理部6が、測定対象Xについての「最大電圧値」および「最大抵抗値」が指定されたときに、「最大抵抗値」が測定可能範囲に含まれる各抵抗測定レンジの中で最も低抵抗側の抵抗測定レンジを特定する「第1処理」と、特定した抵抗測定レンジの測定用電流を「最大抵抗値」の測定対象Xに供給したときに印加される電圧の電圧値を演算する「第2処理」とを実行し、演算した電圧値が「最大電圧値」以下のときには、「第1処理」において特定した抵抗測定レンジを指定し、演算した電圧値が「最大電圧値」を超えているときには、「第1処理」において特定した抵抗測定レンジよりも小さな電流値の測定用電流を供給するように規定されている高抵抗側の抵抗測定レンジを指定して測定対象Xの抵抗値を測定させる。
【0050】
したがって、この抵抗測定装置1によれば、測定処理に先立って「最大電圧値」および「最大抵抗値」を指定するだけで、「最大電圧値」を超えることのない電流値の測定用電流を供給する抵抗測定レンジが自動的に指定されて抵抗値が測定されるため、測定対象Xに印加される電圧の電圧値を算出する作業や、手動で抵抗測定レンジを切り替える作業が不要となるため、この種の装置を利用した抵抗値の測定に不慣れな利用者であっても、測定対象Xの破損を招くことなく、その抵抗値を確実かつ容易に測定することができる。
【0051】
また、この抵抗測定装置1によれば、処理部6が、測定対象Xの「基準抵抗値」およびその「許容誤差」が指定されたときに、指定された「基準抵抗値」および「許容誤差」に基づいて「最大抵抗値」を演算する「第3処理」を「第1処理」に先立って実行することにより、測定対象Xに対して規定されている「基準抵抗値」およびその「許容誤差」を指定するだけで「最大抵抗値」が演算され、その演算結果に応じて「最大電圧値」を超える電圧が印加されることのない抵抗測定レンジが自動的に選択されるため、この種の装置を利用した抵抗値の測定に不慣れな利用者であっても、測定対象Xの破損を招くことなく、その抵抗値を確実かつ一層容易に測定することができる。
【0052】
さらに、この抵抗測定装置1によれば、処理部6が、測定部2によって測定された測定対象Xの抵抗値が、「基準抵抗値」に対する「許容誤差」の範囲内の抵抗値であるか否かを特定可能に報知する「測定結果報知処理」を実行することにより、「基準抵抗値」および「許容誤差」に基づいて特定される抵抗値範囲と、測定部2による測定結果とを比較して測定対象Xが良品であるか否かを判別する作業が不要となるため、この種の装置を利用した測定作業(測定対象Xの良否を検査する作業)に不慣れな利用者であっても、測定対象Xが良品であるか否かを確実かつ容易に検査することができる。
【0053】
なお、「抵抗測定装置」の構成は、上記の抵抗測定装置1の構成に限定されない。例えば、「ボルトリミット機能」を有効にすると共に、測定対象Xに対して印加される電圧を、5V、12Vおよび30Vのうちのいずれかに制限することで「最大電圧値」を指定する構成を例に挙げて説明したが、例えば、測定対象Xの定格電圧の電圧値が1種類だけのときには、「ボルトリミット機能」を有効にする操作を行うだけで、測定対象Xに対して印加される電圧値の上限値(最大電圧値)を予め規定された1種類の電圧値に制限する(「測定対象に対する印加が許容されている最大電圧値が指定されたとき」の他の一例)構成を採用することもできる。
【0054】
また、予め複数規定されている「最大電圧値」の中から任意の電圧値を選択することで「最大電圧値」を指定する構成に代えて、任意の電圧値を「最大電圧値」として設定する構成(例えば、操作スイッチの操作によって電圧値を入力する構成:「測定対象に対する印加が許容されている最大電圧値が指定されたとき」のさらに他の一例)を採用することもできる。さらに、指定された「基準抵抗値」および「許容誤差」に基づいて「最大抵抗値」を演算する「第3の処理」を実行する構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、「最大抵抗値」を直接指定する(入力操作する)構成を作用することもできる。
【0055】
また、測定部2による測定結果と、予め指定された「基準抵抗値」および「許容誤差」とに基づいて測定対象Xが良品であるか否か(測定された抵抗値が「基準抵抗値」に対する「許容誤差」の範囲内であるか否か)を検査して報知する構成を例に挙げて説明したが、測定対象Xについての測定処理を実行するだけで、この検査を行わない構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 抵抗測定装置
2 測定部
3 操作部
4 表示部
5 記憶部
6 処理部
D 測定値データ
X 測定対象
図1
図2