【実施例】
【0018】
以下、
図1〜
図9に基づいて本実施例の筆記具を説明する。尚、説明を分かり易くするために、図面中の同様の部材、同様の部分については同じ符号を付してある。本実施例の説明においては、筆記具として、シャープペンシルを用いて説明し、シャープペンシルの先口がある側を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。
尚、本実施例におけるシャープペンシルでは、筆記する前の状態において軸筒の軸心と軸筒以外の部品の軸心とが一致した状態で構成する。
【0019】
図1に示すように本実施例の筆記具であるシャープペンシル1は、軸筒2の前方に先口3を配し、先口3の後方でかつ軸筒2内に芯繰出機構を内蔵し、芯繰出機構で狭持される芯11を先口3の先端部3dから突出させ、軸筒2の中に後方から挿入されたノック部材5を装着し、ノック部材5を前方に押圧することで芯11が前方へ繰り出されるように構成してある。
【0020】
次に
図2及び
図3を用いて本実施例のシャープペンシル1の各構成の説明を行う。芯繰出機構4について詳述すると、前後に貫通した貫通孔を有する筒状部材6の先端孔6aに前部が複数に分割されたチャック7を挿入し、チャック7の頭部7aに締具8を外嵌し、チャック7の後部にパイプ状の芯タンク9を圧入固着する。また、筒状部材6の内鍔6bと芯タンク9の前端との間に取付時荷重が400g程度のチャックスプリング10を取り付け、チャック7と締具8と筒状部材6と芯タンク9とチャックスプリング10とで芯11を繰り出すための芯繰出機構4を構成する。
【0021】
また、前記芯出機構4は軸方向に延び中心に貫通孔を有する連結部材12の先端内孔12aから挿入され、前記筒状部材6に設けた外鍔6cの段部6dと連結部材12の先端内孔の段部12bとの間に、取付時荷重350g程度の緩衝スプリング13を弾発部材として取り付け、連結部材12の先端内孔の段部12bに対して芯繰出機構4を前方に弾発してある。また、連結部材12の前方に段状に形成した貫通孔を有するガイド部材14を配設し、ガイド部材14の後部に設けた雌螺子部14aと連結部材12の前部に設けた第1の雄螺子部12cとを着脱可能に螺着する。このとき、筒状部材6の外鍔6cがガイド部材14の後段部14bと当接し、芯繰出機構4の前方への移動が阻止される。更に、締具8は筒状部材6の前端部6eとガイド部材14の内孔段部14cとの間で長手方向に適宜移動可能に遊嵌される。
【0022】
更に、連結部材12は前記した軸筒2の前部内孔2aから挿入され、軸筒2の後部内面2bに設けた段状の係止部2cに連結部材12の後部の被係止部12dを圧入固着してある。また、芯タンク9は連結部材12の後端より後方へ突出するよう形成され、芯タンク9の後部に前記したノック部材5を着脱可能に装着する。
本実施例においては、連結部材12及び芯繰出機構4の芯タンク9を軟質材である合成樹脂で形成することで、連結部材12及び連結部材12内に内包した芯繰出機構4の芯タンク9が撓み、係止部2cを支点にして連結部材12と芯繰出機構4とが傾動するように構成される。
【0023】
ガイド部材14の前方に前記した先口3を配設し、先口3の内孔に設けた摺動部3aにガイド部材14の前部外周部14dを挿入して、先口3をガイド部材14の軸心に沿った方向へ摺動可能に構成してある。また、先口3の内孔の先段部3bには芯11を10g程度の力で保持する芯保持部材15が内蔵される。更に先口3と連結部材12の間に、先口3と連結部材12とを繋ぐ弾性変形部材16を配設し、弾性変形部材16の前部に筒状に形成した前端部16aを先口3の後段部3cに圧入固着するとともに、弾性変形部材16の後部に筒状の後端部16bを形成し、後端部16bの内面に設けた雌螺子部16cを連結部材12の外周に設けた第2の雄螺子部12eに着脱可能に螺着して連結させる。
【0024】
弾性変形部材16は
図4及び
図5Aに示すように、膨出部16dを外方に向かって膨出する8個の可撓片16eで構成し、8個の可撓片16eは膨出部16dの外周上に均等に配置されて形成される。また、可撓片16eは頂部16fを外方に向かって膨出する鉤状に形成し、可撓片16eの頂部16fは軸筒2の前部内面2dに当接するよう構成される。更に、頂部16fには凹状の溝部16gを形成してあり、可撓片16eの頂部16fが軸筒2の前部内面2dに当接した際、溝部16gにより頂部16fは直線部16hより薄く形成されていることから、
図5Bのように頂部16fを基点にして、直線部16hを維持したまま可撓片16eが軸心方向に伸びるように弾性変形し、弾性変形部材16の前端部16aと後端部16bとが互いに離れるように移動する。
本実施例において弾性変形部材16は、金属材料を用いてプレス加工により成形し、可撓片16eに300g程度の力が掛かったときに弾性変形が始まるようにした。
尚、弾性変形部材16は軸筒2内に挿入される際、可撓片16eの頂部16fが軸筒2の前部内面2dに当接し、少し変形した状態で取り付けられる。これにより、軸筒2や弾性変形部材16の寸法にばらつきが生じても可撓片16eと軸筒2の前部内面2dとを当接させることができ、軸筒2の軸心と弾性変形部材16及び弾性変形部材16に固着している先口3の軸心とが一致した状態に誘導される
【0025】
次に、
図2を用いて本実施例のシャープペンシル1で芯11を繰り出す状況を説明する。
図2は芯11を先口3の先端部3dより繰り出した状態を示した縦断面図であり、
図2の
芯繰り出し状態において、筆記を行い芯11が摩耗した場合には、ノック部材5を前方に押圧するノック操作を行うことで、芯タンク9と共にチャック7及び締具8が前進し、締具8が前進した距離だけ芯11が繰り出される。その後、ガイド部材14の内孔段部14cに締具8が当接して締具8の前進が止まり、チャック7の頭部7aが締具8から外れて拡開し、更にノックを続けるとチャック7の頭部7aが芯保持部材15に当接してチャック7の前進が停止する。
ノック部材5への押圧を緩めるとチャックスプリング10が伸びることでチャック7が後退し、チャック7の頭部7aが締具8に押圧され、チャック7が閉じられて再び芯11を狭持し、
図2の芯11が先口3より繰り出された状態を維持して筆記を可能とする。
【0026】
次に、
図6及び
図7を用いて本実施例のシャープペンシル1を筆記面100に対して60°傾けて筆記する場合を説明する。
図6のように、シャープペンシル1を筆記面100に対して60°傾けて筆記を行うと、通常の筆記圧(200g〜300g程度)では把持している軸筒2の軸心と先口3の軸心の位置が一致した状態で筆記することができ、300gを超えた筆記圧が芯11に掛かると、軸筒2の係止部2c(
図2参照)を支点にして連結部材12及び芯繰出機構4が撓むことで先口3が前部内面2dに近づくように傾動する。更に、弾性変形部材16における可撓片16eの頂部16fが軸筒2の前部内面2dに圧接されるため、可撓片16eが鉤状から直線状に軸心に沿った方向へ伸びるように弾性変形し、弾性変形部材16の前端部16aと後端部16bとの距離が広がる。このとき、弾性変形部16の後端部16bは連結部材12に螺着され、連結部材12は軸筒2に圧入固着していることから、使用者が把持している軸筒2に対して連結部材12が移動することはなく、弾性変形部材16の前端部16aと共に先口3がガイド部材14の前部外周部14dに沿って前方へ移動することで、
図7に示すように、先口3の先端部3dにより筆記中の芯11が保護されて芯11が折れることを防止できる。
図7の状態から芯11に掛かる筆圧を解除すると、弾性変形することで直線状に伸びていた可撓片16eが元の鉤状に戻るため、弾性変形部材16に固定されている先口3も後退し芯11が露出すると共に、傾動していた連結部材12と芯繰出機構4の軸心が、軸筒2の軸心と一致するように移動し、
図6の状態に戻る。
本実施例のシャープペンシル1は、筆記角度を傾けるほど芯に対する軸心方向へ力が減少し、芯の軸径方向に働く力が大きくなる。このため、シャープペンシル1を傾けるほど芯11に掛かる筆圧は先口3を介して弾性変形部材16に伝わり易くなり、弾性変形部材16が芯11の軸心方向に伸びるように弾性変形して先口3を前方に移動させ易くなる。
【0027】
次に、
図8及び
図9を用いて、本実施例のシャープペンシル1を筆記面100に対して垂直(90°)に立てて筆記した場合について説明する
図8に示すように、シャープペンシル1を傾けずに筆記面100に対して垂直に立てた状態で筆記を行う場合、シャープペンシル1を傾けて筆記しているときのように芯11に掛かった筆圧は弾性変形部材16にはほとんど伝わらないため、先口3が前進することはない。そこで、芯11に350g以上の筆圧が掛かると、芯11を狭持している芯繰出機構4に力が伝わり、芯繰出機構4を前方に弾発している緩衝スプリング13が収縮することで芯繰出機構4が後退する。このとき先口3の中段部3eはガイド部材14の先端14eと当接しているため後退することはなく、
図9に示すように、先口3に対して芯11と芯繰出機構4のみが後退し、先口3の先端部3dで芯11が保護される。
図9の状態から芯11に掛かる筆圧を解除すると、緩衝スプリング13が伸びることで芯11と芯繰出機構4が前進し、先口3の先端部3dから芯11が突出して
図8の状態に戻る。このとき、芯11と共に芯11を芯保持部材15で保持している先口3も前進しようとするが、芯保持部材15の芯保持力は10g程度と弱く設定しているため弾性変形部材16の可撓片16eを変形させることができず先口3が前方へ移動することはない。
【0028】
また、シャープペンシル1を傾けて筆記する場合でも芯11を介して芯繰出機構4に筆圧が伝わるため、緩衝スプリング13が収縮することで芯11及び芯11を狭持している芯繰出機構4を後退させるが、シャープペンシル1を傾けるほど芯11に掛かる筆圧のうち、芯11の軸心方向に掛かる力は減少するため、緩衝スプリング13を収縮するには緩衝スプリングの取付加重(350g)より高い筆圧が必要になる。これは筆記角度を傾けるほど大きくなり、逆に筆記角度を垂直に近づけるほど取付加重(350g)に近くなるものである。
つまり、本実施例における緩衝スプリング13と弾性変形部材16の関係性は、筆記角度を垂直に近づけるほど緩衝スプリング13が収縮し易くなり、芯11を後退させて芯11を保護し、筆記角度を傾けるほど弾性変形部材16に力が伝わり易くなり、弾性変形部材16の可撓片16eが伸びることで先口3を前進させ、芯11を保護するものである。
したがって、高い筆記圧で筆記する場合でも筆記角度に気をつけることなく筆記することが可能な筆記具を提供することが可能となった。