(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、近年の電子時計は、多機能化が進むと共に、ますます低消電化が求められており、光学式指針位置検出手段も更なる低消電化が要求されている。このため、光学式指針位置検出手段が動作する検出時間(位置検出手段の駆動時間)を検出可能な最短時間に設定し、要求される低消電化を実現している。
【0009】
しかし、電子時計が低温環境に置かれた場合は、時計回路を構成するMOS−ICの温度特性によって、トランジスタのON抵抗が増加するなどの現象が発生し、低温では光学式指針位置検出手段のLEDやフォトトランジスタを駆動する駆動回路の起動時間が長くなってしまう。その結果、前述したように低消電化のために光学式指針位置検出手段の検出時間(駆動時間)を短く設定していると、低温環境では指針位置検出手段が動作できず
、指針検出が正常に実施できない課題がある。この課題を以下図面に基づいて説明する。
【0010】
[特許文献1の位置検出装置の概略説明:
図11]
図11は、従来例の特許文献1で開示されているアナログ電子時計の位置検出装置の概略回路図である。
図11において、従来例の位置検出装置100は、発光部110と受光部120によって構成される。発光部110は、第1コンパレータCP1と、NチャンネルMOSトランジスタ(以下、Nchトランジスタと略す)TN1、発光素子としてのLED111、抵抗R1で構成されている。また、LED111からは検出光Lt(矢印)が出射される。
【0011】
受光部120は、受光素子としてのフォトトランジスタ121、第2コンパレータCP2、抵抗R2と、PチャンネルMOSトランジスタ(以下、Pchトランジスタと略す)TP2で構成されている。
【0012】
発光部110の第1コンパレータCP1と、受光部120の第2コンパレータCP2には、定電圧回路(図示せず)からのリファレンス電圧VRFが接続されている。
【0013】
発光部110の第1コンパレータCP1は、LED111に流れる駆動電流Idを定電流化制御するものであり、受光部120の第2コンパレータCP2は、フォトトランジスタ121による検出結果を比較して指針位置検出信号VOを出力する。
【0014】
また、発光部110の第1コンパレータCP1のイネーブル端子Eと、受光部120の第2コンパレータCP2のイネーブル端子E、及び、受光部120のPトランジスタTP2のゲートGには、イネーブル信号ENBが入力され、このイネーブル信号ENBがアクティブ(Lレベル)になった時にのみ、発光部110と受光部120が起動し動作するように構成されており、消費電力の低減が図られている。
【0015】
しかし、位置検出装置100の低消電化のためにイネーブル信号ENBのアクティブ時間、すなわち、位置検出装置100の検出時間を短くすると、前述したように、低温時にLED111やフォトトランジスタ121の起動時間が長くなり、指針検出を正常に実施できない不具合が発生する。
【0016】
[特許文献1の位置検出装置の動作説明:
図12(a)]
図12(a)は、特許文献1の位置検出装置100の動作を説明するタイミングチャートであり、位置検出装置100を内蔵する電子時計が、一例として−10℃の低温環境に置かれた場合の位置検出装置100の動作例を示している。なお、位置検出装置100の構成は
図11を参照する。
【0017】
図12(a)において、指針の位置を検出するために、所定のタイミングで、一例としてパルス幅1.5mSのイネーブル信号ENBがアクティブになると、発光部110の第1コンパレータCP1が起動して、リファレンス電圧VRFに基づいた定電流をLED111に流すように動作を開始する。これにより、LED111のアノードとカソード間には、駆動電圧VAKが印加され、LED111には、駆動電流Idが流れ出す。
【0018】
しかし、環境温度が−10℃の場合、位置検出装置100を構成するMOSトランジスタの温度特性によって、トランジスタのON抵抗が増加し、図示するように、LED111に印加される駆動電圧VAKの立ち上がりが遅くなり、駆動電圧VAKが正常値になった頃には検出時間が終了してしまう。
【0019】
このため、LED111からの検出光Ltの出射時間は、検出時間(1.5mS)より
大幅に短くなり、この検出光Ltを受光する受光部120も、低温のために起動時間が長くなるので、結果として指針位置検出信号VOは、点線の楕円で示すように、正常なパルス信号とはならず、パルス幅が狭く、波高値も僅かであり、指針検出は誤動作となる可能性が大である。
【0020】
以上のように従来技術では、電子時計の低消電化の要求のために、指針位置検出の検出時間(動作時間)を短くすると、低温時に指針位置検出手段が機能せず、外部からの衝撃などによって、指針の位置がずれてしまっても、低温時には指針のずれを検出できない問題がある。とくに、電子時計が腕時計である場合は、腕時計の使用者は様々な環境に移動するので、低温時に指針位置検出手段が誤動作することは、時計の信頼性を大きく損なうことになり、大きな問題である。なお、
図12(b)は、本発明による動作例であり、従来例との比較のために記載しているが説明は後述する。
【0021】
本発明の目的は上記課題を解決し、環境温度に影響されずに正確な指針位置検出を実現する位置検出機能付電子時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の位置検出機能付電子時計は下記記載の構成を採用する。
【0023】
本発明の位置検出機能付電子時計は、指針等の表示部材の位置を検出する位置検出装置と、温度を検出する温度検出手段と、温度検出手段で検出された測定温度に基づき、位置検出装置に対する制御を変更する制御手段と、を
備え、制御手段は、測定温度と予め設定された所定値とを比較し、測定温度が所定値より低温と判断した場合に、位置検出装置の駆動時間を常温のときより長くするか、又は位置検出装置の駆動を停止することを特徴とする。
【0024】
本発明の位置検出機能付電子時計により、測定温度に基づいて位置検出装置に対する制御を変更することで、動作温度範囲が広い高性能な指針位置検出が可能となり、信頼性に優れた電子時計を提供できる。
【0025】
また、制御手段は、測定温度と予め設定された所定値との比較結果により、位置検出装置に対する制御を変更することを特徴とする。
【0026】
これにより、予め設定された所定値に基づいて、位置検出装置に対する制御を変更するので、環境温度に対する制御の変更を高精度に実施できる。また、所定値を変更することで、制御を変更する環境温度を任意に変えることができる。
【0027】
また、位置検出装置は、発光手段と、該発光手段からの光を検出する受光手段と、を有する位置検出手段と、該位置検出手段を駆動する駆動手段を有する光学式位置検出装置であることを特徴とする。
【0028】
これにより、光学式位置検出装置を用いることで、信頼性に優れた位置検出機能付電子時計を提供できる。
【0029】
また、制御手段は、測定温度が所定値より低温と判断した場合に、駆動手段の駆動時間を常温のときより長くすることを特徴とする。
【0030】
これにより、低温時に駆動手段の起動時間が長くなっても、駆動手段の駆動時間(検出時間)を延長することで正確な指針位置検出が可能となり、信頼性に優れた位置検出機能付電子時計を提供できる。
【0031】
また、制御手段は、測定温度が所定値より低温と判断した場合に、駆動手段の駆動を停
止することを特徴とする。
【0032】
これにより、低温時に指針位置検出動作を停止することで、低温によって生じる可能性がある指針位置検出の誤動作を防止することができる。
【0033】
また、駆動時間にのみ動作し、定電圧を出力する定電圧出力手段を有し、駆動手段は、定電圧を用いて駆動されることを特徴とする。
【0034】
これにより、定電圧出力手段を低消電化できると共に、駆動手段は定電圧を基準にして駆動されるので、電源電圧の変動等に影響されず、安定した指針位置検出を実現できる。
【0035】
また、温度検出手段の温度検出結果が、位置検出機能以外の温度情報を必要とする機能の制御にも使用されることを特徴とする。
【0036】
これにより、温度情報を必要とする他の機能に対して、温度検出手段からの温度検出結果を提供することで、回路の冗長を防ぎ、回路規模を大きくすることなく、位置検出機能付電子時計を構成できる。
【0037】
また、温度検出手段の温度検出結果が、計時回路の温度補償に使用されることを特徴とする。
【0038】
これにより、温度検出手段からの温度検出結果を位置検出の制御手段と計時回路の温度補償手段が共用することで、回路の冗長を防ぎ、回路規模を大きくすることなく、温度補償機能を付加した位置検出機能付電子時計を提供できる。
【0039】
また、温度検出手段の温度検出周期と、計時回路の温度補償周期が同じであることを特徴とする。
【0040】
これにより、温度検出周期と温度補償周期とを同じにすることで、温度検出手段とそれに付随する制御手段を一つの構成としてまとめることができると共に、位置検出の制御手段と温度補償手段が同一タイミングで動作するので低消電化を実現できる。
【0041】
また、電源としての2次電池と、該2次電池の充電制御を行う充電制御手段と、を有し、測定温度を充電制御手段の充電制御にも使用することを特徴とする。
【0042】
これにより、温度検出手段からの測定温度を位置検出の制御手段と充電制御手段が共用することで、回路の冗長を防ぎ、回路規模を大きくすることなく、充電制御機能を付加した位置検出機能付電子時計を提供できる。
【0043】
また、充電制御手段が、温度検出手段を有することを特徴とする。
【0044】
これにより、充電制御手段の温度検出手段からの測定温度を位置検出の制御手段が共用できるので、温度検出手段を複数配置する必要がなく、回路の冗長を防ぎ、回路規模を大きくすることなく、充電制御機能を付加した位置検出機能付電子時計を提供できる。
【0045】
また、所定値が、充電制御手段の制御に用いる閾値と同一であることを特徴とする。
【0046】
これにより、位置検出装置に対する制御を変更する所定値と、充電制御手段に用いられる閾値が同一であるので、温度検出手段と温度比較手段を共用でき、回路構成に冗長がない充電制御機能を付加した位置検出機能付電子時計を提供できる。
【発明の効果】
【0047】
上記の如く本発明によれば、測定温度に基づいて位置検出装置に対する制御を変更し、低温時に駆動手段の駆動時間を長くするので、低温時においても正確な指針位置検出が可能となり、時計の動作温度範囲が拡大し、信頼性に優れた位置検出機能付電子時計を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下図面により本発明の実施の形態を詳述する。
[各実施形態の特徴]
第1の実施形態の特徴は本発明の基本的な構成であり、光学式位置検出装置を有し、温度検出手段で検出された測定温度に基づき、位置検出装置に対する制御を変更する制御手段を有する構成である。
【0050】
第2の実施形態の特徴は、計時回路の温度補償手段を有し、この温度補償手段が温度検出手段からの測定温度を利用する構成である。
【0051】
第3の実施形態の特徴は、二次電池の充電制御手段を有し、この充電制御手段が温度検出手段からの測定温度を利用する構成である。
【0052】
第4の実施形態の特徴は、温度検出手段を内蔵する二次電池の充電制御手段を有し、この充電制御手段からの測定温度または温度比較情報を位置検出制御手段が利用する構成である。
【0053】
なお、説明にあっては、その説明及び図は一実施形態であって、これに限定されるもの
ではない。また、断面図等の寸法や形状は実際の形状を正確に反映したものではなく、図面を見やすく、また、理解しやすくするため一部誇張して模式的に記載している。また、発明に直接関係しない一部の要素は省略し、各実施形態において同一要素には同一番号を付し、重複する説明は省略するものとする。
【0054】
[第1の実施形態]
[第1の実施形態の位置検出機能付電子時計の構成説明:
図1]
第1の実施形態の位置検出機能付電子時計の構成について、
図1を用いて説明する。
図1において、符号1は第1の実施形態の位置検出機能付電子時計である。位置検出機能付電子時計1は、発振回路10a、分周・制御回路10bを有する計時回路10と、モータ11と、輪列20と、指針を設けた表示部12と、を備えている。またさらに、指針の位置を検出する位置検出装置30と、温度検出手段31と、定電圧出力手段32と、温度比較手段61を内蔵する位置検出制御手段60を備えている。
【0055】
計時回路10の発振回路10aは、水晶振動子(図示せず)による水晶発振回路であり、基準信号P1を出力する。また、分周・制御回路10bは、分周回路、カウンタ、制御回路、及びモータ駆動回路などを含み、基準信号P1を入力して時刻情報をカウントし、タイミング信号T1やモータ駆動信号P2などを出力する。
【0056】
なお、タイミング信号T1は、一例として内部の秒カウンタ(図示せず)が0秒のときに出力され、後述する位置検出制御手段60を制御する信号である。また、計時回路10は、後述する指針位置検出信号VOを入力し、指針位置の判定や位置検出補正動作を実施する。
【0057】
モータ11は、小型低電力のステップモータであり、モータ駆動信号P2によって駆動される。輪列20は複数の歯車(図示せず)によって構成され、モータ11からの回転力によって回転し、表示部12の秒針、分針、時針等を動かし、時刻を表示する。
【0058】
位置検出装置30は、光によって指針の位置を検出する光学式位置検出装置であり、位置検出手段40と駆動手段50で構成される。位置検出手段40は、LEDなどによって検出光Ltを出力する発光手段41と、フォトトランジスタなどによる受光手段42で構成される。
【0059】
位置検出手段40の発光手段41と受光手段42は、輪列20の特定の歯車を挟み込むように配置され、発光手段41からの検出光Ltが歯車に設けられた検出穴を通過することで受光手段42が検出し、歯車の位置、すなわち、指針の位置を検出する。
図1で輪列20と位置検出手段40を結ぶ双方向の矢印Aは、輪列20と位置検出手段40が互いに関係し合って指針位置を検出することを示している。なお、輪列20と位置検出手段40の詳細な構成は後述する。
【0060】
位置検出装置30の駆動手段50は、定電圧出力手段32から所定値のリファレンス電圧VRFを入力し、このリファレンス電圧VRFを基準として駆動され、また、位置検出制御手段60からのイネーブル信号ENBによって制御されて発光手段41と受光手段42を駆動する機能を有している。また、駆動手段50は、受光手段42が検出光Ltの有無を検出した結果を指針位置検出信号VOとして出力する。
【0061】
位置検出制御手段60は、計時回路10からのタイミング信号T1に基づいて温度検出手段31からの測定温度TMを所定の周期で入力し、内部の温度比較手段61によって、閾値温度である所定値THと比較し、測定温度TMが所定値THより低ければ、位置検出装置30を制御するイネーブル信号ENBのパルス幅を変更する。
【0062】
すなわち、位置検出制御手段60は、測定温度TMに基づいて位置検出装置30に対する制御を変更するのである。また、位置検出制御手段60からのイネーブル信号ENBは、定電圧出力手段32の動作も制御する。
【0063】
なお、温度検出手段31は、サーミスターなどの測温抵抗体を含むCR発振方式の温度センサーや、半導体の温度特性を利用したIC温度センサー等を用いることができる。また、位置検出制御手段60が内蔵する温度比較手段61は、アナログコンパレータや、測定温度TMをデジタル量に変換してデジタルコンパレータを用いることができる。
【0064】
[第1の実施形態の位置検出装置の回路構成の説明:
図2]
次に、第1の実施形態の位置検出装置30の詳細な回路構成の一例について、
図2を用いて説明する。なお、位置検出装置30の基本構成は、前述した特許文献1の位置検出装置100(
図11参照)に類似した構成であるので、理解しやすいように同一要素の大部分は同一番号を付して説明する。
【0065】
図2において、位置検出装置30(大きな点線で囲む)は、前述したように、位置検出手段40と駆動手段50とを備えている。位置検出手段40(小さな点線で囲む)は、発光手段としてのLED41と、受光手段としてのフォトトランジスタ42を有している。
【0066】
駆動手段50(位置検出装置30で位置検出手段40以外の要素)は、LED41を駆動するために、PchトランジスタTP1、抵抗R1、NchトランジスタTN1、第1コンパレータCP1を有している。さらに、駆動手段50は、フォトトランジスタ42を駆動し、フォトトランジスタ42からの検出信号を出力するために、PchトランジスタTP2、抵抗R2、第2コンパレータCP2を有している。
【0067】
PchトランジスタTP1、TP2の各ゲートGは、位置検出制御手段60(
図1参照)からのイネーブル信号ENBを入力し、このイネーブル信号ENBがアクティブ(Lレベル)になった時にPchトランジスタTP1、TP2がONとなり、LED41とフォトとトランジスタ42が動作するように構成されており、消費電力の低減が図られている。
【0068】
また、第1コンパレータCP1は、定電圧出力手段32からのリファレンス電圧VRFを基準として動作し、LED41に流れる駆動電流Idを定電流化制御する機能を有しており、電池電圧VBTが変動しても、駆動電流Idは変動せず、LED41は安定して駆動される。
【0069】
また、第2コンパレータCP2も、リファレンス電圧VRFを基準として動作し、フォトトランジスタ42のコレクタ電圧VCとリファレンス電圧VRFを比較して、フォトトランジスタ42が、LED41からの検出光Ltを受光してコレクタ電圧VCがリファレンス電圧VRFより下がると、指針位置検出信号VOが出力する。この指針位置検出信号VOは、位置検出装置30が指針位置を検出したか否かを現す信号であり、この信号の詳細は後述する。
【0070】
なお、第1コンパレータCP1と第2コンパレータCP2は、従来例として示した
図11の第1、第2コンパレータCP1、CP2と同様にイネーブル端子Eを設けて、イネーブル信号ENBを入力する構成にしてもよい。この場合は、イネーブル信号ENBがアクティブになると第1コンパレータCP1の動作によってLED41に流れる駆動電流Idを遮断できるので、
図11と同様にPchトランジスタTP1は不要となる。
【0071】
また、定電圧出力手段32は、駆動手段50と同様に、イネーブル信号ENBを入力し、イネーブル信号ENBがアクティブ(Lレベル)になった時にのみ動作して、リファレンス電圧VRFを出力するように構成されており、消費電力の低減が図られている。
【0072】
従って、位置検出装置30と、この位置検出装置30にリファレンス電圧VRFを供給する定電圧出力手段32は、位置検出制御手段60からのイネーブル信号ENBによって制御され、イネーブル信号ENBがアクティブになったときにのみ動作するのである。このイネーブル信号ENBがアクティブになる期間が、位置検出装置30と定電圧出力手段32の駆動時間である。
【0073】
[第1の実施形態の輪列と位置検出手段の配置と動作説明:
図3]
次に、第1の実施形態の輪列20と位置検出手段40の配置と動作について、
図3の断面図を用いて説明する。
図3において、符号21は秒針(図示せず)が取り付けられた四番車であり、位置検出の対象となる歯車である。四番車21は、四番カナに四番歯車21aが圧入固定されている。
【0074】
符号22は四番車21を駆動する五番車であり、五番カナに五番歯車22aが圧入固定されている。符号23は四番車21の位置をモニタする検出専用の秒検出車であり、四番車21と同様に五番車22によって駆動される。符号24は金属またはプラスチック部材の地板である。符号25は金属製の輪列受である。地板24と輪列受25は、五番車22と秒検出車23を回転可能に保持している。
【0075】
符号26は位置検出手段40のLED41が実装された基板であり、プリント基板で作成される。符号27は位置検出手段40のフォトトランジスタ42が実装された基板であり、プリント基板で作成される。
【0076】
基板27は地板24に配置され、図示しないねじにて固定される。また、フォトトランジスタ42は地板24と断面的に重ねて、地板24に設けられた穴または切り欠き内に配置することで、時計の厚みを低減している。
【0077】
符号22bは、五番歯車22aに1個空いている五番歯車検出穴であり、符号23bは、秒検出歯車23aに1個空いている秒検出歯車検出穴である。この五番歯車検出穴22bと秒検出歯車検出穴23bは、四番車21の位置をモニタする検出専用の穴であり、各検出穴は五番車22が駆動すると60秒毎に一回重なる構造である。なお、五番車22は、モータ11(
図1参照)の回転力で回転する。
【0078】
ここで、位置検出手段40のLED41とフォトトランジスタ42の平面配置は、五番歯車22aの五番歯車検出穴22bと秒検出歯車23aの秒検出歯車検出穴23bとが重なる厚み方向の延長線上に配置される。
【0079】
この五番歯車検出穴22bと秒検出歯車検出穴23bが重なると、LED41が発光する検出光Ltは検出穴を通過し、フォトトランジスタ42で受光される。二つの検出穴が重なる60秒間隔は、秒針(図示せず)が取付けられた四番車21の1回転に要する時間であり、二つの検出穴が重なったときに、秒針が文字板(図示せず)の0秒位置を指示するように配置するとよい。
【0080】
従って、前述した計時回路10の秒カウンタ(図示せず)が0秒のときにイネーブル信号ENBを出力し、位置検出手段40が駆動されるタイミングと、二つの検出穴が重なるタイミング(秒針が文字板の0秒位置を指示するタイミング)と、を一致させておくことにより、計時回路10がカウントしている時刻情報と、指針による時刻表示が一致してい
るかを検出できる。
【0081】
すなわち、位置検出手段40が駆動されるタイミングに二つの検出穴が重なれば、フォトトランジスタ42は検出光Ltを受光できるので、前述した指針位置検出信号VOが出力され、それによって、計時回路10がカウントしている時刻情報と、指針による時刻表示が一致していることを確認できる。
【0082】
しかし、衝撃などの原因によって秒針が本来の位置からずれた場合、位置検出手段40が駆動されるタイミングと二つの検出穴が重なるタイミングとにずれが生じるので、LED41からの検出光Ltは、二つの検出穴を通過できずに遮断され、フォトトランジスタ42は検出光Ltを受光できない。その結果、指針位置検出信号VOは出力されず、指針(秒針)の位置がずれたことを確認できる。
【0083】
[第1の実施形態の位置検出動作の説明:
図4、
図5]
次に、第1の実施形態の位置検出動作の詳細について、
図4と
図5を用いて説明する。
図4は位置検出動作順を示すフローチャートであり、
図5(a)は常温時の位置検出動作を示すタイミングチャートであり、
図5(b)は低温時の位置検出動作を示すタイミングチャートである。なお、位置検出機能付電子時計1の構成は
図1を、位置検出装置30の回路構成は
図2を参照する。
【0084】
図4において、位置検出機能付電子時計1の位置検出制御手段60は、計時回路10からのタイミング信号T1を入力し、温度検出タイミングであるか否かを判定する(
図4:ステップS1)。ここで、タイミング信号T1が来なければウエイトし(判定N)、タイミング信号T1が到来すれば(判定Y)、次のステップS2へ進む。
【0085】
次に、ステップS1において、判定Y(タイミング信号T1が到来)の場合、位置検出制御手段60は、温度検出手段31を起動して測定温度TMを取得する(
図4:ステップS2。
図5:タイミングt1参照)。ここで、タイミング信号T1は、前述したように、計時回路10の時刻情報(秒カウンタ)が0秒となるときに出力され、このタイミングT1と温度検出手段31が起動するタイミングt1は同期する(
図5参照)。従って、温度検出手段31は、指針の位置にずれがなければ、秒針が文字板の0秒位置になる毎に起動され、測定温度TMが取得される。
【0086】
次に、位置検出制御手段60は、取得した測定温度TMと、予め記憶している所定値TH(たとえば、0℃:制御を変更する閾値温度)と、を内部の温度比較手段61によって比較し、測定温度TMが所定値THより低温か否かを判定する(
図4:ステップS3)。ここで、測定温度TMが所定値THより低くなければ(判定N:常温)、ステップS4へ進み、また、測定温度TMが所定値THより低ければ(判定Y:低温)、ステップS5へ進む。なお、所定値TH(閾値温度)は電子時計の性能や仕様に応じて任意に変更できる。
【0087】
次に、ステップS3で判定Nであった場合、位置検出制御手段60は、出力するイネーブル信号のパルス幅を常温値(たとえば、1.5mS)に設定する(
図4:ステップS4)。また、ステップS3で判定Yであった場合、位置検出制御手段60は、出力するイネーブル信号ENBのパルス幅を低温値(たとえば、2.5mS)に設定する(
図4:ステップS5)。
【0088】
次に、計時回路10は、モータ11を駆動するために、モータ駆動信号P2を出力し、モータ11を1ステップ駆動して、秒針12a(
図1参照)をたとえば、文字板の0秒位置とする(
図4:ステップS6。
図5:タイミングt2参照)。
【0089】
次に、位置検出制御手段60は、モータ駆動信号P2が出力された所定の時間後に、イネーブル信号ENBを出力し、位置検出装置30と定電圧出力手段32を起動する(
図4:ステップS7)。ここで、ステップS3が判定N(常温)であれば、パルス幅が1.5mSに設定されたイネーブル信号ENBが出力される(
図5(a):タイミングt3参照)。
また、ステップS3が判定Y(低温)であれば、パルス幅が2.5mSに設定されたイネーブル信号ENBが出力される(
図5(b):タイミングt3参照)。
【0090】
次に、位置検出装置30と定電圧出力手段32は、イネーブル信号ENBを入力して起動し、発光手段であるLED41から検出光Ltが出射される。この検出光Ltは、前述した輪列20の五番歯車検出穴22bと秒検出歯車検出穴23b(
図3参照)を通過し、受光手段であるフォトトランジスタ42に届き、駆動手段50の第2コンパレータCP2(
図2参照)から、指針位置検出信号VOが出力する(
図4:ステップS8)。
【0091】
ここで、
図5(a)に示すように、測定温度TMが常温(たとえば、20℃)である場合、前述したように、イネーブル信号ENBのパルス幅は1.5mSであるが、位置検出装置30と定電圧出力手段32の起動が速いので、指針位置検出信号VOは、イネーブル信号ENBのパルス幅にほぼ等しい正常なパルス信号として出力される。また、常温では、イネーブル信号ENBのパルス幅が短いので、位置検出装置30と定電圧出力手段32の駆動時間が短くなり、低消電で指針位置の検出動作を実現できる。
【0092】
また、
図5(b)に示すように、測定温度TMが低温(たとえば、−10℃)である場合、前述したように、イネーブル信号ENBのパルス幅は長くなり、たとえば2.5mSとなる。ここで、低温のために位置検出装置30と定電圧出力手段32の起動が遅くなり、位置検出信号VOの立ち下がりは、イネーブル信号ENBのタイミングt3より遅れて遅れ時間t4が生じる。
【0093】
しかし、低温時はイネーブル信号ENBのパルス幅が長く設定されているので、指針位置検出信号VOに遅れ時間t4が生じても、指針位置検出信号VOは、常温時のパルス幅にほぼ等しいパルス信号として出力されるので、指針検出に誤動作が発生することがない。
【0094】
なお、ステップS8において、衝撃が加わったなどの原因によって、指針(秒針)にずれが生じ、イネーブル信号ENBのタイミングt3で、LED41からの検出光Ltがフォトトランジスタ42に到達しない場合は、図示しないが指針位置検出信号VOは出力されず、指針位置がずれたと判定できる。このステップS8以降の位置検出結果の判定と、指針の位置ずれを検出した場合の指針位置補正動作等は公知技術であるので、説明は省略する。
【0095】
また、温度検出手段31が起動して測定温度TMを出力する周期(すなわち、
図5:タイミングt1の繰り返し周期)は、前述したように秒針12aが文字板の0秒位置になる周期と同一であり、60秒周期である。この指針検出のために温度検出手段31が起動し測定温度TMを出力する周期を温度検出手段31の温度検出周期と称する。
【0096】
なお、ステップS3で判定Y(低温判定)であった場合、低温での位置検出動作が不安定になると判断し、位置検出制御手段60は、イネーブル信号ENBの出力を停止して、駆動手段50を含む位置検出装置30の駆動を停止してもよい。これにより、低温時における指針位置検出の不安定動作を排除できる。この位置検出停止動作は、環境温度がかなりの低温(たとえば−10℃以下)である場合に有効である。この低温による位置検出停
止期間中では、検出対象の指針(秒針)を基準位置(たとえば、0秒位置)に停止させてもよい。
【0097】
また、
図4のフローチャートでは記載していないが、ステップS3の測定温度TMの判定を2段階とし、たとえば、0℃以下の低温ではイネーブル信号ENBのパルス幅を長くし、更なる低温(たとえば−10℃以下)ではイネーブル信号ENBを停止して、位置検出動作を停止させてもよい。これにより、低温での指針位置検出を確実にし、また、更なる低温での誤動作を防止できる。
【0098】
[第1の実施形態の位置検出装置の低温時の動作説明:
図12(b)]
次に、位置検出装置30の低温時(たとえば、−10℃)の動作の詳細について、
図12(b)を用いて説明する。なお、位置検出装置30の構成は
図2を参照する。
図12(b)において、低温時の動作としてパルス幅2.5mSのイネーブル信号ENBが出力されると(すなわち、駆動時間が2.5mS)、駆動手段50と定電圧出力手段32の温度特性によって、LED41に印加される駆動電圧VAKは低温のために立ち下がりが緩やかで、且つ遅くなる。その結果、LED41からの検出光LTの立ち上がりも遅くなる。
【0099】
フォトトランジスタ42は、この検出光LTを受光するが、低温であるために、第2コンパレータCP2(
図2参照)の出力である指針位置検出信号VOの立ち下がりはさらに遅れ、結果として、遅れ時間t4が経過してから指針位置検出信号VOが出力される。
【0100】
しかし、前述したように、本実施形態では、低温時にイネーブル信号ENBのパルス幅を長く設定しているので、低温のために遅れ時間t4が存在しても、図示するように、指針位置検出信号VOは正常なパルス信号として出力され、低温時における指針の位置検出を確実に実施できる。このように、従来の低温時の動作(
図12(a)参照)と比較すると、本発明の効果が明確になる。
【0101】
また、低温時において、位置検出装置30の駆動時間をどの程度長くするかは、指針位置検出信号VOの遅れ時間t4に基づいて決定することが好ましい。たとえば、所定の低温において、遅れ時間t4が約1mS存在すれば、常温での駆動時間に対して、遅れ時間t4に相当する約1mSを加えた駆動時間にすることで、低温時における位置検出装置30の動作を常温時と同様に確実にすることができる。
【0102】
以上のように、第1の実施形態の位置検出機能付電子時計によれば、測定温度TMに基づいて位置検出装置30に対する制御を変更し、低温時には、位置検出装置30の駆動手段50と定電圧出力手段32の駆動時間を長くすることにより、低温時においても正確な指針位置検出が可能となり、時計の動作温度範囲が拡大し、信頼性に優れた位置検出機能付電子時計を提供できる。また、測定温度TMが常温である場合は、駆動時間を短くすることで、指針位置検出のための消費電力を極力小さく出来るので、低消電の位置検出機能付電子時計を実現できる。
【0103】
[第2の実施形態]
[第2の実施形態の位置検出機能付電子時計の構成説明:
図6]
次に第2の実施形態の位置検出機能付電子時計の構成について、
図6を用いて説明する。なお、第2の実施形態の特徴は、歩度の温度補償手段を有し、この温度補償手段が、指針位置検出のための温度検出手段からの測定温度を利用することである。
図6において、符号2は第2の実施形態の位置検出機能付電子時計である。
【0104】
位置検出機能付電子時計2の構成は、第1の実施形態の位置検出機能付電子時計1と同
様に、計時回路10、モータ11、輪列20、指針を設けた表示部12、指針の位置を検出する位置検出装置30、温度検出手段31、定電圧出力手段32、位置検出制御手段60などを備えている。
【0105】
また、符号70は本実施形態の特徴である温度補償制御手段である。この温度補償制御手段70は、計時回路10に含まれる発振回路10aの水晶振動子(図示せず)の温度特性を補償して温度に対して安定した歩度を実現するための機能を有している。
【0106】
従って、温度補償制御手段70は、時計が置かれている環境の温度情報が必要であるが、本実施形態では、必要とする温度情報を指針位置検出のための温度検出手段31から得ている。すなわち、温度補償制御手段70は、温度検出手段31からの測定温度TMを所定の周期で入力し、取得した温度情報に基づいて、水晶振動子の温度特性を補正するための温度補償データを算出し、その更新された温度補償データに基づいて計時回路10に対して制御信号P3、P4を出力する。
【0107】
制御信号P3は、計時回路10の発振回路10aに入力され、発振回路10aの負荷コンデンサ(図示せず)を切り替えて、基準信号P1の周波数(すなわち、発振回路10aの発振周波数)を測定温度TMに応じて調整する。なお、制御信号P3による調整は歩度の微調整に適している。
【0108】
また、制御信号P4は、計時回路10の分周・制御回路10bに入力され、分周回路の分周比を変更して、モータ駆動信号P2の周期(すなわち、歩度)を測定温度TMに応じて調整する。なお、制御信号P4による調整は歩度の粗調整に適している。また、制御信号P3、P4は、どちらか一方だけを用いてもよい。
【0109】
ここで、温度補償制御手段70は、前述したように、所定の周期で測定温度TMを取得し、その最新の温度情報に基づいて温度補償データを新たに算出し、制御信号P3、P4を出力して計時回路10を制御するが、この測定温度TMの取得と温度補償データの更新の周期を温度補償周期と称する。
【0110】
本実施形態では、この温度補償制御手段70の温度補償周期と、前述した指針検出のための温度検出手段31の温度検出周期が同じになるように構成される。すなわち、
図5で示した温度検出手段31の温度検出のタイミングt1に同期して、温度補償制御手段70の温度補償周期が実施されるのである。
【0111】
なお、水晶振動子の温度特性を補償する温度補償制御は、よく知られた公知技術であるので、温度補償制御手段70の詳細な説明は省略する。
【0112】
以上のように、第2の実施形態の位置検出機能付電子時計によれば、指針検出のための温度検出手段31からの測定温度TMを温度補償制御手段70が共用し、この測定温度TMに基づいて計時回路10の温度補償を実施するので、温度検出手段を複数配置する必要がなく、回路の冗長を防ぎ、小規模な回路構成による温度補償機能を付加した位置検出機能付電子時計を提供できる。
【0113】
また、指針検出のための温度検出手段31の温度検出周期と温度補償制御手段70の温度補償周期が同じであり、二つの機能を同一タイミングで実施するので、温度検出制御の構成を簡素化できると共に、位置検出制御と温度補償制御の駆動時間がたとえば60秒間に1回のみで済むので、電子時計の更なる低消電化を実現できる。
【0114】
なお、温度補償機能付電子時計に本発明の指針位置検出機能を追加する場合は、温度補
償制御のために温度検出手段がすでに備わっているので、この温度補償制御用の温度検出手段からの温度情報を位置検出手段60が使用してもよい。すなわち、位置検出機能と温度補償機能の両方が備わった電子時計では、一つの温度検出手段を共用できるのである。
【0115】
[第3の実施形態]
[第3の実施形態の位置検出機能付電子時計の構成説明:
図7]
次に第3の実施形態の位置検出機能付電子時計の構成について、
図7を用いて説明する。なお、第3の実施形態の特徴は、二次電池用の充電制御手段を有し、この充電制御手段が指針位置検出のための温度検出手段からの測定温度を利用することである。
図7において、符号3は第3の実施形態の位置検出機能付電子時計である。
【0116】
位置検出機能付電子時計3の構成は、第1の実施形態の位置検出機能付電子時計1と同様に、計時回路10、モータ11、輪列20、指針を設けた表示部12、指針の位置を検出する位置検出装置30、温度検出手段31、定電圧出力手段32、位置検出制御手段60などを備えている。
【0117】
また、符号80は本実施形態の特徴である充電制御手段である。また、符号81は太陽電池などによる発電手段であり、符号82は二次電池である。充電制御手段80は、発電手段81からの発電電力P5を入力し、二次電池82に充電電力P6を供給して二次電池82を充電する。二次電池82は、充電電力P6の供給を受けて充電され、電池電圧VBTを出力して位置検出機能付電子時計3を駆動する。
【0118】
ここで、二次電池82は、その充電特性によって、低温時(たとえば、0℃以下)は、充電動作が禁じられているため、充電制御手段80は、時計が置かれている環境の温度情報を取得して、低温時には二次電池82への充電動作を禁止する制御が必要である。従って、充電制御手段80は、時計が置かれている環境の温度情報が必要であるが、本実施形態では、必要とする温度情報を指針位置検出のための温度検出手段31から得ている。
【0119】
すなわち、充電制御手段80は、温度検出手段31からの測定温度TMを所定の周期で入力し、取得した測定温度TMと、予め記憶している閾値(たとえば、0℃)とを内部の温度比較手段80aによって比較する。そして、充電制御手段80は、温度比較の結果、測定温度TMが閾値より高ければ、充電電力P6を二次電池82に供給して充電動作を実施する。また、温度比較の結果、測定温度TMが閾値より低ければ、充電が禁止されている低温であると判定し、充電電力P6を遮断して充電を禁止する。
【0120】
なお、指針検出のための温度検出手段31の温度検出周期と、充電制御手段80が測定温度TMを取得して制御する充電制御周期が、第2の実施形態と同様に同じになるように構成するとよい。それにより、温度検出制御の構成を簡素化できると共に、電子時計の更なる低消電化を実現できる。
【0121】
また、指針検出を制御する位置検出制御手段60が、位置検出装置30に対して制御を変更する所定値THと、充電制御手段80が二次電池82の充電を禁止する閾値が等しい場合(たとえば、共に0℃である場合)、充電制御手段80は、位置検出制御手段60の温度比較手段61から温度比較結果信号P7(
図7:点線で示す)を入力し、この温度比較結果信号P7によって、充電電力P6を遮断して充電を禁止するようにしてもよい。
【0122】
たとえば、温度比較結果信号P7が論理“1”のとき、測定温度TMは常温であり、論理“0”のとき、測定温度TMは低温(閾値温度以下)であるとする。この場合は、充電制御手段80の内部の温度比較手段80aが不要となるので、充電制御手段80の回路構成を簡素化できる効果がある。
【0123】
[第3の実施形態の温度による位置検出動作と充電制御動作の説明:
図8]
次に、第3の実施形態の位置検出機能付電子時計3の温度による位置検出動作と充電制御動作について、
図8を用いて説明する。なお、
図8は横軸が測定温度TMであり、イネーブル信号ENBと充電電力P6の温度に対する動作を示している。また、条件として、位置検出制御手段60が位置検出装置30に対して制御を変更する所定値THと、充電制御手段80が二次電池82の充電を禁止する閾値が等しく、共に0℃である場合を例として説明する。
【0124】
図8において、位置検出制御手段60は、温度検出手段31が測定した測定温度TMが0℃を超えている場合、測定温度TMは所定値THを超えている(常温)と判定し、イネーブル信号ENBのパルス幅を短くして(たとえば、1.5mS)出力する。
【0125】
また、位置検出制御手段60は、前述した温度比較結果信号P7を論理“1”として出力する。同時に充電制御手段80は、この温度比較結果信号P7を入力し、その論理から充電可であると判定し、充電電力P6をONして、二次電池82の充電動作を実施する。また、環境温度が低下して温度検出手段31が測定した測定温度TMが0℃より低くなった場合、位置検出制御手段60は、測定温度TMが所定値THより低い(低温)と判定し、イネーブル信号ENBのパルス幅を長くして(たとえば、2.5mS)出力する。
【0126】
また、位置検出制御手段60は、前述した温度比較結果信号P7を論理“0”として出力する。同時に充電制御手段80は、この温度比較結果信号P7を入力し、その論理から充電禁止であると判定し、充電電力P6をOFFして、二次電池82の充電を禁止する。
【0127】
以上のように、第3の実施形態の位置検出機能付電子時計によれば、指針検出のための温度検出手段31からの測定温度TMを充電制御手段80が共用し、測定温度TMに基づいて二次電池の充電制御を実施するので、温度検出手段を複数配置する必要がなく、回路の冗長を防ぎ、小規模な回路構成による充電制御機能を付加した位置検出機能付電子時計を提供できる。
【0128】
なお、位置検出のための温度検出手段31の測定温度TMは、第2の実施形態で示した計時回路の温度補償機能や、第3の実施形態で示した充電制御機能に限定されず、他の機能の制御にも任意に用いることができる。また、第2の実施形態の温度補償機能と第3の実施形態の充電制御機能の両方を備え、温度検出手段31の測定温度TMを共用する構成でもよい。
【0129】
[第4の実施形態]
[第4の実施形態の位置検出機能付電子時計の構成説明:
図9]
次に第4の実施形態の位置検出機能付電子時計の構成について、
図9を用いて説明する。なお、第4の実施形態の特徴は、温度検出手段を内蔵する二次電池用の充電制御手段を有し、この充電制御手段からの測定温度を指針検出制御手段が利用することである。
図9において、符号4は第4の実施形態の位置検出機能付電子時計である。
【0130】
位置検出機能付電子時計4の構成は、第1の実施形態の位置検出機能付電子時計1と同様に、計時回路10、モータ11、輪列20、指針を設けた表示部12、指針の位置を検出する位置検出装置30、定電圧出力手段32、位置検出制御手段60などを備えている。
【0131】
また、符号90は本実施形態の特徴である充電制御手段である。また、太陽電池などによる発電手段81と二次電池82の構成は、第3の実施形態と同様である。充電制御手段
90は、位置検出機能付電子時計4の周辺の温度を検出する温度検出手段90aと、測定温度を比較する温度比較手段90bを内蔵している。
【0132】
充電制御手段90は、発電手段81からの発電電力P5を入力し、二次電池82に充電電力P6を供給して二次電池82を充電する。二次電池82は、充電電力P6の供給を受けて充電され、電池電圧VBTを出力して位置検出機能付電子時計4を駆動する。
【0133】
ここで、二次電池82は、その充電特性によって、低温時(たとえば、0℃以下)は、充電動作が禁じられているため、充電制御手段90は時計が置かれている環境の温度情報が必要であるが、本実施形態の充電制御手段90は、必要とする温度情報を検出のために温度検出手段90aを内蔵している。
【0134】
すなわち、充電制御手段90は、内蔵する温度検出手段90aから所定の周期で測定温度TMを取得する。そして、充電制御手段90は、取得した測定温度TMと、予め記憶している閾値とを内部の温度比較手段90bによって比較し、温度に応じて二次電池82の充電動作、または充電禁止を制御する。
【0135】
また、指針を検出する位置検出制御手段60は、充電制御手段90からの測定温度TMを前述した60秒周期で入力し、内部の温度比較手段61によって記憶している所定値THと比較し、測定温度TMが所定値THより低ければ、位置検出装置30と定電圧出力手段32を制御するイネーブル信号ENBのパルス幅を変更する。
【0136】
このように、充電制御手段90に内蔵される温度検出手段90aは、その出力である測定温度TMが、指針を検出する位置検出制御手段60の温度情報として利用される。そして、充電制御手段90に内蔵される温度検出手段90aから測定温度TMを取得する充電制御周期と、指針検出のために位置検出制御手段60が充電制御手段90からの測定温度TMを取得する温度検出周期が同じであって同一タイミングであることが好ましい。
【0137】
以上のように、第4の実施形態の位置検出機能付電子時計によれば、二次電池の充電を制御する充電制御手段90が温度検出手段90aを内蔵し、この測定温度TMを位置検出制御手段60が共用しているので、温度検出手段を複数配置する必要がなく、回路の冗長を防ぎ、小規模な回路構成による充電制御機能を付加した位置検出機能付電子時計を提供できる。
【0138】
また、温度検出手段と温度比較手段を内蔵した充電制御ICは製品化され市販されているので、この汎用の充電制御ICを用いることによって、設計しやすくコスト面でも有利な位置検出機能付電子時計を実現できる。また、前述した充電制御周期と位置検出のための温度検出周期が同じであれば、充電制御と位置検出制御の二つの機能を同一タイミングで実施できるので、位置検出制御と充電制御の駆動時間がたとえば60秒間に1回のみとなり、電子時計の更なる低消電化を実現できる。
【0139】
[第4の実施形態の変形例の位置検出機能付電子時計の構成説明:
図10]
次に第4の実施形態の変形例の位置検出機能付電子時計の構成について、
図10を用いて説明する。なお、第4の実施形態の変形例の特徴は、温度検出手段を内蔵する二次電池用の充電制御手段を有し、この充電制御手段の制御に用いる閾値と、指針を検出するための制御手段が制御を変更する所定値THが等しいことである。
図10において、符号5は第4の実施形態の変形例の位置検出機能付電子時計である。
【0140】
位置検出機能付電子時計5の構成は、第1の実施形態の位置検出機能付電子時計1と同様に、計時回路10、モータ11、輪列20、指針を設けた表示部12、指針の位置を検
出する位置検出装置30、定電圧出力手段32、及び位置検出制御手段62などを備えている。ここで、位置検出制御手段62は、他の実施形態と異なり、温度比較手段を内蔵していない特徴がある。
【0141】
また、太陽電池などによる発電手段81と二次電池82、及び、温度検出手段90aと温度比較手段90bを内蔵する充電制御手段90の構成は、第4の実施形態と同様である。また、充電制御手段90が、内蔵する温度検出手段90aからの温度情報に基づいて、低温時には二次電池82への充電動作を禁止する動作も同様である。
【0142】
また、充電制御手段90からは、内蔵する温度比較手段90bの出力である温度比較結果信号P7´が出力し、位置検出制御手段62に入力される。この温度比較結果信号P7´は、前述した第3の実施形態で示した温度比較結果信号P7と同一の機能を有しており、たとえば、温度比較結果信号P7´が論理“1”のとき、温度検出手段90aが検出した測定温度TMは常温であり、論理“0”のとき、測定温度TMは低温であるとする。
【0143】
充電制御手段90は、この温度比較結果信号P7´の論理に基づいて、二次電池82の充電制御を実施する。また、位置検出制御手段62も、温度比較結果信号P7´を入力し、その論理に基づいて、位置検出装置30と定電圧出力手段32の制御を変更する。
【0144】
すなわち、温度比較結果信号P7´が論理“1”であれば、常温であると判定して、イネーブル信号ENBのパルス幅を短く(たとえば、1.5mS)する。また、温度比較結果信号P7´が論理“0”であれば、低温であると判定して、イネーブル信号ENBのパルス幅を長く(たとえば、2.5mS)する。
【0145】
従って本実施形態では、充電制御手段90が二次電池82の充電制御の開始と禁止に用いる閾値と、位置検出制御手段62が、位置検出制御を変更する所定値THが同一である。
【0146】
以上のように、第4の実施形態の変形例の位置検出機能付電子時計によれば、二次電池の充電を制御する充電制御手段90が温度検出手段90aと温度比較手段90bを内蔵し、温度比較手段90bからの温度比較結果信号P7´によって、位置検出制御手段62が動作するので、指針位置を検出するための温度検出手段と温度比較手段が不要である。
【0147】
その結果、回路の冗長を防ぎ、位置検出制御手段62の構成を簡素化した充電制御機能を付加した位置検出機能付電子時計を提供できる。また、温度検出手段と温度比較手段を内蔵した汎用の充電制御ICを用いることによって、設計しやすくコスト面でも有利な位置検出機能付電子時計を実現できる。
【0148】
なお、本発明の各実施形態で示したブロック図、回路図等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更することができる。