特許第6495148号(P6495148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495148
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】トランス
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20190325BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   H01F30/10 C
   H01F30/10 H
   H01F30/10 M
   H01F27/32 140
   H01F27/32 150
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-184703(P2015-184703)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-59735(P2017-59735A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】宮本 正実
(72)【発明者】
【氏名】増田 俊行
(72)【発明者】
【氏名】大田 智嗣
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−89787(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0023608(KR,A)
【文献】 特開2001−267144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28
27/29−27/32
30/00−38/12
38/16
41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側コイルが巻回されたボビンの少なくとも一方のフランジの外面に、帯板を面内方向にリング状に形成した二次側コイルが配置され、これら一次側コイルおよび二次側コイルを囲繞して磁路を形成するコアが配設されたトランスにおいて、
上記二次側コイルの外周に、上記ボビンの軸線方向に屈曲されて上記一次側コイルの外周を囲繞する壁部を形成するとともに、当該壁部と上記一次側コイルの外周との間に絶縁部材を介装したことを特徴とするトランス。
【請求項2】
上記ボビンの両端のフランジの外面に、それぞれ上記二次側コイルが配置されるとともに、各々の二次側コイルの外周に、上記ボビンの軸線方向に屈曲されて上記一次側コイルの外周を囲繞するとともに先端部同士が対向する壁部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のトランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側コイルのフランジの外面に、板状の二次側コイルを配置した大電流仕様のトランスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用の電源トランス等のように、二次側コイルに大電流が流れる高圧トランスにおいては、通常、上記二次側コイルとして、抵抗値を小さくして発熱を抑制するために、銅の帯板を面内方向にリング状に形成した銅板コイルが用いられている。
【0003】
ところで、このような大電流仕様の高圧コイルのうち、銅線をボビンに巻回した一次側コイルに対して出力側として2つの二次側の銅板コイルを用いるものにあっては、例えば下記特許文献1に見られるように、一次側コイルを間に挟むようにして当該一次側コイルの軸線方向の両端側に上記銅板コイルを対向配置する構成が採用されている。
【0004】
図5図7は、本発明者等が先に開発したこの種のトランスを示すものである。
このトランスにおいては、一次側コイル1が巻回されたボビン2の両端フランジ2aの外面に、それぞれ銅板をリング状に形成した二次側コイル3が配置されたもので、二次側コイル3の引き出し部3a、3bが各々一次側コイル1の外周側に屈曲されるとともに、互いの引き出し部3aが共通端子として接続されている。
【0005】
これらボビン2および二次側コイル3は、E型コア6との間の絶縁を確保するために、有底円筒状の絶縁用カバー4内に収納されている。ここで、カバー4の外壁には、引き出し部3a、3bおよび一次側コイル1の引き出し部1aを外方に引き出すための開口部4aおよび溝部4bが形成されている。他方、このカバー4の端部開口は、略円板状の絶縁用キャップ5によって塞がれている。
【0006】
そして、これらカバー4およびキャップ5の外周を囲繞するようにして一対のE型コア6が対向配置されている。これらE型コア6は、その背部6aがカバー4の底板およびキャップ5の外面側に配置され、中足6bがカバー4の底板およびキャップ5に形成された孔部からボビン2内に挿入されるとともに、外足6cをカバー4の外周に位置させて配設されている。
【0007】
ところで、近年、上記構成からなるトランスに対して、これまでよりも大きな電流に対応し得るものが要求されている。このような場合に、一般的には、二次側コイル3の断面積を大きくして電気容量を増す対応する方法が採られている。
【0008】
しかしながら、上記二次側コイル3の断面積を大きくするために厚さ寸法を大きくすると、トランス全体の高さ寸法も大きくなり、低背化の要請に反することになるとともに、特に取付箇所に高さ制限がある場合には適用することができないという問題点を生じる。
【0009】
そこで、二次側コイル3の幅寸法を大きくして断面積を増やそうとすると、図8に示すように、従来よりも二次側コイル3の外径寸法が大きくなり、この結果、実装面積が増大して省スペース化に逆行するという問題点を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−270347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、僅かな実装面積の増加により、二次側コイルの断面積を増大させて一層の大電流化に対応することが可能になるトランスを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、一次側コイルが巻回されたボビンの少なくとも一方のフランジの外面に、帯板を面内方向にリング状に形成した二次側コイルが配置され、これら一次側コイルおよび二次側コイルを囲繞して磁路を形成するコアが配設されたトランスにおいて、上記二次側コイルの外周に、上記ボビンの軸線方向に屈曲されて上記一次側コイルの外周を囲繞する壁部を形成するとともに、当該壁部と上記一次側コイルの外周との間に絶縁部材を介装したことを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記ボビンの両端のフランジの外面に、それぞれ上記二次側コイルが配置されるとともに、各々の二次側コイルの外周に、上記ボビンの軸線方向に屈曲されて上記一次側コイルの外周を囲繞するとともに先端部同士が対向する壁部を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1または2に記載の発明によれば、二次側コイルの外周にボビンの軸線方向に屈曲された壁部を形成しているために、実質的に二次側コイルの幅寸法を大きくして断面積を増大させることができる。
【0015】
また、一次側コイルの外周を囲繞するように形成された上記壁部と一次側コイルの外周との間に絶縁部材を介装しているために、一次側コイルと二次側コイルとの間の絶縁性も確保することができる。
【0016】
さらに、実装面積における増加量は、二次側コイルにおける壁部の板厚と絶縁部材の厚さ寸法の分だけであり、しかも上記壁部は、一次側コイルの外周側に屈曲形成されているために、高さ寸法は増加することがない。この結果、僅かな実装面積の増加により、二次側コイルの断面積を大きく増加させて一層の大電流化に対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態を示す全体の斜視図である。
図2図1の分解斜視図である。
図3図1の正面図である。
図4図3のA−A線視断面図である。
図5】従来のトランスを示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図6図5の分解斜視図である。
図7図5(b)のB−B線視断面図である。
図8図7の二次側コイルの幅寸法を大きくした場合の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図4は、本発明に係るトランスの一実施形態を示すもので、図5図7に示したものと同一構成部分については同一符号を付してその説明を簡略化する。
このトランスにおいては、一次側コイル1が巻回されたボビン2の両端フランジ2aの外面に、それぞれ銅板を面内方向にリング状に形成した二次側コイル10が配置されている。
【0019】
これら二次側コイル10は、それぞれ従来の二次側コイル3よりも大径のリング状に形成されるとともに、ボビン2の外径寸法よりも僅かに大きな径寸法の位置から外周に至る部分が、プレス加工または絞り加工によって一次側コイル1の外周側に向けて垂直方向に屈曲されている。
【0020】
これにより、二次側コイル10の外周には、一次側コイル1の外周を囲繞する壁部11が一体に形成されている。この壁部11は、全体として円筒状に形成されるとともに、一次側コイル1の引き出し部1aおよび二次側コイル10の引き出し部10a、10bを外部に引き出す部分には、それぞれ切り欠き部11aが形成されている。
【0021】
さらに、一次側コイル1の外周と二次側コイル10との間には、絶縁部材12が介装されている。この絶縁部材12は、絶縁性樹脂からなる帯板をボビン2の外径よりも幾分小径の筒状に成形したもので、弾性によって開環部を広げてボビン2を挿入した後に復元させることによりボビン2の外周に嵌め込まれている。
【0022】
そして、絶縁部材12が外装された一次側コイル1の両端フランジ2aの外面に、それぞれ二次側コイル10が配置され、互いの壁部11によって絶縁部材12の外周を囲繞するとともに、先端同士を間隔をおいて対向させた状態で、有底円筒状の絶縁用カバー4内に収納されている。
【0023】
以上の構成からなるトランスにおいては、二次側コイル10の外周にボビン2の軸線方向に垂直に屈曲された壁部11を形成しているために、実質的に二次側コイル10の幅寸法を大きくして断面積を効果的に増大させることができる。
【0024】
また、一次側コイル1の外周を囲繞するように形成された壁部11と一次側コイル1の外周との間に絶縁部材12を介装しているために、一次側コイル1と二次側コイル10との間の絶縁性も確保することができる。
【0025】
さらに、絶縁用カバー4内に収納されるコイル全体の外径寸法の増加量は、二次側コイル10における壁部11の板厚に絶縁部材12の厚さ寸法を加えた分だけであるために、実装面積が僅かに大きくなるに過ぎず、しかも壁部11は、一次側コイル1の外周側に屈曲形成されているために、高さ寸法は増加することがない。この結果、僅かな実装面積の増加により、二次側コイル10の断面積を効果的に増大させて一層の大電流化に対応することが可能になる。
【0026】
なお、上記実施形態においては、本発明を一次側コイル1のボビン2の両端フランジ2aの外面に、それぞれ二次側コイル10が配置された2出力タイプのトランスに適用した場合についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一次側コイル1のボビン2の一方のフランジ2aの外面のみに二次側コイル10が配置された1出力タイプのトランスにも同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 一次側コイル
2 ボビン
2a フランジ
6 E型コア
10 二次側コイル
11 壁部
12 絶縁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8