特許第6495166号(P6495166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6495166測位システム、測位方法、および測位プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495166
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】測位システム、測位方法、および測位プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/30 20060101AFI20190325BHJP
   G01S 1/76 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   G01S5/30
   G01S1/76
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-519946(P2015-519946)
(86)(22)【出願日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2014064337
(87)【国際公開番号】WO2014192893
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-115703(P2013-115703)
(32)【優先日】2013年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599126800
【氏名又は名称】株式会社エムティーアイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】杉田 祐也
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 一郎
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−321225(JP,A)
【文献】 特開2009−229393(JP,A)
【文献】 特開平10−148670(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/061268(WO,A2)
【文献】 特開平09−083608(JP,A)
【文献】 特開平05−257837(JP,A)
【文献】 特開2006−201151(JP,A)
【文献】 特開2009−288245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72− 1/82
G01S 5/18− 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定受信機が信号源固有の非可聴音を複数の信号源から受信したことを示す受信記録を該固定受信機の受信機IDと関連付けて取得する第1取得部と、
前記第1取得部により取得された、前記受信機IDと関連付けられた前記受信記録に基づいて、携帯端末の近くに設置されている前記固定受信機が受信した非可聴音を発した前記複数の信号源についての信号源情報を記憶部から取得する第2取得部であって、前記信号源情報が、非可聴音から信号源を特定するための情報と、該信号源における非可聴音の発信タイミングと、該信号源の位置とを含む、該第2取得部と、
前記携帯端末が複数の非可聴音を受信した場合に、該複数の非可聴音を発した複数の信号源を前記第2取得部により取得された信号源情報に基づいて特定し、特定した複数の信号源についての前記信号源情報と、該携帯端末における該複数の非可聴音の受信記録とを用いて該携帯端末の現在位置を算出する測位部と
を備え、
前記第2取得部は、前記携帯端末に設けられる要求部を備え、前記要求部が、前記携帯端末の近くに設置されている前記固定受信機から取得された前記固定受信機の受信機IDに基づいて、前記受信機IDに対応する信号源情報を前記記憶部から取得する、
測位システム。
【請求項2】
前記測位部が、前記第1取得部により取得された前記固定受信機での前記複数の信号源からの非可聴音の受信記録と、前記携帯端末での非可聴音の受信記録と、前記複数の信号源についての信号源情報から、該固定受信機と該携帯端末との間のタイマの誤差及び該携帯端末の現在位置を求め、該誤差が考慮された前記発信タイミングと、該携帯端末において新たに受信された前記複数の非可聴音の受信記録とを用いて該携帯端末の現在位置を算出する、
請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記携帯端末が前記測位部を備える、
請求項1または2に記載の測位システム。
【請求項4】
前記第2取得部は、サーバに設けられる応答部を更に備え、
前記応答部は、前記記憶部から取得された前記信号源情報を前記携帯端末に送信する、
請求項3に記載の測位システム。
【請求項5】
サーバが前記第1取得部を備える、
請求項3または4に記載の測位システム。
【請求項6】
前記測位部が、前記携帯端末が一つの非可聴音を受信した場合に実行される更なる測位機能を備え、
前記更なる測位機能が、
前記一つの非可聴音を発した一つの信号源の位置を前記信号源情報に基づいて特定するステップと、
前記一つの非可聴音についてのドップラーシフトのシフト量を繰り返し求めるステップと、
前記一つの信号源の位置が、前記シフト量が正の値から負の値に変わった時点における前記携帯端末の現在位置であると推定するステップと
を含む、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項7】
固定受信機、複数の信号源、および携帯端末を少なくとも備える測位システムにより実行される測位方法であって、
前記固定受信機が信号源固有の非可聴音を前記複数の信号源から受信したことを示す受信記録を該固定受信機の受信機IDと関連付けて取得する第1取得ステップと、
前記第1取得ステップにより取得された、前記受信機IDと関連付けられた前記受信記録に基づいて、前記携帯端末の近くに設置されている前記固定受信機が受信した非可聴音を発した前記複数の信号源についての信号源情報を記憶部から取得する第2取得ステップであって、前記信号源情報が、非可聴音から信号源を特定するための情報と、該信号源における非可聴音の発信タイミングと、該信号源の位置とを含む、該第2取得ステップと、
前記携帯端末が複数の非可聴音を受信した場合に、該複数の非可聴音を発した複数の信号源を前記第2取得ステップにおいて取得された信号源情報に基づいて特定し、特定した複数の信号源についての前記信号源情報と、該携帯端末における該複数の非可聴音の受信記録とを用いて該携帯端末の現在位置を算出する測位ステップと
を含み、
前記第2取得ステップは、前記携帯端末の近くに設置されている前記固定受信機から取得された前記固定受信機の受信機IDに基づいて、前記受信機IDに対応する信号源情報を前記記憶部から取得する、
測位方法。
【請求項8】
固定受信機が信号源固有の非可聴音を複数の信号源から受信したことを示す受信記録を該固定受信機の受信機IDと関連付けて取得する第1取得部と、
前記第1取得部により取得された、前記受信機IDと関連付けられた前記受信記録に基づいて、携帯端末の近くに設置されている前記固定受信機が受信した非可聴音を発した前記複数の信号源についての信号源情報を記憶部から取得する第2取得部であって、前記信号源情報が、非可聴音から信号源を特定するための情報と、該信号源における非可聴音の発信タイミングと、該信号源の位置とを含む、該第2取得部と、
前記携帯端末が複数の非可聴音を受信した場合に、該複数の非可聴音を発した複数の信号源を前記第2取得部により取得された信号源情報に基づいて特定し、特定した複数の信号源についての前記信号源情報と、該携帯端末における該複数の非可聴音の受信記録とを用いて該携帯端末の現在位置を算出する測位部と
をコンピュータシステムに実行させ、
前記第2取得部は、前記携帯端末に設けられる要求部を備え、前記要求部が、前記携帯端末の近くに設置されている前記固定受信機から取得された前記固定受信機の受信機IDに基づいて、前記受信機IDに対応する信号源情報を前記記憶部から取得する、
測位プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、屋内でのユーザの現在位置を測定するためのシステム、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、屋内での測位方法としてWi−Fiを用いた方法と非可聴音(超音波)を用いた方法とがある。
【0003】
Wi−Fiによる測位システムは、Wi−Fiのアクセスポイントとユーザの携帯端末とを備える。このシステムでは、携帯端末が複数のアクセスポイントから発せられる電波を受信し、アクセスポイントの固有情報(例えばMACアドレス)と電波強度のパターンとを用いて現在位置を推定する。しかし、このシステムは精度が5〜10m程度と比較的低く、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)という技術を用いてもその精度は2.5m程度までしか改善することができない。また、このシステムを用いる際には実地踏査を行って電波強度の地図を事前に作成する必要があり、アクセスポイントの廃止または新設に伴ってその強度地図を更新しなければならないので、地図の作成および維持のためのコストが嵩んでしまう。
【0004】
これに対して、非可聴音を用いたシステムでは精度を50cmあるいは1m程度まで改善でき、加えて強度地図が必要ないという利点がある。このようなシステムの一例として、下記特許文献1に記載の屋内測位システムがある。この測位システムは、位置ビーコン送信装置および位置ビーコン受信装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−288245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非可聴音を用いたシステムでは精度が向上し強度地図が不要になる代わりに、測位専用のビーコンを設置するなどのインフラ整備が必要になる。例えば、上記特許文献1に記載の測位システムでは、送信側および受信側の双方について専用の装置(位置ビーコン送信装置および位置ビーコン受信装置)が必要である。また、ビーコンの送信の同期を取る必要があるが、このためには、装置間の時刻合わせを厳密に行うための専用の通信チャネルを用いたり、原子時計のような非常に精密な時計を各装置に実装したりする必要があるので、コストがさらに嵩んでしまう。
【0007】
そこで、非可聴音を用いた屋内測位システムの導入コストを下げることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る測位システムは、固定受信機が信号源固有の非可聴音を複数の信号源から受信したことを示す受信記録を該固定受信機の受信機IDと関連付けて取得する第1取得部と、携帯端末の近くに設置されている固定受信機に対応する複数の信号源についての信号源情報を記憶部から取得する第2取得部であって、信号源情報が、非可聴音から信号源を特定するための情報と、該信号源における非可聴音の発信タイミングと、該信号源の位置とを含む、該第2取得部と、携帯端末が複数の非可聴音を受信した場合に、該複数の非可聴音を発した複数の信号源を第2取得部により取得された信号源情報に基づいて特定し、特定した複数の信号源についての信号源情報と、該携帯端末における該複数の非可聴音の受信記録とを用いて該携帯端末の現在位置を算出する測位部とを備える。
【0009】
本発明の一側面に係る測位方法は、固定受信機、複数の信号源、および携帯端末を少なくとも備える測位システムにより実行される測位方法であって、固定受信機が信号源固有の非可聴音を複数の信号源から受信したことを示す受信記録を該固定受信機の受信機IDと関連付けて取得する第1取得ステップと、携帯端末の近くに設置されている固定受信機に対応する複数の信号源についての信号源情報を記憶部から取得する第2取得ステップであって、信号源情報が、非可聴音から信号源を特定するための情報と、該信号源における非可聴音の発信タイミングと、該信号源の位置とを含む、該第2取得ステップと、携帯端末が複数の非可聴音を受信した場合に、該複数の非可聴音を発した複数の信号源を第2取得ステップにおいて取得された信号源情報に基づいて特定し、特定した複数の信号源についての信号源情報と、該携帯端末における該複数の非可聴音の受信記録とを用いて該携帯端末の現在位置を算出する測位ステップとを含む。
【0010】
本発明の一側面に係る測位プログラムは、固定受信機が信号源固有の非可聴音を複数の信号源から受信したことを示す受信記録を該固定受信機の受信機IDと関連付けて取得する第1取得部と、携帯端末の近くに設置されている固定受信機に対応する複数の信号源についての信号源情報を記憶部から取得する第2取得部であって、信号源情報が、非可聴音から信号源を特定するための情報と、該信号源における非可聴音の発信タイミングと、該信号源の位置とを含む、該第2取得部と、携帯端末が複数の非可聴音を受信した場合に、該複数の非可聴音を発した複数の信号源を第2取得部により取得された信号源情報に基づいて特定し、特定した複数の信号源についての信号源情報と、該携帯端末における該複数の非可聴音の受信記録とを用いて該携帯端末の現在位置を算出する測位部とをコンピュータシステムに実行させる。
【0011】
このような側面においては、非可聴音から信号源を特定するための情報、および信号源の位置は記憶部から取得すればよいので、これらの情報を非可聴音に埋め込む必要がない。また、各信号源における非可聴音の発信タイミングも記憶部から取得するので、複数の信号源の間で非可聴音の同期を取る必要がない。これらにより信号源の仕組みが簡単になるので、多く設置する必要がある信号源のコストをその分だけ抑えることができる。その結果、測位システムの導入コストを全体として下げることができる。
【0012】
他の側面に係る測位システムでは、測位部が、第1取得部により取得された固定受信機での非可聴音の受信記録と携帯端末での非可聴音の受信記録とから、該固定受信機と該携帯端末との間のタイマの誤差を求め、該誤差を考慮した発信タイミングと、該携帯端末において新たに受信された複数の非可聴音の受信記録とを用いて該携帯端末の現在位置を算出してもよい。
【0013】
他の側面に係る測位システムでは、携帯端末が測位部を備えてもよい。
【0014】
他の側面に係る測位システムでは、第2取得部が、携帯端末に設けられる要求部とサーバに設けられる応答部とを備え、要求部が、固定受信機の受信機IDをサーバに送信し、応答部が、受信機IDに対応する信号源情報を記憶部から取得して携帯端末に送信し、要求部が、応答部により取得された信号源情報を受信してもよい。
【0015】
他の側面に係る測位システムでは、サーバが第1取得部を備えてもよい。
【0016】
他の側面に係る測位システムでは、測位部が、携帯端末が一つの非可聴音を受信した場合に実行される更なる測位機能を備え、更なる測位機能が、一つの非可聴音を発した一つの信号源の位置を信号源情報に基づいて特定するステップと、一つの非可聴音についてのドップラーシフトのシフト量を繰り返し求めるステップと、一つの信号源の位置が、シフト量が正の値から負の値に変わった時点における携帯端末の現在位置であると推定するステップとを含んでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、非可聴音を用いた屋内測位システムの導入コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る測位システムの全体構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る測位システムの全体構成を示す図である。
図3】サーバおよび携帯端末のハードウェア構成を示す図である。
図4】第1実施形態に係る測位システムの機能構成を示すブロック図である。
図5】第1実施形態に係る測位システムの動作を示すシーケンス図である。
図6】第1実施形態に係る測位プログラムの構成を示す図である。
図7】第2実施形態に係る測位システムの全体構成を示す図である。
図8】第2実施形態に係る測位システムの機能構成を示すブロック図である。
図9】第2実施形態に係る測位プログラムの構成を示す図である。
図10】第3実施形態に係る測位システムの全体構成を示す図である。
図11】第3実施形態に係る測位システムの機能構成を示す図である。
図12】第3実施形態に係る測位システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る測位システム1について説明する。測位システム1は、屋内にいるユーザの位置を測定するコンピュータシステムである。図1に示すように、測位システム1は、屋内Rに設置されたビーコン(信号源)10および固定受信機20と、サーバ30と、ユーザが所持する携帯端末40とを備えている。サーバ30は通信ネットワークNを介して固定受信機20および携帯端末40のそれぞれと接続する。測位システム1では機器間の時刻の差を一定の範囲内に抑える必要があるが、そのための一手段として、固定受信機20、サーバ30、および携帯端末40はネットワーク・タイム・プロトコル(NTP)による時刻合わせの機能を備えている。共通で用いられるNTPサーバはサーバ30でもよいし他のコンピュータでもよい。
【0021】
なお、通信ネットワークNの具体的な構成は限定されない。例えば、通信ネットワークNは有線ネットワークおよび無線ネットワーク(例えばWi−Fi)の一方または双方により構築されてもよい。また、通信ネットワークNはインターネットおよびLANの一方または双方により構築されてもよい。
【0022】
壁などで仕切られた空間内のどこにユーザ(携帯端末40)が位置しているかを捕捉するためには少なくとも4台のビーコン10と少なくとも1台の固定受信機20が必要である。例えば20m四方の部屋にこれらの機器を設置する場合には、図2に示すように、その部屋Rの四隅と各壁のほぼ中央に合計8台のビーコン10を設け、部屋Rの中央付近に1台の固定受信機20を設ける。もちろん、ビーコン10および固定受信機20の設置態様はこの例に限定されず、部屋の形状および大きさ、ビーコン10の発信性能、固定受信機20の受信性能などに応じて決めればよい。
【0023】
もっとも、一つの固定受信機20は比較的多くの(例えば10個以上の)ビーコン10からの非可聴音を処理することができるので、その設置数はビーコン10よりも圧倒的に少なくて済む。固定受信機20は非可聴音を処理するためのプロセッサやネットワーク・インタフェースなどを備えているのでビーコン10に比べ高価だが、その設置数を抑えることができるので、全体としては測位システム1の導入コストを抑えることができる。
【0024】
ビーコン10は、非可聴音を発する装置である。個々のビーコン10は、他のビーコン10と同期を取ることなく(すなわち、他のビーコン10とは独立に)、水晶発振器により一定の時間間隔で同じ非可聴音信号を発信する単なる再生装置付スピーカであり、いかなる信号の受信も行わない。
【0025】
ビーコン10は、特定の周波数(例えば20000Hz)の非可聴音信号を直接スペクトラム拡散(Direct Sequence Spread Spectrum(DSSS))することで非可聴音を生成する。個々のビーコン10は他のビーコン10と異なる固有の拡散系列を用いて直接スペクトラム拡散を実行するので、各ビーコン10から発せられる非可聴音の信号波形は他のビーコン10からのいかなる信号波形とも異なる。したがって、複数のビーコン10からの非可聴音が時間的にオーバーラップしても、受信側で複数の非可聴音を分離することができ、その結果、受信側は個々の非可聴音の信号源を特定することができる。
【0026】
ビーコン・データベース51は、各ビーコン10の情報を記憶する装置である。ビーコン情報(信号源情報)の各レコードは少なくとも下記の項目を含む。上述したように拡散系列はビーコン毎に異なるので、拡散系列IDはビーコンの識別子であるとも言える。なお、拡散系列そのものを拡散系列IDとして用いてもよい。
【0027】
・拡散系列を一意に特定するための拡散系列ID
・拡散系列
・ビーコンの設置位置を示す三次元座標(x,y,z)
・非可聴音の発信タイミング(ビーコン10からの発信時刻)の定義式(ti=ai+b)。ここで、定数aは時間間隔であり、定数bは基準時であり、変数iは基準時からの発信回数を示す。
【0028】
固定受信機20は、近くにある複数のビーコン10からの非可聴音を受信する装置である。固定受信機20は自機の近くに位置するビーコン10(すなわち、受信する可能性がある非可聴音の信号源)に対応するビーコン情報を予め記憶している。これは、固定受信機20がビーコン・データベース51の一部のコピーを保持していることを意味する。
【0029】
その上で、固定受信機20は受信した非可聴音に対応する拡散系列を検索して、その非可聴音がどのビーコン10から発せられたかを特定する。また、固定受信機20は自機のタイマを用いてその非可聴音の受信時刻を取得する。続いて、固定受信機20は自機を特定するための受信機IDと、自機の設置位置を示す三次元座標(x,y,z)と、特定した拡散系列IDと、受信時刻とを含む受信記録を生成し、その受信記録をサーバ30に送信する。固定受信機20は非可聴音を受信する度に受信記録の生成および送信を実行する。なお、受信機IDは、固定受信機20を一意に特定できるのであれば何でもよく、例えばMACアドレスであってもよい。
【0030】
また、固定受信機20はWi−Fiなどの無線通信機能を備え、近くの携帯端末40と通信する。接近してきた携帯端末40と通信接続すると、固定受信機20はその受信機IDを携帯端末40に送信する。
【0031】
履歴データベース52は、各固定受信機20の受信記録を記憶する装置である。上述したように、受信記録の各レコードは少なくとも受信機IDと、固定受信機20の設置位置を示す三次元座標(x,y,z)と、拡散系列IDと、固定受信機20での受信時刻とを含む。各固定受信機20はいずれかのビーコン10から一回分の非可聴音を受信する度に受信記録を生成するので、履歴データベース52にはそのレコードが蓄積される。
【0032】
サーバ30は、携帯端末40からの要求に応じて、測位に必要な情報をその携帯端末40に提供するコンピュータである。サーバ30は1台のコンピュータで構成されていてもよいし、複数台のコンピュータで構成されていてもよい。
【0033】
携帯端末40は、ユーザが所持するコンピュータである。携帯端末40は、非可聴音を受信するマイクと、サーバ30と通信する機能と、後述する測位機能とを備える。携帯端末40として例えば高機能携帯端末(スマートフォン)が挙げられるが、それらの機能を備えているのであれば携帯端末40の種類は限定されない。
【0034】
サーバ30および携帯端末40の基本的なハードウェア構成を図3に示す。サーバ30および携帯端末40のどちらも、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行するCPU101と、ROM及びRAMで構成される主記憶部102と、ハードディスクやフラッシュメモリなどで構成される補助記憶部103と、ネットワークカードあるいは無線通信モジュールで構成される通信制御部104と、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクなどの入力装置105と、ディスプレイやスピーカなどの出力装置106とを備えている。
【0035】
当然ながら、組み込まれるモジュールは携帯端末40とサーバ30とで異なり得る。例えば、携帯端末40が入力装置105としてタッチパネルを備える一方で、サーバ30の入力装置105がキーボードおよびマウスであることが考えられる。
【0036】
後述するサーバ30および携帯端末40の各機能的構成要素は、CPU101又は主記憶部102の上に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU101の制御の下で通信制御部104や入力装置105、出力装置106などを動作させ、主記憶部102又は補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。処理に必要なデータやデータベースは主記憶部102又は補助記憶部103内に格納される。
【0037】
次に、サーバ30の各機能要素を説明する。図4に示すように、サーバ30は機能的構成要素として記録部(第1取得部)31および提供部(第2取得部、応答部)32を備えている。
【0038】
記録部31は、各固定受信機20から受信記録を受信して履歴データベース52に格納する機能要素である。
【0039】
提供部32は、携帯端末40からの要求に応じて、その携帯端末40での測位に必要な情報を提供する機能要素である。まず、提供部32は、固定受信機20と通信している携帯端末40からその受信機IDを受信する。続いて、提供部32はその受信機IDに対応する複数の拡散系列IDのそれぞれについての最近の受信記録を履歴データベース52から読み出す。これは、その固定受信機20が周辺の各ビーコン10(以下では「周辺のビーコン群」ともいう)から最後にいつ非可聴音を受信したかを示す情報を取り出すことを意味する。続いて、提供部32は取得した受信記録に対応する複数の拡散系列IDに対応する複数のビーコン情報のレコードをビーコン・データベース51から読み出す。このように、提供部32は、携帯端末40の近くに設置されている固定受信機20に対応する複数のビーコン10についてのビーコン情報を取得する。そして、提供部32は周辺のビーコン群についてのビーコン情報および受信記録を補助情報として携帯端末40に送信する。
【0040】
なお、本実施形態では携帯端末40は測位のために少なくとも4台のビーコン10から非可聴音を受信する必要がある。したがって、本実施形態では、「周辺のビーコン群」は少なくとも4台のビーコン10を含むものとし、補助情報には当該少なくとも4台のビーコン10に関するビーコン情報および受信記録が含まれるものとする。
【0041】
次に、携帯端末40の各機能要素を説明する。図4に示すように、携帯端末40は機能的構成要素として取得部(第2取得部、要求部)41および測位部42を備えている。これらの機能要素は、携帯端末40内にインストールされたプログラム(後述する端末プログラムP2)が手動でまたは自動的に実行されることで実現する。
【0042】
取得部41は、測位に必要な情報をサーバ30から取得する機能要素である。取得部41は近くに設置されている固定受信機20と無線通信することで、その固定受信機20の受信機IDを当該固定受信機20から取得する。続いて、取得部41はその受信機IDをサーバ30に送信し、この要求に応じてサーバ30から送られてくる補助情報を受信および保持する。
【0043】
測位部42は、携帯端末40の現在位置を特定する機能要素である。測位部42はまず自機のタイマと固定受信機20のタイマとの誤差Δを求め、続いてその誤差Δを考慮して測位を実行する。これらの一連の処理において、測位部42は取得部41により保持されている補助情報(すなわち、ビーコン情報および受信記録)を参照する。タイマの誤差を考慮する理由は、固定受信機20と携帯端末40とは共通のNTPサーバを用いて時刻合わせを行うものの、NTPでは誤差を1秒程度までしか抑えられず、測位のためにはその誤差を更に小さくしなければならないからである。
【0044】
固定受信機20により受信される非可聴音の発信タイミングをti=ai+bで表すとすると、携帯端末40により受信される非可聴音の発信タイミングはti=ai+b+Δで表される。測位部42はまずこの誤差Δを求める。測位部42は周辺のビーコン群から一定の時間(例えば1〜2秒間)だけ非可聴音を受信する。そして、測位部42はビーコン情報を参照してその各非可聴音の信号源を特定すると共に、自機のタイマにより各非可聴音の受信時刻を得ることで、拡散系列IDと受信時刻とのペアを複数個取得する。このペアは、携帯端末40での非可聴音の受信記録である。続いて、測位部42は取得部41が保持している受信記録(固定受信機20での受信時刻)と、取得したペア(携帯端末40での受信時刻)と、ビーコン情報で示される発信タイミングとに基づいて誤差Δを求める。
【0045】
続いて、測位部42は周辺のビーコン群から新たに非可聴音を受信し、GPS(Global Positioning System)と同様の手法で測位を行う。
【0046】
具体的には、測位部42はまず個々の非可聴音について下記のステップ1〜3を実行することで、各ビーコン10と携帯端末40との間の距離を求める。
【0047】
1.ビーコン情報を参照することで非可聴音の信号源(ビーコン10)および発信時刻を特定する。発信タイミングの定義式を用いる際には誤差Δを考慮する。
2.誤差Δを考慮して得られた発信時刻と自機のタイマにより得られた非可聴音の受信時刻との差分を伝播時間として取得する。
3.音速とその伝播時間とを乗ずることでビーコン10までの距離を求める。
【0048】
続いて、測位部42は各ビーコン10からの距離と、ビーコン情報から得られる各ビーコンの設置位置(x,y,z)とを用いて、携帯端末40の現在位置を求める。
【0049】
最後に、測位部42は求めた現在位置を出力するが、出力の態様は何ら限定されない。例えば、測位部42は現在位置を画面上に表示してもよいし、携帯端末40内のメモリに格納してもよいし、任意の他の情報処理装置にその現在位置を送信してもよい。
【0050】
次に、図5を用いて、測位システム1の動作を説明するとともに本実施形態に係る測位方法について説明する。以下では、固定受信機20で生成された受信記録が履歴データベース52に蓄積されていること(第1取得ステップ)を前提とし、携帯端末40がその固定受信機20と通信接続し始めた時点からの処理を説明する。
【0051】
携帯端末40では、取得部41がその固定受信機20から受信機IDを受信し(ステップS11)、続いてその受信機IDをサーバ30に送信する(ステップS12)。サーバ30では、提供部32がその受信機IDに対応するビーコン情報および受信記録をビーコン・データベース51および履歴データベース52から読み出し、これらの情報を補助情報として携帯端末40に送信する(ステップS13、第2取得ステップ)。取得部41はその補助情報を受信して保持する。
【0052】
続いて、測位部42が携帯端末40と固定受信機20との間のタイマの誤差Δを求めるために周辺のビーコン群から非可聴音を受信する(ステップS14)。そして、測位部42は携帯端末40での受信時刻と、受信記録(固定受信機20での受信時刻)と、ビーコン情報(発信タイミング)とに基づいて誤差Δを求める(ステップS15)。
【0053】
続いて、測位部42は測位のためにもう一度周辺のビーコン群から非可聴音を受信する(ステップS16)。そして、測位部42はその受信時刻とビーコン情報(誤差Δを考慮した発信タイミング)とに基づいて測位を行う(ステップS17、測位ステップ)。測位部42はステップS16,S17で示される測位処理を繰り返し実行してもよく、この場合にはユーザの移動経路を求めることができる。
【0054】
次に、図6を用いて、1台以上のコンピュータを備えるコンピュータシステムを測位システム1として機能させるための測位プログラムPAを説明する。測位プログラムPAは、コンピュータをサーバ30として機能させるためのサーバプログラムP1と、コンピュータを携帯端末40として機能させるための端末プログラムP2とを備える。
【0055】
サーバプログラムP1はメインモジュールP10、記録モジュールP11、および提供モジュールP12を備えている。メインモジュールP10は、サーバ30の機能を統括的に制御する部分である。記録モジュールP11および提供モジュールP12を実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記の記録部31および提供部32の機能と同様である。
【0056】
端末プログラムP2はメインモジュールP20、取得モジュールP21、および測位モジュールP22を備えている。メインモジュールP20は、携帯端末40の測位機能を統括的に制御する部分である。取得モジュールP21および測位モジュールP22を実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記の取得部41および測位部42の機能と同様である。
【0057】
サーバプログラムP1および端末プログラムP2はそれぞれ、CD−ROMやDVDROM、半導体メモリ等の有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。また、それらのプログラムP1,P2は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、非可聴音については特定のビーコン10に固有の拡散系列によって拡散されるだけでよく、ビーコン10の発信タイミング等の情報を非可聴音に埋め込む必要がない。また、スペクトラム拡散により信号が時間的にオーバーラップした場合であっても信号を検出することができる。携帯端末40は、各ビーコン10における非可聴音の発信タイミングをビーコン・データベース51から取得するので、携帯端末40と複数のビーコン10との間で同期を取る必要がなく、ビーコン10は、所定のタイミングで非可聴音を発信するのみの構成で足りる。これらによりビーコン10の仕組みを簡単にすることができるので、多く設置する必要があるビーコン10のコストをその分だけ抑えることができる。その結果、測位システム1の導入コストを全体として下げることができる。
【0059】
また、本実施形態では固定受信機20と携帯端末40との間のタイマの誤差を求めた上で、その誤差を考慮した発信タイミングを用いて携帯端末40の現在位置を算出する。具体的には、NTPを用いた時刻調整により装置間の時刻の誤差を1秒程度の範囲内に抑え、更に、固定受信機20および携帯端末40の受信記録と各ビーコン10の発信タイミングとに基づいてタイマの誤差を求める。これにより、各ビーコン10からの非可聴音の発信タイミングをより小さい誤差(例えば10ミリ秒以下の誤差)で得られるので、各ビーコン10によって発せられた信号を検出するための計算量を削減することができる。
【0060】
また、本実施形態では携帯端末40が測位部42を備えるが、これは携帯端末40が非可聴音の受信機能を備えることを意味する。携帯端末40が受信装置の役割を果たすことで、測位機能を有する専用の受信端末を利用する必要がなく、測位システム1のコストを全体として抑えることができる。
【0061】
また、本実施形態では携帯端末40は必要なビーコン情報だけをサーバ30から取得するので、ビーコン情報を記憶するための携帯端末40のメモリ消費量を抑えることができる。
【0062】
本実施形態のようにDSSSで生成された非可聴音からビーコン10を特定する場合には受信側での計算負荷が大きくなり、何ら拘束条件のない状況下で携帯端末40にビーコン10を特定させようとするとその携帯端末40の性能をかなり高くする必要がある。しかし、本実施形態では、携帯端末40はサーバ30から得られる周辺のビーコン群の発信タイミングを用いるので、ビーコン10を特定するための計算負荷を大幅に(例えば1/10以下に)下げることができる。
【0063】
また、本実施形態ではサーバ30が固定受信機20での非可聴音の受信記録を受信して履歴データベース52に記録する。そのため、携帯端末40において非可聴音を記録し続ける必要がなく、したがって、携帯端末40の処理負荷をその分だけ下げることができる。
【0064】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る測位システム2は、幅が狭くてユーザの進行方向が強く制限される空間(例えば幅が3m以下の通路)におけるユーザの位置をドップラーシフトの理論を用いて特定する。本実施形態は、ユーザが施設を訪れたことを特定するための処理(チェックイン)に応用することが可能である。以下では、第1実施形態と異なる点について特に説明し、他の点については説明を省略する。
【0065】
図7に示すように、測位システム2はビーコン10と、サーバ60と、携帯端末70とを備えていれば足り、固定受信機20を設ける必要はない。また、履歴データベース52も不要である。ビーコン10はユーザが通過したか否かを特定したい場所に一つずつ設けられる。ユーザの移動経路を特定しようとする場合には通路に沿って所定の間隔でビーコン10を設置すればよい。
【0066】
図8に示すように、サーバ60は機能的構成要素として提供部61を備えている。提供部61はビーコン・データベース51内のすべてのビーコン情報を携帯端末70に送信する機能要素である。すなわち、提供部61はビーコン・データベース51のコピーを携帯端末70に提供する。提供部61は必要なタイミングでのみビーコン情報を送信すればよい。例えば、提供部61は携帯端末70がビーコン情報を要求してきた時やビーコン・データベース51が更新された時などにビーコン情報を送信する。
【0067】
図8に示すように、携帯端末70は取得部71および測位部72を備えている。これらの機能要素は、携帯端末70内にインストールされたプログラム(後述する端末プログラムP4)が手動でまたは自動的に実行されることで実現する。
【0068】
取得部71は、ビーコン情報をサーバ60から取得する機能要素である。取得部71はプル配信またはプッシュ配信のいずれかによりサーバ60から送られてくるビーコン情報を受信および保持する。
【0069】
測位部72は、携帯端末70の現在位置を特定する機能要素である。ビーコン10からの非可聴音を受信し始めると、測位部72はまずビーコン情報を参照してその非可聴音の信号源(ビーコン10)を特定する。これは、測位部72がそのビーコン10の設置位置を取得することを意味する。その後、測位部72は、受信し続けている非可聴音についてのドップラーシフトのシフト量Δf(v)を所定の時間間隔で繰り返し求める。図7に示すように、シフト量Δf(v)は受信機(携帯端末70)が信号源(ビーコン10)に近づいている間は正の値であり、その後受信機(携帯端末70)が信号源(ビーコン10)から遠ざかり始めると負の値になる。この原理を利用して、測位部72はそのシフト量が正の値から負の値に変わった時点を捕捉し、特定したビーコン10の設置位置が、その時点における携帯端末70の現在位置であると推定する。最後に、測位部72は推定した現在位置を任意の手法で出力する。
【0070】
ここで、本実施形態では発信タイミングの定義式を用いないので、ビーコン情報は当該定義式を含んでいなくてもよい。
【0071】
次に、図9を用いて、1台以上のコンピュータを備えるコンピュータシステムを測位システム2として機能させるための測位プログラムPBを説明する。測位プログラムPBは、コンピュータをサーバ60として機能させるためのサーバプログラムP3と、コンピュータを携帯端末70として機能させるための端末プログラムP4とを備える。測位プログラムPBの配布方法は第1実施形態における測位プログラムPAと同様である。
【0072】
サーバプログラムP3はメインモジュールP30および提供モジュールP31を備えている。メインモジュールP30は、サーバ60の機能を統括的に制御する部分である。提供モジュールP31を実行することにより実現される機能は、上記の提供部61の機能と同様である。
【0073】
端末プログラムP4はメインモジュールP40、取得モジュールP41、および測位モジュールP42を備えている。メインモジュールP40は、携帯端末70の測位機能を統括的に制御する部分である。取得モジュールP41および測位モジュールP42を実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記の取得部71および測位部72の機能と同様である。
【0074】
以上説明したように、本実施形態によれば、ビーコン10の位置情報を取得し、そのビーコン10からの非可聴音についてのドップラーシフトのシフト量を観測しさえすれば、これらの情報に基づいて携帯端末70の現在位置を推定することができる。したがって、本実施形態での測位方法は非常に簡易であるといえる。また、固定受信機を設ける必要がないので、測位システム2の導入コストをその分だけ下げることができる。
【0075】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0076】
第1実施形態では、携帯端末40が固定受信機20から受信機IDを受信した場合にその受信機IDをサーバ30に送信することで測位処理が始まったが、測位処理を開始するタイミングはこれに限定されない。例えば、携帯端末40は、屋内においてGPS情報を取得した場合や、固定受信機20とは別のWi−Fiのアクセスポイントから位置情報を取得した場合などに、これらのGPS情報または位置情報をサーバ30に送信することで測位処理を開始してもよい。この変形例では、サーバ30の提供部32は、そのGPS情報または位置情報と、予め保持している固定受信機20の情報(固定受信機のIDおよび設置位置)とを比較して、携帯端末40の近くに設置されている固定受信機20を特定する。そして、提供部32は、特定した固定受信機20の受信機IDを用いて、上記第1実施形態と同様に補助情報を抽出して携帯端末40に送信する。
【0077】
第1および第2実施形態を組み合わせて成る測位システムも本発明の範囲内である。すなわち、幅および奥行きの双方が広い空間(例えば部屋)では第1実施形態の測位方法を用い、幅が狭い空間(例えば通路)では第2実施形態の測位方法を用いてもよい。この場合には、携帯端末およびサーバはそれぞれ、第1および第2実施形態で説明した機能要素の双方を備えることになる。
【0078】
第1および第2実施形態の手法は、PDR(Pedestrian Dead Reckoning)やWi−Fi測位などの従来の手法で求めた現在位置を補正するために用いられてもよい。本発明は、それ単独での測位と位置補正との双方に適用可能である。
【0079】
第1および第2実施形態では測位システムが携帯端末およびサーバを備えるが、そのシステムがクライアント・サーバ型であることは必須ではない。もし、携帯端末が高性能であれば、サーバ30,60の機能も携帯端末に実装することでサーバを省略してもよい。また、第1および第2実施形態では測位システムが固定受信機とサーバとを備えるが、これらの固定受信機およびサーバを一体化してもよい。
【0080】
(第3実施形態)
第1実施形態では、固定受信機20を基準に各ビーコン10と同期を取り、固定受信機20と携帯端末40とは、共通のNTPサーバを用いた時刻合わせを行った後、上述した、固定受信機20での音波信号の受信記録および携帯端末40での音波信号の受信記録と各ビーコン10の発信タイミングとに基づいて時刻合わせを行う方法がある。しかしながら、時刻合わせの方法は上述した方法に限られず、例えば、以下に示す方法を採用することができる。
【0081】
第3実施形態では、携帯端末90とビーコン(信号源)100との時刻合わせ(タイマの誤差調整)について説明する。以下では、第1実施形態及び第2実施形態と異なる点について特に説明し、他の点については説明を省略する。
【0082】
図10は、第3実施形態に係る測位システム3の全体構成を示す図である。図10に示すように、測位システム3は、例示的に、ビーコン100、サーバ80、および携帯端末90を備えて構成されている。第3実施形態と第1実施形態との相違点は、たとえば、本実施形態に係る測位システム3が、第1実施形態に係る測位システム1の固定受信機20(例えば、図2等を参照)を備えていない点である。
【0083】
ビーコン100は、非可聴音を発する装置である。各ビーコン100は、他のビーコン100と同期を取ることなく(すなわち、他のビーコン100とは独立に)、水晶発振器により一定の時間間隔で同じ非可聴音信号を発信する再生装置付スピーカである。また、後述する、サーバ80からの要求に基づいて現時刻を記憶する。さらに、後述する、サーバ80からの問い合わせに基づいて記憶した現時刻情報をサーバ80に送信する。
【0084】
図11は、第3実施形態に係る測位システム3の機能構成を示す図である。サーバ80は、時刻合わせに必要な情報を携帯端末90に送信するコンピュータであり、機能的構成要素として要求部81、記録部83および提供部85を備えている。これらの機能要素は、サーバ80内にインストールされたプログラム(サーバプログラム)が手動でまたは自動的に実行されることで実現する。サーバ80は1台のコンピュータで構成されていてもよいし、複数台のコンピュータで構成されていてもよい。
【0085】
要求部81は、各ビーコン100に対して、各ビーコン100の現時刻情報(カウンタ値)を記録するように要求する機能要素である。要求部81が実行する当該要求は、各ビーコン100に対してブロードキャストで複数回行われる。また、要求部81は、各ビーコン100に対して、記録した現時刻情報の送信を要求する機能要素である。要求部81が実行する現時刻情報の送信要求は、各ビーコン100に対する上記記録要求ごとに行われてもよいし、その他の任意のタイミングで行われてもよい。
【0086】
記録部83は、各ビーコン100から現時刻情報を受信して履歴データベース52に格納する機能要素である。履歴データベース52は、上述したとおり、少なくとも各ビーコン100の現時刻情報を格納している。なお、上述したとおり、本実施形態の測位システム3は、固定受信機20を備えていないため、固定受信機20に関する情報、たとえば、受信機IDなどの情報は格納されていない。
【0087】
提供部(取得部、テーブル作成部)85は、各ビーコン100の発信スケジュールテーブルを作成する機能要素である。具体的には、提供部85は、履歴データベース52から現時刻情報を取得する。また、ビーコン・データベース51に格納されている、各ビーコン100のビーコン情報を取得する。そして、上記現時刻情報につき、任意のビーコン100の現時刻情報を基準に各ビーコン100間の同期を取ったうえ、ビーコン・データベース51に格納されている、各ビーコン100のビーコン情報(発信タイミング等)に基づいて、各ビーコン100の発信時刻情報を算出し、ビーコン100と各ビーコン100の発信時刻情報とが対応づけられた発信スケジュールテーブルを作成する。また、提供部85は、作成した発信スケジュールテーブルを携帯端末90の要求に応じて、携帯端末90に送信する機能要素である。さらに、提供部85は、ビーコン・データベース51に格納されているビーコン情報を携帯端末90に送信する。
【0088】
次に、図11に示すように、携帯端末90は、機能的構成要素として取得部91および測位部93を備えている。これらの機能要素は、携帯端末90内にインストールされたプログラム(端末プログラム)が手動でまたは自動的に実行されることで実現する。
【0089】
取得部91は、サーバ80により作成された発信スケジュールテーブルを取得する機能要素である。また、取得部91は、後述する測位部(タイマ誤差調整部)93によるタイマ誤差調整や測位に必要な情報をサーバ80に要求し、この要求に応じてサーバ80から送られてくるビーコン情報などを受信および保持する。
【0090】
測位部(タイマ誤差調整部)93は、時刻合わせを行う機能要素である。測位部93は、周辺のビーコン群から一定の時間(例えば1〜2秒間)だけ非可聴音を受信する。そして、測位部93はビーコン情報を参照してその各非可聴音の信号源を特定すると共に、自機のタイマにより各非可聴音の受信時刻を得ることで、拡散系列IDと受信時刻とのペアを複数個取得する。このペアは、携帯端末90での非可聴音の受信記録である。続いて、測位部93はサーバ80が作成した各ビーコン100の発信スケジュールテーブルと、取得したペア(携帯端末40での受信時刻)とに基づいて、自機のタイマとビーコン100のタイマとの時刻合わせ(誤差調整)を行う。上述した時刻合わせは、時間の経過とともに、携帯端末90とビーコン100とのタイマのズレが生じるおそれがあるため、定期的に行うことが好ましい。また、測位部93は、携帯端末90の現在位置を特定する機能要素である。測位部93の当該機能については、上述した測位部42又は測位部72の機能と同様であり、説明を省略する。
【0091】
図12は、第3実施形態に係る測位システム3の動作を示すシーケンス図である。
【0092】
図12に示すように、まず、サーバ80は、各ビーコン100に対して、ブロードキャストで現時刻記録の要求を行う(ステップS21)。
【0093】
サーバ80は、あるビーコン100に対して、現時刻情報の問い合わせを行う(ステップS22)。ビーコン100は、記録している時刻情報を、サーバ80に対して送信する(ステップS23)。
【0094】
次に、サーバ80は、他のビーコン100に対して、現時刻情報の問い合わせを行う(ステップS24)。ビーコン100は、記録している現時刻情報を、サーバ80に対して送信する(ステップS25)。
【0095】
サーバ80は、各ビーコン100から受信した現時刻情報及び各ビーコン100のビーコン情報に基づいて発信スケジュールテーブルを作成する(ステップS26)。
【0096】
携帯端末90は、サーバ80に対して、発信スケジュールテーブルを要求する(ステップS27)。
【0097】
サーバ80は、携帯端末90からの要求に対して、発信スケジュールテーブルを送信する(ステップS28)。
【0098】
携帯端末90は、発信スケジュールテーブル及びビーコン情報を参照することで、時刻調整をする(ステップS29)。
【0099】
なお、サーバ80は通信ネットワークNを介してビーコン100および携帯端末90のそれぞれと接続する。通信ネットワークNの具体的な構成は限定されない。例えば、通信ネットワークNは有線ネットワークおよび無線ネットワーク(例えばWi−Fi)の一方または双方により構築されてもよい。また、通信ネットワークNはインターネットおよびLANの一方または双方により構築されてもよい。
【0100】
第3実施形態では以上のように構成することにより、サーバ80は、各ビーコン100の非可聴音の発信タイミングを予測(発信スケジュールテーブルを作成)でき、第1実施形態のように固定受信機20の設置位置による制約を受けることなく測位システム3を構成することができる。
【0101】
また、サーバプログラムおよび端末プログラムはそれぞれ、CD−ROMやDVDROM、半導体メモリ等の有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。また、それらのプログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0102】
さらに、上述したとおり、測位部42,93は各ビーコン10,100からの距離と、ビーコン情報から得られる各ビーコンの設置位置(x,y,z)とを用いて、双曲線航法により携帯端末40,90の現在位置を求めることができるが、これに限られず、携帯端末40,90の移動速度も求めることができるように構成されていてもよい。
【0103】
さらにまた、第3実施形態では測位システム3が携帯端末90およびサーバ80を備えるが、そのシステムがクライアント・サーバ型であることは必須ではない。サーバ80の機能も携帯端末90に実装することでサーバ80を省略してもよい。またさらに、第3実施形態では測位システム3は第1実施形態の固定受信機20を備えていないが、固定受信機20が備える機能の一部又は全部をサーバ80が備えるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0104】
1,2…測位システム、10…ビーコン(信号源)、20…固定受信機、30…サーバ、31…記録部(第1取得部)、32…提供部(第2取得部、応答部)、40…携帯端末、41…取得部(第2取得部、要求部)、42…測位部、51…ビーコン・データベース、52…履歴データベース、60…サーバ、61…提供部、70…携帯端末、71…取得部、72…測位部、80…サーバ、81…要求部、83…記憶部、85…提供部、90…携帯端末、91…取得部、93…測位部、100…ビーコン(信号源)、PA,PB…測位プログラム、P1…サーバプログラム、P10…メインモジュール、P11…記録モジュール、P12…提供モジュール、P2…端末プログラム、P20…メインモジュール、P21…取得モジュール、P22…測位モジュール、P3…サーバプログラム、P30…メインモジュール、P31…提供モジュール、P4…端末プログラム、P40…メインモジュール、P41…取得モジュール、P42…測位モジュール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12