(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の熱交換器ネットワークは、一つの熱交換器、または、直列または並列に接続される複数の熱交換器を有し、前記希釈引き抜き溶液の温度を上昇させる、請求項1に記載のシステム。
前記コアレッサーは、前記引き抜き溶質を凝集させるための疎水性凝集エレメントを有する上部セクションと、水を集合させるための親水性凝集エレメントを有する下部セクションを有する、請求項1に記載のシステム。
【技術分野】
【0002】
本開示は、海水、汽水、廃水や汚染水の脱塩に向けられる。より詳しくは、本開示は、正浸透脱塩に向けられる。
【0003】
正浸透(forward osmosis)は当該技術分野において知られており、近年の研究対象となっているが、これは将来、新鮮な水が不足する可能性が有り、それに応じて費用対効果が高い脱塩および浄水技術への需要が高まっているためである。海水、汽水、その他の汚染水は、塩およびその他の汚染物質(溶質)を除去する半透膜を介して水(溶媒)を引き抜くことで浄化できる。この自然な浸透、つまり、正浸透のアプローチは、広く用いられている逆浸透プロセスとは異なる。逆浸透プロセスでは、同様の作用を有する半透膜に、圧力の下で強制的に水を通す。正浸透プロセスでは、水は、引き抜き溶液を用いて、半透膜を通して引き抜かれる。正浸透プロセスは、水を純化するのではなく、単に一組の溶質から別の一組の溶質へ水を移動させる。
【0004】
正浸透技術についてのレビューと要約がMillerとEvensにより提供されている(正浸透:浄水と脱塩の新しいアプローチ、サンディア・レポート SAND2006-4634、2006年7月(非特許文献1))。そこでは、逆行溶解度ポリマー引き抜き溶質を利用する概念が議論されている。水からの溶質の分離を達成する方法は記述されていない。
【0005】
アンモニア−二酸化炭素ベースの正浸透システムは、McGinnisのアメリカ合衆国特許第7,560,029号(特許文献1)および第6,393,295号(特許文献2)に記述されている。当該システムは、溶質の温度依存的な溶解度を用いて、溶質を水から部分的に分離する。開示において、沈殿する溶質は固体の塩であり、分離のバランスは蒸留により達成される。Collinsのアメリカ合衆国特許出願第11/632,994号(特許文献3)も、塩の温度依存的な溶解度を用いて、水から引き抜き溶質を分離することを記述している。
【0006】
アメリカ合衆国特許出願第11/796,118号(特許文献4)は、引き抜き溶質として被覆磁性ナノ粒子を利用する別の正浸透システムを記述している。PCT WO/2010/107804(特許文献5)は、磁性粒子を制御可能な浸透圧剤として用いることを記述している。
【0007】
正浸透によるものではないが、Chakrabartiのアメリカ合衆国特許第5,679,254号(特許文献6)は、水中におけるポリマーの温度依存的な溶解度を用いて脱塩を達成することを記述している。
【0008】
Iyerのアメリカ合衆国特許第8,021,553号(特許文献7)は、結果として生じる溶質ミセルを製品水から分離し回収するために逆行溶解度ポリマー溶質とナノフィルタを用いるシステムを記述している。Iyerは、疎水性および親水性成分の両方を有する引き抜き溶質を特定している。Iyerはまた、ナノフィルタ上に沈殿した(または、相分離された)引き抜き溶質を集め、ナノフィルタを逆向きに洗い流して溶質を回収する、溶質の準バッチ回収を開示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
説明の簡潔さと明快さのため、適切と考えられるときには、対応または類似する要素を示すため、参照番号が複数の図で繰り返される場合がある。また、本明細書に記述される実施形態の完全な理解のため、多数の具体的な詳細内容が述べられる。しかし、本明細書に記述される実施形態が、これらの具体的な詳細内容なしでも実施され得ることは、当該技術分野の通常の知識を有する者にはよく理解されるであろう。本明細書に記述される実施形態が不明確になることを避けるため、他の例においては、方法、手順および構成要素を詳細に記述しなかった。
【0016】
本開示は、正浸透浄水または脱塩のための改良された引き抜き溶液システムと方法に向けられる。引き抜き溶液システムと方法は、正浸透水浄化システムの一部として、引き抜き溶液溶質を水溶媒から分離して引き抜き溶液溶質を濃縮する装置を含む。
【0017】
本明細書に開示される引き抜き溶質は、逆行溶解度を示す。本明細書に開示される引き抜き溶質の溶解度は温度に応じて著しく低下するが、有用な作動浸透圧を提供するための環境条件では十分な溶解度を有する。本明細書に開示される引き抜き溶質は、逆行溶解度正浸透浄水システムおよび方法での使用のために特別に設計されたポリマーであることが望ましい。
【0018】
一実施形態において、引き抜き溶質は、低分子量ジオール(例えば1,2プロパンジオール、1,3プロパンジオールや1,2エタンジオール)のランダム共重合体またはシーケンシャル共重合体である。引き抜き溶質は、40℃〜90℃の間の曇り点温度において、関心のある特定の浄化アプリケーションのために許容できる浸透圧を有する。また、引き抜き溶質は、ナノフィルタや逆浸透膜を用いた溶解ポリマーの磨き濾過を可能とする程に高い分子量を持つ。
【0019】
一実施形態において、引き抜き溶質は、ポリグリコール共重合体であり、引き抜き溶質回収プロセスと共に用いる。引き抜き溶質回収プロセスは、バルク溶質回収のためのコアレッサーまたはセパレーター、および、再溶解した溶質を最終的に回収するためのナノフィルタを含む。
【0020】
本明細書に開示される引き抜き溶質共重合体は、様々な数や順番のジオールからなり、所望の溶解特性を与える。浸透圧、曇り点温度、分子量および分子構造は、各種のモノマー単位を加えたり引いたりすることによって調節される。
【0021】
一実施形態において、結果として生じる引き抜き溶質ポリマーの分子量と曇り点温度を上昇させるために、1,2エタンジオール単位が引き抜き溶質共重合体に加えられる。逆に、1,2プロパンジオール単位を引き抜き溶質ポリマーへ加えることによって、結果として生じる引き抜き溶質ポリマーの曇り点温度が下がり、分子量が上昇する
【0022】
別の実施形態において、1,3プロパンジオールまたは1,2エタンジオールモノマーによって、より高い分子量のポリ(プロピレン)グリコールポリマーの1,2プロパンジオールモノマーの一部を置換し、結果として生じるポリマーの溶解度を上昇させ、曇り点温度を低下させる。
【0023】
例示の引き抜き溶質の浸透圧は、アプリケーションおよび所望の回収に依存する。アプリケーションにおける高度の回収のためには、当該アプリケーションのプロセスの流れにおいて溶解した固体の濃度がより高い程、例示の引き抜き溶質はより高い浸透圧を必要とする。海水の正浸透脱塩のための例示のシステムと方法に必要とされる引き抜き溶液浸透圧は、概して、最低でも約30気圧より高く、合理的な製品流量と回収を得るためには、約40気圧よりも高いことが好ましい。一実施形態において、引き抜き溶質の溶解度は、周囲温度より十分(約10℃)に高く沸点よりも十分に(約10℃)低い温度において低下する。すなわち、引き抜き溶質の溶解度は著しく変化し、40℃〜90℃の範囲では、溶解度の温度依存性が上昇する。
プロセスにおける回収ステップの動作温度を最も低くし、結果として生じるエネルギー損失を最小にするためには、低い温度範囲(例えば、40℃により近い範囲)において強い溶解度依存を有する例示の引き抜き溶質が好ましい。
【0024】
浸透圧と曇り点温度の制約の中で、例示の引き抜き溶質ポリマーの化学的性質については、高い割合(90%より大、好ましくは99%より大)で引き抜き溶質がフィルタ除去されるように、ポリマーの分子量や物理構造を制御するように選択される。さらに、例示の引き抜き溶質ポリマーの化学的性質は、正浸透膜を通じた溶質の逆行的な拡散を最小にするように選択される。好ましくは、塩水の脱塩のためには、水の中に40%の引き抜き溶質共重合体を含む例示の引き抜き溶液の浸透圧は30気圧より高く、好ましくは40気圧より高く、より好ましくは50気圧より高く、一方で引き抜き溶質共重合体の分子量は500より大きく、好ましくは1000より大きく、より好ましくは2000より大きい。
(引き抜き溶質組成物の例)
【0025】
以下の非限定的な例は、実施形態を説明するために提供されるものであって、本開示の範囲を制限することを意図するものではない。
【0026】
ポリオキシランダム共重合体を含む引き抜き溶質ポリマー組成物を、溶液中の引き抜き溶質が30〜70%重量濃度となるように調製した。典型的な正浸透動作温度25℃における、浸透圧に対する引き抜き溶液濃度の効果を表1に示す。浸透圧は、平衡透析を用いてNaCl参照基準との直接の対比により計測した。
【表1】
【0027】
図1は、一実施形態に係る例示の正浸透プロセスを示す。汽水源流1は、正浸透モジュール3中の半透膜の供給側に供給される。引き抜き溶液流18は、正浸透モジュール3中の半透膜の引き抜き側に供給される。汽水源流1の浸透圧は、引き抜き溶液流18の浸透圧より低い。この圧力差によって、汽水源流1から水が半透膜を透過する結果、希釈引き抜き溶液流5と塩水流2が生じる。
【0028】
希釈引き抜き溶液流5は熱交換器ネットワーク4に通され、そこでは相分離を開始させるのに十分な程度、温度上昇させられる。熱交換器ネットワーク4は、希釈引き抜き溶液5の温度を上昇させるために、一つの熱交換器、または、直列あるいは並列となるように構成される複数の熱交換器を含むものとすることができる。熱交換器ネットワーク4からの流出流として流出する希釈引き抜き溶液流19の温度は、二相流出流を生成するのに十分な温度である。
【0029】
熱交換器ネットワーク4から流出する二相引き抜き溶液流出流19は、温度制御式コアレッサー6に供給される。こうして、熱交換器ネットワーク4内の溶質リッチな小液滴を凝集させる。コアレッサー6は、続く相分離器プロセス8で分離されるのに十分な大きさとなるよう溶質リッチ液滴を凝集させるように設計される。一実施形態において、コアレッサー6は、溶質リッチ液滴を10μm(好ましくは25μm、より好ましくは50μm)より大きくなるように凝集させるように設計される。コアレッサー6に通される二相流に起因する圧力低下は、ナノフィルタに通される二相流に起因する圧力低下よりかなり小さい。コアレッサー6を使用することにより、余計な複雑さと準バッチ操作で必要な逆洗浄が不要となる。
【0030】
コアレッサー6を、引き抜き溶質を凝集させるための疎水性凝集エレメントを有する上部セクションと、水を集合させるための親水性凝集エレメントを有する下部セクションとに分けてもよい。疎水性凝集エレメントの疎水性の程度と親水性凝集エレメントの親水性の程度は、引き抜き溶質が10μmより大きくなるような特定の程度の凝集を達成するように選択される。一実施形態においては、疎水性凝集エレメントの疎水性の程度と親水性凝集エレメントの親水性の程度は、引き抜き溶質が10μmより大きく凝集するように選択される。
【0031】
コアレッサー流出流7は、温度制御式重力分離器8、遠心分離機、ハイドロサイクロンまたは類似の装置に供給され、そこではコアレッサーからの溶質リッチ液滴が集められる。重力相分離器8は、溶質を水から分離して、連続的な溶質リッチ流10と連続的な水リッチ流9を生成するように設計されている。一実施形態において、コアレッサー6と重力相分離器8の動作温度は、150℃未満(好ましくは100℃未満、より好ましくは80℃未満)に維持される。これにより、分離器8からの流出流として流出する水リッチ流9の特定の溶質濃度と浸透圧を達成する。一実施形態において、コアレッサー6と重力相分離器8の動作温度は、水リッチ流9の溶質濃度として、溶液中溶質重量濃度で5%未満(好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満)という濃度を達成するように選択される。
【0032】
一実施形態において、重力相分離器8は、溶質リッチ流10中の溶質を、溶液中溶質濃度で60%より高い(好ましくは80%より高い、より好ましくは90%より高い)濃度に濃縮するように設計される。流出流として相分離器8から流出する溶質リッチ流10は、熱交換器16で冷却される。相分離器8からの流出流として流出する水リッチ流9も、熱交換器11で冷却される。これにより、残存する溶質を再溶解させ、単相の冷却水リッチ流12を生成する。冷却水リッチ流12は、製品水から残存溶質を分離するのに用いられるナノフィルタ13、限外濾過器、半透膜を有する逆浸透モジュールまたは類似の装置に供給される単相流である。ナノフィルタ13は、溶質分子をそのサイズまたは構造に基づき除去し、かつ、理想的には溶解塩の大部分を通過させるために選択される。ナノフィルタ13、限外濾過器、逆浸透モジュールまたは類似する装置での最終的な濾過ステップは、単相冷却水リッチ流12中の残存溶質を回収するためだけに使われる。ナノフィルタ13前後の圧力低下を最小にし、作業を単純化するために、溶質は単相冷却水リッチ流12に再溶解される。溶質無し水フィルタ透過物14は、本プロセスの製品である。
【0033】
ナノフィルタ13から流出する溶質リッチ流15は、熱交換器16から流出する冷却溶質リッチ流10とミキサー17において混合され、混合溶質リッチ流18を生成する。ミキサー17は、結果として生じる混合溶質リッチ流18中に溶質を完全に溶解させるのに用いられる。混合溶質リッチ流18は、源流1を連続的に浄化または脱塩するために、正浸透モジュール3に供給される。流出流として相分離器8から流出する溶質リッチ流10は、混合溶質リッチ流18の温度を十分に低く保ち、正浸透モジュール3に流入する混合溶質リッチ流18中で溶質が完全に溶解するような特定の温度まで、熱交換器16で冷却される。
【0034】
図1の一実施形態において、追加的な外熱源(図示せず)で、コアレッサー6や相分離器8を動作温度まで加熱しても良い。
【0035】
図1の別の実施形態において、コアレッサー6と相分離器8は結合され、1つの物理的装置となる。あるいは、熱交換器ネットワーク4内の表面領域と、熱交換器ネットワーク4と相分離器8の間の配管内の表面領域とを、コアレッサー6の代わりに用いてもよい。
【0036】
図1の別の実施形態において、溶質濃度に基づく温度維持に代えて、コアレッサー6と相分離器8の温度は、水リッチ流9の浸透圧を50mOsm未満、好ましくは25mOsm未満、更に好ましくは15mOsm未満に維持するように制御される。
【0037】
図1の別の実施形態において、希釈引き抜き溶液流5中の溶質濃度は、希釈引き抜き溶液流5または混合溶質リッチ流18の流量を用いて制御される。希釈引き抜き溶液5の目標濃度は、正浸透モジュール3における最小限流量として、少なくとも4L/(m
2*hr)を維持するように制御される。
【0038】
図1の別の実施形態において、希釈引き抜き溶液流5中の微生物濃度は、UV滅菌装置または殺生物剤の添加により制御される。
【0039】
図1の別の実施形態において、フィルタ透過物14から残存引き抜き溶質を除去するため、高度酸化プロセスまたは吸着システムが用いられる。
【0040】
図1の別の実施形態において、2000未満、好ましくは1000未満、より好ましくは500未満の分子量でのカットオフを行うため、また、50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満のNaCl除去を行うため、また、溶液中の溶質重量にて95%を超える、好ましくは99%を超える、より好ましくは99.9%を超える溶質除去を行うために、ナノフィルタ13、限外濾過器または逆浸透フィルタを選択する。
(コアレッサー動作条件例)
【0041】
図1に示す正浸透プロセスにおけるプロセス流濃度と浸透圧に対するコアレッサー作動温度の影響を調査した。ポリオキシランダム共重合体を含む好ましい引き抜き溶液をプロセスに用いた。コアレッサー6を加熱するとすぐに希釈引き抜き溶液流5の浸透圧は低下し、溶液は溶質リッチ相と水リッチ相に分離した。コアレッサー流出流7は、温度制御式重力分離器8に供給され、重力相分離器8は溶質を水から分離し、連続的な溶質リッチ流10と連続的な水リッチ流9を生成した。最終フィルタ13の電力消費を設定または拘束する水リッチ流9の浸透圧と、正浸透モジュールで処理される膜流量と最大塩水濃度を設定または拘束する溶質リッチ流10の溶質組成を、コアレッサー動作温度の関数として測定した。結果の概略を表2に示す。
【表2】
【0042】
コアレッサー6の動作温度は、分離器8からの流出流として流れ出る水リッチ流9における特定の浸透圧を達成するように制御した。コアレッサー6の動作温度はまた、溶質リッチ流10中の溶質濃度を達成するように制御した。表2で概略を示したように、コアレッサー6の動作温度を上昇させると、水リッチ流9の浸透圧が低下し、それによって、最終濾過ステップ13で濾過に必要とされる電力が低下した。コアレッサー6の動作温度を上昇させると、溶質リッチコアレッサー流出流中の溶質濃度が上昇し、それによって、正浸透モジュール3で処理される膜流量と最大塩水濃度の上昇が可能となる。
【0043】
図2は、別の実施形態による例示の正浸透プロセスを示す。海水源流200は、正浸透モジュール202中の半透膜の供給側に供給される。引き抜き溶液流240は、正浸透モジュール202中の半透膜の引き抜き側に供給される。海水源流200の浸透圧は、引き抜き溶液流240の浸透圧より低い。この圧力差によって、海水源流200から水が半透膜を透過し、その結果、希釈引き抜き溶液流206と塩水流204が生成される。
【0044】
希釈引き抜き溶液流206を2つの希釈引き抜き溶液流206に分け、二つ以上の熱交換器208、210、214を有する熱交換器ネットワークに供給することができる。一方の希釈引き抜き溶液流206は溶質リッチ熱交換器208に供給され、他方の希釈引き抜き溶液流206は水リッチ熱交換器210に供給される。両方の希釈引き抜き溶液流206は、それぞれの熱交換器208、210で加熱され、結果として生じる加熱引き抜き溶液流は再結合され、混合希釈引き抜き溶液流212を生じる。両方の希釈引き抜き溶液流206の流量比は、熱交換器ネットワークの両熱交換器208、210から流れ出る2つの希釈引き抜き溶液流206間の温度差が5℃未満、好ましくは3℃未満、より好ましくは1℃未満となるように調節される。混合希釈引き抜き溶液流212を、更に仕上げ熱交換器214に通す事も可能であり、そこでは、廃熱源、太陽熱源、または、燃料燃焼熱源(図示せず)からの外部熱が加えられ、これにより温度を調節し、プロセス熱損失を担う。
【0045】
相分離を開始させるのに十分な程度に、両希釈引き抜き溶液流206と混合引き抜き溶液流212を熱交換器ネットワーク208、210、214で加熱する。仕上げ熱交換器214からの流出流として流れ出る混合希釈引き抜き溶液流212の温度は、二相流出流212を生じるのに十分である。
【0046】
仕上げ熱交換器214から流れ出る二相引き抜き溶液流出流212は温度制御式コアレッサー216に供給され、熱交換器ネットワーク208、210、214内の溶質リッチ小液滴を凝集させる。コアレッサー216は、続く相分離器プロセス218で溶質リッチ液滴が分離されるのに十分な大きさとなるよう凝集させるように設計される。一実施形態において、コアレッサー216は、10μm(好ましくは25μm、より好ましくは50μm)より大きくなるよう、溶質リッチ液滴を凝集させるように設計される。コアレッサー216を通過する二相流に起因する圧力低下は、ナノフィルタを通過する二相流に起因する圧力低下よりかなり小さい。コアレッサー216を使用することにより、余計な複雑さと準バッチ操作で必要な逆洗浄が不要となる。
【0047】
コアレッサー216を、引き抜き溶質を凝集させるための疎水性凝集エレメントを有する上部セクションと、水を集合させるための親水性凝集エレメントを有する下部セクションとに分けることも可能である。疎水性凝集エレメントの疎水性の程度と親水性凝集エレメントの親水性の程度は、引き抜き溶質が10μmより大きくなるような特定の程度の凝集を達成するように選択される。一実施形態においては、疎水性凝集エレメントの疎水性の程度と親水性凝集エレメントの親水性の程度は、引き抜き溶質が10μmより大きくなるよう凝集するように選択される。
【0048】
コアレッサー流出流220は、温度制御式重力分離器218、遠心分離機、ハイドロサイクロンまたは類似の装置に供給され、そこではコアレッサーからの溶質リッチ液滴が集められる。重力相分離器218は、溶質を水から分離して、連続的な水リッチ流222と連続的な溶質リッチ流224を生成するように設計される。一実施形態において、コアレッサー216と重力相分離器218の動作温度は、150℃未満(好ましくは100℃未満、より好ましくは80℃未満)に維持される。これにより、分離器218からの流出流として流れ出る水リッチ流222の特定の溶質濃度と浸透圧を達成する。一実施形態において、コアレッサー216と重力相分離器218の動作温度は、水リッチ流222の溶質濃度として、溶液中溶質重量濃度で5%未満(好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満)という濃度を達成するように選択される。一実施形態において、重力相分離器218は、溶質リッチ流224の溶質を、溶液中溶質重量濃度で60%より高い(好ましくは80%より高い、より好ましくは90%より高い)濃度に濃縮するように設計される。
【0049】
分離器218からの流出流として流れ出る水リッチ流222は水リッチ熱交換器210に通され、そこで希釈引き抜き溶液流206によって冷却され、逆に希釈引き抜き溶液流206は水リッチ流222によって加熱される。分離器218からの流出流として流れ出る溶質リッチ流224は溶質リッチ熱交換器208に通され、そこで希釈引き抜き溶液流206によって冷却され、逆に希釈引き抜き溶液流206は溶質リッチ流224によって加熱される。したがって、熱交換器ネットワーク208、210、214は、連続水リッチ流222と連続溶質リッチ流224を含む重力相分離器218流出流からの顕熱を第一に集め、回収する。水リッチ流222と溶質リッチ流224は、正浸透モジュール202が動作する温度の数度以内に冷却される一方、希釈引き抜き溶液流206は、それに応じて加熱される。
【0050】
相分離器218からの流出流として流れ出る水リッチ流222は水リッチ熱交換器210で冷却され、これにより、残存する溶質を再溶解させ、単相冷却水リッチ流226を生成する。冷却水リッチ流226は、製品水から残存溶質を分離するのに用いられるナノフィルタ228、限外濾過器、半透膜を有する逆浸透モジュールまたは類似の装置に供給される単相流である。ナノフィルタ228は、溶質分子をそのサイズまたは構造に基づき除去し、かつ、理想的には溶解塩の大部分を通過させるために選択される。ナノフィルタ228、限外濾過器、逆浸透モジュールまたは類似の装置での最終的な濾過ステップは、単相冷却水リッチ流226中の残存溶質を回収するためだけに用いられる。溶質を単相冷却水リッチ流226に再溶解させることで、ナノフィルタ228前後の圧力低下を最小にし、かつ、動作を単純化する。溶質を含まない水フィルタ透過物230は、本プロセスの製品である。
【0051】
ナノフィルタ228から流れ出る溶質リッチ流232は、溶質リッチ熱交換器208から流れ出る冷却溶質リッチ流224とミキサー234において混合され、混合溶質リッチ流240を生じる。ミキサー234は、結果として生じる混合溶質リッチ流240中に溶質を完全に溶解させるのに用いられる。混合溶質リッチ流240は、源流200を連続的に浄化または脱塩するために正浸透モジュール202に供給される。流出流として相分離器218から流れ出る溶質リッチ流224は、混合溶質リッチ流240の温度を十分に低く保ち、正浸透モジュール202に流入する混合溶質リッチ流240中に溶質が完全に溶解するような特定の温度まで、溶質リッチ熱交換器208で冷却される。
【0052】
図2の一実施形態において、追加的な外熱源(図示せず)により、コアレッサー216や相分離器218を動作温度まで加熱しても良い。
【0053】
図2の別の実施形態において、コアレッサー216と相分離器218は結合され、1つの物理的な装置となる。
【0054】
図2の別の実施形態において、溶質濃度に基づく温度維持に代えて、コアレッサー216と相分離器218の温度は、水リッチ流222の浸透圧を50mOsm未満、好ましくは25mOsm未満、より好ましくは15mOsm未満に維持するように制御される。
【0055】
図2の別の実施形態において、希釈引き抜き溶液流206中の溶質濃度は、希釈引き抜き溶液流216または混合溶質リッチ流240の流量を用いて制御される。希釈引き抜き溶液206の目標濃度は、正浸透モジュール202における最小限流量として、少なくとも4L/(m
2*hr)を維持するように制御される。
【0056】
図2の別の実施形態において、希釈引き抜き溶液流206中の微生物濃度は、UV滅菌装置または殺生物剤の添加により制御される。
【0057】
図2の別の実施形態において、フィルタ透過物228から残存引き抜き溶質を除去するため、高度酸化プロセスまたは吸着システムが用いられる。
【0058】
図2の別の実施形態において、2000未満、好ましくは1000未満、より好ましくは500未満の分子量でのカットオフを行うため、また、50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満のNaCl除去を行うため、また、溶液中の溶質重量にて95%を超える、好ましくは99%を超える、より好ましくは99.9%を超える溶質除去を行うために、ナノフィルタ228、限外濾過器または逆浸透フィルタを選択する。
【0059】
図3は、別の実施形態に係る例示の正浸透プロセスを示す。汽水源流300は、正浸透モジュール304中の半透膜の供給側に供給される。引き抜き溶液流318は、正浸透モジュール304中の半透膜の引き抜き側に供給される。汽水源流300の浸透圧は、引き抜き溶液流318の浸透圧より低い。この圧力差によって、汽水源流300から水が半透膜を透過する結果、希釈引き抜き溶液流306と塩水流302が生じる。
【0060】
希釈引き抜き溶液流306は熱交換器ネットワーク308に通され、そこでは、相分離を開始させるのに十分なまで温度上昇させられる。熱交換器ネットワーク308は、希釈引き抜き溶液流306の温度を上昇させるための一つの熱交換器、あるいは、直列または並列に構成される複数の熱交換器を含むものとすることができる。熱交換器ネットワーク308からの流出流として流れ出る希釈引き抜き溶液流340の温度は、二相流出流を生み出すのに十分な温度である。
【0061】
熱交換器ネットワーク308から流れ出る二相引き抜き溶液流出流340は、温度制御式の一次コアレッサー310に供給される。これにより、熱交換器ネットワーク308内の溶質リッチ小液滴が凝集される。一次コアレッサー310は、続く相分離器プロセス312で分離されるのに十分な大きさとなるように溶質リッチ液滴を凝集させるよう設計される。一実施形態において、一次コアレッサー310は、溶質リッチ液滴を10μm(好ましくは25μm、より好ましくは50μm)より大きくなるように凝集させるように設計される。一次コアレッサー310を通過する二相流に起因する圧力低下は、ナノフィルタを通過する二相流に起因する圧力低下よりかなり小さい。コアレッサー310を使用することにより、余計な複雑さと準バッチ操作で必要な逆洗浄が不要となる。
【0062】
一次コアレッサー流出流314は、温度制御式重力分離器312、遠心分離機、ハイドロサイクロンまたは類似の装置に供給され、そこでは一次コアレッサー310からの溶質リッチ液滴が集められる。重力相分離器312は、溶質を水から分離して、連続的な溶質リッチ流316と連続的な水リッチ流342を生じるように設計される。一実施形態において、一次コアレッサー310と重力相分離器312の動作温度は、150℃未満(好ましくは100℃未満、より好ましくは80℃未満)に維持され得る。これにより、分離器312からの流出流として流れ出る水リッチ流342中の特定の溶質濃度を達成する。一次コアレッサー310と重力相分離器312の動作温度はまた、水リッチ流342中の溶質濃度として、溶液中溶質重量濃度で5%未満(好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満)という濃度を達成するように維持され得る。一実施形態において、重力相分離器312は、溶質リッチ流316中の溶質を、溶液中溶質重量濃度で60%より高い(好ましくは80%より高い、より好ましくは90%より高い)濃度に濃縮するように設計され操作され得る。流出流として相分離器312から流れ出る溶質リッチ流316は、熱交換器320で冷却される。
【0063】
分離器312からの流出流として流れ出る水リッチ流342を、低濃度溶質分散相用に設計された温度制御式二次コアレッサー322に通すことができる。二次コアレッサー322は水リッチ流342中の溶質リッチ液滴を凝集させるように設計され、二次コアレッサー322からの流出流として流れ出る溶質リッチ流324を生成する。溶質の高い濃度のためにコアレッサーが溢れてしまうため、一次コアレッサー310の内部またはその前段で高密度凝集基材を使用することは不可能である。その結果、溶質リッチ相の小液滴が、一次コアレッサー流出流314中に分散し続けることもあり得る。これらの分散溶質リッチ小液滴は、コアレッサー流出流314の浸透圧を上昇させ、最終フィルタ330ステップにおいて相応に高い圧力と電力消費が必要になる。二次コアレッサー322に供給される水リッチ流342は溶質濃度が低く、そのため、二次コアレッサー322において、より小さなエレメントを持つ、より高密度のコアレッサー基材を使用することができる。その結果、より小さな液滴が凝集させられ、最終フィルタ330ステップに送られる前に水リッチ流342から分離されることとなる。コアレッサー基材の設計、材料と構成は、溶質の化学的性質、溶質の濃度、分散液滴のサイズに基づいて選択される。
【0064】
二次コアレッサー322からの流出流として流れ出る溶質リッチ流324は再循環され、一次コアレッサー310上流の熱交換器ネットワーク308から流出する二相引き抜き溶液流出流340に加えられる。二次コアレッサー322からの流出流として流れ出る水リッチ流338は熱交換器326で冷却され、残存する溶質を再溶解させ、単相冷却水リッチ流328を生成する。二次コアレッサー322の温度は、単相冷却水リッチ流328の溶質濃度として、溶液中溶質重量濃度で5%未満(好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満)という濃度を達成するように独立的に適宜、制御される。
【0065】
残存する溶質を製品水から分離するため、単相冷却水リッチ流328は、ナノフィルタ330、限外濾過器、半透膜を有する逆浸透モジュールまたは類似の装置に供給される。ナノフィルタ330は、溶質分子をそのサイズまたは構造に基づき除去し、かつ、理想的には溶解塩の大部分を通過させるために選択される。ナノフィルタ330、限外濾過器、逆浸透モジュールまたは類似の装置における最終的な濾過ステップは、単相冷却水リッチ流328中の残存溶質を回収するためだけに使われる。ナノフィルタ330前後の圧力低下を最小にし、作業を単純化するために、溶質は、単相冷却水リッチ流328に再溶解される。溶質を含まない水フィルタ透過物332は、本プロセスの製品である。
【0066】
ナノフィルタ330から流出する溶質リッチ流334は、ミキサー336において冷却溶質リッチ流316と混合され、混合溶質リッチ流318を生成する。ミキサー336は、結果として生じる混合溶質リッチ流318中に溶質を完全に溶解させるのに用いられる。混合溶質リッチ流318は、源流300を連続的に浄化または脱塩するために、正浸透モジュール304に供給される。流出流として相分離器312から流出する溶質リッチ流316は、混合溶質リッチ流318の温度を十分に低く保ち、正浸透モジュール304に流入する水に溶質が完全に溶解するような特定の温度まで熱交換器320において冷却される。
【0067】
図3の実施形態において、追加的な外部熱源(図示せず)で、コアレッサー310、322や相分離器312を動作温度まで加熱しても良い。
【0068】
図3の別の実施形態において、一次コアレッサー310と相分離器312は結合され、1個の物理的な装置となる。あるいは、熱交換器ネットワーク308内の表面領域と、熱交換器ネットワーク308と相分離器312の間の配管内の表面領域を、一次コアレッサー310およびその動作の代わりに用いることもできる。
【0069】
図3の別の実施形態において、溶質濃度に基づく温度維持に代えて、一次コアレッサー310、二次コアレッサー322、および、相分離器312の温度は、水リッチ流338の浸透圧を50mOsm未満、好ましくは25mOsm未満、更に好ましくは15mOsm未満に維持するように制御される。
【0070】
図3の別の実施形態において、希釈引き抜き溶液流306中の溶質濃度は、希釈引き抜き溶液流306または混合溶質リッチ流318の流量を制御することにより調節される。希釈引き抜き溶液流306中の目標濃度は、正浸透モジュール304における最小限流量として、少なくとも4L/(m
2*hr)を維持するように調節される。
【0071】
図3の別の実施形態において、希釈引き抜き溶液流306中の微生物濃度は、UV滅菌装置または殺生物剤の添加により制御される。
【0072】
図3の別の実施形態において、フィルタ透過物332から残存引き抜き溶質を除去するため、高度酸化プロセスまたは吸着システムが用いられる。
【0073】
図3の別の実施形態において、2000未満、好ましくは1000未満、より好ましくは500未満の分子量でのカットオフを行うため、また、50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満のNaCl除去を行うため、また、溶液中の溶質重量にて95%を超える、好ましくは99%を超える、より好ましくは99.9%を超える溶質除去を行うために、ナノフィルタ330、限外濾過器または逆浸透フィルタを選択する。
【0074】
本明細書に開示される正浸透浄水または脱塩のためのシステムと方法は、加熱により相分離を開始する。結果として生じる分散二相系はコアレッサーを用いて凝集され、溶質の大部分は相分離器を用いて回収される。最後に、結果として生じる水リッチ流は、残存するいかなる分散溶質をも溶解するために冷却され、低溶質濃度の単相流が、最後の連続的な濾過処理のためにフィルタ(例えば、ナノフィルタ)に送られる。ナノフィルタまたは類似の装置は、最終的な濾過ステップにおいて二相系を分離するのには用いられない。
【0075】
図4は、一実施形態に係る例示の正浸透システムの例示のプロセスフロー図を示す。ステップ401で、水を含み第1の浸透圧を有する汚染供給溶液流が半透膜の供給側に供給され、引き抜き溶質を含み第2の浸透圧を有する引き抜き溶液流が半透膜の引き抜き側に供給される。ステップ402で、汚染供給溶液からの水は半透膜を引き抜き側へ通過することを許可され、半透膜の引き抜き側に水と引き抜き溶質を含む希釈引き抜き溶液流を生じる。
【0076】
ステップ403で、希釈された希釈引き抜き溶液流は十分な程度加熱され、これにより二相流出流を生成する。
【0077】
ステップ405で、二相流出流中の引き抜き溶質は凝集され、凝集流出流を生じる。ステップ406で、凝集した引き抜き溶質は凝集流出流から分離される。その結果、水と残存引き抜き溶質を含む水リッチ流と、凝集した引き抜き溶質と水を含む溶質リッチ流を生じる。
【0078】
ステップ407で、水リッチ流は冷却され、残存引き抜き溶質を溶解し、冷却単相水リッチ流を生じる。ステップ408で、残存引き抜き溶質は冷却単相水リッチ流から分離され、残存引き抜き溶質流と精製水製品流を生じる。
【0079】
プロセスは、引き抜き溶液を再構成、再循環するためのステップを更に含むことができる。ステップ409で、溶質リッチ流は冷却され、引き抜き溶質と水を含む冷却溶質リッチ流を生じる。ステップ410で、残存引き抜き溶質流は、冷却溶質リッチ流と混合され、再構成引き抜き溶液を生じる。ステップ411で、再構成引き抜き溶液は、半透膜の引き抜き側に再循環される。
【0080】
上記実施形態は、正浸透浄水または脱塩のための改良されたシステムと方法に関して記述した。当業者であれば、開示された実施形態についての様々な変更や発展に想到するだろう。本開示の趣旨の範囲内であることを意図する主題を特許請求の範囲に記載する。