特許第6495243号(P6495243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495243
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】バタフライバルブのシール構造
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/226 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   F16K1/226 J
   F16K1/226 C
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-510497(P2016-510497)
(86)(22)【出願日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2015059448
(87)【国際公開番号】WO2015147197
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2018年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-68083(P2014-68083)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-68084(P2014-68084)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】▲邱▼ 明平
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−166654(JP,A)
【文献】 実開昭56−45663(JP,U)
【文献】 特開2005−24013(JP,A)
【文献】 米国特許第3991974(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/226
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジスク表面と、当該ジスクを回転可能に軸支してなるボデーの内周面とに樹脂材料からなるライニング層をそれぞれ設けると共に、ボデー側ライニング層であるシートライナーの直径方向対向位置に設けた弁軸孔にステムを軸装し、このステムを回転操作したときに少なくともジスクの弁翼部をボデー内周面に圧接シールするバタフライバルブのシール構造において、内周側にバックアップラバーを装着した前記ボデーの内周面にシートライナーを被覆し、このシートライナーの内径は、弁開時においては前記バックアップラバーの弾性力で前記ジスクの外径よりも小径に変形した内径とし、一方、弁閉時における前記シートライナーの内径は、前記ジスクが前記シートライナーを押圧して前記バックアップラバーの弾性力で小径に変形する前の内径に設定し、この変形前の内径を前記ジスク外径と同径(公差を含む)に設けたことを特徴とするバタフライバルブのシール構造。
【請求項2】
前記バックアップラバーの厚さを、このバックアップラバーの幅寸法と略同寸法又はやや長く設けることにより、弁閉時に前記シートライナーの内径を前記変形前の内径に復元容易とした請求項1に記載のバタフライバルブのシール構造。
【請求項3】
弁閉時に前記シートライナーの内径を前記変形前の内径に復元する際、前記バックアップラバーが拡径に伴って幅方向に膨出する膨出部を、前記ボデーと前記シートライナーとの間に設けた間隙部に収容するようにした請求項1又は2に記載のバタフライバルブのシール構造。
【請求項4】
前記バックアップラバーの幅を前記ジスクの弁翼差値と略同じ大きさに設けた請求項1乃至3の何れか1項に記載のバタフライバルブのシール構造。
【請求項5】
前記ライニング層は、フッ素樹脂である請求項1乃至4の何れか1項に記載のバタフライバルブのシール構造。
【請求項6】
前記ジスク側ライニング層であるジスクライニングの弁翼側先端の両面側に所定角度のテーパ面を設け、これらテーパ面の間に前記シートライナーに圧接シールするシール部を形成し、このシール部の幅を前記ジスクの芯金先端側の幅と略同じ大きさに設けた請求項1乃至5の何れか1項に記載のバタフライバルブのシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライバルブのシール構造に関し、特に、弁体及び弁箱内周面に樹脂ライニングが施されたバタフライバルブの弁翼と弁箱とのシール部付近におけるシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バタフライバルブは、弁体のステム軸の根元に形成されるボス部とシートリングのボス部接触面とによってステム軸着部付近のシール性が確保され、弁体の弁翼外周面とシートリングの弁翼接触面とによってステム軸着部よりも弁翼側の周面シール性が確保されるシール構造になっている。このようなバタフライバルブをソーダ工業や半導体製造用のプラントで使用して高腐食性流体を流す場合や、塩素ガスや塩酸などの化学流体、薬液、溶剤、食品関連の流路などに使用する場合には、流体が接触する弁体及び弁箱内周面に樹脂ライニングが施されることが多い。この樹脂ライニング材としては、耐薬品性や耐熱性に優れたフッ素樹脂が通常使用されるが、フッ素樹脂は弾性に乏しいために弁翼側の周面シール性が低下して弁座漏れが生じるおそれがある。そこで、バタフライバルブの弁翼側のシール性を高めるために、ゴム製のリングが樹脂ライニング材の背面側に配設され、このゴム製リングの弾性反発力を利用して弁翼付近の弾性力不足を補ってシール性を向上するようにしたバタフライバルブが一般に提案されている。
【0003】
この種のバタフライバルブとして、例えば、特許文献1のバタフライ弁が開示されている。このバタフライ弁では、弁箱である弁本体の内面にフッ素樹脂製のシートリングからなる樹脂ライニング層が設けられ、このシートリングと弁本体との間にゴム製のバックアップリングが介挿され、このバックアップリングによりシール部に弾性力が発揮されて弁体との間のシール性が確保されている。このようなバタフライバルブのシール構造を設ける場合、弁本体に形成された凹溝にバックアップリングが装着され、このバックアップリングを介してシートリングがボデーに装着され、続いて、このシートリングが装着された弁本体にステムを介して弁体が取付けられる。
このバタフライ弁では、ステム操作により弁体を回転させて弁体の弁翼側をシートリングに押圧させると、このシートリングがバックアップリングとともに外径方向に圧縮されながら弁体とシールするようになっている。
【0004】
同様の技術は、特許文献2においても開示されている。このバタフライ弁では、弁体の外周縁の半径を、環形のゴム等からなる弾性部材により径方向に締め付けられた弁座の内周面の半径と等しく、又は弁座の内周面の半径よりも僅かに大きく設定する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−166654号公報
【特許文献2】特開2012−219819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のバタフライ弁においては、弁閉シール時にバックアップリングの弾性力に抗する力に加えてシートリング自体を圧縮する力も必要になることから、操作トルクの上昇につながっていた。この場合、シートリングの圧縮を抑えるようにすればシール性を確保しながら操作トルクを低減させることは可能にはなるが、このようなシートリングの圧縮を抑えるための形状や構造は記載及び示唆されていない。さらに、弁閉時にシートリングを圧縮させるための力は、シートリングの厚みが大きくなるにつれてより大きくなり、操作トルクが一層上昇するという問題があった。このことから、この種のバタフライバルブでは、シートリングを厚く設けて耐薬品性や耐熱性を向上させることも難しい。
【0007】
一方、特許文献2のバタフライ弁においては、弁座の内周面の半径は、ックアップリングに相当する弾性部材が装着された状態の寸法を示していることから(特許文献2の図2参照)、弁閉シール時には、特許文献1の場合と同様にバックアップリングの弾性力に抗する力に加えて、シートリング自体を圧縮する力も必要である。
また、特許文献1、2共に、バックアップリングは、その厚みが幅寸法よりも小さい偏平形状であることから、弁の開閉に伴ってバックアップリングを円滑に縮径や拡径するには改善が必要である。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、特に弁翼付近のシール性を向上しつつ、弁閉操作時に樹脂ライニング層を圧縮する力を抑えて操作トルクの上昇を防ぎ、この樹脂ライニング層の厚みを増加する場合にも一定の低い操作トルクでシール性を確保しながら開閉操作可能なバタフライバルブのシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ジスク表面と、当該ジスクを回転可能に軸支してなるボデーの内周面とに樹脂材料からなるライニング層をそれぞれ設けると共に、ボデー側ライニング層であるシートライナーの直径方向対向位置に設けた弁軸孔にステムを軸装し、このステムを回転操作したときに少なくともジスクの弁翼部をボデー内周面に圧接シールするバタフライバルブのシール構造において、内周側にバックアップラバーを装着したボデーの内周面にシートライナーを被覆し、このシートライナーの内径は、弁開時においてはバックアップラバーの弾性力でジスクの外径よりも小径に変形した内径とし、一方、弁閉時におけるシートライナーの内径は、ジスクがシートライナーを押圧してバックアップラバーの弾性力で小径に変形する前の内径に設定し、この変形前の内径をジスク外径と同径(公差を含む)に設けたバタフライバルブのシール構造である。
【0010】
請求項2に係る発明は、バックアップラバーの厚さを、このバックアップラバーの幅寸法と略同寸法又はやや長く設けることにより、弁閉時にシートライナーの内径を変形前の内径に復元容易としたバタフライバルブのシール構造である。
【0011】
請求項3に係る発明は、弁閉時にシートライナーの内径を変形前の内径に復元する際、バックアップラバーが拡径に伴って幅方向に膨出する膨出部を、ボデーとシートライナーとの間に設けた間隙部に収容するようにしたバタフライバルブのシール構造である。
【0012】
請求項4に係る発明は、バックアップラバーの幅をジスクの弁翼差値と略同じ大きさに設けたバタフライバルブのシール構造である。
【0013】
請求項5に係る発明は、ライニング層は、フッ素樹脂であるバタフライバルブのシール構造である。
【0014】
請求項6に係る発明は、ジスク側ライニング層であるジスクライニングの弁翼側先端の両面側に所定角度のテーパ面を設け、これらテーパ面の間にシートライナーに圧接シールするシール部を形成し、このシール部の幅をジスクの芯金先端側の幅と略同じ大きさに設けたバタフライバルブのシール構造である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によると、シートライナーの内径が、弁開時においてはバックアップラバーの弾性力でジスクの外径よりも小径に変形した内径に復元し、弁閉時においてはジスクが押圧してバックアップラバーの弾性力で小径に変形する前の内径となり、この変形前の内径がジスク外径と同径(公差を含む)に設けられていることにより、弁閉操作時に樹脂ライニング層を圧縮する力を必要とすることがなく操作トルクの上昇を防ぐことができる。しかも、樹脂ライニング層の厚みを増加した場合にも、このライニング層を圧縮する力を加えることなく弁閉シール状態に操作できるため、一定の低い操作トルクで容易に開閉操作可能となる。
【0016】
請求項2に係る発明によると、バックアップラバーの厚さを、幅寸法と略同寸法又はやや長く設けることにより、径方向の変形余地が大きくなり、このバックアップリングを弁の開閉に伴って円滑に縮径や拡径して、シートライナーの内径が変形前の内径に容易に復元することから、操作トルクの上昇を防止できる。
【0017】
請求項3に係る発明によると、拡径したバックアップラバーの膨出部を間隙部に収容することにより、均等な押圧シール力を発揮して、無理のないシール状態を維持できる。
【0018】
請求項4に係る発明によると、バックアップラバーを設けた範囲において弁閉時のシートライナーとジスクとのシール性を確保して確実に弁座漏れを防止でき、ジスクが完全に閉止状態まで回転していない場合でも、その誤差を吸収して高いシール性を発揮する。
【0019】
請求項5に係る発明によると、ライニング層をフッ素樹脂とすることにより耐薬品性及び耐熱性を向上しながら弁閉操作時の操作トルクを低く抑えることができ、このライニング層のジスクのシールによる摩耗や劣化を抑えて耐久性を向上できる。
【0020】
請求項6に係る発明によると、弁閉シール時に芯金からシートライナーとのシール面であるジスクライニングに略均等に押圧力を伝達し、均一な面圧シール力により優れたトルク性を発揮しながら弁翼部とボデー内周面とのシール性を高くして弁座漏れを確実に防止する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】バタフライバルブの一部切欠き斜視図である。
図2図1のバタフライバルブの中央縦断面図である。
図3図1のバタフライバルブの中央横拡大断面図である。
図4図2のバタフライバルブの中央縦断面図である。
図5図4の要部拡大断面図である。
図6図3の中央横拡大断面図におけるシートライナーの装着状態を示す一部省略断面図である。
図7図3におけるジスクが回転した状態を示す断面図である。
図8】ジスクの弁翼部付近を示した一部拡大断面図である。
図9】シートライナーを示す断面図である。
図10】バタフライバルブの比較例を示す中央横断面図である。
図11】(a)はシートライナーを示す斜視図である。(b)はシートライナーの縦断面図である。
図12】(a)はジスクを示す斜視図である。(b)はジスクの縦断面図である。
図13】シートライナーを変形させた状態を示す断面図である。
図14図13のA−A断面図である。
図15】(a)はジスクを装着したシートライナーの斜視図である。(b)はジスクを装着したシートライナーの縦断面図である。
図16】(a)はステムを装着したシートライナーの斜視図である。(b)はステムを装着したシートライナーの縦断面図である。
図17】バックアップラバーを示した側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 バルブ本体
2 ジスク
3 ボデー
4 バックアップラバー
5 ステム
10 ライニング層
11 シートライナー
12 ジスクライニング
12a 傾斜面
12b テーパ面
12c シール部
13 弁軸孔
20 弁翼部
φD1 ジスク外径
φd2 弁開時のシートライナーの内径
φd1 弁閉時のシートライナーの内径
L バックアップラバーの幅
S 弁翼差値
Wa シール部の幅
Wb ジスクの芯金先端側の幅
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明におけるバタフライバルブのシール構造の好ましい実施形態並びにその作用を図面に基づいて詳細に説明する。図1図2においては、本発明のシール構造を用いたバタフライバルブの一例を示しており、図3においては、図1のバタフライバルブの中央横拡大断面図を示している。以下、呼び径100Aのバタフライバルブの寸法例を示しながら説明する。
【0024】
図1のバタフライバルブ(以下、バルブ本体1という)は、例えば、半導体製造用プラントや食品関連の管路等に用いられる。バルブ本体1は、ジスク2、筒形状のボデー3、バックアップラバー4、上部ステム5a及び下部ステム5bからなるステム5を有し、ジスク2の表面と、バックアップラバー4を介してジスク2が回転可能に軸支されたボデー3の内周側に、シートライナー11、ジスクライニング12からなるライニング層10が設けられている。
【0025】
図5に示すように、バルブ本体1において、シートライナー11の直径方向対向位置に設けられた弁軸孔13にはステム5が軸装され、このステム軸装部14付近では、ステム5の回転操作時にジスク2側に設けられたボス部15とボデー3側に設けられたボス部シール面16とによりジスク2の天地がそれぞれシールされて、いわゆる天地シール(一次シール)のシール性が確保される。バルブ本体1の内周側には、図3に示すように、ジスク2の弁翼部20とボデー3の内周シール面21とが円周方向において圧接シールされることで、この弁翼部20側の周面シール性が確保され、弁座漏れが防がれる。
【0026】
図1図5において、バルブ本体1のジスク2は芯金22を有し、この芯金22は、例えば、ステンレス合金を材料として円盤状に形成される。芯金22には、例えば3mm程度の厚さで前記のジスクライニング12が被覆され、このジスクライニング12がジスク2表面すなわち接液面側のライニング層10となる。ジスクライニング12は、樹脂材料からなり、本実施形態では、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素樹脂により設けられ、高い耐食性や耐熱性を発揮可能になっている。ジスクライニング12は、芯金22の適宜位置に形成された貫通孔23を介してこの芯金22の表裏面の外周囲に一体に被覆され、芯金22からの離脱が防がれている。
【0027】
図2図4図5に示すように、ジスク2の天地には、後述するライニング円筒部26に続けて、上下部ステム5a、5bを挿入するための六角形状の角形穴部24がステム穴部として形成される。ステム穴部24には、上下部ステム5a、5bの各先端側に接続部25として形成された六角形状の角形部がそれぞれ挿入嵌合され、これにより、ジスク2がこれら上下部ステム5a、5bを介してボデー3内に回動可能に軸装される。このような取付構造により、上下部ステム5a、5bはボデー3に装着したジスク2に対して挿脱可能に設けられる。ジスク2側のステム穴部24、上下部ステム5a、5b側の接続部25は、互いに嵌合可能であれば六角形状以外の多角形状であってもよく、例えば、二面幅や四角軸、スプライン接続など、上下部ステムとジスクとを分解可能な各種の嵌合構造に設けることができる。
【0028】
図4図5において、ジスク2の天地であってジスクライニング12の上下部ステム5a、5bの挿入側には、このジスクライニング12と一体にライニング円筒部26が形成される。このライニング円筒部26により、上下部ステム5a、5bの接続側が軸方向に被覆される。
【0029】
図8の一部拡大断面図に示すように、ジスクライニング12の両面側には、ジスク2の中央側から先端側付近にかけて傾斜面12aが設けられ、この傾斜面12aに続けて弁翼部20側先端にテーパ面12bが所定角度で設けられる。両面側のテーパ面12bの間には、図において垂直方向にシール部12cが形成され、弁閉時にはこのシール部12cがシートライナー11に圧接シール可能になっている。
【0030】
本実施形態において、テーパ面12bは傾斜面12aから傾斜角度αの傾きにより設けられ、この傾斜角度αは20°に設けられている。この場合、垂直面側からの傾斜角度βは45°となるように設けられていることで、シール部12cの幅Waと芯金22の先端部22aの幅Wbとが略同じ幅Wに設けられている。例えば、芯金22の先端側の幅Wbが3mmである場合、シール部の幅Waも3mmに設定され、このようにジスク先端側を幅Wa=幅Wbとした構造により、シール部12cがシートライナー11との押圧により受ける力を、芯金22の先端部22aでシール部12cと同じ幅で受けることができ、この部位におけるシール面圧の低下を防いで、弁閉時には高いトルク性能とシール性とを兼ね備えたシール構造が設けられる。前記のジスクライニング12が形成されたジスク2の外径φD1(図3参照)は、本実施形態においてφ100mmの外径に設けられる。
【0031】
図1図2に示すように、上記したジスク2が装着されるボデー3は、上部ボデー3a、下部ボデー3bからなり、これらは、例えばダクタイル鋳鉄などの鋳鉄により成形され、ボルト27により相互に着脱可能に固定されている。上下部ボデー3a、3bのステム5軸装側には軸装穴28、28が設けられ、これら各軸装穴28に上下部ステム5a、5bがそれぞれ装着される。この軸装穴28に続けて、ジスク2の保持側には拡径状の装着凹部29、29が設けられ、この装着凹部29を介してシーリングブッシュ30、シール部材31、皿バネ32、プレート部材33が軸シール部材17として内装され、さらにベアリング34が装着される。
【0032】
上下部ボデー3a、3bの弁翼部20の周面シール側には、10mmの幅で装着溝35がバックアップラバー4の厚さよりも浅い深さに形成され、この装着溝35にバックアップラバー4が着脱可能に装着される。上下部ボデー3a、3bの両側には、ボルト27により互いを固着可能なボルト穴36が設けられている。
【0033】
図9に示したシートライナー11は、ボデー3の内周側に例えば3mmの肉厚でボデー3を被覆しながら装着され、このシートライナー11が接液面側のライニング層10となる。シートライナー11は、樹脂材料からなっており、本実施形態では、ジスクライニング12の場合と同様に、PFA等のフッ素樹脂により設けられている。シートライナー11は、ボデー内周側に装着される環状部40と、この環状部40の両端外周縁に突設形成されたフランジ部41とを有し、環状部40の上下部のステム5の装着位置に軸装筒部42、42が形成され、この軸装筒部42に上下部ステム5a、5bがそれぞれ挿入可能に設けられている。
【0034】
環状部40の内周における上下部ステム5a、5bとジスク2との軸着側には、前記のボス部シール面16がステム5の軸着方向に突設形成され、円周方向においてこのボス部シール面16を挟むようにして弁翼部20のシール部12cが当接する側に円弧状の前記内周シール面21が形成される。
内周シール面21は、流路軸芯方向と平行な平面であり、また、ジスク2のシール部12cは、円板状のジスク2と同芯状の球面の一部である、R状に形成されている。これら内周シール面21とシール部12cとにより構成される弁座シールは、両部位の接触面積が線状に細い、いわゆる「線シール」であるため、摩擦力が小さく、弁閉時の操作トルクの上昇を低く抑えることに寄与する。
【0035】
本実施形態における内周シール面21は、その軌跡のなす図6における内径φd1がφ100mmになるように設けられ、内周シール面21の幅Lは、図6(b)において10mmにそれぞれ設けられる。内周シール面21の背面側には、ボデー3との間にバックアップラバー4が配設され、このバックアップラバー4によりシートライナー11の内周シール面21が縮径する方向に押圧される。
【0036】
図3に示した左右2本のバックアップラバー4、4は、例えばフッ素ゴムによって装着溝35に装着可能な幅及び長さ寸法に形成され、図2において、シーリングブッシュ30を挟むようにボデー3の左右側にそれぞれ配設される。図7において、バックアップラバー4は、ジスク2の弁翼差値Sと略同じ大きさの幅に設けられ、弁翼シール側の内周シール面21の幅Lと略同じ長さに設けられる。図6(b)において、バックアップラバー4の厚さTは幅Lと同じ寸法に設けられ、本実施形態における幅L並びに厚さTは10mm程度に設けられる。ここで、弁翼差値Sは、ジスク2により弁閉シール可能な弁翼部20の傾きの限界値を示しており、ボデー3の端面から一端側の弁翼部20先端までの長さS1と、ボデー3の端面から他端側の弁翼部20先端までの長さS2との差により求められる。
【0037】
バックアップラバー4の厚さTは、前述のように幅Lと同じ寸法に設定されることにより、一定の潰し率に対して、適切なつぶし代が確保されている。仮に、厚さTが薄い場合には、寸法のバラツキにより潰し率の変動幅が大きくなり、弁閉時の操作トルクが急に上昇、または封止悪化のおそれが高い。
【0038】
一方、厚さTが厚すぎると、ボデー3の最大外径と最小外径が配管の寸法より制限される条件の下で装着溝35を深い寸法に設定しなければならず、ボデー耐圧強度を満足させるための最小肉厚を確保できないおそれがある。また、厚すぎると、熱膨張による影響が大きくなって、弁閉時の操作トルクが急に上昇するおそれがある。
従って、バックアップラバーの厚さTは、0.9L≦T≦1.1Lの範囲で設定するのが良く、T=LあるいはT≦1.1Lに設定するのが好ましい。
【0039】
このように、バックアップラバー4の厚さTを、バックアップラバー4の幅Lの寸法と略同寸法又はやや長く設け、従来技術のような偏平形状のバックアップラバー4に比して、幅の狭いバックアップラバー4を用いることにより、拡径が容易となり、弁閉時にシートライナー11の内径を前記変形前の内径に復元しやすくなることで、操作トルクの上昇を防ぐことができる。
【0040】
図17に示したバックアップラバー4の内周寸法xは、図2に示す装着溝35の中央径に相当する円弧長さyと略同寸法に形成されている。バックアップラバー4の端部4aは、その全面がシーリングブッシュ30の外周面に密着可能に斜めにカットされている。これらの構成により、装着溝35に装着されたバックアップラバー4が局部的にたわむことがなく、シートライナー11の内周シール面21の背面を均一に押圧するようになっている。
【0041】
ここで、本発明におけるシール構造の特徴を示すため、3つの状態に分けて説明する。
図6(a)に示すように、仮に、バックアップラバー4、ジスク2を装着しない状態でシートライナー11をボデー3に取付けた場合、すなわちシートライナー11の形成状態では、シートライナー11の内周シール面21の内径φd1がジスク外径φD1と同径のφ100mmに設定している。
【0042】
このとき、同図において、装着溝35の底面から内周シール面21までの距離HAは、およそ11.7mmになり、装着溝35の底面から内周シール面21の背面までの距離HBは、およそ8.7mmになる。従って、シートライナーの内周シール面21における肉厚は3mmである。この状態で、ボデー3とシートライナー11との間には、間隙部G´が設けられている。この間隙部G´は、弁閉時において、ジスク2によりシートライナー11を介して押圧されたバックアップラバー4の内周縁部における後述の膨出部37を、その隣接位置で収容する空間となる。
【0043】
図6(b)に示すように、仮に、ジスク2を装着することなくバックアップラバー4を設けたシートライナー11をボデー3に取付けた場合には、バックアップラバー4の弾性力によりシートライナー11が縮径変形し、その内周シール面21の内径、すなわち、いわゆるジスク2のシール部12cが圧接シールする中高部45の内径φd2は、φ100mmからφ97.4に縮径される。このとき、装着溝35の底面から内周シール面21までの距離HA1は、11.7mmから13mmに変化するが、シートライナー11の内周シール面21における肉厚3mmは維持される。
【0044】
なお、バックアップラバー4をボデー3に装着した際には、前述のようにこのバックアップラバー4の厚さTよりも装着溝35の深さが浅くなっているため、バックアップラバー4が内周側に突出した状態でシートライナー11の内周シール面21の背面に当接し、このシートライナー11とボデー3との間には間隙部Gが設けられる。すなわち、間隙部Gは、前述の間隙部G´に対し、縮径したシートライナー11が図6(a)の状態に復元するための空間を加えたものである。
【0045】
図3において、バックアップラバー4を介してシートライナー11を設けたボデー3にジスク2を取付けたバルブ本体1の場合、ジスク2の回転状態に応じて弁開時と弁閉時とではシートライナー11の内径が異なる。弁開時においては、バックアップラバー4の弾性力で縮径方向に変形することで、シートライナー11の中高部45の内径は、前述の通りジスク外径φD1よりも小径に変形して図6(b)の状態の内径φ97.4mmとなる。一方、図3に示した弁閉時においては、ジスク2がバックアップラバー4の弾性力に抗してシートライナー11を押圧することで、シートライナー11の中高部45の内径は、ジスクの押圧により変形する前の内径に復元し、この変形前の内径φd1は、図6(a)の状態と同じジスク外径φD1と同径のφ100mmになる。その際、装着溝35の底面から内周シール面21までの距離HAがおよそ11.7mm、装着溝35底面から内周シール面21の背面までの距離HBがおよそ8.7mmとなる。従って、シートライナー11の内周シール面21における肉厚3mmは維持される。
【0046】
このように、弁閉時においてジスク2がシートライナー11を押圧し、弁座シールを行う際には、シートライナー11の中高部45(内周シール面21)は、バックアップラバー4を装着しない状態、すなわち、シートライナー11の形成時の寸法に戻るだけであり、圧縮されることがないので、シートライナー11には永久ひずみが残らず良好な内周シール面21が保たれ、高い弁座シール性を長期に渡って維持することができる。
【0047】
しかも、弁閉操作時に必要なトルクは、バックアップラバー4を拡径方向に弾性変形させる力のみにより生ずるため、操作トルクが大幅に低減され、この低減された操作トルクを長期に渡って維持することができる。
そして、これらの特徴は、シートライナー11の肉厚に依存することがなく、例えば肉厚を4mm程度に厚くしたり、呼び径125Aを越える口径の大きいバタフライバルブであれば、肉厚を5mm以内に設定したとしても高い弁座シール性、低トルク性を維持することができる。
【0048】
上述したジスク2の弁翼部20とボデー3の内周シール面21とによる周面シール部位においては、図7において、ジスク2を閉状態から弁開側に回転させる場合、このジスク2が弁翼差値Sで回転する範囲(中高部45を設けた範囲)内では、前記のようにその内周シール面21と同じ幅寸法にバックアップラバー4が形成されていることで、このバックアップラバー4による弾性力が発揮されて高シール性が確保される。この弁翼差値Sの範囲においても、上記の場合と同様にシートライナー11の圧縮が防がれてシール性と操作トルク性とが確保される。
【0049】
何れの弁閉シール時の場合にも、弁閉時にシートライナー11の内径を変形前の内径に復元する際、バックアップラバー4が拡径に伴って幅方向に膨出する膨出部37が、ボデー3とシートライナー11との間に設けた間隙部G´に潰れるように変形し、この間隙部G´に収容される。このため、周方向に渡って均等な押圧シール力を発揮して、無理のないシール状態を維持できる。
【0050】
ここで、本発明のバタフライバルブのシール構造と比較するための比較例を図10に示す。このシートライナー50は、図10(a)において、仮に、バックアップラバー4、ジスク2が装着されない状態でボデー3に取付けられた場合に、装着溝35の底面から内周シール面51の背面までの距離HCが10mmになり、内周シール面51の内径φdA1がφ97.4mmなるような形状に設けられる。これによって、装着溝35に厚さ10mmのバックアップラバー4が装着されたとしても、このバックアップラバー4から縮径方向の力が加わることがない。
【0051】
図10(b)において、このシートライナー50を、バックアップラバー4を介してボデー3に取付けた場合には、バックアップラバー4の弾性力によりシートライナー50が縮径変形し、その内周シール面51の内径が縮径される。そして、ボデー3にジスク2を装着し、弁開時においては、内周シール面51の内径φdA2はφ97.4mmよりも縮径され、弁閉時においては、ジスク2の押圧によりこのジスク外径φD1の大きさφ100mmまで拡径される。
【0052】
このように、ジスク2による変形前の内径φdA1がジスク外径φD1よりも小さいシートライナー50の場合には、ジスク2を回転して弁閉状態にするときにバックアップラバー4の押圧変形に加え、シートライナー50を圧縮させる、すなわち、シートライナー50の厚みを減じて弾性変形させる力が余分に必要になる。しかも、このシートライナー50が厚くなるにつれて圧縮させる力も大きくなり、シートライナー50の厚さに比例して操作トルクも増大することになる。しかしながら、操作トルクには許容の限界があるため、シートライナー50の厚さをある程度以上の大きさに設定することは難しい。一方で、シートライナー50の厚さを薄くすると、耐透過性能が低下するために必要な耐薬品性や耐熱性を満足することが困難になる。
【0053】
なお、本実施形態における呼び径100Aのバタフライバルブと、図10に相当する同じ呼び径のバラフライバルブにおける弁閉操作時の最大トルクを実測したところ、本実施形態のバタフライバルブは、図10に相当する同じ呼び径のバタフライバルブに対し、約23%のトルク低減を達成できることが確認された。
【0054】
次に、シートライナー50のステム5の軸封シール部位においては、図9(b)に示すように各軸装筒部42の外周先端の外周テーパ面60が適宜の角度で設けられ、この外周テーパ面60により軸装筒部42がくさび状に形成され、この軸装筒部42の基部64が外周テーパ面60よりも肉厚に設けられている。さらに、軸装筒部42の高さは比較的短く設けられている。このような形状により、外周テーパ面60に外周方向から外力が加わったときには、この外周テーパ面60付近のみが変形し、軸装筒部42の根元付近の変形が防がれることで軸装筒部42の内周に形成されたステム挿入穴である弁軸孔13が変形することなくその真円度が確保される。
【0055】
各軸装筒部42の内周には、内周側に突設した環状の突状シール部61が設けられ、この突状シール部61がライニング円筒部26の外周に圧接シール可能に設けられている。これにより、この突状シール部61付近のシール力が高まり、軸装筒部42とライニング円筒部26との間の漏れが防がれる。
【0056】
軸装筒部42基部の外周側には、環状溝部62が凹むように形成されており、軸装筒部42はこの環状溝部62を介して、環状部40よりも突設するように形成される。環状溝部62を設けていることで、シートライナー11に力を加えて上下部ステム5a、5bの装着方向に環状部40及びフランジ部41を略楕円形状に変形させた場合にも、軸装筒部42がその影響を受けにくくなって変形が防がれる。
【0057】
図4図5において、前述した軸シール部材17であるシーリングブッシュ30、シール部材31、皿バネ32、プレート部材33が上記したシートライナー11に覆われた上下部ボデー3a、3bの各装着凹部29内に装着され、その内周に上下部ステム5a、5bがそれぞれ挿着された状態で位置決め保持される。ベアリング34は、上下部ボデー3a、3bの装着凹部29よりも遠心位置において、上下部ステム5a、5bと軸装穴28との間にそれぞれ環状溝部62側から介装可能に設けられる。このベアリング34により、上下部ステム5a、5bの回転がスムーズになる。
【0058】
皿バネ32は、例えば、表面処理を施したバネ鋼によって装着凹部29に装着可能な外径に設けられ、装着凹部29のシーリングブッシュ30よりも遠心側に配設される。皿バネ32とシーリングブッシュ30との間には、例えば、ステンレス鋼によって平板状の環状プレート部材33が設けられ、このプレート部材33を介して、皿バネ32による押圧力がシーリングブッシュ30の上面側に均一に伝達されて、前述の天地シール(一次シール)が機能する。
【0059】
シーリングブッシュ30は、例えば、カーボン含有PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂により装着凹部29に装着可能な略環状に形成され、シートライナー11と直接接するように装着凹部29に装着される。シーリングブッシュ30の外周テーパ面60との対向位置の内周下方側には、内周テーパ面63が形成され、これら内周テーパ面63と外周テーパ面60とは、垂直面に対して同じ傾斜角度θに設けられて面接触の当接により圧接シールする。本実施形態において、これら内周テーパ面63と外周テーパ面60との傾斜角度θは20°に設定されており、皿バネ32によりシーリングブッシュ30に押圧力が加わったときに、これら内周テーパ面63と外周テーパ面60とによるくさび効果によりステム径の方向に分力による押圧力が発生し、この押圧力で軸装筒部42をライニング円筒部26に密着させ、このライニング円筒部26がステム5外周面に密着することで軸シール(二次シール)が機能する。さらに、ライニング円筒部26の内周側に図示しない環状突起部を設けるようにしてもよく、この場合、軸シールの面圧を高めることができる。
【0060】
シーリングブッシュ30内周上方側のライニング円筒部26との間には、シール部材31が装着される。シール部材31は、耐食性金属により形成された金属製コイルスプリング65と、フッ素樹脂により形成された環状のカバー部材66とからなり、コイルスプリング65がカバー部材66に形成された環状の装着凹溝67に嵌め込まれて一体化される。この構成によって、シール部材31は、フッ素樹脂の低弾性力がコイルスプリング65の弾性力により補われつつ、放射方向に弾性シール力を発揮可能に設けられ、低圧時にはコイルスプリング65の弾性力により、高圧時には流体圧とコイルスプリング65の弾性力とによりそれぞれ高いシール力が発揮される。
【0061】
このシール部材31により、シーリングブッシュ30の内周テーパ面63を軸装筒部42の外周テーパ面60に密接させつつ、ライニング円筒部26内周側をステム5外周面に密着させて軸シール(三次シール)が機能し、耐薬品性並びに超高温・超低温に耐性を確保しつつ、上下部ステム5a、5bの回転時における動的シール性が確保される。なお、このシール部材31とライニング円筒部26との三次シールの位置を確保するためには、ライニング円筒部26の長さがこの位置まで到達する必要があり、これによってラインニング円筒部26の長さが決定する。
【0062】
本実施形態におけるシール部材31は、その開口部31aがジスク2の外方に向けて配置されている。これにより、万が一、上述の一次シール、二次シールの性能が低下して流体がシール部材31まで到達したとしても、シール部材31のコイルスプリング65が接液することなく三次シール機能を維持できる。このようなシール部材31の配置方向は、特に金属を腐食する可能性が高い液体を扱い場合に有効となる。
【0063】
図5に示すように、シーリングブッシュ30とシートライナー11の軸装筒部42との間には、第1空隙部71、第2空隙部72が形成される。これらの第1空隙部71、第2空隙部72を設けることで、ボデー3へのジスク2の装着時に軸シール力を高めるためにボデー3の締付け力を強くしたときに、ジスクライニング12側からシートライナー11に強い押圧力が加わって変形したライニング層10の肉を逃がすようになっている。具体的には、第1空隙部71が変形した軸装筒部42、ライニング円筒部26、シーリングブッシュ30の肉を逃がすための空間となり、第2空隙部72が変形したシーリングブッシュ30、軸装筒部42の肉を逃がすための空間となる。これらの第1空隙部71、第2空隙部72を設けていることで、シール部位同士の圧接力が必要以上に高められることがなく、操作トルクが抑えられながら高いシール性が発揮される。
【0064】
シートライナー11とシーリングブッシュ30との間には、第1空隙部71、第2空隙部72がそれぞれ設けられているため、皿バネ32により強い押圧力が加わったときに変形した肉が逃げ、回転時の抵抗が緩和されて操作トルクが減少する。さらに、部品が傷ついたり変形や破断したりすることが防がれ、上下側の双方の軸封シール部位における高いシール性が維持される。
【0065】
上述したように、バルブ本体1のシール構造が、弁開時におけるシートライナー11の内径がバックアップラバー4の弾性力でジスク外径φD1よりも小径に変形し、弁閉時のシートライナー11の内径φd1がバックアップラバー4の弾性力で小径に変形する前の内径であり、この変形前の内径φd1がジスク外径φD1と同径(公差を含む)又はジスク外径φD1よりやや大径に設けられていることにより、弁閉シール時にジスク2外周のシール部からシートライナー11を圧縮させる力が加わることがないため、高シール性を確保しながら操作トルクの上昇を防ぐことができる。しかも、樹脂ライニング層10の厚みを増加した場合にも、このライニング層10を圧縮させる力を加えることなく弁閉シール状態に操作できるため、一定の低い操作トルクで容易に開閉操作可能となる。
【0066】
この場合、ライニング層10がフッ素樹脂により設けられていることにより、耐薬品性及び耐熱性を向上しながら弁閉操作時の操作トルクを低く抑え、ジスク2のシール時の摩耗や劣化を抑えて耐久性を向上できる。
【0067】
なお、本実施形態においては、シートライナー11の内周シール面21の内径φd1をジスク外径φD1と同径のφ100mmに設定しているが、各部品にはそれぞれ±0.1mm程度の加工公差がある。
従って、
・ジスク2の外径φD1がφ99.9mmに対し、シートライナー11の内周シール面21の内径φd1がφ100.1mm
・ジスク2の外径φD1がφ100.1mmに対し、シートライナー11の内周シール面21の内径φd1がφ99.9mm
のように、シートライナー11の内周シール面21の内径φd1が、ジスク2の外径φD1と略同径のケースも弁閉シール時にシートライナー11が圧縮シールされることがない構造であり、本発明に含まれる。
また、ジスク2の外径φD1がφ100mmに対し、シートライナー11の内周シール面21の内径がφ102mmのように、シートライナー11の内周シール面21の内径φd1が、ジスク2の外径φD1よりも2%程度大径となる、やや大径のケースも弁閉シール時にシートライナー11が圧縮シールされることがない構造であり、本発明に含まれる。
【0068】
シートライナー11の内径φd1がジスク2の外径φD1よりも大径になるときの値が2%を超えると、シートライナー11がバックアップラバー4の弾性力で小径に変形する前後で径の変化が大きくなることから、耐久性に影響が出るおそれがある。
従って、シートライナー11がバックアップラバー4の弾性力で小径に変形する前の内径φd1は、ジスク2とのシール性やシートライナー11の耐久性を確保する観点から、ジスク外径φD1と略同径が好ましい。本実施形態におけるシートライナー11の前記変形前の内径φd1は、ジスク外径φD1に対して、99.9%〜102%に設定すればよく、より好ましくは、100%〜102%に設定すればよい。
【0069】
次に、上述したバルブ本体1の製造方法を説明する。
上述したバルブ本体1は、変形工程、芯合わせ工程、円筒部挿入工程、ステム接続工程、ボデー一体化工程、ステム位置決め工程を経ることで形成することができる。
図11においては、図12に示したジスク2外周側をシール可能な前述のシートライナー11を示しており、先ず、このシートライナー11を変形工程において変形させるようにする。
【0070】
図13図14においては、シートライナー11を外力により変形させた状態を示しており、常温状態で外力を加えることで楕円形に変形させたものである。この外力を加える前に、図13に示すように、ジスク2を全開状態まで回転させ、続いて、外力を加える際にはシートライナー11の外周をこのシートライナー11のフランジ部41と平行に、かつ、軸装筒部42の軸芯と直交方向からシートライナー11の内周シール面21の背面を万力の口金部90の間に挟んで押圧し、軸装筒部42の方向が長辺となるような楕円に変形させるようにする。
【0071】
この場合、楕円状に変形させたシートライナー11の内周シール面21の長辺R1がジスク2のライニング円筒部26を含む全長R2よりも長くなるように外方から押圧するようにしている。
この押圧作業は、作業者の手で直接行ってもよいが、万力やバイス(vice)など、シートライナーを楕円状に保持できる装置を用いるのが好ましい。このようにシートライナー11を楕円状に保持することで、後述する芯合わせ工程時のジスク2との芯合せ作業が容易になる。
【0072】
押圧時にシートライナー11に加える力の大きさとしては、シートライナー11の弾性力を維持できる状態、具体的には、後述するように押圧の解除により楕円から真円、又は真円に近い状態まで復元可能になる力、いわゆる弾性変形可能な範囲になるようにする。シートライナー11は、組立前に完全に真円である必要はなく、ボデー3に組込んでバルブ本体1を設けた後に真円状になればよい。
【0073】
前記したように、軸装筒部42を短く形成し、この軸装筒部42に外周テーパ面60を設けて軸装筒部42における基部64がより肉厚になるようにし、さらに、環状溝部62を設けていることで、口金部90でステムを挟んだときに弁軸孔13の変形が防がれ、その真円度が維持される。
【0074】
続いて、芯合わせ工程において、変形させた状態のシートライナー11内周にジスク2を装入する。この際、ジスク2側のライニング円筒部26の軸芯と、シートライナー11側の軸装筒部42の軸芯とを平行に、かつ、ジスク2と天地の各弁軸孔13の開口側との距離が同じになるようにジスク2の位置を保持しながら、ライニング円筒部26と軸装筒部42の軸芯とを芯合わせするようにジスク2をシートライナー11内周まで移動させる。なお、このとき予め弁軸孔13に図示しない円柱状の治具を挿入し、この治具により弁軸孔13を内周から補強してもよい。この治具の長さは、上下部ステム5a、5bに比較して短いものとする。
【0075】
芯合わせ工程の後には、円筒部挿入工程において、シートライナー11への外力を徐々に弱めるようにする。これにより、シートライナー11がその弾性力により自動的に楕円状から真円状に復元し、図15において、ジスク2の天地のライニング円筒部26がステム孔を構成する軸装筒部42に挿入されながらジスク2がシートライナー11に装着されることで、円筒部挿入工程が完了する。これにより、ジスク2のライニング円筒部26が、シートライナー11の軸装筒部42により支持された状態で、ジスク2とシートライナー11とが上下部ステム5a、5bを接続可能な状態でユニット化される。なお、ジスク2の天地側とシートライナー11との間には隙間が設けられていてもよく、この隙間には後述のボデー一体化工程で図5に示す軸シール部材17が組み合わせられ、これにより、ジスク2天地側の軸シール部位が構成される。
【0076】
ステム接続工程では、図16において、ステム穴部24に上下部ステム5a、5b先端側の接続部25を軸芯を合わせながら徐々に挿入し、これら上下部ステム5a、5bをジスク2に接続する。上下部ステム5a、5bには、円柱状部位と接続部25との境界部分の間にテーパ面部91が設けられ、このテーパ面部91により上下ステム5a、5bのジスク2への挿入時のライニング円筒部26の損傷を防止するようになっている。
これら上下部ステム5a、5bの挿入時には、この挿入に伴ってステム穴部24に空気が溜まるおそれがあるが、この空気を上下部ステム5a、5bとライニング円筒部26との間から逃がすことができる。
【0077】
ボデー一体化工程においては、軸シール部材17を装着した上下部ボデー3a、3bで上下部ステム5a、5bが接続されたジスク2を内蔵したシートライナー11を挟み込んだ状態で、上下部ステム5a、5bをジスク2に接続してこの上下部ステム5a、5bでジスク2を回転操作可能にした状態で、上下部ボデー3a、3bを一体化する。
【0078】
これを詳述すると、先ず、予め上部ボデー3aの装着凹部29に軸シール部材17を装着する。その際、ベアリング34を取付けた装着凹部29の奥側から、皿バネ32、シール部材31、プレート部材33、シーリングブッシュ30の順序に配設する。
このように軸シール部材17を装着した上部ボデー3aに、上下部ステム5a、5bを接続したジスク2を内蔵したシートライナー11を組込むようにする。これにより、シートライナー11の上半分が上部ボデー3aに組み込まれる。
【0079】
一方、下部ボデー3bに対しても、上部ボデー3aと同様に、予め装着凹部29に軸シール部材17を装着しておく。
この状態で、上部ボデー3aに組み込まれたシートライナー11の下半分側を下部ボデー3bに組み込むようにして、これら上部ボデー3aと下部ボデー3bとにより、シートライナー11を挟み込んだ状態にする。
【0080】
この状態で、図2に示すように上下部ボデー3a、3bのボルト穴36にボルト27を螺着して上下部ボデー3a、3bを互いに固定する。これにより、上下部ボデー3a、3bが螺着方向に締付けられて皿バネ32が圧縮され、上述した皿バネ32の押圧力がシーリングブッシュ30に働くことで、ジスク2の天地側のシートライナー11とジスク2との一次シールである天地シールと、軸装筒部42内周がライニング円筒部26外周に密着してこのライニング円筒部26がステム5外周面に密着シールする二次シールである軸シールと、シール部材31による三次シールである軸シールとが、上下部ステム5a、5bの軸着部位に複合的に機能し、この軸封シール機能とともに前述した弁翼側のシール機能が相乗的に発揮されることで、組立後のジスク2全周面におけるシール性を高く確保することができる。
【0081】
ステム位置決め工程では、上部ステム5a、下部ステムを5bを、それぞれ上部ボデー3a、下部ボデー3bに回転可能な状態で位置決め固着することでこれらの飛び出しを防止する。
【0082】
図2において、上部ステム5aについては、防塵用のOリング80、スラストワッシャ81、C型止め輪82を介して装着する。この場合、上部ステム5aをジスク2に挿入した状態において、この上部ステム5aの上部外周の当該位置にOリング80、スラストワッシャ81を装着し、これらの上からC型止め輪82を上部ステム5aに係合する。この状態で、C型止め輪82の上方のスラストワッシャ81を介して被蓋用のグランドプレート83を配置し、このグランドプレート83を図示しないネジでバルブ本体1の上方から固定する。このように上部ボデー3a側を組立てることにより、スラストワッシャ81を介したC型止め輪82とグランドプレート83とによる上部ステム5aの飛び出し防止構造を設けることができる。
【0083】
下部ステム5bについては、Oリング80、スラストワッシャ81、被蓋用エンドプレート84を介して装着する。この場合、スラストワッシャ81の外周にOリング80を装着し、スラストワッシャ81を下部ボデー3bに形成した軸装穴28に内装し、下部ステム5bのバルブ外方側端面に対向配置する。この状態で、エンドプレート84で軸装穴28を塞ぐようにし、このエンドプレート84を固着ボルト85でバルブ本体1の下方から固定する。これにより下部ステム5b側の軸装が完了する。
【0084】
また、バルブ本体1を分解する場合には、前述した組立ての場合と逆の手順によって実施すればよい。この場合、上下部ボデー3a、3bをシートライナー11から取外した後には、以下のようにしてシートライナー11を分解すればよい。
【0085】
シートライナー11の上下部において、このシートライナー11からシーリングブッシュ30を徐々に抜き出すようにして取り外す。上下ステム5a、5bを取り外す場合、これら上下ステム5a、5bをそれぞれ把持しながら徐々にジスク2の弁軸孔13から順次抜き出すようにする。
【0086】
上下ステム5a、5bの抜き出し後に、ジスク2を回転させて図13に示すように全開位置の状態にし、シートライナー11の流路部外周をフランジ部41と平行に、かつ、軸装筒部42の軸芯と直交方向から押圧し、この軸装筒部42方向が長辺となるような楕円に変形させる。この押圧を楕円状に変形したシートライナー11の長辺がジスク2の高さを上回るまで続け、軸装筒部42の軸芯とライニング円筒部26の軸芯とを平行に、かつ、ジスク2の高さと軸装筒部42同士までの距離とを同じ程度にしながら、徐々にジスク2をシートライナー11から取外すようにする。以上のようにして分解することが可能になる。
【0087】
前述したように、シートライナー11に常温状態で外力を加えて楕円状に変形させた状態で、このシートライナー11内周に芯合わせ状態でジスク2を装入し、シートライナー11を楕円状から真円状に復元させてライニング円筒部26を軸装筒部42に挿入させてジスク2をシートライナー11に装着し、次いで、ジスク2のステム穴部24に上下部ステム5a、5bの接続部25を徐々に挿入してこれらを接続し、軸シール部材17を装着した上下部ボデー3a、3bでジスク2を内蔵したシートライナー11を挟み込んで一体化するようにしてバルブ本体1を製造していることで、シートリング11のボス部15付近のシール性を向上しつつ、シートライナー11やステム5の樹脂被覆部の損傷を防ぎながら容易にジスク2を装着して組立てできる。しかも、分解作業についても、組立ての場合と同様に簡単に実施可能となる。
【0088】
この場合、シートライナー11を楕円状に変形させ、このシートライナー11の内周シール面21の長辺R1をジスク2の全長R2よりも長くなるように外方から押圧することで、ジスク2がシートライナー11に接触することを確実に防止しつつ、シートライナー11にジスク2を着脱してボス15部付近の軸封シール性を確保する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17