【文献】
SEHGAL A. et al.,Abstract No. 188 : Developing an RNAi Therapeutic for Liver Disease Associated with Alpha-1-Antitrypsin Deficiency,Hepatology,Vol.56 Issue S1,p.286A-287A
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該修飾ヌクレオチドの少なくとも1が、3’末端デオキシチミン(dT)ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-デオキシ-修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’-アミノ-修飾ヌクレオチド、2’-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、非天然塩基を含むヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基と結合した末端ヌクレオチドからなる群から選ばれる、請求項1に記載の2本鎖RNAi物質。
該ヌクレオチドの修飾が、LNA、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-アルキル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-フルオロ、2’-デオキシ、2’-ヒドロキシル、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1記載の2本鎖RNAi物質。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】ヒトAATのZ-AAT型を発現するトランスジェニックマウスにおける示したsiRNAのin vivo効果と反応の持続時間を示すグラフである。
【
図2】低IC50値の5つのsiRNAのin vivo効果を示す。ヒトZ-AAT対立遺伝子を発現するトランスジェニックマウスに10mg/kgのsiRNA2本鎖を第0日に注射し、血清ヒトAATを投与後21日間追跡した(
図2A)。各点は3匹のマウスの平均を示し、誤差バーは標準偏差を示す。
図2Bは各群のGAPDHについて正規化したhAAT mRNAレベルを示す。バーは平均を示し、誤差バーは標準偏差を示す。
【
図3】用量反応性の持続的AAT抑制を示す。
図3Aは、特に、トランスジェニックマウスに皮下投与した種々の濃度のAD-59054で達成された血清hAATタンパク質レベルの最大ノックダウンを示す有効性曲線を示す。各点は3匹のマウスの平均を示し、誤差バーは標準偏差を示す。AAT siRNAの0.3、1、3または10mg/kgの単回投与後のノックダウンの持続時間を
図3Bに示す。hAATレベルを各動物につき3回の前採血の平均値に対して正規化した。PBS群を血清hAATレベルの変動性を表すためのコントロールに用いる。各データ点は3匹のマウスの平均を示し、誤差バーは標準偏差を示す。
図3Cでは、動物にAD-59054を0.5mg/kgの用量で1週間に2回投与した。各データ点は4動物からの平均相対血清hAATであり、誤差バーは標準偏差を示す。
【
図4】Z-AATの減少に伴う腫瘍発生率の減少を示す。
図4Aは、線維症肝の老齢マウスにPBSまたは10mg/kg siRNA2本鎖AD58681を隔週(Q2W)で11用量皮下投与し、最終投与後7日に屠殺する試験計画を示す。
図4Bはコントロールおよび処置群の肝臓hAAT mRNAレベルを示す。
図4Cはコントロールおよび処置群の肝臓Col1a2 mRNAレベルを示す。
図4Dはコントロールおよび処置群の肝臓PtPrc mRNAレベルを示す。
【
図5】Z-AATの減少に伴う腫瘍発生率の減少を示す。血清サンプルを
図4Aの試験計画に基づいて処置したマウスから採取し、hAAT抑制の程度をモニターした。
図5Aは初回投与後の血清hAATタンパク質レベルを示す。
図5Bおよび
図5CはPBSまたはAAT siRNAで処置した2同腹子からの肝切片のPAS染色を示す。より暗い色のドットは小球またはZ-AAT凝集物を示す。
【
図7】AD-59054、AD-61719、またはAD-61444を1mg/kg(7A)または3mg/kg(7B)の用量で単回投与後の非ヒト霊長類におけるAATのノックダウンの持続時間を示すグラフである。各データ点は3匹の動物の平均であり、誤差バーは標準偏差を示す。
【
図8】
図8AはホモサピエンスSerpina1転写産物変異体1のヌクレオチド配列(配列番号1)を示す;
図8BはホモサピエンスSerpina1転写産物変異体3のヌクレオチド配列(配列番号2)を示す;
図8CはホモサピエンスSerpina1転写産物変異体2のヌクレオチド配列(配列番号3)を示す;
図8DはホモサピエンスSerpina1転写産物変異体4のヌクレオチド配列(配列番号4)を示す;
図8EはホモサピエンスSerpina1転写産物変異体5のヌクレオチド配列(配列番号5)を示す;
図8FはホモサピエンスSerpina1転写産物変異体6のヌクレオチド配列(配列番号6)を示す;
図8GはホモサピエンスSerpina1転写産物変異体7のヌクレオチド配列(配列番号7)を示す;
図8HはホモサピエンスSerpina1転写産物変異体8のヌクレオチド配列(配列番号8)を示す;
図8IはホモサピエンスSerpina1転写産物変異体9のヌクレオチド配列(配列番号9)を示す;
図8JはホモサピエンスSerpina1転写産物変異体10のヌクレオチド配列(配列番号10)を示す;
図8KはホモサピエンスSerpina1転写産物変異体11のヌクレオチド配列(配列番号11)を示す;
図8LはアカゲザルSerpina1のヌクレオチド配列(配列番号12)を示す;
図8MはアカゲザルSerpina1転写産物変異体6のヌクレオチド配列(配列番号13)を示す;
図8NはアカゲザルSerpina1転写産物変異体4のヌクレオチド配列(配列番号14)を示す;
図8Oは配列番号1の逆相補物(配列番号15)を示す;
図8Pは配列番号2の逆相補物(配列番号16)を示す;
図8Qは配列番号3の逆相補物(配列番号17)を示す;
図8Rは配列番号4の逆相補物(配列番号18)を示す;
図8Sは配列番号5の逆相補物(配列番号19)を示す;
図8Tは配列番号6の逆相補物(配列番号20)を示す;
図8Uは配列番号7の逆相補物(配列番号21)を示す;
図8Vは配列番号8の逆相補物(配列番号22)を示す;
図8Wは配列番号9の逆相補物(配列番号23)を示す;
図8Xは配列番号10の逆相補物(配列番号24)を示す;
図8Yは配列番号11の逆相補物(配列番号25)を示す;
図8Zは配列番号12の逆相補物(配列番号26)を示す;
図8AAは配列番号13の逆相補物(配列番号27);そして
図8ABは配列番号14の逆相補物(配列番号28)を示す。
【0093】
(発明の詳細な説明)
本発明は、例えば、1本鎖および2本鎖オリゴヌクレオチド、例えばRNAi物質、例えば2本鎖iRNA物質、標的化Serpina1などの物質を含む組成物を提供する。Serpina1発現を阻害し、Serpina1関連疾患、例えば肝疾患、例えば慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、および/または肝細胞癌を治療するための本発明の組成物の使用方法も開示する。
I. 定義
【0094】
本発明をより容易に理解することができるように、特定の用語を最初に定義する。さらに、パラメーターの値または値の範囲を記載するときは記載した値の中間の値と範囲も本発明の部分であることを意図するものとすることに留意すべきである。
【0095】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では冠詞の文法的対象の1またはそれ以上(すなわち少なくとも1)を表すのに用いる。例として、「an element(要素)」は1要素または1より多い要素、例えば複数の要素を意味する。
【0096】
用語「(を)含む」は、本明細書では用語「限定されるものではないが〜を含む」を意味するために用い、それと互換性に用いる。
【0097】
用語「または」は、本明細書では文脈が明確にそうでないと示さない限り用語「および/または」を意味するために用い、それと互換性に用いる。
【0098】
本明細書で用いている「Serpina1」は、セルピンペプチダーゼ阻害剤、クレードA、メンバー1遺伝子またはタンパク質を表す。Serpina1はα-1-アンチトリプシン、α-1-アンチトリプシン、AAT、プロテアーゼ阻害剤1、PI、PI1、アンチエラスターゼ、およびアンチトリプシンとしても知られる。
【0099】
用語Serpina1は以下のものを含む:ヒトSerpina1、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えばGenBank登録番号GI:189163524(配列番号1)、GI:189163525(配列番号2)、GI:189163526(配列番号3)、GI:189163527(配列番号4)、GI:189163529(配列番号5)、GI:189163531(配列番号6)、GI:189163533(配列番号7)、GI:189163535(配列番号8)、GI:189163537(配列番号9)、GI:189163539(配列番号10)、および/またはGI:189163541(配列番号11)で示される;アカゲザルSerpina1、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えばGenBank登録番号GI:402766667(配列番号12)、GI:297298519(配列番号13)、および/またはGI:297298520(配列番号14) で示される;マウスSerpina1、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えばGenBank登録番号GI:357588423、および/またはGI:357588426で示される;およびラット、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えばGenBank登録番号GI:77020249で示される。Serpina1 mRNA配列のさらなる例は、例えばGenBankおよびOMIMを用いて容易に利用可能である。
【0100】
Serpina1の120以上の対立遺伝子が同定されており、「M」対立遺伝子は、野生型または「正常」対立遺伝子(例えば「PIM1-ALA213」(PI、M1Aとしても知られる)、「PIM1-VAL213」(PI、MIVとしても知られる)、「PIM2」、「PIM3」、および「PIM4」)と考えられる。さらなる変異体は、例えばA(1)ATVarデータベース(例えば、Zaimidou、S.、et al.(2009) Hum Mutat. 230(3):308-13およびwww.goldenhelix.org/A1ATVar参照)にみることができる。
【0101】
本明細書で用いている用語「Serpina1欠乏対立遺伝子」は、適切にホールドされていないタンパク質を産生する変異体対立遺伝子を表し、細胞内で凝集することがあり、肝臓の合成部位から体内の作用部位に適切に輸送されない。
【0102】
典型的なSerpina1欠乏対立遺伝子は、「Z対立遺伝子」、「S対立遺伝子」、「PIM(Malton)対立遺伝子」、および「PIM(Procida)対立遺伝子」を含む。
【0103】
本明細書で用いている用語「Z対立遺伝子」、「PIZ」、および「Z-AAT」は、関連コドンがGAGからAAGに変化した結果342位のアミノ酸がグルタミンからリジンに変化しているSerpina1の変異体対立遺伝子を表す。Z対立遺伝子のホモ接合対象は「PIZZ」ということができる。Z-AAT突然変異は、Serpinal欠乏患者の95%を占め、100,000人のアメリカ人と世界で300万人の個体に存在すると推定される。Z対立遺伝子は、白人では多形頻度に達し、アジア人や黒人にはないか希である。ホモ接合ZZ表現型は肺気腫と肝疾患両方の高いリスクと関連がある。Z-AATタンパク質は、小胞体中で正しくホールドされず、凝集し、分泌を減少させるループシートポリマー、アンホールドタンパク質反応の誘発、アポトーシス、小胞体過負荷反応、自食作用、ミトコンドリアストレス、および肝細胞機能変化をもたらす。
【0104】
本明細書で用いている用語「PIM(Malton)」および「M(Malton)-AAT」は、成熟タンパク質の51または52位の隣接フェニルアラニン残基の1つが欠失しているSerpina1の変異体対立遺伝子を表す。この1アミノ酸の欠失がβシート、B6の1本鎖を短くし、肝臓における正常なプロセシングと分泌を妨げ、肝細胞封入体と肝臓からの該タンパク質の分泌障害と関連する。
【0105】
本明細書で用いている用語「PIS」は、264位のグルタミン酸がバリンで置換されているSerpina1の変異体対立遺伝子を表す。この変異体タンパク質の大部分は細胞内で分解するが、白人ポピュレーションではPIS対立遺伝子が高頻度にみられ、Zまたはヌル対立遺伝子を有する化合物ヘテロ接合体がしばしば生じる。
【0106】
本明細書で用いている「標的配列」は、一次転写産物のRNAプロセシングの産物であるmRNAを含む、Serpina1遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の隣接部分を表す。
【0107】
本明細書で用いている用語「配列を含む鎖」は、標準的ヌクレオチド命名法を用いて表す配列で示されるヌクレオチド鎖を含むオリゴヌクレオチドを表す。
【0108】
「G」、「C」、「A」、および「U」は、それぞれ一般的に、それぞれ塩基としてグアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルを含むヌクレオチドを表す。「T」および「dT」は、本明細書では互換性に用い、核酸塩基がチミン、例えばデオキシリボチミン、2’-デオキシチミジン、またはチミジンであるデオキシリボヌクレオチドを表す。しかしながら、用語「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」または「デオキシリボヌクレオチド」は、さらに以下に詳述する修飾ヌクレオチド、またはリボヌクレオチド部分も表すことができると理解されよう。当業者は、グアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルは、オリゴヌクレオチドの塩基対合特性を実質的に変化させない他の部分と置換することができ、そのような置換部分を有するヌクレオチドを含むことを十分理解している。例えば、限定されるものではないが、イノシンをその塩基として含むヌクレオチドはアデニン、シトシン、またはウラシルを含むヌクレオチドと塩基対合することができる。したがって、ウラシル、グアニン、またはアデニンを含むヌクレオチドは、本発明のヌクレオチド配列において例えばイノシンを含むヌクレオチドで置換しうる。そのような置換部分を含む配列は本発明の態様である。本明細書で互換性に用いている用語「iRNA」、「RNAi物質」、「iRNA物質」、「RNA干渉物質」は、該用語が本明細書で定義しているRNAを含む、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)経路を介してRNA転写産物の標的とする開裂を仲介する物質を表す。iRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られるプロセスを介するmRNAの配列特異的分解を指示する。iRNAは、細胞、例えば哺乳動物対象などの対象中の細胞中のSerpina1の発現を調節、例えば阻害する。
【0109】
ある態様において、本発明のRNAi物質は、標的RNA配列、例えばSerpina1標的mRNA配列と相互作用して標的RNAの開裂を指示する1本鎖RNAを含む。理論に縛られることを望まないが、細胞中で誘導される長い2本鎖RNAは、Dicerとして知られるタイプIIIエンドヌクレアーゼによりsiRNAに分解する(Sharp et al.(2001) Genes Dev. 15:485)。Dicer、リボヌクレアーゼ-III様酵素は、dsRNAをRNAの特徴的2塩基3’オーバーハングと干渉する19〜23塩基対に短くプロセシングする(Bernstein、et al.、(2001) Nature 409:363)。次に、siRNAをRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み込み、1またはそれ以上のヘリカーゼがsiRNA2本鎖を解いて相補的アンチセンス鎖が標的認識をもたらすのを可能にする(Nykanen、et al.、(2001) Cell 107:309)。適切な標的mRNAと結合すると、RISC内の1またはそれ以上のエンドヌクレアーゼは標的を開裂しサイレンシングを誘導する(Elbashir、et al.、(2001) Genes Dev. 15:188)。したがって、ある局面において、本発明は、細胞内に生じた、標的遺伝子、すなわちSerpina1遺伝子のサイレンシングをもたらすRISC複合体の形成を促進する1本鎖RNA(siRNA)に関する。したがって、用語「siRNA」は、本明細書では上記RNAiについても用いる。
【0110】
別の態様において、該RNAi物質は、細胞または生物に導入して標的mRNAを阻害する1本鎖siRNAでありうる。1本鎖RNAi物質はRISCエンドヌクレアーゼArgonaute2と結合し、次いで標的mRNAを開裂する。該1本鎖siRNAは、一般的には15〜30ヌクレオチドであり、化学的に修飾されている。1本鎖siRNAの設計と試験は、米国特許No. 8,101,348およびLima et al.、(2012) Cell 150:883-894に記載されており、これらの全内容は本明細書の一部を構成する。本明細書に記載のあらゆるアンチセンスヌクレオチド配列を本明細書に記載のまたはLima et al.、(2012) Cell 150;:883-894に記載の方法により化学的に修飾された1本鎖siRNAとして用いることができる。
【0111】
さらに別の態様において、本発明は、Serpina1を標的とする1本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子を提供する。「1本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子」は標的mRNA(すなわちSerpina1)内の配列と相補的である。1本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、該mRNAに対する塩基対合および翻訳機構の物理的妨害により化学量論的に翻訳を阻害することができる(Dias、N. et al.、(2002) Mol Cancer Ther 1:347-355参照)。あるいはまた、該1本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、標的にハイブリダイズし、RNaseH開裂事象により標的を開裂することにより標的mRNAを阻害する。該1本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、長さ約10〜約30ヌクレオチドであり、標的配列と相補的な配列を有しうる。例えば、該1本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、本明細書に記載のアンチセンスヌクレオチド配列のいずれか由来の少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上の連続ヌクレオチドである配列、例えば、表1、2、5、7、8、または9のいずれかに記載の配列を含むか、または本明細書に記載の標的部位のいずれかと結合しうる。該1本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は修飾RNA、DNA、またはその組み合わせを含みうる。
【0112】
別の態様において、本発明の組成物、用途、および方法に用いるための「iRNA」は2本鎖RNAであり、本明細書では「2本鎖RNAi物質」、「2本鎖RNA(dsRNA)分子」、「dsRNA物質」、または「dsRNA」という。用語「dsRNA」は、標的RNA、すなわちSerpina1遺伝子に対して「センス」および「アンチセンス」方向という2つのアンチパラレルおよび実質的に相補的な核酸鎖を含む2本鎖構造を有するリボ核酸分子の複合体を表す。本発明のある態様において、2本鎖RNA(dsRNA)は、本明細書でRNA干渉またはRNAiという翻訳後遺伝子サイレンシングメカニズムにより標的RNA、例えばmRNAの分解を引き起こす。
【0113】
一般的には、dsRNA分子の各鎖の大部分のヌクレオチドはリボヌクレオチドであるが、本明細書に詳述するように、各または両鎖は、1またはそれ以上の非リボヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチド、および/または修飾ヌクレオチドを含むことができる。さらに、本明細書で用いている「RNAi物質」は化学修飾を含むリボヌクレオチドを含むことがあり、RNAi物質は複数のヌクレオチドに実質的な修飾を含みうる。そのような修飾は、本明細書に記載のまたは当該分野で知られたすべてのタイプの修飾を含みうる。siRNAタイプの分子に用いるあらゆるそのような修飾は、この明細書および特許請求の範囲の目的で「RNAi物質」に含まれる。
【0114】
2本鎖構造を形成する2本の鎖は、1本の大きなRNA分子の異なる部分であるか、または異なるRNA分子でありうる。2本の鎖が1本の大きな分子の部分であり、1本鎖の3’末端と2本鎖構造を形成する各他の鎖の5’末端の間がヌクレオチドの連続した鎖で連結している場合は、連結するRNA鎖を「ヘアピンループ」という。2本の鎖が1本鎖の3’末端と2本鎖構造を形成する各他の鎖の5’末端の間がヌクレオチドの連続した鎖以外の手段で共有結合している場合は、連結構造を「リンカー」という。RNA鎖は、同じかまたは異なる数のヌクレオチドを有しうる。塩基対の最大数は、dsRNAから2本鎖で存在するあらゆるオーバーハングを引いた最小鎖のヌクレオチド数である。2本鎖構造に加えて、RNAi物質は1またはそれ以上のヌクレオチドオーバーハングを含みうる。
【0115】
ある態様において、本発明のRNAi物質は、標的RNA配列、例えばSerpina1標的mRNA配列と相互作用して標的RNAの開裂を指示する24〜30ヌクレオチドのdsRNAである。理論に縛られることを望まないが、細胞中に導入される長い2本鎖RNAは、Dicerとして知られるタイプIIIエンドヌクレアーゼによりsiRNAに分解する(Sharp et al.(2001) Genes Dev. 15:485)。Dicer、リボヌクレアーゼ-III様酵素は、特徴的な2塩基の3’オーバーハングを有するRNAと干渉し、dsRNAを19〜23塩基対の短さにプロセシングする(Bernstein、et al.、(2001) Nature 409:363)。次に、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれ、1またはそれ以上のヘリカーゼがsiRNA2本鎖を解き、相補的アンチセンス鎖が標的認識を導くのを可能にする(Nykanen、et al.、(2001) Cell 107:309)。適切な標的mRNAと結合すると、RISC内の1またはそれ以上のエンドヌクレアーゼは、標的を開裂してサイレンシングを誘導する(Elbashir、et al.、(2001) Genes Dev. 15:188)。本明細書で用いている「ヌクレオチドオーバーハング」は、RNAi物質の1本鎖の3’末端が他の鎖の5’末端の間末端を超えて伸張している(または逆もある)ときにRNAi物質の2本鎖構造から突き出ているヌクレオチドを表す。「平滑」または「平滑末端」は、2本鎖RNAi物質の末端に不対ヌクレオチドがない、すなわちヌクレオチドオーバーハングがないことを意味する。「平滑末端」RNAi物質は、その全ての長さにわたり2本差である、すなわち該分子のいずれの末端にヌクレオチドオーバーハングがないdsRNAである。本発明のRNAi物質は、1末端にヌクレオチドオーバーハング(すなわち、1オーバーハング末端と1平滑末端を有する物質)または両末端にヌクレオチドオーバーハングを有するRNAi物質を含む。
【0116】
用語「アンチセンス鎖」は、標的配列(例えば、ヒトSerpina1 mRNA)と実質的に相補的な領域を含む2本鎖RNAi物質の鎖を表す。本明細書で用いている用語「Serpina1をコードするmRNAの部分と相補的な領域」は、Serpina1 mRNA配列の部分と実質的に相補的なアンチセンス鎖の領域を表す。相補的な領域が標的配列と完全に相補的ではない場合は、ミスマッチは末端領域でほぼ許容され、存在する場合は、一般的には末端領域、または例えば5’および/または3’末端の8、7、6、5、4、3、または2ヌクレオチド以内の領域にある。
【0117】
下記実施例に示すように、驚くべきことに、本明細書に記載のRNAi物質のアンチセンス鎖のシード領域中の1ヌクレオチドミスマッチがCを除くすべての塩基で許容されることをみいだした。「シード領域」は、標的mRNAの認識に関与するRNAi物質のアンチセンス鎖中の領域であり、例えばアンチセンス鎖の5’末端からヌクレオチド2〜8に対応する。シード領域をアニールし、次いでArgonauteは、組み込んだアンチセンス鎖の5’末端から10ヌクレオチドの相補的mRNA配列を核酸分解して、標的mRNAの開裂が生じる。したがって、ある態様において、本発明のRNAi物質のアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域に1ヌクレオチドミスマッチ、例えばアンチセンス鎖の5’末端末端から2〜8位のいずれかにミスマッチを含む。
【0118】
本明細書で用いている用語「センス鎖」は、アンチセンス鎖の領域と実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を表す。
【0119】
本明細書で用いている用語「開裂領域」は、開裂部位の直近に位置する領域を表す。開裂部位は開裂が起きる標的上の部位である。ある態様において、開裂領域は、開裂部位のいずれかの末端と直近の3塩基を含む。ある態様において、開裂領域は開裂部位のいずれかの末端と直近の2塩基を含む。ある態様において、開裂部位は、具体的には、アンチセンス鎖のヌクレオチド10および11によって結合した部位に生じ、開裂部位はヌクレオチド11、12、および13を含む。
【0120】
特記しないかぎり本明細書で用いている用語「相補的な」は、第2のヌクレオチド配列に関連して第1のヌクレオチド配列を説明するのに用いるときは、当業者が理解するであろうように、ある条件下で第2ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイズして2本鎖構造を形成する第1ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの能力を表す。そのような条件は、例えばストリンジェント条件であることができ、該ストリンジェント条件は400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃または70℃、12〜16時間、次いで洗浄を含みうる。生物内部で遭遇することがある生理的関連条件などの他の条件を適用することができる。例えば、相補的配列は、核酸の関連機能を生じさせるのに十分である(例えばRNAi)。当業者は、ハイブリダイズしたヌクレオチドの最終的な応用に応じて2つの配列の相補性を試験するのに最も適した一連の条件を決定することができるだろう。
【0121】
配列は、第1および第2ヌクレオチド配列の全長にわたり第1ヌクレオチド配列のヌクレオチドと第2ヌクレオチド配列のヌクレオチドが塩基対になるときにそれぞれに対して「完全に相補的」でありうる。しかしながら、第1配列が本明細書において第2配列に対して「実質的に相補的」という場合は、2つの配列は、完全に相補的でありうるか、またはその最終的応用に最も関連した条件下でハイブリダイズする能力を保持しながらハイブリダイゼーションにおいて1またはそれ以上の、一般的には4、3、または2以下のミスマッチ塩基対を形成しうる。しかしながら、2つのオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションにおいて1またはそれ以上の1本鎖オーバーハングを形成するよう設計すると、そのようなオーバーハングは、相補性の決定に関してミスマッチとみなさない。例えば、長さ21ヌクレオチドの1オリゴヌクレオチドと長さ23ヌクレオチドの別のオリゴヌクレオチドを含むdsRNAは、より長いオリゴヌクレオチドがより短いオリゴヌクレオチドと完全に相補的な21ヌクレオチドの配列を含む場合は本明細書に記載の目的においてまだ「完全に相補的」ということができる。
【0122】
本明細書で用いている「相補(的)」配列は、そのハイブリダイズ能力に関する上記要求が満たされる限り、非ワトソンクリック塩基対および/または非天然および修飾ヌクレオチドから形成される塩基対も含むかまたはそれから完全に形成されうる。そのような非ワトソンクリック塩基対には、限定されるものではないが、G:U WobbleまたはHoogstein塩基対合を含む。
【0123】
本明細書において用語「相補的な」、「完全に相補的な」、および「実質的に相補的な」は、それが使用される文脈から理解されるように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖またはdsRNAと標的配列のアンチセンス鎖の塩基整合についてについて用いられうる。
【0124】
本明細書で用いているメッセンジャーRNA(mRNA)「の少なくとも部分と実質的に相補的な」は、5’UTR、オープンリーディングフレーム(ORF)、または3’UTRを含む目的のmRNA(例えば、Serpina1をコードするmRNA)の隣接部分と実質的に相補的なポリヌクレオチドを表す。例えば、ポリヌクレオチドは、配列がSerpina1をコードするmRNAの非断続部分と実質的に相補的である場合はSerpina1 mRNAの少なくとも部分と相補的である。
【0125】
本明細書で用いている用語「阻害する」は、「減少させる」、「サイレンシングする」、「下方調節する」、「抑制する」、および他の同様の用語と互換性に用い、あらゆるレベルの阻害を含む。
【0126】
本明細書で用いている用語「Serpina1の発現を阻害する」は、あらゆるSerpina1遺伝子(例えばマウスSerpina1遺伝子、ラットSerpina1遺伝子、サルSerpina1遺伝子、またはヒトSerpina1遺伝子)および変異体(例えば天然の変異体)、またはSerpina1遺伝子の突然変異体の発現の阻害を含む。したがって、Serpina1遺伝子は、遺伝子的に操作される細胞、細胞群、または生物の文脈において野生型Serpina1遺伝子、変異体Serpina1遺伝子、突然変異Serpina1遺伝子、またはトランスジェニックSerpina1遺伝子でありうる。
【0127】
「Serpina1遺伝子の発現を阻害する」は、Serpina1遺伝子のあらゆるレベルの阻害、例えば少なくともSerpina1遺伝子の発現の少なくとも部分的抑制、例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%,少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の阻害を含む。
【0128】
Serpina1遺伝子の発現は、Serpina1遺伝子発現と関連するあらゆる変数のレベル、例えば、Serpina1 mRNAレベル、Serpina1タンパク質レベル、または血清AATレベルに基づいて評価することができる。阻害は、これら変数の1またはそれ以上の絶対レベルまたは相対レベルのコントロールレベルと比べた減少により評価することができる。コントロールレベルは、当該分野で利用されるあらゆる種類のコントロールレベル、投与前ベースラインレベル、またはコントロール(例えば緩衝液のみのコントロールまたは不活性物質コントロール)で処置または非処置の同様の対象、細胞、または試料から測定したレベルでありうる。
【0129】
本明細書で用いている用語「細胞と2本鎖RNAi物質を接触させる」には、細胞をあらゆる可能な手段により接触させることを含む。細胞と2本鎖RNAi物質を接触させるには、細胞をin vitroでRNAi物質と接触させるかまたは細胞をin vivoでRNAi物質と接触させることを含む。接触は直接または間接的に行いうる。したがって、例えばRNAi物質を該方法を実施する個体により細胞と物理的に接触させるか、またはRNAi物質を続いて細胞との接触を可能にするかまたはもたらす状況に置くことができる。
【0130】
in vitroでの細胞の接触は、例えば細胞をRNAi物質とインキュベーションすることにより行うことができる。in vivoでの細胞の接触は、例えばRNAi物質を細胞が位置する組織またはその付近に注射するか、または該物質が接触すべき細胞が位置する組織に達するようにRNAi物質を別の領域、血流、または皮下空間に注射することにより行うことができる。例えば、RNAi物質は、RNAi物質を目的部位、例えば肝臓に向かわせるリガンド、例えばGalNAc3リガンドを含むかおよび/または結合することがすることができる。in vitroおよびin vivo接触法の組み合わせも可能である。本発明の方法に関連して、細胞をin vitroでRNAi物質と接触させ、次いで対象に移植してもよい。
【0131】
本明細書で用いている「患者」または「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物、好ましくは哺乳動物、例えばサルを含むことを意図する。最も好ましくは、対象または患者はヒトである。
【0132】
本明細書で用いている「Serpina1関連疾患」は、Serpina1遺伝子またはタンパク質と関連するあらゆる疾患、障害、または病状を含むことを意図する。そのような疾患は、例えばSerpina1タンパク質のミスホールディング、Serpina1タンパク質(例えばミスホールドしたSerpina1タンパク質)の細胞内蓄積、Serpina1タンパク質の過剰産生、Serpina1遺伝子変異体、Serpina1遺伝子突然変異、Serpina1タンパク質の異常開裂、Serpina1と他のタンパク質または他の内因性または外因性物質との異常な相互作用により生じうる。Serpina1関連疾患は肝疾患および/または肺疾患でありうる。
【0133】
本明細書で用いている「肝疾患」は、肝臓および/またはその機能に影響を及ぼす疾患、障害、または病状を含む。肝疾患は、肝臓および/または肝細胞中のSerpina1タンパク質の蓄積の結果であり得る。肝疾患の例には、ウイルス感染、寄生虫感染、遺伝性素因、自己免疫疾患、放射線被爆、肝毒性化合物への暴露、機械的損傷、種々の環境毒素、アルコール、アセトアミノフェン、アルコールとアセトアミノフェンの組み合わせ、吸入麻酔薬、ナイアシン、化学療法剤、抗生物質、鎮痛剤、制吐剤、およびハーブサプリメントのカバ、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0134】
例えば、Serpina1欠乏関連肝疾患は、ある種の対立遺伝子(例えば、PIZ、PiM(Malton)、および/またはPIS対立遺伝子)の1またはそれ以上のコピーを有する対象によりしばしば生じうる。理論に縛られることを望まないが、α-1アンチトリプシン肝疾患を発生するより大きいリスクと関連がある対立遺伝子はミスホールディングを受け、肝細胞から適切に分泌されないSerpina1の形をコードすると考えられる。これらのミスホールドしたタンパク質に対する細胞の反応は、アンホールドタンパク質反応(UPR)、小胞体関連分解(ERAD)、アポトーシス、ER過負荷反応、自食作用、ミトコンドリアストレス、および肝細胞機能変化を含みうる。肝細胞の損傷は、限定されるものではないが、炎症、胆汁鬱滞、線維症、肝硬変、持続性閉塞性黄疸、トランスアミナーゼの増加、門脈圧亢進症、および/または肝細胞癌をもたらしうる。理論に縛られることを望まないが、この疾患の変動の大きい臨床経過は、症状の発現や重症への進行の一因として修飾因子や「第2打撃」を示唆する。
【0135】
例えば、PIZ対立遺伝子を有する対象は、C型肝炎感染またはアルコール依存症により感受性でありうるし、そのような因子に暴露すると肝疾患を発生する可能性が高い。さらに、PIZ対立遺伝子を有する嚢胞性線維症(CF)の対象は、門脈圧亢進症を伴う重度の肝疾患を発生するリスクがより高い。Serpina1の欠乏は、早期発症型肺気腫、壊死性脂肪織炎、気管支拡張症、および/または持続性新生児黄疸の発生を引き起こすかまたは一因となりうる。α-1-アンチトリプシンの欠乏があるかまたはそのリスクを有するある患者が、α-1-アンチトリプシン欠乏の家族メンバーがいるときにスクリーニングにより同定される。
【0136】
典型的な肝疾患には、限定されるものではないが、肝炎、慢性肝疾患、肝硬変、肝線維症、肝細胞癌、肝臓壊死、脂肪変性、胆汁鬱滞および/または減少、および/または肝細胞機能の低下が含まれる。
【0137】
「肝硬変」は、肝臓の広範囲の線維症および再生結節を含む慢性肝損傷に関連する病態である。
【0138】
「線維症」は、肝臓中の繊維芽細胞の増殖と瘢痕組織の形成である。
【0139】
用語「肝機能」は、肝臓が果たす多くの生理機能の1またはそれ以上を表す。そのような機能には、限定されるものではないが、血糖値の調節、内分泌調節、酵素系、代謝物(例えば、ケトン体、ステロール、およびステロイド、およびアミノ酸)の相互変換;フィブリノーゲン、血清アルブミン、およびコリンエステラーゼなどの血清タンパク質の産生、赤血球産生機能、解毒、胆汁形成、およびビタミン貯蔵が含まれる。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ、ビリルビン、プロトロンビン、およびアルブミンの測定などを含む肝機能の種々の検査方法が知られている。
【0140】
本明細書で用いている「治療的有効量」は、Serpina1関連疾患を治療するために患者に投与すると(例えば、存在する疾患または1またはそれ以上の疾患の症状を軽減、改善、または維持することにより)該疾患を治療するのに十分なRNAi物質の量を含むことを意図する。「治療的有効量」は、RNAi物質、どのように該薬剤を投与するか、該疾患とその重症度、および治療する患者の病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構造、Serpina1発現が介在する病的プロセスの段階、あれば先のまたは同時治療の種類、および他の個々の特性に応じて変化しうる。
【0141】
本明細書で用いている「予防的有効量」は、Serpina1関連疾患を経験していないかまたは症状を示していないが該疾患に罹りやすいかもしれない対象に投与すると該疾患または該疾患の1またはそれ以上の症状を予防または改善するのに充分なRNAi物質の量を含むことを意図する。該疾患の改善は、該疾患の経過を遅くし、または後から発症する疾患の重症度を減少させることを含む。「予防的有効量」は、RNAi物質、どのように該物質を投与するか、該疾患のリスクの程度、および治療する患者の病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構造、あれば先のまたは同時治療の種類、および他の個々の特性に応じて変化しうる。
【0142】
「治療的有効量」または「予防的有効量」は、あらゆる治療に応用できる妥当な利益/リスク比である望ましい局所または全身効果をもたらすRNAi物質の量も含む。本発明の方法に用いるRNAi物質は、そのような治療に応用できる妥当な利益/リスク比をもたらすのに充分な量で投与することができる。
【0143】
本明細書で用いている用語「試料」は、対象から単離した同様の液体、細胞、または組織、および対象中に存在する液体、細胞、または組織の収集物を含む。生物学的液体の例は、血液、血清および漿膜液、血漿、尿、リンパ液、脳脊髄液、眼液、唾液などを含む。組織試料は、組織、器官、または局所領域由来の試料を含みうる。例えば、試料は、特定の器官、器官の部分、または該器官内の液体または細胞由来でありうる。ある態様において、試料は肝臓(例えば全乾燥、または肝臓のある部分、または肝臓のある細胞種(例えば肝細胞など)由来でありうる。好ましい態様において、「対象由来の試料」は、対象由来の血液または血漿を表す。さらなる態様において、「対象由来の試料」は、対象由来の肝臓組織(またはそのサブコンポーネント)を表す。
II. 本発明のiRNA
【0144】
本明細書は、Serpina1関連疾患、例えば肝疾患、例えば慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、および/または肝細胞癌を有する対象、例えば哺乳動物、例えばヒト中の細胞などの細胞中のSerpina1遺伝子の発現を阻害する改良された2本鎖RNAi物質を開示する。
【0145】
したがって、本発明は、in vivoで標的遺伝子(すなわちSerpina1遺伝子)の発現を阻害することができる化学修飾を有する2本鎖RNAi物質を提供する。本発明のある局面において、本発明のiRNAの実質的にすべてのヌクレオチドが修飾されている。本発明の他の態様において、本発明のiRNAのすべてのヌクレオチドが修飾されている。「実質的にすべてのヌクレオチドが修飾されている」本発明のiRNAは完全にではないが大部分が修飾されており、5、4、3、2、または1以下の非修飾ヌクレオチドを含むことができる。
【0146】
RNAi物質はセンス鎖とアンチセンス鎖を含む。RNAi物質の各鎖は、長さが12〜30ヌクレオチドの範囲でありうる。例えば、各鎖は、14〜30ヌクレオチドの長さ、17〜30ヌクレオチドの長さ、19〜30ヌクレオチドの長さ、25〜30ヌクレオチドの長さ、27〜30ヌクレオチドの長さ、17〜23ヌクレオチドの長さ、17〜21ヌクレオチドの長さ、17〜19ヌクレオチドの長さ、19〜25ヌクレオチドの長さ、19〜23ヌクレオチドの長さ、19〜21ヌクレオチドの長さ、21〜25ヌクレオチドの長さ、または21〜23ヌクレオチドの長さでありうる。
【0147】
該センス鎖および該アンチセンス鎖は典型的には2本鎖RNA(「dsRNA」)を形成する(本明細書では「RNAi物質」ともいう)。RNAi物質の2本鎖領域は、12〜30ヌクレオチド対の長さでありうる。例えば、該2本鎖領域は、14〜30ヌクレオチド対の長さ、17〜30ヌクレオチド対の長さ、27〜30ヌクレオチド対の長さ、17〜23ヌクレオチド対の長さ、17〜21ヌクレオチド対の長さ、17〜19ヌクレオチド対の長さ、19〜25ヌクレオチド対の長さ、19〜23ヌクレオチド対の長さ、19〜21ヌクレオチド対の長さ、21〜25ヌクレオチド対の長さ、または21〜23ヌクレオチド対の長さでありうる。別の例では、該2本鎖領域は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、および27ヌクレオチドの長さから選ばれる。
【0148】
ある態様において、該RNAi物質は、1または両鎖の3’末端、5’末端、または両末端に1またはそれ以上のオーバーハング領域および/またはキャッピング基を含みうる。該オーバーハングは、1〜6ヌクレオチドの長さ、例えば、2〜6ヌクレオチドの長さ、1〜5ヌクレオチドの長さ、2〜5ヌクレオチドの長さ、1〜4ヌクレオチドの長さ、2〜4ヌクレオチドの長さ、1〜3ヌクレオチドの長さ、2〜3ヌクレオチドの長さ、または1〜2ヌクレオチドの長さでありうる。該オーバーハングは、1本鎖が他より長い結果かまたは同じ長さの2本の鎖が食い違いになっている結果でありうる。該オーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成するか、または標的遺伝子配列と相補的であるか、または別の配列でありうる。第1鎖と第2鎖は、例えばヘアピンを形成するさらなる塩基により、または他の非塩基リンカーにより結合することができる。
【0149】
ある態様において、RNAi物質のオーバーハング領域のヌクレオチドは、それぞれ独立して、限定されるものではないが、2’-糖修飾、例えば、2-F、2’-O-メチル、チミジン(T)、2’-O-メトキシエチル-5-メチルウリジン(Teo)、2’-O-メトキシエチルアデノシン(Aeo)、2’-O-メトキシエチル-5-メチルシチジン(m5Ceo)、およびあらゆるそれらの組み合わせを含む修飾または非修飾ヌクレオチドでありうる。例えば、TTは、いずれかの鎖のいずれかの末端がオーバーハング配列でありうる。該オーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成するか、または標的遺伝子配列と相補的であるか、または別の配列でありうる。
【0150】
RNAi物質のセンス鎖、アンチセンス鎖、または両鎖の5’-または3’-オーバーハングは、リン酸化されうる。ある態様において、該オーバーハング領域は、同じかまたは異なる2ヌクレオチド間にホスホロチオエートを有する2ヌクレオチドを含む。ある態様において、該オーバーハングは、該センス鎖、アンチセンス鎖、または両鎖の3’末端に存在する。ある態様において、この3’-オーバーハングは該アンチセンス鎖に存在する。ある態様において、この3’-オーバーハングは該センス鎖に存在する。
【0151】
RNAi物質は、その全体の安定性に影響を及ぼすことなくRNAiの干渉活性を増強することができる1オーバーハングのみを含みうる。例えば、該1本鎖オーバーハングは、該センス鎖の3’末端または該アンチセンス鎖の3’末端に位置しうる。該RNAiは、該アンチセンス鎖の5’末端(または該センス鎖の3’末端)(または逆もある)に位置する平滑末端も有しうる。一般的には、該RNAiのアンチセンス鎖は、3’末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、5’末端は平滑である。理論に縛られることを望まないが、該アンチセンス鎖の5’末端の非対称平滑末端と該アンチセンス鎖の3’末端オーバーハングは、RISCプロセスにロードするガイド鎖に好都合である。
【0152】
本発明の特徴的なあらゆる核酸は、当該分野で十分確立された方法、例えば「Current protocols in nucleic acid chemistry」、Beaucage、S.L. et al.(Edrs.)、John Wiley & Sons、Inc.、New York、NY、USA(この内容は本明細書の一部を構成する)に記載の方法により合成および/または修飾することができる。修飾は、例えば、末端修飾、例えば、5’末端修飾(リン酸化、結合、逆結合)または3’末端修飾(結合、DNAヌクレオチド、逆結合など);塩基修飾、例えば、安定化塩基、不安定化塩基、またはパートナーの拡張レパートリーと塩基対になる塩基による置換、塩基(脱塩基ヌクレオチド)または結合塩基の除去;糖修飾(例えば、2’位または4’位)または糖の置換;および/またはホスホジエステル結合の修飾または置換を含む骨格修飾を含む。本明細書に記載の態様において有用なiRNA化合物の具体例は、限定されるものではないが、修飾骨格を含むかまたは天然のヌクレオシド間結合を含まないRNAを含む。修飾骨格を有するRNAは、特に、該骨格中にリン原子を持たないものを含む。本明細書の目的において、当該分野で言及されることがあるように、ヌクレオシド間骨格中にリン原子を持たない修飾RNAもオリゴヌクレオシドと考えることができる。ある態様において、修飾iRNAはそのヌクレオシド間骨格中にリン原子を有するだろう。
【0153】
修飾RNA骨格は、例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよび他のアルキルホスホネート(3’-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含む)、ホスフィネート、ホスホルアミデート(3’-アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含む)、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、および正常3’-5’結合を有するボラノリン酸塩、これらの2’-5’結合アナログ、およびヌクレオシド単位の隣り合った対が3’-5’と5’-3’または2’-5’と5’-2’に結合している逆極性を有するものを含む。種々の塩、混合塩、および遊離塩形も含まれる。
【0154】
上記リン含有結合の製造法を示す代表的米国特許は、限定されるものではないが、米国特許No. 3,687,808;4,469,863;4,476,301;5,023,243;5,177,195;5,188,897;5,264,423;5,276,019;5,278,302;5,286,717;5,321,131;5,399,676;5,405,939;5,453,496;5,455,233;5,466,677;5,476,925;5,519,126;5,536,821;5,541,316;5,550,111;5,563,253;5,571,799;5,587,361;5,625,050;6,028,188;6,124,445;6,160,109;6,169,170;6,172,209;6,239,265;6,277,603;6,326,199;6,346,614;6,444,423;6,531,590;6,534,639;6,608,035;6,683,167;6,858,715;6,867,294;6,878,805;7,015,315;7,041,816;7,273,933;7,321,029;および米国特許RE39464を含む(これらの全内容は本明細書の一部を構成する)。
【0155】
その中にリン原子を含まない修飾RNA骨格は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子、およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1またはそれ以上の短鎖ヘテロ原子またはヘテロサイクリックヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ結合(一部がヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド、およびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格を有するもの;および混合N、O、S、およびCH
2成分部分を有する他のものが含まれる。
【0156】
上記オリゴヌクレオシドの製造法を開示する代表的米国特許は、限定されるものではないが、米国特許No. 5,034,506;5,166,315;5,185,444;5,214,134;5,216,141;5,235,033;5,64,562;5,264,564;5,405,938;5,434,257;5,466,677;5,470,967;5,489,677;5,541,307;5,561,225;5,596,086;5,602,240;5,608,046;5,610,289;5,618,704;5,623,070;5,663,312;5,633,360;5,677,437;および5,677,439を含む(これらの全内容は本明細書の一部を構成する)。
【0157】
他の態様において、ヌクレオチド単位の糖とヌクレオシド間結合の両方、すなわち骨格が新しい基で置換している適切なRNA模倣物をiRNAに用いることが予期される。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とハイブリダイズするために維持される。優れたハイブリダイゼーション特性を持つことが示されてたRNA模倣物であるそのようなオリゴマー化合物をペプチド核酸(PNA)という。PNA化合物において、RNAの糖骨格をアミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置換する。該核酸塩基を保持し、該骨格のアミド部分のアザ窒素原子と直接または間接的に結合する。PNA化合物の製造法を開示する代表的米国特許は、限定されるものではないが、米国特許No. 5,539,082;5,714,331;および5,719,262を含む(これらの全内容は本明細書の一部を構成する)。本発明のiRNAに用いるのに適したさらなるPNA化合物は、例えばNielsen et al.、Science、1991、254、1497-1500に記載されている。
【0158】
本発明のある態様は、ホスホロチオエート骨格を有するRNA、およびヘテロ原子骨格、特に、上記米国特許No. 5,489,677の--CH
2--NH--CH
2-、--CH
2--N(CH
3)--O--CH
2--[メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる]、--CH
2--O--N(CH
3)--CH
2--、--CH
2--N(CH
3)--N(CH
3)--CH
2--、および--N(CH
3)--CH
2--CH
2--[天然ホスホジエステル骨格は--O--P--O--CH
2--で示される]、および上記米国特許No. 5,602,240のアミド骨格を有するオリゴヌクレオシドを含む。ある態様において、本明細書に記載のRNAは、上記米国特許No. 5,034,506のモルホリノ骨格構造を有する。
【0159】
修飾RNAは、1またはそれ以上の置換糖部分も含みうる。本明細書に記載のiRNAs、例えばdsRNAは、2’位に以下の1つを含みうる:OH;F;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;O-、S-またはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキル(ここで、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは置換または非置換C
1-C
10アルキルまたはC
2-C
10アルケニルおよびアルキニルでありうる)。典型的な適切な修飾は、O[(CH
2)
nO]mCH
3、O(CH
2)
nOCH
3、O(CH
2)
nNH
2、O(CH
2)
nCH
3、O(CH
2)
nONH
2、およびO(CH
2)
nON[(CH
2)
nCH
3)]
2(ここで、nおよびmは1〜約10である)を含む。他の態様において、dsRNAは2’位に以下の1つを含む:C
1-C
10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH
3、OCN、Cl、Br、CN、CF
3、OCF
3、SOCH
3、SO
2CH
3、ONO
2、NO
2、N
3、NH
2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA開裂基、レポーター基、インターカレーター、iRNAの薬物動態特性を改善する基、またはiRNAの薬力学的特性を改善する基、および同様の特性を有する他の置換基。ある態様において、該修飾は、2’-メトキシエトキシ(2’-O--CH
2CH
2OCH
3、2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしても知られる)(Martin et al.、Helv. Chim. Acta、1995、78:486-504)、すなわち、アルコキシ-アルコキシ基を含む。別の典型的な修飾は、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、本明細書の下記実施例に記載のO(CH
2)
2ON(CH
3)
2基(2’-DMAOEとしても知られる)、および2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該分野では2’-O-ジメチルアミノエトキシエチル、または2’-DMAEOEとしても知られる)、すなわち2’-O--CH
2--O--CH
2--N(CH
2)
2を含む。
【0160】
他の修飾は、2’-メトキシ(2’-OCH
3)、2’-アミノプロポキシ(2’-OCH
2CH
2CH
2NH
2)および2’-フルオロ(2’-F)を含む。同様の修飾は、iRNAのRNAの他の位置、特に3’末端ヌクレオチドの糖の3’位、または2’-5’結合dsRNA中、および5’末端ヌクレオチドの5’末端位になすこともできる。iRNAは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣物も有しうる。そのような修飾糖構造の製造法を開示する典型的な米国特許は、限定されるものではないが、米国特許No. 4,981,957;5,118,800;5,319,080;5,359,044;5,393,878;5,446,137;5,466,786;5,514,785;5,519,134;5,567,811;5,576,427;5,591,722;5,597,909;5,610,300;5,627,053;5,639,873;5,646,265;5,658,873;5,670,633;および5,700,920を含む(このあるものは本願と共通の出願人である)。前記のそれぞれの全内容は本明細書の一部を構成する。
【0161】
iRNAは、核酸塩基(当該分野では単に「塩基」ということが多い)修飾または置換も含みうる。本明細書で用いている「非修飾」または「天然」核酸塩基は、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)、およびピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を含む。修飾核酸塩基は例えば以下の他の合成および天然核酸塩基を含む:デオキシチミン(dT)、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル、およびアデニンとグアニンの他のアルキル誘導体、2-プロピル、およびアデニンとグアニンの他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、および2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル、および他の5置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニン、および8-アザアデニン、7-デアザグアニン、および7-デアザアデニン、および3-デアザグアニン、および3-デアザアデニン。さらなる核酸塩基は、米国特許No. 3,687,808に記載のもの、Modified Nucleosides in Biochemistry、Biotechnology and Medicine、Herdewijn、P.編、Wiley-VCH、2008に記載のもの;The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering、pages 858-859、Kroschwitz、J. L,編、John Wiley & Sons、1990に記載のもの、Englisch et al.、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30、613に記載のもの、およびSanghvi、Y S.、Chapter 15、dsRNA Research and Applications、pages 289-302、Crooke、S. T. and Lebleu、B.編、CRC Press、1993に記載のものを含む。これらの核酸塩基のあるものは、特に本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増加させるのに有用である。これらは、5置換ピリミジン、6-アザピリミジン、およびN-2、N-6、および0-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンを含む)を含む。5-メチルシトシン置換は、0.6〜1.2℃により核酸2本鎖安定性を増加させることが示されており(Sanghvi、Y. S.、Crooke、S. T. and Lebleu、B.、編、dsRNA Research and Applications、CRC Press、Boca Raton、1993、pp. 276-278)、さらにより具体的には2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせて典型的な塩基置換である。
【0162】
上記修飾核酸塩基および他の修飾核酸塩基のあるものの製造法を開示する代表的米国特許は、限定されるものではないが以下のものを含む:上記米国特許No. 3,687,808、4,845,205;5,130,30;5,134,066;5,175,273;5,367,066;5,432,272;5,457,187;5,459,255;5,484,908;5,502,177;5,525,711;5,552,540;5,587,469;5,594,121、5,596,091;5,614,617;5,681,941;5,750,692;6,015,886;6,147,200;6,166,197;6,222,025;6,235,887;6,380,368;6,528,640;6,639,062;6,617,438;7,045,610;7,427,672;および7,495,088(これらの全内容は本明細書の一部を構成する)。
【0163】
iRNAのRNAは、1またはそれ以上のロックド核酸(LNA)を含むように修飾することもできる。ロックド核酸は、リボース部分が2’および4’炭素を結合する余分な架橋を含む修飾リボース部分を有するヌクレオチドである。該構造は、3’末端構造コンフォメーション中のリボースを効果的に「ロックする」。siRNAにロックド核酸を付加すると、血清中のsiRNA安定性を増加し、非特異的作用を減少させることが示されている(Elmen、J. et al.、(2005) Nucleic Acids Research 33(1):439-447;Mook、OR. et al.、(2007) Mol Canc Ther 6(3):833-843;Grunweller、A. et al.、(2003) Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。
【0164】
ロックド核酸ヌクレオチドの製造法を開示する代表的米国特許は、限定されるものではないが以下のものを含む:米国特許No. 6,268,490;6,670,461;6,794,499;6,998,484;7,053,207;7,084,125;および7,399,845(これらの全内容は本明細書の一部を構成する)。
【0165】
RNA分子の末端への潜在的安定化修飾は以下のものを含みうる:N-(アセチルアミノカプロイル)-4-ヒドロキシ
プロリノール(Hyp-C6-NHAc)、N-(カプロイル-4-ヒドロキシ
プロリノール(Hyp-C6)、N-(アセチル-4-ヒドロキシ
プロリノール(Hyp-NHAc)、チミジン-2’-0-デオキシチミジン(エーテル)、N-(アミノカプロイル)-4-ヒドロキシ
プロリノール(Hyp-C6-アミノ)、2-ドコサノイル-ウリジン-3''-リン酸塩、逆塩基dT(idT)など。この修飾の開示はPCT公開公報WO 2011/005861にみることができる。
【0166】
A. 本発明のモチーフを含む修飾iRNA
本発明のある局面において、本発明の2本鎖RNAi物質は、例えば米国仮出願No. 61/561,710(2011年11月18日出願)またはPCT/US2012/065691(2012年11月16日出願)に開示されている(これらの全内容は本明細書の一部を構成する)。
【0167】
本明細書および仮出願No.61/561,710に記載のように、RNAi物質のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖中に、特に開裂部位またはその付近に、3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の1またはそれ以上のモチーフを導入することにより優れた結果を得ることができる。ある態様において、そうでなければRNAi物質のセンス鎖とアンチセンス鎖は完全に修飾することができる。これらモチーフの導入は、存在すればセンスおよび/またはアンチセンス鎖の修飾パターンを中断する。RNAi物質は、所望により例えばセンス鎖上のGalNAc誘導リガンドと結合することができる。得られたRNAi物質は優れた遺伝子サイレンシング活性を示す。
【0168】
より具体的には、驚くべきことに、2本鎖RNAi物質のセンス鎖とアンチセンス鎖をRNAi物質の少なくとも1本鎖の開裂部位またはその付近で3連続ヌクレオチドに3つの同じ修飾の1またはそれ以上のモチーフを有するように修飾すると、RNAi物質の遺伝子サイレンシング活性が優位に増強されることをみいだした。ある態様において、該RNAi物質はセンス鎖が5’末端から7、8、9位の3連続ヌクレオチド上に3つの2’-F修飾の少なくとも1のモチーフを含む、19ヌクレオチドの長さの両端ブラントマーである。該アンチセンス鎖は、5’末端から11、12、13位の3連続ヌクレオチド上に3つの2’-O-メチルの少なくとも1のモチーフを含む。
【0169】
別の態様において、該RNAi物質は、センス鎖が5’末端から8、9、10位の3連続ヌクレオチド上に3つの2’-F修飾の少なくとも1のモチーフを含む、20ヌクレオチドの長さの両端ブラントマーである。該アンチセンス鎖は、11、12、13位の3連続ヌクレオチド上に3つの2’-O-メチル修飾の少なくとも1のモチーフを含む。
【0170】
さらに別の態様において、RNAi物質は、センス鎖が9、10、11位の3連続ヌクレオチド上に3つの2’-F修飾の少なくとも1のモチーフを含む、21ヌクレオチドの長さの両端ブラントマーである。該アンチセンス鎖は、11、12、13位の3連続ヌクレオチド上に3つの2’-O-メチル修飾の少なくとも1のモチーフを含む。
【0171】
ある態様において、RNAi物質は、センス鎖が9、10、11位の3連続ヌクレオチド上に3つの2’-F修飾の少なくとも1のモチーフを含み、アンチセンス鎖が11、12、13位の3連続ヌクレオチド上に3つの2’-O-メチル修飾の少なくとも1のモチーフを含み、RNAi物質の1末端が平滑であり、その他の末端が2ヌクレオチドオーバーハングを含む21ヌクレオチドのセンス鎖と23ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含む。好ましくは、2ヌクレオチドのオーバーハングはアンチセンス鎖の3’末端にある。2ヌクレオチドのオーバーハングがアンチセンス鎖の3’末端にある場合は、3ヌクレオチドの2がオーバーハングヌクレオチドであり、第3ヌクレオチドがオーバーハングヌクレオチドの次の対のヌクレオチドである、末端3ヌクレオチド間に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合がありうる。ある態様において、RNAi物質はさらにセンス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の5’末端の両方の末端3ヌクレオチド間に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を有する。ある態様において、該モチーフの部分であるヌクレオチドを含むRNAi物質のセンス鎖とアンチセンス鎖のすべてのヌクレオチドは修飾ヌクレオチドである。ある態様において、各残基は独立して例えば交互モチーフ中、2’-O-メチルまたは3’-フルオロで修飾される。所望により、RNAi物質は、さらにリガンド(好ましくはGalNAc3)を含む。
【0172】
ある態様において、RNAi物質はセンスおよびアンチセンス鎖を含み、少なくとも25、多くとも29ヌクレオチドの長さを有する第1鎖と、5’末端の11、12、13位の3連続ヌクレオチド上に3つの2’-O-メチル修飾の少なくとも1のモチーフを有する多くとも30ヌクレオチドの長さを有する第2鎖を含み、該第1鎖の3’末端と該第2鎖の5’末端は平滑末端を形成し、該第2鎖が該第1鎖よりその3’末端が1〜4ヌクレオチド長く、2本鎖領域が少なくとも25ヌクレオチドの長さであり、該第2鎖が該第2鎖長の少なくとも19ヌクレオチドに沿って標的mRNAと十分相補的でRNAi物質を哺乳動物細胞中に導入すると標的遺伝子の発現が減少し、RNAi物質のダイサー開裂が第2鎖の3’末端を含むsiRNAを選択的に生じることにより哺乳動物における標的遺伝子の発現が減少する。所望により、RNAi物質はさらにリガンドを含む。
【0173】
ある態様において、RNAi物質のセンス鎖は、3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の少なくとも1のモチーフを含み、該モチーフの1つがセンス鎖の開裂部位に生じる。
【0174】
ある態様において、RNAi物質のアンチセンス鎖も3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の少なくとも1のモチーフを含むことができ、該モチーフの1つがアンチセンス鎖の開裂部位またはその付近に生じる。
【0175】
17〜23ヌクレオチドの長さの2本鎖領域を有するRNAi物質については、アンチセンス鎖の開裂部位は、典型的には5’末端から10、11、および12位周辺にある。したがって、3つの同じ修飾のモチーフは、アンチセンス鎖の9、10、11位;10、11、12位;11、12、13位;12、13、14位;または13、14、15位に生じうる(アンチセンス鎖の5’末端の第1ヌクレオチドから数え始めるか、またはアンチセンス鎖の5’末端の2本鎖領域内の第1対ヌクレオチドから数え始める)。アンチセンス鎖の開裂部位は、5’末端からのRNAiの2本鎖領域の長さに応じて変化しうる。
【0176】
RNAi物質のセンス鎖は、該鎖の開裂部位に3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の少なくとも1のモチーフを含むことがあり、アンチセンス鎖は、該鎖の開裂部位またはその付近に3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の少なくとも1のモチーフを含みうる。センス鎖およびアンチセンス鎖がdsRNA2本鎖を形成する場合は、該センス鎖とアンチセンス鎖は、センス鎖上の3ヌクレオチドの1モチーフとアンチセンス鎖上の3ヌクレオチドの1モチーフが少なくとも1のヌクレオチドの重なりを有する、すなわちセンス鎖中の該モチーフの3ヌクレオチドの少なくとも1がアンチセンス鎖中の該モチーフの3ヌクレオチドの少なくとも1と塩基対を形成するように一列に整列させることができる。あるいはまた、少なくとも2のヌクレオチドが重なるか、または3つすべてのヌクレオチドが重なりうる。
【0177】
ある態様において、RNAi物質のセンス鎖は、3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の少なくとも1のモチーフを含みうる。該第1モチーフは該鎖の開裂部位またはその付近に生じることがあり、その他のモチーフは、ウイング修飾でありうる。本明細書において用語「ウイング修飾」は、同じ鎖の開裂部位またはその付近のモチーフから分離した該鎖の別の部分に生じるモチーフを表す。該ウイング修飾は、該第1モチーフに隣接しているか、または少なくとも1またはそれ以上のヌクレオチドにより分離している。該モチーフが互いに直接隣接している場合は該モチーフの化学的性質は互いに異なり、該モチーフが1またはそれ以上のヌクレオチドにより分離している場合は化学的性質が同じかまたは異なりうる。2またはそれ以上のウイング修飾が存在しうる。例えば、2つのウイング修飾が存在する場合は各ウイング修飾は開裂部位またはその付近にある第1モチーフに対して1末端またはリードモチーフのいずれかの側に生じうる。
【0178】
センス鎖同様に、RNAi物質のアンチセンス鎖は、3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の1より多いモチーフを含むことがあり、該モチーフの少なくとも1は該鎖の開裂部位またはその付近に生じる。また、本アンチセンス鎖は、センス鎖上に存在しうるウイング修飾と同様のアラインメントにおいて1またはそれ以上のウイング修飾を含みうる。
【0179】
ある態様において、RNAi物質のセンス鎖またはアンチセンス鎖上のウイング修飾は、典型的には該鎖の3’末端、5’末端、または両末端の最初の1または2末端ヌクレオチドを含まない。
【0180】
別の態様において、RNAi物質のセンス鎖またはアンチセンス鎖上のウイング修飾は、典型的には2本鎖領域内に該鎖の3’末端、5’末端、または両末端の最初の1または2対ヌクレオチドを含まない。
【0181】
RNAi物質のセンス鎖またはアンチセンス鎖がそれぞれ少なくとも1のウイング修飾を含む場合は該ウイング修飾は2本鎖領域の同じ末端に位置し、1、2、または3ヌクレオチドの重なりを有する。
【0182】
RNAi物質のセンス鎖またはアンチセンス鎖がそれぞれ少なくとも1のウイング修飾を含む場合は該センス鎖およびアンチセンス鎖は、1本鎖からの各2修飾が1、2、または3ヌクレオチドの重なりを有する2本鎖領域の1末端に位置し、1本鎖からの各2修飾が1、2、または3ヌクレオチドの重なりを有する2本鎖領域の他の末端に位置し、1本鎖の2修飾が2本鎖領域に1、2、または3ヌクレオチドの重なりを有するリードモチーフの各側に位置するようにアラインメントすることができる。
【0183】
ある態様において、該モチーフの部分であるヌクレオチドを含むRNAi物質のセンス鎖およびアンチセンス鎖中のすべてのヌクレオチドが修飾されうる。各ヌクレオチドは、非結合リン酸塩酸素の1または両方および/または該結合リン酸塩酸素の1またはそれ以上の変化、リボース糖の構成要素、例えばリボース糖の2’ヒドロキシルの変化、「デホスホ」リンカーによるリン酸塩部分の大規模な置換、天然塩基の修飾または置換、およびリボース-リン酸塩骨格の置換または修飾を含みうる同じまたは異なる修飾で修飾されうる。
【0184】
核酸はサブユニットのポリマーであるので該修飾の多くは核酸内の反復する位置に生じる(例えば、塩基またはリン酸塩部分またはリン酸塩部分の非結合Oの修飾)。ある場合には、該修飾は、該核酸のすべての対象位置に生じるだろうが、多くの場合生じないだろう。例として、修飾は、3’または5’末端位置にのみ生じ、末端領域(例えば末端ヌクレオチドの位置)または鎖の最後の2、3、4、5、または10ヌクレオチドにのみ生じうる。修飾は、2本鎖領域、1本鎖領域、またはその両方に生じうる。修飾は、RNAの2本鎖領域のみに生じうるか、またはRNAの1本鎖領域にのみ生じうる。例えば、非結合O位のホスホロチオエート修飾は、末端領域(例えば末端ヌクレオチドの位置)または鎖の最後の2、3、4、5、または10ヌクレオチドにのみ生じうるか、または2本鎖および1本鎖領域の特に末端に生じうる。5’末端(単数または複数)をリン酸化することができる。
【0185】
例えば、安定性を増強するか、オーバーハング中に特定の塩基を含むか、または1本鎖オーバーハング(例えば5’または3’オーバーハング、またはその両方)中に修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド代用物を含むことが可能であるかもしれない。例えば、オーバーハング中にプリンヌクレオチドを含むことが望ましいことがある。ある態様において、オーバーハング中にプリンヌクレオチドを含むことが望ましいことがある。ある態様において、3’または5’オーバーハング中のすべてまたはいくつかの塩基は例えば本明細書に記載の修飾で修飾されうる。修飾は、例えば、当該分野で知られた修飾によるリボ糖の2’位の修飾の使用、例えば核酸塩基のリボ糖の代わりにデオキシリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’-F)または2’-O-メチル修飾の使用、およびリン酸基の修飾(例えばホスホロチオエート修飾)を含みうる。オーバーハングは標的配列とホモローガスである必要はない。
【0186】
ある態様において、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、独立してLNA、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-デオキシ、2’-ヒドロキシル、または2’-フルオロで修飾される。該鎖は、1より多い修飾を含みうる。ある態様において、該センス鎖とアンチセンス鎖の各残基は独立して2’-O-メチルまたは2’-フルオロで修飾される。
【0187】
少なくとも2の異なる修飾は、典型的にはセンス鎖とアンチセンス鎖に存在する。それら2つの修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾などでありうる。
【0188】
ある態様において、N
aおよび/またはN
bは交互パターンの修飾を含む。本明細書で用いている用語「交互モチーフ」は、各修飾が1本鎖の交互ヌクレオチドに生じる1またはそれ以上の修飾を有するモチーフを表す。交互ヌクレオチドは、1つおきに1つのヌクレオチドまたは3つ毎に1つのヌクレオチド、または同様のパターンを表しうる。例えば、A、B、およびCがそれぞれヌクレオチドに対する修飾の1タイプを表すならば、交互モチーフは、「ABABABABABAB...」、「AABBAABBAABB...」、「AABAABAABAAB...」、「AAABAAABAAAB...」、「AAABBBAAABBB...」、または「ABCABCABCABC...」などでありうる。
【0189】
交互モチーフ中に含まれる修飾のタイプは同じかまたは異なりうる。例えば、A、B、C、Dがそれぞれヌクレオチドに対する修飾の1タイプを表すならば、交互パターン、すなわち、1つおきのヌクレオチド上の修飾は同じでありうるが、センス鎖またはアンチセンス鎖のそれぞれについて交互モチーフ内の修飾の種々の可能性、例えば「ABABAB...」、「ACACAC...」、「BDBDBD...」、または「CDCDCD...」などから選ぶことができる。
【0190】
ある態様において、本発明のRNAi物質は、アンチセンス鎖上の交互モチーフの修飾パターンに対してセンス鎖上の交互モチーフの修飾パターンのシフトを含む。該シフトは、センス鎖のヌクレオチドの修飾基がアンチセンス鎖のヌクレオチドの異なる修飾基に対応する(逆もある)ようでありうる。例えば、センス鎖がdsRNA 2本鎖中のアンチセンス鎖と対になると、センス鎖の交互モチーフは該鎖の5’-3’から「ABABAB」で出発することがあり、アンチセンス鎖の交互モチーフは2本鎖領域内の鎖の5’-3’から「BABABA」で出発しうる。別の例として、センス鎖とアンチセンス鎖間の修飾パターンの完全または部分的シフトがあるように、センス鎖中の交互モチーフは該鎖の5’-3’から「AABBAABB」で出発することがあり、アンチセンス鎖中の交互モチーフは2本鎖領域内の該鎖の5’-3’から「BBAABBAA」で出発しうる。
【0191】
ある態様において、RNAi物質は、最初にセンス鎖上の2’-O-メチル修飾および2’-F 修飾の交互モチーフのパターンが最初にアンチセンス鎖上の2’-O-メチル修飾と2’-F 修飾の交互モチーフのパターンに対するシフトを有するものを含み、すなわち、センス鎖の2’-O-メチル修飾ヌクレオチドはアンチセンス鎖上の2’-F 修飾ヌクレオチドと塩基対化する(逆もある)。センス鎖の1位は2’-F 修飾で出発することがあり、アンチセンス鎖の1位は2’-O-メチル修飾で出発しうる。
【0192】
センス鎖および/またはアンチセンス鎖に対する3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の1またはそれ以上のモチーフの導入はセンス鎖および/またはアンチセンス鎖に存在する最初の修飾パターンを中断する。センスおよび/またはアンチセンス鎖に対する3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の1またはそれ以上のモチーフの導入によるセンスおよび/またはアンチセンス鎖の修飾パターンのこの中断は、驚くべきことは標的遺伝子に対する遺伝子サイレンシング活性を増強する。
【0193】
ある態様において、3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾のモチーフを該鎖のいずれかに導入する場合は、該モチーフの次のヌクレオチドの修飾は該モチーフの修飾と異なる修飾である。例えば、該モチーフを含む配列の部分は「...N
aYYYN
b...」であり、「Y」は3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾のモチーフの修飾を表し、「N
a」および「N
b」はYの修飾と異なるモチーフ「YYY」の次のヌクレオチドの修飾を表し、N
aおよびN
bは同じまたは異なる修飾でありうる。あるいはまた、N
aおよび/またはN
bはウイング修飾が存在する場合は存在しないかまたは存在しうる。
【0194】
RNAi物質は、さらに少なくとも1のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合を含みうる。ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖またはアンチセンス鎖または両鎖のあらゆる位置のあらゆるヌクレオチドに生じうる。例えば、ヌクレオチド間結合修飾はセンス鎖および/またはアンチセンス鎖のすべてのヌクレオチドに生じることがあるか、各ヌクレオチド間結合修飾はセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の交互パターンに生じうるか;またはセンス鎖またはアンチセンス鎖は交互パターン中に両ヌクレオチド間結合修飾を含みうる。センス鎖上のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じかまたは異なることがあり、センス鎖のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンに対してシフトしていることがある。
【0195】
ある態様において、RNAiはオーバーハング領域にホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合修飾を含む。例えば、該オーバーハング領域は2ヌクレオチド間にホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合を有する2ヌクレオチドを含みうる。ヌクレオチド間結合修飾は、オーバーハングヌクレオチドと2本鎖領域内の末端が対になったヌクレオチドを結合させることもできる。例えば、少なくとも2、3、4、またはすべてのオーバーハングヌクレオチドは、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合を介して結合しうるし、所望により、オーバーハングヌクレオチドをオーバーハングヌクレオチドの次にある対合ヌクレオチドと結合させるさらなるホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合があるかもしれない。例えば、3ヌクレオチドの2つがオーバーハングヌクレオチドであり、3番目がオーバーハングヌクレオチドの次の対合ヌクレオチドである末端3ヌクレオチド間に少なくとも2のホスホロチオエートヌクレオチド間結合があるかもしれない。これら末端3ヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端、センス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の5’末端、および/またはアンチセンス鎖の5’末端にありうる。
【0196】
ある態様において、2ヌクレオチドオーバーハングはアンチセンス鎖の3’末端にあり、3ヌクレオチドの2つがオーバーハングヌクレオチドであり、第3ヌクレオチドがオーバーハングヌクレオチドの次の対合ヌクレオチドである末端3ヌクレオチド間に2ホスホロチオエートヌクレオチド間結合がある。
【0197】
所望により、RNAi物質は、さらにセンス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の5’末端の両方の末端3ヌクレオチド間に2ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を有しうる。
【0198】
ある態様において、RNAi物質は、2本鎖またはそれらの組み合わせ内に標的とのミスマッチを含む。「ミスマッチ」は、ヌクレオチドの非正準塩基対合または正準対合でありうる。ミスマッチは、オーバーハング領域または2本鎖領域に生じうる。塩基対は、解離または融解を促進する傾向に基づいてランク付けすることができる(例えば、特定の対合の結合または解離の自由エネルギーにおいて、最も単純なアプローチは隣であるが個々の対ごとに対を試験することであるか、または同様の分析を用いることもできる。解離の促進に関して、A:UはG:Cより好ましく;G:UはG:Cより好ましく;I:CはG:C(I=イノシン)より好ましい。ミスマッチ、例えば、位非正準対合または正準対合以外(本明細書の他の場所に記載の)が正準(A:T、A:U、G:C) 対合より好ましく;ユニバーサル塩基を含む対合が正準対合より好ましい。「ユニバーサル塩基」は、隣接する塩基対の相互作用を顕著に不安定化するかまたは修飾オリゴヌクレオチドの予期される機能的生化学的有用性を顕著に妨げることなく、4つの正常塩基(G、C、A、およびU)のいずれかと置換する能力を示す塩基である。ユニバーサル塩基の非限定的例は、2’-デオキシイノシン(ヒポキサンチンデオキシヌクレオチド)またはその誘導体、ニトロアゾール類似体、および疎水性芳香族非水素結合塩基を含む。
【0199】
ある態様において、RNAi物質は、2本鎖の5’末端のアンチセンス鎖の解離を促進するために以下の群から独立して選ばれるアンチセンス鎖の5’末端から2本鎖領域内の最初の1、2、3、4、または5塩基対の少なくとも1を含む:A:U、G:U、I:C、およびミスマッチ対、例えば、非正準対合または正準対合以外、またはユニバーサル塩基を含む対合。
【0200】
ある態様において、アンチセンス鎖の5’末端から2本鎖領域内の1位のヌクレオチドは、A、dA、dU、U、およびdTからなる群から選ばれる。あるいはまた、アンチセンス鎖の5’末端から2本鎖領域内の最初の1、2または3塩基対の少なくとも1はAU塩基対である。例えば、アンチセンス鎖の5’末端から2本鎖領域内の最初の塩基対はAU塩基対である。
【0201】
別の態様において、センス鎖の3’末端のヌクレオチドはデオキシチミン(dT)である。別の態様において、アンチセンス鎖の3’末端のヌクレオチドはデオキシチミン(dT)である。ある態様において、デオキシチミンヌクレオチドの短い配列、例えばセンスおよび/またはアンチセンス鎖の3’末端の2 dTヌクレオチドがある。
【0202】
ある態様において、センス鎖配列は下記式(I)で示すことができる:
5’n
p-N
a-(XXX )
i-N
b-YYY-N
b-(ZZZ )
j-N
a-n
q 3’(I)
[式中、iおよびjはそれぞれ独立して0または1である;
pおよびqはそれぞれ独立して0〜6である;
Naはそれぞれ独立して0〜25修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は少なくとも2の異なる修飾ヌクレオチドを含む;
N
bはそれぞれ独立して0〜10修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す;
NpおよびNqそれぞれ独立してオーバーハングヌクレオチドを表す;
N
bおよびYは同じ修飾を有さない;および
XXX、YYY、およびZZZはそれぞれ独立して3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の1モチーフを表す。]。好ましくは、YYYはすべて2’-F 修飾ヌクレオチドである。
【0203】
ある態様において、Naおよび/またはN
bは交互パターンの修飾を含む。ある態様において、YYYモチーフはセンス鎖の開裂部位かまたはその付近に生じる。例えば、RNAi物質が17〜23ヌクレオチドの長さの2領域を有する場合は、YYYモチーフは、センス鎖の開裂部位またはその付近に生じうる(例えば、6、7、8、7、8、9、8、9、10、9、10、11、10、11、12位、または11、12、13位(5’末端から第1ヌクレオチドから数え始めるか、または所望により5’末端から2本鎖領域内の第1対合ヌクレオチドから数え始める)に生じうる)。
【0204】
ある態様において、iは1であり、jは0であるか、またはiは0であり、jは1であるか、またはiとjが共に1である。したがって、センス鎖は下記式で表すことができる:
5’n
p-N
a-YYY-N
b-ZZZ-N
a-n
q 3’(Ib);
5’n
p-N
a-XXX-N
b-YYY-N
a-n
q 3’(Ic);または
5’n
p-N
a-XXX-N
b-YYY-N
b-ZZZ-N
a-n
q 3’(Id)。
【0205】
センス鎖が式(Ib)で示される場合は、N
bは、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2または0 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。Naはそれぞれ独立して2〜20、2〜15、または2〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表すことができる。
【0206】
センス鎖が式(Ic)で示される場合は、N
bは0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2または0 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。Naはそれぞれ独立して2〜20、2〜15、または2〜10修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表しうる。
【0207】
センス鎖が式(Id)で示される場合は、N
bはそれぞれ独立して0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2または0 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。好ましくは、N
bは0、1、2、3、4、5または6である。Naは、それぞれ独立して2〜20、2〜15、または2〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表しうる。
【0208】
X、Y、およびZはそれぞれ同じかまたは互いに異なりうる。
【0209】
他の態様において、iは0であり、jは0であり、センス鎖は式:
5’n
p-N
a-YYY-N
a-n
q 3’(Ia)
で示されうる。
【0210】
センス鎖が式(Ia)で示される場合は、N
aはそれぞれ独立して2〜20、2〜15、または2〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表しうる。
【0211】
ある態様において、RNAiのアンチセンス鎖配列は下記式(II)で示されうる:
5’n
q’-N
a’-(Z’Z’Z’)
k-N
b’-Y’Y’Y’-N
b’-(X’X’X’)
l-N’
a-n
p’3’(II)
[式中、kおよびlはそれぞれ独立して0または1である;
p’およびq’はそれぞれ独立して0〜6である;
N
a’はそれぞれ独立して0〜25修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は
少なくとも2の異なる修飾ヌクレオチドを含む;
N
b’はそれぞれ独立して0〜10修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す;
Np’およびn
q’はそれぞれ独立してオーバーハングヌクレオチドを表す;
N
b’およびY’は同じ修飾を有さない;および
X’X’X’、Y’Y’Y’およびZ’Z’Z’はそれぞれ独立して3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の1モチーフを表す。]。
【0212】
ある態様において、N
a’および/またはN
b’は交互パターンの修飾を含む。
【0213】
Y’Y’Y’モチーフはアンチセンス鎖の開裂部位またはその付近に生じる。例えば、RNAi物質が17〜23ヌクレオチドの長さの2本鎖領域を有する場合は、Y’Y’Y’モチーフはアンチセンス鎖の9、10、11位;10、11、12位;11、12、13位;12、13、14位;または13、14、15位に生じうる(5’末端から第1ヌクレオチドから数え始めるか、または所望により、5’末端から2本鎖領域内の第1対合ヌクレオチドから数え始める)。
【0214】
好ましくは、Y’Y’Y’モチーフは11、12、13位に生じる。
【0215】
ある態様において、Y’Y’Y’モチーフはすべて2’-OMe修飾ヌクレオチドである。
【0216】
ある態様において、kは1であり、lが0であるか、またはkは0であり、lが1であるか、またはkとlの両方が1である。
【0217】
したがって、アンチセンス鎖は下記式で示されうる:
5’n
q’-N
a’-Z’Z’Z’-N
b’-Y’Y’Y’-N
a’-n
p’3’(IIb);
5’n
q’-N
a’-Y’Y’Y’-N
b’-X’X’X’-n
p’3’(IIc);または
5’n
q’-N
a’-Z’Z’Z’-N
b’-Y’Y’Y’-N
b’-X’X’X’-N
a’-n
p’3’(IId)。
【0218】
アンチセンス鎖が式(IIb)で示される場合は、N
b’は0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2または0 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。N
a’はそれぞれ独立して2〜20、2〜15、または2〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0219】
アンチセンス鎖が式(IIc)で示される場合は、N
b’は0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2または0 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。N
a’はそれぞれ独立して2〜20、2〜15、または2〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0220】
アンチセンス鎖が式(IId)で示される場合は、N
b’はそれぞれ独立して0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2または0 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。N
a’はそれぞれ独立して2〜20、2〜15、または2〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。好ましくは、N
bは0、1、2、3、4、5または6である。
【0221】
他の態様において、kは0であり、lは0であり、アンチセンス鎖は式:
5’n
p’-N
a’-Y’Y’Y’-N
a’-n
q’3’(Ia)
で示される。
【0222】
アンチセンス鎖が式(IIa)で示される場合は、N
a’はそれぞれ独立して2〜20、2〜15、または2〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0223】
X’、Y’およびZ’はそれぞれ同じかまたは互いに異なりうる。
【0224】
センス鎖およびアンチセンス鎖のヌクレオチドは、それぞれ独立してLNA、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-ヒドロキシル、または2’-フルオロで修飾されうる。例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖のヌクレオチドは、それぞれ独立して2’-O-メチルまたは2’-フルオロで修飾される。特に各X、Y、Z、X’、Y’およびZ’は2’-O-メチル 修飾または2’-フルオロ修飾を表しうる。
【0225】
ある態様において、RNAi物質のセンス鎖は、2本鎖領域が21ntである場合に該鎖の9、10、および11位に生じるYYYモチーフを含みうる(5’末端から第1ヌクレオチドから数え始めるか、または所望により5’末端から2本鎖領域内の第1対合ヌクレオチドから数え始める。Yは2’-F 修飾を表す)。センス鎖はさらに2本鎖領域の反対側の末端にウイング修飾としてXXXモチーフまたはZZZモチーフを含むことがあり、XXXおよびZZZはそれぞれ独立して2’-OMe 修飾または2’-F 修飾を表す。
【0226】
ある態様において、アンチセンス鎖は、該鎖の11、12、13位に生じるY’Y’Y’モチーフを含みうる(5’末端から第1ヌクレオチドから数え始めるか、または所望により5’末端から2本鎖領域内の第1対合ヌクレオチドから数え始める。Y’は2’-O-メチル修飾を表す。)。アンチセンス鎖はさらに2本鎖領域の反対側の末端にウイング修飾としてX’X’X’モチーフまたはZ’Z’Z’モチーフを含むことがあり、X’X’X’およびZ’Z’Z’はそれぞれ独立して2’-OMe 修飾または2’-F 修飾を表す。
【0227】
上記式(Ia)、(Ib)、(Ic)、および(Id)のいずれかで示されるセンス鎖は、それぞれ式(IIa)、(IIb)、(IIc)、および(IId)のいずれかで示されるアンチセンス鎖と2本鎖を形成する。
【0228】
したがって、本発明の方法に用いるRNAi物質はそれぞれ14〜30ヌクレオチドのセンス鎖およびアンチセンス鎖を含むことがあり、RNAi 2本鎖は下記式(III)で示される:
センス: 5’n
p-N
a-(XXX)
i-N
b-YYY-N
b-(ZZZ)
j-N
a-n
q 3’
アンチセンス: 3’n
p’-N
a’-(X’X’X’)
k-N
b’-Y’Y’Y’-N
b’-(Z’Z’Z’)
l-N
a’-n
q’5'
(III)
[式中、i、j、k、およびlはそれぞれ独立して0または1である;
p、p’、q、およびq’はそれぞれ独立して0〜6である;
NaおよびN
a’はそれぞれ独立して0〜25 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は少なくとも2の異なる修飾ヌクレオチドを含む;
N
bおよびN
b’はそれぞれ独立して0〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す;
それぞれNp’、n
p、n
q’、およびn
q(それぞれ存在していてもいなくてもよい)は独立してオーバーハングヌクレオチドを表す;および
XXX、YYY、ZZZ、X’X’X’、Y’Y’Y’、およびZ’Z’Z’はそれぞれ独立して3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の1モチーフを表す。]。
【0229】
ある態様において、iは0であり、jは0であるか;またはiは1であり、jは0であるか;またはiが0であり、jが1であるか;またはiおよびjが共に0であるか;またはiおよびjが共に1である。別の態様において、kは0であり、lは0であるか;またはkは1であり、lは0であるか;kが0であり、lが1であるか;またはkとlの両方が0であるか;またはkとlの両方が1である。
【0230】
RNAi 2本鎖を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖の典型的組み合わせは下記式を含む:
5’n
p-N
a-YYY-N
a-n
q 3’
3’n
p’-N
a’-Y’Y’Y’-N
a’n
q’5’
(IIIa)
5’n
p-N
a-YYY-N
b-ZZZ-N
a-n
q 3’
3’n
p’-N
a’-Y’Y’Y’-N
b’-Z’Z’Z’-N
a’n
q’5’
(IIIb)
5’n
p-N
a-XXX-N
b-YYY-N
a-n
q 3’
3’n
p’-N
a’-X’X’X’-N
b’-Y’Y’Y’-N
a’-n
q’5'
(IIIc)
5’n
p-N
a-XXX-N
b-YYY-N
b-ZZZ-N
a-n
q 3’
3’n
p’-N
a’-X’X’X’-N
b’-Y’Y’Y’-N
b’-Z’Z’Z’-N
a-n
q’5’
(IIId)。
【0231】
RNAi物質が式(IIIa)で示される場合は、Naはそれぞれ独立して2〜20、2〜15、または2〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0232】
RNAi物質が式(IIIb)で示される場合は、N
bはそれぞれ独立して1〜10、1〜7、1〜5または1〜4 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。Na はそれぞれ独立して2〜20、2〜15、または2〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0233】
RNAi物質が式(IIIc)で示される場合は、N
b、N
b’はそれぞれ独立して0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2または0修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。それぞれNa は独立して2〜20、2〜15、または2〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0234】
RNAi物質が式(IIId)で示される場合は、N
b、N
b’はそれぞれ独立して0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2または0修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。N
a、N
a’はそれぞれ独立して2〜20、2〜15、または2〜10 修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。Na、N
a’、N
bおよびN
b’はそれぞれ独立して交互パターンの修飾を含む。
【0235】
式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)中のX、Y、およびZはそれぞれ同じかまたは互いに異なり得る。
【0236】
RNAi物質が式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)で示される場合は、Yヌクレオチドの少なくとも1がY’ヌクレオチドの1つと塩基対を形成しうる。あるいはまた、Yヌクレオチドの少なくとも2が対応するY’ヌクレオチドと塩基対を形成しうるか;またはYヌクレオチドの3つすべてがすべて対応するY’ヌクレオチドと塩基対を形成しうる。
【0237】
RNAi物質が式(IIIb)または(IIId)で示される場合は、Zヌクレオチドの少なくとも1がZ’ヌクレオチドの1つと塩基対を形成しうる。あるいはまた、Zヌクレオチドの少なくとも2が対応するZ’ヌクレオチドと塩基対を形成するか;またはZヌクレオチドの3つすべてがすべて対応するZ’ヌクレオチドと塩基対を形成する。
【0238】
RNAi物質が式(IIIc)または(IIId)で示される場合は、Xヌクレオチドの少なくとも1がX’ヌクレオチドの1つと塩基対を形成しうる。あるいはまた、Xヌクレオチドの少なくとも2が対応するX’ヌクレオチドと塩基対を形成するか、またはXヌクレオチドの3つすべてがすべて対応するX’ヌクレオチドと塩基対を形成する。
ある態様において、Yヌクレオチドの修飾はY’ヌクレオチドの修飾と異なり、Zヌクレオチドの修飾はZ’ヌクレオチドの修飾と異なり、および/またはXヌクレオチドの修飾はX’ヌクレオチドの修飾と異なる。
【0239】
ある態様において、RNAi物質が式(IIId)で示される場合は、Na修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾である。別の態様において、RNAi物質が式(IIId)で示される場合は、N
a修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾であり、Np’>0であり、少なくとも1のn
p’が隣り合ったヌクレオチドとホスホロチオエート結合を介して結合している。さらに別の態様において、RNAi物質が式(IIId)で示される場合は、N
a修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾であり、n
p’>0であり、少なくとも1のn
p’が隣り合ったヌクレオチドとホスホロチオエート結合を介して結合しており、センス鎖は二価または三価の分岐鎖リンカーを介して結合した1またはそれ以上のGalNAc誘導体と結合している。別の態様において、RNAi物質が式(IIId)で示される場合は、N
a修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾であり、n
p’>0であり、少なくとも1のn
p’は隣り合ったヌクレオチドとホスホロチオエート結合を介して結合しており、センス鎖は二価または三価の分岐鎖リンカーを介して結合した1またはそれ以上のGalNAc誘導体と結合している。
【0240】
ある態様において、RNAi物質が式(IIIa)で示される場合は、N
a修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾であり、n
p’>0であり、少なくとも1のn
p’は隣り合ったヌクレオチドとホスホロチオエート結合を介して結合しており、センス鎖は二価または三価の分岐鎖リンカーを介して結合した1またはそれ以上のGalNAc誘導体と結合している。
【0241】
ある態様において、RNAi物質は2本鎖がリンカーにより結合している式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)で示される少なくとも2の2本鎖を含むマルチマーである。該リンカーは開裂性または非開裂性でありうる。所望により、該マルチマーはさらにリガンドを含む。各2本鎖は、同じ遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的とすることができるか、または各2本鎖は2つの異なる標的部位の同じ遺伝子を標的とすることができる。
【0242】
ある態様において、RNAi物質は2本鎖がリンカーにより結合している式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)で示される3、4、5、6またはそれ以上の2本鎖を含むマルチマーである。該リンカーは開裂性または非開裂性でありうる。所望により、該マルチマーはさらにリガンドを含む。各2本鎖は、同じ遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的とすることができるか、または各2本鎖は2つの異なる標的部位の同じ遺伝子を標的とすることができる。
【0243】
ある態様において、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)で示される2つのRNAi物質は、5’末端、および3’末端の1または両方で互いに結合し、所望によりリガンドと結合している。各該物質は同じ遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的とすることができるか、または各該物質は2つの異なる標的部位の同じ遺伝子を標的とすることができる。
【0244】
種々の刊行物が本発明の方法に用いることができるマルチマーRNAi物質を開示している。そのような刊行物は、WO2007/091269、米国特許No. 7858769、WO2010/141511、WO2007/117686、WO2009/014887、およびWO2011/031520を含む(これらの全内容は本明細書の一部を構成する)。
【0245】
1またはそれ以上の炭化水素部分とRNAi物質との結合を含むRNAi物質は、RNAi物質の1またはそれ以上の特性を最適化することができる。多くの場合、該炭化水素部分はRNAi物質の修飾サブユニットと結合するだろう。例えば、dsRNA物質の1またはそれ以上のリボヌクレオチドサブユニットのリボース糖は、別の成分、例えば炭化水素リガンドが結合している非多価水素(好ましくは環式)担体と置換することができる。該サブユニットのリボース糖がそのように置換しているリボヌクレオチドサブユニットは、本明細書ではリボース置換修飾サブユニット(RRMS)という。環式担体は炭素環系である(すなわち、すべての環原子が炭素原子である)か、または複素環系(すなわち、1またはそれ以上の環原子がヘテロ原子、例えば窒素、酸素、イオンである)でありうる。該環式担体は、単環系であるか、または2またはそれ以上の環、例えば融合環を含みうる。該環式担体は完全飽和環系であるか、または1またはそれ以上の二重結合を含みうる。
【0246】
該リガンドは担体を介してポリヌクレオチドと結合しうる。該担体は、(i) 少なくとも1の「骨格付着点」、好ましくは2つの「骨格付着点」、および(ii) 少なくとも1の「連結付着点」を含む。本明細書で用いている「骨格付着点」は、官能基、例えばヒドロキシル基、または一般的には該担体のリボ核酸の骨格(例えば、リン酸塩または修飾リン酸塩、例えば硫黄を含む骨格)への取り込みに利用可能なそれに適した結合を表す。ある態様において「連結付着点」(TAP)は、選択した部分と接続する環式担体の構成環原子、例えば炭素原子またはヘテロ原子(骨格付着点をもたらす原子と異なる)を表す。該部分は、例えば炭化水素、例えば単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、および多糖であり得る。所望により、選択した部分を環式担体と介在テザーにより連結する。したがって、環式担体は、しばしば、官能基、例えばアミノ基を含むか、または一般的には、別の化学物質、例えばリガンドの構成環への組み込みまたは連結に適した結合を提供するだろう。
【0247】
RNAi物質は担体を介してリガンドと結合することができ、該担体は環式基または非環式基でありうる。該環式基は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラン、オキサゾリジニル、キソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフリル、およびデカリンから選ばれ、好ましくは、非環式基はセリノール骨格またはジエタノールアミン骨格から選ばれる。
【0248】
ある特定の態様では、本発明の方法に用いるためのRNAi物質は表1、2、5、および7のいずれかに記載の物質の群から選ばれる物質である。これらの物質はさらにリガンドを含みうる。
A. リガンド
【0249】
本発明の2本鎖RNA(dsRNA)物質は、所望により1またはそれ以上のリガンドと結合しうる。リガンドはセンス鎖、アンチセンス鎖、または両鎖の3’末端、5’末端、または両末端に付着する。例えば、リガンドはセンス鎖と結合しうる。好ましい態様において、リガンドはセンス鎖の3’末端と結合する。好ましい態様において、リガンドはGalNAc リガンドである。特に好ましい態様において、リガンドはGalNAc3:
【化3】
である。
【0250】
ある態様において、リガンド、例えばGalNAcリガンドはRNAi物質の3’末端に付着する。ある態様において、RNAi物質は下記略図に示すようにリガンド、例えばGalNAcリガンドと結合する:
【化4】
[式中、XはOまたはSである。]。ある態様において、XはOである。
【0251】
多種多様なエンティティを本発明のRNAi物質と結合させることができる。好ましい部分は直接または介在テザーを介して間接的に結合、好ましくは共有結合することができるリガンドである。
【0252】
好ましい態様において、リガンドはそれが結合する分子の分布、標的化、または寿命を変化させる。
【0253】
好ましい態様において、リガンドは、そのようなリガンドを欠く種に比べて、標的、例えば、分子、細胞、または細胞種、コンパートメント、レセプター、例えば細胞または器官コンパートメント、組織、器官、または身体の領域に対する親和性の増強をもたらす。選択した標的に対する親和性の増強をもたらすリガンドは標的化リガンドともいう。
【0254】
あるリガンドはエンドソーム溶解特性を有しうる。エンドソーム溶解リガンドはエンドソームの溶解および/または本発明組成物またはその成分のエンドソームから細胞の細胞質への輸送を促進する。エンドソーム溶解リガンドは、pH依存性膜活性および膜融合性(fusogenicity)を示すポリアニオン性ペプチドまたはペプチド模倣物でありうる。ある態様において、エンドソーム溶解リガンドは、エンドソームpHでその活性コンフォメーションをとる。「活性」コンフォメーションは、エンドソーム溶解リガンドがエンドソームの溶解、および/または本発明組成物またはその成分のエンドソームから細胞の細胞質への輸送を促進するコンフォメーションである。典型的なエンドソーム溶解リガンドは、GALAペプチド(Subbarao et al.、Biochemistry、1987、26: 2964-2972)、EALAペプチド(Vogel et al.、J. Am. Chem. Soc.、1996、118: 1581-1586)、およびそれらの誘導体(Turk et al.、Biochem. Biophys. Acta、2002、1559: 56-68)を含む。ある態様において、エンドソーム溶解成分は、pHの変化に応じて荷電変化またはプロトン化を受ける化学基(例えばアミノ酸)を含みうる。エンドソーム溶解成分は直線状または分岐状でありうる。
【0255】
リガンドは、輸送、ハイブリダイゼーション、および特異性特性を改善するとができ、結果として生じる天然または修飾オリゴリボヌクレオチド、または本明細書に記載のモノマーおよび/または天然または修飾リボヌクレオチドのあらゆる組み合わせを含むポリマー分子のヌクレアーゼ耐性も改善しうる。一般的にリガンドは、例えば取り込みを増強するための治療的修飾因子;例えば分布をモニターするための診断的化合物またはレポーター基;架橋剤;およびヌクレアーゼ耐性付与部分を含みうる。一般的な例は、脂質、ステロイド、ビタミン、糖、タンパク質、ペプチド、ポリアミン、およびペプチド模倣物を含む。
【0256】
リガンドは、天然物質、例えばタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)、またはグロブリン);炭化水素(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、またはヒアルロン酸);または脂質を含みうる。リガンドは、組換えまたは合成分子、例えば合成ポリマー、例えば合成ポリアミノ酸、オリゴヌクレオチド(例えばアプタマー)でもありうる。ポリアミノ酸の例は、ポリリジン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル-無水マレイン酸コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンを含む。
【0257】
ポリアミンの例は以下のものを含む:ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、シュードペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣物ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポリフィリン、ポリアミンの4級塩、またはαヘリックスのペプチド。
【0258】
リガンドは、標的群、例えば細胞または組織標的物質、例えば、レシチン、糖タンパク質、脂質、またはタンパク質、例えば腎細胞などの特定の細胞種と結合する抗体も含みうる。標的群は、サイロトロピン、メラノトロピン、レシチン、糖タンパク質、界面活性剤プロテインA、ムチン炭化水素、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価 マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタメート、ポリアスパルテート、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、フォレート、ビタミンB12、ビオチン、RGDペプチド、RGDペプチド模倣物、またはアプタマーを含みうる。
【0259】
リガンドの他の例は以下のものを含む:染料、挿入剤(例えばアクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポリフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼまたはキレート剤(例えば、EDTA)、脂溶性分子、例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレイン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸塩、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射標識マーカー、酵素、ヘプタン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼs(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒンスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾールコンジュゲート、テトラアザ大環状化合物のEu3+複合体)、ジニトロフェニル、HRP、またはAP。
【0260】
リガンドは、タンパク質、例えば、糖タンパク質、またはペプチド、例えばコリガンドと特異的親和性を有する分子、または抗体、例えば、特定の細胞種、例えば癌細胞、内皮細胞、または骨細胞と結合する抗体でありうる。リガンドはホルモンおよびホルモンレセプターも含みうる。リガンドは、非ペプチド種、例えば脂質、レクチン、炭化水素、ビタミン、コファクター、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース、またはアプタマーも含むことができる。リガンドは、例えは、リポ多糖、p38 MAPキナーゼの活性化因子、またはNF-κBの活性化因子でありうる。リガンドは、例えば細胞の細胞骨格を破壊することにより、例えば細胞の微小管、マイクロフィラメント、および/または中間フィラメントを破壊することによりiRNA物質の細胞内への取り込みを増加させることができる薬剤などの物質でありうる。該薬剤は、例えばタキソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャスプラキノリド、ラトルンクリンA、パロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビンでありうる。リガンドは、例えば炎症反応を活性化することによりオリゴヌクレオチドの細胞への取り込みを増加させることができる。そのような効果を有する典型的なリガンドは、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン-1β、またはγインターフェロンを含む。
【0261】
ある局面において、リガンドは脂質または脂質ベースの分子である。そのような脂質または脂質ベースの分子は、好ましくは血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン(HSA)と結合する。HSA結合リガンドは、標的組織、例えば身体の非腎臓標的組織に対するコンジュゲートの分布を可能にする。例えば、標的組織は肝臓(肝臓の実質細胞を含む)でありうる。HSAと結合することができる他の分子はリガンドとして用いることもできる。例えば、ナプロキセンまたはアスピリンを用いることができる。脂質または脂質ベースのリガンドは、(a)コンジュゲートの分解に対する抵抗性を増加し、(b)標的化、または標的細胞または細胞膜への輸送を増加し、および/または(c)血清タンパク質、例えばHSAへの結合を調節するために用いることができる。
【0262】
脂質ベースのリガンドは、標的組織へのコンジュゲートの結合を調節(例えば制御)するのに用いることができる。例えば、HSAにより強く結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、腎臓を標的とする可能性が低いため、身体から除去される可能性がひくいだろう。HSAとの結合があまり強くない脂質または脂質ベースのリガンドはコンジュゲートを腎臓に標的化するのに用いることができる。
【0263】
好ましい態様において、脂質ベースのリガンドはHSAと結合する。好ましくは、該リガンドは、該コンジュゲートが好ましくは非腎臓組織に分布するように充分な親和性でHSAと結合する。しかしながら、親和性がHSA-リガンド結合が逆転できないほど強くないことが好ましい。
【0264】
別の好ましい態様において、脂質ベースのリガンドはHSAと弱く結合するか、または全く結合せず、該コンジュゲートは好ましくは腎臓に分布する。腎細胞を標的とする他の部分も脂質ベースのリガンドの代わりまたはそれに加えて用いることができる。
【0265】
別の局面において、該リガンドは増殖細胞などの標的細胞が取り込むビタミンなどの部分である。これらは、例えば悪性または非悪性種、例えば癌細胞の望まない細胞増殖を特徴とする疾患を治療するのに有用である。典型的なビタミンは、ビタミンA、E、およびKを含む。他の典型的なビタミンは、ビタミンB、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサル、または癌細胞に取り込まれる他のビタミンまたは栄養素を含む。HAS、低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質(HDL)も含まれる。
【0266】
別の局面において、リガンドは細胞浸透物質、好ましくはヘリックス細胞浸透物質である。好ましくは、該物質は両親媒性である。典型的な物質はtatまたはアンテノペディアなどのペプチドである。該物質がペプチドである場合は修飾することができ、ペプチジル模倣物、逆転変異体、非ペプチド、またはシュードペプチド結合、およびDアミノ酸の使用が含まれる。ヘリックス物質は好ましくは、好ましくは脂溶性および疎油性相を有するαヘリックス剤である。
【0267】
リガンドはペプチドまたはペプチド模倣物でありうる。ペプチド模倣物(本明細書ではオリゴペプチド模倣物ともいう)は、天然ペプチドと同様の明確な3次元構造にホールドすることができる分子である。該ペプチドまたはペプチド模倣物部分は約5〜50アミノ酸の長さ、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸の長さでありうる。ペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば細胞浸透ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば、主としてTyr、Trp、またはPheからなる)でありうる。該ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、拘束ペプチド、または架橋ペプチドでありうる。別の代替手段では、該ペプチド部分は、疎水性膜転移配列(MTS)を含むことができる。典型的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAP(配列番号29)を有するRFGFである。疎水性MTSを含むRFGFアナログ(例えばアミノ酸配列 AALLPVLLAAP(配列番号30))は、標的化部分も含みうる。該ペプチド部分は、細胞膜を横切るペプチド、オリゴヌクレオチド、およびタンパク質を含む大極性分子を運ぶことができる「送達」ペプチドでありうる。例えば、HIV Tatタンパク質由来の配列(GRKKRRQRRRPPQ;配列番号31)およびDrosophila Antennapediaタンパク質由来の配列(RQIKIWFQNRRMKWKK;配列番号32)は、送達ペプチドとして機能することができることが解っている。ペプチドまたはペプチド模倣物は、ファージディスプレイライブラリーまたは1ビーズ1化合物(OBOC)組み合わせライブラリーから同定されたペプチドなどのDNAのランダム配列によりコードされうる(Lam et al.、Nature、354:82-84、1991)。好ましくは、組み込んだモノマー単位を介してiRNA物質と結合するペプチドまたはペプチド模倣物は、細胞標的化ペプチド、例えばアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)-ペプチド、またはRGD模倣物である。ペプチド部分は約5アミノ酸〜約40アミノ酸の長さの範囲でありうる。該ペプチド部分は、例えば安定性または直接コンフォメーション特性を増加させる構造的修飾を有しうる。下記構造修飾のいずれかを用いることができる。RGDペプチド部分は、標的細胞、例えば内皮腫瘍細胞または乳癌細胞を標的とするために用いることができる(Zitzmann et al.、Cancer Res.、62:5139-43、2002)。RGDペプチドは、肺、腎臓、脾臓、または肝臓を含む種々の他の組織の腫瘍に対するiRNA物質の標的化を促進ことができる(Aoki et al.、Cancer Gene Therapy 8:783-787、2001)。好ましくは、RGDペプチドは腎臓へのiRNA物質の標的化を促進するだろう。RGDペプチドは、直線状または環状でありえ、特定組織への標的化を促進するために修飾(例えばグリコシル化またはメチル化)することができる。例えば、グリコシル化RGDペプチドは、αVβ3発現腫瘍細胞にiRNA物質を送達することができる(Haubner et al.、Jour. Nucl. Med.、42:326-336、2001)。増殖細胞中に豊富化されたマーカーを標的とするペプチドを用いることができる。例えば、ペプチドおよびペプチド模倣物を含むRGDは癌細胞、特にインテグリンを提示する細胞を標的とすることができる。したがって、RGD ペプチド、RGDを含む環状ペプチド、D-アミノ酸を含むRGDペプチド、および合成RGD模倣物を用いうる。RGDに加えて、インテグリンリガンドを標的とする他の部分を用いることができる。一般的には、そのようなリガンドを用いて増殖細胞および血管新生を制御することができる。好ましいこのタイプのリガンドのコンジュゲートは、PECAM-1、VEGF、または他の癌遺伝子、例えば本明細書に記載の癌遺伝子を標的とする。
【0268】
「細胞浸透ペプチド」は細胞、例えば微生物細胞、例えば細菌または真菌細胞、または哺乳動物細胞、例えばヒト細胞に浸透することができる。微生物細胞浸透ペプチドは、例えばα-ヘリックス線状ペプチド(例えば、LL-37またはセロピンP1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えば、α-デフェンシン、β-デフェンシン、またはバクテネシン)、または1または2つだけ優性アミノ酸を含むペプチド(例えば、PR-39またはインドリシジン)を含みうる。細胞浸透ペプチドは、核局在シグナル(NLS)も含みうる。例えば、細胞浸透ペプチドは、HIV-1 gp41とSV40大T抗原のNLSの融合ペプチドドメイン由来のMPGなどの二連両親媒性ペプチドでありうる(Simeoni et al.、Nucl. Acids Res. 31:2717〜2724、2003)。
【0269】
ある態様において、標的とするペプチドは、両親媒性α-ヘリックスペプチドでありうる。典型的な両親媒性α-ヘリックスペプチドは、限定されるものではないが以下のものを含む:セクロピン、リコトキシン、パラダキシン、ブロリン、CPF、ボンビニン様ペプチド(BLP)、カテリシジン、セラトトキシン、S. clavaペプチド、メクラウナギ腸抗菌性ペプチド(HFIAP)、マガイニン、ブレビニン-2、デルマセプチン、メリチン、プレウロシジン、H2Aペプチド、アフリカツメガエルペプチド、エスクレンチニス-1、およびカエリン。好ましくは、多くの因子がヘリックス安定性の完全性を維持すると考えられる。例えば、最大数のヘリックス安定化残基を利用し(例えば、leu、ala、またはlys)、最小数のヘリックス不安定化残基が利用されるだろう(例えばプロリンまたは環状モノマー単位)。キャッピング残基が考慮され(例えばGlyは典型的なN-キャッピング残基である)、および/またはC-末端アミド化を用いて余分なH結合を提供しヘリックスを安定化することができる。)。i±3またはi±4位で分離される逆荷電の残基間の塩架橋の形成は安定性をもたらすことができる。例えば、カチオン性残基、例えば、リジン、アルギニン、ホモ-アルギニン、オルニチン、またはヒスチジンは、アニオン性残基のグルタメートまたはアスパルテートで塩架橋を形成することができる。
【0270】
ペプチドおよびペプチド模倣物リガンドは、
天然または修飾ペプチド、例えば、DまたはL-ペプチド;α、β、またはγペプチド;N-メチルペプチド;アザペプチド;1またはそれ以上のアミドを有するペプチド、すなわち結合が1またはそれ以上のウレア、チオウレア、カルバメート、またはスルホニル尿素結合で置換したペプチド;または環状ペプチドを揺するものを含む。
【0271】
標的化リガンドは、特定のレセプターを標的にすることができるあらゆるリガンドでありうる。例には、ホーレート、GalNAc、ガラクトース、マンノース、マンノース-6P、糖のクラスター、例えばGalNAcクラスター、マンノースクラスター、ガラクトースクラスター、またはアプタマーがある。クラスターは2またはそれ以上の糖単位の組み合わせである。標的化リガンドは、インテグリンレセプターリガンド、ケモカインレセプターリガンド、トランスフェリン、ビオチン、セロトニンレセプターリガンド、PSMA、エンドテリン、GCPII、ソマトスタチン、LDLおよびHDLリガンドも含む。該リガンドは核酸ベースもありうる(例えばアプタマー)。アプタマーは非修飾かまたは本明細書に記載の修飾のあらゆる組み合わせを有しうる。
【0272】
エンドソーム放出物質は以下のものを含む:イミダゾール、ポリまたはオリゴイミダゾール、PEI、ペプチド、融合性ペプチド、ポリカルボキシレート、ポリアカチオン、マスクされたオリゴまたはポリカチオンまたはアニオン、アセタール、ポリアセタール、ケタール/ポリケタール、アルソエステル、マスクされるかまたは非マスクのカチオンまたはアニオン荷電を有するポリマー、マスクされるかまたは非マスクのカチオンまたはアニオン荷電を有するデントリマー。
【0273】
PKモジュレーターは薬物動態モジュレーターを表す。PKモジュレーターは、リポフィル、胆汁酸、ステロイド、リン脂質アナログ、ペプチド、タンパク質結合物質、PEG、ビタミンなどを含む。典型的PKモジュレーターは、限定されるものではないが、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチンなどを含む。多くのホスホロチオエート結合を含むオリゴヌクレオチドは血清タンパク質と結合することも知られており、したがって、短いオリゴヌクレオチド、例えば骨格に複数のホスホロチオエート結合を含む約5塩基、10塩基、15塩基、または20塩基のオリゴヌクレオチドなどの短いオリゴヌクレオチドもリガンド(例えばPK調節リガンドとして)として本発明に適応する。
【0274】
さらに、血清成分(例えば血清タンパク質)と結合するアプタマーもPK調節リガンドとして本発明に適応する。
【0275】
本発明に適応する他のリガンドコンジュゲートは以下に記載されている:米国特許出願USSN: 10/916,185、2004年8月10日出願;USSN:10/946,873、2004年9月21日出願;USSN:10/833,934、2007年8月3日出願;USSN:11/115,989、2005年4月27日出願、およびUSSN:11/944,227、2007年11月21日出願(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。
【0276】
2またはそれ以上のリガンドが存在する場合は、該リガンドがすべて同じ特性を持つか、すべてが異なる特性を持つか、またはいくつかのリガンドが同じ特性を持ち、その他が異なる特性を持ちうる。例えば、リガンドは、標的化特性を有するか、エンドソーム溶解活性を有するか、またはPK調節特性を有しうる。好ましい態様において、すべてのリガンドが異なる特性を有する。
【0277】
リガンドは、種々の場所、例えば、3’末端、5’末端、および/または内部の位置でオリゴヌクレオチドと結合することができる。好ましい態様において、該リガンドは、介在テザー、例えば本明細書に記載の担体を介してオリゴヌクレオチドと結合する。リガンドまたはデザードリガンドは、モノマーを成長している鎖に組み込むとモノマー上に存在しうる。ある態様において、リガンドは、「前駆体」モノマーを成長している鎖内に組み込んだ後に「前駆体」モノマーにカップリングにより組み込むことができる。例えば、アミノ終端テザー(すなわち、結合リガンドがない)を有するモノマー(例えばTAP-(CH
2)
nNH
2)を、成長しているオリゴヌクレオチド鎖に組み込むことができる。次の操作において(すなわち前駆体モノマーを該鎖に組み込んだ後に)、求電子基、例えばペンタフルオロフェニルエステルまたはアルデヒド基を有するリガンドを、リガンドの求電子基と前駆体モノマーのテザーの末端求核基をカップリングすることにより前駆体モノマーに結合させることができる。
【0278】
別の例において、クリックケミストリー反応に参加するのに適した化学基を有するモノマーを組み込むことができる(例えばアジドまたはアルキン終端テザー/リンカー)。次の操作において(すなわち前駆体モノマーを該鎖に組み込んだ後に)、相補的化学基、例えばアルキンまたはアジドを有するリガンドを、アルキンとアジドを一緒にカップリングすることにより前駆体モノマーと結合させることができる。
【0279】
2本鎖オリゴヌクレオチドではリガンドを1本または両方の鎖と結合することができる。ある態様において、2本鎖iRNA物質はセンス鎖と結合したリガンドを含む。他の態様において、2本鎖iRNA物質はアンチセンス鎖と結合したリガンドを含む。
【0280】
ある態様において、リガンドは、核酸分子の核酸塩基、糖部分、またはヌクレオシド間結合と結合することができる。プリン核酸塩基またはその誘導体との結合は、環内および環外原子を含むあらゆる位置に生じうる。ある態様では、プリン核酸塩基の2、6、7、または8位をコンジュゲート部分と結合する。ピリミジン核酸塩基またはその誘導体との結合もあらゆる位置に生じうる。ある態様では、ピリミジン核酸塩基の2、5、および6位をコンジュゲート部分で置換することができる。ヌクレオシドの糖部分との結合はあらゆる炭素原子に生じうる。コンジュゲート部分と結合することができる糖部分の炭素原子の例は2'、3'、および5’炭素原子を含む。1’位をコンジュゲート部分(例えば脱塩基残基)と結合させることもできる。ヌクレオシド間結合はコンジュゲート部分も有しうる。リン含有結合(例えばホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオテート、ホスホロアミデートなど)では、コンジュゲート部分はリン原子、またはリン原子と結合したO、N、またはS原子と直接結合することができる。アミンまたはアミド含有ヌクレオシド間結合(例えばPNA)では、コンジュゲート部分はアミンまたはアミドの窒素原子または隣り合った炭素原子と結合することができる。
【0281】
RNA干渉の分野のあらゆる適切なリガンドを用いることができるが、リガンドは典型的には炭化水素、例えば単糖(例えばGalNAc)、二糖、三糖、四糖、多糖である。
【0282】
リガンドと核酸と結合するリンカーは上記のものを含む。例えば、リガンドは二価または三価の分岐鎖リンカーを介して結合した1またはそれ以上のGalNAc(N-アセチルグルコサミン)誘導体でありうる。
【0283】
ある態様において、本発明のdsRNAは、下記式(IV)〜(VII)のいずれかに示す構造を含む二価または三価分岐鎖リンカーと結合している:
【化5】
[式中、q
2A、q
2B、q
3A、q
3B、q
4A、q
4B、q
5A、q
5B、およびq
5Cは独立して存在ごとに0〜20を表し、反復単位は同じかまたは異なりうる;
P
2A、P
2B、P
3A、P
3B、P
4A、P
4B、P
5A、P
5B、P
5C、T
2A、T
2B、T
3A、T
3B、T
4A、T
4B、T
4A、T
5B、T
5Cは、それぞれ独立して存在ごとに、無か、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NH、またはCH
2Oである;
Q
2A、Q
2B、Q
3A、Q
3B、Q
4A、Q
4B、Q
5A、Q
5B、Q
5Cは、独立して存在ごとに、無か、アルキレン、置換アルキレン(ここで、1またはそれ以上のメチレンはO、S、S(O)、SO
2、N(RN)、C(R’)=C(R”)、C
=C、またはC(O)の1またはそれ以上で断続または終端しうる。);
R
2A、R
2B、R
3A、R
3B、R
4A、R
4B、R
5A、R
5B、R
5Cは、それぞれ独立して存在ごとに、無か、NH、O、S、CH
2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R
a)C(O),-C(O)-CH(R
a)-NH-、CO、CH=N-O、
【化6】
、またはヘテロサイクリルである;
L
2A、L
2B、L
3A、L
3B、L
4A、L
4B、L
5A、L
5BおよびL
5Cはリガンドを表す(すなわち、それぞれ独立して存在ごとに単糖(例えばGalNAc)、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、または多糖);および
R
aはHまたはアミノ酸側鎖である。]。
【0284】
三価結合GalNAc誘導体、例えば下記式(VII)で示すものは、標的遺伝子の発現を阻害するためにRNAi物質とともに用いるのに特に適している:
【化7】
[式中、L
5A、L
5B、およびL
5Cは、単糖、例えばGalNAc誘導体を表す。]。
【0285】
適切な二価および三価分岐鎖リンカー基を結合するGalNAc誘導体の例は、限定されるものではないが下記化合物を含む:
【化8】
【化9】
、または
【化10】
。
【0286】
RNAコンジュゲートの製造法を開示する代表的米国特許は、限定されるものではないが以下のものを含む:米国特許No. 4,828,979;4,948,882;5,218,105;5,525,465;5,541,313;5,545,730;5,552,538;5,578,717、5,580,731;5,591,584;5,109,124;5,118,802;5,138,045;5,414,077;5,486,603;5,512,439;5,578,718;5,608,046;4,587,044;4,605,735;4,667,025;4,762,779;4,789,737;4,824,941;4,835,263;4,876,335;4,904,582;4,958,013;5,082,830;5,112,963;5,214,136;5,082,830;5,112,963;5,214,136;5,245,022;5,254,469;5,258,506;5,262,536;5,272,250;5,292,873;5,317,098;5,371,241、5,391,723;5,416,203、5,451,463;5,510,475;5,512,667;5,514,785;5,565,552;5,567,810;5,574,142;5,585,481;5,587,371;5,595,726;5,597,696;5,599,923;5,599,928および5,688,941;6,294,664;6,320,017;6,576,752;6,783,931;6,900,297;7,037,646;8,106,022(これらの全内容は本明細書の一部を構成する)。
【0287】
一定の化合物の全位置が均一に修飾される必要は無く、実際に、前記修飾の2以上を1つの化合物またはiRNA中の1つのヌクレオシドに組み込むことができる。本発明は、キメラ化合物であるiRNA化合物も含む。
【0288】
本発明の文脈において「キメラ」iRNA化合物または「キメラ」は、それぞれ少なくとも1のモノマー単位を構成する2またはそれ以上の化学的に異なる領域(すなわち、dsRNA化合物の場合はヌクレオチド)を含むiRNA化合物、好ましくはdsRNAである。これらのiRNAは、典型的にはRNAがヌクレアーゼ分解に対する抵抗性が増加し、細胞への取り込みが増加し、および/または標的核酸に対する結合親和性が増加したiRNAをもたらすように修飾されている少なくとも1の領域を含む。さらに、該iRNAのさらなる領域がRNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを開裂することができる酵素の基質として役立ちうる。例として、RNアーゼHは、RNA:DNA 2本鎖のRNA鎖を開裂する細胞エンドヌクレアーゼである。したがって、RNアーゼHの活性化はRNA標的の開裂をもたらし、遺伝子発現のiRNA阻害効率を著しく増強する。したがって、キメラdsRNAを用いると同じ標的領域とハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシdsRNAと比べてより短いiRNAで同等の結果を得ることができることが多い。RNA標的の開裂は、ゲル電気泳動、および必要であれば当該分野で知られた関連核酸ハイブリダイゼーション技術によりルーチン的に検出することができる。
【0289】
場合により、iRNAのRNAは、非リガンド基により修飾することができる。多くの非リガンド分子がiRNAの活性、細胞分布、または細胞取り込みを増強するようiRNAと結合しており、そのような結合の実施方法は科学文献で利用可能である。そのような非リガンド部分は以下のものを含む;脂質部分、例えばコレステロール(Kubo、T. et al.、Biochem. Biophys. Res. Comm.、2007、365(1):54-61;Letsinger et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1989、86:6553)、コール酸(Manoharan et al.、Bioorg. Med. Chem. Lett.、1994、4:1053)、チオエーテル、例えばヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al.、Ann. N.Y. Acad. Sci.、1992、660:306;Manoharan et al.、Bioorg. Med. Chem. Let.、1993、3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al.、Nucl. Acids Res.、1992、20:533)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al.、EMBO J.、1991、10:111;Kabanov et al.、FEBS Lett.、1990、259:327;Svinarchuk et al.、Biochimie、1993、75:49)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-ラク-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム 1,2-ジ-O-ヘキサデシル-ラク-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al.、テトラhedron Lett.、1995、36:3651;Shea et al.、Nucl. Acids Res.、1990、18:3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.、Nucleosides & Nucleotides、1995、14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.、テトラhedron Lett.、1995、36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al.、Biochim. Biophys. Acta、1995、1264:229)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al.、J. Pharmacol. Exp. Ther.、1996、277:923)。そのようなRNAコンジュゲートの製造法を開示する代表的米国特許は上記している。典型的結合プロトコルは、配列の1またはそれ以上の位置にアミノリンカーを有するRNAの合成を含む。次に、アミノ基を、適切なカップリングまたは活性化試薬を用いて結合している分子と反応させる。結合反応は、まだ固体支持体と結合したRNAを用いるかまたは溶液相でRNAの開裂後に行うことができる。HPLCによるRNAコンジュゲートの精製は、典型的には純粋なコンジュゲートをもたらす。
【0290】
ある態様において、本発明の2本鎖RNAi物質はAD-58681、AD-59054、AD-61719、およびAD-61444からなる群から選ばれる。
III. 本発明のiRNAの送達
【0291】
ヒト対象(例えば、それを必要とする対象、例えばSerpina1欠乏関連疾患、例えば、Serpina1欠乏肝疾患の患者)などの対象内の細胞などの細胞への本発明のiRNA物質の送達は多くの種々の方法で達成することができる。例えば、送達はin vitroまたはin vivoで細胞と混合物のiRNAを接触させることにより行うことができる。in vivo送達は、iRNA(例えばdsNRA)を含む組成物を対象に投与することにより直接行うこともできる。あるいはまた、in vivo送達は、iRNAをコードし、その発現をもたらす1またはそれ以上のベクターを投与することにより間接的に行うことができる。これらの代替法をさらに以下に記載する。
【0292】
一般的に、核酸分子のあらゆる送達方法(in vitroまたはin vivo)は、本発明のiRNAと共に用いるのに適応させることができる(例えば、Akhtar S. and Julian RL.(1992) Trends Cell. Biol. 2(5):139-144、およびWO94/02595参照。(これらの内容は本明細書の一部を構成する))。in vivo送達では、iRNA分子を送達するために考慮する因子は、例えば、標的組織における送達分子の生物学的安定性、非特異的効果の防止、および送達分子の蓄積を含む。iRNAの非特異的効果は、局所投与、例えば組織中への直接注射や埋込または調製物の局所投与により最小限にすることができる。治療部位への局所投与は、該物質の局所濃度を最小化し、そうしなければ該物質により損傷するかまたは該物質が分解される可能性がある全身組織への該物質の暴露を制限し、投与するiRNA分子の総用量を低くすることができる。種々の試験がiRNAを局所投与すると遺伝子産物の有効なノックダウンを示している。例えば、カニクイザルへの硝子体内注射(Tolentino、MJ.、et al(2004) Retina 24:132-138)およびマウスへの網膜下注射(Reich、SJ.、et al(2003) Mol. Vis. 9:210-216)によるVEGF dsRNAの眼内送達はともに加齢黄斑変性の実験モデルにおいて血管新生を妨げることが示された。さらに、マウスにおけるdsRNAの直接腫瘍内注射は腫瘍体積を減少させ(Pille、J.、et al(2005) Mol. Ther.11:267-274)、腫瘍保有マウスの生存を延長することができる(Kim、WJ.、et al(2006) Mol. Ther. 14:343-350;Li、S.、et al(2007) Mol. Ther. 15:515-523)。RNA干渉は、直接注射によるCNSへの局所送達(Dorn、G.、et al.(2004) Nucleic Acids 32:e49;Tan、PH.、et al(2005) Gene Ther. 12:59-66;Makimura、H.、et al(2002) BMC Neurosci. 3:18;Shishkina、GT.、et al(2004) Neuroscience 129:521-528;Thakker、ER.、et al(2004) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101:17270-17275;Akaneya,Y.、et al(2005) J. Neurophysiol. 93:594-602)および鼻内投与による肺への局所送達(Howard、KA.、et al(2006) Mol. Ther. 14:476-484;Zhang、X.、et al(2004) J. Biol. Chem. 279:10677-10684;Bitko、V.、et al(2005) Nat. Med. 11:50-55) でも成功することが示されている。疾患を治療するためのiRNAの全身投与のためにRNAを修飾するかまたは薬物送達系を用いて送達することができ、両方法はin vivoでエンドヌクレアーゼとエクソヌクレアーゼによるdsRNAの急速な分解を防ぐように働く。RNAまたは医薬的担体の修飾は、iRNA組成物の標的組織への標的化を可能にし、望ましくない非特異効果を避けることもできる。iRNA分子をコレステロールなどの脂溶性基への化学結合により修飾し、細胞への取り込みを増強し分解を防ぐことができる。例えば、脂溶性コレステロール部分と結合したApoBに対するiRNAをマウスに全身的に注射し、肝臓と空腸の両方にapoB mRNAのノックダウンをもたらした(Soutschek、J.、et al(2004) Nature 432:173-178)。iRNAとアプタマーとの結合は前立腺癌のマウスモデルにおいて腫瘍増殖の阻害と腫瘍退縮の仲介を示した(McNamara、JO.、et al(2006) Nat. Biotechnol. 24:1005-1015)。別の態様において、iRNAはナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、またはカチオン性送達系などの薬物送達系を用いて送達することができる。正荷電カチオン性送達系は、iRNA分子(負荷電)の結合を促進し、負荷電細胞膜での相互作用も増強し、細胞によるiRNAの効率的取り込みを可能にする。カチオン性脂質、デンドリマー、またはポリマーをiRNAと結合させるかまたはiRNAを包む小胞またはミセルを形成するよう誘導することができる(例えば、Kim SH.、et al(2008) Journal of Controlled Release 129(2):107-116参照)。さらに、小胞またはミセルの形成は全身投与したときのiRNAの分解を防ぐ。カチオン性iRNA複合体の製造および投与方法は十分当業者の能力内にある(例えば、Sorensen、DR.、et al(2003) J. Mol. Biol 327:761-766;Verma、UN.、et al(2003) Clin. Cancer Res. 9:1291-1300;Arnold、AS et al(2007) J. Hypertens. 25:197-205参照(これらの内容は本明細書の一部を構成する))。iRNAの全身送達に有用な薬物送達系の非限定的例はいかのものを含む:DOTAP(Sorensen、DR.、et al(2003)上記;Verma、UN.、et al(2003)上記)、オリゴフェクタミン、「固体核酸脂質粒子」(Zimmermann、TS.、et al(2006) Nature 441:111-114)、カルディオリピン(Chien、PY.、et al(2005) Cancer Gene Ther. 12:321-328;Pal、A.、et al(2005) Int J. Oncol. 26:1087-1091)、ポリエチレンイミン(Bonnet ME.、et al(2008) Pharm. Res. 8月16日、印刷前にEpub;Aigner、A.(2006) J. Biomed. Biotechnol. 71659)、Arg-Gly-Asp(RGD) ペプチド(Liu、S.(2006) Mol. Pharm. 3:472-487)、およびポリアミドアミン(Tomalia、DA.、et al(2007) Biochem. Soc. Trans. 35:61-67;Yoo、H.、et al(1999) Pharm. Res. 16:1799-1804)。ある態様において、iRNAは全身投与のためにシクロデキストリンと複合体を形成する。iRNAとシクロデキストリンの医薬組成物および投与方法は米国特許No. 7,427,605に記載されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。
A. 本発明のiRNAをコードするベクター
【0293】
Serpina1遺伝子を標的とするiRNAは、DNAまたはRNAベクターに挿入した転写単位から発現させることができる(例えば、Couture、A、et al.、TIG.(1996)、12:5-10;Skillern、A.、et al.、国際PCT公開No. WO 00/22113、Conrad、国際PCT公開No. WO 00/22114、およびConrad、米国特許No. 6,054,299参照)。発現は、用いる特定の構築物と標的組織または細胞種に応じて一過性(時間〜週のオーダーで)、または持続的(週〜月またはそれ以上)でありうる。これらの導入遺伝子は、直線状構築物、環状プラスミド、またはウイルスベクター(統合または非統合ベクターでありうる)として導入することができる。導入遺伝子を染色体外プラスミドとして遺伝することができるように構築することもできる(Gassmann、et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1995) 92:1292)。
【0294】
iRNAの個々の鎖(単数または複数)を発現ベクターのプロモーターから転写することができる。2つの分離した鎖を例えばdsRNAを生じるために発現させる場合は、2つの分離した発現ベクターを標的細胞に同時に導入する(例えばトランスフェクションまたは感染による)ことができる。あるいはまた、dsRNAの各個々の鎖を共に同じ発現プラスミド上に位置するプロモーターにより転写することができる。ある態様において、dsRNAをdsRNAがステムおよびループ構造を持つようにリンカーポリヌクレオチド配列により結合した逆方向反復ポリヌクレオチドとして発現させる。
【0295】
iRNA発現ベクターは、一般的にはDNAプラスミドまたはウイルスベクターである。真核細胞と適合する発現ベクター、好ましくは脊椎動物細胞と適合するものは、本明細書に記載のiRNAを発現するための組換え構築物を作製するのに用いることができる。真核細胞発現ベクターは当該分野でよく知られており、多くの商業的供給源から利用可能である。典型的には、望む核酸断片を挿入するのに好都合な制限部位を含むそのようなベクターが提供される。iRNA発現ベクターの送達は、例えば静脈内または筋肉内投与によるか、患者から外植した標的細胞に投与し、次いで該患者に再導入するか、または望む標的細胞への導入を可能にするあらゆる他の手段により全身的でありうる。
【0296】
iRNA発現プラスミドは、カチオン性脂質担体(例えば、オリゴフェクタミン)または非カチオン性脂質ベースの担体(例えば、Transit-TKO(登録商標))との複合体として標的細胞にトランスフェクトすることができる。1週間またはそれ以上の期間にわたり標的RNAの異なる領域を標的とするiRNA仲介ノックダウンのための複数の脂質トランスフェクションも本発明により予期される。宿主細胞へのベクターの導入の成功を種々の既知の方法を用いてモニターすることができる。例えば、一過性トランスフェクションは、レポーター、例えば蛍光マーカー、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)を用いて示すことができる。特定の環境因子(例えば、抗生物質および薬剤)に対する耐性、例えばヒグロマイシンB耐性を有するトランスフェクション細胞をもたらすマーカーを用いてex vivoの細胞の安定なトランスフェクションを保証することができる。
【0297】
本明細書に記載の方法および組成物と共に用いることができるウイルスベクター系は限定されるものではないが以下のものを含む;(a) アデノウイルスベクター;(b) レトロウイルスベクター(限定されるものではないがレンチウイルスベクター、モロニーマウス白血病ウイルスなどを含む);(c) アデノ関連ウイルスベクター;(d) 単純ヘルペスウイルスベクター;(e) SV40ベクター;(f) ポリオーマウイルスベクター;(g) パピローマウイルスベクター;(h) ピコルナウイルスベクター;(i) ポックスウイルスベクター(例えばオルソポックス、例えばワクシニアウイルスベクターまたはアビポックス、例えばカナリーポックスまたは鶏痘);および(j)ヘルパー依存性またはガッツレスアデノウイルス。複製欠陥ウイルスも好都合でありうる。異なるベクターが細胞のゲノムに組み込まれるかまたは組み込まれないだろう。該構築物は所望によりトランスフェクションのためのウイルス配列を含むことができる。あるいはまた、該構築物はエピソーム複製を可能にするベクター、例えばEPVおよびEBVベクターに組み込むことができる。iRNAを組換え発現させるための構築物は、一般的には標的細胞中でのiRNAの発現を保証するために調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサーなどを必要とするだろう。ベクターおよび構築物のために検討する他の局面をさらに以下に記載する。iRNAを送達するのに有用なベクターは、望む標的細胞または組織中でiRNAを発現させるのに充分な調節エレメント(プロモーター、エンハンサーなど)を含むだろう。調節エレメントは、構成的発現または調節/誘導性発現のいずれかをもたらすよう選ぶことができる。
【0298】
iRNAの発現は、例えばある種の生理学的調節因子、例えば循環グルコースレベルまたはホルモンに感受性の誘導性調節配列を用いて正確に調節することができる(Docherty et al.、1994、FASEB J. 8:20-24)。細胞または哺乳動物におけるdsRNA発現を調節するのに適したそのような誘導性発現系は、例えばエクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量体化の化学誘導物質、およびイソプロピル-β-D1-チオガラクトピラノシド(IPTG)による調節を含む。当業者は、iRNA導入遺伝子の目的とする使用に基づき適切な調節/プロモーター配列を選ぶことができるだろう。
【0299】
iRNAをコードする核酸配列を含むウイルスベクターを用いることができる。例えば、レトロウイルスベクターを用いることができる(Miller et al.、Meth. Enzymol. 217:581-599(1993)参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正しいパッケージングと宿主DNAへの統合に必要な成分を含む。iRNAをコードする核酸配列を1またはそれ以上のベクターにクローニングし核酸の患者への送達を促進する。レトロウイルスベクターについては、例えばBoesen et al.、Biotherapy 6:291-302(1994)(レトロウイルスベクターを用いて造血幹細胞にmdr1遺伝子を送達し該幹細胞を化学療法により抵抗性にすることについて記載している)により詳細に記載されている。遺伝子発現におけるレトロウイルスベクターの使用を示す他の参考文献には以下のものがある:Clowes et al.、J. Clin. Invest. 93:644-651(1994);Kiem et al.、Blood 83:1467-1473(1994);SalmonsおよびGunzberg、Human Gene Therapy 4:129-141(1993);およびGrossman and Wilson、Curr. Opin. in Genetics and Devel. 3:110-114(1993)。使用が予期されるレンチウイルスベクターは、例えば米国特許No.6,143,520;5,665,557;および5,981,276に記載のHIVベースのベクターを含む(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。
【0300】
アデノウイルスも本発明のiRNAの送達における使用が予期される。アデノウイルスは、例えば呼吸上皮に遺伝子を送達するのに特に魅力的なビークルである。アデノウイルスは天然に呼吸上皮に感染し、軽度の疾患を引き起こす。アデノウイルスベースの送達系の他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスは、非分裂細胞に感染することができる利点がある。Kozarsky and Wilson、Current Opinion in GeneticsおよびDevelopment 3:499-503(1993)はアデノウイルスベースの遺伝子療法の総説である。Bout et al.、Human Gene Therapy 5:3-10(1994)は、アデノウイルスベクターを用いるアカゲザルの呼吸上皮への遺伝子の伝達を示した。遺伝子療法におけるアデノウイルスの使用の他の例は、Rosenfeld et al.、Science 252:431-434(1991);Rosenfeld et al.、Cell 68:143-155(1992);Mastrangeli et al.、J. Clin. Invest. 91:225-234(1993);PCT公開公報WO94/12649;およびWang、et al.、Gene Therapy 2:775-783(1995)に記載されている。本発明のiRNAを発現するのに適したAVベクター、組換えAVベクターの構築方法、および該ベクターの標的細胞への送達方法は、Xia H et al.(2002)、Nat. Biotech. 20: 1006-1010に記載されている。
【0301】
アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを本発明のiRNAの送達に用いることもできる(Walsh et al.、Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204:289-300(1993);米国特許No. 5,436,146)。ある態様において、iRNAは、例えばU6またはH1 RNAプロモーターまたはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを有する組換えAAVベクターから2つの分離した相補的1本鎖RNA分子を発現することができる。本発明のdsRNAを発現するのに適したAAVベクター、組換えAVベクターの構築方法、および該ベクターの標的細胞への送達方法は以下に記載されている:Samulski R et al.(1987)、J. Virol. 61: 3096-3101;Fisher K J et al.(1996)、J. Virol、70: 520-532;Samulski R et al.(1989)、J. Virol. 63: 3822-3826;米国特許No. 5,252,479;米国特許No. 5,139,941;国際特許出願No. WO 94/13788;および国際特許出願No. WO 93/24641(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。
【0302】
本発明のiRNAの送達に適した別のウイルスベクターは、ポックスウイルス、例えばワクシニアウイルス、例えば弱毒化ワクシニア、例えば修飾ウイルスAnkara(MVA)またはNYVAC、アビポックス、例えば鶏痘またはカナリーポックス。
【0303】
ウイルスベクターの指向性は、他のウイルス由来のエンベロープタンパク質または他の表面抗原で該ベクターをシュードタイピングするか、または必要に応じて異なるウイルスカプシドタンパク質に置換することにより修飾することができる。例えば、レンチウイルスベクターを、水疱性口炎ウイルス(VSV)、狂犬病、エボラ、モコラ(Mokola)など由来の表面タンパク質でシュードタイピングすることができる。AAVベクターは該ベクターを種々のカプシドタンパク質血清型を発現するように操作することにより種々の細胞を標的にすることができる;例えば、Rabinowitz J E et al.(2002)、J Virol 76:791-801参照(この内容は本明細書の一部を構成する)。
【0304】
ベクターの医薬製剤は許容される希釈剤中のベクターを含むか、または遺伝子送達ビークルを埋め込んだ徐放性マトリックスを含みうる。あるいはまた、完全遺伝子送達ベクターを組換え細胞から完全で生成することができる場合は(例えばレトロウイルスベクター)、該医薬製剤は遺伝子送達系をもたらす1またはそれ以上の細胞を含みうる。
III. 本発明の医薬組成物
【0305】
本発明は、本発明のiRNAを含む医薬組成物および製剤も含む。ある態様において、本発明は本明細書に記載のiRNAおよび医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。iRNAを含む医薬組成物は、Serpina1遺伝子の発現または活性と関連する疾患または障害、例えば、Serpina1欠乏関連疾患、例えばSerpina1欠乏肝疾患を治療するのに有用である。そのような医薬組成物は送達方法に基づいて処方する。一例は、非経口送達(例えば静脈内(IV)送達により)を介して全身投与するために処方される組成物である。別の例は、例えば連続ポンプ注入などにより脳内に注入することにより脳実質中に直接送達するために処方する組成物である。
【0306】
本発明のRNAi物質を含む医薬組成物は、例えば緩衝液を含むかまたは含まない溶液、または医薬的に許容される担体を含む組成物でありうる。そのような組成物は、例えば水性または結晶組成物、リポソーム製剤、ミセル製剤、エマルジョン、および遺伝子療法ベクターを含む。
【0307】
本発明の方法では、RNAi物質を溶液で投与することができる。遊離RNAi物質は非緩衝溶液(例えば生理食塩水または水中)で投与することができる。あるいはまた、遊離siRNAは適切な緩衝溶液で投与することができる。緩衝溶液は、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩、またはリン酸塩、またはそのあらゆる組み合わせを含みうる。好ましい態様において、緩衝溶液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。RNAi物質を含む緩衝溶液のpHおよび容量オスモル濃度を対象に投与するのに適するように調整することができる。
【0308】
ある態様において、緩衝溶液は、さらに容量オスモル濃度が望む値、例えばヒト血漿の生理学的値に維持されるように溶液の容量オスモル濃度を調節するための物質を含む。容量オスモル濃度を調節するために緩衝溶液に加えることができる溶質は、限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、非代謝ポリマー、ビタミン、イオン、糖、代謝物、有機酸、脂質、または塩を含む。ある態様において、該溶液の容量オスモル濃度を調節するための物質は塩である。ある態様において、該溶液の容量オスモル濃度を調節するための物質は塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである。
【0309】
本発明の医薬組成物はSerpina1遺伝子の発現を阻害するのに十分な用量で投与することができる。一般的には、本発明のiRNAの適切な用量は、約0.001〜約200.0mg/kgレシピエント体重/日の範囲、一般的には約1〜50mg/kg体重/日の範囲であろう。例えば、dsRNAは、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、または約50mg/kg/単回用量で投与することができる。
【0310】
例えば、RNAi物質、例えばdsRNAは以下の用量で投与しうる:約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、または約10mg/kg。示した値の中間の値と範囲も本発明の部分であることを意図する。
【0311】
別の態様において、RNAi物質、例えばdsRNAは以下の用量で投与する:約0.1〜約50mg/kg、約0.25〜約50mg/kg、約0.5〜約50mg/kg、約0.75〜約50mg/kg、約1〜約50mg/mg、約1.5〜約50mg/kb、約2〜約50mg/kg、約2.5〜約50mg/kg、約3〜約50mg/kg、約3.5〜約50mg/kg、約4〜約50mg/kg、約4.5〜約50mg/kg、約5〜約50mg/kg、約7.5〜約50mg/kg、約10〜約50mg/kg、約15〜約50mg/kg、約20〜約50mg/kg、約20〜約50mg/kg、約25〜約50mg/kg、約25〜約50mg/kg、約30〜約50mg/kg、約35〜約50mg/kg、約40〜約50mg/kg、約45〜約50mg/kg、約0.1〜約45mg/kg、約0.25〜約45mg/kg、約0.5〜約45mg/kg、約0.75〜約45mg/kg、約1〜約45mg/mg、約1.5〜約45mg/kb、約2〜約45mg/kg、約2.5〜約45mg/kg、約3〜約45mg/kg、約3.5〜約45mg/kg、約4〜約45mg/kg、約4.5〜約45mg/kg、約5〜約45mg/kg、約7.5〜約45mg/kg、約10〜約45mg/kg、約15〜約45mg/kg、約20〜約45mg/kg、約20〜約45mg/kg、約25〜約45mg/kg、約25〜約45mg/kg、約30〜約45mg/kg、約35〜約45mg/kg、約40〜約45mg/kg、約0.1〜約40mg/kg、約0.25〜約40mg/kg、約0.5〜約40mg/kg、約0.75〜約40mg/kg、約1〜約40mg/mg、約1.5〜約40mg/kb、約2〜約40mg/kg、約2.5〜約40mg/kg、約3〜約40mg/kg、約3.5〜約40mg/kg、約4〜約40mg/kg、約4.5〜約40mg/kg、約5〜約40mg/kg、約7.5〜約40mg/kg、約10〜約40mg/kg、約15〜約40mg/kg、約20〜約40mg/kg、約20〜約40mg/kg、約25〜約40mg/kg、約25〜約40mg/kg、約30〜約40mg/kg、約35〜約40mg/kg、約0.1〜約30mg/kg、約0.25〜約30mg/kg、約0.5〜約30mg/kg、約0.75〜約30mg/kg、約1〜約30mg/mg、約1.5〜約30mg/kb、約2〜約30mg/kg、約2.5〜約30mg/kg、約3〜約30mg/kg、約3.5〜約30mg/kg、約4〜約30mg/kg、約4.5〜約30mg/kg、約5〜約30mg/kg、約7.5〜約30mg/kg、約10〜約30mg/kg、約15〜約30mg/kg、約20〜約30mg/kg、約20〜約30mg/kg、約25〜約30mg/kg、約0.1〜約20mg/kg、約0.25〜約20mg/kg、約0.5〜約20mg/kg、約0.75〜約20mg/kg、約1〜約20mg/mg、約1.5〜約20mg/kb、約2〜約20mg/kg、約2.5〜約20mg/kg、約3〜約20mg/kg、約3.5〜約20mg/kg、約4〜約20mg/kg、約4.5〜約20mg/kg、約5〜約20mg/kg、約7.5〜約20mg/kg、約10〜約20mg/kg、または約15〜約20mg/kg。示した値の中間の値と範囲も本発明の部分であることを意図する。
【0312】
例えば、RNAi物質、例えばdsRNAは以下の用量で投与しうる:約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、または約10mg/kg。示した値の中間の値と範囲も本発明の部分であることを意図する。
【0313】
別の態様において、RNAi物質、例えばdsRNAは以下の用量で投与する:約0.5〜約50mg/kg、約0.75〜約50mg/kg、約1〜約50mg/mg、約1.5〜約50mg/kg、約2〜約50mg/kg、約2.5〜約50mg/kg、約3〜約50mg/kg、約3.5〜約50mg/kg、約4〜約50mg/kg、約4.5〜約50mg/kg、約5〜約50mg/kg、約7.5〜約50mg/kg、約10〜約50mg/kg、約15〜約50mg/kg、約20〜約50mg/kg、約20〜約50mg/kg、約25〜約50mg/kg、約25〜約50mg/kg、約30〜約50mg/kg、約35〜約50mg/kg、約40〜約50mg/kg、約45〜約50mg/kg、約0.5〜約45mg/kg、約0.75〜約45mg/kg、約1〜約45mg/mg、約1.5〜約45mg/kb、約2〜約45mg/kg、約2.5〜約45mg/kg、約3〜約45mg/kg、約3.5〜約45mg/kg、約4〜約45mg/kg、約4.5〜約45mg/kg、約5〜約45mg/kg、約7.5〜約45mg/kg、約10〜約45mg/kg、約15〜約45mg/kg、約20〜約45mg/kg、約20〜約45mg/kg、約25〜約45mg/kg、約25〜約45mg/kg、約30〜約45mg/kg、約35〜約45mg/kg、約40〜約45mg/kg、約0.5〜約40mg/kg、約0.75〜約40mg/kg、約1〜約40mg/mg、約1.5〜約40mg/kb、約2〜約40mg/kg、約2.5〜約40mg/kg、約3〜約40mg/kg、約3.5〜約40mg/kg、約4〜約40mg/kg、約4.5〜約40mg/kg、約5〜約40mg/kg、約7.5〜約40mg/kg、約10〜約40mg/kg、約15〜約40mg/kg、約20〜約40mg/kg、約20〜約40mg/kg、約25〜約40mg/kg、約25〜約40mg/kg、約30〜約40mg/kg、約35〜約40mg/kg、約0.5〜約30mg/kg、約0.75〜約30mg/kg、約1〜約30mg/mg、約1.5〜約30mg/kb、約2〜約30mg/kg、約2.5〜約30mg/kg、約3〜約30mg/kg、約3.5〜約30mg/kg、約4〜約30mg/kg、約4.5〜約30mg/kg、約5〜約30mg/kg、約7.5〜約30mg/kg、約10〜約30mg/kg、約15〜約30mg/kg、約20〜約30mg/kg、約20〜約30mg/kg、約25〜約30mg/kg、約0.5〜約20mg/kg、約0.75〜約20mg/kg、約1〜約20mg/mg、約1.5〜約20mg/kb、約2〜約20mg/kg、約2.5〜約20mg/kg、約3〜約20mg/kg、約3.5〜約20mg/kg、約4〜約20mg/kg、約4.5〜約20mg/kg、約5〜約20mg/kg、約7.5〜約20mg/kg、約10〜約20mg/kg、または約15〜約20mg/kg。ある態様において、dsRNAは約10mg/kg〜約30mg/kgで投与する。示した値の中間の値と範囲も本発明の部分であることを意図する。
【0314】
例えば、対象に例えば以下の治療的量のiRNAを投与することができる:約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、30、31、32、33、34、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または約50mg/kg。示した値の中間の値と範囲も本発明の部分であることを意図する。
【0315】
ある態様において、例えば本発明の組成物が本明細書に記載のdsRNAを含む場合は、対象に例えば以下の治療的量のiRNAを投与することができる:約0.01mg/kg〜約5mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.05mg/kg〜約5mg/kg、約0.05mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約5mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、約0.2mg/kg〜約5mg/kg、約0.2mg/kg〜約10mg/kg、約0.3mg/kg〜約5mg/kg、約0.3mg/kg〜約10mg/kg、約0.4mg/kg〜約5mg/kg、約0.4mg/kg〜約10mg/kg、約0.5mg/kg〜約5mg/kg、約0.5mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約5mg/kg、約1mg/kg〜約10mg/kg、約1.5mg/kg〜約5mg/kg、約1.5mg/kg〜約10mg/kg、約2mg/kg〜約about 2.5mg/kg、約2mg/kg〜約10mg/kg、約3mg/kg〜約5mg/kg、約3mg/kg〜約10mg/kg、約3.5mg/kg〜約5mg/kg、約4mg/kg〜約5mg/kg、約4.5mg/kg〜約5mg/kg、約4mg/kg〜約10mg/kg、約4.5mg/kg〜約10mg/kg、約5mg/kg〜約10mg/kg、約5.5mg/kg〜約10mg/kg、約6mg/kg〜約10mg/kg、約6.5mg/kg〜約10mg/kg、約7mg/kg〜約10mg/kg、約7.5mg/kg〜約10mg/kg、約8mg/kg〜約10mg/kg、約8.5mg/kg〜約10mg/kg、約9mg/kg〜約10mg/kg、または約9.5mg/kg〜約10mg/kg。示した値の中間の値と範囲も本発明の部分であることを意図する。
【0316】
例えば、dsRNAは以下の用量で投与しうる:約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、または約10mg/kg。示した値の中間の値と範囲も本発明の部分であることを意図する。
【0317】
本発明のある態様において、例えば2本鎖RNAi物質が修飾(例えば、3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の1またはそれ以上のモチーフ(該物質の開裂部位またはその付近に1つのそのようなモチーフを含む))、6つのホスホロチオエート結合、およびリガンドを含む場合は、そのような物質は以下の用量で投与する:約0.01〜約0.5mg/kg、約0.01〜約0.4mg/kg、約0.01〜約0.3mg/kg、約0.01〜約0.2mg/kg、約0.01〜約0.1mg/kg、約0.01mg/kg〜約0.09mg/kg、約0.01mg/kg〜約0.08mg/kg、約0.01mg/kg〜約0.07mg/kg、約0.01mg/kg〜約0.06mg/kg、約0.01mg/kg〜約0.05mg/kg、約0.02〜約0.5mg/kg、約0.02〜約0.4mg/kg、約0.02〜約0.3mg/kg、約0.02〜約0.2mg/kg、約0.02〜約0.1mg/kg、約0.02mg/kg〜約0.09mg/kg、約0.02mg/kg〜約0.08mg/kg、約0.02mg/kg〜約0.07mg/kg、約0.02mg/kg〜約0.06mg/kg、約0.02mg/kg〜約0.05mg/kg、約0.03〜約0.5mg/kg、約0.03〜約0.4mg/kg、約0.03〜約0.3mg/kg、約0.03〜約0.2mg/kg、約0.03〜約0.1mg/kg、約0.03mg/kg〜約0.09mg/kg、約0.03mg/kg〜約0.08mg/kg、約0.03mg/kg〜約0.07mg/kg、約0.03mg/kg〜約0.06mg/kg、約0.03mg/kg〜約0.05mg/kg、約0.04〜約0.5mg/kg、約0.04〜約0.4mg/kg、約0.04〜約0.3mg/kg、約0.04〜約0.2mg/kg、約0.04〜約0.1mg/kg、約0.04mg/kg〜約0.09mg/kg、約0.04mg/kg〜約0.08mg/kg、約0.04mg/kg〜約0.07mg/kg、約0.04mg/kg〜約0.06mg/kg、約0.05〜約0.5mg/kg、約0.05〜約0.4mg/kg、約0.05〜約0.3mg/kg、約0.05〜約0.2mg/kg、約0.05〜約0.1mg/kg、約0.05mg/kg〜約0.09mg/kg、約0.05mg/kg〜約0.08mg/kg、または約0.05mg/kg〜約0.07mg/kg。前記の値の中間の値と範囲も本発明の部分であることを意図し、例えばRNAi物質は約0.015mg/kg〜約0.45mg/mgの用量で対象に投与する。
【0318】
例えば、医薬組成物中のRNAi物質、例えばRNAi物質は以下の用量で投与しうる:約0.01mg/kg、0.0125mg/kg、0.015mg/kg、0.0175mg/kg、0.02mg/kg、0.0225mg/kg、0.025mg/kg、0.0275mg/kg、0.03mg/kg、0.0325mg/kg、0.035mg/kg、0.0375mg/kg、0.04mg/kg、0.0425mg/kg、0.045mg/kg、0.0475mg/kg、0.05mg/kg、0.0525mg/kg、0.055mg/kg、0.0575mg/kg、0.06mg/kg、0.0625mg/kg、0.065mg/kg、0.0675mg/kg、0.07mg/kg、0.0725mg/kg、0.075mg/kg、0.0775mg/kg、0.08mg/kg、0.0825mg/kg、0.085mg/kg、0.0875mg/kg、0.09mg/kg、0.0925mg/kg、0.095mg/kg、0.0975mg/kg、0.1mg/kg、0.125mg/kg、0.15mg/kg、0.175mg/kg、0.2mg/kg、0.225mg/kg、0.25mg/kg、0.275mg/kg、0.3mg/kg、0.325mg/kg、0.35mg/kg、0.375mg/kg、0.4mg/kg、0.425mg/kg、0.45mg/kg、0.475mg/kg、または約0.5mg/kg。前記の値の中間の値も本発明の部分であることを意図する。
【0319】
該医薬組成物は1日に1回投与するか、またはiRNAを1日に2、3、またはそれ以上のサブ用量として適切な間隔でまたは連続注入または制御放出製剤による送達を用いて投与することができる。その場合は、各サブ用量に含まれるiRNAは総1日投与量を達成するためにそれに応じてより少なくする必要がある。例えば数日間にわたりiRNAの持続放出をもたらす常套的持続放出製剤を用いて数日間にわたり送達するために投薬単位を調合することもできる。持続放出製剤は当該分野でよく知られており、特に本発明の該物質と共に用いることができるように特定部位に物質を放出するために有用である。この態様において、投薬単位は対応する複数の1日投与量を含む。
【0320】
他の態様において、医薬組成物の単用量は、続く用量を3、4、または5日間以下の間隔、または1、2、3、または4週間以下の間隔で投与するように持続的でありうる。本発明のある態様において、医薬組成物の単用量は1週間に1回投与する。本発明の他の態様において、本発明の医薬組成物の単用量は隔月で投与する。
【0321】
当業者は、限定されるものではないが、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の一般健康状態および/または年齢、および存在する他の疾患を含むある因子が対象を効果的に治療するのに必要な用量とタイミングに影響を及ぼしうることを認識するだろう。さらに、治療的有効量の組成物による対象の治療は、単回治療または一連の治療を含みうる。本発明に含まれる個々のiRNAの有効用量とin vivo半減期の評価は、通常の方法論を用いるかまたは本明細書の他所に記載の適切な動物モデルを用いるin vivo試験に基づいて行うことができる。
【0322】
マウス遺伝学の進歩は、Serpina1発現の減少が役立つ肝疾患などの種々のヒト疾患を研究するための多くのマウスモデルをもたらした。そのようなモデルは、iRNAのin vivo試験および治療的有効量の検討に用いることができる。適切なマウスモデルは当該分野で知られており、例えばヒトSerpina1を発現する導入遺伝子を含むマウスを含む。
【0323】
本発明の医薬組成物は、局所治療と全身治療のいずれか望ましいかと治療する領域に応じて多くの方法で投与することができる。以下の投与が可能である:局所(例えば、経皮パッチによる)、肺(例えばネブライザーを含む粉末またはエアロゾルの吸入または吹送による);気管内、鼻内、表皮および経皮、経口、または非経口。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射または注入;皮下(例えば埋込用具を介する);または頭蓋内(例えば実質内)、髄腔内、または脳室内投与を含む。iRNAは肝臓(例えば肝臓の肝細胞)などの特定の組織を標的とするように送達することができる。
【0324】
局所投与用の医薬組成物および製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、スプレー、液体、および粉末を含みうる。通常の医薬担体、水性、粉末、または油性基剤、増粘剤などが必要または望ましいことがある。コートされたコンドーム、グローブなども有用なことがある。適切な局所用製剤は、本発明のiRNAを局所送達物質(例えば脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤、および界面活性剤)と混合するものを含む。適切な脂質およびリポソームは以下のものを含む:天然(例えばジオレオイルホスファチジルDOPE エタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール DMPG)およびカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン DOTMA)。本発明のiRNAは、リポソーム内に封入するか、またはそれと(特にカチオン性リポソームと複合体を形成することができる。あるいはまた、iRNAは脂質(特にカチオン性脂質)と複合体を形成することができる。適切な脂肪酸およびエステルは、限定されるものではないが以下のものを含む:アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC1-20アルキルエステル(例えば、イソプロピルミリステート IPM)、モノグリセリド、ジグリセリド、またはその医薬的に許容される塩)。局所用製剤は米国特許No. 6,747,014に詳述されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。
A. 膜分子アセンブリを含むiRNA製剤
【0325】
本発明の組成物および方法に用いるためのiRNAを膜分子アセンブリ、例えばリポソームまたはミセルで送達するために処方することができる。本明細書で用いている用語「リポソーム」は、少なくとも1の二重層、例えば1つの二重層または複数の二重層に並べた両親媒性脂質からなる小胞を表す。リポソームは、脂溶性物質と水性内面から形成された膜を有する単層および多層の小胞を含む。水性部分はiRNA組成物を含む。脂溶性物質は、水性内部と水性外部を分離し、典型的にはiRNA組成物を含まない(場合により含むこともある)。リポソームは活性成分を作用部位に輸送および送達するのに有用である。リポソーム膜は生体膜と構造的に同様であるので、リポソームを組織に適用するとリポソーム二重層は細胞膜の二重層と融合する。リポソームと細胞の結合が進むにつれて、iRNAを含む内部水性内容は細胞内に送達され、iRNAが標的RNAと特異的に結合し、RNAiを仲介することができる。場合により、リポソームは、例えばiRNAを特定の細胞種に向かわせる様に特異的に標的化される。
【0326】
RNAi物質を含むリポソームは種々の方法により製造することができる。一例では、リポソームの脂質成分は界面活性剤に溶解し、脂質成分とミセルを形成する。例えば、脂質成分は両親媒性カチオン性脂質または脂質コンジュゲートでありうる。界面活性剤は高い臨界ミセル濃度を有し、非イオン性でありうる。典型的な界面活性剤は、コレート、CHAPS、オクチルグルコシド、デオキシコレート、およびラウロイルサルコシンを含む。次に、RNAi物質調製物を脂質成分を含むミセルに加える。脂質上のカチオン性基はRNAi物質と相互作用し、RNAi物質の周りに凝縮してリポソームを形成する。凝縮後、透析などにより界面活性剤を除去してRNAi物質のリポソーム製剤をうる。
【0327】
所望により、凝縮を助ける担体化合物を凝縮反応中に制御添加などにより加えることができる。例えば、担体化合物は核酸以外のポリマーでありうる(例えば、スペルミンまたはスペルミジン)。pHも凝縮に好都合な様に調節することができる。
【0328】
ポリヌクレオチド/カチオン性脂質複合体を送達ビークルの構造成分として組み込む安定なポリヌクレオチド送達ビークルの製造方法はさらに例えばWO 96/37194に記載されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。リポソーム製剤は、下記の典型的な方法の1またはそれ以上の局面も含みうる:Felgner、P. L. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA 8:7413-7417、1987;米国特許No. 4,897,355;米国特許No. 5,171,678;Bangham、et al. M. Mol. Biol. 23:238、1965;Olson、et al. Biochim. Biophys. Acta 557:9、1979;Szoka、et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 75: 4194、1978;Mayhew、et al. Biochim. Biophys. Acta 775:169、1984;Kim、et al. Biochim. Biophys. Acta 728:339、1983;およびFukunaga、et al. Endocrinol. 115:757、1984。送達ビークルとして用いるための適切なサイズの脂質凝縮物を製造するために一般に用いられる技術は、超音波処理および凍結融解+押出を含む(例えば、Mayer、et al. Biochim. Biophys. Acta 858:161、1986参照)。一貫して小さい(50 to 200nm)比較的均一な凝集物を望む場合は顕微溶液化を用いることができる(Mayhew、et al. Biochim. Biophys. Acta 775:169、1984)。これらの方法は、RNAi物質調製物のリポソームへのパッケージングに容易に適合する。
【0329】
リポソームは大きく2つのクラスに分類される。カチオン性リポソームは正に荷電したリポソームであり、負に荷電視した核酸分子と相互作用して安定な複合体を形成っする。正に荷電した核酸/リポソーム複合体は、負に荷電した細胞表面と結合し、エンドソームに内部移行する。エンドソーム内の酸性pHによりリポソームは破裂し、その内容物を細胞質中に放出する(Wang et al.、Biochem. Biophys. Res. Commun.、1987、147、980-985)。
【0330】
pH感受性または負に荷電したリポソームは、それを含む複合体より核酸を捕捉する。核酸および脂質は共に同様に荷電するので、複合体形成より反発作用が起きる。それにも関わらず、ある核酸はこれらリポソームの水性内面内に捕捉される。pH感受性リポソームを用いて、培養中の細胞単層にチミジンキナーゼ遺伝子をコードする核酸を送達する。外来遺伝子の発現が標的細胞中で検出された(Zhou et al.、Journal of Controlled Release、1992、19、269-274)。
【0331】
主なタイプのリポソーム組成物は、天然由来ホスファチジルコリン以外のリン脂質を含む。中性リポソーム組成物は、例えばジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成することができる。アニオン性リポソーム組成物は、一般的にはジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成されるが、アニオン性融合性リポソームは主としてジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別のタイプのリポソーム組成物は、ホスファチジルコリン(PC)、例えばダイズPCおよび卵PCなどから形成される。別のタイプは、リン脂質、および/またはホスファチジルコリン、および/またはコレステロールの混合物から形成される。
【0332】
in vitroおよびin vivoで細胞にリポソームを導入するための他の方法の例は以下を含む:米国特許No. 5,283,185;米国特許No. 5,171,678;WO 94/00569;WO 93/24640;WO 91/16024;Felgner、J. Biol. Chem. 269:2550、1994;Nabel、Proc. Natl. Acad. Sci. 90:11307、1993;Nabel、Human Gene Ther. 3:649、1992;Gershon、Biochem. 32:7143、1993;and Strauss EMBO J. 11:417、1992。
【0333】
非イオン性リポソーム系も皮膚への薬剤の送達における有用性を検討するために試験した(特に非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系)。非イオン性リポソーム製剤(Novasome(登録商標)I(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome(登録商標)II(グリセリルジステアレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む)を用いてシクロスポリンAをマウス皮膚の真皮に送達した。そのような非イオン性リポソーム系は皮膚の異なる層へのシクロスポリンAの沈着を促進するのに有効であった(Hu et al. S.T.P.Pharma. Sci.、1994、4(6) 466)。
【0334】
リポソームは、「立体的に安定化した」リポソームも含み、本明細書で用いている該用語は、リポソーム中に組み込むと特定脂質を欠くリポソームより循環寿命の増加をもたらす1またはそれ以上の特定脂肪を含むリポソームを表す。立体的に安定化したリポソームの例には、リポソームの小胞形成脂質部分の部分が(A)1またはそれ以上の糖脂質、例えばモノシアロガングリオシドGM1を含むか、または(B) 1またはそれ以上の親水性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)部分で誘導体化されたものがある。いかなる特定の理論に縛られることを望まないが、当該分野では、少なくともガングリオシド、スフィンゴミエリン、またはPEG誘導体化脂質を含む立体的に安定化したリポソームでは、これらの立体的に安定化したリポソームの循環半減期の増加は、網内系(RES)の細胞内への取り込みの減少から生じると考えられる(Allen et al.、FEBS Letters、1987、223、42;Wu et al.、Cancer Research、1993、53、3765)。
【0335】
1またはそれ以上の糖脂質を含む種々のリポソームが当該分野で知られている。Papahadjopoulos et al.(Ann. N.Y. Acad. Sci.、1987、507、64)は、モノシアロガングリオシド GM1、ガラクトセレブロシドサルフェートおよびホスファチジルイノシトールのリポソームの血液半減期を改善する能力について報告した。Gabizon et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、1988、85、6949)はこれらの知見について説明した。いずれもAllen et al.の米国特許No. 4,837,028およびWO 88/04924はともに(1) スフィンゴミエリンおよび(2)ガングリオシドGM1またはガラクトセレブロシドサルフェートエステルを含むリポソームを開示する。米国特許No. 5,543,152(Webb et al.)はスフィンゴミエリンを含むリポソームを開示する。1,2-sn-ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームはWO 97/13499(Lim et al)に開示されている。
【0336】
ある態様では、カチオン性リポソームを用いる。カチオン性リポソームは細胞膜に融合することができる利点を有する。非カチオン性リポソームは原形質膜と効率的に融合することができないが、in vivoでマクロファージにより取り込まれ、RNAi物質をマクロファージに送達するのに用いることができる。
【0337】
リポソームのさらなる利点は以下のものを含む:天然リン脂質から得たリポソームは生体適合性で生体分解性である;リポソームは広範囲の水溶性および脂溶性薬剤を組み込むことができる;リポソームはその内部コンパートメント中に封入されたRNAi物質を代謝とバンク内から保護することができる(Rosoff、「Pharmaceutical Dosage Forms」中、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、volume 1、p. 245)。リポソーム製剤の製造における重要な考慮事項は、リポソームの脂質表面荷電、小胞サイズ、および含水容量である。正に荷電した合成カチオン性脂質、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)を用いて、核酸と自然に相互作用し、組織培養細胞の細胞膜の負に荷電した脂質と融合することができる脂質-核酸複合体を形成し、RNAi物質の送達をもたらす小リポソームを形成することができる(例えば、DOTMAおよびそのDNAとの使用の説明はFelgner、P. L. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA 8:7413-7417、1987および米国特許No. 4,897,355を参照のこと)。
【0338】
DOTMAアナログ、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニア)プロパン(DOTAP)をリン脂質と組み合わせて用い、DNA複合小胞を形成することができる。Lipofectin(登録商標)(Bethesda Research Laboratories、Gaithersburg、Md.)は、負に荷電したポリヌクレオチドと自然に相互作用して複合体を形成する正に荷電したDOTMAリポソームを含む、生組織培養細胞中に高アニオン性核酸を送達するための有効な物質である。十分正に荷電したリポソームを用いると、得られる複合体の正味の荷電も正である。このように製造した正に荷電した複合体は、負に荷電した細胞表面と自然に結合し、原形質膜と融合し、機能的核酸を例えば組織培養細胞内に効率的に送達する。別の商業的に利用可能なカチオン性脂質、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3,3-(トリメチルアンモニア)プロパン(「DOTAP」)(Boehringer Mannheim、Indianapolis、Indiana)は、オレオイル部分がエーテル結合ではなくエステル結合で結合している点がDOTMAと異なる。
【0339】
他の報告されたカチオン性脂質化合物は、2タイプの脂質の1つと結合したカルボキシスペルミンなどを含む種々の部分と結合したものを含み、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタオレオイルアミド(「DOGS」)(Transfectam(登録商標)、Promega、Madison、Wisconsin)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン 5-カルボキシスペルミル-アミド(「DPPES」)(例えば、米国特許No. 5,171,678参照)などの化合物を含む。
【0340】
別のカチオン性脂質コンジュゲートは、脂質をコレステロール(「DC-Chol」)で誘導体化し、DOPEと組み合わせてリポソームとすることを含む(Gao、X. and Huang、L.、Biochim. Biophys. Res. Commun. 179:280、1991参照)。ポリリジンのDOPEとの結合により作製したリポポリリジンは、血清存在下のトランスフェクションに有効であることが報告されている(Zhou、X. et al.、Biochim. Biophys. Acta 1065:8、1991)。ある細胞株では、結合カチオン性脂質を含むこれらのリポソームは、低毒性であり、DOTMA含有組成物より効率的なトランスフェクションをもたらすといわれている。他の商業的に利用可能なカチオン性脂質製品は、DMRIEおよびDMRIE-HP(Vical、La Jolla、California)およびリポフェクタミン(DOSPA)(Life Technology、Inc.、Gaithersburg、Maryland)を含む。オリゴヌクレオチドを送達するのに適した他のカチオン性脂質はWO 98/39359およびWO 96/37194に記載されている。
【0341】
リポソーム製剤は特に局所投与に適しており、リポソームは他の製剤より種々の利点がある。そのような利点は、投与した薬剤の高い全身吸収に関連する副作用の減少、投与した薬剤の目的とする標的への蓄積の増加、およびRNAi物質を皮膚内に投与することができることを含む。ある実施では、リポソームをRNAi物質を上皮細胞に送達するためと、RNAi物質の皮膚などの真皮組織中への浸透を増強するためにも用いる。例えば、リポソームは局所適用することができる。リポソームとして処方した薬剤の皮膚への局所送達が記載されている(例えば、Weiner et al.、Journal of Drug 標的ing、1992、vol. 2,405-410、およびdu Plessis et al.、Antivirus Research、18、1992、259-265;Mannino、R. J. and Fould-Fogerite、S.、Biotechniques 6:682-690、1988;Itani、T. et al. Gene 56:267-276. 1987;Nicolau、C. et al. Meth. Enz. 149:157-176、1987;Straubinger、R. M. and Papahadjopoulos、D. Meth. Enz. 101:512-527、1983;Wang、C. Y. and Huang、L.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7851-7855、1987)。
【0342】
非イオン性リポソーム系も薬剤の皮膚への送達における有用性を検討するために試験した(特に非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系)。Novasome I(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome II(グリセリルジステアレート/ コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤を用いて薬剤をマウス皮膚の真皮内に送達した。RNAi物質を含むそのような製剤は皮膚疾患を治療するのに有用である。
【0343】
iRNAを含むリポソームは可変性を高くすることができる。そのような可変性は、リポソームがリポソームの平均直径より小さい孔を通るのを可能とすることができる。例えば、トランスフェルソームは可変性リポソームの一種である。トランスフェルソームは、標準的リポソーム組成物に表面端活性化剤(通常、界面活性剤)を加えることにより作製することができる。RNAi物質を含むトランスフェルソームは、RNAi物質を例えば皮下に感染により送達し、RNAi物質を皮膚の角化細胞に送達することができる。完全な哺乳動物皮膚を横切るには、脂質小胞は適切な経皮勾配の影響下で直径がそれぞれ50nm未満の一連の微小孔を通過しなければならない。さらに、脂質特性によりこれらのトランスフェルソームは、自己最適化(例えば皮膚の孔の形に適合する)、自己修復することができ、しばしば断片化せずにその標的に達し、しばしば自己ローディングすることができる。
【0344】
本発明で許容される他の製剤は、米国仮出願No. 61/018,616(2008年1月2日出願);61/018,611(2008年1月2日出願);61/039,748(2008年3月26日出願);61/047,087(2008年4月22日出願)、および61/051,528(2008年5月8日出願)に記載されている。PCT出願No. PCT/US2007/080331(2007年10月3日出願)も本発明で許容される製剤を記載している。
【0345】
トランスフェルソームは、さらに別のタイプのリポソームであり、薬物送達ビークルとして魅力的な候補の可変性の高い脂質凝集物である。トランスフェルソームは、小滴より小さい孔を容易に通ることができるように可変性が高い脂質小滴と説明することができる。トランスフェルソームは、それを用いる環境に適合性であり(例えば自己最適化(皮膚の孔の形に適合する)、自己修復する)、しばしば断片化せずにその標的に達し、しばしば自己ローディングすることができる。トランスフェルソームを作製するために、標準的リポソーム組成物に界面端活性化剤(通常、界面活性剤)を加えることができる。トランスフェルソームは皮膚に血清アルブミンを送達するために用いられた。血清アルブミンのトランスフェルソーム介在送達は血清アルブミンを含む溶液の皮下注射と同様に有効であることが示された。
【0346】
界面活性剤は、エマルジョン(マイクロエマルジョンを含む)やリポソームなどの製剤に広く応用されている。多くの異なるタイプの天然および合成の界面活性剤の特性を分類およびランク付けする最も一般的な方法は、親水性/疎水性バランス(HLB)を用いることによる。親水性基(「ヘッド」としても知られる)の性質は、製剤に用いる種々の界面活性剤を分類する最も有用な手段を提供する(Rieger、Pharmaceutical Dosage Forms中、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、1988、p. 285)。
【0347】
界面活性剤分子がイオン化しない場合は非イオン性界面活性剤に分類される。非イオン性界面活性剤は、医薬品と化粧品に広く応用され、広範囲のpH値で用いることができる。一般的には、そのHLB値はその構造に応じて2〜約18の範囲である。非イオン性界面活性剤は、非イオン性エステル、例えば、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびエトキシル化エステルを含む。非イオン性アルカノールアミドおよびエーテル、例えば脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコール、およびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーもこのクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスの最も一般的なメンバーである。
【0348】
界面活性剤分子が水に溶解または分散する時に負に荷電すれば、界面活性剤はアニオン性に分類される。アニオン性界面活性剤は、カルボキシレート、例えば石けん、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミド、硫酸のエステル、例えばアルキルサルフェートおよびエトキシル化アルキルサルフェート、スルホネート、例えばアルキルベンゼンスルホネート、アシルイセチオネート、アシルタウレート、およびスルホスクシネート、およびリン酸塩を含む。アニオン性界面活性剤クラスの最も重要なメンバーはアルキルサルフェートと石けんである。
【0349】
界面活性剤分子が水に溶解または分散する時に正に荷電すると界面活性剤はカチオン性に分類される。カチオン性界面活性剤は、第4級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンを含む。第4級アンモニウム塩はこのクラスで最も用いられるメンバーである。
【0350】
界面活性剤分子が正または負に荷電することができる場合は、界面活性剤は両性に分類される。両性界面活性剤は、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N-アルキルベタインおよびホスファチドを含む。
【0351】
医薬品、製剤、およびエマルジョンへの界面活性剤の使用が概説されている(Rieger、Pharmaceutical Dosage Forms中、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、1988、p. 285)。本発明の方法に用いるiRNAはミセル製剤も提供することができる。「ミセル」は、本明細書では、該分子のすべての疎水性部分が内側を向くように両新媒性分子が球構造に並んでいる特定タイプの分子集合体と定義される。環境が疎水性の場合は逆の配置が存在する。
【0352】
経皮膜を介した送達に適した混合ミセル製剤は、siRNA組成物の水性溶液、アルカリ金属C8〜C22アルカリホスフェート、およびミセル形成化合物を混合することにより製造することができる。典型的なミセル形成化合物は、レシチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の医薬的に許容される塩、グリコール酸、乳酸、カモミールエキス、キュウリエキス、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、月見草油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシンおよびその医薬的に許容される塩、グリシン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテルおよびそのアナログ、ポリドカノールアルキルエーテルおよびそのアナログ、ケノデオキシコレート、デオキシコレート、およびそれらの混合物を含む。ミセル形成化合物は、同時にまたはアルカリ金属アルキルサルフェートを加えた後に加えることができる。混合ミセルは、成分の実質的にあらゆる種類の混合により形成される(しかし、より小さいサイズのミセルを得るには激しく混合する)。
【0353】
ある方法では、siRNA組成物と少なくともアルカリ金属アルキルサルフェートを含む第1ミセル組成物を調製する。次に、第1ミセル組成物を少なくとも3のミセル形成化合物と混合して混合ミセル組成物を形成する。別の方法では、ミセル組成物を、アルキル金属アルキルサルフェートおよび少なくとも1のミセル形成化合物を混合し、次いで激しく混合しながら残りのミセル形成化合物を加えることにより調製する。フェノールおよび/またはm-クレゾールを混合ミセル組成物に加えて製剤を安定化し、細菌の増殖から保護することができる。あるいはまた、フェノールおよび/またはm-クレゾールをミセル形成成分とともに加えることができる。グリセリンなどの等張化剤を混合ミセル組成物の形成後に加えることもできる。
【0354】
ミセル製剤をスプレーで送達するために、該製剤をエアロゾルディスペンサーに入れることができ、該ディスペンサーにプロペラントを充填する。プロペラントは加圧下ではディスペンサー中で液体である。該成分の比を、水性相とプロペラント層が1つになる、すなわち1相であるように調整する。2相であれば、内容物の部分を定量バルブなどを通して投薬する前にディスペンサーを振る必要がある。医薬製剤の投薬用量は定量バルブから微細スプレーで押し出される。
【0355】
プロペラントは、水素含有クロロフッ化炭素、水素含有フッ化炭素、ジメチルエーテル、およびジエチルエーテルを含みうる。ある態様において、HFA 134a(1,1,1,2 テトラフルオロエタン)を用いることができる。
【0356】
必須成分の特定濃度は、比較的簡単な実験により決定することができる。口腔を介する吸収では、注射によるかまたは消化管を介する用量の例えば少なくとも2または3倍に増加することが望ましいことが多い。
B. 脂質粒子
【0357】
本発明のiRNA、例えばdsRNAは、脂質製剤、例えばLNPまたは他の核酸-脂質粒子に完全に封入することができる。
【0358】
本明細書で用いている用語「LNP」は安定な核酸-脂質粒子を表す。LNPは、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および粒子の凝集を防ぐ脂質(例えばPEG-脂質コンジュゲート)を含む。LNPは、静脈内(i.v.)注射後の循環寿命の延長と遠位部位(例えば、投与部位から物理的に分離した部位)への蓄積を示すので全身適用にきわめて有用である。LNPは「pSPLP」を含み、PCT公開公報No. WO 00/03683に記載の封入凝縮剤-核酸複合体を含む。本発明の粒子は、典型的には、平均直径が約50nm〜約150nm、より典型的には約60nm〜約130nm、より典型的には約70nm〜約110nm、最も典型的には約70nm〜約90nmであり、実質的に無毒性である。さらに、核酸は、本発明の核酸-脂質粒子中に存在すると、水性溶液中でヌクレアーゼによる分解に抵抗性である。核酸-脂質粒子とその製造方法は、例えば、米国特許Nos. 5,976,567;5,981,501;6,534,484;6,586,410;6,815,432;米国公開公報No. 2010/0324120、およびPCT公開公報No. WO 96/40964に記載されている。
【0359】
ある態様において、脂質/薬剤比(質量/質量比)(例えば、脂質/dsRNA比)は、約1:1〜約50:1、約1:1〜約25:1、約3:1〜約15:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、または約6:1〜約9:1の範囲であろう。上記範囲の中間の範囲も本発明の部分と予期される。
【0360】
カチオン性脂質は以下のものでありうる:例えばN,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(I-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、N-(I-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、l,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、l,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)またはそのアナログ、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン(ALN100)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザネジイル)ジドデカン-2-オール(Tech G1)、またはその混合物。カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約20mol%〜約50mol%または約40mol%を含みうる。
【0361】
別の態様において、化合物2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソランを用いて脂質-siRNAナノ粒子を製造することができる。2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソランの合成は、米国仮特許出願No.61/107,998(2008年10月23日出願)に記載されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。
【0362】
ある態様において、脂質-siRNA粒子は、40% 2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン:10% DSPC:40%コレステロール:10% PEG-C-DOMG(モルパーセント)を含み、粒子サイズは63.0±20nm、およびsiRNA/脂質比は0.027である。
【0363】
イオン性/非カチオン性脂質は、限定されるものではないが以下のものを含むアニオン性脂質または中性脂質でありうる:ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-l-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチル PE、16-O-ジメチル PE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、コレステロール、またはそれらの混合物。非カチオン性脂質は粒子中の総脂質の約5mol%〜約90mol%、約10mol%、またはコレステロールを含む場合は約58mol%でありうる。
【0364】
粒子の凝集を阻害する結合脂質は、限定されるものではないが、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、またはそれらの混合物を含むポリエチレングリコール(PEG)-脂質などでありうる。PEG-DAAコンジュゲートは、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル(Ci2)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(Ci4)、PEG-ジpalmitylオキシプロピル(Ci6)、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C]8)でありうる。粒子の凝集を防ぐ結合脂質は粒子中に存在する総脂質の0mol%〜約20mol%または約2mol%でありうる。
【0365】
ある態様において、核酸-脂質粒子は、さらに粒子中に存在する総脂質の例えば約10mol%〜約60mol%または約48mol%のコレステロールを含む。
【0366】
ある態様において、リピドイドND98・4HCl(MW 1487)(米国特許出願No. 12/056,230、3/26/2008出願(この内容は本明細書の一部を構成する))、コレステロール(Sigma-Aldrich)、およびPEG-セラミド C16(Avanti Polar Lipids)を用いて脂質-dsRNAナノ粒子(すなわちLNP01粒子)を製造することができる。エタノール中の各ストック溶液は以下のごとく調製することができる:ND98、133mg/ml;コレステロール、25mg/ml、PEG-セラミド C16、100mg/ml。次に、ND98、コレステロール、およびPEG-セラミド C16ストック溶液を例えば、42:48:10モル比で混合することができる。混合脂質溶液を水性dsRNA(例えば、酢酸ナトリウムpH5中)と混合し、最終エタノール濃度を約35〜45%および最終酢酸ナトリウム濃度を約100〜300mMとする。脂質-dsRNAナノ粒子は典型的には混合すると自然に形成される。望む粒子サイズ分布に応じて得られるナノ粒子混合物をサーモバレルエクストローダー(例えばLipex Extruder(Northern Lipids、Inc))などを用いポリカーボネート膜(例えば100nmカットオフ)を通して押し出すことができる。場合により押出工程を省略することができる。エタノール除去および同時の緩衝液交換は例えば透析または接線流ろ過により達成することができる。緩衝液は例えば約pH7、例えば約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、または約pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と交換することができる。
【化11】
式1
【0367】
LNP01製剤は、例えば国際出願公開公報No. WO 2008/042973に記載されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。
【0368】
さらなる典型的な脂質-dsRNA製剤を表Aに示す。
表A.
【表1】
【表2】
【表3】
DSPC: ジステアロイルホスファチジルコリン
DPPC: ジパルミトイルホスファチジルコリン
PEG-DMG: PEG-ジジミリストイルグリセロール(C14-PEGまたはPEG-C14)(平均mol wt2000のPEG)
PEG-DSG: PEG-ジスチリルグリセロール(C18-PEGまたはPEG-C18)(平均mol wt2000のPEG)
PEG-cDMA:PEG-カルバモイル-1,2-ジミリスチルオキシプロピルアミン(平均mol wt2000のPEG)
LNP(l,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA))含有製剤は、国際公開公報No. WO2009/127060(2009年4月15日出願)に記載されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。
【0369】
XTC含有製剤は以下に記載されている:例えば、米国仮出願No. 61/148,366(2009年1月29日出願);米国仮出願No. 61/156,851(2009年3月2日出願);米国仮出願No.(2009年6月10日出願);米国仮出願No. 61/228,373(2009年6月24日出願);米国仮出願No. 61/239,686(2009年9月3日出願)、および国際出願No. PCT/US2010/022614(2010年1月29日出願)(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。
【0370】
MC3含有製剤は、例えば米国公開公報No. 2010/0324120(2010年6月10日出願)に記載されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。ALNY-100含有製剤は例えば国際特許出願No. PCT/US09/63933(2009年11月10日出願)に記載されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。C12-200含有製剤は米国仮出願No. 61/175,770(2009年5月5日出願)、および国際出願No. PCT/US10/33777(2010年5月5日出願)に記載されている(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。
イオン性/カチオン性脂質の合成
【0371】
本発明の核酸-脂質粒子に用いるあらゆる化合物(例えばカチオン性脂質など)は、実施例により詳細に記載した方法を含む既知の有機合成技術により製造することができる。すべての置換基は特記しない限り下記の通りである。
【0372】
「アルキル」は、炭素数1〜24の直鎖または分岐鎖、非環状または環状、飽和脂肪族炭化水素を意味する。代表的飽和直鎖アルキルはメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどを含み、飽和分岐アルキルはイソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチルなどを含む。代表的飽和環状アルキルはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含み、不飽和環状アルキルはシクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどを含む。
【0373】
「アルケニル」は、隣り合った炭素原子間に少なくとも1の二重結合を含む上記アルキルを意味する。アルケニルは、シスおよびトランス異性体を含む。代表的な直鎖および分岐鎖アルケニルは、エチレニル、プロピレニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブチレニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニルなどを含む。
【0374】
「アルキニル」は、さらに隣り合った炭素間に少なくとも1の三重結合を含む上記のアラyrううアルキルまたはアルケニルを意味する。代表的な直鎖および分岐鎖アルキニルは、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1 ブチニルなどを含む。
【0375】
「アシル」は、結合点の炭素が下記のごとくオキソ基で置換されているあらゆるアルキル、アルケニル、またはアルキニルを意味する。例えば、-C(=O)アルキル、-C(=O)アルケニル、および-C(=O)アルキニルはアシル基である。
【0376】
「複素環」は、5〜7員環の単環、または7〜10員環の二環、飽和、不飽和、または芳香族の、独立して窒素、酸素、および硫黄から選ばれる1または2のヘテロ原子を含む複素環を意味し、(ここで、窒素および硫黄ヘテロ原子は所望により酸化することができ、窒素原子は所望により4級化することができる)上記複素環のいずれかがベンゼン環と融合している二重環を含む。該複素環は、あらゆるヘテロ原子または炭素原子と結合することができる。複素環は、下記ヘテロアリールを含む。複素環は、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペリジニル、ハダントイニル、バレノラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどを含む。
【0377】
用語「所望により置換されたアルキル」、「所望により置換されたアルケニル」、「所望により置換されたアルキニル」、「所望により置換されたアシル」、および「所望により置換された複素環」は、置換される場合は少なくとも1の水素原子が置換基で置換されていることを意味する。オキソ置換基(=O)の場合は、2つの水素原子が置換される。その際、置換基は、オキソ、ハロゲン、複素環、-CN、-ORx、NRxRy、NRxC(=O)Ry、NRxSO2Ry、C(=O)Rx、C(=O)ORx、C(=O)NRxRy、-SOnRx、およびSOnNRxRy(ここで、nは0、1、または2であり、RxおよびRyは同じかまたは異なり、独立して水素、アルキル、または複素環であり、各該アルキルおよび複素環置換基がさらに1またはそれ以上のof オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル,-ORx、複素環、NRxRy、NRxC(=O)Ry、NRxSO2Ry、C(=O)Rx、C(=O)ORx、C(=O)NRxRy、SOnRx、およびSOnNRxRyの1またはそれ以上で置換されうる。)を含む。
【0378】
「ハロゲン」はフルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
【0379】
ある態様において、本発明の方法は保護基を用いる必要がありうる。保護基方法論は当業者によく知られている(例えば、Protective Groups in Organic Synthesis、Green、T.W. et al.、Wiley-Interscience、New York City、1999参照)。簡単には、本発明の文脈内の保護基は、官能基の望まない反応性を減少させるかまたは排除するあらゆる基である。保護基は官能基に付加することによりある反応中のその反応性を覆い、次いで除去されて最初の官能基を露出させる。ある態様において、「アルコール保護基」を用いる。「アルコール保護基」は、アルコール官能基の望まない反応性を減少させるかまたは排除するあらゆる基である。保護基は当該分野でよく知られた技術を用いて付加および除去することができる。
式Aの合成
【0380】
ある態様において、本発明の核酸-脂質粒子は下記式Aのカチオン性脂質を用いて製造する:
【化12】
[式中、R1およびR2は、独立してアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、それぞれが所望により置換されうる。R3およびR4は独立して低級アルキルであるかまたはR3およびR4は一緒になって所望により置換された複素環を形成しうる。]。ある態様において、該カチオン性脂質はXTC(2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン)である。一般的には、式Aの脂質は下記反応式1または2により製造することができる(ここで、すべての置換基は特記しない限り上記と同意義である。)。
反応式1
【化13】
【0381】
脂質A(ここで、R1およびR2は独立してアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、それぞれが所望により置換しうる。R3およびR4は独立して低級アルキルであるか、またはR3およびR4が一緒になって所望により置換された複素環を形成する。)は反応式1に従って製造することができる。ケトン1およびブロミド2は、購入するかまたは当業者に知られた方法にしたがって製造することができる。1および2の反応はケタール3を生じる。ケタール3のアミン4による処理は式Aの脂質を生じる。式Aの脂質は式5の有機塩を用いて対応するアンモニア塩に変換することができる(ここで、Xはハロゲン、ヒドロキシド、ホスフェート、またはサルフェートなど、から選ばれるアニオン対イオンである)。
反応式2
【化14】
【0382】
あるいはまた、ケトン1の出発物質は反応式2に従って製造することができる。グリグナルド試薬6およびシアニド7は購入するかまたは当業者に知られた方法に従って製造することができる。6および7の反応はケトン1を生じる。ケトン1の式Aの対応する脂質への変換は反応式1に化合物試合している。
MC3の合成
【0383】
DLin-M-C3-DMA(すなわち、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)の製造法は以下の通りであった。(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-オール(0.53 g)、4-N,N-ジメチルアミノ酪酸ヒドロクロリド(0.51 g)、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(0.61g)、および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(0.53 g)のジクロロメタン(5 mL)中の溶液を室温で一夜攪拌した。該溶液を希塩酸、次いで希水性重炭酸ナトリウムで洗浄した。有機分画を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、次いで溶媒をロトバップで除去した。残存物を1〜5%メタノール/ジクロロメタン溶出勾配を用いてシリカゲルカラム(20g)に通した。精製生成物を含む分画を混合し、溶媒を除去して無色油状物を得た(0.54 g)。
ALNY-100の合成
【0384】
ケタール519 [ALNY-100]の合成を下記反応式3を用いて行った:
【化15】
515の合成
【0385】
2首RBF(1L)中の200ml無水THF中のLiAlH4(3.74 g、0.09852 mol)の攪拌懸濁液に、70mL THF中の514(10g、0.04926mol)の溶液を窒素雰囲気下0℃で徐々に加えた。完全に添加した後、反応混合物を室温に温め、次いで4時間環流温度に加熱した。反応の進行をTLCでモニターした。反応が完結した後(TLCによる)、該混合物を0℃に冷却し、飽和Na2SO4溶液を注意深く添加して反応を止めた。反応混合物を室温で4時間攪拌し、ろ過した。残存物をTHFでよく洗浄した。ろ液と洗浄液を混合し、400 mLジオキサンおよび26 mL濃HClで希釈し、次いで室温で20分間攪拌した。揮発物を真空中で除去し、515の塩酸塩を白色固体として得た。収量:7.12 g 1H-NMR(DMSO、400MHz):δ= 9.34(ブロード、2H)、5.68(s、2H)、3.74(m、1H)、2.66-2.60(m、2H)、2.50-2.45(m、5H)。
516の合成
【0386】
250mLの2首RBF中の100mL乾燥DCM中の化合物515の攪拌溶液に、NEt3(37.2 mL、0.2669 mol)を加え、窒素雰囲気下0℃に冷却した。50 mL乾燥DCM中のN-(ベンジルオキシ-カルボニルオキシ)-スクシンイミド(20 g、0.08007 mol)を徐々に加えた後、反応混合物を室温に温めた。反応が完結した後(TLCで2〜3時間)、混合物を1N HCl溶液(1 x 100 mL)および飽和NaHCO3溶液(1 x 50 mL)で連続的に洗浄した。次に、有機層を無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させて粗物質を得、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製して516を粘着性の塊として得た。収量:11g(89%)。1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ=7.36-7.27(m、5H)、5.69(s、2H)、5.12(s、2H)、4.96(br.、1H) 2.74(s、3H)、2.60(m、2H)、2.30-2.25(m、2H). LC-MS [M+H]-232.3(96.94%)。
517Aおよび517Bの合成
【0387】
シクロペンテン516(5 g、0.02164 mol)を単首500 mL RBF中の220 mLアセトンおよび水(10:1)の溶液に溶解し、それにN-メチルモルホリン-N-オキシド(7.6 g、0.06492 mol)、次いで4.2 mLのtert-ブタノール中7.6%OsO4(0.275 g、0.00108 mol)溶液を加えた。反応完結後(〜3h)、固体Na2SO3を加えて混合物の反応を止め、得られた混合物を室温で1,5時間攪拌した。反応混合物をDCM(300 mL)で希釈し、水(2 x 100 mL)、次いで飽和NaHCO3(1 x 50 mL)溶液、水(1 x 30 mL)、最後にブライン(1x 50 mL)で洗浄した。有機相を無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空中で除去した。粗物質のシリカゲルカラムクロマトグラフィ精製によりジアステレオマー混合物を得、これをprep HPLCで分離した。収量:-6g粗。
517A-ピーク-1(白色固体)、5.13 g(96%). 1H-NMR(DMSO、400MHz):δ= 7.39-7.31(m、5H)、5.04(s、2H)、4.78-4.73(m、1H)、4.48-4.47(d、2H)、3.94-3.93(m、2H)、2.71(s、3H)、1.72-1.67(m、4H). LC-MS-[M+H]-266.3、[M+NH4 +]-283.5存在、HPLC-97.86%。立体化学をX線で確認した。
518の合成
【0388】
化合物505を合成するために記載したのと類似の手順を用いて無色油状の化合物518(1.2 g、41%)を得た。1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ= 7.35-7.33(m、4H)、7.30-7.27(m、1H)、5.37-5.27(m、8H)、5.12(s、2H)、4.75(m,1H)、4.58-4.57(m,2H)、2.78-2.74(m,7H)、2.06-2.00(m,8H)、1.96-1.91(m、2H)、1.62(m、4H)、1.48(m、2H)、1.37-1.25(br m、36H)、0.87(m、6H)。HPLC-98.65%。
化合物519を合成するための一般的手順
【0389】
ヘキサン(15 mL)中の化合物518(1 eq)の溶液をTHF中のLAHの氷冷溶液(1 M、2 eq)に滴下した。添加が完結した後、混合物を40℃で0.5h時間加熱し、次いで再度氷浴で冷却した。混合物を飽和水性Na2SO4で注意深く加水分解し、次いでセライトでろ過して油に還元した。カラムクロマトグラフィにより無色油状の純粋な519(1.3 g、68%)を得た。13C NMR δ= 130.2、130.1(x2)、127.9(x3)、112.3、79.3、64.4、44.7、38.3、35.4、31.5、29.9(x2)、29.7、29.6(x2)、29.5(x3)、29.3(x2)、27.2(x3)、25.6、24.5、23.3、226、14.1;エレクトロスプレーMS(+ve):C44H80NO2の分子量(M+H)+ 理論値654.6、実測値654.6。
【0390】
標準法または無押出方法により製造した製剤を同様の方法で特徴付けることができる。例えば、製剤を典型的には目視検査で特徴づける。製剤は凝集物や沈殿物を含まない白色半透明溶液であるべきである。脂質ナノ粒子の粒子サイズと粒子サイズ分布は、例えばMalvern Zetasizer Nano ZS(Malvern、USA)を用いる光散乱により測定することができる。粒子は約20〜300nm、例えば40〜100nmのサイズであるべきである。粒子サイズ分布は単峰型であるべきである。該製剤および取り込み分画中の総dsRNA濃度を色素排除アッセイを用いて評価する。製造したdsRNAの試料を、製剤を破壊する界面活性剤、例えば0.5% Triton-X100の存在下または非存在下でRibogreen(Molecular Probes)などのRNA結合色素とインキュベーションすることができる。製剤中の総dsRNAを界面活性剤を含む試料からのシグナルと標準曲線と比較することにより測定することができる。取り込み分画を「遊離」dsRNA含有量(界面活性剤非存在下のシグナルで測定)を総dsRNA含有量から引いて決定する。取り込みdsRNAパーセントは典型的には>85%である。LNP製剤では、粒子サイズは、少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm、少なくとも110nm、および少なくとも120nmである。適切な範囲は、典型的には約少なくとも50nm〜約少なくとも110nm、約少なくとも60nm〜約少なくとも100nm、または約少なくとも80nm〜約少なくとも90nmである。
【0391】
経口投与用の組成物および製剤は、粉末または顆粒、微細粒子、ナノ粒子、水または非水性媒質中のサスペンジョンまたは溶液、カプセル、ゲルカプセル、サシェー、錠剤、またはミニ錠剤を含む。
増粘剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤が望ましい。ある態様において、経口用製剤は、本発明のdsRNAsを1またはそれ以上の浸透促進剤、界面活性剤、およびキレート剤と組み合わせて投与するものである。適切な界面活性剤は、脂肪酸および/またはそのエステルまたは塩、胆汁酸および/またはその塩を含む。適切な胆汁酸/塩は、ケノデオキシコール酸(CDCA)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、ナトリウムタウロ-24,25-ジヒドロ-フシデート、およびナトリウムグリコジヒドロフシデートを含む。適切な脂肪酸は、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはモノグリセリド、ジグリセリドまたはその医薬的に許容される塩(例えばナトリウム)を含む。ある態様において、浸透促進剤の組み合わせは、例えば脂肪酸/塩と胆汁酸/塩の組み合わせを用いる。ある典型的な組み合わせは、ラウリン酸、カプリン酸、およびUDCAのナトリウム塩である。さらなる浸透促進剤は、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテルを含む。本発明のDsRNAはスプレー乾燥粒子を含む顆粒型でまたは複合して微小またはナノ粒子を形成して経口送達することができる。dsRNA複合剤は、ポリ-アミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;ポリアルキルアクリレート、ポリオキシエタン、ポリアルキルシアノアクリレート;カチオン性ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)、およびデンプン;ポリアルキルシアノアクリレート;DEAE複合化ポリイミン、ポルラン、セルロース、およびデンプンを含む。適切な複合剤は以下のものを含む:キトサン、N-トリメチルキトサン、ポリ-L-リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p-アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、DEAE-メタクリレート、DEAE-ヘキシルアクリレート、DEAE-アクリルアミド、DEAE-アルブミンおよびDEAE-デキストラン、ポリメチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(DL-乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、アルギネート、およびポリエチレングリコール(PEG)。dsRNAおよびその調製物の経口用製剤は、米国特許6,887,906、米国公開公報No. 20030027780、および米国特許No. 6,747,014に詳述されている(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。
【0392】
非経口的、実質内(脳内)、髄腔内、心室内、または肝内投与用の組成物および製剤は、緩衝剤、希釈剤、および他の適切な添加剤、例えば限定されるものではないが、浸透促進剤、担体化合物、および他の医薬的に許容される担体または賦形剤も含むことができる無菌水性溶液を含みうる。
【0393】
本発明の医薬組成物は、限定されるものではないが、溶液、エマルジョン、およびリポソーム含有製剤を含む。これらの組成物は、限定されるものではないが、予め形成された液体、自己乳化固体、自己乳化半固体を含む種々の成分から作製することができる。肝臓癌などの肝疾患を治療する際に肝臓を標的とする製剤が特に好ましい。
【0394】
好都合には単位剤形で存在することができる本発明の医薬製剤は、医薬産業においてよく知られた通常の技術に従って製造することができる。そのような技術は、活性成分を医薬的担体または賦形剤と結合させる工程を含む。一般的には、該製剤は、活性成分と液体担体または微粉化固体担体またはその両方を均質および密接に結合させ、次いで所望により該生成物を成形することにより製造する。
【0395】
本発明の組成物は、限定されるものではないが、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、軟ゲル、坐剤、および浣腸などのあらゆる多くの名濃名剤形に製剤化することができる。本発明の組成物は、水性、非水性、または混合媒質中のサスペンジョンとして製剤化することもできる。水性サスペンジョンは、さらにナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、および/またはデキストランを含むサスペンジョンの粘性を増加させる物質を含むことができる。サスペンジョンは安定化剤も含むことができる。
C. さらなる製剤
i. エマルジョン
【0396】
本発明の組成物はエマルジョンとして製造および製剤化することができる。エマルジョンは、典型的にはある液体が別のものに通常直径が0.1μを超える滴の形で分散している不均一系である(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、Allen、LV.、Popovich NG. and Ansel HC.、2004、Lippincott Williams & Wilkins(第8版)、New York、NY;Idson、Pharmaceutical Dosage Forms中、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 199;Rosoff、Pharmaceutical Dosage Forms中、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、Volume 1、p. 245;Block in Pharmaceutical Dosage Forms、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 2、p. 335;Higuchi et al.、Remington's Pharmaceutical Sciences中、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1985、p. 301参照)。エマルジョンは、互いに密接に混合および分散した2つの不混和液相を含む2相系であることが多い。一般的には、エマルジョンは、油中水(w/o)または水中油(o/w)型のいずれかでありうる。水性相を大量の油相中に微小化し微小滴として分散させる場合、得られる組成物を油中水(w/o)エマルジョンという。あるいはまた、油相を大量の水性相中に微小化し微小滴として分散させる場合、得られる組成物を水中油(o/w)エマルジョンという。エマルジョンは、分散相に加えてさらなる成分、および水性相、油相、またはそれ自体分離した相の溶液として存在しうる活性薬剤を含むことができる。医薬的賦形剤、例えば乳化剤、安定化剤、色素、および抗酸化剤も所望によりエマルジョン中に存在することができる。医薬的エマルジョンは、例えば油中水中油(o/w/o)および水中油中水(w/o/w)エマルジョンの場合などの2を超える相からなる多重エマルジョンも含むことができる。そのような複雑な製剤は、単純な2成分エマルジョンにはない利点があることが多い。o/wエマルジョンの個々の油滴が小水滴を含む多重エマルジョンがw/o/wエマルジョンを構成する。同様に、油連続相中に安定化された水の小球中に含まれる油滴の系がo/w/oエマルジョンをもたらす。
【0397】
エマルジョンは、熱力学的安定性がほとんどまたは全く無いことを特徴とする。しばしば、エマルジョンの分散または不連続相は外部または連続相によく分散し、乳化剤または製剤の粘性によりこの形で維持される。エマルジョンの相はいずれもエマルジョン型軟膏基剤およびクリームの場合のように半固体または固体でありうる。エマルジョンを安定化する他の手段は、エマルジョンのいずれかの相に組み込むことができる乳化剤の使用を伴う。乳化剤は合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤、および微小分散固体の4つのカテゴリーに大きく分類することができる(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、Allen、LV.、Popovich NG.、およびAnsel HC.、2004、Lippincott Williams & Wilkins(第8版)、New York、NY;Idson、in Pharmaceutical Dosage Forms、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 199参照)。
【0398】
表面活性剤としても知られる合成界面活性剤は、エマルジョンの製剤に広い応用性があり文献に概説されている(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、Allen、LV.、Popovich NG.、およびAnsel HC.、2004、Lippincott Williams & Wilkins(第8版)、New York、NY;Rieger、in Pharmaceutical Dosage Forms、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 285;Idson、in Pharmaceutical Dosage Forms、Lieberman、Rieger and Banker(編)、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、1988、volume 1、p. 199参照)。界面活性剤は、典型的には両新媒性であり、親水性および疎水性部分を含む。該界面活性剤の親水性と疎水性の割合は、親水性/疎水性バランス(HLB)といい、製剤の製造において界面活性剤を分類および選択するのに有用な手段である。界面活性剤は、親水性基の性質、すなわち非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性に基づいて異なるクラスに分類することができる(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、Allen、LV.、Popovich NG. and Ansel HC.、2004、Lippincott Williams & Wilkins(第8版)、New York、NY Rieger、Pharmaceutical Dosage Forms中、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 285参照)。
【0399】
エマルジョン製剤に用いる転園乳化剤は、ラノリン、蜜ろう、ホスファチド、レシチン、およびアカシアを含む。吸収基剤は、親水性特性を有し、半固体の硬さを保ちながら水を吸収してw/oエマルジョンを形成することができる(例えば無水ラノリンおよび親水性ワセリン)。微細固体も特に界面活性剤と組み合わせて粘性製剤に良好な乳化剤として用いられてきた。これは、極性無機固体、例えば重金属水酸化物、非膨潤クレイ、例えばベントナイト、アタパルガイト、ヘクトライト、カオリン、モントモリロナイト、コロイド状ケイ酸アルミニウム、およびコロイド状ケイ酸マグネシウムアルミニウム、色素、および非極性固体、例えば炭素またはグリセリルトリステアレートを含む。
【0400】
種々の非乳化物質もエマルジョン製剤に含まれ、エマルジョンの特性に寄与する。これには、脂肪、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、保湿剤、親水性コロイド、保存料、および抗酸化剤を含む(Block、Pharmaceutical Dosage Forms中、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 335;Idson、Pharmaceutical Dosage Forms中、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 199参照)。
【0401】
親水性コロイドまたはヒドロコロイドは、天然ゴムおよび合成ポリマー、例えば多糖(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、カラギーナン、グアガム、空やガム、およびトラガカント)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)、および合成ポリマー(例えば、カルボマー、セルロースエーテル、およびカルボキシビニルポリマー)を含む。これは、水中に分散または膨潤し、分散相的周囲に強い界面フィルムを形成し、外相の粘性を増加することによりエマルジョンを安定化させるコロイド溶液を形成する。
【0402】
エマルジョンは、微生物の増殖を容易に支持することができる多くの成分、例えば炭化水素、(登録商標)、ステロール、およびホスファチドを含むことが多いので、これらの製剤は保存料を含むことが多い。エマルジョン製剤に含まれる通常用いられる保存料は、メチルパラベン、プロピルパラベン、第4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、およびホウ酸を含む。抗酸化剤も製剤の劣化を防ぐためにエマルジョン製剤に通常加えられる。用いる抗酸化剤は、フリーラジカルスカベンジャー、例えばトコフェロール、アルキルガレート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、または還元剤、例えばアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウム、および抗酸化剤協力剤、例えばクエン酸、酒石酸、およびレシチンでありうる。
【0403】
皮膚、経口、および非経口経路によるエマルジョン製剤の適用、およびその製造方法は文献に概説されている(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、Allen、LV.、Popovich NG. and Ansel HC.、2004、Lippincott Williams & Wilkins(第8版)、New York、NY;Idson、in Pharmaceutical Dosage Forms、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 199参照)。経口送達用のエマルジョン製剤は、製造し易さと吸収およびバイオアベイラビリティの観点からの有効性のため極めて広く用いられてきた(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、Allen、LV.、Popovich NG. and Ansel HC.、2004、Lippincott Williams & Wilkins(第8版)、New York、NY;Rosoff、in Pharmaceutical Dosage Forms、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 245;Idson、in Pharmaceutical Dosage Forms、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 199参照)。通常、o/wエマルジョンとして経口投与されているものには鉱油ベース便秘薬、脂溶性ビタミン、および高脂肪栄養剤がある。
ii. 微小エマルジョン
【0404】
本発明のある態様においてiRNAおよび核酸の組成物は微小エマルジョンとして製剤化される。微小エマルジョンは、単一の所望により等方性および熱力学的に安定な液体溶液である水、油、および両新媒性物質の系と定義することができる(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、Allen、LV.、Popovich NG. and Ansel HC.、2004、Lippincott Williams & Wilkins(第8版)、New York、NY;Rosoff、in Pharmaceutical Dosage Forms、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 245参照)。典型的には、微小エマルジョンは、最初に水性界面活性剤溶液に油を分散させ、次いで十分量の第4成分、一般的には中鎖アルコールを加えて透明な系を形成することにより製造される系である。したがって、微小エマルジョンは、表面活性分子の界面フィルムにより安定化される2つの不混和液の熱力学的に安定で等方性に透明なディスパージョンとも記載されている(Leung and Shah、Controlled Release of Drugs:Polymers and Aggregate Systems中、Rosoff、M.編、1989、VCH Publishers、New York、p.185-215)。微小エマルジョンは、一般的に、油、水、界面活性剤、補助界面活性剤、および電解質を含む3〜5成分の混合物により製造される。微小エマルジョンが油中水(w/o)または水中油(o/w)型であるか否かは、用いる油と界面活性剤の特性ならびに界面活性剤分子の極性頭部と炭化水素尾部の構造と幾何学的パッキングに依存する(Schott、Remington's Pharmaceutical Sciences中、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1985、p. 271)。
【0405】
位相図を利用する現象論的方法が広く研究されており、微小エマルジョンの製剤化方法に関する総合的な知識を当業者にもたらした(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、Allen、LV.、Popovich NG. and Ansel HC.、2004、Lippincott Williams & Wilkins(第8版)、New York、NY;Rosoff、Pharmaceutical Dosage Forms中、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 245;Block、Pharmaceutical Dosage Forms中、Lieberman、Rieger and Banker(編)、1988、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.、volume 1、p. 335参照)。従来のエマルジョンに比べて、微小エマルジョンは、自然に形成される熱力学的に安定な滴の製剤において水に不溶性の薬剤を可溶化する利点をもたらす。
【0406】
微小エマルジョンの製造に用いる界面活性剤は、限定されるものではないが、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレエート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレエート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレエート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセクイオレエート(SO750)、デカグリセロールデカオレエート(DAO750)を単独または補助界面活性剤と組み合わせて含む。補助界面活性剤、通常、エタノール、1-プロパノール、および1-ブタノールなどの短鎖アルコールは、界面活性剤フィルム中に浸透し、界面活性剤分子間に生じた空間により不規則なフィルムが生じることにより界面流動性の増加に役立つ。しかしながら、微小エマルジョンは、補助界面活性剤を用いずに製造することができ、無アルコール自己エマルジョン化微小エマルジョン系が当該分野で知られている。水性相は、典型的には限定されるものではないが、水、薬剤の水性溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールの誘導体でありうる。油相は、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8-C12)モノ、ジ、およびトリ-グリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C8-C10グリセリド、植物油、およびシリコン油などの物質を含む。
【0407】
微小エマルジョンは、特に薬剤の可溶化と薬剤の吸収増加の観点から興味深い。脂質ベースの微小エマルジョン(o/wおよびw/o両方)は、ペプチドを含む薬剤の経口バイオアベイラビリティを増強すると提唱されている(例えば、米国特許No. 6,191,105;7,063,860;7,070,802;7,157,099;Constantinides et al.、Pharmaceutical Research、1994、11、1385-1390;Ritschel、Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol.、1993、13、205参照)。微小エマルジョンは、薬剤の可溶化の改善、薬剤の酵素的加水分解からの保護、膜流動性および浸透性の界面活性剤誘導性変化による薬剤吸収の増強の可能性、製造し易さ、固体剤形での経口投与のし易さ、臨床的有効性の改善、および毒性の減少という利点がある(例えば、米国特許No. 6,191,105;7,063,860;7,070,802;7,157,099;Constantinides et al.、Pharmaceutical Research、1994、11、1385;Ho et al.、J. Pharm. Sci.、1996、85、138-143参照)。しばしば微小エマルジョンは、その成分を周囲温度で一緒にすると自然に形成することができる。これは、易熱性薬剤、ペプチド、またはiRNAを製剤化する時に特に好都合でありうる。微小エマルジョンは、化粧品と医薬品において活性成分を経皮送達するのにも有効である。本発明の微小エマルジョン組成物および製剤は消化管からのiRNAおよび核酸の全身吸収の増加を促進し、iRNAおよび核酸の局所的細胞取り込みを改善すると期待される。
【0408】
本発明の微小エマルジョンは、製剤の特性を改善し、本発明のiRNAおよび核酸の吸収を増強するためにさらなる成分および添加物、例えばソルビタンモノステアレート(Grill 3)、ラブラゾール、および浸透促進剤を含むこともできる。本発明の微小エマルジョンに用いる浸透促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、および非キレート非界面活性剤の5つの大きなカテゴリーの1つに属する分類することができる(Lee et al.、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、p. 92)。これらの各クラスは上記されている。
iii. 微小粒子
【0409】
本発明のRNAi物質は、微小粒子などの粒子中に組み込むことができる。微小粒子はスプレー乾燥により製造することができるが、凍結乾燥、蒸発、流動床乾燥、真空乾燥、またはこれら技術の組み合わせを含む他の方法により生成することもできる。
iv. 浸透促進剤
【0410】
ある態様において、本発明は、動物の皮膚に核酸、特にiRNAのを効率的に送達するために種々の浸透促進剤を用いる。ほとんどの薬剤はイオン化型と非イオン化型の両方で溶液中に存在する。しかしながら、通常、脂質溶解性または脂溶性の薬剤のみが、容易に細胞膜を横切る。横切る膜を浸透促進剤で処理すると非脂溶性薬でも細胞膜を横切ることができることがわかった。皮脂溶性薬の細胞膜を横切る核酸を助けることに加え、浸透促進剤は脂溶性薬の浸透性も促進する。
【0411】
浸透促進剤は、5つの大きなカテゴリー、すなわち、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、および非キレート非界面活性剤の1つに属すると分類することができる(例えば、Malmsten、M. Surfactants and polymers in drug delivery、Informa Health Care、New York、NY、2002;Lee et al.、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、p.92参照)。浸透促進剤の上記各クラスは以下により詳細に記載されている。界面活性剤(または「表面活性剤」)は、水性溶液に溶解すると溶液の表面張力または水性溶液と別の溶液の界面張力を低下させる化学的エンティティであり、iRNAの粘膜を通した吸収を促進する。胆汁酸と脂肪酸に加え、これらの浸透促進剤は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン-20-セチルエーテル)(例えば、Malmsten、M. Surfactants and polymers in drug delivery、Informa Health Care、New York、NY、2002;Lee et al.、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、p.92);およびパーフルオロ化合物エマルジョン、例えばFC-43(Takahashi et al.、J. Pharm. Pharmacol.、1988、40、252)を含む。
【0412】
種々の脂肪酸および浸透促進剤として作用するそれらの誘導体は例えば以下のものを含む:オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n-デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1-モノオレオイル-rac-グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール 1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、そのC1-20アルキルエステル(例えば、メチル、イソプロピルおよびt-ブチル)、およびそのモノおよびジグリセリド(すなわち、オレエート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレートなど)(例えば、Touitou、E.、et al. Enhancement in Drug Delivery、CRC Press、Danvers、MA、2006;Lee et al.、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、p.92;Muranishi、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1990、7、1-33;El Hariri et al.、J. Pharm. Pharmacol.、1992、44、651-654参照)。
【0413】
胆汁の生理学的役割は、脂質および脂溶性ビタミンの分散と吸収の促進を含む(例えば、Malmsten、M. Surfactants and polymers in drug delivery、Informa Health Care、New York、NY、2002;Brunton、Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、第38章、Hardman et al. 編、McGraw-Hill、New York、1996、pp. 934-935参照)。種々の天然胆汁塩およびその合成誘導体は浸透促進剤として作用する。すなわち、用語「胆汁塩」は、単純の天然成分のいずれかとその合成誘導体のいずれかを含む。適切な胆汁塩は例えば以下のものを含む:コール酸(またはその医薬的に許容されるナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコレート(ナトリウムグルコレート)、グリコール酸(グリコール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、ナトリウムタウロ-24,25-ジヒドロ-フシデート(STDHF)、ナトリウムグリコジヒドロフシデートおよびポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル(POE)(例えば、Malmsten、M. Surfactants and polymers in drug delivery、Informa Health Care、New York、NY、2002;Lee et al.、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、p.92;Swinyard、Remington's Pharmaceutical Sciences、39章、第18版、Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1990、p.782-783;Muranishi、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1990、7、1-33;Yamamoto et al.、J. Pharm. Exp. Ther.、1992、263、25;Yamashita et al.、J. Pharm. Sci.、1990、79、579-583参照)。
【0414】
本発明に関連して用いるキレート剤は、錯体を形成して金属イオンを溶液から除去し、粘膜からのiRNAの吸収を促進する化合物と定義することができる。本発明において浸透促進剤としてのその使用に関して、非常に特徴付けられたDNAヌクレアーゼは触媒に二価金属イオンを必要としキレート剤により阻害されるので、キレート剤はDNアーゼ阻害剤としても役立つさらなる利点がある(Jarrett、J. Chromatogr.、1993、618、315-339)。適切なキレート剤は、限定されるものではないが、ジナトリウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、サリチレート(例えば、サリチル酸ナトリウム、5-メトキシサリチレート、およびホモバニレート)、コラーゲンのN-アシル誘導体、ラウレス-9、およびβ-ジケトンのN-アミノアシル誘導体(エナミン)を含む(例えば、Katdare、A. et al.、Excipient development for pharmaceutical、biotechnology、and drug delivery、CRC Press、Danvers、MA、2006;Lee et al.、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、page 92;Muranishi、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1990、7、1-33;Buur et al.、J. Control Rel.、1990、14、43-51参照)。
【0415】
本明細書で用いている非キレート非界面活性剤浸透促進化合物は、キレート剤または界面活性剤としてわずかな活性を示すが、それにも関わらず消化管粘膜からのiRNAの吸収を促進する化合物と定義することができる(例えば、Muranishi、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1990、7、1-33)。このクラスの浸透促進剤は、例えば、不飽和環状ウレア、1-アルキル-および1-アルケニルアザシクロ-アルカノン誘導体(Lee et al.、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、p.92);および非ステロイド系抗炎症剤、例えばジクロフェナクナトリウム、インドメタシン、およびフェニルブタゾン(Yamashita et al.、J. Pharm. Pharmacol.、1987、39、621-626)を含む。
【0416】
細胞レベルでのiRNAの取り込みを促進する物質も本発明の医薬組成物および他の組成物に加えることができる。例えばカチオン性脂質、例えばリポフェクチン(Junichi et al、米国特許No. 5,705,188)、カチオン性グリセロール誘導体、およびポリカチオン性分子、例えばポリリジン(Lollo et al.、PCT Application WO 97/30731)もdsDNAの細胞への取り込みを促進することが知られている。市販されているトランスフェクション試薬の例は、特に、例えば以下のものを含む:Lipofectamine(登録商標)(Invitrogen;Carlsbad、CA)、Lipofectamine 2000(登録商標)(Invitrogen;Carlsbad、CA)、293fectin(登録商標)(Invitrogen;Carlsbad、CA)、Cellfectin(登録商標)(Invitrogen;Carlsbad、CA)、DMRIE-C(登録商標)(Invitrogen;Carlsbad、CA)、FreeStyle(登録商標)MAX(Invitrogen;Carlsbad、CA)、Lipofectamine(登録商標)2000 CD(Invitrogen;Carlsbad、CA)、Lipofectamine(登録商標)(Invitrogen;Carlsbad、CA)、RNAiMAX(Invitrogen;Carlsbad、CA)、Oligofectamine(登録商標)(Invitrogen;Carlsbad、CA)、Optifect(登録商標)(Invitrogen;Carlsbad、CA)、X-tremeGENE Q2トランスフェクション試薬(Roche;Grenzacherstrasse、Switzerland)、DOTAPリポソームトランスフェクション試薬(Grenzacherstrasse、Switzerland)、DOSPERリポソームトランスフェクション試薬(Grenzacherstrasse、Switzerland)、またはFugene(Grenzacherstrasse、Switzerland)、Transfectam(登録商標)Reagent(Promega;Madison、WI)、TransFast(登録商標)Transfection Reagent(Promega;Madison、WI)、Tfx(登録商標)-20 Reagent(Promega;Madison、WI)、Tfx(登録商標)-50 Reagent(Promega;Madison、WI)、DreamFect(登録商標)(OZ Biosciences;Marseille、France)、EcoTransfect(OZ Biosciences;Marseille、France)、TransPass
a D1トランスフェクション試薬(New England Biolabs;Ipswich、MA、USA)、LyoVec(登録商標)/LipoGen(登録商標)(Invitrogen;San Diego、CA、USA)、PerFectinトランスフェクション試薬(Genlantis;San Diego、CA、USA)、NeuroPORTERトランスフェクション試薬(Genlantis;San Diego、CA、USA)、GenePORTERトランスフェクション試薬(Genlantis;San Diego、CA、USA)、GenePORTER 2トランスフェクション試薬(Genlantis;San Diego、CA、USA)、Cytofectinトランスフェクション試薬(Genlantis;San Diego、CA、USA)、BaculoPORTERトランスフェクション試薬(Genlantis;San Diego、CA、USA)、TroganPORTER(登録商標)トランスフェクション試薬(Genlantis;San Diego、CA、USA )、RiboFect(Bioline;Taunton、MA、USA)、PlasFect(Bioline;Taunton、MA、USA)、UniFECTOR(B-Bridge International;Mountain View、CA、USA)、SureFECTOR(B-Bridge International;Mountain View、CA、USA)、またはHiFect(登録商標)(B-Bridge International、Mountain View、CA、USA)。
【0417】
他の薬剤を利用して投与した核酸の浸透を促進することができ、これにはグリコール、例えばエチレングリコールおよびプロピレングリコール、ピロール、例えば2-ピロール、アゾン、およびテルフェン、例えばリモネンおよびメントンが含まれる。
v. 担体
【0418】
本発明のある種の組成物は、製剤中に担体化合物も組み込む。本明細書で用いている「担体化合物」または「担体」は、不活性(すなわち、それ自身生物活性を持たない)が、例えば生物学的に活性な核酸を分解するかまたはその循環からの除去を促進することにより生物活性を有する核酸のバイオアベイラビリティを低下させるin vivoプロセスにより核酸として認識される核酸またはそのアナログを表すことができる。核酸と担体化合物、典型的には過剰の後者の物質との同時投与は、おそらく共通レセプターに対する核酸と担体化合物の競合とによる肝臓、腎臓、または他の循環外リザーバー中の回収される核酸の量の実質的減少をもたらしうる。例えば、肝臓組織中の部分的ホスホロチオエートdsRNAの回収は、ポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジック酸、または4-アセトアミド-4’イソチオシアノ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸と同時投与すると減少しうる(Miyao et al.、DsRNA Res. Dev.、1995、5、115-121;Takakura et al.、DsRNA & Nucl. Acid Drug Dev.、1996、6、177-183)。
vi. 賦形剤
【0419】
担体化合物と異なり、「医薬担体」または「賦形剤」は、1またはそれ以上の核酸を動物に送達するための医薬的に許容される溶媒、懸濁化剤、またはあらゆる他の医薬的不活性ビークルである。賦形剤は、液体または固体であることができ、計画した投与方法を考慮して特定の医薬組成物の核酸および他の成分と組み合わせたときに望む容量、稠度などをもたらすように選択される。典型的な医薬担体は、限定されるものではないが以下のものを含む:結合剤(例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);充填剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、微晶質セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート、またはリン酸水素カルシウムなど);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸金属、水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど)、および湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)。
【0420】
核酸と有害な反応をしない非非経口投与に適した医薬的に許容される有機または無機賦形剤を本発明の組成物を製造するのに用いることもできる。適切な医薬的に許容される担体は、限定されるものではないが、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを含む。
【0421】
核酸の局所投与用の製剤は、アルコールなどの一般的溶媒中の無菌および非無菌水性溶液、非水性溶液、または液体または固体油基剤中の酢酸の溶液を含む。該溶液は、緩衝剤、希釈剤、および他の適切な添加剤を含むこともできる。核酸と有害な反応をしない非非経口投与に適した医薬的に許容される有機または無機賦形剤を用いることができる。
【0422】
適切な医薬的に許容される賦形剤は、限定されるものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを含む。
vii. 他の成分
【0423】
本発明の組成物は、さらに医薬組成物中に通常みられる他の補助成分をその分野で確立された使用レベルで含むことができる。したがって、例えば、該組成物は、さらなる適合性医薬活性物質、例えば痒み止め、収斂剤、局所麻酔剤または抗炎症剤などを含むか、または本発明の組成物の種々の剤形を物理的に製剤化するのに有用なさらなる物質、例えば染料、香味料、保存料、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤、および安定化剤を含むことができる。しかしながら、そのような物質を添加する際は本発明の組成物の成分の生物活性と過度に干渉してはならない。該製剤は、滅菌することができ、所望により製剤の核酸と有害に相互作用しない補助剤、例えば、潤滑剤、保存料、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色料、香味料、および/または芳香剤などと混合することができる。
【0424】
水性サスペンジョンは、サスペンジョンの粘性を増加する物質(例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、および/またはデキストランを含む)を含むことができる。
【0425】
ある態様において、本発明の医薬組成物は、(a) 1またはそれ以上のiRNA化合物、および(b) 1またはそれ以上の、非RNAiメカニズムにより機能し、出血性疾患を治療するのに有用な物質を含む。そのような物質の例は、限定されるものではないが、抗炎症剤、抗脂肪変性剤、抗ウイルス剤、および/または抗線維症剤を含む。さらに、肝臓を保護するのに一般的に用いる他の物質、例えばシリマリンも本明細書に記載のiRNAと共に用いることができる。肝疾患を治療するのに有用な他の物質は、テルビブジン、エンテカビル、およびプロテアーゼ阻害剤、例えばテラプレビル、および例えばTung et al.、米国出願公開公報No. 2005/0148548、2004/0167116、および2003/0144217;およびHale et al.、米国出願公開公報No. 2004/0127488に記載の他のものを含む。
【0426】
そのような化合物の毒性および治療効果は、例えば、LD50(ポピュレーションの50%に対する致死用量)およびED50(ポピュレーションの50%に対する治療的有効用量)を決定するための細胞培養または実験動物を用いる標準的医薬的方法により決定することができる。
【0427】
毒性作用と治療効果の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比で表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0428】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータはヒトで用いる種々の用量を処方するのに用いることができる。本明細書に記載の本発明の組成物の用量は、一般的には、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。該用量は、用いる剤形と利用する投与経路に応じてこの範囲内で変化しうる。本発明の方法に用いるあらゆる化合物の治療的有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。動物モデルで該化合物または適切な場合は標的配列のポリペプチド生成物の循環血漿濃度範囲を達成する(例えば、ポリペプチド濃度の低下を達成する)ための用量を処方することができ、これは細胞培養で決定したIC50(すなわち、症状の最大半量阻害を達成する被験化合物の濃度)を含む。そのような情報はヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために用いることができる。血漿中レベルは例えば高速液体クロマトグラフィにより測定することができる。
【0429】
上記のそれらの投与に加え、本発明のiRNAは、Serpina1発現により仲介される病的プロセスの治療に有効な他の既知の物質と組み合わせて投与することができる。いずれにせよ、投与する医師は当該分野で知られたまたは本明細書に記載の標準的有効性測定法を用いて得た結果に基づいてiRNA投与の量とタイミングを調整することができる。
IV. Serpina1発現の阻害方法
【0430】
本発明は、細胞におけるSerpina1の発現を阻害する方法を提供する。該方法は、細胞と細胞中のSerpina1の発現を阻害するのに有効な量のRNAi物質(例えば2本鎖RNAi物質)を接触させることにより、細胞中のSerpina1の発現を阻害する方法を提供する。
【0431】
細胞と2本鎖RNAi物質との接触はin vitroまたはin vivoで行うことができる。細胞のin vivoでのRNAi物質との接触は、対象、例えばヒト対象内の細胞または細胞群とRNAi物質との接触を含む。in vitroとin vivoの接触方法の組み合わせも可能である。接触は上記のごとく直接または間接的でありうる。さらに、細胞の接触は、本明細書に記載のまたは当該分野で知られたあらゆるリガンドを含む標的化リガンドを介して達成することができる。好ましい態様において、標的化リガンドは、炭化水素部分、例えばGalNAc3リガンド、またはRNAi物質を目的部位(例えば対象の肝臓)に導くあらゆる他のリガンドである。
【0432】
本明細書で用いている用語「阻害する」は、「減少させる」、「サイレンシング」、「下方調節する」、および他の同様の用語と互換性に用い、あらゆるレベルの阻害を含む。
【0433】
用語「Serpina1発現の阻害」は、あらゆるSerpina1遺伝子(例えばマウスSerpina1遺伝子、ラットSerpina1遺伝子、サルSerpina1遺伝子、またはヒトSerpina1遺伝子)、およびSerpina1遺伝子の変異体または突然変異体の発現の阻害を表すことを意図する。したがって、Serpina1遺伝子は、遺伝子操作する細胞、細胞群、または生物に関連して野生型Serpina1遺伝子、突然変異体Serpina1遺伝子、またはトランスジェニックSerpina1遺伝子でありうる。
【0434】
「Serpina1遺伝子の発現を阻害する」は、あらゆるレベルのSerpina1遺伝子の阻害、例えば、Serpina1遺伝子発現の少なくとも部分的抑制を含む。Serpina1遺伝子の発現は、Serpina1遺伝子発現に関連するあらゆる変数のレベルまたはレベル変化(例えば、Serpina1 mRNAレベル、Serpina1タンパク質レベル、または脂質レベルを含む)に基づいて評価することができる。
【0435】
阻害は、Serpina1発現に関連する1またはそれ以上の変数の絶対または相対レベルのコントロールレベルと比べた減少により評価することができる。コントロールレベルは、当該分野で用いられるあらゆるタイプのコントロールレベル、例えば投与前ベースラインレベル、またはコントロール(例えば緩衝液のみのコントロールまたは不活性剤コントロール)で処置または非処置の同様の対象、細胞、または試料から決定したレベルでありうる。
【0436】
本発明の方法のある態様において、Serpina1遺伝子の発現は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%阻害される。
【0437】
Serpina1遺伝子発現の阻害は、処置されていないこと以外第1細胞または細胞群と実質的に同様の第2細胞または細胞群(コントロール細胞)に比べてSerpina1遺伝子の発現が阻害されるように処置された(例えば細胞または細胞群を本発明のRNAi物質と接触させることによるか、または本発明のRNAi物質を細胞が存在する対象に投与することによる)Serpina1遺伝子が転写される第1細胞または細胞群(そのような細胞は、例えば対象由来の試料中に存在しうる)により発現したmRNAの量の減少により示すことができる。好ましい態様において、該阻害は、処置細胞のmRNAレベルを下記式:
{(コントロール細胞のmRNA)−(処置細胞のmRNA)}・100%
(コントロール細胞のmRNA)
を用いてコントロール細胞中のmRNAレベルのパーセンテージで表すことにより評価する。
【0438】
あるいはまた、Serpina1遺伝子発現の阻害は、Serpina1遺伝子発現と機能的に関連したパラメーター、例えばSerpina1タンパク質発現、例えばALT、アルカリホスファターゼ、ビリルビン、プロトロンビン、およびアルブミンの減少により評価することができる。Serpina1遺伝子サイレンシングは、Serpina1を構成的またはゲノム操作により発現するあらゆる細胞を用い、当該分野で知られたあらゆるアッセイにより決定することができる。肝臓はSerpina1発現の主要部位である。他の重要な発現部位は肺と腸を含む。
【0439】
Serpina1タンパク質発現の阻害は、細胞または細胞群が発現したSerpina1タンパク質のレベル(例えば対象由来の試料で発現したタンパク質のレベル)の減少で示すことができる。mRNA抑制の評価について上記したように、処置細胞または細胞群におけるタンパク質発現レベルの阻害は、同様に、コントロール細胞または細胞群におけるタンパク質レベルのパーセンテージで表すことができる。
【0440】
Serpina1遺伝子発現の阻害を評価するのに用いることができるコントロール細胞または細胞群は、本発明のRNAi物質とまだ接触していない細胞または細胞群を含む。例えば、該コントロール細胞または細胞群は、対象をRNAi物質で処置する前の個々の対象(例えばヒトまたは動物対象)由来でありうる。
【0441】
細胞または細胞群が発現するSerpina1 mRNAのレベルは、mRNA発現を評価するための当該分野で知られたあらゆる方法を用いて決定することができる。ある態様において、試料中のSerpina1の発現レベルは、Serpina1遺伝子の転写ポリヌクレオチド、またはその部分、例えばmRNAを検出することにより決定する。RNAは、例えば酸フェノール/グアニジンイソチオシアネート抽出(RNAzol B;Biogenesis)、RNeasy RNA製造キット(Qiagen)またはPAXgene(PreAnalytix、Switzerland)を用いることを含むRNA抽出技術を用いて細胞から抽出することができる。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用する典型的アッセイフォーマットは、核ランオンアッセイ、RT-PCR、RNase保護アッセイ(Melton et al.、Nuc. Acids Res. 12:7035)、ノーザンブロッティング、in situハイブリダイゼーション、およびミクロアレイ分析を含む。
【0442】
ある態様において、Serpina1の発現レベルは、核酸プローブを用いて決定する。本明細書で用いている用語「プローブ」は、特定のSerpina1と選択的に結合することができるあらゆる分子を表す。プローブは、当業者が合成するか、適切な生物学的調製物由来でありうる。プローブとして利用することができる分子の例は、限定されるものではないが、RNA、DNA、タンパク質、抗体、および有機分子を含む。
【0443】
単離したmRNAは、限定されるものではないが、サザンまたはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析、およびプローブアレイを含むハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイに用いることができる。mRNAレベルのある決定方法は、単離したmRNAとSerpina1 mRNAとハイブリダイズすることができる核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。ある態様において、該mRNAを、単離したmRNAをアガロースゲルに流し、該ゲルからニトロセルロースなどの膜にmRNAを移すことにより固体表面上に固定し、プローブと接触させる。別の態様において、プローブを固体表面上に固定し、例えばAffymetrix遺伝子チップアレイ中プローブと接触させる。当業者はSerpina1 mRNAのレベルの決定に用いるために既知のmRNA検出法に容易に適合させることができる。
【0444】
試料中のSerpina1の発現レベルの別の決定方法は、RT-PCR(Mullis、1987、米国特許No. 4,683,202に記載の実験態様)、リガーゼ連鎖反応(Barany(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189-193)、自己持続配列複製(Guatelli et al.(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878)、転写増幅系(Kwoh et al.(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173-1177)、Q-βレプリカーゼ(Lizardi et al.(1988) Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.、米国特許No. 5,854,033)またはあらゆる他の核酸増幅法による試料中のmRNAなどの核酸増幅および/または逆トランスクリプターゼ(cDNAを作製するための)のプロセス、次いで当業者によく知られた技術を用いる増幅された分子の検出を含む。これらの検出スキームは、核酸分子が非常に小数存在する場合に該分子の検出に特に有用である。本発明の特定の局面において、Serpina1の発現レベルは、定量的蛍光RT-PCR(すなわち、TaqMan(登録商標)System)により測定する。
【0445】
Serpina1 mRNAの発現レベルは、膜ブロット(例えばノーザン、サザン、ドットなどのハイブリダイゼーション分析に用いる)、またはマイクロウェル、サンプルチューブ、ゲル、ビーズ、またはファイバー(または結合核酸を含むあらゆる固体支持体)を用いてモニターすることができる。米国特許No. 5,770,722、5,874,219、5,744,305、5,677,195、および5,445,934参照のこと(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。Serpina1発現レベルの決定は溶液中の核酸プローブを用いることも含みうる。
【0446】
好ましい態様において、mRNA発現レベルは、分岐鎖DNA(bDNA)アッセイまたはリアルタイムPCR(qPCR)を用いて評価する。これらの方法の使用は本明細書の実施例に記載し例示している。
【0447】
Serpina1タンパク質発現レベルは、タンパク質レベルを測定するための当該分野で知られたあらゆる方法を用いて決定することができる。そのような方法は、例えば電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、薄層クロマトグラフィ(TLC)、超拡散クロマトグラフィ、液体またはゲル沈降反応、吸光分光法、比色分析、分光学的定量法、フローサイトメトリー、免疫拡散法(単一または二重)、免疫電気泳動、ウエスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、電気化学ルミネッセンスアッセイなどを含む。
【0448】
本明細書で用いている用語「試料」は、対象から単離した同様の液体、細胞、または組織、並びに対象中に存在する液体、細胞、または組織の収集物を表す。生体液の例は、血液、血清および漿膜液、血漿、リンパ、尿、脳脊髄液、唾液、眼液などを含む。組織試料は、組織、器官、または局所領域由来の試料を含みうる。例えば、試料は、特定の器官、器官の部分、または該器官内の液体または細胞由来でありうる。ある態様において、試料は肝臓(例えば全肝臓、または肝臓のある断片、または肝臓中のある細胞種(例えば肝細胞など))由来でありうる。好ましい態様において、「対象由来の試料」は、対象から採取した血液または血漿を表す。さらなる態様において、「対象由来の試料」は対象由来の肝組織を表す。
【0449】
本発明の方法のある態様において、RNAi物質が対象内の特定部位に送達されるようにRNAi物質を対象に投与する。Serpina1の発現阻害は、対象中の特定部位由来の液体または組織由来の試料中のSerpina1 mRNAまたはSerpina1タンパク質レベルまたはレベル変化の測定を用いて評価することができる。好ましい態様において、該部位は肝臓である。該部位は、前記部位のいずれか由来の細胞のサブセクションまたはサブグループでもありうる。該部位は、特定種のレセプターを発現する細胞も含みうる。
V. Serpina1関連疾患の治療または予防方法
【0450】
本発明は、Serpina1遺伝子発現を下方調節することにより調節することができる疾患および病状を治療または予防する方法も提供する。例えば、本明細書に記載の組成物は、Serpina1関連疾患、例えば肝疾患、例えば、慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、および/または肝細胞癌、およびこれらの障害と関連がありうる他の病的状態、例えば肺の炎症、肺気腫、およびCOPDを治療するのに用いることができる。
【0451】
本発明は、対象、例えばSerpina1欠損変異体を有する対象における肝細胞癌の発生を阻害する方法も提供する。該方法は、対象に治療的有効量の本発明の組成物を投与することにより対象における肝細胞癌の発生を阻害することを含む。
【0452】
対象、例えばSerpina1欠損変異体を有する対象の肝臓中のミスホールドしたSerpina1の蓄積を減少させるための本発明の組成物の使用および方法も本発明により提供される。該方法は、対象に治療的有効量の本発明組成物を投与することにより、対象の肝臓中のミスホールドしたSerpina1の蓄積を減少させることを含む。
【0453】
本明細書で用いている「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物を含む。対象はトランスジェニック生物を含みうる。より好ましくは、対象はヒト、例えばSerpina1関連疾患に罹患するかまたはそれを発症しやすいヒトである。最も好ましくは、該対象は、ヒト、例えばSerpina1関連疾患に罹患するかまたはそれを発症しやすいヒトである。ある態様において、Serpina1関連疾患に罹患するかまたはそれを発症しやすい対象は、1またはそれ以上のSerpina1 不全対立遺伝子、例えば、PIZ、PIS、またはPIM(Malton)対立遺伝子を有する。
【0454】
本発明のさらなる態様において、本発明のiRNA物質をさらなる治療薬と組み合わせて投与する。iRNA物質とさらなる治療薬は、同じ組成物で一緒に、例えば非経口投与するか、またはさらなる治療薬を別の組成物の部分としてまたは本明細書に記載の別の方法により投与することができる。
【0455】
本発明の方法に用いるのに適したさらなる治療薬の例は、肝硬変などの肝疾患の治療で知られているそれら薬剤が含まれる。例えば、本発明のiRNA物質は、例えば以下のものとともに投与することができる:ウルソデオキシコール酸(UDCA)、免疫抑制剤、メトトレキセート、コルチコステロイド、シクロスポリン、コルヒチン、痒み止め処置、例えば抗ヒンスタミン、コレスチラミン、コレスチポール、リファンピン、ドロナビノール(マリノール)、および血漿分離交換法、予防的抗生剤、紫外線、亜鉛補給物、およびA型肝炎、インフルエンザ、および肺炎球菌ワクチン。
【0456】
本発明の方法のある態様において、Serpina1発現は、長期間、例えば少なくとも1週間、2週間、3週間、または4週間またはそれ以上減少する。例えば、場合により、Serpina1遺伝子の発現は、本明細書に記載のiRNA物質の投与により少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、または55%抑制される。ある態様において、Serpina1遺伝子は、iRNA物質の投与により少なくとも約60%、70%、または80%抑制される。ある態様において、Serpina1遺伝子は、iRNA物質の投与により少なくとも約85%、90%、または95%抑制される。
【0457】
本発明のiRNA物質は、限定されるものではないが、皮下、静脈内、筋肉内、眼内、気管支内、胸腔内、腹腔内、動脈内、リンパ、脳脊髄、およびあらゆるそれらの組み合わせを含む当該分野で知られたあらゆる投与方法を用いて対象に投与することができる。好ましい態様では、iRNA物質を皮下投与する。
【0458】
ある態様において、該投与は蓄積注射による。蓄積注射はiRNA物質を長期間にわたり継続的に放出することができる。したがって、蓄積注射は目的とする効果、例えば目的とするSerpina1阻害、または治療または予防効果を得るのに必要な投薬頻度を減らすことができる。蓄積注射は、より一定な血清濃度ももたらしうる。蓄積注射は、皮下注射または筋肉内注射を含みうる。好ましい態様において、蓄積注射は皮下注射である。
【0459】
ある態様において、該投与はポンプを介する。ポンプは、外部ポンプか外科的に体内に埋め込んだポンプでありうる。ある態様において、ポンプは、皮下に埋め込んだ浸透圧ポンプである。他の態様において、該ポンプは注入ポンプである。注入ポンプを静脈内、皮下、動脈、または硬膜外注入に用いることができる。好ましい態様において、注入ポンプは皮下注入ポンプである。他の態様において、該ポンプはRNAi物質を肝臓に送達する外科的に体内に埋め込んだポンプである。
【0460】
他の投与方法は、硬膜外、脳内、脳室内、鼻内投与、動脈内、心臓内、骨内注入、髄腔内、および硝子体内、および肺内を含む。投与方法は、局所処置と全身処置のいずれが望ましいかと治療する領域に基づいて選ぶことができる。投与経路と部位は標的化を増強するように選ぶことができる。
【0461】
本発明の方法は、iRNA物質を少なくとも5、より好ましくは7、10、14、21、25、30、または40日間Serpina1 mRNAレベルを抑制/減少させるのに充分な用量で投与し;所望により、第1単回用量を投与後少なくとも5、より好ましくは7、10、14、21、25、30、または40日に第2単回用量を投与することにより対象のSerpina1遺伝子の発現を阻害することを含む。
【0462】
ある態様では、本発明のiRNA物質の用量を、4週間毎に1回以下、3週間毎に1回以下、2週間毎に1回以下、または1週間毎に1回以下で投与する。別の態様では、該投与を1、2、3、または6カ月間、または1年間またはそれ以上維持することができる。一般的には、iRNA物質は免疫系を活性化せず、例えばTNFαまたはIFNαレベルなどのサイトカインレベルを増加させない。例えば、例えば本明細書に記載のin vitro PBMCアッセイなどのアッセイで測定すると、TNFαまたはIFNαレベルの増加は、Serpina1を標的としないiRNA物質などのコントロールiRNA物質で処理したコントロール細胞の30%、20%、または10%未満である。
【0463】
例えば、対象に、治療量のiRNA物質、例えば、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、または2.5mg/kg dsRNAを投与することができる。iRNA物質を一定期間、例えば5分間、10分間、15分間、20分間、または25分間にわたり静脈内注入により投与することができる。投与を、例えば定期的に、例えば2週間に1回(すなわち2週間毎に)1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間またはそれ以上反復する。
【0464】
最初の治療計画後は低頻度で処置を施すことができる。例えば、2週間に1回、3カ月間投与後、投与を1月に1回、6カ月間または1年間またはそれ以上反復することができる。iRNA物質の投与は、例えば患者の細胞、組織、血液、尿、器官(例えば肝臓)、または他のコンパートメント中のSerpina1レベルを少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80 %または少なくとも90%またはそれ以上減少させることができる。
【0465】
iRNA物質の全用量を投与する前に、患者により小用量を投与してアレルギー反応などの副作用や脂質レベルや血圧の上昇をモニターすることができる。別の例では、患者の望ましくない免疫刺激作用、例えばサイトカイン(例えば、TNFαまたはINFα)レベルの増加をモニターすることができる。典型的な小用量は、5%またはそれ未満の注入反応の発生率をもたらす用量である。
【0466】
疾患の治療または予防効果は、例えば疾患の進行、疾患の緩解、症状の重症度、痛みの減少、クオリティオブライフ、治療効果を持続するのに必要な薬剤の用量、疾患マーカーまたは治療するか予防を目的とする特定疾患に適したあらゆる他の測定可能なパラメーターのレベルを測定することにより評価することができる。そのようなパラメーターのいずれかまたはパラメーターのあらゆる組み合わせを測定することにより治療または予防効果をモニターすることは十分当業者の能力内である。例えば、肝線維症の治療または肝線維症の改善効果は、例えば以下の肝線維症マーカーを定期的にモニターすることにより評価することができる:a-2-マクログロブリン(a-MA)、トランスフェリン、アポリポプロテインAl、ヒアルロン酸(HA)、ラミニン、N-末端プロコラーゲンIII(PIIINP)、7SコラーゲンIV(7S-IV)、総ビリルビン、間接ビリルビン、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)、AST/ALT、g-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、アルブミン、アルブミン/グロブリン、血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)、トリグリセリド、コレステロール、高密度リポタンパク質および低密度リポタンパク質、および肝臓穿刺生検。治療前(初期測定値)、次いで治療計画時(以後の測定値)に肝線維症マーカーを測定しおよび/または肝臓穿刺生検を実施することができる。
【0467】
初期測定値と以後の測定値の比較は、医師に治療が有効か否かの指標をもたらす。そのようなパラメーターのいずれかまたはパラメーターのあらゆる組み合わせを測定することにより治療または予防効果をモニターすることは十分当業者の能力内である。Serpinalを標的とするiRNA物質またはその医薬組成物の投与に関して、Serpina1関連疾患、例えば肝疾患、例えば肝線維症病状「に対して有効」は、本発明のiRNA物質の臨床的に適切な投与が患者の少なくとも統計学的に有意な割合に有益な効果、例えば症状の改善、治癒、疾患負荷の減少、腫瘍塊または細胞数の減少、生存延長、クオリティオブライフの改善、または肝疾患の治療に精通した医師が一般的に肯定的と認識する他の効果をもたらすことを示す。
【0468】
本発明の方法では、本明細書に記載のiRNA物質を、Serpina1関連疾患、例えば肝疾患、例えば、肝炎、肝硬変、肝線維症、および/または肝細胞癌の兆候、症状、および/またはマーカーを有するか、それと診断されているかまたはそのリスクがある個体を処置するのに用いることができる。当業者は、本明細書に記載のiRNA物質で処置された対象のそのような疾患の兆候、症状、および/またはマーカーを容易にモニターし、これら兆候、症状、および/またはマーカーの少なくとも10%の、好ましくは肝疾患の低リスクを示す臨床レベルへの減少を評価することができる。
【0469】
治療または予防効果は、疾患状態の1またはそれ以上のパラメーターの統計的に有意な改善があるか、またはそうでないと見込まれる症状の悪化または発現がないことにより認められる。例として、疾患の測定可能なパラメーター(例えば上記肝機能)の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%またはそれ以上の好ましい変化は有効な治療を示しうる。本発明のあるiRNA物質または該iRNA物質の製剤の有効性は、当該分野で知られた該疾患の実験動物モデルを用いて評価することもできる。実験動物モデルを用いる場合は、治療の有効性はマーカーまたは症状の統計的に有意な減少がみられるときに証明される。
【0470】
治療または予防効果は、1またはそれ以上の症状が減少または改善したときにも明らかである。例えば、治療または予防は、衰弱、疲労、体重減少、悪心、嘔吐、腹部膨満、四肢の腫脹、眼および/または皮膚の過剰なかゆみと黄疸の1またはそれ以上が減少および改善すると有効である。
【0471】
ある適応症では、Serpina1タンパク質の血清レベルの増加により有効性を測定することができる。例として、適切にホールドしたSerpina1の血清レベルの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%以上の増加は有効な治療を示しうる。
【0472】
あるいはまた、臨床的に許容される疾患重症度等級付け尺度(一例としてChild-Pughスコア(ときにChild-Turcotte-Pughスコア))に基づいて診断分野の当業者が決定した疾患の重症度の減少により有効性を評価することができる。この例では、慢性肝疾患、主に肝硬変の予後は、5つの臨床評価基準、ビリルビン、血清アルブミン、INR、腹水、および肝性脳症の総スコアにより評価する。各マーカーは1〜3の値に割り当てられ、合計値を用いてスコアをA(5〜6点)、B(7〜9点)、またはC(10〜15点)に分類する(これは1または2年生存率と関連付けることができる)。Child-Pughスコアの決定および分析方法は当該分野でよく知られている(Farnsworth et al、Am J Surgery 2004 188:580-583;Child and Turcotte. Surgery and portal hypertension. In:The liver and portal hypertension. CG Child編. Philadelphia:Saunders 1964:50-64;Pugh et al、Br J Surg 1973;60:648-52)。この例では、有効性は例えば「B」から「A」に患者が移動することにより評価することができる。例えば適切な尺度を用いて評価した疾患の重症度の減少をもたらすあらゆる肯定的変化が本明細書に記載のiRNAまたはiRNA製剤を用いる適切な治療を示す。
【0473】
ある態様では、RNAi物質を以下の用量で投与する:約0.25mg/kg〜約50mg/kg、例えば、約0.25mg/kg〜約0.5mg/kg、約0.25mg/kg〜約1mg/kg、約0.25mg/kg〜約5mg/kg、約0.25mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約10mg/kg、約5mg/kg〜約15mg/kg、約10mg/kg〜約20mg/kg、約15mg/kg〜約25mg/kg、約20mg/kg〜約30mg/kg、約25mg/kg〜約35mg/kg、または約40mg/kg〜約50mg/kg。
【0474】
ある態様では、RNAi物質を以下の用量で投与する:約0.25mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約16mg/kg、約17mg/kg、約18mg/kg、約19mg/kg、約20mg/kg、約21mg/kg、約22mg/kg、約23mg/kg、約24mg/kg、約25mg/kg、約26mg/kg、約27mg/kg、約28mg/kg、約29mg/kg、30mg/kg、約31mg/kg、約32mg/kg、約33mg/kg、約34mg/kg、約35mg/kg、約36mg/kg、約37mg/kg、約38mg/kg、約39mg/kg、約40mg/kg、約41mg/kg、約42mg/kg、約43mg/kg、約44mg/kg、約45mg/kg、約46mg/kg、約47mg/kg、約48mg/kg、約49mg/kgまたは約50mg/kg。
【0475】
本発明のある態様では、例えば2本鎖RNAi物質が修飾(例えば、3連続ヌクレオチド上の3つの同じ修飾の1またはそれ以上のモチーフ(該物質の開裂部位またはその付近に1つのそのようなモチーフを含む))、6つのホスホロチオエート結合、およびリガンドを含む場合、そのような物質を以下の用量で投与する:約0.01〜約0.5mg/kg、約0.01〜約0.4mg/kg、約0.01〜約0.3mg/kg、約0.01〜約0.2mg/kg、約0.01〜約0.1mg/kg、約0.01mg/kg〜約0.09mg/kg、約0.01mg/kg〜約0.08mg/kg、約0.01mg/kg〜約0.07mg/kg、約0.01mg/kg〜約0.06mg/kg、約0.01mg/kg〜約0.05mg/kg、約0.02〜約0.5mg/kg、約0.02〜約0.4mg/kg、約0.02〜約0.3mg/kg、約0.02〜約0.2mg/kg、約0.02〜約0.1mg/kg、約0.02mg/kg〜約0.09mg/kg、約0.02mg/kg〜約0.08mg/kg、約0.02mg/kg〜約0.07mg/kg、約0.02mg/kg〜約0.06mg/kg、約0.02mg/kg〜約0.05mg/kg、約0.03〜約0.5mg/kg、約0.03〜約0.4mg/kg、約0.03〜約0.3mg/kg、約0.03〜約0.2mg/kg、約0.03〜約0.1mg/kg、約0.03mg/kg〜約0.09mg/kg、約0.03mg/kg〜約0.08mg/kg、約0.03mg/kg〜約0.07mg/kg、約0.03mg/kg〜約0.06mg/kg、約0.03mg/kg〜約0.05mg/kg、約0.04〜約0.5mg/kg、約0.04〜約0.4mg/kg、約0.04〜約0.3mg/kg、約0.04〜約0.2mg/kg、約0.04〜約0.1mg/kg、約0.04mg/kg〜約0.09mg/kg、約0.04mg/kg〜約0.08mg/kg、約0.04mg/kg〜約0.07mg/kg、約0.04mg/kg〜約0.06mg/kg、約0.05〜約0.5mg/kg、約0.05〜約0.4mg/kg、約0.05〜約0.3mg/kg、約0.05〜約0.2mg/kg、約0.05〜約0.1mg/kg、約0.05mg/kg〜約0.09mg/kg、約0.05mg/kg〜約0.08mg/kg、または約0.05mg/kg〜約0.07mg/kg。前記値の中間の値と範囲も本発明の部分であることを意図し、例えばRNAi物質を約0.015mg/kg〜約0.45mg/mgの用量で対象に投与することができる。
【0476】
例えば、RNAi物質、例えば医薬組成物中のRNAi物質は以下の用量で投与することができる:約0.01mg/kg、0.0125mg/kg、0.015mg/kg、0.0175mg/kg、0.02mg/kg、0.0225mg/kg、0.025mg/kg、0.0275mg/kg、0.03mg/kg、0.0325mg/kg、0.035mg/kg、0.0375mg/kg、0.04mg/kg、0.0425mg/kg、0.045mg/kg、0.0475mg/kg、0.05mg/kg、0.0525mg/kg、0.055mg/kg、0.0575mg/kg、0.06mg/kg、0.0625mg/kg、0.065mg/kg、0.0675mg/kg、0.07mg/kg、0.0725mg/kg、0.075mg/kg、0.0775mg/kg、0.08mg/kg、0.0825mg/kg、0.085mg/kg、0.0875mg/kg、0.09mg/kg、0.0925mg/kg、0.095mg/kg、0.0975mg/kg、0.1mg/kg、0.125mg/kg、0.15mg/kg、0.175mg/kg、0.2mg/kg、0.225mg/kg、0.25mg/kg、0.275mg/kg、0.3mg/kg、0.325mg/kg、0.35mg/kg、0.375mg/kg、0.4mg/kg、0.425mg/kg、0.45mg/kg、0.475mg/kg、または約0.5mg/kg。前記値の中間の値も本発明の部分であることを意図する。
【0477】
対象に投与するRNAi物質の用量は、例えば、望ましくない副作用を避けると同時に目的とするレベルのSerpina1遺伝子抑制(例えばSerpina1 mRNA抑制、Serpina1タンパク質発現に基づいて評価)または目的とする治療または予防効果を達成する特定用量のリスクと利益のバランスにより調整することができる。
【0478】
ある態様では、RNAi物質を2またはそれ以上の用量で投与する。反復または頻回注入を容易にするのが望まし場合は、ポンプ、半永久ステント(例えば、静脈内、腹腔内、嚢内、または包内)、またはリザーバーの埋込みが望ましいかもしれない。ある態様において、続く用量の数と量は、目的とする効果(例えばSerpina1遺伝子の抑制)の達成、または治療または予防効果(例えば肝疾患の症状の減少)の達成によって決まる。ある態様では、RNAi物質をスケジュールにしたがって投与する。例えば、RNAi物質を1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、または1週間に5回投与することができる。ある態様において、該スケジュールは、1時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、毎週、隔週、または毎月などの一定間隔の投与を含む。他の態様において、該スケジュールは、厳密に区切られた投与と、次いで該物質を投与しない長期間を含む。例えば、該スケジュールは、比較的短期間(例えば、約6時間毎、約12時間毎、約24時間毎、約48時間毎、または約72毎)で投与し、次いでRNAi物質を投与しない長期間(例えば、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、または約8週間)の初期投与セットを含みうる。ある態様では、RNAi物質を最初に1時間毎に投与し、その後より長い間隔(例えば、毎日、毎週、隔週、または毎月)で投与する。別の態様では、RNAi物質を最初に毎日投与し、その後より長い間隔(例えば、毎週、隔週、または毎月)で投与する。ある態様では、より長い間隔は徐々に増加するかまたは目的とする効果の達成に基づいて決定される。特定の態様では、RNAi物質を第1週に1日1回投与し、次いで投与第8日に毎週投与を開始する。別の特定の態様では、RNAi物質を第1週に隔日で投与し、次いで投与第8日に毎週投与を開始する。
【0479】
ある態様では、RNAi物質を短い間隔で投与する「ローディング期」(RNAi物質をより長い間隔で投与する「維持期」が続くことがある)を含む投与計画で投与する。ある態様において、ローディング期は、第1週にRNAi物質の5回毎日投与を含む。別の態様において、維持期は、RNAi物質の週1または2回投与を含む。さらなる態様において、維持期は5週間続く。ある態様において、ローディング期は、2mg/kg、1mg/kg、または0.5mg/kgの用量の週5回の投与を含む。別の態様において、維持期は、2mg/kg、1mg/kgまたは0.5mg/kgの用量の週1または2回の投与を含む。
【0480】
これらのスケジュールはいずれも、所望により1またはそれ以上反復することができる。反復数は、目的とする効果(例えばSerpina1遺伝子の抑制)の達成、および/または治療または予防効果(例えばSerpina1関連疾患(例えば肝疾患)の症状の減少)の達成に依存しうる。
【0481】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載のiRNA物質の投与方法を末端利用者、例えば介護者または対象に指示する方法を特徴とする。該方法は、所望により末端利用者に1用量またはそれ以上のiRNA物質を提供し、末端利用者に本明細書に記載の投与計画でiRNA物質を投与するよう指示することを含む。
【0482】
遺伝的素因は、標的遺伝子関連疾患、例えば肝疾患の発症に役割を果たす。したがって、siRNAを必要とする患者は、家族歴をみるか、または例えば1またはそれ以上の遺伝子マーカーまたは変異体をスクリーニングすることにより同定することができる。したがって、ある局面において、本発明は患者がSerpina1欠乏またはSerpina1欠乏遺伝子変異体、例えば、PIZ、PIS、またはPIM(Malton)対立遺伝子の1またはそれ以上を有することに基づいて患者を選択することによる患者の治療方法を提供する。該方法は、患者に治療的有効量のiRNA物質を投与することを含む。
【0483】
ヘルスケア提供者、例えば医師、看護師、または家族の一員は本発明のiRNA物質を処方または投与する前に家族歴をみることができる。さらに、遺伝子型や表現型を決定するための試験を行うことができる。Serpina1 dsRNAを患者に投与する前に、例えば患者由来の試料、例えば血液試料を用いてSerpina1遺伝子型および/または表現型を同定するDNA検査を行うことができる。
VI. キット
【0484】
本発明は、iRNA物質のいずれかを用い、および/または本発明の方法のいずれかを実施するためのキットも提供する。そのようなキットは、1またはそれ以上のRNAi物質と使用するための指示書、例えば、Serpina1の発現を阻害するのに有効な量のRNAi物質と細胞を接触させることにより細胞中のSerpina1の発現を阻害するための指示書を含む。該キットは、所望によりさらに細胞をRNAi物質と接触させる手段(例えば注射用具)、またはSerpina1阻害を測定する手段(例えばSerpina1 mRNA阻害を測定する手段)を含みうる。そのようなSerpina1阻害の測定手段は、対象由来の試料、例えば血漿試料を得る手段を含みうる。本発明のキットは、所望によりさらに対象にRNAi物質を投与する手段、または治療的有効量または予防的有効量を決定する手段を含むことができる。
【0485】
特記しない限り、本明細書で用いているすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと同様または等価な方法と材料を本発明のiRNAおよび方法の実施または試験に用いることができるが、適切な方法と材料を以下に記載する。本明細書に記載のすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は本明細書の一部を構成する。不一致の場合は、定義を含めて本明細書が支配する。さらに、材料、方法、および実施例は単に例示であって、限定を意図するものではない。
【0486】
(実施例)
材料と方法
以下の材料と方法を実施例に用いた。
siRNAデザイン
Serpinal遺伝子は複数の交互転写産物を有する。NCBI遺伝子データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/)に注記されたすべてのヒトおよびカニクイザル(Macaca fascicularis;以後「cyno」)Serpinal転写産物を標的とするsiRNAを同定するためにsiRNAデザインを実施した。NCBI RefSeqコレクション由来の下記のヒト転写産物を用いた:Human-NM 000295.4、NM_001002235.2、NM_001002236.2、NM_001127700.1、NM_001127701.1、NM_001127702.1、NM_001127703.1、NM_001127704.1、NM_001127705.1、NM_001127706.1、NM_001127707.1。cyno転写産物を同定するためアカゲザル(Macaca mulatta)転写産物XM_001099255.2をSpideyアラインメントツール(www.ncbi.nlm.nih.gov/spidey/)を用いてM. fascicularisゲノムとアラインメントした。アカゲザルとcyno転写産物の全同一性パーセントは99.6%であった。コンセンサススプライス部位および完全長コーディングおよび非翻訳領域を保存するため、cyno転写産物をハンドアセンブルした。得られた転写産物は2064ヌクレオチド長であった。
【0487】
すべてのsiRNA2本鎖をすべての記載したヒトおよびcyno転写産物と100%同一性を有するようデザインした。
【0488】
585の候補siRNAをヒトトランスクリプトーム(ヒトNCBI Refseqセット内のNM_およびXM_レコードのセットと定義する)に対する総合的検索に用いた。全部で48センス(21マー)および48アンチセンス(23マー)由来siRNAオリゴを合成し、2本鎖を形成した。Sepina1センスおよびアンチセンス鎖配列の詳細なリストを表1および2に示す。
siRNA合成
I. 一般的小および中規模RNA合成手順
【0489】
標準的固相オリゴヌクレオチド合成プロトコルに基づき、市販のウリジンの5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2’-O-t-ブチルジメチルシリル-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピル)ホスホラミダイトモノマー、4-N-アセチルシチジン、6-N-ベンゾイルアデノシンおよび2-N-イソブチリルグアノシンン、および対応する2’-O-メチルおよび2’-フルオロホスホラミダイトを用いてRNAオリゴヌクレオチドを0.2〜500μmolの規模で合成した。該アミダイト溶液を0.1〜0.15M濃度で調製し、5-エチルチオ-1H-テトラゾール(アセトニトリル中0.25〜0.6M)を活性化剤として用いた。ルチジン:アセトニトリル(1:1)(v;v)中の0.2Mフェニルアセチルジスルフィド(PADS)、またはピリジン中の0.1M 3-(ジメチルアミノメチレン)アミノ-3H-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(DDTT)を酸化工程に用いて合成中にホスホロチオエート骨格修飾を導入した。合成が完結した後、該配列を固体支持体から開裂し、メチルアミン、次いでトリエチルアミン.3HFを用いて存在するあらゆる2’-O-t-ブチルジメチルシリル保護基を除去し脱保護した。
【0490】
5〜500μmolの合成規模の完全2’修飾配列(2’-フルオロおよび/または2’-O-メチルまたはそれらの組み合わせ)では、オリゴヌクレオチドを3:1(v/v) エタノールおよび濃(28〜32%)水性アンモニアを用い、35℃で16hまたは55℃で5.5h脱保護した。アンモニア脱保護前に、オリゴヌクレオチドを固体支持体上で20分間アセトニトリルの0.5Mピペリジンで処理した。粗オリゴヌクレオチドをLC-MSおよび陰イオン交換HPLC(IEX-HPLC)により分析した。オリゴヌクレオチドの精製は、20mMリン酸塩、10%〜15%ACN、pH=8.5(緩衝液A)および20mMリン酸塩、10%〜15%ACN、1M NaBr、pH=8.5(緩衝液B)を用いるIEX HPLCにより行った。分画の純度を分析的HPLCにより分析した。適切な純度の生成物を含む分画をプールし、ロータリー蒸発装置で濃縮し、次いで脱塩した。試料をサイズ排除クロマトグラフィで脱塩し、凍結乾燥にて乾燥させた。等モル量のセンスおよびアンチセンス鎖を1xPBS緩衝液中でアニールし、対応するsiRNA2本鎖を作製した。
【0491】
小規模(0.2〜1μmol)の合成は、96ウェルフォーマットのMerMade 192合成装置を用いて行った。完全2’-修飾配列(2’-フルオロおよび/または2’-O-メチルまたはそれらの組み合わせ)の場合は、オリゴヌクレオチドを、メチルアミンを用い室温で30〜60min、次いで60℃で30minインキュベーションするか、または3:1(v/v)エタノールおよび濃(28〜32%)水性アンモニアを用い室温で30〜60min、次いで40℃で1.5時間インキュベーションして脱保護した。次に、粗オリゴヌクレオチドをアセトニトリル:アセトン(9:1)溶液中で沈殿させ、次いで遠心分離し、上清をデカントして精製した。粗オリゴヌクレオチドペレットを20mM NaOAc緩衝液に再懸濁し、LC-MSおよび陰イオン交換HPLCにより分析した。粗オリゴヌクレオチド配列を5mL HiTrap Sephadex G25カラム(GE Healthcare)を用い96深ウェルプレート中で脱塩した。各ウェル中に個々の配列に対応する約1.5mL試料を回収した。これらの精製し脱塩したオリゴヌクレオチドをLC-MSおよび陰イオン交換クロマトグラフィで分析した。Tecanロボットを用いて等量のセンスおよびアンチセンス配列をアニールして2本鎖を作製した。2本鎖の濃度を1xPBS緩衝液で10μMに調整した。
II. in vivo分析用のGalNAc結合オリゴヌクレオチドの合成
【0492】
3’末端にGalNAcリガンドが結合したオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチド合成用の4,4’-ジメトキシトリチル(DMT)保護第1ヒドロキシ基を保持するY型リンカーで前処理した固体支持体およびテザーを介して結合したGalNAcリガンドを用いて0.2〜500μmol規模で合成した。5〜500μmol規模のGalNAcコンジュゲートを合成するため、RNAの上記合成プロトコルに次いで以下を適用した:ポリスチレンベースの合成支持体についてトルエン中の5%ジクロロ酢酸を合成中のDMT開裂に用いた。支持体からの開裂と脱保護は上記のごとく行った。ホスホロチオエート豊富配列(通常>5ホルホロチオエート)を最終5’-DMT基を除去せずに合成し(「DMT-オン」)、上記のごとく開裂および脱保護した後に水中の50mM酢酸アンモニウム(緩衝液A)および80%アセトニトリル中の50mM酢酸アンモニウム(緩衝液B)を用いる逆相HPLCで精製した。分画の純度を分析的HPLCおよび/またはLC-MSで分析した。適切な純度の生成物含有分画をプールし、ロータリー蒸発装置で濃縮した。DMT基を完結するまで水中の20%〜25%酢酸を用いて除去した。試料をサイズ排除クロマトグラフィで脱塩し、次いで凍結乾燥にて乾燥した。等モル量のセンスおよびアンチセンス鎖を1xPBS緩衝液中でアニールし、対応するsiRNA2本鎖を作製した。
【0493】
複数のホスホロチオエート結合を有する配列を含むGalNAcコンジュゲート(0.2〜1μmol)の小規模合成には、MerMadeプラットフォーム上でRNAまたは完全2’-F/2’-OMe-含有配列を合成するための上記プロトコルを適用した。GalNAc官能化制御細孔ガラス支持体を含むプレパックドカラムを用いて合成を行った。
ABI用量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems、Foster City、CA、Cat #4368813)を用いるcDNA合成
【0494】
反応あたり2μl 10X緩衝液、0.8μl 25X dNTP、2μlランダムプライマー、1μl逆転写酵素、1μl RNアーゼ阻害剤、および3.2μl H
2Oのマスター混合物を10μl総RNAに加えた。Bio-Rad C-1000またはS-1000サーマルサイクラー(Hercules、CA)を用い、以下の工程(25℃ 10分、37℃ 120分、85℃5秒、4℃保持)でcDNAを作製した。
細胞培養およびトランスフェクション
【0495】
Hep3B、HepG2、またはHeLa細胞(ATCC、Manassas、VA)を10%FBSおよびグルタミン(ATCC)を添加した推奨培地(ATCC)中、5%CO
2の雰囲気下37℃でほぼコンフルエントに増殖させ、次いでトリプシン処理にてプレートから除去した。96ウェルフォーマットでスクリーニングした2本鎖について、96ウェルプレートの個々のウェルで5μiの各siRNA2本鎖に44.75μlのOpti-MEM+0.25μlのリポフェクタミンRNAiMax/ウェル(Invitrogen、Carlsbad CA. cat # 13778-150)を加えてトランスフェクションを行った。次に、混合物を室温で15分間インキュベーションした。50μlの〜2x10
4細胞を含む抗生物質不含完全増殖培地をsiRNA混合物に加えた。384ウェルフォーマットでスクリーニングした2本鎖では、5μlのOpti-MEM+0.1μlのリポフェクタミンRNAiMax(Invitrogen、Carlsbad CA. cat # 13778-150)を個々のウェルあたり5μlの各siRNA2本鎖と混合した。次に、混合物を室温で15分間インキュベーションし、次いで40μlの〜8x10
3細胞を含む抗生物質不含完全増殖培地に加えた。細胞を24時間インキュベーションし、次いでRNA精製した。単用量実験は10nMおよび0.1nM最終2本鎖濃度で行い、用量反応実験は10、1.67、0.27、0.046、0.0077、0.0013、0.00021、0.00004nMの最終2本鎖濃度で行った。
自由取り込みトランスフェクション
【0496】
5μlのPBS中の各GalNac結合siRNAを96ウェルプレートの各ウェル中の95μlのIn Vitro Gro CP培地(In Vitro Technologies-Celsis、Baltimore、MD)(または384ウェルプレートフォーマットでは5μl siRNAおよび1.2x10
3細胞を含む45μl培地)に再浮遊した3X10
4個の新鮮解凍凍結保存カニクイザル肝細胞(In Vitro Technologies-Celsis、Baltimore、MD;lot#JQD)と混合した。混合物を5%CO2雰囲気下37℃で約24時間インキュベーションした。siRNAを500nMおよび10nMの最終濃度で試験した。
DYNABEADS mRNA単離キット(Invitrogen、part #:610-12)を用いる総RNA単離
【0497】
細胞を回収し、150μlの溶解/結合緩衝液中で溶解し、次いでEppendorfサーモミキサーを用い850rpm(混合スピードはプロセスを通して同じであった)で5分間混合した。10μlの磁気ビーズおよび80μl溶解/結合緩衝液混合物を丸底プレートに加え、1分間混合した。磁気ビーズを磁気スタンドを用いて捕捉し、ビーズをかき乱さずに上清を除去した。上清を除去した後、溶解した細胞を残るビーズに加え、5分間混合した。上清を除去した後、磁気ビーズを150μl洗浄緩衝液Aで2回洗浄し、1分間混合した。ビーズを再度捕捉し、上清を除去した。次にビーズを150μl洗浄緩衝液Bで洗浄し、捕捉し、次いで上清を除去した。次に、ビーズを150μl溶出緩衝液で洗浄し、捕捉し、次いで上清を除去した。ビーズを2分間乾燥させた。乾燥後、50μlの溶出緩衝液を加え、70℃で5分間混合した。ビーズを磁石で5分間捕捉した。50μlの上清を除去し、別の96ウェルプレートに加えた。
【0498】
384ウェルフォーマットでは、細胞を50μl溶解/結合緩衝液を加えて1分間溶解した。1ウェルあたり2μlの磁気ビーズを用いた。所要容量のビーズを等分し、磁気スタンドで捕捉し、ビーズ保存溶液を除去した。次に、ビーズを所要容量の溶解/結合緩衝液(25μl/ウェル)に再浮遊し、次いで25μlのビーズ浮遊液を溶解した細胞に加えた。溶解物-ビーズ混合物を設定#7のVibraTransaltor(UnionScientific Corp.、Randallstown、MD)で10分間インキュベーションした。次に、ビーズを磁気スタンドで捕捉し、上清を除去し、次いでビーズを90μl緩衝液Aで1回洗浄し、次いで90μl緩衝液Bおよび100μlの溶出緩衝液の1回洗浄工程を行った。ビーズを各洗浄緩衝液に〜1分間浸した(混合せず)。最終洗浄工程後、ビーズを15μlの溶出緩衝液に70℃で5分間再浮遊させ、次いでビーズを捕捉し、次いでcDNA合成用に上清(8μl以下)を除去し、および/または精製RNAを保存した(-20℃)。
リアルタイムPCR
【0499】
2μlのcDNAを、384ウェルプレート(Roche cat # 04887301001)中1ウェルあたり0.5μl GAPDH TaqManプローブ(Applied Biosystems Cat #4326317E)、Hep3B実験またはカスタム設計のGAPDHおよびSERPINA1 taqmanアッセイを用いるPCH実験には0.5μl SERPINA1 TaqManプローブ(Applied Biosystems cat # Hs00165475
m1)、および5μl Lightcycler 480プローブマスター混合物(Roche Cat #04887301001)を含むマスター混合物に加えた。リアルタイムPCRをRoche LC480 Real Time PCRシステム(Roche)を用いて行った。各2本鎖をそれぞれ2つの生物学的複製物で少なくとも2回独立してトランスフェクションして試験し、各トランスフェクションをデュプリケートで分析した。
【0500】
相対ホールド変化を計算するためリアルタイムデータをΔΔCt法を用いて分析し、10nM AD-1955でトランスフェクトした細胞またはmockでトランスフェクトした細胞を用いて行ったアッセイに対して正規化した。自由取り込みアッセイではデータをPBSまたはGalNAc-1955(被験化合物に用いた最高濃度)処理細胞に対して正規化した。IC50をXLFitを用いる4パラメーター適合モデルを用いて計算し、同じ用量範囲またはその最低用量のAD-1955でトランスフェクションした細胞に対して正規化した。
【0501】
AD-1955のセンスおよびアンチセンス配列はセンス:5’-cuuAcGcuGAGuAcuucGAdTsdT-3’(配列番号 33);およびアンチセンス:5’-UCGAAGuACUcAGCGuAAGdTsdT-3’(配列番号 40)である。
【0502】
用いたTaqmanプライマーおよびプローブは以下の通りである:
カニクイザルSerpina1およびGapdh TaqManプライマーおよびプローブ:
Serpina1:フォワードプライマー:ACTAAGGTCTTCAGCAATGGG(配列番号34);リバースプライマー:GCTTCAGTCCCTTTCTCATCG(配列番号35);Taqmanプローブ:TGGTCAGCACAGCCTTATGCACG(配列番号36)
Gapdh:フォワードプライマー:GCATCCTGGGCTACACTGA(配列番号37);リバースプライマー:TGGGTGTCGCTGTTGAAGTC(配列番号38);Taqmanプローブ:CCAGGTGGTCTCCTCC(配列番号39)。
表B:核酸配列表示に用いたヌクレオチドモノマーの略語
【0503】
【表4】
【0504】
【表5】