(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施の形態に係るロープホイスト1について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じてXYZ直交座標系を用いて説明することとする。XYZ直交座標系においてX方向とは、ロープホイスト1の移動を案内するレールが延伸する方向を指し、X1側とは
図1の図示前方側を指し、X2側とはそれとは逆側を指す。Y方向とはX方向に直交する方向を指し、Y1側とはX1方向から見て右側を指し、Y2側とはそれとは逆側の方向を指す。Z方向とは鉛直方向を指し、X方向およびY方向の両方に直交する方向を指し、Z1側とは垂直方向の上方側を指し、Z2側とはそれとは逆の下側を指す。
【0015】
(ロープホイスト1の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るロープホイスト1の全体構成を示す斜視図である。
図2は、
図1のX1方向から見たロープホイスト1の全体構成を示す正面図であり、
図3は、
図1のZ1方向から見たロープホイスト1の全体構成を示す平面図である。
図1から
図3に示すように、ロープホイスト1は、Y2側にロープドラム機構2と、レールR(
図2参照)を挟んでロープドラム機構2とは反対側に配置されるトロリ機構3と、トロリ機構3よりもY1側に配置される制御部4と、これらよりも下方(Z2方向)に配置されるフック部5によって構成されている。制御部4からは、下方に向かい、不図示の操作用のリモートコントロールスイッチが垂れ下がっている。
【0016】
ロープドラム機構2は、ロープドラム10と、ロープドラム10を回転させるドラム用モータ11(
図3、
図4参照)と、ロープドラム10とドラム用モータ11の間に介在される減速ギヤ機構12(
図4、
図7参照)を主たる構成要素としている。ロープドラム10は、ワイヤロープWを巻回するドラム状の部材であり、その外周側には、ワイヤロープWが嵌るロープ溝80が形成されている(
図4参照)。ロープドラム10の詳細は、
図4を参照して後述する。
【0017】
ロープドラム10の一方の端部とドラム用モータ11を連結する減速ギヤ機構12は、一方のエンドフレーム部材であるボディ本体部13側に取り付けられていて、ロープドラム10の他方の端部は、他方のエンドフレーム部材であるバックフレーム14に取付けられている。そして、ボディ本体部13はフレーム15に取り付けられていて、バックフレーム14はフレーム16に取付けられている。フレーム15とフレーム16は、梁となるビーム17のX方向両端部で固定されてロープドラム10に平行な一体のフレームとなっている。ロープドラム10の上面(Z1方向)とY2方向側面と下面(Z2方向)は、本体カバー18によって覆われ、かつロープドラム10およびワイヤロープWに接触しないような構造とされている。なお、
図3は、本体カバー18を省略した図である。
【0018】
ボディ本体部13のロープドラム10に対して反対側(X1側)には、減速ギヤ機構12が配置されている。減速ギヤ機構12は、ボディ本体部13とギヤケース19で形成された空間内に格納されている。ロープドラム10とドラム用モータ11は、ボディ本体部13のX2方向の面にこれらの端部が並列に取り付けられ、減速ギヤ機構12は、ボディ本体部13のX1方向の面に配置されている。
図4に示すように、ボディ本体部13は、ロープドラム10とドラム用モータ11のX1側の端面に対向するとともに、減速輪列の軸受が配置されている側板フレーム部13Pを有し、その側板フレーム部13Pの一部であって、ドラム用モータ11の出力軸側の開口部を塞ぐモータ蓋部20を有している。ボディ本体部13には、減速ギヤ機構12から隔離された位置で、モータ蓋部20の減速ギヤ機構12側の表面(X1方向の表面)からドラム用モータ11の内側に突出するように掘り込まれた凹部21が設けられている。ドラム用モータ11のステータ巻き線から延出されたリード線と制御部から延出されたケーブルのリード線を電気的に接続する中継器22が、この凹部21内に格納されている。凹部21は、中継器22を格納した状態で、蓋部材23によって封止される。蓋部材23は、
図2に示すように、ネジ24によってボディ本体部13に固定される。なお、蓋部材23は、パッキン(不図示)を介してボディ本体部13に固定される。この際、蓋部材23は、ボディ本体部13のモータ蓋部20の表面に対してほぼ同じ高さとなる。なお、ボディ本体部13は、ロープドラム10を支持する機能を有しているが、間接的に支持するものとしてもよい。減速ギヤ機構12の構成は、
図4、
図5を参照して後述する。
【0019】
ロープドラム機構2の側方(Y1側)には、レールRを挟んで配置されるトロリ機構3が連結されている。トロリ機構3は、
図3に示すように、ロープホイスト1をレールRに沿って走行させるための4つの車輪45,46,47,48と、これら車輪のうちの車輪45,47を駆動させる横行用モータ30と、車輪45,46のそれぞれを支持するフレーム15,16と、車輪47,48のそれぞれを支持するフレーム33,34を備えている。フレーム15,16とフレーム33,34は、連結軸55,56によって連結されている。横行用モータ30は、減速ギヤ部32を備えていて、フレーム33に固定されている。フレーム33は、ロープドラム機構2側のフレーム15に対向するように設けられている。また、フレーム34は、ロープドラム機構2側のフレーム16に対向するように設けられている。そして、フレーム33とフレーム34は、梁となるビーム35のX方向両端部で固定されてロープドラム10に平行な一体のフレームとなっている。
【0020】
車輪45,46は、Z方向同じ高さ位置で、X方向には離間して配置されている。一方、車輪47,48も、Z方向同じ高さ位置で(車輪45,46とも同じ高さ位置)、X方向には離間して配置されている。そして、車輪45と車輪47、車輪46と車輪48は、各々X方向の同じ位置に配置されている。なお、車輪45および車輪47は、駆動輪であって、車輪45のフレーム15側には歯車(不図示)が設けられていて、車輪47のフレーム33には歯車(不図示)が設けられている。断面六角形のドライブシャフト49の両端には、駆動輪である車輪45、車輪47の各々に噛合う歯車が配置されている。横行用モータ30の減速ギヤ部32の出力軸の歯車で駆動輪である車輪47を駆動し、その駆動力はドライブシャフト49を介して駆動輪である車輪45に伝達される。車輪46,48は、駆動機構を持たない従動輪である。
【0021】
連結軸55,56は、対向するフレーム15,16とフレーム33,34の間隔をレールRの幅に合わせて調整可能にしている。また、連結軸55,56は、荷重が掛かっても車輪45,46,47,48がレールRから外れないように、所定の位置と姿勢になるように、フレーム15,16およびフレーム33,34を固定する。なお、連結軸55,56のトロリ機構3のY2側のフレーム15,16には、ロープドラム機構2が取り付けられていて、連結軸55,56のY1側端部には、カウンタウエイト67と制御部4が取り付けられている。 なお、
図2に示すレールRは、レールR1およびレールR2により構成された場合を例示している。
図1に示すように、連結軸56は、フレーム16とフレーム34に連結軸ブッシュ57を介して支持されていて、連結軸55は、フレーム15とフレーム33に連結軸ブッシュ57を介して支持されている。なお、トロリ機構3は、ロープドラム機構2に対して連結軸55,56に沿ってY方向に移動可能となっている。
【0022】
ロープドラム機構2とトロリ機構3の間の距離調整はアジャストボルト58,60によって行われる。
図2、
図3に示すように、フレーム15とフレーム33に設けられた貫通孔にアジャストボルト58を挿通し、フレーム15のY方向両側からナット59を締めつけて、アジャストボルト58をロープドラム機構2側で固定し、フレーム33のY方向両側からナット59を締めつけてアジャストボルト58をフレーム33側で固定する。連結軸56側も連結軸55と同様に、フレーム16とフレーム34に設けられた貫通孔にアジャストボルト60を挿通させ、フレーム16のY方向両側からナット59を締めつけて、アジャストボルト60のロープドラム機構2側の位置を規定して固定し、フレーム34のY方向両側からナット59を締めつけてフレーム33側の位置を規定して固定する。ナット59を緩めることで、ロープドラム機構2側のフレーム15,16と制御部4側のフレーム33,34の間の距離を容易に調整することを可能にしている。 なお、ロープドラム機構2側および制御部4側のどちらか一方、または両方をダブルナット構造とすることがナット59の緩み防止の意味から好ましい。
【0023】
図1から
図3に示すように、連結軸55,56のY1方向端部には、制御部4が配置されている。制御部4は、ドラム用モータ11をインバータ制御する制御回路部65と、インバータ制御における制動抵抗を与える制動抵抗部66を有する。また、連結軸55,56のY1方向端部には、カウンタウエイト67が取り付けられていて、制御回路部65は電装ボックス内に収容されて、カウンタウエイト67のY1方向の面に取り付けられている。一方、制動抵抗部66の一部を構成するレジスタはカウンタウエイト67のY2方向の面に取り付けられてレジスタカバーで保護されている。カウンタウエイト67は、ロープホイスト1をレールRに懸架したときに、Y1方向とY2方向とで重量バランスをとるために設けられている。
【0024】
フック部5は、
図2に示すように、各機構(ロープドラム機構2、トロリ機構3および制御部4)よりも下方側(Z2方向)にワイヤロープWによって吊り下げられている。フック部5は、主としてフック70と、フックシーブ71と、レバー72とから構成されている。レバー72は、フック70に荷を吊り下げたときに荷吊り下げロープなどがフック70から外れてしまうこと防止するために設けられている。本実施の形態におけるロープホイスト1は、
図1〜
図3に示すように、ワイヤロープWの一端は、ロープ押さえ金具81によってロープドラム10に固定され、ワイヤロープWは、そこからロープ溝80に沿って巻きつけられていて(
図4参照)、ロープドラム10から垂下されたワイヤロープWの端末はロープ固定金具73に固定されている。ロープドラム10から垂下されたワイヤロープWとロープ固定金具73による固定部の間に中間シーブ31が配置されていて、ロープドラム10から垂下されたワイヤロープWと中間シーブ31との間、ロープ固定金具73と中間シーブ31の間のワイヤロープWの両方にフックシーブ71が懸架されている。 このような構成は、1本のワイヤロープを使ってフック部5を4本で吊る4本掛けタイプ(いわゆる4/1掛けタイプ)のものとなっている。中間シーブ31は、中間シーブサポート軸36に支持されたシーブハンガー37に取り付けられていて、中間シーブサポート軸36に対して直角方向に回動可能となっている。なお、中間シーブサポート軸36は、フレーム33に直角に固定されたフレーム38と、フレーム34に直角に固定されたフレーム39との間に軸固定されている。次に、ロープドラム10の構成について
図4を参照して説明する。
【0025】
図4は、
図1に示すロープホイスト1の構成部品であるロープドラム機構2および減速ギヤ機構12を示す
図5の切断線A−Aにおける断面図である。
図4に示すように、ロープドラム10は、ワイヤロープWを巻回するドラム状の部材であり、その外周側には、ワイヤロープWを整列させてロープドラム10に巻き取るためのロープ溝80が形成されている。ロープ溝80の深さは、ワイヤロープWの半径に対応して形成されている。また、ロープ溝80は、ワイヤロープWが重ならない状態で(一重の状態で)整列巻回するように形成されている。ロープドラム10の外周には、ロープガイド機構95が装着されている。ロープガイド機構95は、ワイヤロープWの巻き取り量(ロープドラム10の回転量)に応じて移動する巻き取り端位置に常に移動する。
図4は、ロープガイド機構95が、ロープドラム10のX1方向端部付近まで移動した状態を表している。
【0026】
なお、ロープドラム10のX2側端部には、ワイヤロープWの一端側を固定するためのロープ押さえ金具81が取り付けられている。ロープ押さえ金具81は、ワイヤロープWを位置させる凹部81aを備えていて、その凹部81aにワイヤロープWを位置させた状態で、締結手段であるネジ82をロープドラム10に強固に捻じ込む。それにより、ワイヤロープWの一端側がロープドラム10に固定される。
【0027】
また、ロープドラム10のX1側端部およびX2側端部各々には、軸支部83,84が取り付けられている。
図4に示すように、X1側の軸支部83には、たとえばスプライン結合によってドラム回転軸85が結合する回転軸孔83aが設けられている。このドラム回転軸85は、ボディ本体部13とギヤケース19に対し軸受としてのベアリング86,87を介して取り付けられている。また、X2側の軸支部84のうちの径方向中央部の環状凸部84aには、ベアリング88が取り付けられていて、そのベアリング88の外周側は、バックフレーム14に取り付けられる。バックフレーム14は、ジョイントプレート90(
図3参照)を介してフレーム16に取り付けられる。それにより、ロープドラム10はボディ本体部13とバックフレーム14で回転自在に支持される。
【0028】
続いて、減速ギヤ機構12の構成について
図4を参照して説明する。減速ギヤ機構12は、ボディ本体部13の裏側(X2方向)から表側(X1方向)に貫通したドラム用モータ11の出力軸120に取り付けられたピニオンギヤ121と、ピニオンギヤ121に噛合う歯車122と、歯車122に噛合う歯車123と、歯車123に噛合う歯車124を備えている。歯車124の回転軸は、ドラム回転軸85となり、スプライン構造の回転軸孔83aに係合する。出力軸120はベアリング89aで、歯車122はベアリング89bで、歯車123はベアリング89cで回転可能に支持されている。ドラム回転軸85(歯車124)は、ボディ本体部13およびギヤケース19に設けられたベアリング86,87によって回転可能に支持される。なお、ピニオンギヤ121と歯車122,123,124で構成される輪列は、減速輪列である。
図4に示すように、モータ蓋部20の減速ギヤ機構12から隔離された位置において、凹部21が設けられている。凹部21は、蓋部材23によって封止されている。この凹部21内に中継器22が格納される。中継器22の配置および構造は、
図5〜
図9を参照して説明する。
【0029】
続いて、ロープドラム機構2の減速ギヤ機構12および中継器22周辺の構成について
図5他を参照して説明する。
【0030】
図5は、
図1に示すロープホイスト1の構成部品である減速ギヤ機構12および中継器22周辺の構成を示す斜視図である。なお、
図5は、ギヤケース19および蓋部材23を外した状態を表している。減速ギヤ機構12は、ボディ本体部13の裏側(X2方向:ドラム用モータ11の配置方向)から表側(X1方向、ドラム用モータ11の反対側)に貫通したドラム用モータ11の出力軸120に取り付けられたピニオンギヤ121と、ピニオンギヤ121に噛合う歯車122と、歯車122に噛合う歯車123と、歯車123に噛合う歯車124とを備えている。歯車124の回転軸は、ドラム回転軸85である(
図4参照)。ピニオンギヤ121と、歯車122と、123と、歯車124は、ほぼ直線上に配列されている。
【0031】
図4、5に示すように、ボディ本体部13のX1側は、側板フレーム部13Pからこの減速輪列を囲うように突出形成された壁部125が形成され、ギヤケース19が蓋部材となり、開口部を封止している。ギヤケース19の平面形状は、壁部125の平面形状とほぼ同じである。モータ蓋部20は、壁部125(ギヤケース19)の外側に延設されており、モータ蓋部20の減速ギヤ機構12から隔離された位置において、凹部21が設けられている。この凹部21内には、中継器22が配置される。次に、ボディ本体部13の構成について説明する。
【0032】
図6は、ボディ本体部13の表側を示す斜視図、
図7は、ボディ本体部13の裏側を示す斜視図である。本実施の形態のボディ本体部13は、鋳物で形成されたフレームである。なお、
図6および
図7では、ボディ本体部13のX1側を表側、X2側を裏側とする。
図6に示すように、ボディ本体部13は、側板フレーム13Pから表側に突出形成された壁部125を備えていて、この壁部125で囲まれた領域Qに減速輪列が配置される(
図4、
図5参照)。なお、領域Qには、表裏を貫通する貫通孔127,128が設けられていて、貫通孔127は、ドラム用モータ11の出力軸120が挿通される孔であって、貫通孔128は、ドラム回転軸85が挿通される孔である。側板フレーム13Pの領域Qには、
図6に示すように、貫通孔127と貫通孔128の間に、環状凸部129,130が設けられている。環状凸部129には、歯車122が配置され、環状凸部130には、歯車123は配置される(
図4参照)。
【0033】
ボディ本体部13のZ1‐Y1方向の外周には、側板フレーム部13Pから延設される2か所の半島状の突起部131,132が形成されていて、ボディ本体部13は、この突起131,132の位置でジョイントプレート133(
図2参照)に固定され、このジョイントプレート133を介してフレーム15に固定される。
【0034】
図6に示すように、ボディ本体部13の側板フレーム部13Pから延設されたモータ蓋部20の壁部125の外側(Z2側)には、モータ蓋部20の表面から裏面側に掘り下げられた凹部21が設けられている。凹部21の底部167はドラム用モータ11の内側に向って突出していて、凹部21の周囲は、蓋部材23の受面134であって、モータ蓋部20の表面から蓋部材23とパッキン(不図示)の厚み分低くしてある。この受面134の4隅には、蓋部材23を固定するためのネジ穴135が設けられている。凹部21の周囲は、側壁部139で囲まれていて、ドラム用モータ11のステータ巻き線の取り出し線であるリード線143の取り出し口に近い位置(Y2側)に、このリード線143(
図8参照)が挿入される第1孔部136が開けられている。第1孔部136のドラム用モータの内側には、側壁部139が延設されていて、リード線140,141,142(
図8参照)とドラム用モータ11のロータとの接触を防止している。ボディ本体部13のZ2‐Y1方向の側面には、凹部21と連通する第2孔部としての横孔138が開けられている。この横孔138は、制御部4から中継器22に至るモータ動力用のケーブルを凹部21の内部に導入する導入案内孔である。
【0035】
図7に示すように、ボディ本体部13には、ドラム用モータ11の出力軸120が挿通される貫通孔127が設けられていて、この位置にドラム用モータ11が配置される。凹部21を囲むように設けられた側壁部139は、ドラム用モータ11および減速輪列と、凹部21を隔離する仕切り壁となる。また、ドラム用モータ11のステータから凹部21に至るリード線とドラム用モータ11内で回転するロータを隔離しているので、リード線が回転体と接触するのを防止している。
【0036】
(リード線接続構造)
図8は、
図5に示す中継器22によるリード線の接続構造をX1方向から見た斜視図である。
図8は、リード線の接続構造を説明するために、中継器22付近の一部を透視して表した図である。ドラム用モータ11のステータ巻き線から延長されたリード線140,141,142は、第1孔部136を通って凹部21内に導入される。本実施の形態のドラム用モータ11は三相交流モータであって、ドラム用モータ11のステータ巻き線からは、3本のリード線140,141,142が取り出されている。なお、以降の説明では、リード線140,141,142を総称してリード線143と表す。
【0037】
一方、制御部4から延長されたリード線144,145,146は、ケーブルホルダ157、横孔138および孔部137を通って凹部21内に導入されている。孔部137は、横孔138と凹部21とを連通させる横孔連通部である。ただし、横孔138と凹部21とを直接連通させる構造としてもよい。なお、以降の説明では、リード線144,145,146を総称してケーブル147と表す。リード線143およびケーブル147それぞれの端末部には、接続端子148(
図10参照)が取り付けられている。
【0038】
リード線143およびケーブル147は、接続部材に対応する中継器22によって接続される。中継器22は、ドラム用モータ11のステータ巻き線から延出されたリード線143と、制御部4から延出されたケーブル147を接続するための端子台150と、端子台150をボディ本体部13に固定する端子台ブラケット155を備えている。リード線143およびケーブル147には、それぞれ一本ずつ接続端子148(
図10参照)が取り付けられていて、端子台150に設けられた溝部151に導入される。そして、リード線140とリード線145、リード線141とリード線144、リード線142とリード線146というように接続端子148を重ね合わせて、溝151内でネジ152によって端子台150に固定される。それによって、各リード線が、上記各々の組み合わせで接続される。ケーブル147は、
図2に示すように、ケーブルステイ158に不図示の取り付け金具によって固定されていて、ケーブルステイ158に沿って制御部4に向って延長されていて、電装ボックスに開けられた孔68を通って、制御部4内の制御回路部65の所定の接続端子位置に接続される。ケーブルステイ158は、フレーム15とカウンタウエイト67に橋架され固定されている。
【0039】
図8に示すように端子台150は、端子台ブラケット155にネジ153によって固定されていて、端子台ブラケット155は、ネジ156によってボディ本体部13に取り付けられる。この構成について、
図9を参照して説明する。
【0040】
図9は、
図8に示す中継器22の端子台150および端子台ブラケット155のボディ本体部13への取り付け構造を示す正面図である。
図10は、リード線143、ケーブル147の接続構造を示す
図5の切断線B−Bにおける断面図である。
図9、
図10に示すように、端子台ブラケット155は、基部160のY方向両端に固定端部161,162が設けられている。固定端部161,162は、基部160に対して直角に折り曲げられていて、ボディ本体部13の凹部底部167にネジ156によって固定可能な構造とされている。
【0041】
端子台150には、
図9に示すように、Z1方向上面から掘り下げられた溝部151が形成されていて、溝部151は、溝部151a、151b、151cを備えている。これら溝部151a、151b、151c内には、ネジ152が締め付け可能な不図示のネジ孔が設けられている。端子台155のY方向両端には、Z方向に貫通するネジ挿通孔165,166が設けられていて、このネジ挿通孔165,166にネジを挿通して締め付けることで、端子台150が、端子台ブラケット155の基部160に固定可能な構造となっている。端子台ブラケット155の基部160には、ネジ挿通孔165,166に対応するネジ孔(不図示)が形成されている。端子台150は、たとえば、セラミックや樹脂などの絶縁性を備えた高強度の材料で形成される。
【0042】
次に、リード線143とケーブル147の接続方法について、
図8〜
図10を参照して説明する。まず、ドラム用モータ11のステータ巻き線から延出されたリード線143を端子台150に導入する。たとえば、端子台150の溝部151aにリード線142、溝部151bにリード線141、溝部151cにリード線140というように各リード線を溝部内に導入する。続いて、制御部4側から延出されたケーブル147を端子台150に導入する。たとえば、端子台150の溝部151aにリード線146、溝部151bにリード線144、溝部151cにリード線145というように各リード線を溝部内に導入する。そして、ドラム用モータ11側のリード線143と制御部4側のケーブル147それぞれの接続端子148を重ねた状態で、ネジ152によって端子台150の所定位置で固定する。続いて、端子台150を端子台ブラケット155の基部160に、ネジ156によって固定する。
【0043】
端子台150にリード線143およびケーブル147を取り付ける工程と、端子台150を端子台ブラケット155に取り付ける工程は、ボディ本体部13の外部で行う。なお、上記のリード線143とケーブル147の接続方法は1例であって、たとえば、端子台150を端子台ブラケット155に固定した後に、リード線143とケーブル147を取り付けてもよい。
【0044】
以上説明したロープホイスト1は、ドラム用モータ11と減速ギヤ機構12は、エンドフレームであるボディ本体部13の表裏の位置関係に配置されている。ボディ本体部13には、減速ギヤ機構12とドラム用モータ11の両方から隔離された位置において、ドラム用モータ11の出力軸側開口部を塞ぐモータ蓋部20からドラム用モータ11の内側に突出するように掘り込まれた凹部21が設けられていて、この凹部21内に中継器22を格納している。そして、ドラム用モータ11のステータ巻き線から延出されたリード線143と制御部147から延出されたケーブル147を、中継器22で接続している。
【0045】
このようにすることで、中継器22は、ボディ本体部13の内部に格納することができ、ボディ本体部13から突出しない。言い換えれば、ロープドラム機構2から突出しないので、小型化でき、かつ、すっきりした外観のロープホイスト1を提供できる。また、このことにより、ロープホイスト1の運転時などで、中継器22に外部から物が当たることを防止できる。
【0046】
ドラム用モータ11のステータ巻き線から延出されたリード線143は、第1孔部136を通って凹部21内に導入されていて、制御部4から延出されたケーブル147は、第2孔部である横孔138に案内され凹部21内に導入される。そして、凹部21内で、中継器22によってリード線143とケーブル147を接続する。このようにすれば、リード線143は、ドラム用モータ11内で回転するロータなどとの接触、巻き込みを回避でき、ステータから中継器22までの配線作業を容易にできる。また、リード線143は、ボディ本体13の外側に露出することはなく、すっきりした外観を提供できる。また、リード線143に外部から物が当たることを防止できる。
【0047】
また、ドラム用モータ11のステータ巻き線から延出されたリード線143と制御部4から延出されたケーブル147は、端子台150の溝部151で位置を規制されながらネジ締めによって接続される。そして、端子台150は、端子台ブラケット155を介してボディ本体部13に取り付けられる。このようにすることで、リード線143とケーブル147の接続構造を単純化でき、接続作業を容易に行うことが可能になる。
【0048】
また、ボディ本体部13に形成された凹部21は、中継器22が格納された状態で、パッキンを介して蓋部材23で封止されるので、凹部21内に水分、油、または埃などが入らないことから、これらによるリード線の接続部におけるリード線間のショートを防止できると共に、腐食などを防止でき、高い耐久性が得られる。
【0049】
また、ボディ本体部13から制御部4に至るケーブル147は、ボディ本体部13と制御部4(カウンタウエイト67)の間に橋架されたケーブルステイ158に取付けられる。このようにすることで、ロープドラム機構2と制御部4との間に距離が大きくなる構造であっても、ケーブル147が垂れ下がってしまうことがなく、外部から物が当たることによるリード線143や、ケーブル147と制御回路部65の接続部の損傷を防止できる。また、すっきりした外観のロープホイスト1を提供できる。
【0050】
<他の形態(第2の実施の形態および第3の実施の形態)について>
次に、上述したロープホイスト1の他の形態(第2の実施の形態および第3の実施の形態)について説明する。なお、第2の実施の形態のロープホイスト1、および第3の実施の形態のロープホイスト1では、下記に説明する部分以外の構成は、第1の実施の形態のロープホイスト1と共通となっている。
【0051】
まず、第2の実施の形態に係るロープホイスト1のうち、第1の実施の形態とは異なる部分について説明する。
図11は、第2の実施の形態に係り、中継器22に代わる接続部材として用いられる圧着端子25の構成を示す図である。
図12は、この圧着端子25を用いて、リード線143とケーブル147を接続した状態を示す側面図である。
【0052】
リード線143の端末と、ケーブル147の端末には、
図11に示すような金属製の圧着端子25が取り付けられる。圧着端子25は、リング状のリング端子部25aを有していて、そのリング端子部25aには、リング孔25a1が設けられている。リング端子部25aには、筒型の筒状部25bが設けられている。そして、この筒状部25bの筒孔25b1には、リード線143の導体部143aが挿入される。そして、導体部143aの挿入後、筒状部25bをカシメ加工(潰す等)の塑性変形を生じさせることで、圧着端子25とリード線143の導体部143aとが圧着状態となり、それらが電気的に導通する。また、リード線143の端末に、圧着端子25が取り付けられた状態となる。なお、リード線143の端末に取り付けられた圧着端子25は、第1圧着端子に対応する。
【0053】
また、リード線143の導体部143aと同様に、筒状部25bの筒孔25b1にケーブル147の導体部147aを挿入し、その挿入後、筒状部25bを潰す等の塑性変形を生じさせる圧着を行うことで、圧着端子25とケーブル147の導体部147aとが電気的に導通する。また、ケーブル147の端末に、圧着端子25が取り付けられた状態となる。なお、ケーブル147の端末に取り付けられた圧着端子25は、第2圧着端子に対応する。
【0054】
かかる圧着後に、リード線143の端末に取り付けられた圧着端子25と、ケーブル147の端末に取り付けられた圧着端子25との接続を行う。この接続では、両方の圧着端子25のリング端子部25aを重ね、その状態で、リング孔25a1にネジ171を挿通させる。その後に、ネジ171の頭部とは反対側(先端側)から、ナット172を締め付ける。それにより、2つの圧着端子25が電気的に接続される。また、かかる接続後に、2つの圧着端子25と導体部143a,147aを、絶縁被覆173で覆うようにして、導体部分が外部に露出しない状態としている。
【0055】
なお、
図12では、2つの圧着端子25の接続部位は、リード線143とケーブル147の延伸方向からずれた位置となっている。しかしながら、2つの圧着端子25の接続部位は、リード線143とケーブル147の延伸方向と同一の方向(直列的な接続関係)となっていても良い。
【0056】
なお、上述した圧着端子25は一例であり、種々のタイプの圧着端子を用いることが可能である。たとえば、リング孔25a1を有するR形と呼ばれる圧着端子25以外に、Y字形状に分岐したY形の圧着端子であっても良く、その他、特殊形状の圧着端子であっても良い。
【0057】
以上のような構成の場合、中継器22に代えて圧着端子25を用いることで、リード線143とケーブル147とを、簡易な構成でありながら確実な電気的接続を実現可能となる。
【0058】
続いて、第3の実施の形態に係るロープホイスト1のうち、第1の実施の形態とは異なる部分について説明する。
図13は、第3の実施の形態に係り、中継器22に代わる接続部材として用いられる圧着スリーブ27の構成を示す図である。
図14は、この圧着スリーブ27を用いて、リード線143とケーブル147を接続した状態を示す側面図である。
【0059】
図13に示すように、圧着スリーブ27は、金属製の筒状部材である。この圧着スリーブ27は、リード線143の導体部143a、またはケーブル147の導体部147aを挿入可能な筒孔27aを有している。また、
図13に示す圧着スリーブ27は、突合せ形と呼ばれるタイプであり、長手方向の中央部に、凹嵌部27bが設けられている。そして、この凹嵌部27bの存在により、筒孔27aの内部には、不図示の突出部が設けられていて、導体部143aや導体部147aを挿入すると、この突出部に衝突する。それにより、導体部143aや導体部147aを、余分に深く挿入するのを防止可能となっている。
【0060】
かかる筒孔27aの一端側(
図14では左の端部側)から導体部143aを挿入し、また筒孔27aの他端側(
図14では右の端部側)から導体部147aを挿入する。その挿入後に、圧着スリーブ27の外周側から、カシメ加工(潰す等)の塑性変形を生じさせる(
図14には、カシメ加工部27cが示されている)ことで、圧着スリーブ27に対して、リード線143の導体部143aと、ケーブル147の導体部147aとが圧着状態となり、それらが電気的に導通する。
【0061】
なお、上述した圧着スリーブ27は一例であり、種々のタイプの圧着スリーブを用いることが可能である。たとえば、凹嵌部27bの存在しないリング形の圧着スリーブであっても良く、その他、特殊形状の圧着スリーブであっても良い。
【0062】
以上のような構成の場合、中継器22に代えて圧着スリーブ27を用いる場合にも、リード線143とケーブル147とを、簡易な構成でありながら確実な電気的接続を実現可能となる。
【0063】
なお、本発明は前述の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。たとえば、上記実施の形態のロープホイスト1は、端子台150において、リード線143とケーブル147を直接重ねて接続しているが、リード線143とケーブル147との間に接続用クランプを備えて接続する構造としてもよい。上記実施の形態を適用する場合は、3本の接続用クランプを用いて、一方の端部にリード線143のいずれかを固定し、他方の端部にリード線143に対応するケーブル147のいずれかを固定する。なお、この場合も、端子台で、接続クランプの位置を規定することが好ましい。
【0064】
また、上記実施の形態では、端子台150は、端子台ブラケット155を介してボディ本体部13に固定されているが、端子台150を直接ボディ本体部13に固定する構造にしてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、ボディ本体部13の正面側に中継器22を配置したが、中継器22の配置位置としては、ボディ本体部13の内部に中継器22を格納でき、減速輪列とは離れた位置にリード線143を延長できれば、ボディ本体部13の側面に中継器22を配置してもよい。
【0066】
また、上記実施の形態におけるロープホイスト1は、ワイヤロープWの一端はロープドラム10に固定され、ワイヤロープWの他端はロープ押さえ金具81に固定されていて、その間に中間シーブ31が配置された、いわゆる4/1掛けタイプのものとなっている。しかしながら、本発明は、4/1掛けタイプのみに適用されるものではない。たとえば、ワイヤロープWの一端はロープドラム10に固定され、ワイヤロープWの他端はロープ押さえ金具81に固定されるものの、中間シーブを用いない、いわゆる2/1掛けタイプのものに適用可能である。また、ワイヤロープWの一端は一方のロープドラム10に固定され、ワイヤロープWの他端は他方のロープドラム(このロープドラムの螺旋溝は、ロープドラム10とは逆向きとなっている)に固定され、その間に中間シーブが配置された、いわゆる4/2掛けタイプのものにも適用可能である。また、その他のタイプのロープホイストにも適用可能である。
【0067】
また、上述の実施の形態では、ロープホイスト1を例にして説明したが、ワイヤロープなどのロープの巻き上げを行う他の装置にも適用できる。たとえば、電動式巻上げ機や電動式チェーンブロックなどに適用可能である。
【0068】
また、上述の実施の形態のロープホイスト1は、ロープとしてワイヤロープWを使用するものであるが、ロープとしては、樹脂製としたり、布製としたりしてもよい。また、凹部21は、壁部125の外側に配置され、蓋部材23の表面とモータ蓋部20の表面とが同じ高さ、すなわち同じ平面となっているが、蓋部材23の表面が、このモータ蓋部20から突出するようにしてもよい。