【文献】
VAN LINGEN A V,CURRENT INTRAVESICAL THERAPY FOR NON-MUSCLE INVASIVE BLADDER CANCER,EXPERT OPINION ON BIOLOGICAL THERAPY,英国,INFORMA HEALTHCARE,2013年10月,VOL:13, NR:10,,PAGE(S):1371 - 1385,URL,http://dx.doi.org/10.1517/14712598.2013.824421
【文献】
International Journal of Urology, 2010, Vol.17, p.483-490
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記膀胱上皮内癌(CIS)が、原発性膀胱上皮内癌(CIS)、続発性膀胱上皮内癌(CIS)、及び併発性膀胱上皮内癌(CIS)からなる群から選択される請求項1に記載の医薬組成物。
【背景技術】
【0002】
膀胱癌(BC)は、泌尿器系の最も一般的な悪性腫瘍であり、男性では7番目、女性では17番目に多い癌である。世界全体の年齢調整罹患率は、男性では100,000人あたり9人、女性では100,000人あたり2人である(2008年のデータ)。欧州連合(EU)における年齢調整罹患率は、男性では100,000人あたり27人、女性では100,000人あたり6人である。地域及び国によって罹患率は変動し、欧州における最高年齢調整罹患率は、スペイン(男性41.5人、女性4.8人)で、最低年齢調整罹患率は、フィンランド(男性18.1人、女性4.3人)で報告されている(非特許文献1を参照)。世界全体の年齢調整死亡率は、100,000人あたり男性では3人であるのに対して女性では1人である。2008年には、膀胱癌は、欧州における8番目に多い癌特異的死亡率の原因であった。米国では、約500,000人が初期(筋層非浸潤性)膀胱癌(NMIBC)に罹患している。
【0003】
上皮内癌(CIS、Tisとも呼ばれる)は、一般的に、通常基底膜を超えて侵入する前の、腫瘍細胞が周辺組織に浸潤していないと定義される癌の初期形態を表す。したがって、典型的に上皮内癌では、腫瘍性細胞は、その正常細胞環境で増殖する。例えば、ボーエン病(皮膚の上皮内癌)では、腫瘍性表皮細胞は、より深い真皮に侵入することなしに、表皮内にのみ蓄積する。この理由から、CISは、通常、腫瘍を形成せず、病変は、平坦(例えば、皮膚、頸部において)であるか又は器官(例えば、乳房、肺において)の既存の細胞構造に追従する。したがって、膀胱上皮内癌は、平坦(例えば、非乳頭状)で、高悪性度の、未だ筋層には浸潤していない尿路上皮癌であると定義される。したがって、CIS膀胱癌は、既に現実に存在する悪性腫瘍に相当する。したがって、膀胱CISは、悪性腫瘍の前兆ではなく、現実に存在する悪性腫瘍である。分子生物学的技術及び臨床経験によって、CIS膀胱癌の高い悪性度が証明されている。全く治療を行わなければ、CIS膀胱癌の患者のうちの50%超は、筋層浸潤性疾患に進展する。
【0004】
腫瘍、節、転移(TMN)分類システムによれば、粘膜に限定されている乳頭状腫瘍は、一般的に、ステージTaに分類され、粘膜固有層に浸潤している腫瘍は、ステージT1に分類される。膀胱癌患者の約75%は、粘膜下層に限定されている高悪性度腫瘍(ステージT1)を含む、粘膜に限定されている疾患(ステージTa)を呈する。粘膜に限定されている膀胱癌は、膀胱上皮内癌(膀胱癌CIS)に分類される。
【0005】
また、CIS膀胱癌の悪性度が高いことは、認識されており、International Bladder Cancer Group(IBCG)による癌進行度分類に反映されている:IBCGは、NMIBCのための現行の診療ガイドラインの再吟味に基づいて、下記の通りリスクの実用的定義を提唱した:「低リスク」:単発性、原発性の低悪性度(Ta)腫瘍;「中リスク」:多発性又は再発性の低悪性度腫瘍;並びに「高リスク」:任意のT1及び/又は高悪性度及び/又はCIS(非特許文献2を参照)。後者の腫瘍は、再発及び進展のリスクが高く、一番に念頭に置くべきは、例えば、筋層浸潤性疾患への進展である。
【0006】
CIS膀胱癌の治療は、一般的に、膀胱腫瘍の経尿道的切除(TURB)、化学療法の術直後単回注入、膀胱内化学療法、及び通常膀胱内に投与されるカルメット・ゲラン桿菌(BCG)による治療を含む(例えば、非特許文献1を参照)。
【0007】
患者のデータによれば、男性、特に60歳を超える男性は、同年齢の女性と比べて、CISに罹患するリスクが高い:中リスク膀胱癌を呈する患者の約75%が男性であり、高リスク膀胱癌を呈する患者の約80%が男性である(非特許文献3を参照)。特に、2個〜7個の腫瘍を呈している中リスク癌(中リスクは、多発性又は再発性の低悪性度腫瘍(TaG1、TaG2)と定義される)と診断され且つ45歳超である男性は、CISを発現するリスクが最も高い。次に高いのは、同じ病理を呈する74歳超の患者である。
【0008】
併発性CIS膀胱癌が筋層浸潤性膀胱癌(MIBC)と共に発見された場合、癌の治療法は、浸潤性腫瘍に従って決定される。TaT1腫瘍と共にCISが検出されると、TaT1腫瘍の再発及び進展のリスクが高まるので、更なる治療が必須である。患者のデータは、最初の切除時にCISを呈し、その後、尿細胞診が陽性であった患者は、2回目のTURBを必要とする再発のリスクが高いと考えられることを示唆する。
【0009】
一般的に、CIS膀胱癌は、内視鏡的手技だけで治癒させることはできない。その理由は、乳頭状癌の典型的な治療選択肢である内視鏡的手技は、CIS膀胱癌の治療において十分に有効ではないからである。CIS膀胱癌は、多くの場合、びまん性の外観を特徴とするので、可視化が困難である。その結果、癌の外科的治療及び除去の少なくともいずれかは、罹患細胞及び組織の少なくともいずれかを除去するための治療選択肢として十分ではない。したがって、CIS膀胱癌の組織診後に、更なる治療、例えば、BCG膀胱内注入又は根治的膀胱全摘術を行わなければならない。保存的治療(BCG膀胱内注入)又は積極的治療(根治的膀胱全摘術)のいずれが好ましいかについての意見の一致はない。即時一次治療としての注入療法及び早期根治的膀胱全摘術の無作為化試験はこれまで実施されていない。CIS膀胱癌についての早期根治的膀胱全摘術後の腫瘍特異的生存率は、優れているが、患者の40%〜50%では過剰処置であった可能性もある。
【0010】
膀胱癌の治療において典型的に用いられるBCGは、1904年にAlbert Calmette及びCamille Guerinに譲渡されたウシ型結核菌(
Mycobacterium bovis)に由来する。この株は、最初は極めて強毒性であったが、その後、230代超に亘って胆汁加馬鈴薯培地で継代培養され、ワクチンとして使用できる弱毒性を示した。1950年代におけるOld及びClarkeの研究(非特許文献4)は、BCG投与がマウスにおける移植腫瘍に対して阻害効果を有することを示すことができた。
【0011】
患者は、通常、BCGに良好な耐容性を示すが、重篤な、そして、死に至る可能性のある毒性が生じることもある(非特許文献5)。BCG治療によって、膀胱の刺激症状が生じることもあり、これは、通常、2回目又は3回目の注入後に始まり、1日間〜2日間続く。したがって、多くの患者(最高約60%)が、副作用のせいでBCG治療を中止する。前記副作用は、一般的に、低度の発熱及び局所(膀胱関連)刺激症状(例えば、軽度の膀胱痛、尿漏出、又は失禁)を含む。
【0012】
BCGによる重篤な反応又は感染は、生物の静脈内吸収に起因し、最も一般的には、外傷性カテーテル留置に起因する。したがって、困難な状況下で配置したカテーテルに起因する出血は、BCG注入の絶対禁忌である。BCG治療による副作用が続く患者では、対数的にBCGの用量を低減することが考えられる。BCG敗血症又は局所感染に苦しんでいる患者は、グラム陰性及び抗結核性抗生物質療法に加えてステロイドを必要とする。更に、細菌性敗血症及び場合によっては死亡のリスクが高いので、BCGを術直後膀胱内注入としても決して用いるべきではない。BCGの使用に対する他の禁忌としては、例えば、尿路感染及び免疫抑制などの症状が挙げられる(非特許文献6)。
【0013】
患者にみられる副作用に加えて、BCGの使用は、BCGを取り扱う医療従事者及び医師、並びにBCGを投与する患者と接触する患者に対しても健康リスクを負わせる:BCG感染は、医療従事者及び医師においては、主に、投与のためにBCGを調製している間に針で指してしまったり皮膚を傷つけてしまったりすることによる曝露に起因すると報告されている。また、非経口薬が投与される患者におけるBCGの院内感染も報告されている。これらの場合、BCGを再構成する区域で薬物を調製していたので、薬物の汚染につながった。
【0014】
BCG及びインターフェロンによる治療を受けた患者は、それまでにBCG治療を受けたことがなかった場合、又はその前に一度だけ導入に失敗したか若しくは導入から1年超たってから再発した場合、完全且つ持続的な応答をする見込みは60%〜70%である(非特許文献7)。しかし、患者の最高40%は、最終的に膀胱内BCG治療に失敗する。これらの患者は、通常、予後が悪く、膀胱癌の結果として侵襲性疾患に進展し、死に至るリスクが高い。したがって、例えば、外科手術(TURB)、確立されている化学療法、及び膀胱内BCG投与の少なくともいずれかによって従来法で治療されるCIS膀胱癌患者は、これらの治療選択肢の成功率が限られていることから、予後が悪い。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明について以下に詳細に説明するが、方法論、プロトコール、及び試薬は変更可能であるので、本発明は、本明細書に記載する特定の方法論、プロトコール、及び試薬に限定されるものではないことを理解すべきである。また、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態について説明する目的のためだけに使用され、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解すべきである。特に定義しない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0033】
以下に、本発明の要素について説明する。これらの要素は、特定の実施形態と共に列挙されるが、更なる実施形態を生み出すために任意の方法で任意の数を組み合わせてよいことを理解すべきである。様々に記載される実施例及び好ましい実施形態は、本発明を明示的に記載されている実施形態のみに限定すると解釈すべきではない。本明細書は、明示的に記載されている実施形態と任意の数の開示されている及び/又は好ましい要素とを組み合わせる実施形態を支持及び包含すると理解すべきである。更に、特に指定しない限り、本願に記載されている全ての要素の任意の置換及び組み合わせが、本願の記載によって開示されていると考えるべきである。
【0034】
本明細書及び以下の特許請求の範囲全体を通して、特に必要としない限り、用語「含む」並びに「含み」及び「含んでいる」などの変形は、記載されている要素、整数、又は工程を含むが、任意の他の記載されていない要素、整数、又は工程を除外するものではないことを示すと理解される。用語「からなる」は、任意の他の記載されていない要素、整数、又は工程を除外する、用語「含む」の特定の具体化表現である。本発明の状況において、用語「含む」は、用語「からなる」を包含する。
【0035】
本発明について説明する文脈(特に、特許請求の範囲の文脈)において用いられる用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の言及は、本明細書において特に指定しない限り又は文脈によって明らかに否定されない限り、単数及び複数の両方を網羅すると解釈すべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、範囲内のそれぞれの別個の値に対する個別の言及を短縮する方法として機能することを意図するものである。本明細書において特に指定しない限り、それぞれの個々の値が、本明細書に個々に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。明細書中のいずれの用語も、本発明の実施に必須である任意の請求されていない要素を指定すると解釈すべきではない。
【0036】
幾つかの文献が、本明細書の文章全体を通して引用される。本明細書に引用する文献(全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様書、説明書などを含む)は、それぞれ、上記であろうと下記であろうと、参照によりその全文を本明細書に援用する。本明細書のいずれも、本発明が関連発明のせいでかかる開示を以前の日付にする権利を得るものではないと認めると解釈するものではない。
【0037】
本発明の医薬組成物の文脈において、用語イミキモドとは、以下の構造を有する化合物1−イソブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
【化1】
又はその任意の薬学的に許容し得る塩を指す。
【0038】
本発明に係る医薬組成物の文脈における薬学的に許容し得る塩とは、イミキモドの生物学的な有効性及び性質を保持しており、生物学的に又は他の点で望ましくないということはない、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、リン酸などの無機酸、及び酢酸、トリフルオロ酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、酪酸、樟脳酸、樟脳スルホン酸、桂皮酸、クエン酸、ジグルコン酸、エタンスルホン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリセロリン酸、ヘミ硫酸、ヘキサン酸、ギ酸、フマル酸、2−ヒドロキシエタン−スルホン酸(イセチオン酸)、乳酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メシチレンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、2−ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、パモ酸、ペクチニン酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸、ピバル酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、ウンデカン酸などの有機酸を用いて形成される塩を意味する。
【0039】
驚くべきことに、イミキモドを、好ましくは膀胱内注入によって投与することにより、治療が困難なCIS膀胱癌の治療に成功し得ることが見出された。したがって、医薬組成物、特に、イミキモドを含む医薬組成物に関する本明細書の記載は全て、イミキモド(自体)にも当てはまる。例えば、これは、治療されるCIS膀胱癌患者、特に、治療される患者の好ましい群、例えば、併発性CIS膀胱癌患者に加えて、医薬組成物、本発明に係る医薬組成物の使用、及び本発明に係る医薬組成物を投与することを含む膀胱のCISを治療する方法の更なる実施形態にも当てはまる。
【0040】
用語「膀胱癌」とは、尿路上皮に起因する数種の膀胱の(悪性又は非悪性)腫瘍性疾患のうちのいずれかを指す。本発明に従って治療される「上皮内癌」(CIS)という用語は、好ましくは、粘膜に限定されている、平坦な(例えば、非乳頭状の)高悪性度、筋層非浸潤性膀胱腫瘍を指す。
【0041】
上皮内癌は、炎症と区別することができない、ビロード様の赤味がかった領域と表現することができる。多くの場合、全く目に見えない可能性がある。しかし、CIS膀胱癌患者は、初期症状として血尿を示す場合が多い。また、CIS患者は、通常、疼痛症状を訴える。CIS膀胱癌を診断するために、特に、CIS膀胱癌を他の形態の筋層非浸潤性膀胱癌と区別するために、イメージング技術、特に、超音波検査及び静脈尿路造影、並びにCT尿路造影は、通常、決定的ではなく、CISの診断において何の役割も果たさない。尿路上皮の異常な領域がみられた場合は必ず、前記異常な領域の生検、例えば、切除ループを用いる生検を行うことが好ましい。CISの診断は、好ましくは、膀胱生検の細胞検査、尿細胞診、及び組織学的評価によって行われる。細胞診は、CIS検出において特に高感度であるが、その理由は、大部分の患者においてCIS膀胱領域の上皮内層における細胞接着が失われるためである。したがって、より多数の細胞が尿中に浮遊している。それに代えて又はそれに加えて、特に、細胞診陽性患者においてCISを検出するためには、蛍光膀胱鏡検査による光線力学的診断が有用であり得る。
【0042】
典型的に、CIS膀胱癌患者は、粘膜固有層に浸潤しているT1ステージの腫瘍を呈しない。特定の状況下では、患者は、粘膜に限定されず、粘膜下層領域に局在し得る孤立癌細胞を部分的に呈する場合もある。この移行段階において、T1ステージの腫瘍が、従来の方法、例えば、組織診によって検出可能であり得るというエビデンスは存在しない。
【0043】
CIS膀胱癌患者は、任意の年齢の任意の女性又は男性であり得る。CIS膀胱癌は、通常、女性よりも男性において高頻度でみられ、男性及び女性のCIS膀胱癌患者は、イミキモドによって等しく治療されるが、治療される患者は、通常、任意の民族の男性、好ましくは、少なくとも40歳の男性、より好ましくは、少なくとも50歳の男性、最も好ましくは、少なくとも60歳の男性、例えば、60歳〜80歳の男性、60歳〜70歳の男性である。したがって、本発明に従って治療されるCIS膀胱癌患者は、好ましくは、40歳〜80歳、40歳〜70歳、50歳〜70歳、40歳〜60歳、60歳〜80歳、45歳〜70歳、50歳〜75歳、55歳〜80歳、65歳〜80歳、より好ましくは、50歳〜75歳、例えば、55歳〜75歳、60歳〜75歳、65歳〜75歳の男性である。
【0044】
高リスク腫瘍と診断された男性又は女性の患者群は、本発明に従ってイミキモドによって治療される少なくとも1箇所、例えば、1箇所〜7箇所の腫瘍部位を呈し得る。好ましくは、治療される患者は、通常、60歳超の男性であってよい。したがって、通常、CISと診断された高リスク膀胱癌を呈する患者群は、60歳超の男性であり、例えば、少なくとも2箇所のCIS腫瘍部位を呈し得る。
【0045】
治療される患者は、上部尿路、前立腺管、及び尿道の少なくともいずれかにおいてCIS膀胱癌病巣を示し得る。典型的な患者群は、上記身体部分のいずれかにおいて多病巣性癌の発生を示す。
【0046】
治療される上皮内癌患者は、以下に定義する下位群のいずれかから選択してよい:外向発育腫瘍の既往も併発も無い、特に、乳頭状尿路上皮腫瘍の既往も併発もない、孤立したCISを呈する原発性CIS膀胱癌患者;腫瘍の既往歴のある、特に、乳頭状尿路上皮腫瘍の既往のある続発性CIS膀胱癌患者;又は外向発育腫瘍の存在下で、特に、乳頭状尿路上皮腫瘍の存在下でCISを示す併発性CIS膀胱癌患者。
【0047】
したがって、男性又は女性、好ましくは男性の本発明に係るCIS膀胱患者の群は、原発性CIS膀胱癌、続発性CIS膀胱癌、及び併発性CIS膀胱癌からなる群から選択されるCIS膀胱癌を有することが好ましい。言い換えれば、好ましくは、膀胱上皮内癌(CIS)は、原発性膀胱上皮内癌(CIS)、続発性膀胱上皮内癌(CIS)、及び併発性膀胱上皮内癌(CIS)からなる群から選択される。
【0048】
その結果、本発明によれば、併発性CIS膀胱癌を有するCIS膀胱患者が特に好ましい。言い換えれば、膀胱上皮内癌(CIS)は、併発性膀胱上皮内癌(CIS)であることが特に好ましい。
【0049】
更に、本発明に従って治療される男性又は女性、典型的には男性の患者群は、好ましい特定の下位群として、膀胱内BCG治療を受けたことがあり、且つCIS膀胱癌が依然として存続している患者を含む。この下位群は、CIS膀胱癌患者の約40%を構成し得る。
【0050】
一般的に、本発明に従って治療されるCIS膀胱癌患者は、BCG治療を以前に、重複して、又は同時に受けたことがあってよい。BCGで治療されるCIS膀胱患者は、その患者がBCG治療に対して応答したかどうかにかかわらず、本発明に従って治療することができる。言い換えれば、BCG応答者及びNCG非応答者を本発明に従って治療することができる。しかし、好ましくは、本発明に従って治療されるCIS膀胱癌患者は、BCG非応答者である、即ち、BCG治療を受けた/受けているが、応答しなかったCIS膀胱癌患者を、本発明に従って治療する。
【0051】
本発明者らは、驚くべきことに、イミキモドを含む本発明の医薬組成物が、例えば、CIS膀胱癌のみであるか、又はCISとTaステージ若しくはT1ステージとを併発していると定義されるが、但し、好ましくは、TaT1ステージの腫瘍が治療前に完全に切除されている、再発性、原発性、続発性、又は併発性CIS膀胱癌と判明した患者におけるCIS膀胱癌の治療に特に有効であることを見出した。
【0052】
したがって、本発明は、膀胱上皮内癌の治療における使用のための医薬組成物を提供する。
【0053】
1つの態様によれば、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤と、任意で希釈剤とを含んでいてよい。したがって、本発明の医薬組成物は、少なくとも1、又は2、3、又は4、又はそれ以上の薬学的賦形剤と、任意で希釈剤とを含んでいてよい。用語「薬学的に許容し得る賦形剤」とは、本発明の医薬組成物の文脈で用いられるとき、任意の生理学的に不活性且つ薬理学的に不活性な当業者に公知の物質であって、本発明に係る医薬組成物の物理的及び化学的特徴に適合し、且つその意図する用途、例えば、膀胱内注入に干渉しない物質を指す。薬学的に許容し得る賦形剤としては、ポリマー、樹脂、可塑剤、充填剤、結合剤、滑沢剤、滑剤、溶媒、共溶媒、緩衝系、界面活性剤、保存剤、甘味剤、着香剤、医薬品グレードの色素又は顔料、及び粘稠剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
また、本発明の医薬組成物における医薬品グレードの色素(days)は、例えば、本発明の医薬組成物が接触した尿路上皮に付着して及び/又は印を付けて、本発明の医薬組成物と接触した領域を特定することを可能にする色素を含んでいてもよい。これらの領域は、例えば、内視鏡検査、又は尿路上皮のイメージングに好適な他のイメージング技術によって可視化することができる。好ましくは、蛍光色素は、非毒性色素であり、放射エネルギー、例えば、光に曝露されたときに蛍光を発する。本発明の医薬組成物と共に用いることができる色素としては、例えば、ダンシルクロリド、ローダミンイソチオシアネート、Alexa350、Alexa430、AMCA、アミノアクリジン、BODIPY630/650、BODIPY650/665、BODIPY−FL、BODIPY−R6G、BODIPY−TMR、BODIPY−TRX、5−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、5−カルボキシ−2’,4’,5’,7’−テトラクロロフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシローダミン、6−カルボキシローダミン、6−カルボキシテトラメチルアミノ、カスケードブルー、Cy2、Cy3、Cy5,6−FAM、ダンシルクロリド、フルオレセイン、HEX、6−JOE、NBD(7−ニトロベンザ−2−オキサ−l,3−ジアゾール)、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファーストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラ−アミノ安息香酸、エリスロシン、フタロシアニン、アゾメチン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、希土類金属クリプテート、ユウロピウムトリスビピリジンジアミン、ユウロピウムクリプテート又はキレート、ジアミン、ジシアニン、ラホヤブルーダイ、アロピコシアニン、アロコシアニンB、フィコシアニンC、フィコシアニンR、チアミン、フィコエリトロシアニン、フィコエリトリンR、REG、ローダミングリーン、ローダミンイソチオシアネート、ローダミンレッド、ROX、TAMRA、TET、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、テトラメチルローダミン、及びテキサスレッドを挙げることができる。
【0055】
本発明に係る医薬組成物の文脈では、薬学的に許容し得るビヒクルは、通常、本発明の医薬組成物の液体基剤、例えば、パイロジェンフリー水を含み;前記フリー水溶液を、任意の適切な比で、水混和性の薬学的に許容し得る有機溶媒、例えば、アルコール(例えば、エタノール又はイシプロパノール(isipropanol))と合わせてよく;また、等張生理食塩水又は緩衝(水)溶液、例えば、リン酸緩衝溶液、クエン酸緩衝溶液など、例えば、ナトリウム塩、好ましくは、少なくとも50mMのナトリウム塩、カルシウム塩、好ましくは、少なくとも0.01mMのカルシウム塩、及びカリウム塩の少なくともいずれか、好ましくは、少なくとも3mMのカリウム塩を含有する緩衝水溶液を用いてもよい。好ましい実施形態によれば、ナトリウム、カルシウム、及びカリウム塩の少なくともいずれかは、そのハロゲン化物(例えば、塩化物、ヨウ化物、又は臭化物)の形態、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、又は硫酸塩などの形態で生じ得る。限定するものではないが、ナトリウム塩の例としては、例えば、NaCl、NaI、NaBr、Na
2CO
3、NaHCO
3、Na
2SO
4が挙げられ、任意のカリウム塩の例としては、例えば、KCl、KI、KBr、K
2CO
3、KHCO
3、K
2SO
4が挙げられ、カルシウム塩の例としては、例えば、CaCl
2、CaI
2、CaBr
2、CaCO
3、CaSO
4、Ca(OH)
2が挙げられる。更に、前述のカチオンの有機アニオンが本発明の組成物中に含有されていてもよい。より好ましい実施形態によれば、上に定義した注入目的に好適な本発明の組成物は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl
2)、及び任意で塩化カリウム(KCl)から選択される塩を含有していてよく、塩化物に加えて更なるアニオンが存在していてもよい。また、CaCl
2をKClなどの別の塩に置き換えてもよい。本発明の組成物は、特定のレファレンス媒体に対して高張、等張、又は低張であってよく、即ち、本発明の組成物は、特定のレファレンス媒体よりも高い、同一の、又は低い塩含有量を有してよく、好ましくは、かかる濃度の前述の塩を用いてよく、このことが、浸透圧又は他の濃度作用に起因する細胞の損傷につながることはない。レファレンス媒体は、例えば、「インビボ」法で生じる液体、例えば、血液、リンパ液、サイトゾル液、若しくは他の体液であるか、又は「インビトロ」法でレファレンス媒体として用いることができる液体、例えば、一般的なバッファ又は液体である。かかる一般的なバッファ又は液体は、当業者に公知である。
【0056】
好ましい実施形態によれば、本発明に係る医薬組成物は、通常、約0.005%(w/v)〜約2%(w/v)、約0.01%(w/v)〜約2%(w/v)、約0.1%(w/v)〜約1.5%(w/v)、約0.1%(w/v)〜約1.25%(w/v)、約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)、約0.2%(w/v)〜約2%(w/v)、約0.2%(w/v)〜約1.5%(w/v)、約0.2%(w/v)〜約1.25%(w/v)、約0.2%(w/v)〜約1%(w/v)、約0.2%(w/v)〜約0.9%(w/v)、約0.3%(w/v)〜約1%(w/v)、約0.3%(w/v)〜約0.9%(w/v)、約0.4%(w/v)〜約1%(w/v)、約0.4%(w/v)〜約0.8%(w/v)、約0.1%(w/v)〜約0.8%(w/v)、約0.2%(w/v)〜約0.8%(w/v)、約0.1%(w/v)〜約0.5(w/v)、好ましくは約0.2%(w/v)〜約0.5%(w/v)の量のイミキモドを含む。上記値は、%(w/w)に準用してもよい。
【0057】
1つの実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの有機酸を含む。本発明の医薬組成物における使用のための少なくとも1つの有機酸は、カルボン酸及びスルホン酸の少なくともいずれかであってよく、好ましくは、前記少なくとも1つの有機酸は、乳酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、安息香酸、オクタン酸、イコサン酸、オクタデカン酸、ヘキサデカン酸、又はドデカン酸から選択されるカルボン酸である。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、上に定義した本発明の医薬組成物は、約0.025M〜約0.200M、好ましくは、約0.025M〜約0.100M、又は約0.035M〜約0.1M、又は約0.045M〜約0.1M、又は約0.055M〜約0.1M、又は約0.065M〜約0.1M、又は約0.075M〜約0.1M、又は約0.085M〜約0.1M、又は約0.100M〜約0.200M、又は約0.100M〜約0.150M、又は約0.020M〜約0.200M、例えば、約0.025M〜約0.200M、約0.030M〜約0.200M、約0.035M〜約0.200M、約0.040M〜約0.200M、約0.045M〜約0.200M、約0.050M〜約0.200M、約0.055M〜約0.200M、約0.060M〜約0.200M、約0.065M〜約0.200M、約0.070M〜約0.200M、約0.075M〜約0.200M、約0.080M〜約0.200M、約0.085〜0約.200M、約0.090M〜約0.200M、約0.095M〜約0.200M、約0.100M〜約0.200M、約0.125M〜約0.200M、約0.130M〜約0.200M、約0.135M〜約0.200M、約0.140M〜約0.200M、約0.145M〜約0.200M、約0.0150M〜約0.200M、約0.155M〜約0.200M、約0.160M〜約0.200M、約0.165M〜約0.200M、約0.170M〜約0.200M、約0.175M〜約0.200M、約0.180M〜約0.200M、約0.185M〜約0.200M、約0.190M〜約0.200M、又は約0.195M〜約0.200M、又は好ましくは、約0.030M〜約0.100M、例えば、約0.035M〜約0.100M、約0.040M〜約0.100M、約0.045M〜約0.100M、約0.050M〜約0.100M、約0.055M〜約0.100M、約0.060M〜約0.100M、約0.065M〜約0.100M、約0.070M〜約0.100M、又は約0.075M〜約0.100M、又は約0.080M〜約0.100M、約0.085〜約0.100M、約0.090M〜約0.100M、約0.095M〜約0.100M、約0.095M〜約0.200Mの濃度の、酢酸及び乳酸の少なくともいずれか、又はこれらの混合物から選択される有機酸を含む。
【0059】
したがって、上に定義した本発明の医薬組成物は、酢酸及び乳酸の少なくともいずれか、又はこれらの混合物を含んでいてよく、例えば、本発明の医薬組成物は、上記合計濃度のいずれかの酢酸、又は乳酸、又は酢酸及び乳酸を含んでいてよい。したがって、本発明の医薬組成物は、例えば、約0.225%(w/v)〜約1.81%(w/v)、好ましくは、約0.27%(w/v)〜約1.81%(w/v)、約0.36%(w/v)〜約1.35%(w/v)、約0.45%(w/v)〜約1.35%(w/v)、約0.54%(w/v)〜約1.13%(w/v)、約0.63%(w/v)〜約0.9%(w/v)、約0.72%(w/v)〜約0.9%(w/v)、より好ましくは、約0.45%(w/v)〜約0.9%(w/v)、最も好ましくは約0.51%(w/v)〜約0.9%(w/v)、又は上に定義したこれらの値のうちのいずれか2つによって形成される任意の範囲の濃度の乳酸を含んでいてよい。また、上記値は、%(w/w)に準用してもよい。本発明の医薬組成物の文脈では、用語「乳酸」は、2−ヒドロキシプロパン酸を指し、(R)−及び(S)−2−ヒドロキシプロパン酸に加えて、これらの任意のラセミ混合物も含む。上に定義した少なくとも1つの有機酸は、水溶液中のイミキモドの溶解性を改善する。
【0060】
特定の実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、1以上のシクロデキストリン(シクロアミロースとも呼ばれる)を含んでいてよい。シクロデキストリンだけではイミキモドを十分に溶解させることができないとしても、シクロデキストリンを用いて、本発明の医薬組成物中のイミキモドの溶解度、及び有利なことに、膜透過性を高めることができる。この状況において、イミキモドの溶解度は、シクロデキストリンを用いる最終的な本発明の医薬組成物中だけではなく、イミキモド及び上に定義した有機酸(例えば、乳酸、酢酸、又はこれらの混合物)によって形成される中間(原)液中でも高くなる。
【0061】
本発明の医薬組成物中で少なくとも1つのシクロデキストリンを乳酸及び酢酸の少なくともいずれかと併用すると、乳酸単独と組み合わせたイミキモドの溶解度と比べて、イミキモドの溶解度が少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、又は少なくとも約18%と僅かではあるが、有意に増大する。
【0062】
したがって、シクロデキストリンは、イミキモドの溶解度を高めるために医薬組成物の調製の任意の段階で用いてよい。本発明の状況では、シクロデキストリンは、好ましくは、デンプンの断片であるアミロースについて知られている通り、1位と4位との間が結合されている5以上のα−D−グルコピラノシド単位で構成される環状オリゴ糖ファミリーのメンバーであると理解される。本発明の状況では、シクロデキストリンは、特に、6員糖環分子を形成するα−シクロデキストリン、7糖環分子を形成するβ−シクロデキストリン、8糖環分子を形成するγ−デキストリン、δ−シクロデキストリン、及びε−シクロデキストリンを含む。特に好ましい本発明の医薬組成物は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、及びγ−シクロデキストリンの少なくともいずれか、更により好ましくは、β−シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)を含む。
【0063】
したがって、上に定義した本発明の医薬組成物は、約0.1%(w/v)〜約30%(w/v)、典型的には約1%(w/v)〜約20%(w/v)、好ましくは約2%(w/v)〜約20%(w/v)、より好ましくは約5%(w/v)〜約20%(w/v)、更により好ましくは約5%(w/v)〜約15%(w/v)、最も好ましくは約5%(w/v)〜約10%(w/v)、又は約2%(w/v)〜約6%(w/v)、又は約0.1%(w/v)〜約4%(w/v)、又は約0.5%〜約5%、より好ましくは2%〜5%、或いは約4%(w/v)〜約8%(w/v)、又は約6%(w/v)〜約10%(w/v)、又は約8%(w/v)〜約12%(w/v)の量の、上に定義したシクロデキストリンを含んでいてよく、%(w/v)で定義した量は、例えば、液体又は半液体の製剤として提供されるとき、本発明の医薬組成物又は中間原液の合計体積に対するシクロデキストリンの重量に基づくと理解してよい。或いは、上記量は、%(w/v)で定義してもよく、%(w/v)で定義する量は、本発明の医薬組成物の総重量に対するシクロデキストリンの重量に基づいて、又は中間原液に基づいて求めることができる。
【0064】
したがって、上に定義した本発明の医薬組成物は、約2%(w/v)〜約6%(w/v)、例えば、約2.5%(w/v)〜約6%(w/v)、約3%(w/v)〜約6%(w/v)、約3.5%(w/v)〜約6%(w/v)、又は約4.5%(w/v)〜約6%(w/v)、又は約2.5%(w/v)〜約5.5%(w/v)、約3%(w/v)〜約5.5%(w/v)、約3.5%(w/v)〜約5.5%(w/v)、約4%(w/v)〜約5.5%(w/v)、約4.5%(w/v)〜約5.5%(w/v)、又は約5%(w/v)、好ましくは約4%(w/v)〜約6%(w/v)の量の、上に定義したシクロデキストリンを含んでいてよい。
【0065】
より好ましい実施形態によれば、特に、例えば、膀胱内投与などの特定の投与形態について、本発明に係る医薬組成物は、少なくとも1つの感熱剤を更に含む。本発明の状況では、用語「感熱剤」は、通常、規定の転移(協同転移)点において、液体又は半液体の状態から固体又は半固体の状態、好ましくは、固体の状態に、その凝集状態又は粘度を変化させることができる化合物、好ましくは、ポリマーを指す。より好ましくは、用語「感熱剤」は、通常、特定の転移点(「下限臨界溶液温度」(LCST)又は「ゲル転移温度」とも呼ばれる)において、凝集状態を液体又は半液体の状態から固体又は半固体の状態(例えば、液体からゲル様状態又は固体状態)に変化させることができる化合物、好ましくは、(有機)ポリマーを指し、前記特定の転移点は、約15℃〜約35℃、より好ましくは約15℃〜約30℃、更により好ましくは約15℃又は約20℃〜約30℃、最も好ましくは約15℃又は約20℃〜約25℃の範囲の特定の転移温度によって好適に規定される。本発明に係る「下限臨界溶液温度」は、大気圧で測定され、感熱剤のモル質量分布に依存する。
【0066】
好ましくは、上に定義したかかる感熱剤は、体温における、感熱剤、及びそれを用いて製剤化される任意の化合物又は組成物(例えば、本発明の医薬組成物)のインサイチュでのゲル形成を可能にするが、前記医薬組成物は、通常、(半)液体の性質を示す。この状況では、感熱剤及びそれを用いて製剤化される任意の化合物又は組成物のインサイチュでのゲル形成は、通常、治療される患者の罹患部位、例えば、膀胱に本発明の医薬組成物をまさに投与(膀胱内投与)したとき又は投与直後に生じる。即ち、本発明の医薬組成物を投与する前には生じない。
【0067】
かかるインサイチュでのゲル形成は、特に、特定の用途、例えば、本明細書に定義する本発明の医薬組成物の膀胱内投与の場合、膀胱内でより長時間(例えば、0.5時間〜約2時間、好ましくは、1時間)に亘ってイミキモドを放出させるために有利であり、したがって、膀胱上皮内癌の治療に特に好適である。
【0068】
感熱剤を含む本発明の医薬組成物の1つの具体的な利点は、上に定義した温度範囲において転移点が選択されるので、投与が容易であることである。より具体的には、上に定義した温度範囲において転移点を選択することによって、例えば、室温において、液体又は半液体の凝集状態の本発明の医薬組成物を調製又は保管できるようになるだけではなく、例えば、カテーテルを用いる注入によって、(好ましくは、液体の)本発明の医薬組成物を投与できるようになる。その理由は、周辺膀胱組織の温度が高い(好ましくは、転移点の温度よりも高い)ので、本発明の医薬組成物が投与後に直ちに固化するか又はゲル化するためである。このようにして、膀胱内でゲル形成が誘導される。したがって、上に定義した本発明の医薬組成物の投与は、例えば、好適な直径のカニューレを有する注射針、注入管、内視鏡法、経尿道カテーテルなどによって、(外科手術を行なわずに)非観血法を用いて実施することができる。
【0069】
更に、ゲル形成によって、本発明の医薬組成物の生体接着性が増大し、イミキモドのTLR7発現細胞への曝露時間が延長され、全身薬物透過が減少する。この方法では、本発明の医薬組成物の注入中、長時間、例えば、0.5時間〜2時間、通常、約1時間に亘ってTLR7発現細胞がイミキモドに曝露されるが、これは、免疫応答を誘導して所望の治療効果を発揮するのに十分な時間である。
【0070】
更に、少なくとも1つの感熱剤、例えば、以下に定義するポロキサマー407を含む本発明の医薬組成物は、有利なことに、通常イミキモドによって引き起こされる全身性副作用を回避するか又は少なくとも有意に低減する。全身性副作用の低減は、本発明の医薬組成物のインビボにおける粘度の増大と、その結果、生物活性剤の周辺膀胱組織、例えば、尿路上皮への拡散が減少及び/又は減速することとに基づいて、イミキモドの投与が罹患部位、即ち、膀胱に局所的に限定されることに起因するものである。更に、本発明の医薬組成物の生体接着性の増大は、尿路上皮、ひいては、上皮内癌にイミキモドの作用を局所的に限定することにも寄与し得る。
【0071】
更に、少なくとも1つの感熱剤を含む本発明の医薬組成物は、有利なことに、前記組成物に含有されているイミキモドを所謂「持続放出」(又は、時には「長期放出」とも呼ばれる)させることができる。特に、本発明の医薬組成物のゲル形成によって、ゼロ次速度過程でイミキモドが徐放され、それによって、治療効果の期間が延長される。また、本発明の医薬組成物に含有されているイミキモドのかかる長期治療効果により、特に、短い時間間隔で、本発明の医薬組成物を反復投与することを避けられる。前記反復投与は、通常、徐放性を示さない医薬組成物を用いたときには避けられない。
【0072】
更に、本発明の医薬組成物のLCSTは、酢酸及び乳酸によって異なる影響を受ける。両酸は、一般的に、組成物のLCSTを増大させる。しかし、例えば、酢酸のみを含む本発明の医薬組成物のゲル転移温度の全てにおいて、イミキモドは影響を与えないが、乳酸を含む組成物のLCSTは、増大する。したがって、本明細書に定義する感熱剤の最終的な割合は、シクロデキストリンが存在していようといまいと、用いられる酸に依存し得る。
【0073】
本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの感熱剤として、キトサン若しくはその誘導体、又はポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)コポリマー(PEO−PPO−PEO又はポロキサマーとも呼ばれる)を含んでいてよい。
【0074】
本発明の医薬組成物の文脈におけるキトサンは、通常、ランダムに分布するβ−(1−4)結合D−グルコサミン及びN−アセチル−D−グルコサミン単位で構成される直鎖状多糖である。キトサンは、(熱)水酸化ナトリウム溶液で処理することによるキチンの脱アセチル化によって得ることができる。本発明の医薬組成物で使用するためのキトサン誘導体は、例えば、N−トリメチル−キトサン(TMC)、キトサンエステル(例えば、グルタミン酸エステル、コハク酸エステル、フタル酸エステル)、又はキトサンコンジュゲート、例えば、キトサン−4−チオブチルアミジンを含んでいてよい。
【0075】
本発明の文脈におけるポロキサマーは、通常、「PEO−PPO−PEO」とも略される、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)コポリマーと理解される。したがって、かかるポロキサマーは、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2本の親水性鎖に隣接する中央のポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の疎水性鎖で構成される非イオン性トリブロックコポリマーである。かかるポロキサマーの分子量は、一般的に、具体的には規定されず、それぞれの具体的な目的に対して好適に変更してよい。ポリマーブロックの長さはカスタマイズすることができるので、僅かに異なる性質を有する多くのポロキサマーを提供することができる。総称である「ポロキサマー」については、これらのコポリマーは、一般的に、文字「P」(ポロキサマーの意)に続いて、3つの数字を用いて命名され、最初の2つの数字×100が、ポリオキシプロピレンコアの近似分子質量を表し、最後の数字×10が、ポリオキシエチレン含量の百分率を表す(例えば、P407=ポリオキシプロピレン分子質量が4,000g/モルであり、ポリオキシエチレン含量が70%であるポロキサマー)。商品名Pluronic/Lutrolについては、これらのコポリマーの記号は、室温における物理的形態を規定する文字(L=液体、P=ペースト、F=フレーク(固体))で始まり、その後に2つ又は3つの数字が続く。数字表示の最初の数字(3桁の数では2つの数字)に300を乗じた数は、疎水性物質の近似分子質量を示し;最後の数字×10は、ポリオキシエチレン含量の百分率を表す(例えば、L61=ポリオキシプロピレンの分子質量が1,800g/モルであり、ポリオキシエチレン含量が10%であるPluronic)。上記例では、ポロキサマー181(P181)=Pluronic L61である。
【0076】
感熱剤として本発明の医薬組成物に好適なポロキサマーは、好ましくは、本発明の目的に好適な任意のポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)コポリマー又はかかるコポリマーの混合物、即ち、上に定義した熱感受性を示す任意のPEO−PPO−PEOポリマー又はかかるコポリマーの混合物を含む。また、かかるPEO−PPO−PEOポリマーは、市販のPEO−PPO−PEOポリマー及びその混合物、例えば、Pluronic F108 Cast Solid Surfacta;Pluronic F108 Pastille;Pluronic F108 Prill;Pluronic F108NF Prill(ポロキサマー338);Pluronic F127;Pluronic F127 Prill;Pluronic F127 NF;Pluronic F127 NF 500 BHT Prill;Pluronic F127 NF Prill(ポロキサマー407);Pluronic F38;Pluronic F38 Pastille;Pluronic F68;Pluronic F68 Pastille;Pluronic F68 LF Pastille;Pluronic F68 NF Prill(ポロキサマー188);Pluronic F68 Prill;Pluronic F77;Pluronic F77 Micropastille;Pluronic F87;Pluronic F87 NF Prill(ポロキサマー237);Pluronic F87 Prill;Pluronic F88 Pastille;Pluronic F88 Prill;Pluronic F98;Pluronic F98 Prill;Pluronic L10;Pluronic L101;Pluronic L121;Pluronic L31;Pluronic L35;Pluronic L43;Pluronic L44;Pluronic L44 NF(ポロキサマー124);Pluronic L61;Pluronic L62;Pluronic L62 LF;Pluronic L62D;Pluronic L64;Pluronic L81;Pluronic L92;Pluronic L44 NF INH surfactant(ポロキサマー124);Pluronic N3;Pluronic P103;Pluronic P104;Pluronic P105;Pluronic P123 Surfactant;Pluronic P65;Pluronic P84;Pluronic P85;及びポロキサマー403を含む。かかるPEO−PPO−PEOポリマーは、更に、これらのPEO−PPO−PEOポリマーのうちの任意の2以上(3、4、5、6など)によって形成される混合物を含む。
【0077】
より好ましくは、感熱剤として本発明の医薬組成物に好適なポロキサマーとしては、ポロキサマー又はその混合物が挙げられ、前記ポロキサマーは、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、ポロキサマー403、及びポロキサマー407から選択される。したがって、BASFのポロキサマーコードラベルを用いると、好適なポロキサマーは、Pluronic/Lutrol F44(ポロキサマー124)、Pluronic/Lutrol F68(ポロキサマー188)、Pluronic/Lutrol F87(ポロキサマー237)、Pluronic/Lutrol F108(ポロキサマー338)、Pluronic/Lutrol F123(ポロキサマー403)、Pluronic/Lutrol F127(ポロキサマー407)から選択される。
【0078】
更により好ましい実施形態によれば、感熱剤として本発明の医薬組成物に好適なポロキサマーとしては、ポロキサマー又はその混合物が挙げられ、前記ポロキサマーは、ポロキサマー188、ポロキサマー403、及びポロキサマー407から選択される。
【0079】
更により好ましくは、約ポロキサマー407:ポロキサマー188の比は、約約1:20、約1:19、約2:18:、約3:17、約4:16、約5:15、約6:14、約7:13、約8:12、約9:11、約10:10(1:1)、約11:9、約12:8、約13:7、約14:6、約15:5、約16:4、約17:3、約18:2、約19:1、若しくは約20:1、又は上に定義した値のうちの任意の2つによって形成される比、例えば、1:18、1:17、1:16、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:8、1:7、1:6、1:5、1:2、又は2:17、2:15、2:13、2:11、2:9、2:7、2:5、2:3、2:1、又は3:16、3:14、3:13、3:11、3:10、3:8、3:7、3:5、3:4、又は4:15、4:13、4:11、4:9、4:7、4:5、又は5:15、5:13、5:12、5:11、5:9、5:8、5:7、5:6、5:2、5:1、又は6:13、6:11、6:9、6:7、6:5、6:1、又は7:12、7:11、7:10、7:9、7:8、7:6、7:5、7:4、7:3、7:2、7:1、又は8:11、8:9、8:7、8:5、8:3、8:1、又は9:10、9:8、9:7、9:5、9:4、9:2、9:1、又は10:1、10:3、10:7、10:9、又は11:8、11:7、11:6、11:5、11:4、11:3、11:2、11:1、又は12:7、12:5、12:1、又は13:6、13:5、13:4、13:3、13:2、13:1、又は14:5、14:3、14:2、14:1、又は15:4、15:2、15:1、又は16:3、16:1、又は17:2、17:1、又は18:1から選択され、最も好ましくは、ポロキサマー407:ポロキサマー188の比は、約7:3、約7.5:2.5、約8:2、約8.5:1.5、約9:1、若しくは約9.5:0.5、又はこれらの値のうちの任意の2つによって形成される比、例えば、7:0.5、7:1、7:1.5、7:2、7:2.5、又は7.5:0.5、7.5:1、7.5:1.5、7.5:2、又は8:2.5、8:1.5、8:1、8:0.5、又は8.5:0.5、8.5:1.0、又は9.0:0.5から選択される。したがって、本発明の医薬組成物中のポロキサマー188及びポロキサマー407の絶対含量は、本発明の医薬組成物中の両ポロキサマーの全体量及び特定の比に基づいて求めることができる。
【0080】
例えば、本発明の医薬組成物は、感熱剤として、ポロキサマー407とポロキサマー188との混合物を含んでいてよく、その全体量が、約15%(w/v)/(w/w)〜約27.5%(w/v)/(w/w)、より好ましくは、約15%(w/v)/(w/w)、約20%(w/v)/(w/w)、約25%(w/v)/(w/w)であり、且つポロキサマー407:ポロキサマー188の比が、好ましくは、約15:5、約16:4、約17:3、約18:2、約19:1、若しくは約20:1、又はこれらの値のうちの任意の2つによって形成される比、より好ましくは、約9.5:0.5、約9:1、約8.5:1.5、若しくは約8:2、又はこれらの値のうちの任意の2つによって形成される比である。したがって、本発明の医薬組成物がポロキサマー407とポロキサマー188との混合物を含む場合、ポロキサマー407は、約15%(w/v)/(w/w)〜約22.5%(w/v)/(w/w)、約15.5%(w/v)/(w/w)〜約26.5%(w/v)/(w/w)、好ましくは、約17.5%(w/v)/(w/w)〜約22.5%(w/v)/(w/w)の量で本発明の医薬組成物中に存在し得、一方、ポロキサマー188は、約1.0%(w/v)/(w/w)〜約6.0%(w/v)/(w/w)、好ましくは、約2.5%(w/v)/(w/w)〜約4.5%(w/v)/(w/w)の量で医薬組成物中に存在し得る。用語(w/v)/(w/w)は、(w/v)又は(w/w)を意味する。
【0081】
感熱剤として本発明の医薬組成物に好適な様々なPEO−PPO−PEOポリマーの中でも、ポロキサマー407が最も好ましく選択され、本発明の状況において熱応答性ゲルを生成するための第一選択ポリマーを表す。感熱剤としてのポロキサマー407は、単独で又は上記他のポロキサマー、好ましくはポロキサマー188との混合物として用いて、選択された温度、好ましくは、室温よりも僅かに高い(>20℃)が、体温よりは低い(<37℃)温度で「ゼリー化」する感熱剤の混合物を生成することができる。
【0082】
感熱剤を含む本発明に係る医薬組成物が、特に有利である。例えば、感熱剤、例えば、ポロキサマー407を含む本発明に係る医薬組成物を膀胱内に適用することにより、全身吸収が回避され、更に、イミキモドと尿路上皮との局所接触が増加する。したがって、感熱剤の添加により、膀胱尿路上皮からのイミキモドの全身吸収が低減され、免疫細胞に持続的に局所浸潤する。
【0083】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、感熱剤について一般的に上に定義した量、より好ましくは、約0.1%(w/v)、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、約4%(w/v)、約5%(w/v)、約6%(w/v)、約7%(w/v)、約8%(w/v)、約9%(w/v)、又は約10%(w/v)〜約40%(w/v)、又は約2%(w/v)〜約35%(w/v)、更により好ましくは、約2%(w/v)〜約30%(w/v)、最も好ましくは、約10%(w/v)〜約25%(w/v)、例えば、約10.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約11%(w/v)〜約25%(w/v)、約11.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約12%(w/v)〜約25%(w/v)、約12.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約13%(w/v)〜約25%(w/v)、約13.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約14%(w/v)〜約25%(w/v)、約14.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約15%(w/v)〜約25%(w/v)、約15.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約16%(w/v)〜約25%(w/v)、約16.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約17%(w/v)〜約25%(w/v)、約17.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約18%(w/v)〜約25%(w/v)、約18.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約19%(w/v)〜約25%(w/v)、約19.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約20%(w/v)〜約25%(w/v)、約20.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約21%(w/v)〜約25%(w/v)、約21.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約22%(w/v)〜約25%(w/v)、約22.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約23%(w/v)〜約25%(w/v)、約23.5%(w/v)〜約25%(w/v)、約24%(w/v)〜約25%(w/v)、又は約24.5%(w/v)〜約25%(w/v)、又はより具体的には、約12%(w/v)〜約24%(w/v)、約12%(w/v)〜約23%(w/v)、約12%(w/v)〜約22%(w/v)、約12%(w/v)〜約21%(w/v)、約12%(w/v)〜約20%(w/v)、約12%(w/v)〜約19%(w/v)、約12%(w/v)〜約18%(w/v)、約12%(w/v)〜約17%(w/v)、約12%(w/v)〜約16%(w/v)、又はより具体的には、約13%(w/v)〜約24%(w/v)、約13%(w/v)〜約23%(w/v)、約13%(w/v)〜約22%(w/v)、約13%(w/v)〜約21%(w/v)、約13%(w/v)〜約20%(w/v)、約13%(w/v)〜約19%(w/v)、約13%(w/v)〜約18%(w/v)、約13%(w/v)〜約17%(w/v)、約13%(w/v)〜約16%(w/v)、又はより具体的には、約14%(w/v)〜約24%(w/v)、約14%(w/v)〜約23%(w/v)、約14%(w/v)〜約22%(w/v)、約14%(w/v)〜約21%(w/v)、約14%(w/v)〜約20%(w/v)、約14%(w/v)〜約19%(w/v)、約14%(w/v)〜約18%(w/v)、約14%(w/v)〜約17%(w/v)、約14%(w/v)〜約16%(w/v)、又はより具体的には、約15%(w/v)〜約24%(w/v)、約15%(w/v)〜約23%(w/v)、約15%(w/v)〜約22%(w/v)、約15%(w/v)〜約21%(w/v)、約15%(w/v)〜約20%(w/v)、約15%(w/v)〜約19%(w/v)、約15%(w/v)〜約18%(w/v)、16%(w/v)〜約18%(w/v)、約15%(w/v)〜約17%(w/v)、最も好ましくは約15%(w/v)〜約16%(w/v)の量のポロキサマー407を感熱剤として含み、%(w/v)で定義した量は、例えば、液体又は半液体の製剤として提供されるとき、本発明の医薬組成物又は中間原液の合計体積に対する、本明細書に定義する感熱剤の重量に基づくと理解してよい。或いは、上記量は、%(w/w)で定義してもよく、%(w/w)で定義する量は、本発明の医薬組成物の総重量に対する、本明細書に定義する感熱剤の重量に基づくと理解してよい。
【0084】
したがって、本発明の医薬組成物は、感熱剤として、ポロキサマー407を(全体)量で、約10%(w/v)/(w/w)〜約25.0%(w/v)/(w/w)、より好ましくは、約11%(w/v)/(w/w)〜約22.5%(w/v)/(w/w)、約12.0%(w/v)/(w/w)〜約25.0%(w/v)/(w/w)、約12.0%(w/v)/(w/w)〜約22.5%(w/v)/(w/w)、約13%(w/v)/(w/w)〜約22.5%(w/v)/(w/w)、約14.0%(w/v)/(w/w)〜約22.5%(w/v)/(w/w)、約15.0%(w/v)/(w/w)〜約25.0%(w/v)/(w/w)、約15.0%(w/v)/(w/w)〜約22.5%(w/v)/(w/w)、約15.5%(w/v)/(w/w)〜約22.5%(w/v)/(w/w)、約16.0%(w/v)/(w/w)〜約22.5%(w/v)/(w/w)、又は約11%(w/v)/(w/w)〜約20.0%(w/v)/(w/w)、約12.0%(w/v)/(w/w)〜約20.0%(w/v)/(w/w)、約13%(w/v)/(w/w)〜約20.0%(w/v)/(w/w)、約14.0%(w/v)/(w/w)〜約20.0%(w/v)/(w/w)、約15.0%(w/v)/(w/w)〜約20.0%(w/v)/(w/w)、約15.5%(w/v)/(w/w)〜約20.0%(w/v)/(w/w)、約16.0%(w/v)/(w/w)〜約20.0%(w/v)/(w/w)、又は約11%(w/v)/(w/w)〜約19.0%(w/v)/(w/w)、約12.0%(w/v)/(w/w)〜約19.0%(w/v)/(w/w)、約13%(w/v)/(w/w)〜約19.0%(w/v)/(w/w)、約14.0%(w/v)/(w/w)〜約19.0%(w/v)/(w/w)、約15.0%(w/v)/(w/w)〜約19.0%(w/v)/(w/w)、約15.5%(w/v)/(w/w)〜約19.0%(w/v)/(w/w)、約16.0%(w/v)/(w/w)〜約19.0%(w/v)/(w/w)、又は約11%(w/v)/(w/w)〜約18.0%(w/v)/(w/w)、約12.0%(w/v)/(w/w)〜約18.0%(w/v)/(w/w)、約13%(w/v)/(w/w)〜約18.0%(w/v)/(w/w)、約14.0%(w/v)/(w/w)〜約18.0%(w/v)/(w/w)、約15.0%(w/v)/(w/w)〜約18.0%(w/v)/(w/w)、約15.5%(w/v)/(w/w)〜約18.0%(w/v)/(w/w)、約16.0%(w/v)/(w/w)〜約18.0%(w/v)/(w/w)、又は約11%(w/v)/(w/w)〜約17.0%(w/v)/(w/w)、約12.0%(w/v)/(w/w)〜約17.0%(w/v)/(w/w)、約13%(w/v)/(w/w)〜約17.0%(w/v)/(w/w)、約14.0%(w/v)/(w/w)〜約17.0%(w/v)/(w/w)、約15.0%(w/v)/(w/w)〜約17.0%(w/v)/(w/w)、約15.5%(w/v)/(w/w)〜約17.0%(w/v)/(w/w)、約16.0%(w/v)/(w/w)〜約17.0%(w/v)/(w/w)、又は約11%(w/v)/(w/w)〜約16.5%(w/v)/(w/w)、約12.0%(w/v)/(w/w)〜約16.5%(w/v)/(w/w)、約13%(w/v)/(w/w)〜約16.5%(w/v)/(w/w)、約14.0%(w/v)/(w/w)〜約16.5%(w/v)/(w/w)、約15.0%(w/v)/(w/w)〜約16.5%(w/v)/(w/w)、約15.5%(w/v)/(w/w)〜約16.5%(w/v)/(w/w)含んでいてよい。用語(w/v)/(w/w)は、(w/v)若しくは(w/w)、又は上に定義したこれらの値のうちの任意の2つによって形成される任意の範囲を意味する。
【0085】
1つの特に好ましい実施形態によれば、上に定義した本発明の医薬組成物は、約0.025M〜約0.2M、好ましくは、0.05M〜約0.150Mの濃度の酢酸及び乳酸の少なくともいずれかと、約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)の量のイミキモドと、約2%(w/v)〜約8%(w/v)の量のシクロデキストリンと、10%(w/v)〜約25%(w/v)、好ましく、約12%(w/v)〜約25%(w/v)の量のポロキサマー407とを含む。
【0086】
更なる特に好ましい実施形態によれば、上に定義した本発明の医薬組成物は、約0.025M(0.225%(w/v)に相当)〜約0.2M(1.81%(w/v)に相当)、好ましくは、約0.03M(0.27%(w/v)に相当)〜約0.15M(1.36%(w/v)に相当)、約0.035M(0.315%(w/v)に相当)〜約0.15M(1.36%(w/v)に相当)、約0.04M(0.36%(w/v)に相当)〜約0.125M(1.125%(w/v)に相当)、約0.05M(0.45%(w/v)に相当)〜約0.100M(0.9%(w/v)に相当)の濃度の乳酸と、約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)、好ましくは、約0.2%(w/v)〜約1%(w/v)、約0.3%(w/v)〜約0.9%(w/v)、約0.4%(w/v)〜約0.8%(w/v)、約0.5%(w/v)〜約0.7%(w/v)の濃度のイミキモドと、約12%(w/w)〜約18%(w/w)、好ましくは、約13%(w/w)〜約17%(w/w)、約14%(w/w)〜約16%(w/w)、約15%(w/w)〜約16%(w/w)、約16%(w/w)〜約18%(w/w)の量のポロキサマー407と、約2%(w/v)〜約8%(w/v)、好ましくは、約3%(w/v)〜約8%、約3.5%(w/v)〜約7%(w/v)、約4%(w/v)〜約6%(w/v)、約4.5%(w/v)〜約6%/w/v)、約5%(w/v)〜約7%(w/v)、約5%/w/v)〜約6%(w/v)の量のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとを含んでいてよい。
【0087】
最も好ましい実施形態では、上に定義した本発明の医薬組成物は、約0.4%(w/w)のイミキモドと、約16%(w/w)の量のポロキサマー407と、約5%(w/w)の量のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンと、約0.51%(w/w)の量の乳酸とを含む。本発明の医薬組成物は、任意で、ビヒクルを更に含んでいてよい。
【0088】
したがって、上に定義した本発明の医薬組成物は、約3.8〜約4.9、約3.8〜約4.8、約3.9〜約4.7、約3.9〜約4.6、約4.0〜約4.8、約4.0〜約4.7、約4.0〜約4.6、約4.0〜約4.5、約4.0〜約4.4、又は4.1〜約5.0、約4.1〜約4.9、約4.1〜約4.8、約4.1〜約4.3、約4.1〜約4.2のpH値を含む、約3〜約8、好ましくは約3〜約7、より好ましくは約3〜約6、更により好ましくは約3〜約5、最も好ましくは約3.5〜約5のpH値、又は最も好ましくは約4.1〜約4.7のpH値の水溶液である。本発明の医薬組成物は、上に定義したpH値で調製及び投与してよい。必要に応じて、pH値は、イミキモドの溶解度が影響を受けない限り、例えば、イミキモドが、沈殿したり、本発明の医薬組成物の所望の治療効果に干渉する任意の種類の凝集体を形成したりしない限り、特定の治療及び投与要件に合わせて、例えば、約5、約6、又は約7(pH5〜7)のより中性のpH値に更に調整してもよい。水性の本発明の医薬組成物のpHは、塩基、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)又は任意の他の好適なOH
−ドナーで滴定することによって調整してよい。
【0089】
1つの更なる実施形態によれば、本発明は、膀胱上皮内癌を治療するため及び/又は膀胱上皮内癌の治療における補助に使用するための医薬の製造における、上に定義した本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0090】
本発明の医薬組成物は、少なくとも1週間に1回、例えば、1週間に1回、2回、又は3回投与してよい。
【0091】
より具体的には、本発明の医薬組成物は、例えば、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、好ましくは約3週間〜約12週間、約4週間〜約12週間、約4週間〜約8週間、約6週間〜約12週間、更により好ましくは約6週間〜約8週間に亘って投与してよい。したがって、本発明の医薬組成物は、例えば、約4週間(例えば、1週間に1回、2回、又は3回)、約5週間(例えば、1週間に1回、2回、又は3回)、約6週間(例えば、1週間に1回、2回、又は3回)、約7週間(例えば、1週間に1回、2回、又は3回)、約8週間(例えば、1週間に1回、2回、又は3回)、約9週間(例えば、1週間に1回、2回、又は3回)、約10週間(例えば、1週間に1回、2回、又は3回)、約11週間(例えば、1週間に1回、2回、又は3回)、又は約12週間(例えば、1週間に1回、2回、又は3回)、又は例えば、約5週間〜12週間、又は約7週間〜約11週間、又は約8週間〜約12週間、又は約9週間〜約12週間、又は約10週間〜約12週間、又は約11週間〜約12週間、又は約3週間〜約10週間、又は約4週間〜約9週間、又は約5週間〜約8週間に亘って投与してよい。治療レジメンは、例えば、腫瘍疾患の重篤度、患者の健康状態、性別、年齢、副作用などに依存する。
【0092】
本発明に係る医薬組成物は、好ましくは、約2日間〜約7日間、例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、又は7日間、好ましくは7日間の時間間隔で投与してよい。したがって、上に定義した本発明の医薬組成物は、上に定義した投与の時間間隔の終わりまで、例えば、0日目、2日目、4日目、6日目、8日目など、又は0日目、3日目、6日目、9日目、12日目、15日目など、又は4日目、8日目、12日目、16日目、20日目など、又は0日目、5日目、10日目、15日目など、又は0日目、6日目、12日目、18日目、24日目など、又は0日目、7日目、14日目、21日目、28日目などに投与してよい。本明細書において、「0日目」とは、最初の治療日、例えば、本発明の医薬組成物の最初の投与、例えば、最初の膀胱内注入を実施する日を意味する。上に定義した本発明の医薬組成物の膀胱内注入は、具体的な目的に好適な当業者に公知の任意の手段によって、例えば、経尿道カテーテルを用いて実施してよい。
【0093】
したがって、本発明の医薬組成物は、合計で、例えば、少なくとも3用量、少なくとも4用量、好ましくは、少なくとも5用量、少なくとも6用量、少なくとも7用量、又は少なくとも8用量、又は例えば、3用量〜12用量、4用量〜11用量、5用量〜10用量、6用量〜9用量、7〜8用量、又は例えば、10用量、12用量、14用量、16用量、18用量、20用量、22用量、24用量、26用量、28用量、30用量、32用量、34用量、36用量、又は例えば、約3用量〜36用量、約4用量〜約32用量、約6用量〜約30用量、約8用量〜約28用量、約10用量〜約26用量、約12用量〜約24用量、約14用量〜約20用量、約16用量〜約22用量、約18用量〜約20用量、又は例えば、4用量、5用量、6用量、7用量、8用量、9用量、10用量、11用量、12用量、13用量、14用量、15用量、16用量、17用量、18用量、19用量、20用量、21用量、22用量、23用量、24用量、25用量、26用量、27用量、28用量、29用量、30用量、31用量、32用量、33用量、34用量、35用量、36用量投与してよい。
【0094】
より具体的な実施形態によれば、本発明の医薬組成物は(例えば、選択したイミキモド濃度、又は例えば、患者の膀胱体積に応じて)、約10mL〜約100mL、好ましくは、例えば、約20mL、約30mL、約40mL、約50mL、約60mL、約70mL、約80mL、約90、又は約25mL〜約100mL、約30mL〜約100mL、約35mL〜約100mL、約40mL〜約100mL、約45mL〜約100mL、約50mL〜約100mL、約55mL〜約100mL、約60mL〜約100mL、約65mL〜約100mL、約70mL〜約100mL、約75mL〜約100mL、約80mL〜約100mL、約85mL〜約100mL、約90mL〜約100mL、約95mL〜約100mL、又は例えば、約25mL〜約50mL、約30mL〜約55mL、約35mL〜約60mL、約40mL〜約65mL、約45mL〜約70mL、約50mL〜約75mL、約55mL〜約80mL、約60mL〜約85mL、約65mL〜約90mL、約70mL〜約95mL、より好ましくは、約40mL〜約70mL、又は例えば、約50mLの体積を投与してよい。
【0095】
本発明に係る医薬組成物は、上に定義した本発明の医薬組成物の膀胱内滞留時間が、例えば、少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、又は約4時間、好ましくは、例えば、0.5時間〜約2時間、約0.75時間〜約2時間、約1時間〜約1.5時間、約1.5時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約2.5〜約3時間、約2.5時間〜約3.5時間、又は例えば、約0.6時間、約0.7時間、約0.8時間、約0.9時間、約1時間、約1.1時間、約1.2時間、約1.3時間、約1.4時間、約1.5時間、約1.6時間、約1.7時間、約1.8時間、約1.9時間、約2時間になり得るように製剤化される。上に定義した本発明の医薬組成物の文脈において用いられるとき、滞留時間とは、本発明の医薬組成物の膀胱内滞留時間を指すものとするか、又は例えば、医薬組成物のイミキモドのうちの少なくとも50%(例えば、60%、70%)が尿路上皮によって吸収される時間を指す場合もある。
【0096】
限定するものではないが、本発明の医薬組成物は、約10ナノグラム/キログラム(ng/kg)、約20ng/kg、約50ng/kg、又は約100ng/kg〜約50ミリグラム/キログラム(mg/kg)、好ましくは、約10マイクログラム/キログラム(μg/kg)〜約5mg/kgの用量のイミキモド又はその塩を被験体に提供するのに十分な活性イミキモドを含有又は放出する。したがって、本発明の医薬組成物は、Dubois法に従って計算された、例えば、約0.0001mg/m
2、約0.001mg/m
2、約0.01mg/m
2、又は約0.01mg/m
2〜約5.0mg/m
2の用量を提供するのに十分なイミキモドを含有又は放出する。ここで、被験体の体表面積(m
2)は、被験体の体重を用いて計算する:m
2=(体重kg
0.425×身長cm
0.725)×0.007184。しかし、幾つかの実施形態では、この範囲外の用量の化合物又は塩又は組成物を投与することによって、前記方法を実施してもよい。これらの実施形態のうちの幾つかにおいて、前記方法は、約0.0001mg/m
2、約0.001mg/m
2、約0.01mg/m
2、又は約0.1mg/m
2〜約2.0mg/m
2の用量、例えば、約0.004mg/m
2、約0.04mg/m
2、又は約0.4mg/m
2〜約1.2mg/m
2の用量を被験体に提供するのに十分なイミキモドを投与することを含む。
【0097】
本発明の幾つかの実施形態では、以下の規定のうちの1以上が当てはまる:
【0098】
本発明の医薬組成物の局所使用は、本発明の範囲から除外することが好ましい。更に、油を含む組成物、例えば、エマルションは、本発明から除外することが好ましく、w/o(油中水型)又はo/w(水中油型)製剤として製剤化される医薬組成物も、除外することが好ましい。また、油相中に4%(w/w)イミキモドを含み且つ水相中に1重量%(w/w)乳酸(85%)を含むクリームとして製剤化される医薬組成物も、除外することが好ましい。非経口投与用の医薬組成物も、除外することが好ましい。1%(w/w)イミキモド及び/又は1%(w/w)若しくは2%(w/w)乳酸(85%)又は0.6%(w/w)酢酸を含む非経口投与用の医薬組成物も、除外することが好ましい。更に、酢酸及びソルビタンモノオレエート20ミリステート又はイソプロピルミリステートを含む医薬組成物を除外する、及び/又はキトサン酢酸溶液とイミキモドとを混合することによって得られるイミキモド−キトサンナノ粒子を含む医薬組成物と除外する。米国特許出願公開第2004/0265351号に開示されているデポー製剤、例えば、ヒトの体内又は体表で4時間超保持されるデポー製剤も、本発明の範囲から除外することが好ましい。
【0099】
1つの実施形態によれば、本発明は、膀胱上皮内癌を治療する方法であって、治療的に有効な量の上に定義した本発明の医薬組成物を、それを必要としているヒトに投与する工程を含む方法に関する。
【0100】
したがって、前記方法は、上に定義した本発明の医薬組成物の膀胱内投与を含み、前記本発明の医薬組成物は、例えば、1分間〜60分間、2分間〜50分間、3分間〜45分間、4分間〜40分間、5分間〜35分間、10分間〜30分間、15分間〜20分間、好ましくは、例えば、2分間〜15分間、又は3分間〜15分間、又は4分間〜12分間、又は5分間〜10分間、より好ましくは、3分間〜9分間、又は3分間〜8分間、又は4分間〜8分間、最も好ましくは、3分間〜5分間に亘って投与してよい。前記方法は、更に、例えば、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、好ましくは約3週間〜約12週間、約4週間〜約12週間、約4週間〜約8週間、約6週間〜約12週間、更により好ましくは、例えば、約6週間〜約8週間の期間に亘って本発明の医薬組成物を投与することを含む。したがって、本発明の治療方法は、例えば、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、又は例えば、約5週間〜12週間、又は約7週間〜約11週間、又は約8週間〜約12週間、又は約9週間〜約12週間、又は約10週間〜約12週間、又は約11週間〜約12週間、又は約3週間〜約10週間、又は約4週間〜約9週間、又は約5週間〜約8週間、本発明の医薬組成物を投与することを含んでよい。
【0101】
したがって、本発明に係るCIS膀胱癌を治療する方法は、0日目から開始して、例えば、少なくとも4週間、又は少なくとも5週間、又は少なくとも6週間、又は少なくとも7週間、又は少なくとも8週間、又は上に定義した任意の期間、上に定義したいずれかの時間間隔で、例えば、上に定義した通り0日目、7日目、14日目、21日目、28日目などに、上に定義した本発明の医薬組成物を膀胱内注入することを含んでいてよい。
【0102】
より具体的な実施形態によれば、本発明のCIS膀胱癌を治療する方法は、例えば、少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、少なくとも約4時間、好ましくは、例えば、0.5時間〜約2時間、約0.75時間〜約2時間、約1時間〜約1.5時間、約1.5時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約2.5〜約3時間、約2.5時間〜約3.5時間、又は例えば、約0.6時間、約0.7時間、約0.8時間、約0.9時間、約1時間、約1.1時間、約1.2時間、約1.3時間、約1.4時間、約1.5時間、約1.6時間、約1.7時間、約1.8時間、約1.9時間、約2時間の、本発明の医薬組成物の膀胱内滞留時間を含んでいてよい。
【0103】
CIS膀胱癌の重篤度に応じて、治療レジメンは、例えば、患者の年齢、CIS膀胱癌の重篤度(ステージ)、及び癌治療期間中に生じる副作用であり得る、治療選択肢に影響を与え得る要因に従って変更してよい。例えば、0日目、3日目、6日目、9日目などの投与間隔から、例えば、0日目、5日目、10日目、15日目、20日目など、又は例えば、0日目、7日目、14日目、21日目、28日目などに、本発明の医薬組成物の個々の注入間の時間間隔を増大させると同時に、癌治療期間を短縮又は延長してもよい。同様に、CIS膀胱癌の重篤度に応じて、上に定義した膀胱内滞留時間を短縮又は延長してもよい。したがって、本発明の医薬組成物中のイミキモド濃度は、疾患の重篤度に応じて変更してよく、例えば、本発明の医薬組成物は、上に定義した又は添付の特許請求の範囲に例示するイミキモド量のいずれかを含んでいてよい。
【0104】
CIS膀胱癌の重篤度に応じて、本発明に係るCIS膀胱癌治療を必要としている患者は、1サイクル超の治療サイクルを必要とすることがあり、例えば、前記患者は、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、又は6回、上に定義した本発明のCIS膀胱癌の治療方法を繰り返す必要があり得る。
【0105】
好ましくは、本発明に係る医薬組成物は、(i)CIS膀胱癌を治療するために本発明に係る医薬組成物を患者に投与し、且つ(ii)併発性外向発育腫瘍を同時に治療する、併用療法において投与される。したがって、かかる併用療法は、CIS膀胱癌が併発性CIS膀胱癌である場合、特に有用である。かかる併用療法では、本発明に係る医薬組成物を上記の通り投与してよく、そして、併発性外向発育腫瘍、特に、乳頭状尿路上皮腫瘍を、特に外科手術によって及び/又は薬学的に(例えば、化学療法によって)同時に治療してよい。好ましくは、併発性外向発育腫瘍を外科的に除去する。
【0106】
本発明に係る併用療法では、「同時治療」とは、本発明に係る医薬組成物を、併発性外向発育腫瘍の治療前、治療中、又は治療後に投与してよいことを意味する。例えば、併発性外向発育腫瘍の薬物治療(例えば、化学療法)及び外科手術の少なくともいずれかを、上記本発明に係る医薬組成物を用いた治療サイクルの前、治療サイクル中、又は治療サイクル後に実施してよい。
【0107】
したがって、併発性外向発育腫瘍の治療前の投与とは、併発性外向発育腫瘍の治療を開始する前に本発明に係る医薬組成物による最後の治療を終える任意の治療サイクルを指す。好ましくは、本発明に係る医薬組成物による最後の治療を、併発性外向発育腫瘍の治療を開始する7日間前、6日間前、5日間前、4日間前、3日間前、2日間前、又は1日間前までに終え、より好ましくは、本発明に係る医薬組成物による最後の治療を、併発性外向発育腫瘍の治療を開始する48時間前、36時間前、24時間前、20時間前、16時間前、12時間前、8時間前、又は4時間前までに終え、更により好ましくは、本発明に係る医薬組成物による最後の治療を、併発性外向発育腫瘍の治療を開始する180分間前、120分間前、90分間前、60分間前、45分間前、30分間前、20分間前、10分間前、9分間前、8分間前、7分間前、6分間前、5分間前、4分間前、3分間前、2分間前、又は1分間前までに終える。
【0108】
したがって、併発性外向発育腫瘍の治療後の投与とは、併発性外向発育腫瘍の治療を終えた後に本発明に係る医薬組成物による最初の治療を開始する任意の治療サイクルを指す。好ましくは、本発明に係る医薬組成物による最初の治療は、併発性外向発育腫瘍の治療を終えた後7日間以内、6日間以内、5日間以内、4日間以内、3日間以内、2日間以内、又は1日間以内に開始し、より好ましくは、本発明に係る医薬組成物による最初の治療は、併発性外向発育腫瘍の治療を終えた後48時間以内、36時間以内、24時間以内、20時間以内、16時間以内、12時間以内、8時間以内、又は4時間以内に開始し、更により好ましくは、本発明に係る医薬組成物による最初の治療は、併発性外向発育腫瘍の治療を終えた後180分間以内、120分間以内、90分間以内、60分間以内、45分間以内、30分間以内、20分間以内、10分間以内、9分間以内、8分間以内、7分間以内、6分間以内、5分間以内、4分間以内、3分間以内、2分間以内、又は1分間以内に開始する。
【0109】
したがって、併発性外向発育腫瘍の治療中の投与とは、併発性外向発育腫瘍の治療と重複する、本発明に係る医薬組成物による任意の治療サイクルを指す。したがって、併発性外向発育腫瘍の治療中の(本発明に係る医薬組成物の)投与が、本発明に係る併用療法において特に好ましい。
【0110】
本発明は、方法論、プロトコール、及び試薬は変更可能であるので、本発明は、本明細書に記載する特定の方法論、プロトコール、及び試薬に限定されるものではないことを理解すべきである。また、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態について説明する目的のためだけに使用され、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解すべきである。特に定義しない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【実施例】
【0111】
実施例1
膀胱上皮内癌の治療において使用するためにイミキモドを含む、本発明に係る医薬組成物の液体製剤の例:
【0112】
【表1】
【0113】
上記液体製剤は、膀胱内投与用であり、個々の用量は、通常、例えば、約50mLの体積を有する。前記液体製剤は、通常、約3分間〜約5分間に亘って患者の膀胱にカテーテルを介して投与される。患者の膀胱内における(半)液体製剤の滞留時間は、通常、約1時間である。
【0114】
上記医薬組成物は、合計6週間投与され、治療レジメンは、6週間の間隔中、0日目、7日目、14日目、21日目、28日目、及び35日目に医薬組成物を投与することを含む。「0日目」とは、本発明の医薬組成物を最初に膀胱内注入する日を意味する。
【0115】
実施例2
膀胱上皮内癌(CIS)患者におけるイミキモドの第II相パイロット試験
この試験の目的は、完全奏効(CR)した患者の数によってCIS膀胱癌の治療におけるイミキモド活性を評価することである。本明細書において、CRは、最後のイミキモド注入の5週間後〜7週間後に疾患のエビデンスが存在しない(組織診陰性、細胞診陰性)と定義される。更に、尿中、並びに投与前及び投与後の腫瘍生検中の薬力学的マーカーによって測定して、6週間に亘って1週間に1回投与したイミキモドの安全性及び耐容性を評価した。
【0116】
試験デザイン:
この試験は、CIS膀胱癌患者における膀胱内イミキモドに対する応答について調べる非盲検第II相パイロット試験である。6人の評価可能な患者を得るために、米国の複数の(4箇所)治療実施施設において12人の患者を登録させる。登録は、6番目の患者が評価可能になるか、又は合計12人の患者の試験への参加が認められるかのいずれか早い方で終了する。この時点で登録された全ての患者は、試験を完了することができる。
【0117】
CIS膀胱癌と診断された患者は、この試験の有力候補である。CIS病変は、原発性であっても、続発性であっても、再発性であってもよく、また、Ta又はT1病変が完全に切除されている限り、前記Ta又はT1病変が併発していてもよい。
【0118】
文書によるインフォームドコンセントを提出した後、患者は、0日目(即ち、最初の試験薬物投与日)の前28日間(4週間)以内のスクリーニング期間中に試験適格性について評価される。実施されるスクリーニング評価は、病歴、身体検査、バイタルサイン、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータス、血液検査及び臨床化学検査、並びに尿培養検査を含む。また、スクリーニング評価は、−28日目と−14日目との間に全ての疑わしい領域のマッピング及び生検と共に膀胱の膀胱鏡検査を行い、続いて、細胞診のために膀胱を洗浄することを含む。試験以外の診断プロセスの一部としてかかる試験を受けた患者は、指定の時間枠内に検査が実施され、且つ中央病理判定及び細胞診判定用に陽性スライドが利用可能である限り、再度検査を受ける必要はない。
【0119】
全ての他の適格性基準を満たし、組織診によってCIS膀胱癌が確認された患者を、0日目(最初の試験薬物投与日)に試験に登録する。全ての患者に、6週間に亘って1週間に1回(0日目、7日目、14日目、21日目、28日目、及び35日目)、体積50mL中0.4%(w/w)(50mL中200mg)イミキモドを合計6用量投与する。治療中、患者は、治療実施施設においてイミキモドを投与され、7日目、14日目、21日目、28日目、及び35日目に試験評価を実施する。
【0120】
患者は、細胞診を実施し、生検を採取するために、最後にイミキモドを投与した5週間〜7週間後、追跡試験実施施設に通院する。目に見える病変がない場合、以前陽性であった部位において少なくとも1つの生検を採取し、更に少なくとも1つのランダム生検を採取する。尿細胞診及び組織サンプルの組織診知見に基づいて、治療に対する応答を決定する。
【0121】
患者数
6人の評価可能な患者(即ち、スクリーニング中に膀胱のCISについての組織診が陽性であり、全6回イミキモドが投与され、最後のイミキモド投与の5週間〜7週間後に膀胱洗浄と共に膀胱の膀胱鏡検査を受け、読み取り可能な組織診及び細胞診サンプルが得られた患者)を得るために、12人の患者を登録する。
【0122】
診断及び組み入れの主な基準
以下の基準を全て満たす患者を、治験登録について適格であるとみなした:
1. 18歳以上の男性又は女性患者。
2. CISのみであるか、又はCISとTa若しくはT1とを併発していると定義されるが、但し、Ta又はT1病変は完全に切除されている、再発性、原発性、続発性、又は併発性の上皮内癌と病理学的に判明している患者。T1腫瘍病変を有する場合、腫瘍が存在しないことを確認するために、切除した試料中に筋固有層組織が存在していなければならない。
3. −28日目〜−14日目に膀胱のマッピングを行い、少なくとも1つの生検から膀胱のCISが病理学的に確認された患者。
4. −28日目〜−1日目に細胞診のための膀胱洗浄を受けた患者。Ta又はT1病変が切除された患者では、膀胱洗浄は切除後に行わなくてはならない。
5. ECOGのパフォーマンスステータスが0〜2である患者。
6. 0日目の4週間以内前に骨髄、肝臓、及び腎臓の機能が正常であった患者。
【0123】
例えば、筋肉浸潤性疾患(即ち、T2グレード以上の膀胱癌)のエビデンスを示すか、又は少なくとも1時間注入を保持することができないと報告された患者、或いは、イミダゾキノリン化合物、ポロキサマー407、ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン、又は乳酸に対して過敏であると疑われる患者は、試験に組み入れなかった。
【0124】
試験製品、投薬、及び投与方法
室温で安定な無色の無菌液体溶液50mLを含むプラスチック袋にイミキモドを入れ、膀胱に注入する準備を整えた。プラスチック袋に泌尿器用コネクタをつなぎ、アルミニウム箔で四重に包んだ。全ての患者に同体積(50mL)及び同用量(0.4%(w/v)のイミキモド)(50mL中イミキモド200mg)を投与した。また、用量低減が必要な場合、イミキモド0.2%を含む袋も準備した。
【0125】
標準的なカテーテルを介して3分間〜5分間に亘って重力によってイミキモドを膀胱内投与した。重力が、適切な注入に十分ではなかった場合、治験責任医師が3分間〜5分間に亘って袋を優しく押し潰してイミキモドを注入することを許可した。滞留時間は、1時間になるように維持された。6週間に亘って1週間に1回イミキモド0.4%を患者の膀胱内に投与した。
【0126】
安全性
有害事象(AE)、臨床検査試験(血液検査、臨床化学検査、検尿、及び尿培養)、身体検査、及びバイタルサイン測定の証拠資料に基づいて安全性を決定した。
【0127】
有効性
イミキモド投与の5週間〜7週間後に治療により完全奏効(CR)が得られると定義される、患者に対する臨床的便益を決定することによって、有効性を評価した。CRは、尿組織診及び組織サンプルの組織診知見に基づいて決定した。
【0128】
結果
治療を受けたことがない患者及び既にあらゆる治療を受けたことのある患者の両方を含む、CISを有する不均一な患者集団である12人の患者を試験に登録した。登録された12人の患者のうち、8人は治療を完了していたが、4人の患者は治療継続中であった。5人の患者を評価し、更なる7人の患者については追跡評価を行わなかった。その結果は、以下の通りである:
【0129】
患者1
患者1は、2012年11月にCIS/高悪性度乳頭状膀胱癌、2013年3月にCISを呈しており、2012年12月から2013年1月までBCG治療を受けた。イミキモドによる治療の前に、この患者は、組織学的に局所性及び中心性CISを呈していた。試験デザインに従ってイミキモド治療レジメンを行った後、組織診によって腫瘍を検出できなかった。予備的な結果は、追跡評価において、この患者で検出可能な腫瘍が存在しなかったことを示す。
【0130】
患者2
患者2は、2008年から低悪性度乳頭状膀胱癌及び高悪性度ステージ癌、そして、2011年に上皮内癌を呈していた。この患者は、化学療法、BCG、及び9回のTURBTを受けていた。組織学的に局所性CISが検出された。試験デザインに従ってイミキモド治療を行った後も、依然としてCISが検出されたが、悪性細胞の非悪性細胞に対する比は改善されているようであった。この患者は、部分応答者であるとみなしてよい。更なる評価は、依然として継続中である。
【0131】
患者3
患者3は、2013年2月に膀胱癌と診断され、試験登録前には癌治療を全く受けたことがなかった。患者3は、組織学的にTIS、高悪性度及び低悪性度の乳頭状癌、並びにCIS及び低悪性度及び高悪性度の乳頭状癌を呈していた。試験デザインに従ってイミキモド治療を行った後、細胞診によっても組織診によっても、もはや腫瘍は検出されなかった。
【0132】
患者5
患者5は、2011年にCIS、及び2013年にCISを呈していた。以前の抗癌治療は、BCG及びマイトマイシン治療を含んでいた。この患者は、組織学的に、CIS膀胱癌を呈していた。試験デザインに従ってイミキモド治療を行った後、組織診によって検出可能な腫瘍は存在しなかった。
【0133】
要約すると、これらの結果は、上記試験の主に男性のCIS膀胱癌患者が、実施例1(上記参照)に従って本発明の医薬組成物による治療を受けたとき、著しい健康の改善、即ち、腫瘍退縮を呈することを示す:分析した5人の患者のうち、4人は、それ以前の癌治療がうまくいっていなかった(表2を参照、患者1、2、4、5)。この群の4人の患者は、組織診によって評価したとき、CIS膀胱癌の完全寛解を示さなかった(表2を参照、患者1、3、4、5)。表2は、イミキモド試験の結果を要約する。
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】