【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による課題は、エラストマーと熱可塑性物質とを含有する熱可塑性エラストマー組成物の提供によって解決され、ただし、その熱可塑性物質は、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンであり、エラストマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブロモブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴム、および前記エラストマーの2つ以上の混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含み、ただし、このエラストマーは、架橋エラストマーまたは非架橋エラストマーとして存在し得る。
【0006】
本出願によると、熱可塑性エラストマーとは、ポリマーまたはポリマー混合物(ブレンド)からなり、その使用温度においては加硫ゴムの特性に類似する特性を有するものの、温度を上げると熱可塑性プラスチックのように加工および精製できるTPEと理解される。同じことが、本発明による熱可塑性エラストマー組成物にも当てはまる。
【0007】
特に、本発明は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物中のエラストマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、および前記エラストマーの2つ以上の混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含み、前記エラストマーが、架橋エラストマーまたは非架橋エラストマーとして存在し得る一実施形態にも関する。エラストマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、および両エラストマーの混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含み、そのエラストマーが、架橋エラストマーまたは非架橋エラストマーとして存在し得ることが特に好ましい。
【0008】
さらに、本発明による組成物中のエラストマーが、前記エラストマーの1つまたは複数からなることが好ましい。
【0009】
本発明による組成物は、架橋されていても非架橋でもよく、架橋剤を有しても有さなくてもよい。原則的には、本発明による熱可塑性エラストマー組成物が存在し得る様々な状態がある。
【0010】
a)エラストマーが、架橋された状態で存在し、本発明による熱可塑性エラストマー組成物が、さらなる架橋剤を含有しない、
b)エラストマーが、(部分)架橋された状態で存在し、本発明による熱可塑性エラストマー組成物が、さらに架橋剤を含有する、
c)エラストマーが、非架橋状態で存在し、本発明による組成物が架橋剤を含有する、
d)エラストマーが、非架橋状態で存在し、組成物が、好ましくは架橋剤を含有しない。
【0011】
それによると、本発明の一実施形態では、本発明による熱可塑性エラストマー組成物が、さらに架橋剤を有することが好ましい。本発明による熱可塑性エラストマー組成物中の架橋剤としては、使用するエラストマーに応じて、後記の架橋剤を使用できる。
【0012】
別の一実施形態では、本発明による熱可塑性エラストマー組成物中において、エラストマーが架橋エラストマーとして存在することが好ましい。
【0013】
しかしながら、別の一実施形態では、本発明による熱可塑性エラストマー組成物中において、エラストマーが架橋エラストマーとして存在することが好ましい。
【0014】
本発明の別の一実施形態では、本発明による熱可塑性エラストマー組成物中において、有機カルボン酸無水物による非エラストマー性ポリオレフィンの官能基化が、有機ジカルボン酸、好ましくは有機1,2−ジカルボン酸によって行われることが好ましい。特に好ましくは、非エラストマー性ポリオレフィンの官能基化を、置換または非置換コハク酸無水物で行う。
【0015】
有機カルボン酸無水物は、好ましくは、共有結合を介して非エラストマー性ポリオレフィンに結合されており、グラフト化により製造される。そのためには、有機カルボン酸無水物が、適切な非エラストマー性ポリオレフィンに「外部グラフト化」される(グラフティングプロセス)。そのためには、好ましくは、反応性二重結合を有する有機カルボン酸無水物、例えばマレイン酸無水物を使用する。有機カルボン酸無水物で官能基化されたポリオレフィン、ならびにグラフト化による製造に関する詳細は後記する。
【0016】
本発明の別の一実施形態では、本発明による熱可塑性組成物中の非エラストマー性ポリオレフィンが、好ましくはポリプロピレンである。とりわけ好ましくは、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンが、マレイン酸無水物でグラフト化されたポリプロピレンである(g−MAH−PP)。グラフト化の際には、マレイン酸無水物の環中の二重結合が単結合になるため、ポリマーに結合した残基はコハク酸無水物残基である。
【0017】
本発明の別の一実施形態では、本発明による熱可塑性エラストマー組成物が、好ましくはさらに、ポリオレフィンブロックコポリマーベースの熱可塑性エラストマー(TPO)を有する。本発明により使用されるTPOは、好ましくは、少なくとも2つの異なるアルキレン単位を含む、ないしは2つの異なるアルキレン単位からなるブロックコポリマーである。アルキレン単位とは、それらの単位から重合によってポリマーが形成されるポリマー繰り返し単位と理解される。その際、ブロックコポリマーがエチレン単位およびプロピレン単位を有する、ないしはこれらの単位からなることが特に好ましい。本発明による組成物中においてTPOが使用される場合、エラストマーの、TPOに対する重量比が、好ましくは100:5〜100:45の範囲、さらに好ましくは100:10〜100:30の範囲にある。
【0018】
本発明の別の一実施形態では、本発明による熱可塑性エラストマー組成物が、好ましくはさらに、有機カルボン酸無水物で官能基化されている、ポリオレフィンブロックコポリマーベースの熱可塑性エラストマー(TPO)を有する(官能基化TPOとも呼ばれる)。好ましくは、官能基が、置換または非置換のコハク酸無水物である。好ましくは、官能基化TPOが、グラフト化(グラフティングプロセス)によって製造され、グラフト化TPO(略してg−TPO)と呼ばれる。この場合も、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンと同様に、もう1つの分子(または複数分子)がTPO、好ましくは前記のようなTPOに外部グラフト化される。本発明による適切なTPOおよびg−TPOは後記する。
【0019】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物中においては、エラストマーの、熱可塑性物質に対する重量比が、好ましくは100:15〜100:60の範囲、さらに好ましくは100:20〜100:50の範囲にある。
【0020】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物中の架橋剤としては、使用するエラストマーに応じて、後記の架橋剤を使用できる。
【0021】
その上、熱可塑性エラストマー組成物は、さらに可塑剤を含有してもよい。本発明により使用可能である適切な可塑剤は、同じく後記する。その際、可塑剤は、好ましくは100:40〜100:15の範囲、さらに好ましくは100:30〜100:20の範囲にある、エラストマーの、可塑剤に対する重量比で使用する。
【0022】
さらに、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、さらなる添加剤、例えば、安定剤、助剤、染料、増量剤、および/または相容化剤も含有してよい。これらの添加剤も同じく、詳細に後記する。
【0023】
安定剤、助剤、および/または染料は、好ましくはそれぞれ、100:4〜100:0.01の範囲、さらに好ましくは100:0.05〜100:1の範囲にある、エラストマーの、使用される前記の物質に対する重量比で使用する。増量剤は、好ましくは、100:100〜100:1の範囲にある、エラストマーの、増量剤に対する重量比で使用する。
【0024】
架橋剤に加えて、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、さらに共架橋剤(Covernetzer)を含有してもよい。本発明により使用可能な共架橋剤も同じく後記する。
【0025】
本発明は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物を製造するための、エラストマーとエラストマー用架橋剤とからなる混合物の使用にも関し、そのエラストマーは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物との関連で前記したエラストマーからなる同じ群から選択される。その際に好ましく言及されたエラストマーが、本発明による使用においても好ましい。エラストマーの、架橋剤に対する重量比も同じく、本発明による熱可塑性エラストマー組成物用に記載した範囲にあることが好ましい。
【0026】
エラストマーとエラストマー用架橋剤とからなる混合物の、本発明による使用は、さらに、共架橋剤、可塑剤、または別の添加剤を含有してもよい。同じく、本発明による熱可塑性エラストマー組成物との関連で前記した共架橋剤、可塑剤、または別の添加剤が、ここでも好ましく使用される。本発明による熱可塑性エラストマー組成物との関連で記載された重量比が、ここでも好ましい。
【0027】
さらに、本発明は、本発明によるエラストマー組成物を製造するための、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンの使用に関する。さらに、本発明による使用において、非エラストマー性ポリオレフィンに、ポリオレフィンブロックポリマーベースの熱可塑性エラストマー(TPO)が混合されていてもよい。さらに、本発明による使用において、非エラストマー性ポリオレフィンに、g−TPOが混合されていてもよい。TPO、g−TPO、ならびに有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンは、後記する。
【0028】
本発明は、ポリアミドを含む製品を製造するため、ないしは本発明による熱可塑性エラストマー組成物をポリアミド上で付着させるための、本発明による熱可塑性エラストマー組成物の使用にも関する。言い換えると、本発明は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物とポリアミドとからなる、例えば、複合材料の形状の製品を製造するための方法にも関し、ただし、熱可塑性エラストマー組成物がポリアミドと結合される。その際、本発明による使用ないしは本発明による方法において、製品を製造するための加工法として、射出成形法、多成分射出成形法、インサート成形法(Spritzguss−Einlegeverfahren)、押出成形法、または圧縮成形法を使用するが、射出成形法、多成分射出成形法、インサート成形法、および押出成形法が好ましく、多成分射出成形法がとりわけ好ましい。
【0029】
したがって、本発明は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物とポリアミドとからなる、例えば、複合材料の形状の製品にも関する。
【0030】
ポリアミドとは、本発明によると、ポリマー主鎖に沿って規則的に反復するアミド結合を有する直鎖ポリマーと理解される。その例は、ポリカプロラクタム(PA6)、ポリ−(N,N’−ヘキサメチレンアジピンジアミド)(PA6.6)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(PA6.10)、ポリウンデカノラクタム(PA11)およびポリラウリルラクタム(PA12)である。
【0031】
本発明は、自動車内部ならびにボンネットの下(「under the hood」)、つまり車両のエンジン室内の部品または成形体を製造するため、産業機器、産業工具、浴室装備品、家庭用機器、娯楽用電子機器、スポーツ用品、医療用の消耗品および機器、衛生用品および化粧品用の容器、ならびに一般パッキン材料を製造するための、本発明による熱可塑性エラストマー組成物の使用にも関する。
【0032】
さらに、本発明は、エラストマーを熱可塑性物質と混合する、本発明による熱可塑性エラストマー組成物の製造方法にも関し、ただし、そのエラストマーは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物との関連で前記したエラストマーの群から選択され、熱可塑性物質は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物との関連でさらに記載されたような熱可塑性物質である。その際に記載された好ましいエラストマーおよび熱可塑性物質が、ここでも好ましい。本発明による熱可塑性エラストマー組成物中において記載された重量比が、本発明による方法において各成分が使用される比率でもある。好ましい方法詳細は後記する。
【0033】
これまでに挙げた、本発明による熱可塑性エラストマー組成物中ないしは本発明による使用および方法において使用される成分を、さらに詳細に記載する。
【0034】
A:エラストマー
B:有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィン
C:ポリオレフィンブロックコポリマーベースの熱可塑性エラストマー(TPO)および/または官能基化g−TPO
D:架橋剤
E:共架橋剤
F:可塑剤
G:安定剤、助剤、染料
H:増量剤
【0035】
成分A:エラストマー
【0036】
「エラストマー」という用語は、個々のエラストマーのみならず、2つ以上のエラストマーからなる混合物とも理解される。本発明によるすべての実施形態においては、エラストマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブロモブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴム、または前記エラストマーの混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含有する(ないしはそのエラストマーからなる)。エラストマーとしては、前記エラストマーの個々のエラストマー、さらには前記エラストマーの2つ以上の組み合わせを使用してもよい。エラストマーは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物中において、非架橋形状で存在してもよいが、架橋して存在することも可能である。個々のエラストマー種ならびに市販製品に関する記載は、例えば、「K.Oberbach、プラスチックポケットブック、Carl Hanser出版(ミュンヘン、ウィーン)第26版(1995年)」の第7.1章にある。
【0037】
エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVM)は、エチレンと酢酸ビニルとからなるコポリマー(Copolymerisat)である。EVMは、例えば、Lanxess Deutschland GmbHの商品名Levapren(登録商標)またはLevamelt(登録商標)のもと市販で入手できる。本発明により好ましく使用されるエチレン酢酸ビニルコポリマーは、Levamelt(登録商標)400(40±1.5重量%の酢酸ビニル)、Levamelt(登録商標)450(45±1.5重量%の酢酸ビニル)、Levamelt(登録商標)452(45±1.5重量%の酢酸ビニル)、Levamelt(登録商標)456(45±1.5重量%の酢酸ビニル)、Levamelt(登録商標)500(50±1.5重量%の酢酸ビニル)、Levamelt(登録商標)600(60±1.5重量%の酢酸ビニル)、Levamelt(登録商標)700(70±1.5重量%の酢酸ビニル)、Levamelt(登録商標)800(80±2重量%の酢酸ビニル)、およびLevamelt(登録商標)900(90±2重量%の酢酸ビニル)、ないしは対応するLevapren(登録商標)タイプであるが、Levamelt(登録商標)600が特に好ましい。本発明による組成物中においては、成分として1つのエチレン酢酸ビニルコポリマーを使用してもよいが、2つ以上のエチレン酢酸ビニルコポリマーからなる混合物を使用することも同様に可能である。EVMでの架橋は、ペルオキシド的に行われる。
【0038】
ニトリルブタジエンゴム(NBR)は、アクリルニトリル(ACN)と1,3−ブタジエンとからなるコポリマーである。NBRには二重結合が含有されているため、ペルオキシド的にもフェノール樹脂またはイオウを介しても架橋可能である。本発明による熱可塑性エラストマー組成物中においては、好ましくは、ペルオキシド架橋を使用する。本発明により使用可能なNBRの例は、商品名Perbunan(登録商標)、Krynac(登録商標)、Buna(登録商標)N、またはEuroprene(登録商標)Nのもと公知であり、市販で入手できる。
【0039】
水素化ニトリルブタジエンゴム(H−NBR)は、NBRに含有されている二重結合の水素化により得られる。H−NBRは、ペルオキシド的に架橋できる。本発明により使用可能なH−NBRの例は、商品名Therban(登録商標)(Lanxess)およびTherban(登録商標)AT(Lanxess)のもと公知であり、市販で入手できる。
【0040】
ブチルゴム(IIR)は、イソブテンイソプレンゴムとも呼ばれる。エラストマー群のうち、IIRは合成ゴムに数えられる。IIRは、イソブテンとイソプレンとからなるコポリマーであって、好ましくは、総分子量に対して、イソブテンが95〜99モル%の量で、イソプレンが1〜5モル%の量で存在する。IRは、本発明によると、好ましくはペルオキシドを利用して架橋される。
【0041】
天然ゴム(NR)は、ほぼ1,4−cis−結合のみを有するイソプレンホモポリマーである。典型的には平均分子量M
Wがおよそ2・10
6g/モルである。NRは、本発明によると、好ましくはペルオキシドを利用して架橋される。
【0042】
イソプレンゴム(IR)は、天然ゴムの合成的に生産された変種である。イソプレンゴムは、第一に、そのいくぶん低い化学純度の点で天然ゴムとは異なる。これは、重合に使用される触媒が、天然に存在する酵素よりも低い効率を有するためである。天然ゴムの純度は、好ましくは99.9%超であるのに対して、合成的に製造されたIRの場合は、使用される触媒に応じて、およそ92%〜97%しか達成されない。天然ゴムと同様に、IRもペルオキシド的に、フェノールにより、またはイオウを用いて架橋可能である。本発明によると、好ましくは、ペルオキシドを利用して架橋を行う。
【0043】
アクリルゴム(ACM)は、アクリル酸アルキルエステルともう1つのビニル系ポリマーとからなるコポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルと2−クロロエチルビニルエーテルとからなるコポリマー、またはアクリル酸エステルとアクリルニトリルとからなるコポリマーである。そのようなポリマーの架橋方法は、使用されるコモノマーに依存する。
【0044】
エチレンアクリルゴム(AEM)は、エチレンとアクリル酸メチルとからなるコポリマーである。このゴムは、例えば、Vamac(登録商標)としてDu Pont社から市販で入手できる。
【0045】
シリコーンゴムは、ポリ(オルガノ)シロキサンを含有し架橋反応に利用可能な基を有する、ゴム弾性状態に変換可能な材料(Masse)から製造される。言い換えると、シリコーンゴムは、架橋剤で架橋されているポリ(オルガノ)シロキサンである。架橋は、(有機)ペルオキシドを介して行われ得るが、Si−H基が、触媒により、ケイ素に結合したビニル基に付加されることによっても実現可能であり、ただし、両方ともの基が、ポリマー鎖中ないしはポリマー鎖末端に取り込まれる。
【0046】
スチレンブタジエンゴム(SBR)は、スチレンと1,3−ブタジエンとからなるコポリマーであり、本発明によると、スチレン含有量が25%(ブタジエン含有量に対して)を下回るべきであり、なぜなら、スチレン含有量がそれより高くなるとゴムが熱可塑性特性を帯びるからである。SBRは、ペルオキシド的にもフェノール樹脂によっても、ならびにイオウによっても架橋可能である。本発明による組成物中においては、この場合好ましくはペルオキシド架橋が使用される。本発明により使用可能なSBRの例は、商品名Kralex(登録商標)およびEuroprene(登録商標)SBRのもと公知であり、市販で入手できる。
【0047】
クロロプレンゴム(CR)は、ポリクロロプレンまたはクロロブタジエンゴムとも呼ばれ、商標名Neoprenでも公知である合成ゴムである。Neoprenは、DuPont社の商標であり、Lanxess社の商品名は、例えば、Baypren(登録商標)である。その製造は、2−クロロ−1,3−ブタジエン(クロロプレン)の重合によって行う。
【0048】
ブロモブチルゴム(臭素化IRR)は、臭素でハロゲン化されたブチルゴムである。そのためには、好ましくはゴムを不活性溶媒中に溶解して、激しく攪拌しながら液体臭素を添加する。結果として生じる臭化水素は、苛性ソーダ溶液で中和する。
【0049】
エピクロロヒドリンゴム(ECO)は、場合によってはさらなるコモノマーの存在下に、エピクロロヒドリンの開環重合によって製造する。エピクロロヒドリンゴムは、例えば、Zeon社の商品名HydrinECO(登録商標)のもと市販で入手できる。
【0050】
エポキシ化天然ゴムとは、エポキシ化された、前記で定義したような天然ゴムと理解される。
【0051】
成分B:有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィン
【0052】
本発明によると、非エラストマー性ポリオレフィンは、前記のように、有機酸無水物で官能基化されている。好ましくは、グラフト化(グラフティングプロセス)を利用して官能基化が行われ、ただし、有機酸無水物、好ましくはマレイン酸無水物が、適切な非エラストマー性ポリオレフィンの側鎖に外部グラフト化される。
【0053】
グラフト化のベースとしては、以下で記載する市販の非エラストマー性ポリオレフィンを使用する。
【0054】
非エラストマー性ポリオレフィンは、例えば、HDPE(high density polyethylene(高密度ポリエチレン))、MDPE(medium density polyethylene(中密度ポリエチレン))、LDPE(low density polyethylene(低密度ポリエチレン))、LLDPE(linear low density polyethylene(直鎖状低密度ポリエチレン))、VLDPE(very low density polyethylene(超低密度ポリエチレン))といったポリエチレンからなるコポリマー、プロピレンからなるホモポリマー(hPP)、プロピレンとエチレンとからなる統計コポリマー(rPP)、およびそれらの組み合わせである。
【0055】
ジカルボン酸無水物による官能基化のベースとして、本発明にとって適切な非エラストマー性ポリオレフィンは、特に、射出成形法での加工に適したものである。適切なポリオレフィンは、優れたレオロジー特性および剛性を有するようなポリオレフィンである。
【0056】
プロピレンホモポリマー(hPP)は、市販で入手可能であり、それらの入手可能なhPPのそれぞれが、本発明により使用できる。本発明によると、hPPの使用が好ましい。
【0057】
hPPは、ISO 1133(230℃において2.16kgを使用)に準拠して、0.5g/10分〜200g/10分の範囲、好ましくは4g/10分〜50g/10分の範囲にあるメルトフローレート、ISO 527−1、−2に準拠して、15MPa〜50MPaの範囲、好ましくは20MPa〜40MPaの範囲にある引張強度、ISO 527−1、−2に準拠して、1%〜500%の範囲、好ましくは10%〜300%の範囲にある破断伸びを有する。
【0058】
市販で入手可能なhPPは、例えば、Lyondell−Basellの製品であり、商品名Moplen(登録商標)、例えば、Moplen(登録商標)HP500N、Moplen(登録商標)HP501Lのもと入手可能である。
【0059】
統計ポリプロピレンコポリマー(rPP)も同じく市販で入手可能であり、それらのrPPのそれぞれが、本発明により使用できる。コモノマーとしては、エチレンおよび/またはブテンが好ましい。
【0060】
rPPは、ISO 1133(230℃において2.16kgを使用)に準拠して、0.5g/10分〜200g/10分の範囲、好ましくは4g/10分〜50g/10分の範囲にあるメルトフローレート、ISO 527−1、−2に準拠して、15MPa〜50MPaの範囲、好ましくは20MPa〜40MPaの範囲にある引張強度、ISO 527−1、−2に準拠して、1%〜500%の範囲、好ましくは10%〜300%の範囲にある破断伸びを有する。
【0061】
本発明によると、様々な密度のポリエチレン、例えば、HDPE、MDPE、LDPE、LLDPE、VLDPEを使用できる。これらは市販で十分に入手可能である。
【0062】
そのメルトフローが0.5g/分〜10g/10分の範囲にあるあらゆるポリエチレンを使用できる。HDPEは、ISO 1133(190℃において2.16kgを使用)に準拠して、0.02g/10分〜55g/10分の範囲、好ましくは0.9g/10分〜10g/10分の範囲にあるメルトフローレート、ISO 527−1、−2(50mm/分)に準拠して、12MPa〜32MPaの範囲、好ましくは20MPa〜30MPaの範囲にある引張強度、ISO 527−1、−2に準拠して、50%〜1200%の範囲、好ましくは600%〜700%の範囲にある破断伸びを有し得る。
【0063】
LDPEは、ISO 1133(190℃において2.16kgを使用)に準拠して、0.5g/10分〜200g/10分の範囲、好ましくは0.7g/10分〜7g/10分の範囲にあるメルトフローレート、ISO 527−1、−2に準拠して、6MPa〜33MPaの範囲、好ましくは12MPa〜24MPaの範囲にある引張強度、ISO 527−1、−2に準拠して、100%〜800%の範囲、好ましくは500%〜750%の範囲にある破断伸びを有し得る。
【0064】
しかしながら、本発明によると、非エラストマー性ポリオレフィンが、その繰り返し単位中にプロピレンを含むものであることが特に好ましい。さらに好ましくは、非エラストマー性ポリオレフィンがhPPである。
【0065】
前記ポリオレフィンから、有機酸無水物で官能基化されたポリオレフィンを得るためには、前記ポリオレフィンに、その製造後に、グラフト化により、有機酸無水物を付加する。
【0066】
グラフト化とは、一般的に、一次ポリマーのすでに形成されている分子鎖(ここでは非エラストマー性ポリオレフィン)に後から、別の分子ブロックからなる側鎖(ここでは有機カルボン酸無水物)が「外部グラフト化」されることと理解される。このように官能基化されたポリマーは、「グラフトポリマー」とも言われる。グラフトポリマーは、様々なやり方で製造可能であり、例えば、一次ポリマーを外部グラフト化される分子ブロックと、望みの比率で混合させてから、ペルオキシドの分解か、または照射によりラジカル形成させることで行うが、ペルオキシドが好ましい。その際、一次ポリマー上でラジカル部位が形成され、そこに、外部グラフト化される分子ブロックが付加する。そのためには、有機カルボン酸無水物が、一次ポリマーのラジカル部位がそこを攻撃できる反応性部位を有する必要がある。グラフト化は、一次ポリマーと外部グラフト化される分子ブロックとからなる混合物を力学的・熱的に強力に処理することでもすでに、部分的に起こり得る。グラフト反応は、好ましくは、圧延機または押出機中で行う(Saechtling,H.J.:プラスチックポケットブック、第26版、Oberbach,K.(編集者)、Carl Hanser出版、ミュンヘン(1995年);またはRompps化学事典、Otto−Albrecht Neumuller、第8版、Franckh、シュトゥットガルト(1985年)も参照)。
【0067】
有機カルボン酸無水物としては、好ましくは、反応性部位として二重結合を有するものを使用する。特に好ましくは、マレイン酸無水物をグラフト化に使用し、すると、このマレイン酸無水物は、グラフト化後に、コハク酸無水物残基として非エラストマー性ポリオレフィンに結合して存在する。
【0068】
マレイン酸無水物(実際はコハク酸無水物残基)の量は、グラフト化された非エラストマー性ポリオレフィン中において、有機カルボン酸無水物によって官能基化される非エラストマー性ポリオレフィンの総重量に対して0.1重量%〜5重量%の範囲、さらに好ましくは0.5重量%〜2重量%の範囲にある。
【0069】
本発明によると、非エラストマー性ポリオレフィンとして好ましくは、ポリプロピレン、特に好ましくはhPPを使用する。マレイン酸無水物でグラフト化されたポリプロピレンを、専門家の間ではMAH−g−PPとも呼ぶ。そのようなMAH−g−PPは、商品名「Scona(登録商標)TPPP」のもと公知であり、例えば、「Scona(登録商標)TPPP 2112 GA」または「Scona(登録商標)TPPP 8112 GA」タイプとして入手可能である。
【0070】
成分C:ポリオレフィンブロックコポリマーベースの熱可塑性エラストマー(TPO)および/または官能基化g−TPO
【0071】
本発明による、ポリオレフィンブロックコポリマーベースのTPOとしては、「G.Holden、H.R.Kricheldorf、R.P.Quirk(編集者)、熱可塑性エラストマー、Carl Hanser出版、第3版、ミュンヘン(2004年)」の第5章中のTPOが使用可能であり、ただし、その中で記載されるTPOのうち、ブロックコポリマー(第5.1章および第5.3章)のみが、本発明にとって重要である。例えばEPDMおよびPPのような、ブレンドベースのTPOは、本発明によるTPOには入らない。したがって、本発明による、ポリオレフィンブロックコポリマーベースのTPOは、そのブロックが、繰り返し単位としてのオレフィンモノマーから構成されているブロックコポリマーである。その際、本発明による、ポリオレフィンブロックコポリマーベースのTPOは、少なくとも2つの異なるポリマーブロックを有する。これらのブロックは、1つのオレフィン種から構成されていても2つ以上のオレフィン種から構成されていてもよい。本発明による、ポリオレフィンブロックコポリマーベースのTPOを構成するために使用されるオレフィンは、脂肪族オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、またはブチレンであり、ただし、本発明によると、エチレンおよびプロピレンが好ましい。特に好ましくは、本発明による、ポリオレフィンブロックコポリマーベースのTPOが、いわゆる繰り返し単位として脂肪族オレフィンのみから構成されている。本発明によると、「ポリオレフィンブロックコポリマーベースのTPO」の定義から、芳香族残基を有するようなものは除外される(そのようなものは、当業者には、TPS(スチレンベースの熱可塑性エラストマー)として公知である)。ここで記載される使用ないしは本発明による組成物用に特に好ましいのは、そのブロックが、ポリプロピレン、ポリエチレン、または統計エチレン/プロピレンコポリマーから構成されている、ないしはそれらからなるTPOである。そのようなTPOは、例えば、Lyondell−Basell社の商品名Hifax Ca 10 Aのもと市販で入手可能である。さらに、US8,481,637 B2中で詳細に記載されるポリオレフィンブロックコポリマー(そこでは、「olefin block copolymers、OBC」と呼ばれる)が特に好ましく、ここではそれらのポリマーの全範囲での参照を指摘する。それらのポリオレフィンブロックコポリマーは、硬質(非常に剛性な)セグメントと軟質(高エラストマー性)セグメントとの交互ブロックを有するポリマーである。そのような製品は、Dow Chemicalsから商品名INFUSE(商標)で販売されている。特に、TPE用の使用が推奨されるタイプが好ましい(INFUSE(商標)9010、9007、9107、9807)。
【0072】
本発明による、ポリオレフィンブロックコポリマーベースのTPOのさらなる例は、いわゆる水素化ジエンブロックコポリマーである。そのようなポリマーは、好ましくは、水素化ポリブタジエンまたは水素化ポリイソプレンからなるポリマーブロックを有する。
【0073】
ブロックコポリマーベースの官能基化された熱可塑性エラストマー(g−TPO)は、好ましくは、有機酸無水物で官能基化されているものである。g−TPOは、好ましくは、前記のようなTPOに、グラフト化により、有機酸無水物が付加されることにより製造される。そのためには、成分B用と同じ無水物を使用してもよい。グラフト化は、成分Bの場合と同様に行い、そこで記載された好ましい無水物および使用される量が、本発明によると、g−TPOにも当てはまる。そのようなg−TPOは、例えば、BYK社の商品名BYK LP−T 23369のもと市販で入手可能である。
【0074】
成分D:架橋剤
【0075】
使用されるエラストマーに応じて、架橋を達成するためにはどの架橋剤を選ぶことができるか当業者には公知である。本発明によると、前記されたエラストマーは、ペルオキシド、イオウ、または金属イオンのいずれかの添加により架橋可能である。
【0076】
ラジカル架橋開始剤(架橋剤)として適切なペルオキシドは、当業者には公知であり、その例は、有機ペルオキシド、例えば、アルキルペルオキシド、アリールペルオキシド、アルキル過酸エステル、アリール過酸エステル、ジアシルペルオキシド、多価ペルオキシド、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3(例えば、Trigonox(登録商標)145−E85またはTrigonox(登録商標)145−45 B)、ジ−tert−ブチルペルオキシド(例えば、Trigonox(登録商標)B)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン(例えば、Trigonox(登録商標)101)、tert−ブチル−クミル−ペルオキシド(例えば、Trigonox(登録商標)T)、ジ−tert−ブチル−ペルオキシイソプロピル(ベンゼン)(例えば、Perkadox(登録商標)14−40)、ジクミル−ペルオキシド(例えば、Perkadox(登録商標)BC40)、ベンゾイルペルオキシド、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(例えば、Volcup(登録商標)40 AE)、3,2,5−トリメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)へキサンおよび(2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルへキサン、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン(例えば、Trigonox(登録商標)311)である。
【0077】
好ましくは、その架橋温度が成分Aの融点ないしは軟化温度を上回るペルオキシドを使用する。成分Bの融点ないしは軟化温度が高いため、本発明によると、熱可塑性エラストマー組成物を製造するための、(エラストマーの)エラストマー相の架橋は、好ましくは、適切に高温の溶融体中で行う。そのため、好ましい一実施形態では、高い架橋温度を有するペルオキシドの使用が必要になる。低い(通常の)架橋温度を有するペルオキシドは、ポリマー溶融体との最初の接触時にすでに分解し、均質には混入されず、エラストマー相を不十分か、または不均質に架橋する。したがって、本発明によると、特に好ましくは≧175℃、特に好ましくは≧180℃、とりわけ好ましくは≧185℃、特に好ましくは≧190℃、さらに好ましくは≧200℃の架橋温度を有するペルオキシドを使用する。
【0078】
架橋剤としてペルオキシドを使用する際には、さらに、本発明によると、(なおも架橋可能な)熱可塑性エラストマー組成物が、0.1〜5、好ましくは0.5〜5、とりわけ好ましくは0.6〜1.8の範囲にある、ペルオキシドの、エラストマーに対する重量比を有することが好ましい。
【0079】
イオウを利用した架橋は、ゴムを架橋する最も古い方法の1つであり、この分野の当業者には公知である。
【0080】
成分E:共架橋剤
【0081】
好ましい一実施形態では、熱可塑性エラストマー組成物が、さらに少なくとも1つの共架橋剤を成分Eとして含有する。共架橋剤は、100:10〜100:2の範囲、さらに好ましくは100:8〜100:3の範囲にある、エラストマーの、共架橋剤に対する重量比で使用される。
【0082】
架橋剤としてのペルオキシドに対して適切な共架橋剤は、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)(例えば、DuPontのDIAK(商標)−7)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM)(例えば、RheinchemieのRhenogran(登録商標)TRIM S)、N,N’−m−フェニレンジマレイミド(例えば、DuPont DowのHVA(商標)−2(登録商標))、トリアリルシアヌレート(TAC)、液状ポリブタジエン(例えば、Ricon ResinsのRicon(登録商標)D153)、p−キノジクソン(Chinodixon)、p,p’−ジベンゾイルキノジオキシン、N−メチル−N,N−ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンマレイミド、N−メチル−N,N’−m−フェニレンジマレイミド、ジビニルベンゼン、多官能性メタクリレートモノマー、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびアリルメタクリレート、ならびに多官能性ビニルモノマー、例えば、ブチル酸ビニルおよびステアリン酸ビニルからなる群からである。好ましく使用される共架橋剤は、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルシアヌレート(TAC)および液状ポリブタジエンからなる群から選択される。特に好ましくは、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM)を共架橋剤として使用する。本発明による架橋性組成物中において、1つの共架橋剤を、または2つ以上の共架橋剤を合わせて使用することが可能である。
【0083】
成分F:可塑剤
【0084】
適切な可塑剤は、当業者には基本的に公知である。極性エラストマー(EVM、NBR、H−NBR、AEM、ACM等々)用に適切な可塑剤は、例えば、エステル可塑剤、例えば、フタル酸エステル、例を挙げると、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジノニル、またはフタル酸ジイソデシル、脂肪族エステル、例えば、ジオクチル酸エステルまたはジオクチルセバシン酸エステル、リン酸エステル、例えば、トリクレジルリン酸エステル、ジフェニルクレジル酸エステルまたはリン酸トリオクチル、ポリエステル、例えば、ポリフタル酸エステル、ポリアデピン酸エステル(Polyadepinsaureester)またはポリエステルエーテルである。
【0085】
非極性エラストマー(例えば、スチレンブタジエンゴム)用に適切な可塑剤は、工業用または医療用の鉱油またはホワイトオイル、天然オイル、例えば、大豆油または菜種油、さらにアルキルスルホニルエステル、特にアルキルスルホニルフェニルエステルであり、ただし、アルキル置換基が、直鎖状および/または分岐状の、C原子数が5個を超えるアルキル鎖を含有する。さらには、メリト酸のジアルキルエステルまたはトリアルキルエステルであり、ただし、アルキル置換基が、好ましくは直鎖状および/または分岐状の、C原子数が4個を超えるアルキル鎖を含有する。さらに、ジカルボン酸、トリカルボン酸、および炭素数の多いポリカルボン酸のアルキルエステルも適切な可塑剤として使用され、ただし、アルキル置換基が、好ましくは直鎖状および/または分岐状のアルキル鎖である。例として以下を挙げる:アジピン酸−ジ−2−エチルヘキシルエステルおよびO−アセチルクエン酸トリブチル。さらに、モノアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールのカルボン酸エステルも可塑剤として使用可能であり、例えば、アジピン酸エチレングリコールである。
【0086】
適切な可塑剤としては、記載の化学物質クラスの混合物も使用できる。
【0087】
成分G:安定剤、助剤、および染料(添加剤)
【0088】
適切な添加剤は、例えば、加工助剤、金属石鹸、脂肪酸、および脂肪酸誘導体、ファクチス([人造語]:例えば、イオウまた塩化イオウを乾性油に作用させることで獲得できるゴム類似物質でありゴムを薄めるために使用)、老朽化防止剤、紫外線防御剤、またはオゾン劣化防止ワックスのようなオゾン劣化防止剤、酸化防止剤、例えば、ポリカルボジイミド(例えば、Rhenogran(登録商標)、PCD−50)、置換フェノール、置換ビスフェノール、ジヒドロキノリン、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、パラフェニレンジアミン、ベンゾイミダゾール、パラフィンワックス、微結晶ワックス、顔料、染料、例えば、二酸化チタン、リトポン、酸化亜鉛、酸化鉄、ウルトラマリンブルー、酸化クロム、亜硫酸アンチモン、安定剤、例えば、熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、例えば、p−ジクミルジフェニルアミン(例えば、Naugard(登録商標)445)、スチレン化ジフェニルアミン(例えば、Vulcanox(登録商標)DDA)、メチルメルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩(例えば、Vulcanox(登録商標)ZMB2)、重合された1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン(例えば、Vulcanox(登録商標)HS)、チオジエチレン−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシナメート、チオジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](例えば、Irganox(登録商標)1035)、滑剤、離型剤、難燃剤、接着仲介剤、マーキング剤、鉱物、ならびに結晶化促進剤、および結晶化遅延剤である。
【0089】
プロセス添加剤(Prozesshilfsstoff)および安定剤としては、以下を使用できる:帯電防止剤、消泡剤、滑剤、分散剤、離型剤、ブロッキング防止剤、ラジカルスカベンジャー、酸化防止剤、殺生物剤、殺真菌剤、UV安定剤、その他の遮光剤、金属不活性化剤、さらには、添加剤、例えば、発泡助剤、発泡剤、難燃剤、煙抑制剤、耐衝撃性改質剤、接着剤、防曇剤、染料、着色顔料、着色マスターバッチ、粘性調整剤、および老朽化防止剤。
【0090】
特に好ましくは、助剤として、安定剤および老朽化防止剤を使用する。
【0091】
成分H:増量剤
【0092】
適切な増量剤は、例えば、カーボンブラック、チョーク(炭酸カルシウム)、カオリン、珪土、タルカムパウダー(ケイ酸マグネシウム)、アルミナ水和物、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸亜鉛、か焼カオリン(例えば、Polestar(登録商標)200 P)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、シリル化カオリン、シリル化ケイ酸塩、被覆チョーク、処理カオリン、焼成シリカ、疎水性焼成シリカ(例えば、Aerosil(登録商標)972)、合成非晶質沈降シリカ(シリカ)、工業用カーボンブラック、グラファイト、ナノスケール増量剤、例えば、炭素ナノ繊維、小平板状ナノ粒子、またはナノスケールの二酸化ケイ素水和物および鉱物である。
【0093】
本発明による組成物の製造、および熱可塑性エラストマー組成物への架橋または混合:
【0094】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、組成物中にそれらの成分が存在する限り、成分A、B、C、D、E、F、GおよびHを混合することによって製造できる。その際、混合は、ゴム技術およびプラスチック技術において公知の混合システム、例えば、混練機、密閉式混合機、例えば、互いに係合するか、または接する回転子形状を有する密閉式混合機を使用しながら、ならびに混練押出機のような連続式混練設備、例えば、2〜4本以上のシャフトスクリューを有する混練押出機(例えば、二軸スクリュー押出機)中でも行うことができる。
【0095】
本発明による製造方法を実施する際には、成分BおよびCが、本発明により使用される限り、塑性状態に変換され得るよう混合温度が十分に高いものの、その際に損傷を受けないように注意することが重要である。このことは、本発明によりそれらが使用される限り、成分BおよびCの最高の融点または軟化温度を上回る温度を選択すると確保される。
【0096】
特に好ましくは、成分の混合を、それらの成分が組成物中に存在する限り、150℃〜350℃、好ましくは150℃〜280℃、特に好ましくは170℃〜240℃の範囲の温度で行う。
【0097】
基本的には、個々の成分を混合するための、様々な変形形態が可能である。
【0098】
変形形態1:本発明による組成物中にそれらの成分が含まれている限り、A、B、C、D、E、F、GおよびHを一緒に入れて、成分BおよびCの最高の融点または軟化温度を上回る温度において完全混和する。
【0099】
変形形態2:本発明による組成物中にそれらの成分が含まれている限り、A、B、C、F、GおよびHを一緒に入れて、成分BおよびCの最高の融点または軟化温度を上回る温度において完全混和する。続いて、成分DおよびEを(それらが本発明による配合物中に存在する限り)添加し、達成した温度を維持しながらさらに混合する。
【0100】
変形形態3:本発明による組成物中にそれらの成分が含まれている限り、A、D、E、F、GおよびHを一緒に入れて、Dの反応温度を下回る温度まで完全に混合する。次いで、成分BおよびCを添加し、BおよびCの軟化温度まで、絶えず混合しながら加熱する。BおよびCの添加は、BおよびCの軟化温度を上回って行っても下回って行ってもよい。
【0101】
変形形態4:本発明による組成物中にそれらの成分が含まれている限り、B、CおよびHを一緒に入れて、成分BおよびCの最高の融点または軟化温度を上回る温度において完全混和する。成分A、D、E、FおよびGを(それらが本発明による配合物中に含まれている限り)添加し、成分BおよびCの最高の融点または軟化温度を上回ってさらに完全混和する。
【0102】
密閉式混合機で製造するためには、変形形態1が特に好ましい。変形形態3は、連続式混練設備での製造に特に好ましい。
【0103】
前記の方法変種、特に、方法変種1および3により、製造終了後には、成分Aならびに成分BおよびCの、できるだけ微細かつ一様な分散が達成される。
【0104】
その上、成分EおよびFの添加時間、温度、形状および量は、エラストマー相中での成分Dおよび場合によってはEの良好な分散が確保されており、エラストマー相および熱可塑性物質相が前記の状態で存在してから初めてエラストマー相の架橋が起こるため、転相が起こるか、またはエラストマー相と熱可塑性相との共連続相構造が起こるように選択されているべきである。
【0105】
本発明による方法では、記載の変形形態3によって、エラストマーを熱可塑性物質(熱可塑性物質とは、本明細書中では常に、有機酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンを意味する)と共に押出機、密閉式混合機、または混練機、好ましくは二軸スクリュー押出機中で混合することが好ましい。
【0106】
本発明による、変形形態3の方法では、さらに、記載の変形形態3によって、エラストマーをTPOおよび熱可塑性物質と共に押出機、密閉式混合機、または混練機、好ましくは二軸スクリュー押出機中で混合することが好ましい。
【0107】
本発明による、変形形態3の方法では、さらに、記載の変形形態3によって、エラストマーをg−TPOおよび熱可塑性物質と共に押出機、密閉式混合機、または混練機、好ましくは二軸スクリュー押出機中で混合することが好ましい。
【0108】
本発明による、変形形態3の方法では、好ましくは、第1のステップでエラストマーをまず前処理し、第2のステップで熱可塑性物質を添加する。
【0109】
第1のステップでは、エラストマーを、押出機、密閉式混合機、または混練機、好ましくは二軸スクリュー押出機中で前処理することが好ましい。「前処理」とは、好ましくは、エラストマーを、好ましくは50℃〜120℃の範囲、さらに好ましくは80℃〜110℃の範囲の温度で軟化させることと理解される。この前処理は、好ましくは、記載の装置の1つの中で行う。この方法は、「素練り」という用語で当業者には公知である。その際、好ましくは、エラストマーに加えて、架橋剤が使用されるため、軟化したエラストマーが架橋剤と共に(完全)混和される。エラストマーおよび架橋剤に加えて、さらに共架橋剤、可塑剤、または前記の添加剤の1つが添加されてもよい。架橋剤、共架橋剤、可塑剤、ないしはさらなる添加剤は、好ましくは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物との関連で前記したようなものである。
【0110】
さらに、好ましくは変形形態3による本発明の方法において、第2のステップに先立ち、つまり、好ましくは第1のステップに並行して、熱可塑性物質を、押出機、密閉式混合機、または混練機、好ましくは二軸スクリュー押出機中で前処理することが好ましい。「前処理」とは、好ましくは、熱可塑性物質を溶融させ、好ましくは160℃〜280℃の範囲、さらに好ましくは200℃〜260℃の範囲の温度で製造することと理解される。さらに、熱可塑性物質を、ポリオレフィンブロックコポリマーベースの熱可塑性エラストマーと共に溶融させ、混合することが好ましい。
【0111】
すでに言及したように、第2のステップの後に、つまり熱可塑性物質をエラストマーに添加した後に、結果として生じる組成物を混合する。言い換えると、第3のステップでは、エラストマーおよび熱可塑性物質ならびに場合によってはさらなる成分からなる混合物を好ましくは押出成形し、さらに好ましくは180℃〜260℃の範囲、さらに好ましくは200℃〜240℃の範囲の温度で押出成形する。第4のステップでは、好ましくは、第3のステップから得られた混合物を捏和する。
【0112】
本発明による組成物は、幅広い硬さ範囲において、バランスのとれた特性、特に非常に優れた耐温性および耐化学性と同時に非常に優れた弾性特性(圧縮永久ひずみ率、破断伸び、および引張強度)を有する熱可塑性エラストマーの供給に抜群に適している。その上、本発明による組成物は、ポリアミドに対する抜群の付着性を有する。
【0113】
本発明によると、エラストマーが、熱可塑性物質との混合中または混合後に架橋される、つまり架橋が動的に起こることが好ましい。好ましくは分散性のエラストマー相(エラストマー)の架橋が、好ましくは、成分A〜H(それらの成分が混合物中に存在する限り)の混合中に起こる。好ましくは、成分BおよびC(本発明によると存在する限り)の融点または軟化温度を上回る温度で、成分Dおよび場合によってはEの存在下に、少なくとも15秒間にわたって混合を続行すると架橋が起こる。
【0114】
転相ないしは共連続相形成が起こった後に、得られた生成物、つまり熱可塑性エラストマー組成物を、好ましくは、成分BおよびC(本発明によると存在する限り)の融点または軟化温度を下回る温度に冷却する。
【0115】
本発明のさらなる対象は、本発明による方法で入手可能な熱可塑性エラストマー組成物である。
【0116】
本出願中で使用される「含む」、「含有する」、および「有する」という用語は、これらの用語が使用されるいずれの場合においても、「からなる」という用語も合わせて含むため、それらの実施形態も本出願で開示されていることになる。
【0117】
さらに、本発明は、以下の態様にも関する。
【0118】
第1の態様は、エラストマーと熱可塑性物質とを含有する熱可塑性エラストマー組成物に関し、ただし、その熱可塑性物質は、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンであり、エラストマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブロモブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴム、および前記エラストマーの2つ以上の混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含み、ただし、このエラストマーは、架橋エラストマーまたは非架橋エラストマーとして存在し得る。
【0119】
第2の態様は、エラストマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、および前記エラストマーの混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含む、態様1に記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0120】
第3の態様は、さらに架橋剤を有する、態様1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0121】
第4の態様は、エラストマーが、前記エラストマーの架橋エラストマーとして存在する、態様1〜3のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0122】
第5の態様は、熱可塑性物質が、その中にエラストマーが埋め込まれて存在するマトリックスである、態様1〜4のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0123】
第6の態様は、有機カルボン酸が、有機ジカルボン酸、好ましくは有機1,2−ジカルボン酸である、態様1〜5のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0124】
第7の態様は、有機カルボン酸無水物が、コハク酸無水物であり、したがってg−MAH−PPとして存在する、態様1〜6のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0125】
第8の態様は、有機カルボン酸無水物が、共有結合を介して、非エラストマー性ポリオレフィンに結合している、態様1〜7のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0126】
第9の態様は、非エラストマー性ポリオレフィンに対する有機酸無水物のモル分率が、非エラストマー性ポリオレフィンの重合したモノマー単位の総重量に対して、0.1〜5重量%の範囲にある、態様1〜8のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0127】
第10の態様は、エラストマーの、熱可塑性物質に対する重量比が、100:15〜100:60の範囲にある、態様1〜9のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0128】
第11の態様は、さらに、ポリオレフィンブロックコポリマーベースの熱可塑性エラストマー(TPO)を含有する、態様1〜10のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0129】
第12の態様は、エラストマーの、TPOに対する重量比が、100:5〜100:45の範囲にある、態様11に記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0130】
第13の態様は、さらに、有機カルボン酸無水物で官能基化された、ポリオレフィンブロックコポリマーベースの熱可塑性エラストマー(g−TPO)を含有する、態様1〜10のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0131】
第14の態様は、有機酸無水物がコハク酸無水物であるため、g−TPOがg−MAH−TPOとして存在する、態様13に記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0132】
第15の態様は、エラストマーの、g−TPOに対する重量比が、100:10〜100:45の範囲にある、態様13または14に記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0133】
第16の態様は、さらに可塑剤を含有する、態様1〜15のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0134】
第17の態様は、付加的にさらなる添加剤を含有する、態様1〜16のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0135】
第18の態様は、態様1〜17のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための、エラストマーとエラストマー用架橋剤とからなる混合物の使用に関し、ただし、そのエラストマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブロモブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴム、および前記エラストマーの2つ以上の混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含む。
【0136】
第19の態様は、混合物が、共架橋剤、可塑剤、または1つもしくは複数のさらなる添加剤を含んでもよい、態様18に記載の使用に関する。
【0137】
第20の態様は、態様1〜17のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンの使用に関する。
【0138】
第21の態様は、非エラストマー性ポリオレフィンに、ポリオレフィンブロックコポリマーベースの熱可塑性エラストマー(TPO)および/または有機カルボン酸無水物で官能基化されたTPOが混合されている、態様20に記載の使用に関する。
【0139】
第22の態様は、ポリアミドを含む複合材料を製造するための、態様1〜17のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物の使用に関する。
【0140】
第23の態様は、態様1〜17のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物とポリアミドとを含む製品に関する。
【0141】
第24の態様は、自動車内部ならびにボンネットの下(「under the hood」)、つまり車両のエンジン室内の部品または成形体を製造するため、産業機器、産業工具、浴室装備品、家庭用機器、娯楽用電子機器、スポーツ用品、医療用の消耗品および機器、衛生用品および化粧品用の容器、ならびに一般パッキン材料を製造するための、態様1〜17のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物の使用に関する。
【0142】
第25の態様は、エラストマーを熱可塑性物質と混合する、態様1〜17のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関し、ただしその熱可塑性物質は、有機カルボン酸無水物で官能基化された非エラストマー性ポリオレフィンであり、エラストマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブロモブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴム、および前記エラストマーの2つ以上の混合物からなるエラストマー群から選択されるエラストマーを含む。
【0143】
第26の態様は、エラストマーを熱可塑性物質と共に押出機、密閉式混合機、または混練機、好ましくは二軸スクリュー押出機中で混合する、態様25に記載の方法に関する。
【0144】
第27の態様は、第1のステップにおいてエラストマーを前処理し、第2のステップにおいて熱可塑性物質を添加する、態様25または26に記載の方法に関する。
【0145】
第28の態様は、第1のステップにおいて、温度作用により軟化させたエラストマーないしは素練りされたエラストマーを、架橋剤と共に完全混合ないしは素練りする、態様27に記載の方法に関する。
【0146】
第29の態様は、第2のステップに先立ち、熱可塑性物質を、押出機、密閉式混合機、または混練機、好ましくは二軸スクリュー押出機中で前処理する、態様26または27に記載の方法に関する。
【0147】
第30の態様は、熱可塑性物質を、ポリオレフィンブロックコポリマーベースの熱可塑性エラストマーと共に軟化させ、混合ないしは素練りする、態様29に記載の方法に関する。
【0148】
第31の態様は、第1のステップが、50℃〜120℃の温度範囲で行われる、態様26〜30のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0149】
第32の態様は、熱可塑性物質を、160℃〜280℃の範囲の温度で素練りする、態様29〜31のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0150】
第33の態様は、第3のステップにおいて、エラストマーおよび熱可塑性物質ならびに場合によってはさらなる成分からなる混合物を、180℃〜260℃の範囲の温度で押出成形する、態様26〜32のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0151】
第34の態様は、第3のステップからの混合物を捏和する、態様33に記載の方法に関する。
【0152】
本発明を、以下の例示的実施形態により詳細に説明する。以下の例示的実施形態は、模範的な性質のみを有し、本発明をその例示的実施形態に限定するものではない。
【0153】
例:
【0154】
測定法および定義:
【0155】
密度の測定は、DIN EN ISO 1183−1に準拠して行う。
【0156】
ショア硬さの測定は、DIN EN ISO 868およびDIN ISO 7619−1に準拠して行う。
【0157】
引張強度とは、材料が、破壊/引き裂かれる前に耐える最大限の機械的引張応力と理解される。引張強度は、引張試験において、(規格化された)サンプルのもともとの断面に対して、最大限達成された引張力から算出され、N/mm
2で記載する。
【0158】
破断伸びは、初期測定長さに対して、破断の永続的な伸びを表す材料特性値である。破断伸びは、材料試験において、多数のパラメータのうちの1つであり、材料の変形性を特徴づける。破断伸びは、引張試験におけるサンプルの初期測定長さL
0に対する、破断後の永続的な長さ変化ΔLである。この長さ変化を%で表す。
【0159】
圧縮永久ひずみ率は、(熱可塑性)エラストマーが、長時間続く一定の圧縮ひずみとそれに続く緊張緩和時にどのように振舞うかを表す尺度である。DIN ISO 815によると、圧縮永久ひずみ率(DVR、英語:compression set)は、一定の変形において測定する。この圧縮永久ひずみ率は、試験材料の変形分率を表す。エラストマーに対する多数の試験法、例えば、引張強度は、材料の品質および性質を特徴づける。それに対して、DVRは、特定の使用目的に対して材料を使用する前に顧慮する必要がある重要な要素である。特に、エラストマー製のパッキンおよびベースプレートを使用する際には、永続的な変形、圧縮永久ひずみ率(DVR)が重要なパラメータである。この量を測定するには、シリンダ状検査試料を、例えば25%だけ圧縮し、特定温度においてある程度の時間そのまま保管する。圧縮ひずみ試験用の温度および媒体(たいていの場合は空気だが、油および別の使用液の場合もある)は、被試験材料、予定されるその使用目的、および試験構成に依存する(例えば、150℃において24時間)。緩和から30分後に、室温において再び高さを測定して、その結果から永続的な変形を算出する。圧縮永久ひずみ率0%は、検査試料が、その本来の厚さに再び完全に達したということを意味し、100%というDVRは、検査試料が、試験中に完全に変形し、まったく戻らないことを表す。計算は、以下の式に基づいて行う:DVR(%)=(L
0−L
2)/(L
0−L
1)x100%、ただし、
DVR=圧縮永久ひずみ率(%)
L
0=試験前の被検体の高さ
L
1=試験中の被検体の高さ(ディスタンスピース)
L
2=試験後の被検体の高さ。
【0160】
さらに、DIN ISO 34−1に準拠して、熱可塑性エラストマーを100%、200%ないしは300%だけ引き伸ばすために必要な力をMPaで測定した。その際、前記の規格で定義されているような検査試料を用いて、必要な力を測定しながら記載の長さだけ引き伸ばす。
【0161】
引裂伝播力(Weiterreisfahigkeit)の測定は、DIN 53504/ISO 37に準拠して行う。
【0162】
熱可塑性エラストマー組成物の磨耗は、直径16mmで高さ6mmのシリンダを、粒度60の紙やすり40mの表面に沿って10Nの接触圧で摩擦することにより測定する。
【0163】
熱可塑性エラストマー組成物の、PA6への付着性は、VDI2019に準拠して測定する。PA6としては、製品名がFrianyl B3V2 NC1102のものを使用する。
【0164】
媒体耐性の測定は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物のS2試験片または小平板を、表5〜8に記載の媒体中で記載の温度において記載の時間にわたり攪拌する。機械的測定には試験片を、密度等々の測定には小平板を使用する。
【0165】
記載の媒体中に保管した後に、体積変化、密度変化、重量変化を測定する。さらに、もう一度、引張強度、破断伸び、ならびに熱可塑性エラストマーを100%、200%ないしは300%だけ引き伸ばすのに必要な力を測定する。
【0166】
乾熱老化は、120℃において行い、達成した結果を表9に示す。
【0167】
例示的実施形態:
【0168】
表1は、例で使用した成分に対して用いた略記を示す。
【0169】
【表1】
【0170】
例1および2:本発明による熱可塑性エラストマー組成物の製造:
【0171】
前記の製造変形形態3に基づき、表2および3から明白な成分を利用して熱可塑性エラストマー組成物を製造する。使用する成分の混合には、二軸スクリュー押出機を使用する。表4には、機械的な測定値を示す。表5〜7は、様々な媒体中での処理後の機械的性質(mechanische Werte)を示す。
【0172】
【表2】
【0173】
【表3】
【0174】
【表4】
【0175】
【表5】
【0176】
【表6】
【0177】
【表7】
【0178】
【表8】
【0179】
例3〜6:SBRおよびNRベースの本発明による熱可塑性エラストマー組成物の製造:
【0180】
前記の製造変形形態3に基づき、表9および10から明白な成分を利用して熱可塑性エラストマー組成物を製造する。使用する成分の混合には、二軸スクリュー押出機を使用する。
【0181】
SBRベースのTPEもNRベースのTPEも均質な混合物をもたらす。その模範例およびポリアミドへの付着性に関して、表11に、機械的な測定値、およびSBRベースのTPEの付着値を示す。
【0182】
【表9】
【0183】
【表10】
【0184】
【表11】