【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、本発明の課題は、少なくとも1つのホスフィン基がヘテロアリール基によって置換された特別なベンゼン系ジホスフィンリガンドを用いたアルコシキカルボニル化方法により解決されることが明らかとなった。本発明の方法は、反応体として用いられるアルコールに基づく高い収率性の点で優れている。
【0008】
従って本発明は、以下の工程段階:
a) 炭素原子数2〜30の第1のアルコールを導入する工程
b) ホスフィンリガンドおよびPd を含有する化合物を添加するか、またはPdおよびホスフィンリガンドを含有する錯体を添加する工程
c) 第2のアルコールを添加する工程
d) COを供給する工程 e) 該反応混合物を熱し、該第1のアルコールがCOおよび該第2のアルコールと反応してエステルを形成する工程
を含み、上記ホスフィンリガンドが式(I)
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、mおよびnは、それぞれ独立して0または1であり、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリール、および(C
3−C
20)−ヘテロアリールから選択され、
R
1,R
2、R
3、R
4基の少なくとも1種は、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール基であり、
かつ
R
1、R
2、R
3、R
4が、−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリール、または(C
3−C
20)−ヘテロアリールである場合、それらは、−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル−(C
6−C
20)−アリール、−O−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−S−(C
1−C
12)−アルキル、−S−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−COO−(C
1−C
12)−アルキル、−COO−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−CONH−(C
1−C
12)−アルキル、−CONH−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−CO−(C
1−C
12)−アルキル、−CO−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−N−[(C
1−C
12)−アルキル]
2、−(C
6−C
20)−アリール、−(C
6−C
20)−アリール−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
6−C
20)−アリール−O−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール−O−(C
1−C
12)−アルキル、−COOH、−OH、−SO
3H、−NH
2、ハロゲンから選択される1以上の置換基によってそれぞれ独立して置換されていてもよい。)
で示される化合物であることを特徴とする方法である。
【0011】
上記第1のアルコールおよび第2のアルコールは同一であってもよいし異なっていてもよいが、上記第1のアルコールおよび第2のアルコールは異なるものであることが好ましい。ある実施形態においては、上記第1のアルコールは2級または3級アルコールであり、上記第2のアルコールは1級アルコールである。
【0012】
本発明の方法において、工程a)、b)、c)、およびd)を所望の順番で行うことができる。しかし、一般的にCOの添加は、まず共反応体を工程a)〜c)に導入した後に行われる。工程d)およびe)は、同時にまたは連続的に行うことができる。更に、例えばCOの一部を最初に導入し、該混合物を加熱し、その後COの残りの部分を導入するというように、COを2工程または3工程以上の工程に分けて導入することも可能である。
【0013】
ある実施形態において、本発明で使用される上記ホスフィンリガンドは、下記式(II)または(III)
【0014】
【化3】
【0015】
(これらの式において、R
1、R
2、R
3、R
4基はそれぞれ上記定義と同じである)
のいずれかの化合物であることが好ましい。
【0016】
特に好ましい実施形態において、本発明におけるホスフィンリガンドは、R
1、R
2、R
3、R
4基がそれぞれ上記式(II)で表される化合物である。
【0017】
(C
1−C
12)−アルキルという表現には、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状および分岐鎖状のアルキル基が含まれる。これらは、好適には(C
1−C
8)アルキル基、より好適には(C
1−C
6)アルキル、最も好適には(C
1−C
4)アルキル基である。
【0018】
好適な(C
1−C
12)−アルキル基としては、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、ノニルまたはデシルである。
【0019】
上記(C
1−C
12)−アルキルという表現に関する説明は、特に−O−(C
1−C
12)−アルキル、−S−(C
1−C
12)−アルキル、−COO−(C
1−C
12)−アルキル、−CONH−(C
1−C
12)−アルキル、−CO−(C
1−C
12)−アルキル、およびN−[(C
1−C
12)−アルキル]
2におけるアルキル基にも適用される。
【0020】
(C
3−C
12)−シクロアルキルという表現には、3〜12個の炭素原子を有する1環、2環、または3環ヒドロカルビル基が含まれる。これらの基は、好適には(C
5−C
12)−シクロアルキルである。
上記(C
3−C
12)−シクロアルキル基は、好適には3〜8員環原子、より好適には5または6員環原子を有する。
【0021】
好適な(C
3−C
12)−シクロアルキル基は、特に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロドデシル、シクロペンタデシル、ノルボルニルまたはアダマンチルである。
【0022】
上記(C
3−C
12)−シクロアルキルという表現に関する説明は、特に−O−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−S−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−COO−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−CONH−(C
3−C
12)−シクロアルキル、およびCO−(C
3−C
12)−シクロアルキルにおけるシクロアルキル基にも適用される。
【0023】
(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキルという表現には、環を構成する炭素原子の1以上がヘテロ原子により置換された、3〜12個の炭素原子を有する非芳香族の飽和または部分的に不飽和のシクロ脂肪族基が含まれる。上記(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル基は、好適には3〜8、より好適には5または6員環原子を有し、脂肪族側鎖によって置換されていてもよい。該ヘテロシクロアルキル基では、シクロアルキル基とは対照的に、環を構成する炭素原子の1以上がヘテロ原子またはヘテロ原子含有基により置換されている。上記ヘテロ原子またはヘテロ原子含有基は、好適にはO、S、N、N(=O)、C(=O)、S(=O)から選択される。従って、本発明における(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル基にはエチレンオキサイドも含まれる。
【0024】
好適な(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル基は、特にテトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニルまたはジオキサニルである。
【0025】
(C
6−C
20)−アリールという表現には、6〜20個の炭素原子を有する、単一または多環芳香族ヒドロカルビル基が含まれる。これらは、好適には(C
6−C
14)−アリール、より好適には(C
6−C
10)−アリールである。
【0026】
好適な(C
6−C
20)−アリール基は、特に、フェニル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、クリセニル、ピレニルまたはコロネニルである。より好適な(C
6−C
20)−アリール基は、フェニル、ナフチルまたはアントラセニルである。
【0027】
(C
3−C
20)−ヘテロアリールという表現には、炭素原子の1以上がヘテロ原子により置換された、3〜20個の炭素原子を有する単環または多環の芳香族ヒドロカルビル基が含まれる。好適なヘテロ原子は、N、O、およびSである。上記(C
3−C
20)−ヘテロアリール基は3〜20、好適には6〜14、より好適には6〜10個の環原子を有する。
【0028】
好適な(C
3−C
20)−ヘテロアリール基は、特にフリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾイミダゾリル、キノリルまたはイソキノリルである。
【0029】
ハロゲンという表現には、特にフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素が含まれる。特に好適には、フッ素または塩素である。
【0030】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4基が−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリール、または(C
3−C
20)−ヘテロアリールである場合、それらは、−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル−(C
6−C
20)−アリール、−O−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−S−(C
1−C
12)−アルキル、−S−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリール、−(C
6−C
20)−アリール−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
6−C
20)−アリール−O−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール−O−(C
1−C
12)−アルキル、−COOH、−OH、−SO
3H、−NH
2、ハロゲンから選択される1以上の置換基によって、それぞれ独立に置換されていてもよい。
【0031】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4基が−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリール、または(C
3−C
20)−ヘテロアリールである場合、それらは、−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル−(C
6−C
20)−アリール、−O−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリール、−(C
6−C
20)−アリール−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
6−C
20)−アリール−O−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール−O−(C
1−C
12)−アルキルから選択される1以上の置換基によって、それぞれ独立して置換されていてもよい。
【0032】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4基が−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリール、または(C
3−C
20)−ヘテロアリールである場合、それらは、−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル−(C
6−C
20)−アリール、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール−O−(C
1−C
12)−アルキルから選択される1以上の置換基によって、それぞれ独立して置換されていてもよい。
【0033】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4基が−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリール、または(C
3−C
20)−ヘテロアリールである場合、それらは、−(C
1−C
12)−アルキルおよび(C
3−C
20)−ヘテロアリールから選択される1以上の置換基によって、それぞれ独立して置換されていてもよい。
【0034】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4基が−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、または(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキルである場合は非置換であり、−(C
6−C
20)−アリール、または(C
3−C
20)−ヘテロアリールである場合は記載の通り置換されていてもよい。
【0035】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4基が−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリール、または(C
3−C
20)−ヘテロアリールである場合は、非置換である。
【0036】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4は、−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
6−C
20)−アリール、−(C
3−C
20)−ヘテロアリールからそれぞれ独立に選択され、その際、R
1、R
2、R
3、R
4基の少なくとも1種は−(C
3−C
20)−ヘテロアリール基であり、かつR
1、R
2、R
3、R
4が−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
6−C
20)−アリール、または(C
3−C
20)−ヘテロアリールである場合、1以上の上記置換基によって独立に置換されていてもよい。
【0037】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4基の少なくとも2種は、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール基である。
【0038】
ある実施形態において、R
1およびR
3基はそれぞれ、−(C
3−C
20)−ヘテロアリール基であり、かつ1以上の上記置換基によってそれぞれ独立に置換されていてもよい。好適には、R
2およびR
4は、−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
3−C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリールから、より好適には(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリールから、最も好適には(C
1−C
12)−アルキルからそれぞれ独立に選択される。R
2およびR
4は、1以上の上記置換基によって独立に置換されていてもよい。
【0039】
ある実施形態においてR
1、R
2、R
3およびR
4基は−(C
6−C
20)−ヘテロアリール基であり、かつ1以上の前記置換基によってそれぞれ独立に置換されていてもよい。
【0040】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3およびR
4基がヘテロアリール基である場合、それらは、5〜10個の環原子、好適には5または6個の環原子を有するヘテロアリール基からそれぞれ独立に選択される。
【0041】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3およびR
4基がヘテロアリール基である場合、それらは、5個の環原子を有するヘテロアリール基である。
【0042】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3およびR
4基がヘテロアリール基である場合、それらは、6〜10個の環原子を有するヘテロアリール基からそれぞれ独立に選択される。
【0043】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3およびR
4基がヘテロアリール基である場合、それらは、6個の環原子を有するヘテロアリール基である。
【0044】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3およびR
4基がヘテロアリール基である場合、それらは、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、イソキノリルから選択され、その際、言及された該ヘテロアリール基は前記の通り置換されていてもよい。
【0045】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3およびR
4基がヘテロアリール基である場合、それらは、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジル、インドリルから選択され、その際、言及された該ヘテロアリール基は前記の通り置換されていてもよい。
【0046】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3およびR
4基がヘテロアリール基である場合、それらは、2−フリル、2−チエニル、2−ピロリル、2−イミダゾリル、2−ピリジル、2−ピリミジル、2−インドリルから選択され、その際、上記ヘテロアリール基は上記の通り置換されていてもよい。
【0047】
ある実施形態において、R
1、R
2、R
3およびR
4基がヘテロアリール基である場合、それらは、2−フリル、2−チエニル、N−メチル−2−ピロリル、N−フェニル−2−ピロリル、N−(2−メトキシフェニル)−2−ピロリル、2−ピロリル、N−メチル−2−イミダゾリル、2−イミダゾリル、2−ピリジル、2−ピリミジル、N−フェニル−2−インドリル、2−インドリルから選択され、その際、上記ヘテロアリール基は置換されていない。
【0048】
より好適には、R
1、R
2、R
3およびR
4基がヘテロアリール基である場合、それらはピリジル、特に2−ピリジルである。
【0049】
ある実施形態において、R
1およびR
3はピリジル基、好適には2−ピリジルであり、かつR
2およびR
4は−(C
1−C
12)−アルキルであり、その際R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ、前記の通り置換されていてもよい。
【0050】
ある実施形態において、上記ホスフィンリガンドは式(1):
【0051】
【化4】
【0052】
で表される化合物である。
【0053】
本発明の方法において工程a)で出発物質として用いられる上記第1のアルコールは、2〜30個の炭素原子、好適には3〜22個の炭素原子、より好適には4〜12個の炭素原子を有する。それらは、1級、2級または3級アルコールである。また、上記第1のアルコールは芳香族基を有していてもよい。
工程a)で用いられる上記第1のアルコールは、好適には2級または3級アルコールである。
【0054】
ある実施形態において、工程a)において用いられる上記第1のアルコールは、式(IV):
【0055】
【化5】
【0056】
(式中、 R
5は、−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリールから選択され、かつR
6およびR
7は、それぞれ独立に水素原子、−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
12)−シクロアルキル、−(C
6−C
20)−アリールから選択される。)
で表される化合物である。
【0057】
ある好適な実施形態において、R
5は−(C
1−C
12)−アルキルである。好適には、R
5は、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、3−メチル−2−ブテニル(3−methylbut−2−yl)、2−メチル−2−ブテニル(2−methylbut−2−yl)、2,2−ジメチルプロピルから選択される。より好適には、R
5はメチルおよびエチルから選択される。最も好適にはR
5はメチルである。
【0058】
ある好適な実施形態において、R
6およびR
7は、それぞれ独立に水素原子、−(C
1−C
12)−アルキルおよび−(C
6−C
20)−アリールから選択される。好適には、R
6およびR
7は、それぞれ独立に水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、3−メチルブチル、3−メチル−2−ブテニル(3−methylbut−2−yl)、2−メチル−2−ブテニル(2−methylbut−2−yl)、2,2−ジメチルプロピルおよびフェニルから選択される。
【0059】
より好適には、R
6およびR
7は、それぞれ独立に水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルおよびフェニルから選択される。
【0060】
好適には、R
6およびR
7基の1以内の基が水素原子である。
【0061】
ある実施形態において、R
5はメチルであり、そしてR
6およびR
7は独立に、水素原子、メチル、tert−ブチルおよびフェニルから選択され、但しR
6およびR
7基の1以内の基が水素原子である。
【0062】
他の実施形態として、R
6および
7は、それぞれ独立に、−(C
1−C
12)−アルキルおよび−(C
6−C
20)−アリールから選択される。この場合、好適にはR
6およびR
7は、それぞれ独立に、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、3−メチルブチル、3−メチル−2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、2,2−ジメチルプロピルおよびフェニルから選択される。
【0063】
より好適には、この場合、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、およびフェニルから選択される。この実施形態において、特にR
5はメチルであり、そして、R
6およびR
7はそれぞれ独立に、メチル、tert−ブチル、およびフェニルから選択される。
【0064】
ある好適な実施形態において、該第1のアルコールは、tert−ブタノール、3,3−ジメチルブタン−2−オールおよび1−フェニルエタノールから選択される。
【0065】
本発明に係るアルコキシカルボニル化は、Pd錯体により触媒される。Pd錯体は、Pdおよび上記ホスフィンリガンドを含む予め形成された錯体として工程b)に導入するか、またはPdおよび遊離ホスフィンリガンドを含む化合物からin−situで形成させるかいずれかであってよい。ここで、Pdを含む化合物は触媒前駆体としても表される。
【0066】
上記予め形成された錯体は、金属原子に配位する他のリガンドも含む。例えば、エチレン性不飽和化合物またはアニオンである。好適な追加リガンドは、例えばスチレン、アセテートアニオン、マレイミド(例:N−メチルマレイミド)、1,4−ナフトキノン、トリフルオロアセテートアニオンまたはクロライドアニオンである。
【0067】
上記触媒がin−situで形成される場合、非結合リガンドも反応混合物中に存在するように、当該リガンドが過度に添加され得る。
【0068】
同様に最初に添加される錯体の場合、非結合リガンドも反応混合物中に存在するように、更なるリガンドを添加することも可能である。
【0069】
別の実施形態において、Pdを含有する化合物は、パラジウムクロライド(PdCl
2)、パラジウム(II)アセチルアセトネート[Pd(acac)
2]、パラジウム(II)アセテート[Pd(OAc)
2]、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)[Pd(cod)
2Cl
2]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(dba)
2]、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)[Pd(CH
3CN)
2Cl
2]、パラジウム(シンナミル)ジクロライド[Pd(シンナミル)Cl
2]から選択される。
【0070】
好適には、Pdを含有する該化合物は、PdCl
2、Pd(acac)
2またはPd(OAc)
2である。Pd(acac)
2が特に好適である。
【0071】
工程c)で使用される第2のアルコールは、分岐鎖状または直鎖状で、環式、脂環式、または一部環式のアルコールであり、特にC
1−からC
30−アルカノールである。モノアルコールまたはポリアルコールを用いることが可能である。
【0072】
好適には、工程c)で使用される第2のアルコールは、好適には1級アルコールである。
【0073】
上記第2のアルコールは、脂肪族アルコールが好適に用いられる。本発明において脂肪族アルコールは、芳香族基を含有しないアルコールを意味し、例えば、アルカノール、アルケノールまたはアルキノールをいう。従って、不飽和非芳香族アルコールも含まれる。
【0074】
工程c)で使用される第2の該アルコールは、好適には1〜30個の炭素原子、より好適には1〜22個の炭素原子、特に好適には1〜12個の炭素原子を有し、モノアルコールまたはポリアルコールでもよい。
【0075】
上記第2のアルコールは、1以上の水酸基に加えて、更なる官能基を含有してよい。好適には、該アルコールは、カルボキシル、チオカルボキシル、スルホ、スルフィニル、カルボン酸無水物、イミド、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、カルバモイル、スルファモイル、シアノ、カルボニル、カルボノチオイル、スルフヒドリル、アミノ、エーテル 、チオエーテル、またはシリル基、および/またはハロゲン置換基から選択される1以上の官能基を更に含有してよい。
【0076】
ある実施形態において、上記第2のアルコールは水酸基以外の官能基を有しない。
【0077】
本発明の方法の他の形態として、工程c)における上記第2のアルコールは、モノアルコール類から選択される。
【0078】
本発明の方法の他の形態として、工程c)における上記第2のアルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、2−プロピルヘプタノール、フェノール、ベンジルアルコールから選択される。
【0079】
好適な他の実施形態において、工程c)における上記第2のアルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−プロパノール、tert−ブタノール、3−ペンタノール、シクロヘキサノール、およびこれらの混合物から選択される。
【0080】
本発明の方法の他の形態において、工程c)における上記第2のアルコールは、ポリアルコール類から選択される。
【0081】
本発明の方法の他の形態において、工程c)における上記第2のアルコールは、ジオール類、トリオール類、テトラオール類から選択される。
【0082】
本発明の方法の他の形態において、工程c)における上記第2のアルコールは、シクロヘキサン−1,2−ジオール、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、グリセロール、ブタン−1,2,4−トリオール、2−ヒドロキシメチルプロパン−1,3−ジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ペンタエリトリトール、1,1,1−トリ(ヒドロキシメチル)エタン、カテコール、レゾルシノール、およびヒドロキシヒドロキノンから選択される。
【0083】
本発明の方法の他の形態において、工程c)における上記第2のアルコール は、スクロース、フルクトース、マンノース、ソルボース、ガラクトースおよびグルコースから選択される。
【0084】
本発明の方法の好適な形態において、工程c)における上記第2のアルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノールから選択される。
【0085】
本発明の方法の特に好適な他の形態において、工程c)における上記第2のアルコールは、メタノールおよびエタノールから選択される。
【0086】
本発明の方法の特に好適な他の形態において、工程c)における上記第2のアルコールはメタノールである。
【0087】
本発明の方法の他の形態において、工程c)における上記第2のアルコールは過剰に使用される。
【0088】
本発明の方法の他の形態において、工程c)における上記第2のアルコールは、同時に溶媒として使用される。
【0089】
本発明の方法の他の形態において、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)およびメチレンクロライド(CH
2Cl
2)から選択された、追加の溶媒が使用される。
【0090】
COは、好適には0.1〜10MPa(1〜100バール)のCO分圧で工程d)に導入される。好適には1〜8MPa(10〜80バール)、より好適には2〜4MPa(20〜40バール)である。
【0091】
本発明の方法の工程e)において、上記アルコールをエステルに転化するため、反応混合物を好適には10℃〜180℃、より好適には20〜160℃、更に好適には40〜120℃の間の温度で加熱する。
【0092】
工程a)に最初に導入された第1のアルコールと工程c)に添加する第2のアルコールのモル比は、好適には1:1〜1:20、より好適には1:2〜1:10、更に好適には1:3〜1:4である。
【0093】
Pdの工程a)に最初に導入された第1のアルコールに対する質量比は、好適には0.001重量%〜0.5重量%、より好適には0.01重量%〜0.1重量%、更に好適には0.01重量%〜0.05重量%である。
【0094】
本発明において、ホスフィンリガンドとPdのモル比は、好適には0.1:1〜400:1、より好適には0.5:1〜400:1、更に好適には1:1〜100:1、最も好適には2:1〜50:1である。
【0095】
本発明の方法は、酸を加えて実施されるのが好適である。従って、他の実施形態において、該方法は付加的に工程c’)、すなわち混合物に酸を添加する工程を含む。これは、好適にはブレンステッド酸又はルイス酸であってよい。
【0096】
好適なブレンステッド酸は、好適には酸強度pK
a≦5であり、好適には酸強度pK
a≦3である。上記酸強度pK
aは、標準状態(25℃、1.01325バール)下で決定されたpK
aに基づく。多塩基酸の場合、上記酸強度pK
aは最初のプロトリシスに関係する。
【0097】
好適には、上記酸はカルボン酸でない。
【0098】
好適なブレンステッド酸の例としては、過塩素酸、硫酸、リン酸、メチルホスホン酸、およびスルホン酸である。好適には、硫酸またはスルホン酸である。好適なスルホン酸の例は、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、tert−ブタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸(PTSA)、2−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸またはドデシルスルホン酸である。特に、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸が好適である。
【0099】
ルイス酸は、例えばアルミニウムトリフレートであってよい。
【0100】
ある形態において、工程c’)で添加する酸の量は、工程a)において用いられる第1のアルコールのモル量に対し、0.3〜40モル%、好適には0.4〜15モル%、より好適には0.5〜5モル%、最も好適には0.6〜4モル%である。
【0101】
また、本発明で得られる反応混合物には、モレキュラーシーブを添加することもできる。場合によって、この手段は、エステルの収率を増加する。例えば、ゼオライトを含有するか、または炭素を含有するモレキュラーシーブがこの目的に適しており、ゼオライトを含有するモレキュラーシーブが好適である。該モレキュラーシーブの孔径としては、1〜10Åの範囲が好適であり、より好適には2〜6Åの範囲、最も好適には3〜5Åの範囲である。