特許第6495423号(P6495423)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6495423炭素繊維用サイジング組成物、炭素繊維、及び炭素繊維複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6495423
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】炭素繊維用サイジング組成物、炭素繊維、及び炭素繊維複合材料
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/53 20060101AFI20190325BHJP
   D06M 13/152 20060101ALI20190325BHJP
   D06M 13/165 20060101ALI20190325BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20190325BHJP
   D01F 9/12 20060101ALI20190325BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20190325BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20190325BHJP
【FI】
   D06M15/53
   D06M13/152
   D06M13/165
   D06M15/55
   D01F9/12
   C08J5/04CFC
   C08J5/04CFF
   C08J5/04CFE
   D06M101:40
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-231870(P2017-231870)
(22)【出願日】2017年12月1日
【審査請求日】2018年12月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 旬
(72)【発明者】
【氏名】大島 啓一郎
【審査官】 河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−137615(JP,A)
【文献】 特開2005−146430(JP,A)
【文献】 特開2001−316980(JP,A)
【文献】 特許第6083919(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC D06M13/00−15/715
D01F9/08−9/32
B29B11/16
15/08−15/14
C08J5/04−5/10
5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束剤及び非イオン界面活性剤を含有する炭素繊維用サイジング組成物であって、
前記非イオン界面活性剤は、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物及びトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を含むことを特徴とする炭素繊維用サイジング組成物。
【請求項2】
前記ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物が、ジスチレン化フェノール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを合計で1〜100モル付加させた化合物であり、
前記トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物が、トリスチレン化フェノール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを合計で1〜100モル付加させた化合物である請求項1に記載の炭素繊維用サイジング組成物。
【請求項3】
前記トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量に対する前記ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量の質量比が、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物/トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物=5/95〜95/5である請求項1又は2に記載の炭素繊維用サイジング組成物。
【請求項4】
前記トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量に対する前記ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量の質量比が、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物/トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物=5/95〜49/51である請求項1又は2に記載の炭素繊維用サイジング組成物。
【請求項5】
前記集束剤が、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、及びビニルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭素繊維用サイジング組成物。
【請求項6】
前記集束剤、前記ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物、及び前記トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有割合の合計を100質量%とすると、前記集束剤を40〜99.8質量%、前記ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を0.1〜59.9質量%、及び前記トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を0.1〜59.9質量%の割合で含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭素繊維用サイジング組成物。
【請求項7】
前記集束剤が、数平均分子量100〜100000のものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の炭素繊維用サイジング組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭素繊維用サイジング組成物が付着していることを特徴とする炭素繊維。
【請求項9】
請求項8に記載の炭素繊維、及びマトリックス樹脂を含むことを特徴とする炭素繊維複合材料。
【請求項10】
前記マトリックス樹脂が、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、及びビニルエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種である請求項9に記載の炭素繊維複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた濡れ性及び集束性を付与できる炭素繊維用サイジング組成物、かかる炭素繊維用サイジング組成物が付着している炭素繊維、及びかかる炭素繊維等を含む炭素繊維複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維及びエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を含む材料として炭素繊維複合材料(CFRP)が知られ、建材、輸送機器等の各分野において広く利用されている。炭素繊維複合材料に用いられる炭素繊維は、予め表面に炭素繊維用サイジング組成物を付着させ、炭素繊維ストランドの集束性等を付与する処理が行われている。
【0003】
従来、特許文献1に開示される炭素繊維用サイジング組成物が知られている。かかる炭素繊維用サイジング組成物は、35℃での粘度が50〜3,000Pa・sである集束剤を含有し、チクソトロピーインデックスが3〜15に調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/042367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の炭素繊維用サイジング組成物は、マトリックス樹脂に対する濡れ性及び炭素繊維ストランドの集束性が未だ不十分であるという問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、マトリックス樹脂に対する濡れ性及び炭素繊維ストランドの集束性を向上できる炭素繊維用サイジング組成物、炭素繊維、及び炭素繊維複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、集束剤と特定の非イオン界面活性剤を含有する炭素繊維用サイジング組成物が好適であることを見出した。
すなわち本発明の一態様は、集束剤及び非イオン界面活性剤を含有する炭素繊維用サイジング組成物であって、前記非イオン界面活性剤は、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物及びトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を含むことを特徴とする。
【0007】
前記ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物が、ジスチレン化フェノール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを合計で1〜100モル付加させた化合物であり、前記トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物が、トリスチレン化フェノール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを合計で1〜100モル付加させた化合物であることが好ましい。
【0008】
前記トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量に対する前記ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量の質量比が、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物/トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物=5/95〜95/5であることが好ましい。前記トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量に対する前記ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量の質量比が、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物/トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物=5/95〜49/51であることがより好ましい。
【0009】
前記集束剤が、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、及びビニルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。前記集束剤、前記ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物、及び前記トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有割合の合計を100質量%とすると、前記集束剤を40〜99.8質量%、前記ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を0.1〜59.9質量%、及び前記トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を0.1〜59.9質量%の割合で含有してなることが好ましい。前記集束剤が、数平均分子量100〜100000のものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の別の態様は、前記炭素繊維用サイジング組成物が付着していることを特徴とする炭素繊維に係る。
また、本発明の別の態様は、前記炭素繊維、及びマトリックス樹脂を含むことを特徴とする炭素繊維複合材料に係る。前記マトリックス樹脂が、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、及びビニルエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、マトリックス樹脂に対する濡れ性及び炭素繊維ストランドの集束性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の炭素繊維用サイジング組成物(以下、サイジング組成物という)を具体化した第1実施形態を説明する。
【0013】
本実施形態のサイジング組成物に含有される非イオン界面活性剤は、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物及びトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を含んでいる。
【0014】
本実施形態のサイジング組成物に含有される集束剤としては、例えばエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、集束性に優れる観点からエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、及びビニルエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含むものが好ましい。
【0015】
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレン付加アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレン付加フェニルグリシジルエーテル、トリグリシジルアミン、テトラグリシジルアミン等の重合体等のアミン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。具体的な商品名としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製の商品名jER827、jER828、jER834、jER1001、jER1002、jER1003、jER1004、jER1007、jER1009、jER1010等、新日鉄住金化学社製の商品名エポトートYD−128、エポトートYD−134、エポトートYD−011、エポトートYD−012、エポトートYD−013、エポトートYD−014、エポトートYD−017、エポトートYD−019、エポトートYD−020G等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製の商品名jER806、jER807、jER4004P、jER4005P、jER4007P、jER4010P、新日鉄住金化学社製の商品名エポトートYDF−170、エポトートYDF−2001、エポトートYDF−2004、エポトートYDF−2005RD、DIC社製の商品名EPICLON830、EPICLON835、EPICLON EXA−830CRP等)、アクリル、スチレン系エポキシ樹脂(日油社製の商品名マープルーフG−0105SA、マープルーフG−0130SP、マープルーフG−0150M、マープルーフG−025SP、マープルーフG−1005S、マープルーフG−1005SA、マープルーフG−1010S、マープルーフG−2050M、マープルーフG−01100、マープルーフG−017581)、アミン型エポキシ樹脂(住友化学社製の商品名スミエポキシELM120、スミエポキシELM100、スミエポキシELM434、スミエポキシELM434HV、DIC社製の商品名エピクロン430−L、エピクロン430、新日鉄住金化学社製の商品名エポトートYH434、エポトートYH434L、HUNTSMAN社製の商品名アラルダイトMY720、三菱ケミカル社製の商品名jER604)等が挙げられる。
【0016】
ポリウレタン樹脂としては、公知のポリイソシアネートと公知のポリオールを主成分とした反応生成物であれば特に限定されない。ポリイソシアネートとしては、例えば芳香族ポリイソシアネート化合物でも脂肪族ポリイソシアネート化合物でもよい。芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、モノまたはジクロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタフェニレン−ジイソシアネート、パラフェニレン−ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。また、脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート等を挙げることができる。ポリイソシアネート化合物として、上記で例示したポリイソシアネート化合物を1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又はそれら2種の付加物等のポリエーテルポリオール、ポリオールとコハク酸、アジピン酸、フタル酸等の多塩基酸の縮合物であるポリエステルポリオール、2,2−ジメチロールプロピオン酸、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等のカルボキシル基やスルホン酸基を有するポリオール等を挙げることができる。具体的な商品名としては、例えばDIC社製の商品名ボンディック1050B−NE、ボンディック1310NE、ボンディック1940NE、ボンディック8510、ボンディック1230NE、ボンディック1640NE、ボンディック1672NE、ボンディック1980NE、ボンディック2210、ボンディック2220、ハイドランHE−171、ハイドランCOR−70、ハイドランHW350、HW−331、ハイドランHW312B、ハイドランWLS−210、ハイドランAP−40(F)、ハイドランAP−40N、ハイドランAPX−101H、第一工業製薬社製の商品名スーパーフレックス126、スーパーフレックス150、スーパーフレックス150HS、スーパーフレックス170、スーパーフレックス210、スーパーフレックス300、スーパーフレックス420、スーパーフレックス460、スーパーフレックス460S、スーパーフレックス470、スーパーフレックス500M、スーパーフレックス620、スーパーフレックス650、スーパーフレックス740、スーパーフレックス820、スーパーフレックス830HS、スーパーフレックス860、スーパーフレックスE−2000、スーパーフレックスE−4800等が挙げられる。
【0017】
ビニルエステル樹脂としては、例えばエポキシ化合物やヒドロキシ基含有化合物と、不飽和カルボン酸とをエステル化させることで得られる化合物等が挙げられる。エポキシ化合物としては、例えばグリシジルエーテルタイプ、グリシジルアミンタイプ、グリシジルエステルタイプ、オレフィン酸化(脂環式)タイプ等のエポキシ化合物が挙げられる。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプの、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物が好ましい。また、これらの化合物を2種以上併用してもよい。
【0018】
ヒドロキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0019】
不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、桂皮酸等が挙げられる。また、これらの化合物を2種以上併用してもよい。
ビニルエステル樹脂の具体例としては、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物のアクリレート、ビスフェノールA型エポキシ化合物のメタクリレート、ビスフェノールF型エポキシ化合物のアクリレート、ビスフェノールF型エポキシ化合物のメタクリレート、トリグリシジルアミン型エポキシ樹脂のアクリレート、トリグリシジルアミン型エポキシ樹脂のメタクリレート、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂のアクリレート、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂のメタクリレート、グリシジルエステル型エポキシ樹脂のアクリレート、グリシジルエステル型エポキシ樹脂のメタクリレート、1,4−ブタンジオールのアクリレート、1,4−ブタンジオールのメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールのアクリレート、1,6−ヘキサンジオールのメタクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドのアクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドのメタクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイドのアクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイドのメタクリレート、トリメチロールプロパンのアクリレート等が挙げられる。これらの中でもビスフェノールA型エポキシ化合物のアクリレート、ビスフェノールA型エポキシ化合物のメタクリレート、ビスフェノールF型エポキシ化合物のアクリレート、ビスフェノールF型エポキシ化合物のメタクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドのアクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドのメタクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイドのアクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイドのメタクリレート、トリメチロールプロパンのアクリレート、トリメチロールプロパンのメタクリレート等が好ましい。
【0020】
本実施形態のサイジング組成物に含有される集束剤の分子量は、特に制限されないが、数平均分子量として100〜100000であるものが好ましい。尚、集束剤の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて以下条件で測定を行い、ポリスチレン換算で求められる。
機種:HLC−8120GPC(東ソー社製液体クロマトグラフ)
カラム:TSK gel Super H4000
+TSK gel Super H3000
+TSK gel Super H2000
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
検出器:RI(Refractive Index)
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5mL/分
試料濃度:0.25重量%
注入量:10μL
標準:ポリスチレン
(東ソー社製;TSK STANDARD POLYSTYRENE)
本実施形態のサイジング組成物に含有される非イオン界面活性剤は、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物及びトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を含むものである。
【0021】
ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物は、ジスチレン化フェノールに、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加した化合物である。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、ジスチレン化フェノール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを合計で1〜100モル付加させた化合物であることが好ましい。
【0022】
トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物は、トリスチレン化フェノールに、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加した化合物である。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、トリスチレン化フェノール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを合計で1〜100モル付加させた化合物であることが好ましい。
【0023】
ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量とトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量との質量比は、特に制限はない。好ましくはジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量/トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量(トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量に対するジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量の質量比)=5/95〜95/5であり、より好ましくは5/95〜49/51である。かかる数値範囲内に規定することにより、濡れ性をより向上させることができる。
【0024】
本実施形態のサイジング組成物に含有される非イオン界面活性剤は、上記したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物、トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物以外にも、その他の公知の非イオン界面活性剤を含有することができる。
【0025】
その他の公知の非イオン界面活性剤として、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。その他の公知の非イオン界面活性剤のサイジング剤(溶媒を含まない)中における含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲内で適宜設定されるが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0026】
サイジング組成物中における集束剤、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物、及びトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の各含有量の割合は、特に制限はない。集束剤、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物、及びトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有割合の合計を100質量%とすると、好ましくは集束剤を40〜99.8質量%、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を0.1〜59.9質量%及びトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を0.1〜59.9質量%の割合で含有する。かかる数値範囲内に規定することにより、濡れ性及び集束性をより向上させることができる。
【0027】
(第2実施形態)
次に、本発明の炭素繊維を具体化した第2実施形態を説明する。本実施形態の炭素繊維は、上述した第1実施形態のサイジング組成物が付着している炭素繊維である。炭素繊維に対するサイジング組成物の付着量については特に制限はないが、炭素繊維に上述したサイジング組成物(溶媒を含まない)を0.01〜10質量%となるよう付着させたものが好ましい。かかる数値範囲内に規定することにより、炭素繊維に対して濡れ性及び集束性等の効能の付与及び作業性等の両立を図ることができる。
【0028】
本実施形態において適用される炭素繊維の種類としては、特に限定されず、例えばアクリル繊維を原料として得られたPAN系炭素繊維、ピッチを原料として得られたピッチ系炭素繊維等が挙げられる。
【0029】
上述したサイジング組成物を炭素繊維に付着させる方法は、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、ローラー浸漬法、ローラー接触法、スプレー法、抄紙法等、一般に工業的に用いられている方法を適用できる。上述したサイジング組成物は、好ましくは水性のエマルションの状態で炭素繊維に付着される。続いて、乾燥処理し、サイジング組成物の溶液に含まれている水等の溶媒の除去を行うことにより、炭素繊維ストランドを得ることができる。ここでの乾燥処理は、例えば熱風、熱板、ローラー、各種赤外線ヒーター等を熱媒として利用した方法を採用できる。
【0030】
(第3実施形態)
次に、本発明の炭素繊維複合材料(以下、複合材料という)を具体化した第3実施形態を説明する。本実施形態の複合材料は、マトリックス樹脂と上述した第2実施形態のサイジング組成物が付着している炭素繊維とを含むものである。
【0031】
本実施形態の複合材料に供するマトリックス樹脂としては、特に制限はなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の何れも使用できる。具体的なマトリックス樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、本実施形態のサイジング組成物の適用により複合材料の機能性の向上効果がより期待できる観点からエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、及びビニルエステル樹脂から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0032】
本実施形態の複合材料の製造方法としては、特に限定されず、チョップドファイバー、長繊維ペレット等のコンパウンド射出成型、UDシート、織物シート、不織布シート等のプレス成型、その他フィラメントワインディング成型等の公知の方法を採用できる。複合材料中の炭素繊維の含有量についても、特に限定されず、炭素繊維の種類、形態、マトリックス樹脂の種類等により適宜選択することができる。
【0033】
上記実施形態のサイジング組成物、炭素繊維、及び複合材料によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態のサイジング組成物は、集束剤と特定の非イオン界面活性剤を併用して構成した。したがって、マトリックス樹脂に対する濡れ性及び炭素繊維ストランドの集束性を向上できる。よって、得られる複合材料の外観、強度等の各種機能特性の向上が期待される。
【0034】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のサイジング組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、その他の成分として、上述した界面活性剤以外の界面活性剤、水等の溶媒、平滑剤、酸化防止剤、防腐剤等を配合することを妨げるものではない。
【0035】
・上記実施形態の複合材料が適用される分野は、特に限定されず、例えば航空機、自動車、宇宙ロケット、電車等の輸送機器、土木・建築用材料、スポーツ用品等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0037】
試験区分1(ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の調製)
・ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−1の調製:
オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換し、ジスチレン化フェノール288部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でエチレンオキサイド660部とプロピレンオキサイド580部を徐々に加えてランダム付加エーテル化反応を行った。水酸化カリウムを吸着処理した後、濾過することで、ジスチレン化フェノールのエチレンオキサイド15モルとプロピレンオキサイド10モルのランダム付加物A−1を得た。
【0038】
・ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−2の調製:
エチレンオキサイド1364部とプロピレンオキサイド232部に変更した以外はジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−1と同様の方法でジスチレン化フェノールのエチレンオキサイド31モルとプロピレンオキサイド4モルのランダム付加物A−2を得た。
【0039】
・ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−3の調製:
エチレンオキサイド1188部とプロピレンオキサイド174部に変更した以外はジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−1と同様の方法でジスチレン化フェノールのエチレンオキサイド27モルとプロピレンオキサイド3モルのランダム付加物A−3を得た。
【0040】
・ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−4の調製:
オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換し、ジスチレン化フェノール288部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でエチレンオキサイド1232部を徐々に加えた後、プロピレンオキサイド290部を徐々に加えてブロック付加エーテル化反応を行った。水酸化カリウムを吸着処理した後、濾過することで、ジスチレン化フェノールのエチレンオキサイド28モルとプロピレンオキサイド5モルのブロック付加物A−4を得た。
【0041】
・ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−5の調製:
エチレンオキサイド440部とプロピレンオキサイド174部に変更した以外はジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−1と同様の方法でジスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド3モルのランダム付加物A−5を得た。
【0042】
・ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−6の調製:
オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換し、ジスチレン化フェノール288部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でエチレンオキサイド748部を徐々に加えてエーテル化反応を行った。水酸化カリウムを吸着処理した後、濾過することで、ジスチレン化フェノールのエチレンオキサイド17モル付加物A−6を得た。
【0043】
・ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−7の調製:
オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換し、ジスチレン化フェノール288部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でエチレンオキサイド1496部を徐々に加えてエーテル化反応を行った。水酸化カリウムを吸着処理した後、濾過することで、ジスチレン化フェノールのエチレンオキサイド34モル付加物A−7を得た。
【0044】
・ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−8の調製:
オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換し、ジスチレン化フェノール288部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でプロピレンオキサイド1160部を徐々に加えてエーテル化反応を行った。水酸化カリウムを吸着処理した後、濾過することで、ジスチレン化フェノールのプロピレンオキサイド20モル付加物A−8を得た。上述したA−1〜A−8について、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を構成するアルキレンオキサイドの種類、付加モル数、付加形態を下記表1に示す。
【0045】
【表1】
試験区分2(トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の調製)
・トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−1の調製:
オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換し、トリスチレン化フェノール393部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でエチレンオキサイド660部とプロピレンオキサイド580部を徐々に加えてランダム付加エーテル化反応を行った。水酸化カリウムを吸着処理した後、濾過することで、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド15モルとプロピレンオキサイド10モルのランダム付加物B−1を得た。
【0046】
・トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−2の調製:
エチレンオキサイド1364部とプロピレンオキサイド232部に変更した以外はトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−1と同様の方法でトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド31モルとプロピレンオキサイド4モルのランダム付加物B−2を得た。
【0047】
・トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−3の調製:
エチレンオキサイド1188部とプロピレンオキサイド174部に変更した以外はトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−1と同様の方法でトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド27モルとプロピレンオキサイド3モルのランダム付加物B−3を得た。
【0048】
・トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−4の調製:
オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換し、トリスチレン化フェノール393部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でエチレンオキサイド1232部を徐々に加えた後、プロピレンオキサイド290部を徐々に加えてブロック付加エーテル化反応を行った。水酸化カリウムを吸着処理した後、濾過することで、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド28モルとプロピレンオキサイド5モルのブロック付加物B−4を得た。
【0049】
・トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−5の調製:
エチレンオキサイド440部とプロピレンオキサイド174部に変更した以外はトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−1と同様の方法でトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド3モルのランダム付加物B−5を得た。
【0050】
・トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−6の調製:
オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換し、トリスチレン化フェノール393部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でエチレンオキサイド748部を徐々に加えてエーテル化反応を行った。水酸化カリウムを吸着処理した後、濾過することで、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド17モル付加物B−6を得た。
【0051】
・トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−7の調製:
オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換し、トリスチレン化フェノール393部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でエチレンオキサイド1496部を徐々に加えてエーテル化反応を行った。水酸化カリウムを吸着処理した後、濾過することで、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド34モル付加物B−7を得た。
【0052】
・トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−8の調製:
オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換し、トリスチレン化フェノール393部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でプロピレンオキサイド1160部を徐々に加えてエーテル化反応を行った。水酸化カリウムを吸着処理した後、濾過することで、トリスチレン化フェノールのプロピレンオキサイド20モル付加物B−8を得た。上述したB−1〜B−8について、トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を構成するアルキレンオキサイドの種類、付加モル数、付加形態を下記表2に示す。
【0053】
【表2】
試験区分3(炭素繊維用サイジング組成物の調製)
実施例1:試験区分1で調製したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−1を60gと試験区分2で調製したトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−1を240gとエポキシ樹脂E−1(三菱ケミカル社製の商品名:jER828)700gを5Lの容器に加えて100℃で良く撹拌した後、撹拌しながら60℃に冷却後イオン交換水3000gを徐々に加えることで実施例1の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。なお、表3においては、溶媒以外の成分を100%とした場合の各成分の比率を示す(以下同様)。
【0054】
実施例2:試験区分1で調製したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−2を50gと試験区分2で調製したトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−2を350gとエポキシ樹脂E−1(三菱ケミカル社製の商品名:jER828)300gとエポキシ樹脂E−2(三菱ケミカル社製の商品名:jER1002)300gを5Lの容器に加えて100℃で良く撹拌した後、撹拌しながら60℃に冷却後イオン交換水3000gを徐々に加えることで実施例2の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0055】
実施例3:試験区分1で調製したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−3を90gと試験区分2で調製したトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−3を210gとエポキシ樹脂E−1(三菱ケミカル社製の商品名:jER828)200gとポリエステル樹脂E−7(ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とフマル酸のポリエステル樹脂)500gを5Lの容器に加えて100℃で良く撹拌した後、撹拌しながら60℃に冷却後イオン交換水3000gを徐々に加えることで実施例3の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0056】
実施例4:試験区分1で調製したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−4を100gと試験区分2で調製したトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−4を300gとエポキシ樹脂E−2(三菱ケミカル社製の商品名:jER1002)200gとポリエステル樹脂E−8(ビスフェノールAのエチレンオキサイド10モル付加物とアジピン酸のポリエステル樹脂)400gを5Lの容器に加えて100℃で良く撹拌した後、撹拌しながら60℃に冷却後イオン交換水3000gを徐々に加えることで実施例4の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0057】
実施例5:試験区分1で調製したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−1を100gと試験区分2で調製したトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−1を150gとC−1(ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルエーテル)を150gとビニルエステル樹脂E−9(三菱ケミカル社製の商品名:jER828とメタクリル酸をエステル化反応させて製造したビニルエステル樹脂)600gを5Lの容器に加えて良く撹拌した後、撹拌しながらイオン交換水3000gを徐々に加えることで実施例5の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0058】
実施例6:試験区分1で調製したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−2を10gとA−5を10g、試験区分2で調製したトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−2を10gとB−5を10g、ポリウレタン樹脂E−3(DIC社製の商品名:ボンディック1940NE、固形分濃度50%)1920gを5Lの容器に加えて良く撹拌した後、撹拌しながらイオン交換水2400gを加えることで実施例6の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0059】
実施例7:試験区分1で調製したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−6を160gと試験区分2で調製したトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−6を40gとエポキシ樹脂E−1(三菱ケミカル社製の商品名:jER828)400gを5Lの容器に加えて100℃で良く撹拌した後、撹拌しながら60℃に冷却後イオン交換水2067gを徐々に加えた後、ポリウレタン樹脂E−4(第一工業製薬社製の商品名:スーパーフレックス300、固形分濃度30%)1333gを加えて良く撹拌することで実施例7の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0060】
実施例8:試験区分1で調製したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−7を30gと、試験区分2で調製したトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−7を90gと変性ポリプロピレン樹脂E−5(東洋紡社製の商品名:ハードレンNZ−1015、固形分濃度30%)2933gを5Lの容器に加えて良く撹拌した後、撹拌しながらイオン交換水947gを加えることで実施例8の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0061】
実施例9:試験区分1で調製したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−8を200gと、試験区分2で調製したトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−8を300gと変性ポリエステル樹脂E−6(東洋紡社製の商品名:バイロナールMD−1480、固形分濃度25%)2000gを5Lの容器に加えて良く撹拌した後、撹拌しながらイオン交換水1500gを加えることで実施例8の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0062】
比較例1:C−1(ポリオキシエチレン(エチレンオキサイドの付加モル数:10モル)ドデシルエーテル)を400gとエポキシ樹脂E−2(三菱ケミカル社製の商品名:jER1002)600gを5Lの容器に加えて100℃で良く撹拌した後、撹拌しながら60℃に冷却後イオン交換水3000gを徐々に加えることで比較例1の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0063】
比較例2:試験区分1で調製したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−1を200gとエポキシ樹脂E−1(三菱ケミカル社製の商品名:jER828)800gを5Lの容器に加えて良く撹拌した後、撹拌しながらイオン交換水3000gを徐々に加えることで比較例2の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0064】
比較例3:試験区分2で調製したトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−2を200gとエポキシ樹脂E−1(三菱ケミカル社製の商品名:jER828)800gを5Lの容器に加えて良く撹拌した後、撹拌しながらイオン交換水3000gを徐々に加えることで比較例3の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0065】
比較例4:試験区分1で調製したジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物A−3を200gと試験区分2で調製したトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物B−3を800gを5Lの容器に加えて良く撹拌した後、撹拌しながらイオン交換水3000gを徐々に加えることで比較例4の炭素繊維用サイジング組成物を調製した。
【0066】
【表3】
表3中において、各表記は以下のものを示す。
※1:ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物
※2:トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物
※3:ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物/トリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物
C−1:ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルエーテル
E−1:エポキシ樹脂として、三菱ケミカル社製の商品名:jER828(数平均分子量:250)
E−2:エポキシ樹脂として、三菱ケミカル社製の商品名:jER1002(数平均分子量:1000)
E−3:ポリウレタン樹脂として、DIC社製の商品名:ボンディック1940NE(数平均分子量:10000)
E−4:ポリウレタン樹脂として、第一工業製薬社製の商品名:スーパーフレックス300(数平均分子量:6000)
E−5:変性ポリプロピレン樹脂として、東洋紡社製の商品名:ハードレンNZ−1015(数平均分子量:30000)
E−6:変性ポリエステル樹脂として、東洋紡社製の商品名:バイロナールMD−1480(数平均分子量:15000)
E−7:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とフマル酸のポリエステル樹脂(数平均分子量:1500)
E−8:ビスフェノールAのエチレンオキサイド10モル付加物とアジピン酸のポリエステル樹脂(数平均分子量:2500)
E−9:エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製の商品名:jER828)とメタクリル酸のビニルエステル樹脂(数平均分子量:550)
試験区分4(炭素繊維のサイジング(集束))
・炭素繊維のサイジング
試験区分3で調製した各例の炭素繊維用サイジング組成物の30%エマルション等を水で希釈し、処理浴に入れた。ポリアクリロニトリル系繊維から得た未サイジングの炭素繊維(引張強度3500MPa、引張弾性率2.3×10MPa、12000フィラメント)を連続的に上記処理浴に浸漬し、炭素繊維用サイジング組成物(溶媒を含まない)の付着量が炭素繊維に対して1.5%一定となるようにローラーの絞り条件を調節して炭素繊維用サイジング組成物を付着させた。引き続き、連続的に120℃のオーブンに5分間通して乾燥し、濡れ性、集束性の評価試料(炭素繊維束)とした。
【0067】
試験区分5(評価)
・サイジングした炭素繊維の評価
(濡れ性)
試験区分4で得られた炭素繊維束を直径1cmのクロムメッキ梨地ピンを開繊バーとして用いて、炭素繊維束を1cm幅に開繊した。その炭素繊維束上にマトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製の商品名jER828)を25℃雰囲気で0.06g滴下し、滴下後のエポキシ樹脂の60秒後の最大直径を測定した。また、マトリックス樹脂としてポリアミド樹脂(LANXESS社製の商品名DURETHAN B 29)を250℃雰囲気で0.06g滴下し、滴下後のポリアミド樹脂の60秒後の最大直径を測定した。これら測定結果に基づいて、マトリックス樹脂との濡れ性を次の基準で評価した。
◎:エポキシ樹脂とポリアミド樹脂共に最大直径が5mm以上。
○:エポキシ樹脂の最大直径が5mm以上でポリアミド樹脂の最大直径が5mm未満。
×:エポキシ樹脂とポリアミド樹脂共に最大直径が5mm未満。
【0068】
(集束性)
合計5本の直径1cmのクロムメッキ梨地ピンを一定間隔で交互に上下にずらして配置し、前記の評価試料をこれらのクロムメッキ梨地ピンに接触させながら全体として波状に糸速1m/分で通過させて、通過前の炭素繊維束の幅W1と通過後の炭素繊維束の幅W2を測定し、下記の数1により変動幅を求め、以下の基準で評価した。結果を表3にまとめて示した。
【0069】
【数1】
数1において、
W1:合計5本のクロムメッキ梨地ピンを通過する前の炭素繊維束の幅(mm)。
W2:合計5本のクロムメッキ梨地ピンを通過した後の炭素繊維束の幅(mm)。
○:変動幅が4mm未満。
×:変動幅が4mm以上。
【0070】
以上表3の結果からも明らかなように、各実施例の炭素繊維用サイジング組成物は、濡れ性及び集束性の評価がいずれも良好であった。本発明の炭素繊維用サイジング組成物によれば、炭素繊維に優れたマトリックス樹脂との濡れ性及び炭素繊維ストランドの集束性を付与することができる。
【要約】
【課題】マトリックス樹脂に対する濡れ性及び炭素繊維ストランドの集束性を向上できる炭素繊維用サイジング組成物、炭素繊維、及び炭素繊維複合材料を提供する。
【解決手段】本発明は、集束剤及び非イオン界面活性剤を含有する炭素繊維用サイジング組成物であって、前記非イオン界面活性剤は、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物及びトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を含むことを特徴とする。
【選択図】なし