特許第6495475号(P6495475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495475
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】指向性音響デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/30 20060101AFI20190325BHJP
   H04R 1/34 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   H04R1/30 A
   H04R1/34
【請求項の数】23
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-550864(P2017-550864)
(86)(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公表番号】特表2018-513616(P2018-513616A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】US2016024786
(87)【国際公開番号】WO2016160846
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2017年11月9日
(31)【優先権主張番号】14/674,072
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ヤンコフスキー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ビー・アイクラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・エー・コフェイ
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−274131(JP,A)
【文献】 特開昭61−212198(JP,A)
【文献】 特開昭62−118697(JP,A)
【文献】 特開平03−204298(JP,A)
【文献】 特開平06−105386(JP,A)
【文献】 特開平09−149487(JP,A)
【文献】 特開平11−136787(JP,A)
【文献】 特開2009−065609(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/086812(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0188920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/30
H04R 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響源または音響受信部と、
前記音響源または前記音響受信部が音響的に結合される導管であって、前記導管内で、音響エネルギーが、前記音響源から、または、前記音響受信部へと、伝播方向において内部で伝搬し、前記導管が、前記導管の構造体が終端する有限範囲を有する、導管と
を備え、
前記導管は、前記音響源から前記導管へと放射される音響エネルギーが外部環境へと漏れることができ、または、前記外部環境における音響エネルギーが前記導管へと漏れることができる、制御された漏れ部を定める漏れ開口を備えた放射表面を有する放射部を有し、
前記導管における音響エネルギーが前記外部環境に到達するための唯一の経路、または、前記外部環境における音響エネルギーが前記導管に入るための唯一の経路が、前記制御された漏れ部を通る経路であり、
前記漏れ開口は、前記伝播方向において第1の延在を有する漏れ部を定め、前記音響源または前記音響受信部の場所に対して一定の時間遅延を有する前記導管に沿った場所において第2の延在を有する漏れ部も定め、
前記漏れ部の前記延在は、有用な指向性制御が得られる最も低い周波数を決定するものであり、
前記伝播方向における前記漏れ部についての指向性制御の最も低い周波数は、一定の時間遅延を有する前記漏れ部についての指向性制御の最も低い周波数の3オクターブ内である、指向性音響デバイス。
【請求項2】
前記導管の前記放射部は、概して平面状である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記導管の前記放射部は、円弧に沿って位置する端部を有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記導管の前記放射部は、扇形である、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記導管の前記放射部は、概して平面において位置し、前記音響源または前記音響受信部は、前記放射部の前記平面に位置付けられる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記導管の前記放射部は、概して平面において位置し、前記音響源または前記音響受信部は、前記放射部の前記平面に位置付けられない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記導管の前記放射部は、三次元のシェルを形成するように湾曲される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記伝播方向において漏れ部を定める前記漏れ開口の面積が、前記音響源または前記音響受信部の場所からの距離の関数として変化する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記伝播方向において漏れ部を定める前記漏れ開口の音響抵抗が、前記音響源または前記音響受信部の場所からの距離の関数として変化する、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記伝播方向において漏れ部を定める前記漏れ開口の音響抵抗が、前記音響源または前記音響受信部の場所からの距離の関数として変化する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
音響抵抗における前記変化は、前記音響源または前記音響受信部からの距離の関数として前記漏れ部の面積を変化させること、および、前記音響源または前記音響受信部からの距離の関数として前記漏れ部の前記音響抵抗を変化させることのうちの一方または両方によって、少なくとも部分的に実現される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
音響抵抗における前記変化は、空間的に変化する音響抵抗を有する材料を、前記音響源または前記音響受信部からの距離の関数として、一定の面積を有する周囲において漏れ開口を覆うように置くこと、および、前記音響源または前記音響受信部からの距離の関数として前記漏れ部の面積を変化させ、一定の音響抵抗を有する材料を前記漏れ部を覆うように適用することのうちの一方または両方によって、少なくとも部分的に実現される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記音響源または前記音響受信部の場所に対する時間遅延が一定である場所における前記導管の深さは、前記音響源または前記音響受信部の場所からの距離の関数として減少する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
一定の時間遅延の漏れ部を定める前記漏れ開口の前記延在は、前記伝播方向において漏れ部を定める前記漏れ開口の前記延在の約1倍から約4倍の間である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第2の延在に対する前記第1の延在の割合は、6.3より小さく、かつ、0.25より大きい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記一定の時間遅延の漏れ部の前記延在は、指向性を制御するために望ましい最も低い周波数における音の少なくとも約1/2の波長である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記伝播方向における前記漏れ部の前記延在は、指向性を制御するために望ましい最も低い周波数における音の少なくとも約1/4の波長である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記漏れ開口はすべて、前記導管の1つの表面に存在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記導管は、部屋の天井に備え付けられ、漏れ部を有する前記表面は、前記部屋の床を向く、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記導管は、部屋の壁に備え付けられ、漏れ部を有する前記表面は、前記部屋の床を向く、請求項18に記載のデバイス。
【請求項21】
前記漏れ部を通じて放射される音響体積速度が、前記音響源または前記音響受信部からの前記導管に沿った距離の関数として、徐々に変化する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
前記音響源または前記音響受信部の場所に対して一定の時間遅延を有する前記導管に沿った前記場所は、軸に沿って下がり、前記漏れ部を通じて放射される音響体積速度は、前記軸におけるある点から、この軸に沿った距離の関数として徐々に変化する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記導管の前記放射部は、対応する角度にわたって前記音響源または前記音響受信部の場所から径方向に拡大し、
前記導管の深さが、前記音響源または前記音響受信部からの距離が増加するにつれて減少し、
前記対応する角度が、少なくとも15度である、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響源と音響受信部とを含む指向性音響デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
指向性音響デバイスは、放射される音響エネルギーまたは受信される音響エネルギーの指向性を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8,351,630号
【特許文献2】米国特許第8,358,798号
【特許文献3】米国特許第8,447,055号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下で言及されているすべての例および特徴は、任意の技術的に可能な方法で組み合わされ得る。
【0005】
一態様では、指向性音響デバイスが、音響源または音響受信部と、音響源または音響受信部が音響的に結合される導管であって、この導管内で、音響エネルギーが、音響源から、または、音響受信部へと、伝播方向において内部で伝搬し、導管が、導管の構造体が終端する有限範囲を有する、導管とを含む。導管は、前記源から導管へと放射される音響エネルギーが外部環境へと漏れることができ、または、外部環境における音響エネルギーが導管へと漏れることができる、制御された漏れ部を定める漏れ開口を備えた放射表面を有する放射部を有する。導管における音響エネルギーが外部環境に到達するための唯一の経路、または、外部環境における音響エネルギーが導管に入るための唯一の経路は、制御された漏れ部を通る経路である。漏れ開口は、伝播方向において第1の延在を有する漏れ部を定め、源または受信部の場所に対して一定の時間遅延を有する導管に沿った場所において第2の延在を有する漏れ部も定める。漏れ部の延在は、有用な指向性制御が得られる最も低い周波数を決定するものである。伝播方向における漏れ部についての指向性制御の最も低い周波数は、一定の時間遅延を有する漏れ部についての指向性制御の最も低い周波数の3オクターブ内である。
【0006】
実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、または、それら特徴の任意の組合せを含み得る。導管の放射部は概して平面状であり得る。導管の放射部は、円弧に沿って位置する端部を有し得る。導管の放射部は扇形であり得る。放射部は、概して平面において位置することができ、源または受信部は、放射部の平面に位置付けられ得る。放射部は、概して平面において位置することができ、源または受信部は、放射部の平面に位置付けられ得ない。放射部は、三次元のシェルを形成するように湾曲され得る。
【0007】
実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、または、それら特徴の任意の組合せを含み得る。伝播方向において漏れ部を定める漏れ開口の面積は、音響源または音響受信部の場所からの距離の関数として変化し得る。伝播方向において漏れ部を定める漏れ開口の音響抵抗が、音響源または音響受信部の場所からの距離の関数として変化し得る。音響抵抗における変化は、源または受信部からの距離の関数として漏れ部の面積を変化させること、および、源または受信部からの距離の関数として漏れ部の音響抵抗を変化させることのうちの一方または両方によって、少なくとも部分的に実現され得る。音響抵抗における変化は、空間的に変化する音響抵抗を有する材料を、源または受信部からの距離の関数として、一定の面積を有する周囲において漏れ開口を覆うように置くこと、および、源または受信部からの距離の関数として漏れ部の面積を変化させ、一定の音響抵抗を有する材料を漏れ部を覆うように適用することのうちの一方または両方によって、少なくとも部分的に実現され得る。
【0008】
実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、または、それら特徴の任意の組合せを含み得る。源または受信部の場所に対する時間遅延が一定である場所における導管の深さは、源または受信部の場所からの距離の関数として減少し得る。一定の時間遅延の漏れ部を定める漏れ開口の面積は、伝播方向において漏れ部を定める漏れ開口の面積の約1倍から約4倍の間であり得る。固定された時間遅延の漏れ部の延在は、指向性を制御するために望ましい最も低い周波数における音の少なくとも約1/2の波長であり得る。伝播方向における漏れ部の延在は、指向性を制御するために望ましい最も低い周波数における音の少なくとも約1/4の波長であり得る。第2の延在に対する第1の延在の割合は、6.3より小さく、かつ、0.25より大きくてもよい。
【0009】
実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、または、それら特徴の任意の組合せを含み得る。漏れ開口はすべて、導管の1つの表面に存在し得る。導管は、部屋の天井に備え付けられ得、漏れ部を有する表面は、部屋の床を向き得る。導管は部屋の壁に備え付けでき、漏れ部を有する表面は部屋の床を向き得る。放射するデバイスについては、導管へと放射される音響エネルギーの実質的にすべてが、導管の構造体の端部に到達する前に、制御された漏れ部を通じて外部環境へと漏れ得る。
【0010】
別の態様では、指向性音響デバイスが、音響源または音響受信部と、音響源または音響受信部が音響的に結合される導管であって、この導管内で、音響エネルギーが、音響源から、または、音響受信部へと、伝播方向において内部で伝搬し、導管が、導管の構造体が終端する有限範囲を有する、導管とを含む。導管は、前記源から導管へと放射される音響エネルギーが外部環境へと漏れることができ、または、外部環境における音響エネルギーが導管へと漏れることができる、制御された漏れ部を定める漏れ開口を備えた放射表面を有する放射部を有する。導管における音響エネルギー外部環境に到達するための唯一の経路、または、外部環境における音響エネルギーが導管に入るための唯一の経路は、制御された漏れ部を通る経路である。導管の放射部は、少なくとも15度である対応する角度にわたって源の場所から径方向に拡大する。導管の深さは、音響源からの距離が増加するにつれて減少し得る。
【0011】
別の態様では、指向性音響デバイスが、音響源または音響受信部と、音響源または音響受信部が音響的に結合される導管であって、この導管内で、音響エネルギーが、音響源から、または、音響受信部へと、伝播方向において内部で伝搬し、導管は、導管の構造体が終端する有限範囲を有する、導管とを含む。導管は、前記源から導管へと放射される音響エネルギーが外部環境へと漏れることができ、または、外部環境における音響エネルギーが導管へと漏れることができる、制御された漏れ部を定める漏れ開口を備えた放射表面を有する放射部を有する。導管における音響エネルギーが外部環境に到達するための唯一の経路、または、外部環境における音響エネルギーが導管に入るための唯一の経路は、制御された漏れ部を通る経路である。漏れ開口は、伝播方向において第1の延在を有する漏れ部を定め、源または受信部の場所に対して一定の最大時間遅延を有する導管に沿った場所において第2の延在を有する漏れ部も定める。第2の延在に対する第1の延在の割合は、6.3より小さく、かつ、0.25より大きい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】指向的に放射する音響デバイスの概略的な平面図である。
図1B】線1B-1Bに沿って切り取られた断面図である。
図2】指向的に放射する音響デバイスの概略的な平面図である。
図3A】指向的に放射する音響デバイスの概略的な平面図である。
図3B】線3B-3Bに沿って切り取られた断面図である。
図4A】指向的に放射する音響デバイスの概略的な平面図である。
図4B】線4B-4Bに沿って切り取られた断面図である。
図5A】指向的に放射する音響デバイスの概略的な平面図である。
図5B】線5B-5Bに沿って切り取られた断面図である。
図5C】線5C-5Cに沿って切り取られた断面図である。
図6】線形のエンドファイヤ線源における抵抗スクリーンを通じた出力体積速度を、この源からの距離の関数としてウィンドウ処理した図である。
図7図6のウィンドウ処理の指向性効果を示す図である。
図8】指向的に放射する音響デバイスの概略的な断面図である。
図9A】指向的に放射する音響デバイスの概略的な図である。
図9B】指向的に放射する音響デバイスの断面図である。
図10A】指向的に放射する音響デバイスの上面図である。
図10B】指向的に放射する音響デバイスの底面図である。
図11A】指向的に受信するデバイスのための筐体の上面斜視図である。
図11B】指向的に受信するデバイスのための筐体の底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1つまたは複数の音響源または音響受信部が、源からの音響放射を含み、その音響放射を源から遠くに伝導し、または、音響エネルギーを構造体の外部から構造体を通じて受信部へと伝導する任意の形状の導管などの、中空の構造体に結合される。構造体は、音響エネルギーが制御された様態で構造体を通じて(構造体から外へ、または、構造体へと中へ)漏れることができるように構成および配置される周囲壁を有する。周囲壁は、空間において三次元の表面を形成する。図1図10に関する詳解の多くは、指向的に放射する音響デバイスに関係する。しかしながら、詳解は、受信部(例えば、マイクロフォン要素)が音響源に置き換わる指向的に受信する音響デバイスにも当てはまる。受信部では、放射は、漏れ部を通じて構造体に入り、受信部へと伝導される。
【0014】
周囲壁における任意の位置で漏れ部を通じて(つまり、漏れ部を通じて導管から外へ、または、漏れ部を通じて導管へと中へ)漏れる音響エネルギーの規模は、その任意の位置における導管内の音響圧力と、その任意の位置における導管の外部に存在する周囲圧力との間の圧力差と、その任意の位置における周囲壁の音響インピーダンスとに依存する。導管内に位置付けられる任意の基準位置に対する任意の位置における漏れエネルギーの位相は、源から導管へと放射される音が源から導管を通って任意の基準位置へと伝搬するのに掛かる時間と、音が導管を通って源から選択された任意の位置へと伝搬するのに掛かる時間との間の時間差に依存する。基準位置は、導管内のいずれかの場所となるように選択できるが、後での詳解のために、基準位置は、導管周囲壁における任意の位置を通じて漏れる音響エネルギーが、音が源から放出される時間に対して時間で遅れさせられるように、源の場所となるように選択される。導管の外部に位置付けられた源からの音響出力を受信するように構成された受信部については、漏れ部表面に沿った任意の第2の位置に対する漏れ部表面に沿った任意の第1の位置において受信される音の位相が、外部の音響源から放出されるエネルギーが第1の位置および第2の位置に到達するのに掛かる時間における相対的な差の関数である。第1の位置および第2の位置で導管に入る音についての受信部における相対位相は、上記の相対的な時間遅延と、各々の位置から受信部の場所への導管内での相対的な距離とに依存する。
【0015】
音響エネルギーが漏れる構造体の周囲壁表面(本明細書で「放射区域」または「放射部」とも呼ばれる)の形は、任意である。一部の例では、周囲壁表面(放射部)は、概して平面状であり得る。任意の形とされた概して平面上の壁表面20の一例が図1Aおよび図1Bに示されている。壁20の網掛けされた面23は、音響体積速度が放射される放射部を表している。指向的に放射する音響デバイス10が、ラウドスピーカ(音響源)14が近位端16において音響的に結合されている構造体または導管12を備えており、源は、導管の二次元の突出した形の縁に沿って導管に結合している。この非限定的な例における放射部20は、導管12の下面であるが、放射表面は、概して平面状の導管12の上面に、または、上面と下面との両方にあってもよい。矢印22は、壁20における漏れ区域23を通って導管12から環境へ出るように方向付けられる音響体積速度の描写を表している。矢印の長さは、放出される体積速度の大きさに概して関係している。外部環境へと放出される体積速度の大きさは、源からの距離の関数として変化し得る。これは、本開示の他の場所により詳細に記載されている。受信部としての使用については、源14は、1つまたは複数のマイクロフォン要素で置き換えられ、体積速度は、放射部20から放出されるのではなく、放射部20で受信されることになる。
【0016】
漏れ区域23は、壁20の放射部の一部であり、導管周囲18に向かうスピーカ14からの音の伝播の方向に沿って延在して描写されている。漏れ区域23の以下の詳解は、壁20の放射部の他の部分にも適用可能である。本明細書で開示した例の動作の本質をより良く理解するために、詳解の目的のために区域23において起きていることだけを検討することが、有用である。漏れ区域23は、連続的として描写されているが、音の伝播方向(または、受信部については音の受信方向)に沿って並べられた一連の漏れ部によって実現されてもよい。漏れ区域23は、図1Aにおいて、スピーカ14の場所から離れる直線で延在している矩形の帯状として示されている。これは、壁20の放射部の長さ方向の延在を示すのを助けるために単純化されている。概して、表面20の相当の部分、または、一部の例では全体の部分が、網掛けによって示されているように、放射するものであってよい。一部の例では、漏れ部を組み込んでいる表面20の部分は、源の場所(例では、2つ以上の源を伴う源)からの距離、角度、またはそれら両方の関数として変化してもよい。後で記載しているように、漏れ部の場所、大きさ、形、音響抵抗、および他のパラメータは、音の放射または音の受信の所望の指向性を含むが、これらに限定されない、所望の結果を達成するために考慮される変数である。
【0017】
図2は、任意の形を有する構造体32に結合された源34を伴う指向的に放射する音響デバイス30を示している。
【0018】
図3Aおよび図3Bに示しているような指向的に放射する音響デバイス40の一例では、源46(または、受信部)は、導管40の放射する周囲壁表面42の上方に位置付けられ、導管は、外向きに水平に延在し、最遠の延在44において途切れる概して平面状の放射する周囲壁表面(放射部)を形成するために、源から下へと遠くに湾曲している。図3Aは、漏れ面積の区域48(点線内に含まれている)を示している。漏れ区域48は、スピーカ46の場所から固定された距離で一定の半径の円弧で延在している円弧形とされた帯状として図3Aに示されている。したがって、区域48は、後でさらに説明されているように、源から一定の時間遅延に位置付けられている。区域48の図示は、円弧などから放出される音が円弧にわたって同時に放出されることを示すのを助けるために単純化されている。概して、漏れ区域48は、表面42(図では網掛けされている)にわたって延在することになり、表面42の相当の部分にわたって、または、一部の例では全体の部分にわたって存在する。漏れ部を組み込んでいる表面42の部分は、源/受信部の場所(例では、2つ以上の源/受信部を伴う源/受信部)からの距離、角度、またはそれら両方の関数として変化してもよい。
【0019】
別の例(図示せず)では、放射する周囲壁表面は、導管が源/受信部から離れるように延在するにつれて、空間において湾曲して続いていき、この場合、放射部は、概して平面状ではなくてもよく、または、部分的に概して平面状なだけでもよい。周囲の湾曲の場所、角度、および延在は、限定されない。
【0020】
一部の例では、音響源/音響受信部は、中心の場所において導管構造体に結合する。図4Aおよび図4Bに示した一例50では、源56が、外側端54を伴う円形とされた導管の平面状の放射する周囲壁区域52の上方に位置している。図5A図5Cの別の例60では、任意に成形された導管62が、360度の円弧にわたって概して水平に、源66および68から離れるように延在している。中心がこの例では明確に定められていないが、源/受信部は、二次元の突出した導管の形の幾何学的な中心と一列に概して配置され得る(つまり、二次元の平面図で見たとき、幾何学的な中心と並べられ得る)。一部の例では、源/受信部が導管構造体と結合する場所は任意であり、導管の形と任意の関係を有し得る。例えば、源66および68のいずれも、周囲64を伴う導管62の幾何学的な中心に位置付けられない。
【0021】
源/受信部は導管構造体へと結合され、導管構造体は、外部環境へと放射するために導管構造体へと結合される源音響エネルギーのための経路(または、受信部では導管へと放射される音響エネルギーのための経路)だけが、導管構造体の周囲壁における制御された漏れ部を通じるように構築および配置される。漏れ部の音響インピーダンス(概して、このインピーダンスは主に抵抗性のあるように作られ、この音響抵抗の規模が決定される)と、漏れ部の位置と、導管の形状とは、源から導管へと放射される音響エネルギーの実質的にすべてが漏れ部の音響抵抗によって消散され、または、エネルギーが、導管の端に到達する時間までに、導管の周囲壁における制御された漏れ部を通じて外部環境へと放射されるかのいずれかとなるように選択される。受信部については、導管構造体の外面に当たる音響エネルギーは、導管内へと放射し、または、抵抗へと消散させられるかのいずれかである。端部とは、源(または、受信部)の位置から導管内を見るときに、導管の物理的構造体が終端する、源/受信部の位置から離れた導管に沿った位置を概して意味する。端部は、伝播する音響エネルギーによって見られる音響インピーダンスが規模および/または位相において鋭い遷移を有する導管に沿った場所として考えることもできる。音響インピーダンスにおける鋭い遷移は反射を生じさせ、導管における音響エネルギーの実質的にすべてが、外部環境へと漏れていること、または、反射を低減または排除するために、導管内で伝播する音響波がインピーダンス移行に到達する前に消散されていることが、望まれる。伝播の方向に沿った導管内での音響エネルギーの反射の排除または実質的な低減は、伝播方向に沿った導管内での定常波の排除または実質的な減衰をもたらす。導管構造体内で定常波を低減または排除することで、より滑らかな周波数応答と、より良く制御された指向性とが提供される。
【0022】
導管の形と、周囲壁における漏れ部の範囲(または、漏れ部の面積、および/または漏れ部の周囲壁にわたる分配、および/または漏れ部の厚さ)ならびに音響抵抗とは、指向性の挙動に影響を与えるのに有用な音響体積速度の大きさが、周囲壁における漏れ部面積の実質的にすべての部分を通じて漏れるように選択される。有用な大きさの体積速度を(外へと、または、内へと)放射していると考えられる漏れ部について、その漏れ部が、最も大きい規模の体積速度を放射する漏れ部によって放射される体積速度の規模の少なくとも1%の体積速度の規模を放射すべきであることが意味されている。しかしながら、指向性の挙動に影響を与えるのに有用な音響体積速度が漏れ部面積の実質的にすべての部分を通じて放射しないように、漏れ部パラメータ(場所、面積、延在、音響インピーダンス(主に音響抵抗))を選択することが可能である。有用な指向性は依然として得ることができる。しかしながら、漏れ部の「効果的な延在」は、有用な音響エネルギーを放射する漏れ部の一部に限定される。漏れ部が延在するが有用なエネルギーが放射されない場合、漏れ部のその区域は、指向性の挙動を制御するのに有用ではなく、漏れ部の効果的な延在は、その物理的な延在よりも小さい。例えば、源の場所の近くの音響抵抗が小さすぎる場合、源によって導管内へと放射される大きな量の音響エネルギーが、源の近くで漏れ部を通じて導管を出ていくことになり、これは、源から遠くに離して位置付けられる漏れ部を通じて放出されるのに利用可能な音響エネルギーの量を低減することになる。下流の漏れ部の有効性は、源の近くの漏れ部を通じて放射される過剰なエネルギーと比較して、無視できる。導管の端の近くの漏れ部は、有用な音響体積速度をもはや効果的に放出できない。伝播の方向における放射部の延在は、伝播方向における導管の物理的な延在より典型的には小さくなる。
【0023】
概して、漏れ部を通じて放射される音響体積速度が、源または受信部の場所からの導管に沿った距離の関数として徐々に変化することが望ましい。放射された体積速度の短い距離にわたっての突然の変化は、望ましくない指向性の挙動を生じさせることになり得る。図6および図7は、線形のエンドファイヤ線源における抵抗スクリーンを通じた出力体積速度を、源からの距離の関数として窓を掛けたこと効果を示している。図6は2つの曲線を示している。第1の曲線は、矩形の体積速度プロフィールを有するエンドファイヤ線源デバイスの出力体積速度を描写しており(均一な幅のスクリーン;実線の曲線)、第2の曲線は、スクリーン幅が端まで一定に保たれている0.2mより大きいxを除いて、ハミング窓関数に近付けるために、(主に、デバイスの周囲壁における抵抗性の漏れ部の幅を変えることで)出力体積速度が陰影付けされている同様のデバイスを描写している(成形されたスクリーン;点線の曲線)。必要とは限らないが、導管の端に対して一定の漏れ部の幅は、導管内のすべての音響エネルギーが、導管の端に到達する前に、漏れ部の音響抵抗を通って漏れ出す、または、その音響抵抗によって消散されることを確保するのを助ける。図7では、サイドローブレベルが、ハミングの陰影付けされた出力体積速度でのデバイスについて著しく低減されていることが見て取れる(成形されたスクリーン;点線の曲線)。図6および図7におけるグラフは、線形のエンドファイヤデバイスにおける陰影付けの出力体積速度の結果を描写しているが、基本的な原理は、ここで開示した例のすべてに適用可能である。
【0024】
放射される体積速度の規模は、望ましくは、源/受信部と導管の端(または、導管の放射部の端)との間の距離の中間の近くのいずれかで必ずしも最大になることはないが、源/受信部の場所から最大の放射の位置まで概して滑らかに増加し、最大の放射の位置から端まで概して滑らかに減少する。この挙動は、源/受信部からの距離の関数として放射される体積速度において窓関数を提供するとして考えられ得る。様々な窓関数が選択でき(例えば、ハニング、ハミング、1/2cos、一定の矩形など)、本開示は、使用される窓関数に限定されない。様々な窓関数が、主要な放射ローブとサイドローブとの挙動の間でトレードオフを行わせる。サイドローブエネルギーの増加に対して、より大きい主要なローブ指向性(固定した漏れ部延在を取る)を得ることをトレードオフでき、または、サイドローブエネルギーの低減に対して、小さくなった主要なローブ指向性を受け入れることができる。窓を掛けることは、伝播方向に対して直角である方向において実現もでき、そのため、デバイスの中心において放射され、デバイスの側方に向かってより小さく移動するより大きい体積速度がある。例えば、一部の場合では、源または受信部の場所に対して一定の時間遅延を有する導管に沿った場所は、軸(例えば、円弧)に沿って下がり、漏れ部を通じて放射される音響体積速度は、軸におけるある点から、この軸に沿った距離の関数として徐々に変化する。
【0025】
先に記載した構造体は、2つの方法で放出または受信した音響エネルギーの指向性を制御する。第1の手法の指向性の制御は、エンドファイヤ指向性の制御と呼ぶ。エンドファイヤ指向性の制御デバイスは、先行技術の米国特許第8,351,630号、米国特許第8,358,798号、および米国特許第8,447,055号において記載されており、それらの開示は、本明細書において、それらの全体において参照により組み込まれている。エンドファイヤ指向性の制御は、漏れ部が音響抵抗を有している周囲壁が導管構造体内の音の伝播の方向において延在し、音響源の連続した線形の分配を効果的に形成するために生じる。1つの単純化された例は、図1Aの漏れ部23である。音が導管(または、米国特許第8,351,630号における例について称されているような「管」)内の源から遠くへと伝播するため、音響源の線形の分配からの出力(外部環境への周囲漏れ部によって形成される)は、導管の長さに沿って同時に起こらない。音響源の場所のより近くに位置付けられる導管の周囲壁漏れ部を通じた外部環境へと放出される音響エネルギーは、音響エネルギーが音響源の場所からより遠くに離されて位置付けられる漏れ部を通じて外部環境へと放出される前に、放出される。源の線形の分配から放出される音響エネルギーは、導管の長さに沿った音響源の場所からの指す方向においてコヒーレントに集まる。源の線形の分配が、エンドファイヤ線源として上記の挙動を呈するデバイスに言及する。エンドファイヤ線受信部は、逆の挙動を呈する。
【0026】
エンドファイヤ線源/受信部によって放出/受信されるエネルギーは、導管内の音の伝播速度が、外部環境における音の伝播速度と本質的に合致するため、導管長さの方向に沿った音響源の場所から離れる方を指す方向においてコヒーレントに集まる。しかしながら、周囲壁におけるすべての漏れ部からの出力または入力が同時に起こるなら、源/受信部デバイスからの出力/受信パターンが、エンドファイヤではなく、「ブロードサイド」の配向を有し得る。これは、エンドファイヤ線源/受信部の指向性の挙動を提供する導管周囲壁の長さに沿った線形に分配された漏れ部についての相対的な時間遅延である。
【0027】
本明細書で開示した例によって得られる指向性の制御の別の方法は、先に言及したブロードサイド指向性と同様である。本明細書で開示した例では、指向性の制御のこの方法は、先に記載したエンドファイヤ方法と組み合わされる。指向性の制御のこの方法では、導管の周囲壁における漏れ部の「延在」または大きさは、先に記載したエンドファイヤ線源/受信部と対照的に、「エンドファイヤ表面源」またはエンドファイヤ表面受信部を形成するために拡大されている。エンドファイヤ表面の源または受信部(つまり、デバイス)では、エンドファイヤ挙動が依然として存在する。しかしながら記述の簡単化のため、エンドファイヤ表面デバイスは、エンドファイヤ方向と異なる寸法で指向性を追加的に制御するように構成され、その異なる方向は、エンドファイヤ方向に対して概して直角である。しかしながら、直角であることは要件ではないことは留意されたい。しかしながら、指向性の制御のこの追加的な寸法を進めることは、直角な方向として称されることになる。これを実現するために、任意の固定された時間遅延を有する導管を通る周囲壁漏れ部は、指向性制御のこのエンドファイヤ表面方法が望まれる最も低い周波数についての音の波長に対して大きさが有意である「延在」(例えば、長さ)を有するように、構築および配置される。概して、固定された時間遅延の漏れ部の延在が、指向性を制御するために望ましい最も低い周波数における音のおおよそ1/2波長であるとき、エンドファイヤ表面デバイスは、エンドファイヤ方向に対して直角な方向で有用な指向性制御を提供し始める。概して、有用なエンドファイヤ指向性制御は、エンドファイヤ方向における周囲漏れ部の大きさが1/4波長におおよそ等しいときに始まる。有用とは、遠距離場で測定されたときに、指向性デバイスが、指向性デバイスなしで動作する音響源または音響受信部の出力または入力と比較して、放射が望まれない方向において出力または入力を少なくとも3dB低減したことを意味する。
【0028】
導管に結合される音響源/音響受信部が、単一の電気音響変換器またはマイクロフォンが結合されている場合など、単一の点要素によって近似できるとき、図3Aの漏れ部48など、固定された時間遅延における平面状のエンドファイヤ表面の「延在」は円弧区域となる。この場合、直角方向における指向性制御は、長さがおおよそ1/2波長であるときに起こる。上記の円弧区域の長さが、導管の形と、円弧長さが評価される時間遅延とによって決定されることは、留意されるべきである。より長い時間遅延について、源から放出される音は、より長い距離を進行することになり、円弧区域の半径はより大きくなり、これは円弧区域長さがより長くなることを意味する。これは、エンドファイヤ方向において、導管の長さによって制限される。源から導管の端までの距離は、所与の構造について可能な最も大きい半径を制御する。先の記載は、平面状の形状を保持するが、後に記載しているより複雑な三次元のシェルの形を必ずしも保持しない。また、音響源/音響受信部が異なる構成を有し、単一の単極によって近似されない場合、固定された時間遅延における導管の延在は円弧ではない可能性がある。
【0029】
一部の例では、実質的に重なることが、エンドファイヤ指向性の制御および直角の次元の指向性の制御の周波数範囲にとって望ましい。これらの例では、エンドファイヤ方向における周囲漏れ部の長さは、固定された時間遅延のための漏れ部の(最大)延在と同じ程度となるように構築および配置される。円形の区域の形を有するデバイスの一例では、最大時間遅延における区域の半径および円弧長さは、同じ程度の規模となるように選択される。一部の例では、これらは同じとなるように選択される。指向性の制御の同じ周波数範囲について、最大利用可能時間遅延における(つまり、導管の端における)漏れ部の円弧長さは、エンドファイヤ方向における周囲漏れ部の長さのおおよそ2倍の長さとなるべきである。先に言及したように、有用な指向性制御は、エンドファイヤ周囲漏れ部の長さが1/4波長であるとき、および、最大の一定の時間遅延における円弧長さが1/2波長であるとき、得られる。
【0030】
一部の例では、有用な挙動は、エンドファイヤ指向性の制御および直角の方向の指向性制御の周波数範囲におけるオクターブ差までである場合に得られる。一部の例では、エンドファイヤ方向における周囲壁漏れ部長さに対する最大時間遅延での円弧長さの割合は、1から4の間であるように選択され、これは、エンドファイヤにおける指向性の制御の周波数範囲をもたらし、直角の方向同士は互いの1オクターブ内となる。
【0031】
一部の例では、有用な挙動は、指向性制御の周波数範囲における3オクターブ差までである場合に得られる。他の関係も可能であり、本開示の範囲内に含まれる。
【0032】
エンドファイヤ周囲漏れ部長さrを伴う平面状のデバイスについて、一定の時間遅延を可能とする最大円弧長さは、360°の円の平面状のデバイスであり、円弧長さは、半径rにおけるデバイスの周囲である。これは、おおよそ6.28のエンドファイヤ周囲漏れ部長さに対する一定の時間遅延漏れ部円弧長さの最大割合を提供する。平面状の円形の導管が対する角度が小さくされるにつれて、この最大割合はさらに小さくされる。例えば、180度が半円形の放射表面に対する場合、一定の時間遅延における最大円弧長さは、エンドファイヤ周囲漏れ部長さの3.14倍まで小さくされる。概してエンドファイヤ表面について、放射表面についての対応する角度は、簡単な線形のエンドファイヤデバイスにわたって任意の有用な指向性制御の便益を得るために、少なくとも15度となるべきである。15度の角度に対応する、円形の導管についてのエンドファイヤ周囲漏れ長さに対する円弧長さの割合は、0.25である。
【0033】
エンドファイヤ表面源の例は、図1および図3に示されている。図1Aおよび図3では、導管は、源の場所から概して半円形の様態で延在している。図3は完全な1/2の円の導管を示しているが、図1は1/2の円より若干小さい導管の拡がりを示している。図1は、必然的に平面状の導管の平面における音響源も示しているが、図3における源は、平面状の導管の平面の上方に位置付けられ、導管の区域は、エネルギーを高くされた源から平面状の区域へと伝導する。周囲壁における漏れ部は、半円形の概して平面状の区域にわたって起こる。これらの例における固定された時間遅延の漏れ部の延在は、円弧の区域である。任意の角度の円形の区域についての円弧長さは、容易に計算される。図1Aの例は、半円形のエンドファイヤ表面源を示している。一部の例では、エンドファイヤ表面デバイスは、任意の円形の区域である概して平面状の放射区域を有する。例えば、エンドファイヤ音響デバイスは、1/4の扇形、1/8の扇形、(図3Aに示しているような)1/2の扇形、3/4の扇形、または、図4Aに示しているような完全な扇形であり得る。任意の円形の区域がここでは検討されている。
【0034】
源/受信部は、図1および図2に示しているように、概して、導管の平面状の放射区域の平面に位置付けられ得る、または、図3に示しているように、概して平面状の区域の上方もしくは下方に配置され得る。
【0035】
エンドファイヤ表面デバイスの例は、半円形または円形の形状に限定されない。一部の例では、導管の概して平面状の区域は、図2に示しているように、任意の形を有し得る。源/受信部は、導管の平面状の放射区域の平面に概して位置付けられ得る、または、その平面の上方もしくは下方に配置され得る。源/受信部は、任意の形とされた平面状の区域の幾何学的な中心もしくはその近くにおいて導管に結合し得る、または、この中心からずらされ得る。導管に音響的に結合される1つまたは複数の音響源/音響受信部があり得る。
【0036】
上記のエンドファイヤ表面デバイスの例では、導管は、導管内から外部環境へと、または、環境から導管内へと、漏れ部を通じて音響エネルギーを放射するために、平面状の区域がその周囲壁の周りで分配された漏れ部を有する概して平面状の放射区域を有するとして記載されている。一部の例では、周囲壁の漏れ部を伴うこの放射区域の一部または全部が、放射区域が概して平面状であるとしてもはや記載できないような三次元の形へと湾曲される。これらの例では、デバイスは、エンドファイヤシェルデバイス(つまり、源または受信部)と称される。エンドファイヤシェル源の例は、図4図5、および図8に示されている(図8は円錐形の形状を示しているが、この形状は限定ではない)。制御された漏れ部を伴う導管区域の周囲を三次元の表面へと湾曲することは、出力または入力の体積速度がもはや平面に制約されないため、デバイスの指向性のさらなる制御を提供する。湾曲は、特に、エンドファイヤデバイスが比較的狭い指向性パターンを有する傾向があるより高い周波数において、エンドファイヤ指向性制御を拡大するために使用できる。
【0037】
一部の例では、音響エネルギーが漏れる周囲壁表面が、三次元表面へと湾曲され得る。図8の指向的に放射する音響デバイス70の円錐形の導管表面72など、製造するのがいくらかより簡単であるという便益を有する一例の表面は、円錐形である。この例では、源78からの音は下方表面74を通じて漏れるが、表面は、音が上方を向く壁を通じて漏れるように逆さにされてもよい。一部の例では、デバイスは、図8の円錐形のデバイスの180度など、円錐形の構造体の一部なだけであってもよい。
【0038】
例えば米国特許第8,351,630号は、エンドファイヤ線源の例を記載している。米国特許第8,351,630号は、「管」(米国特許第8,351,630号で使用されている「管」という用語は、本明細書で使用されている「導管」に概して対応する)内での音響エネルギーの伝播の方向に対して垂直な「管」の断面が、「管」の長さに沿って変化でき、より具体的には、源からの距離とともに減少できることを記載している。これは、エネルギーが管から外部環境へと漏れるとき、「管」内の圧力を「管」の長さに沿ってより一定に維持するための方法として記載されている。
【0039】
エンドファイヤ表面デバイスおよびエンドファイヤシェルデバイスでは、エネルギーが漏れ部を通じて漏れる、または、漏れ部の抵抗で消散されるにつれて、導管内の音響圧力をおおよそ一定に維持することが望ましい可能性がある。しかしながら、一定の圧力が必要とされないが、断面積が変化されない場合に起こる圧力損失を低減するために、導管の形状を変えることが望ましい場合もあり得る。エンドファイヤ表面デバイスおよびエンドファイヤシェルデバイスでは、漏れ部の延在は、エンドファイヤ線デバイスにおける漏れ部の延在より実質的に大きい。エンドファイヤ表面デバイスおよびエンドファイヤシェルデバイスの例では、一定の時間遅延の漏れ部の延在が、指向性の制御の最も小さい周波数のおおよそ1/2波長であるため(これは、エンドファイヤ線源の例における一定の時間遅延の漏れ部の延在より実質的に大きい)、エンドファイヤ線源について米国特許第8,351,630号に記載されている導管の断面積の変化は、エンドファイヤ表面デバイスおよびエンドファイヤシェルデバイスの有用な動作を維持するのに十分ではない。これは、導管の深さが、源/受信部からの距離の関数として、周囲を通って漏れる過剰なエネルギーを補完するだけの素早さで小さくならないためであり、これは、一定の時間遅延寸法における延在が、直線の場合においてよりも実質的に大きいためである。一定の時間遅延の方向における延在の増加のため、導管における圧力を比較的一定に維持するために必要とされる伝播方向における源/受信部からの距離の関数として導管の深さを低減することは、導管の深さを、壁に対する過剰な粘性損失のない音の伝播にとって浅くさせすぎてしまうことになる。
【0040】
導管の外の音響エネルギー漏れ部のすべてを、エンドファイヤ表面源およびエンドファイヤシェル源における源の場所に近付けすぎることを回避するために、以下の手法のうちの1つまたは複数に従うことができる。その他すべてが同じであっても、源からの一定の距離(一定の時間遅延区域)における導管の断面積は、先行技術におけるエンドファイヤ線源の場合における断面より、源から離れる方向に沿ってはるかにより素早く小さくならなければならい。これは、固定された時間遅延の漏れ部の延在が増加するにつれて、導管の深さが極めて小さくならなければならないため、問題となる。このような浅い深さを有する導管内の伝播は、望ましくない非線形の伝播挙動を生じさせ得る。導管自体が音響エネルギーの流れを妨げ始め(つまり、粘性損失を呈する)、音響エネルギーは、この導管の粘性損失において消散されることになる。導管の粘性損失で消散されるあらゆるエネルギーは、指向性制御にとってもはや有用でなく、デバイスの効率が低下させられる。
【0041】
非常に浅い深さを生じる問題を回避するために、一部の例では、周囲壁漏れ部を通じて漏れたエネルギーの大きさは、源/受信部の場所からの距離の関数として変化させられる。これは、源/受信部からの距離の関数として漏れ部の面積を変化させることによって、源/受信部からの距離の関数として漏れ部の音響抵抗を変化させることによって、またはそれらの組合せで、実現され得る。概して、漏れ部の面積は源/受信部の近くで小さくされ、および/または、漏れ部の音響抵抗は源/受信部の近くで大きくされる、ならびに、漏れ部の面積は、源/受信部からの距離が増加するにつれて徐々に大きくされ、および/または、漏れ部の抵抗は、源/受信部からの距離が増加するにつれて小さくされる。これは、空間的に変化する音響抵抗を有する材料を、源または受信部からの距離の関数として、一定の面積を有する周囲において漏れ開口を覆うように置くことによって、源/受信部からの距離の関数として漏れ部面積を変化させ、一定の音響抵抗を有する材料を、漏れ部を覆うように適用することによって、または、面積を変化させ、異なる音響抵抗を有する材料を用いることによって、効果的に実現され得る。また、周囲の音響抵抗および漏れ部面積は、一部の手法で(例えば、フォトリソグラフィー技術を用いて)、周囲壁表面の音響抵抗を制御するために制御されたエッチング孔の場所、大きさ、および形で、導管の周囲壁のエッチングされた領域を形成することで、直接的に制御され得る。
【0042】
源からの距離の関数として漏れ部の領域の百分率を変えるために遮蔽材料を用いる一例は、図9Aでデバイス80に示されている。図9Bは、半分に分割された図9Aのデバイス80を示している。デバイス80は、上方の放射部86を通じて体積速度を放出する。変換器が場所88において結合される。これらの図において、白い領域82は、体積速度が導管からこれらの区域を通じて漏れないように、音響的に不透過の材料で遮蔽されている。他の網掛けされた領域84は音響抵抗を有し、導管からの体積速度は、これらの領域を通じて漏れさせられ得る。領域84は、音響的に抵抗スクリーンまたはメッシュ材料の使用によって形成できるが、領域82は、メッシュ材料の部分を音響的に不透過の材料で覆うことで作り出されてもよい。選択的に遮蔽された抵抗性の表面の比限定的な例は、図10Aおよび図10Bとの組合せで以下においてさらに記載されている。代替で、例えば、織りの目の詰まりが空間的に変化される織物材料といった、可変の音響抵抗を有する材料が使用されてもよい。中心(源の場所88である)近くの非常に小さい領域が漏れのために利用可能であり、漸次的により大きな領域が、源の場所からの距離が増加するにつれて、体積速度の漏れのために利用可能であることが、見て取れる。この例における遮蔽が規則正しい矩形のパターンを有することも、見て取れる。これは、製作における利便性のために行われているだけであり、他のパターンがここでは検討されている。図9Aおよび図9Bに示された概念は、指向性の受信部に適用され得る。
【0043】
図10Aおよび図10Bは、漏れ部面積を制御するための遮蔽された周囲と、導管94の上方に搭載する単一のラウドスピーカ源92とを伴う概して半円形のエンドファイヤシェル源90の完全な組立体の下面図および上面図をそれぞれ示している。補強構造体106は、基部101と、半円形の周囲部102と、径方向の助材103とを備え得る。孔104は、壁または天井などの表面への搭載を提供するために含まれてもよい。パターン化された領域96が、音響的に不透過の材料で遮蔽されるが、導管表面100の残りの部分98は、抵抗スクリーンを備え得る放射部を備える。
【0044】
音波は、外部環境に到達する前に、抵抗スクリーン98を通過する。抵抗スクリーン98は、メッシュ材料または編物の1つまたは複数の層を含み得る。一部の例では、材料または編物の1つまたは複数の層が、単繊維の編物(つまり、1つだけの繊維を有し、そのため繊維と糸とが一致する糸から作られた編物)から各々作られてもよい。編物はポリエステルから作られてもよいが、金属、綿、ナイロン、アクリル、レーヨン、ポリマ、アラミド、繊維複合体、ならびに/または、同じ特性、同様の特性、もしくは関連する特性を有する天然および合成の材料、もしくは、それらの組合せを含むが、これらに限定されない、他の材料が使用されてもよい。他の例では、多繊維の織物が、織物の層のうちの1つまたは複数のために使用されてもよい。
【0045】
一例では、抵抗スクリーン98は2つの層の織物から作られ、一方の層は、第2の層と比較して、より大きな音響抵抗を有する織物から作られている。例えば、第1の織物は、200〜2,000レイリーの範囲である音響抵抗を有し得るが、第2の織物は、1〜90レイリーの範囲である音響抵抗を有し得る。第2の層は、抵抗スクリーンに構造的な一体性を提供するために、および、大きな音圧レベルでのスクリーンの移動を防止するために、粗いメッシュから作られた織物であり得る。一例では、第1の織物は、おおよそ1,000レイリーの音響抵抗を有するポリエステルに基づく織物であり(例えば、イタリアのミラノのSaatiによって供給されるSaatifil(登録商標)ポリエステルPES10/3)、第2の織物は、粗いメッシュから作られたポリエステルに基づく織物である(例えば、同じくイタリアのミラノのSaatiによって供給されるSaatifil(登録商標)ポリエステルPES42/10)。しかしながら、他の例では、他の材料が使用されてもよい。また、抵抗スクリーンは、このような金属に基づくメッシュまたはポリエステルに基づく織物など、織物または材料の単一の層から作られ得る。さらに他の例では、抵抗スクリーンは、3つ以上の層の材料または織物から作られ得る。抵抗スクリーンは、スクリーンを耐水性にするために、疎水性の被覆を備えてもよい。
【0046】
音響的に抵抗性のあるパターン96は、抵抗スクリーンの表面に適用されてもよい、または、その表面に生成されてもよい。音響的に抵抗性のあるパターン96は、実質的に不透過で不浸透の層であり得る。したがって、音響的に抵抗性のあるパターン96が適用される場所では、そのパターンがメッシュ材料または織物における孔を実質的に塞ぎ、それによって、発生した音波が抵抗スクリーン98を通って外向きに(または、円形でない形および球形でない形について、線形の方向で外向きに)径方向で移動するにつれて変化する平均音響抵抗を作り出す。例えば、音響的に抵抗性のあるパターン96のない抵抗スクリーン98の音響抵抗が、所定の領域にわたっておおよそ1,000レイリーである場合、音響的に抵抗性のあるパターン96を伴う抵抗スクリーン98の平均音響抵抗は、電気音響ドライバ92により近い領域にわたっておおよそ10,000レイリーとでき、ラウドスピーカの縁102により近い領域にわたって(例えば、音響的に抵抗性のあるパターン96を含まない領域で)おおよそ1,000レイリーとできる。音響的に抵抗性のあるパターン96の大きさ、形、および厚さは、変化してもよく、単なる一例が図10Aおよび図10Bに示されている。
【0047】
音響的に抵抗性のあるパターン96を生成するために使用される材料は、抵抗スクリーン98のために使用される材料または織物に依存して変わってもよい。抵抗スクリーン98がポリエステルの織物を備える例では、音響的に抵抗性のあるパターン96を生成するために使用される材料は、塗料(例えば、ビニル系塗料)、または、ポリエステル織物と互換性のある一部の他の被覆材料であり得る。他の例では、音響的に抵抗性のあるパターン96を生成するために使用される材料は、接着性のものであり得る、または、ポリマであり得る。さらに他の例では、被覆材料を抵抗スクリーン98に加えるのではなく、音響的に抵抗性のあるパターン96は、例えば、抵抗スクリーン98をメッシュ材料または織物の交差を選択的に溶解するために抵抗スクリーン98を加熱することでといった、抵抗スクリーン98を備える材料を転換することで生成されてもよく、それによって、材料または織物における孔を実質的に塞ぐ。
【0048】
本明細書に記載しているようなラウドスピーカを作るための例示の過程は、2015年3月31日に出願された「Method of Manufacturing a Loudspeaker」という名称の米国特許出願第 号に記載されており、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【0049】
一部の例では、エンドファイヤ表面デバイスおよびエンドファイヤシェルデバイスは、部屋の1つまたは複数の壁面または天井面に、または、その面に近接して備え付けられる。これらの例では、周囲壁における漏れ部は、音を部屋の内容積へと放出するために、または、部屋の内容積からの音を受信するために、配置され得る。放射は、部屋の床に向けて、もしくは、望むように部屋における他の場所に向けて、方向付けられ得る、または、部屋の床から、もしくは、望むように部屋における他の場所から、受信され得る。これらの例では、デバイスは、単一の側面とされた挙動を有することができる。つまり、音響エネルギーは、平面状またはシェルの表面の一方の側だけを通じて漏れる。
【0050】
例示のエンドファイヤシェル音響受信部が図11Aおよび図11Bに示されている。デバイス120は、マイクロフォン要素を保持する開口132および133を伴う筐体122を備えている。1つ、2つ、またはより多くのマイクロフォン要素があり得る。デバイス120は、約90度の角度に対応する概して1/4の円形の輪郭を有する。端/側壁123は、デバイスを下向きに設置させることができるが、これは必須の特徴ではない。周囲フランジ126は剛性を提供する。助材127〜129は、内部棚130と共に、固体壁124の上方に突出し、抵抗スクリーン(図示せず)が位置付けられている表面を定めている。スクリーンは漏れ部を実現する。スクリーンは、図9および図10に関連して先に記載した種類のものであり得る。導管は、このスクリーンと壁124との間に形成されている。見て取れるように、周囲壁126からマイクロフォンの場所まで、導管の深さは漸次的に増加している。
【0051】
いくつかの実施が記載されてきた。しかしながら、追加の変形が、本明細書に記載した本発明の概念の範囲から逸脱することなく行われてもよく、したがって、他の実施形態が以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが、理解されるであろう。
【符号の説明】
【0052】
10 指向的に放射する音響デバイス
12 構造体、導管
14 ラウドスピーカ、音響源
16 近位端
18 導管周囲
20 壁表面、壁
23 放射部、漏れ区域、漏れ部
30 指向的に放射する音響デバイス
32 構造体
34 源
40 指向的に放射する音響デバイス、導管
42 周囲壁表面
44 最遠の延在
46 源、スピーカ
48 漏れ区域
50 指向的に放射する音響デバイス
52 周囲壁区域
54 外側端
56 源
60 指向的に放射する音響デバイス
62 導管
64 周囲
66、68 源
70 指向的に放射する音響デバイス
72 導管表面
74 下方表面
78 源
80 デバイス
82 領域
84 領域
86 放射部
88 場所
90 エンドファイヤシェル源
92 ラウドスピーカ源、電気音響ドライバ
94 導管
96 領域、音響的に抵抗性のあるパターン
98 残りの部分、抵抗スクリーン
100 導管表面
101 基部
102 周囲部、縁
103 助材
104 孔
120 デバイス
122 筐体
123 端/側壁
124 壁
126 周囲フランジ、周囲壁
132、133 開口
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B