(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記腰板の線路側の所定の面であって、鉄道車両に乗った乗客から見えるような位置に広告や行政情報を表示する電子看板が所定の範囲に亘って設けられていることを特徴とする請求項4に記載の軌道上の火山灰堆積防止構造。
請求項1乃至請求項5の軌道上の火山灰堆積防止構造を鉄道の軌道及び架線に火山灰が堆積するのを防止する代わりに、車両の高速道路上に設けたことを特徴とする軌道上の火山灰堆積防止構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
我が国は地理的特徴から火山が多い国として知られており、その中でも過去に富士山で宝永大噴火が起こった歴史的事実があり、かつ近年では首都圏からさほど遠くない地域においても火山が噴火したり噴火の前兆である水蒸気爆発が生じたりするなど、様々な火山活動が予測不可能に起こっている。
【0006】
これに加えて、例えば富士山に関しては宝永大噴火からかなりの年月が経過しており、規模の大きな噴火が起こる可能性が高く、かつこのような火山の噴火を事前に正確に予知することは現時点の技術では非常に難しい。
【0007】
例えば富士山が宝永大噴火のように再び噴火したとすると、偏西風に乗って御殿場や湘南や相模全域には約20センチから30センチの火山灰が堆積すると共に、都心においても少なくとも約3センチ程度の火山灰が積もると考えられている。
【0008】
このような事態が生じると、鉄道の軌道全体に火山灰が堆積してしまう。そのため、バラスト軌道の構造は、レール(軌条)の上や、レールを支持する枕木、軌道に沿ってレール周辺や砕石を敷き詰めて形成される道床の一番上の面に火山灰が積もる。更なる問題として道床を形成する個々の砕石の間の空間にも火山灰が充満してしまうことも生じる。
【0009】
そのため、例えば特開2017−115320号公報に開示されたような装置が紹介されている。しかしながら、レール(軌条)やその近傍に堆積した火山灰を係る火山灰除去装置で除去しても、砕石の間の空間を埋め尽くした火山灰まで除去することはできない。
【0010】
このような状態において急に雨が降ったりすると、道床の上に堆積した火山灰が雨水に混ざってスラリー状となり、砕石同士の奥深くに流れ込んでいく。その後、道床内部の火山灰がモルタル状に固まってしまい更に除去が難しくなってしまう。
【0011】
これによって、従来のバラスト軌道のように鉄道が走行する際の振動を吸収できなくなり、車両走行中の振動が増大して共振したりして脱線等の重大な事故が発生する恐れが増す。
【0012】
また、火山灰が架線に付着した状態で雨が降ると、その部分が湿って導電性を有するようになり、かつ水分を含んだ火山灰の重みで架線が垂れ下がって予期せぬ放電(スパーク)が生じ、思わぬ火災を招く恐れがある。また、水を含んだ状態で固まった火山灰が架線に付着した状態で風が吹いたりすると、その付着した火山灰の重さで架線に過大な引っ張り応力が生じ、架線自体が断線して重大な事故を招く恐れもある。
【0013】
また、鉄道の軌道への火山灰の堆積により、鉄道の運行に大幅な遅延が生じることにとどまらず、運行自体が行われなくなり、冬場に突然大雪が降った場合のように様々な鉄道が運行停止となってしまい、大量の帰宅困難者が生じる。大雪が降った場合は、降り積もった雪が溶ければ鉄道の運行を問題なく再開できるが、火山灰の堆積の場合は、これとは異なり鉄道の運行が問題なく復旧するまで長期間を要してしまい、大地震の発生の際のように一時的ではなく長期に亘って帰宅困難者が発生するという問題が生じてしまう恐れが十分に考えられる。
【0014】
以上に加えて発明者である出願人が特に強調(主張)したい点について述べる。東北地方太平洋沖地震では、予想された津波の高さが10メートルかそれより少し大きい程度と言う大まかなで控えめな値であったのに対して、実際には多くの地域において40メートルもの高さという遥かに大きな津波が押し寄せてきた。しかしながら、これにより甚大な被害を被ったあとで「予測不可能な想定外の規模の津波の発生により甚大な被害を被った」という風潮で災害に対する事前対策が不十分である落ち度についての責任の所在については曖昧なままとなっている。これは、災害対策のコストを都合の良いように抑えるための方便として津波の予想値が算出されていたことに起因するある意味人為的災害とも言える。
【0015】
ここで、事前に「想定外の」という言葉で片付けられた災害の規模を想定の範囲内として予測して対策しておけば、多くの尊い人命を失うことなく、かつ原発事故や広範囲に亘る都市や町の破壊を最小限に抑えることができたはずである。
【0016】
また、昨今では南海トラフの地震発生が頻繁に話題となっているが、この発生に伴う津波の規模の予想についても、その時々に応じて予想値が変わってはっきりしない現状である。従って、実際にこのような南海トラフの大地震が発生した場合、今までの予想される津波の規模よりも大きい津波が来て被害を被った後に、この場合にも「想定外の津波が到来した」と片づけられてしまう恐れもある。
【0017】
また、近年南海トラフの地震の発生については頻繁に話題にされているが、上述した宝永大噴火からかなり年月の経った富士山の大噴火については、地震発生の可能性の話題に隠れてあまり目立たなくなっている現状である。
【0018】
しかしながら、南海トラフの地震の発生と富士山の大噴火との関連性についても否定することはできず、両者が連動して未曾有の大災害が発生する可能性も考えられる。
【0019】
このような大災害が発生したときに、これも「想定の範囲外であった」と片づけることは、災害発生による多くの尊い人命が失われたり周辺の都市が壊滅的な被害を受け莫大な経済的損失を受けたりすることを事後承認してしまうことになる。つまり、現状のままでは、結局のところ様々な未曽有の災害において生ずる恐れのある甚大な被害の言い方の方便として「想定の範囲外であった」という極めて都合の良い結果論的な言葉で片付けられてしまう。
【0020】
また、富士山の宝永大噴火の際は、この噴火が2週間続いたと言われているが、近い将来確実に起こるであろうとされている富士山の次なる大噴火が南海トラフ等との関連も含めてこの程度の規模で収まる保証は全くなく、日本全国に散らばる活火山のように噴火が長期化する恐れも否定できない。仮に富士山の噴火が2か月から半年程度続いたとすると、宝永大噴火の際の被害の程度で済まないのは自明である。
【0021】
また、富士山の噴火に伴い、その近辺で水蒸気爆発等が生じている箱根が連動して噴火し、被害規模が更に大きくなる恐れも否定できない。
【0022】
以上のようなことから、予想される甚大な災害に対する適切な対策を事前に適切に行わずに実効性に欠ける不十分な対策のまま又は全く対策を取らないまま放置しておくと、結果的に想定外の規模の災害となった時に被る人的損失や経済的損失は計り知れないものとなる。事実、東北地方太平洋沖地震においても、予想のできなかった人的損失と一説によると20兆円という莫大な経済的損失を被っている。
【0023】
従って、適当な見込みの予測のみでこのような災害に対する対応策を取っていたのでは、結局のところ未曽有の災害が発生したときに上述した様々な損失を防ぐ効果を発揮することができないので、事前に想定外の規模の災害が起こることを前提とした規模の防災設備を、例えば数兆円という国家予算の一部を占める程度まで設置コストが嵩んでも、噴火が発生する近隣地域に準備しておくことが地震やこれに伴う火山の噴火の多い我が国にとって重要なことである。
【0024】
本発明の目的は、上述した火山が噴火した際に火山灰が鉄道の軌道上に堆積するのを確実に防止する構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の請求項1に係る軌道上の火山灰堆積防止構造は、
火山の噴火の際に火山灰が鉄道の軌道上に堆積するのを防止する軌道上の火山灰堆積防止構造であって、
鉄道の軌道上であって架線を覆う高さにおいて、当該軌道上に前記火山灰が堆積するのを防止するのに十分な所定の幅を有しながら前記鉄道の軌道に沿って所定の長さに亘って延在するように取り付けられた屋根部と、屋根部全体に水を流す水流し供給部を有し、
前記屋根部は、幅方向一方の端部から幅方向他方の端部に亘って水流れ方向上流側から下流側に傾斜するように形成され、
前記水流し供給部は、前記屋根部の水流れ方向上流側となる前記軌道の延在方向に沿って取り付けられていることを特徴としている。
【0026】
また、本発明の請求項2に係る軌道上の火山灰堆積防止構造は、請求項1に記載の軌道上の火山灰堆積防止構造において、
前記水流し供給部は、水道管から供給された水を送水するのに適した所定長さの水供給パイプをそれぞれの端部結合体で結合して軌道上に設けた
前記屋根
部の水流れ方向上流側端部に沿って長手方向全体に亘って延在し、
前記各パイプにはその周方向所定の位置において水流下用のスリットが長手方向略全体に亘って形成されていることを特徴としている。
【0027】
また、本発明の請求項3に係る軌道上の火山灰堆積防止構造は、請求項1に記載の軌道上の火山灰堆積防止構造において、
前記屋根
部の少なくとも一部には太陽光発電パネルが敷設され、
当該屋根
部の傾斜の向きは、前記太陽光発電パネルが太陽光を利用して効率的に発電できる向きに備わっていることを特徴としている。
【0028】
また、本発明の請求項4に係る軌道上の火山灰堆積防止構造は、請求項1に記載の軌道上の火山灰堆積防止構造において、
前記屋根
部の軒先の下方であって線路が敷設されている道床の幅方向一方の脇に、
当該屋根
部から水と共に流れ落ちた火山灰が前記道床に入り込むのを防止する所定の高さの腰板が前記鉄道の軌道に沿って所定の長さに亘って備わっていることを特徴としている。
【0029】
また、本発明の請求項5に係る軌道上の火山灰堆積防止構造は、請求項4に記載の軌道上の火山灰堆積防止構造において、
前記腰板の線路側の所定の面であって、鉄道車両に乗った乗客から見えるような位置に広告や行政情報を表示する電子看板が所定の範囲に亘って設けられていることを特徴としている。
【0030】
また、本発明の請求項6に係る軌道上の火山灰堆積防止構造は、
請求項1乃至請求項5の軌道上の火山灰堆積防止構造を鉄道の軌道及び架線に火山灰が堆積するのを防止する代わりに、車両の高速道路上に設けたことを特徴とする軌道上の火山灰堆積防止構造である。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る軌道上の火山灰堆積防止構造によると、例えば富士山に代表される規模の大きい火山の予測できない噴火に伴い広範囲に火山灰が降ってきたときに、その火山灰が鉄道の軌道に降り積もる前に水流し供給部から屋根全体に水流れ方向上流側から下流側に亘って水を流す。これによって、屋根に積もった火山灰を鉄道の軌道の外に流し落とすことができ、鉄道の軌道上に火山灰が堆積するのを防止する。
【0032】
また、火山灰が降った直後であっても鉄道走行時の視界が降灰によって遮られないので鉄道の運行に支障をきたすことなく、噴火した火山の周辺住民の避難に役立てることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の第1の実施形態に係る軌道上の火山灰堆積防止構造について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る軌道上の火山灰堆積防止構造を腰板が備わった状態で示す側面図である。また、
図2は、
図1に示した第1の実施形態の第1の変形例として腰板の線路側に広告・行政情報表示用の電子看板が備わった状態を点線で示す側面図である。また、
図3は、本発明の第1の実施形態及びその第1の変形例に係る軌道上の火山灰堆積防止構造を、腰板の一部を取り除いて鉄道が軌条(レール)の上を走行した状態で示す側面図である。また、
図4は、本発明の第1の実施形態及びその第1の変形例に係る軌道上の火山灰堆積防止構造を、鉄道が走行する前方から示す正面図である。
【0035】
本発明の第1の実施形態に係る軌道上の火山灰堆積防止構造(以下単に適宜「軌道上の火山灰堆積防止構造」とする)1は、鉄道10の軌道上であって、架線11を覆う高さにおいて鉄道10の軌道12に沿って所定の幅を有しながら延在するように取り付けられた屋根部100と、屋根部全体に水を流す水流し供給部200を有している。
【0036】
屋根部100は、例えば片流れの瓦棒葺き屋根の構造を有する屋根材110と、この屋根材110を支えるために鉄道10の道床13の両脇に所定の間隔で設けられた屋根材支持部120を有している。屋根部100の所定の幅とは、軌道上に火山灰が堆積するのを防止するのに十分な所定の寸法で規定されている。
【0037】
なお、本発明においては上述の屋根材110の上に太陽光発電パネルを敷きつめたり、太陽光発電パネル自体を屋根材110の代わりとして瓦棒に直接取り付けたりする構造も考えられる。この太陽光発電パネルを取り付けた場合のメリットについてはかなり大きなものがあるので、本発明の特別に重要な形態として後述する第2の実施形態において詳しく説明する。
【0038】
なお、本実施形態においては、屋根部自体は鉄道の軌道12に沿って所定の長さを有する複数の屋根部ユニットをその延在方向の隣接する端部間を直列に結合して鉄道の軌道に沿ってかなり距離のある屋根部100を構成するようになっている。つまり、
図1乃至
図3に示す所定長さの屋根部100が複数直列に互いに間隔をさほど空けることなく連なっている。
【0039】
屋根部100の屋根材110は、幅方向一方の端部から幅方向他方の端部に亘って水流れ方向上流側から下流側に傾斜するように備わっている(
図4参照)。そして、屋根部100の幅方向一方の端部の水流れ方向上流側(つまり屋根材110の棟側)101において屋根部100の延在方向、即ち鉄道10の軌道12に沿って水流し供給部200が延在するように設けられている。
【0040】
屋根部100は、それ自体近年到来する巨大台風に耐え得る強度を有していれば、上述のような単純な(シンプルな)構造であっても必要かつ十分である。
【0041】
なお、上述の実施形態においては、屋根材110を幅方向一方の端部から他方の端部に亘って一定の角度で傾斜する構造としたが、このような構造とせずに幅方向中央部から一方に向かって傾斜する一方の屋根材と他方に向かって傾斜する他方の屋根材からなるいわゆる合掌造りの構造としても良い。
【0042】
しかしながら、合掌造りの構造にすると、その棟に双方の屋根材に水を流すためのパイプをそれぞれ1本ずつ設けなければならず、構造が複雑となると共に屋根部全体の構造も複雑となる。また、風通しについても本実施形態の方が優れている。更には製造コストの面に関しても本実施形態の方が優れている。従って、上述した合掌造りの構造とするよりも、本実施形態のような片方にのみ屋根材110が傾斜している構造の方が好ましいといえる。
【0043】
なお、既存の駅のプラットホームの屋根は通常合掌造りの構造となっているので、このような部分においては棟の両側にそれぞれの軒先に向かって屋根全体に水を流す水流し供給パイプを1本ずつ設けても良い。これによって、既存の駅の合掌造りの屋根構造をそのまま利用することができるので、コスト低減を図ることが可能となる。
【0044】
続いて、水流し供給部200について説明する。
図5は、
図1乃至
図4に示す水流し供給部のパイプの水の供給の仕方を示す説明図である。また、
図6は、
図5に示す水流し供給部においてスリットの備わったパイプとこのパイプの端部同士を結合する端部結合体を部分的に拡大して示す側面図である。
【0045】
水流し供給部200は、水道管(図示せず)から供給された水を送水するのに適した所定長さの水供給パイプ210をそれぞれの端部結合体220で結合した状態で軌道上に設けた屋根部100の水流れ方向上流側端部に沿って長手方向全体に亘って延在している。そして、各水供給パイプ210にはその周方向所定の位置において水流下用のスリット211が長手方向略全体に亘って形成されている。
【0046】
水供給パイプ210は、いくつかの端部結合体220で結合して所定の長さをなし、水供給パイプユニット21(
図5参照)を鉄道10の軌道12に沿って屋根材110の棟側に所定の長さだけ直列に繋げて形成されている。そして、水供給パイプユニット21の両端には、
図5に示すように、水道水から水を供給する水道水供給管230が接続されている。そして、火山の噴火と共に、それを検知して水流し供給部200に水道水を供給する水道水供給管230に備わった水道水供給開閉弁235,236が開放されて、図示しない水道管からから水道水(
図5の細い矢印参照)が供給されパイプ210に水が瞬時に流れ込むようになっている。
【0047】
より詳細には、水流し供給部200は、パイプ210同士を端部結合体220によって結合してかなり長い距離に亘って延在するように構成されて水供給パイプユニット21を構成しており、この水供給パイプユニット21が屋根部100の棟に沿って
図5に示すように直列に連なって延在配置されている。なお、各水供給パイプユニット21の両端部間の距離Lの一例としては、500メートル〜1000メートル程度が考えられる。
【0048】
パイプ210同士を端部結合体220で結合してかなり長い距離に亘った水流し供給部200において、全長の非常に長いパイプ内のメンテナンスを行うメンテナンスバルブ215がパイプ210に適当な間隔で設けられ、各パイプ210に備わった水流下用スリット211から均等の量の水が屋根材110の上面に沿って流れ落ちるようになっている。また、ここでは図示しないが、パイプ内の水道水の水圧を制御する水道水圧力制御弁(圧力調整制御バルブ)を適当な箇所に備えることで、パイプ210のスリット215の長手方向全ての箇所からほぼ均等な量の水が流れ出すようにしても良い。
【0049】
また、本実施形態においては、屋根材110の軒先111の下方であって線路14が敷設されている道床13の幅方向一方の脇(幅方向片方の側方)に沿って腰板300が立設した状態で延在している。この腰板300は、屋根材110の軒先111から水に混ざってスラリー状となって流れ落ちた火山灰が道床13に入り込むのを防止する所定の高さを有しており、腰板300が鉄道10の軌道12に沿って所定の長さに亘って備わることで、軌道12に向かって風が吹く天候であっても、軌道12の道床13を構成するバラスト15(砕石16の塊)の隙間部分にも水と共に、流れ落ちた火山灰が入り込むのを防止している。なお、
図1においては、説明の都合上腰板300をその延在方向において部分的に示している。
【0050】
腰板300は、鉄道の軌道の例えば踏切の部分においては設けないようにし、火山灰が降り注いだ時のみ軌道の踏切の部分のみ保線係員が火山灰を除去するようにしても良い。
【0051】
なお、腰板300は、後述するように屋根材110の軒先側の下方にのみ延在形成されるのではなく、屋根材110の棟側の下方においても、延在形成されていても良い(
図4における二点鎖線で示す腰板300参照)。
【0052】
続いて、上述した第1の実施形態の作用について図面に基づいて説明する。
図7は、上述した第1の実施形態の作用を説明する
図1に対応する図である。また、
図8は、上述した第1の実施形態及びその変形例の作用を説明する
図4に対応する図である。これらの図から明らかなように、本発明の第1の実施形態においては以下のような作用を有している。
【0053】
火山が噴火して大量の火山灰が
図7及び
図8にまだら状に示すように屋根部100に降り落ちてきても、水流し供給部200から屋根材上面に一斉に流れ落ちる水(
図8に細い波線で示す水参照)に混ざってスラリー状になり、屋根部100の軒先111から流れ落ちる。この際、火山灰は水に混ざってスラリー状の液体となっているが故に屋根部100の軒先111から若干放物線を描くように地面に向かって流れ落ちる。
【0054】
軒先111の下には腰板300が備わっていることで、このスラリー状の火山灰を含んだ水が道床13を構成する砕石の敷き詰められたロバストやその上の枕木、これらによって支えられている軌条(レール)14に流れ落ちるのを確実に防止する。
【0055】
また、腰板300は、一定の高さを有しているので、例えば横風W(
図8参照)が吹き付けても、この火山灰を含んだスラリー状の水は腰板300によって道床13に入り込むことなく、腰板300の線路14と反対側に堆積する。
【0056】
この第1の実施形態に係る軌道上の火山灰堆積防止構造がこのような作用を有することで、火山の噴火によって火山灰が降り注いだ後に急に雨が降っても本発明の解決すべき課題の欄で述べた問題が生じることはない。具体的には、道床13の上に堆積した火山灰が雨水に混ざってスラリー状となり、砕石同士の奥深くに流れ込んでいくことはない。その結果、道床内部の火山灰が固まってしまい更に除去が難しくなってしまうことも無い。これによって、従来のバラスト軌道のように鉄道10が走行する際の振動を吸収できなくなり、車両走行中の振動が増大して共振したりして脱線等の重大な事故が発生する恐れもない。
【0057】
また、火山灰が鉄道の軌道のレール上に堆積するのを防止するために、例えば特開2017−115320号公報において開示された装置のような、レール上を走行する火山灰除去用の特別な保線用車両を用意して軌道上を走らせ、火山の噴火に伴って道床のレール上に降り積もる火山灰を送風機などで吹き飛ばしていくことも考えられる。
【0058】
しかしながら、火山灰が降り積もる全ての区間において常時このような保線用車両を多数用意して常に走行させるのは現実上不可能であり、かつ仮にこのようなことを行ったとしても、レール上から吹き飛ばされた火山灰が道床13のバラスト上に撒き散らされ、その後に雨が降ったときのこの部分の火山灰が雨水と混ざってスラリー状になって道床13を構成する多数の砕石の隙間の中に入り込んでモルタル状に固まってしまうのを逆に促進することになり、事態をより悪化させてしまう。
【0059】
一方、鉄道10の軌道上に降り積もる火山灰を上述のような保線用車両で全て吸引しようとしても、このような保線用車両が火山灰を吸い込む能力や容量には限界があり、実際問題としてはバラストの砕石同士の隙間に入り込んだ火山灰までも吸い取ることは不可能である。
【0060】
更には、本発明の解決すべき課題の欄で述べたように、従来問題となっていた火山灰が鉄道10の軌道12の架線11に付着した場合の危険性を回避することができる。具体的には、従来では火山灰が架線11に付着した状態で雨が降ると、その部分が湿って導電性を有するようになり、かつ水分を含んだ火山灰の重みで架線11が垂れ下がって予期せぬ放電(スパーク)が生じ、思わぬ火災を招く恐れがあったが、本発明ではそのようなことは生じる恐れはない。
【0061】
また、従来では水を含んだ状態で固まった火山灰が架線11に付着した状態で風が吹いたりすると、その付着した火山灰の重さで架線に過大な応力が生じ、架線自体が断線して重大な事故を招く恐れがあったが、本発明ではそのようなことは生じる恐れもない。
【0062】
続いて、上述の実施形態の第1の変形例について図面に基づいて説明する。なお、上述の実施形態と同様の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。第1の変形例に係る軌道上の火山灰堆積防止構造は、
図4に示すように、腰板300の線路側の所定の面であって、鉄道車両に乗った乗客から見えるような位置に広告や行政情報を表示する電子看板310が所定の範囲に亘って設けられている。
【0063】
このような電子看板310を備えることによって、火山の噴火などが起こらない場合は通常の広告宣伝機能として用い広告料を徴収すると共に、火山の噴火が生じた場合は、その噴火の状況や被害状況などを行政情報として流すことが可能となり、人々の不安感を和らげることができる。
【0064】
なお、電子看板310を設ける箇所として、とりあえず駅のプラットホームの一端から他端までという限定した箇所に設けても良い。電子看板310をこのような箇所に設ければ、駅のプラットホーム上で電車を待つ人々が、この電子看板310に表示された内容を容易に見ることができる。そのため、広告上方のみならず、電車遅延の際にホームに人があふれた時にも適当な情報を提供できる。また、火山の噴火等の災害時において大規模な停電(ブラックアウト)が発生した場合であっても、後述する太陽光発電パネルによって発電した電力を利用して火山の噴火状況や災害時の対応担当行政機関等を逐次表示することができ、駅のプラットホームを自然災害に対応する危機管理情報提供センターとして活用することができる。
【0065】
また、駅の倉庫や売店などにおいて駅のプラットホームにたたずむ人たちが火山灰を吸わないようにするためのマスクや、更に好ましくは火山灰が目に入らないようにする簡易ゴーグルを常時数多く保管しておくのが良い。
【0066】
また、駅のプラットホームに沿って腰板に設置した電子看板において常に時刻を表示しておいたり、電車の運行状況や続く電車の到着時間等を表示するようにしたりしても良い。これに合わせて電車の遅延が生じた場合、駅のアナウンスによる状況説明の代わりにこの電子看板に遅延状況を常に表示しておくことによってホームにあふれた人たちが遅延状況を常に確認することができるようになり、電車を待つ人たちの気分を冷静に保つようにすることが可能となる。
【0067】
なお、このような駅のプラットホームの腰板300に電子看板310を設ける際には、プラットホームに立つ人たちから見易いようにこの部分だけ腰板300の高さを多くして、電子看板310の設置位置も
図4に示すよりも高い位置とするのが好ましい。
【0068】
なお、上述の実施形態及びその変形例においては、腰板は、屋根の軒先の下側に位置する線路の幅方向一方側にのみ設けたが、これと異なり線路の幅方向両側に設けても良い(
図4における腰板350参照)。
【0069】
また、電子看板300に加えて線路の幅方向他方側に設けた腰板350に備えるようにしても良い(
図4における二点鎖線で示す電子看板320参照)。これによって、図に示す左右の電車(往路の電車と復路の電車)の双方の乗客とも、電子看板310,320に表示された広告情報や行政報の内容を確認することができる。
【0070】
また、腰板に付ける電子看板は図中線路側において設置した態様を示したが、図中二点鎖線で示す線路の反対側に設けても良い(
図4における電子看板311,321参照)。これによって軌道上を走る鉄道に乗る乗客のみだけが電子看板310,320の内容を認識するだけでなく、例えば駅のロータリー等からも電子看板311,321を介してその内容が見えるようにしても良い。
【0071】
続いて、上述の実施形態の第2の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、上述の実施形態及びその第1の変形例と同様の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図8は、上述の実施形態の第2の実施形態について説明する
図1に対応する図である。また、
図9は、上述の実施形態の第2の実施形態について説明する
図4に対応する図である。
【0072】
第2の実施形態に係る軌道上の火山灰堆積防止構造は、屋根部100の屋根材110の上面の少なくとも一部に太陽光発電パネル400(401,402,403,・・・)が設置され、屋根部100の屋根材110の傾斜の向きは、太陽光発電パネル400が太陽光を利用して効率的に発電できる向きに備わっている。
【0073】
太陽光発電パネル400をこのように設置すると共に、屋根の傾斜の向きを太陽光発電パネル400の発電効率を高めるように設置することで、通常は太陽光発電パネル400によって発電してその鉄道の軌道の所定間隔ごとに設けたバッテリーなどに蓄電しておき、軌道の周囲の夜間の防犯上や安全確保のための照明用の電源や、夜間の駅の照明用や駅の設備の電力として使用することができる。
【0074】
また、上述した腰板に電子看板310を備えた形態において、その電子看板310の広告や噴火直後の行政情報を表示するための電力として使用することが可能になる。また、火山が噴火した直後はその情報に基づいて屋根の上の太陽光発電パネル400の表面に水を流して火山灰が堆積しないようにできる。そのため、大規模なブラックアウトなどの停電によって電力の供給が途絶えてしまったときに、鉄道の軌道に沿って所定間隔で備えられた上述のバッテリーを太陽光発電パネル400によって充電することができる。
【0075】
続いて、上述の各実施形態の更なる変形例について説明する。この変形例は軌道上の火山灰堆積防止構造を鉄道の軌道及び架線に火山灰が堆積するのを防止する代わりに、車両の高速道路上に設けたことを特徴としている。
【0076】
なお、基本的構成は上述の各実施形態及び第1の変形例と同等である。即ち、大規模噴火の予想される火山の近くを走る高速道路から主要都市に向かって車両走行の支障とならないように高速道路上に屋根部を延在させて、その屋根部の棟に沿って上述した水供給パイプを延在させ、所定の区間ごとに水流し供給部を設け、火山の噴火情報があったときに各屋根に水を一斉に流すようにする。
【0077】
この際腰板を設けておいて屋根の軒先から垂れ落ちるスラリー状の火山灰を含んだ水が道路上に流れ込むのをこの腰板で防止する。
【0078】
なお、上述の変形例のように屋根の上の一部又は全部に太陽光発電パネルを設けた場合、屋根をこの太陽光発電パネルの発電効率の最も良好な方向に傾斜させるようにするのが良い。これによって、火山の噴火が起こらない通常時においては、太陽光発電パネルで高速道路上の照明や緊急放送、所定間隔ごとに設けられた高速道路走行中の注意喚起のための電子看板の表示用電力等に用いることができる。
【0079】
このようにすることで、上述した鉄道の軌道上に本発明を適用した場合と同様に、大規模停電が起こっても太陽光発電パネルで平常時に貯えた電力を使用したり、降り注ぐ火山灰を水で流し落としたりすることで発電を続けてこのような高速道路上に設けた設備の電力として利用することができる。
【0080】
なお、上述の実施形態及び変形例において、腰板300は必ずしも備える必要はないが、腰板を備えることによって火山灰を含んだ水が屋根の軒先から流れ落ちる際に風が吹いて鉄道の軌道上の道床に流れ込んでバラスト軌道を構成する砕石の中に溜まってモルタル状に固まるのを確実に防止できる。
【0081】
これによって、上述のような火山が噴火して火山灰が大量に降り落ちる場合であっても鉄道の走行に支障をきたすことがない。その結果、火山灰を含んだスラリー状の液体が高速道路上の走行車線に流れ込まないようにし、車両走行時のスリップ事故による高速道路上での衝突等重大な事故を防ぐことができる。
【0082】
また、大災害時においては、各自治体や鉄道の沿線の各地域(ブロック)ごとに有効な情報を提供できないのが常であるが、腰板に上述の電子看板を備えることで、この電子看板にこのような情報を地域ごとに表示すれば風評被害によって避難者たちの間でパニックが生じることなく、安心かつ安全に避難することができる。
【0083】
また、これによって人々が火山の突発的噴火によるパニック状態とならず、必要に応じて鉄道で避難するとか、軌道に設けた腰板の電子看板に表示される行政情報から火山の噴火の状態や避難特定区域とされた避難先をすぐさま知ることができる。これは、火山の噴火だけでなく、大地震の発生や電車の運行に遅延が生じた場合において必要な情報を迅速かつ的確に伝えることができる点で非常に有用である。
【0084】
続いて、上述した第2の実施形態の特別な設置形態について説明する。なお、太陽光発電パネルを屋根に備えた鉄道の軌道上への火山灰の堆積防止構造自体については、第2の実施形態と同様である。しかしながら、この特別な設置形態においては、これらの構造物を大都市のJRや私鉄各線の軌道上に設けたことを特徴としている。
【0085】
これに加えて、太陽光発電パネルは、ステンレス鋼板等の十分な強度と耐久性(防錆性)からなる屋根材の上に取り付けられていることを特徴としている。また、好ましくは、屋根材の下面全体若しくは少なくとも部分的であっても例えば発泡材からなる厚みがあるシート状の不燃性材料でできた断熱材で覆われているのが良い。
【0086】
この特別な設置形態は、本発明の本来の目的である火山の大規模噴火に伴う大都市の鉄道の軌道上への火山灰の堆積を防止することにより、鉄道の運行に支障をきたすことがないようにすることを実現している。そして、ある意味では火山の大噴火に伴う鉄道の軌道上への火山灰の堆積を防止するよりもはるかに実効性のある設置形態となっている。以下にこの特別な設置形態の特有の効果について文章に基づいて説明する。
【0087】
近年は首都直下型地震発生の可能性についてかなり予想されており、かつ現実に各大都市で地震が発生して大規模停電(ブラックアウト)が生じて鉄道の運行が一斉に停止し、多くの帰宅困難者が生じるようになっている。
【0088】
首都圏においては、このような規模の大きい深刻な直下型地震については未だ発生していないが、直下型地震の発生に関しては火山の噴火と同様に実質的に正確に予測することができないのが現状である。そして、関東大震災からかなりの年月が経過していることを勘案すると、首都圏においても直下型大地震がいつ何時起こってもおかしくない状況にある。
【0089】
更には、昨今我が国は観光立国として多くの外国人観光客に来日してもらう政策をとっていると共に、都市部での人材不足から外国人労働者の採用枠を広げ、より多くの外国人を招いて我が国で働いてもらうことに政策の方針を転換しようとしている最中である。
【0090】
以上のような諸事情を勘案すると、首都圏や各県の大都市部においては日本人のみならず多くの外国人の居住や滞在するようになっているが、首都直下型地震や大都市の直下型地震の発生の際の対策については十分にとられていないのが現状である。
【0091】
そのため、首都圏や各県の大都市部において直下型地震が発生したりすると、上下水道などもライフラインが機能しなくなる可能性が大きいことから、発生後ある程度たった後に多くの人たちが食料や飲料水、トイレを求めて建物内から街中に出てきて街中はこれらの人たちであふれるようになってしまう恐れが高い。
【0092】
そして、最も重要なライフラインの1つである電気の供給が止まって大規模な停電(ブラックアウト)が生じると更に深刻な問題を招くことになる。例えば、今までの経験上から、このような大地震が生じると人々は一斉に携帯電話で連絡を取り合おうとするが、携帯電話の基地局が機能しなくなり、携帯電話を使用することができなくなる。また、道路の信号が一斉に消えてしまい、道路が車両や避難する人たちでごった返して混乱の収拾がつかなくなる恐れがある。また、緊急の行政情報を人々に伝える様々な表示板や放送装置も使用できなくなり、街中はどのように避難していいのか分からない人々であふれかえることが十分に予想される。これに加えて、特に地震が発生しない国からきた観光客は、生まれてから経験したことのない大きな地震の揺れを感じて心理的にパニックになった上に、どのように避難して過ごせばいいか分からず途方に暮れてしまう。
【0093】
更に、都市部から郊外の自宅まで歩いて帰ろうとする人たちも通常の出勤に際しては鉄道を利用している人たちが大部分であるため、適切な情報が全く得られなくなり、どのような道を歩いて自宅に帰れば良いのか分からず、かつ道路上にはそこに留まる人々も多くいてごった返しており、自宅に歩いて帰宅しようとする人たちは思うように帰宅することができず、いわゆる帰宅困難者となってやむを得ず都市部に留まることになる。
【0094】
そして、更なる深刻な問題として、例えば帰宅時の夜間に地震が発生したと同時に大規模停電となった時や昼間に地震が発生しても大規模停電が夜間まで続いた時においては、街中の照明が一斉に消えているため群集心理として不安感が増し、いわゆるパニック状態の発生が考えられる。これに加えて、街中の照明が一斉に消えて暗くなった夜間において人々が街中にあふれていると、中には喧嘩や痴漢等の迷惑行為、スリ等の犯罪行為が生じる恐れもある。
【0095】
また、大地震の発生の後、路上で避難生活を送っていたり自宅に帰宅するために道路を歩いていたりする最中に大きな余震が生じたりすると、道の両側に並んでいるビルの窓ガラスが割れたり壁の一部が剥がれて瓦礫となったり壁に取り付けた看板が壊れたりしてこれらが一斉に道路上に落下してくる危険性もある。
【0096】
このような首都や大都市の直下型地震において生じる深刻な事態に対して、本発明の第2の実施形態に係る鉄道の軌道の火山灰堆積防止構造を都心や大都市のJRや私鉄各線に設置しておくことで、以下のような直下型大地震に対する他には見られない有用な対応策として機能させることができる。この対応策の具体的内容について説明する。
【0097】
規模の大きい首都直下型地震や大都市の直下型地震が起こった場合、広範囲にわたる停電が生じ列車の運行もできなくなる可能性が極めて高い。仮に列車が運行できる状態にあったとしても、レールの曲がりや道床を構成するバラストの変形などにより脱線の危険性が極めて高くなるので、安全上の観点から列車の運行を全面的に停止すべきである。
【0098】
この場合、通常では線路内に人が立ち入ることが固く禁止されていると共に車が走行することができない線路が避難場所として最適な役割を果たすことになる。これは、首都圏や大都市においては様々な電車の路線が集中していると共に郊外に向けて放射状に延びていることで、様々な場所でさほど時間をかけずに歩いて行けると共に、避難者同士が集まって互いに励ましあって助け合うことができるので最適な避難設備として利用できる。
【0099】
そして、以上のような首都圏や大都市部及びこれらから郊外に向けて放射状に延びる鉄道の軌道上に本発明の第2の実施形態に係る火山灰堆積防止構造を適用することで、街中で途方に暮れながら彷徨っている人たちを効率的に避難させることができる。この理由は、このような人たちは、日常の仕事や生活において自分がいる場所から最も近い鉄道の線路がどこにあるか、及びそこに至るまでどのような道を通っていけば最短経路でたどり着くかにについて当然のことながら熟知しているためである。
【0100】
なお、本発明の第2の実施形態の場合、屋根材に太陽光発電パネルが備わっているため、例えば屋根材の最も高い棟の部分等適当な箇所にLED等の消費電力の少ない照明装置を、あまり間隔を開けることなく数多く設置しておけば、電線からの電力供給が止まって大規模停電(ブラックアウト)が生じて夜間街中が暗闇に覆われても、昼間の間に太陽光発電パネルで発電し鮮度の所定間隔ごとに設けたバッテリーに蓄電しておいた電力を利用して、この屋根材の棟の部分が線路に沿ってイルミネーションのラインのように連なって光らせることができる。これによって、暗闇の中でどの方向に避難すれば仮設の避難場所として最適な役割を果たす鉄道の線路にたどり着くかすぐに判断できる。
【0101】
このような避難の仕方を、例えば都心や大都市を訪れた外国人観光客であって日本語による適切なコミュニケーションが行なえない人々に予め知っておいてもらえば、いざ直下型地震が起こった際にもこれらの観光客が安心して避難できるので非常に有効性が高いと言える。
【0102】
また、人々がこのような線路に向かって同じ方向に歩いて避難することで、避難場所にたどり着くまでにお互い励ましあったり助けあったりすることができる。このようにして、迅速に避難することができない高齢者や足の不自由な人たち、小さな子供たちも周りの人たちの助けを借りて付近の仮設避難所としての役目を果たす線路まで安全に避難することができる。
【0103】
そして、本発明の第2の実施形態を適用した線路の区間まで避難した後は、線路の架線部の上が屋根材で覆われているため、路上や公園に避難している場合とは異なり雨が降ってもほとんど濡れないで過ごすことができる。また、規模の大きい余震が発生して線路脇のビルの窓ガラスが割れてガラスの破片が落下したり看板が壊れて落下したり壁の一部が剥がれて瓦礫として落下したりしてきても、屋根材自体が十分な強度を有する例えばステンレス鋼板等でできているのでこれらの落下物を屋根で遮り、路上に避難している場合と異なり、避難者が思わぬ怪我を負う恐れはない。
【0104】
また、屋根材の下側が上述したように不燃性材料でできた断熱材で覆われていれば、真夏の炎天下であっても直接紫外線を浴びることなくかつ屋根材の熱が避難者に直接伝わるのを防止することができる。また、冬場においては屋根材の下側に断熱材を備えていることで、屋根から受ける放射冷却を防止できると共に、天候が悪化して雨や雪が降ってきた際に避難民に直接降りかからないようにすることができる。
【0105】
以上に加えて、線路に避難した後は、腰板に設けた電子看板に災害の状況や急病人やケガ人を助けるための有用な情報を表示させることで、避難者たちに客観的な情報提供を逐次行うことができ、避難者たちの気分を和らげデマ等の風評被害に基づくパニックの発生を防止することができる。
【0106】
続いて、極めて広域にわたって延在するこの鉄道の軌道を利用した災害時の避難設備の更なる活用の仕方について説明する。災害の直後は、必要に応じて線路から一番近くの駅まで歩いて避難し、各駅に設置した仮設救護施設や休憩施設を利用する。この際、高齢者や子供、足の不自由な人たちは、線路上に適当な間隔を設置して設けた例えばある程度の人数を載せる木製の板とその下に取り付けた車輪からなりペダルをこいで動かしたり何人かの人が後ろから押すことでレール上を進んだりする極めて簡易な構造の避難トロッコに乗せてもらい最寄りの駅まで避難するのが良い。そして、この駅において具合の悪い急病人や高齢者を仮設救護施設で手当てすると共に、子供たち同士を集めて連帯感を高めることで、極端に不安な気持ちが続いてPTSDの原因になるのを防ぐ。また、日本語が分からない外国人の観光客も同様に近くの駅まで不安感を抱かずに避難することができる。
【0107】
なお、体力が十分に残っている避難者は、駅ごとに適当な休憩を取りながら軌道上を歩き続けて郊外の自宅まで帰宅することができるので、災害発生時に生じる大量の帰宅困難者の問題を緩和することができる。
【0108】
この際、鉄道の軌道上に屋根材が延在しているので、天候の如何にかかわらず線路沿いを歩いて自宅近くの駅まで向かうことができる。また、屋根材に断熱材が設けられていると、炎天下であっても直射日光を浴びることなくかつ屋根からの熱気を受けることなく体力の消耗を抑えながら歩き続けることができるので、自宅近くの最寄りの駅までかなり早めにたどり着くことができる。なお、鉄道の軌道に沿って一定間隔で備わった屋根材支持部の適当な箇所に太陽光発電パネルによって発電した電力により動作する給水ポンプ付きの飲料水用給水タンクを設けておけば、線路沿いに歩いている最中に適宜水分を補給して熱射病にならずに目的の駅まで歩き続けることができる。
【0109】
同様に鉄道の軌道に沿って一定間隔で備わった屋根材支持部の適当な箇所に太陽光発電パネルによって発電した電力を提供する携帯電話用や携帯型パーソナルコンピューター用の充電器を備えておけば、これらの無線通信が可能となった段階で家族や友人と連絡を取り合うことができ、それぞれの安否の確認に役立てることができる。また、携帯電話のバッテリーの充電切れを気にせずに線路上を歩いて避難したり線路の上に留まって仮の避難生活を送ったりすることが可能となる。
【0110】
また、鉄道の軌道に沿って所定位置に簡易トイレを設置すると共に、このトイレに水道水を供給するパイプを接続すると共に太陽光発電パネルの電力を利用して水道水を加熱することによって温水洗浄便座を備えることができ、避難している人たちや自宅に向かって線路に沿って歩いて帰ろうとしている人たちの便宜を図ることができる。同様に、太陽光発電パネルの電力を利用した加熱装置を用いてこの水道水を加熱して温水とすることで、シャワーとして利用することができ、避難している人たちや自宅に向かって線路に沿って歩いて帰ろうとしている人たちの清潔感を維持することができ、不快感から解放することができる。
【0111】
また、鉄道の軌道に沿って所定位置に防災用の簡易ヘルメットを数多く保管しておくことで、避難者や自宅に向かって線路を歩いて帰る人たちが線路の外に出ることはある場合に安全を確保することができる。
【0112】
また、鉄道の軌道に沿って一定間隔で備わった屋根材支持部や鉄道の軌道に沿って連続的に延在する屋根材の裏側の適当な箇所に太陽光発電パネルによって発電した電力を利用して夜間点灯する消費電力の少ないLED照明装置を数多く設置しておくことで、夜間における避難生活を明るい光のもとで送ることができる。これによって、暗闇の中での避難民同士のいざこざや痴漢等の迷惑行為、窃盗等の犯罪行為の発生を防止すると共に、避難民同士の夜間のコミュニケーションを確保し、平静さを保ちながら避難生活を送るようにする。
【0113】
また、このような夜間のLED照明装置を用いて線路に沿って明るく照らすことで、自宅の最寄りの駅に向かって歩いて帰る人たちの移動を助けると共に、線路上に留まる避難者たちの数を少なくして少しでも快適な避難生活を送るようにすることができる。
【0114】
また、この第2の実施形態において、屋根材の棟の部分に本来備わっている水供給パイプから屋根に沿って一斉に水を流すことによって、屋根材の軒先から地面に向かって水を流し落とすことができる。これは、例えば直下型地震の直後に都心や大都市、その周辺の木造住宅の密集した地域において大規模な火災や火災旋風が生じたときに、水のカーテンとしての役目を果たし、これらの火災や火災旋風による火炎や熱風から避難者や自宅に向かって線路を歩いて帰る人たちを守ることができる。
【0115】
上述のようにハード面としては鉄道の軌道に沿って延在する第2の実施形態の構造物の中に飲料用や避難生活を送るための生活用水としての水道水を供給できる箇所を鉄道の軌道の所定の距離ごとに設けると共に、この水道水から供給される水を必要に応じて利用可能なトイレを鉄道の軌道の所定の距離ごとに設置することに加え、鉄道の軌道上を全体的にくまなく照射するLEDライトを屋根材の裏側の断熱材の下側に設け、これらと同様に充電用や避難生活を送る上で必要な簡易電化製品の電源とする電源ユニットと電源ソケットを設けるのが良い。
【0116】
なお、以上の設備を働かせるための電源は、屋根材の上に設置した太陽光発電パネルによって充電した電力を使用することができるので、首都圏や大都市における大規模停電(ブラックアウト)が続いた場合であっても何ら問題を生じることはない。
【0117】
これに加えて、軌道のレール上をペダル若しくは人が押して移動できる簡易な構成のトロッコを軌道に沿って所定の距離ごとに配置しておくことで、高齢者や小さい子供、足の不自由な人たち、体調の優れない人たちや急病人を最寄りの駅まで搬送していくことができる。
【0118】
また、腰板に備えた電子看板とこの電子看板に備えたスピーカーを利用したソフト面での避難者への情報提供を逐次行うことができる。具体的には、津波や火災、余震、噴火、風向き、天気の変化等の気象情報の全てを電子看板に逐次表示できると共に、スピーカーから放送して避難者や自宅に向かって線路を歩いて帰る人たちに提供することができる。
【0119】
これに加えて、電子看板とこの電子看板に備えたスピーカーを利用して、これらの設備が設置された地域ごとの主要な避難所や津波や火災旋風に備えた避難タワーの場所の情報提供を行うことができる。更には火災が発生した場合、風向き情報によって火災の影響を受けにくい風上の方向に向かって歩いて逃げることを指示したり、電子看板が設置されている区域毎に近くにある防火設備の整った避難タワーの場所に向かって逃げることを指示したりすることができる。
【0120】
合わせて、大地震発生の際に首都圏や大都市から最も近い原子力発電所の状況を電子看板やこれに備わったスピーカーで避難民や線路に沿って自宅に向かって歩いて帰る人たちに伝えることで、風評被害に基づくパニックの発生を防ぐことができる。
【0121】
以上をまとめると、本発明の第2の実施形態を利用した特別な構造物を首都圏や大都市の鉄道の線路に設けることで、火山の噴火による火山灰が鉄道の軌道上に堆積するのを防止することに加えて、首都直下型地震や大都市の直下型地震の突発的な発声の際にこれらの地域に広範囲にわたって瞬時に避難区域として鉄道の軌道を利用することができ、大災害の発生に対して実効性のある非常に有用な対策となるので、国家プロジェクトとしてかなりの予算を割いても実現させる価値があることが理解できる。
【0122】
なお、本発明は、上述の各実施形態及びその変形例に限定されず、本発明の趣旨を超えない範囲で様々な変形例が適用可能である。例えば、具体的には、上述の第2の実施形態において、太陽光パネルは屋根材の上に取り付けたが、これとは別に屋根材を兼用する太陽光パネルを用いて屋根材支持部にこれらの太陽光パネルを直接取り付けた状態で鉄道の軌道に沿って複数連続して直列に結合させながら延在させるようにしても良い。
【0123】
また、上述の各実施形態及びその変形例から分かるように、本発明に係る軌道上の火山灰堆積防止構造は、非常に大がかりなものとなるため、一度に鉄道の全区間に亘って設けなくても、火山の噴火の影響が最も大きい地域の近くから遠くまで鉄道の軌道に沿って段階的に設けていっても良い。この場合、例えば火山の噴火が予測される地域からその近くの周辺都市まで第一段階のプロジェクトとして本発明に係る軌道上の火山灰堆積防止構造を完成させ、その都市からこれに隣接する都市まで第二段階のプロジェクトとして次の時期に新たな予算を取って完成させても良い。
【0124】
このようにして段階的に本発明に係る軌道上の火山灰堆積防止構造を設置していけば、鉄道の軌道自体は恒久的な経路をたどっているので、それを保護する軌道上の火山灰堆積防止構造を非常に長い距離の鉄道の軌道の大部分にある程度の年月をかけて最終的に完成させることができる。このような段階的施工手順を経て、大都会のJRや私鉄各線、全国津々浦々の鉄道に本発明に係る火山灰の堆積防止構造を適用することが可能となる。
【0125】
また、第2の実施形態においては、上述のように太陽光発電パネルを屋根材の上若しくは屋根代わりに使用しているので、この太陽光発電パネルによって発電した電力を鉄道の軌道に沿って所定の間隔で配置したバッテリーに充電しておいて、冬季の降雪時にこの電力を利用して水道水をボイラーやヒーター等の適当な加熱装置によって水道水供給管において加熱し、雪を溶かすのに十分な温度まで高めた水道水を水流し供給部から屋根全体に流すようにすれば、雪が屋根から一緒に流れ落ちて軌道の道床に直接雪が積もることなく、鉄道の運行に支障を与えることがなくなる。
【0126】
なお、屋根部の軒先側の下に設けた腰板については、単独で道床の横に立設した状態で延在させる構造に限定されるものではなく、屋根部の軒先側の屋根材支持部を利用してこの屋根材支持部の地面から一定の高さまで腰板を直接屋根材支持部に取り付けて鉄道の軌道に沿って延在させるようにしても良い(
図12の腰板370参照)。また、屋根部の棟の下側に追加で設ける腰板についても同様に屋根部の棟側の屋根材支持部に同様に取り付けて鉄道の軌道に沿って延在させるようにしてもよい(
図12の腰板380参照)。
【0127】
腰板をこのように屋根材支持部に直接取り付けることによって、屋根材支持部の強度を高めると共に、軌道上の火山灰堆積防止構造全体の製造コストを低減させることができる。なお、この腰板の屋根部支持材への取付け構造に関しては第1の実施形態のみならず、太陽光発電パネルを備えた第2の実施形態においても当然に適用可能である。
【0128】
最後に、本実施形態に係軌道上の火山灰堆積防止構造の実際の考えられる適用事例について説明する。例えば、宝永大噴火から約1200年噴火していない富士山が噴火するのに対して本発明による対策を取る場合の一例として、偏西風の影響を考慮して少なくとも静岡から東京までの東海道線、できれば名古屋から東京までの東海道線及び首都東京の鉄道移動手段として重要な機能を有する山手線に設置することが考えられる。このような広範囲に亘って本発明にかかる軌道上の火山灰堆積防止構造を設けると国家プロジェクト並みの莫大な費用を必要とするが、いざ富士山が噴火した場合に発生するお金では代えられない人々の命を守る点を考慮すると事前にこの程度の準備をしておくことが正確には予想不可能な火山の噴火に備えておく点でも必要である。
【解決手段】火山の噴火の際に火山灰が鉄道10の軌道上に堆積するのを防止する軌道上の火山灰堆積防止構造であって、鉄道10の軌道上であって架線11を覆う高さにおいて、軌道上に火山灰が堆積するのを防止するのに十分な所定の幅を有しながら鉄道10の軌道12に沿って所定の長さに亘って延在するように取り付けられた屋根部100と、屋根部全体に水を流す水流し供給部200を有し、屋根部100は、幅方向一方の端部から幅方向他方の端部に亘って水流れ方向上流側から下流側に傾斜するように形成され、水流し供給部200は、屋根部の水流れ方向上流側となる軌道12の延在方向に沿って取り付けられている。