特許第6495536号(P6495536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6495536半導体製造装置用部品の製造方法、および、半導体製造装置用部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495536
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部品の製造方法、および、半導体製造装置用部品
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20190325BHJP
   C04B 35/581 20060101ALI20190325BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   C04B37/00 A
   C04B35/581
   H01L21/68 N
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-502275(P2018-502275)
(86)(22)【出願日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】JP2017025610
(87)【国際公開番号】WO2018016419
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-142494(P2016-142494)
(32)【優先日】2016年7月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-151326(P2016-151326)
(32)【優先日】2016年8月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三矢 耕平
(72)【発明者】
【氏名】丹下 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】堀田 元樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴道
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−278950(JP,A)
【文献】 特表2012−510557(JP,A)
【文献】 特開昭57−160956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00 − 37/04
C04B 35/581
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlNを主成分とする材料により形成された第1のセラミックス部材を準備する工程と、
AlNを主成分とする材料により形成された第2のセラミックス部材を準備する工程と、
前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に、EuとGdとAlとを含む接合剤を介在させた状態で加熱加圧することにより前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合する工程とを含み、
前記加熱加圧により前記接合剤が溶融して形成される接合部は、少なくとも、(Eu,Gd)Al12と、GdAlOと、を含むことを特徴とする、半導体製造装置用部品の製造方法。
【請求項2】
AlNを主成分とする材料により形成された第1のセラミックス部材と、
AlNを主成分とする材料により形成された第2のセラミックス部材と、
前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に配置され、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合する接合層と、を備える半導体製造装置用部品において、
前記接合層は、少なくとも、(Eu,Gd)Al12と、GdAlOと、を含んでいることを特徴とする、半導体製造装置用部品。
【請求項3】
請求項に記載の半導体製造装置用部品において、
前記接合層において、
前記(Eu,Gd)Al12の含有率は、0.1mol%以上であることを特徴とする、半導体製造装置用部品。
【請求項4】
AlNを主成分とする材料により形成された第1のセラミックス部材と、
AlNを主成分とする材料により形成された第2のセラミックス部材と、
前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に配置され、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合する複数の接合部と、を備える半導体製造装置用部品において、
前記接合部は、少なくとも、(Eu,Gd)Al12と、GdAlOと、を含んでいることを特徴とする、半導体製造装置用部品。
【請求項5】
請求項に記載の半導体製造装置用部品において、
前記接合部において、
前記(Eu,Gd)Al12の含有率は、0.1mol%以上であることを特徴とする、半導体製造装置用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、半導体製造装置用部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用部品として、サセプタ(加熱装置)が用いられる。サセプタは、例えば、内部にヒータを有する板状のセラミックス製の保持部材と、保持部材の一方の面側に配置される円筒状のセラミックス製の支持部材と、保持部材と支持部材との間に配置され、保持部材の一方の面と支持部材の一方の面とを接合する接合層とを備える。保持部材の一方の面とは反対側の保持面にウェハが配置される。サセプタは、ヒータに電圧が印加されることにより発生する熱を利用して、保持面に配置されたウェハを加熱する。
【0003】
保持部材と支持部材とは、比較的に熱伝導率が高いAlN(窒化アルミニウム)を主成分とする材料により形成されることがある。そして、このようなAlNを主成分とする保持部材および支持部材を備えるサセプタの製造方法として、Ca(カルシウム)を含む接合剤を、保持部材と支持部材との間に介在させた状態で加熱加圧することにより保持部材と支持部材とを接合する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−345952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のサセプタの製造方法では、1600(℃)程の低い接合温度で、保持部材と支持部材とを接合することができる。しかし、Caを含む接合剤を用いるため、例えばCaを含む生成物がウェハ等に異物として混入するおそれがある。そこで、Caの代わりに、Gd(ガドリニウム)を含む接合剤を用いるサセプタの製造方法が知られているが、Caを含む接合剤を用いる場合に比べて、接合温度が高いため、更なる改善が要望されていた。
【0006】
なお、このような課題は、サセプタを構成する保持部材と支持部材との接合に限らず、例えば静電チャックなどの保持装置を構成するセラミックス部材同士の接合にも共通の課題である。また、このような課題は、保持装置に限らず、例えばシャワーヘッドなどの半導体製造装置用部品を構成するセラミックス部材同士の接合に共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される半導体製造装置用部品の製造方法は、AlNを主成分とする材料により形成された第1のセラミックス部材を準備する工程と、AlNを主成分とする材料により形成された第2のセラミックス部材を準備する工程と、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に、EuとGdとAlとを含む接合剤を介在させた状態で加熱加圧することにより前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合する工程とを含む。本願の発明者は、実験等により、EuとGdとAlとを含む接合剤を用いると、Gd(ガドリニウム)を含む接合剤を用いる従来の製造方法に比べて、AlN(窒化アルミニウム)を主成分とする材料により形成されたセラミックス部材同士を接合する際の接合温度が低くても、高い接合強度で接合することができることを見出した。そこで、本半導体製造装置用部品によれば、EuとGdとAlとを含む接合剤を用いることによって、接合温度を低くしつつ、第1のセラミックス部材と第2のセラミックス部材との接合強度の低下を抑制することができる。
【0010】
(2)本明細書に開示される半導体製造装置用部品は、AlNを主成分とする材料により形成された第1のセラミックス部材と、AlNを主成分とする材料により形成された第2のセラミックス部材と、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に配置され、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合する接合層と、を備える半導体製造装置用部品において、前記接合層は、EuとGdとAlとを含む複合酸化物を含んでいる。本半導体製造装置用部品によれば、Eu(ユーロピウム)とGdとAl(アルミニウム)とを含む複合酸化物が比較的に低い接合温度において流動性を有することによって、接合温度を低くしつつ、第1のセラミックス部材と第2のセラミックス部材との接合強度の低下を抑制することができる。
【0011】
(3)上記半導体製造装置用部品において、前記接合層において、前記複合酸化物の含有率は、0.1mol%以上であることを特徴とする構成としてもよい。本半導体製造装置用部品によれば、低温でも流動性が高いEuとGdとAlとを含む複合酸化物の含有率が0.1mol%以上であることによって、第1のセラミックス部材と第2のセラミックス部材との接合強度の低下を、より効果的に抑制することができる。
【0012】
(4)本明細書に開示される半導体製造装置用部品は、AlNを主成分とする材料により形成された第1のセラミックス部材と、AlNを主成分とする材料により形成された第2のセラミックス部材と、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に配置され、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合する複数の接合部と、を備える半導体製造装置用部品において、前記接合部は、EuとGdとAlとを含む複合酸化物を含んでいる。本半導体製造装置用部品によれば、EuとGdとAlとを含む複合酸化物が比較的に低い接合温度において流動性を有することによって、接合温度を低くしつつ、第1のセラミックス部材と第2のセラミックス部材との接合強度の低下を抑制することができる。
【0013】
(5)上記半導体製造装置用部品において、前記接合部において、前記複合酸化物の含有率は、0.1mol%以上であることを特徴とする構成としてもよい。本半導体製造装置用部品によれば、低温でも流動性が高いEuとGdとAlとを含む複合酸化物の含有率が0.1mol%以上であることによって、第1のセラミックス部材と第2のセラミックス部材との接合強度の低下を、より効果的に抑制することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、静電チャック、真空チャック等の保持装置、サセプタ等の加熱装置、シャワーヘッド等の半導体製造装置用部品、それらの製造方法の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態におけるサセプタ100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】本実施形態におけるサセプタ100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】本実施形態におけるサセプタ100の製造方法を示すフローチャートである。
図4】サセプタ100の性能評価の結果を示す説明図である。
図5】実施例のサセプタ100のSEM画像を模式的に示す説明図である。
図6】比較例1のサセプタ100のSEM画像を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A−1.サセプタ100の構成:
図1は、本実施形態におけるサセプタ100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態におけるサセプタ100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、サセプタ100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。サセプタ100は、請求の範囲における半導体製造装置用部品に相当する。
【0017】
サセプタ100は、対象物(例えばウェハW)を保持しつつ所定の処理温度に加熱する装置であり、例えば半導体装置の製造工程で使用される薄膜形成装置(例えばCVD装置やスパッタリング装置)やエッチング装置(例えばプラズマエッチング装置)に備えられている。サセプタ100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された保持部材10および支持部材20を備える。保持部材10と支持部材20とは、保持部材10の下面(以下、「保持側接合面S2」という)と支持部材20の上面(以下、「支持側接合面S3」という)とが上記配列方向に対向するように配置されている。サセプタ100は、さらに、保持部材10の保持側接合面S2と支持部材20の支持側接合面S3との間に配置された接合層30を備える。保持部材10は、請求の範囲における第1のセラミックス部材に相当し、支持部材20は、請求の範囲における第2のセラミックス部材に相当する。
【0018】
(保持部材10)
保持部材10は、例えば円形平面の板状部材であり、AlN(窒化アルミニウム)を主成分とするセラミックスにより形成されている。なお、ここでいう主成分とは、含有割合(重量割合)の最も多い成分を意味する。保持部材10の直径は、例えば100(mm)〜500(mm)程度であり、保持部材10の厚さは、例えば3(mm)〜10(mm)程度である。
【0019】
保持部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された線状の抵抗発熱体で構成されたヒータ50が設けられている。ヒータ50の一対の端部は、保持部材10の中央部付近に配置されている。また、保持部材10の内部には、一対のビア52が設けられている。各ビア52は、上下方向に延びる線状の導電体であり、各ビア52の上端は、ヒータ50の各端部に接続されており、各ビア52の下端は、保持部材10の保持側接合面S2側に配置されている。また、保持部材10の保持側接合面S2の中央部付近には、一対の受電電極54が配置されている。各受電電極54は、各ビア52の下端に接続されている。これにより、ヒータ50と各受電電極54とが電気的に接続されている。
【0020】
(支持部材20)
支持部材20は、例えば上下方向に延びた円筒状部材であり、支持側接合面S3(上面)から下面S4まで上下方向に貫通する貫通孔22が形成されている。支持部材20は、保持部材10と同様に、AlNを主成分とするセラミックスにより形成されている。支持部材20の外径は、例えば30(mm)〜90(mm)程度であり、内径は、例えば10(mm)〜60(mm)程度であり、上下方向の長さは、例えば100(mm)〜300(mm)程度である。支持部材20の貫通孔22内には、一対の電極端子56が収容されている。各電極端子56は、上下方向に延びる棒状の導電体である。各電極端子56の上端は、各受電電極54にロウ付けにより接合されている。一対の電極端子56に電源(図示せず)から電圧が印加されると、ヒータ50が発熱することによって保持部材10が温められ、保持部材10の上面(以下、「保持面S1」という)に保持されたウェハWが温められる。なお、ヒータ50は、保持部材10の保持面S1をできるだけ満遍なく温めるため、例えばZ方向視で略同心円状に配置されている。また、支持部材20の貫通孔22内には、熱電対の2本の金属線60(図2では1本のみ図示)が収容されている。各金属線60は、上下方向に延びように配置され、各金属線60の上端部分62は、保持部材10の中央部に埋め込まれている。これにより、保持部材10内の温度が測定され、その測定結果に基づきウェハWの温度制御が実現される。
【0021】
(接合層30)
接合層30は、円環状のシート層であり、保持部材10の保持側接合面S2と支持部材20の支持側接合面S3とを接合している。接合層30は、Eu(ユーロピウム)とGd(ガドリニウム)とAl(アルミニウム)とを含む複合酸化物を含む材料により形成されている。具体的には、接合層30は、(Eu,Gd)Al12と、GdAlOと、Al(アルミナ)とを含む材料により形成されている。接合層30の外径は、例えば30(mm)〜90(mm)程度であり、内径は、例えば10(mm)〜60(mm)程度であり、厚さは、例えば2(μm)〜60(μm)程度である。
【0022】
A−2.サセプタ100の製造方法:
次に、本実施形態におけるサセプタ100の製造方法を説明する。図3は、本実施形態におけるサセプタ100の製造方法を示すフローチャートである。はじめに、保持部材10と支持部材20とを準備する(S110)。上述したように、保持部材10と支持部材20とは、いずれもAlNを主成分とするセラミックスにより形成されている。なお、保持部材10および支持部材20は、公知の製造方法によって製造可能であるため、ここでは製造方法の説明を省略する。
【0023】
次に、接合層30の形成材料であるペースト状の接合剤を準備する(S120)。具体的には、Eu(酸化ユーロピウム)粉末とGd(ガドリニア)粉末とAl粉末とを所定の割合で混合し、さらに、アクリルバインダおよびブチルカルビトールと共に混合することにより、ペースト状の接合剤を形成する。なお、ペースト状の接合剤の形成材料の組成比は、例えば、Euが20mol%であり、Gdが20mol%であり、Alが60mol%であることが好ましい。次に、保持部材10と支持部材20との間に、準備されたペースト状の接合剤を配置する(S130)。具体的には、保持部材10の保持側接合面S2と支持部材20の支持側接合面S3とをラップ研磨し、各接合面S2,S3の表面粗さを1μm以下、平坦度を10μm以下にする。そして、保持部材10の保持側接合面S2と支持部材20の支持側接合面S3との少なくとも一方に、ペースト状の接合剤を塗布する。そして、ペースト状の接合剤を、マスク印刷により、保持部材10の保持側接合面S2と支持部材20の支持側接合面S3との少なくとも一方に塗布して脱脂処理をする。その後、支持部材20の支持側接合面S3と保持部材10の保持側接合面S2とを、ペースト状の接合剤を介して重ね合わせることにより、保持部材10と支持部材20との積層体を形成する。
【0024】
次に、保持部材10と支持部材20との積層体をホットプレス炉内に配置し、N(窒素)中で加圧しつつ加熱する(S140)。これにより、ペースト状の接合剤が溶融して接合層30が形成され、保持部材10と支持部材20とが接合層30により接合される。この加熱・加圧接合における圧力は、0.1MPa以上、15MPa以下の範囲内に設定されることが好ましい。加熱・加圧接合における圧力が0.1MPa以上に設定されると、被接合部材(保持部材10や支持部材20)の表面にうねり等があった場合でも被接合部材間に接合されない隙間が生じることが抑制され、初期における保持部材10と支持部材20との接合強度(接合層30の接合強度)が低下することを抑制することができる。また、加熱・加圧接合における圧力が15MPa以下に設定されると、保持部材10の割れや支持部材20の変形が発生することを抑制することができる。なお、接合面S2,S3には、0.2Kgf/cm〜3Kgf/cmの圧力が付与される。
【0025】
また、この加熱・加圧接合における温度は、1675(℃)まで上昇させることが好ましい。加熱・加圧接合における温度が1675(℃)まで上昇したら、1675(℃)の状態を約10(分)維持した後、ホットプレス炉内の温度を室温まで下げる。加熱・加圧接合の後、必要により後処理(外周や上下面の研磨、端子の形成等)を行う。以上の製造方法により、上述した構成のサセプタ100が製造される。
【0026】
A−3.性能評価:
実施例のサセプタ100と比較例1〜3のサセプタとについて、以下に説明する性能評価を行った。
【0027】
A−3−1.実施例および比較例1〜3について:
図4は、サセプタ100の性能評価の結果を示す説明図である。実施例のサセプタ100は、上述した製造方法で製造されたものである。比較例1〜3のサセプタは、保持部材と支持部材と接合層とを備える。比較例1〜3のサセプタは、実施例のサセプタ100に対して、接合剤の形成材料と接合温度との少なくとも1つが異なる製造方法により製造されたものである。実施例のサセプタ100と比較例のサセプタとは、以下の点で共通している。
(保持部材の構成)
・材料:AlNを主成分とするセラミックス
・直径:100(mm)〜500(mm)
・厚さ:3(mm)〜10(mm)
(支持部材の構成)
・材料:AlNを主成分とするセラミックス
・外径:30(mm)〜90(mm)
・内径:10(mm)〜60(mm)
・上下方向の長さ:100(mm)〜300(mm)
(接合層の外形)
・外径:30(mm)〜90(mm)
・内径:10(mm)〜60(mm)
・厚さ:(μm)〜60(μm)
【0028】
図4にも示すように、実施例のサセプタ100と比較例1〜3のサセプタとは、接合剤の形成材料(接合層の形成材料)と接合温度との少なくとも1つが相違している。具体的には次の通りである。接合層の形成材料は、上述の加熱・加圧により、接合剤の形成材料が化学反応して生成される材料である。
実施例のサセプタ100:
・接合剤の形成材料:EuとGdとAlとを含む
・接合層30の形成材料:(Eu,Gd)Al12とGdAlOとAlとを含む
・接合温度:1675(℃)
比較例1のサセプタ:
・接合剤の形成材料:EuとAlとを含み、Gdとを含まない
・接合層の形成材料:EuAl12とAlとを含み、GdAl12とGdAlOとを含まない
・接合温度:実施例と同じ
比較例2のサセプタ:
・接合剤の形成材料:GdとAlとを含み、Euとを含まない
・接合層の形成材料:GdAlOとAlとを含み、(Eu,Gd)Al12を含まない
・接合温度:1725(℃)(実施例より高い温度)
比較例3のサセプタ:
・接合剤の形成材料:比較例2と同じ
・接合層の形成材料:比較例2と同じ
・接合温度:実施例と同じ(比較例2より低い温度)
【0029】
A−3−2.評価手法:
接合層の接合強度の評価として、実施例のサセプタ100および比較例1〜3のサセプタについて、He(ヘリウム)リーク試験とSEM(走査型電子顕微鏡)観察とを行った。
【0030】
(Heリーク試験)
Heリーク試験では、例えば、実施例のサセプタ100の支持部材20の下側開口端にHeリークディテクタ(図示せず)を連結し、接合層30の外周側からHeガスを吹き付ける。そして、Heリークディテクタの検出結果に基づき、接合層30におけるHeのリークの検出の有無を確認した。Heのリークが検出されることは、接合層30中に空洞が存在しているために接合強度が低いことを意味する。
【0031】
(SEM観察)
SEM観察では、例えば実施例のサセプタ100の保持部材10と支持部材20と接合層30とを含む所定サイズの接合部分を試験片として切り出して、その試験片をSEMにより観察した。
【0032】
A−3−3.評価結果:
(Heリーク試験)
実施例のサセプタ100と比較例2のサセプタでは、Heリーク試験において、Heのリークは検出されなかった。一方、比較例1,3のサセプタでは、Heリーク試験において、Heのリークが検出された。
【0033】
(SEM観察)
図5は、実施例のサセプタ100のSEM画像を模式的に示す説明図であり、図6は、比較例1のサセプタのSEM画像を模式的に示す説明図である。図5に示すように、実施例のサセプタ100では、接合層30の形成材料である(Eu,Gd)Al12、GdAlOおよびAl、特に(Eu,Gd)Al12が、保持部材10および支持部材20の形成材料であるAlN間の隙間、保持部材10と接合層30との境界の隙間や、支持部材20と接合層30との境界の隙間(以下、まとめて「各隙間」という)を埋めるように広がっていることがわかる。実施例のサセプタ100の製造に用いられたEuとGdとAlとを含む接合剤は、1675(℃)といった比較的に低い温度でも流動性が高いため、接合剤がAlNの間の隙間等に入り込むことにより、接合層30が形成された際には、(Eu,Gd)Al12とGdAlOとAlとのいずれかによって各隙間が埋められたと考えられる。実施例のサセプタ100では、各隙間が埋まっているため、Heリーク試験において、Heのリークは検出されなかったと考えられる。なお、実施例のサセプタ100では、三点曲げ試験において、接合層30の接合強度は、基準荷重に対して約90%程度の強度であった。なお、基準荷重は、全体がAlNを主成分とするセラミックスで形成された母材の破壊荷重である。
【0034】
図6に示すように、比較例1のサセプタでは、各隙間にEuAl12とAlとのいずれも存在せず、各隙間が空洞Bになっていることがわかる。比較例1のサセプタの製造に用いられたEuとAlとを含む接合剤は、1675(℃)といった比較的に低い温度では流動性が低いため、各隙間に入り込めず、その結果、接合層が形成された際に各隙間が空洞Bになったと考えられる。比較例1のサセプタでは、各隙間が埋まっていないため、Heリーク試験において、Heのリークが検出されたと考えられる。また、比較例1のサセプタの接合層には多くの空洞Bが存在するため、該接合層の接合強度は、実施例のサセプタ100の接合層30の接合強度に比べて低いと考えられる。
【0035】
また、比較例2のサセプタでは、図示しないが、接合層の形成材料であるGdAlOおよびAlが、各隙間を埋めるように広がっている。一方、比較例3のサセプタでは、図示しないが、各隙間に接合層の形成材料であるGdAlOとAlとのいずれも存在せず、各隙間が空洞になっている。このように、比較例2のサセプタと比較例3のサセプタとは、接合層(接合剤)の形成材料が同じであるにもかかわらず、SEM観察の結果が異なる。これは、比較例2,3のサセプタに用いられたGdとAlとを含む接合剤は、1725(℃)といった比較的に高い温度では流動性が高いが、1675(℃)といった比較的に低い温度では流動性が低いからであると考えられる。比較例2のサセプタでは、各隙間が埋まっているため、Heリーク試験において、Heのリークは検出されず、比較例3のサセプタでは、各隙間が埋まっていないため、Heリーク試験において、Heのリークが検出されたと考えられる。なお、比較例2のサセプタの接合層には隙間が少ないため、該接合層の接合強度は、実施例のサセプタ100の接合層30の接合強度と同等であると考えられる。比較例3のサセプタの接合層には多くの空洞が存在するため、該接合層の接合強度は、実施例のサセプタ100の接合層30の接合強度に比べて低いと考えられる。
【0036】
A−4.本実施形態の効果:
本願の発明者は、実験等により、EuとGdとAlとを含む接合剤を用いると、Gdを含む接合剤を用いる従来の製造方法に比べて、AlNを主成分とする材料により形成されたセラミックス部材同士を接合する際の接合温度が低くても、高い接合強度で接合することができることを見出した。そこで、本実施形態によれば、EuとGdとAlとを含む接合剤を用いることによって、接合温度を低くしつつ、接合層30の接合強度の低下を抑制することができる。具体的には、上述したように、実施例のサセプタ100によれば、Gdを含む接合剤を用いる比較例2のサセプタに比べて、接合温度を低くしつつ同等の接合強度を確保することができる。また、接合温度を低くすることよって、保持部材10や支持部材20の熱による変形を抑制することができる。しかも、本実施形態によれば、接合温度を低くしつつ、約10分という短い接合時間で高い接合強度を確保することができる。接合時間が短いことによって、サセプタ100の製造効率を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、低温でも流動性が高い(Eu,Gd)Al12の含有率が0.1mol%以上であることによって、接合層30の接合強度の低下を、より効果的に抑制することができる。
【0038】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0039】
上記実施形態において、保持部材10と支持部材20とが、接合層30ではなく、複数の接合部によって接合されているとしてもよい。具体的には、保持部材10と支持部材20との間に、保持部材10と支持部材20との対向方向に直交する一の仮想平面上に配置された複数の接合部が離散的に形成されているとともに、保持部材10と支持部材20とが、保持部材10および支持部材20の形成材料であるAlN粒子を介して部分的に連結されているとしてもよい。
【0040】
上記実施形態および変形例において、保持部材10と支持部材20との間に、例えば、接合層30(接合部)と共に、該接合層30(接合部)とは組成が異なる第2の接合層(第2の接合部)が介在しているとしてもよい。すなわち、保持部材10と支持部材20とが、組成が互いに異なる複数の接合層または接合部を介して接合されているとしてもよい。
【0041】
上記実施形態および変形例における保持部材10および支持部材20を形成するセラミックスは、AlNを主成分として含んでいれば、他の元素を含んでいてもよい。
【0042】
上記実施形態および変形例において、接合層30(接合部)を形成する材料は、(Eu,Gd)Al12以外のEuとGdとAlとを含む複合酸化物を含んでいてもよい。また、接合層30(接合部)を形成する材料は、AlやGdAlO以外の物質(例えばAlN)を含んでいてもよい。また、上記実施形態のように、接合層30(接合部)を形成する材料は、ペロブスカイト構造若しくはガーネット構造をとる希土類元素およびAlを含む1または複数の複合酸化物と、Alとの内の2種以上の物質を含むことが好ましい。なお、接合層30における(Eu,Gd)Al12の含有率は、0.1mol%未満でもよいが、0.1mol%以上であることが好ましい。
【0043】
上記実施形態および変形例において、接合剤を形成する材料は、EuとGdとAlとを含んでいれば、他の元素を含んでもいてもよい。
【0044】
また、上記実施形態におけるサセプタ100の製造方法はあくまで一例であり、種々変形可能である。
【0045】
本発明は、サセプタ100に限らず、ポリイミドヒータ等の他の加熱装置、セラミックス板とベース板とを備え、セラミックス板の表面上に対象物を保持する保持装置(例えば、静電チャックや真空チャック)、シャワーヘッド等の他の半導体製造装置用部品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10:保持部材 20:支持部材 22:貫通孔 30:接合層 50:ヒータ 52:ビア 54:受電電極 56:電極端子 60:金属線 62:上端部分 100:サセプタ B:空洞 S1:保持面 S2:保持側接合面 S3:支持側接合面 S4:下面 W:ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6