(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二輪車の車両本体と、前輪及び後輪の少なくともいずれか一方との間に生じる力を減衰させる減衰装置の減衰力を、前記前輪の上下方向の速度と前記後輪の上下方向の速度とが異なることにより生じる前記二輪車のバネ下の前後方向の回転運動の角速度を用いて制御する
制御装置。
前記第1角速度の方向と前記第2角速度の方向とが同じ第1状態である場合には前記第1角速度の方向の前記回転運動を抑制し、前記第1角速度の方向と前記第2角速度の方向とが異なる第2状態である場合には、前記第1角速度の方向の抑制量が、前記第1状態である場合の抑制量よりも小さくなるように前記減衰装置の減衰力を制御する
請求項3に記載の制御装置。
前記第2状態である場合には、前記第1角速度が、前記車両本体の前記前輪側が沈み込み、前記車両本体の前記後輪側が浮き上がる方向の前記回転運動が生じる方向であり、前記第1係数が、前記前輪側を沈み込み難くする符号となるときに、前記第2係数は、前記前輪側を沈み込み易くする符号となる
請求項5に記載の制御装置。
前記第1状態である場合には、前記第1角速度が、前記車両本体の前記前輪側が沈み込み、前記車両本体の前記後輪側が浮き上がる方向の前記回転運動が生じる方向であり、前記第1係数が、前記前輪側を沈み込み難くする符号となるときに、前記第2係数は、前記前輪側を沈み込み難くする符号となる
請求項5に記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に示す形態は本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、以下に示す形態に限定されない。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る自動二輪車1の概略構成を示す図である。
図2は、減衰装置200の概略構成を示す図である。
図3は、制御装置100の概略構成を示す図である。
自動二輪車1は、前側の車輪である前輪2と、後側の車輪である後輪3と、車両本体10とを備えている。車両本体10は、自動二輪車1の骨格をなす車体フレーム11と、ハンドル12と、ブレーキレバー13と、シート14等を有している。
また、自動二輪車1は、前輪2と車両本体10とを連結する前輪側のサスペンション21を有している。また、自動二輪車1は、前輪2の左右それぞれに配置された2つのサスペンション21を保持する2つのブラケット15と、2つのブラケット15の間に配置されたシャフト16とを備えている。シャフト16は、車体フレーム11に回転可能に支持されている。サスペンション21は、路面等から前輪2に加わった衝撃を吸収する懸架スプリング21sと、懸架スプリング21sの振動を減衰する減衰装置21dとを備えている。
また、自動二輪車1は、後輪側のサスペンション22を有している。サスペンション22は、路面等から後輪3に加わった衝撃を吸収する懸架スプリング22sと、懸架スプリング22sの振動を減衰する減衰装置22dとを備えている。減衰装置22dは、後輪3と車両本体10との間に生じる力を減衰させる。
以下の説明において、前輪2と後輪3とをまとめて「車輪」と称する場合もある。また、前輪側のサスペンション21と後輪側のサスペンション22とをまとめて「サスペンション」と称する場合もある。また、懸架スプリング21sと懸架スプリング22sとをまとめて「スプリング」と称する場合もある。また、減衰装置21dと減衰装置22dとをまとめて「減衰装置200」と称する場合もある。また、スプリングよりも下側にある部品の集合体をバネ下4と称する場合もある。バネ下4は、前輪2と、後輪3とを有する。
【0009】
自動二輪車1は、サスペンション21の伸縮量を検出するストロークセンサ31と、サスペンション22の伸縮量を検出するストロークセンサ32からの出力信号が入力される。以下の説明において、ストロークセンサ31とストロークセンサ32とをまとめて「ストロークセンサ30」と称する場合もある。
また、自動二輪車1は、車両本体10の重心Gを通るピッチ軸周りの角速度であるピッチレートを検出するピッチレートセンサ35を有している。
自動二輪車1は、ストロークセンサ30やピッチレートセンサ35の検出値を用いて、減衰装置21d及び減衰装置22dの減衰力を制御する制御装置100を備えている。
本発明に係る懸架システム20は、サスペンション(サスペンション21及びサスペンション22)と、制御装置100とを有するシステムである。
【0010】
(減衰装置)
減衰装置200は、作動油で満たされたシリンダ210と、ピストン221と、ピストンロッド222とを備えている。シリンダ210の一方側(
図2においては上側)の端部210aが車両本体10に連結されている。ピストンロッド222は、一方側の端部にピストン221を保持し、他方側(
図2においては下側)の端部222aが車輪に連結されている。
シリンダ210内は、ピストン221がシリンダ210内に収容されていることにより、圧縮行程において作動油の圧力が高まる圧縮側の油室211と、伸長行程において作動油の圧力が高まる伸長側の油室212とに区画されている。
【0011】
減衰装置200は、シリンダ210内の油室211に接続された第1油路231と、シリンダ210内の油室212に接続された第2油路232とを有している。また、減衰装置200は、第1油路231と第2油路232との間に設けられた第3油路233と、第3油路233に設けられた減衰力制御弁240とを有している。また、減衰装置200は、第1油路231と第3油路233の一方の端部とを接続する第1分岐路251と、第1油路231と第3油路233の他方の端部とを接続する第2分岐路252と、を有している。また、減衰装置200は、第2油路232と第3油路233の一方の端部とを接続する第3分岐路253と、第2油路232と第3油路233の他方の端部とを接続する第4分岐路254と、を有している。
【0012】
また、減衰装置200は、第1分岐路251に設けられた第1チェック弁271と、第2分岐路252に設けられた第2チェック弁272とを有している。また、減衰装置200は、第3分岐路253に設けられた第3チェック弁273と、第4分岐路254に設けられた第4チェック弁274とを有している。また、減衰装置200は、作動油を貯留すると共に作動油を給排する機能を有するリザーバ290と、リザーバ290と第3油路233の他方の端部とを接続するリザーバ通路291とを有している。
減衰力制御弁240は、ソレノイドを有しており、ソレノイドに通電する電流量が制御されることによって、弁を通過する作動油の圧力を制御可能である。本実施の形態に係る減衰力制御弁240は、ソレノイドに供給される電流量が大きくなるのに従って弁を通過する作動油の圧力を高くする。ソレノイドに通電する電流量は、制御装置100によって制御される。
【0013】
ピストン221が油室211の方に移動すると、油室211の油圧が上昇する。そして、油室211内の作動油が、第1油路231、及び、第1分岐路251を介して、減衰力制御弁240に向かう。減衰力制御弁240を通過する作動油の圧力が減衰力制御弁240の弁圧にて調整されることにより、圧縮側の減衰力が調整される。減衰力制御弁240を通過した作動油は、第4分岐路254、及び、第2油路232を介して、油室212に流入する。
他方、ピストン221が油室212の方に移動すると、油室212の油圧が上昇する。そして、油室212内の作動油が、第2油路232、及び、第3分岐路253を介して、減衰力制御弁240に向かう。減衰力制御弁240を通過する作動油の圧力が減衰力制御弁240の弁圧にて調整されることにより、伸長側の減衰力が調整される。減衰力制御弁240を通過した作動油は、第2分岐路252、及び、第1油路231を介して、油室211に流入する。
【0014】
(制御装置100)
制御装置100は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等からなる算術論理演算回路である。
制御装置100には、ストロークセンサ31にて検出されたサスペンション21のストローク量が出力信号に変換された、前輪側のストローク信号sfが入力される。また、制御装置100には、ストロークセンサ32にて検出されたサスペンション22のストローク量が出力信号に変換された、後輪側のストローク信号srが入力される。このほか、制御装置100には、ピッチレートセンサ35からのピッチレートに対応するレート信号ωなども入力される。
【0015】
制御装置100は、減衰力制御弁240のソレノイドに供給する電流量を制御することにより、減衰力を制御する。具体的には、制御装置100は、減衰力を大きくする場合には、減衰力制御弁240のソレノイドに供給する電流量を大きくし、減衰力を小さくする場合には、減衰力制御弁240のソレノイドに供給する電流量を小さくする。
制御装置100は、ストロークセンサ30からのストローク信号sf、srを用いて、ストローク量の変化の速度である速度Vpf、Vprを算出する、算出部110を備えている。また、制御装置100は、減衰力制御弁240のソレノイドに供給する目標電流Itf、Itrを設定する設定部120と、減衰力制御弁240を駆動させる駆動部130とを備えている。
【0016】
算出部110は、単位時間当たりの、サスペンション21のストローク量の変化量を算出することにより、前輪側の速度Vpfを算出する。また、算出部110は、単位時間当たりの、サスペンション22のストローク量の変化量を算出することにより、後輪側の速度Vprを算出する。速度Vpfと速度Vprとをまとめて「速度Vp」と称する場合もある。なお、以下の説明において、サスペンションの伸長方向における速度Vpの符号を正、サスペンションの圧縮方向における速度Vpの符号を負とする。
設定部120については後で詳述する。
【0017】
駆動部130は、例えば電源の正極側ラインと、減衰力制御弁240のソレノイドのコイルとの間に接続された、スイッチング素子としてのトランジスタ(Field Effect Transistor:FET)を備えている。
より具体的には、駆動部130は、減衰装置21dの減衰力制御弁240へと供給する目標電流が、設定部120によって設定された目標電流Itfとなるように、トランジスタをスイッチング動作させる。また、駆動部130は、減衰装置22dの減衰力制御弁240へと供給する目標電流が、設定部120によって設定された目標電流Itrとなるように、トランジスタをスイッチング動作させる。
【0018】
(設定部120)
設定部120は、算出部110が算出した速度Vpf等に基づいて、減衰装置21dの減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、前輪側の目標電流Itfを設定する。また、設定部120は、算出部110が算出した速度Vpr等に基づいて、減衰装置22dの減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、後輪側の目標電流Itrを設定する。以下では、目標電流Itfと目標電流Itrとをまとめて「目標電流It」と称する場合もある。
【0019】
設定部120は、目標電流Itf、Itrを設定する上で基準となる基準電流Ibf、Ibrを設定する基準部121を有している。また、設定部120は、自動二輪車1の走行状態に応じて基準電流Ibf、Ibrを補正するための補正電流Icf、Icrを設定する補正部122を有している。
また、設定部120は、基準部121が設定した基準電流Ibf、Ibrと、補正部122が設定した補正電流Icf、Icrと、を加算することにより、最終的に目標電流Itf、Itrを設定する目標設定部123を有している。
【0020】
図4は、基準電流Ibfと速度Vpfとの関係の例を示す制御マップの概略図である。
基準部121は、速度Vpfに応じた基準電流Ibfを算出する。基準部121は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記録しておいた、基準電流Ibfと速度Vpfとの関係を示す
図4に例示した制御マップに、速度Vpfを代入することにより基準電流Ibfを算出する。
図4に例示した制御マップにおいては、速度Vpfが負である場合には、速度Vpfが第1所定速度V1以上であるときには速度Vpfが小さいほど電流量が大きくなり、速度Vpfが第1所定速度V1より小さいときには一定の電流量となるように設定されている。また、速度Vpfが正である場合には、速度Vpfが第2所定速度V2以下であるときには速度Vpfが大きいほど電流量が大きく、速度Vpfが第2所定速度V2より大きいときには一定の電流量となるように設定されている。
なお、基準部121が基準電流Ibrを算出する手法は、基準電流Ibfを算出する手法と同じであるので、その詳細な説明は省略する。また、基準電流Ibrと速度Vprとの関係の例を示す制御マップは、基準電流Ibfと速度Vpfとの関係の例を示す制御マップと同じであるので、その詳細な説明は省略する。ただし、第1所定速度V1、第2所定速度V2、及び、一定の電流量の具体的な値は、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0021】
図5は、補正部122の概略構成図である。
図6は、上下速度Vuf、Vur、速度Vpf、Vpr、上下速度Vdf、Vdr、上レートωu、及び、下レートωdを示す模式図である。
補正部122は、補正電流Icfを設定する上で基準となる基準補正電流Icbfと、補正電流Icrを設定する上で基準となる基準補正電流Icbrと、を設定する、基準補正部141を有している。
また、補正部122は、前輪2側の車両本体10に生じる上下方向の速度である上下速度Vufと、後輪3側の車両本体10に生じる上下方向の速度である上下速度Vurとが異なることにより生じる車両本体10の前後方向の回転運動を抑制する、上抑制部142を有している。上抑制部142は、基準補正電流Icbfを補正するための上係数Kufと、基準補正電流Icbrを補正するための上係数Kurと、を設定する。なお、上下速度Vufと上下速度Vurとが異なることにより生じる車両本体10の前後方向の回転運動のピッチレートを、「上レートωu」と称する。上レートωuは、ピッチレートセンサ35により検出される。
【0022】
また、補正部122は、前輪2に生じる上下方向の速度である上下速度Vdfと、後輪3に生じる上下方向の速度である上下速度Vdrとが異なることにより生じるバネ下4の前後方向の回転運動のピッチレートである下レートωdを算出する、レート算出部143を有している。
また、補正部122は、上下速度Vdfと上下速度Vdrとが異なることにより生じるバネ下4の前後方向の回転運動を抑制する、下抑制部144を有している。下抑制部144は、基準補正電流Icbfを補正するための下係数Kdfと、基準補正電流Icbrを補正するための下係数Kdrとを設定する。
また、補正部122は、上抑制部142が設定した上係数Kuf、Kurと、下抑制部144が設定した下係数Kdf、Kdrと、を加算することにより、合成係数Kf、Krを算出する、加算部145を有している。
また、補正部122は、基準補正部141が設定した基準補正電流Icbf、Icbrと、加算部145が算出した合成係数Kf、Krとを乗算することにより補正電流Icf、Icrを算出する、乗算部146を有している。
【0023】
(レート算出部143)
レート算出部143は、以下の式(1)等を用いて下レートωdを算出する。
ωd=tan
−1{(Vdr−Vdf)/(Lr+Lf)}・・・(1)
ここで、Lfは、前輪2の回転中心と車両本体10の重心Gとの前後方向の距離、Lrは、後輪3の回転中心と車両本体10の重心Gとの前後方向の距離である。
また、レート算出部143は、上下速度Vdfを、速度Vpfを用いて算出する。レート算出部143は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記録しておいた、上下速度Vdfと速度Vpfとの関係を示す制御マップに、算出部110が算出した速度Vpfを代入することにより上下速度Vdfを算出する。上下速度Vdfと速度Vpfとの関係を示す制御マップにおいては、速度Vpfが0である場合には上下速度Vdfは0であり、速度Vpfが0より大きい場合には上下速度Vdfは0より小さく、速度Vpfが0より小さい場合には上下速度Vdfは0より大きくなるように設定されていることを例示することができる。
また、レート算出部143は、上下速度Vdrを、速度Vprを用いて算出する。レート算出部143は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記録しておいた、上下速度Vdrと速度Vprとの関係を示す制御マップに、算出部110が算出した速度Vprを代入することにより上下速度Vdrを算出する。上下速度Vdrと速度Vprとの関係を示す制御マップにおいては、速度Vprが0である場合には上下速度Vdrは0であり、速度Vprが0より大きい場合には上下速度Vdrは0より小さく、速度Vprが0より小さい場合には上下速度Vdrは0より大きくなるように設定されていることを例示することができる。
【0024】
(基準補正部141)
基準補正部141は、速度Vpfが0である場合には、基準補正電流Icbfを0に設定し、速度Vpfが0より大きい場合には、基準補正電流Icbfを予め定められた正の値に設定し、速度Vpfが0より小さい場合には、基準補正電流Icbfを予め定められた負の値に設定する。
また、基準補正部141は、速度Vprが0である場合には、基準補正電流Icbrを0に設定し、速度Vprが0より大きい場合には、基準補正電流Icbrを予め定められた正の値に設定し、速度Vprが0より小さい場合には、基準補正電流Icbrを予め定められた負の値に設定する。
【0025】
(上抑制部142)
以下の説明において、車両本体10の前後方向の回転運動の符号を、前輪2側が沈み込み後輪3側が浮き上がる方向を正、前輪2側が浮き上がり後輪3側が沈み込む方向を負とする。
上抑制部142は、上レートωuが0である場合には、上係数Kufを0に設定し、上レートωuが0より大きい場合には、上係数Kufを予め定められた負の値に設定し、上レートωuが0より小さい場合には、上係数Kufを予め定められた正の値に設定する。
また、上抑制部142は、上レートωuが0である場合には、上係数Kurを0に設定し、上レートωuが0より大きい場合には、上係数Kurを予め定められた正の値に設定し、上レートωuが0より小さい場合には、上係数Kurを予め定められた負の値に設定する。
【0026】
(下抑制部144)
下抑制部144は、下レートωdが0である場合には、下係数Kdfを0に設定し、下レートωdが0より大きい場合には、下係数Kdfを予め定められた負の値に設定し、下レートωdが0より小さい場合には、下係数Kdfを予め定められた正の値に設定する。
また、下抑制部144は、下レートωdが0である場合には、下係数Kdrを0に設定し、下レートωdが0より大きい場合には、下係数Kdrを予め定められた正の値に設定し、下レートωdが0より小さい場合には、下係数Kdrを予め定められた負の値に設定する。
【0027】
(加算部145)
加算部145は、上係数Kufと下係数Kdfとを加算することにより、合成係数Kfを算出する(Kf=Kuf+Kdf)。また、加算部145は、上係数Kurと下係数Kdrとを加算することにより、合成係数Krを算出する(Kr=Kur+Kdr)。
(乗算部146)
乗算部146は、基準補正電流Icbfと合成係数Kfとを乗算することにより補正電流Icfを算出する(Icf=Icbf×Kf)。また、乗算部146は、基準補正電流Icbrと合成係数Krとを乗算することにより補正電流Icrを算出する(Icr=Icbr×Kr)。
【0028】
(目標電流設定処理のフローチャート)
次に、フローチャートを用いて、設定部120が行う目標電流設定処理の手順について説明する。
図7は、設定部120が行う目標電流設定処理の手順を示すフローチャートである。
設定部120は、この目標電流設定処理を、予め定めた期間(例えば1ミリ秒)毎に繰り返し実行する。設定部120は、目標電流設定処理において、目標電流Itf及び目標電流Itrを設定する。以下には、設定部120が目標電流Itfを設定する処理について説明する。設定部120が目標電流Itrを設定する処理は、目標電流Itfを設定する処理と同一であるので、その詳細な説明は省略する。
【0029】
設定部120は、基準電流Ibfを設定する(ステップ(以下「S」と称する場合もある。)701)。これは、基準部121が、算出部110が算出した速度Vpfを用いて、基準電流Ibfを算出する処理である。
設定部120は、基準補正電流Icbfを設定する(S702)。これは、基準補正部141が、算出部110が算出した速度Vpfを用いて、基準補正電流Icbfを設定する処理である。
設定部120は、上係数Kufを設定する(S703)。これは、上抑制部142が、ピッチレートセンサ35にて検出された上レートωuを用いて、上係数Kufを設定する処理である。
設定部120は、下係数Kdfを設定する(S704)。これは、下抑制部144が、レート算出部143が算出した下レートωdを用いて、下係数Kdfを設定する処理である。
設定部120は、合成係数Kfを算出する(S705)。これは、加算部145が、S703にて設定した上係数Kufと、S704にて設定した下係数Kdfとを加算する処理である。
設定部120は、補正電流Icfを算出する(S706)。これは、乗算部146が、S702にて設定した基準補正電流Icbfと、S705にて設定した合成係数Kfとを乗算することにより、補正電流Icfを算出する処理である。
そして、設定部120は、目標電流Itfを算出する(S707)。これは、目標設定部123が、S701にて設定した基準電流Ibfと、S706にて算出した補正電流Icfとを加算することにより得た値を、目標電流Itfとして設定する処理である(Itf=Ibf+Icf)。
【0030】
(作用・効果)
上述したように、設定部120が目標電流設定処理を行って目標電流Itを設定し、減衰装置200の減衰力を制御することで、以下のように作用する。以下では、第1の実施形態に係る制御装置100に対して下抑制部144を備えていない構成を「第1比較構成」と称し、第1比較構成と比較しながら第1の実施形態の作用について説明する。
図8は、凸部1000がある路面を自動二輪車1が走行する際、及び、ブレーキ操作が行われた際に、自動二輪車1に生じる、上レートωu及び下レートωdの方向を示す図である。
〔凸部1000を乗り越える前〕
例えば、自動二輪車1が路面の凸部1000を乗り越える前には、
図8に示すように負の上レートωu、及び、負の下レートωdが生じる。
かかる場合、自動二輪車1の前輪2側においては、上抑制部142が設定する上係数Kuf、及び、下抑制部144が設定する下係数Kdfは、共に正となる。すると、補正電流Icfは、下係数Kdfが正であるために、サスペンション21が伸長方向である場合には第1比較構成と比べて大きくなり、圧縮方向である場合には第1比較構成と比べて小さくなる。その結果、サスペンション21が伸長方向である場合には、減衰装置21dの減衰力が第1比較構成よりも大きくなり、圧縮方向である場合には、減衰装置21dの減衰力が第1比較構成よりも小さくなる。
他方、上レートωu及び下レートωdが負なので、後輪3側においては、上抑制部142が設定する上係数Kur、及び、下抑制部144が設定する下係数Kdrは、共に負となる。すると、補正電流Icrは、下係数Kdrが負であるために、サスペンション22が伸長方向である場合には第1比較構成と比べて小さくなり、圧縮方向である場合には第1比較構成と比べて大きくなる。その結果、サスペンション22が伸長方向である場合には、減衰装置22dの減衰力が第1比較構成よりも小さくなり、圧縮方向である場合には、減衰装置22dの減衰力が第1比較構成よりも大きくなる。
その結果、自動二輪車1は、第1比較構成に比べて、サスペンション21が伸び難くなり、サスペンション22が縮み難くなる。また、自動二輪車1は、第1比較構成に比べて、サスペンション21が縮み易くなり、サスペンション22が伸び易くなる。これにより、自動二輪車1は、第1比較構成に比べて、前輪2側が浮き上がり後輪3側が沈み込む回転運動が抑制される。それゆえ、自動二輪車1は、第1比較構成に比べて、姿勢を安定させることが可能なので、路面に凸部1000があることに起因して生じる乗り心地の悪化が抑制される。
【0031】
〔凸部1000を乗り越えた後〕
自動二輪車1が路面の凸部1000を乗り越えた後には、
図8に示すように正の上レートωu、及び、正の下レートωdが生じる。
かかる場合、自動二輪車1の前輪2側においては、上抑制部142が設定する上係数Kuf、及び、下抑制部144が設定する下係数Kdfは、共に負となる。すると、補正電流Icfは、下係数Kdfが負であるために、サスペンション21が伸長方向である場合には第1比較構成と比べて小さくなり、圧縮方向である場合には第1比較構成と比べて大きくなる。その結果、サスペンション21が圧縮方向である場合には、減衰装置21dの減衰力が第1比較構成よりも大きくなり、伸長方向である場合には、減衰装置21dの減衰力が第1比較構成よりも小さくなる。
他方、上レートωu及び下レートωdが正なので、後輪3側においては、上抑制部142が設定する上係数Kur、及び、下抑制部144が設定する下係数Kdrは、共に正となる。すると、補正電流Icrは、下係数Kdrが正であるために、サスペンション22が伸長方向である場合には第1比較構成と比べて大きくなり、圧縮方向である場合には第1比較構成と比べて小さくなる。その結果、サスペンション22が伸長方向である場合には、減衰装置22dの減衰力が第1比較構成よりも大きくなり、圧縮方向である場合には、減衰装置22dの減衰力が第1比較構成よりも小さくなる。
その結果、自動二輪車1は、第1比較構成に比べて、サスペンション21が縮み難くなり、サスペンション22が伸び難くなる。また、自動二輪車1は、第1比較構成に比べて、サスペンション21が伸び易くなり、サスペンション22が縮み易くなる。これにより、自動二輪車1は、第1比較構成に比べて、前輪2側が沈み込み後輪3側が浮き上がる回転運動が抑制される。それゆえ、自動二輪車1は、第1比較構成に比べて、姿勢を安定させることが可能なので、路面に凸部1000があることに起因して生じる乗り心地の悪化が抑制される。
【0032】
〔ブレーキ操作〕
ブレーキレバー13が握られるブレーキ操作が行われた場合、
図8に示すように、正の上レートωu、及び、負の下レートωdが生じる。
かかる場合、自動二輪車1の前輪2側においては、上抑制部142が設定する上係数Kufは負となる一方で、下抑制部144が設定する下係数Kdfは正となる。つまり、上抑制部142が設定する上係数Kufの符合と、下抑制部144が設定する下係数Kdfの符号とが反対となる。例えば、上係数Kufの絶対値と下係数Kdfの絶対値とが同じである場合には、上係数Kufと下係数Kdfとを加算した合成係数Kfは0となる。それゆえ、上係数Kufによる効果が下係数Kdfによって相殺される。
他方、後輪3側においては、上抑制部142が設定する上係数Kurは正となる一方で、下抑制部144が設定する下係数Kdrは負となる。つまり、上抑制部142が設定する上係数Kurの符合と、下抑制部144が設定する下係数Kdrの符号とが反対となる。例えば、上係数Kurの絶対値と下係数Kdrの絶対値とが同じである場合には、上係数Kurと下係数Kdrとを加算した合成係数Krは0となる。それゆえ、上係数Kurによる効果が下係数Kdrによって相殺される。
第1比較構成においては、上係数Kufが負となり上係数Kurは正となるので、サスペンション21が縮み難くなり、サスペンション22が伸び難くなる。これに対して、第1の実施形態に係る自動二輪車1においては、上係数Kufによる効果が下係数Kdfによって相殺されるので、第1比較構成に比べて、サスペンション21が縮み易くなる。また、第1の実施形態に係る自動二輪車1においては、上係数Kurによる効果が下係数Kdrによって相殺されるので、第1比較構成に比べて、サスペンション22が伸び易くなる。つまり、自動二輪車1においては、ブレーキ操作が行われた場合、第1比較構成よりも、前輪2側が沈み込み、後輪3側が浮き上がり易くなる。その結果、自動二輪車1によれば、第1比較構成よりも、キャスタ角が小さくなり、ハンドル12を素早く回転させることができるので、ハンドル12を操作し易くなる。それゆえ、自動二輪車1は、第1比較構成よりも、ハンドリング性能が向上する。
【0033】
以上、説明したように、上抑制部142と下抑制部144とを備える自動二輪車1によれば、凹凸のある路面を走行する場合等、路面の状態に応じて前後方向の回転運動が生じる場合には、上抑制部142を有する効果が増大されて回転運動が抑制される。それゆえ、例えば、自動二輪車1が凹凸のある路面を走行する際には姿勢が安定するので、路面に凹凸があることに起因して生じる乗り心地の悪化が抑制される。他方、ブレーキ操作が行われた場合等、運転者の操作に応じて前後方向の回転運動が生じる場合には、上抑制部142を有することに起因して車輪の路面への接地感が希薄になる不具合が解消される。それゆえ、例えば、ブレーキ操作が行われた場合には、前輪2の路面への接地感が増し、ハンドリング性能が向上する。つまり、前後方向の回転運動を抑制する機能を備えたとしても、操縦安定性を確保することができる。
また、上述した実施形態においては、上抑制部142が上係数Kuf、Kurを設定し、下抑制部144が下係数Kdf、Kdrを設定する。それゆえ、車両の種類に応じて、上係数Kuf、Kur、下係数Kdf、Kdrを変更することで、複数の種類の車両それぞれに合致するセッティングにすることを、容易かつきめ細やかに実現することが可能となる。
【0034】
また、上レートωuの値に対する上係数Kuf、Kurの値、及び、下レートωdの値に対する下係数Kdf、Kdrの値を、自動二輪車1の状態に応じて切り替えても良い。例えば、自動二輪車1の車速に応じて切り替えても良い。また、運転者によって選択される制御モードに応じて切り替えても良い。制御モードとしては、市街地を想定したスタンダードモード、ワインディングロードを想定したスポーツモード、高速道路等を想定したハイウェイモード、乗り心地を優先して走行する状態を想定したコンフォートモード等が考えられる。
【0035】
また、上記説明では、上抑制部142が、上レートωuが正である場合には負の上係数Kufを、上レートωuが負である場合には正の上係数Kufを設定し、加算部145が、その上係数Kufに下係数Kdfを加算することで合成係数Kfを算出する形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。上抑制部142が、上レートωuが正である場合には正の上係数Kufを、上レートωuが負である場合には負の上係数Kufを設定し、加算部145が合成係数Krを算出する際に、上抑制部142が設定した上係数Kufの符号を反転した値に、下係数Kdfを加算しても良い。
また、上記説明では、下抑制部144が、下レートωdが正である場合には負の下係数Kdfを、下レートωdが負である場合には正の下係数Kdfを設定し、加算部145が、その下係数Kdfに上係数Kufを加算することで合成係数Kfを算出する形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。下抑制部144が、下レートωdが正である場合には正の下係数Kdfを、下レートωdが負である場合には負の下係数Kdfを設定し、加算部145が合成係数Krを算出する際に、下抑制部144が設定した下係数Kdfの符号を反転した値に、上係数Kufを加算しても良い。
【0036】
また、上述した実施形態においては、補正部122は、減衰装置21dの減衰力を補正するための補正電流Icfと、減衰装置22dの減衰力を補正するための補正電流Icrとを設定するが、本発明は当該形態に限定されない。補正部122は、減衰装置21d又は減衰装置22dの一方の減衰装置を補正するために、一方の減衰装置の補正電流のみを設定しても良い。
【0037】
<第2の実施形態>
図9は、第2の実施形態に係る自動二輪車400の補正部422の概略構成図である。
第2の実施形態に係る自動二輪車400は、第1の実施形態に係る自動二輪車1に対して、補正部122に相当する補正部422が異なる。補正部422は、補正部122に対して、上抑制部142及び加算部145を備えていないと共に、乗算部146に相当する乗算部446が補正電流Icf、Icrを算出する手法が異なる。以下、自動二輪車1と異なる点について説明する。自動二輪車1と自動二輪車400とで、同じ機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
乗算部446は、基準補正部141が設定した基準補正電流Icbfと、下抑制部144が設定した下係数Kdfとを乗算することにより補正電流Icfを算出する(Icf=Icbf×Kdf)。また、乗算部446は、基準補正部141が設定した基準補正電流Icbrと、下抑制部144が設定した下係数Kdrとを乗算することにより補正電流Icrを算出する(Icr=Icbr×Kdr)。
【0038】
(作用・効果)
以下では、第2の実施形態に係る自動二輪車400に対して下抑制部144を備えていない構成を「第2比較構成」と称し、この第2比較構成と比較しながら第2の実施形態の作用について説明する。
〔凸部1000を乗り越える前〕
自動二輪車400が路面の凸部1000を乗り越える前には、負の下レートωdが生じる。
かかる場合、自動二輪車400の前輪2側においては、下抑制部144が設定する下係数Kdfは正となる。すると、補正電流Icfは、下係数Kdfが正であるために、サスペンション21が伸長方向である場合には第2比較構成と比べて大きくなり、圧縮方向である場合には第2比較構成と比べて小さくなる。その結果、サスペンション21は、伸長方向である場合には、減衰装置21dの減衰力が第2比較構成よりも大きくなり、圧縮方向である場合には、減衰装置21dの減衰力が第2比較構成よりも小さくなる。
他方、後輪3側においては、下抑制部144が設定する下係数Kdrは負となる。すると、補正電流Icrは、下係数Kdrが負であるために、サスペンション22が伸長方向である場合には第2比較構成と比べて小さくなり、圧縮方向である場合には第2比較構成と比べて大きくなる。その結果、サスペンション22は、伸長方向である場合には、減衰装置22dの減衰力が第2比較構成よりも小さくなり、圧縮方向である場合には、減衰装置22dの減衰力が第2比較構成よりも大きくなる。
その結果、自動二輪車400は、第2比較構成に比べて、サスペンション21が伸び難くなり、サスペンション22が縮み難くなる。また、自動二輪車400は、第2比較構成に比べて、サスペンション21が縮み易くなり、サスペンション22が伸び易くなる。これにより、自動二輪車400は、第2比較構成に比べて、前輪2側が浮き上がり後輪3側が沈み込む回転運動が抑制される。それゆえ、自動二輪車400は、第2比較構成に比べて、姿勢を安定させることが可能になる。
【0039】
〔凸部1000を乗り越えた後〕
自動二輪車400が路面の凸部1000を乗り越えた後には、正の下レートωdが生じる。
かかる場合、自動二輪車400の前輪2側においては、下抑制部144が設定する下係数Kdfは負となる。すると、補正電流Icfは、下係数Kdfが負であるために、サスペンション21が伸長方向である場合には第2比較構成と比べて小さくなり、圧縮方向である場合には第2比較構成と比べて大きくなる。その結果、サスペンション21は、圧縮方向である場合には、減衰装置21dの減衰力が第2比較構成よりも大きくなり、伸長方向である場合には、減衰装置21dの減衰力が第2比較構成よりも小さくなる。
他方、後輪3側においては、下抑制部144が設定する下係数Kdrは正となる。すると、補正電流Icrは、下係数Kdrが正であるために、サスペンション22が伸長方向である場合には第2比較構成と比べて大きくなり、圧縮方向である場合には第2比較構成と比べて小さくなる。その結果、サスペンション22は、伸長方向である場合には、減衰装置22dの減衰力が第2比較構成よりも大きくなり、圧縮方向である場合には、減衰装置22dの減衰力が第2比較構成よりも小さくなる。
その結果、自動二輪車400は、第2比較構成に比べて、サスペンション21が縮み難くなり、サスペンション22が伸び難くなる。また、自動二輪車400は、第2比較構成に比べて、サスペンション21が伸び易くなり、サスペンション22が縮み易くなる。これにより、自動二輪車400は、第2比較構成に比べて、前輪2側が沈み込み後輪3側が浮き上がる回転運動が抑制される。それゆえ、自動二輪車400は、第2比較構成に比べて、姿勢を安定させることが可能になる。
【0040】
〔ブレーキ操作〕
ブレーキレバー13が握られるブレーキ操作が行われた場合、負の下レートωdが生じる。
かかる場合、自動二輪車1の前輪2側においては、下抑制部144が設定する下係数Kdfは正となる。すると、補正電流Icfは、下係数Kdfが正であるために、サスペンション21が伸長方向である場合には第2比較構成と比べて大きくなり、圧縮方向である場合には第2比較構成と比べて小さくなる。その結果、サスペンション21は、伸長方向である場合には、減衰装置21dの減衰力が第2比較構成よりも大きくなり、圧縮方向である場合には、減衰装置21dの減衰力が第2比較構成よりも小さくなる。
他方、後輪3側においては、下抑制部144が設定する下係数Kdrは負となる。すると、補正電流Icrは、下係数Kdrが負であるために、サスペンション22が伸長方向である場合には第2比較構成と比べて小さくなり、圧縮方向である場合には第2比較構成と比べて大きくなる。その結果、サスペンション22は、伸長方向である場合には、減衰装置22dの減衰力が第2比較構成よりも小さくなり、圧縮方向である場合には、減衰装置22dの減衰力が第2比較構成よりも大きくなる。
その結果、自動二輪車400は、第2比較構成に比べて、サスペンション21が縮み易くなり、サスペンション22が伸び易くなる。また、自動二輪車400は、第2比較構成に比べて、サスペンション21が伸び難くなり、サスペンション22が縮み難くなる。これにより、自動二輪車400は、第2比較構成に比べて、前輪2側が沈み込み易く、後輪3側が浮き上がり易くなる。その結果、自動二輪車400によれば、第2比較構成よりも、キャスタ角が小さくなり、ハンドル12を操作し易くなる。それゆえ、自動二輪車400は、第2比較構成よりも、ハンドリング性能が向上する。
【0041】
以上、説明したように、下抑制部144を備える自動二輪車400によれば、凹凸のある路面を走行する場合等、路面の状態に応じて前後方向の回転運動が生じる場合には、回転運動が抑制される。それゆえ、例えば、自動二輪車400が凹凸のある路面を走行する際には姿勢が安定する。他方、ブレーキ操作が行われた場合等、運転者の操作に応じて前後方向の回転運動が生じる場合には、車輪の路面への接地感が増す。それゆえ、例えば、ブレーキ操作が行われた場合には、ハンドル12を操作し易くなり、ハンドリング性能が向上する。つまり、前後方向の回転運動を抑制する機能を備えたとしても、操縦安定性を確保することができる。
【0042】
図10は、自動二輪車1、自動二輪車400、第1比較構成、及び、第2比較構成の、車両本体10の姿勢安定性とハンドリング性能とを比較する図である。
図10においては、車両本体10の姿勢安定性を横軸に、ハンドリング性能を縦軸に示している。
上抑制部142と下抑制部144とを共に有していない第2比較構成の、姿勢安定性とハンドリング性能とを基準とした場合に、第2比較構成よりもハンドリング性能及び姿勢安定性が高い領域と、第2比較構成よりも姿勢安定性が高いがハンドリング性能が低くなる領域とを含む、
図10にドット模様で示した楕円形領域が、ある種類の自動二輪車の減衰装置200の減衰力をセッティングするのに推奨される推奨セッティング領域である。
上抑制部142を有し、下抑制部144を有していない第1比較構成においては、第2比較構成よりも、姿勢安定性が高く、ハンドリング性能が低くなる傾向にある。ただし、上係数Kuf、Kurを適宜調整することで、推奨セッティング領域内にセッティングすることが可能である。
上抑制部142と下抑制部144とを共に有している自動二輪車1においては、第2比較構成よりも、姿勢安定性とハンドリング性能とが共に高くなる傾向にある。そして、上係数Kuf、Kur、下係数Kdf、Kdrを適宜調整することで、推奨セッティング領域内にセッティングすることが可能である。自動二輪車1によれば、上係数Kuf、Kur、下係数Kdf、Kdrを調整することで、推奨セッティング領域内の任意のセッティングとすることが可能である。
なお、下抑制部144を有し、上抑制部142を有していない自動二輪車400においては、第2比較構成よりも、姿勢安定性とハンドリング性能とが共に高くなる傾向にある。
図10に示したように、ドット模様で示した楕円形領域には、第2比較構成よりも姿勢安定性が高く、ハンドリング性能が低くなる傾向にある第1比較構成と、第2比較構成よりも姿勢安定性及びハンドリング性能が高くなる傾向にある自動二輪車1とが、含まれている。
【0043】
<第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態に係る自動二輪車500の補正部522の概略構成図である。
第3の実施形態に係る自動二輪車500は、第1の実施形態に係る自動二輪車1に対して、補正部122に相当する補正部522が異なる。補正部522は、補正部122に対して、車両本体10の上下方向の振動を抑制する上下抑制部547を有すると共に、加算部145に相当する加算部545が合成係数Kf、Krを算出する手法が異なる。以下、自動二輪車1と異なる点について説明する。自動二輪車1と自動二輪車500とで、同じ機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0044】
上下抑制部547は、周知のスカイフック理論に基づいて、車両本体10の上下方向の振動を抑制するために、基準補正電流Icbf、Icbrを補正するための上下係数Kgf、Kgrを設定する。以下に、上下係数Kgfを設定する手法について説明する。上下係数Kgrを設定する手法は、上下係数Kgfを設定する手法と同一であるので、説明を省略する。
上下抑制部547は、上下速度Vufと、上下速度Vufと上下速度Vdfとの相対速度(Vuf−Vdf)とが同方向であるとき、上下係数Kgfを正の値に設定する。他方、上下抑制部547は、上下速度Vufと、上下速度Vufと上下速度Vdfとの相対速度(Vuf−Vdf)とが逆方向であるとき、上下係数Kgfを負の値に設定する。
なお、上下速度Vuf、Vurは、自動二輪車500に備えられた加速度センサが検出した上下方向の加速度を微分して得ることを例示することができる。また、上下速度Vdf、Vdrは、ピッチレートセンサ35にて検出した上レートωuと、ピッチレートセンサ35と前輪2の回転中心との前後方向の距離と、ピッチレートセンサ35と後輪3の回転中心との前後方向の距離と、を用いて算出しても良い。
加算部545は、上下係数Kgfと上係数Kufと下係数Kdfとを加算することにより、合成係数Kfを算出する(Kf=Kgf+Kuf+Kdf)。また、加算部545は、上下係数Kgrと上係数Kurと下係数Kdrとを加算することにより、合成係数Krを算出する(Kr=Kgr+Kur+Kdr)。
第3の実施形態に係る自動二輪車500によれば、第1の実施形態に係る自動二輪車1の作用に加えて、例えば凹凸のある路面を走行する場合等に生じる上下方向の振動を抑制することが可能となる。
【0045】
なお、第2の実施形態に係る自動二輪車400の補正部422に、上下抑制部547を追加し、上下係数Kgf、Kgrと、下係数Kdf、Kdrとを加算することにより合成係数Kf、Krを算出しても良い(Kf=Kgf+Kdf、Kr=Kgr+Kdr)。
これにより、第2の実施形態に係る自動二輪車400の作用に加えて、上下方向の振動を抑制することが可能となる。
制御装置100は、二輪車の車両本体と、前輪及び後輪の少なくともいずれか一方との間に生じる力を減衰させる減衰装置の減衰力を、前輪の上下方向の速度と後輪の上下方向の速度とが異なることにより生じる二輪車のバネ下の前後方向の回転運動の角速度を用いて制御する。