特許第6495575号(P6495575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495575
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】ブラインド用シートおよびブラインド
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/24 20060101AFI20190325BHJP
   E06B 9/26 20060101ALI20190325BHJP
   E06B 9/42 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   E06B9/24 A
   E06B9/26
   E06B9/42 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-69035(P2014-69035)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-208969(P2014-208969A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-70720(P2013-70720)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391018341
【氏名又は名称】株式会社NBCメッシュテック
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】本島 信一
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 陽介
(72)【発明者】
【氏名】中山 鶴雄
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−092422(JP,A)
【文献】 特許第2645923(JP,B2)
【文献】 特開平05−201746(JP,A)
【文献】 特許第3661339(JP,B2)
【文献】 特開2010−216081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00−9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光透過性を有する基材と、前記基材の表面を覆う樹脂層と、を備え、
前記樹脂層が、近赤外線遮蔽能を有する近赤外線遮蔽粒子と、紫外線遮蔽能を有する紫外線遮蔽粒子と、を含み、
前記紫外線遮蔽粒子が、CuIのみから形成されており、
前記近赤外線遮蔽粒子が、金属酸化物、複合金属酸化物、ホウ化物のうち少なくともいずれか1種のみから形成されており、
前記樹脂層に含まれる粒子が、前記紫外線遮蔽粒子と前記近赤外線遮蔽粒子のみであることを特徴とするブラインド用シート。
【請求項2】
全光線透過率(JIS K 7136)が40%以上、70%以下であることを特徴とする請求項1に記載のブラインド用シート。
【請求項3】
近赤外線透過率が20%以上、50%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のブラインド用シート。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載されたブラインド用シートを用いたブラインド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採光性に優れ、熱線である近赤外線と紫外線、特に波長が320〜400nmの長波長紫外線(UVA)の遮蔽性能に優れるブラインド用シートに関する。
【0002】
近年、原子力発電の安全面の問題が大きくなっており、世界情勢として脱原発の方向に進みつつある。そんな中、日本においても電力問題が大きくなっており、一般消費者にも節電の意識が高まっている。特に夏期の節電では、エアコンの消費電力を抑えるため、いかに外部からの太陽光に含まれる熱線を遮蔽するかが重要視されている。室内の温度上昇原因の7割は窓から入る熱線によるものとされており、直射日光の当たる床部分では最大65℃近くまで上昇することもある。窓の内側に設置されたカーテンやブランドを用いても熱線は窓とカーテン、ブラインドとの間の空間を温めてしまうため十分な遮熱効果を得ることができない。
【0003】
また、夜間にブラインドを使用する際には、室内灯に含まれる紫外線が外部に漏れやすくなり、飛翔性の昆虫を誘引してしまう。一般に多くの昆虫等では短波長光に向かう性質があり、紫外線にその誘引のピークがあることが知られている。このため、虫の誘引を十分に抑制する為には300〜405nmの波長域の紫外光を効率よくカットすることが望まれる。
【0004】
そこで、紫外線遮蔽性と熱線遮蔽性を有するブラインドが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−345779
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来のブラインドでは長波長紫外線の吸収能が不足し、飛翔虫の誘引を抑制することができず、また耐久性や耐候性が十分に得られず、さらに紫外線吸収剤が表面にしみ出してくるいわゆるブリードアウトにより紫外線の吸収能が低下してしまうという問題がある。
【0007】
また、外部からの太陽光を完全に遮断するようなブラインドの場合、紫外線や熱線である近赤外線を遮蔽することはできるが、当然可視光も遮蔽されるので、昼間使用する場合には室内灯を使用することになる。一方、室内に太陽光を取り込もうとすると紫外線や、熱線である近赤外線も入るため、特に長波長紫外線はガラスを透過し、人の皮膚に浸透すると、シワやたるみを生じるといわれている。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、採光性はあるが、紫外線と、熱線である近赤外線と、をより効果的に遮蔽することができるブラインド用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち第1の発明は、可視光透過性を有する基材と、前記基材の表面を覆う樹脂層と、を備え、前記樹脂層が、近赤外線遮蔽能を有する近赤外線遮蔽物質と、一価の銅化合物および/またはヨウ化物からなる紫外線遮蔽能を有する紫外線遮蔽物質と、を含むことを特徴とするブラインド用シート。
【0010】
また第2の発明は、前記ブラインド用シートは、全光線透過率(JIS K 7136)が40%以上、70%以下であることを特徴とする第1の発明に記載のブラインド用シート。
【0011】
さらに第3の発明は、前記ブラインド用シートは、近赤外線透過率が20%以上、50%以下であることを特徴とする第1または第2の発明に記載のブラインド用シート。
【0012】
第4の発明は、前記一価の銅化合物が、塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、シアン化物、水酸化物、およびチオシアン化物からなる群から少なくとも1種類選択されることを特徴とする第1から第3の発明のいずれか一つに記載のブラインド用シート。
【0013】
第5の発明は、前記一価の銅化合物が、CuCl、CuBr、Cu(CH3COO)、CuSCN、Cu2S、Cu2O、CuCN、CuOH、およびCuIからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする第1から第4の発明のいずれか一つに記載のブラインド用シート。
【0014】
第6の発明は、前記ヨウ化物が、CuI、AgI、SbI3、IrI4、GeI4、GeI2、SnI2、SnI4、TlI、PtI2、PtI4、PdI2、BiI3、AuI、AuI3、FeI2、CoI2、NiI2、ZnI2、HgIおよびInI3からなる群から少なくとも1種類選択されることを特徴とする第1から第5の発明のいずれか一つに記載のブラインド用シート。
【0015】
第7の発明は、前記近赤外線遮蔽物質が、金属酸化物、複合金属酸化物、ホウ化物からなることを特徴とする第1から第6の発明のいずれか一つに記載のブラインド用シート。
【0016】
第8の発明は、第1から第7の発明のいずれか1つに記載されたブラインド用シートを用いたブラインド。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可視光は透過するため室内は明るく、また、熱線である近赤外線と紫外線、特に長波長側の紫外線を遮蔽するため、室内の温度上昇を抑制し、飛翔虫の誘引を抑制するブラインド用シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ロールスクリーンタイプの外付けブラインドの模式図である。
図2】スラットタイプの外付けブラインドの模式図である。
図3】本発明の実施形態のブラインド用シートの模式図である。
図4】実施例のフィールド試験の評価結果である温度推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態であるブラインド用シートについて詳細に説明する。図1および図2に本実施形態のブラインド用シート1を用いたブラインドの使用例を図示する。図1は、ロールスクリーンタイプの外付けブラインドである。本実施形態のブラインド用シート1を使用したロールスクリーンタイプのブラインドが窓2の外側に設定された状態である。また、図2は、スラットタイプの外付けブラインドであり、ブラインドの各スラット(羽根)が本実施形態のブラインド用シート1で形成されている。
【0020】
図3は本実施形態のブラインド用シート1の断面図である。本実施形態のブラインド用シート1は、可視光を透過して採光をしつつ、紫外線および赤外線を遮蔽するブラインドに用いるブラインド用シート(ブラインド用遮蔽材)である。本実施形態のブラインド用シート1は、可視光透過性を有する基材4と、基材表面に形成される樹脂層5とを備える。
【0021】
本実施形態のブラインド用シート1の基材4は、板、フィルム、パンチングシート、織物、編物、ハニカム状など、使用目的に合った種々の形状、構造、サイズのものが適用でき、特に制限されるものではない。ロールスクリーンのような巻き取り式のブラインドやプリーツスクリーンのような方式のブラインドなど、遮蔽材に柔軟性が要求されるブラインドに用いるブラインド用シートの場合は、織物状や、編物状のものが好適に用いられる。図4には、本実施形態のブラインド用シート1の一例として、織物状のブラインドシートの拡大図を示す。
【0022】
ブラインド用シート1を織物や編物で形成する場合、織物、編物を形成する糸は特に限定されるものではないが、2本以上の糸を引き揃えたもの、フィルムやシートを短冊状にカットしたテープ形状の糸などが好適に用いられる。具体的には、糸としてマルチフィラメントを用いる場合は、モノフィラメントのような一本の糸を用いているものより一般的に柔らかく、たとえば巻き取り式のブラインドの場合には、収納時の巻取り性に優れる。また、マルチフィラメントの場合は糸の表面積を大きくできるため、樹脂の塗布量を増やすことが容易であり樹脂層の分量を制御しやすい。フィルムやシートを短冊状にカットしたものとしては、特に限定されるものではないが、例えば、テープヤーン、スプリットヤーン、スリットーヤーンなどは、マルチフィラメント同様、糸の表面積を大きくでき、塗布量を増やすことが容易であり樹脂層の分量を制御しやすい。さらに、マルチフィラメント、モノフィラメントを用いるより可視光透過率を高くすることが出来る。
【0023】
フィラメントに用いられる材料は、繊維形成能を有すれば特に限定されるものではなく、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン四フッ化エチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ケブラー(登録商標)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、レーヨン、キュプラ、テンセル(登録商標)、ポリノジック、アセテート、トリアセテートなどの高分子材料を用いることができる。また、その他に金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス、パルプ、炭素繊維などが挙げられる。
【0024】
次に基材4の表面に形成される樹脂層5は、紫外線を遮蔽する紫外線遮蔽物質6aと、近赤外線を遮蔽する近赤外線遮蔽物質6bとを有する層である。この樹脂層5により、紫外線と近赤外線とを遮蔽する。特に、本実施形態では樹脂層5が紫外線のうち長波長側の紫外線をも遮蔽することができる。一方、本実施形態の樹脂層5は、使用する樹脂にもよるが、後述する好ましい全光線透過率でブラインド用シート1が光を透過できる程度に可視光を透過することが好ましい。
【0025】
樹脂層5に用いられる樹脂としては、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ウレタン、シリコン、エポキシアクリレート、アクリルウレタン、アクリルシリコン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、メラミン樹脂など挙げられる。
【0026】
樹脂層5に含まれる近赤外線遮蔽物質6bは、近赤外線を遮蔽して、室内の温度の上昇を抑制する。近赤外線遮蔽物質6bとしては、酸化ルテニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化バナジウム、酸化タングステン、アンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、複合タングステン酸化物などの金属酸化物や複合金属酸化物、LaB6、CeB6、PrB6、NdB6、GdB6、SmB6、EuB6、ErB6、YbB6、SrB6などの六ホウ化物などが挙げられ、中でも、複合金属酸化物が好ましい。近赤外線遮蔽物質6bとしては1種類の物質でもよいし、また近赤外線に対する吸収特性が異なる2種以上の物質を混合して用いることもできる。
【0027】
近赤外線遮蔽物質6bの樹脂層5における含有量は特に限定されず、当業者が適宜設定することができるが、樹脂層全体に対する近赤外線遮蔽物質6bの含有量が3質量%以上、15質量%以下の範囲となるのが好ましい。3質量%未満であると近赤外線遮蔽性能が低くなり、15質量%より多くなると可視光透過率が低下する。
【0028】
近赤外線遮蔽物質6bは粒子の形態で樹脂層中に分散しているのが好ましい。粒子状とした場合の粒子径は特に限定されず、当業者が適宜設定することができるが、平均粒子径は1μm以下であることが好ましい。さらに、可視光透過性を確保するために100nm以下であることがより好ましい。また1nm以上とすることで、近赤外線遮蔽効果を安定して維持でき、さらに粒子の製造上、取扱上および化学的安定性の観点からも好ましい。なお本明細書において、平均粒子径とは体積平均粒子径をいう。
【0029】
樹脂層5に含まれる紫外線遮蔽物質6aは、紫外線を遮蔽する。ブラインドにおいて可視光透過性を確保しようとする場合、紫外線も透過しやすくなるが、たとえば室内灯の光に含まれる紫外線が夜間に外に漏れ出ると、飛翔性の昆虫を誘引してしまう。また太陽光の紫外線は人体に影響したりプラスチックなどの劣化を引き起こす。紫外線遮蔽物質6aを含むことで、可視光を透過しつつ紫外線の内外への透過を抑制する。本実施形態の紫外線遮蔽物質6aは、特に、虫の誘引を十分に抑制する為に、300〜400nmの波長域の紫外線を遮蔽する。
【0030】
以上のような本実施形態の紫外線遮蔽物質6aは、一価の銅化合物および/またはヨウ化物を有効成分とする。一価の銅化合物としては、特に限定されないが具体的な一価の銅化合物としては、塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、水酸化物、シアン化物、チオシアン酸塩またはこれらの混合物からなることが好ましく、中でもCuCl、Cu(CH3COO)、CuI、CuBr、Cu2O、CuOH、CuCN、CuSCN、Cu2Sからなる群から少なくとも1種以上選択されることが好適である。
【0031】
また、紫外線遮蔽物質6aとして用いられるヨウ化物としては、CuI、AgI、SbI3、IrI4、GeI2、GeI4、SnI2、SnI4、TlI、PtI2、PtI4、PdI2、BiI3、AuI、AuI3、FeI2、CoI2、NiI2、ZnI2、HgIおよびInI3から少なくとも1種類選択されることが好適である。
【0032】
本実施形態における紫外線遮蔽物質6aの有効成分である一価の銅化合物および/またはヨウ化物は、紫外線を遮蔽でき特に長波長紫外線(UVA)を有効に遮蔽することができる。紫外線遮蔽物質6aがどの波長域の光を吸収するかは価電子帯と伝導体のエネルギー差であるバンドギャップエネルギーによって決まると考えられる。紫外線遮蔽物質6aがある波長の光を吸収する際、電子は価電子帯から伝導体に励起することによりその波長の光の光子エネルギーを吸収することができる。一価の銅化合物やヨウ化物はいずれの化合物であっても、長波長紫外線を吸収するバンドギャップを有し、長波長紫外線を有効に遮蔽することができる。
【0033】
本実施形態の紫外線遮蔽物質6aは粒子の形態で樹脂層5中に分散していることが好ましい。粒子径は特に限定されず、当業者が適宜設定することができるが、平均粒子径を1nm以上3μm以下とするのが好ましい。1nm以上とすることで、紫外線遮蔽効果を安定して維持できる。また、粒子の製造上、取扱上および化学的安定性の観点からも好ましい。さらに、ブラインドの可視光透過性を確保するために、100nm以下であることがより好ましい。
【0034】
紫外線遮蔽物質6aの樹脂層5に含まれる含有量は特に限定されず、当業者が適宜設定することができるが、5質量%以上15質量%以下の範囲が好ましい。5質量%未満であると紫外線遮蔽性能が低くなり、15質量%より多くなると可視光透過率が低下する。
【0035】
以上の樹脂層5は、基材4の形状等により異なるが、基材4が織物や編物である場合には、基材4に対して10g/m以上、100g/m以下の分量となるように形成されることが好ましい。樹脂層5の分量が10g/m未満であると近赤外線遮蔽性能が低くなり、100g/mより多くなるとブラインド自体が硬くなり、取扱いがし難く、巻き取り式のブラインドの場合には収納時の巻取り性に問題がでてくる。
【0036】
本実施形態のブラインド用シート1は、全光線透過率が40%以上、70%以下が好ましい。全光線透過率が40%未満では室内に十分な可視光が入ってこないため、採光性を有するブラインドとしては遮光性が高くなりすぎて室内が暗くなってしまう。70%を超えると、熱線や紫外線を遮蔽する物質を含んでいても遮蔽効果が低くなり、また、ブラインドとしては光が多量に透るため眩しく感じる。なお本明細書において、JIS K 7136による全光線透過率のことをいう。
【0037】
また、本実施形態のブラインド用シート1は、近赤外線透過率が20%以上、50%以下が好ましい。近赤外線透過率が50%より多くなると室内に十分な遮熱効果が得られない。20%未満にすると基材4の開口率を低くする必要があり、そのため、室内が暗くなってしまう。なお本明細書において、近赤外線透過率は、全波長における透過率を測定し、JIS K 5602の日射反射率算出に用いられる基準太陽光の重価係数を用いて、近赤外領域(780から2500nm)の透過率を算出した値をいう。
【0038】
本実施形態のブラインド用シート1の製造方法は当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、近赤外線遮蔽物質6b及び紫外線遮蔽物質6aのそれぞれの粒子と、樹脂層5を形成する樹脂と、を水系塗料または有機溶媒系塗料に分散させて、その分散液を基材4に塗布し、乾燥することで本実施形態のブラインド用シート1を得ることができる。
【0039】
塗料に近赤外線遮蔽物質6bの粒子や紫外線遮蔽物質6aの粒子を分散させる方法としては、それぞれの粒子を湿式分散した分散液を塗料に混合する方法と、粒子を塗料に添加し塗料中で分散する方法がある。分散時には分散剤を添加してもよく、ジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、振動ミル、ビーズミルなどの一般的な方法によりナノオーダーの粒子に粉砕、分散する。
【0040】
基材4への樹脂層5の形成方法としては、一般的に行われているディップコート、スプレーコート、マイクログラビアコート、グラビアコート法などが用いられるが、基材4の形態により好適な方法を選定する。
【0041】
なお、以上の本実施形態のブラインド用シート1の変形例として、近赤外線遮蔽物質6bと紫外線遮蔽物質6a以外にも、樹脂層5に顔料、抗菌剤、防かび剤、可塑剤などを含むものでもよい。
【0042】
また、さらに別の変形例として、基材4の表面に無機微粒子を化学結合させ、微細な凹凸を形成してもよい。微細な凹凸を形成することで空気中に浮遊している塵埃などが付着しにくくなり、さらに付着した場合でも、水などで簡単に除去できる防塵性に優れたブラインド用シート1とすることができる。
【0043】
以上の本実施形態のブラインド用シート1は、熱線を遮蔽することで室内温度の上昇を抑制し、可視光の透過性を高めることが可能になる。さらに、紫外線を遮蔽することで、虫の誘引を抑制することが可能となる。本実施形態のブラインド用シート1は、室内設置ブラインド、外付けブラインド用途にはもちろん、また、車両用のブラインドなどに用いることも可能であり、形態も問わず、ロール型や、それ以外の形態にも用いることが可能である。
【実施例】
【0044】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
エタノールに紫外線遮蔽材微粒子としてヨウ化銅(I)粉末(日本化学産業株式会社製)を10質量%、分散剤としてポリビニルピロリドン(SIGMA-ALDRICH製)を1質量%添加して調整した後、ビーズミルにより平均粒子径100nmに粉砕分散した。
【0046】
ウレタン塗料(大橋化学工業株式会社製)に得られたヨウ化銅分散液を樹脂固形分に対してヨウ化銅粒子が10質量%になるように加え、さらに近赤外線遮蔽微粒子として酸化セシウムタングステン(住友金属鉱山株式会社製)を樹脂固形分に対して5質量%になるように加えて、樹脂固形分が塗料全体に対して20質量%になるようにトルエンで希釈し調整した。
【0047】
得られたウレタン塗料を開口率28%のPET(マルチフィラメント)編物(株式会社黒沢レース製)に浸漬塗布し、130℃で2分間乾燥させて、ブラインド用シートを作成した。このとき塗布量30g/m2であった。
【0048】
(実施例2)
実施例1において、PET編物を開口率45%のPET(マルチフィラメント)編物とした以外は実施例1と同様の方法でブラインド用シートを得た。
【0049】
(実施例3)
実施例2において、近赤外遮蔽微粒子を六ホウ化ランタン(住友金属鉱山株式会社製)にして、六ホウ化ランタンを樹脂固形分に対して15質量%になるように加えた以外は実施例2と同様の方法でブラインド用シートを得た。
【0050】
(実施例4)
実施例1において、ヨウ化銅分散液を樹脂固形分に対して20質量%になるように加えた以外は実施例1と同様の方法でブラインド用シートを得た。
【0051】
(実施例5)
実施例2において、酸化セシウムタングステンを樹脂固形分に対して1質量%になるように加えた以外は実施例2と同様の方法でブラインド用シートを得た。
【0052】
(実施例6)
50μm厚のPETフィルムを150μm巾にスリットし、テープヤーンを作製した。このテープヤーンを縦糸、PETのマルチフィラメントを横糸に使用し、開口率25%の織物を作製した。この織物を基材として使用した以外は実施例1と同様の方法でブラインド用シートを得た。
【0053】
(比較例1)
実施例1で用いた開口率28%のPET編物のみ(紫外線遮蔽微粒子、近赤外線遮蔽微粒子は含まず)を用いて、ブラインド用シートを得た。
【0054】
(比較例2)
実施例2で用いた開口率45%のPET編物のみ(紫外線遮蔽微粒子、近赤外線遮蔽微粒子は含まず)を用いて、ブラインド用シートを得た。
【0055】
(比較例3)
実施例5において、紫外線遮蔽材を二酸化チタン微粒子(テイカ株式会社製)とした以外は実施例5と同様に作成して、ブラインド用シートを得た。
【0056】
(全光線透過率の評価)
濁度計(NDH2000、日本電色工業株式会社製)を用いて、実施例および比較例のブラインド用シートの全光線透過率を測定した。
【0057】
(近赤外線透過率の評価)
紫外可視近赤外分光高度計(V−670、日本分光株式会社製)を用いて、実施例および比較例のブラインド用シートの波長200〜2500nmにおける透過率を測定し、JIS K 5602にある重価係数を用いて近赤外線透過率を算出した。
【0058】
(遮熱性の評価)
試験ボックスとしてタテ20cm、ヨコ20cm、高さが20cmの上部を開口させたボックスを用いた。実施例および比較例の各ブラインド用シートを試験ボックス上部に乗せ、サンプル面の15cm上から赤外線ランプを照射し、経過時間毎のボックス内の温度変化を測定し、照射前と照射開始10分後の温度差を算出した。試験時の室内温度は15℃で行った。
【0059】
(フィールド試験の評価)
室内に設置した場合の遮熱効果を調べるため、実施例1および比較例1で得たブラインド用シートを用いて室内用タテ型ブラインドを作製し、ブラインドから室内に15cmの位置に温度センサーを設置し、室温の温度変化を測定した。
【0060】
各実施例と比較例の構成を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
各実施例と比較例の評価結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
フィールド試験の評価の温度推移の結果を図4に示す。
【0065】
以上のように、近赤外線遮蔽剤を含む実施例1から6と比較例3では、近赤外線遮蔽剤を含まない比較例と比較して遮熱性が高いことが確認された。具体的には、開口率が28%の実施例1、4は、同じ開口率であるが近赤外線遮蔽剤を含まない比較例1より遮熱性が高い。また、開口率が45%の実施例2、3、5は、同じ開口率で近赤外線遮蔽剤を含まない比較例2よりも遮熱性が高く、開口率のより小さい比較例1に対しても遮熱性が同程度かそれより高いことが分かる。さらに、比較例1では開口率が低いため実施例5と遮熱性能は同等であるが、全光線透過率が劣ることが確認された。また、紫外線遮蔽材として1価の銅化合物を用いた実施例1から6までは長波長紫外線の透過率を低く抑えることができたが、二酸化チタン微粒子を用いた比較例3では長波長紫外線の透過率が実施例1から6と比較して高いことが確認できた。
【0066】
また、実際にブラインドとして使用したフィールド試験においても、開口率が同じで近赤外線遮蔽剤を含む実施例1と近赤外線遮蔽剤を含まない比較例1を比較したところ、実施例1は比較例1に比べ室内温度を最大で3℃以上下げられる(室温の上昇を抑制した)ことが確認できた。したがって、実際にブラインドとして使用した場合に、優れた遮熱効果が得られることを確認できた。
【符号の説明】
【0067】
1:ブラインド用シート
2:窓
4:基材
5:樹脂層
6a:紫外線遮蔽物質
6b:近赤外線遮蔽物質
図1
図2
図3
図4