特許第6495579号(P6495579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495579
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】岩盤性状判定装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/00 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   E21D9/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-115141(P2014-115141)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2015-229833(P2015-229833A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390036515
【氏名又は名称】株式会社鴻池組
(73)【特許権者】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394017446
【氏名又は名称】マック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】富澤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森山 祐三
(72)【発明者】
【氏名】若林 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】福井 正規
(72)【発明者】
【氏名】宮越 征一
(72)【発明者】
【氏名】石川 和弥
(72)【発明者】
【氏名】鐘築 遥
(72)【発明者】
【氏名】宮原 宏史
(72)【発明者】
【氏名】載 昊
(72)【発明者】
【氏名】梅村 敏行
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−273533(JP,A)
【文献】 特許第2850572(JP,B2)
【文献】 特開平08−144682(JP,A)
【文献】 特開平11−166857(JP,A)
【文献】 特開平10−317874(JP,A)
【文献】 特開2013−127180(JP,A)
【文献】 特開2000−034890(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/064839(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0039238(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/00−9/14
E21B 44/00−49/10
G01N 29/00−29/52
G01V 1/00−1/52
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に穿孔用ビットが設けられた穿孔ロッドと、周期的に変動する油圧を駆動源として、前記穿孔ロッドの後端部に周期的に打撃を付与し、前記穿孔用ビットに切羽の岩への周期的な打撃を行わせる油圧ドリフタとを備えた穿孔装置を用いて、切羽の岩盤の性状を判定する岩盤性状判定装置であって、
前記穿孔装置の動作に応じて変化する物理量を検出する穿孔時物理量検出部と、
前記穿孔時物理量検出部で検出した物理量に基づき、前記穿孔用ビットが穿孔している切羽の岩盤の性状を逐次判定する前方探査を実行する前方探査実行部と、
前記切羽の表面に配置され、前記穿孔用ビットで前記切羽の岩盤を打撃した際に発生する弾性波を検出する弾性波検出部と、
前記油圧ドリフタが停止状態から作動状態に切り替わった後に、前記前方探査のための前記穿孔用ビットによる前記切羽の岩盤への周期的な打撃における、最初の打撃が行われてから、前記最初の打撃によって発生した弾性波が前記弾性波検出部で検出されるまでの時間である弾性波伝播時間に基づき、前記穿孔用ビットと前記切羽の表面との間の岩盤の性状を判定する弾性波トモグラフィを実行する弾性波トモグラフィ実行部と
前記周期的に変動する油圧を供給する油圧供給ラインに取り付けられ、前記油圧供給ラインを介して供給される油圧を検出する油圧検出部と、を備え
前記弾性波トモグラフィ実行部は、
前記油圧検出部で検出した油圧に基づいて、前記最初の打撃が行われた時刻である打撃時刻を検出する打撃時刻検出部と、
前記打撃時刻検出部で検出した前記打撃時刻から、前記最初の打撃によって発生した弾性波が前記弾性波検出部で検出された時刻までの経過時間を前記弾性波伝播時間として検出する弾性波伝播時間検出部と、
前記弾性波伝播時間検出部で検出した前記弾性波伝播時間に基づき、前記穿孔用ビットと前記切羽の表面との間の岩盤の性状を判定する性状判定部と、を備えることを特徴とする岩盤性状判定装置。
【請求項2】
前記穿孔ロッドに取り付けられ、前記穿孔ロッドの変形に応じた信号を生成する歪みゲージを備え、
前記打撃時刻検出部は、
前記油圧ドリフタが停止状態から作動状態に切り替わった後、前記歪みゲージで生成した信号の波形が最初にピーク値となる時刻から前記油圧検出部で検出した油圧の波形が最初にピーク値となる時刻までの経過時間である補正時間を検出する補正時間検出部と、
前記補正時間検出部で前記補正時間を検出した後、前記油圧ドリフタが停止状態から作動状態に切り替わるたびに、前記油圧検出部で検出した油圧の波形が最初にピーク値となる時刻から前記補正時間検出部で検出した前記補正時間を減算して前記打撃時刻とする打撃時刻設定部と、を備えたことを特徴とする請求項に記載の岩盤性状判定装置。
【請求項3】
前記弾性波検出部に取り付けられた第1プリズム反射鏡と、
前記穿孔ロッドと前記油圧ドリフタとを支持しているガイドシェルに取り付けられた第2プリズム反射鏡と、
前記第1プリズム反射鏡の位置と前記第2プリズム反射鏡の位置とを測定するトータルステーションと、を備え、
前記性状判定部は、前記トータルステーションで測定した前記第1プリズム反射鏡の位置と前記第2プリズム反射鏡の位置と、前記弾性波伝播時間検出部で検出した前記弾性波伝播時間とに基づき、前記穿孔用ビットと前記切羽の表面との間の岩盤の性状を判定することを特徴とする請求項またはに記載の岩盤性状判定装置。
【請求項4】
前記前方探査で判定した前記切羽の岩盤の性状と、前記弾性波トモグラフィで判定した前記切羽の岩盤の性状とを記憶する性状記憶部を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の岩盤性状判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切羽の岩盤の性状を判定する岩盤性状判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切羽の岩盤の性状を判定する技術としては、例えば、岩盤を穿孔装置で穿孔し、穿孔時の穿孔速度や穿孔エネルギー、穿孔圧力に基づき、岩盤の性状を判定する方法がある(前方探査。特許文献1参照)。また、例えば、岩盤に衝撃を与えて弾性波を発生し、発生した弾性波を切羽の表面に配置された振動ピックアップで検出し、弾性波の発生時刻と検出時刻との差に基づき、岩盤の性状を判定する方法がある(弾性波トモグラフィ)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−34890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これら前方探査と弾性波トモグラフィとの両方を行うことで、これから掘削を行う岩盤の性状を複数の物性値でより適切に分析でき、岩盤の掘削をより安全に行うことができる。しかしながら、一般に、前方探索と弾性波トモグラフィとでは、互いに専用の設備が必要であった。それゆえ、前方探査と弾性波トモグラフィとは順番に実行されていた。そのため、切羽の岩盤の性状の判定にかかる時間が増大する可能性があった。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、切羽の性状の探査をより効率的に実行可能な岩盤性状判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、先端部に穿孔用ビットが設けられた穿孔ロッドと、周期的に変動する油圧を駆動源として、穿孔ロッドの後端部に周期的に打撃を付与し、穿孔用ビットに切羽の岩への周期的な打撃を行わせる油圧ドリフタとを備えた穿孔装置を用いて、切羽の岩盤の性状を判定する岩盤性状判定装置であって、穿孔装置の動作に応じて変化する物理量を検出する穿孔時物理量検出部と、穿孔時物理量検出部で検出した物理量に基づき、穿孔用ビットが穿孔している切羽の岩盤の性状を逐次判定する前方探査を実行する前方探査実行部と、切羽の表面に配置され、穿孔用ビットで切羽の岩盤を打撃した際に発生する弾性波を検出する弾性波検出部と、油圧ドリフタが停止状態から作動状態に切り替わった後に、前方探査のための穿孔用ビットによる切羽の岩盤への周期的な打撃における、穿孔用ビットによる切羽の岩盤への最初の打撃が行われてから、最初の打撃によって発生した弾性波が弾性波検出部で検出されるまでの時間である弾性波伝播時間に基づき、穿孔用ビットと切羽の表面との間の岩盤の性状を判定する弾性波トモグラフィを実行する弾性波トモグラフィ実行部と、周期的に変動する油圧を供給する油圧供給ラインに取り付けられ、油圧供給ラインを介して供給される油圧を検出する油圧検出部と、を備え、弾性波トモグラフィ実行部は、油圧検出部で検出した油圧に基づいて、最初の打撃が行われた時刻である打撃時刻を検出する打撃時刻検出部と、打撃時刻検出部で検出した打撃時刻から、最初の打撃によって発生した弾性波が弾性波検出部で検出された時刻までの経過時間を弾性波伝播時間として検出する弾性波伝播時間検出部と、弾性波伝播時間検出部で検出した弾性波伝播時間に基づき、穿孔用ビットと切羽の表面との間の岩盤の性状を判定する性状判定部と、を備え、を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、穿孔ロッドに取り付けられ、穿孔ロッドの変形に応じた信号を生成する歪みゲージを備え、打撃時刻検出部は、ドリフタが停止状態から作動状態に切り替わった後、歪みゲージで生成した信号の波形が最初にピーク値となる時刻から油圧検出部で検出した油圧の波形が最初にピーク値となる時刻までの経過時間である補正時間を検出する補正時間検出部と、補正時間検出部で補正時間を検出した後、ドリフタが停止状態から作動状態に切り替わるたびに、油圧検出部で検出した油圧の波形が最初にピーク値となる時刻から補正時間検出部で検出した補正時間を減算して打撃時刻とする打撃時刻設定部と、を備えるようにしてもよい。
【0007】
さらに、弾性波検出部に取り付けられた第1プリズム反射鏡と、穿孔ロッドとドリフタとを支持しているガイドシェルに取り付けられた第2プリズム反射鏡と、第1プリズム反射鏡の位置と第2プリズム反射鏡の位置とを測定するトータルステーションと、を備え、性状判定部は、トータルステーションで測定した第1プリズム反射鏡の位置と第2プリズム反射鏡の位置と、弾性波伝播時間検出部で検出した弾性波伝播時間とに基づき、穿孔用ビットと切羽の表面との間の岩盤の性状を判定するようにしてもよい。
また、前方探査で判定した切羽の岩盤の性状と、弾性波トモグラフィで判定した切羽の岩盤の性状とを記憶する性状記憶部を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、前方探査の実行中、ドリフタが停止状態から作動状態に切り替わるたびに、弾性波トモグラフィを実行できる。これにより、前方探査と弾性波トモグラフィとを同時に実行でき、切羽の性状の探査をより効率的に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る岩盤性状判定装置1が搭載される穿孔装置4の概略構成を表す概念図である。
図2】岩盤性状判定処理を表すフローチャートである。
図3】切羽2の岩盤の性状の判定方法を説明するための平面図である。
図4】打撃時刻と弾性波到達時刻と弾性波伝達時間との関係を表す波形図である。
図5】切羽2の岩盤の性状の判定方法を説明するための平面図である。
図6】第2実施形態に係る岩盤性状判定装置1が搭載される穿孔装置4の概略構成を表す概念図である。
図7】打撃時刻とピーク値時刻と補正時間と弾性波到達時刻と弾性波伝達時間との関係を表す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る岩盤性状判定装置1の実施形態について図面を参照して説明する。
第1実施形態に係る岩盤性状判定装置1は、切羽2の岩盤の性状の探査を効率的に行うために、前方探査と、弾性波トモグラフィとを同時に実行するための装置である。
(構成)
図1に示すように、岩盤性状判定装置1は、切羽2に対し、爆薬装填用の装薬孔3を穿孔するための作業用車両(以下、「穿孔装置4」とも呼ぶ)に搭載される。穿孔装置4としては、例えば、ドリルジャンボ(商標)を採用することができる。
【0011】
穿孔装置4は、移動台車5と、移動台車5上に取り付けられたブーム6と、ブーム6に取り付けられて穿孔機7を支持するガイドシェル8とを備える。
ブーム6は、ブーム6を水平方向に揺動させるブームスイング9と、ブーム6を前後に進退動させるブームスライド10と、ガイドシェル8を水平方向に揺動させるガイドスイング11と、ガイドシェル8を垂直方向に揺動させるガイドチルト12と、ガイドシェル8を前後に進退動させるガイドスライド13とを備える。これにより、ブーム6は、穿孔装置4のオペレータの操作に応じて、穿孔機7の位置及び姿勢を変更可能となっている。
【0012】
穿孔機7は、先端部に穿孔用ビット14が設けられた穿孔ロッド15と、穿孔ロッド15の後端部に周期的に打撃を付与するドリフタ16とを備える。穿孔ロッド15としては、例えば、穿孔ロッド15の後端部に継ぎ足しロッド17(図3参照)を継ぎ足し、ロッド長を伸長可能な継ぎ足し式ロッドを採用できる。継ぎ足しロッド17の継ぎ足しは、一般に、前方探査で、岩盤の深部の性状を探査するときに行う。また、ドリフタ16としては、例えば、油圧供給ライン18(図3図5参照)から供給され、周期的に変動する油圧を駆動源とする油圧ドリフタを採用できる。また、穿孔機7には、穿孔機7を前後(穿孔ロッド15の軸方向)に進退動させるフィーダ19が配置される。これにより、穿孔機7は、オペレータの操作に応じて、穿孔ロッド15の後端部にドリフタ16で打撃を付与すると共に、前方向に移動することで、切羽2に装薬孔3を穿孔可能となっている。
【0013】
これにより、オペレータは、穿孔装置4を操作し、穿孔ロッド15の先端を切羽2に押し当てる動作と、穿孔ロッド15の後端部に打撃を付与すると共に穿孔機7を前方向に移動させる動作とを繰り返すことで、切羽2に複数の装薬孔3を穿孔可能となっている。
岩盤性状判定装置1は、進退量検出部20、21と、油圧検出部22と、複数の弾性波検出部23と、ドリフタ状態検出部24と、プリズム反射鏡25、26と、トータルステーション27と、データ記憶部28と、性状記憶部29と、演算装置30とを備える。
【0014】
進退量検出部20は、ブームスライド10に配置され、ブーム6の前後方向への進退量を検出する。そして、進退量検出部20は、検出結果をデータ記憶部28及び演算装置30に出力する。また、進退量検出部21は、フィーダ19に配置され、ガイドシェル8の前後方向への進退量を検出する。そして、進退量検出部21は、進退量検出部20と同様に、検出結果をデータ記憶部28及び演算装置30に出力する。
【0015】
油圧検出部22は、油圧供給ライン18から供給され、ドリフタ16を駆動する油圧を検出する。続いて、油圧検出部22は、検出結果をデータ記憶部28に出力する。
弾性波検出部23は、切羽2の表面に配置され、穿孔用ビット14で切羽2の岩盤を打撃した際に発生する弾性波を検出する。弾性波検出部23の配置パターンは、例えば、マトリックス状の配置パターンとする。マトリックス状の配置パターンでは、弾性波検出部23の数が多いほど、岩盤の性状を詳細に探査できる。そして、弾性波検出部23は、検出結果をデータ記憶部28に出力する。弾性波検出部23としては、例えば、切羽2の表面に発生した振動を検知して電気信号に変換する振動ピックアップを採用できる。
【0016】
ドリフタ状態検出部24は、ドリフタ16に配置され、ドリフタ16が作動状態にあるか停止状態にあるか(以下、「ドリフタ状態」とも呼ぶ)を検出する。作動状態としては、例えば、ドリフタ16が穿孔ロッド15の後端部への周期的な打撃の付与を行っている状態がある。また、停止状態としては、例えば、油圧の周期的な変動が行われず、ドリフタ16が穿孔ロッド15の後端部への周期的な打撃の付与を行っていない状態がある。そして、ドリフタ状態検出部24は、検出結果をデータ記憶部28に出力する。
【0017】
プリズム反射鏡25(以下、「第1プリズム反射鏡25」とも呼ぶ)は、弾性波検出部23それぞれに取り付けられ、トータルステーション27から出射された光を反射する。また、プリズム反射鏡26(以下、「第2プリズム反射鏡26」とも呼ぶ)は、ガイドシェル8に取り付けられ、トータルステーション27から出射された光を反射する。
トータルステーション27は、プリズム反射鏡25、26に光を出射し、出射した光の反射光に基づいてプリズム反射鏡25、26の位置を測定する。プリズム反射鏡25、26の位置の測定は、弾性波検出部23を配置した後に1回だけ行う。そして、トータルステーション27は、測定した第1プリズム反射鏡25の位置を弾性波検出部23の位置としてデータ記憶部28に出力する。また、トータルステーション27は、測定した第2プリズム反射鏡26の位置をガイドシェル8の位置としてデータ記憶部28に出力する。
【0018】
データ記憶部28は、進退量検出部20、21と油圧検出部22とが出力した検出結果に基づき(穿孔ロッド15に継ぎ足しロッド17を継ぎ足した場合には、継ぎ足した継ぎ足しロッド17の長さの合計値も用いる)、油圧検出部22で検出した油圧に関する情報(以下、「油圧情報」とも呼ぶ)を逐次記憶する。油圧情報としては、例えば、油圧の大きさ、油圧の検出時刻、油圧の検出時の穿孔用ビット14の位置がある。
【0019】
また、データ記憶部28は、進退量検出部20、21と、弾性波検出部23と、トータルステーション27とが出力した検出結果に基づき、弾性波検出部23毎に、検出した弾性波に関する情報(以下、「弾性波情報」とも呼ぶ)を逐次記憶する。弾性波情報としては、例えば、弾性波の大きさ、弾性波の検出時刻、弾性波検出部23の位置がある。
また、データ記憶部28は、ドリフタ状態検出部24の検出結果に基づき、検出したドリフタ状態に関する情報(以下、「ドリフタ情報」とも呼ぶ)を逐次記憶する。ドリフタ情報としては、例えば、ドリフタ状態、ドリフタ状態の検出時刻がある。
【0020】
性状記憶部29は、演算装置30で判定した切羽2の岩盤の性状に関する情報(前方探査で判定した切羽2の岩盤の性状に関する情報、弾性波トモグラフィで判定した切羽2の岩盤の性状に関する情報)を記憶する。
演算装置30は、A/D(Analog to Digital)変換回路、D/A(Digital to Analog)変換回路、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等から構成した集積回路を備える。ROMは、各種処理を実現するプログラムを記憶している。CPUは、ROMが記憶しているプログラムに従って各種処理を実行する。CPUは、岩盤性状判定装置1の動作スイッチがオン状態になると、ROMが記憶しているプログラムに従って岩盤性状判定処理を実行する。岩盤性状判定処理では、CPUは、データ記憶部28の記憶内容に基づき、前方探査と、弾性波トモグラフィーとを同時に実行する。また、CPUは、前方探査で判定した切羽2の岩盤の性状と、弾性波トモグラフィで判定した切羽2の岩盤の性状とを性状記憶部29に記憶する。
【0021】
(岩盤性状判定処理)
次に、演算装置30が実行する岩盤性状判定処理について図面を参照して説明する。
図2に示すように、まずステップS101では、演算装置30は、ドリフタ16が作動状態になるまで待機する。具体的には、演算装置30は、ドリフタ状態検出部24でドリフタ16の作動状態が検出されるまで(作動状態を表すドリフタ情報がデータ記憶部28に記憶されるまで)待機し、作動状態が検出されると、ステップS102に移行する。
【0022】
ステップS102では、演算装置30は、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わったか否かを判定する。具体的には、演算装置30は、このステップS102が前回実行されたときにデータ記憶部28に記憶されたドリフタ情報(ドリフタ状態)がドリフタ16の停止状態を表し、このステップS102が今回実行されたときにデータ記憶部28に記憶されたドリフタ情報(ドリフタ状態)がドリフタ16の作動状態を表す場合に、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わったと判定する。そして、演算装置30は、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わったと判定した場合には(Yes)ステップS103に移行する。一方、演算装置30は、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わっていないと判定した場合には(No)ステップS108に移行する。
【0023】
これにより、演算装置30は、図3に示すように、オペレータが、深部の岩盤の性状の探査のために、ドリフタ16を一旦停止状態とし、穿孔ロッド15に継ぎ足しロッド17を継ぎ足した後、ドリフタ16を再度作動状態とするたびに、ステップS103に移行する。なお、図3図5では、移動台車5やブーム6の図示を省略している。
【0024】
ステップS103では、演算装置30は、ステップS102の判定が「Yes」となった後、穿孔用ビット14によって切羽2の岩盤への最初の打撃(以下、「開始時打撃」とも呼ぶ)が行われた時刻(以下、「打撃時刻」とも呼ぶ)を検出する。具体的には、演算装置30は、データ記憶部28に記憶された油圧情報(油圧の大きさ、油圧の検出時刻、油圧の検出時の穿孔用ビット14の位置)に基づき、ステップS102の判定が「Yes」となった後、岩盤への打撃が行われた瞬間の特徴が油圧の波形に現れた時刻を打撃時刻として検出する。岩盤への打撃が行われた瞬間の特徴は、例えば、予め予備試験で確認しておく。例えば、図4に示すように、油圧の波形がピーク値となる時刻を採用できる。なお、図4では、ステップS102の判定が「Yes」となった瞬間を時刻「0」とする。また、図4では、複数の弾性波検出部23それぞれを、穿孔用ビット14からの距離が短いものから順に「第1検出部」、「第2検出部」、「第3検出部」と表す。
【0025】
続いてステップS104に移行して、演算装置30は、開始時打撃(ステップS103で検出した打撃時刻に行った打撃)によって発生した弾性波が複数の弾性波検出部23それぞれで検出された時刻(以下、「弾性波到達時刻」とも呼ぶ)を検出する。弾性波到達時刻の検出は、例えば、データ記憶部28に記憶された、弾性波検出部23毎の弾性波情報(弾性波の大きさ、弾性波の検出時刻、弾性波検出部23の位置)に基づいて行う。弾性波到達時刻としては、例えば、穿孔用ビット14の打撃によって発生した弾性波のうちの直線波(直達波)の波形がピーク値となる時刻を採用できる。
【0026】
続いてステップS105に移行して、演算装置30は、開始時打撃が行われてからその開始時打撃によって発生した弾性波が複数の弾性波検出部23それぞれで検出されるまでの時間(以下、「弾性波伝播時間」とも呼ぶ)を検出する。具体的には、演算装置30は、弾性波検出部23毎に、ステップS103で検出した打撃時刻からステップS104で検出した弾性波到達時刻までの経過時間を弾性波伝播時間として検出する。
【0027】
続いてステップS106に移行して、演算装置30は、ステップS105で検出した弾性波伝播時間と、データ記憶部28に記憶された油圧情報(穿孔用ビット14の位置)及び弾性波情報(弾性波検出部23の位置)とに基づき、切羽2の岩盤の性状を判定する。具体的には、演算装置30は、弾性波検出部23毎に、穿孔用ビット14の位置と弾性波検出部23の位置との間の距離(以下、「弾性波伝播距離」とも呼ぶ)を算出し、算出した弾性波伝播距離を弾性波伝播時間で除算し、除算結果を弾性波の伝播速度とする。
【0028】
続いて、演算装置30は、算出した弾性波の伝播速度に基づき、穿孔用ビット14と弾性波検出部23(切羽2の表面)との間の岩盤(以下、「検出対象岩盤」とも呼ぶ)の性状(硬軟)を判定する。例えば、弾性波の伝播速度が速いほど検出対象岩盤が硬いと判定し、弾性波の伝播速度が遅いほど検出対象岩盤が軟らかいと判定する。
これにより、岩盤性状判定装置1は、穿孔ロッド15に継ぎ足しロッド17を継ぎ足すたびに、弾性波速度を基に切羽2の岩盤の性状を判定する(弾性波トモグラフィ)。
【0029】
なお、第1実施形態では、穿孔ロッド15に継ぎ足しロッド17を継ぎ足すたび、つまり、継ぎ足し後毎回、弾性波トモグラフィを実行する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、継ぎ足し後任意の回だけ弾性波トモグラフィを実行するようにしてもよく、また、継ぎ足しロッド17の継ぎ足し時以外にも行うようにしてもよい。
【0030】
また、演算装置30は、今回の岩盤性状判定処理が実行されてから、このステップS106が実行されるのが2回目以降である場合には、今回算出した弾性波の伝播速度に加え、このステップS106が前回実行されたときに算出した検出対象岩盤(以下、「前回検出対象岩盤」とも呼ぶ)での弾性波の伝播速度に基づき、図5に示すように、今回検出対象岩盤の性状を判定する構成としてもよい。今回検出対象岩盤としては、例えば、穿孔用ビット14と弾性波検出部23(切羽2の表面)との間の岩盤から前回検出対象岩盤を除いた岩盤がある。具体的には、演算装置30は、今回算出した弾性波の伝播速度と、前回検出対象岩盤での弾性波の伝播速度とに基づき今回検出対象岩盤での弾性波の伝搬速度を算出し、算出した伝播速度に基づき今回検出対象岩盤の性状を判定してもよい。
【0031】
続いてステップS107に移行して、演算装置30は、ステップS106での判定結果に基づき、検出対象岩盤(ステップS106で性状を判定した岩盤)に関する情報(以下、「検出対象岩盤情報」とも呼ぶ)を記憶した後、ステップS108に移行する。検出対象岩盤情報としては、例えば、検出対象岩盤の性状、検出対象岩盤の範囲がある。
ステップS108では、演算装置30は、穿孔装置4の動作に応じて変化する物理量(以下、「穿孔情報」とも呼ぶ)を検出する。穿孔情報としては、例えば、穿孔速度、穿孔エネルギー、穿孔圧力がある。第1実施形態では、進退量検出部20、21が出力した進退量の時間微分値(以下、「穿孔速度」とも呼ぶ)を穿孔情報として採用する。
【0032】
続いてステップS109に移行して、演算装置30は、ステップS108で検出した穿孔情報に基づき、穿孔用ビット14が現在穿孔している切羽2の岩盤(以下、「穿孔中岩盤」とも呼ぶ)の性状(硬軟)を判定した後、ステップS102に戻る。例えば、穿孔情報として穿孔速度を採用した場合、穿孔速度が遅いほど穿孔中岩盤が硬いと判定し、穿孔速度が速いほど穿孔中岩盤が軟らかいと判定する。また、穿孔情報として穿孔エネルギーを採用した場合には、単位容積の穿孔に要する穿孔エネルギーが大きいほど穿孔中岩盤が硬いと判定し、穿孔エネルギーが大きいほど穿孔中岩盤が軟らかいと判定する。
【0033】
これにより、岩盤性状判定装置1は、穿孔情報を基に切羽2の岩盤の性状を逐次判定する(前方探査)。
続いてステップS110に移行して、演算装置30は、ステップS109での判定結果に基づき、穿孔中岩盤(ステップS109で性状を判定した岩盤)に関する情報(以下、「穿孔中岩盤情報」とも呼ぶ)を記憶した後、ステップS102に戻る。穿孔中岩盤情報としては、例えば、穿孔中岩盤の性状、穿孔中岩盤の位置がある。
【0034】
これにより、性状記憶部29には、前方探査で判定した岩盤の性状と、弾性波トモグラフィーで判定した岩盤の性状とが記憶される。それゆえ、性状記憶部29の記憶内容を基に、これから掘削を行う岩盤の性状を複数の物性値でより適切に分析できる。そのため、より安全に掘削を行うことができる。また、弾性波トモグラフィーで判定した岩盤の性状と、前方探査で判定した岩盤の性状との相関関係を検討することができる。
【0035】
なお、第1実施形態では、前方探査で判定した岩盤の性状と、弾性波トモグラフィーで判定した岩盤の性状とを性状記憶部29に記憶させる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、切羽2の岩盤の一軸圧縮強度を別途測定し、一軸圧縮強度に関する情報も性状記憶部29に記憶させる構成としてもよい。一軸圧縮強度に関する情報としては、例えば、一軸圧縮強度、一軸圧縮強度を測定した岩盤の位置がある。
【0036】
これにより、性状記憶部29には、前方探査で判定した岩盤の性状と、弾性波トモグラフィーで判定した岩盤の性状と、一軸圧縮強度に関する情報とが記憶される。それゆえ、性状記憶部29の記憶内容を基に、これから掘削を行う岩盤の性状をより精密に分析できる。そのため、より安全に掘削を行うことができる。また、前方探査で判定した岩盤の性状と、弾性波トモグラフィーで判定した岩盤の性状と、一軸圧縮強度に関する情報との相関関係を検討することができる。それゆえ、弾性波トモグラフィー、前方探査、一軸圧縮強度の測定のいずれか2つの計測値から、残りの1つの計測値を予測できる。
【0037】
(動作その他)
次に、岩盤性状判定装置1の動作について図面を参照して説明する。
まず、オペレータが、岩盤性状判定装置1の動作スイッチをオン状態にした後、ドリフタ16を作動状態(ドリフタ16が穿孔ロッド15の後端部への周期的な打撃の付与を行っている状態)とし、穿孔装置4に切羽2への穿孔を開始させたとする。すると、演算装置30が、ドリフタ16が作動状態になったと判定して待機を解除し(図2のステップS101)、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わっていないと判定する(図2のステップS102「No」)。続いて、演算装置30が、進退量検出部21が出力した進退量の時間微分値(穿孔速度)を穿孔情報として検出する(図2のステップS108)。
【0038】
続いて、演算装置30が、検出した穿孔情報に基づき、穿孔用ビット14が現在穿孔している切羽2の岩盤(穿孔中岩盤)の性状(硬軟)を判定する(図2のステップS109)。続いて、演算装置30が、判定結果に基づき、穿孔中岩盤に関する情報(穿孔中岩盤情報。穿孔中岩盤の性状、穿孔中岩盤の位置)を記憶する(図2のステップS110)。
これにより、演算装置30は、上記フローを繰り返し実行し、前方探査を実行して、穿孔情報を基に切羽2の岩盤の性状(硬軟)を逐次判定・記憶する。
【0039】
上記フローを繰り返し実行するうちに、穿孔機7が切羽2の直前まで前進し、継ぎ足しロッド17の継ぎ足しが必要になったとする。そして、オペレータが、ドリフタ16を一旦停止し、図3に示すように、穿孔ロッド15に継ぎ足しロッド17を継ぎ足した後、ドリフタ16を再度作動状態としたとする。すると、演算装置30が、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わったと判定する(図2のステップS102「Yes」)。
【0040】
続いて、演算装置30が、図4に示すように、データ記憶部28に記憶された油圧情報に基づき、穿孔用ビット14によって切羽2の岩盤への最初の打撃(開始時打撃)が行われた時刻(打撃時刻)を検出する(図2のステップS103)。続いて、演算装置30が、開始時打撃によって発生した弾性波が複数の弾性波検出部23それぞれで検出された時刻(弾性波到達時刻)を検出する(図2のステップS104)。すなわち、弾性波のうちの直線波(反射波含まず)の到達時刻を検出する。続いて、演算装置30が、開始時打撃が行われてからその開始時打撃によって発生した弾性波が複数の弾性波検出部23それぞれで検出されるまでの時間(弾性波伝播時間)を検出する(図2のステップS105)。
【0041】
続いて、演算装置30が、検出した弾性波伝播時間と、データ記憶部28に記憶された油圧情報(穿孔用ビット14の位置)及び弾性波情報(弾性波検出部23の位置)に基づき、切羽2の岩盤(検出対象岩盤)の性状を判定する(図2のステップS106)。続いて、演算装置30が、判定結果に基づき、検出対象岩盤に関する情報(検出対象岩盤情報。検出対象岩盤の性状、検出対象岩盤の位置)を記憶する(図2のステップS107)。
【0042】
これにより、演算装置30は、穿孔ロッド15に継ぎ足しロッド17を継ぎ足すたびに、弾性波トモグラフィを実行し、弾性波速度を基に切羽2の岩盤の性状を判定する。
それゆえ、性状記憶部29には、弾性波トモグラフィーで判定した岩盤の性状と、前方探査で判定した岩盤の性状とが記憶される。それゆえ、性状記憶部29の記憶内容を基に、これから掘削を行う岩盤の性状を複数の物性値でより適切に分析できる。
【0043】
なお、第1実施形態では、切羽2の1箇所のみで岩盤の性状の探査(前方探査、弾性波トモグラフィ)を行う例を示したが、他の構成を採用してもよい。例えば、切羽2の複数箇所で岩盤の性状の探査(前方探査、弾性波トモグラフィ)を行う構成としてもよい。
第1実施形態では、図1の穿孔用ビット14が穿孔用ビットを構成する。以下同様に、図1の穿孔ロッド15が穿孔ロッドを構成する。また、図1のドリフタ16がドリフタを構成する。さらに、図1の穿孔装置4が穿孔装置を構成する。また、図1の演算装置30、図2のステップS108が穿孔時物理量検出部を構成する。さらに、図1の演算装置30、図2のステップS109が前方探査実行部を構成する。また、図1の弾性波検出部23が弾性波検出部を構成する。さらに、図1の演算装置30、図2のステップS102〜S106が弾性波トモグラフィ実行部を構成する。また、図2のステップS102、103が弾性波伝播時間検出部を構成する。さらに、図2のステップS104、S105が弾性波伝播時間検出部を構成する。また、図2のステップS106が性状判定部を構成する。さらに、図1の第1プリズム反射鏡25が第1プリズム反射鏡を構成する。また、図1のガイドシェル8がガイドシェルを構成する。さらに、図1の第2プリズム反射鏡26が第2プリズム反射鏡を構成する。また、図1のトータルステーション27がトータルステーションを構成する。さらに、図1の性状記憶部29が性状記憶部を構成する。
【0044】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態に係る岩盤性状判定装置1は、次のような効果を奏する。
(1)第1実施形態に係る岩盤性状判定装置1によれば、演算装置30は、穿孔装置4の動作に応じて変化する物理量(穿孔速度)に基づき、穿孔用ビット14が穿孔している切羽2の岩盤の性状を逐次判定する前方探査を実行する。また、演算装置30は、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わった後に、穿孔用ビット14による切羽2の岩盤への最初の打撃(開始時打撃)が行われてからその打撃(開始時打撃)によって発生した弾性波が弾性波検出部23で検出されるまでの時間(弾性波伝播時間)に基づき、穿孔用ビット14と切羽2の表面との間の岩盤の性状を判定する弾性波トモグラフィを実行する。
このような構成によれば、前方探査の実行中、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わるたびに弾性波トモグラフィを実行できる。これにより、前方探査と弾性波トモグラフィとを同時に実行でき、切羽2の性状の探査をより効率的に実行できる。
【0045】
(2)第1実施形態に係る岩盤性状判定装置1によれば、演算装置30は、油圧検出部22で検出した油圧に基づいて、最初の打撃(開始時打撃)が行われた時刻(打撃時刻)を検出する。続いて、演算装置30は、検出した打撃時刻から最初の打撃(開始時打撃)によって発生した弾性波が弾性波検出部23で検出された時刻(弾性波到達時刻)までの経過時間を弾性波伝播時間として検出する。続いて、演算装置30は、検出した弾性波伝播時間に基づき、穿孔用ビット14と切羽2の表面との間の岩盤の性状を判定する。
このような構成によれば、開始時打撃が行われた瞬間を比較的容易に検出できる。
【0046】
(3)第1実施形態に係る岩盤性状判定装置1によれば、弾性波検出部23に取り付けられた第1プリズム反射鏡25の位置と、ガイドシェル8に取り付けられた第2プリズム反射鏡26の位置とをトータルステーション27で測定する。そして、演算装置30は、測定した第1プリズム反射鏡25の位置と第2プリズム反射鏡26の位置と、検出した弾性波伝播時間とに基づき、穿孔用ビット14と切羽2の表面との間の岩盤の性状を判定する。
このような構成によれば、弾性波検出部23の位置とガイドシェル8の位置とをより高精度に検出できる。それゆえ、岩盤の性状の検出精度を向上できる。
【0047】
(4)第1実施形態に係る岩盤性状判定装置1によれば、演算装置30は、前方探査で判定した切羽2の岩盤の性状と、弾性波トモグラフィで判定した切羽2の岩盤の性状とを性状記憶部29に記憶する。
このような構成によれば、弾性波トモグラフィーで判定した岩盤の性状と、前方探査で判定した岩盤の性状との相関関係を検討することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記実施形態と同様な構成等については同一の符号を使用して、その詳細は省略する。
第2実施形態は、打撃時刻の検出方法が第1実施形態と異なる。具体的には、図6に示すように、岩盤性状判定装置1は、歪みゲージ31を更に備えている。また、図2のステップS103の処理内容が第1実施形態と異なっている。
【0049】
歪みゲージ31は、穿孔ロッド15の後端側に取り付けられ、穿孔ロッド15の変形(歪み)に応じた信号(以下、「歪み信号」とも呼ぶ)を生成する。歪み信号としては、例えば、穿孔ロッド15の変形量が大きいほど大きな値となる信号がある。そして、歪みゲージ31は、生成結果(生成した歪み信号)をデータ記憶部28に出力する。
データ記憶部28は、歪みゲージ31の生成結果(歪み信号)に基づき、生成した歪み信号に関する情報(以下、「歪み信号情報」とも呼ぶ)を更に逐次記憶する。歪み信号情報としては、例えば、歪み信号の大きさ、歪み信号の検出時刻がある。
【0050】
ステップS103では、演算装置30は、ステップS102の判定が「Yes」となった後、穿孔用ビット14によって切羽2の岩盤への最初の打撃(開始時打撃)が行われた時刻(打撃時刻)を検出する。具体的には、演算装置30は、データ記憶部28に記憶された歪み信号情報(歪み信号の大きさ、歪み信号の検出時刻)に基づき、ステップS102の判定が「Yes」となった後、図7に示すように、歪みゲージ31で生成した歪み信号の波形が最初にピーク値となる時刻を打撃時刻とする。続いて、演算装置30は、この打撃時刻と、油圧検出部22で検出した油圧の波形が最初にピーク値となる時刻(以下、「ピーク値時刻」とも呼ぶ)との間の時間(以下、「補正時間」とも呼ぶ)を検出する。続いて、演算装置30は、検出した補正時間を演算装置30のROMに記憶する。
【0051】
なお、演算装置30は、今回の岩盤性状判定処理が実行されてから、このステップS103が実行されるのが2回目以降である場合には、ステップS102が「Yes」となるたびに、つまり、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わるたびに、データ記憶部28に記憶された油圧情報が表す油圧の波形が最初にピーク値となる時刻(ピーク値時刻)から、演算装置30のROMに記憶された補正時間を減算した時刻を打撃時刻とする。なお、図7では、ステップS102の判定が「Yes」となった瞬間を時刻「0」とする。また、図7では、複数の弾性波検出部23それぞれを、穿孔用ビット14からの距離が短いものから順に「第1検出部」、「第2検出部」、「第3検出部」と表す。
【0052】
これにより、演算装置30は、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わった後、歪みゲージ31で生成した歪み信号の波形が最初にピーク値となる時刻から、油圧検出部22で検出した油圧の波形が最初にピーク値となる時刻までの経過時間(補正時間)を検出する。続いて、補正時間を検出した後、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わるたびに、油圧検出部22で検出した油圧の波形が最初にピーク値となる時刻から、検出した補正時間を減算した時刻を打撃時刻とする。それゆえ、油圧検出部22で検出した油圧の波形が最初にピーク値となる時刻から補正時間を減算した時刻を打撃時刻に設定できる。それゆえ、油圧の伝播速度が遅く、油圧の波形がピーク値となる時刻(ピーク値時刻)と打撃時刻とが乖離した場合にも、打撃時刻をより適切に検出できる。
【0053】
なお、第2実施形態では、岩盤性状判定装置1の動作スイッチがオン状態になった後、このステップS103の最初の実行時にのみ補正時間を算出する例を示した。これは、通常、歪みゲージ31が、岩盤の穿孔中に断線してしまうためである。しかしながら、例えば、歪みゲージ31の断線の補修や、新しい歪みゲージ31の取り付け等を適宜行うことで、オペレータの所望のタイミングで補正時間を再度算出するようにしてもよい。
また、その他の構成は第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、図6の歪みゲージ31が歪みゲージを構成する。また、図2のステップS103が補正時間検出部及び打撃時刻設定部を構成する。
【0054】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態に係る岩盤性状判定装置1は、第1実施形態に係る岩盤性状判定装置1の効果(1)〜(4)に加え、次のような効果を奏する。
(1)第2実施形態に係る岩盤性状判定装置1によれば、演算装置30は、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わった後、歪みゲージ31(穿孔ロッド15に取り付けた歪みゲージ31)で生成した歪み信号の波形が最初にピーク値となる時刻から、油圧検出部22で検出した油圧の波形が最初にピーク値となる時刻までの経過時間(補正時間)を検出する。続いて、演算装置30は、補正時間を算出した後、ドリフタ16が停止状態から作動状態に切り替わるたびに、油圧検出部22で検出した油圧の波形が最初にピーク値となる時刻から、検出した補正時間を減算した時刻を打撃時刻とする。
このような構成によれば、油圧の伝播速度が遅く、油圧の波形がピーク値となる時刻(ピーク値時刻)と打撃時刻とが乖離した場合にも、打撃時刻をより適切に検出できる。
【符号の説明】
【0055】
4 穿孔装置
8 ガイドシェル
14 穿孔用ビット
15 穿孔ロッド
16 ドリフタ
23 弾性波検出部
25 第1プリズム反射鏡
26 第2プリズム反射鏡
27 トータルステーション
29 性状記憶部
30 演算装置
31 歪みゲージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7