特許第6495583号(P6495583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6495583音声通信端末及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495583
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】音声通信端末及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/853 20130101AFI20190325BHJP
   H04L 12/805 20130101ALI20190325BHJP
【FI】
   H04L12/853
   H04L12/805
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-126667(P2014-126667)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-5256(P2016-5256A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年2月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】福冨 隆朗
(72)【発明者】
【氏名】國正 詩帆
【審査官】 野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−123132(JP,A)
【文献】 特開2002−208953(JP,A)
【文献】 特開2013−175850(JP,A)
【文献】 特開平09−326802(JP,A)
【文献】 特開2009−044601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/853
H04L 12/805
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置が受信するパケットの受信状況に基づいて、ネットワークの状況を推定するネットワークモニタ部と、
推定されたネットワークの状況に応じて、音声データを圧縮するか否かを判断する音声通信制御部と、
前記音声通信制御部によって音声データを圧縮することが判断された場合、自装置から送信されるデータ量を圧縮する圧縮部と、
を備え、
前記音声通信制御部は、前記ネットワークの状況を推定するためのモニタパケットを送信し、
前記ネットワークモニタ部は、前記モニタパケットを送信してから通信経路を介して受信されるまでに要する通信時間に関する統計値として前記通信時間の増加量を算出し、音声通信において対向端末から送信される音声パケットの受信状況を示す値として前記音声パケットの受信間隔の増加量を算出し、前記通信時間の増加量と前記受信間隔の増加量とに基づいて、音声パケットの受信に関する前記ネットワークの状況を推定する、音声通信端末。
【請求項2】
自装置が受信するパケットの受信状況に基づいて、ネットワークの状況を推定するネットワークモニタ部と、
推定されたネットワークの状況に応じて、音声データを圧縮するか否かを判断する音声通信制御部と、
前記音声通信制御部によって音声データを圧縮することが判断された場合、自装置から送信されるデータ量を圧縮する圧縮部と、
を備え、
前記ネットワークモニタ部は、受信された音声パケットに含まれる時刻を表す時刻情報であって、前記音声パケットが受信される前に自装置が送信した音声パケットが中継装置において受信された時刻を示す前記時刻情報に基づいて、音声パケットの送信に関するネットワークの状況を推定する、
音声通信端末。
【請求項3】
自装置が受信するパケットの受信状況に基づいて、ネットワークの状況を推定するネットワークモニタ部と、
推定されたネットワークの状況に応じて、音声データを圧縮するか否かを判断する音声通信制御部と、
前記音声通信制御部によって音声データを圧縮することが判断された場合、自装置から送信されるデータ量を圧縮する圧縮部と、
を備え、
前記音声通信制御部は、前記ネットワークの状況を推定するためのモニタパケットを送信し、
前記ネットワークモニタ部は、前記モニタパケットを送信してから通信経路を介して受信されるまでに要する通信時間に関する統計値と、予め設定された統計値の最小値の差を算出し、算出された差と予め設定された閾値とに基づいて前記ネットワークの状況を推定し、
前記最小値は、ネットワークの状況が良好であるときの統計値であり、前記ネットワークの環境に応じて異なる値が設定される
音声通信端末。
【請求項4】
前記ネットワークモニタ部は、前記モニタパケットの前記通信時間のうち最近の所定数の通信時間に基づいて前記統計値を取得する、
請求項に記載の音声通信端末。
【請求項5】
前記ネットワークモニタ部は、自装置から所定の範囲に位置する他の音声通信端末の数を示す端末数情報を取得し、取得した前記端末数情報が示す前記他の音声通信端末の数に基づいて、前記ネットワークの状況の推定に用いる前記通信時間の数を調整する、
請求項に記載の音声通信端末。
【請求項6】
前記圧縮部は、音声データから通話が行われていない時間の音声データを除去することによって音声データを圧縮する、
請求項1からのいずれか一項に記載の音声通信端末。
【請求項7】
前記音声通信制御部は、推定されたネットワークの状況に応じて音声データを圧縮するコーデックを選択し、
前記圧縮部は、選択された前記コーデックで音声データを圧縮する、
請求項1からのいずれか一項に記載の音声通信端末。
【請求項8】
前記圧縮部は、単位時間内に送信される音声パケットの数を減らし、音声パケットのペイロード長を長くすることによって自装置から送信されるデータ量を圧縮する、
請求項1からのいずれか一項に記載の音声通信端末。
【請求項9】
請求項1に記載の音声通信端末としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声通信を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、VoIP(Voice Over Internet Protocol)によってIP網で音声通信を行う技術が実用化されている。例えば、特許文献1には、音声通信を行う端末間で送受信される音声データの符号化を、送信元の端末と送信先の端末とで異なる符号化方式により行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−209638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、VoIPによる音声通信では、パケット交換方式によって音声データが送受信される。パケット交換方式では、電話回線網で音声データの送受信を行う回線交換方式と異なり、ネットワークの状況によって通信帯域が大きく変動する可能性がある。VoIPによる音声通信が必要とする通信帯域は基本的に一定であるため、ネットワークの状況によって通信帯域が変動すると、通信ロスや、通信のゆらぎが発生し音声通信の品質が低下する可能性があった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、VoIPによる音声通信において、通信端末がより安定して音声通信を行うことができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、自装置が受信するパケットの受信状況に基づいて、ネットワークの状況を推定するネットワークモニタ部と、推定されたネットワークの状況に応じて、音声データを圧縮するか否かを判断する音声通信制御部と、前記音声通信制御部によって音声データを圧縮することが判断された場合、自装置から送信されるデータ量を圧縮する圧縮部と、を備える音声通信端末である。
【0007】
本発明の一態様は、上記の音声通信端末であって、前記音声通信制御部は、ネットワークの状況を推定するためのモニタパケットを送信し、前記ネットワークモニタ部は、前記モニタパケットごとに受信される応答パケットの受信状況に基づいて、ネットワークの状況を推定する。
【0008】
本発明の一態様は、上記の音声通信端末であって、前記ネットワークモニタ部は、前記モニタパケットが送信された時刻と、前記モニタパケットが受信された時刻と、に基づいて音声データの送信に関するネットワークの状況を推定し、前記モニタパケットが受信された時刻と、前記応答パケットが受信された時刻と、に基づいて音声データの受信に関するネットワークの状況を推定する。
【0009】
本発明の一態様は、上記の音声通信端末であって、前記ネットワークモニタ部は、音声通信において受信される音声パケットの受信状況に基づいて、音声パケットの受信に関するネットワークの状況を推定する。
【0010】
本発明の一態様は、上記の音声通信端末であって、前記ネットワークモニタ部は、受信された音声パケットに含まれる時刻を表す時刻情報であって、自装置が送信した音声パケットが受信された時刻を示す前記時刻情報に基づいて、音声パケットの送信に関するネットワークの状況を推定する。
【0011】
本発明の一態様は、上記の音声通信端末であって、前記圧縮部は、音声データから通話が行われていない時間の音声データを除去することによって音声データを圧縮する。
【0012】
本発明の一態様は、上記の音声通信端末であって、前記音声通信制御部は、推定されたネットワークの状況に応じて音声データを圧縮するコーデックを選択し、前記圧縮部は、選択された前記コーデックで音声データを圧縮する。
【0013】
本発明の一態様は、上記の音声通信端末であって、前記圧縮部は、単位時間内に送信される音声パケットの数を減らし、音声パケットのペイロード長を長くすることによって自装置から送信されるデータ量を圧縮する。
【0014】
本発明の一態様は、自装置が受信するパケットの受信状況に基づいて、ネットワークの状況を推定するネットワークモニタステップと、推定されたネットワークの状況に応じて、音声データを圧縮するか否かを判断する音声通信制御ステップと、前記音声通信制御ステップにおいて音声データを圧縮することが判断された場合、自装置から送信されるデータ量を圧縮する圧縮ステップと、を有する音声通信制御方法である。
【0015】
本発明の一態様は、自装置が受信するパケットの受信状況に基づいて、ネットワークの状況を推定するネットワークモニタステップと、推定されたネットワークの状況に応じて、音声データを圧縮するか否かを判断する音声通信制御ステップと、前記音声通信制御ステップにおいて音声データを圧縮することが判断された場合、自装置から送信されるデータ量を圧縮する圧縮ステップと、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、VoIPによる音声通信において、通信端末がより安定して音声通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】VoIPにより音声通信を行う音声通信システムの構成例を示す図である。
図2】実施形態の音声通信システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
図3】実施形態のVoIP端末1の機能構成を示す機能ブロック図である。
図4】第3の手法による音声データの圧縮の具体例を示す概略図である。
図5】実施形態の音声通信システムの動作例を示す図である。
図6】第1の手法によるネットワークの状況の推定の具体例を示す概略図である。
図7】第2の手法によるネットワークの状況の推定の具体例を示す概略図である。
図8】第3の手法によるネットワークの状況の推定の具体例を示す概略図である。
図9】ダイヤル画面の具体例を示す図である。
図10】通話中画面の具体例を示す図である。
図11】実施形態の音声通信システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、VoIPにより音声通信を行う音声通信システムの構成例を示す図である。
同図において、VoIP端末1−1、VoIP端末1−2、VoIP端末1−3及びVoIP電話機2は、VoIPにより音声通信を行う端末である。VoIP端末1−1、VoIP端末1−2、VoIP端末1−3は、携帯電話やスマートフォンなどの無線通信によって音声通信を行う無線端末である。VoIP電話機2は、VoIPによる音声通信機能を備える固定電話機である。基地局3−1、基地局3−2及び基地局3−3は上記の携帯端末を収容する基地局である。基地局3−1は、VoIP端末1−1を収容する。基地局3−2は、VoIP端末1−2を収容する。基地局3−3は、VoIP端末1−3を収容する。
【0019】
事業者IP網4は、VoIP端末1−1、VoIP端末1−2及びVoIP電話機2の利用者に通信サービスを提供する事業者のIP(Internet Protocol)網である。事業者IP網4には、基地局3−1、基地局3−2及びVoIP電話機2が接続される。また、事業者IP網4は、WAN(Wide Area Network)に接続され、WANを介して他の事業者のIP網と接続可能である。
別事業者IP網5は、VoIP端末1−3の利用者に通信サービスを提供する事業者のIP網である。別事業者IP網5には基地局3−3が接続される。
WAN6は、事業者IP網4と別事業者IP網5とを接続するネットワークである。WAN6は、例えば、インターネットや、専用線、広域イーサネット(登録商標)などのWANである。
【0020】
なお、同図は、VoIPを用いた音声通信システムの構成の一例を示すものであり、VoIPを用いた音声通信システムの構成は同図と異なる構成であってもよい。例えば、WAN6によって接続される事業者のIP網の数は、同図と異なる数であってもよい。同様に、各基地局3に接続されるVoIP端末1の数も同図と異なる数であってもよい。同様に、各事業者のIP網に接続される基地局3及びVoIP電話機2の数は、同図と異なる数であってもよい。
また、VoIPを用いた音声通信システムが、パケット交換方式による通信と回線交換方式による通信とを相互変換する変換装置を備えることによって、各VoIP端末1及びVoIP電話機2は、固定電話回線に接続された電話機との間で音声通信することも可能である。
【0021】
図2は、実施形態の音声通信システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
本実施形態では、説明を簡単にするために、VoIPにより音声通信する端末は、同一事業者の通信サービスを使用するものと仮定する。この場合、実施形態の音声通信システムの構成は同図が示す構成となる。実施形態の音声通信システムは、VoIP端末1−1、VoIP端末1−2、基地局3−1、基地局3−2、事業者IP網4及びVoIPサーバ7を備える。VoIP端末1−1、VoIP端末1−2、基地局3−1、基地局3−2及び事業者IP網4は、図1と同様である。以下の説明では、特に区別しない限り、VoIP端末1−1及びVoIP端末1−2をVoIP端末1と記載する。同様に、基地局3−1及び基地局3−2を基地局3と記載する。
【0022】
VoIPサーバ7は、VoIP端末1−1及びVoIP端末1−2のVoIPによる音声通信を制御するサーバである。例えば、VoIPサーバ7は、IP−PBX(Private Branch Exchange)などのネットワーク機器である。VoIPサーバ7は、音声通信を行うVoIP端末1の認証や、電話番号及びIPアドレスの変換、音声データの中継などの処理を行う。
また、VoIPサーバ7は、VoIP端末1から送信されるモニタパケットを受信する。モニタパケットは、VoIP端末1がネットワークの状況を監視するために送信するパケットである。VoIPサーバ7は、受信したモニタパケットごとに応答パケットを生成し送信元のVoIP端末1に送信する。
【0023】
図3は、実施形態のVoIP端末1の機能構成を示す機能ブロック図である。
VoIP端末1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、音声通信プログラムを実行する。VoIP端末1は、音声通信プログラムの実行によって記憶部11、通信部12、表示部13、入力部14、音声入出力部15、ネットワークモニタ部16、音声通信制御部17及び音声圧縮部18を備える装置として機能する。
なお、VoIP端末1の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。音声通信プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。音声通信プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0024】
記憶部11は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部11は、VoIPによる音声通信を実現するためのVoIPアプリケーションを予め記憶している。
通信部12は、Wi−Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)等の無線通信インターフェースを用いて構成される。通信部12は、基地局3との間の無線通信を制御する。
【0025】
表示部13は、タッチパネルや液晶ディスプレイなどの表示装置を用いて構成される。表示部13は、ネットワークモニタ部16及び音声通信制御部17の指示に応じてVoIPアプリケーションの操作画面を表示する。操作画面には、ダイヤル画面及び通話中画面の2つの操作画面がある。ダイヤル画面及び通話中画面の詳細は後述する。
【0026】
入力部14は、タッチパネルやキーボードなどの入力装置を用いて構成される。入力部14は、利用者の操作の入力を受け付ける。入力部14は、利用者の入力情報を音声通信制御部17に出力する。
音声入出力部15は、マイクやスピーカなどの音声入出力装置を用いて構成される。音声入出力部15は、利用者が発した音声を音声信号に変換する。音声入出力部15は、取得した音声信号を音声通信制御部17に出力する。また、音声入出力部15は、音声通信制御部17から出力される音声信号を取得する。音声入出力部15は、取得した音声信号を音声に変換して出力する。
【0027】
ネットワークモニタ部16は、VoIPサーバ7から送信される応答パケットを取得する。ネットワークモニタ部16は、応答パケットの受信状況に基づいてネットワークの状況を推定する。応答パケットの受信状況とは、例えば、パケットの送信から応答パケットの受信までの時間(以下、「応答時間」という。)や、応答パケットが送信されなかった送信パケットの数(以下、「パケットロス数」という。)などである。ネットワークモニタ部16は、応答パケットの受信状況に基づいて、ネットワークの遅延や、通信のゆらぎなどを算出する。ネットワークモニタ部16は、算出したネットワークの遅延や、通信のゆらぎなどの情報に基づいてネットワークの状況を推定する。ネットワークモニタ部16は、推定したネットワークの状況を表示部13に表示させる。
【0028】
音声通信制御部17は、VoIP端末1の音声通信を制御する。音声通信制御部17は、利用者によってVoIPアプリケーションを実行する操作が入力されることによって生成される機能部である。VoIPアプリケーションを実行する操作が入力されると、VoIPアプリケーションは、VoIP端末1のCPUによって記憶部11から読み出され、メモリ上に展開される。
【0029】
音声通信制御部17は、通話先のVoIP端末1(以下、「対向端末」という。)に発信信号を送信して音声通信を開始する。
具体的には、音声通信制御部17は、利用者のダイヤル操作及び発信操作の入力を受け付ける。音声通信制御部17は、入力情報が示す対向端末との間で、音声通信を開始するための発信信号を対向端末に送信する。対向端末が発信信号を受信すると、発信元のVoIP端末1と対向端末との間の音声通信が開始される。音声通信制御部17は、音声入出力部15から出力される音声信号に符号化や圧縮等の処理を行って音声データを生成する。音声通信制御部17は、生成した音声データを、ネットワークへの送出単位であるパケットに分割する。音声通信制御部17は、音声データが分割されたパケット(以下、「音声パケット」という。)を、対向端末に送信する。
【0030】
また、音声通信制御部17は、対向端末から送信された音声パケットを取得する。音声通信制御部17は、取得した音声パケットを結合し音声データを取得する。音声通信制御部17は、取得した音声データに復号や伸長等の処理を行って音声信号を生成する。音声通信制御部17は、生成した音声信号を音声入出力部15に出力する。音声通信制御部17は、利用者によって通話終了の操作が入力されると、対向端末に終了信号を送信し音声通信を終了する。
さらに、音声通信制御部17は、対向端末との間で音声通信を行っている間、所定のタイミングでVoIPサーバ7にモニタパケットを送信する。音声通信中にモニタパケットが送信されることによって、VoIP端末1は、音声通信中のネットワークの状況を推定することができる。
【0031】
また、音声通信制御部17は、推定したネットワークの状況に応じて、音声データを圧縮するか否かを判断する。音声通信制御部17は、前記判断に応じて音声圧縮部18に音声データの圧縮を指示する。音声通信制御部17は、圧縮された音声データと、音声データの圧縮方法を示す情報とを対向端末に送信する。また、音声通信制御部17は、対向端末から送信された音声データ及び圧縮方法を示す情報を受信する。音声通信制御部17は、圧縮方法に対応する伸長方法により音声データを伸長する。
【0032】
音声圧縮部18は、音声通信制御部17の指示に応じて音声データを圧縮する。音声圧縮部18が音声データを圧縮する手法の例として、次の3つの手法について説明する。なお、音声圧縮部18が音声データを圧縮する手法は、これらの3つの手法に限定されず、他の手法が用いられてもよい。
【0033】
[第1の手法]
音声データを圧縮する第1の手法は、音声データから無音データを除去する手法である。無音データとは、音声データのうち利用者が通話を行っていない時間の音声データを指す。一般に音声通信では、発信元のVoIP端末1と対向端末との間で、音声データが双方向かつ連続的に送受信される。音声データは、端末周囲の雑音を含んで送受信される。音声データに端末周囲の雑音が含まれることによって自然な音声通話が実現される。第1の手法は、端末周囲の雑音のみが含まれ、利用者の通話が含まれない無音データを音声データから除去することによって音声データのデータ量を削減する。第1の手法では、無音データが除去されることによって通話品質が低下する場合はあるが、ネットワークが混雑することによって通話自体が成り立たなくなることを抑制することが可能となる。なお、無音データは、音声の劣化を小さくするため、音声データ全体からまばらに除去されることが望ましい。また、音声通信制御部17は、必要な音声データが除去されることを抑制するために、周囲の雑音の強度が高い場合には無音データの除去を行わないように構成されてもよい。
【0034】
[第2の手法]
音声データを圧縮する第2の手法は、音声データのコーデック(CODEC:Coder/Decoder)を変更する手法である。コーデックとは、画像や音声、動画などの大容量のメディアデータを圧縮・伸張する装置やソフトウェアである。本実施形態では、コーデックは、主に上記のソフトウェアを指す。一般的にコーデックによるデータの圧縮では、品質とデータ量とはトレードオフの関係にある。第2の手法では、音声通信制御部17は、ネットワークの状況に応じて、通話が成り立つ限りにおいて音声の劣化を最小限にとどめるコーデックを選択し、音声データを圧縮する。コーデックを変更することによって、VoIP端末1は、ネットワークの状況に応じて音声データのデータ量を削減することが可能となる。
【0035】
[第3の手法]
音声データを圧縮する第3の手法は、音声データを送信するパケットサイズを変更する手法である。厳密には、本手法は、音声データを圧縮するのではなく、VoIPによる音声通信において送受信されるデータ量を削減する手法である。具体的には、本手法は、音声通信において送受信される音声パケットの音声データ部分(以下、「ペイロード」という。)のサイズを増やす代わりに、音声パケットの数を減らすというものである。このパケットサイズの変更により、音声通信において送受信される通信データ量に占める音声データの割合が増加し、音声データの送受信の効率が向上する。なお、パケットサイズが大きくなるつれ、音声パケットが送信される間隔が長くなる。そのため、パケットサイズが過度に大きなサイズに変更されてしまうと、音声通信の品質が低下する可能性がある。そのため、パケットサイズの変更は、音声通信による通話が成り立つ限りにおいて適切に行われる必要がある。
【0036】
図4は、第3の手法による音声データの圧縮の具体例を示す概略図である。
同図において、符号9−1及び符号9−2は、音声パケットを表す。音声パケット9−1において、符号9−1−1は、音声パケット9−1のヘッダ部を表す。符号9−1−2は、音声パケット9−1の実データ部であるペイロード部を表す。同様に、音声パケット9−2において、符号9−2−1は、音声パケット9−2のヘッダ部を表す。符号9−1−2は、音声パケット9−2の実データ部であるペイロード部を表す。
【0037】
同図の例の場合、ペイロード部9−1−2のデータ量(ペイロード長)は“5”である。同様に、ペイロード部9−2−2のデータ量は“10”である。また、音声パケット9−1及び音声パケット9−2のヘッダ部のサイズは同じである。この場合、1つの音声パケット9−2のペイロード部9−2−2によって伝送される音声データは、2つの音声パケット9−1によって伝送される。そのため、音声パケット9−1による音声データの伝送は、音声パケット9−2による伝送よりもヘッダ部1つ分のオーバヘッドが生じる。
このように、音声通信制御部17は、音声データを伝送する音声パケットのペイロード長を大きくすることによって、音声データの伝送効率を向上させることができる。
【0038】
図5は、実施形態の音声通信システムの動作例を示す図である。
同図において、縦軸は時間を表す。同図では、音声通信中の時刻t11及び時刻t21において、VoIP端末1がVoIPサーバ7にモニタパケットを送信している。そして、VoIP端末1は、モニタパケットに対する応答パケットを、それぞれ、時刻t12及び時刻t22において受信している。RTT1及びRTT2は、それぞれ、時刻t11及び時刻t21において送信されたモニタパケットのRTT(Round Trip Time)を表す。ネットワークモニタ部16は、これらのRTTについて平均や、分散などの統計値を算出することにより、音声通信中におけるネットワークの状況を推定する。
【0039】
なお、ネットワークモニタ部16は、モニタパケットのRTTに基づくネットワークの状況の推定において、全てのRTTに基づいて統計値を算出してもよいし、一部のRTTに基づいて統計値を算出してもよい。一部のRTTに基づいて統計値を算出する場合、ネットワークモニタ部16は、例えば、モニタパケットのRTTのうち最近のN個のRTTに基づいて統計値を算出してもよい。
【0040】
例えば、RTTの統計値がモニタパケットの最近のN個のRTTに基づいて算出される場合、ネットワークモニタ部16は、予め設定された統計値の最小値と算出した統計値との差を取得する。ネットワークモニタ部16は、予め設定された差の閾値と取得した差とを比較することによって、ネットワークの状況を推定する。なお、上記の最小値は、ネットワークの状況が良好であるときの統計値であり、算出された統計値を比較する基準値となる統計値である。すなわち、音声通信システムの環境に応じて異なる最小値が設定されることによって、その環境に応じた基準値との比較が可能になる。
【0041】
しかしながら、上記の方法では、最小値が大きい環境では、算出された統計値と最小値との差が小さくなる可能性が高い。そのため、ネットワークの状況を適切に判断できない場合がある。その場合、ネットワークモニタ部16は、予め設定された統計値の閾値と算出した統計値とを比較することによって、ネットワークの状況を推定してもよい。ネットワークモニタ部16は、上記の2つの方法の両方又はいずれか一方を用いてネットワークの状況を推定する。
【0042】
ネットワークモニタ部16が、ネットワークの状況を推定する手法の例として、次の3つの手法について説明する。
[第1の手法]
ネットワークの状況を推定する第1の手法は、VoIPサーバ7が応答パケットにモニタパケットを受信した時刻の情報を含める手法である。
【0043】
図6は、第1の手法によるネットワークの状況の推定の具体例を示す概略図である。
同図において、縦軸は時間を表す。同図では、時刻t、時刻t及び時刻tにおいて、VoIP端末1がVoIPサーバ7にモニタパケットを送信している。VoIPサーバ7は、送信されたモニタパケットを、それぞれ時刻t、時刻t及び時刻tにおいて受信する。VoIPサーバ7は、受信したモニタパケットごとに応答パケットを生成し、VoIP端末1に送信する。このとき、VoIPサーバ7は、応答パケットに対応するモニタパケットの受信時刻を含めて応答パケットを生成する。VoIP端末1は、モニタパケットに対する応答パケットを、それぞれ、時刻t、時刻t及び時刻tにおいて受信する。以下の説明では、説明を簡単にするためにVoIP端末1からVoIPサーバ7への通信を上り通信と呼ぶ。同様に、VoIPサーバ7からVoIP端末1への通信を下り通信と呼ぶ。
【0044】
ネットワークモニタ部16は、モニタパケットが送信された時刻と、応答パケットに含まれる、VoIPサーバ7におけるモニタパケットの受信時刻と、に基づいて各モニタパケットのRTTについて、上り通信に要した時間(以下、「上り時間」という。)と、下り通信に要した時間(以下、「下り時間」という。)と、を算出する。同図において、Δtは、時刻tと時刻tとの時刻差を表す時間である。すなわち、Δtは、時刻tに送信されたモニタパケットのRTTに占める上り時間である。また、Δtは、時刻tと時刻tとの時刻差を表す時間である。すなわち、Δtは、時刻tに送信されたモニタパケットのRTTに占める下り時間である。
【0045】
同様に、Δtは、時刻tに送信されたモニタパケットのRTTに占める上り時間である。同様に、Δtは、時刻tに送信されたモニタパケットのRTTに占める下り時間である。同様に、Δtは、時刻tに送信されたモニタパケットのRTTに占める上り時間である。同様に、Δtは、時刻tに送信されたモニタパケットのRTTに占める下り時間である。
ネットワークモニタ部16は、自装置から送信されたモニタパケットごとに取得されるRTTに占める上り時間及び下り時間について、平均や、分散などの統計値を算出することにより、音声通信中におけるネットワークの状況を推定することができる。この推定によって、VoIP端末1は、音声通信における通信品質の劣化が、上り通信によるものか、下り通信によるものかを判断することが可能となる。なお、第1の手法は、VoIP端末1及びVoIPサーバ7が時刻同期されていることが前提となる手法である。
【0046】
[第2の手法]
ネットワークの状況を推定する第2の手法は、対向端末から送信される音声パケットの受信状況に基づいて、下り通信におけるネットワークの状況を推定する手法である。
図7は、第2の手法によるネットワークの状況の推定の具体例を示す概略図である。
同図において、縦軸は時間を表す。同図では、VoIP端末1は、対向端末から送信される音声パケットを受信する時間差Δt〜Δt14を取得している。ネットワークモニタ部16は、音声パケットを受信した時刻の時間差について、平均や、分散などの統計値を算出することにより、音声通信中におけるネットワークの状況を推定することができる。この推定によって、VoIP端末1は、モニタパケットを送信することなく、下り通信におけるネットワークの状況を推定することが可能となる。
【0047】
[第3の手法]
ネットワークの状況を推定する第3の手法は、VoIPサーバ7が音声パケットを受信した時刻を、中継する音声パケットに含める手法である。
図8は、第3の手法によるネットワークの状況の推定の具体例を示す概略図である。
同図において、縦軸は時間を表す。同図では、時刻t10、時刻t14及び時刻t17において、VoIP端末1が対向端末に音声パケットを送信している。VoIP端末1から対向端末に送信される音声パケットを上りパケットと呼ぶ。VoIPサーバ7は、それぞれ時刻t11、時刻t15及び時刻t18において、上りパケットを受信する。VoIPサーバ7は、受信した上りパケットを対向端末に中継する。一方、VoIPサーバ7は、対向端末から送信される音声パケットをVoIP端末1に中継する。対向端末からVoIP端末1に送信される音声パケットを下りパケットと呼ぶ。同図では、対向端末は、時刻t13、時刻t16及び時刻t19において下りパケットを送信している。
【0048】
第3の手法では、VoIPサーバ7は、上りパケットの受信時刻を、下りパケットに含めて中継する。例えば、同図では、VoIPサーバ7は、時刻t13において送信される下りパケットに上りパケットの送信時刻である時刻t11を示す情報を含めてVoIP端末1に中継する。同様に、VoIPサーバ7は、時刻t16において送信される下りパケットに上りパケットの送信時刻である時刻t15を示す情報を含めてVoIP端末1に中継する。同様に、VoIPサーバ7は、時刻t19において送信される下りパケットに上りパケットの送信時刻である時刻t18を示す情報を含めてVoIP端末1に中継する。
【0049】
ネットワークモニタ部16は、下りパケットに含まれる、VoIPサーバ7における上りパケットの受信時刻を取得する。ネットワークモニタ部16は、連続して受信される下りパケットから上りパケットの受信時刻を取得し、連続する受信時刻間の時間差を取得する。同図では、Δt15及びΔt16が時間差として取得される。ネットワークモニタ部16は、連続する受信時刻間の時間差について、平均や、分散などの統計値を算出することにより、音声通信中におけるネットワークの状況を推定することができる。この推定によって、VoIP端末1は、モニタパケットを送信することなく、上り通信におけるネットワークの状況を推定することが可能となる。
【0050】
図9は、ダイヤル画面の具体例を示す図である。
同図における符号131は、ダイヤル画面を表す。ダイヤル画面131は、VoIP端末1が音声通信を開始する前に表示される画面である。ダイヤル画面131は、通信状況表示領域1311、発信先表示領域1312、ダイヤル表示領域1313及び通話開始ボタン1314を備える。
通信状況表示領域1311は、ネットワークモニタ部16によって推定されたネットワークの状況を表す情報が表示される。通信状況表示領域1311に表示されるネットワークの状況は、同図のように文字の態様で表示されてもよいし、他の態様で表示されてもよい。例えば、通信状況表示領域1311には、ネットワークの状況に応じた色を持つ図形が表示されてもよいし、ネットワークの状況を示すスコアが表示されてもよい。また、例えば、ネットワークの状況を示すスコアは、数値で表示されてもよいし、表示される図形の数や大きさなどで表されてもよい。
【0051】
発信先表示領域1312は、利用者によって入力された発信先の電話番号が表示される領域である。
ダイヤル表示領域1313は、利用者が発信先の電話番号を入力するためのダイヤルが表示される領域である。
通話開始ボタン1314は、利用者が発信先表示領域1312に表示された電話番号に発信する操作を入力するためのボタンである。通話開始ボタン1314が押下されると、音声通信制御部17は、発信先表示領域1312に表示された電話番号が示す対向端末に発信信号を送信し、音声通信を開始する。音声通信制御部17は、音声通信を開始すると、通話中画面を表示部13に表示させる。
【0052】
なお、ダイヤル画面131には、同図に示されない他の情報が表示されてもよい。例えば、現在時刻や発信先の対向端末の所有者の写真などが表示されてもよい。
また、例えば、ダイヤル画面131には、ネットワークの状況に応じて、利用可能な通信手段が表示されてもよい。利用可能な通信手段とは、例えば、電話回線を使用した音声通信や、メール、チャット等の手段である。この場合、VoIP端末1は、各通信手段が利用可能であると推定されるネットワークの状況と、各通信手段とが対応づけられた情報を予め記憶する。ネットワークモニタ部16は、推定されたネットワークの状況に応じて利用可能な通信手段を選択する。ネットワークモニタ部16は、利用可能と推定された通信手段を選択するための表示をダイヤル画面131に表示させ、利用者に選択の入力を促す。入力部14は、利用者の選択の入力を受け付ける。VoIP端末1は、利用者によって選択された通信手段を実行する。このように、ネットワークの状況に応じて利用可能な通信手段が表示されることによって、利用者はネットワークの状況に応じて通信手段を選択することができる。
【0053】
図10は、通話中画面の具体例を示す図である。
同図における符号132は、通話中画面を表す。通話中画面132は、VoIP端末1が音声通信を行っているときに表示される画面である。通話中画面132は、通信状況表示領域1321、通話先表示領域1322及び通話終了ボタン1323を備える。
通信状況表示領域1321は、ネットワークモニタ部16によって推定されたネットワークの状況を表す情報が表示される。通信状況表示領域1321には、同図のようにネットワークの状況を表す文字が表示されてもよいし、他の態様で表示されてもよい。例えば、通信状況表示領域1321には、ネットワークの状況に応じた色を持つ図形が表示されてもよいし、ネットワークの状況を示すスコアが表示されてもよい。また、例えば、ネットワークの状況を示すスコアは、数値で表示されてもよいし、表示される図形の数や大きさなどで表されてもよい。
【0054】
通話先表示領域1322は、自装置と音声通信中の対向端末の電話番号が表示される領域である。
通話終了ボタン1323は、利用者が音声通信を終了する操作を入力するためのボタンである。通話終了ボタン1323が押下されると、音声通信制御部17は、ダイヤル画面131を表示部13に表示させる。
なお、通話中画面132には、同図に示されない他の情報が表示されてもよい。例えば、通話時間や通話料金などの情報が表示されてもよい。
【0055】
図11は、実施形態の音声通信システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
まず、利用者は、入力部14を操作してVoIPアプリケーションを実行する操作をVoIP端末1に入力する。VoIP端末1は、利用者の入力を受け付ける(ステップS101)。VoIP端末1は、VoIPアプリケーションを記憶部11から読み出して実行する(ステップS102)。音声通信制御部17は、ダイヤル画面を表示部13に表示させる(ステップS103)。
利用者は、ダイヤル画面から発信先の対向端末の電話番号を入力する。VoIP端末1は、電話番号の入力を受け付ける(ステップS104)。次に、利用者は、通話を開始するためにダイヤル画面から発信操作を入力する。VoIP端末1は、発信操作の入力を受け付ける。VoIP端末1の音声通信制御部17は、入力された電話番号を用いて対向端末に発信信号を送信する(ステップS105)。対向端末が、発信信号を受信することによって、VoIP端末1と対向端末との間の音声通信が開始される。音声通信が開始されると、VoIP端末1と対向端末との間で音声データの送受信が行われる。
【0056】
音声通信制御部17は、音声通信中にモニタパケットをVoIPサーバ7に送信する(ステップS106)。VoIPサーバ7は、受信したモニタパケットごとに応答パケットを生成し、VoIP端末1に送信する(ステップS107)。VoIP端末1のネットワークモニタ部16は、応答パケットの受信状況に基づいて、ネットワークの状況を推定する(ステップS108)。ネットワークモニタ部16は、推定したネットワークの状況を通話中画面に表示させてもよい。VoIP端末1は、音声通信が終了するまでの間、所定のタイミングでモニタパケットを送信し、上記のネットワークの状況の推定を繰り返し実行する。
【0057】
音声通信制御部17は、推定したネットワークの状況に基づいて音声データを圧縮するコーデックを選択し、音声データの圧縮を音声圧縮部18に指示する。音声圧縮部18は、音声通信制御部17の指示に応じて音声データを圧縮する(ステップS109)。
利用者は、通話相手との会話が終了すると、ダイヤル画面から通話終了の操作を入力する。VoIP端末1は、通話終了の操作の入力を受け付ける(ステップS110)。VoIP端末1の音声通信制御部17は、音声通信を終了するための終了信号を対向端末に送信する(ステップS111)。対向端末が終了信号を受信すると、VoIP端末1は、対向端末との間の音声通信を終了する(ステップS112)。
【0058】
このように構成された実施形態のVoIP端末1は、音声通信中のネットワークの状況を推定するためにモニタパケットをVoIPサーバ7に送信する。VoIP端末1は、推定されたネットワークの状況に基づいて音声データを圧縮する。この音声データの圧縮によって、VoIP端末1は、より安定して音声通信を行うことが可能となる。
【0059】
また、実施形態のVoIPサーバ7は、モニタパケットを受信した時刻を、応答パケットに含めて送信する。VoIPサーバ7におけるモニタパケットの受信時刻が、モニタパケットに対する応答パケットに含められることによって、VoIP端末1は、上り通信及び下り通信におけるネットワークの状況を推定することが可能となる。
【0060】
また、実施形態のVoIPサーバ7は、上りパケットを受信した時刻を、下りパケットに含めて送信する。VoIPサーバ7における上りパケットの受信時刻が、下りパケットに含められることによって、VoIP端末1は、上り通信におけるネットワークの状況を推定することが可能となる。
<変形例>
【0061】
VoIP端末1は、推定したネットワークの状況を蓄積し、蓄積した情報を次回の推定に用いるように構成されてもよい。例えば、ネットワークモニタ部16は、推定したネットワークの状況と、ネットワークの状況を推定したときの自装置の位置及び時刻と、を対応づけて位置時刻情報として記憶部11に記憶させる。VoIP端末1は、位置時刻情報を用いて、推定するネットワークの状況に重み付けを行ってもよい。この重み付けによって、VoIP端末1は、ネットワークの状況の推定をより精度よく行うことが可能となる。
【0062】
また、位置時刻情報は、他の装置から送信される情報であってもよい。例えば、VoIP端末1は、推定したネットワークの状況をVoIPサーバ7に送信する。VoIPサーバ7は、各VoIP端末1から送信される情報を比較することによって、位置と、時刻と、当該位置の当該時刻におけるネットワークの状況との関係を最適化する。VoIPサーバ7が、最適化した位置時刻情報を各VoIP端末1にフィードバックすることにより、各VoIP端末1は、ネットワークの状況の推定をより精度よく行うことが可能となる。なお、VoIPサーバ7は、位置時刻情報をVoIP端末1にフィードバックする際、位置時刻情報を応答パケットのヘッダー部やペイロードに埋め込んで送信してもよい。位置時刻情報が応答パケットによりフィードバックされることによって、ネットワークのトラフィックの増加が抑制される。
【0063】
例えば、VoIPサーバ7は、モニタパケットを受信すると、最適化した位置時刻情報の中からパケットの送信元のVoIP端末1の位置及び時刻に対応するネットワークの状況を表す情報を選択する。VoIPサーバ7は、選択された情報をパケットの送信元のVoIP端末1に送信する。
例えば、VoIPサーバ7は、所定の範囲に位置するVoIP端末1の数を端末数情報として保持してもよい。この場合、VoIP端末1は、自装置の位置情報とともにモニタパケットを送信する。VoIPサーバ7は、モニタパケットを受信すると、パケットの送信元のVoIP端末1に対して、VoIP端末1が位置する範囲の端末数情報を送信する。VoIP端末1が位置する範囲の端末数情報がVoIP端末1に送信されることによって、VoIP端末1の利用者は、同一範囲内でどのくらいのVoIP端末1が通信を行っているかを把握することが可能となる。
【0064】
ネットワークモニタ部16は、上記の端末数情報に基づいてネットワークの状況を推定してもよい。例えば、ネットワークモニタ部16は、取得された端末数情報に応じて、ネットワークの状況の推定に用いるRTTの数を調節してもよい。例えば、端末数が多くネットワークの状況の変化が大きい場所及び時間帯においては、ネットワークモニタ部16は、ネットワークの状況の推定に用いるRTTの数を増加させる。その結果、ネットワークの状況の変化が、ネットワークの状況の推定結果に反映されやすくなる。
音声通信制御部17は、上記の端末数情報に基づいてモニタパケットの送信量を制御してもよい。例えば、端末数が多くネットワークの状況が良好でない場所及び時間帯においては、音声通信制御部17は、モニタパケットのサイズを小さくしたり、モニタパケットの送信間隔を長くする。その結果、単位時間に送信されるモニタパケットの送信量が少なくなり、モニタパケットの送信によってネットワークの状況がさらに悪化することが抑制される。
【0065】
VoIP端末1は、場所ごとのネットワークの状況を表示部13に表示させてもよい。例えば、VoIP端末1は、地図情報を予め記憶し、自装置の位置付近の地図を表示部13に表示する。VoIPサーバ7は、モニタパケットを受信すると、パケットの送信元のVoIP端末1に対して、VoIP端末1が位置する場所周辺のネットワークの状況を送信する。VoIP端末1は、表示部13に表示された地図をネットワークの状況に応じた色で着色する。このように、ネットワークの状況を表す地図が表示されることによって、VoIP端末1の利用者は、どの場所に移動すればネットワークの状況が良好となるかを判断することができる。
【0066】
また、音声通信制御部17は、ネットワークモニタ部16の機能を有する機能部として構成されてもよい。この機能の統合により、VoIP端末1は、ネットワークモニタ部16を備えない装置として構成されてもよい。
【0067】
モニタパケットの送信先はVoIPサーバ7に限定されない。モニタパケットの送信先は、モニタパケットを受信し、受信したモニタパケットの送信元に対して応答パケットを送信する機能を有する装置であれば、他のどのような装置であってもよい。
VoIPによる音声通信は、VoIPサーバ7を介さずに行われてもよい。例えば、VoIP端末1間で直接VoIPによる音声通信が行われてもよい。
【0068】
ネットワークの状況を推定する手法には、次の手法が用いられてもよい。
VoIP端末1は、下りパケットの受信間隔を計測する。そして、VoIP端末1は、モニタパケットのRTTの増加量と下りパケットの受信間隔の増加量とを比較することによってネットワークの状況を推定する。例えば、両者の増加量が同等である場合、VoIP端末1は、下り通信においてネットワークの遅延が発生していることを推定する。また、RTTの増加量が下りパケットの受信間隔の増加量よりも大きい場合、VoIP端末1は、上り通信においてネットワークの遅延が発生していることを推定する。
【0069】
VoIP端末1は、ネットワークの状況が通話困難な状況となった場合、対向端末との接続を切断するか否かの判断を利用者に促す画面を表示してもよい。例えば、VoIP端末1は、表示部13に「通話品質が劣化しました。切断しますか?」という文言を伴うボタンを表示させる。利用者は、ボタンを押下することによって通話を終了する。このように、通話品質が悪い状況において、通話を終了することを促す画面が表示されることによって、利用者への不要な課金が抑制される。この場合、VoIP端末1は、通話品質の劣化により通話を終了する可能性があることを対向端末に通知するように構成されてもよい。VoIP端末1は、音声やテキスト等のメッセージを対向端末に送信することによって上記通知を行ってもよい。また、VoIP端末1は、ネットワークの状況が通話困難な状況となった場合、対向端末との接続の切断を自動的に行うように構成されてもよい。
【0070】
VoIP端末1は、対向端末との間でネットワークの状況を表す情報を送受信するように構成されてもよい。例えば、VoIP端末1は、音声パケットの受信間隔やパケットロス数を計測する。VoIP端末1は、これらの情報を通知用パケットに含め、対向端末に送信する。VoIP端末1は、これらの情報を音声パケットのヘッダ部やペイロードに埋め込んで対向端末に送信してもよい。このように、ネットワークの状況を表す情報が、VoIP端末1間で送受信されることによって、VoIP端末1は、VoIPサーバ7を介することなく、対向端末との間のネットワークの状況を把握することが可能となる。
【0071】
VoIP端末1は、モニタパケットを受信し、モニタパケットの送信元に応答パケットを送信する機能を備えるように構成されてもよい。この場合、VoIP端末1は、モニタパケットを対向端末に送信する。対向端末は、モニタパケットを受信すると、VoIP端末1に応答パケットを送信する。VoIP端末1は、モニタパケットのRTTに基づいてネットワークの状況を推定する。このように構成されたVoIP端末1は、VoIPサーバ7を介することなく、対向端末との間のネットワークの状況を把握することが可能となる。
【0072】
VoIP端末1は、対向端末との間でモニタパケットの送受信を行うことによって推定されたネットワークの状況を、モニタパケットとともにVoIPサーバ7に送信してもよい。この場合、VoIP端末1と対向端末との間のネットワークの状況が、VoIPサーバ7に蓄積される。蓄積された情報は、上記同様にVoIPサーバ7によって最適化され、VoIP端末1にフィードバックされる。
【0073】
上述した実施形態におけるVoIP端末1をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0074】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1、1−1〜1−3…VoIP端末, 11…記憶部, 12…通信部, 13…表示部, 131…ダイヤル画面, 1311…通信状況表示領域, 1312…発信先表示領域, 1313…ダイヤル表示領域, 1314…通話開始ボタン, 132…通話中画面, 1321…通信状況表示領域, 1322…通話先表示領域, 1323…通話終了ボタン, 14…入力部, 15…音声入出力部, 16…ネットワークモニタ部, 17…音声通信制御部, 18…音声圧縮部, 2…VoIP電話機, 3、3−1〜3−3…基地局, 4…事業者IP網, 5…別事業者IP網, 6…WAN(Wide Area Network), 7…VoIPサーバ, 9、9−1、9−2…音声パケット, 9−1−1、9−2−1…ヘッダ部, 9−1−2、9−2−2…ペイロード部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11