特許第6495592号(P6495592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6495592電源システム、電源システムを動作させるための方法、およびコントローラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495592
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】電源システム、電源システムを動作させるための方法、およびコントローラ
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20190325BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20190325BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20190325BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20190325BHJP
【FI】
   H02J9/06 120
   H02J7/34 J
   H02M3/155 H
   H02M7/48 E
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-154919(P2014-154919)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-33326(P2015-33326A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2017年7月20日
(31)【優先権主張番号】13178659.2
(32)【優先日】2013年7月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508346767
【氏名又は名称】アーベーベー・テクノロジー・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリッポ,マルバッハ
【審査官】 早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0049699(US,A1)
【文献】 特許第5131403(JP,B1)
【文献】 特開2003−199265(JP,A)
【文献】 特開2012−228073(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/132667(WO,A1)
【文献】 特開2012−139048(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/021052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J9/00−11/00
H02J7/00−7/12
H02J7/34−7/36
H02M3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路網(14)からの電気エネルギを負荷(18)に供給するための電源システム(10)であって、少なくとも1つの電源モジュール(20)を備え、前記少なくとも1つの電源モジュール(20)は、
前記電気回路網(14)から供給されるDCリンク(24)と、
前記DCリンク(24)に接続され、前記DCリンク(24)からのDC電圧を前記負荷(18)に供給されるAC電圧に変換するように適合されるインバータ(26)とを備え、
前記電源システム(10)は、前記DCリンク(24)によって充電されるとともに、前記電気回路網(14)が停電した場合に前記DCリンク(24)に電気エネルギを供給するための電気エネルギ貯蔵部(30)を備え、
前記電気エネルギ貯蔵部(30)は、一方の入力(36)により前記電源モジュール(20)の中性点(N)に接続され、
前記DCリンク(24)は、前記DCリンク(24)の正の電位(DC+)と負の電位(DC−)との間に直列に相互接続される少なくとも2つのキャパシタ(28)を備え、
前記中性点(N)は前記少なくとも2つのキャパシタ(28)の間に設けられ、
前記電源モジュール(20)は、前記DCリンク(24)の前記正の電位(DC+)または前記負の電位(DC−)に、前記中性点(N)に、および前記電気エネルギ貯蔵部(30)の別の入力(34)に接続される、前記電気エネルギ貯蔵部(30)を充放電させるための双方向降圧/昇圧コンバータ(40)を備え、
前記電源モジュール(20)は、前記DCリンク(24)の前記中性点(N)、前記負の電位(DC−)、および前記正の電位(DC+)を相互接続する前記DCリンクのキャパシタ(28)中に貯蔵される電気エネルギを平衡させるためのさらなる双方向降圧/昇圧コンバータ(60)を備える、電源システム。
【請求項2】
前記電気エネルギ貯蔵部(30)は入力(34、36)を2つのみ備える、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記降圧/昇圧コンバータ(40)および/またはさらなる降圧/昇圧コンバータ(60)は、2つの半導体スイッチ(44、64)と、インダクタ(48、68)とを備え、前記2つの半導体スイッチ(44、64)は、直列に接続されて、第1の出力(52、72)と第2の出力(54、74)とを与え、前記インダクタ(48、68)の一方端が前記2つの半導体スイッチ(44、46)の間に接続され、前記インダクタ(48、68)の別の端が第3の出力(56、76)を与える、請求項1に記載の電源システム。
【請求項4】
前記降圧/昇圧コンバータ(40)および/または前記さらなる降圧/昇圧コンバータ(60)は2つのダイオード(46、66)を備え、各々のダイオードは前記半導体スイッチ(44、64)の1つに並列に接続される、請求項3に記載の電源システム。
【請求項5】
前記電気エネルギ貯蔵部(30)を充放電させるための前記降圧/昇圧コンバータ(40)は、前記第1の出力(52)によって前記電気エネルギ貯蔵部(30)に接続され、前記第2の出力(54)によって前記中性点(N)に接続され、かつ前記第3の出力(56)によって前記DCリンク(24)の前記正の電位(DC+)または負の電位(DC−)に接続される、請求項3に記載の電源システム。
【請求項6】
前記電気エネルギ貯蔵部(30)を充放電させるための前記降圧/昇圧コンバータ(40)は、前記第1の出力(52)によって前記電気エネルギ貯蔵部(30)に接続され、前記第2の出力(54)によって前記中性点(N)に接続され、かつ前記第3の出力(56)によって前記DCリンク(24)の前記正の電位(DC+)または負の電位(DC−)に接続される、請求項4に記載の電源システム。
【請求項7】
前記電気エネルギ貯蔵部(30)を充放電させるための前記降圧/昇圧コンバータ(40)は、前記第1の出力(52)によって前記DCリンク(24)の前記正の電位(DC+)または前記負の電位(DC−)に接続され、前記第2の出力(54)によって前記中性点(N)に接続され、かつ前記第3の出力(56)によって前記電気エネルギ貯蔵部(30)に接続される、請求項3に記載の電源システム。
【請求項8】
前記電気エネルギ貯蔵部(30)を充放電させるための前記降圧/昇圧コンバータ(40)は、第1の出力(52)によって前記DCリンク(24)の前記正の電位(DC+)または前記負の電位(DC−)に接続され、前記第2の出力(54)によって前記中性点(N)に接続され、かつ前記第3の出力(56)によって前記電気エネルギ貯蔵部(30)に接続される、請求項4に記載の電源システム。
【請求項9】
前記さらなる降圧/昇圧コンバータ(60)は、前記第1の出力(72)によって前記DCリンク(24)の前記正の電位(DC+)に接続され、前記第2の出力(74)によって前記DCリンク(24)の前記負の電位(DC−)に接続され、かつ前記第3の出力(76)によって前記中性点(N)に接続される、請求項3から6のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項10】
前記電源システム(10)は複数の電源モジュール(20)を備え、各々の電源モジュール(20)は、前記電気エネルギ貯蔵部(30)に接続されるDCリンク(24)を備える、請求項1に記載の電源システム。
【請求項11】
前記電源システム(10)は複数の電源モジュール(20)を備え、各々の電源モジュール(20)は、前記電気エネルギ貯蔵部(30)に接続されるDCリンク(24)を備える、請求項9に記載の電源システム。
【請求項12】
前記電源モジュール(20)は、前記電気エネルギ貯蔵部(30)の一方の入力(36)に接続されるそれらの中性点(N)を介して接続され、
各々の電源モジュール(20)は、それぞれの電源モジュール(20)の前記DCリンク(24)の正の電位(DC+)または負の電位(DC−)に前記電気エネルギ貯蔵部(30)の他方の入力(34)を相互接続する双方向降圧/昇圧コンバータ(40)を備える、請求項10に記載の電源システム。
【請求項13】
前記電源モジュール(20)は、前記電気エネルギ貯蔵部(30)の一方の入力(36)に接続されるそれらの中性点(N)を介して接続され、
各々の電源モジュール(20)は、それぞれの電源モジュール(20)の前記DCリンク(24)の正の電位(DC+)または負の電位(DC−)に前記電気エネルギ貯蔵部(30)の他方の入力(34)を相互接続する双方向降圧/昇圧コンバータ(40)を備える、請求項11に記載の電源システム。
【請求項14】
電源システム(10)を動作させるための方法であって、
双方向降圧/昇圧コンバータ(40)を有する前記電源システム(10)の少なくとも1つの電源モジュール(20)のDCリンク(24)から電気エネルギ貯蔵部(30)を充電するステップを備え、
前記電気エネルギ貯蔵部(30)は、一方の入力(36)によって前記電源モジュール(20)の中性点(N)に接続されるとともに、別の入力(34)によって前記双方向降圧/昇圧コンバータ(40)に接続され、
前記双方向降圧/昇圧コンバータ(40)は、前記DCリンク(24)の正の電位(DC+)または負の電位(DC−)に接続されるとともに、前記中性点(N)に接続され、
前記DCリンク(24)は、前記DCリンク(24)の前記正の電位(DC+)と前記負の電位(DC−)との間に直列に相互接続される少なくとも2つのキャパシタ(28)を備え、
前記中性点(N)は前記少なくとも2つのキャパシタ(28)の間に設けられ、
前記方法は、前記双方向降圧/昇圧コンバータ(40)を介して前記電気エネルギ貯蔵部(30)を前記DCリンク(24)に向けて放電させることによって前記DCリンク(24)に電気エネルギを供給するステップと、
前記DCリンク(24)の前記中性点(N)、前記負の電位(DC−)、および前記正の電位(DC+)を相互接続するさらなる降圧/昇圧コンバータ(60)を動作させることによって、前記電気エネルギ貯蔵部(30)の放電の間、前記電源モジュール(20)のDCリンクのキャパシタ(28)に貯蔵される電気エネルギを平衡させるステップとをさらに備える、方法
【請求項15】
前記双方向降圧/昇圧コンバータ(40)を有する前記電源システム(10)の少なくとも1つの電源モジュール(20)の前記DCリンク(24)から前記電気エネルギ貯蔵部(30)を充電するステップをさらに備え、
電気回路網(14)から引き込まれる電流のDC成分は、前記さらなる降圧/昇圧コンバータ(60)を通して制御される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の方法を行なうように適合される、請求項1から13のいずれか1項に記載の電源システム(10)のためのコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、電源システムの分野、特に列車用途の無停電保護システムに関する。特に、本発明は、電気回路網からの電気エネルギを負荷に供給するための電源システム、および電源システムを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
列車または鉄道システムでは、自動列車保護システムにより、鉄道上で循環するすべての車両(列車)の位置および速度を管理しかつ制御することによってすべての車両の安全な運行が可能になる。(鉄道の転轍器、踏切、鉄道の照明などの)自動列車保護機器および他の鉄道機器は、予め定められた時間量の間、システムの不可欠な負荷に補助電源を与えるように適合される確実な電源を必要とすることがある。そのような電源システムは無停電保護システムとも呼ばれる。
【0003】
無停電電源または保護システムは、電気回路網によって供給される入力電流からAC出力電流を生成するように適合される1つ以上の電源モジュールを備え得る。AC電気回路網については、電源モジュールは、AC出力電流を生成するためにインバータと相互接続されるDCリンクを供給する整流器を備え得る。DC電気回路網の場合は整流器を省略してもよい。インバータおよび/または整流器は、中心の中性点を有する分割(split)DCリンクに接続される2つのハーフブリッジ位相レッグ(phase leg)を伴なうコンバータトポロジーを有し得る。単純かつ経済的なトポロジーは、分割DCリンクおよび中性/共通基準点が入力から出力へ通る、ハーフブリッジ整流器およびハーフブリッジインバータであり得る。これらのトポロジーは、4線式(400V)および3線式(北米のような480V)システムの両者にも適用される。
【0004】
電気回路網がダウンしている場合に補助エネルギを与えるため、無停電保護システムは通常、充電式電池または蓄電池の形態の電気エネルギ貯蔵部を備える。たとえば、鉛蓄電池を、無停電保護システムにおける電気エネルギ貯蔵部として用いてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開第2012/169126号
【特許文献2】米国特許公開第2008/061628号
【特許文献3】米国特許公開第2013/049699号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いくつかの電源モジュールに共通の電池が用いられることがあるが、これは、システムレベルで動作上のまたはコストの問題を生じることがある。というのも、電池は、電源モジュール同士の間の過剰なおよび/または非制御の循環電流を回避するための複雑なまたは高価な解決策を必要とし得る電流経路を導入する可能性があるからである。
【0007】
これらの課題に対するいくつかの解決策が利用でき、一般的に用いられる。たとえば、3線式電池(three wire battery)(すなわち、正、負、および中点入力を有する電池)を用いてもよく、これは、中点入力が、典型的には電源システムの中性点である安定基準電位上に中心決めされている。そのようなシステムは通常は制御が単純であり、本来的に安定であり得るが、分割/3線式電池は、ケーブル敷設、保護、ならびに2面(two-sided)または分割DCリンクおよび充電機能をサポートする2つのDC−DCコンバータの必要性のために、高コストになってしまう。
【0008】
別の例として、2線式電池(すなわち、正および負の入力を有する電池)を用いてもよく、これは、一方の入力で、不安定ではあるが制御された電位、たとえば、電源モジュールのDCリンクの電位、に接続される。この場合、コンバータの保護および数はより少なくなり得るが、通常は制御がより困難であり、典型的に、能動的および受動的制御を介して循環電流を実用的なレベルに限定するには、異なる電源モジュール同士の間の付加的なインピーダンスおよび制御回路が必要となる。
【0009】
不安定な電位に接続される電池を有するトポロジーは、加えて、潜在的に深刻なEMI源となることがあり、これには、規定に従うためには、適切かつコストのかかる解決策が必要になることがある。大規模システムのための電池ケーブル敷設は、潜在的に放射アンテナとして機能し得る。
【0010】
発明の説明
発明の目的は、単純で、制御が容易で、かつ安価な無停電保護システムを提供することである。
【0011】
この目的は、独立請求項の主題によって達成され得る。さらなる例示的な実施形態は、従属請求項および以下の説明から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の局面は、電気回路網からの電気エネルギを負荷に供給するための電源システムに関する。電気回路網は、16 2/3 Hz AC列車電圧回路網、230V/50/60Hz回路網、またはDC回路網などの大規模送電網であり得る。負荷または複数の負荷は、列車保護システム、およびセンサ、スイッチなどの鉄道機器を備え得る。
【0013】
発明の実施形態に従うと、電源システムは、その各々が整流器(AC入力電気回路網の場合のみ)を備え得る1つ以上の電源モジュールと、DCリンクと、直列に接続されるインバータとを備える。複数の電源モジュールの場合、これらのモジュールは電気回路網に並列に接続されてもよい。
【0014】
発明の実施形態に従うと、電源モジュール(またはすべての電源モジュール)は、(たとえば整流器を介して)電気回路網から供給されるDCリンクと、DCリンクに接続され、DCリンクからのDC電圧を負荷に供給されるAC電圧に変換するように適合されるインバータとを備える。電源システムは、たとえば電気回路網が停電した場合にDCリンクに電気エネルギを供給するための、DCリンクによって充電される電気エネルギ貯蔵部を備える。電気エネルギ貯蔵部は、一方の入力によって電源モジュールの中性点に接続される。電源モジュールは、DCリンクの正または負の電位に、中性点に、および電気エネルギ貯蔵部の別の入力に接続される双方向降圧/昇圧(buck/boost)コンバータを備える。
【0015】
双方向降圧/昇圧コンバータは、ハーフブリッジと、ハーフブリッジの中点に接続されるインダクタとを有するDC−DCコンバータであってもよい。双方向降圧/昇圧コンバータにより、電気エネルギ貯蔵部が充放電され得、たとえば過負荷のためまたは電池の診断のためにDCリンクに接続される整流器との負荷の共有も可能になる。電気エネルギ貯蔵部とDCリンクとの間に、電気エネルギ貯蔵部を充電/放電させるための双方向コンバータを1つだけ設けてもよく、これは、システムおよびその制御を簡略化し得、ケーブル敷設および構成要素を節約し得る。
【0016】
さらに、双方向降圧/昇圧コンバータは、分割DCリンクの両方ではないがいずれかの部分をサポートし得る。双方向降圧/昇圧コンバータは全系統電力(full system power)のために定格化され得る。
【0017】
双方向降圧/昇圧コンバータの入力およびシステムの安定中性電位に接続される、充電式電池または蓄電池であり得る電気エネルギ貯蔵部も、全系統電力のために定格化されてもよい。電気エネルギ貯蔵部は、すべての電源モジュールによって共有される安定電位、すなわち共通の中性点に接続され得るので、電源モジュール同士の間には非制御循環電流が存在し得ない。
【0018】
発明の実施形態に従うと、DCリンクは分割DCリンクおよび/または2面DCリンクであり、たとえば、DCリンクの正の電位と負の電位との間に直列に相互接続される2つのキャパシタを備えてもよく、中性点は、2つのキャパシタの間に、すなわち分割DCリンクの中点に設けられる。このように、電気エネルギ貯蔵部の一方端は、中点と、2面DCリンクの一方側とに接続される。
【0019】
発明の実施形態に従うと、電気エネルギ貯蔵部は入力を2つのみ備える。すなわち、単純な標準的な鉛蓄電池などの、端子を2つのみ有する電池であり得る。そのような電池接続はできる限り単純であってもよい。提案されるトポロジーは、一方端が電源モジュール中の安定した中性電位、たとえば電源システム全体の中性電位、に接続される2線式電池を利用し得る。
【0020】
そのような電池は、商用構成要素が実際に入手しやすいために、付加的な利点を与え得、これにより、定格系統電力(system power)までの「電池充電器」機能の単純な実現が可能になる。これは、非常に弱い公益事業または代替エネルギ適用例の分野では重要であり得る。このトポロジーは、中点を接続しない3線式の旧来の電池を用いることができるようにもする。
【0021】
発明の実施形態に従うと、電源モジュールは、DCリンクの中性点、負の電位、および正の電位を相互接続するさらなる双方向降圧/昇圧コンバータをさらに備える。上記の第1の双方向降圧/昇圧コンバータは充電/放電コンバータと見なされてもよい。追加のさらなる第2のコンバータは、システムの動的状況の下では、分割DCリンクの部分同士の間および/または異なるDCリンク同士の間で負荷を平衡させるための平衡コンバータ(balancing converter)と見なされてもよい。
【0022】
平衡コンバータにより、DCリンクへのAC電流のDC成分は、たとえば電気エネルギ貯蔵部の充電の間、電流のACおよびDC成分の調節および平衡を維持するように制御され得る。
【0023】
加えて、異なるDCリンクの不平衡な負荷付与の間、平衡コンバータは、2つ以上のDCリンク間でのエネルギ転送によって異なる負荷を補償してもよい。
【0024】
要約すると、各々の電源モジュールは、DCリンクの半分または一部によって電気エネルギ貯蔵部を相互接続する第1の降圧/昇圧コンバータと、反対の半サイクルの間負荷をサポートするのに必要なエネルギをDCリンクのそれぞれの他方の半分に転送するための第2の降圧/昇圧コンバータとを備え得る。
【0025】
発明の実施形態に従うと、第1の降圧/昇圧コンバータおよび/またはさらなる第2の降圧/昇圧コンバータは、第1の出力および第2の出力を設けるハーフブリッジ(直列に接続される2つの半導体スイッチ)と、一方端が(2つの半導体スイッチの間の)ハーフブリッジの中点に接続され、もう一方の端によって第3の出力を設けるインダクタとを備える。降圧/昇圧コンバータは両者とも双方向性であり、第1のコンバータは同じ構成要素を有する充電器として機能し、したがって非常に高い電位での充電能力を有し得る。
【0026】
降圧/昇圧コンバータおよび/またはさらなる降圧/昇圧コンバータは2つのダイオードをさらに備えてもよく、各々のダイオードは半導体スイッチの1つに並列に接続される。
【0027】
発明の実施形態に従うと、電気エネルギ貯蔵部と相互接続される降圧/昇圧コンバータは、第1の出力によって電気エネルギ貯蔵部に接続され、第2の出力によって中性点に接続され、かつ第3の出力によってDCリンクの正または負の電位に接続される。このように、充電の間、電気エネルギ貯蔵部の電圧は、DCリンクの正(または負)の電位の電圧よりも高くなり得る。
【0028】
発明の実施形態に従うと、電気エネルギ貯蔵部と相互接続される降圧/昇圧コンバータは、第1の出力によってDCリンクの正または負の電位に接続され、第2の出力によって中性点に接続され、かつ第3の出力によって電気エネルギ貯蔵部に接続される。このように、放電の間、DCリンクの正(または負)の電位の電圧は電気エネルギ貯蔵部の電圧よりも高くなり得る。
【0029】
発明の実施形態に従うと、さらなる降圧/昇圧コンバータは、第1の出力によってDCリンクの正の電位に接続され、第2の出力によってDCリンクの負の電位に接続され、かつ第3の出力によって中性点に接続される。
【0030】
発明の実施形態に従うと、電源システムは複数の電源モジュールを備え、各々の電源モジュールは電気エネルギ貯蔵部に接続されるDCリンクを備える。すべての電源モジュールは等しく設計されてもよく、以上および以下に記載のようにすべてが2つの降圧/昇圧コンバータを有してもよい。この結果、個々の並列電源モジュールを備えるスケーラブルなおよび/またはモジュール式の電源システムとなり得る。モジュールは、独立した電気エネルギ貯蔵部または共通の電気エネルギ貯蔵部を有してもよく、両方の場合に鉛蓄電池を備えてもよい。
【0031】
発明の実施形態に従うと、電源モジュールは、電気エネルギ貯蔵部の一方の入力に接続されるそれらの中性点を介して接続され、各々の電源モジュールは、電気エネルギ貯蔵部の他方の入力をそれぞれの電源モジュールのDCリンクの正の電位または負の電位に相互接続する双方向降圧/昇圧コンバータを備える。このように、共通の中性点を介して電源モジュール同士の間で負荷を平衡させるのに、平衡降圧/昇圧コンバータを付加的に用いてもよい。
【0032】
発明のさらなる局面は、電源システムを動作させるための方法に関し、これは、以上および以下に記載のように設計され得る。たとえば、方法は、電源システムのコントローラによって行なわれてもよい。方法は、コントローラでコンピュータプログラム(すなわちソフトウェア)として実現されてもよく、または、少なくとも部分的にハードウェアで実現されてもよい。以上および以下に記載のような方法の特徴は、以上および以下に記載のような電源システムの特徴であってもよく、またはその逆であってもよいことを理解しなければならない。
【0033】
発明の実施形態に従うと、方法は、双方向降圧/昇圧コンバータを有する電源システムの少なくとも1つの電源モジュールのDCリンクから電気エネルギ貯蔵部を充電するステップを備える。電気エネルギ貯蔵部は、一方の入力によって電源モジュールの中性点に、別の入力によって降圧/昇圧コンバータに接続される。双方向降圧/昇圧コンバータはDCリンクの正または負の電位に接続され、かつ中性点に接続される。さらに方法は、双方向降圧/昇圧コンバータを介して電気エネルギ貯蔵部をDCリンクに向けて放電することによってDCリンクに電気エネルギを供給するステップを備える。分割DCリンクの唯一のレッグを介して電気エネルギ貯蔵部を充電するまたは放電させるのに、単一のDC−DCコンバータを用いてもよい。たとえば4線式の設備(すなわち、標準的な400Vの設備、位相、および中性)には、非制御電流および/または循環電流が存在しないことがある。さらに、電気エネルギ貯蔵部は安定した基準電位にある。
【0034】
発明の実施形態に従うと、方法はさらに、DCリンクの中性点、負の電位、および正の電位を相互接続するさらなる降圧/昇圧コンバータを動作させることによって、たとえば電気エネルギ貯蔵部の放電の間、電源モジュールのDCリンクのキャパシタ中に貯蔵される電気エネルギをバランスさせるステップを備える。付加的な第2の双方向コンバータを用いると、エネルギは、第1のコンバータによってサポートされるDCリンクの一部からDCリンクの反対側の部分へ、またはその逆に転送されて、調節を維持し得る。平衡コンバータは、電気エネルギ貯蔵部の充電、および/または、不平衡の、たとえば半波整流された負荷のサポートの間、AC入力電流上のDC成分を補償してもよい。
【0035】
発明の実施形態に従うと、方法はさらに、双方向降圧/昇圧コンバータを有する電源システムの少なくとも1つの電源モジュールの電気エネルギ貯蔵部を充電するステップを備え、電気回路網から引込まれる電流のDC成分は、さらなる降圧/昇圧コンバータを通して能動的に制御される。
【0036】
発明の実施形態に従うと、方法はさらに、降圧/昇圧コンバータを介した電源システムの少なくとも2つの電源モジュールの少なくとも2つのDCリンク間の電気エネルギをバランスさせるステップを備え、電源モジュールはそれらのDCリンク中性点を介して相互接続され、各々の電源モジュールは、それぞれの電源モジュールのDCリンクのそれぞれの中性点、それぞれの負の電位、およびそれぞれの正の電位を相互接続する降圧/昇圧コンバータを備える。DCリンク同士の間の共通の中性点を介して接続される第2のコンバータは、DCリンクからDCリンクへ選択的にかつ双方向にエネルギを転送して、特に定常状態条件下および/または動的条件下では個別のリンク調節を維持してもよい。
【0037】
特に、第2のコンバータを用いると、たとえば、動的な負荷条件または(変圧器などの)大きな誘導性負荷に接続する際の不平衡リンクに対する負荷付与の深刻な事例の下での電源モジュールのインバータからのたとえば逆方向のエネルギの流れなど、(第1のコンバータの充電および放電機能とは独立した)動的条件下でのDCリンク制御が可能になる。これは、制御不可能なDCリンクのオーバーシュートによる潜在的なシステムシャットダウンを防止し得る。
【0038】
発明のさらなる局面は、以上および以下に記載のような方法を実行するように適合される、以上および以下に記載のような電源システムのためのコントローラに関する。システムレベル制御およびコントローラは非常に単純であってもよい。というのも、すべての共通点は、参照にあるか、または独立してかつ個別に制御され得るからである。並列システムレベルでの付加的なハードウェアまたは制御は必要ない。
【0039】
発明のこれらおよび他の局面は、以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを用いて解明されるであろう。
【0040】
発明の主題は、添付の図面に図示される例示的な実施形態を参照して、以下の本文でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】発明の実施形態に従う電源システムを概略的に示す図である。
図2】発明の実施形態に従う電源モジュールの一部を概略的に示す図である。
図3】発明の実施形態に従う電源のためのコンバータを概略的に示す図である。
図4】発明の実施形態に従う電源システムを動作させるための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
例示的な実施形態の詳細な説明
図面で用いる参照符号およびそれらの意味は、参照符号の一覧に要約の形態で列挙される。原則的に、同一の部分には図中同じ参照符号を付与する。
【0043】
図1は、入力12で電気回路網14に接続され、出力16で1つ以上の負荷18に接続される電源システム10を示す。電源システム10は、たとえば列車または鉄道用途のための無停電保護システムの一部であり得る。電気回路網14は、(単相)16 2/3 Hz列車回路網であってもよく、または(三相)230V/50/60Hz回路網であってもよい。
【0044】
電源システム10は、入力12で電気回路網14に並列に接続される複数の等しく設計された電源モジュール20を備える。明瞭さのため、第1の電源モジュール20のみに参照番号を付与する。しかしながら、すべての電源モジュールは等しい構成要素を備えてもよい。
【0045】
各々の電源モジュール20は、入力12と出力16との間に直列に接続される整流器22、DCリンク24、およびインバータ26を備える。整流器22およびインバータ26は、以下に記載の図3に示されるように設計されてもよい。分割DCリンクは、正の電位DC+と負の電位DC−との間に直列に接続され、中性点電位Nを与える中点を有する2つのキャパシタ28を備える。
【0046】
さらに、各々の電源モジュール20は、共通の電気エネルギ貯蔵部30とDCリンク24との間、1つのDCリンク24の上側キャパシタ28と下側キャパシタ28との間、および異なる電源モジュール20のDCリンク24同士の間でエネルギを転送するためのエネルギコンバータ32を備える。
【0047】
共通の電気エネルギ貯蔵部30は、電気エネルギ貯蔵部30に並列に接続されるエネルギコンバータ32に接続される2つの入力34、36を有する鉛蓄電池を備えてもよい。
【0048】
加えて、電源システム10は、すべての電源モジュール20、特に、整流器22、インバータ26、およびエネルギコンバータ32、を制御するように適合されるコントローラ38を備える。コントローラ38は、システム10全体にわたる電流および電圧センサからセンサ入力を受けてもよく、システム10中のすべての電圧および電流がそれらから導出されてもよい。これらの電圧および電流はコントローラ38の制御によって調節され得る。
【0049】
図1に示されるように、コントローラ38は集中コントローラであってもよい。代替的に、コントローラ38は電源モジュール20間に分散されてもよい。
【0050】
図2は、DCリンク24の正の電位DC+、中性点電位N、および負の電位に一方側で接続され、別の側で電気エネルギ貯蔵部30の入力に接続されるエネルギコンバータ32の詳細を示す。
【0051】
中性点電位Nは電気エネルギ貯蔵部の負の入力36に直接に接続されることに留意しなければならない。このように、すべての電源モジュール20のすべての中性点電位Nが直接に接続される。
【0052】
エネルギコンバータ32は、電気エネルギ貯蔵部を充放電させるための第1の降圧/昇圧コンバータ40を備え、これは、コントローラ38によって切換えられる直列に接続された2つの半導体スイッチ(トランジスタ)44を有するハーフブリッジ42を備える。ダイオード46は各々の半導体スイッチ44に並列に接続される。インダクタ48が2つの半導体スイッチ44の間の中点50に接続される。ハーフブリッジ42は、一方端で電気エネルギ貯蔵部30の正の入力34と接続される第1の出力52と、さらなる端で中性点電位Nと接続される第2の出力54とを設ける。コンバータ40の第3の出力56は、DCリンク24の正の電位DC+と接続されるインダクタ48によって設けられる。
【0053】
代替的に、出力52が正の電位DC+に接続され、出力56が電気エネルギ貯蔵部の入力34に接続されることが可能である。さらなる代替例として、第1のコンバータは負の電位DC−に(出力54または出力56によって)接続されてもよい。
【0054】
エネルギコンバータ32は、DCリンク24のキャパシタ28同士の間、および異なるDCリンク24同士の間でエネルギをバランスさせるための第2の降圧/昇圧コンバータ60を備える。第2のコンバータ60は、第1のコンバータ40と同じ構成要素を備える。第2のコンバータは、コントローラ38によって切換えられる、直列に接続される2つの半導体スイッチ(トランジスタ)64を有するハーフブリッジ62を備える。ダイオード66は各々の半導体スイッチ64に並列に接続される。インダクタ68が2つの半導体スイッチ64の間の中点70に接続される。ハーフブリッジ62は、一方端で正の電位DC+に接続される第1の出力72と、さらなる端で負の電位DC−に接続される第2の出力74とを設ける。コンバータ60の第3の出力76は、中性点電位Nと接続されるインダクタ68によって設けられる。
【0055】
図3は、電源モジュール20のコンバータ22、26の可能なトポロジーを示す。コンバータ22、26は、コンバータ40、60と同様に設計されてもよい。コントローラ38によって切換えられる、直列に接続される2つの半導体スイッチ(トランジスタ)84を有するハーフブリッジ82は正の電位DC+と負の電位DC−とを相互接続してもよい。ダイオード86は各々の半導体スイッチ84に並列に接続される。インダクタ88は2つの半導体スイッチ84の間の中点に接続される。インダクタ88の他方端は電源モジュール20の入力12または出力16を設ける。
【0056】
図4は、コントローラ38によって行なわれる、電源システム10を動作させるための方法を示す。
【0057】
ステップ100で、コントローラは、電気エネルギ貯蔵部が充電される必要があること、および電気回路網14が立上がっていることを検出する。これは、たとえば、電源システム10の起動の後または電気回路網14の停電の後の場合であり得る。コントローラ38は、電源システム10の少なくとも1つの電源モジュール20のDCリンク24から電気エネルギ貯蔵部30を充電する。これを達成するため、双方向降圧/昇圧コンバータ40のスイッチ44は、DCリンク24からのエネルギが電気エネルギ貯蔵部30に転送されるように切換えられる。さらに、コンバータ60は、電気回路網14からの電流が実質的にバランスされ、かつ実質的にDC成分を有しないように、両方のDCリンクから電気エネルギ貯蔵部30に転送されたエネルギをバランスさせてもよい。
【0058】
ステップ102で、コントローラ38は、DCリンク24が電気エネルギ貯蔵部30からエネルギを供給する必要があることを検出する。たとえば、これは、電気回路網14が停電した場合であり得る。この場合、コントローラ38は、DCリンク24に向けて双方向降圧/昇圧コンバータ40を介して電気エネルギ貯蔵部30を放電させる。これを達成するため、双方向降圧/昇圧コンバータ40のスイッチ44は、電気エネルギ貯蔵部30からのエネルギがDCリンク24に転送されるように切換えられる。
【0059】
ステップ104で、コントローラ38は、DCリンクキャパシタ28中に貯蔵される電気エネルギをバランスさせる。これは、電気エネルギ貯蔵部30の放電の間に行なわれてもよい。コントローラ38は、上側キャパシタからのエネルギが下側のキャパシタ28に転送されるように、さらなる降圧/昇圧コンバータ60のスイッチ64を動作させる。
【0060】
ステップ106で、コントローラ38は、電源モジュール20のDCリンク24同士の間のエネルギ分布がバランスしていないことを検出する。コントローラは、スイッチ64を対応して切換えることによって、降圧/昇圧コンバータ60を介した電源システム10の少なくとも1つの電源モジュール20の少なくとも2つのDCリンク24間の電気エネルギをバランスさせる。
【0061】
図面および以上の説明において発明を詳細に図示し、記載したが、そのような図示および説明は制限的ではなく例示または図示と考えられるべきである。発明は開示される実施形態に限定されるものではない。図面、開示、および添付の請求項を検討することから請求される発明を実践する当業者によって、開示される実施形態に対する他の変形例が理解され、実行され得る。請求項で、「備える」という語は他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を排除するものではない。単一のプロセッサまたはコントローラまたは他のユニットが請求項に記載されるいくつかの項目の機能を果たしてもよい。ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に用いることができないことを示すものではない。請求項中のいずれの参照符号も範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【符号の説明】
【0062】
10 電源システム、12 入力、14 電気回路網、16 出力、18 負荷、20 電源モジュール、24 DCリンク、26 インバータ、30 電気エネルギ貯蔵部、32 コンバータ、38 コントローラ、40、60 降圧/昇圧コンバータ、62 ハーフブリッジ、44、64 半導体スイッチ、46、66 ダイオード、48、68 インダクタ、50 中点、52、54、56 出力。
図1
図2
図3
図4