(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
保護フィルムの少なくとも一方の面側に粘着剤層を有するキャリアフィルムと、前記粘着剤層を介して剥離可能に積層した透明導電性フィルムと、を含む透明導電性フィルム積層体であって、
前記透明導電性フィルムは、透明樹脂フィルムと、透明導電膜とを有し、
前記透明樹脂フィルムは、非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり、
前記透明樹脂フィルムの厚みは、20〜150μmであり、
前記キャリアフィルムは、前記透明導電性フィルムの透明導電膜とは他方の面側に積層されており、
前記保護フィルムは、前記透明樹脂フィルムを形成する非晶性シクロオレフィン系樹脂とは異なる非晶性樹脂で形成されており、
前記保護フィルムの非晶性樹脂のガラス転移温度が130℃以上であり、
前記保護フィルムの厚みは、20〜150μmであり、
前記透明導電性フィルム積層体を20cm×20cmにカットし、透明導電膜を上面にし130℃で90分間加熱した後の中央部のカール値Aと4隅部の平均カール値Bとの差(A−B)が、5〜50mmである透明導電性フィルム積層体。
前記透明樹脂フィルムの非晶性シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度が130℃以上であり、前記透明樹脂フィルムの一方の第1主面側に設けられた第1の硬化樹脂層と、前記透明樹脂フィルムの前記第1主面と反対側の第2主面側に設けられた第2の硬化樹脂層とを有する請求項1に記載の透明導電性フィルム積層体。
前記透明樹脂フィルムの非晶性シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度aと、前記保護フィルムの非晶性樹脂のガラス転移温度bとの差(a−b)の絶対値が、5℃以上である請求項1又は2に記載の透明導電性フィルム積層体。
前記透明樹脂フィルムの非晶性シクロオレフィン系樹脂と、前記保護フィルムの非晶性樹脂とは、互いに構成単位が異なる樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム積層体。
請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム積層体の透明導電性フィルムを加熱加工する工程と、透明導電性フィルムとキャリアフィルムとを剥離する工程と、を含む加工された透明導電性フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の透明導電性フィルム積層体の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大または縮小等して図示した部分がある。上下等の位置関係を示す用語は、単に説明を容易にするために用いられており、本発明の構成を限定する意図は一切ない。
【0021】
<積層体の構造>
図1は、本発明の透明導電性フィルム積層体の一実施形態を模式的に示す断面図である。透明導電性フィルム積層体は、保護フィルム1の少なくとも一方の面側に粘着剤層2を有するキャリアフィルム10と、粘着剤層2を介して剥離可能に積層した透明導電性フィルム20とを含む。透明導電性フィルム20は、透明樹脂フィルム4と、透明導電膜6とを有し、更に、透明樹脂フィルム4の一方の第1主面S1側に設けられた第1の硬化樹脂層5と、透明樹脂フィルム4の第1主面S1と反対側の第2主面S2側に設けられた第2の硬化樹脂層3とを有することが好ましい。第1の硬化樹脂層5と第2の硬化樹脂層3とは、アンチブロッキング層やハードコート層として機能するものを含む。なお、キャリアフィルム10は、透明導電性フィルム20の第2主面S2側に積層されている。
【0022】
(透明樹脂フィルム)
透明樹脂フィルムは、非晶性シクロオレフィン系樹脂により形成されており、高透明性及び低吸水性の特性を有する。非晶性シクロオレフィン系樹脂の採用により透明導電性フィルム積層体に用いられる透明導電性フィルムの光学特性の制御が可能となる。
【0023】
非晶性シクロオレフィン系樹脂を形成するシクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。透明樹脂フィルムに用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)又はシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであってもよい。シクロオレフィンコポリマーとは、環状オレフィンとエチレン等のオレフィンとの共重合体である非結晶性の環状オレフィン系樹脂のことをいう。
【0024】
上記環状オレフィンとしては、多環式の環状オレフィンと単環式の環状オレフィンとが存在している。かかる多環式の環状オレフィンとしては、ノルボルネン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブチルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン、ジメチルシクロテトラドデセン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエンなどが挙げられる。また、単環式の環状オレフィンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロドデカトリエンなどが挙げられる。
【0025】
シクロオレフィン系樹脂は、市販品としても入手可能であり、例えば、日本ゼオン社製「ZEONOR」、JSR社製「ARTON」、ポリプラスチック社製「TOPAS」、三井化学社製「APEL」などが挙げられる。
【0026】
透明樹脂フィルムには、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、透明樹脂フィルム上に形成される硬化樹脂層や透明導電膜等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、硬化樹脂層や透明導電膜を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、透明樹脂フィルム表面を除塵、清浄化してもよい。
【0027】
透明樹脂フィルムの厚みは、20〜150μmの範囲内であることが好ましく、30〜100μmの範囲内であることがより好ましく、40〜80μmの範囲内であることが更に好ましい。透明樹脂フィルムの厚みが上記範囲の下限未満であると、機械的強度が不足し、フィルム基材をロール状にして透明導電膜を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが上記範囲の上限を超えると、透明導電膜の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れない場合がある。
【0028】
上記透明樹脂フィルムの非晶性シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、130℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましく、180℃以上が更に好ましい。これにより、乾燥等の加熱工程後におけるカールの発生量や向きが制御できるため、透明導電性フィルム積層体の加工搬送が容易となる。
【0029】
透明樹脂フィルムを形成する樹脂フィルム原反(硬化樹脂層を積層する前の、加熱処理等を施す前のフィルム)の130℃で90分間加熱した際のMD方向及びTD方向の熱収縮率は、0.3%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。これにより、加工性、透明性等に優れた透明導電性フィルムとなり、乾燥等の加熱工程後におけるカールの発生量や向きが制御できるため、透明導電性フィルム積層体の加工搬送が容易となる。
【0030】
上記透明樹脂フィルムは、面内方向の位相差(R0)が0nm〜10nmmの低位相差のフィルムや面内方向の位相差が80nm〜150nm程度のλ/4フィルムとすることが容易で、偏光板とともに使用される場合においては、視認性を良好にすることが可能となる。なお、面内位相差(R0)は、23℃において波長589nmの光で測定した位相差フィルム(層)面内の位相差値をいう。
【0031】
(硬化樹脂層)
硬化樹脂層は、透明樹脂フィルムの一方の第1主面側に設けられた第1の硬化樹脂層と、反対側の第2主面側に設けられた第2の硬化樹脂層とを含む。シクロオレフィン系樹脂で形成された透明樹脂フィルムは、透明導電膜の形成や透明導電膜のパターン化または電子機器への搭載などの各工程で傷が入りやすいので、上記のように、透明樹脂フィルムの両面に第1の硬化樹脂層と第2の硬化樹脂層とを形成することが好ましい。
【0032】
硬化樹脂層は、硬化型樹脂を硬化させることにより得られた層である。用いる樹脂としては、硬化樹脂層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できるが、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられる。これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく硬化樹脂層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0033】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂であり、より好ましくはアクリル系樹脂である。
【0034】
硬化樹脂層は粒子を含んでいてもよい。硬化樹脂層に粒子を配合することにより、硬化樹脂層の表面に隆起を形成することができ、透明導電性フィルムに耐ブロッキング性を好適に付与することができる。
【0035】
上記粒子としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスチックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム等の無機系粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系粒子やシリコーン系粒子などがあげられる。前記粒子は、1種または2種以上を適宜に選択して用いることができるが、有機系粒子が好ましい。有機系粒子としては、屈折率の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
【0036】
粒子の最頻粒子径は、硬化樹脂層の隆起の突出度や隆起以外の平坦領域の厚みとの関係などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。なお、透明導電性フィルムに耐ブロッキング性を十分に付与し、かつヘイズの上昇を十分に抑制するという観点から、粒子の最頻粒子径は0.1〜3μmが好ましく、0.5〜2.5μmがより好ましい。なお、本明細書において、「最頻粒子径」とは、粒子分布の極大値を示す粒径をいい、フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製、製品名「FPTA−3000S」)を用いて、所定条件下(Sheath液:酢酸エチル、測定モード:HPF測定、測定方式:トータルカウント)で測定することによって求められる。測定試料は、粒子を酢酸エチルで1.0重量%に希釈し、超音波洗浄機を用いて均一に分散させたものを用いる。
【0037】
粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分100重量部に対して0.05〜1.0重量部であることが好ましく、0.1〜0.5重量部であることがより好ましく、0.1〜0.2重量部であることがさらに好ましい。硬化樹脂層中の粒子の含有量が小さいと、硬化樹脂層の表面に耐ブロッキング性や易滑性を付与するのに十分な隆起が形成され難くなる傾向がある。一方、粒子の含有量が大きすぎると、粒子による光散乱に起因して透明導電性フィルムのヘイズが高くなり、視認性が低下する傾向がある。また、粒子の含有量が大きすぎると、硬化樹脂層の形成時(溶液の塗布時)に、スジが発生し、視認性が損なわれたり、透明導電膜の電気特性が不均一となったりする場合がある。
【0038】
硬化樹脂層は、各硬化型樹脂と必要に応じて加える粒子、架橋剤、開始剤、増感剤などを含む樹脂組成物を透明樹脂フィルム上に塗布し、樹脂組成物が溶剤を含む場合には、溶剤の乾燥を行い、熱、活性エネルギー線またはその両方のいずれかの適用により硬化させることにより得られる。熱は空気循環式オーブンやIRヒーターなど公知の手段を用いることができるがこれらの方法に限定されない。活性エネルギー線の例としては紫外線、電子線、ガンマ線などがあるが特に限定されない。
【0039】
硬化樹脂層は、上記の材料を用いて、ウェットコーティング法(塗工法)等により製膜できる。例えば、透明導電膜として酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)を形成する場合、下地層である硬化樹脂層の表面が平滑であると、透明導電膜の結晶化時間を短縮することもできる。かかる観点から、硬化樹脂層はウェットコーティング法により製膜されることが好ましい。
【0040】
硬化樹脂層の厚みは、好ましくは0.5μm〜5μmであり、より好ましくは0.7μm〜3μmであり、最も好ましくは0.8μm〜2μmである。硬化樹脂層の厚みが前記範囲にあると、傷付防止や硬化樹脂層の硬化収縮におけるフィルムシワを防止でき、タッチパネル等の視認性が悪化することを防ぐことができる。
【0041】
(透明導電膜)
透明導電膜は、透明樹脂フィルム上に設けることができるが、透明樹脂フィルムの一方の第1主面側に設けられた第1の硬化樹脂層上に設けられることが好ましい。透明導電膜の構成材料は、無機物を含む限り特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が好適に用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)などが好ましく用いられる。
【0042】
透明導電膜の厚みは、特に制限されないが、その表面抵抗を1×10
3Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚みを10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。透明導電膜の厚みが、10nm未満であると膜表面の電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、透明導電膜の厚みが、35nmを超えると透明性の低下などをきたす場合がある。
【0043】
透明導電膜の形成方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスを例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。なお、第1の硬化樹脂層上に透明導電膜を形成する場合、透明導電膜がスパッタリング法等のドライプロセスによって形成されれば、透明導電膜の表面は、その下地層である第1の硬化樹脂層表面形状をほぼ維持する。そのため、第1の硬化樹脂層に隆起が存在する場合には、透明導電膜表面にも耐ブロッキング性及び易滑性を好適に付与することができる。
【0044】
透明導電膜は、必要に応じて加熱アニール処理(例えば、大気雰囲気下、80〜150℃で30〜90分間程度)を施して結晶化することができる。透明導電膜を結晶化することで、透明導電膜が低抵抗化されることに加えて、透明性及び耐久性が向上する。非晶質の透明導電膜を結晶質に転化させる手段は、特に限定されないが、空気循環式オーブンやIRヒーターなどが用いられる。
【0045】
「結晶質」の定義については、透明樹脂フィルム上に透明導電膜が形成された透明導電性フィルムを、20℃、濃度5重量%の塩酸に15分間浸漬した後、水洗・乾燥し、15mm間の端子間抵抗をテスタにて測定を行い、端子間抵抗が10kΩを超えない場合、ITO膜の結晶質への転化が完了したものとする。
【0046】
また、透明導電膜は、エッチング等によりパターン化してもよい。透明導電膜のパターン化に関しては、従来公知のフォトリソグラフィの技術を用いて行うことができる。エッチング液としては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液があげられる。例えば、静電容量方式のタッチパネルやマトリックス式の抵抗膜方式のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルムにおいては、透明導電膜がストライプ状にパターン化されることが好ましい。なお、エッチングにより透明導電膜をパターン化する場合、先に透明導電膜の結晶化を行うと、エッチングによるパターン化が困難となる場合がある。そのため、透明導電膜のアニール処理は、透明導電膜をパターン化した後に行うことが好ましい。
【0047】
透明導電膜は、後述のキャリアフィルムを積層する際に非晶質であっても結晶質であってもよいが、本発明の透明導電性フィルム積層体を用いると、透明導電膜が非晶質の状態の透明導電性フィルムに粘着剤層を介して保護フィルムを貼り合せた後に、アニール処理をして結晶質に転化したとしても、透明導電性フィルム積層体のカール発生を制御できる。
【0048】
(金属ナノワイヤ)
前記透明導電膜は、金属ナノワイヤを含むことができる。金属ナノワイヤとは、材質が金属であり、形状が針状または糸状であり、径がナノメートルサイズの導電性物質をいう。金属ナノワイヤは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。金属ナノワイヤで構成された透明導電層を用いれば、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、少量の金属ナノワイヤであっても良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい透明導電性フィルムを得ることができる。さらに、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、網の目の隙間に開口部を形成して、光透過率の高い透明導電性フィルムを得ることができる。
【0049】
前記金属ナノワイヤを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いられ得る。前記金属ナノワイヤを構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル等が挙げられる。また、これらの金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。なかでも好ましくは、導電性の観点から、銀、銅または金であり、より好ましくは銀である。
【0050】
<透明導電性フィルム>
透明導電性フィルムは、透明樹脂フィルムと、透明導電膜とを有する。透明導電性フィルムにおいて、130℃で90分間加熱した際のMD方向及びTD方向の熱収縮率は、0.3%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。これにより、加工性、透明性等に優れた透明導電性フィルムとなり、乾燥等の加熱工程後におけるカールの発生量や向きが制御できるため、透明導電性フィルム積層体の加工搬送が容易となる。
【0051】
(光学調整層)
第1の硬化樹脂層と透明導電膜との間に、1層以上の光学調整層をさらに含むことができる。光学調整層は、透明導電性フィルムの透過率の上昇や、透明導電膜がパターン化される場合には、パターンが残るパターン部とパターンが残らない開口部の間で透過率差や反射率差を低減でき、視認性に優れた透明導電性フィルムを得るために用いられる。
【0052】
光学調整層は、無機物、有機物、あるいは無機物と有機物との混合物により形成される。光学調整層を形成する材料としては、NaF、Na
3AlF
6、LiF、MgF
2、CaF
2、SiO
2、LaF
3、CeF
3、Al
2O
3、TiO
2、Ta
2O
5、ZrO
2、ZnO、ZnS、SiO
x(xは1.5以上2未満)などの無機物や、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマーなどの有機物が挙げられる。特に、有機物として、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用することが好ましい。光学調整層は、上記の材料を用いて、ウエット法、グラビアコート法やバーコート法などの塗工法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより形成できる。
【0053】
光学調整層は、平均粒径が1nm〜500nmのナノ微粒子を有していてもよい。光学調整層中のナノ微粒子の含有量は0.1重量%〜90重量%であることが好ましい。光学調整層に用いられるナノ微粒子の平均粒径は、上述のように1nm〜500nmの範囲であることが好ましく、5nm〜300nmであることがより好ましい。また、光学調整層中のナノ微粒子の含有量は10重量%〜80重量%であることがより好ましく、20重量%〜70重量%であることがさらに好ましい。光学調整層中にナノ微粒子を含有することによって、光学調整層自体の屈折率の調整を容易に行うことができる。
【0054】
ナノ微粒子を形成する無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、中空ナノシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化ニオブの微粒子が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
光学調整層の厚みは、10nm〜200nmであることが好ましく、20nm〜150nmであることがより好ましく、30nm〜130nmであることがさらに好ましい。光学調整層の厚みが過度に小さいと連続被膜となりにくい。また、光学調整層の厚みが過度に大きいと、透明導電性フィルムの透明性が低下したり、クラックが生じ易くなったりする傾向がある。
【0056】
(金属配線)
金属配線は、金属層を透明導電膜上に形成した後、エッチングにより形成することも可能であるが、以下のように感光性金属ペーストを用いて形成するのが好ましい。即ち、金属配線は、透明導電膜がパターン化された後に、後述の感光性導電ペーストを前記透明樹脂フィルム上または前記透明導電膜上に塗布し、感光性金属ペースト層を形成し、フォトマスクを積層または近接させフォトマスクを介して感光性金属ペースト層に露光を行い、次いで現像を行い、パターン形成した後、乾燥工程を経て得られる。つまり、公知のフォトリソグラフィ法等により、金属配線のパターン形成が可能である。
【0057】
前記感光性導電ペーストは、金属粉末などの導電性粒子と感光性有機成分とを含むことが好ましい。金属粉末の導電性粒子の材料としては、Ag、Au、Pd、Ni、Cu、AlおよびPtの群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましく、より好ましくはAgである。金属粉末の導電性粒子の体積平均粒子径は0.1μm〜2.5μmであることが好ましい。
【0058】
金属粉末以外の導電性粒子としては、樹脂粒子表面を金属で被覆した金属被覆樹脂粒子でもよい。樹脂粒子の材料としては、前述のような粒子が含まれるが、アクリル系樹脂が好ましい。金属被覆樹脂粒子は樹脂粒子の表面にシランカップリング剤を反応させ、さらにその表面に金属で被覆することにより得られる。シランカップリング剤を用いることにより、樹脂成分の分散が安定化して、均一な金属被覆樹脂粒子を形成することができる。
【0059】
感光性導電ペーストはさらにガラスフリットを含んでいてもよい。ガラスフリットは、体積平均粒子径が0.1μm〜1.4μmであることが好ましく、90%粒子径が1〜2μmおよびトップサイズが4.5μm以下であることが好ましい。ガラスフリットの組成としては、特に限定されないが、Bi
2O
3が全体に対して30重量%〜70重量%の範囲で配合されることが好ましい。Bi
2O
3以外に含んでいてよい酸化物としては、SiO
2、B
2O
3、ZrO
2、Al
2O
3を含んでよい。Na
2O、K
2O、Li
2Oは実質的に含まないアルカリフリーのガラスフリットであることが好ましい。
【0060】
感光性有機成分は、感光性ポリマーおよび/または感光性モノマーを含むことが好ましい。感光性ポリマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の炭素−炭素二重結合有する化合物から選択された成分の重合体やこれらの共重合体からなるアクリル樹脂の側鎖または分子末端に光反応性基を付加したもの等が好適に用いられる。好ましい光反応性基としてはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などのエチレン性不飽和基が挙げられる。感光性ポリマーの含有量は、1〜30重量%、2〜30重量%であることが好ましい。
【0061】
感光性モノマーとしては、メタクリルアクリレート、エチルアクリレートなどの(メタ)アクリレート系モノマーや、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられ、1種または2種以上を使用することができる。
【0062】
感光性導電ペーストにおいては、感光性有機成分が金属粉末100重量部に対して、5〜40重量%含むことが光の感度の点で好ましく、より好ましくは10重量部〜30重量部である。また、本発明の感光性導電ペーストは必要により光重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、有機溶媒を用いることが好ましい。
【0063】
金属層の厚みは、特に制限されない。例えば、金属層の面内の一部をエッチング等により除去してパターン配線を形成する場合は、形成後のパターン配線が所望の抵抗値を有するように金属層の厚みが適宜に設定される。そのため、金属層の厚みは、0.01〜200μmであることが好ましく、0.05〜100μmであることがより好ましい。金属層の厚みが上記範囲であると、パターン配線の抵抗が高くなりすぎず、デバイスの消費電力が大きくならない。また、金属層の成膜の生産効率が上がり、成膜時の積算熱量が小さくなり、フィルムに熱シワが生じにくくなる。
【0064】
透明導電性フィルムがディスプレイと組合せて使用するタッチパネル用の透明導電性フィルムである場合、表示部分に対応した部分はパターン化された透明導電膜により形成され、感光性導電ペーストから作製された金属配線は非表示部(例えば周縁部)の配線部分に用いられる。透明導電膜は非表示部でも用いられてよく、その場合は金属配線が透明導電膜上に形成されていてもよい。
【0065】
<キャリアフィルム>
キャリアフィルムは、保護フィルムの少なくとも一方の面側に粘着剤層を有する。キャリアフィルムは、粘着剤層を介して剥離可能な透明導電性フィルムと、透明導電性フィルムの第2主面側を貼りあわせて、透明導電性フィルム積層体を形成する。キャリアフィルムを透明導電性フィルム積層体から剥離する際は、粘着剤層は保護フィルムとともに剥離されてもよいし、保護フィルムのみが剥離されてもよい。
【0066】
(保護フィルム)
保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。カールの発生量と向きを制御する観点から、前記透明樹脂フィルムを形成する非晶性シクロオレフィン系樹脂とは異なる非晶性樹脂で形成されていることが好ましい。さらに、透明樹脂フィルムの非晶性シクロオレフィン系樹脂と、前記保護フィルムの非晶性樹脂とは、互いに構成単位が異なる樹脂であることが好ましい。ここで、「異なる」の定義は、互いに構成単位が異なる樹脂であることをいうが、互いに構成単位が同じ樹脂であっても、重量平均分子量等が異なれば、異なる樹脂である。
【0067】
非晶性樹脂としては、前述したシクロオレフィン系樹脂やポリカーボネート系樹脂などがあげられる。優れた光透過性、耐傷性、耐水性を持ち、良好な機械的性質の観点から、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。ポリカーボネート系樹脂には、例えば、脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。具体的には、例えば、ビスフェノールAポリカーボネート、分岐ビスフェノールAポリカーボネート、発砲ポリカーボネート、コポリカーボネート、ブロックコポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリホスホネートカーボネートなどが挙げられる。ポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノールAポリカーボネートブレンド、ポリエステルブレンド、ABSブレンド、ポリオレフィンブレンド、スチレン―無水マレイン酸共重合体ブレンドのような他成分とブレンドしたものも含まれる。ポリカーボネート樹脂の市販品としては、恵和社製「オプコン」、帝人社製「パンライト」等が挙げられる。
【0068】
前記ポリカーボネート系樹脂の重量平均分子量は、ガラス転移温度を制御する観点から、1.5×10
4〜3.5×10
4が好ましく、2×10
4〜3×10
4がより好ましい。
【0069】
保護フィルムは、透明樹脂フィルムと同様に、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、保護フィルム上の粘着剤層等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、粘着剤層を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、保護フィルム表面を除塵、清浄化してもよい。
【0070】
保護フィルムの厚みは、カール発生量や向きを制御して作業性等を向上する観点から、20〜150μmが好ましく、30〜100μmがより好ましく、40〜80μmが更に好ましい。
【0071】
保護フィルムの非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、130℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましい。これにより、乾燥等の加熱工程後におけるカールの発生量や向きが制御できるため、透明導電性フィルム積層体の搬送が容易となる。
【0072】
前述した透明樹脂フィルムの非晶性シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度aと、前記保護フィルムの非晶性樹脂のガラス転移温度bとの差(a−b)の絶対値が、5℃以上であることが好ましく、7℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることが更に好ましい。これにより、カール発生量や向きを制御して作業性等を向上することができる。また、同一の構成単位の場合には、透明樹脂フィルムの非晶性シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度aの方が前記保護フィルムの非晶性樹脂のガラス転移温度bよりも高い方が好ましい。これにより、カール発生量や向きを制御して作業性等をより向上することができる。
【0073】
保護フィルムにおいて、130℃で90分間加熱した際のMD方向及びTD方向の熱収縮率は、0.3%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。これにより、加工性、透明性等に優れた保護フィルムとなり、乾燥等の加熱工程後におけるカールの発生量や向きが制御できるため、透明導電性フィルム積層体の搬送が容易となる。
【0074】
(粘着剤層)
粘着剤層としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0075】
粘着剤層の形成方法は特に制限されず、剥離ライナーに粘着剤組成物を塗布し、乾燥後、基材フィルムに転写する方法(転写法)、保護フィルムに、直接、粘着剤組成物を塗布、乾燥する方法(直写法)や共押出しによる方法等があげられる。なお粘着剤には、必要に応じて粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を適宜に使用することもできる。粘着剤層の好ましい厚みは5μm〜100μmであり、より好ましくは10μm〜50μmであり、より好ましくは15μmから35μmである。
【0076】
<透明導電性フィルム積層体>
透明導電性フィルム積層体は、保護フィルムの少なくとも一方の面側に粘着剤層を有するキャリアフィルムと、前記粘着剤層を介して剥離可能に積層した透明導電性フィルムと、を含む。なお、キャリアフィルムは、透明導電性フィルムの透明導電膜とは他方の面側に積層されている。
【0077】
透明導電性フィルム積層体は、透明導電性フィルム積層体を20cm×20cmにカットし、透明導電膜を上面にし130℃で90分間加熱した後の中央部のカール値Aと4隅部の平均カール値Bとの差(A−B)が、0〜50mmであることが好ましく、5〜45mmであることがより好ましく、10〜40mmであることがより好ましい。これにより、乾燥等の加熱工程後におけるカールの発生量や向きが制御できるため、透明導電性フィルム積層体の搬送が容易となる。
【0078】
<タッチパネル>
透明導電性フィルム積層体からキャリアフィルム又は保護フィルムを剥離した透明導電性フィルムは、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルなどの電子機器の透明電極として好適に適用できる。
【0079】
タッチパネルの形成に際しては、前述した透明導電性フィルムの一方または両方の主面に透明な粘着剤層を介して、ガラスや高分子フィルム等の他の基材等を貼り合わせることができる。例えば、透明導電性フィルムの透明導電膜が形成されていない側の面に透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わせられた積層体を形成してもよい。透明基体は、1枚の基体フィルムからなっていてもよく、2枚以上の基体フィルムの積層体(例えば透明な粘着剤層を介して積層したもの)であってもよい。また、透明導電性フィルムに貼り合わせる透明基体の外表面にハードコート層を設けることもできる。透明導電性フィルムと基材との貼り合わせに用いられる粘着剤層としては、前述の通り、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。
【0080】
上記の透明導電性フィルムをタッチパネルの形成に用いた場合、乾燥等の加熱工程後におけるカールの発生量や向きが制御できるため、透明導電性フィルム積層体の搬送が容易となり、タッチパネル形成時のハンドリング性に優れる。そのため、透明性及び視認性に優れたタッチパネルを生産性高く製造することが可能である。タッチパネル用途以外であれば、電子機器から発せられる電磁波やノイズをシールドするシールド用途に用いることができる。
【0081】
<加工された透明導電性フィルムの製造方法>
本発明の透明導電性フィルム積層体の製造方法は、透明樹脂フィルムに透明導電膜が形成された透明導電性フィルムを準備する工程と、透明導電性フィルムの透明導電膜とは他方の面側に粘着剤層を介して保護フィルムを積層する工程と、を含む。本発明の加工された透明導電性フィルムの製造方法は、前記透明導電性フィルム積層体の透明導電性フィルムを加熱加工する工程と、透明導電性フィルムとキャリアフィルムとを剥離する工程と、を含む。加熱加工する工程として、前記透明導電膜を結晶化する工程を含むことが好ましい。加熱加工する工程として、感光性金属ペースト層により形成した金属配線を乾燥する工程とを含むことが好ましい。
【0082】
透明導電性フィルムを準備する工程に用いられる透明導電性フィルムは、透明樹脂フィルム上に硬化樹脂層を形成し、次いで透明導電膜を形成してもよいし、透明樹脂フィルム上に硬化樹脂層が形成された透明樹脂積層体を入手して、次いで硬化樹脂層上に透明導電膜を形成してもよいし、透明樹脂フィルム上に硬化樹脂層および透明導電膜が形成された透明導電性フィルムを入手してもよい。上述の光学調整層に関してもあらかじめ形成された透明樹脂積層体を入手して用いてもよい。
【0083】
保護フィルムを積層する工程は、離型基材に粘着剤層を形成し、粘着剤層を保護フィルムに転写することによってキャリアフィルムを形成し、透明導電性フィルムの第2の硬化樹脂層の透明樹脂フィルムが形成されていない側に粘着剤層を介して保護フィルムを積層する。また、保護フィルムに直接粘着剤層を形成することも可能である。
【0084】
前記積層する工程後に、透明導電膜の構成成分を結晶化させるため、加熱する工程に投入する。この加熱温度は、例えば130℃以下の温度で行うことが好ましく、より好ましくは120℃以下で、処理時間は例えば15分から180分である。その後、透明導電膜をエッチングし、エッチングによりパターン部が形成する。
【0085】
本発明は、透明導電膜がパターン化された後に、前述の感光性導電ペーストを前記透明樹脂フィルム上または前記透明導電膜上に塗布し感光性金属ペースト層を形成し、フォトマスクを積層または近接させ該フォトマスクを介して感光性金属ペースト層に露光を行い、又はスクリーン印刷等で金属配線を得る工程を更に含むことが好ましい。
【0086】
感光性金属ペースト層により形成した金属配線を乾燥する工程での乾燥温度は、130℃以下の温度で行うことが好ましく、より好ましくは120℃以下であることが好ましい。
【0087】
透明導電膜を結晶化させるための加熱工程まではロールtoロール製法で処理されるが、その後のエッチング工程、金属配線工程は、フォトマスクや透明導電膜と金属配線のパターンニングの位置合わせ等があるため、枚葉工程で行う。その際、透明導電性フィルム及び透明導電性フィルム積層体等を位置合わせのために吸着板に固定する工程が必要であるが、上記温度範囲で乾燥してもカールの量や向きを制御することができるため、吸着板に固定する工程に搬送することが可能となる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明に関して実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
[実施例1]
(硬化樹脂層形成用の樹脂組成物の調製)
紫外線硬化性樹脂組成物(DIC社製 商品名「UNIDIC(登録商標)RS29−120」)を100重量部と、最頻粒子径が1.9μmであるアクリル系球状粒子(綜研化学社製 商品名「MX−180TA」)を0.2重量部とを含む、球状粒子入り硬化性樹脂組成物を準備した。
【0090】
(硬化樹脂層の形成)
準備した球状粒子入り硬化性樹脂組成物を厚みが50μmでガラス転移温度が165℃のポリシクロオレフィンフィルム(日本ゼオン製 商品名「ZEONOR(登録商標)」)の一方の面に塗布し、塗布層を形成した。次いで、塗布層が形成された側から塗布層に紫外線を照射して、厚みが1.0μmとなる様に第2の硬化樹脂層を形成した。ポリシクロオレフィンフィルムの他方の面に、上記とは球状粒子を添加しない以外は同様の方法で、厚みが1.0μmとなる様に第1の硬化樹脂層を形成した。
【0091】
(透明導電膜の形成)
次に、両面に硬化樹脂層が形成されたポリシクロオレフィンフィルムを、巻き取り式スパッタ装置に投入し、第1の硬化樹脂層の表面に、厚みが27nmの非晶質のインジウム・スズ酸化物層(組成:SnO
2 10wt%)を形成した。
【0092】
(キャリアフィルムの形成)
通常の溶液重合により、ブチルアクリレート/アクリル酸=100/6(重量比)にて重量平均分子量60万のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマー100重量部に対し、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学製 商品名「テトラッドC(登録商標)」)6重量部を加えてアクリル系粘着剤を準備した。離型処理されたPETフィルムの離型処理面上に前記のようにして得たアクリル系粘着剤を塗布し、120℃で60秒加熱して、厚み20μmの粘着剤層を形成した。次いで、厚みが75μmでガラス転移温度145℃のポリカーボネート樹脂フィルム(恵和製 商品名「オプコンPC」)の片面にPETフィルムを粘着剤層を介して貼りあわせた。その後、離型処理されたPETフィルムを剥がし、保護フィルムの一方の面に粘着剤層を有するキャリアフィルムを作製した。
【0093】
(透明導電性フィルム積層体の形成)
透明導電性フィルムの透明導電膜が形成されていない面側に、キャリアフィルムの粘着剤層を積層し、透明導電性フィルム積層体を形成した。
【0094】
[実施例2]
実施例1において、透明樹脂フィルムとしてガラス転移温度が136℃のポリシクロオレフィンフィルム(日本ゼオン製 商品名「ZEONOR(登録商標)」)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルム積層体を作製した。
【0095】
[実施例3]
実施例1において、保護フィルムとして厚みが50μmでガラス転移温度が136℃のポリシクロオレフィンフィルム(日本ゼオン製 商品名「ZEONOR(登録商標)」)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルム積層体を作製した。
【0096】
[比較例1]
実施例1において、保護フィルムとして厚みが50μmでガラス転移温度が70℃のPETフィルム(三菱樹脂製 商品名「ダイヤホイル」)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルム積層体を作製した。
【0097】
[比較例2]
実施例1において、保護フィルムとして厚みが188μmでガラス転移温度が70℃のPETフィルム(三菱樹脂製 商品名「ダイヤホイル」)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で透明導電性フィルム積層体を作製した。
【0098】
<評価>
(1)厚みの測定
厚みは、1μm以上の厚みを有するものに関しては、マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)にて測定を行った。また、1μm未満の厚みや光学調整層の厚み(100nm)は、瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製 MCPD2000)で測定した。ITO膜等の厚みのようにナノサイズの厚みは、FB−2000A(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて断面観察用サンプルを作製し、断面TEM観察はHF−2000(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて膜厚を測定した。評価した結果を表1に示す。
【0099】
(2)カール値の測定
実施例及び比較例で得られた透明導電性フィルム積層体を20cm×20cmサイズにカットした。ITO面が上になる状態で130℃、90分間の加熱した後、室温(23℃)にて1時間放冷した。その後、ITO層が上になる状態で水平な面上にサンプルを置き、中央部の水平面からの高さ(カール値A)を測定した。また、4隅部の水平面からの高さをそれぞれ測定し、その平均値(カール値B)を算出した。カール値Aからカール値Bを引いた値(A−B)をカール量として算出した。評価した結果を表1に示す。
【0100】
(3)MD方向とTD方向の熱収縮率
透明導電性フィルム及び保護フィルムの各フィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の熱収縮率を以下のように測定した。具体的には、透明導電性フィルム及び保護フィルムを、幅100mm、長さ100mmに切り取り(試験片)、4隅部にクロスでキズを付けクロスキズの中央部4点のMD方向とTD方向の加熱前の長さ(mm)をCNC三次元測定機(株式会社ミツトヨ社製 LEGEX774)により測定した。その後、オーブンに投入し、加熱処理(130℃、90分間)を行った。室温で1時間放冷後に再度、4隅部4点のMD方向とTD方向の加熱後の長さ(mm)をCNC三次元測定機により測定し、その測定値を下記式に代入することにより、MD方向とTD方向のそれぞれの熱収縮率を求めた。評価した結果を表1に示す。
熱収縮率(%)=[[加熱前の長さ(mm)−加熱後の長さ(mm)]/加熱前の長さ(mm)]×100
評価した結果を表1に示す。
【0101】
(4)表面抵抗値の測定
JIS K7194に準じて、4端子法により測定した。
【0102】
(5)ガラス転移温度(Tg)の測定
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して求めた。
【0103】
(6)重量平均分子量の測定
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定を行った。GPCの測定条件は、下記のとおりである。
【0104】
測定機器:東ソー製の商品名HLC−8120
GPCカラム:東ソー製の商品名G4000H
XL+商品名G2000H
XL+商品名G1000H
XL(各7.8mmφ×30cm、計90cm)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.8ml/分
入り口圧:6.6MPa
標準試料:ポリスチレン
【0105】
【表1】
【0106】
(結果及び考察)
実施例1〜3の透明導電性フィルム積層体では、カール発生の向きは透明導電膜を上にした場合凸方向であり、カール発生量が20〜35mmと制御できた。一方、比較例1の透明導電性フィルム積層体では、透明導電膜を上にした場合凹方向にフィルムが大きくカールして、4隅部のカール値を測定することはできなかった。比較例2の透明導電性フィルム積層体では、カール発生の向きは透明導電膜を上にした場合凹方向で、大きくカールが発生しており、端部が浮いてしまった。比較例1〜2のように、透明導電膜を上にした場合凹方向のカールとなると、吸着盤で吸着することができず加工することが困難である。