特許第6495685号(P6495685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コーセーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495685
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20190325BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20190325BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20190325BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20190325BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   A61K8/63
   A61K8/06
   A61K8/49
   A61K8/46
   A61Q19/00
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-39881(P2015-39881)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-160209(P2016-160209A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
【審査官】 進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−300105(JP,A)
【文献】 特開2009−286757(JP,A)
【文献】 特開2013−071920(JP,A)
【文献】 特開平11−228378(JP,A)
【文献】 特開2012−240962(JP,A)
【文献】 特開2003−286126(JP,A)
【文献】 特開2013−095712(JP,A)
【文献】 特開2012−001497(JP,A)
【文献】 特開2006−022051(JP,A)
【文献】 特開2004−262851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D)
(A)ニコチン酸アミド
(B)下記式(I)で表される長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤、
CO−a−(CH)nSO (I)
〔式(I)中、RCO−は平均炭素原子数10〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸残基(アシル基)を示し;aは−O−又は−NR−(ただし、Rは水素原子、又は炭素原子数1〜3のアルキル基を示す)を示し;Mは水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム又は有機アミン類を示し;nは1〜3の整数を示す。〕
(C)ステロール誘導体
(D)水
を含有し、組成物中の成分(A)と成分(C)の含有質量比(A)/(C)が0.5〜50である、水中油型乳化組成物。
【請求項2】
成分(A)が組成物の総質量に対して1〜10質量%である請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
成分(C)がステロールの脂肪酸、アシルアミノ酸、ダイマージリノール酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上とのエステル体である請求項1又は2記載の水中油型乳化組成物
【請求項4】
組成物中の成分(A)と成分(B)の含有質量比(A)/(B)が1〜50である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水中油型乳化組成物
【請求項5】
成分(E)として成分(C)以外の油剤を更に含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の水中油型乳化組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌のハリ・弾力を向上させ、かつ刺激感・べたつきがない使用感触に優れた水中油型乳化組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚は加齢やストレスなどの内的要因や、紫外線や空気の乾燥などの外的要因により、しみやシワ、たるみ、色素沈着等を生じる。中でもシワやたるみといった形態的変化は、外観の印象を大きく左右するため改善を望む人は多い。それらシワ・たるみを予防・改善するために多くの薬剤が提案されている。このような中でも、ニコチン酸アミドはビタミン類であって安全性が高く、皮膚老化防止効果を有することが知られている。(特許文献1)しかしながら例えばアトピー性皮膚炎等の特に感受性の高い皮膚に対しては刺激感を与える場合があり、高濃度で配合できない、という課題があった。(特許文献2)さらに、ニコチン酸アミドを多量に含有するとべたつきなど、望ましくない使用感触があることが知られており、この改善を行ってきた。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−130135号公報
【特許文献2】特開2006−22051号公報
【特許文献3】特表2003−502435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、刺激感を低減しようとした特許文献2の技術は、糖と水溶性の皮膜形成高分子を共に含有するため、よりべたつきが増し使用感触が悪いものであった。一方、べたつきを押さえようとした特許文献3はN−アセルチルグルコサミン及び酸性ムコ多糖を共に含有する技術であるが、効果は不十分であった。
【0005】
すなわち、ニコチン酸アミドを配合し、肌のハリ・弾力を向上させ、刺激感・べたつきがない使用感触に優れた化粧料は知られていない状況である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情を鑑み、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水中油型乳化組成物にステロール誘導体を含有することでニコチン酸アミドの刺激感を低減できることを見出した。また、長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤を用いて乳化することにより、ステロール誘導体とニコチン酸アミドのべたつきを抑えられることを見出した。
さらに驚くべきことに、これらを組み合わせることにより、ニコチン酸アミド単体を含有するときよりも肌のハリ・弾力が向上することを見出し、シワ・たるみといった老化の形態的変化を予防・改善することを見出して本発明を完成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水中油型乳化組成物は、肌のハリ・弾力を向上させ、シワ・たるみといった老化の形態的変化を予防・改善すると共に、刺激感・べたつきがない使用感触に優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。また、%で表記する数値は、特に記載した場合を除き、質量を基準にした値である。
【0009】
成分(A):ニコチン酸アミド
本発明における成分(A)ニコチン酸アミドは、ニコチン酸(ビタミンB3/ナイアシン)のアミドである。ニコチン酸アミドは水溶性ビタミンで、ビタミンB群の一つである公知の物質であり、天然物(米ぬかなど)から抽出されたり、あるいは公知の方法によって合成することができる。具体的には、第15改正日本薬局方2008に収載されているものを用いることが出来る。
【0010】
本発明において成分(A)の量は特に限定されないが、肌荒れや肌のハリ・弾力を向上させるためには0.1%以上が好ましく、1%以上が特に好ましい。経済性の観点からは10%以下が好ましく8%以下が特に好ましい。
【0011】
成分(B):長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤
本発明では成分(B)として下記式(I)で表される長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤が用いられる。
【0012】
1CO−a−(CH2)nSO31 (I)
上記式(I)中、R1CO−は平均炭素原子数10〜22の飽和または不飽和の脂肪酸
残基(アシル基)を表す。R1COとして、C1123CO、C1225CO、C1327CO、C1429CO、C1531CO、C1633CO、C1735CO、ココヤシ脂肪酸残基、パームヤシ脂肪酸残基等が例示される。なお、R1COは、安全性等の点から、その平均炭素原子数が12〜22のものがより好ましい。
【0013】
aは−O−または−NR−(ただし、Rは水素原子、または炭素原子数1〜3のアルキル基を示す)を表す。これらは電子供与性基である。aとしては、−O−、−NH−、−N(CH3)−が好ましい。
【0014】
1は水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウムまたは有機アミン類を表す。M1として、例えばリチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、タウリンナトリウム、N−メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0015】
nは1〜3の整数を表す。
【0016】
成分(B)として、上記式(I)中、aが−O−を示す化合物、すなわち長鎖アシルイセチオン酸塩型陰イオン性界面活性剤としては、ココイルイセチオン酸塩、ステアロイルイセチオン酸塩、ラウリルイセチオン酸塩、ミリストイルイセチオン酸塩等が例示される。
【0017】
上記式(I)中、aが−NH−を示す化合物、すなわち長鎖アシルタウリン塩型陰イオン性界面活性剤としては、N−ラウロイルタウリン塩、N−ココイル−N−エタノールタウリン塩、N−ミリストイルタウリン塩、N−ステアロイルタウリン塩等が例示される。
【0018】
上記式(I)中、aが−N(CH3)−を示す化合物、すなわち長鎖アシルメチルタウリン塩型陰イオン性界面活性剤としては、N−ラウロイル−N−メチルタウリン塩、N−パルミトイル−N−メチルタウリン塩、N−ステアロイル−N−メチルタウリン塩、N−ココイル−N−メチルタウリン塩等が例示される。
【0019】
本発明においては長鎖アシルメチルタウリン塩型陰イオン性界面活性剤が好ましく、中でも、N−ステアロイル−N−メチルタウリン塩が特に好ましい。
【0020】
本発明の成分(B)は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。成分(B)は市販のものを用いることも出来る。具体的には例えばニッコールLMT、ニッコールMMT、ニッコールPMT、ニッコールSMT、ニッコールCMT、(いずれも日本サーファクタント工業社製)などがあげられる。
【0021】
本発明に係る水中油型乳化組成物の成分(B)の含有量は特に規定されないが、0.01〜3質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましく、0.2〜1質量%が特に好ましい。この範囲であればべたつき低減防止効果とともに、水中油型乳化組成物の安定性にも優れている。
【0022】
成分(C):ステロール誘導体
本発明の成分(C)ステロール誘導体はステロール骨格を有する油剤を指す。ステロール骨格を有する誘導体で医薬品、化粧品に用いられるものであれば誘導体の種類は特に限定されないが、ステロールに存在する水酸基と各種の酸とのエステル体が好ましい。特に、脂肪酸、アシルアミノ酸、ダイマージリノール酸とのエステル体が好ましい。
【0023】
ステロール誘導体の中でステロール骨格を有する「ステロール」としては、カンペステロール、カンペスタノール、ブラシカステロール、22−デヒドロカンペステロール、スティグマステロール、スチグマスタノール、22−ジヒドロスピナステロール、22−デヒドロスチグマスタノール、7−デヒドロスチグマステロール、シトステロール、チルカロール、オイホール、フコステロール、イソフコステロール、コジステロール、クリオナステロール、ポリフェラステロール、クレロステロール、22−デヒドロクレロステロール、フンギステロール、コンドリラステロール、アベナステロール、ベルノステロール、ポリナスタノール等のフィトステロール;コレステロール、ジヒドロコレステロール、コレスタノール、コプロスタノール、エピコプロステロール、エピコプロスタノール、22−デヒドロコレステロール、デスモステロール、24−メチレンコレステロール、ラノステロール、24,25−ジヒドロラノステロ−ル、ノルラノステロ−ル、スピナステロール、ジヒドロアグノステロール、アグノステロール、ロフェノール、ラトステロール等の動物性ステロール;デヒドロエルゴステロール、22,23−ジヒドロエルゴステロール、エピステロール、アスコステロール、フェコステロール等の菌類性ステロール等、ならびにこれらの水添物およびこれらの含有物等が挙げられる。植物から抽出等によって得られるステロールの混合物を用いても良い。
中でも、フィトステロール、ラノステロール、コレステロールまたはジヒドロコレステロールが好ましく、フィトステロールまたはコレステロールが特に好ましい。
【0024】
脂肪酸とは炭化水素のカルボン酸であればよく、特にモノカルボン酸が好ましい。炭素数は2〜32が好ましく、8〜22が特に好ましい。炭化水素は飽和でも不飽和を有していても良く、分岐や環状であっても良い。具体的には酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸、トリアコンタン酸などが上げられる。単一組成の脂肪酸のほか、ヤシ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の天然より得られる混合脂肪酸、あるいは合成により得られる脂肪酸(分岐脂肪酸を含む)であっても良い。これらの1種又は2種以上を用いることが出来る。
【0025】
ステロール脂肪酸エステルとしては、具体的には、酪酸フィトステリル、ノナン酸フィトステリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、カプリル/カプリン酸フィトステリル、リシノール酸フィトステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、分岐脂肪酸(C12−31)コレステリル、フィトステリルカノラ油脂肪酸グリセリズ、フィトステリルナタネグリセリズ、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸ジヒドロコレステリル、ヒマワリ種子油脂肪酸フィトステリル、コメヌカ油脂肪酸フィトステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル、等が挙げられる。
【0026】
前記ステロール脂肪酸エステルの市販品としてはサラコスHS(日清オイリオ社製)、海麗マリンコレステロールエステル(日本水産社製)、YOFCO MAC、PLANDOOL−MAS、YOFCO CLE−S、YOFCO CLE−NH(以上、日本精化社製)、ライステロールエステル(築野ライスファインケミカルズ社製)、等が挙げられる。
【0027】
N−アシルアミノ酸ステロールエステルとしては、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/2−オクチルドデシル)またはN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル/イソステアリル)、N−ミリストイル−N−メチル−β−アラニンフィトステリルなどがあげられる。
中でも、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)またはN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/2−オクチルドデシル)が好ましい。N−アシルアミノ酸ステロールエステルは、2種以上の混合物であってもよい。
【0028】
なお、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/2−オクチルドデシル)とは、N−ラウロイル−L−グルタミン酸の2つのカルボキシ基を、フィトスロールおよび2−オクチルドデシルアルコールでエステル形成して得られる化合物を示す。即ち、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジフィトステリルエステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸γ−フィトステリル−α−2−オクチルドデシルエステル、およびN−ラウロイル−L−グルタミン酸α−フィトステリル−γ−2−オクチルドデシルエステルを含む。N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル)についても同様である。
【0029】
N−アシルアミノ酸ステロールエステルの市販品としては例えば、エルデュウCL−301、エルデュウCL−202(以上、味の素社製)、エステモールCHS(日清オイリオ社製)、エルデュウPS−203、エルデュウPS−304、エルデュウPS−306、エルデュウAPS−307(以上、味の素社製)、PLANDOOL−LG1、PLANDOOL−LG2、PLANDOOL−LG3(以上、日本精化社製)、等が挙げられる。
【0030】
ダイマージリノール酸とステロールのエステルは例えば水素添加ダイマー酸と、コレステロール、フィトステロール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールとを、無触媒でエステル化反応させ水蒸気脱臭したり、酸触媒下エステル化し水洗後に水蒸気脱臭したりして、得ることができる。
具体的には、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)等が挙げられる。
【0031】
前記ダイマージリノール酸ステロール/高級アルコールエステルの市販品としてはPLANDOOL−S、PLANDOOL−G、LUSPLAN PI−DA(以上、日本精化社製)等が挙げられる。
【0032】
本発明においては、ステロール誘導体として、1種又は2種以上を含有することが出来る。中でもヒドロキシステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、オレイン酸コレステリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)またはN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/2−オクチルドデシル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)から選択される1種又は2種以上を含有することが好適である。
【0033】
本発明に係る水中油型乳化組成物の(C)成分の含有量は特に規定されないが、ニコチン酸アミドの刺激感を低減する効果の点からは(C)成分の含有量が0.1質量%を超えることが好ましく、1質量%以上が特に好ましい。ステロール誘導体由来のべたつきの観点からは10質量%以下が好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0034】
本発明に用いる成分(D)水は、水中油型乳化組成物とするために含有されるものであり、化粧料に一般に用いられるものであれば、特に制限されない。水の他にも精製水、温泉水、深層水、或いは植物の水蒸気蒸留水でもよく、必要に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また含有量は、特に限定されず、適宜、他の成分量に応じて含有することができる。
【0035】
本発明の水中油型乳化組成物は、上記成分(A)〜(D)を含有することにより、肌のハリ・弾力を向上させ、シワ・たるみといった老化の形態的変化を予防・改善すると共に、刺激感・べたつきがない使用感触に優れた水中油型乳化組成物にすることが可能となる。
【0036】
ここで、水中油型乳化組成物中における成分(A)と成分(B)の質量比(A)/(B)が1〜50であると水中油型乳化組成物のべたつきが特に低減され好ましい。また、成分(A)と成分(C)の質量比(A)/(C)が0.5〜25であると成分(A)の刺激が低減され好ましい。またこれらの比の範囲は経時での製剤の安定性に特に優れていた。
【0037】
また、本発明にはさらに成分(E)として成分(C)以外の油剤を含有することにより、より刺激感、べたつきのない水中油型乳化組成物を得ることが出来る。
【0038】
本発明における油剤は、化粧料の原料として通常使用されているものであれば特に限定されず、動物油、植物油、合成油等の起源や、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、いずれも使用可能である。油剤の具体例としては、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油溶性紫外線吸収剤などが上げられる。
【0039】
より具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モクロウ、モンタンワックス等の炭化水素類;オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;ミツロウ、ラノリン、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類;セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール等のエステル類;低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン類;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類;ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類; などが挙げられる。
【0040】
また、油溶性紫外線吸収剤の例としては、パラメトキシケイ皮酸ベンジル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;安息香酸エステル系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;トリアジン系紫外線吸収剤;等が挙げられる。
【0041】
これらの油剤は、単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。本発明において、成分(C)と成分(E)の合計量が成分(A)の量より多い、すなわち、(A)/((C)+(E))<1であると、べたつきを低減する効果に特に優れていた。さらに0.2<(A)/((C)+(E))<0.8であると、しわ、たるみの改善効果に優れ、肌全体が明るく見えるようになった。
【0042】
本発明の水中油型乳化組成物には、上記成分の他に、本発明の効果を妨げない範囲で通常の化粧料に含有される任意成分、すなわち、低級アルコールや多価アルコール以外の水性成分、油剤、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、成分(B)以外の界面活性剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、着色剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、美容成分等を含有することができる。
【0043】
本発明の水中油型乳化組成物は、他の成分との併用により種々の剤型とすることもできる。具体的には、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状、固形状等、種々の剤型にて実施することができる。
【0044】
本発明の水中油型乳化組成物は、種々の用途の化粧料として利用できる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ化粧料、パック化粧料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム、メーキャップ化粧料、化粧用下地化粧料、目元用クリーム、日焼け止め、ヘアクリーム、ヘアワックス等の化粧料を例示することができる。その使用方法は、手や指、コットンで使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【0045】
本発明の水中油型乳化組成物は、皮膚外用剤の用途としても利用可能である。例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等が挙げられる。またその使用方法は、前記した化粧料と同様に挙げることができる。
【実施例】
【0046】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。含有量は特記しない限り、その成分が含有される系に対する質量%で示す。
【0047】
本発明品1〜14及び比較品1〜6:水中油型乳化乳液
下記表1〜2に示す処方の水中油型乳化乳液を調製し、肌のハリ・弾力、べたつき、刺激感について下記の方法により評価した。その結果も併せて表1〜2に示す。
【0048】
(評価項目)
イ.肌のハリ・弾力
ロ.べたつき
ハ.刺激感
【0049】
(評価方法)
[イ、ロについて(官能評価)]
20代〜40代の女性で官能評価の訓練を受け、一定の基準で評価が可能な専門パネルを10名選定した。各試料について専門パネルが皮膚に塗布した時に感じる、肌のハリ・弾力、べたつきを下記絶対評価にて5段階に評価し評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0050】
(イ.肌のハリ・弾力の評価)
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:非常に肌のハリ・弾力があると感じる
4点:肌のハリ・弾力があると感じる
3点:普通
2点:あまり肌のハリ・弾力があると感じない
1点:肌のハリ・弾力があると感じない
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える :非常に良好
○ :3点を超える4点以下 :良好
△ :2点を超える3点以下 :やや不良
× :2点以下 :不良
【0051】
(ロ.べたつきの評価)
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:べたつきを感じない
4点:ほとんどべたつきを感じない
3点:ややべたつきを感じる
2点:べたつきを感じる
1点:非常にべたつきを感じる
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える :非常に良好
○ :3点を超える4点以下 :良好
△ :2点を超える3点以下 :やや不良
× :2点以下 :不良
【0052】
(評価方法)
[ハについて(官能評価)]
本発明における「刺激感」とは塗布直後のぴりぴり・ちくちくとした感触(スティンギング)であり、他に通常、紅斑や浮腫のような炎症性症状は伴わず、一過性に消失する反応を指すものである。事前に社内スティンギングテストを行い、刺激に感度が高く、安定した評価が可能な20代〜50代の男性10名を専門パネルとして選定した。各試料について専門パネルが皮膚に塗布した時に感じる、刺激感を下記絶対評価にて5段階に評価し評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
(刺激感の評価)
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:刺激感を感じない
4点:ほとんど刺激感を感じない
3点:やや刺激感を感じる
2点:刺激感を感じる
1点:はっきりと刺激感を感じる
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える :非常に良好
○ :3点を超える4点以下 :良好
△ :2点を超える3点以下 :やや不良
× :2点以下 :不良
【0053】
【表1】
【0054】
(製造方法)
A:成分1〜5を70℃で均一に溶解混合する。
B:成分6〜12を70℃で均一に溶解混合する。
C:AにBを添加し70℃で乳化する。
D:Cに成分13〜15を添加混合した後、40℃まで冷却して水中油型乳化乳液を得た。
【0055】
表1の結果から明らかなように、本発明品1〜5の水中油型乳化乳液は、比較品1〜3の水中油型乳化乳液に比べ、肌のハリ・弾力、刺激感、べたつきの全てにおいて優れたものであった。
これに対して成分(A)を含有していない比較品1では肌のハリ・弾力を得ることが出来なかった。また成分(B)を含有していない比較品2では乳化不良で水中油型乳化乳液を調製することが出来ず、評価することが出来なかった。成分(B)の代わりに脂肪酸石鹸乳化を行った比較品3ではべたつきを低減することは出来なかった。
【0056】
【表2】
【0057】
(製造方法)
A:成分1〜4を70℃で均一に溶解混合する。
B:成分5〜17を70℃で均一に溶解混合する。
C:AにBを添加し70℃で乳化する。
D:Cに成分18〜20を添加混合した後、40℃まで冷却して水中油型乳化乳液を得た。
【0058】
表2の結果から明らかなように、本発明品6〜14の水中油型乳化乳液は、比較品4〜6の水中油型乳化乳液に比べ、肌のハリ・弾力、刺激感、べたつきの全てにおいて優れたものであった。
これに対して成分(C)を含有していない比較品4では刺激感を低減することが出来なかった。成分(C)の代わりに誘導体ではないステロールを含有した比較品5及び6においても同様に刺激感を低減することは出来ず、さらにべたつきが増してしまった。
【0059】
表1〜2の結果から明らかなように、本発明品1〜14の水中油型乳化乳液は、比較品1〜6の水中油型乳化乳液に比べ、肌のハリ・弾力、刺激感、べたつきの全てにおいて優れたものであった。
しかも(A)/((C)+(E))<1であると刺激感、べたつきについて特に優れることがわかった。
【0060】
実施例2:水中油型乳化クリーム
(成分) (質量%)
1.1,3−ブチレングリコール 12.0
2.グリセリン 5.0
3.精製水 残部
4.ニコチン酸アミド 5.0
5.N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.5
6.ヒドロキシステアリン酸コレステリル (注11) 4.0
7.ミツロウ 1.0
8.α−オレフィンオリゴマー 5.0
9.重質流動イソパラフィン (注12) 3.0
10.ジメチルポリシロキサン(10CS) 1.0
11.セラミド2 0.1
12.アスタキサンチン 0.1
13.トコフェロール 0.01
14.セトステアリルアルコール 2.0
15.ベヘニルアルコール 1.0
16.パラオキシ安息香酸メチル 適量
17.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 (注3) 0.15
18.キサンタンガム 0.1
19.水酸化ナトリウム2%溶液 0.2
20.香料 適量

注11)サラコスHS(日清オイリオ社製)
注12)パールリーム18(日油社製)
【0061】
(製造方法)
A:成分1〜4を70℃で均一に溶解混合する。
B:成分5〜16を80℃で均一に溶解混合する。
C:AにBを添加し70℃で乳化する。
D:Cに成分17〜19を添加混合した後、40℃まで冷却して水中油型乳化クリームを得た。
【0062】
実施例2の水中油型乳化クリームは、肌のハリ・弾力、刺激感、べたつきの全てにおいて優れたものであった。
【0063】
実施例3:水中油型乳化美容液
(成分) (%)
1.1,3−ブチレングリコール 5.0
2.ジブチレングリコール 5.0
3.精製水 残部
4.ニコチン酸アミド 5.0
5.N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.25
6.マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル (注13) 1.0
7.軽質流動イソパラフィン (注14) 2.0
8.ジメチルポリシロキサン(6CS) 3.0
9.セラミド3 0.1
10.トコフェロール 0.01
11.セトステアリルアルコール 0.5
12.パラオキシ安息香酸メチル 適量
13.カルボマー (注10) 0.15
14.(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー
(注15) 0.1
15.水酸化ナトリウム2%溶液 0.2
16.エタノール 5.0
17.香料 適量

注13)PLANDOOL−MAS(日本精化社製)
注14)クロラータムLES(クローダ社製)
注15)SIMULGEL EG(SEPIC社製)
【0064】
(製造方法)
A:成分1〜4を70℃で均一に溶解混合する。
B:成分5〜12を80℃で均一に溶解混合する。
C:AにBを添加し70℃で乳化する。
D:Cに成分13〜17を添加混合した後、40℃まで冷却して水中油型乳化美容液を得た。
【0065】
実施例3の水中油型乳化美容液は、肌のハリ・弾力、刺激感、べたつきの全てにおいて優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、化粧料、医薬部外品、皮膚外用剤等に適用できる。