【実施例】
【0066】
実施例1:本発明の非天然型アミノ酸(I)の合成
【0067】
【化9】
【0068】
[1]N−α−ベンジルオキシカルボニル−N−ε−tert−ブトキシカルボニル−2’−アミノエチル−L−リジン メチルエステル{Cbz−L−Lys[AEt(Boc)]−OMe,化合物8}の合成
デスマーチンペルヨージナン(DMP; 9.08 g, 21.4 mmol)を2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−1−エタノール(化合物6)(2.88 g, 17.8 mmol)のCH
2Cl
2(100 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で2時間撹拌した。NaHCO
3−Na
2S
2O
3の飽和水溶液(100 mL)を添加し、室温で30分撹拌した。該溶液をCHCl
3を用いて抽出し、MgSO
4上で乾燥し、減圧留去して粗アルデヒドを得た。粗アルデヒド、Cbz−L−Lys−OMe(5.25 g, 17.8 mmol)及びMS4Å(1 g)のCH
2Cl
2(100 mL)溶液を0℃で1時間撹拌した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(4.80 g, 22.7 mmol)を撹拌溶液に加え、その後、室温で一晩撹拌した。該溶液をCHCl
3で抽出しMgSO
4上で乾燥した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(10%MeOH、CHCl
3中)で精製して無色の油としてCbz−L−Lys[AEt(Boc)]−OMe(化合物8)(2.63 g, 34%)を得た。
[α]
D25= +2.92 (c 1.35, CHCl
3); IR (neat) ν 3345, 2955, 1715, 1697, 1520, 1454, 1400, 1254, 1215, 1169, 1049 cm
-1;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.29-7.36 (m, 5H), 5.75 (br s, 1H), 5.69 (br s, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.35 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.44 (br s, 1H), 3.31-3.35 (m, 2H), 2.84-2.90 (m, 2H), 2.74 (t, J = 7.10 Hz, 2H), 1.96-1.98 (m, 2H), 1.83 (m, 1H), 1.60-1.71 (m, 3H), 1.43 (s, 9H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ 172.7, 156.5, 156.1, 136.2, 128.5, 128.13, 128.09, 80.0, 67.0, 53.6, 52.6, 48.5, 47.8, 37.3, 31.7, 28.4, 25.5, 22.4; FAB(+)HRMS calcd for C
22H
36N
3O
6[M
+ + H]: 438.2604; found: 438.2596.
【0069】
[2]N−α−ベンジルオキシカルボニル−N−ε−(tert−ブトキシカルボニル−2’−アミノエチル)−N−ε−tert−ブトキシカルボニル−L−リジン メチルエステル{Cbz−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OMe,化合物9}の合成
Boc
2O(583 mg, 2.67 mmol)及びEt
3N(270 mg, 2.67 mmol)を化合物8(973 mg, 2.22 mmol)のCH
2Cl
2(30 mL)撹拌溶液に加え、該溶液を室温で5時間撹拌した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(40%EtOAc n−ヘキサン中)で精製して、無色の油としてCbz−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OMe(化合物9)(820 mg, 69%)を得た。
[α]
D25= +1.99 (c 2.06, CHCl
3); IR (neat) ν 3345, 2974, 1725, 1710, 1686, 1520, 1416, 1366, 1250, 1169, 1065 cm
-1;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.28-7.36 (m, 5H), 5.37-5.52 (m, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.80-5.04 (m, 1H), 4.35 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.17-3.24 (m, 6H), 1.84 (m, 1H), 1.69 (m, 1H), 1.50-1.53 (m, 2H), 1.44 (s, 9H), 1.43 (s, 9H), 1.24-1.36 (m, 2H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ 172.8, 156.0, 155.8, 136.2, 128.3, 79.7, 69.1, 66.8, 53.7, 52.2, 47.3, 46.3, 39.4, 32.2, 31.7, 28.2, 27.4, 22.3; FAB(+)HRMS calcd for C
27H
44N
3O
8[M
+ + H]: 538.3128; found: 538.3132.
【0070】
[3]N−α−ベンジルオキシカルボニル−N−ε−2’−アミノエチル−L−リジン メチルエステル 二塩酸塩{Cbz−L−Lys(AEt)}−OMe・2HCl,化合物13}の合成
化合物9(387 mg, 0.720 mmol)の4M HCl/ジオキサン(7.2 mL)溶液を室温で2時間撹拌した。溶媒を除去して無色の結晶としてCbz−L−Lys(AEt)−OMe・2HCl(化合物13)(289 mg, 98%)を得た。
M.p. 149-151℃; [α]
D27 = -14.3 (c 1.11, MeOH); IR (KBr) ν 3341, 2978, 2936, 1720, 1524, 1450, 1420, 1366, 1250, 1165, 1076 cm
-1;
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ 7.22-7.29 (m, 5H), 5.02 (s, 2H), 4.13 (m, 1H), 3.65 (s, 3H), 3.23-3.33 (m, 4H), 3.01 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.62-1.85 (m, 4H), 1.37-1.50 (m, 2H);
13C NMR (100 MHz, CD
3OD) δ 174.3, 158.6, 138.1, 129.5, 129.0, 128.8, 67.7, 55.2, 52.8, 49.6, 45.7, 36.9, 31.9, 26.7, 23.8; FAB(+)HRMS calcd for C
17H
28N
3O
4[M
+ + H]: 338.2080; found: 338.2032.
【0071】
[4]N−α−ベンジルオキシカルボニル−N−ε−[N’,N’’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2’−グアニジニル]エチル−L−リジンメチルエステル{Cbz−L−Lys[GEt(Boc)2]−OMe,化合物14}の合成
化合物13(289 mg, 0.681 mmol)を、1,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2−(トリフルオロメタンスルホニル)グアニジン(320 mg, 0.817 mmol)及びEt
3N(83 mg, 0.817 mmol)のCH
2Cl
2(10 mL)撹拌溶液に加え、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のショートカラムクロマトグラフィー(8%MeOH CHCl
3中)で迅速に精製し、無色の油としてCbz−L−Lys[GEt(Boc)
2]−OMe(化合物14)(362 mg, 89%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CHCl
3) δ 11.42 (br s, 1H), 8.76 (br s, 1H), 7.29-7.36 (m, 5H), 5.54 (br s, 1H), 5.53 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 5.11 (s, 2H), 4.35 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.53-3.60 (m, 2H), 2.98-3.04 (m, 2H), 2.75-2.79 (m, 2H), 1.85 (m, 1H), 1.66-1.75 (m, 3H), 1.50 (s, 9H), 1.48 (s, 9H), 1.21-1.58 (m, 2H).
【0072】
[5]N−α−ベンジルオキシカルボニル−N−ε−[N’,N’’−ビス−(tert−ブトキシカルボニル)−2’−グアニジニル]エチル−N−ε−tert−ブトキシカルボニル−L−リジンメチルエステル{Cbz−L−Lys[Boc,GEt(Boc)2]−OMe,化合物15)}の合成
化合物14(1.88 g, 3.24 mmol)、Boc
2O(849 mg, 3.89 mmol)及びEt
3N(394 mg, 3.89 mmol)の混合物を室温で4時間撹拌した。溶媒を除去して残留物を得、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(40%EtOAc、n−ヘキサン中)で精製して、無色の油としてCbz−L−Lys[Boc,GEt(Boc)
2]−OMe(化合物15)(1.94 g, 88%)を得た。
[α]
D21= +4.59 (c 1.14, CHCl
3); IR (neat) ν 3333, 2978, 2936, 1728, 1690, 1682, 1630, 1616, 1574, 1535, 1415, 1366, 1335, 1254, 1231, 1157, 1134, 1096, 1060, 1022 cm
-1;
1H NMR (400 MHz, CHCl
3) δ 11.48 (br s, 1H), 8.44 (m, 1H), 7.31-7.36 (m, 5H), 5.36-5.52 (m, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.34 (m, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.50-3.56 (m, 2H), 3.34-3.42 (m, 2H), 3.12-3.24 (m, 1H), 1.84 (m, 1H), 1.70 (m, 1H), 1.49 (s, 9H), 1.48 (s, 9H), 1.44 (s, 9H), 1.27-1.40 (m, 4H);
13C NMR (100 MHz, CHCl
3) δ 172.8, 163.4, 156.3, 155.9, 155.6, 153.0, 136.2, 128.4, 128.0, 83.0, 79.9, 79.1, 66.8, 53.7, 52.2, 46.0, 45.6, 39.4, 31.8, 28.23, 28.18, 28.1, 27.9, 27.3, 22.2; FAB(+)HRMS calcd for C
33H
54N
5O
10[M
+ + H]: 680.3871; found: 680.3863.
【0073】
[6]N−α−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−N−ε−[N’,N’’−ビス−(tert−ブトキシカルボニル)−2’−グアニジニル]エチル−N−ε−tert−ブトキシカルボニル−L−リジン メチルエステル{Fmoc−L−Lys[Boc,GEt(Boc)2]−OH,化合物18}の合成
0.1M NaOH(30.4 mL, 3.04 mmol)水溶液を化合物15(1.88 g, 2.76 mmol)のMeOH(30 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で24時間撹拌した。MeOH除去後、クエン酸を用いて溶液のpH2〜3に酸性化し、EtOAcで抽出し、Na
2SO
4上で乾燥し、減圧留去して粗カルボン酸(化合物16)(1.66 g, 90%)を得た。MeOH(30 mL)中の、化合物16(1.66 g, 2.49 mmol)及び5%Pd−C(500 mg)の混合物をH
2雰囲気下室温で激しく撹拌した。一晩撹拌した後、Pd−C触媒を濾去し、ろ液を減圧留去してして粗アミノ酸(化合物17)(1.33 g、定量的)を得た。Fmoc−OSu(925 mg, 2.74 mmol)のジオキサン(20 mL)溶液を、化合物17(1.33 g, 2.49 mmol)及びNaHCO
3(628 mg, 7.48 mmol)の水(20 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で一晩撹拌した。ジオキサン除去後、クエン酸を用いて溶液を酸性化し、EtOAcで抽出し、Na
2SO
4上で乾燥した。溶媒を除去して白い固形物を得、この固形物を、シリカゲル上のクロマトグラフィーで精製した。3%MeOH(CHCl
3中)で溶出したフラクションからFmoc−L−Lys[Boc,GEt(Boc)
2]−OH(化合物18)(972 mg, 52%)を無色の結晶として得た。
M.p. 93-94℃; [α]
D20 = +12.1 (c 1.41, CHCl
3); IR (KBr) ν 3333, 2979, 2936, 1721, 1686, 1639, 1620, 1420, 1366, 1331 cm
-1;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 11.53 (br s, 1H), 8.49 (m, 1H), 7.76 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.60 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 7.39 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.31 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.23 (br s, 1H), 5.61 (m, 1H), 4.35-4.50 (m, 3H), 4.22 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.16-3.51 (m, 6H), 1.89-1.97 (m, 2H), 1.48 (s, 9H), 1.47 (s, 9H), 1.45 (s, 9H), 1.20-1.60 (m, 4H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ 174.8, 163.1, 156.5, 156.0, 155.7, 152.8, 143.9, 143.8, 141.3, 127.7, 127.0, 119.9, 83.3, 80.4, 79.6, 67.0, 53.5, 47.1, 46.5, 46.0, 39.6, 31.1, 28.3, 28.2, 27.3, 21.7; FAB(+)HRMS calcd for C
39H
56N
5O
10[M+ + H]: 754.4027; found: 754.4050.
【0074】
実施例2:本発明のペプチド(II)の合成
標準の市販のRinkアミド樹脂及びFmocアミノ酸を用いるFmoc固相法によって固相担体上で各種ペプチドを合成した。以下に、10μmol規模での代表的なカップリング及び脱保護のサイクルを説明する。
まず、26.3mgのCLEARアミド樹脂(ローディング 0.38 mmol/g)を一晩DMFに浸漬した。DMF除去後、脱保護のために20%ピペリジン(DMF中)を樹脂に加えた。ピペリジンを除去し洗い落とした後、DMF(1.0 mL)中に溶解した、Fmocアミノ酸又は5(6)−テトラメチルローダミンカルボン酸(3当量)、カップリング試薬としてのCOMU(3当量)及び塩基としてのDIPEA(6当量)を加えてカップリング反応を行った。Fmocアミノ酸としては、Fmoc−Gly−OH及び実施例1で合成したFmoc−L−Lys[Boc,GEt(Boc)
2]−OH(化合物18)を用いた。次いで、樹脂を開裂カクテル(TFA: 1.9 mL; H
2O: 50 μL; TIS: 50 μL)に懸濁した。容積を小さくする為にTFA溶液を留去し、冷ジエチルエーテルに添加してペプチドを沈殿させた。乾燥させた粗ペプチドを、アセトニトリル及び/又はH
2O中に溶解し、次いで、COSMOSIL Packed Column 5C
18-AR-II(20 ID x 250 mm)(ナカライ)を用いるRP−HPLCにより精製した。フリーズドライによって赤色の結晶を得て、この結晶を分析用RP−HPLC(COSMOSIL Packed Column 5C
18-AR-II, 4.6 ID x 250 mm)及びMALDI−TOF−MS(Bruker Daltonics Ultraflex, Fremont, CA)により同定した。RP−HPLCは、検出器としてJASCO-2075-Plusを備えたJASCO-PU-2089 Plus(JASCO)を利用した。溶媒A:0.05%TFA(H
2O中)、溶媒B:0.05%TFA(アセトニトリル中)。精製は、流速1.0mL/min、220nmでの検出、勾配(95%〜50%の溶媒A、20分間)の条件で行った。最終化合物の純度は、流速1.0mL/minで、同様のRP−HPLC条件(95%〜35%の溶媒Aで20分間、その後、35%〜10%の溶媒Aで5分間)を用いて更に確認した。
合成したペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製したペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を
図2Dに示す。得られた標識ペプチドを、以下、TMR−Gly−[L−Lys(GEt)]
9−NH
2(ペプチド4)とも略記する場合がある。
【0075】
【化10】
【0076】
比較例1:N−α−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−N−ε−(tert−ブトキシカルボニル−2’−アミノエチル)−N−ε−tert−ブトキシカルボニル−L−リジン{Fmoc−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OH}を原料にしたペプチドの合成
【0077】
【化11】
【0078】
実施例1の[1]及び[2]と同様にして、Cbz−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OMe(化合物9)を合成した。
0.1M NaOH(27.1 mL, 2.71 mmol)水溶液を化合物9(1.22 g, 2.26 mmol)のMeOH(10 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で2時間撹拌した。MeOH除去後、1M NaHSO
4水溶液を用いて溶液のpH2〜3に酸性化し、EtOAcを用いて抽出し、Na
2SO
4上で乾燥し、減圧留去して粗カルボン酸(化合物10)(1.00 g, 84%)を得た。MeOH(30 mL)中の、化合物10(1.00 g, 1.91 mmol)及び5%Pd−C(300 mg)の混合物をH
2雰囲気下室温で激しく撹拌した。一晩撹拌した後、Pd−C触媒を濾去し、ろ液を減圧留去して粗アミノ酸(化合物11)(719 mg, 97%)を得た。Fmoc−OSu(685 mg, 2.03 mmol)のジオキサン(10 mL)溶液を、化合物11(719 mg, 1.85 mmol)及びNaHCO
3(465 mg, 5.54 mmol)の水(30 mL)撹拌溶液に添加し、該溶液を室温で一晩撹拌した。ジオキサン除去後、クエン酸を用いて溶液を酸性化し、EtOAcを用いて抽出し、Na
2SO
4上で乾燥した。溶媒除去により白い固形物を得、この固形物を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製した。10%MeOH(CHCl
3中)で溶出したフラクションからFmoc−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OH(化合物12)(670 mg, 48%)を無色の結晶として得た。
M.p. 67-69℃; [α]
D26 = +13.9 (c 0.86, CHCl
3); IR (KBr) ν 3329, 3233, 2936, 2766, 2731, 2704, 2442, 1740, 1690, 1543, 1504, 1454, 1273, 1169, 1038, 999 cm
-1;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 8.57 (s, 1H), 7.74 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.53-7.70 (m, 2H), 7.37 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 7.28 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 5.72-6.13 (m, 1H), 4.92-5.23 (m, 1H), 4.35-4.46 (m, 3H), 4.20 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.15-3.26 (m, 3H), 1.25-1.91 (m, 6H), 1.44 (s, 9H), 1.42 (s, 9H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ 175.2, 156.4, 156.1, 143.8, 143.7, 141.2, 127.6, 127.0, 125.1, 119.9, 80.1, 79.5, 67.0, 53.6, 47.0, 46.2, 39.3, 31.6, 28.3, 27.5, 22.2; FAB(+)HRMS calcd for C
33H
46N
3O
8 [M
+ + H]: 612.3285; found: 612.3292.
【0079】
得られたFmoc−L−Lys[Boc,AEt(Boc)]−OHを用いて実施例2と同様にして下記構造を有するペプチドを合成した。得られた標識ペプチドを、以下、TMR−Gly−[L−Lys(AEt)]
9−NH
2(ペプチド3)とも略記する場合がある。
合成されたペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製されたペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を
図2Cに示す。
【0080】
【化12】
【0081】
比較例2:Fmoc−L−Lys(Boc)−OHを原料にしたペプチドの合成
Fmocアミノ酸としてFmoc−Gly−OH及びFmoc−L−Lys(Boc)−OHを用いた以外は実施例2と同様にして下記構造を有するペプチドを合成した。得られた標識ペプチドを、以下、TMR−Gly−(L−Lys)
9−NH
2(ペプチド1)とも略記する場合がある。
合成されたペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製されたペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を
図2Aに示す。
【0082】
【化13】
【0083】
比較例3:Fmoc−L−Arg(Pbf)−OHを原料にしたペプチドの合成
Fmocアミノ酸としてFmoc−Gly−OH及びFmoc−L−Arg(Pbf)−OHを用いた以外は実施例2と同様にして下記構造を有するペプチドを合成した。得られた標識ペプチドを、以下、TMR−Gly−(L−Arg)
9−NH
2(ペプチド2)とも略記する場合がある。
合成されたペプチドを、その後、RP−HPLCを用いて精製した。精製されたペプチドの均質性を、分析用RP−HPLC及びMALDI−TOF/MSによって検証した。結果を
図2Bに示す。
【0084】
【化14】
【0085】
比較例4 Fmoc−L−Arg(Pbf)−OHを原料にしたペプチドの合成
5(6)−テトラメチルローダミンカルボン酸の代わりに5(6)−カルボキシフルオレセインを用いた以外は比較例3と同様にして、カルボキシフルオレセイン(CF)標識されたArgペプチドを合成した。得られた標識ペプチドを、以下、CF−Gly−(L−Arg)
9−NH
2(ペプチド5)とも略記する場合がある。
【0086】
比較例5:1−エチルアミノ−2−グアニジニルエタン 塩酸塩の合成
モデル化合物として標題化合物を合成した。
【0087】
【化15】
【0088】
[1]1−[N’,N’’−ビス−(tert−ブトキシカルボニル)−グアニジニル]−2−[N’’’−(tert−ブトキシカルボニル)−N’’’−エチルアミノ]エタン(化合物21)の合成
N−エチルエチレンジアミン(化合物19)(205 mg, 2.32 mmol)を、1,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2−(トリフルオロメタンスルホニル)グアニジン(1000 mg, 2.56 mmol)及びEt
3N(259 mg, 2.32 mmol)のCH
2Cl
2(20 mL)撹拌溶液に加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を除去して残留物を得、該残留物をシリカゲル上のショートカラムクロマトグラフィー(8%MeOH CHCl
3中)で迅速に精製し、化合物20(768 mg、定量的)を得た。Boc
2O(760 mg, 3.49 mmol)及びEt
3N(353 mg, 3.49 mmol)を、化合物20(768 mg, 2.32 mmol)のCH
2Cl
2(30 mL)撹拌溶液に加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を除去して残留物が得、該残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(10%EtOA n−ヘキサン中)によって精製し、無色の結晶として化合物21(654 mg, 65%)を得た。
M.p 102-103℃; IR (KBr) ν 3321, 3136, 2978, 2932, 1813, 1740, 1686, 1628, 1562, 1477, 1420, 1362, 1319, 1288, 1254, 1157 cm
-1;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 11.32 (br s, 1H), 8.23-8.29 (m, 1H), 3.33-3.36 (m, 2H), 3.19-3.23 (m, 2H), 3.00-3.10 (m, 2H), 1.32 (s, 9H), 1.28 (s, 9H), 1.25 (s, 9H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ 163.5, 156.3, 152.9, 82.9, 79.7, 79.1, 45.2, 41.8, 39.6, 28.2, 28.0, 27.4, 13.4; FAB(+)HRMS calcd for C
20H
39N
4O
6[M
+ + H]: 431.2870; found: 431.2870.
【0089】
[2]1−エチルアミノ−2−グアニジニルエタン 塩酸塩(化合物22)の合成
化合物21(568 mg, 1.72 mmol)の4M HCl/ジオキサン(5 mL)溶液を室温で一晩撹拌した。溶媒除去により、無色の結晶として化合物22(299 mg, 86%)を得た。
M.p. 67-68℃; IR (KBr) ν 3470, 3150, 2980, 2810, 2460, 2360, 2190, 2060, 1650, 1440 cm
-1;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 3.56 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.19 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 3.08 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 1.31 (t, J = 7.3 Hz, 3H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ 158.9, 47.0, 44.5, 39.1, 11.5; FAB(+)HRMS calcd for C
5H
15N
4[M
+ + H]: 131.1275; found: 131.1300.
【0090】
実施例及び比較例で得られたペプチド1〜4及び、モデル化合物19及び22の構造を
図1に示す。
試験例1:GEtアミン構造とAEtアミン構造におけるプロトン化の度合い
(材料と方法)
Lys(GEt)のためのモデル化合物である化合物22(比較例2)及びLys(AEt)のためのモデル化合物19を用いた。
電位差滴定
N−エチルエチレンジアミン 塩酸塩(化合物19・2HCl;80.5 mg, 0.5 mmol)及び1−エチルアミノ−2−グアニジニルエタン 塩酸塩(化合物22;101.5 mg, 0.5 mmol)を別々に100mM HCl(10 mL)に溶解し、100mMアミン及び/又はグアニジン溶液を得た。その後、20℃において100mM NaOHを用いて電位差滴定を行った。滴定はpHメーターD−52(Horiba, Kyoto, Japan)を用いて行った。この実験では、pH値が安定した後、100μLの分量の滴定剤を加えた。
(結果)
化合物19は、典型的な二段階のプロトン化反応を示した(pH5.5におけるα=0.97、また、pH7.4におけるα=0.66;pK
a17.1、pK
a210.3)(
図3、○)。一方、化合物22は、高pH側にシフトしたものの、同様の典型的な2段階のプロトン化反応を示した(pH5.5におけるα=0.99、pH7.4におけるα=0.96。pK
a18.8、pK
a212.0)(
図3、●)。これらの結果よりGEtアミン構造は、中性付近のpH7.4においてもジプロトン化された構造を取り得ることがわかった。
【0091】
試験例2:各種ペプチドの細胞内取込み
(材料と方法)
Huh−7細胞、HeLa細胞又はCHO−K1細胞を24ウェルの培養プレートに播種し(1ウェル当たり40,000細胞)、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有する400μLのDMEMでインキュベートした。その後、培地を、10%FBSを含有する新鮮な培地に交換し、各ペプチド溶液を各ウェルに所定の濃度(
図4a、c及びe)で加えた。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞にヘパリン(20単位/mL)を添加し、トリプシン処理し、氷冷PBSを用いて洗浄した。10%FBSを含む培養液を加えた後、細胞を1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。得られた細胞ペレットを、ヘパリンを添加した氷冷PBSで懸濁し、1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。その後、細胞溶解バッファーMを用いて処理した。各溶解物の蛍光強度は、蛍光光度計(ND-3300, NanoDrop, Wilmington, DE)を用いて測定した。各ウェルのタンパク質量を、BCAタンパク質分析試薬キットを用いて同時に測定した。結果を3サンプルから得られた平均及び標準偏差として示した。
また、Huh−7細胞及びHeLa細胞を用いて、ペプチドの濃度を1μMと一定にし、一方で所定のインキュベーション時間で同様にして各種ペプチドの細胞内取込みを調べた(
図5a及びb)。
(結果)
Huh−7細胞(
図4a)、HeLa細胞(
図4c)及びCHO−K1細胞(
図4e)への細胞のペプチド1〜4の取り込みが異なる濃度において評価された。ペプチド2は、1μM(Huh−7及びHeLa細胞)または2μM(CHO−K1細胞)以上の濃度において最も効率的な細胞内への取り込みを示した。一方、0.5、0.25及び0.125μMの低濃度においてペプチド4の取り込みは、他のペプチドの取り込みより著しく高かった(例えば、P<0.05、ペプチド2対ペプチド4、ペプチド濃度:0.5μM、
図4a)。細胞のペプチド1、2及び3の取り込みは、それぞれ0.5未満、0.5未満及び1μM未満の濃度において検出できなかった。
また、1μMのペプチド濃度におけるHuh−7細胞及びHeLa細胞による細胞内の取り込みの順位は、すべてのインキュベーション時間において同じだった(
図5)。
【0092】
試験例3:各種ペプチドの細胞毒性
(材料と方法)
Huh−7細胞、HeLa細胞又はCHO−K1細胞を96ウェル培養プレートへ播種し(10,000細胞/ウェル)、10%FBSを含む100μLのDMEMでインキュベートした。その後、培地を、10%FBSを含む新鮮な培地に交換し、各ペプチド溶液を所定の濃度で各ウェルに加えた。2時間のインキュベーション後、製品のプロトコルに従ってcell-counting Kit-8を用いて測定した。各ウェルからのホルマザンの吸光度に基づいて、細胞生存率を評価した。ここでは、ペプチドを含まないウェルの吸光度を100%として細胞生存率を算出した。結果を5サンプルから得られた平均及び標準偏差として示した。
(結果)
いずれの細胞に対しても、ペプチド4は高濃度でわずかな細胞毒性を示した(
図4b、d及びf)。ジプロトン化されたGEtアミン構造を有するペプチド4は、プロトン化された1級アミン構造を有するペプチド1、プロトン化されたグアニジン構造を有するペプチド2及びモノプロトン化されたエチレンジアミン構造を有するペプチド3に比べて細胞膜に強く結合するように思われ、このことが、低濃度における効率的な細胞内の取り込みと、高濃度における細胞毒性の増大の原因と考えられた。
【0093】
試験例4:各種ペプチドの細胞内取込みに及ぼすエンドサイドーシス阻害剤の影響
ペプチド2及びペプチド4のHuh−7細胞への細胞内の取り込みの経路を明確化するため、特定のエンドサイトーシス阻害剤(マクロピノサイトーシス阻害剤であるAm:アミロリド。クラスリン介在型エンドサイトーシス阻害剤であるCh:クロルプロマジン及びSu:スクロース。カベオラ介在型エンドサイトーシス阻害剤であるNy:ナイスタチン及びFi:フィリピン)を用いて細胞内の取り込み実験を行った。
(材料と方法)
Huh−7細胞を24ウェル培養プレート(40,000細胞/ウェル)に播種し、10%FBSを含む400μLのDMEMでインキュベートした。アミロリド(5 mM)、クロルプロマジン(10 μg/mL)、スクロース(0.4 M)、ナイスタチン(25 μg/mL)又はフィリピン(5 μg/mL)を含む、あるいは含まない、10%FBSを含む新鮮な培地に培地交換した後、細胞を37℃で30分間プレインキュベートした。ペプチド溶液を各ウェルに1μMの濃度で添加した。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞にヘパリン(20単位/mL)を添加し、トリプシン処理し、氷冷PBSを用いて洗浄した。10%FBSを含む培養液を加えた後、細胞を1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。得られた細胞ペレットを、ヘパリンを添加した氷冷PBSで懸濁し、1600rpm、3分間4℃で遠心分離した。その後、細胞溶解バッファーMを用いて処理した。各溶解物の蛍光強度は、蛍光光度計(ND-3300)を用いて測定した。各ウェルのタンパク質量を、BCAタンパク質分析試薬キットを用いて同時に測定した。結果を3サンプルから得られた平均値及び標準偏差として示した。
(結果)
結果を
図6に示す。
図6aは、阻害剤の存在下におけるペプチド2の取り込みを示す。Am処理は、細胞内の取り込み量を30%以上減少させた(P<0.01)。また、Ch及びSuもペプチド2の取り込みを著しく減少させた(P<0.05)。これらの結果は、ペプチド2はマクロピノサイトーシスがメインで一部がクラスリン介在型エンドサイトーシスによって取り込まれることを示している。
図6bに示すように、細胞内のペプチド4の取り込みは、Ch及びSuを用いて処理した細胞においてコントロールに比べておよそ30%低い(P<0.01)。Am存在下でのインキュベーションは、細胞内の取り込みに著しく影響を与えた(およそ15%の減少、P<0.05)。これらの結果は、ペプチド4はクラスリン介在型エンドサイトーシスがメインで一部がマクロピノサイトーシスで取り込まれていることを示している。Ny及びFiを用いたHuh−7細胞の処理は、ペプチド2または4のいずれかの取り込みにも大きな影響を与えなかった。このようにペプチド2及び4の細胞内の取り込み経路の間には、わずかな違いが観察された。
【0094】
試験例5:共焦点レーザー走査顕微鏡法による、ペプチドの細胞内取込み機構の解析
ペプチド4の、異なる細胞内取り込み機構についての更なる見識を得るため、共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)を用いてペプチド2及び4の細胞内分布を調べた。CF標識されたペプチド5とともにTMR標識されたペプチド2またはペプチド4を用いて処理したHuh−7細胞のCLSM観察を行うことにより、それらの異なった細胞内分布についての直接的な情報を得た。
(材料と方法)
Huh−7細胞又はHeLa細胞を、8ウェルのカバーガラスチャンバー(Iwaki, Tokyo, Japan)上に播種し(20,000細胞/ウェル)、10%FBSを含む200μLのDMEMで一晩インキュベートした。培地を、その後、10%FBSを含む新鮮な培地に交換した。ペプチド2又は4とペプチド5とは、1μMの濃度で各ウェルに添加した。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞にヘパリン(20単位/mL)を添加し、氷冷PBSを用いて3回洗浄した。ヘキスト33342を用いた核染色後、細胞内分布をCLSMによって観察した。CLSM観察は、ヘキスト33342のための励起波長405nm(UVレーザー)、ペプチド5のための励起波長488nm(Arレーザー)、及びペプチド2及び4のための励起波長543nm(He−Neレーザー)で、Plan-Apochromat 63x/1.4 (Carl Zeiss)対物レンズを備えたLSM710(Carl Zeiss, Oberlochen, Germany)を用いて行った。ペプチド5と共局在したペプチド2又は4の割合を定量した。共局在化の割合は以下のとおり定量した。
【0095】
【数1】
【0096】
ここで、「ペプチド ピクセル(共局在)」は、細胞においてペプチド5と共局在するペプチド2又は4のピクセル数を示し、また、「ペプチド ピクセル(合計)」は、細胞における全ピクセル数を示す。結果を20細胞から得られた平均及び標準偏差として示した。
さらに、リソトラッカーグリーンを用いたCLSM観察は以下のようにして行った。
Huh−7細胞を、8ウェルのカバーガラスチャンバー(Iwaki)上に播種し(20,000細胞/ウェル)、10%FBSを含む200μLのDMEMで一晩インキュベートした。その後、培地を、10%FBSを含む新鮮な培地に交換した、ペプチド溶液を、1μMの濃度で各ウェルに添加した。2時間のインキュベーション後、培地を除去し、細胞に、ヘパリン(20単位/mL)を添加し、氷冷PBSを用いて3回洗浄した。後期エンドソーム/リソソームを、リソトラッカーグリーンを用いて染色し、核をヘキスト33342を用いて染色した後、細胞内分布をCLSMによって観察した。CLSM観察は、ヘキスト33342のための励起波長405nm(UVレーザー)、リソトラッカーグリーンのための励起波長488nm(Arレーザー)、ペプチド2及び4のための励起波長543nm(He−Neレーザー)でPlan-Apochromat 63x/1.4 (Carl Zeiss)対物レンズを備えたLSM710(Carl Zeiss)を用いて行った。リソトラッカーグリーンと共局在しているペプチド2又は4の割合を定量した。共局在化の割合は以下のとおり定量した。
【0097】
【数2】
【0098】
ここで、「ペプチド ピクセル(共局在)」は、細胞においてリソトラッカーグリーンと共局在するペプチド2又は4のピクセル数を示し、また、「ペプチド ピクセル(合計)」は、細胞におけるすべてのピクセル数を示す。結果を、18細胞から得られた平均及び標準偏差として示した。
(結果)
定量した共局在化の割合は、70%のペプチド2及び47%のペプチド4がペプチド5と共局在した(
図7a)。ペプチド2及び4の間において著しい差異が観察された(P<0.001)。この結果より、Huh−7細胞におけるペプチド2及び4の最終的な行先が異なることが示唆された。ペプチド2及び4を用いて処理されたHeLa細胞及びCHO−K1細胞もまた、ペプチド5とともに、それぞれ83%及び67%(HeLa細胞,
図7b)、87%及び75%(CHO−K1細胞,
図7c)の共局在化率を示した(P<0.001)。
しかしながら、リソトラッカーグリーン染色を行った状態のペプチド2及びペプチド4のCLSM観察を行うことにより、酸性の後期エンドソーム/リソソームにおいて同様の共局在化率となることが明らかになった(
図8)。
以上の結果より、ペプチド4は、ペプチド2よりも細胞膜に強く結合することができ、わずかに異なる機構により、低濃度においてより効率的に細胞へ取り込まれることがわかった。
【0099】
試験例6:プラスミドDNA(pDNA)を用いた遺伝子導入
(材料と方法)
Huh−7細胞とCHO−K1細胞の二種類を用いて、ルシフェラーゼタンパク質をコードしたpDNAを使って、発現したタンパク質の量を定量(=遺伝子導入効率)した。ポジティブコントロールとして、市販の遺伝子導入試薬のTurboFectを用いた。また、同時に試験例3と同様にして細胞毒性についても調べた。
(結果)
ペプチド4は低濃度で高い遺伝子導入効率を示しており、特にHuh−7細胞においてはTuboFectと同程度の効率を示した。
図9下段は、同条件での細胞毒性を評価した結果を示す。ペプチド4は高濃度で用いた場合に僅かな毒性が出てくるが、当該濃度で、TurboFectはかなりの毒性が出ている。
これらの結果より、本発明のペプチドは高い遺伝子導入効率を示す濃度範囲では毒性は問題とならないことが示された。