特許第6495720号(P6495720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495720
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】溶接用電源装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/10 20060101AFI20190325BHJP
   B23K 9/013 20060101ALI20190325BHJP
   B23K 9/173 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   B23K9/10 Z
   B23K9/013 C
   B23K9/173 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-77504(P2015-77504)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-196027(P2016-196027A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2017年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和記
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 陽彦
(72)【発明者】
【氏名】侯 松杰
(72)【発明者】
【氏名】河合 宏和
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−086971(JP,U)
【文献】 特開昭54−136547(JP,A)
【文献】 実開昭59−020961(JP,U)
【文献】 特開2014−205162(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0069035(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0085741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/10
B23K 9/013
B23K 9/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半自動溶接を実施するための半自動溶接モジュール、ガウジングを実施するためのガウジングモジュール、および空気により駆動される工具であるエア工具を接続可能であって、接続された前記半自動溶接モジュール、前記ガウジングモジュール、および前記エア工具のうちいずれか1つを駆動するための溶接用電源装置であって、
出力される電流の値を調整する調整部と、
前記調整部に接続され、前記調整部により調整された電流を出力するための一対の出力端子と、
前記一対の出力端子間に確認用の電圧を印加するための確認用電源と、
前記一対の出力端子間の電圧を測定し、前記出力端子間に確認用の電圧が印加されてから予め定められた時間内に前記出力端子間の電圧が予め定められた範囲に変化した場合に電圧変動信号を出力する電圧検出部と、
空気を吐出する空気吐出口と、
前記空気吐出口から空気が吐出されている場合にエア検出信号を出力するエア検出部と、
前記電圧検出部、前記エア検出部および前記調整部に接続され、前記電圧変動信号および前記エア検出信号の有無に基づいて選択される制御モードにより前記調整部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記エア検出信号が無い場合には半自動溶接に適した制御モードにて前記調整部を制御し、前記エア検出信号が有る場合であって前記電圧変動信号が有る場合にはガウジングに適した制御モードにて前記調整部を制御し、前記エア検出信号が有る場合であって前記電圧変動信号が無い場合には前記一対の出力端子から電流が出力されないように前記調整部を制御する、溶接用電源装置。
【請求項2】
半自動溶接を実施するための半自動溶接モジュール、ガウジングを実施するためのガウジングモジュール、および空気により駆動される工具であるエア工具を接続可能であって、接続された前記半自動溶接モジュール、前記ガウジングモジュール、および前記エア工具のうちいずれか1つを駆動するための溶接用電源装置の制御方法であって、
空気吐出口から空気が吐出されているか否かを確認し、前記空気吐出口から空気が吐出されている場合にエア検出信号を出力するステップと、
前記エア検出信号に基づいて出力端子間に確認用の電圧を印加するステップと、
前記出力端子間に確認用の電圧が印加されてから予め定められた時間内に前記出力端子間の電圧が予め定められた範囲に変化したか否かを確認し、前記出力端子間の電圧が予め定められた範囲に変化した場合に電圧変動信号を出力するステップと、
前記エア検出信号および前記電圧変動信号の有無に基づいて制御モードを選択するステップと、を備え、
前記制御モードを選択するステップでは、前記エア検出信号が無い場合には半自動溶接に適した制御モードにて、出力される電流の値を調整する調整部を制御する半自動溶接モードを選択し、前記エア検出信号が有る場合であって前記電圧変動信号が有る場合にはガウジングに適した制御モードにて前記調整部を制御するガウジングモードを選択し、前記エア検出信号が有る場合であって前記電圧変動信号が無い場合には前記出力端子から電流が出力されないように前記調整部を制御するエア工具モードを選択する、溶接用電源装置の制御方法。
【請求項3】
前記制御モードを選択するステップにおいて前記エア工具モードが選択された場合に前記エア工具モードが選択されたことの記憶であるモード記憶を記憶するステップと、
半自動溶接が実施された場合および電源がオフ状態とされた場合に前記モード記憶を消去するステップと、
前記エア検出信号を出力するステップの後であって前記確認用の電圧を印加するステップの前に、前記モード記憶の有無を確認するステップと、をさらに備え、
前記制御モードを選択するステップでは、前記エア検出信号が有る場合であって前記モード記憶が有る場合には前記確認用の電圧を印加することなく前記エア工具モードが選択される、請求項2に記載の溶接用電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶接用電源装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理物である鋼材に対してMAG(Metal Active Gas)溶接などの半自動溶接が実施された後、溶接部の欠陥の除去、溶接部の裏面の処理などの目的でアークエアガウジング(以下、「ガウジング」という)が実施される場合がある。このように、半自動溶接とガウジングとは同一の場所において連続的に実施される場合がある。そのため、溶接用電源装置をガウジング用電源装置としても使用することができれば、電源の設置スペースの低減が達成可能となる。このような観点から、ガウジング用電源装置としても使用可能な溶接用電源装置として、種々の提案がなされている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−40020号公報
【特許文献2】特開平10−109166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された電源装置の構造では、電源装置に設置されたスイッチを操作して電源装置の動作モードを切り替えることで、半自動溶接モードおよびガウジングモードの一方を選択する必要がある。しかし、溶接やガウジングの施工場所と電源装置とは離れている場合も多い。そのため、特許文献1に開示された電源装置の構造では、モードの切り替えに際して、作業者が施工場所から電源装置の設置場所まで移動してモードを切り替えた後、施工場所まで戻って作業を再開する必要が生じる。そのため、作業の効率が低下するという問題がある。
【0005】
また、上記特許文献2に開示された電源装置の構造では、半自動溶接を実施するための半自動溶接モジュールやガウジングを実施するためのガウジングモジュールとは別に、モードを切り替えるための切り替え装置を持ち運ぶ必要がある。溶接やガウジングの施工場所と電源装置とが離れている場合、半自動溶接モジュールやガウジングモジュール用のケーブルとともに切り替え装置用のケーブルを合わせて引き回す必要が生じ、作業の効率が低下するという問題が生じる。
【0006】
また、ガウジングの実施後に、スパッタやバリの除去等を目的として空気により駆動される工具であるエア工具、たとえばエアグラインダー、エアサンダー、エアブラシなどを用いた処理が実施される場合がある。このような場合、ガウジング用のトーチが取り外され、エア工具に取り換えられることにより、ガウジング用に供給される空気をエア工具の駆動に利用することができる。しかし、単にガウジング用のトーチがエア工具に取り換えられる場合、エア工具の使用中においても電源が電力を消費するため、不必要な電力が消費されるという問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、半自動溶接モジュール、ガウジングモジュール、およびエア工具を接続可能であって、かつ作業の効率化および消費電力の低減を達成可能な溶接用電源装置およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従った溶接用電源装置は、半自動溶接を実施するための半自動溶接モジュール、ガウジングを実施するためのガウジングモジュール、および空気により駆動される工具であるエア工具を接続可能であって、接続された半自動溶接モジュール、ガウジングモジュール、およびエア工具のうちいずれか1つを駆動するための溶接用電源装置である。この溶接用電源装置は、調整部と、一対の出力端子と、確認用電源と、電圧検出部と、空気吐出口と、エア検出部と、制御部と、を備える。調整部は、出力される電流の値を調整する。一対の出力端子は、調整部に接続され、調整部により調整された電流を出力するための端子である。確認用電源は、一対の出力端子間に確認用の電圧を印加するための電源である。電圧検出部は、一対の出力端子間の電圧を測定し、出力端子間に確認用の電圧が印加されてから予め定められた時間内に出力端子間の電圧が予め定められた範囲に変化した場合に電圧変動信号を出力する。空気吐出口は空気を吐出する。エア検出部は、空気吐出口から空気が吐出されている場合にエア検出信号を出力する。制御部は、電圧検出部、エア検出部および調整部に接続され、電圧変動信号およびエア検出信号の有無に基づいて選択される制御モードにより調整部を制御する。
【0009】
そして、制御部は、エア検出信号が無い場合には半自動溶接に適した制御モードにて調整部を制御し、エア検出信号が有る場合であって電圧変動信号が有る場合にはガウジングに適した制御モードにて調整部を制御し、エア検出信号が有る場合であって電圧変動信号が無い場合には一対の出力端子から電流が出力されないように調整部を制御する。
【0010】
本発明の溶接用電源装置においては、電圧変動信号およびエア検出信号の有無に基づいて選択される適切な制御モードにより制御部が調整部を制御する。ここで、半自動溶接モジュール、ガウジングモジュールおよびエア工具のうち、半自動溶接モジュールが使用される場合、空気吐出口から空気は吐出されない。そのため、エア検出信号が無い場合には、半自動溶接に適した制御モードで制御部が調整部を制御する。また、ガウジングモジュールが使用される場合、空気吐出口から空気が吐出され、かつガウジングモジュールと被処理物とを接触させることによるガウジングのスタート(タッチスタート)が行われるため、タッチスタートによる電圧の変動が検出される。そのため、エア検出信号が有る場合であって電圧変動信号が有る場合には、ガウジングに適した制御モードで制御部が調整部を制御する。また、エア工具が使用される場合、空気吐出口から空気が吐出され、かつタッチスタートが行われないため、タッチスタートによる電圧の変動は検出されない。そのため、エア検出信号が有る場合であって電圧変動信号が無い場合には、一対の出力端子から電流が出力されないように制御部が調整部を制御する。
【0011】
このように、本発明の溶接用電源装置においては、モード切替用のスイッチ等を別途設けることなく、適切なモードで溶接用電源装置を動作させることができる。したがって、作業者が施工場所から電源装置の設置場所まで移動してモードを切り替える動作や切り替え装置用のケーブルを引き回す動作を行う必要がない。その結果、作業の効率化を図ることができる。また、エア工具の使用中には、一対の出力端子から電流が出力されないように制御部が調整部を制御する。そのため、エア工具の使用中に不必要な電力が消費されることが抑制され、消費電力の低減が達成される。以上のように、本発明の溶接用電源装置によれば、半自動溶接モジュール、ガウジングモジュール、およびエア工具を接続可能であって、かつ作業の効率化および消費電力の低減を達成可能な溶接用電源装置を提供することができる。
【0012】
本発明に従った溶接用電源装置の制御方法は、半自動溶接を実施するための半自動溶接モジュール、ガウジングを実施するためのガウジングモジュール、および空気により駆動される工具であるエア工具を接続可能であって、接続された半自動溶接モジュール、ガウジングモジュール、およびエア工具のうちいずれか1つを駆動するための溶接用電源装置の制御方法である。この溶接用電源装置の制御方法は、空気吐出口から空気が吐出されているか否かを確認し、空気吐出口から空気が吐出されている場合にエア検出信号を出力するステップと、エア検出信号に基づいて出力端子間に確認用の電圧を印加するステップと、出力端子間に確認用の電圧が印加されてから予め定められた時間内に出力端子間の電圧が予め定められた範囲に変化したか否かを確認し、出力端子間の電圧が予め定められた範囲に変化した場合に電圧変動信号を出力するステップと、エア検出信号および電圧変動信号の有無に基づいて制御モードを選択するステップと、を備える。そして、制御モードを選択するステップでは、エア検出信号が無い場合には半自動溶接に適した制御モードにて調整部を制御する半自動溶接モードを選択し、エア検出信号が有る場合であって電圧変動信号が有る場合にはガウジングに適した制御モードにて調整部を制御するガウジングモードを選択し、エア検出信号が有る場合であって電圧変動信号が無い場合には出力端子から電流が出力されないように調整部を制御するエア工具モードを選択する。
【0013】
本発明の溶接用電源装置の制御方法においては、電圧変動信号およびエア検出信号の有無に基づいて適切な制御モードが選択される。そのため、モード切替用のスイッチ等を別途設けることなく、適切なモードで溶接用電源装置を動作させることができる。したがって、作業者が施工場所から電源装置の設置場所まで移動してモードを切り替える動作や切り替え装置用のケーブルを引き回す動作を行う必要がない。その結果、作業の効率化を図ることができる。また、エア工具の使用中には、一対の出力端子から電流が出力されないように調整部が制御される。そのため、エア工具の使用中に不必要な電力が消費されることが抑制され、消費電力の低減が達成される。以上のように、本発明の溶接用電源装置の制御方法によれば、半自動溶接モジュール、ガウジングモジュール、およびエア工具を接続可能な溶接用電源装置を用いた作業における効率化および消費電力の低減を達成することができる。
【0014】
上記溶接用電源装置の制御方法は、制御モードを選択するステップにおいてエア工具モードが選択された場合にエア工具モードが選択されたことの記憶であるモード記憶を記憶するステップと、半自動溶接が実施された場合および電源がオフ状態とされた場合にモード記憶を消去するステップと、エア検出信号を出力するステップの後であって確認用の電圧を印加するステップの前に、モード記憶の有無を確認するステップと、をさらに備えていてもよい。そして、制御モードを選択するステップでは、エア検出信号が有る場合であってモード記憶が有る場合には確認用の電圧を印加することなくエア工具モードが選択されてもよい。
【0015】
通常、半自動溶接、ガウジングおよびエア工具を用いた処理、の順で作業は進められる。そのため、エア工具を用いた作業が実施された後に、被処理物の同一箇所に対してガウジングが実施されることはほとんどない。一旦エア工具モードが選択された場合、その後に半自動溶接が実施されてモード記憶が消去された場合や電源がオフ状態とされてモード記憶が消去された場合を除いて確認用電圧を印加することなくエア工具モードを直ちに選択することにより、不必要な確認用電圧の印加を省略し、一層消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の溶接用電源装置およびその制御方法によれば、半自動溶接モジュール、ガウジングモジュール、およびエア工具を接続可能であって、かつ作業の効率化および消費電力の低減を達成可能な溶接用電源装置およびその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1における溶接用電源装置に半自動溶接モジュールが接続された状態を示す概略図である。
図2】実施の形態1における溶接用電源装置にガウジングモジュールが接続された状態を示す概略図である。
図3】実施の形態1における溶接用電源装置にエア工具が接続された状態を示す概略図である。
図4】実施の形態1における溶接用電源装置の制御方法の概略を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2における溶接用電源装置の制御方法の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1における溶接用電源装置の構造について説明する。図1を参照して、実施の形態1における溶接用電源装置1は、被処理物である母材90(たとえば鋼材)に対して半自動溶接を実施するための半自動溶接モジュール、ガウジングを実施するためのガウジングモジュール、および母材90の表面を加工するためのエア工具を接続可能であって、接続された半自動溶接モジュール、ガウジングモジュール、およびエア工具のうちいずれか1つを駆動することが可能な構造を有している。溶接用電源装置1は、調整部10と、プラス側出力端子25と、マイナス側出力端子26と、確認用電源としてのタッチ電源23と、電圧検出部31と、空気吐出口83と、エア検出部としてのフロースイッチ81と、制御部としての制御回路(CC)41と、を備えている。溶接用電源装置1は、さらに変流器21と、直流リアクトル(DCL)22と、スイッチ24と、交流電源入力端子43と、空気流入口82と、を備えている。
【0020】
交流電源入力端子43には、三相交流電源51(商用電源)が接続される。マイナス側出力端子26には、配線91を介して母材90が接続される。空気吐出口83には、接続ホース86を介してエア用連結部87が接続されている。プラス側出力端子25には、ケーブル28を介して出力用連結部27が接続されている。
【0021】
調整部10は、1次側整流回路11と、インバータ12と、トランス13と、2次側整流回路14と、を含んでいる。1次側整流回路11は、三相交流電源51から出力される交流電流を直流電流に変換する。インバータ12は、複数のパワートランジスタを備え、直流電流を交流電流に変換するとともに電流値を調整する。トランス13は、交流電圧を適切な電圧に降圧する。2次側整流回路14は、交流電流を直流電流に変換する。これにより、調整部10は、出力される電流の値を調整する。
【0022】
調整部10とプラス側出力端子25とは、配線15により接続されている。また、調整部10とマイナス側出力端子26とは、配線16により接続されている。一対の出力端子であるプラス側出力端子25およびマイナス側出力端子26から、調整部10により調整された電流が出力される。配線15には、変流器21が設置されている。変流器21は、制御回路41に接続されている。そして、変流器21から制御回路41に、配線15を流れる電流値の情報が入力される。配線16には、直流リアクトル22が設置されている。直流リアクトル22により、出力される電流が平滑化される。
【0023】
タッチ電源23は、配線15および配線16に接続されている。そして、タッチ電源23と配線15とを接続する配線には、スイッチ24が設置される。スイッチ24をオン状態とすることにより、プラス側出力端子25とマイナス側出力端子26との間に確認用の電圧が印加される。
【0024】
電圧検出部31は、配線15および配線16に接続されており、プラス側出力端子25とマイナス側出力端子26との間の電圧を測定する。電圧検出部31は、さらに制御回路41に接続される。電圧検出部31は、プラス側出力端子25とマイナス側出力端子26との間の電圧を測定し、プラス側出力端子25とマイナス側出力端子26との間に確認用の電圧が印加されてから予め定められた時間内に出力端子25,26間の電圧が予め定められた範囲に変化した場合に電圧変動信号を出力する。そして、電圧検出部31から電圧変動信号が出力されると、当該電圧変動信号が制御回路41に入力される。
【0025】
空気流入口82は、エアコンプレッサ(図示しない)などの空気供給源に接続される。空気流入口82と空気吐出口83とはエア流路84により接続される。エア流路84には、フロースイッチ81が設置される。フロースイッチ81は、制御回路41に接続される。フロースイッチ81は、空気吐出口83から空気が吐出されている場合にエア検出信号を出力する。そして、フロースイッチ81からエア検出信号が出力されると、当該エア検出信号が制御回路41に入力される。
【0026】
制御回路41は、調整部10のインバータ12に接続される。制御回路41は、電圧変動信号およびエア検出信号の有無に基づいて選択される制御モードにより調整部10のインバータ12を制御する。
【0027】
次に、本実施の形態における溶接用電源装置1の動作(制御方法)について説明する。まず、出力用連結部27に半自動溶接モジュール60が接続される場合について、図1および図4を参照して説明する。図1を参照して、半自動溶接モジュール60は、トーチ62と、トーチ62に溶加材である溶接ワイヤ65を送給するワイヤフィーダ61とを含んでいる。半自動溶接モジュール60と出力用連結部27とは、パワーケーブル63により接続されている。溶接用電源装置1の主電源(図示しない)がオン状態とされると、三相交流電源51から交流電力が供給可能な状態となる。このとき、半自動溶接モジュール60はエア用連結部87には接続されない。図4を参照して、このような状態において空気吐出口83から空気が吐出されているか否かを確認すると(S10)、空気の吐出は確認されない。そのため、フロースイッチ81は、エア検出信号を出力しない(S10においてNO)。そうすると、制御回路41はエア検出信号が無いことに基づいて半自動溶接モードを選択する(S20)。具体的には、半自動溶接モジュール60のトーチスイッチ(図示しない)からの溶接用電源装置1への入力が有効な状態にされるとともに、制御回路41は半自動溶接に適した制御モードにて調整部10のインバータ12を制御する状態となる。そして、たとえば作業者がトーチスイッチを操作することにより半自動溶接が開始される。
【0028】
次に、出力用連結部27にガウジングモジュール70が接続される場合について、図2および図4を参照して説明する。図2を参照して、ガウジングモジュール70には吐出される空気の量を調整する開閉バルブ72が設置される。また、ガウジングモジュール70への空気の供給を可能とするため、ガウジングモジュール70は、接続ホース85を介してエア用連結部87にも接続される。そして、ガウジングを実施するに際しては、開閉バルブ72が開けられる。そうすると、フロースイッチ81がオン状態となる。図4を参照して、このような状態において空気吐出口83から空気が吐出されているか否かを確認すると(S10)、フロースイッチ81からエア検出信号が出力されており、空気の吐出が確認される(S10においてYES)。エア検出信号は制御回路41に入力される。
【0029】
空気の吐出が確認され、エア検出信号が出力されると、タッチ電源がオン状態とされ、プラス側出力端子25とマイナス側出力端子26との間に確認用の電圧が印加される(S30)。具体的には、スイッチ24がオン状態とされることで、プラス側出力端子25とマイナス側出力端子26との間に確認用の電圧が印加される。そして、確認用の電圧が印加されてから予め定められた時間、たとえば60秒以内にプラス側出力端子25とマイナス側出力端子26との間の電圧が予め定められた範囲に変化したか否か、たとえば確認用電圧の5%以下にまで低下したか否かが電圧検出部31により確認される。ガウジングが実施される場合、開閉バルブ72を開けた後、引き続いてタッチスタートが実施される。これにより、プラス側出力端子25とマイナス側出力端子26との間の電圧は0となる。そのため、電圧検出部31は電圧変動信号を出力し、タッチが検出される(S40においてYES)。電圧変動信号は制御回路41に入力される。
【0030】
そうすると、制御回路41はエア検出信号が有り、かつ電圧変動信号が有ることに基づいてガウジングモードを選択する(S50)。具体的には、半自動溶接モジュールのトーチスイッチからの入力が無効な状態にされるとともに、制御回路41はガウジングに適した制御モードにて調整部10のインバータ12が制御される。
【0031】
次に、出力用連結部27にエア工具89が接続される場合について、図3および図4を参照して説明する。図3を参照して、エア工具89に駆動用の空気を供給するため、エア工具89は接続ホース88を介してエア用連結部87に接続される。エア工具89は、出力用連結部27には接続されない。エア工具89の駆動を開始すると、フロースイッチ81がオン状態となる。図4を参照して、このような状態において空気吐出口83から空気が吐出されているか否かを確認すると(S10)、フロースイッチ81からエア検出信号が出力されており、空気の吐出が確認される(S10においてYES)。エア検出信号は制御回路41に入力される。
【0032】
空気の吐出が確認され、フロースイッチ81が出力されると、タッチ電源がオン状態とされ、プラス側出力端子25とマイナス側出力端子26との間に確認用の電圧が印加される(S30)。そして、ガウジングモジュール70が接続された場合と同様に、確認用の電圧が印加されてから予め定められた時間にプラス側出力端子25とマイナス側出力端子26との間の電圧が予め定められた範囲に変化したか否かが電圧検出部31により確認される。エア工具89が駆動される場合、プラス側出力端子25とマイナス側出力端子26との間の電圧は変動しない。そのため、電圧検出部31は電圧変動信号を出力せず、タッチは検出されない(S40においてNO)。
【0033】
そうすると、制御回路41はエア検出信号が有り、かつ電圧変動信号が無いことに基づいてエア工具モードを選択する(S60)。具体的には、確認用電圧の印加を停止し、かつインバータ12の稼働を停止するとともに溶接用電源1の冷却用ファンを停止する。その結果、プラス側出力端子25およびマイナス側出力端子26から電流が出力されない状態となる。
【0034】
ここで、本実施の形態の溶接用電源装置1においては、エア検出信号および電圧変動信号の有無に基づいて制御モードが選択され、選択された制御モードにより制御回路41が調整部10を制御する。そのため、モード切替用のスイッチ等を別途設けることなく、適切なモードで溶接用電源装置1を動作させることができる。したがって、作業者が施工場所から電源装置の設置場所まで移動してモードを切り替える動作や切り替え装置用のケーブルを引き回す動作を行う必要がない。その結果、作業の効率化を図ることができる。また、エア工具89の使用中には、プラス側出力端子25およびマイナス側出力端子26から電流が出力されないように制御回路41が調整部10を制御する。そのため、エア工具89の使用中に不必要な電力が消費されることが抑制され、消費電力の低減が達成される。以上のように、本実施の形態の溶接用電源装置1は、半自動溶接モジュール60、ガウジングモジュール70、およびエア工具89を接続可能であって、かつ作業の効率化および消費電力の低減を達成可能な溶接用電源装置となっている。また、上記実施の形態における手順に従って溶接用電源装置1を制御することにより、半自動溶接モジュール60、ガウジングモジュール70、およびエア工具89を接続可能な溶接用電源装置1を用いた作業における効率化および消費電力の低減を達成することができる。
【0035】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2における溶接用電源装置の制御方法について説明する。図5は、実施の形態2における溶接用電源装置の制御方法の概略を示すフローチャートである。図5および図4を参照して、実施の形態2における溶接用電源装置1の制御方法は、基本的には実施の形態1の場合と同様に実施され、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2の溶接用電源装置1の制御方法は、以下の点において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0036】
図5を参照して、実施の形態2における溶接用電源装置1の制御方法では、エア工具モードが選択された場合に(S60)、エア工具モードが選択されたことが記憶される(S70;エア工具モードの記憶)。本実施の形態においては、モードの記憶は、溶接用電源装置1に設置された揮発性メモリに格納される。モードの記憶は、その後に半自動溶接モードが選択され(S20)、半自動溶接が実施された場合には(S80においてYES)消去される(S90)。また、モードの記憶は揮発性メモリに格納されるため、主電源がオフ状態とされた場合にも消去される。
【0037】
そして、空気吐出口83からの空気の吐出が確認され、エア検出信号が出力された場合(S10においてYES)、確認用の電圧を印加するステップ(S30)の前に、上記不揮発性メモリ内にエア工具モードの記憶が有るか否かが確認される(S100)。そして、エア工具モードの記憶が有る場合(S100においてYES)、確認用の電圧を印加することなくエア工具モードが選択される(S60)。一方、エア工具モードの記憶が無い場合(S100においてNO)、上記実施の形態1の場合と同様にステップ(S30)が実施される。
【0038】
通常、半自動溶接、ガウジングおよびエア工具89を用いた処理、の順で作業は進められる。そのため、エア工具89を用いた作業が実施された後に、母材90の同一箇所に対してガウジングが実施されることはほとんどない。一旦エア工具モードが選択された場合、その後に半自動溶接が実施されてモード記憶が消去された場合や電源がオフ状態とされてモード記憶が消去された場合を除いて確認用電圧を印加することなくエア工具モードを直ちに選択することにより、不必要な確認用電圧の印加を省略し、一層消費電力を低減することができる。
【0039】
なお、上記実施の形態においては、エア検出部としてフロースイッチ81が採用される場合について説明したが、エア検出部として採用可能なデバイスはこれに限られず、たとえば圧力センサであってもよい。ガウジングモジュール70の開閉バルブ72が開けられた場合、エア流路84内の圧力は低下する。そのため、この圧力の低下を感知して、圧力センサからエア検出信号を出力することができる。
【0040】
また、上記実施の形態では、プラス側出力端子25に接続された出力用連結部27に半自動溶接モジュール60とガウジングモジュール70とを付け替えて接続する構成について説明したが、本発明の溶接用電源装置はこれに限られず、たとえば半自動溶接モジュール60およびガウジングモジュール70のそれぞれに対応する出力端子を備え、制御モードの切り替えに対応して出力端子が切り替えられて使用される構成が採用されてもよい。この場合、出力端子の切り替えは、たとえばマグネットスイッチ、スイッチング素子などにより行うことができる。
【0041】
また、上記実施の形態では、プラス側出力端子25に接続された出力用連結部27に半自動溶接モジュール60とガウジングモジュール70とを付け替えて接続する構成について説明したが、プラス側出力端子25に半自動溶接モジュール60およびガウジングモジュール70の両方が接続されてもよい。この場合でも、上述のように電圧変動信号およびエア検出信号の有無に基づいて適切な制御モードが選択されることにより、駆動されるモジュールに合わせた適切な出力を供給することができる。
【0042】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の溶接用電源装置およびその制御方法は、半自動溶接モジュール、ガウジングモジュール、およびエア工具を接続可能であって、かつ作業の効率化および消費電力の低減が求められる溶接用電源装置およびその制御方法に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0044】
1 溶接用電源装置、10 調整部、11 1次側整流回路、12 インバータ、13 トランス、14 2次側整流回路、15,16 配線、21 変流器、22 直流リアクトル、23 タッチ電源、24 スイッチ、25 プラス側出力端子、26 マイナス側出力端子、27 出力用連結部、28 ケーブル、31 電圧検出部、41 制御回路、43 交流電源入力端子、51 三相交流電源、60 半自動溶接モジュール、61 ワイヤフィーダ、62 トーチ、63 パワーケーブル、65 溶接ワイヤ、70 ガウジングモジュール、72 開閉バルブ、81 フロースイッチ、82 空気流入口、83 空気吐出口、84 エア流路、85 接続ホース、86 接続ホース、87 エア用連結部、88 接続ホース、89 エア工具、90 母材、91 配線。
図1
図2
図3
図4
図5