特許第6495725号(P6495725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495725
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 11/00 20060101AFI20190325BHJP
   G01G 23/01 20060101ALI20190325BHJP
   B07C 5/18 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   G01G11/00 H
   G01G23/01 Z
   B07C5/18
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-83929(P2015-83929)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-205846(P2016-205846A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】302046001
【氏名又は名称】アンリツインフィビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大石 瑞貴
【審査官】 大森 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−183240(JP,A)
【文献】 特開平06−043011(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0181349(US,A1)
【文献】 特開2012−173248(JP,A)
【文献】 特開2012−208083(JP,A)
【文献】 特開2013−034954(JP,A)
【文献】 特開2014−025831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 11/00−11/20,23/01,
B07C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前段から順次搬入される被計量物(W)を受け、後段に搬出する搬送部(3)と、
前記搬送部への前記被計量物の搬入を検知して検知信号を出力する検知部(4)と、
前記搬送部に作用する荷重に応じて秤量信号を出力する秤量部(21)と、
前記秤量信号を所定の信号処理条件で信号処理し、計量信号および計量値を出力する計量部(72)と、
前記信号処理条件を設定する制御部(74)と、
を備えた計量装置において、
前記計量部は、前記被計量物としての所定のサンプル品が投入されたときの前記秤量信号を受けて、該サンプル品の後端が前記搬送部の搬出端から離間したときに生じた振動成分を抽出する振動抽出部(120)と、前記振動成分を前記秤量信号の所定の位置に重畳させた重畳秤量信号を生成する振動重畳部(121)と、を含み、
前記制御部は、前記重畳秤量信号が信号処理されて出力される前記計量信号に基づいて、前記被計量物が搬入されたときに前記計量部における前記信号処理条件を設定することを特徴とする計量装置。
【請求項2】
前記搬送部は、前記秤量部が接続される秤量コンベア(32)と前記秤量コンベアに前記被計量物を搬入する助走コンベア(31)とから構成され、
前記制御部は、前記サンプル品が前記助走コンベアから前記秤量コンベアに乗り移った後に前記秤量コンベアを一時停止させ、前記秤量コンベアが一時停止している間に前記計量部から出力される計量値を前記サンプル品の実計量値として取得し、前記実計量値と前記重畳秤量信号が信号処理されて出力される前記計量信号とに基づいて前記信号処理条件を設定することを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記振動重畳部は、互いに異なる複数のワークピッチに対応した位置に重畳させた前記重畳秤量信号をそれぞれ生成し、
前記制御部は、複数の前記重畳秤量信号のそれぞれに対して複数の信号処理条件で算出される計量値に基づいて、前記被計量物が搬入されたときに前記計量部における前記信号処理条件を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記制御部が前記ワークピッチに対応した各位置において設定する前記信号処理条件を記憶する記憶部(73)を備え、
前記制御部は、前記検知信号に基づいて得られる前記ワークピッチに対応する前記信号処理条件を前記記憶部から選択して、前記計量部に設定することを特徴とする請求項3に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物を搬送しながら計量する計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品等の生産ラインにおいては、生産ラインに組み込まれ、生産される物品が前段から順次搬入され、搬入された物品を搬送しながら計量し、後段に搬出または選別部により生産ラインから排除する計量装置が用いられている。
【0003】
このような計量装置では、先行する被計量物が秤量コンベアから後段のコンベアに乗り移る際に、秤量コンベアに残振動が発生する。この残振動は、後続する被計量物との間隔が狭い場合には後続する被計量物の秤量信号にも含まれてしまうため、計量誤差を発生させるという問題がある。
【0004】
これに対し、従来の計量装置として、残振動を予めサンプリングしておき、この残振動を後続の被計量物の秤量信号から減算することで、残振動の影響による計量誤差を防止するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3779443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、平均的な被計量物としてのサンプル物品を用いて残振動データをサンプリングして予め記憶しておき影響値を減算して補正する構成であり、サンプル物品の残振動と実計量中の残振動との差が補正精度の低下に直結するという問題があった。残振動は、非定常な過渡応答であるから、被計量物の搬送状態(例えば、搬送方向に対する被計量物の角度)の変動が残振動波形の変動としてあらわれてしまい、投入される被計量物の搬送状態がばらついたり、時間とともに変化するような場合には、これに伴い残振動の影響も変化して補正の効果が十分発揮できなかった。このため、特許文献1に記載の計量装置は、残振動の影響を安定して補正することが困難であり、実用的でなかった。
【0007】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、先行する被計量物の残振動があっても、計量精度が悪化しないようにし、残振動を加味した計量パラメータを設定でき、安定して精度のよい計量を行うことができる計量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る計量装置は、前段から順次搬入される被計量物を受け、後段に搬出する搬送部と、前記搬送部への前記被計量物の搬入を検知して検知信号を出力する検知部と、前記搬送部に作用する荷重に応じて秤量信号を出力する秤量部と、前記秤量信号を所定の信号処理条件で信号処理し、計量信号および計量値を出力する計量部と、前記信号処理条件を設定する制御部と、を備えた計量装置において、前記計量部は、前記被計量物としての所定のサンプル品が投入されたときの前記秤量信号を受けて、該サンプル品の後端が前記搬送部の搬出端から離間したときに生じた振動成分を抽出する振動抽出部と、前記振動成分を前記秤量信号の所定の位置に重畳させた重畳秤量信号を生成する振動重畳部と、を含み、前記制御部は、前記重畳秤量信号が信号処理されて出力される前記計量信号に基づいて、前記被計量物が搬入されたときに前記計量部における前記信号処理条件を設定することを特徴とする。
【0009】
この構成により、サンプル品の後端が搬送部の搬出端から離間したときに生じた振動成分(残振動)を所定の位置に重畳させた重畳秤量信号を用いて信号処理条件(計量パラメータ)を設定することができる。このため、1個乃至数個といった少ない数のサンプル品を用いることにより、実際には順次搬入される被計量物について、残振動を加味した信号処理条件を設定でき、残振動の影響を受けずに安定して精度のよい計量を行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る計量装置において、前記搬送部は、前記秤量部が接続される秤量コンベアと前記秤量コンベアに前記被計量物を搬入する助走コンベアとから構成され、前記制御部は、前記サンプル品が前記助走コンベアから前記秤量コンベアに乗り移った後に前記秤量コンベアを一時停止させ、前記秤量コンベアが一時停止している間に前記計量部から出力される計量値を前記サンプル品の実計量値として取得し、前記実計量値と前記重畳秤量信号が信号処理されて出力される前記計量信号とに基づいて前記信号処理条件を設定することを特徴とする。
【0011】
この構成により、秤量コンベアが一時停止している間にサンプル品の実計量値を取得し、計量信号の収束値として安定性を判定することができるから、残振動に加えてサンプル品の真の計量値に対する偏りを加味した精度のよい計量を行える信号処理条件を設定できる。
【0012】
また、本発明に係る計量装置において、前記振動重畳部は、互いに異なる複数のワークピッチに対応した位置に重畳させた前記重畳秤量信号をそれぞれ生成し、前記制御部は、複数の前記重畳秤量信号のそれぞれに対して複数の信号処理条件で算出される計量値に基づいて、前記被計量物が搬入されたときに前記計量部における前記信号処理条件を設定することを特徴とする。
【0013】
この構成により、想定されるワークピッチ(被計量物の搬入間隔)の変動範囲に対応した位置に重畳させた複数の重畳秤量信号のそれぞれに対して複数の信号処理条件で計量値が算出され、その計量値に基づいて、計量値を算出するための処理を施した信号処理条件の中から最適となる最適処理条件が選択されて信号処理条件を設定するので、最低精度を確保して安定した計量を行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る計量装置は、前記制御部が前記ワークピッチに対応した各位置において設定する前記信号処理条件を記憶する記憶部を備え、前記制御部は、前記検知信号に基づいて得られる前記ワークピッチに対応する前記信号処理条件を前記記憶部から選択して、前記計量部に設定することを特徴とする。
【0015】
この構成により、稼働時において、被計量物毎にワークピッチに対応した、残振動を加味した最適な計量パラメータを用いることができ、より安定して精度のよい計量を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、先行する被計量物の残振動を加味した計量パラメータを設定でき、安定して精度のよい計量を行うことができる計量装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る計量装置の概要を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る計量装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る計量装置の計量部の構成を示す図である。
図4】秤量信号の時間変化を示す図である。
図5】(a)は残振動を含んだ秤量信号およびこの秤量信号から抽出した残振動波形を示す図であり、(b)は重畳秤量信号を示す図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る計量装置の制御部が参照する位置別フィルタ選択テーブルを示す図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る計量装置の制御部が行うフィルタ条件の選択を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る計量装置の実施の形態について図面を参照して説明する。図1図7は、本発明に係る計量装置の一実施の形態を示している。
【0019】
まず、計量装置1の概要を説明する。図1に示すように、計量装置1は、装置本体部2と、搬送部3と、搬入センサ4とを備えて構成されている。また、計量装置1の後段には選別部5が接続されている。
【0020】
計量装置1は、生産ラインの一部を構成するベルトコンベア14の下流側に設置されており、所定の間隔で矢印A方向に順次搬入されてくる肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物Wの重量を測定し、得られた測定値(以下、計量値という)を計量結果として出力している。
【0021】
また、計量装置1は、計量値が基準値の範囲内にあるか否か等により、被計量物Wを良品と不良品の何れかに判定している。さらに、計量装置1は、得られた計量値に基づいて、複数の基準値に対応して被計量物Wを重量ランク判定をしている。
【0022】
また、測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果は、表示部10に表示されるとともに、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力されるようになっている。選別部5では、計量装置1が出力した測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果に応じて被計量物Wを振り分けるようになっている。
【0023】
次に、計量装置1の詳細な構成を説明する。図1図2に示すように、装置本体部2は、秤量部21と、総合制御部7と、表示部10と、設定部11と、これらの各部を収納する収納筐体2aとにより構成されている。
【0024】
搬送部3は、ベルトコンベア14から矢印A方向に搬入されてくる被計量物Wを所定の搬送条件により搬送している。被計量物Wは、助走コンベア31により測定するのに最適な速度になるよう加速または減速されて搬送され、秤量コンベア32によりさらに搬送され、搬送されている間に重量が秤量部21により計量されるようになっている。
【0025】
秤量コンベア32は、被計量物を所定の搬送条件により搬送している。また、被計量物Wは、計量の後にさらに後段の選別部5に搬送され、振り分けられるようになっている。
【0026】
搬送部3は、助走コンベア31および秤量コンベア32により構成されている。助走コンベア31は、前段のベルトコンベア14から搬送されてきた被計量物Wが秤量コンベア32に移動する前に、被計量物Wの助走を行うものであり、2つのローラ31a、31cと、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト31bとにより構成されている。
【0027】
秤量コンベア32は、被計量物Wの計量を行う秤量部21の上部に支持されており、2つのローラ32a、32cとこれらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト32bと、ローラ32cを駆動する図示しないモータとにより構成されている。ローラ32cは、モータの駆動により回転駆動されるようになっている。
【0028】
搬入センサ4は、助走コンベア31と秤量コンベア32との間に配置されており、一対の投光部4aおよび受光部4bからなる透過形光電センサで構成されている。投光部4aは搬送ベルト32bの装置本体部2側に配置されている。受光部4bは搬送ベルト32bの他の側面側に、投光部4aに対向するように配置されている。
【0029】
搬入センサ4は、被計量物Wが投光部4aおよび受光部4bの間を通過して被計量物Wにより受光部4bが遮光されることで、被計量物Wの搬入が開始されたことを検出するようになっている。搬入センサ4で検出された搬入開始の信号は、装置本体部2内の総合制御部7に出力されるようになっている。
【0030】
秤量部21は、秤量コンベア32を支持し被計量物Wの荷重に基づいて秤量信号を出力する荷重センサである。秤量部21は、電気抵抗線式秤(ロードセル)の構成を有し、被計量物Wが秤量コンベア32で搬送されている間に、秤量部21に加わる荷重を測定するようになっている。
【0031】
秤量部21は、図示しない金属性の起歪体と、この起歪体の応力集中部に貼り付けた電気抵抗線(ひずみゲージ)からなるブリッジ回路とを有している。秤量部21は、荷重を受けて起歪体の応力集中部が変形することで、電気抵抗線が圧縮されて電気抵抗値が減少するとともに、電気抵抗線が伸張されて電気抵抗値が増加してブリッジ回路の抵抗値が変化するため、この抵抗値の変化を検出した検出信号を増幅し、フィルタ回路等を通して成形した信号を荷重測定した秤量信号として出力するようになっている。
【0032】
起歪体は、固定端と自由端を有しており、固定端が固定ベースに固定される一方、その自由端には秤量コンベア32の荷重を受ける支持部21aの下端部が連結されている。なお、秤量部21としては、電磁平衡式秤(フォースバランス)、または差動トランス式秤を用いてもよい。
【0033】
総合制御部7は、計量部72、記憶部73、制御部74、良否判定部76、モード切換部77を備えている。
【0034】
計量部72は、図3に示すように、振動抽出部120、振動重畳部121、フィルタ処理部123、計量値算出部124を備えており、秤量部21からの秤量信号を図示しないA/D変換器でデジタル変換し、デジタル化された秤量信号を、信号処理条件としての計量パラメータに従ってフィルタ処理部123でフィルタ処理した後、計量値算出部124で計量値を算出する。計量パラメータとしては、フィルタ処理部で使用するフィルタ条件と計量値算出部124で使用する計量条件等がある。なお、ここでは、フィルタ処理部123と計量値算出部124を説明し、振動抽出部120と振動重畳部121は後述する。
【0035】
フィルタ処理部123は、種類や特性の異なる複数のローパスフィルタを帯域フィルタとして記憶しており、複数のローパスフィルタから選択したローパスフィルタを用いて、秤量部21からの秤量信号に対してフィルタ処理を行い、秤量信号の低周波成分のみを信号処理済の秤量信号として通過させるようになっている。
【0036】
なお、フィルタ処理部123が選択するローパスフィルタは、1つの場合、または、複数を組み合わせたものの場合がある。このローパスフィルタとしては、FIR(Finite Impulse Response)フィルタと、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタとがある。
【0037】
FIRフィルタは、インパルス応答波形が入力された場合に、ある決まった時間(有限時間)だけ出力する有限インパルス応答フィルタであり、IIRフィルタは、無限にインパルス応答波形の減衰波形を出力する無限インパルス応答フィルタである。
【0038】
ここで、FIRフィルタは、A/D変換器96によりデジタル信号に変換された秤量信号に対して、所定の低周波成分を通過するローパスフィルタを構成し、単純平均化処理や公知の窓関数を用いた重み付け平均化処理を行うようになっている。
【0039】
IIRフィルタは、スイッチトキャパシタフィルタのように特性変更が可能なハードウェアを用いて秤量部21からの秤量信号(アナログ秤量信号)を直接受けて処理済信号をA/D変換器96に出力するアナログフィルタで構成してもよいし、A/D変換器96からのデジタル秤量信号を受けるデジタルフィルタで構成してもよい。
【0040】
計量値算出部124は、フィルタ処理部123でフィルタ処理された秤量信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出(グラム換算)するようになっている。計量値算出部124により算出された個々の計量値は、記憶部73に算出データとして記憶される。
【0041】
また、計量部72においては、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから、図5(b)に示すように所定の基準時間Tkが経過した以降に秤量部21から秤量信号が出力された被計量物Wに対して、計量値を算出するようになっている。
【0042】
ここで、基準時間Tkは、搬入センサ4で被計量物Wが秤量コンベア32に搬入を開始したことを検出してから、被計量物Wが秤量コンベア32に完全に乗り移り、さらに秤量部21から出力された秤量信号が安定するまでに必要な時間である。
【0043】
より詳しくは、基準時間Tkは、秤量コンベア32の速度(m/min)、秤量コンベア32の矢印B方向の長さ(mm)および被計量物Wの搬送方向である矢印B方向の長さ(mm)、被計量物Wのサイズやラインの処理能力、その他の条件などに基づいて設定される。
【0044】
また、図4に示すように、基準時間Tkが経過すると、被計量物Wは、搬入開始検出位置PoからL1だけ移動して質量測定位置Psに到達し、質量測定位置Ps以降に計量が行われる。
【0045】
また、計量値の算出は、基準時間Tkが経過した以降、被計量物Wが秤量コンベア32から搬出されるまでの測定時間Ts(図4参照)において行われる。
【0046】
なお、計量部72においては、被計量物Wの品種(特に、サイズ)に応じて、その測定範囲、測定能力および検査精度などの検査条件(パラメータ)が選択されるようになっており、被計量物Wの品種に応じて、例えば、測定範囲が6g〜600g、測定能力が最大150個/minで選択されるようになっている。
【0047】
この場合、被計量物Wの1個当たりの基準時間Tkは、最小400msecに設定されていることになり、基準時間Tkは400msec以上であればよいが、被計量物Wのサイズ、ラインの処理能力、生産その他の条件により設定されるようになっている。
【0048】
記憶部73は、記憶媒体などから構成されており、秤量コンベア32による被計量物Wの所定の搬送条件、および計量部72で使用する計量パラメータを含む条件パラメータを被計量物Wの品種に対応させて記憶するようになっている。
【0049】
記憶部73には、被計量物Wの品種毎に付された各品種番号に対応して、搬送速度、LPF(Low Pass Filter)特性が記憶されている。また、記憶部73には、被計量物Wの良否を判定するための良品範囲として、上限および下限の基準値が記憶されている。
【0050】
ここで、搬送速度は、被計量物Wを搬送する搬送部3の速度であり、LPF特性は、どのような特性のローパスフィルタであるかを示すものであり、良品範囲とは、良品と判定される被計量物Wの計量値の範囲である。
【0051】
これらの記憶情報は、設定部11からの設定操作または外部機器との接続により予め記憶されるようになっている。記憶部73は、計量値、良否判定結果等の種々のデータを記憶するようになっている。
【0052】
制御部74は、被計量物Wの品種に応じて記憶部73から所定の搬送条件および所定の信号処理条件を読み出して秤量コンベア32をそれぞれ制御するようになっている。
【0053】
また、制御部74は、記憶部73に記憶している複数の品種に対応する条件パラメータを順次切り換えて搬送部3を制御するようになっている。また、制御部74は、図示しないモータの回転速度(rpm)を駆動制御して、搬送部3による被計量物Wの搬送速度を制御するようになっている。
【0054】
良否判定部76は、判定回路などから構成されており、計量部72が算出した計量値と良否判定基準値との比較に基づく良否判定結果を判定して出力するようになっている。
【0055】
具体的には、良否判定部76は、計量部72から出力された被計量物Wの計量値を受けると、記憶部73に予め記憶されている上限値および下限値を読み出し、算出した被計量物Wの計量値と上限値および下限値とをそれぞれ比較し、上限値および下限値で決定される許容範囲内に被計量物Wの計量値が入っているか否かを判定するようになっている。
【0056】
良否判定部76において判定された判定結果は、表示部10に出力され、良品または不良品として表示されるようになっている。また、判定結果は、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力され、被計量物Wが良品または不良品として選別されるようになっている。さらに、この判定結果は、記憶部73に出力され、各被計量物Wについての判定結果が記憶されるようになっている。
【0057】
モード切換部77は、制御部74に指令を出し、計量装置1の動作モードを、本稼働モードと設定モードとの間で切り換えるものである。ここで、本稼働モードとは、計量装置1が被計量物Wの計量値の算出および良否判定を行う通常の動作モードのことであり、設定モードとは、各種パラメータの設定をしたり、本稼働モードの動作を正常に行うことができるか否かの動作確認のための動作モードである。
【0058】
表示部10は、図1に示すように、装置本体部2の搬送部3側の上端部に設けられ、液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成される。表示部10は、計量装置1の動作状態、被計量物Wの計量値、良否判定結果を表示したり、パラメータの設定や動作確認に関する表示をするようになっている。なお、表示部10と設定部11とを一体化してタッチパネルとして構成し、表示部10に表示された数字、文字などが設定部11からタッチ操作で入力される構成にしてもよい。
【0059】
選別部5は、計量装置1の後段に接続されており、選別機構部5aおよび搬送ベルト5bにより構成されている。選別機構部5aは、例えば、押し出し型の選別機構により構成されている。
【0060】
選別機構部5aは、良品と不良品とを選別できるものであればよく、フリッパ機構、ドロップアウト機構、エアジェット機構などの選別機構で構成してもよい。選別機構部5aは、上流の秤量コンベア32から搬送される被計量物Wが搬送ベルト5bで矢印B方向に搬送されている間に、不良品と判定された被計量物Wに対して搬送ベルト5bの側面方向への押し出しやジェットエアの吹き付けを行うようになっており、不良の被計量物Wを搬送ベルト5b上から排出し、良品の被計量物Wと区別することにより選別を行っている。
【0061】
また、搬送ベルト5bは、ローラ5cおよびローラ5cに対向して配置されるローラ(不図示)と、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルトとして構成されており、測定を終了した被計量物Wを所定の速度で下流側に搬送するようになっている。
【0062】
さらに、本実施形態の計量装置1は、図3に示すように、計量部72には、振動抽出部120と振動重畳部121を備えており、動作モードが設定モードのときに残振動処理条件に従って動作する。また、動作モードが本稼働モードのときには、振動重畳部121では何もせず、秤量部21からの秤量信号はフィルタ処理部123にそのまま通過する。
【0063】
振動抽出部120は、本稼働前に1つのサンプル品を被計量物Wとして助走コンベア31および秤量コンベア32に搬送されて得られるデジタル化された秤量信号から、そのサンプル品の搬出端から離間したときに生じた振動成分(残振動)を抽出するようになっている。
【0064】
ここで、残振動は、秤量コンベア32から後段のコンベアに乗り移る際に発生するので、残振動処理条件の中の抽出条件(搬入センサ4の検出タイミング、搬入センサ4から秤量コンベア32の後端までの距離、秤量コンベア32の搬送速度)に従って残振動を抽出する。例えば、図5(a)に示すように、サンプル品の残振動S2は、サンプル品の秤量信号S1の振動波形に対し、搬入センサ4によってサンプル品の搬入を検知したタイミング位置から所定区間離れた位置に発生するので、残振動の発生開始位置から残振動が収束する位置までを抽出する。なお、サンプル品の秤量信号及び抽出した残振動は、図示しないメモリに一時記憶される。
【0065】
振動重畳部121は、残振動処理条件の中の重畳条件(重畳位置)に従って重畳秤量信号を生成する。例えば、図5(b)に示すように、サンプル品の秤量信号S1にサンプル品の残振動S2を所定の位置で重畳させたS3のような重畳秤量信号を生成する。
【0066】
振動重畳部121は、複数のワークピッチ(被計量物Wの搬入間隔)に対応するように、重畳させる重畳位置を異ならせた複数の重畳秤量信号を生成する。重畳位置の範囲は、残振動が計量値に影響を与えるような位置であり、例えば、図4の測定期間Tsの開始点Cの近傍区間を重畳位置とすると、測定期間Tsの始まり付近で残振動が重畳されるようになる。
【0067】
また、制御部74は、本稼働で計量値を算出するのに最適な計量パラメータを設定するために、重畳位置の範囲内の複数のワークピッチに対応する重畳秤量信号に対して、計量パラメータを変化させながら計量値を取得し、取得した計量値に基づいて計量パラメータの最適条件を導き出し、本稼働で計量値を算出するのに最適な計量パラメータを設定する。
【0068】
具体的には、制御部74は、図6に示す位置別フィルタ選択テーブルを作成する。この位置別フィルタ選択テーブルでは、ワークピッチごと、フィルタの種類別に、図4の秤量信号のタイミングDから時間軸左側への前進量(D−1またはD−2)での測定ポイントとフィルタタップ数とを変化させて取得した計量値について、サンプル品の計量値との比較値(例えば、差分値、割合等)をテーブル化したものである。なお、サンプル品の計量値は、サンプル品の秤量信号について所定のフィルタ処理条件(例えば、比較的タップ数が大きく測定ポイントがDの計量値、またはその測定ポイントにおける計量値の平均等)で得られる計量値をサンプル品の計量値とすることができる。また、サンプル品の計量値は予め設定部から設定するようにしてもよい。
【0069】
制御部74は、作成した位置別フィルタ選択テーブルをワークピッチ方向に串刺しするように、フィルタ処理条件(フィルタ種別、測定ポイント、フィルタタップ数)毎に複数のワークピッチの比較値の中の最大値をそのフィルタ処理条件において許容される範囲の限度を示す許容比較値として求め、それらの複数のフィルタ処理条件の許容比較値の中で最小の許容比較値を持つフィルタ処理条件を最適な計量パラメータとして設定する。ここで、許容比較値を求めるためにフィルタ処理条件を基準にして比較値をテーブル化すると、例えば、図7に示すようなテーブルになる。
【0070】
図7の位置別フィルタ選択テーブルは、例えばフィルタ1について、測定ポイントDのタップ数1、3、5をそれぞれフィルタ処理条件101、フィルタ処理条件103、フィルタ処理条件105とし、測定ポイントD−1のタップ数1、3、5をそれぞれフィルタ処理条件111、フィルタ処理条件113、フィルタ処理条件115、...として縦方向に並べ、横方向にワークピッチWP1、WP2、WP3を配列したテーブルとなっている。
【0071】
図7では、フィルタ処理条件101のワークピッチWP1の比較値が0.3、ワークピッチWP2の比較値が0.2、ワークピッチWP3の比較値が0.2であり、比較値の最大値は、ワークピッチWP1の0.3であるからフィルタ処理条件101の許容比較値は0.3となる。同様にフィルタ処理条件ごとに許容比較値を求めると、フィルタ処理条件103の許容比較値は0.5、フィルタ処理条件105の許容比較値は0.4、フィルタ処理条件111の許容比較値は0.4、フィルタ処理条件113の許容比較値は0.5、フィルタ処理条件115の許容比較値は0.6となる。そして、各フィルタ処理条件の許容比較値が最小値となるフィルタ処理条件(ここでは許容比較値が0.3であるフィルタ処理条件101)を選択して最適な計量パラメータとして設定する。
【0072】
このようにすることは、すなわち、複数のワークピッチに対応する重畳秤量信号から得られる計量値とサンプル品の計量値とを比較した比較値の最大値である許容比較値が、想定されるワークピッチの変動範囲内で残振動が重畳した重畳秤量信号をフィルタ処理して得られる計量値のそのフィルタ処理条件における計量誤差範囲となるので、計量誤差範囲が最も小さくなるフィルタ処理条件を選択することで計量誤差を最小限に抑えることができるようになる。
【0073】
なお、制御部74は、図6に示す位置別フィルタ選択テーブルにおいて、ワークピッチ毎の比較値が最小となるフィルタ処理条件を選択してワークピッチ毎に最適な計量パラメータとして記憶部に記憶し、稼働時には、搬入センサ4を用いてワークピッチを取得し、取得したワークピッチに対応する最適な計量パラメータを記憶部から読み出して計量パラメータを設定して計量値を算出させるのがより好ましい。
【0074】
このようにすれば、稼働時において、被計量物W毎にワークピッチに対応した、残振動を加味した最適な計量パラメータを用いることができ、より安定して精度良く被計量物Wの計量値を算出することが可能となる。
【0075】
また、秤量コンベア32は、サンプル品が助走コンベア31から秤量コンベア32に乗り移った後に一時停止し、秤量コンベア32が一時停止している間に、サンプル品の秤量信号を一旦取得する。その後、秤量コンベア32が逆搬送して、サンプル品を助走コンベア31に戻し、再度、サンプル品を助走コンベア31および秤量コンベア32に搬送させて、振動抽出部120が残振動を取得するようにするのが好ましい。
【0076】
すなわち、被計量物Wを搬送しながら計量を行うダイナミック計測では、同じ被計量物Wを複数回計測しても計量値が等しくならず、偏りが生じることがある。しかし、秤量コンベア32を一時停止させて計量を行うことで、この偏りを回避し、例えば、サンプル品の正確な実計量値を取得することができる。
【0077】
また、秤量コンベア32が、1つの被計量物Wを複数回搬送し、振動抽出部120が、1つのサンプル品を秤量コンベア32に複数回搬送されたときの秤量部21からそれぞれ出力される秤量信号を取得しても良い。例えば、秤量コンベア32から搬出されたサンプル品をユーザが助走コンベア31上に戻すことで、所望の回数の計量が行われ、位置別選択テーブルにおける比較値の精度を高めることができる。
【0078】
本実施形態では、複数の重畳秤量信号から最適な計量パラメータを設定するように説明したが、前段に被計量物Wを定間隔にさせる装置があって、被計量物Wのワークピッチが一定になるような場合には、1つの重畳秤量信号において最適処理条件となる計量パラメータを設定するようにしてもよい。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態に係る計量装置1において、計量部72は、被計量物Wとしての所定のサンプル品が投入されたときの秤量信号を受けて、該サンプル品の後端が搬送部3の搬出端から離間したときに生じた振動成分を抽出する振動抽出部120と、振動成分を秤量信号の所定の位置に重畳させた重畳秤量信号を生成する振動重畳部121と、を含み、制御部74は、重畳秤量信号が信号処理されて出力される計量信号に基づいて、被計量物Wが搬入されたときに計量部72における信号処理条件を設定することを特徴とする。
【0080】
この構成により、サンプル品の後端が搬送部3の搬出端から離間したときに生じた振動成分(残振動)を所定の位置に重畳させた重畳秤量信号を用いて信号処理条件(計量パラメータ)を設定することができる。このため、1個乃至数個といった少ない数のサンプル品を用いることにより、実際には順次搬入される被計量物について、残振動を加味した信号処理条件を設定でき、残振動の影響を受けずに安定して精度のよい計量を行うことができる。
【0081】
また、本実施の形態に係る計量装置1において、搬送部3は、秤量部21が接続される秤量コンベア32と秤量コンベア32に被計量物Wを搬入する助走コンベア31とから構成され、制御部74は、サンプル品が助走コンベア31から秤量コンベア32に乗り移った後に秤量コンベア32を一時停止させ、秤量コンベア32が一時停止している間に計量部72から出力される計量値をサンプル品の実計量値として取得し、実計量値と重畳秤量信号が信号処理されて出力される計量信号とに基づいて信号処理条件を設定することを特徴とする。
【0082】
この構成により、秤量コンベア32が一時停止している間にサンプル品の実計量値を取得し、計量信号の収束値として安定性を判定することができるから、残振動に加えてサンプル品の真の計量値に対する偏りを加味した精度のよい計量を行える信号処理条件を設定できる。
【0083】
また、本実施の形態に係る計量装置1は、振動重畳部121は、互いに異なる複数のワークピッチに対応した位置に重畳させた重畳秤量信号をそれぞれ生成し、制御部74は、複数の重畳秤量信号のそれぞれに対して複数の信号処理条件で算出される計量値に基づいて、被計量物Wが搬入されたときに計量部72における信号処理条件を設定することを特徴とする。
【0084】
この構成により、想定されるワークピッチ(被計量物Wの搬入間隔)の変動範囲に対応した位置に重畳させた複数の重畳秤量信号のそれぞれに対して複数の信号処理条件で計量値が算出され、その計量値から計量値を算出するための処理を施した信号処理条件の中から最適となる最適処理条件が選択されて信号処理条件を設定するので、最低精度を確保して安定した計量を行うことができる。
【0085】
また、本実施の形態に係る計量装置1は、制御部74が算出した重畳させる各位置における最適処理条件を記憶する記憶部73を備え、制御部74は、記憶部73から最適処理条件を選択して、信号処理条件を設定することを特徴とする。
【0086】
この構成により、記憶部73から最適処理条件を選択して信号処理条件を設定できるので、例えば、被計量物Wの搬入を検知したときに、先行する被計量物Wとのワークピッチを取得するようにすれば、常に、最適処理条件を信号処理条件として設定して計量を行うことができ、より安定して精度のよい計量を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明に係る計量装置は、先行する被計量物の残振動を加味した最適な検査条件を設定し、計量値を精度良く算出することができるという効果を有し、肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物を搬送しながら計量する計量装置として有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 計量装置
3 搬送部
21 秤量部
31 助走コンベア
32 秤量コンベア
72 計量部
73 記憶部
74 制御部
120 振動抽出部
121 振動重畳部
W 被計量物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7