【文献】
中島康宏、盛岡実、坂井悦郎、大門正機,遊離石灰-無水セッコウ系膨張材の物性に及ぼす組成および焼成条件の影響,コンクリート工学年次論文集,日本,コンクリート工学会,2000年,Vol.22, No.2,PP.31-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポルトランドセメント100質量部に対して、炭酸カルシウム微粉末5〜40質量部、細骨材60〜200質量部、流動化剤0.02〜0.20質量部、収縮低減剤0.5〜2.0質量部、消泡剤0.02〜0.20質量部及び再乳化形樹脂粉末2.0〜8.0質量部含む、
請求項1に記載の水硬性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<水硬性組成物>
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態の水硬性組成物は、ポルトランドセメント、炭酸カルシウム微粉末、細骨材、無機系膨張材、流動化剤、収縮低減剤、消泡剤及び再乳化形樹脂粉末を含む。以下、各成分について詳細に説明する。
【0017】
ポルトランドセメントは、水硬性材料として一般的なものであり、いずれの市販品も使用することができる。これらのなかでも、JIS R 5210:2009で規定されるポルトランドセメントから選択して用いることができる。施工性の観点から、普通ポルトランドセメント又は早強ポルトランドセメントを用いることが好ましい。
【0018】
ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、好ましくは2800〜5000cm
2/gであり、より好ましくは2900〜4000cm
2/gであり、さらに好ましくは3000〜3500cm
2/gである。ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、JIS R 5201:1997に準じて求められる。ポルトランドセメントのブレーン比表面積が上記の好ましい範囲であることにより、施工性(作業性)に優れる。
【0019】
炭酸カルシウム微粉末は、通常の市販のものを用いることができる。これらのうち、白色度の高い炭酸カルシウム微粉末(寒水石粉末)を用いることが好ましい。
【0020】
炭酸カルシウム微粉末は、粒子径が150μm以上であり且つ300μm未満である粒子の質量分率(%)が20%未満であり、粒子径が75μm以上であり且つ150μm未満である粒子の質量分率(%)が10〜50%であることが好ましい。本実施形態の断面修復材は、粒子径が上述の範囲にある炭酸カルシウム微粉末を含むことによって、モルタル組成物を施工する時間を十分に確保することが可能になるとともに、良好な強度の発現を得ることができる。
【0021】
また、炭酸カルシウム微粉末は、粒子径が300μm以上の粒子を含まないことが好ましい。これにより、良好な強度の発現を得ることができる。
【0022】
炭酸カルシウム微粉末の粒子径は、JIS Z 8801−1:2006「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に規定される公称目開きの異なる数個の篩いを用いて測定することができる。また、「粒子径が150μm以上であり且つ300μm未満である粒子の質量分率(%)」とは、篩目300μmの篩いを用いたときに篩目300μmの篩いを通過し、且つ、篩目150μmの篩を用いたとき、篩目150μmの篩上に残る粒子の炭酸カルシウム微粉末全体に対する質量分率(%)をいう。
【0023】
本実施形態の水硬性組成物における炭酸カルシウム微粉末の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対し、好ましくは5〜40質量部であり、より好ましくは10〜35質量部であり、さらに好ましくは13〜30質量部であり、特に好ましくは15〜25質量部である。
【0024】
炭酸カルシウム微粉末を、上述の好ましい範囲で含有することによって、モルタル組成物を施工する時間を十分に確保することが可能になるとともに、良好な強度の発現を得ることができる。
【0025】
細骨材は、珪砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂等の砂類から選択したものを好適に用いることができる。また、細骨材の粒子径は、細骨材100%中に1.2mm超の粒子径を有する粗粒分の質量分率(%)が15%未満含むことが好ましい。
【0026】
細骨材の粒子径は、JIS A 1102:2014に規定される骨材のふるい分け試験方法に準じて求めることができる。また、本明細書において、「1.2mm超の粒子径を有する粗粒分」とは、公称目開きが1.2mmの篩いを用いたときに、その篩にとどまる細骨材の質量分率(%)をいう。
【0027】
細骨材中に1.2mm超の粒子径を有する粗粒分を15%以上含む場合、水硬性組成物の表面精度が低下する傾向にある。上記粗粒分の下限値は特に制限がなく、0%であってもよい。優れた表面精度を得るため、細骨材中の粗粒分は、より好ましくは0〜13%であり、さらに好ましくは1〜11%であり、特に好ましくは2〜10%である。
【0028】
また、細骨材の各ふるいにとどまる質量分率(%)が、好ましくは、ふるい目開き0.6mmで45〜60%、ふるい目開き0.425mmで70〜85%、ふるい目開き0.3mmで85〜97%、ふるい目開き0.15mmで93〜100%であり、より好ましくは、ふるい目開き0.6mmで46〜59%、ふるい目開き0.425mmで71〜84%、ふるい目開き0.3mmで86〜96%、ふるい目開き0.15mmで94〜100%であり、特に好ましくは、ふるい目開き0.6mmで47〜58%、ふるい目開き0.425mmで72〜83%、ふるい目開き0.3mmで87〜95%、ふるい目開き0.15mmで95〜100%である。
【0029】
細骨材の各ふるいにとどまる質量分率(%)が上記範囲であることにより、より優れた表面精度を得ることができる。
【0030】
本実施形態の水硬性組成物における細骨材の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対し、好ましくは60〜200質量部であり、より好ましくは80〜180質量部であり、さらに好ましくは90〜160質量部であり、特に好ましくは100〜140質量部である。
【0031】
水硬性組成物中の細骨材の含有量が上記範囲であることによって、より優れた施工性を有するとともに、コンクリート構造物と一体化したときに、コンクリート構造物と同等以上の圧縮強度を有する補修用モルタル硬化体を得ることができる。
【0032】
無機系膨張材は、生石灰−石膏系膨張材であり、且つ当該膨張材は、膨張材中の生石灰量が40質量%未満の膨張材A及び生石灰量の割合が40質量%以上の膨張材Bの2種類を組み合わせてなる。また、膨張材A及び膨張材Bの配合比は、膨張材の合計を100質量部とした場合、膨張材A:膨張材B=55:45〜95:5(質量部)の範囲である。また、好ましくは膨張材A:膨張材B=60:40〜90:10の範囲である。
【0033】
無機系膨張材の配合比が上記の範囲であることによって、寸法安定性に優れ、コンクリート構造物と一体化したときに十分な接着耐久性を有るモルタル硬化体を形成することができる。
【0034】
ここで、無機系膨張材中の生石灰量は、JCAS I−01−1997「遊離酸化カルシウムの定量方法」のグリセリン−アルコール法(B法)によって得ることができる。さらに、無機系膨張材に含まれる生石灰及び石膏は、粉末X線回折測定により確認することができる。
【0035】
本実施形態の水硬性組成物における無機系膨張材の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対し、好ましくは4〜20質量部であり、より好ましくは6〜17質量部であり、更に好ましくは8〜15質量部であり、特に好ましくは10〜13質量部である。
【0036】
水硬性組成物中の無機系膨張材の含有量が上記範囲であることによって、寸法安定性に優れ、コンクリート構造物と一体化したときに優れた接着耐久性を有るモルタル硬化体を形成することがより確実となる。
【0037】
流動化剤は、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系及びポリエーテルポリカルボン酸系等の市販の流動化剤が、その種類を問わず使用できる。
【0038】
流動化剤の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、好ましくは0.02〜0.20質量部であり、より好ましくは0.03〜0.15質量部であり、更に好ましくは0.04〜0.12質量部であり、特に好ましくは0.05〜0.10質量部である。
【0039】
水硬性組成物中の流動化剤の含有量が上記範囲であることによって、鏝塗り施工性や接着性がより良好となる。
【0040】
収縮低減剤は、公知の収縮低減剤を好適に添加することができる。収縮低減剤としては、アルキレンオキシド重合物を化学構造の骨格に有するものなどが好ましい。例えばポリプロピレングリコール、ポリ(プロピレン・エチレン)グリコールなどのポリアルキレングリコール類、ポリオキシアルキレンエーテル類及び炭素数1〜6のアルコキシポリ(プロピレン・エチレン)グリコールなどの一般に公知のものから好適に選択して添加することができる。収縮低減剤を適量添加することで、モルタル硬化体の寸法安定性の向上が期待できる。
【0041】
収縮低減剤の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、好ましくは0.5〜2.0質量部であり、より好ましくは0.7〜1.8質量部であり、更に好ましくは0.9〜1.6質量部であり、特に好ましくは1.0〜1.5質量部である。
【0042】
収縮低減剤の含有量が上記範囲であることによって、長期の乾燥収縮を低減することをより向上することができる。
【0043】
消泡剤は、シリコーン系、アルコール系及び/又はポリエーテル系などの合成物質及び/又は植物由来の天然物質など、公知のものが挙げられる。中でもポリエーテル系消泡剤は価格や入手のし易さの観点から好ましい。消泡剤を用いることで、水硬性組成物の施工性が向上することが期待できる。
【0044】
消泡剤の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、好ましくは0.02〜0.20質量部であり、より好ましくは0.03〜0.16質量部であり、更に好ましくは0.04〜0.13質量部であり、特に好ましくは0.05〜0.10質量部である。
【0045】
消泡剤の含有量が上記範囲であることによって、施工性をより向上することができる。
【0046】
再乳化形樹脂粉末は、公知の製造方法で製造されたものを用いることができる。例えば、水性ポリマーディスパージョンを噴霧する方法、又はフリーズドライなどの方法で溶媒を除去し、乾燥して得られる再乳化形樹脂粉末を用いることが好ましい。再乳化形樹脂粉末は、ブロッキング防止剤が再乳化形樹脂粉末の表面に付着しているものであってもよい。
【0047】
再乳化樹脂粉末としては、スチレン/アクリル共重合樹脂を主成分とするものが好ましい。これにより、接着耐久性がより向上する。
【0048】
再乳化樹脂粉末の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、好ましくは2.0〜8.0質量部であり、より好ましくは2.5〜7.0質量部であり、更に好ましくは2.8〜6.5質量部であり、特に好ましくは3.0〜6.0質量部である。
【0049】
再乳化樹脂粉末の含有量が上記範囲であることによって、接着耐久性向上がより確実となる。
【0050】
<モルタル組成物>
本発明のモルタル組成物は、上述のセメント組成物と水とを配合し混練することによって調製することができる。本発明のモルタル組成物の好適な実施形態を以下に説明する。本実施形態のモルタル組成物は、補修用のモルタルとして好適に用いることができる。モルタル組成物を調製する際に、水の配合量を適宜変更することによって、モルタル組成物のフロー値及び単位容積質量を調整することができる。このように水の配合量を変更することによって、用途に適した補修用モルタルを調製することができる。ここで、フロー値とは、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の試験方法に準拠して測定される値であり、単位容積質量とは、JIS A 1171−2000「ポリマーセメントモルタルの試験方法」に記載の試験方法に準拠して測定される値(単位:kg/L)である。
【0051】
水の配合量は、水硬性組成物100質量部に対し、好ましくは13〜23質量部であり、より好ましくは14〜22質量部であり、さらに好ましくは15〜21質量部であり、特に好ましくは16〜20質量部である。
【0052】
本実施形態のモルタル組成物のフロー値は、好ましくは140〜180mmであり、より好ましくは145〜175mmであり、さらに好ましくは150〜170mmであり、特に好ましくは155〜165mmである。
【0053】
フロー値を上述の範囲とすることによって、一層良好な施工性(良好な鏝塗り性や吹き付け性)を有するモルタル組成物とすることができる。
【0054】
本実施形態のモルタル組成物の単位容積質量は、好ましくは1.70〜2.60kg/Lであり、より好ましくは1.80〜2.50kg/Lであり、さらに好ましくは1.90〜2.40kg/Lであり、特に好ましくは2.00〜2.30kg/L(リットル)である。
【0055】
単位容積質量を上述の範囲とすることによって、モルタル組成物の良好な施工性(良好な鏝塗り性や吹き付け性)を維持しつつ、コンクリート構造体と一体化するための適度な圧縮強度と一層優れた接着性を兼ね備えたモルタル硬化体を得ることができる。
【0056】
<モルタル硬化体>
本発明のモルタル硬化体は、上述のモルタル組成物を硬化させることによって得ることができる。本発明のモルタル硬化体の好適な実施形態を以下に説明する。本実施形態のモルタル硬化体は、補修用モルタル硬化体として好適に用いることができる。すなわち、上述のモルタル組成物が硬化して形成される本実施形態のモルタル硬化体は、コンクリート構造体と一体化するに際し、コンクリートと同等以上の圧縮強度を有するとともに、優れた寸法安定性や優れた接着耐久性を兼ね備える。
【0057】
ここで、圧縮強度は、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の試験方法に準拠して測定される値である。また、接着耐久性の指標となる接着強度(温冷繰り返し試験後)は、東日本・中日本・西日本高速道路株式会社規格「構造物施工管理要領平成21年7月版 3−5−5断面修復の性能照査 表3−5−2左官工法による断面修復の性能照査項目」に記載のコンクリートとの付着性試験方法に準拠して測定される値である。さらに、寸法安定性の指標となる長さ変化率は、東日本・中日本・西日本高速道路株式会社規格「構造物施工管理要領平成21年7月版 3−5−5断面修復の性能照査 表3−5−2左官工法による断面修復の性能照査項目」に記載の硬化収縮性試験方法に準拠して測定される値である。
【0058】
本実施形態のモルタル硬化体の圧縮強度は、好ましくは30N/mm
2以上であり、より好ましくは40N/mm
2以上であり、さらに好ましくは45N/mm
2以上であり、特に好ましくは50N/mm
2以上である。
【0059】
圧縮強度が上述の範囲であることによって、モルタル硬化体は、コンクリート構造体と一体化した際に、一体化に適した強度、すなわちコンクリートと同等以上の強度を有する。
【0060】
本実施形態のモルタル硬化体の接着強度(温冷繰り返し試験後)は、好ましくは1.5N/mm
2以上であり、より好ましくは1.6N/mm
2以上であり、さらに好ましくは1.65N/mm
2以上であり、特に好ましくは1.7N/mm
2以上である。
【0061】
接着強度(温冷繰り返し試験後)が上述の値以上であることによって、モルタル硬化体は、コンクリート構造体と一体化した後の接着耐久性に優れる。
【0062】
本実施形態のモルタル硬化体の長さ変化率は、好ましくは−0.06%〜0.06%であり、より好ましくは−0.05%〜0.05%であり、さらに好ましくは−0.04%〜0.04%であり、特に好ましくは−0.03%〜0.03%である。ここでマイナスの符号は収縮を表す。
【0063】
長さ変化が上述の範囲であることによって、モルタル硬化体は、コンクリート構造体と一体化した後の寸法安定性に優れる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例を挙げて本発明の内容を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0066】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に記す。
(1)ポルトランドセメント
・普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント社製、ブレーン比表面積3270cm
2/g)
(2)炭酸カルシウム微粉末
・(ブレーン比表面積4098cm
2/g)
(3)細骨材
・珪砂(1.2mm超の粒子径を有する粗粒分=3.9質量%)
【0067】
上記細骨材の粒度構成(各ふるいにとどまる質量分率、連続する各ふるいの間にとどまる質量分率)及び粗粒率を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
(4)無機系膨張材(生石灰−石膏系膨張材)
・膨張材A(生石灰量29.88質量%、
図1のX線回折ピークパターンを有し、CaO由来のメインピークの回折角(2θ)は37.36°で、強度は7413であった。また、CaSO
4由来のメインピークの回折角(2θ)は25.42°で、強度は16333であった。)
・膨張材B(生石灰量50.46質量%、
図2のX線回折ピークパターンを有し、CaO由来のメインピークの回折角(2θ)は37.38°で、強度は19470であった。また、CaSO
4由来のメインピークの回折角(2θ)は25.42°で、強度は5980であった。)
【0070】
膨張材中の生石灰量は、JCAS I−01−1997「遊離酸化カルシウムの定量方法」のグリセリン−アルコール法(B法)に準拠して算出した。
【0071】
図1及び
図2のX線回折ピークパターンは、粉末X線回折装置RINT−2500(リガク社製)を用い、X線源をCuKαとして,管電圧35kV、管電流110mA、測定範囲2θ=5〜70°、Continuous Scanningモード、発散スリット:1°、散乱スリット1.26mm、及び受光スリット:0.3mmの条件で行った。また、定性分析は、粉末X線回折ピークパターン総合解析ソフトであるJADE6.0(Materials Data Inc.製)を使用して行った。
【0072】
(5)流動化剤
・ポリカルボン酸系流動化剤
(6)収縮低減剤
・アルキレンオキシド系収縮低減剤
(7)消泡剤
・ポリエーテル系消泡剤
(8)再乳化形樹脂粉末
・スチレン/アクリル共重合樹脂を主成分とする樹脂粉末
【0073】
[水硬性組成物の調製(製造)]
上記材料(総量:各5kg)を表2及び表3に示す配合No.1〜11の配合割合で混合して水硬性組成物を得た。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
表2及び表3に示す配合割合で調製した各水硬性組成物1kgに対して、表4及び表5に示す混練水量を配合して混練し、各実施例及び各比較例のモルタル組成物を調製した。混練は、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、ホバートミキサーを用いて低速で3分間行った。
【0077】
[モルタル組成物及びモルタル硬化体の物性の評価方法]
調製した各実施例及び各比較例のモルタル組成物又はモルタル硬化体の単位容積質量、フロー値、長さ変化率、圧縮強度、及び接着強度(温冷繰り返し後)を測定した。測定結果は、表4及び表5に示す通りであった。各測定は、以下に示す方法で行った。
【0078】
(1)フロー値の測定方法
JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の試験方法に準拠してフロー値を測定した。
(2)単位容積質量の測定方法
JIS A 1171−2000「ポリマーセメントモルタルの試験方法」に記載の試験方法に準拠して単位容積質量を測定した。
(3)長さ変化率の測定方法
東日本・中日本・西日本高速道路株式会社規格「構造物施工管理要領平成21年7月版 3−5−5断面修復の性能照査 表3−5−2左官工法による断面修復の性能照査項目」に記載の硬化収縮性試験方法に準拠して、長さ変化率を測定した。
(4)圧縮強度の測定方法
東日本・中日本・西日本高速道路株式会社規格「構造物施工管理要領平成21年7月版 3−5−5断面修復の性能照査 表3−5−2左官工法による断面修復の性能照査項目」に記載の圧縮強度試験方法に準拠して、圧縮強度を測定した。
(5)接着強度の測定方法
・温冷繰り返し試験後
東日本・中日本・西日本高速道路株式会社規格「構造物施工管理要領平成21年7月版 3−5−5断面修復の性能照査 表3−5−2左官工法による断面修復の性能照査項目」に記載のコンクリートとの付着性試験方法に準拠して、温冷繰り返し試験後の接着強度を測定した。
【0079】
温冷繰り返し試験後の接着強度を、接着耐久性の評価の指標とした。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
膨張材A及びBを所定の配合比で含有する実施例1〜3は、長さ変化率も小さく、温冷繰り返し条件下での付着強度も良好であった。
【0083】
以上のことから、本発明の水硬性組成物を用いることにより、良好な施工性を有するとともに、寸法安定性に優れ、コンクリート構造物と一体化したときに十分な接着耐久性を有するモルタル硬化体を形成することが可能な水硬性組成物及びモルタル組成物を提供することが可能である。そのため、本発明の水硬性組成物は、コンクリートの断面修復に好適に用いることができ、ライフサイクルコストの低減に寄与することができる。