特許第6495789号(P6495789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6495789形状算出プログラム、形状算出装置および形状測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495789
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】形状算出プログラム、形状算出装置および形状測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/201 20180101AFI20190325BHJP
【FI】
   G01N23/201
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-180172(P2015-180172)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2017-53828(P2017-53828A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 栄二
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−011024(JP,A)
【文献】 特開2011−117894(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0297211(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/00−15/08、
G01N 23/00−23/2276、
H01J 37/00−37/295、
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の第1の周期的構造に電磁波を入射させて実際に計測した前記電磁波の第1の散乱プロファイルから、特徴的な一部を示す第2の散乱プロファイルを抽出する第1の抽出ステップと、
仮想設定された第2の周期的構造を用いて算出された第3の散乱プロファイルから、前記特徴的な一部を示す第4の散乱プロファイルを抽出する第2の抽出ステップと、
前記第2の散乱プロファイルと前記第4の散乱プロファイルとのフィッティングを行うフィッティングステップと、
前記フィッティングの結果に基づいて、前記第1の周期的構造の形状を算出する算出ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする形状算出プログラム。
【請求項2】
前記第2の周期的構造の形状パラメータを変化させながら、前記第2の抽出ステップと前記フィッティングステップと、を繰り返す繰り返しステップを、
さらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1に記載の形状算出プログラム。
【請求項3】
前記第2の周期的構造に散乱強度分布シミュレーションを行ない、前記第3の散乱プロファイルを算出するシミュレーションステップを、
さらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1または2に記載の形状算出プログラム。
【請求項4】
前記特徴的な一部は、前記電磁波の散乱角度、前記第1の散乱プロファイルの次数、前記第1の散乱プロファイルの変曲点の少なくとも1つの情報に基づいて設定された散乱プロファイルの部位である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の形状算出プログラム。
【請求項5】
基板上の第1の周期的構造に電磁波を入射させて実際に計測した前記電磁波の第1の散乱プロファイルから、特徴的な一部を示す第2の散乱プロファイルを抽出する第1の抽出処理と、仮想設定された第2の周期的構造を用いて算出された第3の散乱プロファイルから、前記特徴的な一部を示す第4の散乱プロファイルを抽出する第2の抽出処理と、を行うプロファイル抽出部と、
前記第2の散乱プロファイルと前記第4の散乱プロファイルとのフィッティングを行ない、前記フィッティングの結果に基づいて、前記第1の周期的構造の形状を算出するフィッティング部と、
を有することを特徴とする形状算出装置。
【請求項6】
基板上の第1の周期的構造に電磁波を入射させる入射ステップと、
前記第1の周期的構造での反射によって散乱した前記電磁波の強度を実際に計測する計測ステップと、
前記強度に基づいて、散乱した前記電磁波の第1の散乱プロファイルを算出する取得ステップと、
前記第1の散乱プロファイルから、特徴的な一部を示す第2の散乱プロファイルを抽出する第1の抽出ステップと、
仮想設定された第2の周期的構造を用いて算出された第3の散乱プロファイルから、前記特徴的な一部を示す第4の散乱プロファイルを抽出する第2の抽出ステップと、
前記第2の散乱プロファイルと前記第4の散乱プロファイルとのフィッティングを行うフィッティングステップと、
前記フィッティングの結果に基づいて、前記第1の周期的構造の形状を算出する算出ステップと、
を含むことを特徴とする形状測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、形状算出プログラム、形状算出装置および形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、所望の品質を維持するために、基板上に形成されたパターンの形状を管理することが重要である。このようなパターンは、種々の装置によって測定されている。パターン形状を計測する装置の1つとして、小角X線散乱(SAXS:Small Angle X-ray Scattering)を応用した小角X線散乱装置が開発されている。
【0003】
しかしながら、従来の小角X線散乱装置では、仮想的に設定される周期的構造は予想される構造を基にある程度単純化されたものであった。このため、部分的なくびれなどの複雑な構造を持つ実際のパターンと、仮想的に設定された周期的構造とは、完全に一致することは現実には起こり得ない。そして、仮想的に設定される周期的構造と、実際の構造と、に大きな差があると、パターン形状を精度良く計測することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−117894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、パターン形状を精度良く算出することができる形状算出プログラム、形状算出装置および形状測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、形状算出プログラムが提供される。前記形状算出プログラムでは、第1の抽出ステップと、第2の抽出ステップと、フィッティングステップと、算出ステップと、をコンピュータに実行させる。前記第1の抽出ステップでは、基板上の第1の周期的構造に電磁波を入射させて実際に計測した前記電磁波の第1の散乱プロファイルから、特徴的な一部を示す第2の散乱プロファイルを抽出する。前記第2の抽出ステップでは、仮想設定された第2の周期的構造を用いて算出された第3の散乱プロファイルから、前記特徴的な一部を示す第4の散乱プロファイルを抽出する。前記フィッティングステップでは、前記第2の散乱プロファイルと前記第4の散乱プロファイルとのフィッティングを行う。前記算出ステップでは、前記フィッティングの結果に基づいて、前記第1の周期的構造の形状を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る形状算出装置を備えた形状測定装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る形状算出装置の形状算出処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、仮想構造データの一例を示す図である。
図4図4は、計測データと算出データとのフィッティングを説明するための図である。
図5図5は、フィッティングデータを説明するための図である。
図6図6は、プロファイル抽出設定を説明するための図である。
図7図7は、パターン形状計測装置によるパターンの計測結果例を示す図である。
図8図8は、パターン形状算出装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態に係る形状算出プログラム、形状算出装置および形状測定方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る形状算出装置を備えた形状測定装置の構成を示すブロック図である。パターン形状計測装置3は、周期的構造を有したパターンの形状を計測する装置である。パターン形状計測装置3は、小角X線散乱(SAXS:Small Angle X-ray Scattering)を用いて、パターンの形状を計測する。
【0010】
パターン形状計測装置3は、散乱プロファイル取得装置5と、パターン形状算出装置10とを備えている。パターン形状計測装置3が計測するパターンは、ガラス基板やウエハなどの基板上に形成されたパターンである。計測対象となるパターン(サンプル)は、例えば、ライン&スペースなどの周期的構造を有している。
【0011】
散乱プロファイル取得装置5は、小角X線散乱を用いて、散乱プロファイル(回折プロファイル)を取得する装置である。散乱プロファイル取得装置5は、基板上に形成されたパターンに対してX線などの電磁波を照射する。散乱計測対象となるパターンは、3次元的な構造を有しているので、パターン表面では、X線がパターンの形状に応じた散乱・干渉を発生させる。散乱プロファイル取得装置5は、パターン表面で散乱・干渉したX線を二次元検出器で検出することによって、二次元検出器に現れる散乱プロファイル(散乱強度の分布)を取得する。散乱プロファイル取得装置5は、取得した散乱プロファイルをパターン形状算出装置10に送る。
【0012】
パターン形状算出装置10は、散乱プロファイルに基づいて、パターンの形状を算出する装置である。パターン形状算出装置10は、断面形状モデル(後述する仮想構造)の各形状パラメータをフローティングさせて、繰り返し散乱プロファイルを計算する。パターン形状算出装置10は、測定プロファイルと最も合致した際の断面形状モデルを測定結果として出力する。
【0013】
パターン形状算出装置10は、入力部11、プロファイル抽出部12、シミュレーション部13、フィッティング部14、出力部15を備えている。入力部11は、散乱プロファイル取得装置5から送られてくる散乱プロファイルを入力して、プロファイル抽出部12に送る。
【0014】
また、入力部11は、パターン形状の算出に用いる設定情報を外部装置(図示せず)から入力して、プロファイル抽出部12またはシミュレーション部13に送る。パターン形状の算出に用いられる設定情報は、後述するプロファイル抽出条件D1、仮想構造データD3、形状パラメータ振り設定D4などである。入力部11は、プロファイル抽出条件D1をプロファイル抽出部12に送る。また、入力部11は、仮想構造データD3および形状パラメータ振り設定D4をシミュレーション部13に送る。
【0015】
プロファイル抽出条件D1は、散乱プロファイルから抽出する散乱プロファイルの条件を規定した情報である。注目している形状パラメータ(パターンの形状要素)に対して特徴的に変化する散乱プロファイルの部位が、プロファイル抽出条件D1に設定される。例えば、第N(Nは自然数)次線の第M(Mは自然数)番目の極小点などが、プロファイル抽出条件D1に設定されている。プロファイル抽出条件D1は、X線の散乱角度、散乱プロファイルの次数、散乱プロファイルのピークの少なくとも1つの情報に基づいて設定されている。散乱プロファイルのピークは、波形の上端(山頂部)または下端(谷底部)であり、変曲点とも呼ばれる。
プロファイル抽出条件D1には、抽出対象として、1〜複数の条件が設定されている。
【0016】
仮想構造データD3は、仮想的に設定された周期的構造の構造データである。仮想構造データD3は、計測対象となるパターンの仮想的な構造を規定したものである。形状パラメータ振り設定D4は、仮想的に設定された周期的構造の形状パラメータを規定した情報である。形状パラメータ振り設定D4では、1〜複数の形状パラメータが設定されている。
【0017】
プロファイル抽出部12は、プロファイル抽出条件D1に基づいて、測定された散乱プロファイル(測定散乱プロファイル)から散乱プロファイルの一部(特徴点)を抽出する。具体的には、プロファイル抽出部12は、測定散乱プロファイルの中からパターンの特徴的な部分を示す散乱プロファイルを抽出する。プロファイル抽出部12は、プロファイル抽出条件D1で規定された要素を散乱プロファイルから抽出する。プロファイル抽出部12は、抽出したデータを測定散乱プロファイル抽出データD2として、フィッティング部14に送る。
【0018】
また、プロファイル抽出部12は、プロファイル抽出条件D1に基づいて、後述する仮想散乱プロファイルデータD5から散乱プロファイルの一部(特徴点)を抽出する。具体的には、プロファイル抽出部12は、仮想散乱プロファイルデータD5の中からパターンの特徴的な部分を示す散乱プロファイルを抽出する。プロファイル抽出部12は、測定散乱プロファイルから抽出した特徴点と同じ特徴点を仮想散乱プロファイルデータD5から抽出する。プロファイル抽出部12は、抽出したデータを仮想散乱プロファイル抽出データD6として、フィッティング部14に送る。
【0019】
シミュレーション部13は、パターンの仮想構造を算出する。仮想構造は、基板上のパターンと同様の周期的構造を有している。シミュレーション部13は、散乱強度分布シミュレーションプログラムを用いて、仮想構造に基づいた散乱強度分布を算出し、仮想散乱プロファイルデータD5を生成する。具体的には、シミュレーション部13は、仮想構造データD3および形状パラメータ振り設定D4を用いて、仮想構造(パターンの形状を示す断面形状モデル)を算出する。
【0020】
例えば、計測対象のパターンがライン&スペースパターンである場合、仮想構造データD3では、ライン&スペースパターンのうちの計測対象の位置が規定されている。形状パラメータ振り設定D4では、仮想構造データD3で規定された位置での具体的な寸法が規定されている。シミュレーション部13は、仮想構造データD3に形状パラメータ振り設定D4内の寸法を適用することによって、仮想構造を算出する。シミュレーション部13は、算出した仮想構造を用いて、散乱シミュレーションを実行する。散乱シミュレーションの実行結果が仮想散乱プロファイルデータD5である。散乱シミュレーションは、基板上のパターンと同じ条件で仮想構造にX線を照射した場合に、仮想構造のパターン表面で散乱・干渉するX線を算出するプログラムである。
【0021】
シミュレーション部13は、形状パラメータ振り設定D4に設定されている全ての寸法に対して、仮想構造の算出と、仮想散乱プロファイルデータD5の算出とを実行する。シミュレーション部13は、生成した仮想散乱プロファイルデータD5を、プロファイル抽出部12に送る。
【0022】
フィッティング部14は、測定散乱プロファイル抽出データD2と、仮想散乱プロファイル抽出データD6とのフィッティングを行うことによって、フィッティング残差(フィッティング結果)を算出する。フィッティング残差は、測定散乱プロファイル抽出データD2と、仮想散乱プロファイル抽出データD6との差である。
【0023】
フィッティング部14は、仮想構造の形状パラメータとフィッティング残差とを対応付けした対応関係情報D7を生成して記憶しておく。ここでの仮想構造の形状パラメータは、形状パラメータ振り設定D4で規定されている形状パラメータのうち、仮想散乱プロファイルデータD5の生成に用いられた形状パラメータである。したがって、対応関係情報D7は、フィッティング残差と、このフィッティング残差の算出過程で用いられた仮想構造の形状パラメータと、が対応付けされた情報である。
【0024】
フィッティング部14は、対応関係情報D7の中から、フィッティング残差が最小であった場合の形状パラメータを抽出する。フィッティング部14は、抽出した形状パラメータを基板上の周期的構造の形状(形状算出結果)として出力部15に送る。出力部15は、基板上の周期的構造の形状を外部装置などに出力する。
【0025】
計測対象となるパターンは、例えば、大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)の回路パターンなどである。パターン形状計測装置3は、半導体装置の製造工程中などに、パターンの形状を計測する。
【0026】
図2は、実施形態に係る形状算出装置の形状算出処理手順を示すフローチャートである。基板上に周期的構造を有したパターンが形成された後、散乱プロファイル取得装置5は、基板上に形成されたパターンに対してX線を照射する。これにより、散乱プロファイル取得装置5の二次元検出器上には、パターンの断面構造に応じた特徴的な干渉パターンが現れる。散乱プロファイル取得装置5は、パターン表面で散乱・干渉したX線を二次元検出器で検出することによって、二次元検出器に現れる実際の散乱プロファイルを取得する(ステップS1)。散乱プロファイル取得装置5は、取得した散乱プロファイル(二次元散乱強度画像)を、散乱強度を示す測定散乱プロファイルに変換してパターン形状算出装置10に送る。
【0027】
パターン形状算出装置10では、入力部11が、測定散乱プロファイルをプロファイル抽出部12に送る。また、入力部11は、外部装置からのプロファイル抽出条件D1をプロファイル抽出部12に送る。また、外部装置からの仮想構造データD3および形状パラメータ振り設定D4をシミュレーション部13に送る。
【0028】
プロファイル抽出部12は、プロファイル抽出条件D1に基づいて、散乱プロファイルからプロファイルの一部(特徴点など)を抽出する(ステップS2)。このとき、プロファイル抽出部12は、プロファイル抽出条件D1で規定された要素を散乱プロファイルから抽出する。これにより、プロファイル抽出部12は、散乱プロファイルの中からパターンの特徴的な部分を示すプロファイルを抽出する。
【0029】
プロファイル抽出部12は、抽出したデータを測定散乱プロファイル抽出データD2として、フィッティング部14に送る。フィッティング部14は、この測定散乱プロファイル抽出データD2を記憶しておく。
【0030】
シミュレーション部13は、パターンの仮想構造を算出し、仮想構造に基づいたシミュレーションによって、仮想散乱プロファイルデータD5を生成する(ステップS3)。このとき、シミュレーション部13は、仮想構造データD3および形状パラメータ振り設定D4を用いて、仮想構造を算出する。
【0031】
シミュレーション部13は、仮想構造データD3に形状パラメータ振り設定D4内の寸法を適用することによって、仮想構造を算出する。そして、シミュレーション部13は、散乱シミュレーションに仮想構造を適用し、シミュレーション結果として仮想散乱プロファイルデータD5を得る。
【0032】
図3は、仮想構造データの一例を示す図である。図3では、計測対象のパターンがライン&スペースパターンである場合の、仮想構造データD3の一例を示している。仮想構造データD3では、ライン&スペースパターンに対する計測対象の位置が設定されている。また、計測対象の寸法は、形状パラメータ振り設定D4に設定されている。換言すると、仮想構造データD3では、ライン&スペースパターンの寸法の定義(算出位置)に関する情報が設定されている。
【0033】
仮想構造データD3に設定されている算出対象(計測対象)は、例えば、ラインパターン27の幅寸法L1、ピッチL2である。ピッチL2は、1つのラインパターン27の幅寸法と1つのスペースパターン28の幅寸法との合計寸法である。
【0034】
また、仮想構造データD3に設定されている算出対象は、ラインパターン27の頭部を除いた高さ寸法H1、ラインパターン27の頭部の高さ寸法H2を含んでいてもよい。また、仮想構造データD3に設定されている算出対象は、ラインパターン27の底部に繋がる裾引きパターン29の曲率R1、ラインパターン27の頭部における曲率R2を含んでいてもよい。裾引きパターン29は、スペースパターン28に形成される残膜パターンである。
【0035】
また、仮想構造データD3に設定されている算出対象は、ラインパターン27の底部における壁面角度θ1、裾引きパターン29の底部における壁面角度θ2を含んでいてもよい。壁面角度θ1は、ラインパターン27の底部において、側面と底面とが成す角度である。壁面角度θ2は、裾引きパターン29の底部において、壁面と底面とが成す角度である。また、仮想構造データD3に設定されている算出対象は、裾引きパターン29の高さ寸法H3を含んでいてもよい。
【0036】
そして、形状パラメータ振り設定D4では、上述した幅寸法L1、ピッチL2、高さ寸法H1〜H3、曲率R1,R2、壁面角度θ1,θ2の具体的な数値が設定されている。例えば、形状パラメータ振り設定D4には、幅寸法L1として、L1−1(nm)、L1−2(nm)、L1−3(nm)などが設定されている。形状パラメータ振り設定D4の何れかの値を仮想構造データD3に適用することによって、パターンの仮想構造が設定される。
【0037】
シミュレーション部13は、生成した仮想散乱プロファイルデータD5を、プロファイル抽出部12に送る。これにより、プロファイル抽出部12は、仮想散乱プロファイルデータD5を記憶しておく。
【0038】
プロファイル抽出部12は、プロファイル抽出条件D1に基づいて、仮想散乱プロファイルデータD5から散乱プロファイルの一部(特徴点)を抽出する(ステップS4)。これにより、プロファイル抽出部12は、仮想散乱プロファイルデータD5の中からパターンの特徴的な部分を示す散乱プロファイルを抽出する。このとき、プロファイル抽出部12は、測定散乱プロファイルから抽出した特徴点と同じ特徴点を仮想散乱プロファイルデータD5から抽出する。
【0039】
抽出される特徴点は、計測対象となるパターンの重要箇所に対応する散乱プロファイル上の点である。抽出される特徴点は、例えば、パターンの製造時に寸法管理される要素(寸法や角度に大きな影響を与える箇所)に対応する散乱プロファイル上の点である。
【0040】
計測対象となるパターンには、寸法管理される要素(寸法幅や側壁面の底面に対する角度など)がある。本実施形態では、第L(Lは自然数)の要素に対応する散乱プロファイル上の点と、第Lの要素に対応する仮想散乱プロファイルデータD5上の点とが抽出される。プロファイル抽出部12は、プロファイル抽出条件D1で規定された要素を仮想散乱プロファイルデータD5から抽出する。
【0041】
プロファイル抽出部12は、抽出したデータを仮想散乱プロファイル抽出データD6として、フィッティング部14に送る。フィッティング部14は、この仮想散乱プロファイル抽出データD6を記憶しておく。
【0042】
フィッティング部14は、測定散乱プロファイル抽出データD2と、仮想散乱プロファイル抽出データD6とのフィッティングを行う(ステップS5)。これにより、フィッティング部14は、フィッティング残差(フィッティング結果)を算出する。フィッティング残差は、測定散乱プロファイル抽出データD2と、仮想散乱プロファイル抽出データD6との差である。
【0043】
フィッティング部14は、フィッティング残差の算出過程で用いられた仮想構造の形状パラメータとフィッティング残差とを対応付けした対応関係情報D7を生成して記憶しておく。
【0044】
シミュレーション部13は、形状パラメータ振りが終了したかを判断する(ステップS6)。形状パラメータ振り設定D4で規定されている形状パラメータの全てに対して散乱シミュレーションが実行された場合に、形状パラメータ振りは終了したと判断される。
【0045】
形状パラメータ振りが終了していないと判断されると(ステップS6、No)、パターン形状算出装置10は、ステップS3〜S6の処理を繰り返す。このように、形状パラメータ振り設定D4で規定されている形状パラメータの全てに対してシミュレーションが実行されるまで、ステップS3〜S6の処理が繰り返される。
【0046】
ステップS3〜S6の処理の後、形状パラメータ振りが終了したと判断されると(ステップS6、Yes)、フィッティング部14は、対応関係情報D7を参照する。そして、フィッティング部14は、対応関係情報D7の中から、フィッティング残差が最小であった場合の形状パラメータを抽出する。フィッティング部14は、抽出した形状パラメータを基板上の周期的構造の形状として出力部15に送る。出力部15は、基板上の周期的構造の形状を外部装置などに出力する(ステップS7)。
【0047】
つぎに、フィッティング部14によるフィッティング処理について説明する。図4は、計測データと算出データとのフィッティングを説明するための図である。ここでは、計測データである測定散乱プロファイルを計測波形群64とし、算出データである仮想散乱プロファイルデータD5をシミュレーション波形群65として説明する。
【0048】
周期的構造であるパターン9は、例えば、所定方向を長手方向とするライン状に形成されている。具体的には、パターン9は、平行に並んだ複数本からなるラインパターンである。ここで、基板7のうちパターン9が形成された面を基準面とする。基板7は、ステージ(図示せず)に載置されている。ステージは、基準面に平行な面内において回転可能に構成されている。
【0049】
散乱プロファイル取得装置5は、二次元検出器60を有している。散乱プロファイル取得装置5は、周期的構造(パターン9)が形成された基板(サンプル)7上の基準面に平行な面内における方位角を変化させながら、周期的構造にX線を小さい角度(0.2度程度)で入射させる。
【0050】
X線は、周期的構造での反射によって、基準面に平行な方向である方位角方向と、基準面に垂直な方向である仰角方向とへ散乱する。方位角は、基準面に平行な面内における角度であり、仰角は、基準面に垂直な面内における角度である。
【0051】
二次元検出器60は、二次元方向へ配列させた複数の受光部(図示せず)を備えている。受光部は、X線を検出する検出素子として機能する。二次元検出器60は、二次元方向におけるX線の強度分布を検出する。二次元検出器60は、ラインパターンから広く散乱したX線を検出可能とするために、ステージ上の基板7から十分離れた位置に配置される。パターン9で散乱したX線同士が干渉することにより、二次元検出器60では、方位角方向に回折ピークが現れ、仰角方向には回折ピークごとに干渉縞が現れる。
【0052】
このように、二次元検出器60は、散乱したX線の散乱強度の分布(散乱プロファイル)を検出する。図4では、X線を照射した際の回折角(散乱角)(diffraction angle)を2θで示し、出口角(exit angle)をβで示している。二次元検出器60が検出した散乱プロファイルは、パターン9の幅寸法などの横方向の情報と、パターン9の高さなどの縦方向の情報とを含んでいる。また、検出される散乱強度の分布は、基板7上の周期的構造を反映した特徴的な干渉パターンを形成している。
【0053】
二次元検出器60で検出された散乱プロファイルは、数値化されることによって、測定散乱プロファイルである計測波形群64に変換される。計測波形群64は、パターン9での反射によるX線の散乱強度の分布を表す。
【0054】
散乱プロファイル取得装置5は、基板7が載置されたステージを回転させながらパターン9へX線を入射させることで、パターン9に対するX線の入射方位角を変化させる。パターン9に対するX線の入射方位角を変化させることにより、さまざまな回折条件での散乱光が取得可能となる。
【0055】
二次元検出器60は、パターン9で反射した方位角方向と仰角方向とへ散乱したX線を検出する。二次元検出器60によるX線の検出結果からは、X線の強度分布を表す二次元散乱強度画像が作成される。
【0056】
得られた二次元散乱強度画像は、方位角方向と仰角方向とに分けられ、それぞれの方向についての散乱プロファイルとして算出される。ここでは、仰角方向の散乱プロファイルとして計測波形群64が算出される。このように、計測波形群64は、パターン9を実際に計測することによって得られた波形群である。計測波形群64を示すグラフの横軸は出口角であり、縦軸は散乱強度である。二次元散乱強度画像から計測波形群64(測定散乱プロファイル)への変換は、散乱プロファイル取得装置5が行ってもよいし、パターン形状算出装置10のプロファイル抽出部12が行ってもよい。
【0057】
また、仮想構造データD3と、形状パラメータ振り設定D4と、に基づいて、パターン9の仮想構造63が算出される。さらに、仮想構造63に基づいたシミュレーションによって、仮想散乱プロファイルデータD5であるシミュレーション波形群65が生成される。シミュレーション波形群65は、散乱強度分布シミュレーションによって得られた波形群である。シミュレーション波形群65を示すグラフの横軸は出口角であり、縦軸は散乱強度である。
【0058】
例えば、シミュレーション波形群65は、光学条件及びパターンの情報を基にして計算することが可能である。光学条件は、パターン9へ入射するX線の波長、入射方位角、入射仰角、パターン9から散乱するX線の散乱方位角及び散乱仰角などである。パターン条件は、パターン9の材料及び断面形状(仮想構造63)である。仮想構造63は、パターン9が有するラインパターンの断面の輪郭形状であり、形状パラメータの関数として表される。X線の散乱プロファイルは、かかる断面形状を表す関数をフーリエ変換することにより算出される。形状パラメータの値を変化させると、干渉縞におけるX線の強度、干渉縞の周期や形状が変化することにより、散乱プロファイルであるシミュレーション波形群65には差異が生じる。なお、計測波形群64やシミュレーション波形群65を示すグラフの横軸は、散乱角(方位角または仰角)であってもよい。
【0059】
計測波形群64とシミュレーション波形群65とが得られた後、計測波形群64とシミュレーション波形群65とのフィッティングが行われる。このように、測定された散乱プロファイルと、シミュレーションによって求めた散乱プロファイルとのフィッティングが行われる。これにより、フィッティングデータ66が生成される。フィッティングデータ66は、計測波形群64とシミュレーション波形群65との差に関する情報を有している。
【0060】
パターン形状算出装置10は、仮想構造データD3の各形状パラメータを、形状パラメータ振り設定D4に基づいてフローティングし、仮想構造63を繰り返し算出する。さらに、パターン形状算出装置10は、仮想構造を用いてシミュレーション波形群65を算出する。そして、パターン形状算出装置10は、計測波形群64と、各シミュレーション波形群65とのフィッティングを行う。パターン形状算出装置10は、このような、仮想構造63の算出と、シミュレーション波形群65の算出と、フィッティングと、を繰り返す。そして、パターン形状算出装置10は、フィッティング結果の中からフィッティング残差が最小であった形状パラメータを抽出して出力する。
【0061】
本実施形態では、プロファイル抽出部12が、計測波形群64の一部を抽出して測定散乱プロファイル抽出データD2を生成する。また、プロファイル抽出部12が、シミュレーション波形群65の一部を抽出して仮想散乱プロファイル抽出データD6を生成する。そして、フィッティング部14が、測定散乱プロファイル抽出データD2と、仮想散乱プロファイル抽出データD6とのフィッティングを行う。このように、計測された波形の一部(特徴形状を示す部分)と、シミュレーション波形の一部(特徴形状を示す部分)とのフィッティングが行なわれる。
【0062】
ここで、フィッティングデータ66について説明する。図5は、フィッティングデータを説明するための図である。ここでは、パターンの高さ方向の情報を有したフィッティングデータ66をフィッティングデータ66Aとして説明する。また、パターンの横方向(幅方向)の情報を有したフィッティングデータ66をフィッティングデータ66Bとして説明する。
【0063】
二次元検出器60が検出した散乱プロファイル30(二次元散乱強度画像)は、方位角方向についての散乱プロファイルと仰角方向についての散乱プロファイルとに分けられる。
【0064】
方位角方向についての散乱プロファイルは、図4に示した計測波形群64であり、フィッティングデータ66Aにおいて破線で示している。仰角方向についての散乱プロファイルは、図5に示すフィッティングデータ66Bである。
【0065】
計測波形群64は、水平面内における散乱強度の分布を表し、ラインパターンのピッチ幅を反映した回折ピークが現れている。仰角方向についてのフィッティングデータ66Bは、垂直方向における散乱強度を表し、ラインパターンの高さを反映した干渉縞が現れている。仰角方向についての散乱プロファイルは、回折ピークごとに得られる。
【0066】
二次元検出器60が検出した散乱プロファイル30は、数値化されることによって計測波形群64に変換される。また、仮想構造を用いてシミュレーション波形群65が算出される。そして、計測波形群64とシミュレーション波形群65とがフィッティングされることによって、フィッティングデータ66Aが生成される。
【0067】
図5に示すフィッティングデータ66Aのうち、破線で示す波形群が計測波形群64に対応し、実線で示す波形群がシミュレーション波形群65に対応している。フィッティングデータ66Aは、計測対象となるパターンの高さ方向の情報に基づいて生成されている。
【0068】
散乱プロファイル30のデータのうち左からP(Pは自然数)列目のデータが回折光のP次線に対応している。また、フィッティングデータ66Aのうち、計測波形群64およびシミュレーション波形群65のP段目の波形が回折光のP次線に対応している。したがって、散乱プロファイル30のデータのうち左からP列目のデータは、計測波形群64およびシミュレーション波形群65のP段目の波形に対応している。
【0069】
フィッティングデータ66Aにおいて、計測波形群64とシミュレーション波形群65との差がフィッティング残差である。例えば、計測波形群64のP段目の波形とシミュレーション波形群65のP段目の波形との差がP次線のフィッティング残差として算出される。
【0070】
計測波形群64およびシミュレーション波形群65のうち、1段目の波形(1次線)の第R(Rは自然数)番目の極大点と第(R+1)番目の極大点との間の距離(ピッチ21)は、パターンの高さから大きな影響を受けている。このため、フィッティングデータ66Aにおいて、計測波形群64のピッチ21とシミュレーション波形群65のピッチ21との差が小さいほど、正確なパターンの高さが算出されたことになる。
【0071】
したがって、プロファイル抽出条件D1には、例えば、1次線のピッチ21を設定しておく。これにより、フィッティング部14は、ピッチ21の差が最小(フィッティング残差が最小)であった場合の形状パラメータを、パターン形状要素の1つに決定する。
【0072】
また、各次線の所定番目の変曲点を結ぶ線22は、パターンの側壁角度の情報を多く含んでいる。このため、フィッティングデータ66Aにおいて、計測波形群64の線22とシミュレーション波形群65の線22との差が小さいほど、正確な側壁角度が算出されたことになる。
【0073】
したがって、プロファイル抽出条件D1には、例えば、線22を設定しておく。これにより、フィッティング部14は、線22の差が最小であった場合の形状パラメータを、パターン形状要素の1つに決定する。
【0074】
また、散乱プロファイル30内の横方向の形状に関する情報に対しても、数値化されることによって計測散乱強度に変換される。この計測散乱強度への変換は、散乱プロファイル取得装置5が行ってもよいし、パターン形状算出装置10のプロファイル抽出部12が行ってもよい。また、パターン形状の横方向の情報を得るために、仮想構造を用いて散乱強度特性(シミュレーション散乱強度)が算出される。そして、横方向の計測散乱強度と横方向のシミュレーション散乱強度とがフィッティングされることによって、フィッティングデータ66Bが生成される。
【0075】
図5に示すフィッティングデータ66Bのうち、プロットされた点が横方向の計測散乱強度51に対応し、実線で示す波形が横方向のシミュレーション散乱強度52に対応している。このように、フィッティングデータ66Bは、計測対象となるパターンの横方向の情報に基づいて生成される。
【0076】
散乱プロファイル30のデータのうち左からP列目のデータの輝度合計が回折光のP次線に対応している。また、フィッティングデータ66Bのうち、左からP個目のプロットが回折光のP次線に対応している。したがって、散乱プロファイル30のデータのうち左からP列目のデータは、計測散乱強度51のP個目のプロットに対応している。
【0077】
フィッティングデータ66Bにおいて、計測散乱強度51とシミュレーション散乱強度52との差がフィッティング残差である。例えば、P段目の計測散乱強度51と、P段目におけるシミュレーション散乱強度52との差がP次線のフィッティング残差として算出される。
【0078】
計測散乱強度51およびシミュレーション散乱強度52のうち、各次線の隣接間隔23が、パターンの幅方向の寸法から大きな影響を受けている。例えば、3次線の横軸方向の座標と、4次線の横軸方向の座標との間の距離(隣接間隔23)が、パターンの幅方向の寸法から大きな影響を受けている。したがって、フィッティングデータ66Bにおける各次線の隣接間隔23に基づいて、パターンピッチを算出することが可能となる。フィッティングデータ66Bにおいて、計測散乱強度51に対応する座標と、シミュレーション散乱強度52に対応する座標との差(座標差)が小さいほど、正確な幅寸法が算出されたことになる。
【0079】
したがって、プロファイル抽出条件D1には、例えば、隣接する次線間の横方向の座標差を設定しておく。これにより、フィッティング部14は、各次線の座標差が最小(フィッティング残差が最小)であった場合の形状パラメータを、パターン形状要素の1つに決定する。
【0080】
また、散乱強度の強弱の繰り返し24が、パターンのDuty比(ラインパターン幅とスペースパターン幅の比率)から大きな影響を受けている。したがって、フィッティングデータ66Bにおける散乱強度の強弱の繰り返し24に基づいて、パターンのDuty比を算出することが可能となる。フィッティングデータ66Bにおいて、計測散乱強度51と、シミュレーション散乱強度52との差(散乱強度差)が小さいほど、正確なDuty比が算出されたことになる。
【0081】
したがって、プロファイル抽出条件D1には、例えば、隣接する次線間の散乱強度差を設定しておく。これにより、フィッティング部14は、各次線の散乱強度差が最小であった場合の形状パラメータを、パターン形状要素の1つに決定する。
【0082】
なお、プロファイル抽出条件D1としては、図5で説明したもの以外のものが設定されてもよい。ここで、プロファイル抽出条件D1の他の具体例について説明する。図6は、プロファイル抽出設定を説明するための図である。図6に示すフィッティングデータ66Aは、図5に示すフィッティングデータ66Aと同じものであり、計測波形群64およびシミュレーション波形群65のデータを含んでいる。図6に示すフィッティングデータ66Aのうち、破線で示す波形群が計測波形群64に対応し、実線で示す波形群がシミュレーション波形群65に対応している。
【0083】
計測波形群64およびシミュレーション波形群65のうち、1段目の波形(1次線71)の変曲点75は、パターンの幅方向の寸法の依存性が高い。このため、フィッティングデータ66Aにおいて、計測波形群64の変曲点75とシミュレーション波形群65の変曲点75との差が小さいほど、正確なパターン幅寸法が算出されたことになる。
【0084】
したがって、プロファイル抽出条件D1には、例えば、変曲点75の座標を設定しておく。これにより、フィッティング部14は、変曲点75のフィッティングデータ66A内での座標の差が最小であった場合の形状パラメータを、パターン形状要素の1つに決定する。
【0085】
また、計測波形群64およびシミュレーション波形群65のうち、各次線の最初の変曲点76の座標は、パターンの側壁形状の依存性が高い。このため、フィッティングデータ66Aにおいて、計測波形群64の変曲点76の座標とシミュレーション波形群65の変曲点76の座標との差が小さいほど、正確な側壁形状が算出されたことになる。
【0086】
したがって、プロファイル抽出条件D1には、例えば、各次線の最初の変曲点76の座標を設定しておく。これにより、フィッティング部14は、各次線の最初の変曲点76の差が最小であった場合の形状パラメータを、パターン形状要素の1つに決定する。
【0087】
なお、計測波形群64およびシミュレーション波形群65のうち、各次線の2番目や3番目の極大点の座標も、パターンの側壁形状の依存性が高い。したがって、プロファイル抽出条件D1に、例えば、各次線の2番目や3番目の極大点の座標を設定しておいてもよい。
【0088】
また、計測波形群64およびシミュレーション波形群65のうち、1〜2次線の波形全体は、パターンの大まかな形状への依存性が高い。このため、フィッティングデータ66Aにおいて、計測波形群64の1〜2次線の波形全体とシミュレーション波形群65の1〜2次線の波形全体との差が小さいほど、正確なパターン形状が算出されたことになる。
【0089】
したがって、プロファイル抽出条件D1には、例えば、1〜2次線の波形全体を設定しておいてもよい。これにより、フィッティング部14は、1〜2次線の波形全体の差が最小であった場合の形状パラメータを、パターン形状要素の1つに決定する。
【0090】
図7は、パターン形状計測装置によるパターンの計測結果例を示す図である。図7では、パターンの断面形状を示している。パターン形状計測装置3では、散乱プロファイル取得装置5が散乱プロファイルを取得する。そして、パターン形状算出装置10が散乱プロファイルを算出する。パターン形状算出装置10が、散乱プロファイルの一部に基づいて、種々のパターン形状要素を決定することによって、パターン形状の計測結果が決定される。
【0091】
図7の(a)は、パターンの断面が矩形である場合のパターン断面図である。図7の(b)は、パターンの断面が台形(テーパー)である場合のパターン断面図である。図7の(c)は、パターンの断面がボトムラウンディングを有しえている場合のパターン断面図である。図7の(d)は、パターンの断面がトップラウンディングを有している場合のパターン断面図である。
【0092】
以上のように、パターン形状算出装置10は、実際に測定して得られた第1の散乱プロファイルと、シミュレーションにより得られた第2の散乱プロファイルとのフィッティングを行う。そして、パターン形状算出装置10は、第1および第2の散乱プロファイルの中の注目する形状パラメータに対し依存性の強い一部の情報に基づいて、周期的構造の表面形状を算出する。これにより、注目しない形状パラメータの影響による表面形状算出結果の誤差を減らすことができる。したがって、注目する形状パラメータに対して高精度にパターン形状を計測することが可能となる。
【0093】
2次電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いたパターン形状の計測では、パターンの微細化によって分解能が不足するので、所望の測定精度を得られない場合がある。また、パターン形状は、水平面方向の寸法だけでなく垂直方向の断面形状の管理も重要となっている。非破壊で断面形状を計測する手法としてはスキャッタロメトリ(光散乱計測)法が実用化されているが、パターンの微細化に伴って所望の測定精度を得られない場合がある。
【0094】
本実施形態では、小角X線散乱を用いてパターンの形状を計測するので、高精度にパターン形状を計測することが可能となる。また、注目する形状パラメータに対して、測定した散乱プロファイルと、シミュレーションによる散乱プロファイルとをフィッティングするので、不要な形状パラメータを除外したうえでフィッティングが実行される。これにより、パターンのラウンド形状などを詳細に算出することができる。例えば、形状変化が大きい状況でも注目する形状パラメータの計測精度を維持することができる。
【0095】
パターン形状計測装置3によるパターン形状の計測は、例えばマスク作製プロセスやウエハプロセスに適用される。パターン形状計測装置3による計測対象は、例えば、レジストパターンである。
【0096】
計測結果が不合格であった場合、レジストパターンが剥離され、その後、別の条件で再びレジストパターンが形成される。計測結果が合格であった場合、レジストパターンを用いて基板上パターンが形成される。マスク作製プロセスでは、レジストパターンを用いてマスクパターンが形成される。そして、マスクパターンが形成されたマスクを用いて半導体装置(半導体集積回路)が製造される。
【0097】
また、ウエハプロセスでは、レジストパターンを用いてウエハパターンが形成される。ウエハプロセスでは、パターン形状計測装置3によるパターン形状の計測は、例えば、ウエハ上のレイヤ毎に行われる。具体的には、ウエハ上に被加工膜が形成され、被加工膜上にレジストが塗布される。そして、レジストの塗布されたウエハに、リソグラフィ処理が行われる。例えば、ウエハ上のレジストに対して、フォトマスクを用いた露光処理と現像処理とが行われる。また、リソグラフィ処理としては、テンプレート(インプリントマスク)を用いた押印処理などが行われてもよい。これにより、ウエハ上にレジストパターンが形成される。
【0098】
この後、パターン形状計測装置3によるレジストパターンの形状計測が行われる。そして、計測結果が合格であったレジストパターンをマスクとして被加工膜がエッチングされる。これにより、レジストパターンに対応するウエハパターンがウエハ上に形成される。半導体装置を製造する際には、上述した被加工膜の形成処理、リソグラフィ処理、パターンの形状測定処理、エッチング処理などがレイヤ毎に繰り返される。
【0099】
つぎに、パターン形状算出装置10のハードウェア構成について説明する。図8は、パターン形状算出装置のハードウェア構成を示す図である。パターン形状算出装置10は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、表示部94、入力部95を有している。パターン形状算出装置10では、これらのCPU91、ROM92、RAM93、表示部94、入力部95がバスラインを介して接続されている。
【0100】
CPU91は、コンピュータプログラムであるパターン形状算出プログラム97を用いてパターンの判定を行う。パターン形状算出プログラム97は、コンピュータで実行可能な、パターン形状を算出するための複数の命令を含むコンピュータ読取り可能かつ非遷移的な記録媒体(nontransitory computer readable recording medium)を有するコンピュータプログラムプロダクトである。パターン形状算出プログラム97では、前記複数の命令がパターン形状を算出することをコンピュータに実行させる。
【0101】
表示部94は、液晶モニタなどの表示装置であり、CPU91からの指示に基づいて、プロファイル抽出条件D1、測定散乱プロファイル抽出データD2、仮想構造データD3、形状パラメータ振り設定D4、仮想散乱プロファイルデータD5、仮想散乱プロファイル抽出データD6、対応関係情報D7、算出した形状プロファイル(計測結果)などを表示する。入力部95は、マウスやキーボードを備えて構成され、使用者から外部入力される指示情報(パターン形状の算出に必要なパラメータ等)を入力する。入力部95へ入力された指示情報は、CPU91へ送られる。
【0102】
パターン形状算出プログラム97は、ROM92内に格納されており、バスラインを介してRAM93へロードされる。図8では、パターン形状算出プログラム97がRAM93へロードされた状態を示している。
【0103】
CPU91はRAM93内にロードされたパターン形状算出プログラム97を実行する。具体的には、パターン形状算出装置10では、使用者による入力部95からの指示入力に従って、CPU91がROM92内からパターン形状算出プログラム97を読み出してRAM93内のプログラム格納領域に展開して各種処理を実行する。CPU91は、この各種処理に際して生じる各種データをRAM93内に形成されるデータ格納領域に一時的に記憶させておく。
【0104】
パターン形状算出装置10で実行されるパターン形状算出プログラム97は、プロファイル抽出部12、シミュレーション部13、フィッティング部14、を含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
【0105】
なお、本実施形態は、サンプルの周期的構造がラインパターンである場合に限られず、周期的構造は、何れのパターンであってもよい。周期的構造は、例えば、二次元方向へ配列された二次元パターンやホールパターン等であってもよい。本実施形態に係る形状測定方法は、何れのパターン周期の周期的構造に適用してもよい。基板計測に使用される電磁波は、X線である場合に限られず、散乱光の干渉により回折パターンを生じさせるものであればいずれの波長の電磁波であってもよい。
【0106】
このように実施形態では、基板上の周期的構造に電磁波を入射させた際に得られる電磁波の散乱プロファイルから、プロファイル抽出条件D1に基づいて、測定散乱プロファイル抽出データD2が抽出される。また、シミュレーションプログラムを用いて、仮想構造に基づいた仮想散乱プロファイルデータD5が生成される。そして、仮想散乱プロファイルデータD5から、プロファイル抽出条件D1に基づいて、仮想散乱プロファイル抽出データD6が抽出される。この後、測定散乱プロファイル抽出データD2と仮想散乱プロファイル抽出データD6とのフィッティングが行われる。そして、仮想構造の形状パラメータを変化させながら、測定散乱プロファイル抽出データD2の抽出と、測定散乱プロファイル抽出データD2と仮想散乱プロファイル抽出データD6とのフィッティングと、が繰り返される。その後、フィッティング結果に基づいて、基板上の周期的構造の形状が決定される。
【0107】
このように、不要な形状パラメータを除外したうえでフィッティングが実行されるので、所望の形状パラメータを正確に算出することができる。したがって、パターン形状を精度良く算出することが可能となる。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
3…パターン形状計測装置、5…散乱プロファイル取得装置、7…基板、9…パターン、10…パターン形状算出装置、12…プロファイル抽出部、13…シミュレーション部、14…フィッティング部、27…ラインパターン、28…スペースパターン、30…散乱プロファイル、60…二次元検出器、63…仮想構造、64…計測波形群、65…シミュレーション波形群、66,66A,66B…フィッティングデータ、D1…プロファイル抽出条件、D2…測定散乱プロファイル抽出データ、D3…仮想構造データ、D4…形状パラメータ振り設定、D5…仮想散乱プロファイルデータ、D6…仮想散乱プロファイル抽出データ、D7…対応関係情報。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8