【文献】
渡辺吉彦等,マイクロ流路デバイスを応用したナノポアタンパク質の電流計測,電気学会バイオ・マイクロシステム研究会資料,2010年,Vol.BMS−10 No.7−27 Page.5-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持体上に極性媒体を配置するステップは、極性媒体が前記複数の開口を通って前記複数の区画内に進入するように、前記支持体にわたり極性媒体を流すステップを含む、請求項2に記載の方法。
前記支持体上に極性媒体および無極性媒体を配置する前記ステップは、前記支持体にわたり極性媒体を流す前記ステップと前記無極性媒体含有層を設ける前記ステップとの間に、前記支持体にわたり気体を流して過剰な極性媒体を変位させ、前記極性媒体含有容積部を前記区画内に残すステップを含む、請求項3に記載の方法。
前記無極性媒体含有層を設ける前記ステップは、前記支持体にわたり無極性媒体を流して過剰な極性媒体を変位させ、前記区画内に前記極性媒体含有容積部と、前記極性媒体含有容積部に接触し前記支持体の前記複数の開口にわたり拡がる前記無極性媒体含有層とを残すステップを含む、請求項3に記載の方法。
前記支持体上に極性媒体および無極性媒体を配置する前記ステップの前に、無極性媒体の前処理により前記支持体を前処理するステップをさらに含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
前記極性媒体含有容積部は前記内側リセス部を満たし、前記内側リセス部と前記隔壁の前記外側部分とは、前記極性媒体含有容積部が前記内側リセス部にわたりメニスカスを形成するように、かつ前記極性媒体含有層が前記外側部分にわたりメニスカスを形成するように選択された寸法を有し、このメニスカスは、前記極性媒体含有層が前記極性媒体含有容積部に接触するようになる程度まで互いに向かって延びる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
前記支持体は、前記区画の各々内に、前記極性媒体含有容積部と電気接触させる電極をさらに含み、前記支持体上に極性媒体および無極性媒体を配置する前記ステップは、それぞれの区画内に、前記電極それぞれに電気接触した状態にある極性媒体含有容積部を設ける、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
前記支持体は、前記極性媒体含有層が前記開口上の前記支持体にわたり拡がるように配置されたときに、前記極性媒体含有層との電気接触をもたらすように配置構成された共通電極をさらに含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
前記支持体の前記開口にわたり拡がる前記極性媒体含有層は、前記開口から見たときに前記内側リセス部の縁部と接触しておらず;かつ/または、それぞれの区画内の前記極性媒体含有容積部は、前記内側リセス部の縁部と接触せず、前記外側部分は前記内側リセス部の前記縁部から後退している、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
前記内側リセス部は、0.4pLから400nLの範囲の平均体積を有する極性媒体含有容積部を含有することが可能である、請求項37から44のいずれか一項に記載の装置。
前記支持体の前記開口にわたり拡がる前記極性媒体含有層は、前記開口から見たときに前記内側リセス部の縁部と接触しておらず;かつ/または、各内側リセス部内の前記極性媒体含有容積部は、前記内側リセス部の縁部と接触せず、前記外側部分は前記内側リセス部の前記縁部から後退している、請求項37から50のいずれか一項に記載の装置。
前記支持体は、前記内側リセス部内の前記極性媒体含有容積部に電気接触する、各内側リセス部内のそれぞれの電極をさらに含む、請求項37から51のいずれか一項に記載の装置。
前記支持体は、前記支持体にわたり拡がる前記極性媒体含有層と電気接触するように配置構成された共通電極をさらに含む、請求項37から53のいずれか一項に記載の装置。
前記内側リセス部は、0.4pLから400nLの範囲の平均体積を有する極性媒体含有容積部を含有することが可能である、請求項55から62のいずれか一項に記載の装置。
前記支持体は、前記内側リセス部内の前記極性媒体含有容積部に電気接触する、各内側リセス部内のそれぞれの電極をさらに含む、請求項55から65のいずれか一項に記載の装置。
前記支持体は、前記支持体にわたり拡がる前記極性媒体含有層と電気接触するように配置構成された共通電極をさらに含む、請求項55から67のいずれか一項に記載の装置。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、両親媒性分子を含む膜のアレイの、都合の良い効果的な形成に関する。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、両親媒性分子を含む膜のアレイを形成する方法であって:
内部を通って極性媒体が導入され得る開口を有する区画のアレイを画定する、支持体を含む装置を用意するステップと;
支持体上に極性媒体および無極性媒体を配置して、極性媒体含有容積部が、隣接する区画内の極性媒体含有容積部と接触しないようにそれぞれの区画内に極性媒体含有容積部と、極性媒体含有容積部に接触する支持体の開口の端から端まで拡がる無極性媒体含有層とを設けるステップと;
支持体の開口の端から端まで極性媒体を流して、無極性媒体を変位させ、極性媒体含有容積部に接触する支持体の開口の端から端まで拡がる極性媒体含有層と、極性媒体含有層と極性媒体含有容積部との界面に両親媒性分子を含む膜とを形成するステップと
を含む方法が提供される。
【0009】
そのような方法は、両親媒性分子を含む膜のアレイを形成する都合の良い効果的な手法を提供する。開口を有する区画のアレイを画定する支持体を含む装置の使用は、極性媒体含有容積部のアレイを、開口を通してそれぞれの区画内に配置できるようにする。その結果、極性媒体含有容積部は、隣接する区画内の極性媒体含有容積部に接触するのが防止され、それによって極性媒体の容積部を独立して使用できるようになり、ある範囲のアレイをベースにした適用例が容易になる。そのような装置は、任意の選択されたサイズの容積部に順応するように作製されてもよい。典型的には、極性媒体含有容積部は、0.4pLから400nLの範囲の平均体積を有していてもよい。
【0010】
両親媒性分子を含む膜を形成するために、極性媒体含有容積部に接触する支持体の開口の端から端まで拡がる無極性媒体含有層が提供される。極性媒体は、支持体の開口の端から端まで流れて、無極性媒体を変位させ、極性媒体含有容積部に接触する支持体の開口の端から端まで拡がる極性媒体含有層を形成する。両親媒性分子を含む膜は、極性媒体含有層と極性媒体含有容積部との間の界面に形成される。一般に、以下にさらに記述されるように、両親媒性分子は、支持体の開口の端から端まで流れる無極性媒体および/または極性媒体含有層で提供される。
【0011】
これは膜を形成する都合の良い効果的な手法を提供する。極性媒体による無極性媒体の変位により、膜は信頼性ある状態で形成される。
【0012】
次に、膜のアレイを形成する様々な方法について記述する。
【0013】
いくつかの異なる方法を、それぞれの区画内に極性媒体含有容積部を配置するのに適用してもよい。使用される特定の方法は、1つには支持体の構造と、個々の極性媒体の容積部が支持体に添加される前に予め形成されるのかまたは支持体に引き続き極性媒体を添加した後に形成されるのかに依存する。支持体は、区画の間に隙間を含んでいてもよく、あるいは支持体は、区画の間に隙間が設けられなくてもよい。第1および第2のタイプの可能性ある方法について、次に記述する。
【0014】
それぞれの区画内に極性媒体含有容積部を配置させるための、可能性ある方法の第1のタイプでは、容積部は、区画内に配置する前に、予め形成される。このためのいくつかの可能性ある技法は、下記の通りである。
【0015】
1つの可能性ある技法では、極性媒体および無極性媒体は、無極性媒体中の極性媒体含有容積部のエマルジョンを形成し、エマルジョンを支持体上に流すことによって、支持体上に配置されてもよい。この場合、無極性媒体中の極性媒体含有容積部は、開口を通して区画内に導入される。これは、区画を直接的な手法で満たすことを可能にする。極性媒体の個々の容積部の寸法、ならびに区画の寸法は、単一の極性媒体の容積部が区画ごとに提供されるように選択されてもよい。
【0016】
支持体の隔壁は、より詳細に以下に記述するように、区画間に無極性媒体を流すことが可能な隙間を含んでいてもよい。隙間は、区画内に極性媒体の容積部を拘束するように、それに対して無極性媒体を隙間の間に流すことができるサイズとなるように選択される。
【0017】
エマルジョンは、両親媒性分子をさらに含んでいてもよい。これは極性媒体含有層が形成されるように支持体の開口の端から端まで極性媒体を流すとき、膜の形成を容易にする。両親媒性分子の存在は、エマルジョンも安定化させる。
【0018】
典型的にはエマルジョンは、区画の数よりも多い極性媒体含有容積部を含有する。過剰な極性媒体含有容積部は、区画の適度に大きい割合を満たすのを助ける。したがって、過剰な極性媒体含有容積部を除去するには、支持体を無極性媒体で洗浄してもよい。この洗浄を行って、区画内に極性媒体含有容積部を残し、極性媒体含有容積部に接触する支持体の開口の端から端まで拡がる無極性媒体の層として、洗浄するために使用される無極性媒体の層を残してもよい。
【0019】
別の可能性ある技法では、極性媒体含有容積部を、例えば音響液滴噴射によって個々の区画内に直接吐出してもよい。この技法によれば、吐出は、極性媒体含有容積部の正確な数は、過剰な容積部を除去する必要なく吐出されるように、制御することができる。
【0020】
極性媒体含有容積部が予め形成される場合、それらは水性緩衝溶液の液滴であってもよい。そのような液滴は、形成し取り扱うことが容易である。
【0021】
極性媒体含有容積部が予め形成される場合、それらは水性ゲルのビーズであってもよい。そのようなビーズは、やはり形成し取り扱うのが容易であり、望み通りに成形することができる。
【0022】
有利には、水性ゲルは比較的硬質なビーズであってもよく、これは極性媒体含有容積体を取り扱う際の利点をもたらすものである。区画を満たす際の利点は、ビーズのエマルジョンまたは懸濁液を、正圧下で支持体上に流すことによって得ることができる。圧力に抗するビーズの使用は、比較的高い正圧の使用を可能にする。
【0023】
可能性ある方法の第2のタイプでは、極性媒体が開口を通って区画内に進入するように、かつ無極性媒体含有層が引き続き例えば支持体の端から端まで無極性媒体を流すことによってまたは噴霧などの別の技法によって設けられるように、支持体上に極性媒体を配置することによって、それぞれの極性媒体含有容積部をそれぞれの区画に提供してもよい。
【0024】
極性媒体は、支持体の端から端まで極性媒体を流すことによって、支持体上に配置されてもよい。過剰な極性媒体は、後で排出させてもよく、区画には個別の極性媒体含有容積部が残される。一実施例では、気体を基材の端から端まで流して、極性媒体を流すステップと無極性媒体を流すステップとの間で過剰な極性媒体を排出させる。別の実施例では、無極性媒体含有基材層の端から端まで無極性媒体を流し、この流れそのものが、過剰な極性媒体を変位させる。
【0025】
あるいは極性媒体は、個別の極性媒体含有容積部を区画に注入することにより、支持体上に配置してもよい。
【0026】
このように個々の極性媒体の容積部を提供する利点とは、極性媒体を、両親媒性分子が不在の状態で支持体に添加してもよいことである。
【0027】
支持体は、それぞれの極性媒体含有容積部をそれぞれの区画に配置する前に、前処理無極性媒体で前処理してもよい。極性媒体が、支持体の端から端まで極性媒体を流すことによって支持体上に配置される場合、有利には、支持体の隔壁が、より詳細には以下に記述されるように区画間に無極性媒体を流すのを可能にする隙間を含んでいてもよい。この場合、前処理は、それぞれの区画を接続する隙間にある程度の封止を行ってもよく、それによって、隙間の間での極性媒体の流れを制限して、極性媒体が開口を通って区画内に進入するようにする。これは、隣接する区画の容積部が互いに接触する傾向を低減させることにより、個別の極性媒体含有容積部の最終的な形成を助ける。これは、容積部が互いに接触する場合には容易に集束し得るので、両親媒性分子が、区画のアレイ内に提供された極性媒体の容積部中に最初に存在しない場合に特に有益である。
【0028】
前処理の付加は、前処理した支持体材料と、区画内に配置された極性媒体の容積部との接触角を変更するのに使用されてもよい。前処理は、例えば、極性媒体に対する支持体の疎性を増大させるのに使用してもよく、また、極性媒体の容積部と極性媒体の層との間の界面での膜形成を最適化するために、より凸状の形状を有する容積部を提供するのに使用してもよい。支持体の疎性を所望のレベルに変えるための前処理の使用によって、支持体の作製でより多くの種類の材料の使用を考えることが可能になる。これは例えば、特定の材料が、製造の観点から望ましいが極性および無極性媒体に関して適正な性質を持たない場合に、役立てることができる。無極性媒体含有層は、両親媒性分子をさらに含んでもよい。これは、極性媒体含有層が形成されるように支持体の開口の端から端まで極性媒体を流す場合に、膜の形成を容易にする。
【0029】
一実施例では、無極性媒体は、無極性媒体の層を支持体に付加する前に、両親媒性分子を含んでいてもよい。あるいは、支持体に層を付加した後に、両親媒性分子を無極性媒体の層に添加してもよい。
【0030】
無極性媒体含有層が両親媒性分子をさらに含む場合、極性媒体含有容積部に接触する支持体の開口の端から端まで拡がる無極性媒体含有層を設けるステップと支持体の開口の端から端まで流すステップとの間に、装置は、無極性媒体含有層と極性媒体含有容積部との間の界面に両親媒性分子を移行させるために、ある時間にわたってそのままの状態にしてもよい。
【0031】
別の実施例では、支持体の開口の端から端まで流れる極性媒体は、両親媒性分子をさらに含んでもよい。これは同様に、極性媒体含有層が形成されるように支持体の開口の端から端まで極性媒体を流すときに、膜の形成を容易にする。
【0032】
さらに別の実施例では、無極性媒体の前処理は、極性媒体含有層が形成されるように支持体の開口の端から端まで極性媒体を流すステップの後、両親媒性分子を含む膜が形成されるように、両親媒性分子をさらに含んでいてもよい。
【0033】
両親媒性分子を含む膜は、膜界面での分析物の検出、膜界面の性質の決定、または1つもしくは複数の膜界面を横断する分析物の通過など、ある範囲の適用例で使用されてもよい。いくつかの適用例では、膜は、分析物を含むサンプル、例えば生体サンプルを分析するのに使用されてもよい。
【0034】
適用例の1つのタイプでは、両親媒性分子を含む膜に挿入されたイオンチャネルまたは細孔などの、膜タンパク質を使用してもよい。膜タンパク質は、最初に、極性媒体含有容積部にまたは極性媒体含有層に含有されてもよい。あるいは、膜タンパク質を無極性媒体中に提供してもよい。膜タンパク質は、典型的には自発的に、両親媒性分子を含む膜内に挿入される。膜内への膜タンパク質の挿入は、例えば膜の両端の電位差の印加などの手段によって必要に応じて、助けることができる。
【0035】
いくつかの適用例は、膜の両端の電気的性質、例えばイオン電流の測定を使用してもよい。そのような測定を行うために、支持体はさらに、各区画にそれぞれの電極を含んで、極性媒体含有容積部との電気接触を作製してもよい。その他のタイプの測定、例えば蛍光測定およびFET測定などの光学測定を実施してもよい。光学測定および電気測定は、同時に実施してもよい(Heron AJ et al., J Am Chem Soc. 2009;131(5):1652-3)。
【0036】
装置がそれぞれの電極を各区画内に含む場合、前処理が使用されるときには、この前処理は、好ましくは電極表面を覆わず、支持体上の他の場所に局在化される。
【0037】
装置は、開口上の支持体の端から端に及ぶように配置されたときに極性媒体含有層との電気接触を共通電極がもたらすように、配置構成された共通電極をさらに含んでいてもよい。
【0038】
装置は、共通電極と各区画内のそれぞれの電極との間に接続された電気回路をさらに含んでいてもよく、この電気回路は、電気測定を行うように配置構成されている。そのような電気測定は、両親媒性分子を含む膜でまたはこの膜を通して生じるプロセスに依存してもよい。
【0039】
無極性媒体中の極性媒体含有容積部のエマルジョンが形成されかつ支持体上を流れる、膜のアレイを形成する実施形態では、極性媒体の容積部が互いに混合しないようにするために安定なエマルジョンが必要である。容積部の混合は、区画内に収容することができずかつ広い範囲の容積部のサイズももたらす、より大きい容積部をもたらす。混合される液滴は、極性媒体の容積部が両親媒性分子の層で効果的に被覆されるようにエマルジョンを形成する前に、両親媒性分子を無極性媒体または極性媒体に添加することによって、防止されまたは最小限に抑えることができる。しかし、これはある状況において、両親媒性分子で被覆されている電極により、電極と極性媒体の容積部との間に高い電気抵抗をもたらす可能性がある。極性媒体の個々の容積部を両親媒性分子の添加前にそれぞれの区画に提供する、膜のアレイを形成する代替の実施形態では、極性媒体の容積部は、電極表面に直接接触することができる。
【0040】
支持体は、様々な有利な構成を有していてもよい。
【0041】
支持体は、ベース部と、このベース部から延びる隔壁であって区画を画定しかつ極性媒体含有容積部が隣接する区画内の極性媒体含有容積部に接触しないようにする隔壁とを含んでいてもよい。
【0042】
支持体の構成の第1の可能性あるタイプでは、隔壁が内側部分および外側部分を含み、内側部分は、間に隙間のない区画の内側リセス部を画定し、極性媒体含有容積部は、それぞれの区画の内側リセス部内に配置され、外側部分は、区画の外側部分を画定する内側部分から外向きに延び、そこでは区画間に無極性媒体を流すのを可能にする隙間が形成される。効果的に、隔壁内の隙間はベース部に途中まで延びる。この構成には、膜の信頼性ある制御された形成を行うことができるという利点がある。
【0043】
装置が、各区画内に設けられたそれぞれの電極を含む場合、電極は、ベース部に設けてもよい。
【0044】
極性媒体含有容積部は、内側リセス部を満たしてもよい。外側部分の間の隙間は、内側リセス部の充填を助ける。したがってメニスカスは、内側リセス部の端から端まで形成され得る。特定の利点は、極性媒体を支持体の端から端まで流すことによって極性媒体がそれぞれの区画内に配置される場合に実現され、過剰な極性媒体は、気体であってもよくまたは層が形成されるように基材の端から端まで流れる無極性媒体であってもよい変位流体によって、排出される。この場合、外側部分の間の隙間は、基材の端から端まで変位流体を流すのを助け、したがって無極性媒体が内側リセス部を満たす。
【0045】
外側部分の間の隙間は、極性媒体がリセス部内の極性媒体に接触するときに、区画間で無極性媒体を変位させる膜の形成を助ける。
【0046】
隔壁の内側リセス部および外側部分は、内側リセス部の端から端までメニスカスを形成するために極性媒体含有容積部に関して選択された寸法を有していてもよく、極性媒体含有層は、外側部分の端から端までメニスカスを形成していてもよい。それらのメニスカスは、極性媒体含有層を極性媒体含有容積部に接触させる程度まで、互いに対して延びる。したがって幾何形状が、形成の信頼性をもたらす膜の形成を制御する。これは両親媒性分子を含む膜のサイズおよび安定性の制御も可能にする。
【0047】
外側部分は、開口から見た場合、内側リセス部の縁部から後退している。必須ではないが、これは、極性媒体による内側リセス部の充填と、外側部分の端から端までメニスカスを形成する極性媒体含有層とを助ける上述の機能を助ける。
【0048】
外側部分は、内側部分から延びる支柱であってもよい。
【0049】
支持体は、両親媒性分子を含む膜の形成が容易になるように、下記の通り設計されてもよい。
【0050】
有利には、隔壁の外側端部が共通平面内で拡がっていてもよい。これは、極性媒体含有層と支持体との接着を改善し、したがって、両親媒性分子を含む膜の形成の安定性を改善する。
【0051】
隔壁の外側端部の縁部は、支持体に対する極性媒体含有層のピニングを提供する。有利には、そのようなピニングを助けるため、隔壁は、共通平面における隔壁の外側端部の縁部の区画当たりの全長が、区画内に収容することができる最大限の観念上の球の最大円周よりも大きくなるように設計されてもよい。
【0052】
内側リセス部および/または外側部分は、無極性媒体を保持するように配置構成されたパターニング、例えば区画から外向きに延びる複数の刻み目、または一般には任意の微細加工された表面形体を有する面を有していてもよい。無極性媒体の保持は、有利には、例えば膜が形成される適用例で膜の形成を制御するために、基材の表面特性を変えるのに使用されてもよい。
【0053】
パターニングにより保持される、提供された無極性媒体は、極性媒体の容積部と支持体との間の接触角を変えるように働いてもよい。これは、いくつかの実施形態において、極性媒体に対する支持体の疎性を増大させることができ、より凸状の外面を有する極性媒体の容積部を提供することができる。これは引き続き、極性媒体の容積部と極性媒体の層との間の界面に形成された、より小さい膜をもたらしてもよい。区画のベース部は、典型的には微細加工された表面形体を持たず、その結果、装置に加えられる無極性媒体のいかなる前処理も局在化し、隔壁に保持されるようになる。したがって、各区画のベース部におけるそれぞれの電極の間の接触は、それが存在する場合に、また前処理は、それが存在する場合に、最小限に抑えられる。
【0054】
本発明の第2の態様によれば、極性媒体含有容積部のアレイを形成するための装置であって、内側部分および外側部分を含む隔壁を含んだ支持体を含み、この内側部分は、隣接する内側リセス部に含有され得る極性媒体含有容積部が互いに接触するのを防止することが可能な、間に隙間を持たない内側リセス部を画定し、外側部分は、内側部分から外向きに延びかつ基材の端から端まで無極性媒体を流すのを可能にする隙間を有するものである、上記装置が提供される。
【0055】
本発明の第2の態様による装置は、本発明の第1の態様の装置として使用されてもよい。
【0056】
支持体の構成の第2の可能性あるタイプでは、隔壁は、ベース部に延びて区画間に無極性媒体を流すのを可能にする隙間を有していてもよい。これは隙間によって、予め区画に進入し得る無極性媒体を排出させることが可能であるので、極性媒体含有容積部での区画の充填を容易にする。
【0057】
支持体の構成の第3の可能性あるタイプでは、隔壁は、区画間に無極性媒体を流すのを可能にする隙間を持たなくてもよい。このタイプの構成には、区画の電気分離を最大限にするという利点がある。
【0058】
本発明の第3の態様によれば、極性媒体含有容積部を保持するための装置であって:
ベース部、およびこのベース部から延びて無極性媒体を含有する区画のアレイを画定する隔壁を含む支持体と;
隔壁によって、隣接する区画内の極性媒体含有容積部に接触するのが防止される、無極性媒体中に極性媒体含有容積部も含有する区画の少なくともいくつかと
を含む装置が提供される。
【0059】
本発明の第2および第3の態様による装置は、上記にて論じたように、広範な生物学的、薬学的、または工業的適用例で、液滴アレイとして使用されてもよい。
【0060】
本発明の第3の態様による装置は、本発明の第1の態様の装置として使用されてもよく、または:
ベース部、およびこのベース部から延びて区画のアレイを画定する隔壁を含む、支持体を設けるステップと;
区画内に無極性媒体を配置し、区画の少なくともいくつかに、無極性媒体中に極性媒体含有容積部を配置して、それぞれの区画内の極性媒体含有容積部が、隔壁によって、隣接する区画内の極性媒体含有容積部に接触するのを防止するようにするステップと
を含む、極性媒体含有容積部のアレイを形成する方法が提供される、本発明の第4の態様の装置として使用されてもよい。
【0061】
そのような支持体は、無極性媒体中に極性媒体含有容積部のアレイを保持する、都合の良い効果的な手法を提供する。隔壁は、それぞれの区画内の極性媒体含有容積部が、隣接する区画内の極性媒体含有容積部に接触するのを防止し、それによって、個々の容積部であってもよい極性媒体の容積部を独立して使用することが可能になり、ある範囲のアレイをベースにした適用例を容易にする。そのような装置は、任意の選択されたサイズの容積部を収容するように作製されてもよい。典型的には、極性媒体含有容積部は、5μmから500μmの範囲の平均直径、または0.4pLから400nLの範囲の平均体積を有していてもよい。
【0062】
支持体は、極性媒体含有容積部で満たすことが容易である。1つの可能性ある技法では、極性媒体含有容積部は、無極性媒体中の極性媒体含有容積部のエマルジョンを形成し、かつそのエマルジョンを支持体上に流すことによって、区画内に配置されてもよい。これは、直接的な手法で区画を満たすことを可能にする。典型的には、エマルジョンは、区画の数よりも多い極性媒体含有容積部を含有する。過剰な極性媒体含有容積部は、区画の適度に大きい割合を満たすのを助ける。したがって、過剰な極性媒体含有容積部を除去するには、支持体を、無極性媒体で洗浄してもよい。この洗浄を行って、極性媒体含有容積部を区画内に残してもよい。
【0063】
別の技法では、極性媒体含有容積部は、例えば音響液滴噴射によって個々の区画内に直接吐出されてもよい。この技法によれば、吐出は、正しい数の極性媒体含有容積部が、過剰な容積部を除去する必要なしに吐出されるように、制御されてもよい。
【0064】
支持体は、極性媒体含有容積部と極性媒体含有層との間に両親媒性分子を含む膜を形成するのに使用されてもよい。すなわち、極性媒体含有層は、区画の開口上で支持体の端から端まで延びて、かつ両親媒性膜を介して極性媒体含有容積部の少なくともいくらかに接触して、配置されてもよい。両親媒性分子を含む膜は、極性媒体含有層と極性媒体含有容積部との間の界面に形成される。
【0065】
実施形態では、両親媒性分子は、極性媒体含有層を設ける前に、区画内に配置された極性媒体含有容積部の周りに両親媒性分子を含む層を設けるために、極性媒体および/または無極性媒体含有容積部中に提供されてもよい。
【0066】
例えば極性媒体含有容積部が、無極性媒体中の液状の液滴の形で提供される場合、容積部の周りの両親媒性分子の層の存在は、容積部が互いに混合する傾向を低減させる。したがって、両親媒性分子は、無極性媒体中に液滴が形成される前に、無極性媒体、または極性媒体含有容積部のいずれかに添加されることが好ましい。個々の液滴が、区画内に導入される前に互いに接触しない場合、極性媒体の液滴は、両親媒性分子が存在しない状態で無極性媒体中に提供されてもよい。後者の場合、両親媒性分子は、無極性媒体中に提供された極性媒体含有容積部の周りに両親媒性分子の層を設けるために、例えば極性媒体含有層に引き続き添加されてもよい。
【0067】
両親媒性分子を含む膜は、膜界面での分析物の検出、膜界面の性質の決定、または1つもしくは複数の膜界面を横断する分析物の通過など、ある範囲の適用例に使用されてもよい。いくつかの適用例では、膜は、分析物を含むサンプル、例えば生体サンプルを分析するのに使用されてもよい。
【0068】
適用例の1つのタイプでは、両親媒性分子を含む膜に挿入されるイオンチャネルまたは細孔などの膜タンパク質が使用されてもよい。膜タンパク質は、最初は、極性媒体含有容積部にまたは極性媒体含有層に含有されていてもよい。あるいは膜タンパク質は、無極性媒体中に提供されてもよい。このため膜タンパク質は、両親媒性分子を含む膜の形成後に自発的に挿入される。
【0069】
いくつかの適用例は、膜の端から端までの電気的特性、例えばイオン電流の測定を使用してもよい。そのような測定を行うために、支持体はさらに、各区画内にそれぞれの電極を含んで、極性媒体含有容積部との電気接触を作製してもよい。その他のタイプの測定、例えば蛍光測定およびFET測定などの光学測定を実施してもよい。光学測定および電気測定は、同時に実施してもよい(Heron AJ et al., J Am Chem Soc. 2009;131(5):1652-3)。
【0070】
区画は、極性媒体の単一の容積部を含有していてもよい。あるいは、区画は、極性媒体の複数の容積部、例えば2容積部を含んでいてもよい。極性媒体含有容積部は、他の容積部の最上部に設けられてもよい。両親媒性分子を含む膜は、極性媒体含有層と極性媒体含有容積部との間の界面に形成されてもよい。膜タンパク質は、電極と親水性層との間にイオンまたは分析物輸送経路が設けられるように、極性媒体含有容積部の間の界面に設けられてもよい。
【0071】
アレイの区画は、様々な手法で、例えば正方形充填、長方形充填、または六方充填配置構成として、配置構成されてもよい。
【0072】
装置は、開口上で支持体の端から端まで延びるように配置されたときに極性媒体含有層に電気接触するように配置構成された共通電極を、さらに含んでいてもよい。
【0073】
装置は、共通電極と各区画内のそれぞれの電極との間に接続された電気回路をさらに含んでいてもよく、この電気回路は、電気測定を行うように配置構成されている。そのような電気測定は、両親媒性分子を含む膜でまたはこの膜を通して生じるプロセスに依存してもよい。
【0074】
支持体は、様々な有利な構成を有していてもよい。
【0075】
構成の第1の可能性あるタイプにおいて、隔壁は、区画間に無極性媒体を流すのを可能にする隙間を有していてもよい。これは、隙間によって、予め区画に進入し得る無極性媒体を排出させるので、極性媒体含有容積部での区画の充填が容易になる。
【0076】
隙間を有する構成では、第1の可能性は、ベース部まで延びる隙間に関する。この構成には、無極性媒体の流れが区画間で生じ得るという利点がある。
【0077】
隙間を有する構成では、第2の可能性は、ベース部の途中まで延びる隙間に関する。例えば、隔壁が、間に隙間を持たない区画の内側部分を画定する内側部分と、区画の内側部分を画定する内側部分から外向きに延びる外側部分とを含んでいる構成であって、前記隙間が形成されている構成を支持体が有していてもよい。この構成には、区画の電気分離が改善され、その一方で区画間の無極性媒体の流れが依然として可能であるという利点がある。
【0078】
構成の、第2の可能性あるタイプでは、隔壁は、区画間に無極性媒体を流すのを可能にする隙間を持たなくてもよい。このタイプの構成には、区画の電気分離を最大限にするという利点がある。
【0079】
構成の、この第2の可能性あるタイプでは、隔壁は、支持体を横断して見たときに、個々の区画の周りに、極性媒体の容積部と内側隔壁表面との接触を低減させるように働く1つまたは複数の突出部分を含むプロファイルを有していてもよい。接触表面積のこの低減は、極性媒体の容積部と内側隔壁表面との間の表面張力を低減させ、この容積部を、より容易に区画内で移動させることができ、例えば、電極表面に接触するために区画のベース部に移動させることができる。区画の内側隔壁の表面の周りに設けられた突出部分の寸法および数は、変えてもよい。液滴と内側隔壁表面との接触の低減は、通常ならそのような突出部分が存在しない状態で可能であると考えられるよりも大きい液滴を組み込むことができるようになる。
【0080】
隔壁は、区画内への極性媒体の容積部の進入によって変位させた無極性媒体の流出を可能にするチャネルを提供する、1つまたは複数の凹入部分を含んでいてもよい。そのようなプロファイルは、凹入部分によって、予め区画に進入し得る無極性媒体の排出が可能になるので、極性媒体含有容積部での区画の充填に有利である。チャネルの寸法は変えてもよい。無極性媒体は、より大きい断面積を有するチャネルを通して、より容易に排出される。隔壁は、1つまたは複数の突出部分と1つまたは複数の凹入部分との両方を含んでいてもよい。1つまたは複数の凹入部分の寸法は、極性媒体の容積部と内側隔壁表面との表面接触の程度を決定してもよい。
【0081】
支持体は、両親媒性分子を含む膜の形成が容易になるように、下記の通り設計されてもよい。
【0082】
有利には、隔壁の外側端部は、共通平面内で拡がっていてもよい。これは、支持体に対する、極性媒体含有層の接着を改善し、したがって、両親媒性分子を含む膜の形成の安定性を改善する。
【0083】
隔壁の外側端部の縁部は、支持体に対する、極性媒体含有層のピニングを提供する。有利には、そのようなピニングを助けるため、隔壁は、共通平面内の隔壁の外側端部の縁部の区画当たりの全長が、区画内に収容することができる最大限の観念上の球の最大円周よりも大きくなるように設計されてもよい。
【0084】
区画の開口の寸法は、極性媒体含有層が開口上の支持体の端から端まで延びるように設けられた場合、極性媒体含有層が、極性媒体含有容積部の少なくともいくらかに接触する程度まで、極性媒体含有層が区画内を延びるメニスカスを形成するように、選択されてもよい。これは、両親媒性分子を含む膜のサイズおよび安定性の制御を可能にする。隙間が、内側および外側部分を画定するベース部の途中まで下に延びる構成では、外側部分の配置構成および寸法は、メニスカスが外側部分または内側部分にピニングされたか否かを決定することになる。
【0085】
極性および無極性媒体に関する下記のコメントは、本発明の全ての態様に適用される。
【0086】
極性媒体は、親水性媒体であってもよい。無極性媒体は、疎水性媒体であってもよい。特定の実施形態では、極性媒体の単一の容積部は、区画内に提供される。
【0087】
極性媒体含有容積部は、典型的には、水性媒体、例えば水性緩衝溶液を含む容積部である。
【0088】
区画内に提供されたそれぞれの容積部の極性媒体は、同じでも異なっていてもよい。容積部は、それぞれ、異なる物質を含んでいてもよく、または同じ物質を異なる濃度で含んでいてもよい。例えば、極性媒体含有容積部は様々な量の物質Aを含有していてもよく、極性層は物質Bを含んでいてもよく、この場合、検出可能な相互作用または反応がAとBとの間に生じ得る。このように、物質Bは、イオンチャネルを通過して、それぞれの極性媒体含有容積部に入ってもよい。個々の相互作用または反応、例えば蛍光シグナルを検出することにより、多数のイオンチャネル実験を例えば同時に実施してBとAとの間の最適な反応または相互作用を決定してもよい。
【0089】
極性媒体含有層は、典型的には、水性媒体、例えば水性緩衝溶液を含んでいてもよい。
【0090】
層の極性媒体は、区画内に提供されるそれぞれの容積部と同じまたは異なる極性媒体であってもよい。これらの媒体は、異なる物質を含んでいてもよく、または同じ物質を異なる濃度で含んでいてもよい。
【0091】
次に本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら非限定的な例を用いて記述する。
【発明を実施するための形態】
【0093】
本明細書は、下記のような様々な配列に言及する。
【0094】
配列番号1は、MspA−(B2C)のアミノ酸配列を示す。MspA−(B2C)のアミノ酸配列は、下記の変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2の変種である。
【0095】
配列番号2は、MspAモノマーのMS−B1変異体の成熟型の、アミノ酸配列を示す。この変異体は、シグナル配列が欠けており、下記の変異:D90N、D91N、D93N、D118R、D134R、およびE139Kを含む。
【0096】
配列番号3は、実施例5で使用されるポリヌクレオチド配列の1つを示す。その3’末端が、4つのスペーサー単位を介して配列番号4の5’末端に接続されている。
【0097】
配列番号4は、実施例5で使用されるポリヌクレオチド配列の1つを示す。その5’末端が、4つのスペーサー単位を介して配列番号3の3’末端に接続されている。
【0098】
配列番号5は、α−ヘモリシン−E111N/K147N(α−HL−NN);(Stoddart, D. S., et al., (2009), Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 106, p7702-7707)の1つのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0099】
配列番号6は、α−HL−NNの1つのサブユニットのアミノ酸配列を示す。
【0100】
以下に示される配列番号7は、アプタマーのポリヌクレオチド配列であり、Xは、脱塩基部位である。XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXAAAAAAAGGTTGGTGTGGTTGG。この配列はWIPO ST.25に従っておらず、したがって配列表に含まれていない。
【0101】
配列番号8は、DNAのストランドのポリヌクレオチド配列を示す。ストランドは、配列中の位置1のチミンに結合されたBHQ1標識と、配列中の位置15のチミンに結合されたFAM標識とを有する。
【0102】
配列番号9は、MspA−(B2C)変異体MspAモノマーをコードするポリヌクレオチド配列を示す。MspA−(B2C)のアミノ酸配列は、下記の変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2の変種である。
【0103】
配列番号10は、MspAモノマーのMS−B1変異体をコードするポリヌクレオチド配列を示す。この変異体は、下記の変異:D90N、D91N、D93N、D118R、D134R、およびE139Kを含む。
【0104】
図1は、無極性媒体中に極性媒体含有容積部2のアレイを保持する装置1を示す。装置1は、区画4のアレイを提供する支持体3を含む。使用中、全ての区画4は無極性媒体を含有する。区画4の少なくともいくつかは(この実施例では、区画4のほとんど)、無極性媒体中に極性媒体の単一の容積部2を含有する。
【0105】
支持体3の構成を、
図2および3に、より詳細に示す。支持体3は、ベース部5と、ベース部5から延びる隔壁6とを含む。隔壁6は、
図3に示されるように、ベース部5から外に、この実施例では垂直に延びる複数の支柱7を含む。区画4は、支柱7の遠位端に設けられた開口を有する。これらの開口は、区画4から、支持体3に隣接する空間内への連通をもたらし、極性媒体の容積部は、開口を通して区画4内に導入され得る。
【0106】
支柱7は、規則的な正方形のアレイ状の区画4が画定されるように、
図2に示されるような異なる形状を有していてもよい。支柱7は、区画4内の極性媒体の容積部2が、隣接する区画内の極性媒体含有容積部2に接触しないように、成形される。この実施例では、支柱7は、区画4内に突出するアームを有する十字形支柱7aを区画4の隅に含み、区画4の各辺に沿って支柱7bをさらに含み、十字形支柱7aとその他の支柱7bとの間には隙間8がある。区画4は、極性媒体の容積部2が物理的に互いに分離するように配置構成される。これは、極性媒体の容積部2が互いに混合しまたは接触するのを防止して、界面を形成する。これは、長時間にわたって貯蔵される可能性のある極性媒体の容積部2の、非常に安定したアレイを提供する。ここで、「内側」および「外側」という用語は、外側端部の開口から内側端部のベース部5に向かう、区画4内の相対的な位置付けについて記述する。
【0107】
支柱7は、それらの間に隙間8を有する。この実施例において、隙間8は、開口からベース部5までの距離全体に延びる。隙間8は、区画4内の極性媒体の容積部2の分離を維持しつつ、区画4の間に無極性媒体を流すのに十分なサイズのものである。隙間8を設けることにより、無極性媒体を区画4の間に流すことが可能になる。このようにすると、無極性媒体は、開口を通って区画4に進入する極性媒体の容積部2によって排出され得るので、区画4の充填の著しい助けとなる。隙間8は、支持体3における無極性媒体のレベルを制御しかつアレイ全体を通して均等にすることも可能にする。支柱7の間の隙間8は、極性媒体の容積部2が、区画4の間の隙間8を移動しないように、または隣接する区画内の極性媒体含有容積部2に接触しないようにするものである。
【0108】
任意選択で、無極性媒体による支持体3の周縁の充填を助けるダム10が、支持体3の周辺を巡って設けられてもよい。無極性媒体が支持体3から導入されまたは排出され得る1つまたは複数のチャネル11を、ダム10に設けてもよい。
【0109】
支持体3は、限定するものではないが非ドープ型結晶質シリコン(すなわち、シリコンウエハ)、SU8、ポリカーボネート、および/またはポリエステル含み、かつこれらまたはその他の材料の任意の組合せを含む、高い電気抵抗を有するある範囲の種々の材料から作製されてもよい。支持体3は、そのような材料に用いられる従来の技法であって、堆積および除去技法、例えばエッチングまたはレーザ加工を含むがこれらに限定することのない技法を使用して製造されてもよい。
【0110】
図3に示されるように、ベース部5は基材12を含む。基材12は、各区画4内に電極13を支持する。この実施例において、電極13は、基材12のリセス部に置かれた状態が示されるが、電極は、代替例として、基材12の露出面上に外層として堆積することもできる。電極13は、区画4に含有される極性媒体の容積部2と電気接触するように設けられ、より詳細に以下に論じる。
【0111】
基材12は、任意選択の表面コーティング14を含んでいてもよい。表面コーティング14は、高抵抗外層を提供してもよい。ベース部5に関する1つの可能性ある材料の組合せは、ベース部が非ドープ型結晶質シリコン(すなわち、シリコンウエハ)で作製され、かつコーティング14がSU8で作製されることである。
図2に示される実施例では、表面コーティング14が基材12の最上部に設けられ、したがって電極13に位置合わせされたアパーチャ15を有することにより、電極13と極性媒体の容積部2との電気接触が可能になる。代替例として、電極12は、表面コーティング14と同じ層にまたは表面コーティング14の最上部にパターニングすることができる。
【0112】
隔壁6は、支持体3のベース部12と同じまたは異なる材料で作製されてもよく、同じまたは異なる表面特性を有していてもよい。隔壁6は、典型的には無極性であり、例えばPermexから作製されてもよい。隔壁6は、任意選択で、その電気的および/または物理的性質を修正するために表面コーティング(図示せず。)を含んでいてもよい。
【0113】
図2に示される支柱7の特定の形状および配置構成は、必須のものではなく、支柱7は、区画4内の極性媒体の容積部2が隣接する区画内の極性媒体含有容積部2に接触しないように、区画4を画定する様々な異なる形状を有していてもよい。例として、
図4から8は、下記の通り、支柱7に関する代替の形状および配置構成のいくつかの実施例を示す。
【0114】
図4および5は、隔壁6が、
図2に類似した配置構成で十字形支柱7aとその他の支柱7bとを含んだ支柱7を含む、支持体3を示す。このように支柱7は、短いおよび長いピッチで組み合わされ、その結果、極性媒体の容積部2の混合を防止し、支柱の安定性を改善する。
【0115】
図6から9は、支柱7が修正された形状およびパターンを有する、その他の支持体3を示す。それぞれの場合において、支柱7は、開口からベース部5までの距離全体を延びる隙間8を有する。支柱7は、支柱7が互いに広く間隔を空けて配置される支持体3の領域で、区画4を画定するパターンに配置構成される。支柱7の間の隙間8は、極性媒体の容積部2が区画4の間を移動しないように、または隣接する区画内の極性媒体含有容積部2に接触しないようにするものである。
図6では、隔壁6は、円形支柱7dのアレイを含む。
【0116】
図7では、隔壁6は、三つ星形支柱7gのアレイを含む。三つ星形支柱7gは、湾曲した凹入面と拡大された端部とを有する3つのアームを有する。三つ星形支柱7gは、複数の区画4を画定し、3つの三つ星形支柱7gが各区画の周りに等間隔で配置されている。
図8および9において、隔壁6は、複数の区画4を画定する十字形支柱7hおよびT字形支柱7iのアレイをそれぞれ含む。十字形支柱7gおよびT字形支柱7hは凹入面を有する。
【0117】
図7から9のこれらの実施例では、区画4を設けるのに必要な支柱7の数は、例えば
図2または6の配置構成よりも少ない。少ない数の支柱7を設けることにより、アレイの製作をより容易にし、個々の支柱の機械的弾性が増大する。
【0118】
図6に示される円形支柱は、特に高さが100μm程度であり支柱の幅が25μm程度の支柱7に関し、例えば
図4または
図7から9のより構造的に弾性のある支柱よりも、機械的弾性が低く、より潰れ易くまたは歪み易いことがわかった。したがって、幅:高さの比がより高い支柱7が好ましい。
【0119】
図11および12は、隔壁6が、十字形支柱7aおよびその他の支柱7bの表面62が下記の通りパターニングによってマイクロパターニングされた修正点以外、
図4と同じ全体配置構成を有する十字形支柱7aとその他の支柱7bとを含んだ支柱7を含む、支持体3を示す。特に、それらの表面62には、十字形支柱7aおよびその他の支柱7bの全長に沿って、区画4から外向きに延びる複数の刻み目63によって刻み目が付けられている。この実施例では、刻み目63は、その断面が長方形である。
【0120】
刻み目63の間の表面62は、区画4の周りに延びる共通湾曲平面内にある。これらの表面62は、極性媒体の容積部2を区画4内に物理的に拘束する。このように、表面62の寸法は、区画4に収容され得る極性媒体の容積部2のサイズを制御する。
【0121】
刻み目63は、極性媒体の容積部2に接触する隔壁6の表面積を低減させる、無極性媒体を保持する。これは支柱7の表面特性を修正し、極性媒体を弾き、したがって、区画4内に保持される極性媒体の容積部2を拘束しかつ極性媒体が区画内に進入するのを助ける。一般に、パターニングは、この効果を発揮させるためにその他の表面形体を含むことができる。
【0122】
刻み目63および表面62は、区画4内に保持される極性媒体の容積部2の体積のサイズに比べて小さい幅を有する。刻み目63および表面62は、好ましくは最大で20μm、より好ましくは最大で10μmの幅を有する。例えば、区画4の寸法が、区画4内に収容することができる最大限の観念上の球の直径dに関して特徴付けられる場合、刻み目63および表面62は、最大で0.1d、好ましくは最大で0.05dの幅を有する。直径dが140μmである典型的な実施例では、刻み目63および表面62は、5μmの幅を有する。刻み目63の深さは、チャネルが無極性媒体を保持できるように選択される。
図11および12の実施例では、チャネルは5μmの深さを有し、アスペクト比1:1が得られる。しかし、より深い刻み目63は、無極性媒体のより効果的な保持を行う。
【0123】
図に示される全ての構成において、支柱7は、
図3に示されるように、支柱7の外側端部9が共通平面内で拡がるように同じ高さを有し、その結果、支持体3にはブラシ状の平坦上面が設けられる。同じ高さを有する支柱を設けることが好ましい構成であるが、異なる高さの支柱を有する構成を設けてもよい。
【0124】
次に、ベース部5までの距離全体に延びる支柱7および隙間8を持たない、隔壁6に関するいくつかの代替構成について記述する。一般に、隔壁のあらゆる隙間の深さを低減させることにより、例えば無極性媒体が電極13間に導電性経路を設けるよう十分に水和した場合、区画4間の電気分離を増大させることができかつ異なる区画4の電極13間のオフセット電流の傾向を低減させることができる。隔壁6の代替構成とは別に、支持体2は、通常なら上述と同じ構成を有する。
【0125】
隔壁に関する第1の代替構成を、
図12および13に示し、下記のように配置構成される。第1の代替構成では、隔壁6は、区画4の間に無極性媒体を流すのを可能にする隙間を持たない。特に、隔壁6は、それらの区画4の間に隙間を持たない区画4を画定するリセス部30を有する。隔壁6は、ベース部5から延びる共通本体31によって形成されてもよい。その場合、ベース部5は、区画4の内側端部を形成する平坦面を有する。共通本体31は、ベース部5に積層された分離層として形成されてもよいが、代わりにベース部5に一体化されてもよく、リセス部30は、材料を除去することによって形成されてもよい。
【0126】
この実施例では、隔壁6は、支持体3を横断して見たときに、第2の代替構成における隔壁の内側部分20のプロファイルと同じプロファイルを有する。すなわち、プロファイルは波形であり、個々の区画4の周りに、区画4内に突出する複数の突出部分32と、区画4が隔壁6に突出している複数の凹入部分33とを含む。
【0127】
突出部分32は、区画4内に極性媒体の容積部2を拘束するよう物理的に配置構成される。このように、突出部分32の寸法は、区画4に収容され得る極性媒体の容積部2のサイズを制御する。
【0128】
凹入部分33は、区画4に収容される極性媒体の容積部2の外側に延びるチャネルを提供する。したがって、凹入部分33は、区画4内への極性媒体の容積部2の進入によって変位させた無極性媒体を流出させる。
【0129】
この波形構造は、極性媒体の容積部2に接触する隔壁6の表面積も低減させる。これは極性媒体の容積部2が区画4のベース部に移動するように働き、それによって、電極13と電気接触するのを助ける。
【0130】
原則として、3、4、5、6個などの任意の数の凹入部分33を、原則として設けることができる。しかし、突出部分32の数と、極性媒体の容積部2に関する接触表面とのバランスをとる必要があると考えられる。
【0131】
図12に示される突出部分32は、丸みの付いた縁部を有する。あるいは突出部分32は、鋭い縁部を有していてもよい。そのような鋭い縁部は、区画4の縁部と極性媒体の容積部2との間の接触の程度をさらに低減させ得る。逆に言えば、鋭い縁部は、両親媒性分子の層を穿刺する可能性がある。極性媒体の容積部2と区画4の内面との接触の程度を低減させることが有利である。突出部分32があることにより、より大きい極性媒体の容積部2は、区画4の所与の容積に使用できるようになる。
【0132】
図12からわかるように、凹入部分33の寸法および形状は、極性媒体の容積部2に接触することが可能な表面積を決定する。突出部分32および凹入部分33は、一般に、凹入部分33の断面の幅が大きくなるほど区画4の壁の表面積の低減が大きくなるという点が、相関的である。
【0133】
このように、上述の構成と比較すると、第1の代替構成では、隔壁6は、極性媒体の容積部2を拘束しかつそれらが接触しまたは混合するのを防止するという同じ機能を発揮するが、区画4間の電気分離は、隔壁6の隙間が存在しないことにより増大する。隔壁6に隙間がないことにより、区画4の間に無極性媒体を流すことができるという有益な効果も低減するが、これは、極性媒体の容積部2の挿入を助ける、変位された無極性媒体の流出を可能にするチャネルを提供する凹入部分33により区画4を充填するときに、ある程度まで緩和される。これは、最大サイズの極性媒体の容積部2の挿入を可能にし、その運動は突出部分32により制約を受ける。
【0134】
隔壁6は、
図12に示されるように、隔壁6の外側端部34が共通平面内で拡がるよう同じ高さを有し、その結果、支持体3にはブラシ状の平坦上面が設けられる。
【0135】
次に、隔壁6に関するいくつかの代替構成について記述するが、ここで隔壁6は、それらの間に隙間を持たない区画の内側リセス部を画定する内側部分と、区画の間に無極性媒体を流すのを可能にする隙間を持つ区画の外側部分を画定する、内側部分から外向きに延びる外側部分とを含む。このように、効果的に、隙間はベース部5の途中まで延びる。隔壁6の代替構成とは別に、下記の支持体2は通常なら上述と同じ構成を有する。
【0136】
隔壁に関する第2の代替構成を、
図14、15、および16に示し、下記のように配置構成する。
【0137】
無極性媒体中に極性媒体の容積部2があるアレイを保持するための装置1は、区画4のアレイを設ける支持体3を含む。使用中、全ての区画4は無極性媒体を含有し、区画4の少なくともいくつかは、無極性媒体中に含まれる極性媒体の単一の容積部2を含有する。
【0138】
支持体3は、ベース部5と、ベース部5から延びる隔壁6とを含む。ここで「内側」および「外側」という用語は、外側端部の開口から内側端部のベース部5に向かう区画4内の相対的な位置付けについて記述する。
【0139】
以下に、より詳細に記述するように、隔壁6は、隔壁6の遠位端に開口が設けられた区画4を画定する。これらの開口は、区画4から、支持体3に隣接する空間への連通を提供し、極性媒体の容積部は、開口を通って区画4内に導入することができる。区画4は、極性媒体の容積部2が互いに物理的に分離するように配置構成される。これは極性媒体の容積部2が互いに混合しまたは接触して界面を形成するのを防止する。これにより、長期にわたり貯蔵することが可能な、極性媒体の容積部2の非常に安定なアレイが設けられる。
【0140】
任意選択で、支持体3の周縁に無極性媒体を充填するのを助けるダム(
図1に示される形をとる。)を、支持体3の周辺を巡って設けてもよい。1つまたは複数のチャネル、すなわちその内部を通って無極性媒体が導入されまたは支持体3から排出することができるチャネルを、ダムに設けてもよい。
【0141】
支持体3は、限定するものではないが非ドープ型結晶質シリコン(すなわち、シリコンウエハ)、SU8、ポリカーボネート、および/またはポリエステル含み、かつこれらまたはその他の材料の任意の組合せを含む、高い電気抵抗を有するある範囲の種々の材料から作製されてもよい。支持体3は、そのような材料に用いられる従来の技法であって、堆積および除去技法、例えばエッチングまたはレーザ加工を含むがこれらに限定することのない技法を使用して製造されてもよい。
【0142】
ベース部5は基材12を含む。基材12は、各区画4内に電極13を支持する。この実施例において、電極13は、基材12のリセス部に置かれた状態が示されるが、電極は、代替例として、基材12の露出面上に外層として堆積することもできる。電極13は、区画4に含有される極性媒体の容積部2と電気接触するように設けられ、より詳細に以下に論じる。
【0143】
基材12は、任意選択で表面コーティングを含んでいてもよい。表面コーティングは、高抵抗外層を提供してもよい。ベース部5に関する1つの可能性ある材料の組合せは、ベース部5が非ドープ型結晶質シリコン(すなわち、シリコンウエハ)で作製され、かつコーティングがSU8で作製されることである。そのような表面コーティングは基材12の最上部に設けられ、電極13に位置合わせされたアパーチャがあることにより、電極13と極性媒体の容積部2との電気接触が可能になる。代替例として、電極12は、表面コーティングと同じ層にまたは表面コーティングの最上部にパターニングすることができる。
【0144】
隔壁6は、支持体3のベース部12と同じまたは異なる材料で作製されてもよく、同じまたは異なる表面特性を有していてもよい。隔壁6は、典型的には無極性であり、例えばPermexから作製されてもよい。隔壁6は、任意選択で、その電気的および/または物理的性質を修正するために表面コーティング(図示せず。)を含んでいてもよい。
【0145】
図15および16は、隔壁6の特定の配置構成を示すが、これは必須ではなく、隔壁6は、区画4内の極性媒体の容積部2が隣接する区画内の極性媒体含有容積部2に接触しないように、区画4を画定する様々な異なる配置構成を有していてもよい。
【0146】
図15および16の配置構成では、隔壁6は、内側部分20と外側部分21とを含む。
【0147】
隔壁6の内側部分20は、区画4のそれら内側部分の間に隙間を持たない区画4の内側部分を形成する、内側リセス部22を画定する。隔壁6の内側部分20は、ベース部5から延びる共通本体によって形成されてもよい。その場合、ベース部5は、区画4の内側端部を形成する平坦面を有する。内側部分20は、内側リセス部5になるアパーチャを形成するために材料を除去した後、ベース部5に積層された分離層として形成されてもよい。あるいは内側部分20は、ベース部5に一体化されてもよく、リセス部22は、一体化部材の材料を除去することによって形成されてもよい。
【0148】
この実施例では、隔壁6の内側部分20は、支持体3を横断して見たときに、個々の区画4の周りの円形のプロファイルを有する。
【0149】
隔壁6の外側部分21は、内側部分20から外向きに延び、区画4の外側部分を画定する。この実施例では、隔壁6の外側部分21は、
図4および5に示された隔壁6の構成の支柱7に類似したパターンで、この実施例では垂直に、
図15に示されるように隔壁6の内側部分20から外に延びる複数の支柱23を含む。特に、区画4に向かってアームが延びる区画4の隅の十字形支柱23aと、区画4の各辺に沿った複数のその他の支柱23bであり、十字形支柱23aとその他の支柱23bとの間に隙間24があり、かつその他の支柱23bの間にも隙間24がある。
【0150】
支柱23は、それらの間に隙間24を有する。この実施例では、隙間24は隔壁の内側部分20に延び、したがってベース部5の途中までしか延びていない。隙間24は、区画4内の極性媒体の容積部2の分離を維持しながら、区画4の間に無極性媒体を流すのに十分なサイズのものである。隙間24を設けることにより、区画4の間に無極性媒体を流すことが可能になる。これは、無極性媒体を、区画4に進入する極性媒体の容積部2で変位させることができるので、区画4の充填を助ける。これに関するさらなる記述を以下に示す。隙間24は、支持体3の無極性媒体のレベルを制御しかつアレイ全体にわたって均等にすることも可能にする。このように、上述の構成と比較すると、第2の代替構成では、隔壁4は、極性媒体の容積部2を拘束しかつそれらが接触しまたは混合されるのを防止するという同じ機能を発揮し、隙間24は、区画4の間に無極性媒体を流すという同じ機能を隙間8にもたらす。しかし区画4間の電気分離は、内側部分20に隙間がないので増大する。
【0151】
支柱23は、それらの内側リセス部22の開口から見た場合、内側リセス部22の縁部から離して設けられる。これは、任意の所与の支柱23と、隣接する内側リセス部22との間で、隔壁6の内側部分20の上面にステップを生成する。
【0152】
支柱23は、
図15に示されるように、支柱24の外側端部25が共通平面内で拡がるよう同じ高さを有し、その結果、支持体3にはブラシ状の平坦上面が設けられる。
【0153】
隔壁6の内側部分20と外側部分21との相対的な高さは、様々であってもよい。1つの典型的な実施形態では、内側部分20はその高さが90μmであり直径が170μmであり、外側部分21は高さが60μmである。
【0154】
この実施例では、隔壁の内側部分はさらに、2つの凹入部分28を含む。
図15および16からわかるように、凹入部分の寸法は、区画4の内面に比べて比較的小さい。
【0155】
隔壁の修正された構成を、
図17および18に示す。これは、下記の修正点以外、
図15および16の構成に類似している。
【0156】
まず、隔壁6の内側部分20によって形成された内側リセス部22は、支持体3を横断して区画4の開口から見たときに、円形ではないプロファイルを有する。特に、プロファイルは波打っており、個々の区画4の周りに、区画4内に突出する複数の突出部分26と、区画4が隔壁6内に突出する複数の凹入部分27とを含む。
【0157】
突出部分26は、区画4内に極性媒体の容積部2を拘束するように物理的に配置構成される。このように、突出部分26の寸法は、区画4に収容され得る極性媒体の容積部2のサイズを制御する。
【0158】
凹入部分27は、区画4に収容される極性媒体の容積部2の外側に延びるチャネルを提供する。したがって効果的に、隔壁6の内側部分20は、内側リセス部22から外向きに延びる複数のチャネルが刻まれた表面を有する。したがって、凹入部分27は、区画4内への極性媒体の容積部2の進入によって変位された無極性媒体を流出させる。
【0159】
この波形構造は、極性媒体の容積部2に接触する隔壁6の表面積も低減させる。これは、極性媒体の容積部2が区画4のベース部に移動するように働き、それによって電極13に電気接触するのを助ける。
【0160】
原則として、3、4、5、6個などの任意の数の凹入部分27を、原則として設けることができる。しかし、突出部分26の数と、極性媒体の容積部2に関する接触表面とのバランスをとることが必要と考えられる。
【0161】
第2に、隔壁6の外側部分21の支柱23は、異なるパターンを有する。特に、区画4の辺に沿った方向にアームが延びている、区画4の隅の十字形支柱23cと、区画4の各辺に沿った1対のその他の支柱23cとがあり、十字形支柱23cとその他の支柱23dとの間には隙間24があり、かつその他の支柱23dの間にも隙間24がある。これは、支柱23を内側部分20に適合させることが可能になるが、支柱23は同じ機能および効果を発揮する。
【0162】
図17に示される突出部分26は、丸みの付いた縁部を有する。あるいは突出部分26は、より鋭い縁部を有していてもよい。極性媒体の容積部2と区画4の内面とが接触する程度を低減させることが有利である。突出部分26があることによってより大きい、極性媒体の容積部2を、区画4の所与の容積で使用することが可能になる。
【0163】
図17からわかるように、凹入部分27の寸法および形状は、極性媒体の容積部2に接触することが可能な表面積を決定する。突出部分26および凹入部分27は、一般に、凹入部分27の断面の幅が大きくなるほど区画4の壁の表面積の低減が大きくなるという点が、相関的である。
【0164】
隔壁6の修正された構成を、
図19および20に示す。これは、内側リセス部22の表面64と支柱23の表面66とが以下にさらに記述されるパターニングを有するという修正点以外、
図15の構成に類似している。
【0165】
隔壁6のさらにその他の修正された構成を、
図21および22に示す。これはパターニングのサイズ以外、
図19の構成と同じである。
【0166】
隔壁6に関するさらにその他の修正された構成を、
図23および24に示す。これは、内側リセス部22の表面64(しかし支柱23の表面66ではない。)が以下に記述されるパターニングを有するという修正点以外、
図15の構成と同じである。
【0167】
隔壁6に関するさらにその他の修正された構成を、
図25および26に示す。
【0168】
次に
図19から26に示される区画4の様々な表面のパターニングについて、より詳細に記述する。
【0169】
特に、内側リセス部22の表面64には、内側リセス部22の全長に沿って、内側リセス部22から外向きに、したがって区画4から外向きに延びる、複数の刻み目65が刻まれる。この実施例では、刻み目65の断面が長方形である。同様に、支柱23の表面66には、区画4から外向きに延びる複数の刻み目67が刻まれる(
図15の構成に示されるもの以外)。この実施例では、刻み目67の断面が長方形である。
【0170】
刻み目65の間の各内側リセス部22の表面64は、内側リセス部22の周りに延びる共通湾曲平面内にある。これらの表面64は、極性媒体の容積部2を内側リセス部22内に物理的に拘束する。このように、表面64の寸法は、内側リセス部22に収容され得る極性媒体の容積部2のサイズを制御する。
【0171】
刻み目65は、極性媒体の容積部2に接触する隔壁6の表面積を低減させる、極性媒体を保持する。これは支柱7の表面特性を修正し、極性媒体を弾き、したがって、内側リセス部22に保持される極性媒体の容積部2を拘束しかつ内側リセス部22内に極性媒体を進入させるのを助ける。一般に、パターニングは、この効果を発揮させるその他の表面形体を含むことができる。
【0172】
無極性媒体70の初期の前処理は、以下に記述されるように適用される。刻み目65および67は、無極性媒体70の前処理を基材3上に逃すことによって拡げるのを助ける。
【0173】
隔壁6に加えられた無極性媒体70の前処理は、極性媒体に対する隔壁6の疎性、したがって極性媒体の容積部2と隔壁6との間の接触角を増大させるように働く表面張力/毛管現象により、刻み目65内で保たれる。これは、極性媒体の容積部2のメニスカスの形状を画定するのを助ける。高い毛管現象を有する刻み目65は、無極性媒体をより効果的に保持しかつ電極12の表面上への無極性媒体の流れを防止しまたは妨げるので好ましい。このように、区画に引き続き加えられる極性媒体は、電極13に直接接触することができる。
【0174】
刻み目65および表面64は、好ましくは最大で20μm、より好ましくは最大で10μmの、実施形態による幅を有する。刻み目65および表面64は、内側リセス部22に保持される極性媒体の容積部2の体積のサイズに比べ、小さい幅を有する。例えば、内側リセス部22の寸法が、内側リセス部22内に収容することができる最大限の観念上の球の直径dに関して特徴付けられる場合、刻み目65および表面64は、好ましくは最大で0.1d、より好ましくは最大で0.05dの幅を有する。例として、内側リセス部22が90μmの深さを有し、外側部分23が30μmの高さを有し、直径dが140μmである場合、刻み目65および表面64は5μmの幅を有していてもよい。同様に、
図19の構成では、刻み目65および表面64は、5μmの幅を有する。
【0175】
刻み目65の深さは、チャネルが極性媒体を保持するように選択される。例として、
図19の構成では、刻み目65は5μmの深さを有し、アスペクト比1:1を提供する。
【0176】
しかし、より深い刻み目65は、極性媒体のより効果的な捕獲および保持を行う。例として、
図25および
図21の構成では、刻み目65が50μmの深さを有し、アスペクト比10:1を提供する。これはより高い毛管現象に起因して、チャネル内に、より効果的に油を捕獲し保持する。利用可能な液滴の直径dは、100μmである。より高いアスペクト比の追加の利益は、より小さい液滴の直径が得られることであり、それがより小さい両親媒性膜面積を提供することである。
【0177】
刻み目67の間の支柱23の表面66は、内側リセス部22の周りに延びる共通湾曲平面にある。刻み目67は、無極性媒体を弾く極性媒体を保持する。隔壁6に加えられる無極性媒体70の前処理は、極性媒体に対する隔壁6の疎性を増大させるように働く表面張力/毛管現象により、刻み目65内で保たれ、それによって、内側リセス部22の充填を助ける。
【0178】
刻み目67および表面66は、好ましくは最大で20μm、より好ましくは最大で10μmの幅を有する。刻み目67および表面66は、内側リセス部22に保持される極性媒体の容積部2の体積のサイズに比べ、小さい幅を有する。例えば、内側リセス部22の寸法が、内側リセス部22内に収容することができる最大限の観念上の球の直径dに関して特徴付けられる場合、刻み目65および表面64は、好ましくは最大で0.1d、より好ましくは最大で0.05dの幅を有する。例として、内側リセス部22が90μmの深さを有し、外側部分23が30μmの高さを有し、直径dが140μmである場合、刻み目65および表面64は5μmの幅を有していてもよい。しかし、より深い刻み目67は、極性媒体をより効果的に保持するが、限定された空間であることに起因して、より高いアスペクトの刻み目67をもたらすことが難しい。
【0179】
下記のコメントは、上述の構成のいずれかを持つ支持体3に適用される。
【0180】
支持体3は、任意の数の区画4を含んでいてもよい。支持体3は、例えば、2から10
6個の範囲の数の区画4を含んでいてもよいが、典型的には100から100,000個の範囲であってもよい。
【0181】
個々の区画4は、隔壁6と、隔壁6の高さによって画定された観念上の容積との間の間隔によって画定された、観念上の断面積を有する。観念上の容積は、典型的にはアレイの全ての区画4に関して同じである。
【0182】
上記実施例のように、区画4は、支持体3を横断して見たときに、不規則に成形された周辺を有していてもよい。区画4の形状とは無関係に、区画が単一の極性媒体の容積部を含有する場合には、区画4の寸法は、区画4内に収容することができる最大限の観念上の球に関して特徴付けてもよい。寸法は、極性媒体の容積部2が球である(必須ではない。)場合に収容することができる最大限の極性媒体の容積部2程度のサイズである。事実、極性媒体の容積部が液体である場合、容積部は、区画の寸法および支持体の表面特性に応じて変形することができる。そのようなサイズは、典型的には50μmから500μmの間、より典型的には70μmから200μmの間であってもよい。
【0183】
アレイは、典型的には、実質的に類似するサイズの極性媒体の容積部2を含有することになる。
【0184】
区画4の寸法は、含有される極性媒体の容積部2のサイズに応じて選択されてもよい。極性媒体の容積部2は、典型的には、5μmから500μmの範囲の平均直径または0.4pLから400nLの範囲の平均体積を有する。したがって、支持体3における区画4の密度は、極性媒体の容積部2のサイズおよび隔壁6の特定の配置構成に依存する。
【0185】
上記実施例において、隔壁6は、区画4が支持体3の全体にわたって同じサイズおよび形状を有しかつ規則的なアレイに配置構成されるように、規則的に反復するパターンを有する。これは必須ではない。隔壁6および区画4は、代替として支持体3の全体にわたり異なる形状および/またはサイズを有していてもよく、かつ/または区画4は、不規則なアレイに配置構成されてもよい。
【0186】
極性媒体の容積部2の極性媒体の性質は、下記の通りである。
【0187】
極性媒体は、親水性媒体であってもよい。親水性媒体は、例えば水性媒体を含んでいてもよい。
【0188】
一実施例では、容積部2の極性媒体は、水性緩衝溶液である。緩衝溶液は、支持電解質を含んでいてもよい。
【0189】
アレイには、
図27に示されるようなフローセルアセンブリを使用することによって、エマルジョンを充填してもよくまたは無極性容積部および極性容積部を充填してもよい。
図27において、ASIC/PCB 105に取着されるアレイ101は、アレイ保持器102に挿入される。保護ガスケット107をアレイの表面に配置し、アレイを、ねじ109を使用して流体素子モジュール103に固定する。区画を充填するために、流体を、アレイの表面上に流してもよい。フローセルを流体的に封止するために、弁ロータ110を回転させてもよい。流体は、矢印で示されるように、流体リザーバ(図示せず。)からフローセルに進入し、フローセルから出て行く。
【0190】
容積部2が、区画内に配置される前に予め形成される実施例では、容積部2は、水性緩衝溶液の液滴であってもよい。その場合、容積部は、例えば、極性媒体を含有する第1のフローチャネル41と無極性媒体を含む第2のフローチャネル42とを含む
図28に示されるマイクロ流体フローT接合40を使用して、従来の手法で作製されてもよい。2つのフローチャネル41および42はT接合で交差し、自発的に液滴43を形成してそれがT接合から下流に流れ、無極性媒体中に液滴43が含まれるエマルジョンとして容器44に収集されてもよい。液滴43のサイズは、極性および無極性流体の流量ならびにそれぞれのフローチャネル41および42のアパーチャの幅によって決定される。
図28は、T接合40により形成された液滴43も示す。
【0191】
例えば、T接合で交差する前に共通フローチャネルが形成されるよう、第1のチャネルと交差する第1のフローチャネルへの、異なる極性媒体を含有する第3のフローチャネルを設けることによって、異なる量の物質を有する液滴が提供されてもよい。第3および第1のフローチャネルの流量は、成分の様々な比を有する液滴が得られるように、様々に変えてもよい。
【0192】
区画に配置される前に容積部2が予め形成される別の実施例では、極性媒体の容積部2は、アガロースゲルなど水性ゲルのビーズであってもよい。ゲルは、液相として水性緩衝溶液を含んでいてもよい。緩衝溶液は、支持電解質を含んでいてもよい。そのような例は、非架橋または架橋ヒドロゲル、例えばアガロースまたはセファロースである。ビーズは、例えば冷却またはUVによる架橋によって、液滴からその場で形成されてもよい。無極性媒体中に導入されるビーズは、例えば融解によって液滴を形成してもよい。極性媒体の容積部は、多孔質プラスチックまたはガラスビーズ内に提供されてもよい。
【0193】
極性媒体の容積部2が水性ゲルのビーズである場合、容積部は、区画から突出するのに十分な剛性を有していてもよい。
図29は、この実施例の装置を示す。この実施例では、ビーズが隔壁6の高さよりも上に突出し、メニスカス52が図示されるように形成される。
【0194】
極性媒体の容積部2が水性ゲルのビーズである場合、区画4間の漏れ電流は低減されると言える。ゲルビーズは、T継手液滴メーカで従来の手法により作製することができ、すなわち高温の流れ液体ゲルを無極性媒体の流れに合流させ、冷却し、それによって、無極性媒体中のゲルのビーズのエマルジョンが形成される。ゲルビーズは、ウェル内のスパイク電極上に位置付けることもより容易と考えられ、一般に、より寸法安定性がある。
【0195】
ゲルを使用する場合、球状以外の形状、例えば深いリセス部で用いることができる細長い煙草形状の構造を生成してもよい(したがって、極性媒体の容積部2の内部容積が最大限になる。)。これには、例えば酸化還元メディエータが極性媒体の容積部2内に含有される場合、極性媒体の容積部2の寿命が延びる利点があると考えられる。
【0196】
水性ゲルは、架橋ゲルであってもよい。これらは、母材が架橋されたゲルであり、ゲルの硬度が増し、架橋していないゲルよりも高い構造的完全性が得られる。例えば、アガロースゲルは架橋されてもよい。架橋したゲルのビーズは市販されており、無極性媒体と混合して、無極性媒体中のゲルのビーズのエマルジョンを形成してもよい。1つの可能性は、粒度が160μmでありアガロース含量が6.8〜7.2%の、架橋アガロースビーズであり(例えば、WorkBeadsTM200SEC、BioWorksから入手可能)、これは多孔質の程度が高く物理的に安定である。ビーズは、製造業者から供給されてもよく、両親媒性分子を含有する無極性媒体中にビーズを導入することによって、両親媒性層で被覆されてもよい。これは、そのような極性媒体の容積部2を製造する、より容易な方法も可能にする。
【0197】
架橋ゲルは、以下に記述されるように、装置1の製造中に、区画4内に極性媒体の容積部2を挿入するという利点を提供することもできる。
【0198】
上記実施例では、単一の極性媒体の容積部2が個々の区画に含有されるが、代替例として、複数の極性媒体の容積部2を、1つの区画4内に含有することができる。この例として、
図30は、2つの極性媒体の容積部2が単一の区画4内に提供された装置1を示す。極性媒体の容積部2は互いの上に位置決めされ、極性媒体の容積部2の1つに接触して設けられたその他の極性媒体含有層50を、有していてもよい。両親媒性分子を含む膜を、極性媒体の容積部2の間の任意の界面に、ならびに極性媒体の容積部2の1つと極性媒体の層50との間の界面に設けてもよい。イオンチャネルは、任意のそのような膜に設けられてもよい。例えば
図30に示されるように、区画4内に極性媒体の複数の容積部2を設けることにより、区画4の容積に対する極性媒体の有効量を増大させることができる。これは、より大量のメディエータを供給することができるなどの利点を提供する。
【0199】
無極性媒体の性質は、下記の通りである。
【0200】
無極性媒体は、疎水性媒体であってもよい。
【0201】
無極性媒体は、炭化水素または油またはこれらの混合物を含んでいてもよい。適切な油には、シリコーン油、AR20、またはヘキサデカンが含まれる。無極性媒体は、容積部2の極性媒体に対して実質的に不混和性であってもよい。
【0202】
支持体3に極性媒体の容積部2のアレイを保持する装置1には、上述のように、広範な生物学的、薬学的、およびその他の分析的適用例があってもよい。それによって、小さい容積部2または容積部2の群のハイスループット処理を容易にする機会が提供され、例えば、区画化反応、細胞選別、およびスクリーニングの適用例、例えばタンパク質結晶化、血液または脊髄液の分析、および廃棄物処理に使用されてもよい。アレイ内の極性媒体の容積部2に対処し置き換える能力は、例えば容積部2の反応を実施しアレイの補充を行うのに重要な態様である。
【0203】
いくつかの適用例において、上述のような支持体3に極性媒体の容積部2のアレイを保持する装置1には、
図31に示されるように(例として、極性媒体の容積部2が無極性媒体中の液滴である場合を示す。)、極性媒体の層50を設けてもよい。極性媒体の層50は、区画4の開口上を、支持体3の端から端まで延びる。このように極性媒体の層50は、隔壁6上に置かれる。極性媒体の層50は、極性媒体の容積部2の少なくともいくらか、好ましくはその全てにも接触する。両親媒性分子を含む膜は、極性媒体の層50と極性媒体の容積部2との間の界面51に形成される。
【0204】
両親媒性分子を含む膜を形成するために、両親媒性分子は、最初に極性媒体の容積部2、無極性媒体の層、または極性媒体の層50のいずれか1つまたは複数に提供されてもよい。これらの場合のいずれかにおいて、膜は、極性媒体の層50が支持体3の端から端まで流れるときに形成されてもよい。両親媒性分子が極性媒体の容積部2内に設けられる場合、区画4内に配置される極性媒体の容積部2は、極性媒体の層50を設ける前に、その表面の周りに両親媒性分子の層を含んでいてもよい。両親媒性分子が極性媒体の層50内に設けられる場合、極性媒体の層50は、極性媒体の容積部2に接触するようになる表面に両親媒性分子の層を含んでいてもよい。
【0205】
両親媒性分子を含む膜は、極性媒体の層50および極性媒体の容積部2が接触するようになるときに、界面51に形成される。両親媒性分子を含む膜は、極性媒体の層50と極性媒体の容積部2とを分離する。
【0206】
層50の極性媒体は、極性媒体の容積部2と同じまたは異なる材料であってもよい。層50の極性媒体は、親水性媒体であってもよい。親水性媒体は、例えば、水性媒体を含んでいてもよい。一実施例では、層50の親水性媒体は、水性緩衝溶液を含む。緩衝溶液は、支持電解質を含んでいてもよい。
【0207】
両親媒性分子の性質は、下記の通りである。
【0208】
両親媒性分子は、極性媒体の層50と極性媒体の容積部2との間の界面51で膜を形成することが可能な、任意のタイプのものであってもよい。
【0209】
本発明の方法および装置は、数多くの種々のタイプの両親媒性分子と共に使用するのに適している。
【0210】
一実施例では、両親媒性分子は、脂質二重層を形成するときの従来のように、単一の成分または成分の混合物を有していてもよい脂質を含んでいてもよい。
【0211】
脂質二重層を形成する任意の脂質を使用してもよい。脂質は、表面電荷、膜タンパク質を支持する能力、充填密度、または機械的性質などの、必要な特性を有する脂質二重層が形成されるように、選択される。脂質は、1種または複数の異なる脂質を含むことができる。例えば、脂質は、最大100の脂質を含有することができる。脂質は、好ましくは1から10の脂質を含有する。脂質は、天然に生じる脂質および/または人工脂質を含んでいてもよい。
【0212】
脂質は、典型的には、頭部、界面部分、および同じでも異なっていてもよい2つの疎水性尾部を含む。適切な頭部には、ジアシルグリセリド(DG)およびセラミド(CM)などの中性頭部;ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびスフィンゴミエリン(SM)などの両性イオン頭部;ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、リン酸(PA)、およびカルジオリピン(CA)などの負に帯電した頭部;およびトリメチルアンモニウム−プロパン(TAP)などの正に帯電した頭部が含まれるが、これらに限定するものではない。適切な界面部分には、グリセロールをベースにした、またはセラミドをベースにした部分など、天然に生じる界面部分が含まれるが、これらに限定するものではない。適切な疎水性尾部には、ラウリン酸(n−ドデカノン酸)、ミリスチン酸(n−テトラデコノン酸)、パルミチン酸(n−ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n−オクタデカン酸)、およびアラキジン酸(n−エイコサン酸)などの飽和炭化水素鎖;オレイン酸(cis−9−オクタデカン酸)などの不飽和炭化水素鎖;およびフィタノイルなどの分枝状炭化水素鎖が含まれるが、これらに限定するものではない。不飽和炭化水素鎖における、鎖の長さならびに二重結合の位置および数は、様々に変えることができる。分枝状炭化水素鎖における、鎖の長さとメチル基などの分枝の位置および数は、様々に変えることができる。疎水性尾部は、エーテルまたはエステルとして界面部分に結合することができる。
【0213】
脂質は、化学的に修飾することもできる。脂質の頭部または尾部が、化学的に修飾されてもよい。その頭部が化学的に修飾された適切な脂質には、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000]などのPEG修飾脂質;1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3ホスホエタノールアミン−N−[ビオチニル(ポリエチレングリコール)2000]などの官能化PEG脂質;ならびに1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル)および1,2−ジパルミトイル−snグリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(ビオチニル)など、複合用に修飾された脂質が含まれるが、これらに限定するものではない。その尾部が化学的に修飾された適切な脂質には、1,2−ビス(10,12−トリコサジイノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリンなどの重合性脂質;1−パルミトイル−2−(16−フルオロパルミトイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリンなどのフッ素化脂質;1,2−ジパルミトイル−D62−sn−グリセロ−3−ホスホコリンなどの重水素化脂質;および1,2−ジ−O−フィタニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンなどのエーテル結合脂質が含まれるが、これらに限定するものではない。適切な脂質の例には、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPhPC)および1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhPE)などのフィタノイル脂質が含まれるが、これらに限定するものではない。しかし、そのような天然に生じる脂質は、例えばタンパク質または界面活性剤により生分解し易く、高電圧に耐えることができない。好ましくは、両親媒性層は、天然に生じるものではない。両親媒性ポリマー膜は、より高い電圧に耐えるその能力のため、脂質膜よりも好ましい。
【0214】
別の実施例では、両親媒性分子は、第1の外側親水性基、疎水性コア基、および第2の外側親水性基を含む両親媒性化合物を含んでいてもよく、ここで第1および第2の外側親水性基のそれぞれは疎水性コア基に結合している。
【0215】
いくつかのそのような両親媒性化合物は、参照により本明細書に組み込まれる「液滴界面(Droplet Interfaces)」[ONT Ref:ONT IP 039]という名称の、本出願と同日に出願された国際特許出願に開示されている。
【0216】
その他のそのような両親媒性化合物は、参照により本明細書に組み込まれかつ平坦両親媒性膜として装置1に用いることができるいくつかのポリマー材料を開示する、US−6,916,488に開示されている。特に、トリブロックコポリマー、例えばポリ(2−メチルオキサゾリン)−ブロック−ポリ(ジメチルシロキサン)−ブロック−ポリ(2−メチルオキサゾリン)(PMOXA−PDMS−PMOXA)などのケイ素トリブロックコポリマー膜が開示されている。
【0217】
本発明での、両親媒性膜としてのそのようなトリブロックコポリマーの使用は、高電圧に耐えるそれらの能力、それらの堅牢性、ならびに界面活性剤およびタンパク質からの生分解に耐えるそれらの能力により、特に好ましい。生分解に耐えるそれらの能力は、アレイに対して、例えば血液または血清などの生体サンプルを直接適用し測定することを可能にする。上面に付着される極性層は、決定がなされるサンプルであってもよい。用いてもよいシリコーントリブロックポリマーの例は、7−22−7 PMOXA−PDMS−PMOXA、6−45−6 PMOXA−PE−PMOXA、および6−30−6 PMOXA−PDMS−PMOXAであり、命名法は、サブユニットの数に言及する。例えば6−30−6 PMOXA−PDMS−PMOXAは、30個のPDMSモノマー単位と6個のPMOXAモノマー単位から構成される。
【0218】
両親媒性分子の性質に応じて、膜は、両親媒性分子の二重層であってもよく、または両親媒性分子の単層であってもよい。
【0219】
装置1の容積部2のアレイを形成するいくつかの可能性ある方法は、下記の通りである。
【0220】
まず、上述のように配置構成された支持体3を含む装置1を提供する。
【0221】
方法の第1のタイプでは、極性媒体の容積部2は、区画に配置される前に、無極性媒体中に予め形成される。次に、最初に無極性媒体中に極性媒体の容積部2が含まれるエマルジョンが上述の方法を使用して作製される、このタイプの方法の実施例について記述する。
【0222】
両親媒性分子は、極性媒体の容積部2または無極性媒体に提供されてもよい。これは単に、両親媒性分子をエマルジョンに添加し、その後、極性媒体の容積部2と無極性媒体との間の界面に移行させることによって、実現させてもよい。あるいは、両親媒性分子を無極性媒体に添加した後に、エマルジョンを形成してもよい。
【0223】
支持体3上に極性媒体および無極性媒体を配置するために、エマルジョンを支持体3上に流す。これは、無極性媒体が区画4内に流入しかつ無極性媒体中のそれぞれの極性媒体の容積部2がさらに開口を通して区画4の少なくとも一部に流入するという効果を発揮する。これは、上述の支持体3のデザインにより助けられる状態で、エマルジョンが支持体3の上面を流れるときに自然に生じることがわかった。無極性媒体、および極性媒体の容積部2は、毛管力によってアレイ内に引き込まれる。区画4間に隙間を持つ支持体2に加え、無極性媒体は、隙間を通って区画の間を流れる。
【0224】
エマルジョンは、区画4の比較的大きい割合に確実に極性媒体の容積部2が取り込まれるように、典型的には区画の数よりも多い極性媒体の容積部2を含有する。過剰な極性媒体の容積部2は、支持体3を無極性媒体で洗浄することによって除去されてもよい。洗浄によって、区画内に極性媒体の容積部2が残り、極性媒体の容積部2に接触する開口の端から端まで延びる無極性媒体の層として、洗浄に使用される無極性媒体の層が残る。
【0225】
この方法では、エマルジョンはさらに、両親媒性分子を含んでもよい。これは以下に記述されるように、極性媒体含有層を形成するのに極性媒体が支持体の開口を端から端まで流れるときに、膜の形成を容易にする。両親媒性分子の存在は、エマルジョンも安定化させる。
【0226】
容積部2の極性媒体と、無極性媒体との相対的な粘度は、支持体3上にエマルジョンを流す極性媒体の容積部2が、支持体3から離れて無極性媒体の表面に浮遊しないように、十分類似するように選択されてもよい。しかし、典型的には極性媒体の容積部2は、毛管力によって区画4内に引き込まれ保持され、その結果、極性媒体の容積部2より高い密度の無極性媒体が使用される場合であっても、極性媒体の容積部2は電極表面で無極性媒体中に残る傾向があることに留意されたい。
【0227】
この方法は本質的に、エマルジョンの無極性媒体である、区画4内の極性媒体の容積部2に接触する区画4の開口の端から端まで延びる無極性媒体、または支持体3を洗浄するのに使用された無極性媒体含有層も提供する。
【0228】
色素を、極性媒体の容積部2に組み込んで、アレイ内の液滴の存在がより容易に視覚化され得るようにしてもよい。好ましくは、極性媒体の容積部2に添加されたものと異なる色の着色色素を無極性媒体に添加して、支持体3の全体にわたって無極性媒体の分布をより容易に視覚化してもよい。極性媒体の容積部2および/または無極性媒体への色素の組込みは、区画4に極性媒体の容積部2が十分取り込まれかつ/または無極性媒体が適正に分布することが確実になるように、製作中に品質管理検査として用いてもよい。
【0229】
極性媒体の容積部2が水性架橋ゲルのビーズである場合、エマルジョンは、正圧下で支持体3上を流れてもよい。これは架橋ゲルがより硬質であり、かつ架橋ゲルの機械的性質を考慮して選択された圧力に耐えることができるので、可能である。対照的に、ゲルのビーズおよび溶液の液滴は、加圧下で変形し融合する傾向がより大きくなる可能性がある。そのような正圧の使用は、区画4の充填を助ける。これは、一般に言って充填するのがより難しい第1の代替構成または区画間に隙間を持たないその他の構成を有する支持体を使用する場合、特に有利である。
【0230】
極性媒体の容積部2が無極性媒体中で予め形成される方法の第1のタイプの別の実施例では、極性媒体含有容積部を、例えば音響液滴噴射によって個々の区画内に直接吐出してもよい。この技法により、吐出は、正しい数の極性媒体含有容積部が過剰な容積部を除去する必要なく吐出されるように、制御することができる。この技法の一実施形態では、基材3は、隔壁に隙間のない区画4を含み、この場合、極性媒体の容積部2の幅は、区画4の開口の幅未満であることが望ましい。容積部2は、極性媒体からなるものであってもよく、無極性媒体中に極性媒体を含んでいてもよい。別の実施形態では、基材3は、隔壁6に隙間8を持つ区画4を含み、この隙間8は、開口から支持体3のベース部5まで完全に延びる。さらにその他の実施形態では、基材3は、隔壁6に隙間8を持つ区画4であって、隙間が開口からベース部5まで部分的に延びていてもよい区画4を含む。隙間が開口から支持体のベース部まで完全に延びる場合、前処理は、液滴を拘束しそれらが合流するのを防止するために、容積部を添加する前に支持体に有利に加えられてもよい。
【0231】
方法の第2のタイプでは、極性媒体の容積部2は、セルに流入したより大量の極性媒体から、区画4内で形成される。次にそのような方法の実施例を、この方法の連続ステップにおける支持体3を示す、
図32から34の概略流れ図を参照しながら記述する。
図32において、支持体3は上述のタイプのものであり、隔壁6が、隙間のない内側リセス部21を画定する内側部分20と、隙間23のある外側部分21とを含む。
図32では、支持体3を概略的に示し、例えば上述の第2から第11の代替構成のいずれかにすることができる。
【0232】
最初に、支持体3を、
図32(a)に示されるように用意する。
【0233】
支持体3を、
図32(b)に示すように、前処理無極性媒体70で前処理する。前処理無極性媒体70は、以下に記述されるように引き続き付着される無極性媒体の層と同じまたは異なる材料のものであってもよい。
【0234】
前処理無極性媒体70(溶媒中に希釈されてもよい。)を基材3に添加し(例えば、ピペットによって)、毛管現象によって基材全体に拡げる。前処理無極性媒体70を、内側リセス部22の隅の内側および外側部分21の支柱23の周りで、特に支柱23と、内側部分20の上面との間の隅で収集する。
【0235】
次に、極性媒体71および無極性媒体74を、下記の通り支持体3上に配置する。
【0236】
極性媒体71を、
図32(c)に示すように、この極性媒体71が開口を通って区画4内に進入するように、支持体3の端から端まで流す。このようにする1つの手法は、装置1の一端をフローセル60に取着することである。電極13の少なくとも一部には無極性媒体がなく、したがって、極性媒体の容積部2は電極13と電気接触する。
【0237】
極性媒体の容積部2と無極性媒体が、例えばエマルジョンに含まれて一緒に支持体3上に配置される方法の第1のタイプとは対照的に、ここでは無極性媒体の層が後で設けられる。
【0238】
過剰な極性媒体71は、支持体3の端から端まで、極性媒体とは異なる相を有する変位流体を流すことによって除去され、区画4内に極性媒体含有容積部2が残される。これに関する2つの代替手法について記述する。
【0239】
第1の手法を、
図32(d)および(e)に示す。第1の手法では、変位流体は、
図32(d)に示されるように、基材3の端から端まで流れる無極性媒体74である。極性媒体71のクリッピングを、
図32(e)に示されるように内側部分の外縁で行う。極性媒体の容積部の緩和を
図32(j)に示すように行って、区画4内に極性媒体含有容積部2を残す。この第1の手法は、極性媒体含有容積部2に接触する、区画4の開口の端から端まで延びる無極性媒体含有層73を残す。
【0240】
第2の手法は、
図32(f)から(i)に示され、これらのステップは
図32(d)および(e)の代わりに行われる。第2の手法では、変位流体は、
図32(f)に示されるように基材3の端から端まで流れる気体72である。極性媒体71のクリッピングは、
図32(g)に示されるように、内側部分の外縁で行われ、
図32(h)に示されるように、区画4内の極性媒体含有容積部2と、極性媒体含有容積部2に接触する区画4の開口の端から端まで拡がる気体72の層とが残される。気体72は、好ましくは不活性であり、空気または任意のその他の気体であってもよい。
【0241】
その後、無極性媒体74を、
図32(i)に示されるように基材3の端から端まで流し、気体72を変位させて、
図32(j)に示されるように極性媒体含有容積部2に接触する区画4の開口の端から端まで延びる無極性媒体含有層73を設ける。流す代替例として、無極性媒体74の層73を、噴霧などのいくつかのその他の技法を使用して基材3全体に設けることができる。
【0242】
第1および第2の手法のそれぞれにおいて、変位流体は、外側部分23の隙間を通って支持体3の端から端まで流れ、したがって、区画4の開口の端から端まで掻把して、過剰な極性媒体を変位させまたはクリップする。このように、外側部分23および内側リセス部22の幾何形状および物理的性質は、存在する場合には刻み目65の作用も含め、内側リセス部22内に極性媒体の容積部2を配置するプロセスを制御する。極性媒体の容積部2の、クリッピングの有効性および最終的な形状は、外側部分23および内側リセス部20の相対的な高さ、内側リセス部20のアスペクト比など、いくつかの要因によって決定される。隔壁6の内側リセス部22および外側部分23の寸法は、極性媒体含有容積部2が、
図32(h)および(j)に示されるように内側リセス部22の端から端までメニスカスを形成するように、理想的に選択される。
【0243】
反例として、
図33(a)は、
図32の場合に比べて支柱の高さと内側リセス部の深さとのより大きな比を持つ支持体3であること以外、
図32の場合に対応する方法のステップを示す。支柱の高さが大きいので、流体74を変位させることによる極性媒体のクリッピングは、
図33(e)に示されるように、内側リセス部の外縁10とは対照的に、支柱の外縁15で行われる。この結果、極性媒体のより大きい容積部が、
図33(f)に示されるように区画4内に保持される。区画内の極性媒体の容積部が大きいことにより、支持体上に極性媒体を流した後に、
図33(h)に示されるように、より広い界面が形成される。一般に、膜界面が狭いほど、ノイズおよび電気抵抗は低くなる。このように、
図32の方法で示された膜界面は、
図33の方法で示される膜界面より好ましい。
【0244】
幾何形状の特定の寸法に関し、最適な寸法は、基材3、無極性媒体、および極性媒体の材料のそれぞれの表面エネルギーを含めた材料系に非常に大きく依存することに留意すべきである。また充填は動的プロセスであるので、基材3の端から端までの流量にも、ある程度依存する。このように、好ましい寸法は、材料系に依存する。本明細書での特定の寸法に関するあらゆる言及は、基材3がエポキシ樹脂TMMSであり、無極性媒体がシリコーン油AR20であり、極性媒体が1M KClである、材料系にも当てはまる。
【0245】
支持体を横断して区画4内に極性媒体71を流し、次いで変位流体を流すことによって過剰な極性媒体を除去する代替例として、例えば印刷技法を使用して、極性媒体の個別の容積部2を空気に通して区画4内に注入することにより、容積部2を支持体上に配置することができる。その場合、無極性媒体74が後で引き続き支持体上に配置される。
【0246】
前処理無極性媒体70には、極性媒体の容積部2の形成においても有益な役割がある。
【0247】
第1に、間に隙間を持つ区画4の場合、前処理無極性媒体70は隙間の中にあり、極性媒体の流れに対して封止する。これは隣接する区画内の容積部が接触し混合する傾向を低減させることによって、極性媒体の個別の容積部を形成するのを助ける。
【0248】
第2に、前処理無極性媒体70は、支持体3を被覆するように働いてもよく、有益な手法で表面特性を変化させてもよい。支持体3の表面特性および前処理無極性媒体70の性質に応じて、前処理無極性媒体70の添加は、支持体3と区画内に配置された極性媒体の容積部との間の接触角を変化させてもよい。前処理無極性媒体70は、例えば極性媒体に対する支持体3の疎性を増大させ、より凸状の形状を有する容積部を提供するのに使用してもよい。所望のレベルまで支持体3の疎性を変化させるために前処理を使用することによって、より広範な数の材料の使用を、支持体3の作製で考慮することが可能になる。これは例えば、特定の材料が製造の観点から望ましいが適切な材料特性を持たない場合に、役立てることができる。
【0249】
内側リセス部22のアスペクト比は、重要な考慮事項である。大き過ぎるアスペクト比(長さ:幅)は、
図34(b)に示すように、電極13に跨って形成される前処理無極性媒体70のメニスカスをもたらす可能性がある。アスペクト比(深さd:幅w)が小さ過ぎる場合、クリッピングによって、区画から極性媒体が除去される可能性がある。望ましくは内側リセス部22は、内側リセス部の幅が、内側リセス部22内に収容することができる最大限の観念上の球の直径として定義される、深さ対幅の比、すなわち少なくとも1:3、好ましくは少なくとも2:3の比を有する。望ましくは内側リセス部22は、内側リセス部の幅が、内側リセス部内に収容することができる最大限の観念上の球の直径として定義される、深さ対幅の比、すなわち最大で3:1、好ましくは最大で3:2の比を有する。
【0250】
極性媒体の容積部の、クリッピングの有効性および最終的な形状は、
図34(a)に示されるように、外側部分の高さ(h)の相対的な値、内側リセス部の深さ(d)、内側リセス部の幅(w)、およびそれぞれの外側部分と区画の内側リセス部との間の長さ(l)など、いくつかの要因によって決定される。アレイを形成するための最適な寸法は、支持体、無極性媒体、および極性媒体の材料の相対的な表面エネルギーなどの要因にも依存する。アレイを形成するためのプロセスは、支持体の端から端までの無極性および極性媒体の流量にも依存する。
【0251】
次に、第2の手法のコンピュータシミュレーションについて記述する。
【0252】
図35は、コンピュータシミュレーションの開始点を示し、基材3が、前処理無極性媒体70で、この実施例では油で前処理され、次いで極性媒体71、この実施例では水性緩衝溶液が充填されている。
図35は、基材3の端から端まで流す前の、その開始点における無極性媒体74の正面も示す。
【0253】
図36(A)および(B)は、無極性媒体74が基材3の端から端まで流れた後のコンピュータシミュレーションを示し、
図36(A)は初期状態を示し、
図36(B)は、系が緩和された後の定常状態を示す。
図36(B)は、極性媒体の容積部2が内側リセス部22の表面にピニングされた状態を示す。
【0254】
図36(C)は、極性媒体の容積部2を含有する基材の区画4の共焦点画像を示す。コンピュータシミュレーションによって予測されるように、極性媒体の容積部2は、内側リセス部22の表面にピニングされている。
【0255】
図37は、幅が130μm、110μm、および90μmでありその全てが内側リセス部22の表面への極性媒体の容積部2のピニングを示す、内側リセス部22に関するシミュレーションにおける、
図36(A)および(B)の場合と同様の初期から定常状態への緩和を示す。これらの結果は、極性媒体の容積部2のメニスカスが、その無極性媒体との界面で、内側リセス部22の縁部よりも上方に突出しないことも示し、それが膜のサイズの制御を実現するのを助ける。
【0256】
図38(A)および(B)は、
図21の構成における、極性媒体、この場合は水性緩衝溶液の容積部2の形成を示す画像である。極性媒体の均一な容積部2が観察され、これらは内側リセス部22の表面にピニングされた。
【0257】
図39(A)および(B)は、
図19の構成における、極性媒体、この場合は水性緩衝溶液の容積部2の形成を示す画像である。極性媒体の均一な容積部2が観察され、これらは内側リセス部22の表面にピニングされた。
【0258】
前処理無極性媒体70は両親媒性分子を含んでいてもよいが、これは電極13の両端に電気絶縁層を提供する両親媒性分子をリスクに曝し、したがって前処理無極性媒体70は両親媒性分子を含まないことが好ましい。
【0259】
無極性媒体含有層73は、両親媒性分子を含んでいてもよい。基材3の端から端まで流れる無極性媒体74は、両親媒性分子を含んでいてもよい。あるいは、基材3の端から端まで流れる無極性媒体74は、最初に設けられた層73が同様に両親媒性分子を含まないように、両親媒性分子を含まなくてもよく、その場合、両親媒性分子は後で、無極性媒体含有層73に添加してもよい。
【0260】
それらの場合のいずれかにおいて、無極性媒体含有層73の形成後、装置1は、無極性媒体含有層73と極性媒体含有容積部2との間の界面に両親媒性分子が移行可能になるような期間にわたって静置される。典型的には装置1は、30分程度の時間にわたってインキュベートされてもよい。
【0261】
別の代替例として、両親媒性分子を、以下に記述されるように後で支持体3の端から端まで流す極性媒体75中に提供してもよい。装置1を使用して膜のアレイを形成する方法は、上述の方法により容積部2のアレイを形成し、次いで下記のステップを行うことによって、実施される。これらのステップは、極性媒体の容積部2のアレイを形成する方法に関する
図32に示されるが、一般に、本明細書に記述される極性媒体の容積部2のアレイを形成する方法のいずれかに適用可能である。
【0262】
極性媒体75は、
図32(k)に示されるように、支持体3の端から端まで流れて区画の開口を覆う。極性媒体は、無極性媒体含有層73の無極性媒体を変位させて、
図32(l)に示されるように、支持体3の開口の端から端まで延びる極性媒体含有層76を形成する。
図40(C)は、より詳細な図を示す。極性媒体含有層75は、極性媒体含有容積部2に接触するようになり、極性媒体含有容積部2のそれぞれと界面77を形成する。
【0263】
両親媒性分子が既に存在する場合、両親媒性分子を含む膜78がそれらの界面77に形成される。これは極性媒体75を支持体3上に流すだけで引き起こされる。
【0264】
あるいは、両親媒性分子は、後で支持体3の端から端まで流される極性媒体75中に提供されてもよい。その場合、極性媒体含有層75の形成後、装置1は、極性媒体含有層75と極性媒体含有容積部2との間の界面77に両親媒性分子が移行可能になるような期間にわたって静置され、それによって膜78が形成される。典型的には装置1は、30分程度の時間にわたってインキュベートされてもよい。
図31は、極性媒体の容積部2が、上述のエマルジョンを使用して区画4内に導入された無極性媒体に含まれた液滴である場合に均等な実施例を示すが、同じように支持体3の端から端まで極性媒体を流すことによって形成された極性媒体の層50を示している。
【0265】
外側部分23の幾何形状および物理的性質は、存在する場合には刻み目67の作用も含め、支持体3の端から端まで延びる極性媒体含有層75の幾何形状を制御する。隔壁6の内側リセス部22および外側部分23の寸法は、極性媒体含有容積部2が、
図32(l)に示されるように外側部分23の端から端までメニスカスを形成するように、内側リセス部22の寸法を考慮して選択される。極性媒体含有容積部2のメニスカス、および極性媒体含有層75は、それらが接触するようになる程度まで互いに向かって延びる。このように、幾何形状は膜78の形成を制御し、その形成に信頼性を提供する。これは両親媒性分子を含む膜78のサイズおよび安定性の制御も可能にする。
【0266】
したがって、内側リセス部に対する支柱の相対的な高さは、設計上の考慮事項である。基材2がエポキシ樹脂TMMSで作製され、無極性媒体がシリコーン油AR20であり、極性媒体が1M KClである、特定の材料系の場合、支柱の高さが60μmであり内側リセス部の高さが90μm(1:1.5)であるときには、極性媒体の容積部2のクリッピングが隔壁6の上縁に生じ、その結果、内側リセス部から突出する極性媒体の容積部2が得られた。この結果、膜面積が広い(広い界面)「マフィン」形状の液滴が得られた。この膜は機能することができるが、より広い膜はより漏れ易くなり、より高いキャパシタンスを有し、かつしばしば電気的にさらにノイズが高くなるために、理想的な形状ではない。上述の材料系の場合、支柱の高さと内側リセス部との比が30:90および30:120であるものが、有効であると示された。
【0267】
例として、
図40(A)および40(B)は、
図19の構成を有する支持体3の画像であり、膜は、極性媒体が水性緩衝溶液である場合に形成されたものである。
【0268】
装置1は、貯蔵中、または製造施設から装置1の使用地点までの輸送中に、極性媒体の層75がある状態またはない状態に保たれてもよい。極性媒体の層50は、予め存在していない場合、そのような貯蔵または輸送後に付着されてもよい。
【0269】
極性媒体の容積部2がエマルジョン中の液滴として予め形成されている、極性媒体の容積部2を形成する方法の第1のタイプでは、液滴を区画4に組み込むために、液滴をサイズ分布の非常に狭い範囲内で提供することが必要であり、したがってエマルジョンは安定である必要がある。安定なエマルジョンの形成は、液滴と無極性媒体との間に界面を形成する両親媒性分子の存在によって実現されてもよい。両親媒性分子が存在しない状態では、エマルジョンが不安定である。これは液滴のある程度の合流をもたらして、区画4内に正しく適合することができない、より大きい液滴を形成する傾向がある。
【0270】
しかし安定なエマルジョンを提供する方法に潜在的な欠点は、区画4を充填するプロセス中に、無極性媒体が、各区画4に設けられた電極13の表面を被覆する傾向があり、その結果、電極13と極性媒体の容積部2との間に電気抵抗のある層が得られることである。電極13と極性媒体の容積部2との間の電気接触は、膜を横断するイオン流などの電気信号を感知することが望まれる場合の必要な要件であってもよい。電極13の両端における層内での両親媒性分子の存在は、電気接触が不十分であるという問題をさらに悪化させる。無極性および極性基が共に存在することにより、電極13の表面からその表面特性を修正することによって両親媒性分子を変位させることが難しい。
【0271】
方法の第2のタイプは、両親媒性分子が存在しない状態で区画4内に極性媒体の個々の容積部2を集合させることにより、電気接触が不十分であるという問題を低減させるのに適用されてもよい。基材3に添加される無極性媒体は、隔壁6の表面でかつ電極13から離れて広く局在化されている。このように前処理無極性媒体70は、支持体3の端から端まで極性媒体8を流して無極性媒体を変位させかつ極性媒体の層を形成するステップの後、両親媒性分子を含む膜が形成されるように、両親媒性分子をさらに含んでいてもよい。
【0272】
しかし、前処理無極性媒体70が両親媒性分子を含まない場合、極性媒体の容積部2は、安定した両親媒性分子が存在しない状態で集合し、したがって隣接する区画の間で容積部が混合することが、さらに大きな課題となる。したがって、個々の容積部がウェル内に閉じ込められることにより、半閉鎖構造が好ましい(隔壁を含む構造は、ウェルの表面に隙間が全くなくまたは少ししかない。)。しかし方法は、前処理無極性媒体70が支柱間の離間に応じて隔壁間の隙間を部分的に拡がることができ、したがって半閉鎖構造を効果的に提供することにより、開放構造(区画の高さまで延びる隙間を持つ支柱)でもある程度まで機能することになる。
【0273】
装置1は、界面51で形成された両親媒性分子を含む膜に挿入された、膜タンパク質を有していてもよい。膜タンパク質は、イオンチャネルまたは細孔であってもよい。
【0274】
両親媒性分子を含む膜に挿入することが可能な、そのような膜タンパク質は、最初に極性媒体の層50および極性媒体の容積部2のいずれかまたは両方に提供され、その後、極性媒体の層50および極性媒体の容積部2を接触させてもよい。いくつかの材料系では、極性媒体の層50および極性媒体の容積部2を接触させて両親媒性分子を含む膜を形成することにより、膜タンパク質を自発的に膜に挿入させてもよい。膜内への膜タンパク質の挿入は、例えば膜2の両端での電位差の印加などの手段によって、必要に応じて助けることができる。
【0275】
あるいは、膜タンパク質は、無極性媒体中に提供されてもよい。
【0276】
膜タンパク質は、極性媒体の層50内のサンプルの分析を行うのに使用されてもよい。
【0277】
これを容易にするために、極性媒体の層50は、最初に添加されるときに、分析されることになるサンプルを、含んでいてもよい。代替例として、極性媒体の層50は、分析がなされるサンプルなしで、上述の通り設けられてもよい。この結果、装置を使用する前の貯蔵および輸送に合わせて作製することが可能になる。その場合、分析を行う前に、分析がなされるサンプルを含む極性媒体のその他の層によって、極性媒体の層50を変位させるステップが実施されてもよい。
【0278】
イオンチャネルである膜タンパク質は、イオンチャネルの両端に印加された電位差の下で電流を測定することにより、イオンチャネルを経た分析物の転位を測定するのに使用されてもよい。膜自体は非常に抵抗性があり、典型的には約1GΩ以上の抵抗を有する。このようにイオン流は、実質的にイオンチャネルを通してのみ生じる。例として、
図41は、細孔挿入を示す、MspAナノ細孔を経たイオン電流の測定で得られた電気データを示す。
【0279】
イオンチャネルは、ポリヌクレオチドの配列を決定するためのナノ細孔であってもよい。電流は測定することができるが、各電流エピソードの大きさおよび持続時間は配列を決定するために使用することができる。アレイは、ナノ細孔を経たポリヌクレオチドの転位を制御するための酵素を含んでいてもよい。
【0280】
イオンチャネルは、極性媒体の容積部2の外の、極性媒体の層50に設けられてもよい。複数のイオンチャネルを膜に挿入してもよく、または全くなくてもよいことが可能である。実際には、膜におけるイオンチャネルのポアソン分布が存在することになる。イオンチャネルの挿入後、どの膜が単一イオンチャネルを含有するのか決定するために、膜を、例えばチャネル内を通るイオン流を測定することによって、測定してもよい。単一チャネルを含有する液滴は、その他の実験に合わせて選択されてもよい。単一イオンチャネルを含有する液滴界面のパーセンテージは、極性媒体中のイオンチャネルの濃度を変化させることによって、最適化されてもよい。
【0281】
あるいは、イオンチャネルは、無極性媒体中に設けてもよい。膜内でのイオンチャネルの形成は、例えば液滴の極性内部に蛍光体を提供しかつ極性メニスカス層に消光剤を提供することにより、光学的に検査されてもよい。イオンチャネルが界面51で膜内に存在する場合、消光剤および蛍光体は互いに極めて近接するようになり、蛍光シグナルを消す。
【0282】
イオン流の大きさは、イオンチャネルの両端に印加された電位差に依存し、したがって安定な参照電位を提供することが望ましい。酸化還元対の両方の部材は、安定な参照電位を得るために必要である。しかし、一方の部材を設け、かつ他方の部材は例えば存在する酸化還元部材の酸化または還元によってその場で生成してもよい。
【0283】
電気測定は、下記の通り行ってもよい。
【0284】
装置1は、
図31に示されるように支持体3の上方に配置構成された共通電極60をさらに含み、共通電極60は、一旦設けられると極性媒体の層50に電気接触するようになされている。
【0285】
図42に示されるように、装置1はさらに、共通電極60と各区画4内のそれぞれの電極13との間に接続された電気回路61を含む。電気回路13は、電気測定を行うように配置構成され、例えば参照により本明細書に組み込まれるWO−2009/077734でより詳細に論じられるように従来の構成を有していてもよい。
【0286】
電気回路61は、膜でまたは膜を通して生じるプロセスに応じて電気測定を行うように構成される。分析物を含有するサンプルが、例えば極性媒体の層中に提供される場合、プロセスはサンプルを分析してもよい。支持体3に付着される層50の極性媒体は、例えば分析がなされる液体サンプルであってもよい。このサンプルは、血液、血清、尿、間質液、涙、または精液などの生体サンプルであってもよい。液体サンプルは、固体または半固体サンプルから誘導されてもよい。サンプルは、農業、環境、または工業由来であってもよい。法医学的サンプルであってもよい。
【0287】
電気化学測定装置は、典型的には作用電極、対電極、および参照電極を含み、ポテンシオスタットは、作用電極と参照電極との間の電位差を測定し、作用電極と対電極との間の電流を測定する。電流は参照電極を通して生じないので、一定の電位差が参照電極と作用電極との間に維持される。あるいは、装置1の場合のように2電極システムを用いてもよく、電位が対電極と対/参照電極との間に与えられ、イオン流はこれらの電極間に生じる。しかしこれは、印加される電位の極性に応じて酸化還元対の一方または他方の部材の消費をもたらす。酸化還元部材の消費率は、イオン流の大きさに依存する。
【0288】
ポリヌクレオチドの転位の測定の場合、ポリヌクレオチドは、細孔の両端に印加された正電位の下で細孔を転位させる。正電位の印加は、酸化還元対の一方の部材の酸化をもたらし、最終的には枯渇することになる。酸化還元部材の枯渇が生じると、参照電位がドリフトし始めることになり、したがって測定の寿命が限定される。酸化還元対の一方または両方の部材が液滴中に設けられる場合、測定の寿命は酸化還元対の還元部材の量に依存し、したがって酸化還元部材の濃度および液滴の体積に依存する。
【0289】
装置1は、極性媒体の容積部2の安定なアレイを提供し、その上に、膜がその場で形成されてもよい。そのようなアレイには、アパーチャの端から端まで懸架された両親媒性膜が設けられている個々のアパーチャのアレイを含む装置に勝る利点がある。後者の装置の場合、時間と共に膜縁部で漏れが生じる可能性がある。対照的に、無極性媒体に含有される極性媒体の容積部2は、極めて安定である。トリブロックコポリマーから形成された両親媒性膜は、非常に安定であり、生分解に対して抵抗性がある。しかし、WO2009/077734に記述されるような方法によって、マイクロウェルアパーチャのアレイの端から端までトリブロックコポリマー、特にケイ素トリブロックコポリマーから作製された両親媒性膜を設けることは、非常に難しいことが証明された。対照的に、ケイ素トリブロック液滴を調製することは、比較的容易である。これは、非常に安定な膜を有しかつ生物学的侵襲に対する感受性が低い、ナノ細孔アレイを設けることを可能にする。これはまた、両親媒性膜に、生体サンプルなどのサンプルを直接付着させることも可能にする。
【0290】
装置1は、典型的には単回使用と考えられる。その後、装置1の成分、すなわち生体サンプル、極性媒体の容積部2、および無極性媒体を支持体3から単に除去してもよく、支持体3を清浄化し、極性媒体の容積部2および無極性媒体を再集合させてもよい。これは、アレイチップの高価な構成要素であるケイ素チップとアレイおよび電極を含む電極アレイとの再使用を可能にする。それは、酸化還元対の補充も可能にする。
【0291】
特定の適用例は、装置1が、ラップトップなどの演算手段と共に使用される単回使用の手持ち式デバイスに収容されることである。データは、デバイスによって生成され、USBまたはその他の伝送手段によって演算手段に伝送される。演算手段は、典型的には、事象および塩基呼出しデータが生成される記憶アルゴリズムを含むと考えられる。
【0292】
あるいは装置1は、再使用可能なデバイスに収容することができ、このデバイスは、搭載流体リザーバに貯蔵された溶液を一気に流すことによってアレイを清浄化することが可能な、流れコンジットを含む。
【0293】
電気的要件を考慮して、電極13を下記の通り配置構成してもよい。
【0294】
電極13は、極性媒体の容積部2との電気接触をもたらし、両親媒性分子の膜の両端に電位差が得られるように使用されてもよい。電気接続は、電極13から支持体3を経て電気回路に延びてもよい。
【0295】
電極13は、任意の形状、例えば円形のものであってもよい。個々の電極13は、区画4の全幅の端から端まで、またはその部分幅の端から端まで延びてもよい。一般に、電極13は、ベース部5の上方に突出してもよく、またはベース部5に一体化していてもよい。
【0296】
区画4の一部または全ての面は、区画4内の隔壁6の外面も含めて疎水性であってもよい。これは電極13上での極性媒体の容積部2の位置決めを助け、それによって電気接触の作製が容易になる。
【0297】
電極13は、極性媒体の容積部2との電気接触を作製するのを助ける、その他の形体を含んでいてもよい。
【0298】
1つの選択肢は、電極13の露出面を、例えばPt電極上にPtブラックの層を設けることによって粗くしてもよいことである。
【0299】
別の選択肢は、電極13が、区画4内に突出して極性媒体の容積部に貫入するスパイク16を含むことである。スパイク16による極性媒体の容積部2の貫入の後、電極の周りに再形成されて極性媒体の容積部2を効果的に再封止する傾向がある。
【0300】
電極13の露出面は親水性であってもよく、かつ/または電極13の周りの区画4の面、例えば表面コーティング14の露出面は疎水性であってもよい。これは無極性媒体が電極の露出面を被覆する傾向を低減させ、それによって電気絶縁層として作用することができる。
【0301】
電極13は、対電極に対して安定な参照電位を設けるために、Ag/AgClなどの参照電極であってもよい。あるいは電極13は、Au、Pt、Pd、またはCなど、電気化学的に不活性な材料であってもよく、電極の電位は、液滴の極性内部に位置付けられた酸化還元対の一方または両方の部材によって提供されてもよい。用いてもよい酸化還元対のタイプは、例えばFe(II)/Fe(III)、Ru(III)/Ru(II)、およびフェロセン/フェロシニウムである。用いてもよい酸化還元対の特定の例は、フェリ/フェロシアン化物、ルテニウムヘキサミン、およびフェロセンモノカルボン酸である。
【0302】
図43は、酸化還元対としてのフェロ/フェリシアン化物の様々な液滴直径に関する液滴の寿命を示す。グラフからわかるように、200μmの直径の液滴に含まれる200mM濃度のフェロシアン化物は、100pAの電流に関して約140時間の寿命を有する。
【0303】
支持体3は、両親媒性分子の膜の形成を助けるために、下記の通り設計される。
【0304】
図31に示されるように、極性媒体の層50は、区画4内に突出して極性媒体の容積部2に接触するメニスカス57を形成する。上述の支持体3の全ての構成は、隔壁6の上面がメニスカス52の形成およびピニングを助けるという利点をもたらす。特に、隔壁6の上面の様々な回旋形状は、メニスカス52を形成するための、極性媒体の層50のピニング点を提供する。
【0305】
ウェル構造の従来の正方形タイプに形成されたメニスカスは、ウェルの縁部の周りに均一にピニングされない。したがって、メニスカスに対する応力が、ウェルの隅で生成される。ウェル型構造でのメニスカス形成を最適化するために、極性層をピニングするためのその他の形体をウェルに設けることが有益である。上述の支持体3の全ての構成は、そのような形体、例えば様々な支柱7および23の回旋形状と、リセス部30の周りの共通本体31の波型形状を提供する。メニスカス52は、これらの波形の周りにピニングされて、区画4内に、より分布されたピニング済みメニスカス52を効果的に生成してもよい。
【0306】
大まかに言えば、そのようなピニングは、それぞれの場合において共通平面内の隔壁6の外側端部の縁部の区画4当たりの全長が、区画4内に収容することができる最大限の観念上の球の最大円周よりも大きいので、上述の支持体3の構成で実現される。
【0307】
極性媒体の層50は、区画4内に延びる隔壁6とメニスカス52を形成し、膜を形成するように内部に提供された極性媒体の容積部2に接触する。区画4は、付着されたときの極性媒体の層が、極性媒体の層50と極性媒体の容積部2の少なくとも一部とが接触するような程度まで区画4内に延びるメニスカス52を形成することになるように、開口が選択された寸法を有する状態で設計される。
【0308】
膜を形成する能力は、区画4内の極性媒体の容積部2の高さと、メニスカス52が区画4内に延びる程度とに依存する。この能力は、隔壁6、極性媒体、および無極性媒体の間の表面相互作用、ならびに隔壁6によって画定された区画4の寸法および形状に依存する。これらのパラメータ、および/または極性媒体の容積部2のサイズは、支持体3の上面に付着された極性媒体が極性媒体の容積部2を含む膜を自発的に形成することになるように、選択されてもよい。
【0309】
これは、極性媒体の容積部2が無極性媒体に含まれた液滴である場合に関して、
図44(a)から(c)に概略的に示される。
図44(a)は、極性媒体の容積部2が小さ過ぎかつ/またはメニスカス52が区画4内に十分延びていないことにより膜が形成されないように、極性媒体の層50と極性媒体の容積部2との間に接触がない場合を示す。
【0310】
図44(b)は、極性媒体の容積部2およびメニスカス52が互いにちょうど接触している場合を示す。しかし、膜のサイズは不十分と考えられる。また膜の形成は、その他のパラメータの影響を受ける可能性がある。極性媒体の容積部2のサイズは温度依存性があり、温度の小さな降下は、極性媒体の容積部2の収縮をもたらして、膜の形成が行われなくなる可能性がある。さらに、極性媒体の容積部2は、そのサイズが実質的に類似するように設計されるが、液滴サイズに小さいばらつきが生じる可能性があり、その結果、信頼性のない膜形成が行われる。
【0311】
図44(c)は、極性媒体の容積部2がより大きく作製され、かつ/またはメニスカス52が、実質的な液滴界面が形成されるように区画4内にさらに延びる場合を示す。これは、膜が形成されなくなる機会を低減させ、それと共にイオンチャネル挿入のための広い表面積をもたらす。
【0312】
図45および46は、極性媒体の容積部2が無極性媒体に含まれた液滴である場合の、
図15から18に示されるタイプの装置1の概略断面図であり、隔壁6は、内側部分20と、間に隙間24を有する支柱23を含む外側部分21とを含んでいる。
図45および46は、メニスカス52のピニングに対する支柱23の高さおよび密度の影響を示す。
【0313】
図45では、メニスカス52が、支柱23ではなく内側部分20の縁部でピニングされる。追加の無極性媒体は、支柱23と内側部分20のリセス部22の縁部との界面でピニングされる。したがって支柱23は、無極性媒体の分布を制御するように、しかしリセス部22により制御されるメニスカス52の形成に影響を及ぼさないように働く。
【0314】
図46において、支柱23の配置構成は、メニスカス52が内側部分20のリセス部22ではなく支柱23そのものによって決定されるようなものである。
図46では、二組の支柱23が、隔壁4の内側部分23で隣接する区画4の間に設けられる。あるいは、例えば
図1に示されるものよりも高い単一の支柱を設けてもよい。
【0315】
メニスカス52が
図45または46の場合に従い形成されるか否かは、外側部分21の支柱23および内側部分20のリセス部22の配置構成および相対的な寸法に依存することになる。
【0316】
隔壁6の間に隙間を持たない区画4は、無極性媒体で溢れる傾向がある。これは親水性媒体の2つの容積部2の間で膜界面の形成を妨げるので、欠点である。
【0317】
図47は、支持体3の表面で極性液体により形成されたメニスカス52を示す。支持体3の上面に付着された極性媒体の層50のメニスカス52のサイズおよび弧度は、広い範囲にわたって制御することができる。メニスカス52の曲率は、極性液体と隔壁6との間の接触角によって決定されることになるが、これは極性媒体、無極性媒体の材料系の性質であり、隔壁6の表面特性である。また曲率は、表面にメニスカス52が形成される区画4の開口の端から端までの寸法と、隔壁6の高さとによっても決定されることになる。
【0318】
例えば、隔壁6の間の幅b、高さc、および支柱の表面とメニスカス52との間の接触角θを有する区画4の場合、メニスカス52は:
【0319】
【数1】
の場合、区画のベース部の上方に形成されることになる。
【0320】
メニスカス52が区画内に延びる距離hは、決定することができ、極性媒体の容積部2のサイズと組み合わせて制御することができ、その結果、メニスカス52のサイズが制御される。概念上、直径dの極性媒体の完全に球状の容積部2を想定すると、直径d≧c−hの場合に界面がメニスカス52と極性媒体の容積部2との間に形成されることになる。直径dが150μmであり、Permexが隔壁6の材料であり、層50の極性媒体が1M HEPESである場合、bおよびcに関する適切な値は、b=150μm、a=30μm、c<170μmである。
【0321】
支柱アレイの場合、メニスカス52が隔壁6上に形成され、これは超疎水性またはFakir状態として公知のものである。Fakir状態は、
【0322】
【数2】
(式中、aは支柱の太さであり、Φ
sは液体に接触する固体の割合に等しい無次元項である。)
の場合に生じる。
【0323】
上記実施例は、理解を容易にするために極性媒体の完全に球状の容積部2を想定して示したが、必ずしもそうである必要はない。ゲルの場合、極性媒体の容積部2は、その他の形状を有するように設計されてもよい。さらに、区画4に進入する前の形状が球形である場合であっても、支持体3および/または電極13の表面との相互作用の性質に応じてある程度まで変形する可能性があり、したがって極性媒体の容積部2は区画4に収容された後にその高さが変化する可能性がある。この要因も、膜を自発的に形成できるようにするために極性媒体の容積部2の高さを評価するときに考慮する必要がある。
【0324】
区画4の幅および高さは、下記の通り選択されてもよい。この目的で、支持体3の端から端に至る区画4の種々のプロファイルを考慮すると、区画4の幅は、区画4内に収容することができる最大限の観念上の球の直径と定義される。
【0325】
区画4の幅は、極性媒体の複数の容積部2が望む場合には区画4内に並んだ状態で含有され得る可能性を回避するために、極性媒体の容積部の平均直径の2倍未満の値になるように選択されてもよい。極性媒体の容積部が液状の液滴である場合、区画の幅は、液滴が変形する可能性があり、したがってその平均幅が低減する可能性があることを考慮して、幅の2倍未満、例えば1.75倍の値を有していてもよい。
【0326】
極性媒体の容積部2が無極性媒体に含まれた液滴である場合、区画4の幅はさらに、極性媒体の容積部2が区画4内に自由に挿入され得るように、その容積部2の平均直径よりも大きい値になるように選択されてもよい。この目的のため、幅は、典型的には極性媒体の容積部2の平均直径の少なくとも1.05倍になる。幅は、典型的には極性媒体の容積部2の平均直径の最大でも1.5倍になる。これよりも大きい幅は、極性媒体の容積部2が区画4内に移動し得る可能性をもたらす。理想的には、極性媒体の容積部2は、区画4内に密接に充填された配置構成で提供される。
【0327】
区画4の高さは、隔壁6の高さによって決定される。区画4の高さは、極性媒体の容積部2のサイズと、極性液体で膜を形成する能力とに応じて選択される。支柱の高さは、典型的には液滴ゾーン内の液滴の高さの1.1から1.3倍の間である。区画4は、極性媒体の容積部の平均直径の、少なくとも1.1倍の高さを有していてもよい。区画4は、極性媒体の容積部の平均直径の、最大でも1.3倍の高さを有していてもよい。極性媒体の容積部がビーズである特定の実施形態では、この容積部は、隔壁の高さを超えて拡がる可能性がある。
【0328】
次に、上述の装置1を使用して行われる実験のいくつかの実施例を示す。様々な実施例において、装置1は、アレイチップとして形成した。
【0330】
極性媒体が無極性媒体に含まれる液滴は、下記の通り調製されてもよい。6−30−6 PMOXA−PDMS−PMOXAトリブロックコポリマー2mg/mlを、AR20ケイ素油に溶解して、無極性媒体を用意した。極性媒体は、625mM NaCl、75mMフェロシアン化カリウム、および25mMフェリシアン化カリウムを100mM HEPESに加えたものからなる。液滴は、幅300μmの2つの交差チャネルを有するマイクロ流体T接合(チップタイプ:ドロマイト、部品番号3000158)で調製した。チャネルは交差点に向かって狭くなり、その交差点ではチャネル幅が105μmになる。極性および無極性溶液を、それぞれの溶液の流量3〜4ul/分および15〜17ul/分でチャネルに沿って流して、液滴サイズが150〜160μmの間の液滴を得た。
【0331】
流量は、異なる寸法の液滴が得られるように変えることができる。
【0332】
200μm×225μmで間隔を空けて配置されたPtコネクタのアレイを有するシリコンウエハを、SUフォトレジストの2〜3μmの層で被覆した。Permex支柱は、非架橋Permex前駆体をベース部に付着させかつこの前駆体をパターニングされたマスクを通してUV光で露光することにより架橋する、標準的なフォトリソグラフィプロセスによってベース部支持体に付加した。非架橋前駆体を、その後、洗い流すことによって、支柱構造を出現させた。得られたアレイは、
図2による支柱形状を持つ38×128液滴ゾーンであった。支柱高さは160μmであった。直径145μmの液滴を、上述のようにAR20油/液滴エマルジョンの形でアレイに付加した。
【0333】
エマルジョンをアレイの上面に付着させ、油および液滴を、毛管作用によってアレイに引き込んだ。過剰な液滴を、アレイ上にAR20ケイ素油を流すことによって除去した。液滴を、表面張力によってアレイに保持した。
【0334】
アレイをフローセル内に配置し、MspAタンパク質ナノ細孔を含有する極性媒体をアレイの表面上に流して、液滴界面にイオンチャネルを設けた。
【0335】
単一MspAナノ細孔を含有する液滴界面は実験に合わせて選択し、DNAの測定は、DNAの転位中に個々のナノ細孔を通るイオン流を測定することによって実施した。
【0337】
装置は、下記の一般的な方法に従い作製した。
【0338】
アレイチップをクリーンルーム施設で製作した。1μmの熱酸化物を有する6インチのSiウエハ(SiMat)をベース部支持体に使用した。ウエハを、最初に200WのO2プラズマを用いてプラズマ処理器(Oxford Instruments)内で処理し、次いでホットプレート(Electronic Micro Systems Ltd)で、150℃で15分間の脱水ベークに供した。ウエハを、SU−82フォトレジスト(MicroChem Corp.)の1μmの層で、スピン塗布機(Electronic Micro Systems Ltd、3000rpmを30秒間)により被覆し、65℃でソフトベークし、95℃で2分間、ホットプレートでベークし、UVマスクアライナ(Quintel Corp.)でフラッド露光し(110mJ/cm2)、次いでポスト露光ベーク(PEB)を65℃で1分間行い、その後、ホットプレートで95℃で2分間ベークした。次いでウエハを、SU−8 3050の120μmの厚さの層でスピンコートし(1250rpmで30秒間)、65℃で5分間ソフトベークした後、レベルホットプレートで、95℃で2.5時間ベークする。冷却後、マイクロ流体ネットワークでパターニングされたフォトマスクを使用して、マスクアライナで露光する(260mJ/cm2)。次いでPEBを実施する:65℃で2分および95℃で15分。チャネル形体は、適切なサイズのビーカ内で、ウエハをMicroposit EC溶媒(Rhom Haas Electronic Materials)に浸漬し、10分間振盪させ、最後に濯ぐことによって現像される。チャネルが形成されたら、ウエハを200Wで1分間、O2プラズマで処理することにより、上層とSU−8レジストの接着を促進させる。
【0339】
チャネルを、上部ローラが45℃に設定されかつ圧力を1mmの厚さになるよう設定し、速度が50cm/分である、Exclam−Plusラミネータ(GMP)を使用して、100μmの厚さの被膜積層レジスト、SUEX(DJ DevCorp)の層で封止する。次いで65℃で3分のポスト積層ベークを実施した。冷却後、SUEX層を、流体ポートマスクを使用して露光(1400mJ/cm2)した。積層体上の保護ポリマー層は残すことに留意すべきである。PEBは65℃で3分間であり、その後、95℃で7分間であり、この場合も保護被膜はそのままであった。次いでウエハを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Sigma−Aldrich)を使用して10分間現像し、イソプロパノールで完全に濯ぎ、全ての残留する現像液をチャネルの内部から濯ぎ出すのを確実にする。ウエハを、最後に150℃で1時間、ハードベークし、個々のアレイチップに切断する。
【実施例1】
【0340】
この実施例は、アレイ上の相互接続液滴ゾーンを満たすのに使用された、トリブロックコポリマー液滴を生成するのに使用される方法について記述する。
【0341】
材料および方法
T接合チップは、流体インターフェースとしてナノポートアセンブリ(Upchurch Scientific)を固定することによって、液滴発生用に作製した。
【0342】
T接合での液滴発生メカニズムは、文献に十分記載されている[Garstecki et al., Lab Chip, 2006, 6, 437-446およびThorsen et al., Physical Review Letters, 2001, 86, 18, 4163-4166]。選択されたT接合幾何形状に関与する試薬の流体粘度を考慮すると、チャネル幅は両方の場合(油および緩衝液)に50μmであった。
【0343】
1.1−液滴試薬
油に含まれる水相液滴を作製するために、緩衝液は分散相として使用し、一方、ケイ素油(例えば、AR20)は連続相として使用した。緩衝液と、トリブロックコポリマー含有油とは共に、以下に記述されるように調製した。
【0344】
緩衝液の溶液(緩衝液1)は、KCl(純度99.99%、Sigma)298mgを脱気DI水10mLに添加することによって調製した。この溶液に、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(99.9%、Sigma)30.35mgを添加した。溶液を、少量のHClおよびNaOHを使用してpH8に緩衝させた。K2[Fe(CN)6](99.9%、Sigma)316.5mg、およびK3[Fe(CN)6](99.9%、Sigma)82.3mgを溶液に添加し、溶解するまで撹拌した。
【0345】
油−トリブロックコポリマー溶液は、ポリマー(6−33−6、PMOXA−PDMS−PMOXA、PolymerSource)20mgをAR20(99%、Sigma)1mLに添加することによって、調製した。ポリマーは、ポリマーの全てが溶解するまで24時間、油中で撹拌したままにした。
【0346】
1.2−液滴発生装置
液滴発生装置は、2つのシリンジポンプ(Elite、Harvard Apparatus)、2つの気密シリンジ(Hamilton)、ピークチューブ(Upchurch Scientific)、および特別仕様のT接合マイクロ流体チップからなるものであった。シリンジに油および緩衝液が投入され、シリンジポンプに取り付けたら、ピークチューブを使用して、チップ上のポートへの流体接続を確立した。油シリンジを連続相チャネル入力に接続し、一方、緩衝液は、分散相チャネル入力に接続した。
【0347】
両方のシリンジポンプを、10μL/分の流量で注入するように設定し、平均液滴サイズ(直径)129.46μmが標準偏差10.87μmで生成された。次いで液滴をバイアルに収集した。
【実施例2】
【0348】
この実施例は、いくつかの異なるトリブロックコポリマーが異なる油に含まれたものを使用して、液滴−界面−二重層(DIB)を生成するのに使用される方法について記述する。二重層を形成し生物学的ナノ細孔(MspAの変異体など)を挿入する能力についても調査した。
【0349】
材料および方法
実験2.1、2.3、および2.4を、トリブロックコポリマーと油との下記の組合せに対して実施した。
1− 6−33−6(PMOXA−PDMS−PMOXA)PolymerSource(20mg/mL)をAR20油(ポリフェニル−メチルシロキサン、Sigma Aldrich)に加えたもの。
2− 6−33−6(PMOXA−PDMS−PMOXA)PolymerSource(20mg/mL)をPDMS−OH 65cSt油(ポリ(ジメチルシロキサン)、ヒドロキシル末端、Sigma Aldrich)に加えたもの。
3− 6−45PE−6(PMOXA−PE−PMOXA、但しPE=ポリエルエチレン炭化水素鎖、約45個炭素原子の長さ)PolymerSource(20mg/mL)をヘキサデカン(99.9%、Sigma Aldrich)に加えたもの。
4− 6−32−6(PMOXA−PDMS−PMOXA)HighForce(20mg/mL)をAR20油(ポリフェニル−メチルシロキサン、Sigma Aldrich)に加えたもの。
【0350】
2.1−液滴安定性実験
液滴の安定性を、緩衝液およびトリブロックABAポリマーを様々な油に加えた溶液を調製することにより、オフラインで測定した。小さい0.5cm
2のトレイを、ポリカーボネートおよびスライドガラスを使用して作製した。トレイに油を満たした。油に、緩衝液滴1μLを添加し、24時間モニタした。小さい合流の程度しか示さない液滴を、電気DIB試験に進ませた。
【0351】
2.2−実験装置
実験システムは、下記の通りであった。700B axopatchを、2つのマイクロマニピュレータが入っている遮蔽箱内に接続した。ファラデーケージ全体を、倒立顕微鏡(Nikon)上に配置して、下からの液滴の取扱いを見ることが可能になるようにした。これはファラデーケージを開放せずに液滴を移動させることができた。
【0352】
ファラデーケージ内では、700B axopatchの電極を、純金(Au)ワイヤを介して接続した。
【0353】
Auは、ワイヤが、小さい金のビーズを形成するように、端部に炎を当てることによって、液滴装置で使用するために調製した。Auワイヤを、濃HNO
3に30秒間浸漬し、DI水で完全に洗浄することによって、清浄化した。次いでボールエンドワイヤを、緩衝液(5重量%低融解アガロース、Lonza/Buffer 400mM KCl、75mM K2[Fe(CN)6](99.9%、Sigma)、および25mM K3[Fe(CN)6](99.9%、Sigma)、10mM Tris)から調製された液体アガロース溶液中で繰り返し移動させた。小さいビーズが端部に形成されたら、アガロースを冷まし、平衡にするためにワイヤを過剰な緩衝溶液中に保存した。
【0354】
液滴チャンバを、ファラデーケージ内のステージ上に取り付け、電極を取り付けて、共にチャンバの中央セクション内に含まれるようにした。マニピュレータを、XおよびY方向の運動の全範囲が両方の電極によってチャンバの面積上で実現可能になるように、据え付けた。次いでチャンバを、縁までAR20トリブロックコポリマー溶液で満たし、数分間静置した。緩衝液1μLを、アガロース先端Auワイヤのそれぞれに直接ピペットで分取し、両方の電極をAR20/トリブロックコポリマー溶液下に直接移動させた。液滴を溶液下で30秒間そのままにした後に、移動させた。
【0355】
2.3−二重層の形成
液滴の対を持つ膜を形成するために、180mVのバイアス電圧に加えて±20mVの波形を電極に印加した。電流応答を、容量性膜の形成の指標としてモニタした。液滴を、2つの緩衝液容積部の間に接触が生じるように、慎重に集めた。液滴を、膜が形成されるまでこの状態のままにした。膜の成長が非常に遅い状況では、液滴はXY方向に移動し、それが液滴間からAR20/トリブロックコポリマーを強制的に排除して、膜の成長を促した。
【0356】
2.4−ナノ細孔挿入実験
膜全体に膜貫通細孔を挿入するために、MspA−(B2C)(配列番号1および9)の0.0005mg/ml溶液を緩衝液に添加して分析物を形成した。細孔の挿入は、電流の瞬間的な増大によって観察した。これは波形がない状態で、しかしバイアス電位を印加した状態で行った。
【0357】
結果
調査をした種々のトリブロックコポリマーと油との組合せを、以下の表1に示す。
【0358】
【表1】
【0359】
容量性膜の成長および細孔挿入を、試験をしたトリブロックコポリマー/油の全てに関して観察した。膜の成長およびMspA−(B2C)(配列番号1および9)細孔挿入は、AR20シリコーン油と共に使用した6−33−6PolymerSourceトリブロックコポリマーに関して観察した。膜の成長および細孔挿入は、PDMS中心コア構造を持たないトリブロックコポリマーの例として、ヘキサデカンと共に使用される6−45PE−6PolymerSourceに関して観察した。
【実施例3】
【0360】
この実施例は、パターニングされた相互接続液滴ゾーンと共に組み立てられる、アレイチップを生成するのに使用される方法について記述する。
【0361】
材料および方法
3.1−アレイチップの形成
3.1.1 アレイチップの製作
アレイチップをクリーンルームの施設で製作した。1μmの熱酸化物を有する6インチのSiウエハ(SiMat)を、支持体用のベース部として使用した。ウエハを、最初に200W、O
2プラズマで、プラズマ処理器(Oxford Instruments)内で処理し、次いでホットプレート(Electronic Micro Systems Ltd)で、150℃で15分間、脱水ベークに供した。ウエハを、スピン塗布機(Electronic Micro Systems Ltd、3000rpmで30秒間)で、SU−8 2フォトレジスト(MicroChem Corp.)の1μmの層で被覆し、65℃でソフトベークし、95℃で2分間ホットプレートでベークし、UVマスクアライナ(Quintel Corp.)でフラッド露光し(110mJ/cm
2)、次いで65℃で1分間ポスト露光ベーク(PEB)した後に、ホットプレートで95℃で2分間ベークした。次いでウエハを、SU−8 3050の120μmの厚さの層でスピンコートし(1250rpmで30秒間)、65℃で5分間ソフトベークした後に、レベルホットプレートで95℃で2.5時間ベークした。冷却後、マイクロ流体ネットワークでパターニングしたフォトマスクを使用して、マスクアライナで露光した(260mJ/cm
2)。次いでPEBを実施した:65℃で2分間、および95℃で15分間。チャネル形体は、ウエハを、適切なサイズのビーカ内でMicroposit EC溶媒(Rhom Haas Electronic Materials)中に浸漬し、10分間振盪させ、最後に濯ぐことによって現像した。チャネルが形成されたら、ウエハをO
2プラズマで1分間、200Wで処理して、上層とSU−8レジストとの接着を促進させた。
【0362】
チャネルを、上部ローラを45℃に設定しかつ圧力定を1mmの厚さとなるよう設定し、速度が50cm/分の、Exclam−Plusラミネータ(GMP)を使用して、100μmの厚さの被膜積層体レジスト、SUEX(DJ DevCorp)の層で封止した。次いで65℃で3分間のポスト積層ベークを実施した。冷却後、SUEX層を、流体ポートマスクを使用して露光した(1400mJ/cm
2)。積層体上の保護ポリマー層はそのままであることに留意すべきである。PEBを65℃で3分間行った後95℃で7分間行い、この場合も保護被膜はそのままであった。次いでウエハを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Sigma−Aldrich)を使用して10分間現像し、イソプロパノールで完全に濯ぎ、全ての残留現像液がチャネル内部から濯ぎ出されるのを確実にした。ウエハを最後に150℃で1時間ハードベークし、個々のチップに切断した。
【0363】
3.1.2 開放構造アレイチップの製作
機能性構造のアレイチップを、クリーンルームの施設で製作した。バイアスおよび電極を含有する6インチのSiウエハ(Silex)を、基材として使用した。ウエハを、最初に200W、O
2プラズマで、プラズマ処理器(Oxford Instruments)内で処理し、次いでホットプレート(Electronic Micro Systems Ltd)で、150℃で15分間、脱水ベークに供した。ウエハを、スピン塗布機(Electronic Micro Systems Ltd、3000rpmで30秒間)で、SU−8 2フォトレジスト(MicroChem Corp.)の1μmの層で被覆し、65℃でソフトベークし、95℃で2分間ホットプレートでベークし、シード層マスクを用いてUVマスクアライナ(Quintel Corp.)で露光した(110mJ/cm
2)。次いでウエハを65℃で1分間ポスト露光ベーク(PEB)した後に、ホットプレートで95℃で2分間ベークし、EC溶媒中で1分間現像した。シード層の機能は、高いアスペクト比の接着を改善するためのものであり、電極の所望の面積のみ溶液に曝されることも確実にした。
【0364】
乾燥被膜レジストTMMF 2030(東京応化工業(株))の層を、上部ロール温度が85℃のExcelam−Plusロールラミネータ(GMP Co.Ltd.)を使用して、ウエハに付着させた。次いでプロセスを5回繰り返して、150μmの厚さを実現した。次いでウエハを、Pillar構造マスクを使用したマスクアライナで、UV露光した。95℃でのPEBを、ホットプレートで10分間実施し、その後に、EC溶媒中で12分間、レジストを現像した。次いでウエハを、200WのO
2プラズマで処理し、炉内で、200℃で1時間ハードベークした。
【0365】
この段階で、形成された支柱構造を有するウエハを個々のデバイスに切断し、ASIC搭載PCBに実装した。
【0366】
3.1.3 閉鎖構造アレイチップの製作
このタイプの機能的構造を、開放構造アレイチップ製作と同じベース部基材、すなわちバイアスおよび電極を含有するSilexウエハで製作した。シード層を、先のセクションで記述したものと同じ手法で形成した。次いでウエハに、上述と同じプロセスパラメータで、4層のTMMF 2030乾燥被膜レジストを積層した。次いで全体の厚さが120μmであるこれら4層を、Wellsマスクを使用して露光した。ウエハに、その後、第5の層のTMMF 2030を積層し、Pillarsマスクを使用して露光した。次いで95℃で10分間のPEBに供したウエハを、EC溶媒中で12分間現像し、200Wで2分間のO
2プラズマ処理を行い、200℃で1時間のハードベークを行った。
【0367】
この段階で、形成されたウェルおよび支柱構造を有するウエハを個々のデバイスに切断し、ASIC搭載PCBに実装した。
【実施例4】
【0368】
この実施例は、実施例1で詳述した方法を使用して形成されたトリブロックコポリマー液滴を用い、パターニングされた相互接続液滴ゾーンと共に組み立てられた、アレイチップを集合させるために使用される方法について記述する。
【0369】
材料および方法
4.1−開放構造アレイでの膜の形成
液滴を相互接続液滴ゾーンのアレイ上に吐出するために、1000μLのマイクロピペット(Gibson)を使用した。ピペットチップを1mm切断してオリフィスを拡大し、剪断応力によって液滴が合流するのを防止した。次いで液滴を、相互接続液滴ゾーンの表面上にゆっくり吐出し、確実に全面積が大過剰に覆われるようにした。次いで過剰な液滴溶液の大部分を、液滴ゾーンで捕獲されなかった過剰な液滴を重力で除去するために、アレイを傾けることによって除去した。この時点で、アレイの全面積に適合するのに十分大きいフローセルを、その最上部に配置し、封止し、次いで油で満たした。このステップは、液滴が互いに粘着する可能性があるのでかつ油でフローセルを一気に洗浄することによって残りの液滴が捕獲アレイの最上部から除去されるので、実施した。最後にトリブロックコポリマー膜を、大量の油を一気に流し去りかつそれを水相、すなわち緩衝液1の代わりに用いることによって、個々の液滴それぞれと共通の水性容積部との間に形成した。油はフローセルから変位させられたので、水性溶液が捕獲構造の最上部ならびに各液滴の上部と接触するようになった。自己組織化トリブロックコポリマー層は、2つの水相が合流するのを防ぎ;但し液滴が大量の水性溶液に接触するのに十分大きいことを前提とした。装置1の断面は、
図31に示した通りである。
【実施例5】
【0370】
この実施例は、トリブロックコポリマー液滴(6−33−6PolymerSource液滴がAR20(Sigma Aldrich)に含まれたもの)へのMspA−(B2C)(配列番号1および9)細孔の挿入と、ヘリカーゼで制御されたDNAの、ナノ細孔内での移動について記述する。これらの実験で使用された液滴は、AR20シリコーン油に含まれるトリブロックコポリマーで被覆された、架橋アガロースビーズ(Bio−Works)(140〜150μm)で作製した。
【0371】
材料および方法
5.1−アガロースビーズの調製
広範なサイズ(130〜250μm)の架橋アガロースビーズをBio−Worksから得た。次いで液滴を、フィルタを使用して篩いにかけ、サイズ範囲が140〜150μmのビーズを得て、純水中に貯蔵した。次いでビーズを遠心分離にかけ、緩衝液を少なくとも5回交換した(625mM KCl、75mMフェロシアン化カリウム、25mMフェリシアン化カリウム、100mM CAPS、pH 10.0)。最後の緩衝液の交換および遠心分離ステップ(過剰な水を除去するため)の直後、ビーズを抽出し、AR20シリコーン油に加えた10mg/mLの6−33−6PolymerSourceトリブロックコポリマー中に浸漬した。ビーズを油中で30秒間、手短に渦動させ、1時間そのまま静置した。
【0372】
5.2−膜の形成
6−33−6PolymerSourceトリブロックコポリマー/AR20に架橋アガロースビーズを含めたものを、アレイに添加し、手作業で相互接続液滴ゾーンに挿入した。充填直後、少量の10mg/mLの6−33−6PolymerSourceトリブロックコポリマー/AR20(約50uL)をアレイの表面に添加して、ビーズを油中に浸漬し、保持した。それらをこの状態で5分間インキュベートした。この後、チップを組み立て、緩衝液(625mM KCl、75mMフェロシアン化カリウム、25mMフェリシアン化カリウム、100mM CAPS、pH 10.0)を直ぐに内部に流した。次いでアレイを、試験に用いることができる状態にした。
【0373】
5.3−細孔挿入と、ヘリカーゼで制御されたDNAの移動
細孔をトリブロックコポリマーに挿入するために、MspA−(B2C)(配列番号1および9)を有する緩衝溶液(625mM KCl、75mMフェロシアン化カリウム、25mMフェリシアン化カリウム、100mM CAPS、pH 10.0)をアレイ上に流した。保持電位+180mVを印加し、少なくとも10%の占有率が実現されるまで細孔を二重層に進入させた。細孔が挿入されたら、次いでMspA−(B2C)(配列番号1および9)を含有しない緩衝溶液(625mM KCl、75mMフェロシアン化カリウム、25mMフェリシアン化カリウム、100mM CAPS、pH 10.0)をその後アレイ上に流して、さらなる細孔がトリブロックコポリマーに挿入されないようにした。ヘリカーゼで制御されたDNAの移動を観察するために、DNA(配列番号4に4つのスペーサー基を介して接続された配列番号3;1nM)、ヘリカーゼ酵素(100nM)、dTTP(5mM)、Mg2+(10mM)を緩衝液(625mM KCl、75mMフェロシアン化カリウム、25mMフェリシアン化カリウム、100mM CAPS、pH 10.0)に溶かした溶液を、アレイ上に流した。保持電位+180mVを印加し、ヘリカーゼで制御されたDNAの移動を観察した。
【0374】
結果
トリブロックコポリマーで覆われたアガロース液滴をMspA−(B2C)ナノ細孔に曝した後、トリブロックコポリマーへの細孔の挿入を観察した。DNA(配列番号4に4つのスペーサー基を介して接続された配列番号3;1nM)およびヘリカーゼ酵素を系に添加したら、MspA−(B2C)ナノ細孔を通る、ヘリカーゼで制御されたDNAの転位を観察した。アガロース液滴に挿入されたナノ細孔を経た、ヘリカーゼで制御されたDNAの移動を示す2つの例の電流トレースを、
図48AおよびBに示す。
【実施例6】
【0375】
この実施例は、α−ヘモリシン−(E111N/K147N)
7(配列番号5および6)細孔の、トリブロックコポリマー液滴(6−33−6PolymerSource液滴がAR20(Sigma Aldrich)に含まれたもの)への挿入と、この系が、タンパク質トロンビンの存在を検出するためにどのように使用されたかについて、記述する。これらの実験で使用される液滴は、低融解アガロースで作製した。
【0376】
材料および方法
6.1−アガロースビーズの調製
液滴発生装置は、2つのシリンジポンプ(Elite、Harvard Apparatus)、2つの気密シリンジ(Hamilton)、ピークチューブ(Upchurch Scientific)、および特別仕様のT接合マイクロ流体チップからなるものであった。シリンジに、6−33−6トリブロックコポリマーをAR20油に含めたものを、1および2%の低融解アガロース(Lonza)を緩衝液(625mM KCl、75mMフェロシアン化カリウム、25mMフェリシアン化カリウム、100mM CAPS、pH 10.0)に溶かしたものに入れて、他の場所で投入し、シリンジポンプに取り付けたら、ピークチューブを使用して、チップ上のポートへの流体接続を確立させた。油シリンジを連続相チャネル入力に接続し、一方、緩衝液は、分散相チャネル入力に接続した。アガロース液滴を作製するために、装置を50℃の炉内に配置して、液滴発生プロセス中はアガロース溶液が流体のままであるようにした。
【0377】
両方のシリンジポンプは、アガロースを緩衝液に加えたものが10μL/分の流量で、6−33−6をAR20油に加えたものが25μL/分の流量で注入されるように設定し、5μmの標準偏差で150μmの平均液滴サイズ(直径)を生成した。次いで液滴をバイアルに収集した。
【0378】
6.2−膜の形成
トリブロックコポリマー膜を、実施例5で記述したように形成した。
【0379】
6.3−細孔挿入およびタンパク質トロンビンの検出
細孔をトリブロックコポリマーに挿入するために、α−ヘモリシン−(E111N/K147N)
7(配列番号5および6)を含む緩衝溶液(625mM KCl、75mMフェロシアン化カリウム、25mMフェリシアン化カリウム、100mM CAPS、pH 10.0)を、アレイ上に流した。+180mVの保持電位を印加し、少なくとも10%の占有率が実現されるまで細孔を二重層に進入させた。細孔が挿入されたら、次いでα−ヘモリシン−(E111N/K147N)
7(配列番号5および6)を含有しない緩衝溶液(625mM KCl、75mMフェロシアン化カリウム、25mMフェリシアン化カリウム、100mM CAPS、pH 10.0)をその後アレイ上に流して、さらなる細孔がトリブロックコポリマーに挿入されないようにした。アプタマーに結合するトロンビンを観察するために、アプタマー(配列番号7、1μM)およびトロンビン(1μM)を緩衝液(625mM KCl、75mMフェロシアン化カリウム、25mMフェリシアン化カリウム、100mM CAPS、pH 10.0)中に含有する溶液を、アレイ上に流した。+180mVの保持電位を印加し、トロンビンの存在および不在に対応した特徴的なブロックレベルを検出した。
【0380】
結果
トリブロックコポリマーで覆われたアガロース液滴を、α−ヘモリシン−(E111N/K147N)
7(配列番号5および6)ナノ細孔に曝した後、トリブロックコポリマーへの細孔の挿入を観察した。トロンビンおよびアプタマー(配列番号7)を系に添加して、トロンビンの存在および不在に対応した特徴的なブロックレベルを観察した。
図49に示されるように、結合トロンビンが不在(1)の状態およびトロンビンが存在(2)する状態で生成されたブロックを示す、電流トレースが得られたが、この図は、存在(ブロックラベル2)および不在(ブロックラベル1)に対応した特徴的なブロックレベルを示す電流トレース(低域濾波された)である。
【実施例7】
【0381】
この実施例は、MspA−(B2C)(配列番号1および9)細孔がトリブロックコポリマー液滴に挿入されたか否かを決定するのに、光学測定をどのように使用したかについて記述する。
【0382】
材料および方法
7.1−液滴の形成
ExoI/DNA緩衝液1(962.5μM KCl、7.5mMフェロシアン化カリウム、2.5mMフェリシアン化カリウム、100mM CAPS(pH10)、50μM EDTA、50nM Eco ExoI、5μM FAM/BHQ1標識PolyT 30mer(配列番号8))、およびトリブロックコポリマー(6−30−6)をAR20油に溶かしたものを、個別の1mLのHamiltonシリンジに入れて用い、それぞれ、ドロマイトT部品内を16μL/分(緩衝液1)および4μL/分(トリブロックコポリマーを油に加えたもの)で流すことによって、液滴を調製した。
【0383】
7.2−アレイの集合化および細孔挿入
端部が切断された200μLピペットチップを使用して、液滴200μLを4つの清浄なアレイ上にピペット分取した。過剰な液滴を、2mg/mLのトリブロック6−30−6を油に加えたもので洗い流した。次いで緩衝液2(962.5μM KCl、7.5mMフェロシアン化カリウム、2.5mMフェリシアン化カリウム、100mM CAPS(pH10)、50μM EDTA)500μLを、4つのアレイのそれぞれに流して、液滴を覆うようにした。各アレイの明視野画像が、蛍光顕微鏡を使用して得られた。
【0384】
次いで緩衝液3および4を、下記の表2に示されるように調製した。緩衝液3(MspA−(B2C)ナノ細孔を含有)(500μL)を2つのアレイ上に流し、緩衝液4(対照としてナノ細孔を含有しない。)を他の2つのアレイ上に流した。緩衝液3および4を、アレイ上で30分間そのままにし、その後、Mg2+含有緩衝液(緩衝液5−0.5M MgCl
2、100mM CAPS、pH10、7.5mMフェロシアン化カリウム、2.5mMフェリシアン化カリウム)を、4つ全てのアレイ全体に流した。次いでアレイを室温で一晩そのままにし、その後、5倍レンズを使用して、各アレイの明視野およびFITC(2秒露光)画像を獲得した。
【0385】
【表2】
【0386】
結果
この実施例は、MspA−(B2C)(配列番号1および9)細孔がトリブロックコポリマー液滴に挿入されたか否かを決定するのに、光学測定をどのように使用することができるかについて記述する。MspA−(B2C)(配列番号1および9)細孔は、ExoI酵素および蛍光体/消光剤標識DNA基質(配列番号8)を含有するトリブロックコポリマー液滴への挿入が可能になった。その後、Mg
2+含有緩衝液を液滴の最上部に端から端まで流すことにより、挿入されたナノ細孔を経た液滴へのMg
2+陽イオンの流れは、ExoIを活性化し、蛍光体/消光剤DNAを消化させ、その結果、蛍光が増大した。緩衝液(緩衝液3)を含有するMspA−(B2C)(配列番号1および9)で処理したアレイは、
図50に示されるように、アレイ上に明るいスポットを示したが、これは細孔が液滴に挿入されたことを示す。
図51は、MspA−(B2C)(配列番号1および9)(緩衝液4)を含有しない緩衝液を使用した対照実験を示す。明るいスポットの不在は、対照条件下(MspA−(B2C)ナノ細孔の不在)で、Mg
2+がトリブロックコポリマーに浸透できず、したがって酵素の活性化および蛍光の増大が妨げられたことを示す。
図50および
図51を比較することにより、ナノ細孔を含有する緩衝液に曝された液滴は、トリブロックコポリマーへのナノ細孔の挿入に対応した明るいスポットを示したことが明らかである。
【実施例8】
【0387】
この実施例は、パターニングされた相互接続液滴ゾーンと共に組み立てられたアレイを存在させるのに使用される方法について記述する。
【0388】
材料および方法
8.2 半閉鎖構造アレイ上の膜形成
マイクロピペットを使用して、150μL AR20/1mlヘキサンの混合物50μLを、温度100℃の乾燥アレイの表面に吐出し、1時間そのままにして、毛管現象によって油をアレイ表面内に分布させかつヘキサンを蒸発させた。アレイをアレイホルダ上に取り付け、その上に1.5mmの厚さのガスケットを配置し、アレイが完全に開放され取り囲まれるように位置合わせした。次いで個々のウェルのそれぞれを満たすことが意図される緩衝液を、アレイの最上部に吐出し(700μL);ガスケットは、緩衝液容積部を含有すべきである。次いでアレイを真空チャンバ内に配置し、ポンプ動作により1分間で25mbarに低下させて、緩衝液の容積部がウェル内に提供されるようにした。次いで真空チャンバからアレイを取り出し、フローセルアセンブリクランプ上に配置し、そこでフローセルをホルダに位置合わせしかつクランプ留めしてアセンブリを封止した。次いでAR20流頭(700μL)を、ピペットによりフローセル内でゆっくりと押し;このステップでは、ウェル内に含有される個々の水性容積部がバルクから分離し、油中に被包された。このステップの後、5mLの空気流頭により、過剰な油がフローセルから外に変位させられた。次いでフローセルのクランプ留めを解除し、分解して、10mg/mL濃度のトリブロックコポリマー(TBCP)を含む油30μLを、アレイの最上部に吐出させ、そのままで20分間インキュベートした。インキュベーションステップ後、アレイを90°に配置することによって過剰な油を除去し、アレイから流出させて、アレイを組織と共に乾燥できるようにした。この段階で、水性容積部は、TBCP膜の形成に用いることができる状態になった。
【0389】
ウェルが水性で満たされ、TBCPが系に導入されたら、その後、アレイをアッセイフローセルに組み立て、次いでそこに緩衝液を導入した。緩衝液流頭がアレイ上を移動するにつれ、残された過剰な油全てが変位させられ、バルク緩衝液容積部でTBCP膜を形成することが可能になった。
【実施例9】
【0390】
この実施例は、
図21および22に示される場合に従いかつ
図32に概略的に示されるように、極性および無極性媒体の容積部を含むアレイを集合させるのに使用される方法について記述する。
【0391】
油の前処理
アレイを、少量のAR−20シリコーン油による油の事前調整に供して、ウェルのマイクロパターニングを満たし、薄い油被膜の支柱および表面を覆った。Harvardシリンジポンプの1mLシリンジバレルを、AR−20油でプライム処理し、吐出速度を2μl/秒に設定した。AR20シリコーン油1.7μlを、200μmのピッチで間隔を空けて配置された2048個の区画を有し、ウェルの高さが90μmであり、支柱の高さが30μmである、寸法6.04mm×14.47mmの六方最密充填アレイの中心に吐出し、アレイ全体に拡張させた。次いでアレイを、炉内で30分間100℃に供し、その後、取り出して冷ました。アレイを検査して、使用前に油がアレイの縁部に到達したことを確実にした。
【0392】
緩衝液の充填
緩衝液(600mM KCl、100mM Hepes、75mMフェロシアン化カリウム(II)、25mMフェリシアン化カリウム(III)、pH8)10mlを脱気し、フローセルリザーバに投入した。アレイを、
図27に示されるようにフローセル内に配置し、アレイを真空中(約35mBar)で緩衝液で満たすことにより、区画内に緩衝液の容積部が得られた。
【0393】
油の充填
緩衝液充填ステップの直後、10mg/mlのTBCP/AR−20 5μlをフローセルに添加し、真空中でアレイの最上部に流した。これをそのまま約5分間インキュベートして、TBCPがアレイ全体を確実に覆うようにした。過剰な緩衝液を非アレイ面積から除去し、過剰な油を真空中でアレイから除去した。
【0394】
緩衝層の付加
油充填ステップ後、さらなる量の緩衝液をアレイ上に流して、緩衝層/TBCP/緩衝液容積部の界面が得られるようにした。緩衝液の層は、区画内での緩衝液容積部からの水の蒸発も最小限に抑える。
【実施例10】
【0395】
この実施例は、相互接続液滴ゾーンの均一な集合状態および膜形成を示す共焦点顕微鏡法画像を生成するために、実施例8で記述されたアレイを集合させるのに使用した方法をどのように修正したかについて記述する。画像は、膜のサイズの制御をもたらした、ウェルの壁にピニングされた水性容積部を示す。
【0396】
材料および方法
上述の様々な画像は、共焦点撮像によって撮影した。実験に関与する材料を、共焦点顕微鏡法で区別できるようにするために、蛍光色素を試薬で希釈した。油(AR20)をBODIPY 493/503(緑)で染色し、個別の容積部を形成した緩衝溶液を、スルホローダミンB(赤)で染色した。残りの材料は染色せず、したがって共焦点画像では暗色領域として現れた。膜形成実験(
図39および40に示される。)では、10mg/mLのTBCPを含むインキュベーション油も、BODIPY 493/503で染色した。第1の水性容積部が内側ウェルの壁にピニングされた後に、アレイ上に流されたバルク緩衝液は、染色しなかった。共焦点顕微鏡法サンプルは、先のセクション(実施例8)で記述された方法を使用して、上記試薬を用いて調製し、次いでNikon A1共焦点顕微鏡を使用して撮像した。