【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、
軌道の一対のレール上に跨がって設置される測定台と、
上記測定台上に、レール面に平行な第1平面内において軌道に直交する方向に移動可能に、かつ軌道に直交する第2平面内においてレーザー光が上記第1平面に対して仰角θの方向を照射するように設置されるレーザー距離計とを有し、
上記第2平面内において、レール面を含む第3平面内であって軌道に直交する直線をx軸に、軌道中心を通る直線をy軸に取り、上記第3平面と上記第3平面に平行でかつ上記レーザー距離計の測定基準点を含む第4平面との間の距離をH、軌道の非電化区間における上記第2平面内の建築限界の左右方向の一端の上下方向の直線部とこの直線部の上部に連なる円弧部との交点の座標を(W
1 ,H
1 )、軌道の電化区間における上記第2平面内の建築限界の最上部の円弧部とこの円弧部に連なる上記一端と同じ側の一端の上下方向の直線部との交点の座標を(W
2 ,H
2 )としたとき、θが式
tanθ≒(H
1 +H
2 −2H)/(W
1 +W
2 ) (1)
を満足することを特徴とする建築限界測定システムである。
【0009】
ここで、式(1)の根拠について説明する。
図1および
図2に示すように、軌道に直交する第2平面内において、レール面を含む第3平面内であって軌道に直交する直線をx軸に、軌道中心を通る直線をy軸に取ると、建築限界をxy座標で表すことができる。
図1においては、非電化区間の建築限界を一点鎖線、電化区間の建築限界を二点鎖線で示してあり、一点鎖線と二点鎖線とが重なる部分では二点鎖線を優先している。
図2においては、電化区間の建築限界だけが示されている。
図1においては、建築限界の一例として、北海道旅客鉄道株式会社 土木施設整備心得(実施基準)に定めるものが記載されているが、これに限定されるものではない。この建築限界測定システムでは、測定台上でレーザー距離計をx軸方向に移動させながら、レーザー距離計から仰角θの方向にレーザー光を建築限界の測定対象物に照射することによりレーザー距離計の測定基準点から測定対象物までの距離を測定する。レーザー距離計の移動中、レーザー距離計の測定基準点は第4平面内をx軸方向に座標(−W’,H)の点と座標(W,H)の点との間を移動する。このとき、測定対象物が測定可能範囲内に収まるように測定基準点のx軸方向の移動可能範囲(−W’〜W)および角度θを決定する。ところで、測定対象物は、建築限界を基準とし、それから一定範囲内に収まるように設計を行う。特に、駅の旅客上家における測定対象物(軒先、雨樋等)では、旅客サービス等の観点から建築限界上の(W
1 ,H
1 )〜(W
2 ,H
2 )付近を近接目標として設計を行う。そこで、軌道中心線上の点(0,H)から、建築限界測定を行う範囲の両端に位置する測定目標点(W
1 ,H
1 )、(W
2 ,H
2 )の間を結ぶ線分の中点((W
1 +W
2 )/2,(H
1 +H
2 )/2)への仰角をθとする。xy座標から数式で求める場合には、(0,H)と((W
1 +W
2 )/2,(H
1 +H
2 )/2)とを結ぶ直線の傾きをAとすると、y=Ax+Hとなり、A=(H
1 +H
2 −2H)/(W
1 +W
2 )=tanθと表すことができる。レーザー距離計の設置誤差、測定台の設置誤差、測定台の組み立て誤差などを考慮すると、実際には近似的にこの式が成立すれば足りる。以上により、式(1)が導出される。このとき、角度θの直線がy=Ax+β(βは、y=Hのときxが−W' <x<Wの範囲での値)となり、建築限界測定可能範囲は
図1の点描を施した領域となる。ここで、H≧0であるが、一般的にはH>0である。なお、
図2においては、建築限界測定対象物である旅客上家を支持する梁や支柱なども示されている。また、建築限界測定対象物は旅客上家に限定されるものではなく、駅を含めて線路の沿線に存在し、支障物となり得るものである限り含まれるが、具体的には、例えば、各種建築物、木、草などである。
【0010】
ただし、この角度θをもとに建築限界測定対象点のxy座標を三角関数により算出すること、および、レーザー距離計を測定台上に設置する際の角度設定を容易にするため、角度θは、式(1)から算出されたθに近似する整数等に置きかえることが望ましい。
【0011】
図1中に建築限界の数値を示した一例では、長さの単位をmmに取ると、(W
1 ,H
1 )=(1,900,3,156)、(W
2 ,H
2 )=(1,450,4,667)であり、点(W
1 ,H
1 )と点(W
2 ,H
2 )とを結ぶ線分の中点は((W
1 +W
2 )/2,(H
1 +H
2 )/2)=(1,675,3,912)となる。一例としてH=100mmとし、点(0,H)と中点(1,675,3,912)とを通る直線をy=Ax+Hとすると
(H
1 +H
2 )/2=A・((W
1 +W
2 )/2)+H
となる。この式を変形してAを求めると、
A=(H
1 +H
2 −2H)/(W
1 +W
2 )
=(3,156+4,667−2・100)/(1,900+1,450)
=2.2755
となる。ここで、A=tanθであることからθ=66.276°≒66.3°となる。実際には、例えば、このθ=66.3°に対して±2°の範囲、すなわちθ=64.3°〜68.3°、あるいは、このθ=66.3°に対して±1°の範囲、すなわちθ=65.3°〜67.3°であればよい。こうして得られたθに近似する整数としては、例えば66°あるいは67°を用いることができる。
【0012】
測定台は、好適には、支持体と、この支持体に対して互いに逆向きに均等に移動可能に支持され、測定時にレールの上部の内側の側面に接触する一対のガイド部材とを有する。この測定台がレール上に設置されたとき、一対のガイド部材の移動方向は軌道に直交する方向となる。このように一対のガイド部材が支持体に対して互いに逆向きに均等に移動可能であることにより、この測定台をレール上に設置したとき、軌間距離(レール間隔)にかかわらず、軌道に直交する方向の測定台の中心を常に軌道中心と一致させることができる。この一対のガイド部材は、例えば、リンク機構(クランク機構など)、歯車機構、ベルト機構、チェーン機構などにより、互いに逆向きに均等に移動可能に構成される。すなわち、一対のガイド部材をリンク機構、歯車機構、ベルト機構、チェーン機構などにより互いに結合し、一方のガイド部材が移動すると、その移動がリンク機構、歯車機構、ベルト機構、チェーン機構などを介して他方のガイド部材に伝達され、それによって他方のガイド部材が軌道に直交する方向に逆向きに同じ移動量だけ移動するようにする。より具体的には、リンク機構は、複数のリンクにより構成され、例えば、一つのリンクをその一点の周りに回転可能に支持体に取り付け、別の一つのリンクを一方のガイド部材に結合し、さらに別の一つのリンクを他方のガイド部材に結合し、支持体に取り付けたリンクの回転に伴ってガイド部材に結合したリンクが移動することにより一対のガイド部材が互いに逆向きに移動するようにする。歯車機構は、例えば、支持体に回転可能に取り付けたピニオンギアを挟んで一対のラックを互いに平行に設けてピニオンギアと噛み合わせることにより構成され、一方のラックを一方のガイド部材に固定し、他方のラックを他方のガイド部材に固定し、ピニオンギアの回転により一対のラックが互いに逆向きに移動し、それによって一対のガイド部材が互いに逆向きに移動するようにする。この建築限界測定システムは、典型的には、測定台上に軌道に直交する方向に移動可能に設置される移動台をさらに有し、この移動台にレーザー距離計が、レールの長手方向に移動可能に設置される。測定台は、この移動台の移動により、レーザー距離計の測定基準点がx軸方向に(−W’,H)の点と(W,H)の点との間の範囲で移動可能なように構成される。
【0013】
この建築限界測定システムにおいては、レーザー距離計により測定された測定対象物までの距離を用いて計算により建築限界と測定対象物との間の離隔距離を求め、測定対象物が建築限界を支障しているか否かを判定することができるが、次のようにすることにより建築限界の支障判定を容易かつ迅速に行うことができる。すなわち、この建築限界測定システムが、軌道の建築限界の測定を行う区間において、x軸上の軌道中心を通る直線からの距離X
RCに対するこの距離X
RCの点における角度θの方向の建築限界までの距離を予め測定したデータをさらに有するようにする。このデータは、建築限界支障判定早見表に載せてもよいし、コンピュータのデータベースに格納するようにしてもよい。そして、x軸上の軌道中心を通る直線からの距離X
RCの点においてレーザー距離計により測定される測定対象物までの距離を距離X
RCの点における上記のデータと比較することにより測定対象物が建築限界を支障しているか否かを判定する。
【0014】
また、この発明は、
軌道の一対のレール上に跨がるように測定台を設置するステップと、
上記測定台上に、レール面に平行な第1平面内において軌道に直交する方向に移動可能に、かつ軌道に直交する第2平面内においてレーザー光が上記第1平面に対して仰角θの方向を照射するように設置されるレーザー距離計からレーザー光を照射することにより測定対象物までの距離を測定するステップとを有し、
上記第2平面内において、レール面を含む第3平面内であって軌道に直交する直線をx軸に、軌道中心を通る直線をy軸に取り、上記第3平面と上記第3平面に平行でかつ上記レーザー距離計の測定基準点を含む第4平面との間の距離をH、軌道の非電化区間における上記第2平面内の建築限界の左右方向の一端の上下方向の直線部とこの直線部の上部に連なる円弧部との交点の座標を(W
1 ,H
1 )、軌道の電化区間における上記第2平面内の建築限界の最上部の円弧部とこの円弧部に連なる上記一端と同じ側の一端の上下方向の直線部との交点の座標を(W
2 ,H
2 )としたとき、θが式
tanθ≒(H
1 +H
2 −2H)/(W
1 +W
2 )
を満足することを特徴とする建築限界測定方法である。
【0015】
この建築限界測定方法は、軌道の建築限界の測定を行う区間において、x軸上の軌道中心を通る直線からの距離X
RCに対するこの距離X
RCの点における角度θの方向の建築限界までの距離を予め測定したデータを用い、x軸上の軌道中心を通る直線からの距離X
RCの点においてレーザー距離計により測定される測定対象物までの距離を距離X
RCの点における上記のデータと比較することにより測定対象物が建築限界を支障しているか否かを判定するステップをさらに有する。この建築限界測定方法の発明においては、その性質に反しない限り、上記の建築限界測定システムの発明に関連して説明したことが成立する。
【0016】
また、この発明は、
軌道の一対のレール上に跨がって設置される測定台と、
上記測定台上に、レール面に平行な第1平面内において軌道に直交する方向に移動可能に、かつ軌道に直交する第2平面内においてレーザー光が上記第1平面に対して仰角θの方向を照射するように設置されるレーザー距離計とを有し、
上記第2平面内において、レール面を含む第3平面内であって軌道に直交する直線をx軸に、軌道中心を通る直線をy軸に取り、上記第3平面と上記第3平面に平行でかつ上記レーザー距離計の測定基準点を含む第4平面との間の距離をH、軌道の非電化区間における上記第2平面内の建築限界の左右方向の一端の上下方向の直線部とこの直線部の上部に連なる円弧部との交点の座標を(W
1 ,H
1 )、軌道の電化区間における上記第2平面内の建築限界の最上部の円弧部とこの円弧部に連なる上記一端と同じ側の一端の上下方向の直線部との交点の座標を(W
2 ,H
2 )としたとき、θが式
tanθ≒(H
1 +H
2 −2H)/(W
1 +W
2 )
を満足する建築限界測定システムに用いられる建築限界測定システム用測定台であって、
支持体と、上記支持体に対して互いに逆向きに均等に移動可能に支持され、測定時に上記一対のレールの上部の内側の側面に接触する一対のガイド部材とを有することを特徴とする建築限界測定システム用測定台である。
【0017】
この建築限界測定システム用測定台の発明においては、その性質に反しない限り、上述の建築限界測定システムの発明に関連して説明したことが成立する。