特許第6495837号(P6495837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495837
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20190325BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   B05C5/00 101
   H01L21/30 564C
   H01L21/30 564Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-12384(P2016-12384)
(22)【出願日】2016年1月26日
(65)【公開番号】特開2017-131818(P2017-131818A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 友宏
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−307708(JP,A)
【文献】 特開平09−293659(JP,A)
【文献】 特開2008−012377(JP,A)
【文献】 特開平08−321449(JP,A)
【文献】 特開2012−016820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00 − 5/04
B41J 2/01 − 2/215
H01L 21/027,21/30
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板へ薬液を吐出するノズルと、
前記ノズルを待機させる位置にて前記ノズルの先端部を収容する容器と、
前記容器に設けられ前記ノズルへ熱を供給するヒータと、
前記ノズルに滞留している薬液に含まれる溶媒の揮発を促す前記ヒータの稼動を制御して、前記滞留している薬液に含まれる成分を固化させた固化層を前記ノズルに形成させる制御装置と、を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記ヒータは前記容器の開口部に位置している請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
基板へ薬液を吐出するノズルと、
前記ノズルを待機させる位置にて前記ノズルの先端部を収容する容器と、
前記容器に設けられ前記ノズルの周囲に気流を発生させる気流発生部と、
前記ノズルに滞留している薬液に含まれる溶媒の揮発を促す前記気流発生部の稼動を制御して、前記滞留している薬液に含まれる成分を固化させた固化層を前記ノズルに形成させる制御装置と、を備える基板処理装置。
【請求項4】
前記気流発生部は、前記容器の側面に設けられた排気管である請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ヒータの稼動を制御し、前記滞留している薬液の温度を加熱により上昇させて、前記滞留している薬液に前記固化層を溶解させる請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ノズルからの薬液の吐出を制御し、前記ノズルを待機させる位置での薬液の予備吐出により前記ノズルから前記固化層を剥離させる請求項1からのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置として、ノズルから吐出された薬液を基板に塗布する装置が知られている。ノズルからの薬液の吐出を停止している間に、ノズルに滞留している薬液に含まれる溶媒が揮発することにより、薬液に含まれる成分の固化物がノズルに生じることがある。この固化物が基板へ吐出されると、薬液の塗布不良あるいは処理された基板の欠陥を生じさせ、基板処理装置による生産性を低下させることになる。この固化物を生じさせないためにノズルから定期的に薬液を吐出させる場合、廃棄される薬液の量が増大することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−203151号公報
【特許文献2】特開2012−235132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、高い生産性を備え、かつ薬液の効率的な利用を可能とする基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、基板処理装置は、ノズルおよび制御装置を備える。ノズルは、基板へ薬液を吐出する。制御装置は、ノズルに滞留している薬液に含まれる溶媒の揮発を促す機構を制御して、ノズルに固化層を形成させる。固化層は、滞留している薬液に含まれる成分を固化させたものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態の基板処理装置である半導体製造装置の構成を模式的に示す図である。
図2図2は、図1に示す容器の構成を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示す制御装置の機能ブロックを示す図である。
図4図4は、図1に示すノズルにおける薬液の吐出および固化層の形成について説明する図である。
図5図5は、図1に示す半導体製造装置の動作手順を説明するフローチャートである。
図6図6は、図1に示すノズルからの薬液の予備吐出の前にヒータを稼働させる場合の動作手順を説明する図である。
図7図7は、図1に示す制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8図8は、第2の実施形態の基板処理装置である半導体製造装置に備えられた容器の構成を模式的に示す断面図である。
図9図9は、第2の実施形態の半導体製造装置に備えられた制御装置の機能ブロックを示す図である。
図10図10は、第2の実施形態の半導体製造装置に備えられたノズルにおける薬液の吐出および固化層の形成について説明する図である。
図11図11は、第2の実施形態の半導体製造装置の動作手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に図面を参照して、実施形態にかかる基板処理装置を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の基板処理装置である半導体製造装置の構成を模式的に示す図である。半導体製造装置1は、薬液であるレジスト液を基板10へ塗布する。基板10は、例えば半導体ウェハである。
【0009】
半導体製造装置1は、吐出部3、制御装置7、容器8および基板保持部9を備える。基板保持部9は、基板10を水平に保持する。基板保持部9は、保持された基板10を水平面内において回転させる。
【0010】
吐出部3は、ノズル4、ポンプ5および配管6を備える。吐出部3は、ポンプ5の駆動により、タンク2に貯留されているレジスト液をノズル4へ送る。ノズル4は、配管6を介して送られたレジスト液を吐出する。
【0011】
吐出部3は、ノズル4を鉛直方向および水平方向において移動させる移動手段(図示省略)を備える。移動手段は、第1位置である供給位置と第2位置である待機位置との間においてノズル4を移動させる。供給位置は、基板保持部9に保持されている基板10の上方の位置である。吐出部3は、供給位置へノズル4を移動させて、基板10へレジスト液を供給する。
【0012】
待機位置は、基板10へレジスト液を供給する前およびレジスト液を供給した後にノズル4を待機させる位置であって、基板保持部9の近傍の位置である。ノズル4を待機位置にて待機させているときの吐出部3の状態を、適宜「待機状態」と称する。
【0013】
半導体製造装置1は、基板保持部9により回転させている基板10上へノズル4からのレジスト液を供給することで、基板10の表面にレジスト薄膜を形成する。なお、半導体製造装置1は、基板保持部9により基板10を回転させるものに限られない。半導体製造装置1は、基板10の上方にてノズル4を移動させながら基板10へレジスト液を供給するものであっても良い。
【0014】
制御装置7は、半導体製造装置1の全体の動作を制御する。容器8は、待機位置に配置されている。半導体製造装置1は、吐出部3が待機状態であるとき、ノズル4の先端部を容器8へ挿入する。
【0015】
図2は、容器8の構成を模式的に示す断面図である。容器8は、上面に開口を備える箱状の構造物である。ノズル4の先端部は、開口から容器8内部の空間へ挿入される。容器8は、例えば樹脂材料を用いて構成されている。容器8は、薬液に対する耐性を持ついずれの材料で構成されたものであっても良い。
【0016】
ドレイン管12は、容器8の底面に接続されている。ドレイン管12は、容器8内にてノズル4から吐出されたレジスト液を容器8の外へ排出する。
【0017】
ヒータ11は、容器8の開口に設けられている。ヒータ11は、電流が流れることにより熱を発生する電熱線を備える。ヒータ11からの熱は、容器8へ挿入されたノズル4へ供給される。ヒータ11は、ノズル4に滞留しているレジスト液に含まれる溶媒の揮発を促す機構を構成している。
【0018】
第1の実施形態において、ヒータ11は、レジスト液に含まれる溶媒の温度を上昇させることによって、溶媒の揮発を促す。ヒータ11は、電熱線を備えるものに限られず、熱を発生するいずれの構成を備えるものであっても良い。
【0019】
図3は、制御装置7の機能ブロックを示す図である。図3には、制御装置7のうち吐出部3およびヒータ11の制御のための構成を示し、その他の構成については図示および説明を省略している。
【0020】
制御装置7は、本実施形態の基板処理装置による基板処理方法を実現するためのプログラムがインストールされたハードウェアである。プログラムが備える機能は、ハードウェアであるコンピュータを使用して実現される。図3には、後述するハードウェア構成を使用して実現される機能部を示している。
【0021】
制御装置7は、吐出制御部21、ヒータ制御部22および記憶部23を備える。吐出制御部21は、吐出部3の動作を制御する。吐出部3は、吐出制御部21からの制御信号に応じて、ノズル4の移動およびレジスト液の吐出を行う。
【0022】
ヒータ制御部22は、ヒータ11の動作を制御する。ヒータ11は、ヒータ制御部22からの制御信号に応じて、熱を発生する。図2に示す破線矢印は、制御装置7からヒータ11へ入力される制御信号を示す。記憶部23は、吐出部3の動作およびヒータ11の動作に関する各種情報を記憶する。
【0023】
半導体製造装置1は、待機位置にてノズル4を待機させるときに、ノズル4に固化層を形成させる。固化層は、ノズル4に滞留しているレジスト液に含まれる成分を固化させてなる層である。半導体製造装置1は、ヒータ制御部22による制御に応じてヒータ11を稼働させることで、意図的に、かつ所望の厚みの固化層を形成させる。半導体製造装置1は、基板10へのレジスト液の供給を再開するとき、待機位置にてノズル4から固化層を除去してから、供給位置へノズル4を移動させる。
【0024】
図4は、ノズル4における薬液の吐出および固化層の形成について説明する図である。図4には、5つの段階におけるノズル4、あるいはノズル4と容器8の断面を示している。図4の左上部に示す第1段階では、ノズル4は、供給位置において、基板10へレジスト液25を吐出する。
【0025】
第1段階に次ぐ第2段階にて、吐出部3は、ノズル4からのレジスト液25の吐出を終了する。レジスト液25の吐出を終了すると、ノズル4は、供給位置から待機位置へ移動する。ノズル4の先端部は、容器8内へ挿入される。ノズル4の内部には、レジスト液25が滞留している。
【0026】
ノズル4を待機位置へ移動させた第3段階において、ヒータ11は、熱の発生を開始する。ヒータ11で発生した熱は、ノズル4の先端部付近へ供給される。ノズル4への熱供給により、ノズル4に滞留しているレジスト液25の温度が上昇することで、レジスト液25のうち吐出側の界面では、レジスト液25に含まれる溶媒の揮発が促進される。かかる界面では、レジスト液25に含まれる樹脂成分の固化が進行する。
【0027】
稼働時におけるヒータ11の温度は、例えば50℃から200℃のいずれかに設定されている。ヒータ11の温度は、レジスト液25に含まれる溶媒の沸点に応じて適宜設定可能であるものとする。
【0028】
ノズル4への熱供給を開始してから所定の設定時間が経過した第4段階において、ヒータ11は、熱の供給を停止させる。図4の左下部には、第4段階におけるノズル4および容器8を示している。設定時間における熱供給により、ノズル4の内部には、所定の厚みの固化層26が形成される。
【0029】
半導体製造装置1は、ヒータ11の稼働を停止させた状態で、待機位置にてノズル4を待機させる。ヒータ11の稼働を停止させることで、固化層26は熱供給を停止させたときの厚みを維持する。
【0030】
ノズル4に滞留されたレジスト液25は固化層26によって空気から分断されているため、ノズル4からの溶媒の揮発が抑制される。これにより、ノズル4における樹脂成分のさらなる固化が低減される。また、ノズル4に滞留されたレジスト液25における樹脂成分の濃度が維持される。半導体製造装置1は、ノズル4を待機させている期間において、固化層26以外の固化物の発生を抑制できる。
【0031】
第4段階に次ぐ第5段階では、ノズル4の待機を終えて待機位置から供給位置へノズル4を移動させる前に、吐出部3は、待機位置にてレジスト液25の予備吐出を行う。固化層26は、ノズル4内におけるレジスト液25の吐出圧力を受けてノズル4から剥離する。ノズル4から剥離した固化層26は、ノズル4から吐出されたレジスト液25とともに容器8内へ落下する。固化層26および吐出されたレジスト液25は、容器8からドレイン管12へ排出される。
【0032】
第5段階におけるレジスト液25の予備吐出を終えてから、吐出部3は、ノズル4を供給位置へ移動させる。吐出部3は、ノズル4から基板10へのレジスト液25の吐出を開始する。半導体製造装置1は、第1から第5段階における吐出部3およびヒータ11の動作を繰り返す。
【0033】
ノズル4に形成される固化層26の厚みは、レジスト液25による所定の吐出圧力の印加によって固化層26を容易に剥離可能な厚みであれば良い。所定の吐出圧力とは、例えば0.2から0.4MPa(メガパスカル)とする。ヒータ11を稼働させる設定時間は、かかる厚みの固化層26の形成に要する時間とする。
【0034】
設定時間は、実際に固化層26を形成させるテストの実施、あるいは固化層26形成のシミュレーションの実施等のいずれの手法によって決定しても良い。制御装置7は、例えばユーザの操作により入力されたデータに基づいて、ヒータ11の温度および設定時間を設定する。
【0035】
仮に、待機位置にてヒータ11を稼働させずノズル4を放置した場合、レジスト液25からは自然に溶媒が揮発する。樹脂成分の固化は、レジスト液25の界面付近のうちノズル4の内壁面に近い部分からゆっくり進行する。この場合、固化した成分と液体成分とが混在するゲル状のミキシング層が界面に形成される。
【0036】
かかるミキシング層は、固化の度合いおよび厚みの少なくともいずれかが不均一となるため、待機位置におけるレジスト液25の予備吐出によって十分に除去することが困難である。また、ミキシング層が形成されてからも溶媒の揮発が進行することで、レジスト液25の液面が少しずつ後退していく。レジスト液25の液面が後退していく過程において、ノズル4の内壁面には、取り残された固化物が付着していく。このため、待機位置にてノズル4を単に放置させた場合、ノズル4に残存する固化物が増大することで、ノズル4の清浄度が著しく低下することとなる。
【0037】
これに対し、本実施形態の半導体製造装置1は、待機位置にヒータ11を設けてノズル4への熱供給を制御することで、所望かつ均一な厚みの固化層26を短時間において形成可能とする。半導体製造装置1は、待機位置におけるレジスト液25の予備吐出によって、固化層26を容易に剥離させることができる。
【0038】
半導体製造装置1は、待機位置にノズル4を待機させる期間において、固化層26以外の固化物の発生が抑制される。半導体製造装置1は、容易に剥離可能な固化層26を形成するとともに、その他の固化物の発生を抑制させることで、基板10へのレジスト液25の吐出を再開するときにおけるノズル4の清浄度を高めることができる。
【0039】
半導体製造装置1は、基板10への固化物の混入を低減させることで、基板10におけるレジスト液25の塗布不良を低減できる。半導体製造装置1は、不純物である固化物による基板10の汚染を低減させることで、処理された基板10の欠陥を低減できる。これにより、半導体製造装置1は、製品の歩留まりを向上可能とし、高い生産性を確保できる。
【0040】
半導体製造装置1は、ノズル4における固化物の形成を抑制するために待機位置にて定期的にレジスト液25を吐出させる場合に比べ、廃棄されるレジスト液25の量を大幅に低減させることができる。これにより、半導体製造装置1は、基板10の処理コストを低減できる。
【0041】
図5は、半導体製造装置1の動作手順を説明するフローチャートである。動作手順のスタートは、吐出部3が待機状態であるときとする。ノズル4および容器8は、図4の説明における第4段階の状態とされている。ノズル4の内部には、固化層26が形成されている。ヒータ11は、稼働を停止させている。
【0042】
吐出制御部21は、基板10へのレジスト液25の塗布の開始が指示されたか否かを判断する(ステップS1)。塗布開始の指示が無い場合(ステップS1、No)、吐出部3は、待機状態を維持する。
【0043】
塗布開始の指示があった場合(ステップS1、Yes)、吐出制御部21は、待機位置におけるレジスト液25の予備吐出を吐出部3へ指示する。吐出部3は、ポンプ5を動作させることで、ノズル4から容器8内へレジスト液25を吐出する(ステップS2)。吐出部3は、ノズル4内におけるレジスト液25の吐出圧力を利用して、固化層26を剥離させる。このとき、ノズル4および容器8は、上述する第5段階の状態とされる。
【0044】
ステップS2におけるレジスト液25の吐出を終えると、吐出制御部21は、待機位置から供給位置へのノズル4の移動を吐出部3へ指示する。吐出部3は、移動手段の駆動により、供給位置へノズル4を移動させる(ステップS3)。
【0045】
供給位置へのノズル4の移動が完了すると、吐出制御部21は、レジスト液25の吐出を吐出部3へ指示する。半導体製造装置1は、ポンプ5の動作によりノズル4からレジスト液25を吐出させ、基板10上にレジスト液25を塗布する(ステップS4)。ノズル4は、上述する第1段階の状態とされる。
【0046】
吐出制御部21は、基板10へのレジスト液25の塗布の終了が指示されたか否かを判断する(ステップS5)。塗布終了の指示が無い場合(ステップS5、No)、半導体製造装置1は、ステップS4におけるレジスト液25の塗布を続ける。
【0047】
塗布終了の指示があった場合(ステップS5、Yes)、吐出制御部21は、吐出部3によるレジスト液25の吐出を停止させる。ノズル4は、上述する第2段階の状態とされる。吐出制御部21は、レジスト液25の吐出を停止させてから、供給位置から待機位置へのノズル4の移動を吐出部3へ指示する。吐出部3は、移動手段の駆動により、待機位置へノズル4を移動させる(ステップS6)。移動手段は、ノズル4の先端部を、容器8内へ挿入させる。
【0048】
待機位置へのノズル4の移動が完了すると、ヒータ制御部22は、ヒータ11へ稼働開始を指示する。ヒータ11は、電熱線に電流が流れるON状態とされ、熱の発生を開始する(ステップS7)。ノズル4および容器8は、上述する第3段階の状態とされる。
【0049】
ヒータ制御部22は、ヒータ11が稼働を開始してから設定時間が経過したか否かを判断する(ステップS8)。ヒータ制御部22は、例えばカウンタ(図示省略)による単位時間ごとのカウント値を取得し、ヒータ11が稼働を開始してからのカウント値が設定時間を示す所定値を超えたか否かを判断する。設定時間が経過していない場合(ステップS8、No)、ヒータ制御部22は、ヒータ11による熱の発生を継続させる。
【0050】
設定時間が経過した場合(ステップS8、Yes)、ヒータ制御部22は、ヒータ11へ稼働終了を指示する。ヒータ11は、電熱線への電流を停止させるOFF状態とされ、熱の発生を終了する(ステップS9)。ノズル4および容器8は、本動作手順のスタート時における第4段階の状態へ戻される。これにより、半導体製造装置1は、基板10へのレジスト液25の塗布を含む一連の動作を終了する。半導体製造装置1は、次の塗布開始の指示があるまで、吐出部3を待機状態とする。
【0051】
ここで、基板処理において一般に使用される薬液の粘度を、低粘度、中粘度および高粘度と大まかに分類して、本実施形態の利点を説明する。低粘度は、100cP(センチポアズ)未満の粘度とする。高粘度は、1000cPより高い粘度とする。中粘度は、低粘度および高粘度の間の粘度であって、100cP以上かつ1000cP以下の粘度とする。例えば、薬液に含まれる樹脂成分の濃度が高いほど、薬液の粘度は高くなる。
【0052】
近年、半導体装置の製造においては、基板に積層される層の数が多くなっている。基板上の高い構造物を被覆可能な厚みの膜を形成するために、使用される薬液の粘度が高められることがある。
【0053】
従来、待機位置の容器8内に気化させた溶媒を充満させることで、ノズル4に滞留している薬液からの溶媒の揮発を抑制させる手法が知られている。かかる手法は、中粘度以上の粘度の薬液に対しては、固化の抑制が困難となる場合がある。
【0054】
また、従来、ノズル4に滞留する薬液と空気との間に溶媒の層を導入することで、ノズル4内の薬液からの溶媒の揮発を抑制させる手法が知られている。導入された溶媒の層では、薬液に含まれる樹脂成分の溶解が進行する。この状態でノズル4が放置されると、溶媒の層では、樹脂成分と溶媒との比重差に起因して、樹脂成分が下方へ集まることとなる。かかる手法は、中粘度以上の粘度の薬液に対しては、溶媒の層の下方における樹脂成分の固化が顕著となることで、固化の抑制が困難となる場合がある。
【0055】
これに対し、本実施形態では、所望かつ均一な厚みの固化層26を短時間のうちに形成し、ノズル4に滞留された薬液を固化層26によって空気から分断させる手法を採る。本実施形態の手法によると、中粘度以上の粘度の薬液に対しても、固化層26以外の固化物の発生を十分に抑制できる。本実施形態の手法は、薬液の粘度が中粘度あるいは中粘度以上である場合に適している。
【0056】
半導体製造装置1は、固化層26の剥離のための薬液の予備吐出の前にヒータ11を稼働させても良い。図6は、ノズル4からの薬液の予備吐出の前にヒータを稼働させる場合の動作手順を説明する図である。
【0057】
図6の左部には、上述の第4段階におけるノズル4および容器8を示している。このとき、固化層26は、ノズル4のうちヒータ11とほぼ同じ高さの位置にある。吐出部3が待機状態であるときに塗布開始の指示があった場合、吐出制御部21は、ノズル4の下方への移動を吐出部3へ指示する。吐出部3は、移動手段の駆動により、容器8の下方へノズル4を移動させる。吐出部3は、ノズル4を移動させることで、図6の右部に示すように、ノズル4のうち固化層26の上の部分をヒータ11の高さの位置に合わせる。
【0058】
ヒータ制御部22は、ヒータ11へ稼働開始を指示する。ヒータ11は熱の発生を開始させる。ヒータ11からの熱によってレジスト液25に含まれる溶媒の温度を上昇させることで、レジスト液25に含まれる溶媒への固化層26の溶解が促進される。
【0059】
ヒータ11は、所定時間が経過してから稼働を停止する。その後、吐出制御部21は、レジスト液25の予備吐出を吐出部3へ指示する。半導体製造装置1は、レジスト液25の予備吐出の前にヒータ11を稼働させることで、固化層26をさらに容易に剥離することができる。
【0060】
図7は、制御装置7のハードウェア構成を示すブロック図である。制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、表示部94および入力部95を備える。CPU91、ROM92、RAM93、表示部94および入力部95は、バスを介して、互いに通信可能に接続されている。
【0061】
コンピュータプログラムである制御プログラム97は、ROM92内に格納されており、バスを介してRAM93にロードされる。図7では、制御プログラム97がRAM93へロードされた状態を示している。制御プログラム97は、吐出部3およびヒータ11の動作を制御するための命令を含む。
【0062】
CPU91は、RAM93内のプログラム格納領域にて制御プログラム97を展開して各種処理を実行する。RAM93内のデータ格納領域は、各種処理の実行におけるワークメモリとして使用される。表示部94は、例えば液晶ディスプレイである。入力部95は、制御装置7への入力操作を受け付けるキーボードおよびポインティングデバイス等である。
【0063】
ヒータ11の温度およびヒータ11を稼働させる設定時間は、ユーザの入力操作によって入力部95へ入力される。CPU91は、入力部95へ入力されたデータに応じてヒータ11の動作を制御する。表示部94は、半導体製造装置1の稼働に関する情報を表示する。表示部94は、入力部95へ入力されたヒータ11の温度および設定時間のデータを表示しても良い。
【0064】
実施形態にて適用される薬液は、レジスト液25である場合に限られない。薬液は、薬液に含まれる溶媒が揮発することによって固化が進行するいずれの液体であっても良い。薬液は、例えば接着剤等であっても良い。
【0065】
基板処理装置は、半導体ウェハである基板10へ薬液を塗布する半導体製造装置1に限られず、半導体ウェハ以外の被処理基板へ薬液を塗布するいずれの装置であっても良い。基板処理装置は、例えば、液晶基板へ薬液を塗布する装置であっても良い。
【0066】
第1の実施形態によると、半導体製造装置1は、薬液の吐出を停止してノズル4にて滞留された薬液のうち吐出側の界面に固化層26を形成する。制御装置7は、所定の設定時間におけるヒータ11の稼働により、所望かつ均一な厚みの固化層26を形成させる。半導体製造装置1は、基板10への薬液の吐出を再開するときにおけるノズル4の清浄度を高めることで、固化物による基板10の汚染を低減可能とし、製品の歩留まりを向上できる。半導体製造装置1は、待機位置において廃棄される薬液の量を低減できる。以上により、高い生産性と、薬液の効率的な利用とを実現できるという効果を奏する。
【0067】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態の基板処理装置である半導体製造装置に備えられた容器の構成を模式的に示す断面図である。第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。容器30は、第1の実施形態の容器8に代えて半導体製造装置1に設けられている。容器30は、待機位置に配置されている。
【0068】
容器30の側面には排気管32が設けられている。排気管32は、容器30の開口付近に設けられている。気流発生部である排気部31は、容器30内の気体を排気管32から排出することで、容器30に挿入されたノズル4の先端部の周囲に気流を発生させる。排気部31は、例えばポンプを備える。ポンプは、排気管32のうち容器30に接続されている側から気体を吸引し、容器30の外へ気体を排出する。
【0069】
排気部31は、ノズル4に滞留しているレジスト液に含まれる溶媒の揮発を促す機構を構成している。第2の実施形態において、排気部31は、レジスト液から気化した溶媒をレジスト液の界面付近から容器30の外へ流動させることによって、溶媒の揮発を促す。
【0070】
図9は、半導体製造装置1に備えられた制御装置33の機能ブロックを示す図である。制御装置33は、第1の実施形態の制御装置7に代えて半導体製造装置1に設けられている。図9には、制御装置33のうち吐出部3および排気部31の制御のための構成を示し、その他の構成については図示および説明を省略している。図9には、図3と同様に、ハードウェア構成を使用して実現される機能部を示している。
【0071】
制御装置33は、吐出制御部21、記憶部23および排気制御部34を備える。排気制御部34は、排気部31の動作を制御する。排気部31は、排気制御部34からの制御信号に応じて動作する。図8に示す破線矢印は、制御装置33から排気部31へ入力される制御信号を示す。記憶部23は、吐出部3の動作および排気部31の動作に関する各種情報を記憶する。
【0072】
半導体製造装置1は、排気制御部34による制御に応じて排気部31を稼働させることで、意図的に、かつ所望の厚みの固化層を形成させる。
【0073】
図10は、ノズル4における薬液の吐出および固化層の形成について説明する図である。図10には、5つの段階におけるノズル4、あるいはノズル4と容器30の断面を示している。図10の左上部に示す第1段階では、ノズル4は、供給位置において、基板10へレジスト液25を吐出する。
【0074】
吐出部3は、第2段階にて、ノズル4からのレジスト液25の吐出を終了する。レジスト液25の吐出を終了すると、ノズル4は、供給位置から待機位置へ移動する。ノズル4の先端部は、容器30内へ挿入される。ノズル4の内部には、レジスト液25が滞留している。ノズル4に滞留しているレジスト液25のうち空気との界面付近には、レジスト液25から気化した溶媒の気体が生じる。
【0075】
ノズル4を待機位置へ移動させた第3段階において、排気部31は、排気を開始する。レジスト液25の界面付近に生じた溶媒の気体は、容器30内の空気とともに排気管32へ排出される。容器30は、ノズル4の先端部が挿入されているときに密閉されていない状態とされる。これにより、ノズル4から排気管32へ流れる気流を容器30内に生じさせる。
【0076】
このような気流を容器30内に生じさせることで、レジスト液25の界面では、レジスト液25に含まれる溶媒の揮発が促進される。かかる界面では、レジスト液25に含まれる樹脂成分の固化が進行する。
【0077】
排気部31は、例えば50kPa(キロパスカル)で気体を吸引する。排気部31が気体を吸引する圧力は、レジスト液25に含まれる溶媒に応じて適宜設定可能であっても良い。
【0078】
排気を開始してから所定の設定時間が経過した第4段階において、排気部31は、排気を停止させる。図10の左下部には、第4段階におけるノズル4および容器30を示している。設定時間における気流により、ノズル4の内部には、所定の厚みの固化層26が形成される。
【0079】
例えば、排気部31が50kPaで気体を吸引する場合、排気を開始してから5分程度が経過したときに、レジスト液25の界面における樹脂成分の固化が開始する。設定時間は、排気の開始から所定の厚みの固化層26が形成されるまでに要する時間とする。固化層26の所定の厚みとは、レジスト液25による所定の吐出圧力の印加によって容易に剥離可能な厚みとする。所定の吐出圧力とは、例えば0.2から0.4MPaとする。
【0080】
半導体製造装置1は、排気部31の稼働を停止させた状態で、待機位置にてノズル4を待機させる。容器30内の気流を停止させることで、固化層26は排気を停止させたときの厚みを維持する。
【0081】
ノズル4に滞留されたレジスト液25は固化層26によって空気から分断されているため、ノズル4からの溶媒の揮発が抑制される。これにより、ノズル4における樹脂成分のさらなる固化が低減される。また、ノズル4に滞留されたレジスト液25における樹脂成分の濃度が維持される。半導体製造装置1は、ノズル4を待機させている期間において、固化層26以外の固化物の発生を抑制できる。
【0082】
第1の実施形態と同様に第5段階において、吐出部3は、ノズル4の待機を終えて待機位置から供給位置へノズル4を移動させる前に、待機位置でレジスト液25の予備吐出を行う。吐出部3は、予備吐出により、ノズル4から固化層26を剥離させる。半導体製造装置1は、第1から第5段階における吐出部3および排気部31の動作を繰り返す。
【0083】
設定時間は、実際に固化層26を形成させるテストの実施、あるいは固化層26形成のシミュレーションの実施等のいずれの手法によって決定しても良い。制御装置33は、例えばユーザの操作により入力されたデータに基づいて、排気部31の吸引圧力および設定時間を設定する。
【0084】
本実施形態の半導体製造装置1は、ノズル4から排気管32への気流の発生を制御することで、所望かつ均一な厚みの固化層26を短時間において形成可能とする。半導体製造装置1は、待機位置におけるレジスト液25の予備吐出によって、固化層26を容易に剥離させることができる。
【0085】
半導体製造装置1は、第1の実施形態と同様に、製品の歩留まりを向上可能とし、高い生産性を確保できる。また、半導体製造装置1は、廃棄されるレジスト液の量を大幅に低減させることができる。
【0086】
図11は、半導体製造装置1の動作手順を説明するフローチャートである。動作手順のスタートは、吐出部3が待機状態であるときとする。ノズル4および容器30は、図10の説明における第4段階の状態とされている。ノズル4の内部には、固化層26が形成されている。排気部31は、排気を停止させている。
【0087】
ステップS1からS6までの手順は、第1の実施形態と同様である。ステップS6における待機位置へのノズル4の移動が完了すると、排気制御部34は、排気部31へ稼働開始を指示する。排気部31、気体を吸引するON状態とされ、排気を開始する(ステップS11)。ノズル4および容器30は、上述する第3段階の状態とされる。
【0088】
排気制御部34は、排気部31が排気を開始してから設定時間が経過した否かを判断する(ステップS12)。設定時間が経過していない場合(ステップS12、No)、排気制御部34は、排気部31による排気を継続させる。
【0089】
設定時間が経過した場合(ステップS12、Yes)、排気制御部34は、排気部31へ稼働終了を指示する。排気部31は、気体の吸引を停止させるOFF状態とされ、排気を終了する(ステップS13)。ノズル4および容器30は、本動作手順のスタート時における第4段階の状態へ戻される。
【0090】
これにより、半導体製造装置1は、基板10へのレジスト液の塗布を含む一連の動作を終了する。半導体製造装置1は、次の塗布開始の指示があるまで、吐出部3を待機状態とする。第2の実施形態の手法は、第1の実施形態と同様に、薬液の粘度が中粘度以上である場合に適している。
【0091】
制御装置33は、図7に示す制御装置7と同様のハードウェア構成を備える。排出部31が気体を吸引する圧力および排出部31を稼働させる設定時間は、ユーザの入力操作によって入力部95へ入力される。CPU91は、入力部95へ入力されたデータに応じて排出部31の動作を制御する。表示部94は、入力部95へ入力された排出部31の圧力および設定時間のデータを表示しても良い。
【0092】
半導体製造装置1は、レジスト液25に含まれる溶媒の揮発を促す機構として、排気部31以外の機構を備えていても良い。半導体製造装置1は、例えば、ノズル4付近へ空気を供給する給気手段を備えていても良い。半導体製造装置1は、給気手段からの気流によって溶媒の揮発を促すとともに樹脂成分の固化を進行させても良い。
【0093】
半導体製造装置1は、レジスト液25に含まれる溶媒の揮発を促す機構として、排気部31と第1の実施形態のヒータ11とを備えていても良い。半導体製造装置1は、固化層26の剥離のためのレジスト液25の予備吐出の前にヒータ11を稼働させても良い。
【0094】
排気部31は、固化層26の形成のための排気以外に、気化した溶媒を含む空気を排出するための排気を常時行うこととしても良い。排気部31は、かかる常時排気では、固化層26の形成のための排気の場合に比べて大幅に吸引圧力を低下させる。半導体製造装置1は、固化層26の形成のための排気のときは排気流量を高くすることで溶媒の揮発を促進させる一方、常時排気のときは排気流量を低くすることで、溶媒の揮発を抑制させる。
【0095】
第2の実施形態によると、制御装置7は、所定の設定時間における排気部31の稼働により、所望かつ均一な厚みの固化層26を形成させる。半導体製造装置1は、基板10への薬液の吐出を再開するときにおけるノズル4の清浄度を高めることで、固化物による基板10の汚染を低減可能とし、製品の歩留まりを向上できる。半導体製造装置1は、待機位置において廃棄される薬液の量を低減できる。第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、高い生産性と、薬液の効率的な利用とを実現できるという効果を奏する。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1 半導体製造装置、4 ノズル、7,33 制御装置、8,30 容器、11 ヒータ、26 固化層、31 排気部。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図10
図11