(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された試験装置は、押出しユニットによって電池を押し出すことにより処理液が入った容器に当該電池を自動で落下させる構造である。この場合、押出しユニットを設けるために装置コストが増大し、また設置スペースも増大するという問題がある。また装置コストを抑えるべく、押出しユニットを設けずに試験後の電池を人手によって処理液の中に入れる場合には、当該電池が試験中に物理的なダメージを受けることにより電気的に不安定な状態になることから、作業上の危険性が問題となる。また発火した電池を処理液の中に入れる場合には、電池が燃え尽きるまで長時間待つ必要があり、そもそも電池が完全に燃え尽きたか否かを判断するのも困難である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置コスト及び設置スペースの増大を抑制すると共に、試験後の電池を迅速に安全処理することが可能な電池試験装置及び電池試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る電池試験装置は、電池の圧壊試験又は釘刺し試験を行うための電池試験装置である。上記電池試験装置は、対向部との間に前記電池が位置するように配置される加圧部と、前記加圧部を、前記電池を加圧する方向又は前記加圧を解除する方向に移動させる駆動部と、前記電池を短絡又は消火するための処理液が貯留される容器と、前記加圧部が前記駆動部によって前記加圧を解除する方向に移動することにより、前記電池を前記容器に向かって移動させる電池移動手段と、を備えている。
前記電池移動手段は、前記加圧部と前記電池とを互いに接続する部材により構成されている。
【0008】
上記電池試験装置では、駆動部によって加圧部を移動させて電池を加圧することにより、圧壊試験又は釘刺し試験を行うことができる。そして、駆動部によって加圧部を移動させて電池の加圧を解除する際に、電池移動手段によって電池を容器に向かって移動させることができる。これにより、電池を容器内に収容し、処理液によって電池の短絡又は消火を行うことができる。このため、試験中又は試験後の電気的に不安定な電池を処理液の中に入れる作業を人手で行う必要がなく、より安全に電池の短絡又は消火処理を行うことができる。また、人手を介さずに電池を処理液の中に入れることができるため、電池が発火した場合でも当該電池が燃え尽きるまで待つ必要がなく、迅速に安全処理を行うことができる。
【0009】
また上記電池試験装置では、電池の加圧を解除する際に加圧部を移動させるための駆動力を利用して電池を容器に向かって移動させることができる。このため、従来のように電池を容器に向かって押し出すための大型且つ高価な駆動機構を、加圧部を駆動させる機構とは別に設ける必要がなく、装置コスト及び設置スペースの増大を抑制することができる。従って、上記電池試験装置によれば、装置コスト及び設置スペースの増大を抑制すると共に、試験後の電池を迅速に安全処理することができる。
また加圧部と電池とを直接接続するため、当該加圧部を移動させる駆動力により電池を容器に向かってより確実に移動させることができる。
【0010】
本発明の他局面に係る電池試験装置
は、電池の圧壊試験又は釘刺し試験を行うための電池試験装置であって、対向部との間に前記電池が位置するように配置される加圧部と、前記加圧部を、前記電池を加圧する方向又は前記加圧を解除する方向に移動させる駆動部と、前記電池を短絡又は消火するための処理液が貯留される容器と、前記加圧部が前記駆動部によって前記加圧を解除する方向に移動することにより、前記電池を前記容器に向かって移動させる電池移動手段と、を備えている。前記電池移動手段は、
前記電池に接触させる治具部材と、前記加圧部と前記
治具部材とを互いに接続す
る部材
と、により構成されてい
る。
【0012】
上記電池試験装置において、前記接続
する部材は、前記圧壊試験又は前記釘刺し試験における前記電池の発熱に耐える耐熱性を有していてもよい。
【0013】
この構成によれば、試験中に電池の発熱量が多くなった場合でも、接続
する部材が溶けて消失することを防止できる。
【0014】
上記電池試験装置において、前記接続
する部材は、前記圧壊試験又は前記釘刺し試験における前記電池の発火に耐える耐火性を有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、試験中に電池が発火した場合でも、接続
する部材が燃え尽きてしまうことを防止できる。
【0016】
上記電池試験装置において、前記
治具部材は、前記電池における前記加圧部により加圧される部位と反対側の部位に対向するように配置さ
れていてもよい。前記
治具部材は、前記加圧を解除する方向に前記加圧部を移動させる駆動力によ
り移動
して、前記電池を押すように構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、電池自体の構造や試験時における電池の変形などに起因して電池と加圧部とを直接接続することができない場合でも、治具部材によって押すことにより電池を容器に向かって移動させることができる。
【0018】
上記電池試験装置は、前記電池を設置するための設置部をさらに備えていてもよい。前記容器は、前記設置部から見て前記対向部と反対側に配置されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、加圧部が加圧を解除する方向に移動するのに伴い、設置部に設置された電池を容器側へより確実に移動させることができる。
【0020】
本発明の他局面に係る電池試験方法は、加圧部により電池を加圧して圧壊試験又は釘刺し試験を行うための電池試験方法である。上記電池試験方法では、前記加圧部を前記加圧が解除される方向に移動させる駆動力を用いて、
前記加圧部と前記電池とを互いに接続する部材により、前記電池を短絡又は消火するための処理液が貯留された容器に向かって前記電池を移動させる。
【0021】
上記電池試験方法では、加圧部を用いた電池の圧壊試験又は釘刺し試験において、電池の加圧を解除するときに加圧部を移動させる駆動力を用いて電池を容器に向かって移動させ、当該容器内の処理液によって電池の短絡又は消火を行うことができる。このため、試験中又は試験後の電気的に不安定な電池を処理液の中に入れる作業を人手で行う必要がなく、より安全に電池の短絡又は消火処理を行うことができる。また、人手を介さずに電池を処理液の中に入れることができるため、電池が発火した場合でも当該電池が燃え尽きるまで待つ必要がなく、迅速に安全処理を行うことができる。また上記電池試験方法では、従来のように、電池を容器に向かって押し出す大型且つ高価な駆動機構が加圧部を駆動させる機構と別に設けられた試験装置を用いる必要がなく、装置コスト及び設置スペースの増大を抑制することができる。従って、上記電池試験方法によれば、装置コスト及び設置スペースの増大を抑制すると共に、試験後の電池を迅速に安全処理することができる。
また加圧部と電池とを直接接続する部材を用いることにより、当該加圧部を移動させる駆動力を用いて電池を容器に向かってより確実に移動させることができる。
【0022】
本発明の他局面に係る電池試験方法
は、加圧部により電池を加圧して圧壊試験又は釘刺し試験を行うための電池試験方法であって、前記加圧部を前記加圧が解除される方向に移動させる駆動力を用いて、前記加圧部と前記電池
に接触させる治具部材とを互いに接続す
る部材によ
って前記治具部材を前記加圧が解除される方向に移動させることにより
、前記電池を
短絡又は消火するための消火液が貯留された容器に向かって
前記電池を移動させ
る。
【0024】
上記電池試験方法において、前記電池における前記加圧部により加圧される部位と反対側の部位に対向するように配置される
前記治具部材を用い、前記駆動力によって前記治具部材を前記加圧が解除される方向に移動させると共に、前記治具部材により前記電池を押して前記容器に向かって移動させてもよい。
【0025】
この方法によれば、電池自体の構造や試験時における電池の変形などに起因して電池と加圧部とを直接接続することができない場合でも、治具部材によって押すことにより電池を容器に向かって移動させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、装置コスト及び設置スペースの増大を抑制すると共に、試験後の電池を迅速に安全処理することが可能な電池試験装置及び電池試験方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0029】
(実施形態1)
[電池試験装置]
まず、本発明の実施形態1に係る電池試験装置1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、電池試験装置1の全体構成を模式的に示している。
図1中、横方向が水平方向であり、縦方向が重力方向(鉛直方向)である。
【0030】
電池試験装置1は、例えばリチウムイオン電池などの車載用の二次電池である電池10の圧壊試験を行うための装置である。圧壊試験は、電池10の安全性試験の一種であり、電池10に所定の加圧力を付与することにより疑似的に内部短絡を発生させ、その時の電圧及び温度変化を測定し、また電池10が発火するか否かを外部観察によって確認することにより、電池10の安全性を確認する試験である。
【0031】
図1に示すように、電池試験装置1は、電池10を設置するための設置部3と、電池10を加圧する加圧部6と、加圧部6との間に電池10が位置するように当該加圧部6に対向する対向部4と、加圧部6を水平方向に移動させる駆動力を発生させる駆動部7と、駆動部7を支持する支持部5と、電池10を電気的に短絡させ又は発火した電池10を消火するための処理液81が貯留される容器8と、を有する。これらの構成部材は、空調部を備えた恒温槽や恒温恒湿槽などの環境試験装置内に配置されていてもよい。また図示は省略するが、電池試験装置1は、駆動部7を動作させる制御部、試験中の電池10の温度変化を測定するセンサなどである温度測定部、及び試験中の電池10の電圧変化を測定する電圧測定部などをさらに有する。
【0032】
設置部3は、側面視で四角形状のブロック体であり、電池10が設置される平坦な設置面31を有する。対向部4は、側面視で縦方向に長い長方形状の板体であり、圧壊試験において電池10の第2側部10Bを加圧するための平坦な加圧面4Aを有する。対向部4は、圧壊試験中に移動しないように土台4Bに固定されており、設置部3における一方の側面32に接するように又は設置部3と一体となるように配置されている。
【0033】
加圧部6は、側面視で四角形状の板体(加圧板)であり、電池10の第1側部10Aを加圧するための平坦な加圧面61を有する。
図1に示すように、第1側部10Aは、電池10において加圧面61に対して水平方向に対向する部位である。加圧部6において加圧面61と反対側の部位である非加圧面64には駆動部7が接続されており、加圧部6は駆動部7を駆動することによって水平方向に移動可能となっている。これにより、圧壊試験中において、加圧部6を電池10に近づくように移動させることにより当該電池10に加圧力を付与し、加圧部6を電池10から離れるように移動させることにより当該加圧力を解除することができる。このように、電池試験装置1は、電池10を水平方向に加圧して圧壊試験を行う水平押し型の圧壊試験装置となっている。
【0034】
駆動部7は、加圧部6を水平方向に移動させるための駆動力を発生させるためのものである。駆動部7は、シリンダ72と、シリンダ72に対して水平方向に進退移動可能に設けられたロッド71と、を有する。
図1に示すように、ロッド71は、その先端部が加圧部6における高さ方向の略中央の部位に接続され、支持部5に形成された挿入孔5Bを貫通し、後端部(先端部と反対側の部位)が支持部5の外面5Cよりも外側に突き出ている。そして、当該後端部にシリンダ72が接続されている。シリンダ72は、油圧ポンプ、空気圧ポンプ又は電動モータなどの不図示の駆動源を有している。この駆動源を駆動することによってロッド71を水平方向に進退移動させ、電池10を加圧する方向D1(
図1中左方向)及び電池10の加圧を解除する方向D2(
図1中右方向)に加圧部6を水平移動させることができる。
【0035】
容器8は、上方に開口部82が設けられた箱体である。容器8は、設置部3よりも高さが低く、設置部3に対して対向部4と反対側に配置されている。具体的に、容器8は、設置部3における他方の側面33に接するように配置されている。このため、
図1に示すように、開口部82は設置面31よりも下方に位置し、開口部82と設置面31との間に段差が形成されている。これにより、設置面31上に配置された電池10を方向D2に移動させることで、容器8内に落下させることができる。
【0036】
容器8は、所定量の処理液81を貯留可能な深さを有する。処理液81は、試験中又は試験後の電池10を電気的に短絡させ又は発火した電池10を消火するための消火液であり、例えば塩化ナトリウム水溶液(塩水)を用いることができる。しかし、処理液81はこれに限定されず、電池10の短絡及び消火処理を行うことができる液体であればよい。
【0037】
電池試験装置1は、加圧部6が駆動部7によって加圧を解除する方向D2に移動することにより、電池10を容器8に向かって移動させる電池移動手段50をさらに有する。具体的に、電池移動手段50は、加圧部6の加圧面61と電池10とを互いに接続するワイヤーなどの接続部材により構成されている。当該電池移動手段(接続部材)50を設けることによって、加圧部6が方向D2に移動するのに伴い電池10を同じ方向D2に引っ張ることができ、当該電池10を設置面31上において引きずりながら容器8に向かって移動させることができる。これにより、
図4に示すように、電池10を容器8内に落下させ、処理液81中に浸漬することによって電池10の短絡及び消火処理を行うことができる。
【0038】
このように、電池試験装置1では、電池10の加圧を解除する際に加圧部6を方向D2に移動させる駆動力を利用して、電池10を容器8に向かって移動させることができる。つまり、加圧部6を移動させるための駆動機構と電池10を容器8に向かって移動させるための駆動機構とを併用することができる。このため、加圧部6を水平移動させるための駆動機構(駆動部7)とは別に電池10を容器8に向かって押し出すための駆動機構を別途設ける必要がない。これにより、試験中又は試験後における電気的に不安定な電池10を、人手を介することなく処理液81の中に入れることができ、電池10の短絡及び消火処理をより安全に行うことができる。
【0039】
ところで、圧壊試験においては、電池10を加圧して内部短絡させることによって当該電池10が異常発熱し、また発火する場合がある。これに対して、接続部材50は、電池10の発熱に耐える耐熱性を有すると共に、電池10の発火に耐える耐火性を有する。具体的に、接続部材50は、ステンレスなどの材質からなるワイヤーによって構成されている。このため、試験中に電池10が発火した場合でも接続部材50が燃え尽きてしまうことがなく、また電池10が異常発熱して温度が大幅に上昇した場合でも溶けずに存在することができる。但し、接続部材50は、ステンレスからなるものに限定されず、他の材質からなるものでもよい。また接続部材50は、ワイヤーによって構成される場合に限定されず、例えばチェーン等の他の部材によって構成されていてもよい。
【0040】
また、接続部材50により電池10を容器8に向かって引っ張るとき、接続部材50には電池10の重量に応じた荷重が加わる。これに対して、接続部材50は、電池10を容器8に向かって移動させるときに加わる荷重により破断しない程度の耐久性を有する。
【0041】
図2は、電池試験装置1を上方から見たときの平面図である。
図2に示すように、加圧面61には、電池10における被加圧部である第1側部10Aに対向する第1面部61Aと、第1面部61Aの両側に位置する一対の第2面部61Bと、が設けられている。また接続部材50は、第1端部51と、第1端部51と反対側の端部である第2端部52と、を有する。そして、接続部材50は、第1端部51が第2面部61Bに接続されると共に(接続部P1)、第2端部52が電池10の第3側部10Cに接続されている(接続部P2)。第1及び第2端部51,52は、例えばボルト、接着剤又はシール部材など、耐熱性及び耐火性を有する任意の固定手段によってそれぞれ固定されている。また第3側部10Cは、第1側部10Aに垂直な部位であり、加圧部6により加圧されない部位である。このため、
図2に示すように、接続部材50は、第1側部10Aと第1面部61Aとの間の空間Sを通らないように加圧部6と電池10とを接続することができる。これにより、圧壊試験時に加圧部6を電池10に近づけたときに、加圧部6と電池10との間に接続部材50が挟まるのを防止することができる。
【0042】
なお、接続部材50の第1及び第2端部51,52を接続する箇所は、
図2に示した箇所に限定されない。例えば、第1端部51は、加圧部6の下面62(
図1)に接続されてもよいし、第2端部52は、電池10の第2側部10B(第1側部10Aと反対側の部位)に接続されてもよいし、電池10の第4側部10Dに接続されてもよいし、電池10の上面に接続されてもよい。また、第2端部52をボルト、接着剤又はシール部材などによって電池10に固定する場合に限定されず、接続部材50を電池10の外周に巻き付けてもよい。
【0043】
また、1本の接続部材50が設けられる場合に限定されず、
図5に示すように複数本(例えば2本)の接続部材50A,50Bが設けられ、第1接続部材50Aにより加圧部6における一方の第2面部61Bと電池10の第3側部10Cとを接続し、第2接続部材50Bにより加圧部6における他方の第2面部61Bと電池10の第4側部10D(第3側部10Cと反対側の部位)とを接続してもよい。このように、2本の接続部材50A,50Bを電池10の両側部10C,10Dにそれぞれ接続し、これを用いて電池10を容器8に向かって引っ張ることにより、1本の接続部材50を用いる場合に比べて電池10をより安定して引っ張ることができる。
【0044】
図6は、電池10と加圧部6との接続部分を拡大して示している。
図6に示すように、接続部材50は、接続部P1と接続部P2との間の最短距離L1に相当する長さを有していてもよいが、当該最短距離L1以上の全長Lを有していてもよい。つまり、接続部材50は、全長Lと最短距離L1との差長に相当する余分長L−L1を有し、
図6に示すようにスタンバイ状態において弛んだ状態となっていてもよい。
【0045】
しかし、当該余分長L−L1が長すぎると、加圧部6をスタンバイ位置(
図1)から退避位置(
図4)まで移動させても、電池10を容器8に落下させることができなくなる。具体的には、
図1に示すように、スタンバイ状態における加圧部6の非加圧面64と支持部5の内面5Aとの間の距離L2は装置構造上決められており、加圧部6が退避移動できる距離は当該距離L2に相当するため、この間に電池10を容器8内へ落下可能な位置まで移動させる必要がある。このような観点で余分長L−L1の上限値を決めておくことで、加圧部6が距離L2だけ移動する間に、電池10を容器8内へより確実に落下させることができる。
【0046】
[電池試験方法]
次に、上記電池試験装置1を用いて実施される本実施形態に係る電池試験方法について説明する。上記電池試験方法では、加圧部6により電池10を水平方向に加圧することにより圧壊試験が行われる。
【0047】
図1に示すように、まず、スタンバイ状態の電池試験装置1において、評価対象である電池10が設置部3の設置面31上に配置される。このとき、電池10は、第2側部10Bが加圧面4Aに接するように、
図1中左寄りの位置に配置される。そして、接続部材50により、加圧部6(加圧面61)と電池10(第3側部10C)とが接続される。また、試験条件として、加圧部6を水平方向に移動させて電池10を加圧する速度である圧壊速度(mm/s)、加圧部6から電池10に対して付与する加圧力(kN)、加圧部6を水平方向に移動させる距離であるストローク(mm)などが、制御部においてユーザにより入力される。
【0048】
次に、ユーザにより開始スイッチが押下されると、駆動部7によって加圧部6が方向D1への移動を開始し、加圧面61が電池10の第1側部10Aに当接する。これにより、電池10は、第1及び第2側部10A,10Bが加圧部6と対向部4とにより挟まれた状態となる。この状態において、駆動部7によって加圧部6が設定された圧壊速度(mm/s)で方向D1にさらに移動することにより、
図3に示すように電池10は加圧面61,4Aにより水平方向に押しつぶされる。この間、電池10の温度変化や電圧変化が経時的に測定される。
【0049】
そして、加圧部6が設定されたストローク(mm)だけ移動した後、駆動部7によって加圧部6が方向D2に移動することにより、電池10の加圧が解除される。そして、
図1に示すように加圧部6が当初のスタンバイ位置に戻り、この状態で圧壊後の電池10に対する外部観察が行われる。
【0050】
その後、駆動部7によって加圧部6が方向D2にさらに移動する。これにより、加圧部6に対して接続部材50を介して接続された電池10は、設置面31上を引きずられながら同じ方向D2に移動する。そして、
図4に示すように加圧部6を退避位置(非加圧面64が内面5Aに接触する位置)まで移動させることにより、電池10を容器8内に落下させることができる。
【0051】
このように、本実施形態に係る電池試験方法では、加圧部6を電池10の加圧が解除される方向D2に移動させる駆動力を用いて、電池10を容器8に向かって引っ張って移動させることができる。これにより、試験後の電気的に不安定な電池10を人手を介することなく処理液81の中に入れることができ、処理液81によって電池10を電気的に短絡させ、また発火した場合には電池10を消火することができる。なお、電池10の加圧中に発火が起こり、緊急に消火の必要が生じた場合でも、同様に加圧部6を方向D2に移動させることにより電池10を容器8に向かって移動させ、処理液81によって電池10を緊急消火することもできる。
【0052】
[作用効果]
次に、上記本実施形態に係る電池試験装置1及び電池試験方法の特徴及びその作用効果について説明する。
【0053】
上記電池試験装置1は、電池10の圧壊試験を行うための装置である。上記電池試験装置1は、対向部4との間に電池10が位置するように配置される加圧部6と、加圧部6を、電池10を加圧する方向D1又は当該加圧を解除する方向D2に移動させる駆動部7と、電池10を短絡又は消火するための処理液81が貯留される容器8と、加圧部6が駆動部7によって加圧を解除する方向D2に移動することにより、電池10を容器8に向かって移動させる電池移動手段50と、を備えている。
【0054】
上記電池試験方法は、加圧部6により電池10を加圧して圧壊試験を行うための試験方法である。上記電池試験方法では、加圧部6を加圧が解除される方向D2に移動させる駆動力を用いて、電池10を短絡又は消火するための処理液81が貯留された容器8に向かって電池10を移動させる。
【0055】
上記特徴によれば、駆動部7によって加圧部6を移動させて電池10を加圧することにより、圧壊試験を行うことができる。そして、駆動部7によって加圧部6を移動させて電池10の加圧を解除する際に、電池移動手段50によって電池10を容器8に向かって移動させることができる。このとき、駆動部7が発生させた駆動力を利用して電池10を容器8側へ移動させることができる。これにより、電池10を容器8内に収容し、処理液81によって電池10の短絡又は消火を行うことができる。このため、試験中又は試験後の電気的に不安定な電池10を処理液81の中に入れる作業を人手で行う必要がなく、より安全に電池10の短絡又は消火処理を行うことができる。また、人手を介さずに電池10を処理液81の中に入れることができるため、電池10が発火した場合でも当該電池10が燃え尽きるまで待つ必要がなく、迅速に安全処理を行うことができる。
【0056】
また上記特徴によれば、電池10の加圧を解除する際に加圧部6を移動させるための駆動力を利用して電池10を容器8に向かって移動させることができる。このため、電池10を容器8に向かって押し出すための大型且つ高価な駆動機構を、加圧部6を駆動させる機構とは別に設ける必要がなく、装置コスト及び設置スペースの増大を抑制することができる。従って、上記特徴によれば、装置コスト及び設置スペースの増大を抑制すると共に、試験後の電池10を迅速に安全処理することができる。
【0057】
上記電池試験装置1において、電池移動手段50は、加圧部6と電池10とを互いに接続する接続部材50により構成されている。また上記電池試験方法では、接続部材50により電池10を容器8に向かって移動させる。これにより、加圧部6と電池10とを接続部材50によって直接接続することで、加圧部6を移動させる駆動力を利用して電池10を容器8に向かってより確実に移動させることができる。
【0058】
上記電池試験装置1において、接続部材50は、圧壊試験における電池10の発熱に耐える耐熱性を有している。これにより、試験中に電池10の発熱量が多くなった場合でも、接続部材50が溶けて消失することを防止できる。
【0059】
上記電池試験装置1において、接続部材50は、圧壊試験における電池10の発火に耐える耐火性を有している。これにより、試験中に電池10が発火した場合でも、接続部材50が燃え尽きてしまうことを防止できる。
【0060】
上記電池試験装置1において、接続部材50は、電池10を容器8に向かって移動させるときに加わる荷重により破断しない耐久性を有している。これにより、接続部材50によって電池10を移動させる際に接続部材50が破断するのを防止することができ、電池10を容器8に向かってより確実に移動させることができる。
【0061】
上記電池試験装置1は、電池10を設置するための設置部3を備えている。容器8は、設置部3に対して対向部4と反対側に配置されている。これにより、加圧部6が加圧を解除する方向D2に移動するのに伴い、設置部3に設置された電池10を容器8側へより確実に移動させることができる。
【0062】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る電池試験装置1A及びこれを用いた電池試験方法について、
図7を参照して説明する。実施形態2は、基本的に上記実施形態1と同様であるが、電池移動手段50が治具部材53と接続部材54とにより構成されている点で上記実施形態1と異なっている。以下、上記実施形態1と異なる電池移動手段50の構成についてのみ詳細に説明する。
【0063】
図7に示すように、電池移動手段50は、側面視L字状の形状を有する治具部材53と、当該治具部材53と加圧部6(加圧面61)とを互いに接続する接続部材54と、を有する。実施形態2では、接続部材54の一方端が加圧面61に接続されている一方で、他方端が電池10に直接接続されていない。
【0064】
治具部材53は、設置面31上において
図7中左寄りに配置されている。治具部材53は、電池10(第2側部10B)と対向部4との間に介在し、縦方向に延びる形状を有する第1治具部53Aと、電池10の下面と設置面31との間に介在し、水平方向に延びる形状を有する第2治具部53Bと、を有する。第1治具部53Aは、電池10の第2側部10Bに対向し、当該第2側部10Bを水平方向(方向D2)に押圧する押圧面53AAを有する。第2治具部53Bは、第1治具部53Aの下方端に接続され、第1治具部53Aと一体に形成されている。
【0065】
接続部材54は、上記実施形態1の接続部材50と同様の材質及び直径を有するワイヤーからなり、電池10の発熱及び発火に耐える耐熱性及び耐火性、並びに電池10を引っ張る際に破断しない程度の耐久性を有する。接続部材54は、一方端が加圧面61に接続され、他方端が第1治具部53Aの上部に接続されている。また
図7に示すように、接続部材54は、電池10の上方を通るように設けられている。なお、接続部材54の配置方法はこれに限定されず、第1治具部53Aではなく第2治具部53Bに接続されてもよい。また複数の接続部材54を設け、第1治具部53A及び第2治具部53Bのそれぞれに対して接続部材54が接続されてもよい。
【0066】
上記構成を有する電池試験装置1Aにおいて、駆動部7によって加圧部6を方向D2に移動させると、治具部材53は設置面31上において引きずられながら同じ方向D2に移動する。このとき、電池10は、押圧面53AAによって第2側部10Bが方向D2に押されることにより、容器8に向かって移動する。つまり、本実施形態において、電池移動手段50は、加圧部6を方向D2に移動させる駆動力により治具部材53を同じ方向D2に移動させ、当該治具部材53により電池10を方向D2に押すように構成されている。
【0067】
次に、上記電池試験装置1Aを用いた電池試験方法について説明する。まず、電池10が治具部材53上に配置される。このとき、電池10は、第2側部10Bが第1治具部53Aに接触し、下面が第2治具部53Bに接触した状態となる。そして、ユーザにより各試験条件が入力された後、上記実施形態1と同様に駆動部7によって加圧部6を方向D1に移動させることにより電池10を加圧により押しつぶし、その後、加圧部6を方向D2に移動させることによりスタンバイ状態に戻る。
【0068】
その後、駆動部7によって加圧部6が方向D2にさらに移動する。これにより、治具部材53は、設置面31上を引きずられながら同じ方向D2に移動する。このとき、電池10は、押圧面53AAによって方向D2に押されることにより、容器8に向かって移動する。そして、加圧部6を退避位置まで移動させることにより、電池10を容器8内に落下させ、処理液81によって電池10の短絡及び消火処理を行うことができる。
【0069】
このように、実施形態2では、加圧部6を方向D2に移動させる駆動力によって治具部材53を同じ方向D2に移動させると共に、治具部材53により電池10を方向D2に押して容器8に向かって移動させる。これにより、電池10が接続部材54を固定可能な構造でない場合や圧壊試験中の加圧による電池10の変形などに起因して、電池10と加圧部6とを接続部材54により直接接続することができない場合でも、治具部材53によって押すことにより電池10を容器8に向かって移動させることができる。
【0070】
また
図8に示すように、治具部材53は、電池10の下面と設置面31との間に介在せず、電池10の第2側部10Bと対向部4との間にのみ介在していてもよい。つまり、治具部材53が第1治具部53A(
図7)のみによって構成されてもよい。これにより、治具部材53をより単純な形状で且つ小さく形成することができる。
【0071】
また逆に、治具部材53は、第2治具部53B(
図7)のみによって構成され、電池10の下面と設置面31との間にのみ介在していてもよい。この場合、治具部材53を方向D2に移動させるときに電池10が治具部材53上から滑り落ちないように、治具部材53と電池10との間の摩擦係数を一定以上にすることが好ましい。
【0072】
なお、圧壊試験は、様々な形状の圧壊治具を加圧部6に固定して行われてもよい。この圧壊治具は試験規格により指定されるものであり、このように圧壊治具を固定して試験が行われる形態でもよい。但し、上記実施形態1,2のように、圧壊治具を固定せずに平板状の加圧部6を用いてもよい。
【0073】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る電池試験装置について、
図9を参照して説明する。実施形態3は、基本的に上記実施形態1,2と同様であるが、釘刺し試験を行う点で上記実施形態1,2と異なっている。
【0074】
図9は、電池試験装置における加圧部6の近傍部分を拡大して示している。
図9に示すように、加圧部6の加圧面61には、電池10を貫通させるための釘部63が設けられている。このため、駆動部7によって加圧部6を電池10に近づく方向に移動させることにより、釘部63を電池10に貫通させることができる。これにより、電池10に内部短絡を発生させ、その時の温度及び電圧の変化、電池10の外観状態などを確認する釘刺し試験を行うことができる。
【0075】
そして、釘刺し試験が完了した後、上記実施形態1,2と同様に、加圧部6を退避移動させる駆動力を用いて電池10を容器8に向かって移動させ、容器8内に落下させることにより、電池10の短絡及び消火処理を行うことができる。
【0076】
なお、釘部63の径や電池10の重量によっては釘部63が電池10から抜けない可能性があるため、釘部63を電池10から外すための機構を設けるようにしてもよい。
【0077】
(その他実施形態)
最後に、本発明のその他実施形態について説明する。
【0078】
上記実施形態1〜3では、駆動部7がロッド71及びシリンダ72を有する場合について説明したがこれに限定されず、加圧部6を方向D1,D2に移動させるための駆動力を発生する様々な直動機構を採用することができる。例えば、
図10に示すように、駆動部7は、ねじ軸75と、ねじ軸75に装着されたナット73と、ねじ軸75に設けられたねじ溝75Aに沿って循環する複数のボール74と、を備えたボールねじにより構成されてもよい。この構成では、ねじ軸75を軸周りに回転させることによりナット73を直進運動させることができ、フランジ面73Aによって加圧部6を押すことで水平移動させることができる。また、ナット73のフランジ面73Aに加圧部6が固定されていてもよい。
【0079】
また
図11に示すように、駆動部7は、ラック77及びピニオン76を備えた歯車(ラックアンドピニオン)により構成されてもよい。この構成では、ピニオン76の回転力をラック77の直線運動に変換することができ、この直線運動を利用して加圧部6を水平移動させることができる。またその他にも、リニアガイドウェイやベルト式の直動機構などが用いられてもよい。
【0080】
また上記実施形態1では電池移動手段が接続部材50により構成され、上記実施形態2では電池移動手段が治具部材53及び接続部材54により構成される場合について説明したがこれに限定されない。例えば、
図12に示すように、加圧部6の側面に取り付けられた第1磁石65と、電池10の第3側部10Cに取り付けられた第2磁石66と、により電池移動手段が構成されてもよい。第1磁石65と第2磁石66は、互いに極が異なるため、吸引力を発生させる。このため、加圧部6を方向D2に退避移動させるときに電池10を第1及び第2磁石65,66の吸引力によって容器8側へ引っ張ることができる。そして、
図13に示すように、電池10が設置面31から離れると、重力によって電池10は容器8内に落下する。これにより、上記実施形態1のように電池10と加圧部6とを物理的に接続した場合と同様に、加圧部6を移動させる駆動力を利用して電池10を容器8側へ移動させることができる。なお、上記実施形態2の治具部材53に磁石を配置し、当該治具部材53を磁石の吸引力によって引っ張る構成としてもよい。また電池10自体が磁性を有する場合、第2磁石66を省略することもできる。
【0081】
また
図14に示すように、電池移動手段は、治具部材53と、治具部材53に設けられたピン55(紙面手前側に延びるピン)と、加圧部6に設けられ、ピン55に係合するフック部67Aが先端に形成された係合部材67と、により構成されてもよい。係合部材67は、
図14に示すように、加圧部6に対する接続部である支点68を中心に回動可能とされている。この構成では、加圧部6によって電池10を加圧するときに、フック部67Aの先端に設けられた傾斜部がピン55に当接することで当該フック部67Aが上に上がり、
図15に示すように係合部材67をピン55に引っ掛けることができる。この状態で、加圧部6を方向D2に退避移動させることにより、電池10が載置された治具部材53を容器8に向かって移動させることができる。また治具部材53ではなく、電池10自体にピン55を取り付けた構成としてもよい。
【0082】
また評価対象である電池10は、リチウムイオン電池に限定されず、例えばニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池などのアルカリ二次電池であってもよい。
【0083】
また処理液81は、塩水に限定されず、塩化カリウムや塩化リチウムなどの他の電解質を溶解させた電解質水溶液であってもよい。
【0084】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。