【実施例1】
【0015】
図1および
図2は、本発明の第一実施形態で提案するパッティンググリーン装置の要部外観図である。これらの各図において、1はパッティング練習時に使用される練習装置本体であり、この練習装置本体1は、芝生面2を上部に植設したグリーン基台3と、グリーン基台3の下部に設置される油圧ジャッキ4a,4b,4cと、地面に設置される支持材7と、グリーン基台3の全周を取り囲み、芝刈り機Sの折返し走行が可能な程度の上平面形状を有する床板状のターン部8と、ターン部8の下部に設置される芝刈り機Sを地面からターン部8の上平面に導くスロープ部9と、を主な構成としている。
【0016】
グリーン基台3は、円板状部材の上平面に天然芝で形成された芝生面2を有して構成され、平面視でその中心から等しい角度毎に、等しい間隔で3台の油圧ジャッキ4a,4b,4cを配置している。ここで使用する油圧ジャッキ4a,4b,4cの数は、3乃至4が好ましい。油圧ジャッキ4a,4b,4cは同一構成で、グリーン基台3を3点(または4点)で支持するために、地面に固定設置される本体部11と、本体部11の上部から出没し、グリーン基台3の下平面に常時当接する可動部12と、により各々が構成される。ここでは、油圧ジャッキ4a,4b,4cに各々送出される作動液の圧力、すなわち油圧によって、可動部12の上下動が個々に制御される構成となっている。
【0017】
グリーン基台3は、平面視で円形以外の各種形状とすることができる。また変形例として、グリーン基台3の下部に、当該グリーン基台3を支承する支柱15を設け、この支柱15を中心として、グリーン基台3をターン部8に対してどの方向にも回動可能となるようにしてもよい。
【0018】
油圧ジャッキ4a,4b,4cと同様に地面に
設置される支
持材7は、ターン部8の上平面が芝生面2と同じ高さとなるように、ターン部8を支持するもので、支
持材7の上にターン部8を載置したデッキ構造体17は、油圧ジャッキ4a,4b,4cに臨んで水平方向に出し入れ可能な小区画部18を備えている。この小区画部18は、油圧ジャッキ4a,4b,4cの保守点検用ステージとして設けられるもので、
図1に示すように、デッキ構造体17から部分的に小区画部18を取り外すことで、作業者が油圧ジャッキ4に近付いて修理補修を行なうことが可能になる。また好ましくは、デッキ構造体17を複数の小区画部18に分解または組立できるように構成することで、練習装置本体1を例えばパッティングバーなどの任意の施設へ容易に設置できる。
【0019】
スロープ部9は、芝刈り機Sの走行を妨げない程度の傾斜面を有し、その傾斜面の一側には手摺19が立設される。スロープ部9の傾斜面上端は、ターン部8の上平面と略同じ高さに形成され、ターン部8の外周端のどの位置であっても、移動可能なスロープ部9を隣接して設置できる。
図2に示すように、スロープ部9を通してターン部8の上平面に導かれた芝刈り機Sは、このターン部8の上平面で方向を前後反転させ、走行経路Kに沿って自走しながら、図示しないカッターで芝生面2を刈り込む。これにより、天然芝による芝生面2には、走行経路Kに沿った芝目を形成できる。また、ターン部8はグリーン基台3の全周を取り囲んでいるため、ターン部8上で芝刈り機Sの走行経路Kを変えることで、芝生面2に任意の芝目を付けることができる。なお、20は芝生面2の適所に設けられた凹状のホール(カップ)である。
【0020】
図3は、パッティンググリーン装置の制御系統に関する構成を示している。同図において、本実施形態では、前述した練習装置本体1の油圧ジャッキ4a,4b,4cを個々に制御するために、油圧ジャッキ制御装置21と、荷重計22と、変位計23と、操作部24と、表示部25と、記憶部26と、電動油圧ポンプ装置27と、を各々備えている。この中で、油圧ジャッキ制御装置21や、操作部24や、表示部25や、記憶部26は、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどで構成できる。本実施形態のパッティンググリーン装置は、
図1,2に示す練習装置本体1と、
図3に示す油圧ジャッキ4a,4b,4c以外の各部を組み合わせて構成される。
【0021】
油圧ジャッキ制御装置21は、CPU(中央演算装置)や入出力インターフェースを含んで構成され、ここでは特に、油圧ジャッキ4a,4b,4cの各可動部12を個別に動作させるのに、各種の演算処理を行なうソフトウェア機能を有する。油圧ジャッキ制御装置21の入力インターフェースには、荷重計22と、変位計23と、操作部24が各々電気的に接続され、油圧ジャッキ制御装置21の出力インターフェースには、表示部25と、電動油圧ポンプ装置27が各々電気的に接続される。
【0022】
荷重計22は、油圧ジャッキ4a,4b,4cの可動部12に加わる荷重を検知して、その結果を荷重検知信号として油圧ジャッキ制御装置21に送出するものである。また変位計23は、本体部11に対して上下動する可動部12の変位を検知して、その結果を変位検知信号として油圧ジャッキ制御装置21に送出するものである。これらの荷重計22や変位計23は、油圧ジャッキ4a,4b,4c毎に各々設けられる。
【0023】
操作部24は、例えばキーボードやマウスなどで構成され、表示部25は、例えばLCDディスプレイなどで構成される。記憶部26には、例えば世界各地の著名なゴルフコースの各グリーンに合せて、幾つもの様々な芝生面2の傾斜データが予め記憶保持される。ここでいう傾斜データとは、芝生面2の傾斜の度合い、とりわけホール周辺における傾斜角度と傾斜方向を数値化したものを含んでおり、好ましくは同じく記憶部26に記憶保持されるゴルフ場名やホール番号などのコース情報と関連付けられる。記憶部26内の傾斜データやコース情報は、油圧ジャッキ制御装置21からの命令で読み出しおよび書き込みが可能であり、必要に応じて何時でも傾斜データやコース情報の追加や、削除や、修正を行なうことができる。また傾斜データとして、グリーン上の芝生面2の傾斜角度と傾斜方向から算出された各油圧ジャッキ4a,4b,4cにおける可動部12の突出高さを、予め記憶部26に記憶保持してもよい。
【0024】
電動油圧ポンプ装置27は、油圧ジャッキ制御装置21からの駆動制御信号を受けて動作する電動の油圧ポンプや制御電磁弁を組み合わせて構成され、電動油圧ポンプ装置27と各油圧ジャッキ4a,4b,4cとの間には、互いに作動液の流通を可能にする油圧配管が接続される。本実施形態の油圧ジャッキ制御装置21は、操作部24の手動操作により、記憶部26に記憶保持される複数の傾斜データの中から、特定の一つの傾斜データを選択するための操作信号が送出されると、その特定の傾斜データが得られるような各油圧ジャッキ4a,4b,4cの可動部12の突出高さの目標値を算出する。そして、荷重計22からの荷重検知信号や、変位計23からの変位検知信号を取り込みながら、実際の各油圧ジャッキ4a,4b,4cにおける可動部12の突出高さが、算出した目標値に一致するように、電動油圧ポンプ装置27へ駆動制御信号を送出して、各油圧ジャッキ4a,4b,4cを制御する構成となっている。
【0025】
次に、上記構成のパッティンググリーン装置について、その作用を説明する。練習装置本体1の設置に際しては、先ず設置場所の地面に油圧ジャッキ4a,4b,4cを配置し、各可動部12の上に芝生面2を有するグリーン基台3を載せる。次に、これらのグリーン基台3や油圧ジャッキ4a,4b,4cを取り囲むようにして、細分化されたターン部8と支
持材7からなる小区画部18を配置し、デッキ構造体17を完成させる。そして最後に、デッキ構造体17の任意の側部にスロープ部9を取り付ける。これにより、様々な施設に練習装置本体1を簡単に設置できる。なお、練習装置本体1の分解作業は、上述した設置時と逆の手順で行なえばよい。また、練習装置本体1の設置中に、荷重計22や変位計23を装備した油圧ジャッキ4a,4b,4cと油圧ジャッキ制御装置21との間が、電線および油圧配管により相互に接続される。
【0026】
そして、実際の使用モードにおいて、油圧ジャッキ制御装置21は記憶部26に記憶保持される全てのコース情報と、これに関連付けた傾斜データを、一度に若しくは順に表示部25の表示領域に表示させる。ここで、使用者が操作部24を操作して、表示部25に表示した特定のコース情報ひいては傾斜データを選択すると、油圧ジャッキ制御装置21は、その特定の傾斜データに含まれる芝生面2の傾斜角度と傾斜方向を得るのに、各油圧ジャッキ4a,4b,4cの可動部12の突出高さをどの程度にすればよいのかを目標値として算出する。目標値が算出されると、油圧ジャッキ制御装置21は、荷重計22からの荷重検知信号や、変位計23からの変位検知信号を一定時間毎に取り込み、その結果から実際の各油圧ジャッキ4a,4b,4cにおける可動部12の突出高さが目標値と一致するように、電動油圧ポンプ装置27へ駆動制御信号を送出する。
【0027】
これにより例えば
図1に示すように、ほぼ水平なターン部8の上面に対して、グリーン基台3を含む芝生面2を任意の方向と角度に傾斜させることができる。また、操作部24により別な特定のコース情報と、それに関連した傾斜データを選択した場合は、その特定した傾斜データに見合う別な方向と角度に、芝生面2を傾斜させることができる。
【0028】
また、自然芝による芝生面2は、芝刈り機Sにより何時でも刈り込んで所望の芝目を形成することができる。芝刈り機Sを使用する場合は、予め操作部24からの操作により、上述した使用モードとは別な芝刈りモードを選択する。すると油圧ジャッキ制御装置21は、ターン部8の上面とグリーン基台3が同一水平面となるように、電動油圧ポンプ装置27へ駆動制御信号を送出して、各油圧ジャッキ4a,4b,4cの可動部12の突出高さを調節する。この後に、スロープ部9からターン部8の上面に芝刈り機Sを移動させ、ターン部8の上平面で芝刈り機Sの方向を前後反転させながら、グリーン基台3上に芝刈り機Sを走行させて芝生面2を刈り込むことができる。本実施形態の練習装置本体1は、グリーン基台3の全周を取り囲むようにして、芝刈り機Sの折返し走行を可能にする大きさのターン部8が設けられているので、ターン部8の上面に導かれた芝刈り機Sを、どこからでも芝生面2に向けて走行させることができる。
【0029】
こうして本実施形態のパッティンググリーン装置では、操作部24による簡単な操作だけで、芝生面2を所望の傾斜角度と傾斜方向に調節できる。また、芝生面2は芝刈り機Sにより何時でも自由に芝目を形成できるので、ゴルフのパッティング技術を効果的に向上できるだけでなく、世界各地の著名なゴルフコースのグリーンをどこでも簡単に再現できる。
【0030】
以上のように、本実施形態で提案するパッティンググリーン装置は、芝生面2を上側に露出した状態で有するグリーン基台3と、グリーン基台3の下部に複数設置され、その設置点でグリーン基台3の高さを各々変化させて、芝生面2全体の傾斜を調節可能にする可動部12を備えた傾斜調節具としての油圧ジャッキ4a,4b,4cと、芝生面2の傾斜の度合いとして、例えば傾斜角度と傾斜方向とを示す種々な複数の傾斜データを記憶する記憶部26と、記憶部26の中から特定の傾斜データを選択するのに操作される操作部24と、操作部24からの操作信号を受けて、特定の傾斜データに対応する傾斜が芝生面2で得られるように、油圧ジャッキ4a,4b,4cの可動部12を個々に制御する制御部としての油圧ジャッキ制御装置21とを備えている。
【0031】
このように本実施形態では、油圧ジャッキ制御装置21に接続する記憶部26に、例えば世界中のゴルフコースのグリーンに対応して、予め芝生面2の傾斜の度合いを示す種々の傾斜データが記憶保持されている。そこで、操作部24を利用して、記憶部26に記憶される全ての傾斜データの中から、特定の傾斜データを選択する操作を行なうだけで、後はグリーン基台3の下部に設置した複数の油圧ジャッキ4a,4b,4cについて、その可動部12の突出高さを油圧ジャッキ制御装置21が個々に制御することで、特定の傾斜データに見合う傾斜に、芝生面2を含むグリーン基台3を自動的に調節することが可能になる。したがって、望ましい傾斜の芝生面2を簡単に得ることが可能なパッティンググリーン装置を提供できる。
【0032】
また本実施形態では、芝生面2が芝刈り機Sでの刈り込みを可能にする天然芝で形成され、グリーン基台3の周囲に芝刈り機Sの折返し走行を可能にする床板状のターン部8を配設している。
【0033】
これにより本実施形態では、ターン部8で芝刈り機Sを折返しターンさせながら、グリーン基台3上に植設された天然芝を刈り込むことで、芝生面2に所望の芝目を付けることが可能になる。したがって、芝生面2の傾斜のみならず芝目を任意に調節したパッティンググリーン装置を提供できる。
【0034】
なお、本実施形態におけるパッティンググリーン装置は、先に本願出願人が提案したゴルフ練習具と組み合わせることで、より効果的なパッティング技術の練習が可能となる。ゴルフ練習具の詳細は、出願済の特願2016−10109を参照されたい。
【実施例2】
【0035】
図4〜
図6は、本発明の第二実施形態で提案するパッティンググリーン装置の要部構成図である。第一実施形態と相違する主な点は、グリーン基台3が平面視で円形ではなく矩形(正方形)であること、それに伴いグリーン基台3の四隅下部に4つの油圧ジャッキ4a,4b,4c,4dが設置されると共に、グリーン基台3の中心下部に支柱15が設置されることである。
【0036】
本実施形態では、油圧ジャッキ4a,4b,4c,4dや、支持材7や、支柱15が、地面に打設された基礎31上に設置される。特に油圧ジャッキ4a,4b,4c,4dは、その点検を容易にするために、基礎31に形成された4つの凹状の点検用ビット32上にそれぞれ固設され、各々の点検用ビット32に臨んで、水平方向に出し入れ移動可能な4つの小区画部18が、デッキ構造体17の一部として配設される。なお、33は点検用ビット32と地面とを連通する排水ビットであり、この排水ビット33を通して点検用ビット32に溜まる水を外部に排出できる。
【0037】
支柱15の上部に形成された球面状の削り出し部35は、グリーン基台3の底面中央に設けられた受け部材36を支承しており、ボール部としての削り出し部35と、ボール受け部としての受け部材36とにより、ボールジョイント構造に相当するフリーヒンジ37を構成している。このフリーヒンジ37により、グリーン基台3がどの方向に傾いても、グリーン基台3の中央部を支柱15で支持することが可能になる(
図5および
図6を参照)。
【0038】
グリーン基台3の外周部と、これを取り囲むターン部8の内周部との間には、ゴルフボールや異物などの落下を防止するために、全周に渡って帯状のシート材41が懸架される。このシート材41は、例えばエキスパンションゴムなどの柔軟性に富む材料からなり、油圧ジャッキ4a,4b,4c,4dによりグリーン基台3がどのように傾いた場合でも、グリーン基台3とターン部8との間の隙間を塞ぐように設けられる。
【0039】
その他の構成は、
図3に示す制御系統を含めて、第一実施形態で示したものと共通する。したがって、パッティンググリーン装置の作用も、油圧ジャッキ4a,4b,4c,4dが4つであることを除いて、第一実施形態で説明した通りのものとなる。
【0040】
そしてこの実施形態でも、芝生面2を上側に露出した状態で有するグリーン基台3と、グリーン基台3の下部に複数設置され、その設置点でグリーン基台3の高さを各々変化させて、芝生面2全体の傾斜を調節可能にする可動部12を備えた油圧ジャッキ4a,4b,4c,4dと、芝生面2の傾斜の度合いとして、例えば傾斜角度と傾斜方向とを示す種々な複数の傾斜データを記憶する記憶部26と、記憶部26の中から特定の傾斜データを選択するのに操作される操作部24と、操作部24からの操作信号を受けて、特定の傾斜データに対応する傾斜が芝生面2で得られるように、油圧ジャッキ4a,4b,4c,4dの可動部12を個々に制御する制御部としての油圧ジャッキ制御装置21とを備えている。
【0041】
そのため、操作部24を利用して、記憶部26に記憶される全ての傾斜データの中から、特定の傾斜データを選択する操作を行なうだけで、後はグリーン基台3の下部に設置した複数の油圧ジャッキ4a,4b,4c,4dについて、その可動部12の突出高さを油圧ジャッキ制御装置21が個々に制御することで、特定の傾斜データに見合う傾斜に、芝生面2を含むグリーン基台3を自動的に調節することが可能になる。したがって、望ましい傾斜の芝生面2を簡単に得ることが可能なパッティンググリーン装置を提供できる。
【0042】
また本実施形態では、芝生面2が芝刈り機Sでの刈り込みを可能にする天然芝で形成され、グリーン基台3の周囲に芝刈り機Sの折返し走行を可能にする床板状のターン部8を配設している。
【0043】
これにより本実施形態では、ターン部8で芝刈り機Sを折返しターンさせながら、グリーン基台3上に植設された天然芝を刈り込むことで、芝生面2に所望の芝目を付けることが可能になる。したがって、芝生面2の傾斜のみならず芝目を任意に調節したパッティンググリーン装置を提供できる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施が可能である。例えば、本実施形態では傾斜調節具として油圧ジャッキ4a,4b,4cを用いたが、それ以外の器具を代用しても構わない。またその器具に合せて、油圧ジャッキ制御装置に代わる制御部を組み込んでもよい。