【文献】
Nucleic Acids Res., Sep.2003, Vol.31, No.17, pp.4973-4980
【文献】
Dev. Cell, Feb.2003, Vol.4, pp.205-217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
遺伝子のRNAサイレンシングを阻害するための方法に使用するための薬学的組成物の製造における、一本鎖ヌクレアーゼ耐性RNAオリゴヌクレオチドRISC不活性化因子の使用であって、遺伝子のRNAサイレンシングが阻害されるように、該方法が、一本鎖ヌクレアーゼ耐性RNAオリゴヌクレオチドRISC不活性化因子と細胞または非ヒト生物とを接触させる段階を含み、該RISC不活性化因子が、遺伝子のRNAサイレンシングを導くsiRNAまたは遺伝子のRNAサイレンシングを導く成熟miRNAによる遺伝子のRNAサイレンシングを阻害するために、該siRNAのガイド鎖配列または該成熟miRNAのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含み、該RISC不活性化因子が、RISC機能の化学量論的な不可逆的阻害因子であり、該RNAオリゴヌクレオチドRISC不活性化因子が、該RISC不活性化因子に対してヌクレアーゼ耐性を与える少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、前記使用。
RISC不活性化因子が、ロックド(locked)核酸(LNA)RNAオリゴヌクレオチドまたはホスホロチオエート修飾RNAオリゴヌクレオチドである、請求項1記載の使用。
RISC不活性化因子が、2'-OH基がH、アルコキシ、OR、ハロゲン、SH、SR、アミノおよびCN基からなる群より選択される部分によって置換され、式中、Rは低級アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである少なくとも1つの修飾リボヌクレオチドを含む、請求項1記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、RNAサイレンシングを、標的指向的で配列特異的な様式で、選択的に阻害するための方法の発見に関する。本発明はしたがって、RISC不活性化因子を特徴とする(例えば、2'-O-メチルオリゴヌクレオチド。さらに当業者は、有効なRISC不活性化因子を、例えば、ロックド核酸(LNA)、ホスホロチオエート修飾物またはその他の等価物を含むオリゴヌクレオチドを用いて合成することもできることを認識しているであろう)。RISC不活性化因子の一形態、具体的には2'-O-メチルオリゴヌクレオチドが、インビボおよびインビトロでの短鎖RNA依存的RNAサイレンシングを強力かつ不可逆的に阻害しうるものとして同定された。siRNAに対して相補的な2'-O-メチルオリゴヌクレオチドは、ショウジョウバエ胚溶解物およびHeLa細胞S100抽出物ならびに培養ヒトHeLa細胞におけるmRNA切断を阻止しうることが示された。線虫カエノラブディティス-エレガンス(Caenorhabditis elegans)において、miRNA let-7に対して相補的な2'-O-メチルオリゴヌクレオチドは、let-7機能喪失型の表現型模写を誘導した。固定化した2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを用いることにより、遺伝学的研究によってlet-7機能との関連が以前に指摘されているC.エレガンスのArgonauteタンパク質ALG-1およびALG-2が、let-7を含むタンパク質-RNA複合体の構成要素であることが示された。以上のことから、2'-O-メチルRNAオリゴヌクレオチドがインビボでの短鎖RNA機能を阻止するための効率的かつ直接的な手法であること、さらにそれらがRNAサイレンシング経路を媒介する短鎖RNA結合性タンパク質を同定するためにも有用であることが示された。
【0012】
2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを用いたこれらの実験により、siRNAによりプログラムされたRISCによる標的RNAの取得は、標的の同じ領域に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合よりもはるかに効率的であることも示された。RNAサイレンシング経路の探索における2'-O-メチルオリゴヌクレオチドの有用性を示すために、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドが細胞抽出物および培養ヒトHeLa細胞においてsiRNA依存的RISC活性を効率的に阻止することを示した。カエノラブディティス-エレガンス幼虫に注入したところ、let-7相補的な2'-O-メチルオリゴヌクレオチドはlet-7 miRNAによるlin-41翻訳の抑制を効率的に抑制することができた。さらに、拘束した2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを用いて、C.エレガンスArgonauteタンパク質ALG-1およびALG-2のlet-7との結合を示した。
【0013】
本発明の方法は、天然に存在するマイクロRNA(miRNA)およびsiRNAの詳細にわたる特性決定を可能にする。数百種ものマイクロRNA(miRNA)および内因性短鎖干渉RNA(siRNA)が植物および動物から同定されているが、少数の例外を除き、それらの生化学的な作用機序も、さらにはそれらの生物学的機能もほとんど明らかになっていない。RISCを不活性化する作用物質、特に2'-O-メチルオリゴヌクレオチドが、RNAサイレンシング(例えば、RNAi、miRNAを介した翻訳サイレンシング)を配列特異的な様式で効果的に阻害するという本発明の発見は、miRNAおよびsiRNAの両方の詳細にわたる特性決定を直接容易にする。さらに、本発明の方法は、RNAサイレンシング活性を調節しうる治療化合物を同定するための方法も可能にする。
【0014】
本発明のRISC不活性化因子は、RNAサイレンシングを、特にマイクロRNA(miRNA)を介した、および/またはsiRNAを介したRNAサイレンシングを阻害するのに十分な任意のサイズおよび/または化学組成であってよい。例示的な態様において、RISC不活性化因子は、約10〜100ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド)の、好ましくは約10〜40ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド)(例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)の、例えば、約15〜35、例えば約15〜20、20〜25、25〜30または30〜35(31、32、33、34、35)、40ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド)(例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)の、オリゴヌクレオチドである。
【0015】
RNAサイレンシング阻害因子(RISC不活性化因子)は、miRNA配列またはsiRNA配列に対して、特にsiRNAのガイド鎖またはアンチセンス鎖の配列に対して、十分に相補的であることが好ましい。
【0016】
本発明はさらに、miRNA結合因子、例えば、インビボでmiRNAと結合する作用物質または化合物を同定するための方法にも関する。特に、本発明は、miRNAを含む複合体、例えば、miRNAを含むタンパク質-RNA複合体の構成要素の単離、同定および/または特性決定のための方法を提供する。このような構成要素(例えば、miRNA結合性タンパク質)は、それ自体をRNAサイレンシング経路の調節因子(modulator)として用いることもでき、または、このような経路を調節するのに適した化合物を同定するためのさらなるアッセイ(例えば、スクリーニングアッセイ)に用いることもできる。
【0017】
1つの好ましい態様において、本発明は、特定の標的遺伝子のRNAサイレンシングを導くように通常は働くsiRNAまたはmiRNAのガイド鎖とアニールするように設計されたRISC不活性化因子を用いることにより、個々の遺伝子のRNAサイレンシングを阻害するための方法を含む。1つの態様においては、ある遺伝子のRNAサイレンシングを導くsiRNAまたはmiRNAを含む細胞を、siRNAまたはmiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子と、そのRISC不活性化因子が標的とする特異的なsiRNAまたはmiRNAのRNAサイレンシング活性の阻害を実現する目的で、接触させる。1つの関連した態様においては、RNAサイレンシングのこのような遺伝子特異的阻害を実現する目的で、生物体をRISC不活性化因子と接触させる。
【0018】
もう1つの態様においては、本発明のRISC不活性化因子(RISC阻害因子)を、siRNA分子またはmiRNA分子と結合する因子を同定するために利用する。具体的には、ある特定の遺伝子のRNAサイレンシングを導くsiRNAまたはmiRNAを含む細胞を、そのsiRNAまたはmiRNAによって通常導かれる標的遺伝子のRNAサイレンシングの阻害を誘導するために、そのsiRNAまたはmiRNAに対して十分に相補的なRISC不活性化因子と接触させる。RISC不活性化因子は、RISCおよび結合因子の存在下で、siRNAまたはmiRNAと安定的かつ特異的な様式でアニールするため、RISC不活性化因子または標的となるsiRNAもしくはmiRNAの濃縮は、RISCおよびその他の結合因子も濃縮させ、それ故にsiRNA結合因子またはmiRNA結合因子の同定を可能にする。
【0019】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子(RISC阻害因子)はヌクレアーゼ耐性である。
【0020】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子(RISC阻害因子)はリボヌクレアーゼ耐性である。
【0021】
1つの関連した態様において、本発明のRISC不活性化因子(RISC阻害因子)は2'-O-メチルオリゴヌクレオチドである。
【0022】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのロックド核酸(LNA)を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0023】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのホスホロチオエート修飾を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0024】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子(RISC阻害因子)は、H、アルコキシもしくはOR、ハロゲン、SH、SR、アミノ(NH2、NHR、NR2など)またはCN基によって置換された2'-OH基(式中、Rは低級アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである)からなる群より選択される部分によって修飾されている。
【0025】
さらなる1つの態様において、本発明の細胞または生物体は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の細胞または生物体である;さらにもう1つの態様では、キイロショウジョウバエの細胞または生物体がキイロショウジョウバエ胚であることが指定される。
【0026】
もう1つの態様において、本発明の細胞または生物体は、カエノラブディティス-エレガンスの細胞または生物体である。
【0027】
さらにもう1つの態様において、本発明の細胞または生物体は、哺乳動物の細胞または生物体である。
【0028】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は、miRNA分子と結合する、組成物内部の因子を同定するために利用される。具体的には、ある特定の遺伝子のRNAサイレンシングを導くmiRNAを含む組成物を、そのmiRNAによって通常導かれる標的遺伝子のRNAサイレンシングの阻害を誘導するために、そのmiRNAに対して十分に相補的なRISC不活性化因子と接触させる。RISC不活性化因子は、RISCおよび結合因子の存在下で、miRNAと安定的かつ特異的な様式でアニールするため、RISC不活性化因子または標的となるmiRNAの濃縮は、RISCおよびその他の結合因子も濃縮させ、それ故にmiRNA結合因子の同定を可能にする。
【0029】
1つの関連した態様においては、siRNA分子と結合する、組成物内部の因子が、siRNA結合因子を同定するために用いられる方法と同じ様式で本発明によって同定される。具体的には、ある特定の遺伝子のRNAサイレンシングを導くsiRNAを含む組成物を、そのsiRNAによって通常導かれる標的遺伝子のRNAサイレンシングを阻害する目的で、そのsiRNAに対して十分に相補的なRISC不活性化因子と接触させる。RISC不活性化因子は、RISCおよび結合因子の存在下で、siRNAと安定的かつ特異的な様式でアニールするため、RISC不活性化因子または標的となるsiRNAの濃縮は、RISCおよびその他の結合因子も濃縮させ、それ故にsiRNA結合因子の同定を可能にする。
【0030】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子(RISC阻害因子)はヌクレアーゼ耐性である。
【0031】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子(RISC阻害因子)はリボヌクレアーゼ耐性である。
【0032】
1つの関連した態様において、本発明のRISC不活性化因子(RISC阻害因子)は2'-O-メチルオリゴヌクレオチドである。
【0033】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのロックド核酸(LNA)を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0034】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのホスホロチオエート修飾を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0035】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子(RISC阻害因子)は、H、アルコキシもしくはOR、ハロゲン、SH、SR、アミノ(NH2、NHR、NR2など)またはCN基によって置換された2'-OH基(式中、Rは低級アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである)からなる群より選択される部分によって修飾されている。
【0036】
本発明の1つの態様において、組成物は細胞抽出物である。
【0037】
1つの関連した態様において、組成物はキイロショウジョウバエ細胞抽出物である;さらにもう1つの態様において、組成物はキイロショウジョウバエ胚細胞抽出物であることが指定される。
【0038】
さらなる1つの態様において、本発明の組成物はカエノラブディティス-エレガンス細胞抽出物である。
【0039】
もう1つの態様において、本発明の組成物は哺乳動物細胞抽出物である。
【0040】
本発明はまた、本発明のRISC不活性化因子と結合する因子の検出も可能にする。1つの態様においては、本発明のRISC不活性化因子と結合する因子が検出されるように、siRNAまたはmiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子を何らかの表面に対して結合させた後に、siRNAまたはmiRNAを含む組成物と接触させ、RISC不活性化因子およびsiRNAまたはmiRNAに、他の因子も結合した複合体を形成させる。
【0041】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はヌクレアーゼ耐性である。
【0042】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はリボヌクレアーゼ耐性である。
【0043】
1つの関連した態様において、本発明のRISC不活性化因子は2'-O-メチルオリゴヌクレオチドである。
【0044】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのロックド核酸(LNA)を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0045】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのホスホロチオエート修飾を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0046】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は、H、アルコキシもしくはOR、ハロゲン、SH、SR、アミノ(NH2、NHR、NR2など)またはCN基によって置換された2'-OH基(式中、Rは低級アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである)からなる群より選択される部分によって修飾されている。
【0047】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は、ビーズの表面に結合している。
【0048】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は、ストレプトアビジンをコーティングしたビーズの表面に、5'ビオチン結合を介して拘束されている。
【0049】
もう1つの態様において、本発明の表面は常磁性ビーズの表面である。
【0050】
もう1つの態様において、本発明の表面はカラムである。
【0051】
もう1つの態様において、本発明の組成物は、siRNAまたはmiRNAを含む細胞抽出物である。
【0052】
本発明はまた、組成物の活性miRNAの同定のための方法も提供する。したがって、1つの態様において、本発明は、活性miRNAが同定されるように、miRNAを含む細胞抽出物と、miRNA候補のガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子を含む配列物(series)またはアレイを接触させる段階(この際、配列物またはアレイは、miRNA候補のガイド鎖に対して十分に相補的なオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチド配列、ゲノム配列、EST配列またはmRNA配列のランダムまたはエクスタント(extant)のアレイまたは配列物に比して相対的に豊富に有する);かつ、引き続く、細胞抽出物のmiRNAとRISC不活性化因子との結合を検出する段階を含む。
【0053】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はヌクレアーゼ耐性である。
【0054】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はリボヌクレアーゼ耐性である。
【0055】
1つの関連した態様において、本発明のRISC不活性化因子は2'-O-メチルオリゴヌクレオチドである。
【0056】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのロックド核酸(LNA)を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0057】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのホスホロチオエート修飾を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0058】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は、H、アルコキシもしくはOR、ハロゲン、SH、SR、アミノ(NH2、NHR、NR2など)またはCN基によって置換された2'-OH基(式中、Rは低級アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである)からなる群より選択される部分によって修飾されている。
【0059】
1つの態様において、細胞抽出物はキイロショウジョウバエ細胞抽出物である;さらに1つの関連した態様において、細胞抽出物はキイロショウジョウバエ胚細胞抽出物であることが指定される。
【0060】
さらなる1つの態様において、本発明の細胞抽出物はカエノラブディティス-エレガンス細胞抽出物である。
【0061】
もう1つの態様において、本発明の細胞抽出物は哺乳動物細胞抽出物である。
【0062】
さらにもう1つの態様において、本発明の細胞抽出物のポリヌクレオチドは蛍光標識されている。
【0063】
1つの関連した態様において、本発明の細胞抽出物のポリヌクレオチドは放射性標識されている。
【0064】
さらなる1つの態様において、細胞抽出物のRNA(例えば、ポリリボヌクレオチドのウラシル部分)は蛍光標識されている。
【0065】
1つの関連した態様において、細胞抽出物のRNA(例えば、ポリリボヌクレオチドのウラシル部分)は放射性標識されている。
【0066】
本発明はまた、RNAサイレンシングの配列特異的阻害が起こる程度のモニタリングも可能にする。1つの態様において、本発明は、レポーターRNAを発現し、かつそのレポーターRNAに対して十分に相補的なsiRNAまたはmiRNAを含む細胞を、siRNAまたはmiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子と接触させ、続いて、レポーターRNAの切断状態を検出する手順であって、このようなレポーターRNAの切断状態がRNAサイレンシングの配列特異的な阻害のレベルを示すような手順を含む。
【0067】
1つの関連した態様において、RNAサイレンシングの配列特異的阻害が起こる程度のモニタリングは、レポーターRNAおよびそのレポーターRNAに対して十分に相補的なsiRNAまたはmiRNAを含む細胞抽出物を、siRNAまたはmiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子と接触させ、続いてレポーターRNAの切断状態を検出することによって行われる。
【0068】
もう1つの態様において、RNAサイレンシングの配列特異的阻害が起こる程度のモニタリングは、レポーターRNAおよびそのレポーターRNAに対して十分に相補的なsiRNAまたはmiRNAを発現する生物体を、siRNAまたはmiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子と接触させ、続いてレポーターRNAの切断状態を検出することによって行われる。
【0069】
さらなる1つの態様において、RNAサイレンシングの配列特異的阻害が起こる程度のモニタリングは、レポーターRNAおよびそのレポーターRNAに対して十分に相補的なsiRNAまたはmiRNAを発現する細胞を、siRNAまたはmiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子と接触させ、続いてレポーターRNAによってコードされるポリペプチドのレベルまたは活性を検出することによって行われる。
【0070】
1つの関連した態様において、RNAサイレンシングの配列特異的阻害が起こる程度のモニタリングは、レポーターRNAおよびそのレポーターRNAに対して十分に相補的なsiRNAまたはmiRNAを含む細胞抽出物を、siRNAまたはmiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子と接触させ、続いてレポーターRNAによってコードされるポリペプチドのレベルまたは活性を検出することによって行われる。
【0071】
さらにもう1つの態様において、RNAサイレンシングの配列特異的阻害が起こる程度のモニタリングは、レポーターRNAを発現し、かつそのレポーターRNAに対して十分に相補的なsiRNAまたはmiRNAを含む生物体を、siRNAまたはmiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子と接触させ、続いてレポーターRNAによってコードされるポリペプチドのレベルまたは活性を検出することによって行われる。
【0072】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はヌクレアーゼ耐性である。
【0073】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はリボヌクレアーゼ耐性である。
【0074】
1つの関連した態様において、本発明のRISC不活性化因子は2'-O-メチルオリゴヌクレオチドである。
【0075】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのロックド核酸(LNA)を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0076】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのホスホロチオエート修飾を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0077】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は、H、アルコキシもしくはOR、ハロゲン、SH、SR、アミノ(NH2、NHR、NR2など)またはCN基によって置換された2'-OH基(式中、Rは低級アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである)からなる群より選択される部分によって修飾されている。
【0078】
さらなる1つの態様において、本発明の細胞、細胞抽出物または生物体は、キイロショウジョウバエの細胞、細胞抽出物または生物体である。
【0079】
もう1つの態様において、本発明の細胞、細胞抽出物または生物体は、カエノラブディティス-エレガンスの細胞、細胞抽出物または生物体である。
【0080】
さらにもう1つの態様において、本発明の細胞、細胞抽出物または生物体は、哺乳動物の細胞、細胞抽出物または生物体である。
【0081】
さらなる1つの態様において、本発明のレポーターRNAは放射性標識されている。
【0082】
もう1つの態様において、本発明のレポーターRNAは蛍光標識されている。
【0083】
本発明はまた、RISC不活性化因子とmiRNAまたはsiRNAとの相互作用を調節しうる化合物の同定も可能にする。したがって、本発明の1つの態様においては、レポーターRNA、レポーターRNAに対して十分に相補的なmiRNAまたはsiRNA、およびmiRNAまたはsiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子を含む組成物を、化合物と接触させる。続いて、レポーターRNAの切断状態、またはレポーターRNAによってコードされるポリペプチドの発現レベルもしくは活性を検出し、RISC不活性化因子とmiRNAまたはsiRNAとの相互作用を調節する化合物が同定されるようにする。
【0084】
本発明の1つの関連した態様において、RISC不活性化因子とmiRNAまたはsiRNAとの相互作用を調節しうる化合物を同定するための手順は、レポーターRNA、レポーターRNAに対して十分に相補的なmiRINAまたはsiRNA、およびmiRNAまたはsiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子を含む細胞または細胞抽出物を、化合物と接触させることによって行われる。続いて、レポーターRNAの切断状態、またはレポーターRNAによってコードされるポリペプチドの発現レベルもしくは活性を検出し、RISC不活性化因子とmiRNAまたはsiRNAとの相互作用を調節する化合物が同定されるようにする。
【0085】
本発明のさらなる1つの態様において、RISC不活性化因子とmiRNAまたはsiRNAとの相互作用を調節しうる化合物を同定するための手順は、レポーターRNA、レポーターRNAに対して十分に相補的なmiRNAまたはsiRNA、およびmiRNAまたはsiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子を含む生物体を、化合物と接触させることによって行われる。続いて、レポーターRNAの切断状態、またはレポーターRNAによってコードされるポリペプチドの発現レベルもしくは活性を検出し、RISC不活性化因子とmiRNAまたはsiRNAとの相互作用を調節する化合物が同定されるようにする。
【0086】
1つの態様において、本発明の被験化合物は、低分子、ペプチド、ポリヌクレオチド、抗体またはその生物活性部分、ペプチド模倣物および非ペプチド性オリゴマーからなる群より選択される。
【0087】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はヌクレアーゼ耐性である。
【0088】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はリボヌクレアーゼ耐性である。
【0089】
1つの関連した態様において、本発明のRISC不活性化因子は2'-O-メチルオリゴヌクレオチドである。
【0090】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのロックド核酸(LNA)を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0091】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのホスホロチオエート修飾を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0092】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は、H、アルコキシもしくはOR、ハロゲン、SH、SR、アミノ(NH2、NHR、NR2など)またはCN基によって置換された2'-OH基(式中、Rは低級アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである)からなる群より選択される部分によって修飾されている。
【0093】
さらなる1つの態様において、本発明の細胞、細胞抽出物または生物体は、キイロショウジョウバエの細胞、細胞抽出物または生物体である。
【0094】
もう1つの態様において、本発明の細胞、細胞抽出物または生物体は、カエノラブディティス-エレガンスの細胞、細胞抽出物または生物体である。
【0095】
さらにもう1つの態様において、本発明の細胞、細胞抽出物または生物体は、哺乳動物の細胞、細胞抽出物または生物体である。
【0096】
もう1つの態様において、本発明のレポーターRNAは放射性標識されている。
【0097】
もう1つの態様において、本発明のレポーターRNAは蛍光標識されている。
【0098】
本発明はまた、(miRNA-RISC不活性化因子)複合体と結合した因子の相互作用を調節する化合物の同定も可能にする。したがって、本発明の1つの態様においては、miRNAおよびそのmiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子を含む組成物を化合物と接触させ、続いて、RISC不活性化因子またはmiRNA、および任意の結合因子を濃縮して、(miRNA-RISC不活性化因子)複合体と結合した因子の相互作用を調節する化合物の同定が可能となるようにする。
【0099】
本発明の1つの関連した態様においては、(siRNA-RISC不活性化因子)複合体と結合した因子の相互作用を調節する化合物の同定が行われる。siRNAおよびそのsiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子を含む組成物を化合物と接触させ、続いて、RISC不活性化因子またはsiRNA、および任意の結合因子を濃縮して、(siRNA-RISC不活性化因子)複合体と結合した因子の相互作用を調節する化合物の同定が可能となるようにする。
【0100】
1つの態様において、本発明の被験化合物は、低分子、ペプチド、ポリヌクレオチド、抗体またはその生物活性部分、ペプチド模倣物および非ペプチド性オリゴマーからなる群より選択される。
【0101】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はヌクレアーゼ耐性である。
【0102】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はリボヌクレアーゼ耐性である。
【0103】
1つの関連した態様において、本発明のRISC不活性化因子は2'-O-メチルオリゴヌクレオチドである。
【0104】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのロックド核酸(LNA)を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0105】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのホスホロチオエート修飾を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0106】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は、H、アルコキシもしくはOR、ハロゲン、SH、SR、アミノ(NH2、NHR、NR2など)またはCN基によって置換された2'-OH基(式中、Rは低級アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである)からなる群より選択される部分によって修飾されている。
【0107】
さらにもう1つの態様においては、(miRNA-RISC不活性化因子)複合体または(siRNA-RISC不活性化因子)複合体と結合した因子のレベルまたは同一性を、適切な対照と比較する。
【0108】
もう1つの態様においては、(miRNA-RISC不活性化因子)複合体または(siRNA-RISC不活性化因子)複合体と結合した因子のレベルまたは同一性を、化合物の非存在下において(miRNA-RISC不活性化因子)複合体または(siRNA-RISC不活性化因子)複合体と結合した因子のレベルまたは同一性と比較する。
【0109】
本発明はさらに、遺伝子に対するプログラムされたRISCのレベルの測定も可能にする。したがって、1つの態様においては、遺伝子に対するプログラムされたRISCのレベルが検出されるように、siRNAまたはmiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子を何らかの表面に結合させて、標識されたsiRNAまたはmiRNAを含む組成物と接触させる。
【0110】
さらにもう1つの態様において、本発明のsiRNAまたはmiRNAは放射性標識されている。
【0111】
さらなる1つの態様において、本発明のsiRNAまたはmiRNAは蛍光標識されている。
【0112】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はヌクレアーゼ耐性である。
【0113】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子はリボヌクレアーゼ耐性である。
【0114】
1つの関連した態様において、本発明のRISC不活性化因子は2'-O-メチルオリゴヌクレオチドである。
【0115】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのロックド核酸(LNA)を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0116】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのホスホロチオエート修飾を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0117】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は、H、アルコキシもしくはOR、ハロゲン、SH、SR、アミノ(NH2、NHR、NR2など)またはCN基によって置換された2'-OH基(式中、Rは低級アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである)からなる群より選択される部分によって修飾されている。
【0118】
もう1つの態様において、本発明の表面はビーズである。
【0119】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は、5'ビオチン結合を介してストレプトアビジンビーズに拘束されている。
【0120】
1つの態様において、本発明の表面は常磁性ビーズである。
【0121】
もう1つの態様において、本発明の表面はカラムである。
【0122】
さらなる1つの態様において、本発明の組成物は、siRNAまたはmiRNAを含む細胞抽出物である。
【0123】
1つの好ましい態様において、本発明は、RISC不活性化因子を含む組成物である。
【0124】
1つの関連した態様において、組成物のRISC不活性化因子はヌクレアーゼ耐性である。
【0125】
もう1つの態様において、組成物のRISC不活性化因子はリボヌクレアーゼ耐性である。
【0126】
さらなる1つの態様において、組成物のRISC不活性化因子は2'-O-メチルオリゴヌクレオチドである。
【0127】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのロックド核酸(LNA)を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0128】
さらなる1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子には、少なくとも1つのホスホロチオエート修飾を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0129】
1つの関連した態様において、RISC不活性化因子の修飾は、H、アルコキシもしくはOR、ハロゲン、SH、SR、アミノ(NH2、NHR、NR2など)またはCN基によって置換された2'-OH基(式中、Rは低級アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである)からなる群より選択される。
【0130】
もう1つの態様において、RISC不活性化因子を含む組成物は、薬学的に許容される担体も含む。
【0131】
本発明はまた、薬学的組成物の開発も可能にする。すなわち、本発明の1つの態様は、siRNAまたはmiRNAのガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子を含む薬学的組成物からなる。
【0132】
本発明の1つの態様において、RISC不活性化因子は約10〜100ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド;例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)である。
【0133】
本発明のさらにもう1つの態様において、RISC不活性化因子は約10〜40ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド;例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)である。
【0134】
本発明のさらなる1つの態様において、RISC不活性化因子は約15〜35ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド;例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)である。
【0135】
本発明のもう1つの態様において、RISC不活性化因子は約15〜20ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド;例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)である。
【0136】
本発明の1つの代替的な態様において、RISC不活性化因子は約20〜25ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド;例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)である。
【0137】
本発明のさらにもう1つの態様において、RISC不活性化因子は約25〜30ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド;例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)である。
【0138】
もう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は約30〜35(31、32、33、34、35)ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド;例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)である。
【0139】
さらにもう1つの態様において、本発明のRISC不活性化因子は約35〜40ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド;例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)である。
【0140】
もう1つの態様において、RISC不活性化因子は、ほぼ低いナノモル濃度(例えば、約0.1〜20nM)の用量で投与される。
【0141】
本発明のもう1つの態様は、化合物の同定に関する本発明の方法によって同定された化合物を含む薬学的組成物を含む。
【0142】
さらなる1つの態様においては、本発明によって同定された薬学的組成物のいずれかを投与することを含む、RNA干渉性の疾患または障害を治療するための方法が取り扱われる。
【0143】
1つの関連した態様において、本発明の薬学的組成物の投与は、癌を治療する。
【0144】
もう1つの態様において、本発明の薬学的組成物の投与は、脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療する。
【0145】
さらにもう1つの態様において、本発明の薬学的組成物の投与は、糖尿病を治療する。
【0146】
本発明のさらなる1つの局面は、HMGA2の発現を阻害するための方法であって、HMGA2の発現が阻害されるように、細胞をlet-7ポリヌクレオチドまたはその断片と接触させる段階を含む方法を特徴とする。本発明の1つの関連した局面は、HMGA2の発現を増強するための方法であって、HMGA2の発現が増強されるように、let-7またはその断片を含む細胞をlet-7-RISC不活性化因子(let-7のガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子)と接触させる段階を含む方法を特徴とする。
【0147】
本発明のもう1つの局面は、Dicerの発現を阻害するための方法であって、Dicerの発現が阻害されるように、細胞をlet-7ポリヌクレオチドまたはその断片と接触させる段階を含む方法を特徴とする。本発明の1つの関連した局面は、Dicerの発現を増強するための方法であって、Dicerの発現が増強されるように、let-7またはその断片を含む細胞をlet-7-RISC不活性化因子(let-7のガイド鎖に対して十分に相補的なRISC不活性化因子)と接触させる段階を含む方法を特徴とする。
【0148】
本発明のさらなる1つの局面は、let-7-RISCとDicer転写物との相互作用を調節する化合物を同定するための方法であって、let-7-RISCとDicer転写物との相互作用を調節する化合物が同定されるように、let-7-RISCを含む細胞を被験化合物と接触させる段階、ならびにDicerの発現レベルおよび/または活性を決定する段階を含む方法を特徴とする。
【0149】
本発明のもう1つの局面は、RNAサイレンシング物質によって調節されるRNAを同定するための方法であって、RNAサイレンシング物質によって調節されるRNAが同定されるように、RNAサイレンシング物質を含む細胞をRISC不活性化因子と接触させる段階;RISC不活性化因子と接触した細胞のRNA発現レベルを、RISC不活性化因子と接触していない細胞のRNA発現レベルと比較する段階;および、RISC不活性化因子による処理によって発現レベルが調節されるRNAを同定する段階を含む方法を特徴とする。
【0150】
本発明のさらにもう1つの局面は、RNAサイレンシング物質によって発現が調節されるポリペプチドを同定するための方法であって、RNAサイレンシング物質によって発現が調節されるポリペプチドが同定されるように、RNAサイレンシング物質を含む細胞をRISC不活性化因子と接触させる段階;RISC不活性化因子と接触した細胞のポリペプチド発現レベルを、RISC不活性化因子と接触していない細胞のポリペプチド発現レベルと比較する段階;および、RISC不活性化因子による処理によって発現レベルが調節されるポリペプチドを同定する段階を含む方法を特徴とする。
【0151】
本発明がより容易に理解されるように、いくつかの特定の用語についてまず定義する。
【0152】
「ヌクレオシド」という用語は、リボース糖またはデオキシリボース糖と共有結合したプリン塩基またはピリミジン塩基を有する分子のことを指す。ヌクレオシドの例には、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジンおよびチミジンが含まれる。「ヌクレオチド」という用語は、糖部分とエステル結合で連結した1つまたは複数のリン酸基を有するヌクレオシドのことを指す。ヌクレオチドの例には、ヌクレオシド一リン酸塩、二リン酸塩および三リン酸塩が含まれる。「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」という用語は本明細書において互換的に用いられ、5'炭素原子と3'炭素原子との間のホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオチドの重合体のことを指す。
【0153】
「RNA」または「RNA分子」または「リボ核酸分子」という用語は、リボヌクレオチドの重合体のことを指す。「DNA」または「DNA分子」または「デオキシリボ核酸分子」という用語は、デオキシリボヌクレオチドの重合体のことを指す。DNAおよびRNAは、自然下で合成されうる(例えば、それぞれ、DNAの複製またはDNAの転写による)。RNAは転写後に修飾されうる。また、DNAおよびRNAを化学合成することもできる。DNAおよびRNAとしては一本鎖(すなわち、それぞれssRNAおよびssDNA)も多重鎖(例えば、二本鎖、すなわち、それぞれdsRNAおよびdsDNA)も可能である。「mRNA」または「メッセンジャーRNA」は、1つまたは複数のポリペプチド鎖のアミノ酸配列を指定する一本鎖RNAのことである。この情報は、リボソームがmRNAと結合した時のタンパク質合成の際に翻訳される。
【0154】
「ヌクレオチド類似体」または「改変ヌクレオチド」または「修飾ヌクレオチド」という用語は、非天然型のリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含む、標準的でないヌクレオチドのことを指す。好ましいヌクレオチド類似体は、ヌクレオチドの特定の化学特性を変化させながらもヌクレオチド類似体がその意図する機能を遂行する能力を保つように、いずれかの位置で修飾されている。誘導体化しうるヌクレオチドの位置の例には、5位(例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン、5-プロピンウリジン、5-プロペニルウリジンなど);6位(例えば、6-(2-アミノ)プロピルウリジン);アデノシンおよび/またはグアノシンの場合の8位(例えば、8-ブロモグアノシン、8-クロログアノシン、8-フルオログアノシンなど)が含まれる。ヌクレオチド類似体にはまた、デアザヌクレオチド(例えば、7-デアザ-アデノシン);O-およびN-修飾(例えば、アルキル化された、例えば、N6-メチルアデノシン、または当技術分野で公知の他の様式による)ヌクレオチド;およびその他の複素環修飾ヌクレオチド類似体(Herdewijn, Antisense Nucleic Acid Drug Dev., 2000 Aug. 10(4):297-310に記載されたものなど)も含まれる。
【0155】
また、ヌクレオチド類似体には、ヌクレオチドの糖部分に対する修飾物も含まれうる。例えば、2'OH基が、H、OR、R、F、Cl、Br、I、SH、SR、NH
2、NHR、NR
2、COORまたはOR(式中、Rは置換型または非置換型のC
1-C
6アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールなどである)によって置換されてもよい。考えられるその他の修飾物には、米国特許第5,858,988号および第6,291,438号に記載されたものが含まれる。
【0156】
また、ヌクレオチドのリン酸基が、例えば、リン酸基の酸素のうち1つもしくは複数をイオウによって置換することによって(例えば、ホスホロチオエート)、またはヌクレオチドがその意図する機能を遂行することを可能にする、例えば、Eckstein, Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 2000 Apr. 10(2):117-21, Rusckowski et al. Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 2000 Oct. 10(5):333-45, Stein, Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 2001 Oct. 11(5):317-25, Vorobjev et al. Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 2001 Apr. 11(2):77-85および米国特許第5,684,143号に記載されたような他の置換物を作製することによって修飾されてもよい。以上に言及した修飾物のうちいくつか(例えば、リン酸基修飾物)は、例えば、インビボまたはインビトロで、前記類似体を含むポリヌクレオチドの加水分解の速度を低下させることが好ましい。
【0157】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体の短い重合体のことを指す。
【0158】
本明細書で用いる場合、「RISC不活性化因子」または「RISC阻害因子」という用語は、RISC機能を配列特異的な様式で不活性化または阻害する、核酸を基にした作用物質のことを指す。特に、この因子はRISC複合体のsiRNAまたはmiRNA成分を配列特異的様式で不活性化または阻害する、すなわち、この因子は、作用物質の配列に対して相補的な(すなわち、十分に相補的な)配列を有するsiRNAまたはmiRNAを含むRISC複合体を不活性化または阻害するが、配列に類縁性のないガイドRNA(すなわち、siRNAガイド鎖またはmiRNA)を含むRISC複合体の機能に影響を及ぼす(すなわち、かなりの程度の影響を及ぼす)ことはない。本発明のRISC不活性化因子またはRISC阻害因子は、RISCによって導かれるヌクレオチド鎖切断または翻訳制御に対して耐性または不応性であることが好ましい(すなわち、これらの因子は、標的mRNAとは異なり、それ自体ではRISC基質としては作用しない)。この因子は、分解(すなわち、細胞ヌクレアーゼによる、特にリボヌクレアーゼによる分解)に耐えるように修飾されていることが好ましい。好ましくは、本発明のRISC不活性化因子またはRISC阻害因子は、ナノモル濃度の範囲にある濃度で(例えば、そのIC50が)、例えば、500nM未満、好ましくは400nM未満、より好ましくは300、250、200、150、100、75、50、25、10、5、2または1nM未満で、作用する(または有効である)。
【0159】
好ましいRISC不活性化因子(またはRISC阻害因子)は、長さが約20〜40ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の、例えば20、21、22, 23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の、修飾オリゴヌクレオチドである。好ましい態様において、RISC不活性化因子(またはRISC阻害因子)は、長さが約25〜35ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の修飾オリゴヌクレオチドである。また別の態様において、RISC不活性化因子(またはRISC阻害因子)は、長さが約5〜60ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の、または例えば、約5〜10、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜55、55〜60、60もしくはそれを上回るヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の、修飾オリゴヌクレオチドである。
【0160】
「作用物質(agent)」および「化合物」という用語は、本明細書において互換的に用いられる。
【0161】
本明細書で用いる場合、「ヌクレアーゼ耐性オリゴヌクレオチド」という用語は、酵素による、例えば、真核細胞の細胞質中に存在することが知られているエキソヌクレアーゼなどによる分解が抑制されるように修飾された任意のオリゴヌクレオチドのことを指す。RNA分子(例えば、RNAオリゴヌクレオチド)は、細胞抽出物を含む組成物と混合された場合、または細胞もしくは生物体に導入された場合に、分解されるリスクが特に高く、このため「リボヌクレアーゼ耐性」オリゴヌクレオチドは、非修飾型の同じオリゴヌクレオチドに比べてリボヌクレアーゼ酵素(例えば、エキソヌクレアーゼ)に対する耐性が相対的に高いRISC不活性化因子と定義される。好ましい本発明のRISC不活性化因子には、オリゴヌクレオチドを相対的にヌクレアーゼ耐性またはリボヌクレアーゼ耐性にするように修飾されたものが含まれる。1つの好ましい態様において、本発明のRISC不活性化因子は2'-O-メチル基によって修飾されている。
【0162】
「2'-O-メチルオリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書で用いる場合、当技術分野で認識されているその意味を有する。
【0163】
「RNA干渉」または「RNAi」という用語(当技術分野では「遺伝子サイレンシング」および/または「標的サイレンシング」、例えば、「標的mRNAサイレンシング」とも呼ばれる)は、本明細書で用いる場合、一般に、標的分子(例えば、標的の遺伝子、タンパク質またはRNA)がダウンレギュレートされる配列特異的または配列選択的なプロセスのことを指す。特定の態様において、「RNA干渉」または「RNAi」のプロセスは、RNA分子、例えば細胞内のRNA分子の分解または転写後サイレンシングであって、前記分解またはサイレンシングがRNAi因子によって誘発されるようなものを特徴とする。標的RNAの分解および転写後サイレンシングは、酵素的なRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって触媒される。RNAiは細胞において、自然下では外来性RNA(例えば、ウイルスRNA)を除去するために起こる。自然下でのRNAiは、他の類似のRNA配列に対する分解機構を導く、遊離dsRNAから切断された断片によって進行する。または、標的遺伝子の発現のサイレンシングを行うために、RNAiを人為的に惹起することもできる。
【0164】
「RNAサイレンシング物質」という用語は、本明細書で用いる場合、標的RNA(すなわち、分解されようとするRNA)に対して、RNAサイレンシング(例えば、RNAi)を導くのに十分な配列相補性を有する、RNA(またはその類似体)のことを指す。「標的RNA配列に対して、RNAサイレンシングを導くのに十分に相補的な配列」を有するRNAサイレンシング物質とは、そのRNAサイレンシング物質が、RNAサイレンシング性の機構(例えば、RISC)またはプロセスによる標的RNAの破壊または転写後サイレンシングを誘発するのに十分な配列を有することを意味する。「標的RNA配列に対して、RNAサイレンシングを導くのに十分に相補的な配列」を有するRNAサイレンシング物質とは、また、RNAサイレンシング物質が、RNAサイレンシング性の機構またはプロセスによる標的RNAの翻訳阻害を誘発するのに十分な配列を有することも意味するものとする。「標的DNA配列がクロマチン性にサイレンシングされるように、標的DNA配列によってコードされる標的RNAに対して十分に相補的な配列」を有するRNAサイレンシング物質とは、RNAサイレンシング物質が、例えば、標的DNA配列の箇所または近傍でのクロマチン構造変化を誘導することにより、標的DNA配列の箇所またはその近傍での、転写性の遺伝子サイレンシングを誘導するのに、例えば遺伝子発現をダウンモジュレートするのに十分な配列を有することを意味する。
【0165】
本明細書で用いる場合、「短鎖干渉RNA(small interfering RNA)」(「siRNA」)という用語(当技術分野では「短い干渉RNA(short interfering RNA)」とも呼ばれる)は、RNA干渉を導くことまたは媒介することが可能な、約10〜50ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含むRNA(またはRNA類似体)のことを指す。
【0166】
本明細書で用いる場合、「マイクロRNA」(「miRNA」)という用語は、その前駆体RNA転写物が小さなステムループを形成し、Dicerによって切断されてそれから成熟miRNAが生じるような、内因性の非コード性遺伝子の産物を含むRNA(またはRNA類似体)のことを指す(Lagos-Quintana et al., 2001;Lau et al., 2001;Lee and Ambros, 2001;Lagos-Quintana et al., 2002;Mourelatos et al., 2002;Reinhart et al., 2002;Ambros et al., 2003;Brennecke et al., 2003b;Lagos-Quintana et al., 2003;Lim et al., 2003a;Lim et al., 2003b)。miRNAは、それらによって発現が制御されるmRNAとは別個に、遺伝子中にコードされている。成熟miRNAはDicer切断による一本鎖産物であり、これは続いて、RISCに組み込まれた場合にRNAサイレンシングを媒介するガイドRNA断片として機能する。
【0167】
本明細書で用いる場合、siRNAまたはRNAサイレンシング物質の「アンチセンス鎖」とは、サイレンシングの標的となる遺伝子のmRNAの約10〜50ヌクレオチド、例えば、約15〜30、16〜25、18〜23または19〜22ヌクレオチドの区域に対して実質的に相補的な鎖のことを指す。アンチセンス鎖または第一鎖は、所望の標的mRNA配列に対して、標的特異的なRNAサイレンシングを導くのに十分に相補的な配列を有する(例えば、RNAiに関しては、RNAi性の機構またはプロセスによる所望の標的mRNAの破壊を誘発するのに十分な相補性)。siRNA因子またはRNAi因子の「センス鎖」または「第二鎖」とは、アンチセンス鎖または第一鎖に対して相補的な鎖のことを指す。アンチセンス鎖およびセンス鎖を第一鎖または第二鎖と呼ぶこともでき、この第一鎖または第二鎖は標的配列に対する相補性を有し、第二鎖または第一鎖はそれぞれ前記第一鎖または第二鎖に対する相補性を有する。
【0168】
本明細書で用いる場合、アンチセンス鎖の5'末端というような「5'末端」とは、5'末端のヌクレオチド、例えば、アンチセンス鎖の5'端の1個〜約5個のヌクレオチドのことを指す。本明細書で用いる場合、センス鎖の3'末端というような「3'末端」とは、相補的アンチセンス鎖の5'末端のヌクレオチドに対して相補的な領域、例えば、1個〜約5個のヌクレオチドの領域のことを指す。
【0169】
本明細書で用いる場合、「ガイド鎖」という用語は、RISC内部に入って標的mRNAの切断または翻訳サイレンシングを導く、RNAサイレンシング物質の鎖、例えば、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖のことを指す。
【0170】
「遺伝子のRNAサイレンシングを導く」siRNAまたはmiRNAとは、遺伝子によってコードされる標的mRNAに対して、RNAi性の機構またはプロセスによる標的mRNAの転写後サイレンシングまたは破壊を誘発するのに十分な相補的な配列を有する、siRNAまたはmiRNAのことである。
【0171】
「RNAサイレンシング物質に対して、例えば、miRNA配列またはsiRNA配列に対して十分に相補的な配列」を有するRISC不活性化因子とは、そのRISC不活性化因子が、RNAサイレンシング物質、例えば、miRNAまたはsiRNAの活性を阻害するのに十分な配列を有することを意味する。RISC不活性化因子は、miRNA配列またはsiRNA配列に対して、特にsiRNAのガイド鎖またはアンチセンス鎖の配列に対して十分に相補的であることが好ましい。
【0172】
「リン酸化された」という用語は、少なくとも1つのリン酸基が化学(例えば、有機)化合物に結合していることを意味する。リン酸基は例えば、タンパク質または糖部分に対して、以下の反応によって結合させることができる:遊離ヒドロキシル基+リン酸供与体→リン酸エステル結合。「5'がリン酸化された」という用語は、例えば、5'糖(例えば、5'リボースまたはデオキシリボース、またはその類似体)のC5ヒドロキシル基にエステル結合を介して結合したリン酸基を有するポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを記述するために用いられる。一リン酸塩、二リン酸塩および三リン酸塩は一般的にみられる。自然界に認められる一リン酸塩、二リン酸塩および三リン酸塩と同一または同様の様式で機能するリン酸基類似体(例えば、例示されている類似体を参照されたい)も、本発明の範囲に同じく含まれるものとする。
【0173】
本明細書で用いる場合、「単離されたRNA」(例えば、「単離されたssRNA」「単離されたsiRNA」または「単離されたss-siRNA」)という用語は、組換えDNA法によって作製された場合には細胞材料および培地を実質的に含まず、化学合成された場合には前駆化学物質および他の化学物質を実質的に含まない、RNA分子のことを指す。
【0174】
「標的遺伝子」とは、その発現を選択的に阻害または「サイレンシング」させようとする遺伝子のことである。このサイレンシングは、siRNAまたはmiRNAにより、例えば、人為的に操作された(engineered)RNA前駆体から細胞のRNAサイレンシング系によって作り出されたsiRNAまたはmiRNAにより、標的遺伝子のmRNA(本明細書においては「標的mRNA」とも呼ばれる)の切断または翻訳サイレンシングを行わせることによって実現される。このRNA前駆体の二重鎖ステムの1つの部分またはセグメントは、標的遺伝子のmRNAの約18〜約40ヌクレオチドまたはそれを上回るヌクレオチド数の区域に対して相補的な、例えば、RNAi性の機構またはプロセスによる所望の標的mRNAの破壊を誘発するのに十分に相補的な、アンチセンス鎖である。
【0175】
本明細書で用いる場合、「RISC」という用語は、標的RNA分子を認識するように相互作用する、タンパク質および一本鎖ポリヌクレオチドのことを指す。実証されているRISCの成分には、Dicer、R2D2およびArgonauteファミリーのタンパク質、ならびにsiRNAおよびmiRNAのガイド鎖が含まれる。siRNA由来の一本鎖ガイドRNAが組み込まれたRISCの場合には、RISCは標的RNA分子を切断する。
【0176】
本明細書で用いる場合、「RNAサイレンシング」という用語は、RISCを介した短鎖RNA依存性サイレンシングのあらゆる形態のことを指し、これにはRNAi(標的mRNAのsiRNAを介した切断)およびmiRNAを介した翻訳抑制の両方が含まれる。
【0177】
本明細書で用いる場合、「化合物」という用語には、それがRNAi活性を調節するか否かを判定するために、本発明のアッセイを用いて試験がなされる、任意の試薬が含まれる。複数の化合物、例えば多数の化合物を、RNAi活性を調節する能力に関して、1つのスクリーニングアッセイにおいて同時に試験することができる。
【0178】
1つの態様において、被験化合物には、低分子、ペプチド、ポリヌクレオチド、抗体またはその生物活性部分、ペプチド模倣物および非ペプチド性オリゴマーからなる群からの任意の選択物が含まれる。
【0179】
「インビトロ」という用語は、例えば、精製された試薬または抽出物、例えば細胞抽出物を含む、当技術分野で認知されているその意味を有する。「インビボ」という用語も、例えば、不死化細胞、初代細胞、細胞系、および/または生物体の内部にある細胞といった生細胞を含む、当技術分野で認知されているその意味を有する。
【0180】
障害に「関与する」遺伝子には、その正常または異常な発現または機能が、疾患もしくは障害または前記疾患もしくは障害の少なくとも1つの症状を生じさせるか、またはその原因となるような遺伝子が含まれる。
【0181】
本発明のさまざまな方法は、値、レベル、特徴、特性、性質などを「適した対照」(これは本明細書では互換的に「適切な対照」とも呼ばれる)と比較する段階を含む。「適した対照」または「適切な対照」とは、比較を目的とする、当業者によく知られた任意の対照または標準のことである。1つの態様において、「適した対照」または「適切な対照」とは、本明細書に記載したような、RNAiの方法を実施する前に決定された値、レベル、特徴、特性、性質などである。例えば、本発明のRNAi調節因子(例えば、配列特異的RNAi活性を変化させるオリゴヌクレオチド、化合物など)を細胞または生物体に導入する前に、転写速度、mRNAレベル、翻訳速度、タンパク質レベル、生物活性、細胞の特性または性質、遺伝子型、表現型などを決定することができる。もう1つの態様において、「適した対照」または「適切な対照」とは、例えば正常な形質を呈している、細胞または生物体、例えば、対照または正常な細胞または生物体において決定された値、レベル、特徴、特性、性質などである。さらにもう1つの態様において、「適した対照」または「適切な対照」とは、あらかじめ定められた値、レベル、特徴、特性、性質などのことである。
【0182】
以下の項において、本発明のさまざまな局面についてさらに詳細に説明する。
【0183】
I.RISC不活性化因子ならびにRNA分子、例えばsiRNAおよびmiRNA
本発明は、インビトロおよびインビボの双方においてRNAサイレンシングの調節に用いるのに適したRISC不活性化因子、例えばRISC阻害因子を特徴とする。インビボの方法は、一般的なRNAサイレンシングの調節の目的にも、RNAサイレンシングの調節(例えば、阻害)が望ましい治療応用のどちらにも有用である。
【0184】
本発明のRISC不活性化因子は、RNAサイレンシングを、特にマイクロRNA(miRNA)を介した転写抑制および/またはsiRNAを介したRNAiを阻害するのに十分な任意のサイズおよび/または化学組成であってよい。例示的な態様において、RISC不活性化因子は、約10〜100ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド)の、好ましくは約10〜40ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド)(例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)の、例えば、約15〜35、例えば約15〜20、20〜25、25〜30、30〜35(31、32、33、34、35)または35〜40ヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド)(例えば、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチド)の、オリゴヌクレオチドである。RISC不活性化因子は、miRNA配列またはsiRNA配列に対して、特にsiRNAのガイド鎖またはアンチセンス鎖の配列に対して、十分に相補的であることが好ましい。
【0185】
本発明の例示的な態様において、RISC不活性化因子には、2'-O-メチル修飾物を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。例えば、ロックド核酸(少なくとも1つの2'-C,4'-C-オキシ-メチレン結合二環式リボヌクレオチド単量体を含むオリゴヌクレオチド)およびホスホロチオエート修飾を、オリゴヌクレオチドを有効なRISC不活性化因子にさせることが可能な当技術分野で認識されている他の修飾とともに含む、その他の多くの形態のオリゴヌクレオチド修飾を、RISC不活性化因子を作製するために用いてもよい。
【0186】
本発明はまた、RNAi因子、例えば「一本鎖短鎖干渉RNA分子」(「ss-siRNA分子」または「ss-siRNA」)、前記RNAi因子、例えばss-siRNA分子を作製するための方法、および、前記RNAi因子、例えばss-siRNA分子を用いるための方法(例えば、研究および/または治療の方法)も特徴とする。ss-siRNA分子の長さは、約10〜50ヌクレオチドまたはそれを上回るヌクレオチド数であることが好ましい。より好ましくは、ss-siRNA分子の長さは約15〜45ヌクレオチドである。さらにより好ましくは、ss-siRNA分子の長さは約19〜40ヌクレオチドである。本発明のss-siRNA分子はさらに、本明細書中に定義したような、標的特異的RNA干渉(RNAi)を導くために標的miRNA配列に対して「十分に相補的」な配列を有し、すなわち、ss-siRNAは、RNAi性の機構またはプロセスによって標的mRNAを誘発するのに十分な配列を有する。ss-siRNA分子は、すべての残基が標的分子中の残基に対して相補的であるように設計することができる。または、分子内に、前記分子の安定性を高めるため、および/またはプロセシング活性を増強するために、置換を施すこともできる。置換は鎖の内部に施すこともでき、または鎖の末端の残基に施すこともできる。5'末端はリン酸化されること(すなわち、リン酸基、二リン酸基または三リン酸基を含むこと)が最も好ましい。しかし、RNAiを促進するためのsiRNAの3'末端はヒドロキシル基であるという以前の知見に反して、本発明者らは、活性因子がss-siRNA分子である場合には3'ヒドロキシル基は必要ないことを示した。したがって、本発明は、特に、3'末端(すなわち、3'糖のC3)にヒドロキシル基がないss-siRNA分子(すなわち、3'糖に3'ヒドロキシル基またはC3ヒドロキシル基がないss-siRNA分子(例えば、リボースまたはデオキシリボース))を特徴とする。
【0187】
siRNAによって(例えば、ss-siRNAによって)誘導される標的RNAの切断反応は、高度に配列特異的である。一般的には、標的遺伝子の一部分と同一なヌクレオチド配列を含むsiRNAが、阻害のためには好ましい。しかし、本発明の実施のためには、siRNAと標的遺伝子との間の100%の配列同一性は必要でない。すなわち、本発明には、遺伝子変異、系統多型または進化的分岐によって生じることが予想される配列変化に耐えうるという利点がある。例えば、標的配列との比較で挿入、欠失および単一の点変異を有するsiRNA配列も、阻害に関して有効であることが見いだされている。または、ヌクレオチド類似体による置換または挿入を有するsiRNA配列も阻害に関して有効な可能性がある。さらに、活性miRNAは特徴として、その標的mRNAに対して100%相補的とはいえず、この性質はこれらがその標的miRNAの切断ではなく翻訳抑制を介して作用する傾向を説明するものと提唱されている。
【0188】
配列同一性は、当技術分野で公知である配列比較用およびアラインメント用のアルゴリズムによって決定することができる。2つの核酸配列(または2つのアミノ酸配列)の同一性(percent identity)を決定するためには、最適な比較を目的として配列のアラインメントを行う(例えば、最適なアラインメントのために、第1の配列または第2の配列中にギャップを導入することができる)。続いて、対応するヌクレオチド(またはアミノ酸)位置にあるヌクレオチド(またはアミノ酸残基)を比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置にあるものと同じ残基によって占められている場合には、これらの分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性は、配列が共有する同一な位置の数の関数であり(すなわち、相同性%=同一な位置の数/位置の総数 ×100)、任意には、導入されたギャップの数および/または導入されたギャップの長さに関してスコアにペナルティーが課される。
【0189】
配列の比較および2つの配列間の同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。1つの態様において、アラインメントは同一性の低い部分にわたってではなく、十分な同一性を有してアラインメントされる配列の特定の部分にわたって作成される(すなわち、局所アラインメント)。配列の比較のために用いられる局所アラインメントアルゴリズムの好ましい非制限的な一例は、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77におけるように変更された、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、Altschul, et al.(1990)J. Mol. Biol. 215:403-10のBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。
【0190】
もう1つの態様において、アラインメントは適切なギャップを導入することによって最適化され、同一性はアラインメントがなされた配列の範囲にわたって決定される(すなわち、ギャップ付き(gapped)アラインメント)。比較を目的とするギャップ付きアラインメントを得るためには、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載されたように、ギャップ付きBLASTを利用することができる。もう1つの態様において、アラインメントは適切なギャップを導入することによって最適化され、同一性はアラインメントがなされた配列の全長にわたって決定される(すなわち、全体的アラインメント)。配列の全体的比較のために用いられる数学的アルゴリズムの好ましい非制限的な一例は、Myers and Miller, CABIOS(1989)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウエアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。ALIGNプログラムをアミノ酸配列の比較のために利用する場合には、PAM120残基重み付け表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ(gap length penalty)12およびギャップペナルティ(gap penalty)4を用いることができる。
【0191】
70%を上回る配列同一性、例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはさらには100%もの配列同一性が、RNAi阻害因子とRNAi因子、例えばsiRNAまたはmiRNAとの間にあることが好ましい。または、RNAi因子を、その一部分がRNAi因子とハイブリダイズしうるヌクレオチド配列(またはオリゴヌクレオチド配列)として機能面から定義してもよい(例えば、400mM NaCl、40mM PIPES pH 6.4、1mm EDTA、50℃または70℃での12〜16時間にわたるハイブリダイゼーション;続いての洗浄)。そのほかの好ましいハイブリダイゼーション条件には、70℃、1×SSC中もしくは50℃、1×SSC、50%ホルムアミド中でのハイブリダイゼーションに続いての70℃、0.3×SSC中での洗浄、または70℃、4×SSC中もしくは50℃、4×SSC、50%ホルムアミド中でのハイブリダイゼーションに続いての67℃、1×SSC中での洗浄が含まれる。長さが50塩基対未満であると予想されるハイブリッド体に関するハイブリダイゼーション温度は、そのハイブリッド体の融解温度(Tm)よりも5〜10℃低い必要があり、この際、Tmは以下の式に従って決定される。長さが18塩基対未満であるハイブリッド体に関しては、Tm(℃)=2(A塩基+T塩基の数)+4(G塩基+C塩基の数)。長さが18〜49塩基対であるハイブリッド体に関しては、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)-(600/N)であり、式中、Nはハイブリッド体における塩基の数であり、[Na+]はハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である(1×SSCの場合、[Na+]=0.165M)。ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションのためのストリンジェンシー条件のそのほかの例は、Sambrook, J., E.F. Fritsch and T. Maniatis, 1989, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYの第9章および第11章、ならびに、Current Protocols in Molecular Biology, 1995, F.M. Ausubel et al., eds., John Wiley & Sons, Inc.のセクション2.10および6.3-6.4に提示されており、これらは参照として本明細書に組み入れられる。同一なヌクレオチド配列の長さは、少なくとも約10、12、15、17、20、22、25、27、30、32、35、37、40、42、45、47または50塩基であってよい。
【0192】
修飾
1つの好ましい局面において、本発明のRNA分子、例えばsiRNAおよびmiRNA、ならびにRISC不活性化因子は、血清中または細胞培養のための増殖培地中での安定性を向上させるために修飾される。安定性を高めるために、3'残基を分解に対して安定化してもよく、例えば、それらがプリンヌクレオチド、特にアデノシンまたはグアノシンヌクレオチドからなるように選択することができる。または、修飾された類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、2'-デオキシチミジンによるウリジンの置換も許容され、これはRNA干渉の効率には影響を及ぼさない。例えば、2'ヒドロキシル基の欠如は、組織培養液中でのss-siRNAのヌクレアーゼ耐性を大きく高めると考えられる。
【0193】
本発明の特に好ましい1つの態様において、RNA分子、例えばsiRNAおよびmiRNA、ならびに/またはRISC不活性化因子は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド類似体を含みうる。ヌクレオチド類似体は、標的特異的な活性、例えば、RNAiを媒介する活性が実質的に影響されない位置、例えば、RNA分子の5'末端および/または3'末端にある領域に位置しうる。特に、末端は修飾ヌクレオチド類似体を組み入れることによって安定化しうる。
【0194】
好ましいヌクレオチド類似体には、糖修飾および/または骨格修飾リボヌクレオチドが含まれる(すなわち、リン酸-糖骨格に対する修飾が含まれる)。例えば、天然のRNAのホスホジエステル結合を、窒素またはイオウヘテロ原子が少なくとも1つ含まれるように修飾してもよい。好ましい骨格修飾リボヌクレオチドにおいては、隣接リボヌクレオチドと連結するホスホエステル基が、修飾基、例えば、ホスホロチオエート基によって置換される。好ましい糖修飾リボヌクレオチドにおいては、2'OH基が、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH
2、NHR、NR
2またはON(式中、RはC
1-C
6アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロはF、Cl、BrまたはIである)より選択される基によって置換される。
【0195】
核酸塩基が修飾されたリボヌクレオチド、すなわち、天然型の核酸塩基の代わりに少なくとも1つの非天然型の核酸塩基を含むリボヌクレオチドも好ましい。アデノシンデアミナーゼの活性をブロックするために塩基を修飾することもできる。修飾核酸塩基の例には以下のものが非制限的に含まれる:5位が修飾されたウリジンおよび/またはシチジン、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン;8位が修飾されたアデノシンおよび/またはグアノシン、例えば、8-ブロモグアノシン;デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザアデノシン;O-およびN-アルキル化ヌクレオチド、例えば、N6-メチルアデノシンが適している。以上の修飾を組み合わせてもよいことに注意すべきである。また、本発明のRNAサイレンシング物質を、RNAサイレンシング物質のインビボでの薬理特性を向上させる化学成分(例えば、コレステロール)によって修飾することもできる。
【0196】
RNA分子およびRISC不活性化因子は、酵素的に、または部分的/全有機合成によって作製することができ、任意の修飾リボヌクレオチドをインビトロでの酵素的合成または有機合成によって導入することが可能である。1つの態様において、RNA分子、例えばsiRNAもしくはmiRNA、またはRISC不活性化因子は、化学的に調製される。RNA分子およびDNA分子の合成方法は当技術分野で公知であり、これには特に、Verma and Eckstein(1998)Annul Rev. Biochem. 67:99-134に記載された化学合成法がある。もう1つの態様において、RNA分子は酵素的に調製される。例えば、ds-siRNAは、所望の標的mRNAに対して十分な相補性を有する長いds RNAの酵素的処理によって調製することができる。長いds RNAの処理はインビトロで、例えば適切な細胞溶解物を用いて行うことができ、その後にds-siRNAをゲル電気泳動またはゲル濾過によって精製することができる。続いてds-siRNAを当技術分野で認知されている方法によって変性させることができる。1つの例示的な態様において、RNAは、溶媒もしくは樹脂による抽出、沈降、電気泳動、クロマトグラフィーまたはそれらの組み合わせによって混合物から精製することができる。または、試料の処理に起因する損失を避けるために、精製を全くまたはほとんど行わずにRNAを用いることもできる。または、RNA分子、例えば一本鎖RNA、およびRISC不活性化因子を、合成DNAテンプレートからの、または組換え細菌から単離したDNAプラスミドからの酵素的転写によって調製することもできる。典型的には、T7、T3またはSP6 RNAポリメラーゼなどのファージRNAポリメラーゼが用いられる(Milligan and Uhlenbeck(1989)Methods Enzymol. 180:51-62)。RNAを保存用に乾燥させてもよく、または水溶液中に溶解させてもよい。この溶液は、アニーリングを抑制するため、および/または一本鎖の安定化を促すための緩衝剤または塩を含んでもよい。
【0197】
1つの態様において、本発明のRNAサイレンシング物質、例えばsiRNAまたはmiRNAの標的mRNAは、細胞タンパク質(例えば、核、細胞質、膜貫通性または膜結合性タンパク質)のアミノ酸配列を指定する。もう1つの態様において、本発明の標的mRNAは、細胞外タンパク質(例えば、細胞外マトリックスタンパク質または分泌タンパク質)のアミノ酸配列を指定する。本明細書で用いる場合、タンパク質の「アミノ酸配列を指定する」という語句は、mRNA配列が、遺伝暗号の規則に従ったアミノ酸配列へと翻訳されることを意味する。以下のタンパク質クラスを、例示を目的として挙げる:発生関連タンパク質(developmental protein)(例えば、接着分子、サイクリンキナーゼ阻害因子、Wntファミリーのメンバー、Paxファミリーのメンバー、Winged helixファミリーのメンバー、Hoxファミリーのメンバー、サイトカイン/リンホカインおよびそれらの受容体、増殖/分化因子およびそれらの受容体、神経伝達物質およびそれらの受容体);癌遺伝子によってコードされるタンパク質(例えば、ABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、EBRB2、ETSI、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIMI、PML、RET、SRC、TALI、TCL3およびYES);腫瘍抑制タンパク質(例えば、APC、BRCA1、BRCA2、MADH4、MCC、NFI、NF2、RBI、TP53およびWTI);および酵素(例えば、ACCシンターゼおよびオキシダーゼ、ACPデサチュラーゼおよびヒドロキシラーゼ、ADP-グルコースピロホスホリラーゼ、ATPアーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、カルコンシンターゼ、キチナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デキストリナーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルカナーゼ、グルコースオキシダーゼ、粒結合型デンプンシンターゼ、GTPアーゼ、ヘリカーゼ、ヘミセルラーゼ、インテグラーゼ、イヌリナーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポキシゲナーゼ、リゾチーム、ノパリンシンターゼ、オクトピンシンターゼ、ペクチンエステラーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、フィターゼ、植物成長調節性シンターゼ、ポリメチルガラクツロナーゼ、プロテイナーゼおよびペプチダーゼ、プルラナーゼ、リコンビナーゼ、逆転写酵素、RUBISCO、トポイソメラーゼおよびキシラナーゼ)。
【0198】
本発明の1つの好ましい局面において、本発明のRNAサイレンシング物質、例えばsiRNAまたはmiRNAの標的mRNA分子は、病的状態と関連性のあるタンパク質のアミノ酸配列を指定する。例えば、タンパク質が、病原体関連タンパク質(例えば、宿主の免疫抑制、病原体の複製、病原体の伝搬または感染の維持に関与するウイルスタンパク質)、または病原体の宿主への侵入、病原体もしくは宿主による薬物代謝、病原体のゲノムの複製もしくは組込み、宿主における感染の成立もしくは波及、または次の世代の病原体の構築を促進する宿主タンパク質であってもよい。または、タンパク質が、腫瘍関連タンパク質または自己免疫疾患関連タンパク質であってもよい。
【0199】
1つの態様において、本発明のRNAサイレンシング物質、例えばsiRNAまたはmiRNAの標的mRNA分子は、内因性タンパク質(すなわち、細胞または生物体のゲノム中に存在するタンパク質)のアミノ酸配列を指定する。もう1つの態様において、本発明の標的mRNA分子は、組換え細胞または遺伝子組換え生物において発現される異種タンパク質のアミノ酸配列を指定している。もう1つの態様において、本発明の標的mRNA分子は、導入遺伝子(すなわち、細胞のゲノム中の異所性部位に挿入された遺伝子構築物)によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を指定している。さらにもう1つの態様において、本発明の標的mRNA分子は、細胞またはその細胞の由来となった生物体を感染させうる病原体ゲノムによってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を指定する。
【0200】
このようなタンパク質の発現を制御するRNAサイレンシング物質を阻害することにより、前記RNAサイレンシング物質および/またはタンパク質の機能、ならびに前記阻害によって得られる治療上の利益に関する有意義な情報を得ることができる。
【0201】
いくつかの態様においては、RISC不活性化因子によるRNAサイレンシング物質の阻害を、RNAサイレンシング物質によって調節される、および/またはそれと結合する遺伝子産物を同定および/またはモニターするために用いることができる。例示的な態様においては、RISC不活性化因子と接触した細胞、組織または生物体のRNAおよび/またはタンパク質の発現レベルを、RISC不活性化因子と接触していない細胞、組織または生物体の発現レベルと比較する。このような比較はそれにより、発現レベルを調査している遺伝子産物に対する、RNAサイレンシング物質の阻害による直接的な影響を明らかにする。このような比較は、検討しているRNAサイレンシング物質のシグナル伝達経路のさらなる構成要素を発見するために用いることができる。RISC不活性化因子で処理した状態と処理していない状態との比較には、さらに、RNAサイレンシング物質を発現および/または含有する細胞、組織または生物体におけるこのような状態と、RNAサイレンシング物質を通常は発現しないか含まない細胞、組織または生物体におけるRNAサイレンシング物質で処理した状態および処理していない状態との比較も含まれうる。このような比較を実行することにより、RNAサイレンシング物質経路の構成要素を同定するこのようなアプローチの特異性および有効性を高めることができる。
【0202】
調査する遺伝子の発現レベルは、転写された核酸またはタンパク質の発現を検出するための多岐にわたる周知の方法のいずれかによって評価しうる。このような方法の非制限的な例には、核酸ハイブリダイゼーション法、例えば、ノーザンブロット法および/または核酸アレイの使用;核酸増幅法;タンパク質の検出のための免疫学的方法;タンパク質精製法;ならびにタンパク質の機能または活性アッセイが含まれる。
【0203】
RNA発現レベルは、細胞、組織または生物体からmRNA/cDNA(すなわち、転写されたポリヌクレオチド)を調製し、そのmRNA/cDNAを、アッセイする核酸の相補物、またはその断片である参照ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることによって、評価することができる。任意には、cDNAを、相補的ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの前に、さまざまなポリメラーゼ連鎖反応またはインビトロ転写法のいずれかを用いて増幅することもできる;これは増幅しないことが好ましい。または、1つまたは複数の転写物の発現を、転写物の発現のレベルを評価するために定量的PCRを用いて検出することもできる。
【0204】
アッセイする細胞、組織または生物体から入手した転写ポリヌクレオチドの混合物を、アッセイするRNAの少なくとも一部分(例えば、少なくとも7、10、15、20、25、30、40、50、100、500またはそれを上回るヌクレオチド残基)に対して相補的または相同なポリヌクレオチドが固定された基質、例えば、相補的ポリヌクレオチド(プローブ)のアレイと接触させることもできる。アッセイする多数のRNAに対して相補的または相同なポリヌクレオチドを、基質上で差異を伴って検出しうる(例えば、異なる発色団、フルオロフォアもしくはその他のタグ標識を用いて検出しうる、または異なる選択された位置に固定されている)ならば、多数のRNAの発現レベルを、単一の基質(例えば、選択された位置に固定されたポリヌクレオチドの「遺伝子チップ」アレイ)を用いて同時に評価することができる。1つの核酸と別の核酸とのハイブリダイゼーションを伴うRNA発現の評価方法を用いる場合には、ハイブリダイゼーションはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で行うことが好ましい。
【0205】
この種の方法は、1つまたは複数のRNAの発現レベルの差の検出に依拠しているため、RNAの発現レベルは、アッセイする細胞集団、組織または生物体のうち少なくとも1つにおける発現の評価に用いられる方法の最小検出限界を有意に上回ることが好ましい。
【0206】
多数のRNAをアッセイする場合には、被験試料における各RNAの発現レベルを、単一の反応混合物(すなわち、各RNAに対して、異なる蛍光プローブなどの試薬を用いる)またはRNAのうち1つもしくは複数に対応する個別の反応混合物のいずれかにおいて、同じタイプの非処理試料における多数のRNAのそれぞれの発現のベースラインレベルと比較することができる。1つの例示的な態様において、RNAサイレンシング物質を含む、RISC不活性化因子で処理した細胞集団、組織または生物体における、多数のRNAのうち少なくとも1つの発現レベルが、RNAサイレンシング物質を含む、処理していない細胞集団、組織または生物体における対応するレベルに比して有意に高いことは、アッセイしたRNAおよび/またはアッセイしたRNAをコードする遺伝子が、不活性化されたRNAサイレンシング物質により、直接的または間接的に抑制されることの指標となる。同様に、RNAサイレンシング物質で処理した細胞集団、組織または生物体(処理前にはRNAサイレンシング物質を含まない)における、アッセイした多数のRNAのうち少なくとも1つの発現レベルが、処理していない細胞集団、組織または生物体(RNAサイレンシング物質を含まない)におけるアッセイしたRNAの対応するレベルに比して有意に低いことは、アッセイしたRNAサイレンシング物質が、アッセイしたRNAおよび/またはアッセイしたRNAをコードする遺伝子を(直接的または間接的に)抑制することの指標となる。例示的な態様において、1つのタイプの細胞(例えば、RNAサイレンシング物質を含む、RISC不活性化因子で処理された、または処理されていない細胞)において、アッセイしたRNAに関して観察された発現調節を、別のタイプの細胞(例えば、RNAサイレンシング物質を通常は含まない、RISC不活性化因子で処理された、または処理されていない細胞)において、アッセイしたRNAに関して観察された発現調節と比較することもできる。このようなアプローチは、RNAサイレンシング物質により調節されるRNA/遺伝子を、単一の作用物質による単一のタイプの細胞の処理を評価するアプローチよりもはるかに高い統計学的信頼度で同定するために用いることができる。細胞の並行的なアッセイ/発現プロファイリングの実行(例えば、2回ずつ、3回ずつなどのアッセイ)も、発現プロファイル結果の統計学的信頼度を高めることができる。多数のRNAをアッセイする場合には、1、2、3、4、5、8、10、12、15、20、30もしくは50種またはそれを上回る個々のRNAを、RNAサイレンシング物質および/またはRISC不活性化因子によって調節されるものとして同定することができる。
【0207】
1つの態様において、RNA分子、例えばsiRNAもしくはmiRNA、および/またはRISC不活性化因子は、インビボ、インサイチューまたはインビトロで合成される。細胞の内因性RNAポリメラーゼにインビボもしくはインサイチューでの転写を媒介させてもよく、またはクローニングしたRNAポリメラーゼをインビボもしくはインビトロでの転写のために用いることもできる。インビボでの導入遺伝子からの、または発現構築物からの転写のためには、調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、スプライスドナーおよびアクセプター、ポリアデニル化)を、ss-siRNA、miRNAまたはRISC不活性化因子を転写させるために用いることもできる。阻害のターゲティングは、ある臓器、組織または細胞種における特異的転写;環境条件の刺激(例えば、感染、ストレス、温度、化学誘導物質);および/または発生上の段階もしくは齢数での転写を操作することによって行いうる。RNAサイレンシング物質、例えばss-siRNAを組換え構築物から発現するトランスジェニック生物体は、適切な生物体に由来する接合体、胚性幹細胞または別の多能性細胞に構築物を導入することによって作製しうる。
【0208】
II.短鎖ヘアピンRNA(shRNA)
特徴とされるいくつかの態様において、本発明は、RNAサイレンシングの媒介において効力を発揮するshRNAを提供する。短鎖siRNA二重鎖とは異なり、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)は、miRNAの天然の前駆体によく類似しており、RNAサイレンシング経路の最上位に参入する。この理由から、shRNAは、天然のRNAサイレンシング経路の全体を通じて与えられることにより、RNAサイレンシングをより効率的に媒介すると考えられている。
【0209】
siRNAを生成する短鎖ヘアピンRNA
shRNAは、一本鎖(これは一般に相補的な2つの部分を含み、二重鎖ステムを形成する)およびループ(これはステムの2つの部分を連結する)を有する。1つの好ましい態様において、本発明の短鎖ヘアピンRNAは、所望のsiRNAを送達するように設計された人工的構築物である。
【0210】
本発明のshRNAにおいて、二重鎖ステムの一方の部分は、標的mRNAに対して相補的な核酸配列(またはアンチセンス)である。すなわち、shRNAは、2つの部分を有する二重鎖ステム、および2つのステム部分を連結するループを含む。この2つの部分の長さは、約18または19〜約25、30、35、37、38、39または40ヌクレオチドまたはそれを上回る。哺乳動物細胞に用いる場合、ステム部分の長さは、インターフェロン経路のような非特異的応答を誘発するのを避けるために約30ヌクレオチド未満であるべきである。非哺乳動物細胞では、ステムが30ヌクレオチドよりも長いことも可能である。実際に、ステムは、標的mRNAに対して相補的な、はるかに長い区域(最長でmRNAの全長に至るまで)を含みうる。二重鎖ステムの2つの部分は、ハイブリダイズして二重鎖ステムを形成するように十分に相補的でなければならない。したがって、この2つの部分は、全面的または完全に相補的でありうるが、必ずしもそうでなくともよい。さらに、2つのステム部分は同じ長さであってもよく、または一方の部分が1、2、3もしくは4ヌクレオチドの突出を含むこともできる。突出ヌクレオチドには、例えば、ウラシル(U)(例えば、すべてがU、など)が含まれうる。shRNAにおけるループの長さは、2、3、4、5、6、7、8、9ヌクレオチドまたはそれを上回る、例えば、15または20ヌクレオチド;またはより多くのヌクレオチドであってよい。
【0211】
本発明のshRNAは、所望のsiRNA二重鎖の配列を含む。所望のsiRNA二重鎖は、すなわちshRNA中の2つの両ステム部分は、当技術分野で公知の方法によって選択される。
【0212】
本発明のshRNAの決定的な特徴は、その長さ、配列および/または構造の結果として、それらが、インターフェロン応答もしくはアポトーシスの誘導といった配列非特異的な応答を誘導しないこと、またはそれらが、このような配列非特異的応答を、RNAサイレンシングを誘導するために用いられてきた長い二本鎖RNA(>150bp)よりも低いレベルで誘導することである。例えば、インターフェロン応答は、30塩基対よりも長いdsRNAによって誘発される。
【0213】
III.RNAサイレンシング物質をコードする導入遺伝子
本発明のRNAサイレンシング物質(例えば、siRNA、miRNAなど)およびRISC不活性化因子は、当技術分野で知られた標準的な方法により、例えばDNA自動合成装置(Biosearch社、Applied Biosystems社などが販売しているもの)などを用いることにより、合成することができる。RNAサイレンシング物質およびRISC不活性化因子は、本明細書に記載したように直接用いることができる。RNAサイレンシング物質は、特異的mRNAを破壊のためにターゲティングすることが望ましい細胞に対して、インビトロまたはインビボで送達することができる。さらに、ある種のRNAサイレンシング物質(例えば、siRNA)を、当技術分野で公知の方法により、適切なベクターから発現させることもできる。核酸を基にした分子を細胞に送達するためには、さまざまな方法が開発されている。例えば、インビボ送達のためには、分子を組織部位に直接注入すること、または全身投与することができる。インビトロ送達には、電気穿孔法およびリポフェクション法などの当技術分野で公知の方法が含まれる。
【0214】
内因性mRNAの発現を抑制するのに十分な核酸分子の細胞内濃度を達成するためには、例えば、オリゴヌクレオチドが強力なPolIII(例えば、U6またはPolIII H1-RNAプロモーター)またはPolIIプロモーターの制御下にあるように配置されている組換えDNA構築物を用いることができる。インビトロまたはインビボでの標的細胞のトランスフェクションにこのような構築物を用いることにより、対応するmRNA配列をRNAiによる切断の標的とさせ、そのmRNAをコードする遺伝子の発現を低下させることができるsiRNAの生成をもたらす、十分な量のshRNAの転写が引き起こされると考えられる。(または代替的には、miRNAを発現するようにこのような構築物を作製することもできる)。例えば、細胞によって取り込まれてshRNAまたはmiRNAの転写を導くように、インビボでベクターを導入することができる。このようなベクターは、それが転写されて所望のshRNAまたはmiRNAを産生することが可能である限り、エピソームのままであってもよく、染色体に組み込まれてもよい。
【0215】
このようなベクターは、当技術分野で公知の組換えDNA技術の方法によって作製することができる。ベクターは、哺乳動物細胞または他の標的細胞種における複製および発現のために用いられる、本明細書に記載したような、当技術分野で公知のプラスミド性、ウイルス性または他のベクターであってよい。本発明のshRNAまたはmiRNAをコードする配列は、公知の手法を用いて調製することができる。例えば、shRNAまたはmiRNAの全体をコードする新規遺伝子を作り出すために、2つの合成DNAオリゴヌクレオチドを合成する。対合してクローニングのための適切な「付着末端」を残すと考えられる、これらのDNAオリゴヌクレオチドを、プロモーター配列(例えば、PolIIまたはPolIIIプロモーター)および適切なターミネーター配列(shRNAまたはmiRNA配列の3'側に)(例えば、SV40またはPolIIIターミネーター配列由来の切断およびポリアデニル化シグナル配列)を含むプラスミドの制限部位に挿入する。
【0216】
本発明はまた、前記の発現ベクターのいずれかを含み、それによって本発明の核酸分子を内部で発現する、遺伝的に操作された宿主細胞も含む。宿主細胞は、公知の手法および方法を用いて培養することができる(例えば、Culture of Animal Cells(R.I. Freshney, Alan R. Liss, Inc. 1987);Molecular Cloning, Sambrook et al.(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)を参照されたい)。
【0217】
宿主細胞への本発明のベクターの導入の成功の可否は、さまざまな公知の方法を用いてモニターすることができる。例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)のような蛍光マーカーなどのレポーターを用いて、一過性トランスフェクションを信号化することができる。安定的トランスフェクションは、例えば昆虫細胞および哺乳動物細胞において、トランスフェクト細胞にハイグロマイシンB耐性といった特定の環境因子(例えば、抗生物質および薬剤)に対する耐性を付与するマーカーを用いて表示させることができる。
【0218】
IV.RNA、RNAサイレンシング物質、ベクターおよび宿主細胞の導入方法
核酸を導入する物理的方法には、核酸(例えば、RNA分子および/またはRNAサイレンシング物質)を含む溶液の注入、核酸(例えば、RNA分子および/またはRNAサイレンシング物質)によって覆われた粒子による射入、細胞または生物体を核酸(例えば、RNA分子および/またはRNAサイレンシング物質)の溶液中に浸漬すること、または核酸(例えば、RNA分子および/またはRNAサイレンシング物質)の存在下での細胞膜の電気穿孔法が含まれる。ウイルス粒子中にパッケージ化されたウイルス構築物は、発現構築物の細胞内への効率的な導入、および発現構築物によってコードされるRNA分子またはサイレンシング物質の転写の両方を実現すると考えられる。核酸または核酸を基にした作用物質を細胞に導入するために、脂質を介した担体輸送、リン酸カルシウムなどの化学物質を介した輸送といった当技術分野で公知のその他の方法を用いてもよい。このようにして、核酸を基にした作用物質を、以下の活性の1つまたは複数を遂行する成分とともに導入してもよい:細胞による取り込みを強める、一本鎖のアニーリングを阻害する、一本鎖を安定化する、または標的遺伝子の阻害を他の様式で増強する。
【0219】
核酸を基にした作用物質は、細胞に直接導入してもよく(すなわち、細胞内);または腔内、間質空間に、生物体の循環路に細胞外性に導入してもよく、経口的に導入してもよく、または核酸を基にした作用物質(例えば、RNA分子および/またはRNAサイレンシング物質)を含む溶液中に細胞または生物体を浸すことによって導入してもよい。核酸を基にした作用物質(例えば、RNA分子および/またはRNAサイレンシング物質)を導入しうる部位には、血管性循環または血管外循環、血液系またはリンパ系、および脳脊髄液がある。
【0220】
標的遺伝子を有する細胞は、あらゆる生物体に由来するもの、またはそれに含まれるものであってよい。生物体は、植物、動物、原生動物、細菌、ウイルスまたは真菌であってよい。植物は、単子葉植物、双子葉植物または裸子植物であってよい;動物は脊椎動物でも無脊椎動物でもよい。好ましい微生物は、農業において、または産業界によって用いられているもの、ならびに植物または動物に対して病原性のものである。真菌には、糸状および酵母状のいずれの形態の生物体も含まれる。植物には、以下のものが含まれる:シロイヌナズナ;農作物(例えば、アルファルファ、オオムギ、マメ、トウモロコシ、ワタ、アマ、エンドウ、ナタネ、イネ、ライムギ、ベニバナ、モロコシ、ダイズ、ヒマワリ、タバコおよびコムギ);野菜類(例えば、アスパラガス、テンサイ、ブロッコリー、キャベツ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、キュウリ、ナス、レタス、タマネギ、コショウ、ジャガイモ、パンプキン、ダイコン、ホウレンソウ、カボチャ、タロイモ、トマトおよびズッキーニ);果実および木の実(例えば、アーモンド、リンゴ、アンズ、バナナ、クロイチゴ、ブルーベリー、カカオ、チェリー、ココナッツ、クランベリー、ナツメヤシ、フェイジョア、ハシバミ、ブドウ、グレープフルーツ、グアバ、キウイ、レモン、ライム、マンゴー、メロン、ネクタリン、オレンジ、パパイア、パッションフルーツ、モモ、ピーナッツ、洋ナシ、パイナップル、ピスタチオ、プラム、ラズベリー、イチゴ、ミカン、クルミおよびスイカ);ならびに観賞植物(例えば、ハンノキ、トネリコ、アスペン;アザレア、シラカバ、ツゲ、ツバキ、カーネーション、キク、ニレ、モミ、ツタ、ジャスミン、ビャクシン、オーク、ヤシ、ポプラ、マツ、アカスギ、ツツジ、バラおよびゴム)。脊椎動物の例には、魚類、哺乳動物、ウシ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、齧歯動物、ハムスター、マウス、ラット、霊長動物およびヒトが含まれる;無脊椎動物には、線虫類、その他の虫、ショウジョウバエおよびその他の昆虫が含まれる。
【0221】
標的遺伝子を有する細胞は、生殖系列または体細胞、全能性または多能性、分裂性または非分裂性、実質性または上皮性、不死化されたものまたは形質転換されたもの、等のいずれに由来してもよい。細胞は幹細胞でも分化細胞でもよい。分化した細胞種には、脂肪細胞、線維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮、ニューロン、グリア、血液細胞、巨核球、リンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、白血球、顆粒球、ケラチノサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞、および内分泌腺または外分泌腺の細胞が含まれる。
【0222】
個々の標的遺伝子および送達されるRNAサイレンシング物質の用量に応じて、このプロセスは標的遺伝子の部分的または完全な機能喪失をもたらしうる。標的とされた細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%またはそれ以上における遺伝子発現の低下または消失が典型例である。遺伝子発現の阻害とは、標的遺伝子からのタンパク質および/またはmRNA産物のレベルの消失(または観察可能な低下)のことを指す。特異性とは、細胞の他の遺伝子に対する明らかな影響を伴わずに標的遺伝子を阻害しうることを指す。阻害の結果は、細胞もしくは生物体の外面的な性質の検査により(以下の実施例で提示しているように)、または、RNA溶液のハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイを用いた遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、その他のイムノアッセイおよび蛍光活性化細胞分析(FACS)といった生化学的手法により、確認することができる。
【0223】
細胞系または生物体全体におけるRNAを介した阻害のためには、遺伝子発現を、タンパク質産物を容易にアッセイしうるレポーター遺伝子または薬剤耐性遺伝を用いることによってアッセイすることが好都合である。このようなレポーター遺伝子には、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)およびそれらの誘導体が含まれる。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキサート、ホスフィノトリシン、ピューロマイシンおよびテトラサイクリンに対する耐性を付与する、多数の選択マーカーが利用可能である。アッセイに応じて、遺伝子発現の量の定量化により、本発明による処理を受けていない細胞に比して10%、33%、50%、90%、95%または99%を上回る阻害の程度を決定することが可能となる。注射材料の用量が少なくなり、RNAi因子の投与後の時間が長くなるほど、阻害される細胞の割合は低下する可能性がある(例えば、標的とされた細胞の少なくとも10%、20%、50%、75%、90%または95%)。細胞における遺伝子発現の定量により、標的mRNAの蓄積または標的タンパク質の翻訳のレベルで同程度の量の阻害が示される可能性もある。一例として、阻害の効率は、細胞内の遺伝子産物の量を評価することによって決定しうる;mRNAは、阻害性二本鎖RNAのために用いられる領域の外側のヌクレオチド配列を有するハイブリダイゼーションプローブを用いて検出することができ、または翻訳されたポリペプチドを、その領域のポリペプチド配列に対して作製された抗体を用いて検出してもよい。
【0224】
RNAサイレンシング物質は、1細胞当たり少なくとも1つのコピーの送達を可能にする量で導入することができる。より高用量(例えば、1細胞当たり少なくとも5、10、100、500または1000コピー)の材料によって、より効果的な阻害が得られる可能性がある;より低い用量も特定の用途には有用な可能性がある。
【0225】
本発明のRISC不活性化因子の有効性は、本明細書に記載したように、遺伝子発現の阻害の低下または逆転を検出することにより、容易にアッセイすることができる。
【0226】
V.アレイ
発現アレイは、一本鎖核酸分子、例えばポリヌクレオチドプローブを、二次元マトリックスまたはアレイ状の基質に結合させることによって作製することができる。それぞれの一本鎖ポリヌクレオチドプローブは、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40もしくは50個またはそれよりも多くの連続したヌクレオチドを含みうる。アレイは、アッセイする細胞、組織または生物体の、単一のRNAからトランスクリプトソーム全体(例えば、変異型スプライス形態および変異型配列を含む)にわたるプローブの包括的集成物までに至る、任意の数のRNAに対するプローブを含みうる。
【0227】
A.アレイの調製
アレイは当技術分野で公知であり、配列の点で遺伝子産物(例えば、cDNA、mRNA、cRNA、ポリペプチドおよびそれらの断片)に対応するプローブを、既知の位置に特異的にハイブリダイズまたは結合させることができる表面からなる。アレイは、それぞれの位置が遺伝子によってコードされる産物(例えば、タンパク質またはRNA)の離散的な結合部位に相当し、結合部位が生物体のゲノム中の遺伝子の大部分またはほとんどの産物に対して存在するようなマトリックスであってもよい。1つの態様において、「結合部位」(本明細書では以後「部位」)とは、特定の同種(cognate)cDNAを特異的にハイブリダイズさせることができる核酸または核酸類似体のことである。結合部位の核酸または類似体は、例えば、合成オリゴマー、完全長cDNA、完全長に満たないcDNA、または遺伝子断片でありうる。
【0228】
B.アレイ用の核酸分子の調製
上述したように、特定の同種cDNAが特異的にハイブリダイズしうる「結合部位」は通常、その結合部位に結合した核酸または核酸類似体である。これらのDNAは、例えば、ゲノムDNA、cDNA(例えば、RT-PCRによる)またはクローニングされた配列からの遺伝子セグメントのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって得ることができる。PCRプライマーは、一意的な断片(すなわち、アレイ上の他のいずれの断片とも、10塩基を上回る連続した同一な配列を共通に有していない配列)の増幅をもたらす、遺伝子またはcDNAの既知の配列に基づいて選択される。必要な特異性および最適な増幅特性を備えたプライマーの設計にはコンピュータプログラムが有用である。例えば、Oligoバージョン5.0(National Biosciences(商標))を参照されたい。非常に長い遺伝子に対応する結合部位の場合には、オリゴ-dTプライマーを有するcDNAプローブをアレイにハイブリダイズさせた場合に完全長に満たないプローブが効率的に結合するように、遺伝子の3'末端の近傍のセグメントを増幅することが時には望ましいと考えられる。一般的にはアレイ上の各遺伝子断片の長さは約50bp〜約2000bpであると考えられ、より一般的には約100bp〜約1000bp、通常は約300bp〜約800bpであると考えられる。PCR法は周知であり、例えば、Innis et al. eds., 1990, PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications, Academic Press Inc. San Diego, Calif.(これはその全体が参照として組み入れられる)に記載されている。核酸の単離および増幅のためにはコンピュータ制御されたロボット工学システムが有用である。
【0229】
アレイ用の核酸分子を作製するための1つの代替的な手段は、例えば、N-ホスホネートまたはホスホルアミダイト化学を用いた、合成ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの合成による(Froehler et al.(1986) Nucleic Acid Res 14:5399-5407;McBride et al.(1983) Tetrahedron Lett. 24:245-248)。合成配列の長さは約15〜約500塩基、より一般的には約20〜約50塩基である。いくつかの態様において、合成核酸は、天然型でない塩基、例えばイノシンを含む。上述したように、核酸分子類似体をハイブリダイゼーション用の結合部位として用いることもできる。適した核酸類似体の一例はペプチド核酸である(例えば、Egholm et al.(1993) Nature 365:566-568;米国特許第5,539,083号も参照されたい)。
【0230】
1つの代替的な態様において、結合(ハイブリダイゼーション)部位は、遺伝子のプラスミドクローンもしくはファージクローン、cDNA(例えば、発現配列タグ)、またはそれらからのインサート(Nguyen et al.(1995) Genomics 29:207-209)から作製される。さらにもう1つの態様において、結合部位のポリヌクレオチドはRNAである。
【0231】
C.固体表面に対する核酸分子の結合
核酸分子または類似体を固体支持体に対して結合させるが、これはガラス、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ナイロン)、ポリアクリルアミド、ニトロセルロースまたはその他の材料でできたものでよい。核酸分子を表面に結合させるための方法の一例は、Schena et al.(1995) Science 270:467-470(その内容は参照として本明細書に明示的に組み入れられる)に一般的に記載されているように、ガラスプレート上に印刷することによる。この方法は、cDNAのアレイを調製するために特に有用である。DeRisi et al.(1996) Nature Genetics 14:457-460;Shalon et al.(1996) Genome Res. 6:639-645;およびSchena et al.(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10539-11286も参照されたい。前記の論文はそれぞれ、その全体が参照として組み入れられる。
【0232】
アレイを作製するための方法の第2の例は、高密度オリゴヌクレオチドアレイを作製することによる。インサイチュー合成のためのフォトリソグラフィー法を用いて(Fodor et al.,(1991) Science 251:767-773;Pease et al.,(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5022-5026;Lockhart et al.(1996) Nature Biotech 14:1675;米国特許第5,578,832号;第5,556,752号;および第5,510,270号。これらはそれぞれ、その全体がすべての目的において参照として組み入れられる)、または規定されたオリゴヌクレオチドの迅速合成および沈着のためのその他の方法(Blanchard et al.(1996) Biosensors & Bioelectronics 11:687-90)を用いて、規定された配列に対して相補的な数千ものオリゴヌクレオチドを表面上の規定された位置に含むアレイを作製するための手法が知られている。これらの方法を用いる場合には、既知の配列を有するオリゴヌクレオチド(例えば、20mer)を、誘導体化したガラススライドなどの表面に直接合成する。1つの態様において、作製されるアレイは冗長性であり、1つのRNA当たり複数のオリゴヌクレオチド分子を有する。オリゴヌクレオチドプローブは、選択的スプライシングを受けたmRNAを検出するように選択することができる。
【0233】
アレイを作製するための他の方法、例えば、マスキング(masking)(Maskos and Southern, 1992, Nuc. Acids Res. 20:1679-1684)を用いることもできる。原則としては、あらゆるタイプのアレイ、例えば、ナイロンハイブリダイゼーション膜上のドットブロット(Sambrook et al., Molecular Cloning--A Laboratory Manual(2nd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989を参照されたい。これはその全体が本明細書に組み入れられる)を用いうると考えられるものの、当業者は認識しているであろうが、ごく小型のアレイの方が、ハイブリダイゼーション容積が小さくなると考えられるため、好ましい。
【0234】
アレイを作製するためのもう1つの方法は、プローブをアレイ表面に直接沈着させることである。このような態様において、プローブは、アレイの表面およびプローブ特性に応じて、アレイに対して非共有的または共有的にも結合すると考えられる。好ましい態様において、アレイは顕微鏡用スライドガラスの上面にエポキシコーティングを有し、プローブはアミノ末端でアミノ基によって修飾される。アレイ表面およびプローブ修飾のこの組み合わせは、プローブの共有結合をもたらす。アレイ表面をコーティングする他の方法には、アクリルアミド、シラン化およびニトロセルロースの使用が含まれる。アレイ表面に対するプローブの沈着を導くためには、いくつかの方法がある。1つの態様においては、ピン分配法(pin dispense technique)を用いてプローブを沈着させる。この手法では、接触式または非接触式の印刷法のいずれかを用いて、プローブをピンから表面に沈着させる。1つの好ましい態様は、クイル式先端を備えたピン(quill tip pin)を用いる非接触式印刷法である。もう1つの態様では、プローブを沈着させるために圧電式分配法を用いる。
【0235】
対照組成物がアレイ上に存在してもよく、これには、ゲノムDNA、ハウスキーピング遺伝子、陰性および陽性の対照遺伝子などに対応するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む組成物が含まれる。これらのうち、後者の組成物は「独特」なものではない、すなわちそれらは「一般的」である。言い換えれば、それらは、その機能が、関心対象の特定の「鍵となる」遺伝子が発現されるか否かを伝えることではなく、発現のバックグラウンドレベルまたは基礎レベルといった他の有用な情報を提供することにある、較正用遺伝子または対照遺伝子である。同じタイプの遺伝子に対応する独特なオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドから構成されるサンプルのパーセンテージは、一般に少なくとも約30%であり、通常は少なくとも約60%であり、より一般的には少なくとも約80%である。
【0236】
D.標識プローブの作製
全RNAおよびポリ(A)+RNAを調製するための方法は周知であり、Sambrook et al.、前記に一般的に記載されている。1つの態様において、RNAは、本発明における関心対象のさまざまなタイプの細胞から、チオシアン酸グアニジウム溶解に続いてCsCl遠心処理を用いることで抽出される(Chirgwin et al.(1979) Biochemistry 18:5294-5299)。ポリ(A)+RNAは、オリゴ-dTセルロースを用いた選択によって選択される(Sambrook et al.、前記を参照)。
【0237】
標識cDNAは、オリゴdTプライマーまたはランダムプライマーを用いる逆転写(これらはいずれも当技術分野で周知であり、例えば、Klug and Berger (1987) Methods Enzymol. 152:316-325を参照されたい)によって、mRNAから調製される。逆転写を、検出可能な標識と結合したdNTP、例えば、放射性標識または蛍光標識がなされたdNTPの存在下で行うこともできる。または、単離したmRNAを、標識dNTPの存在下での二本鎖cDNAのインビトロ転写によって合成される標識アンチセンスRNAに変換させることもできる(Lockhart et al.(1996) Nature Biotech. 14:1675。その内容は参照として本明細書に明示的に組み入れられる)。代替的な態様において、cDNAプローブまたはRNAプローブを検出可能な標識の非存在下で合成し、その後に、例えば、ビオチン化dNTPもしくはrNTPの取り込み、またはいくつかの類似の手段(例えば、ビオチンのソラレン誘導体をRNAに対して光架橋させること)に続いて、標識ストレプトアビジン(例えば、フィコエリトリン結合ストレプトアビジン)または同等物を添加することにより、標識してもよい。
【0238】
蛍光標識プローブを用いる場合には、フルオロセイン、リサミン、フィコエリトリン、ローダミン(Perkin Elmer Cetus(商標))、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX(Amersham(商標))および他のもの(例えば、Kricka (1992) Nonisotopic DNA Probe Techniques, Academic Press San Diego, Calif.)を含む、多くの適したフルオロフォアが知られている。フルオロフォアの対は、それらを容易に識別しうるように、異なる発光スペクトルを有するものが選択されることは理解されるであろう。
【0239】
蛍光標識以外の標識を用いることもできる。例えば、放射性標識、または発光スペクトルの異なる放射性標識の対を用いることができる(Zhao et al.(1995) Gene 156:207;Pietu et al.(1996) Genoine Res. 6:492)。
【0240】
1つの態様において、標識cDNAは、0.5mM dGTP、dATPおよびdCTP+0.1mM dTTP+蛍光デオキシリボヌクレオチド(例えば、0.1mMのローダミン110 UTP(Perken Elmer Cetus)または0.1mMのCy3 dUTP(Amersham(商標))を含む混合物を、逆転写酵素(例えば、SuperScript(商標).II, LTI Inc.)とともに42℃で60分間インキュベートすることによって合成される。
【0241】
E.標的の作製
1つの検出方法では、固定化された核酸分子またはプローブのアレイを、放射性標識または蛍光標識を結合させた標的核酸分子を含む標的試料と接触させる。標的核酸分子をアレイ上のプローブに対してハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしなかった分子は除去する。蛍光標識した標的に関しては、ハイブリダイズした標的核酸分子を含むアレイに、その蛍光標識を励起させる光を当てる。その結果得られた蛍光強度または輝度を検出する。または、放射性標識された標的に関しては、放射性標識の放射を検出する。
【0242】
1つの態様において、標的cDNAは、選択した細胞、組織または生物体の試料(標的試料)に由来するRNAから作製される。cDNAを、ハイブリダイゼーションの検出のために上記の検出標識の1つによって標識された第2の分子と特異的に結合する分子で標識してもよい。1つの態様では、cDNAをビオチン化dNTPを用いて合成する。続いて、ビオチン化された標的cDNAをアレイとハイブリダイズさせる。続いて、適切なフルオロフォアによって標識されたストレプトアビジンを用いて第2のハイブリダイゼーションを行う。ストレプトアビジンはビオチン化cDNAと特異的に結合し、プローブに対するcDNAハイブリダイゼーションの検出をもたらすと考えられる。もう1つの態様において、cDNAは、cDNAが合成される際に捕捉用配列を加える特定のプライマー配列を用いて合成される。捕捉配列を有するcDNAを、アレイ上のプローブに対してハイブリダイズさせる。第2のハイブリダイゼーションは、捕捉用配列と特異的に結合する蛍光標識分子を用いて行われ、プローブに対するcDNAハイブリダイゼーションの検出がもたらされる。検出は視覚的でもよく、またはコンピュータ支援によるものでもよい。
【0243】
F.アレイに対するハイブリダイゼーション
核酸ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件は、プローブが特定のアレイ部位に対して「特異的に結合する」または「特異的にハイブリダイズする」ように、すなわち、プローブが、相補的核酸配列を有する配列アレイ部位に対してはハイブリダイズする、二重鎖を形成する、または結合するが、非相補的な核酸配列を有する部位とはハイブリダイズしないように選択される。本明細書で用いる場合、1つのポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチドのうち短い方が25塩基と等しいかそれ未満であれば、標準的な塩基対合則を用いてミスマッチがない場合、またはポリヌクレオチドのうち短い方が25塩基より長ければ、ミスマッチが5%を上回らない場合には、別のポリヌクレオチド配列に対して相補的であるとみなされる。好ましくは、ポヌクレオチドは完全に相補的である(ミスマッチがない)。特異的ハイブリダイゼーション条件が特異的ハイブリダイゼーションもたらすことは、陰性対照を含むハイブリダイゼーションアッセイを行うことによって容易に示すことができる(例えば、Shalon et al.、前記およびChee et al.、前記を参照)。
【0244】
最適なハイブリダイゼーション条件は、標識プローブおよび固定化されたポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの長さ(例えば、オリゴマーであるか、それとも200塩基を上回るポリヌクレオチドであるか)および種類(例えば、RNA、DNA、PNA)に依存すると考えられる。核酸分子に関する特異的(すなわち、ストリンジェントな)ハイブリダイゼーション条件のための一般的なパラメーターは、Sambrook et al.、前記およびAusubel et al., 1987, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York(これはその全体がすべての目的において組み入れられる)に記載されている。このようなストリンジェントな条件は当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons、N.Y.(1989)のセクション6.3.1-6.3.6に記載されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非制限的な例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、約45℃中でのハイブリダイゼーションに続いて、0.2×SSC、0.1% SDS、50〜65℃中で1回または複数回の洗浄を行うことである。また、有用なハイブリダイゼーション条件は、例えば、Tijessen, 1993, Hybridization With Nucleic Acid Probes, Elsevier Science Publishers B.V.およびKricka, 1992, Nonisotopic DNA Probe Techniques, Academic Press San Diego, Califにも提示されている。
【0245】
G.シグナル検出およびデータ解析
蛍光標識プローブを用いる場合には、転写物アレイの各部位での蛍光発光を、走査型共焦点レーザー顕微鏡によって検出することが好ましい。1つの態様においては、適切な励起線を用いる別々のスキャニングを、用いる2種類のフルオロフォアのそれぞれに対して行う。または、2つのフルオロフォアに対して特異的な波長での同時標本発光を可能にするレーザーを用い、2つのフルオロフォアからの発光を同時に分析することもできる(Shalon et al., 1996, A DNA array system for analyzing complex DNA samples using two-color fluorescent probe hybridization, Genome Research 6:639-645を参照。これはその全体がすべての目的において参照として組み入れられる)。アレイを、コンピュータ制御されたX-Yステージおよび顕微鏡用対物レンズを備えたレーザー蛍光スキャナによって走査することもできる。2つのフルオロフォアの逐次的励起は多重系列の混合ガスレーザーを用いて行い、放出された光を波長別に分割して、2つの光電子倍増管を用いて検出する。蛍光レーザースキャニング装置35は、Schena et al., 1996, Genome Res. 6:639-645および本明細書で引用した他の参考文献に記載されている。または、Ferguson et al., 1996, Nature Biotech. 14:1681-1684によって記載された光ファイバー束を用いて、多数の部位でのmRNAの存在度のレベルを同時にモニターすることもできる。
【0246】
信号を記録し、1つの態様においては、コンピュータにより、例えば、12ビットのアナログ-デジタル処理ボードを用いて解析する。1つの態様においては、スキャンされた画像は画像処理プログラム(例えば、Hijaak Graphics Suite)を用いてノイズ除去され(despeckled)、続いて、各波長での各部位の平均ハイブリダイゼーションのスプレッドシートを生成する画像グリッド化プログラムを用いて解析する。必要に応じて、2つの蛍光体のチャネル間の「クロストーク」(または重複)について実験的に判定した補正を加えてもよい。転写物アレイのあらゆる個々のハイブリダイゼーション部位に関して、2つのフルオロフォアの発光の比を算出することができる。この比は同種遺伝子の絶対的な発現レベルには依存しないが、薬剤投与、遺伝子除去または他の任意の被験イベントによって発現が有意に調節される遺伝子に対しては有用である。本発明のこの方法によれば、2種類の細胞または細胞系におけるmRNAの相対的存在度に、擾乱性がある(すなわち、被験mRNAの2つの源において存在度が異なる)または擾乱性がない(すなわち、相対的存在度が同じである)とスコア化される。本明細書で用いる場合、RNAの2つの源の間の差の倍率が、少なくとも約25%(一方の源からのRNAがもう一方の源よりも25%多く存在する)、より一般的には約50%、さらには約2(2倍多く存在する)、3(3倍多く存在する)または5(5倍多く存在する)であれば、擾乱性があるとスコア化される。本検出方法は、約2倍およびそれを上回る程度の差について、信頼性のある検出を可能にするが、より高感度な方法が開発されることが予想される。
【0247】
多くの場合には、擾乱を陽性または陰性として特定することに加えて、擾乱の大きさを決定することが有益である。これは、上述したように、識別標識のために用いた2種類のフルオロフォアの発光の比を算出することにより、または当業者に直ちに明らかであると考えられる類似の方法により、実施しうる。
【0248】
もう1つの態様では、単一のフルオロフォアを用い、試料からのハイブリダイゼーションのすべてを単一の波長で検出する。この方法では、発現レベルを決定するために試料をすべて互いに比較する。発現膜結合型分子のレベルは、単一波長による試料のすべてからの蛍光強度の値を比較することによって決定される。単一のフルオロフォアをハイブリダイゼーション用に用いるデータ解析のために用いられる方法にはいくつか異なるものがある。1つの方法は、全体的な標準化を用いることである。手短に述べると、配列のすべてからの強度値を各試料に関して平均化する。続いて、試料の強度平均のすべてを平均化して実験強度平均を求める。実験強度平均を試料平均で除算することにより、各試料についての補正係数を算出する。配列強度値のすべてに補正係数を掛ける。標準化の後に、処理試料の値を処理していない試料の値で除算して、発現変化の倍数を求める。
【0249】
強度値を分析するためのもう1つの方法は、ノンパラメトリック分析を用いる。マイクロアレイデータのノンパラメトリック統計分析はスピアマン順位分析(Spearman Rank Analysis)によって行われる。第1の方法では、各遺伝子に対して、各試料の内部で測定された蛍光/放射性標識強度の順に順位を付け、順位を被験試料とグループ化した対照試料との間で比較する。それぞれの比較の統計学的有意性を記録する。第2の方法では、各遺伝子に対して、試料間で測定された蛍光/放射性標識強度の順に順位を付け、順位を被験試料とグループ化した対照試料間との間で比較する。それぞれの比較の統計学的有意性を記録する。いずれの方法でも、各遺伝子を、それぞれの処理について対照試料よりも順位が統計学的に有意に高かった被験試料の数について算定する。
【0250】
VI.治療の方法
本発明は、異常または望ましくない遺伝子の発現または活性と関連性のある障害のリスクがある(またはそれに対する感受性がある)かその障害を有する対象を治療する、予防的および治療的方法の両方を提供する。本明細書で用いる「治療」または「治療すること」とは、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状または疾患に対する素因を治癒させる、癒す、軽減する、緩和する、変化させる、修復する、寛解させる、改善するまたは影響を及ぼすことを目的とする、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状または疾患に対する素因を有する患者に対する治療薬(例えば、短鎖RNA阻害因子、例えばsiRNA阻害因子)の適用もしくは投与、または患者由来の単離された組織または細胞系に対する治療薬の適用もしくは投与と定義される。
【0251】
治療の予防的および治療的方法の双方に関して、このような治療を、薬理ゲノム学の分野から得られた知識に基づいて特別に個別化すること、または修正することができる。本明細書で用いる「薬理ゲノム学」とは、遺伝子シークエンシング、統計遺伝学および遺伝子発現解析などのゲノム学の技術を、臨床開発中および上市されている医薬品に適用することを指す。より具体的には、この用語は、患者の遺伝子がいかにして彼または彼女の薬剤に対する反応性を決定するか(例えば、患者の「薬物反応性表現型」または「薬物反応性遺伝子型」)に関する研究のことを指す。したがって、本発明のもう1つの局面は、本発明の標的遺伝子分子または標的遺伝子調節因子のいずれかによる個体の予防的または治療的処置を、その個体の薬物反応性遺伝子型に従って個別化するための方法を提供する。薬理ゲノム学により、臨床医または医師が、治療によって最大の利益を得ると考えられる患者に予防的または治療的処置の対象を絞り込み、有害な薬物関連副作用を生じると考えられる患者への治療を避けることが可能になる。
【0252】
1.予防的方法
1つの局面において、本発明は、対象における標的遺伝子の異常または望ましくない発現または活性と関連性のある疾患または状態を、対象に治療薬(例えば、RISC不活性化因子)を投与することによって予防するための方法を提供する。例示的な態様は、本発明のRISC不活性化因子を投与することによってRNAi因子(例えば、siRNA)を特異的に不活性化するための方法を特徴とする。RISC不活性化因子の使用により、例えば、このような治療が長期間にわたって行われれば有害であるような対象における、siRNA治療などの時間的調節が可能となる。本発明のRISC不活性化因子を、異常または望ましくないmiRNA活性を阻害するために治療的に用いることもできる。標的遺伝子の異常または望ましくない発現または活性に起因する、またはそれが一因であるような疾患に対するリスクを有する対象は、例えば、本明細書に記載の診断的または予後判定的アッセイの任意のものまたはその組み合わせによって同定しうる。予防薬の投与は、疾患または障害が予防されるように、またはその進行が遅くなるように、標的遺伝子の異常に特徴的な症状が発現する前に行うことができる。例えば、標的遺伝子異常の種類に応じて、標的遺伝子、標的遺伝子アゴニストまたは標的遺伝子アンタゴニスト因子を、対象を治療するために用いることができる。適切な作用因子は、本明細書に記載のスクリーニングアッセイに基づいて決定しうる。
【0253】
2.治療的方法
本発明のもう1つの局面は、治療を目的として、標的遺伝子の発現、タンパク質発現または活性を調節する方法に関する。したがって、1つの例示的な態様において、本発明の調節方法は、標的遺伝子を発現しうる細胞を、標的タンパク質の発現または1つもしくは複数の活性が調節されるように、遺伝子またはタンパク質を標的とする短鎖RNAに対して特異的な(例えば、前記遺伝子によってコードされるmRNAを標的とするか、または前記タンパク質のアミノ酸配列を指定する、短鎖RNA、例えばsiRNAまたはmiRNAに対して特異的な)治療薬(例えば、RISC不活性化因子)を接触させる段階を含む。これらの調節方法はインビトロで行うこともでき(例えば、細胞を作用因子とともに培養することによる)、または代替的にはインビボで行うこともできる(例えば、対象に作用因子を投与することによる)。このため、本発明は、標的遺伝子のポリペプチドまたは核酸分子の異常または望ましくない発現または活性を特徴とする疾患または障害に罹患した個体を治療する方法を提供する。標的遺伝子活性の阻害は、標的遺伝子が異常にアップレギュレートされているような、および/または有益な効果を得るためには標的遺伝子活性の低下が望ましいような状況において望ましい。
【0254】
3.薬理ゲノム学
本発明の治療薬(例えば、RISC不活性化因子)は、標的遺伝子の異常または有害な活性と関連性のある障害を治療(予防的または治療的に)するために個体に投与することができる。このような治療に関連して、薬理ゲノム学(すなわち、個体の遺伝子型とその個体の外来性化合物または薬物に対する反応との間の関係に関する学問)を考慮することもできる。治療薬の代謝の違いは、薬理活性のある薬物の投与量と血中濃度との間の関係を変化させることにより、高度の毒性または治療の失敗につながりうる。このため、医師または臨床医は、治療薬を投与するか否かの決定、または治療薬による治療の投与量および/もしくは治療レジメンの個別化に、関連する薬理ゲノム学的な検討で得られた知識を適用することを考慮することができる。
【0255】
薬理ゲノム学は、罹患者における薬物分布の変化および異常作用に起因する、薬物に対する反応における臨床的に意味のある遺伝的変動を取り扱う。例えば、Eichelbaum, M. et al.(1996) Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 23(10-11):983-985およびLinder, M.W. et al.(1997) Clin. Chem. 43(2):254-266を参照されたい。一般に、2つのタイプの薬理ゲノム学的状態を区別することができる。薬物が身体に作用する様式を変化させる単一因子として伝達される遺伝的状態(薬物作用の変化)、または身体が薬物に対して作用する様式を変化させる単一因子として伝達される遺伝的状態(薬物代謝の変化)である。これらの薬理ゲノム学的状態は、稀な欠損症または天然型の多型のいずれかとして出現しうる。例えば、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症(G6PD)はよくみられる遺伝性酵素病であり、その主な臨床的合併症はオキシダント類(抗マラリア薬、スルホンアミド、鎮痛薬、ニトロフラン)の経口摂取後およびソラマメの摂食後に起こる溶血である。
【0256】
「ゲノムワイド相関(genome-wide association)」として公知の、薬物反応を予想させる遺伝子を同定するための薬理ゲノム学的アプローチの1つは、主として、既知の遺伝子関連マーカーからなるヒトゲノムの高精度地図(例えば、それぞれ2つの変異体を有する、ヒトゲノムの60,000〜100,000個の多型的または可変的な部位からなる「二対立遺伝子(bi-allelic)」遺伝子マーカー地図)に依拠している。観察される特定の薬物反応または副作用と関連するマーカーを同定する目的で、このような高精度遺伝子地図を、医薬品第II/III相試験に参加した統計的に有意な数の患者のそれぞれのゲノムの地図と比較することができる。または、ヒトゲノムにおける約1000万個の既知の一塩基多型(SNP)の組み合わせから、このような高精度地図を作成することもできる。本明細書で用いる場合、「SNP」とは、DNA鎖の単一のヌクレオチド塩基に生じる一般的な変化のことである。例えば、SNPはDNAの1000塩基毎に1回生じると考えられる。SNPは疾患過程に関与する可能性があるが、その大多数は疾患に関連しないと思われる。このようなSNPの出現に基づく遺伝地図があれば、個体を、個々のゲノムにおける特定のSNPのパターンに応じて複数の遺伝的カテゴリーにグループ分けすることができる。このようにして、このような遺伝的に類似した個体間で共通すると思われる形質を考慮に入れて、遺伝的に類似した個体の群に合わせて治療レジメンを個別化することが可能となる。
【0257】
または、「候補遺伝子アプローチ」と命名された方法を用いて、薬物反応を予想させる遺伝子を同定することもできる。この方法によれば、薬物標的(例えば、本発明の標的遺伝子ポリペプチド)をコードする遺伝子が知られていれば、集団におけるその遺伝子のすべての一般的な変異体を実に容易に同定することができ、その遺伝子の1つの変種を有することが別の変種の場合と対比して特定の薬物反応に関連するかどうかを判定することができる。
【0258】
一例となる態様として、薬物代謝酵素の活性は、薬物作用の強度および持続時間の両方に関する主な決定要因である。薬物代謝酵素(例えば、N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)ならびにシトクロムP450酵素CYP2D6およびCYP2C19)の遺伝的多型の発見は、一部の患者で期待された薬物効果が得られなかったり、または標準的で安全な用量の薬物を服用した後に薬物反応の悪化および重篤な毒性が認められたりする理由の説明となった。これらの多型は集団において高代謝能型(EM)および低代謝能型(PM)という2つの表現型として発現される。PMの出現率は集団によって異なる。例えば、CYP2D6をコードする遺伝子は多型性が高く、PMにはいくつかの変異が同定されており、それらはいずれも機能的CYP2D6の欠如をもたらす。CYP2D6およびCYP2Cl9に関して低代謝能型の人々は、標準的用量を投与された際に薬物反応の悪化および副作用を経験する頻度が極めて高い。代謝産物が有効治療成分である場合には、CYP2D6によって生じる代謝産物であるモルヒネを介したコデインの鎮痛効果に関して示されているように、PMは何ら治療的反応を示さない。他方の極端な例は、標準的な投与量に反応しない、いわゆる超迅速代謝能型(ultra-rapid metabolizer)である。最近、超迅速代謝にはCYP2D6遺伝子増幅という分子的基盤があることが同定された。
【0259】
または、「遺伝子発現プロファイリング」と呼ばれる方法を用いて、薬物反応を予測させる遺伝子を同定することもできる。例えば、本発明の治療薬を投与した動物の遺伝子発現により、毒性にかかわる遺伝子経路が作動したか否かに関する指標が得られる。
【0260】
上記の薬理ゲノム学的アプローチの複数から得られた情報は、個体の予防的または治療的処置のための適した投与量および治療レジメンを決定するために用いることができる。この知見は、投薬または薬物の選択に適用された場合、本明細書に記載したような治療薬によって対象を治療する際の有害反応または治療の失敗を回避させ、それによって治療的または予防的有効性を高めることができる。
【0261】
治療薬は、適切な動物モデルで試験することができる。例えば、本明細書に記載の短鎖RNA阻害因子(例えば、siRNA阻害因子)を、前記薬剤による治療の有効性、毒性または副作用を明らかにする目的で、動物モデルに用いることができる。または、治療薬の作用機序を明らかにする目的で、治療薬を動物モデルに用いることもできる。例えば、薬剤を、このような薬剤による治療の有効性、毒性または副作用を明らかにするために、動物モデルに用いることができる。または、薬剤を、このような薬剤の作用機序を明らかにするために動物モデルに用いることもできる。
【0262】
VI.薬学的組成物
本発明は、本明細書に記載した治療的処置のための上記の作用因子の使用に関する。すなわち、本発明の調節因子は、投与のために適した薬学的組成物に組み入れることができる。このような組成物は一般に、核酸分子、タンパク質、抗体、または調節性化合物と、薬学的に許容される担体とを含む。本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、製剤投与との適合性がある任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤ならびに吸収遅延剤などが含まれるものとする。薬学的活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は当技術分野で周知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合性である場合を除いて、組成物におけるその使用が想定される。補足的な活性化合物を組成物に組み入れることもできる。
【0263】
本発明の薬学的組成物は、意図する投与経路と適合しうるように製剤化される。投与経路の例には、非経口的(例えば、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、筋肉内)、経口的(吸入など)、経皮的(局所外用)および経粘膜的な投与が含まれる。非経口的、皮内または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液は以下の成分を含みうる:注射用の水、食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌薬;アスコルビン酸または重硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸鉛、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースといった張性の調整のための薬剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によって調整しうる。非経口的製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラス製もしくはプラスチック製の多回投与用バイアル中に封入することができる。
【0264】
注射用に適した薬学的組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射液または分散液の要時調製のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与のために適した担体には、生理食塩水、滅菌精製水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。いずれの場合にも、組成物は無菌でなければならず、シリンジ注入が容易に行える程度に流動的である必要がある。それは製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の混入作用から保護される必要がある。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびその適した混合物などを含む、溶媒または分散媒でありうる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合には必要な粒子径の維持、および界面活性剤の使用によって維持しうる。微生物作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの種々の抗菌薬および抗真菌薬によって行いうる。多くの場合には、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコ−ル、塩化ナトリウムといった等張剤を組成物に含めることが好ましいと考えられる。注射用組成物の持続的吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの、吸収を遅延させる薬剤を組成物中に含めることによって達成しうる。
【0265】
滅菌注射液は、適切な溶媒中に、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに組み入れ、その後に滅菌濾過を行うことによって調製しうる。一般に、分散液は、基本的な分散媒および上記に列挙したもののうち必要な他の成分を含む滅菌媒体中に活性化合物を含めることによって調製される。滅菌注射液の調製用の滅菌粉末の場合には、好ましい調製の方法は、活性成分に加えて、あらかじめ滅菌濾過した溶液からの任意の所望の付加的成分が粉末として得られる、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0266】
経口用組成物は一般に、不活性希釈液または可食担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入すること、または圧縮して錠剤にすることができる。経口治療的投与の目的には、活性化合物を賦形剤とともに組み入れ、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で用いることができる。液体担体中の化合物が経口的に適用されて咀嚼および喀出または嚥下を受ける口内洗浄剤として用いるために、液体担体を用いて経口用組成物を調製することもできる。薬学的に適合性のある結合剤および/または添加材料を組成物の一部として含めることもできる。錠剤、丸剤、トローチ剤などは以下の成分、または同様の性状をもつ化合物のうち任意のものを含みうる:微結晶セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル(Primogel)もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステローテス(Sterotes)などの潤滑剤;コロイド二酸化ケイ素などの流動促進剤(glidant);ショ糖またはサッカリンなどの甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香料などの着香料。
【0267】
吸入による投与のためには、化合物は、適した噴霧剤、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアロゾル噴霧の形態で送達される。
【0268】
全身投与が、経粘膜的または経皮的な手段によるものであってもよい。経粘膜的または経皮的投与のためには、透過させようとする障壁に適した浸透剤が製剤中に用いられる。このような浸透剤は当技術分野で一般に公知であり、例えば、経粘膜的投与のためには、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜的投与は鼻スプレーまたは坐薬の使用によって行いうる。経皮的投与のためには、活性化合物は、当技術分野で一般的に知られた軟膏、膏薬、ゲルまたはクリーム剤中に配合される。
【0269】
また、化合物を、直腸内送達のための坐薬(例えば、カカオ脂およびその他のグリセリド類などの従来の坐薬用基材)または停留浣腸の形態として調製することもできる。
【0270】
1つの態様において、活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル送達システムを含む制御放出型製剤などの、化合物を身体からの迅速排出から保護すると思われる担体とともに調製される。エチレンビニルアセテート、重合無水物(polyanhydride)、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性の重合体を用いることもできる。このような製剤の調製のための方法は当業者には明らかであると考えられる。材料をAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から購入することもできる。リポソーム懸濁液(感染細胞を標的とするリポソームをウイルス抗原に対するモノクローン抗体とともに含む)を薬学的に許容される担体として用いることも可能である。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されたような当業者に周知の方法に従って調製しうる。
【0271】
投与の簡便性および投与量の均一性のためには、経口用または非経口用の組成物を単位剤形(unit dosage form)として製剤化することが特に有利である。本明細書で用いる単位剤形とは、治療しようとする対象に対する単位投与量として適した物理的に離散的な単位のことを指す;各単位は必要な薬学的担体とともに望ましい治療効果を生じるように計算された規定量の活性化合物を含む。本発明の単位剤形のための規格は、活性化合物に特有な特徴および達成しようとする特定の治療効果、ならびに個体の治療のためのこのような活性化合物の調合の技術分野に内在する制限によって規定されるとともに、それらに直接依存する。
【0272】
このような化合物の毒性および治療的有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物のいずれかを用いる標準的な薬学的手順によって評価することができる。毒性効果と治療効果との間の用量の比が治療係数であり、それはLD50/ED50の比として表現しうる。大きな治療係数を示す化合物の方が好ましい。有害な副作用を示す化合物を用いることもできるが、このような化合物を罹患組織に向かわせる送達システムを設計するためには、非罹患細胞に対する障害をできるだけ少なくし、それによって副作用を軽減するように注意する必要がある。
【0273】
細胞培養アッセイおよび動物試験によって得られたデータを、ヒトで使用するための用量の範囲を設定するために用いることができる。このような化合物の用量は、ほとんどまたは全く毒性がなく、ED50を含む循環血中濃度の範囲内にあることが好ましい。採用する剤形および用いる投与経路に応じて、この範囲内で用量を変更することができる。本発明の方法で用いるあらゆる化合物に関して、治療的有効量は細胞培養アッセイによってまず推定することができる。以下に記載するインビボ試験で決定されるようなEC50(すなわち、誘導される最大の回復の半分が達成される被験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲が達成される動物モデルで用量が設定される。このような情報は、ヒトでの有用な用量をより正確に決定するために用いることができる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0274】
薬学的組成物は、投与のための使用説明書とともに、容器、パックまたはディスペンサーに含めることができる。
【0275】
VII.スクリーニングアッセイ
本発明の数多くの好ましい方法は、薬理物質候補の同定および/または特性決定を行うこと、例えば、被験物質の集成物から新たな薬理物質を同定すること、ならびに/または既知の薬理物質の作用機序および/もしくは副作用の特性決定を行うことに関する。
【0276】
本発明は、(a)本発明のRISC不活性化因子の活性に対する調節性(例えば、刺激または阻害)効果を有する、またはより具体的には(b)siRNAもしくはmiRNAに対して十分に相補的なRISC不活性化因子の(それに対してsiRNAもしくはmiRNAが相補的である)、siRNAもしくはmiRNAとの相互作用に対する調節性効果を有する、または(c)RISC不活性化因子-siRNA複合体もしくはRISC不活性化因子-miRNA複合体と結合性因子(例えば、RISC成分またはRISC結合性因子などのペプチド、タンパク質、ホルモン、補助因子または核酸)との相互作用に対する調節性効果を有する、または(d)本発明のRISC不活性化因子の活性に影響を及ぼすことによってRNAサイレンシングに対する調節性効果を発揮する、調節因子、すなわち候補または試験用の化合物または作用因子(例えば、ペプチド、ペプチド模倣物、ペプトイド、低分子またはその他の薬物)を同定するための方法(本明細書では「スクリーニングアッセイ」とも称する)を提供する。このようなアッセイは一般に、本発明のRISC不活性化因子、(それに対してRISC不活性化因子が十分に相補的である)siRNAまたはmiRNA、および1つまたは複数のアッセイ成分の間の反応を含む。他の成分は、被験化合物それ自体でもよく、または被験化合物、レポーターRNA、細胞、細胞抽出物もしくは生物体を含む任意の組み合わせでもよい。
【0277】
本発明の被験化合物は、天然化合物および/または合成化合物の体系的ライブラリーを含む、任意の入手可能な源から入手することができる。また、被験化合物を、以下のものを含む、当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリーの手法を含むさまざまなアプローチによって入手することもできる:生物学的ライブラリー;ペプトイドライブラリー(ペプチドの機能を有するが、酵素的分解に対する耐性のある新規な非ペプチド骨格を備えており、それでもなお生物活性を保っている分子のライブラリー;例えば、Zuckermann et al., 1994, J. Med. Chem. 37:2678-85を参照されたい);空間的アドレス指定が可能な並行固相または液相ライブラリー;デコンボリューション(deconvolution)を必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物(one-bead one-compound)」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法。生物学的ライブラリーによるアプローチはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4種類のアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは低分子化合物ライブラリーに適用しうる(Lam, 1997, Anticancer Drug Des. 12:145)。
【0278】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は当技術分野に見いだすことができ、これには例えば、以下におけるものがある:DeWitt et al.(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909;Erb et al.(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422;Zuckermann et al.(1994) J. Med. Chem. 37:2678;Cho et al.(1993) Science 261:1303;Carrell et al.(1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059;Carell et al.(1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;およびGallop et al.(1994) J. Med. Chem. 37:1233。
【0279】
化合物のライブラリーは溶液中に提示させることもでき(例えば、Houghten, 1992, Biotechniques 13:412-421)、またはビーズ(Lam, 1991, Nature 354:82-84)、チップ(Fodor, 1993, Nature 364:555-556)、細菌および/もしくは胞子(Ladner, 米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al, 1992, Proc Natl Acad Sci USA 89:1865-1869)またはファージ(Scott and Smith, 1990, Science 249:386-390;Devlin, 1990, Science 249:404-406;Cwirla et al, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382;Felici, 1991, J. Mol. Biol. 222:301-310;Ladner、前記)上に提示させることもできる。
【0280】
1つの態様において、ライブラリーは天然物ライブラリー、例えば、細菌、真菌または酵母の培養物によって産生されるライブラリーである。もう1つの好ましい態様において、ライブラリーは合成化合物ライブラリーである。
【0281】
1つの態様において、本発明は、RISC不活性化因子-miRNAまたはRISC不活性化因子-siRNAのいずれかが組み込まれたRISCと結合する細胞因子に関するスクリーニングのためのアッセイを提供する。細胞因子がタンパク質と直接結合する能力の評価は、例えば、複合体中の標識マーカー因子を検出することによって因子と複合体(例えば、RISC)との結合を評価しうるように、その因子を放射性同位体、蛍光体または酵素標識と結合させることによって行うことができる。例えば、因子(例えば、細胞ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を
125I、
35S、
14Cまたは
3Hによって直接的または間接的に標識し、放射性同位体を放射線放射の直接計数またはシンチレーション計数によって検出することができる。または、アッセイ成分を、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼによって酵素的に標識し、酵素標識を、適切な基質から産物への変換の判定によって検出することもできる。または、蛍光を利用した因子結合の検出が可能となるように、被験因子の蛍光標識を行うこともできる。
【0282】
もう1つの態様において、本発明は、本発明のRISC不活性化因子とmiRNAまたはsiRNAとの結合を調節し、それによってRNAサイレンシングに対する効果を発揮する候補化合物または被験化合物のスクリーニングのためのアッセイを提供する。RISC不活性化因子-miRNA、RISC不活性化因子-siRNAおよび/またはRNAサイレンシング活性を調節する化合物に関するスクリーニングは、さまざまな様式で行うことができる。本発明の1つの局面において、RISC不活性化因子-miRNA相互作用、RISC不活性化因子-siRNA相互作用またはRNAi活性に対する、RNAサイレンシング調節因子の可能性のあるもの、例えば被験化合物の効果の評価は、チューブ内または類似した種類の容器内で、本発明の組成物、細胞および細胞抽出物を、可能性のあるRISC不活性化因子-miRNA相互作用、RISC不活性化因子-siRNA相互作用またはRNAサイレンシング調節因子に対して曝すことによって検討される。本発明の組成物、細胞、生物体および溶解物のRISC不活性化因子-miRNA相互作用、RISC不活性化因子-siRNA相互作用またはRNAサイレンシング活性に対する多数の化合物の効果のハイスループット検査を行うことを目的とする化合物のライブラリーのスクリーニングを、例えば、マイクロウェルにおいて行うこともできる。本発明のRISC不活性化因子とmiRNAまたはsiRNAとの相互作用を調節しうる化合物を同定するために、本発明のRISC不活性化因子-miRNAおよびRISC不活性化因子-siRNAを含む組成物、細胞、生物体および溶解物を、被験化合物のマトリックスに対してスクリーニングすることもできる。
【0283】
このようなスクリーニングアッセイにおけるRNAサイレンシングのモニタリングには、例えば、標的レポーターRNAの切断状態、標的レポーターRNAによってコードされるポリペプチドの発現または活性レベルといったさまざまなアッセイ測定値が含まれうる。
【0284】
本発明のRISC不活性化因子と他のポリペプチドおよび核酸との相互作用の検出は、例えば、化学的架橋法および免疫沈降法、アフィニティーカラム法による複合体の単離、または当技術分野で認知されている他の方法を用いることによって行いうる。
【0285】
当業者は、列挙した生物体が、本発明の他の局面を実施する目的にも、例えば、以下に述べるトランスジェニック生物体を作製する目的にも有用であることを認識していると考えられる。
【0286】
本発明をさらに、以下の実施例によって例示するが、これは制限的なものとみなされるべきではない。本明細書の全体にわたって引用されているすべての参考文献、特許および公開特許出願の内容は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0287】
実施例
以下の材料、方法および実施例は例示のみを目的としており、限定を意図したものではない。
【0288】
実施例1〜5に関する材料および方法
一般的な方法
ショウジョウバエ胚溶解物の調製、インビトロRNAi反応、および標的RNAのキャップ標識は、記載されている通りに行った(Haley et al., 2003)。標的RNAは約3nMの濃度で用いた。RNAi反応の切断産物は、5%または8%変性アクリルアミドゲル上での電気泳動によって分析した。ゲルを乾燥させ、イメージプレートに露光させた後に、FLA-5000ホスフォイメージャー(Fuji)を用いて分析した。画像はImage Reader FLA-5000バージョン1.0(Fuji)およびImage Gaugeバージョン3.45(Fuji)を用いて解析した。データ解析はExcel(Microsoft)およびIgorPro 5.0(Wavemetrics)を用いて行った。
【0289】
siRNAおよび2'-O-メチルオリゴヌクレオチド
合成siRNA(Dharmacon)は、製造業者に従って脱保護し、アニーリングさせた上で(Elbashir et al., 2001c;Elbashir et al., 2001d)、別に指示する場合を除いて最終濃度50nMで用いた。2'-O-メチルオリゴヌクレオチド(IDTまたはDharmacon)は、以下の通りとした:
(Pp-luc siRNAセンス鎖に対して相補的;SEQ ID NO:2)
(Pp-lucアンチセンス鎖に対して相補的;SEQ ID NO:4);
5'-Bio-UCU UCA CUA UAC AAC CUA CUA CCU CAA CCU U-3'
(let-7に対して相補的;SEQ ID NO:5);
5'ビオチンを、炭素6個のスペーサーアームを介して結合させた。
【0290】
固定化した2'-O-メチルオリゴヌクレオチドによるRISCの捕捉
10pmolのビオチン化2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを、2mM DTTを含む可溶化バッファー中において50μlのDynabeads M280(製造業者;Dynalにより提供された懸濁液として)とともに氷上で1時間インキュベートし、オリゴヌクレオチドをビーズ表面に固定化した。50nMを上回るsiRNAを用いた場合に拘束オリゴヌクレオチドが確実に過剰に残存するように、20pmolのビオチン化2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを固定化した。RISC捕捉アッセイに関しては、siRNAを標準的な50μlのインビトロRNAi反応物において25℃で15分間プレインキュベートした。続いて、固定化された2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを反応物に添加し、インキュベーションを25℃で1時間続けた。インキュベーションの後に、磁気スタンド(Dynal)を用いてビーズを収集した。結合しなかった上清を回収して、RISCの除去が完全であることを確かめるために、アリコートを以前の記載の通りにRISC活性に関してアッセイした(Elbashir et al., 2001c;Nykanen et al., 2001)。続いてビーズを、0.1%(w/v)NP-40および2mM DTTを含む氷冷可溶化バッファーで3回洗浄し、その後にNP-40を含まないもので1回洗浄した。形成されたRISCの量を決定するために、投入した放射能および結合した放射能をシンチレーション計数(Beckman)によって測定した。let-7を含む複合体をC.エレガンス成体から単離するためには、20pmolの固定化2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを1mgの全タンパク質とともにインキュベートした。
【0291】
逐次的トランスフェクション
HeLa S3細胞に対して、24ウェルプレート(1ウェル当たり200mm
2)中にてLipofectamine 2000(GIBCO)を製造業者のプロトコールに従って用いて、Pp-luc mRNAを標的とするさまざまな濃度のsiRNAをまずトランスフェクトした。6時間後に細胞をPBSで洗浄し、培地を交換した。その翌日に、細胞に対して、ウミシイタケ(Renilla reniformis)ルシフェラーゼ(アクセッション番号AF025846)を発現するプラスミド(0.1μg/ウェル)およびフォチナス・ピラリス(Photinus pyralis)ルシフェラーゼ(アクセッション番号X65324)を発現するプラスミド(0.25μg/ウェル)ならびに2'-O-メチルオリゴヌクレオチドによる同時トランスフェクションを、Lipofectamine 2000(GIBCO)を製造業者のプロトコールに従って用いて行った。24時間後に、Dual Luciferaseアッセイキット(Promega)とともにMediators PhLルミノメーターを用いて、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0292】
線虫への注入
let-7機能のインビボ阻害のためには、1mg/mlのlet-7相補的2'-Oメチルオリゴヌクレオチド水溶液(100μM)を、野生型(N2)またはlin-41(ma104)L2幼虫に注入した。L2幼虫への注入は、本質的には以前の記載の通りに行った(Conte and Mello, 2003)。2'-O-メチルオリゴヌクレオチド溶液は、虫体が死なないように低流速および低圧条件で幼虫の体腔に注射した。これらの注意を払ったにもかかわらず、虫体のほぼ60%は、注入したオリゴヌクレオチドの内容にかかわらず、注射後に死亡した。let-7表現型は10μMオリゴヌクレオチドでも観察されたが、浸透性は低下した。注入した虫体が成体期まで生き延びた後に表現型を評価した。
【0293】
RISC不活性化因子およびlet-7による処理細胞および非処理細胞の発現プロファイリング
実験は、それぞれの状態(let-7-RISC不活性化因子で処理したHeLa細胞、非処理HeLa細胞、let-7で処理したNT2細胞、非処理NT2細胞)に関して3回ずつ行った。試料から抽出した全RNAを用いてcRNA標的を作製し、続いてヒトU133Aオリゴヌクレオチドプローブアレイ(Affymetrix, Santa Clara, CAから購入)とハイブリダイズさせた。cRNAの調製は、Affymetrix GeneChip(登録商標)ワンサイクルcDNA合成キットを用いて行い、続いて、Affymetrix GeneChip(登録商標)IVT標識キットを用いて標識した。ハイブリダイゼーションおよびデータ解析は、MITマイクロアレイ設備により、標準的な方法を用いて行った(例えば、Ruan et al. Diabetes 51, 3176-3188;Bhattacharjee et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 13790-13795;Golub et al. Science 286, 531-537を参照)。実験によるすべての発現プロファイルを、非特異的2'-O-メチルオリゴヌクレオチドおよびGFP siRNAにより別々に処理した細胞の発現プロファイルに対して標準化した。
【0294】
その他の方法
GFP::ALG-1、GFP::ALG-2を有する同期化させたトランスジェニック動物を成体期に収集し、氷冷バッファー(25mM HEPES-NaOH(pH 7.4)、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM DTT、10%(v/v)グリセロール、0.5%(v/v)Triton X-100、2%(v/v)SUPERaseIn(Ambion)およびMini Complete Protease Inhibitor混合物(1錠/溶液10ml)(Roche))中で、ステンレス製Dounceホモジナイザー(Wheaton)を用いてホモジネート化した。ホモジネート化した抽出物を13,817×g、4℃、10分間の遠心処理によって清澄化した。
【0295】
let-7 miRNAと結合したタンパク質を回収するために、ビーズを20μlのSDSローディングバッファー(10mM Tris-HCl(pH6.8)、2%(w/v)SDS、100mM DTTおよび10%(v/v)グリセロール)中で10分間煮沸した。タンパク質を8%ゲル上でのSDS-PAGEにより分離し、Hybond-C膜(Amersham Biosciences)に移行させた。GFPタグが付加されたALG-1、ALG-2およびRDE-4タンパク質を検出するために、この膜を、モノクローナル抗GFP抗体(Roche)またはアフィニティー精製したポリクローナル抗RDE-4抗体(Tabara et al, 2003)のいずれかをTBST-ミルク溶液(100mM Tris-HCl(pH 7.5)、150mM NaCl、0.1%(v/v)Tween-20および5%(w/v)粉乳)で1:1000に希釈したものとともに4℃で一晩インキュベートし、抗マウス(GFPタグ付加ALG-1/ALG-2)または抗ウサギ(RDE-4)HRP結合二次抗体(Jackson Laboratories)のいずれかをTBSTで1:5,000に希釈したものとともに室温で1時間インキュベートした後に、増強化学発光法(NEN)によって描出させた。
【0296】
GFPタグ付加ALG-1/ALG-2複合体の免疫沈降は、虫体抽出物を全タンパク質5mg当たり50μlのプロテイン-Gアガロースビーズ(Roche)によって4℃で1時間プレクリアすることによって行った。続いて、清澄化された抽出物を10μgのモノクローナル抗体抗APP 3E6(Qbiogene)とともに4℃で1時間インキュベートし、続いて50μlのプロテイン-Gアガロースとともにインキュベートした。続いてアガロースビーズを氷冷ホモジナイゼーション緩衝液で3回洗浄した。
【0297】
let-7 miRNAの除去はノーザンブロット法によってモニターした。200mM Tris-HCl(pH 7.5)、25mM EDTA、300mM NaCl、2%(w/v)SDS)中での1mg/mlのプロテイナーゼKによる50℃、30分間の消化処理により、RNAを固定化2'-O-メチルオリゴヌクレオチドから溶出させ、続いてフェノール-クロロホルムで抽出し、エタノールを用いて沈降させた。回収したRNAを、10μlのホルムアミドローディングバッファー(98%(v/v)脱イオンホルムアミド、10mM EDTA、0.025%(w/v)キシレンシアノール、0.025%(w/v)ブロモフェノールブルー)中に再懸濁させ、100℃で2分間加熱した。RNAを15%変性アクリルアミドゲルで分離させ、Hybond-N膜(Amersham Biosciences)に移行させた上で、5' 32P-放射性標識アンチセンスlet-7RNAプローブ
を用いるノーザン分析によって以前の記載の通りに検出した(Hutvagner and Zamore, 2002)。let-7機能のインビボ阻害のためには、1mg/mlのlet-7相補的2'-O-メチルオリゴヌクレオチド水溶液(100μM)を、野生型(N2)またはlin-41(ma104)系統のいずれかのL2幼虫に注入し。let-7表現型は10μMオリゴヌクレオチドでも観察されたが、浸透性は低下した。表現型は、注入した虫体が成体期に達した時点で評価した。
【0298】
実施例1:2'-O-メチルオリゴヌクレオチドによるRNAiの阻害
RNAiは、タンパク質をコードするmRNA(Fire et al., 1998;Caplen et al., 2000;Caplen et al., 2001;Carthew, 2001;Elbashir et al., 2001b)の、さらには一部の非コード性RNA(Liang et al., 2003)の機能を評価するための直接的かつコスト効果の高い方法であることが実証されているものの、RISCのsiRNA成分またはmiRNA成分の配列特異的不活性化を可能とする類似の方法はない。本発明はこのような阻害因子を特徴とする。RISC機能の好ましい阻害因子は、ヌクレオチド相補性によりRISCによって認識されるが、RISC依存的なヌクレオチド鎖切断および翻訳制御に対しては抵抗性のある、核酸を基にした分子である。このような分子は、相補的siRNAまたはmiRNAを含むRISC複合体は失効させうる(titrate out)が、配列の点で無関係なガイドRNAを含むRISC複合体の機能にはほとんどまたは全く影響を及ぼさないように設計することができる。このようなRISC阻害因子はさらに、それらが十分に長い間にわたってRISCと結合してその機能を阻止し続けるように、細胞リボヌクレアーゼによる分解に対して耐性であるように設計することができる。さらに、短鎖RNA機能の阻害因子は、阻害因子それ自体に対する非特異的反応を誘発する可能性が低い濃度で、すなわちsiRNAそれ自体が有効である濃度と同じ、低ナノモル濃度の範囲で作用しうるように設計される。
【0299】
マイクロモル濃度では、DNAアンチセンスオリゴヌクレオチドはショウジョウバエ胚におけるmiRNA機能を阻止しうる(Boutla et al., 2003)が、インビボでのDNAオリゴヌクレオチドの安定性の乏しさがそれらの有用性を制限する可能性がある。優れたインビボ安定性を示すホスホロチオエート置換型DNAオリゴヌクレオチドは、インビトロではRISC機能を阻害しない(非提示データ)。2'-O-メチルオリゴヌクレオチドはまた、細胞リボヌクレアーゼに対する耐性も高い。2'-O-メチルオリゴヌクレオチドがRISC阻害因子として作用しうるか否かを検証するために、ストレプトアビジン常磁性ビーズに5'ビオチン結合を介して拘束された2'-O-メチルオリゴヌクレオチドが、siRNAによりプログラムされたRISCを反応から除去するために用いうるか否かを検討した。ショウジョウバエ胚溶解物を、ホタルルシフェラーゼ(Pp-luc)mRNA標的に向かう合成siRNA二重鎖によりプログラムした(
図1A)。続いて、21ヌクレオチドのsiRNA鎖に対して相補的な31ヌクレオチドの拘束2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを添加した。さらに、ビーズを磁気を用いて溶液から除去し、上清をsiRNAによりプログラムされたRISC活性に関して試験した。これらの条件下で、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドは、siRNAのアンチセンス鎖によりプログラムされたRISCの反応は完全に除去したが、センス鎖によりプログラムされたRISCの反応はそうではなかった(
図1B)。すなわち、除去は、RISC内部に含まれるsiRNA鎖が拘束オリゴヌクレオチドに対して相補的な場合にのみ生じた。
【0300】
この方法を、種々の濃度のsiRNA二重鎖でのインビトロ反応において形成されるRISCの量を測定する目的へと拡張した。アンチセンス鎖を5'-
32P放射性標識したsiRNA二重鎖を反応物中でインキュベートした後に、アンチセンスsiRNAによりプログラムされたRISCの反応を除去するために拘束2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを添加した。続いてビーズを洗浄し、ビーズに結合した
32P-siRNAの割合を決定した。除去は、上清をRISC活性に関して試験することによって検証した。形式的には、所定の濃度のsiRNA二重鎖に関して、ビーズ上に残った
32P-siRNAの量が、形成されるRISCの濃度の上限を設定する。しかし、このアッセイを用いて今回報告した結果は、機能的に非対称的なsiRNA二重鎖からの一本鎖siRNAの蓄積(Schwarz et al., 2003)および前定常状態反応速度論によって測定した標的切断の群発(非提示データ)という、2種類の独立した方法によって測定したRISCの量と、誤差の範囲内で同一であった。これらの結果に関する最も単純な説明は、このアッセイが、RISCに組み込まれたsiRNAを直接測定しているというものであった。
図2Aは、6種の濃度のsiRNA二重鎖(5、15、25、50、100、200nM siRNA)に関する、このアッセイの結果を示している。第1に、このデータは、インビトロでのRISC構築が非効率的であったことを示している;siRNA二重鎖の大半はRISC生成に寄与しなかった。第2に、RISC構築は飽和性であり、このことはRISC自体の何らかの成分が制約的であることを示唆する。
【0301】
2'-O-メチルオリゴヌクレオチドがRISCと相互作用する機序をさらによく理解するために、RISC活性の半値阻害のために必要な遊離2'-O-メチルオリゴヌクレオチドの濃度(IC50;
図2B〜G)を、
図2Aにおいて決定した6種のRISC濃度で測定した。遊離2'-O-メチルオリゴヌクレオチドによる阻害に関するIC50は、
図2HにそれぞれのRISC濃度に関して示されている。2'-O-メチルオリゴヌクレオチドのIC50は、RISC濃度の半分に著しく近かった。これらのデータにより、31ヌクレオチドの2'-O-メチルオリゴヌクレオチドが1つずつそれぞれのRISCに結合し、その機能を阻止したことが示された。この見かけ上の1:1化学量論に一致して、2'-O-メチルオリゴヌクレオチド滴定に関するデータは、ヒル係数1のシグモイド曲線によく合致する(
図2B〜G)。2'-O-メチルオリゴヌクレオチドによるRISC機能の阻害の配列特異性は、阻害がオリゴ体のRISCとの結合を反映したことを明らかに示している。これらのデータは、これらの実験における阻害のために必要な2'-O-メチルオリゴヌクレオチドの濃度が結合に関するK
Dよりもはるかに大きかったとすれば、すなわち実験が化学量論的な結合方式で行われたとすれば、最も容易に説明される。化学量論的な結合方式の下では、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドによる阻害は本質的には非可逆的であると考えられる。
【0302】
理論的には、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドは、siRNA二重鎖のパッセンジャーの(センス)鎖を置換し、それによってガイド(アンチセンス)鎖のRISCへの組み入れを阻止することによって作用した可能性がある(Elbashir et al., 2001c)。この可能性は、siRNAのパッセンジャー鎖に対して相補的な5'拘束型の31ヌクレオチド2'-O-メチルオリゴヌクレオチドがガイド鎖RISC活性を消失させなかったことによって否定しうる(
図1B)。同様に、アンチセンス配列2'-O-メチルオリゴヌクレオチドはアンチセンスRISCとは対合できなかったが、センス標的mRNAとは対合することができた。このアンチセンス2'-O-メチルオリゴヌクレオチドは、センス標的mRNAと対合して、アンチセンスRISCを標的から遮断すると考えられる。驚いたことに、このアンチセンス2'-O-メチルオリゴヌクレオチドは、標的部位との結合に用いた場合にはアンチセンスRISC機能の阻害因子としては作用が弱く、14.5nMのRISCおよび3nMのセンス標的RNAを含む反応物における半値阻害のためには300nMを必要とした(
図3A)。これに対して、同じアンチセンス2'-O-メチルオリゴヌクレオチドが、それと相補的であるセンスRISCの活性を遮断する効果は非常に高く、16.8nMのセンス鎖RISCおよび3nMのアンチセンス標的RNAを含む反応物中では8.2nMのIC50で作用した(
図3B)(この実験では、センス鎖RISCは、センス鎖の第1ヌクレオチドをCからUに変化させ、それによって機能的非対称性を逆転させることによって作製した(Schwarz et al., 2003))。
【0303】
したがって、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドのRISCとの相互作用は、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドの標的RNAとの相互作用とは著しく異なった;RISCの2'-O-メチルオリゴヌクレオチドに対する親和性は、そのオリゴヌクレオチドのRNA標的に対する親和性の40倍を上回った(
図2Eおよび3Aを比較されたい)。これらのデータから、RISCの標的との相互作用は単純な核酸ハイブリダイゼーションによって推進されるのではないことが示された。標的RNAの配列を有する2'-O-メチルオリゴヌクレオチドによるsiRNAプログラム性RISCの阻害は、標的RNAそれ自体に対するオリゴヌクレオチドの結合によって媒介される阻害よりも有効であった。すなわち、RISCは、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドよりも標的RNAを見いだすこと、および/またはそれと結合し続けることに関して長じていた。これらのデータから、RISC中の特定のタンパク質が、標的の発見、標的との結合のいずれかまたは両方を促進することが示された。この見解に一致して、21ヌクレオチドの2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを用いた場合のRISC機能の阻害は不完全であった(非提示データ)。したがって、siRNAガイド鎖に対して相補的な部位に隣接する標的配列が、標的-RISCの結合に役割を果たしている可能性が高い。siRNAに隣接する標的配列がかかわる能動的な機構が標的配列の探索を促している可能性がある。
【0304】
実施例2:培養ヒト細胞におけるRNAiの阻害
実施例1に提示したデータにより、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドが、ショウジョウバエ胚溶解物を用いたRNAi反応におけるsiRNA機能の化学量論的で非可逆的で配列特異的な阻害因子であることが示された。2'-O-メチルオリゴヌクレオチドがsiRNA機能をインビボで阻止しうるかという課題に取り組むために、1、5、10または25nMのsiRNA二重鎖を用いる逐次的トランスフェクション実験を行った。siRNAを第1日にトランスフェクトし、続いて第2日にレポーターおよび対照プラスミドをさまざまな量の2'-O-メチルオリゴヌクレオチドとともに同時トランスフェクトした。Pp-lucのサイレンシングを、Rr-luc対照と比較して第3日に測定した。各々のsiRNA濃度について、RNAiの半値阻害のために必要な2'-O-メチルオリゴヌクレオチドの濃度を決定した(
図4A〜D)。4つの実験すべてにおいて、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドの量が増えるに従って、Pp-LucをサイレンシングするsiRNAの能力は徐々に失われた。siRNAのRISCへの構築はオリゴヌクレオチドを導入する1日前には起こっているため、培養細胞におけるサイレンシングの阻害は、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドがsiRNA二重鎖のセンス鎖を置換した結果とは考えられない。10nM siRNAをトランスフェクションに用いた場合には、ほぼ1nMの2'-O-メチルRNAがRNAiの半値阻害のために必要であった(
図4CおよびE)。25nMのsiRNAでは、RNAi活性の半分を阻害するために約1.1nMの2'-O-メチルRNAが必要であった(
図4DおよびE)。
図4Eでは、siRNA濃度を、サイレンシングの半値阻害のために必要な2'-O-メチルオリゴヌクレオチドの量(IC50)に対してプロットしている。このデータはシグモイド曲線によく合致し、これはこれらの濃度ではsiRNAの量が増えてもRISC活性の対応した上昇は生じないという見解と一致する。より高濃度のsiRNAを検討することは、それらが遺伝子発現配列非依存的な変化を生じさせるため、行えなかった(Persengiev et al., 2003;Semizarov et al., 2003)。以上より、細胞および抽出物はいずれも外因性siRNAに対してRISCを構築させる能力が限定的であることが結論づけられた。これらのデータから、最大量のRISCを生成させるために必要な濃度を上回るsiRNA濃度の使用はインビボでの二本鎖siRNAの蓄積を招き、そのため培養哺乳動物細胞において時に観察される望ましくない配列非特異的応答の一因になりうることが示された(Sledz et al., 2003)。
【0305】
実施例3:インビトロおよびインビボでのmiRNA機能の阻害
動物細胞において、miRNAは翻訳調節因子として機能すると主に考えられている。しかし、数多くの証拠から、それらが類似の(同一ではないものの)RISCを介してsiRNAとして機能する可能性が示唆されている(Hutvagner and Zamore, 2002;Zeng et al., 2002;Doench et al., 2003;Khvorova et al., 2003;Schwarz et al., 2003;Zeng et al., 2003b)。2'-O-メチルオリゴヌクレオチドはインビトロおよび培養ヒト細胞においてsiRNA機能を阻止したため、これらのオリゴヌクレオチドがインビトロおよびインビボで特異的なmiRNAの機能を同様に破壊しうるか否かが問われた。このようなmiRNAの理想的な候補はlet-7である。C.エレガンスのlet-7における古典的な遺伝子変異は、詳細に特性が明らかにされた容易にスコア化しうる表現型を生じさせる。さらに、ヒトHeLa細胞はlet-7ファミリーのメンバーを複数発現し(Rfamアクセッション番号MI0000060-MI0000068、MI0000433およびMI0000434)、内因性let-7はRISC中に自然下で存在する(Hutvagner and Zamore, 2002;Zeng and Cullen, 2003)。let-7に対して相補的な31ヌクレオチドの2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを、HeLa S100抽出物中に存在する、内因性let-7によりプログラムされたRISCによって誘導される標的切断を阻止する能力に関して検討した(
図5A)(このアッセイにより、let-7の標的切断活性が検出された;let-7によって翻訳が抑制されると思われる内因性ヒトmRNA標的はまだ検討されていない)。対照として、オリゴヌクレオチドを、ショウジョウバエ胚溶解物中においてインビトロで構築されたlet-7含有RISCの活性を阻止する能力に関して検討した。この2'-O-メチルオリゴヌクレオチドの添加により、HeLa S100抽出物における内因性let-7によりプログラムされたRISCによって、およびショウジョウバエ胚溶解物における外因性let-7 siRNA二重鎖によりプログラムされたRISCによって導かれる標的RNA切断は効率的に阻止された(
図5C)。内因性let-7によりプログラムされたRISCを含めることに加えて、HeLa S100を外因性siRNA二重鎖によってプログラムさせることも可能である(Martinez et al., 2002;Schwarz et al., 2002)。
図5Bで用いた標的RNAはPp-luc mRNA由来の配列も含み、このためPp-luc特異的siRNA二重鎖による標的となる(
図1Aおよび5C)。Pp-luc siRNA二重鎖をヒトHeLa S100抽出物とともにインキュベートし、Pp-lucにより導かれるRISCを形成させた。続いて、let-7相補的2'-O-メチルオリゴヌクレオチドおよび標的RNAを添加した。このオリゴヌクレオチドは内因性let-7によりプログラムされたRISCによる切断を阻止したが、同じ反応物における外因性Pp-luc siRNAによって導かれる切断に対する効果はなかった(
図5D)。常磁性ビーズに対して拘束させた場合、このオリゴヌクレオチドは、let-7によりプログラムされたRISCをショウジョウバエ胚溶解物から定量的に除去することも可能であり(
図5E)、このことは改めて、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドとRISCとの相互作用が非可逆的と思われることを示している。2'-O-メチルオリゴヌクレオチドは、miRNAによりプログラムされる天然のRISCによって導かれる標的切断の特異的かつ強力な阻害因子であった。さらに、これらのデータから、個々のRISC複合体はそれらが同じRNAを標的とした場合にも非依存的に作用したことが示された。次に、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを、miRNAの機能をインビボで阻害する能力に関して検討した。lin-4 miRNAおよびlet-7 miRNAがいずれもmRNAの安定性を変化させることなくそれらの標的mRNAの翻訳を阻止することが示されているC.エレガンスでは、miRNAによって導かれる翻訳抑制が起こった(Wightman et al., 1993;Ha et al., 1996;Moss et al., 1997;Olsen and Ambros, 1999;Reinhart et al., 2000;Seggerson et al., 2002)。線虫におけるlin-4およびlet-7の機能の遺伝学的特徴は詳細に明らかにされており、線虫ではそれらは皮下組織における細胞分裂の時期およびパターンを制御するために幼虫発生期間中に必要とされる(Lee et al., 1993;Reinhart et al., 2000)。まず、RISC不活性化因子が、その結果生じる子孫の幼虫発生期間におけるlin-4またはlet-7の機能を阻止しうるか否かを検討するために、lin-4またはlet-7のいずれかに対して相補的な2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを、野生型の成体雌雄同体の生殖系列に対して注入した。2'-O-メチルオリゴヌクレオチドは毒性ではなく、無関係なDNA形質転換レポーターと同時注入した場合には同時注入DNAの取り込みおよび発現を妨げなかったが、lin-4またはlet-7活性の阻害は観察されなかった(非提示データ)。この所見から、一本鎖2'-O-メチルオリゴヌクレオチドは、注入された虫体の子孫には効率的に伝達されないことが示された。この問題を克服するために、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを幼虫に直接注入し、注入された虫体の表現型を検討した。lin-4 miRNAはL1/L2幼虫において働くが、本発明者らはL1幼虫がマイクロインジェクション後に生き延びないことを見いだしており(非提示データ)、このため、直接注入によってlin-4機能の阻害をアッセイすることは不可能であった。これに対して、let-7はL4期に働き、L2およびL3幼虫はマイクロインジェクション処置後に生き延びることが見いだされた(実験手順の項を参照)。let-7機能の喪失は虫体にL4幼虫の脱皮を繰り返させ、成体期の時点で幼虫性角皮を不適切に生じさせた。let-7機能喪失性の表現型には、陰門での破裂を生じやすくする脆弱な角皮、産卵の欠陥、および、虫体の全長にわたって存在する成体特異的な角皮構造である翼部の欠如が含まれる(Reinhart et al., 2000)。幼虫にlet-7特異的2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを注入した後には、成体線虫の80%が翼部を欠いていた;77%は翼部の欠如に加えて陰門の破裂も呈した(
図6A)。これに対して、無関係な対照2'-O-メチルオリゴヌクレオチドが注入された虫体は、異常な表現型を呈さなかった(
図6A)。let-7相補的2'-O-メチルオリゴヌクレオチドに注入に伴う表現型はいずれもlet-7活性の消失との整合性がみられた。let-7は、lin-41の3'非翻訳領域における部分的に相補的な部位と結合することにより、lin-41(Locus link ID 172760)mRNAの翻訳を抑制する(Reinhart et al., 2000;Slack et al., 2000;Vella et al., 2004)。その結果として、let-7の喪失に伴う表現型の多くはLIN-41タンパク質の過剰発現を反映する;let-7変異体はlin-41における変異によって部分的に抑制された。注入を受けた幼虫で観察された表現型がlet-7活性の消失を反映するならば、それらはlin-41変異によって部分的に抑制されるはずであると推論された(Reinhart et al., 2000;Slack et al., 2000)。この可能性を検証するために、let-7特異的2'-O-メチルオリゴヌクレオチドをlin-41(ma104)系統に注入し、表現型の浸透度を注入を受けた野生型集団と比較した。注入したオリゴヌクレオチドはlet-7を特異的に不活性化するという考えに一致して、翼部の欠如および陰門の破裂という表現型はいずれもlin-41(ma104)変異系統では抑制された(
図6A)。翼部を欠く虫体の割合は80%から16%に低下し、陰門の破裂を伴う線虫も著しく減少した(野生型での74%に比してlin-41(ma104)系統では3.8%)。抑制の観測値(64%)は、let-7、lin-41二重遺伝子変異体に関して報告されているものとほぼ同一であった(70%;Reinhart et al., 2000;Slack et al., 2000)。以上を総合すると、これらのデータは、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドが、インビボでmiRNA機能の強力な阻害因子として作用することができ、さらにそれをインビボでの特定のmiRNAの機能の検索にも用いうることを裏づけている。
【0306】
実施例4:拘束された2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを用いたタンパク質-miRNA複合体の単離
以上に提示したインビトロ実験により、siRNA含有RISCおよびmiRNA含有RISCのどちらにも2'-O-メチルオリゴヌクレオチドが安定的に結合することが示された。次に、拘束された2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを、特定のmiRNAと結合した細胞因子を単離するために用いうるか否かを検討した。ヒト細胞においては、let-7などのmiRNAが、Argonauteタンパク質を含むタンパク質複合体内に位置することが示されている(Hutvagner and Zamore, 2002;Mourelatos et al., 2002;Dostie et al., 2003)。C.エレガンスでは、Argonauteタンパク質をコードする遺伝子であるalg-1およびalg-2が、lin-4およびlet-7 miRNAのバイオジェネシスおよび/または機能に必要なことが示されているが(Grishok et al., 2001)、ALG-1およびALG-2タンパク質がlet-7と直接結合するか否かについては示されていない。GFPタグが付加されたALG-1およびALG-2タンパク質を発現する導入遺伝子を有する野生型成体線虫から抽出物を調製した。続いて、この抽出物を、5'ビオチンによってストレプトアビジン結合常磁性ビーズに拘束させたlet-7相補的2'-O-メチルオリゴヌクレオチドとともにインキュベートした。対照として、let-7に対して相補的でないオリゴヌクレオチドを用いる実験を並行して行った。let-7相補的オリゴヌクレオチドは、抽出物からlet-7 miRNAをほぼ完全に枯渇させたが、対照オリゴヌクレオチドはそうではなかった(
図6B)。抗GFP抗体を用いたウエスタンブロット法により、GFPタグが付加されたALG-1およびALG-2タンパク質はいずれもlet-7相補的オリゴヌクレオチドとともに精製されたが、対照オリゴヌクレオチドはそうではなかった(
図6C)。一方、C.エレガンスにおけるRNAiには必要であるがmiRNA機能には必要でないRNA結合タンパク質であるRDE-4(Locus link ID 176438)は、let-7相補性オリゴヌクレオチドとともに精製されず、このことからlet-7:ALG-1/ALG-2相互作用の特異性のさらなる裏づけが得られた(
図6C)。
【0307】
最後に、免疫共沈アッセイを用いて、let-7とALG-1/ALG-2との相互作用について検討した。このアッセイでは、モノクローナル抗GFP抗体を用いて、GFP-ALG-1/ALG-2融合タンパク質を発現するGFP::ALG-1/GFP::ALG-2系統由来のALG-1/ALG-2短鎖RNAを免疫共沈させた(
図6E)。免疫複合体のノーザン分析により、それが22ヌクレオチドの成熟型let-7 miRNAを含むことが示された(
図6D)。N2野生型系統からの抗GFP抗体を用いた場合、検出可能な程度のlet-7は回収されなかった。GFP::ALG-1/ALG-2と結合したlet-7の割合を結合しなかったlet-7 miRNAの割合と比較することにより、22ヌクレオチドのlet-7 RNAの約30%がGFP::ALG-1およびGFP::ALG-2と免疫共沈したと推定された。これらのデータは、ALG-1およびALG-2が、成熟let-7 miRNAのかなりの割合を含む複合体をインビボで形成するというモデルを支持するものである。
【0308】
実施例5:let-7によって調節される転写物の同定
ヒトlet-7を阻害するように設計された2'-O-メチルオリゴヌクレオチドの使用により、ヒトlet-7 miRNAファミリーによって調節される標的遺伝子および経路の同定および特性決定が可能となった。2種類のヒト細胞系を基にして実験系を開発した。HeLa細胞は高レベルのlet-7発現を呈し、let-7阻害試験の理想的な対象として用意され、一方、未分化NT2細胞はlet-7遺伝子ファミリーを発現せず、それをsiRNAとして細胞にトランスフェクトすることによってlet-7を一過性に「過剰発現」させることができる細胞種として用意された(
図7A)。これらのそれぞれの細胞種におけるlet-7の阻害および過剰発現を、ルシフェラーゼ発現を制御するlet-7相補的部位を含む検出用標的プラスミドを用いてモニターした。HeLa細胞におけるlet-7の阻害はルシフェラーゼ発現を数倍に高めたが、NT2細胞におけるlet-7の発現はルシフェラーゼ発現を数分の1に低下させた(
図7B、C、D)。
【0309】
let-7阻害因子で処理したHeLa細胞および非処理HeLa細胞ならびにlet-7で処理したNT2細胞の双方に関して、マイクロアレイを用いてヒト遺伝子発現プロファイルを評価した。let-7発現細胞(NT2細胞)において発現が低下したmRNA、および/またはlet-7抑制細胞(HeLa細胞)において発現が誘導されたmRNAを同定した。HMGA2およびDicerという2つの遺伝子はいずれも、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを用いたlet-7阻害に応じてHeLa細胞で有意に誘導され、NT2細胞ではlet-7トランスフェクションの結果として有意に抑制された。let-7の阻害または誘導によって発現が影響を受けた遺伝子がさらにいくつか同定された(
図8A)。HMGA2およびDicerを含め、これらのmRNAの多くは、let-7認識エレメントと予想されるものを多数含んでいた。HMGA2およびDicerに関しては、このマイクロアレイデータが、転写物およびタンパク質の発現に対する効果に関して、リアルタイムPCRおよびウエスタンブロット分析を用いて確認された(
図8B、C;
図9)。
【0310】
これらのデータは、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドを、miRNA機能の直接的で配列特異的な阻害を通じてmRNA標的を同定する目的で、高い効力で効果的に利用しうることを示している。一過性に発現させたmiRNA(siRNAとしてトランスフェクトしたもの)が、その天然の標的mRNAを調節することも示された。さらに、miRNAの誘導または阻害が標的mRNAの発現の有意な変化を生じさせ、それを発現プロファイリングを用いて容易にスコア化しうることも今回示された。
【0311】
参考文献
【0312】
等価物
当業者は、定型的な範囲の実験により、本明細書に記載された特定の態様の等価物を認識または確認しうると考えられる。このような等価物は本発明の範囲内にあると考えられ、以下の請求の範囲に含まれる。