(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
量子ドットが分散された樹脂が成形されてなり、前記樹脂に金属石鹸からなる分散剤が含まれており、下記の条件における耐久試験での緑色光及び赤色光のピーク面積及び、ピーク強度が、80%以上であり、シート状に形成されていることを特徴とする樹脂成形品。
(耐久試験)
温度60℃、湿度90%、及びLED未点灯にて、200時間経過した後での試験前との前記ピーク面積比及び前記ピーク強度比を測定した。
前記量子ドットは、少なくとも、緑色発光量子ドットを有し、更に、シリカ微粒子が添加されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の樹脂成形品。
前記量子ドットが樹脂に含有されてなる樹脂層と、前記樹脂層の表面を被覆するコーティング層とを有してなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の樹脂成形品。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本実施の形態における樹脂成形品は、多数の量子ドットが分散された樹脂が成形されてなることを特徴とする。
【0024】
本実施の形態における量子ドットは、半導体粒子のコアと、コアの周囲を被覆するシェルとを有することができる。コアには、例えば、CdSeが使用されるが、特に材質を限定するものでない。例えば、少なくともZnとCdとを含有するコア材、Zn、Cd、Se及びSを含有するコア材、ZnCuInS、CdS、CdSe、ZnS、ZnSe、InP、CdTe、これらのいくつかの複合物等が使用できる。
【0025】
シェルは、蛍光部としてのコアを保護する。コアの表面欠陥やダングリングボンドが除去されることで量子効率が向上する。一例として、シェルのバンドギャップは、コアのバンドギャップよりも大きいが、これに限定されるものでない。
【0026】
シェルが、コアの表面を被覆する第1のシェル(shell I)と、第1のシェルの表面を被覆する第2のシェル(shell II)とを有する、いわゆるマルチシェル構造であってもよい。この場合、例えば、第2のシェルのバンドギャップは、第1のシェルのバンドギャップよりも大きくされるが、これに限定されるものでない。
【0027】
本実施の形態における量子ドットは、シェルが形成されず、半導体粒子のコアのみで構成されてもよい。すなわち、量子ドットは、少なくともコアを備えていれば、シェルによる被覆構造を備えていなくてもよい。例えば、コアに対して、シェルの被覆を行った場合、被覆構造となる領域が小さいか被覆部分が薄すぎて被覆構造を分析・確認できないことがある。したがって、分析によるシェルの有無にかかわらず、量子ドットと判断することができる。
【0028】
本実施の形態では、樹脂成形品の樹脂中に多数の量子ドットを適切に分散させるべく、分散剤としての金属石鹸を含んでいることが好ましい。これにより、樹脂成形品における量子ドットの樹脂中での分散性を効果的に高めることができる。
【0029】
金属石鹸は微粒子であり、無機物である量子ドットに対する分散性に優れ、かつ樹脂に対して充分な平滑性を付与する。
【0030】
金属石鹸には、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、オクチル酸、ラウリン酸等の脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛等の金属が使用される。このうち、金属石鹸は、ステアリン酸カルシウムであることが好ましい。
【0031】
また本実施の形態では、樹脂中に含まれる金属石鹸は、樹脂に対する重量で1ppm〜4万ppmの範囲内であることが好ましい。これにより、分散性、平滑性を高めることができるとともに、樹脂表面に白濁やムラ等が生じにくい。金属石鹸は、量子ドットの重量に対して1/10倍〜10倍の重量で含まれる。量子ドットの重量は樹脂の重量に対して10ppm〜4000ppm程度が好適である。したがって、金属石鹸の重量は、樹脂の重量に対して1ppm〜4万ppmが好適である。
【0032】
このように金属石鹸(特にステアリン酸カルシウム)を入れることで、量子ドットを金属石鹸が包み込み、分散性が向上することを出願人は見出した。
【0033】
また本実施の形態では、樹脂にエラストマーが含まれていることが好ましい。例えば、樹脂としてポリプロピレン(PP)を選択した場合、エラストマーを混在させることによって、透明性を向上させることができる。このとき、ポリプロピレン樹脂との相溶性の高いエラストマーが好ましい。
【0034】
また本実施の形態では、樹脂に散乱剤が含まれていることが好ましい。散乱剤を添加することで発光特性の向上を図ることができる。散乱剤としては、シリカ(SiO
2)、BN、AlN等の微粒子などを提示できる。
【0035】
また本実施の形態における樹脂成形品は、量子ドットが樹脂に含有されてなる樹脂層と、樹脂の表面を被覆するコーティング層とを有して構成されてもよい。コーティング層としては、ガラスコーティング、エポキシコーティング、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等を提示することができる。これにより大気中の水分等に対する耐久性を向上させることができるので、高い信頼性を得ることができる。
【0036】
樹脂成形品を構成する樹脂は、特に限定するものでないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリメチルペンテン、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、シリコーン樹脂、又は、これらのいくつかの混合物等を使用することができる。
【0037】
また本実施の形態における樹脂成形品では、量子ドットと量子ドットとは別の蛍光顔料や蛍光染料等としての蛍光物質とを含んでいてもよい。例えば、青色光を照射したときに、赤色光を発光する赤発光量子ドットと緑色光を発光する緑発光蛍光物質、あるいは、緑色光を発光する赤発光量子ドットと赤色光を発光する赤発光蛍光物質のごとくである。このような樹脂成形品に青色光を照射することによって、白色光を得ることができる。蛍光物質としては、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系、TAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット)系、サイアロン系、BOS(バリウム・オルソシリケート)系などがあるが材質を特に限定するものでない。
【0038】
本実施の形態における量子ドットの分散状態は、量子ドットが単体で、樹脂中に分散した状態のもの、複数の量子ドットが凝集体を構成し、これら凝集体が樹脂中に分散した状態のもの、あるいは、量子ドット単体と量子ドットの凝集体とが夫々樹脂中に分散した状態のものを指す。
【0039】
凝集体は、樹脂中にて500nm四方内に、数百個以下含まれている。具体的には、3個〜300個程度であることが好ましい。また、凝集体の大きさは、長尺方向の長さが100nm以下であり、好ましくは70nm以下である。また、凝集体は、数百個以下の量子ドットが凝集されてなることが好ましい。具体的には、1個〜300個程度であることが好ましい。このように本実施の形態では、量子ドットが凝集体を構成し、これら凝集体は、樹脂中に適切に分散した状態となっている。
【0040】
本実施の形態における樹脂成形品により以下に示すアプリケーションを提供することができる。
図1〜
図9は、本実施の形態における樹脂成形品を用いたアプリケーション例を示す。
【0041】
図1は、LED等の発光素子1と導光板2との間に、波長変換バー(蛍光バー)3が介在している。本実施の形態における量子ドット入り樹脂をバー状、ロッド状、又は、棒状に成形して
図1に示す波長変換バー3が構成されている。発光素子1から発せられた光は、波長変換バー3にて波長変換され、波長変換された光が導光板2に出射される。例えば波長変換バー3には、蛍光波長が520nm(緑色)及び660nm(赤色)の量子ドットが含まれている。例えば、発光素子1から発せられた青色の光子の一部が、量子ドットによって緑色又は赤色に変換されることで、波長変換バー3から導光板2に向けて白色の光が出射される。
【0042】
図2は、導光板4の発光面に、本実施の形態の量子ドット入り樹脂を用いて形成された波長変換シート5が設けられている。本実施の形態によれば、波長変換シート5を、導光板4上に塗布して形成したものでなく、シート状に予め形成されている。そして波長変換シート5を導光板4の発光面に重ね合わせている。導光板4と波長変換シート5との間に拡散フィルム等の別のフィルムが入っていてもよい。
【0043】
また導光板4自体を、本実施の形態の量子ドット入り樹脂を用いて成形することも可能である。このとき、波長変換シート5はあってもなくてもよい。導光板4及び波長変換シート5の両方が、緑色に発光する量子ドット及び赤色に発光する量子ドットを含むこともできる。また、導光板4が緑色に発光する量子ドットを含み、波長変換シート5が赤色に発光する量子ドットを含むこともできる。あるいは逆に、導光板4が赤色に発光する量子ドットを含み、波長変換シート5が緑色に発光する量子ドットを含むこともできる。
【0044】
なお、本実施の形態の樹脂成形品を用いた蛍光部材は波長変換可能なものであるから波長変換部材であるとも言え、両者間を明確に区別するものではない。
【0045】
図3では、例えば照明器具7の照明カバー8を本実施の形態の量子ドット入り樹脂を用いて成形することができる。ここで照明とは、屋内又は屋外に、明かりを提供する状態を指す。本実施の形態では、例えば
図3に示すように樹脂成形品を電球状に成形することもできるし、面発光タイプの照明カバー形状に成形することもできる。照明器具7の発光素子として青色発光LEDを用い、青色の光を、赤色に変換する量子ドット及び緑色に変換する量子ドットの双方を含む照明カバー8を用いると、白色の照明器具7が得られる。量子ドットの量、比率を調節することで、所望の色の照明を得ることができる。
【0046】
また照明器具の形態としては、
図2に示すような構造を利用して面発光させる構造であってもよい。この場合、導光板4及び波長変換シート5を上方から見たときの平面形状は、長方形又は正方形であってよいが、これに限定されず、円形、三角形、六角形など、自由な形状とすることができる。照明器具の発光面は
図3に示すような曲面であっても、平面であってもよく限定されるものでない。また照明器具はファイバー形状等であってもよい。
【0047】
また照明器具の発光素子と照明表面(発光面)との間の空間に量子ドット入りの樹脂が充填された構造であってもよい。すなわち、自由な形状の照明をつくることができる。
【0048】
図4では、基材9上に複数のLED等の発光素子10が設置された光源ユニット11を示している。
図4に示すように各発光素子10に対してドーム型のレンズ部12が覆っている。ドーム型のレンズ部12は、例えば、内部が中空の半球形状である。基材9及び発光素子10と、レンズ部12の内側の表面との間は、中空であってもよいし、適切な樹脂材料が充填されていてもよい。レンズ部12を本実施の形態の量子ドット入り樹脂を用いて成形することができる。例えば、レンズ部12と基材9とが接する部分に所定厚で透明接着剤等を塗布しておくことで、レンズ部12を、各発光素子10を覆って、基材9の上面に簡単に貼合することが可能になる。発光素子10として青色発光LEDを用い、青色の光を赤色に変換する量子ドット及び緑色に変換する量子ドットを含むレンズ部12を用いると、白色の光源ユニット11が得られる。
【0049】
図5、
図6では、
図4と比較して、レンズ部13、14の形状が異なっている。
図5に示すレンズ部13は
図4に示すドーム型のレンズ部の上面中央部分を下方へ凹ませた形状であり、
図6に示すレンズ部14は、側面が円筒形状であって、断面矩形状の上面中央部分を下方へ凹ませた形状とされている。これにより、光の放射角度範囲や放射方向を
図4に示す光源ユニット11と変えることができる。
【0050】
図4から
図6において各レンズ内部に、本実施の形態における量子ドット入り樹脂が充填された構造であってもよい。あるいは、量子ドット入り樹脂の発光素子10の配置部分を凹ませた形状とし、且つ表面が
図4から
図6に示すレンズ面に成形したレンズ成形品とすることもできる。例えば、レンズ部12、13又は14を、発光素子10が搭載された基材9上に、直接に射出成形により形成することもできる。
【0051】
図7には、発光シート15と拡散板16とを有する光拡散装置17が示されている。発光シート15には複数の光源15aが設けられており、各光源15aは、LED等の発光素子と、各発光素子の表面側を覆う樹脂層とで構成される。
図7に示す発光シート15は、各光源15aが支持体18上にて成形された構造である。各光源15aの各発光素子を覆う樹脂層は、量子ドット入り樹脂で形成することができる。例えば、発光シート15は、
図4に示した光源ユニット11である。
【0052】
図7に示す光拡散装置17は、例えば液晶ディスプレイ等の表示部に対する裏面側に配置されたバックライト等を構成する。また、
図7に示す光拡散装置17を照明として用いることもできる。
【0053】
また
図7において、拡散板16が量子ドット入りの樹脂成形品で構成されてもよい。このとき、発光シート15に設けられた各光源15aにおいてLED等の発光素子を覆う樹脂層に量子ドットが含まれていても含まれていなくてもどちらでもよい。各光源15aの樹脂層及び拡散板16の両方が、緑色に発光する量子ドット及び赤色に発光する量子ドットを含むこともできる。また、各光源15aの樹脂層が緑色に発光する量子ドットを含み、拡散板16が赤色に発光する量子ドットを含むこともできる。あるいは逆に、各光源15aの樹脂層が赤色に発光する量子ドットを含み、拡散板16が緑色に発光する量子ドットを含むこともできる。
【0054】
図8、
図9には光源装置19、20が図示されている。
図8に示すように光源装置19は、基材21上に複数のLED等を備えた光源22が配列されているとともに、各光源22間に配置された反射板23とを有して構成される。各光源22は、LED等の発光素子を有してよい。反射板23は、本実施の形態の量子ドット入り樹脂で形成される。例えば、本実施の形態の量子ドット入り樹脂を成形加工して反射板23とすることが可能である。
【0055】
図8の光源装置19は、例えばバックライトであり、光源装置19の上方に図示しない拡散板及び液晶ディスプレイ等の表示部が配置されている。
【0056】
光源装置19では各光源22の周囲に反射板23が配置された構造であり、光源装置19側に戻る光は反射板23にて反射され、光源装置19の面全体で均一な光を表示部に向けて放出することが可能になっている。
【0057】
図9に示す光源装置20では、各光源22の間に側壁24が設けられている。側壁24は例えば格子状からなり、格子状の各空間内に光源22及び反射板23が設置されている。このように各光源22間を仕切る側壁24を設けることで反射効率及び光波長変換効率の向上を図ることができる。
図9に示すように側壁24は基材21と一体成形されていてもよいし別々に成形されたものであってもよい。あるいは、反射板23と側壁24とが、一体であってもよい。例えば、本実施の形態の量子ドット入り樹脂を成形加工して反射板23及び側壁24とすることが可能である。
【0058】
図10は、本実施の形態の量子ドットを備えるシート部材を用いたアプリケーションの模式図である。量子ドットを含むシート部材65は、例えば
図10Aに示すバックライト装置93に組み込むことができる。
図10Aでは、複数の複数の発光素子92(LED)と、発光素子92に対向するシート部材65とを有してバックライト装置93が構成されている。
図10Aに示すように、各発光素子92は、支持体91の表面に支持されている。
図10Aでは、バックライト装置93が、液晶ディスプレイ等の表示部94の裏面側に配置されて、表示装置90を構成している。なお
図10Aに示す発光素子92は、
図4で示した光源ユニット11であってもよい。
【0059】
なお
図10Aには図示しないが、発光素子92と表示部94との間にはシート部材65の他に、光を拡散する拡散板、及び、その他のシート等が介在していてもよい。
【0060】
またシート部材65は、一枚で形成されているが、例えば、所定の大きさとなるように、複数枚のシート部材65を繋ぎ合わせてもよい。以下、複数のシート部材65を、タイリングによって繋ぎ合わせた構成を、複合シート部材という。
【0061】
図10Bでは、発光素子92/複合シート部材95/拡散板96/表示部94の順に配置されている。これによれば、複合シート部材95を構成する各シート部材の繋ぎ目において、乱反射、又は、繋ぎ目から進入した水蒸気による量子ドットの劣化などに起因する発光色のムラが生じた場合でも、表示部94の表示に色ムラが生じるのを適切に抑制することができる。すなわち、複合シート部材95から放出された光は拡散板96で拡散された後に、表示部94に入射されるので、表示部94の表示における色ムラが抑制できる。
【0062】
図11は、本実施の形態における量子ドットを備える波長変換装置の斜視図及びA−A線矢視の断面図である。
図11Aは、波長変換装置の斜視図であり、
図11Bは、
図11Aに示す波長変換装置をA−A線に沿って平面方向に切断し矢印方向から見た断面図である。
【0063】
図11Aに示すように、波長変換装置70は、容器71と、波長変換物質を含む成形体72とを有して構成される。
【0064】
容器71は、波長変換物質を含む成形体72を収納し保持することが可能な収納空間73を備える。容器71は透明な部材であることが好ましい。「透明」とは、一般的に透明と認識されるもの、又は、可視光線透過率が約50%以上のものを指す。
【0065】
容器71の縦横寸法の大きさは、数mm〜数十mm程度、収納空間73の縦横寸法は、数百μm〜数mm程度である。
【0066】
図11に示すように容器71は、光入射面71a、光出射面71b、及び、光入射面71aと光出射面71bとの間を繋ぐ側面71cとを備える。
図11に示すように、光入射面71aと光出射面71bとは互いに対向した位置関係にある。
【0067】
図11に示すように、容器71には、光入射面71a、光出射面71b及び側面71cよりも内側に収納空間73が形成されている。なお、収納空間73の一部が、光入射面71a、光出射面71bあるいは側面71cにまで達していてもよい。
【0068】
図11に示す容器71は例えばガラス管の容器であり、ガラスキャピラリを例示できる。ただし、上記したように透明性に優れる容器を構成できれば樹脂等であってもよい。
【0069】
図11に示すように、収納空間73には、波長変換物質を含む成形体72が配置されている。
図11に示すように、収納空間73は開口しており、ここから波長変換物質を含む成形体72を挿入することができる。
【0070】
波長変換物質を含む成形体72を、収納空間73内に圧入や接着等の手段により挿入することができる。圧入する場合には、波長変換物質を含む成形体72を収納空間73と完全に同一の大きさかあるいは、収納空間73よりもわずかに大きく成形し、圧力を加えながら波長変換物質を含む成形体72を収納空間73内に挿入することで、波長変換物質を含む成形体72の内部のみならず、波長変換物質を含む成形体72と容器71との間にも隙間が生じるのを抑制することができる。
【0071】
また波長変換物質を含む成形体72を収納空間73内に接着して固定する場合、波長変換物質を含む成形体72を収納空間73よりも小さく成形し、波長変換物質を含む成形体72の側面に接着層を塗布した状態で、波長変換物質を含む成形体72を収納空間73内に挿入する。このとき、成型体72の断面積が、収納空間73の断面積よりもわずかに小さくてもよい。これにより、波長変換物質を含む成形体72と容器71とは接着層を介して密接し、波長変換物質を含む成形体72と容器71との間に隙間が形成されるのを抑制することができる。接着層には、成型体72と同じ樹脂、あるいは、基本構造が共通する樹脂を用いることができる。又は、接着層として、透明な接着材を用いてもよい。
【0072】
また、波長変換物質を含む成形体72の屈折率は、容器71の屈折率に比べて小さいことが好ましい。これにより、波長変換物質を含む成形体72内に進入した光の一部が、収納空間73に面する容器71の側壁部分で全反射する。屈折率の小さい媒体側における入射角は、屈折率の大きい媒体側における入射角より大きくなるためである。これにより光が容器71の側方から外部へ漏れる量を減らすことができるので、色変換効率及び発光強度を高めることができる。
【0073】
図11に示す波長変換装置70の光入射面71a側に発光素子が配置される。また波長変換装置70の光出射面71b側には
図1に示す導光板2等が配置される。なお
図11では、成形体72としたが、量子ドットを含む樹脂組成物を注入して量子ドット層を形成してもよい。
【0074】
図12は、本実施の形態における量子ドットを備える波長変換部材を有して構成された発光装置の斜視図である。
図13は、
図12に示す発光素子の各部材を組み合せた状態で、B−B線に沿って高さ方向に切断し矢印方向から見た断面図である。
【0075】
図12、
図13に示す発光素子75は、波長変換部材76と、LEDチップ(発光部)85とを有して構成される。波長変換部材76は、容器本体77と蓋体78との複数ピースで構成された容器79を備える。また
図12に示すように、容器本体77の中央部には有底の収納空間80が形成されている。収納空間80には量子ドットを含有する波長変換層84が設けられる。波長変換層84は成形体であってもよいし、収納空間80内にポッティング加工等により充填されてもよい。そして容器本体77と蓋体78とは接着層を介して接合される。
【0076】
図12、
図13に示す波長変換部材76の容器79の下面が光入射面79aである。光入射面79aに対向する上面が光出射面79bである。
図12、
図13に示す波長変換部材76の容器79に設けられた各側面79cに対して内側の位置に収納空間80が形成されている。
【0077】
図13に示すように、LEDチップ85は、プリント配線基板81に接続され、
図12、
図13に示すようにLEDチップ85の周囲が枠体82に囲まれている。そして、枠体82内は樹脂層83で封止されている。
【0078】
図13に示すように、波長変換部材76が枠体82の上面に図示しない接着層を介して接合されてLED等の発光素子75が構成される。
【0079】
このように本実施の形態の量子ドット入り樹脂を様々な形状に自由に成形することができ、安価に所定形状からなる樹脂成形品を製造することができる。このとき、量子ドット入り樹脂には金属石鹸(ステアリン酸カルシウムが好ましい)が含まれており、量子ドットの粒子の分散性を高めることができ、環境変化に対する耐久性を向上させることができる。なお、本実施の形態における樹脂成形品を用いたアプリケーションとして、青色光を照射したときに緑色光を発する量子ドット及び赤色光を発する量子ドットを用いる例を説明したが、アプリケーションはこれに限られない。すなわち、本実施の形態における樹脂成形品として、量子ドットと量子ドットとは別の蛍光物質とを含む樹脂成形品を
図1〜
図13のアプリケーションに用いることもできる。例えば、青色光を照射したときに、赤色光を発光する赤発光量子ドットに代えて、赤色光を発光する赤色発光蛍光体を用いることができる。あるいは、緑色光を発光する緑発光量子ドットに代えて、緑色光を発光する緑色発光蛍光体を用いることができる。また、本実施の形態における樹脂成型品を用いたアプリケーションは、LEDなどの発光素子が発した光の波長を変換する波長変換部材に限られない。例えば、量子ドットによって電気エネルギーを光に変換する発光装置に、本実施の形態における樹脂成型品を用いてもよい。あるいは、量子ドットによって光を電気エネルギーに変換する光電変換装置に、本実施の形態における樹脂成型品を用いてもよい。
【0080】
本実施の形態における樹脂成形品の製造方法は、量子ドットを樹脂に分散して得られた樹脂組成物を成形してなることを特徴とするものである。その具体的な製造方法については
図14を用いて説明する。
図14は、本実施の形態における樹脂成形品の製造方法を示すフローチャートである。
【0081】
図14のステップST1では、例えば、樹脂としてのポリプロピレン(PP)に、エラストマー、金属石鹸を撹拌してPP混合物を生成する。金属石鹸としては、ステアリン酸カルシウムを用いることが好適である。エラストマーの含有の有無については任意に設定できる。金属石鹸については後述する実験に示すように、量子ドットの分散性を向上させるために含有することが好適である。
【0082】
続いて、
図14のステップST2では、量子ドット(QD)を溶媒に分散してQD液を生成する。ここで、溶媒としては、オルガノシランあるいはヘキサンを用いることが好適である。
【0083】
次に、
図14のステップST3では、ST1で生成されたPP混合物と、ST2で生成されたQD液とを混合し、均一になるまで撹拌する。
【0084】
続いて
図14のステップST4では、ST3で得られた混合物を押出機に入れて、所定温度にて前記混合物を押出混練し、得られたワイヤを裁断機に導入してペレットを作製する(ST5)。
【0085】
そして
図14のST6にて、ペレットを所定のシリンダー温度に設定された射出成形機に導入し、金型に射出して樹脂成形品を作製する。
【0086】
以上に示した本実施の形態の樹脂成形品の製造方法によれば、量子ドット入り樹脂を用いて様々な形状の成形品を自由に作製することが可能である。
【0087】
また本実施の形態では量子ドットの分散性を高めるための金属石鹸をST1のPP混合物の生成の際に混合している。金属石鹸は樹脂中で量子ドットを包み込む。量子ドットの周囲に金属石鹸が分布することによって、量子ドットの樹脂中における分散性が向上する。例えば、ST6における射出成形の際に金属石鹸を混合するのではなく、金属石鹸が導入されたPP混合物を押出混練している。これにより、樹脂成形品における量子ドットの樹脂に対する分散性が効果的に高まる。
【0088】
図14に示すST1とST2の工程は、ST3の前であれば特に順番を定めるものでない。なおST3からST6は
図14の順番通りとされる。
【0089】
また例えば、ST1のように予めPP混合物を生成するのでなく、ST2のQD溶液を生成した後、このQD溶液に、ポリプロピレン、エラストマー及び金属石鹸を混合してもよい。このとき、ポリプロピレン、エラストマー及び金属石鹸の混合順を定めるものではない。
【0090】
また、本実施の形態では、QD溶液に対して散乱剤を混合してもよい。散乱剤としては、シリカ(SiO
2)、BN、AlN等の微粒子などを提示することができる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明の効果を明確にするために実施した実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。例えば以下の実施例では樹脂成形品を射出成形で成形する例を説明するが、本発明の樹脂成形品は、押出成形、中空成形、熱成形、圧縮成形、カレンダー成形、インフレーション法、キャスティング法などの方法を用いて作製してもよい。
【0092】
[材料]
以下の樹脂成形品を作製するにあたり以下の材料を用いた。
樹脂:ポリプロピレン
エラストマー:株式会社クラレ ハイブラー(登録商標)7311
オルガノシラン:シクロヘキシル(ジメトキシ)メチルシラン
量子ドット(QD):コア/シェル構造の赤色発光量子ドットと緑色発光量子ドット
分散剤:ステアリン酸カルシウム
【0093】
[押出機]
小型2軸押出機
メーカー名 有限会社河辺製作所
仕様 スクリュ径:16mm
L/D:40
最高混練温度:400℃
【0094】
[サンプル1−1]
(1)ポリプロピレン(「PP」という):1.6kg、エラストマー:0.4kg、ステアリン酸カルシウム(「StCa」という):約1gを、ビニールチャック袋(34×50cm)に入れ、よく撹拌してPP混合物とした。
(2)次に、量子ドット(「QD」という):4gを蒸留精製したオルガノシラン:40mlに分散し、PP混合物に加え、均一になるまでよく撹拌した。
(3)(2)で得られた混合物を押出機のホッパーに入れ、200℃〜250℃(適宜調整した)の押出温度にてPPワイヤを押出混練した。PPワイヤは出口ノズルから直接水槽内に導入し、冷却して直径1〜2mmのワイヤを得た。さらにこのワイヤを裁断機に導入して長さ約4mmのペレットを作製した。サンプル1−1におけるQD濃度は2000ppmであった。
【0095】
[サンプル1−2]
QD:0.8gをオルガノシラン:40mlに分散し、その2.5mlをPP混合物:500gに加えた以外は、サンプル1−1と同様の操作を行った。サンプル1−2におけるQD濃度は1000ppmであった。
【0096】
[サンプル1−3]
サンプル1−2のQD濃度1000ppmで用いたQD液をオルガノシランで10倍に希釈したものを用いた以外は、サンプル1−1と同様の操作を行った。サンプル1−3におけるQD濃度は100ppmであった。
【0097】
[サンプル2−1]
サンプル1−1と同じ原料を使用し、混合条件、押出条件を変更した。具体的には、QD液に、PP、エラストマーを混ぜた。またサンプル1よりもオルガノシランを十分に飛ばす目的で押出温度を上げ、押出速度を下げた。サンプル2−1におけるQD濃度は2000ppmであった。
【0098】
[サンプル2−2]
サンプル2−1と同様の方法で作製したが、ステアリン酸カルシウムを使用しなかった。サンプル2−2におけるQD濃度は2000ppmであった。
【0099】
[サンプル3]
サンプル2−1と同様の方法で作製した。ただしQDを分散する溶媒としてヘキサンを用いた。ヘキサンを用いることでQDがよく分散し、PPとエラストマーとを混ぜてもべたつきが少なかった。サンプル3におけるQD濃度は2000ppmであった。
【0100】
[サンプル4−1]
サンプル3と同様の方法で作製した。ただし、QD濃度を200ppmとした。
【0101】
[サンプル4−2]
サンプル4−1と同様の方法で作製した。ただし、シリカ微粒子(SiO
2微粒子、粒径1.0μm)を散乱剤として5重量%添加した。サンプル4−2におけるQD濃度は200ppmであった。
【0102】
[サンプル4−3]
サンプル4−1と同様の方法で作製した。ただし、散乱剤のシリカ微粒子を10重量%添加した。サンプル4−3におけるQD濃度は200ppmであった。
【0103】
[QDを分散したPP押出成形品の耐久試験]
長さ:5cmのワイヤ状サンプルを青色(波長:450nm)LEDが3個装備されたサンプルホルダに挟み、以下の各条件下でLEDを点灯させ、各サンプルからの発光強度の時間経過を追跡した。
【0104】
耐久試験の条件
(1) 60℃90RH LED60mAで点灯
(2) 60℃90RH LED30mAで点灯
(3) 60℃90RH LED未点灯
(4) 室内 LED60mAで点灯
(5) 60℃大気中 LED60mAで点灯
【0105】
なお60℃90RH耐久試験には、ヤマト化学株式会社の恒温恒湿器IW222を用いた。発光強度は、各サンプルを青色(波長:450nm)LEDが3個装備されたサンプルホルダに挟みこんだ状態で、450nmのLED励起光(20mW×3)で発光させたときの全光束を、大塚電子株式会社製の全光束測定システムで測定した。
サンプル1−1、1−2の実験結果を以下の表1に示した。
【0106】
【表1】
【0107】
図29に発光スペクトルの一例を示す。
図29は、サンプル1−1を60℃大気下とした条件にて経過時間が0時間、41時間、92時間、160時間、235時間のときに測定した発光スペクトルである。他の耐久試験条件においても時間に対する発光スペクトルを求め、上記表1をまとめた。なお表1及び
図29には経過時間が235時間までの結果を記しているが、実際には600時間を超える発光強度経時変化を測定した。その実験結果が
図15、
図16に示されている。
【0108】
図15は、サンプル1−1(赤面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフであり、
図16は、サンプル1−1(緑面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
【0109】
次にサンプル2−1、2−2の実験結果を以下の表2に示した。
【0110】
【表2】
【0111】
図17は、サンプル2−1(緑面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
図18は、サンプル2−1(赤面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
図19は、サンプル2−2(緑面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
図20は、サンプル2−2(赤面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
【0112】
次にサンプル3の、温度60℃、湿度90%、30mAで発光させた光を照射した場合における実験結果を以下の表3に示し、他の条件における実験結果を表4に示した。
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
図21は、サンプル3(緑面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
図22は、サンプル3(赤面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
【0116】
環境変化に対する耐久性は、各グラフにおいて、発光強度の経時変化が少ない、すなわち、時間経過に対する減少の傾きが緩やかになるほど、向上していることになる。各グラフを見てわかるように、60℃90RHという過酷な環境条件下でLEDを点灯すると、蛍光強度は速やかに減少することがわかった。一方、室内点灯、60℃大気中点灯、LED未点灯では、蛍光強度は徐々に減衰するか、もしくは初期強度レベルを維持できることがわかった。
【0117】
次に、ステアリン酸カルシウム(StCa)を混合したサンプル2−1と、ステアリン酸カルシウム(StCa)を混合しなかったサンプル2−2との蛍光強度経時変化を対比した。
図17、
図18は、サンプル2−1の実験結果であり、
図19、
図20はサンプル2−2の実験結果である。互いのグラフで同条件を比べてみると、ステアリン酸カルシウム(StCa)を混合したサンプル2−1と、ステアリン酸カルシウム(StCa)を混合しなかったサンプル2−2に比べて耐久性が向上したことがわかった。特にステアリン酸カルシウムを混合したサンプルでは、緑色光及び赤色光のピーク面積は、温度60℃、湿度90%でLEDを点灯せずに200時間が経過した後でも試験前の80%以上であった。また、これらのサンプルでは、緑色光及び赤色光のピーク強度は、温度60℃、湿度90%でLEDを点灯せずに200時間が経過した後でも試験前の80%以上であった。
【0118】
また、溶媒としてオルガノシランを用いたサンプル2−1の実験結果である
図17、
図18と、溶媒としてヘキサンを用いたサンプル3の実験結果である
図21、
図22との蛍光強度経時変化を対比した。互いのグラフで同条件を比べてみると、溶媒としてヘキサンを用いたサンプル3のほうが、溶媒としてオルガノシランを用いたサンプル2−1に比べて耐久性が向上しやすいことがわかった。ヘキサンを用いステアリン酸カルシウムを混合したサンプルでは、緑色光及び赤色光のピーク面積は、温度60℃、湿度90%でLEDを点灯せずに200時間が経過した後でも試験前の93%以上であった。
【0119】
[射出成形]
以下の射出成形機を用いた。
電動式射出成形機 J110AD 110H
メーカー名 株式会社日本製鋼所
仕様 射出圧力:225MPa
型締め力:1080kN
【0120】
押出成形で得られたサンプル4−1〜4−3のペレットを、シリンダー温度を200℃〜240℃とした射出成形機に導入して物性試験片作成用金型に射出し、所定形状の試験片を成形した。
【0121】
[射出成形品の耐久試験]
各試験片を90℃、110℃、130℃に夫々加熱しその後、徐冷した。そして、サンプルホルダに5cm×1cm×4mmのサイズの試験片を挟み、60℃90RHとした耐久試験を実施した。これにより上記のアニーリングの影響について検討した。
【0122】
図23は、サンプル4−1(緑面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
図24は、サンプル4−1(赤面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
図25は、サンプル4−2(緑面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
図26は、サンプル4−2(赤面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
図27は、サンプル4−3(緑面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
図28は、サンプル4−3(赤面積)の各条件下における発光強度経時変化を示すグラフである。
【0123】
図24、
図26、
図28に示すように赤の発光については顕著な違いは見られなかった。一方、
図23、
図25、
図27に示すように緑の発光については、シリカ微粒子を添加していないサンプル4−1よりもシリカ微粒子を添加したほうが長時間発光することがわかった。なお蛍光面積の減少はアニール前後で大きな変化はなく、顕著な改善は見られなかった。
【0124】
[分散状態の実験]
サンプルAを用いて、樹脂中での量子ドットの分散状態を調べた。サンプルAを、サンプル1−1に基づいて形成した。
図30及び
図32はいずれもTEM写真である。
図32では
図30に示す量子ドットの凝集体を拡大して示したものである。また
図31は、
図30の模式図であり、
図33は、
図32の模式図である。
【0125】
この実験では、複数の量子ドットが凝集体を形成し、凝集体が樹脂中に分散していることがわかった。