特許第6495894号(P6495894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6495894透明な拡散性OLED基材及び当該基材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495894
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】透明な拡散性OLED基材及び当該基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20190325BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190325BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190325BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20190325BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20190325BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20190325BHJP
   C03C 8/16 20060101ALN20190325BHJP
【FI】
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   G02B5/02 A
   C03C17/34 Z
   B32B7/02 103
   !C03C8/16
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-513270(P2016-513270)
(86)(22)【出願日】2014年4月29日
(65)【公表番号】特表2016-524788(P2016-524788A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】EP2014058738
(87)【国際公開番号】WO2014183993
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2017年3月27日
(31)【優先権主張番号】13168341.9
(32)【優先日】2013年5月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム ルカンプ
(72)【発明者】
【氏名】バンサン ソービネ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ シュマン
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0313134(US,A1)
【文献】 特開2008−210717(JP,A)
【文献】 特開2006−286616(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/116531(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/046190(WO,A1)
【文献】 特開2009−076452(JP,A)
【文献】 特表2011−504640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/00−33/28
B32B 1/00−43/00
C03C 1/00−23/00
G02B 5/00− 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の連続した構成要素又は層、すなわち、
(a)屈折率が1.45と1.65の間の無機ガラス製の透明な平坦基材(1)、
(b)無機粒子を含む粗い低屈折率層であって、当該無機粒子はゾル−ゲル無機結合剤で前記基材の片面に付着していて、当該無機結合剤の表面近くの、又は表面の、又は表面から突出した無機粒子が0.15μmと3μmの間に含まれる算術平均偏差Raで特徴付けられる表面粗さを作り出していて、当該無機粒子と無機結合剤の両方が1.45と1.65の間の屈折率を有している、粗い低屈折率層、
(c)前記粗い低屈折率層を覆っている、屈折率が1.8と2.1の間に含まれるエナメル製の高屈折率層、
を含む透明な拡散性OLED基材。
【請求項2】
前記無機粒子が0.3μmと10μmの間の平均相当球径を有する、請求項1記載の基材。
【請求項3】
前記無機粒子が中実のビーズである、請求項1又は2記載の基材。
【請求項4】
前記無機粒子が、相当球径が15μmより大きい粒子を含まない、請求項1〜3のいずれかに記載の基材。
【請求項5】
前記基材、無機結合剤及び無機粒子の屈折率が1.50と1.60の間に含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の基材。
【請求項6】
前記高屈折率層の厚さが3μmと20μmの間に含まれる、請求項1〜5のいずれかに記載の基材。
【請求項7】
前記高屈折率層の表面粗さが3nm未満の算術平均偏差Raを有する、請求項1〜6のいずれかに記載の基材。
【請求項8】
前記高屈折率層がそれに分散した拡散性構成要素を含まない、請求項1〜7のいずれかに記載の基材。
【請求項9】
前記高屈折率層がそれに分散した拡散性の中実粒子を含まない、請求項1〜7のいずれかに記載の基材。
【請求項10】
前記無機粒子がシリカ粒子から選ばれている、請求項1〜9のいずれかに記載の基材。
【請求項11】
前記高屈折率のエナメル層の上に透明な導電性層を更に含む、請求項1〜10のいずれかに記載の基材。
【請求項12】
前記無機粒子の前記無機結合剤に対する体積比が0.3と3の間に含まれる、請求項1〜11のいずれかに記載の基材。
【請求項13】
次の一連の工程、すなわち、
(1)屈折率が1.45と1.65の間の無機ガラス製の透明な平坦基材を用意する工程、
(2)屈折率が1.45と1.65の間の無機粒子を、屈折率が1.45と1.65の間の無機結合剤の少なくとも1種の前駆物質のゾルに分散させる工程、
(3)得られた分散液を前記基材の片面に塗布する工程、
(4)得られた層を加熱により乾燥及び焼成して、無機粒子と無機結合剤とを含む透明な粗い低屈折率層を得る工程、
(5)この粗い低屈折率層に屈折率が1.8と2.1の間の高屈折率ガラスフリットの層を適用する工程、
(6)前記粗い低屈折率層を覆う屈折率が1.8と2.1の間に含まれる高屈折率エナメル層が得られるように、前記ガラスフリットを乾燥及び溶融させる工程、
を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の透明な拡散性基材の作製方法。
【請求項14】
無機結合剤の前記少なくとも1種の前駆物質を、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、テトラアルコキシシラン、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドからなる群より選ぶ、請求項13記載の方法。
【請求項15】
工程(4)における乾燥及び焼成を、少なくとも100℃での加熱により行う、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記無機粒子が0.3μmと10μmの間の平均相当球径を有する、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(OLED)のための透明な光散乱性基材を製造するための新しい方法と、当該方法により得られる基材とに関する。
【背景技術】
【0002】
OLEDは、少なくとも一方は半透明である2つの基材の間に挟まれた蛍光性又はリン光性色素を含んだ有機層の積重体を含むオプトエレクトロニクスエレメントである。電極に電圧を印加すると、カソードから注入された電子とアノードから注入された正孔とが有機層内で再結合し、その結果として蛍光/リン光層から光が放射される。
【0003】
従来のOLEDからの光の抽出はどちらかと言えば不十分であり、光の大部分は高屈折率の有機層及び透明な導電層(TCL)での全内部反射により捕捉される、ということが広く知られている。全内部反射は、高屈折率のTCLとその下のガラス基材(屈折率約1.5)との境界だけでなく、ガラスと空気との境界でも起こる。
【0004】
推測によると、追加の抽出層を含まない従来のOLEDでは、有機層から放出された光の約60%はTCL/ガラスの境界で捕捉され、更に20%の部分がガラス/空気の面で捕捉されて、わずかに約20%がOLEDから空気中へと出てゆく。
【0005】
この光の捕捉をTCLとガラス基材との間の光散乱層によって低減することが知られている。このような光散乱層は、TCLの屈折率に近い高い屈折率を有するとともに、複数の光拡散性構成要素を含んでいる。
【0006】
OLEDのガラスと高屈折率層との界面を構造化して光のアウトカップリングを増加させることも知られている。
【0007】
一般に「内部抽出層」とも呼ばれる、これらの「内部」抽出手段はどちらも、TCLと有機積重体を適用する前に平坦化することが必要な凹凸を含んでいる。
【0008】
国際公開第2011/089343号には、高屈折率のガラスコーティングで平坦化した構造化した面を少なくとも1つ含むOLED基材が開示されている。この基材は、酸エッチングで構造化されると記載されている。強酸、特にHFを使用するガラスのエッチングは、ガラス表面を構造化するのに広く用いられている方法である。しかし、このような湿式の化学的方法は、薄いガラス(厚さ<1mm)に対して行う場合には複雑な方法である。エッチング工程の間ガラス板を水平の位置に保たなくてはならないので、この技術は、処理工程当たりに2つの面のうちの一方だけをエッチングできるようにするに過ぎない。更に、粗さプロファイルのパラメータを最適化するのが難しく、そして何よりもHFを使用することは、環境と近くで作業する人にとって重大な安全上の問題を引き起こす。
【0009】
本出願人は、最近、ガラス基材の片面又は両面を粗化する興味深い別法を開発したが、この方法は機械式の粗化(ラッピング)を含む。2012年9月28日出願のヨーロッパ特許出願第12306179.8号明細書に記載されるこの方法は、化学エッチングよりはるかに危険が少なく、粗さプロファイルのより良好な制御を可能にし、そして基材の両面を同時に粗化して、透明OLEDガラス基材の内部及び外部抽出層(IEL及びEEL)を単一の処理工程で作るのを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2011/089343号
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願第12306179.8号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、拡散性の低屈折率ガラス基材を製造するための更に別の方法を対象とするものであり、この方法は化学エッチング工程も機械的な研摩工程も含まない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の基礎をなす考えは、低屈折率の無機結合剤を用いて低屈折率の無機粒子を低屈折率のガラス基材に結合させることであり、無機結合剤の無機粒子に対する量は、無機粒子が結合剤表面から突出するのに、あるいは少なくとも無機結合剤表面に有意の粗さを作り出すのに十分なだけ少ない。
【0013】
その結果得られた拡散性の低屈折率基材は、その後、高屈折率フリットを使用する公知の平坦化工程に回され、得られた平坦化した拡散性基材はその後透明導電層(TCL)で被覆して、OLEDのための光抽出基材として使用することができる。
【0014】
本発明の方法は実施するのが容易であり、どちらかと言うと簡単でよく知られた装置のみを必要とするに過ぎない。ヨーロッパ特許出願第12306179.8号明細書に記載されたラッピング方法を上回る一つの大きな利点は、非常に大きな表面に対して使用できるということである。それは、エッチング又はラッピングした大きな表面のガラス基材について認められることがある不都合である、基材の機械的強度を弱めることがないので、更に有利である。
【0015】
本発明の第一の対象は、次の連続した構成要素又は層、すなわち、
(a)屈折率が1.45と1.65の間の無機ガラス製の透明な平坦基材、
(b)無機粒子を含む粗い低屈折率層であって、該無機粒子はゾル−ゲル無機結合剤で基材の片面に付着していて、無機結合剤の表面近くの、又は表面の、又は表面から突出した無機粒子が0.15μmと3μmの間に含まれる算術平均偏差Raで特徴付けられる表面粗さを作り出していて、当該無機粒子と無機結合剤の両方が1.45と1.65の間の屈折率を有している、粗い低屈折率層、
(c)前記粗い低屈折率層(b)を覆っている、屈折率が1.8と2.1の間に含まれるエナメル製の高屈折率層、
を含む透明な拡散性OLED基材である。
【0016】
本発明はまた、上述のとおりの拡散性基材を作製するための方法も提供する。
【0017】
「ゾル−ゲル無機結合剤」という用語は、小さな前駆物質から、一般には金属アルコキシドからゾル−ゲル法により得られる無機質の固体を指す。この方法は、前駆物質、例えば金属テトラアルコキシドをコロイド液(ゾル)に変え、これから一体化したポリマー網状組織(ゲル)を徐々に作り、それをその後乾燥させそして焼成により固めることを含む。
【0018】
本発明のOLED基材の低屈折率層は、その屈折率(1.45〜1.65)と、その表面粗さプロファイル、すなわち0.15μmと3μmの間に含まれる算術平均偏差Ra(例えばISO 4287で規定されているような)とによって規定される。
【0019】
この粗さは、無機結合剤の表面近くの、又は表面の、又は表面から突出した無機粒子によって作り出される。これらの無機粒子は無機結合剤から必ずしも突き出す必要はなく、表面の粗さ又はうねりの原因が下にある粒子のせいであり表面プロファイルが埋め込まれた無機粒子の存否に親密に一致していることが、例えば断面SEM画像から、明らかである限りにおいて、無機結合剤中に埋め込まれていてもよい。
【0020】
本発明で使用する無機粒子は、結晶質、非晶質又は半結晶質の粒子でよい。それらは、多かれ少なかれ尖った端部のある不揃いの形状を有することができるが、好ましくはどちらかと言えば尖った端部のない球状の粒子である。
【0021】
好ましい実施形態では、無機粒子は中実のビーズである。このようなビーズは、基材の表面に容易に広がって大きな集合体でなくビーズの薄い単層を形成するのを容易にするので、尖った端部のある不揃いな形状の粒子よりも好ましい。尖った端部のない球状の粒子はまた、不揃いな形状の粒子よりも容易に平坦化される。中空ビーズは、それに含まれるガスの屈折率が1.45と1.65の間に含まれないので、本発明の無機粒子の定義に含まれないことを理解すべきである。
【0022】
「無機粒子」という用語は、特に本発明の方法を説明するのに使用する場合には、有機の表面基、例えばトリアルキルシリル基などで機能化された粒子を包含する。これらの有機表面基は、ゾル−ゲル無機結合剤の焼成工程の間にあるいは高屈折率エナメル層の形成の間に、熱分解を受ける。
【0023】
本発明で使用する無機粒子は、球状であろうとそうでなかろうと、0.3μmと10μmの間、好ましくは0.5μmと8μmの間、より好ましくは0.8μmと7μmの間の平均相当球径(DLSで測定)を有し、形状の不揃いな粒子の相当球径はその無機粒子と同じ体積を有する球の直径として定義される。
【0024】
とは言え、平均相当球径は、本発明で使用すべき無機粒子を選定するために考慮する唯一の寸法パラメータではない。有利には、無機粒子は、無機結合剤からだけでなく高屈折率エナメル層からも突き出してその結果最終のOLEDにおいて漏れ電流の原因となる大きな粒子を、本質的に含まない。このため、本発明で使用する無機粒子は、相当球径が15μmより大きい、好ましくは12μmより大きい粒子を、本質的に含まない。
【0025】
既に明細に述べたように、ガラス基材、無機粒子、及び無機結合剤は全て、1.45と1.65の間、好ましくは1.50と1.60の間に含まれる、ほぼ同じ屈折率を有する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、無機粒子はシリカ粒子から選択される。
【0027】
全てがほぼ同じ屈折率を有する構成要素から拡散性基材を得るためには、低屈折率無機層の表面粗さを作り出して且つ制御することが必要である。上述のように、低屈折率無機層は、0.15μmと3μmの間、好ましくは0.2μmと2μmの間に含まれる算術平均偏差Raを有しなくてはならない。
【0028】
算術平均偏差Raは、ISO 4287で規定されている。それは、試料の断面の走査型電子顕微鏡検査により、表面プロファイル測定により、又は3Dレーザー顕微鏡検査により、測定することができる。
【0029】
好適な表面粗さと申し分のない機械的耐性の両方を有する無機層を得るためには、無機粒子の量に対する無機結合剤の量を適切に選ぶことが重要である。過度に多量の無機結合剤を使用すると、無機粒子は得られた低屈折率の無機結合剤マトリクス中に完全に埋め込まれて、0.15μmと3μmの間の必要とされる表面粗さ(Ra)を生じさせることがない。その一方、無機粒子に対する無機結合剤の量が少なすぎる場合には、無機結合剤の結合強さが弱すぎて、得られた無機層は過度に脆くなり、取り扱いの際に容易に損傷を受けることになる。
【0030】
本出願人は、ゾルの乾燥物質に対する無機粒子の重量比が0.2と4の間、好ましくは0.4と3の間に含まれると、低屈折率層の好適な表面粗さと機械的耐性とが得られるということを見いだした。「ゾルの乾燥物質」という表現は、ゾルから得られた凝縮した三次元の無機網状組織の乾燥重量のことを言うものである。
【0031】
最終的な低屈折率無機層は、0.3と3の間、好ましくは0.5と2の間、より好ましくは0.7と1.5の間に含まれるのが好ましい無機結合剤に対する無機粒子の体積比も特徴とするものである。
【0032】
低屈折率無機層(b)の上の高屈折率エナメル(c)は、その粗さプロファイルを完全に覆って平坦化するのに十分厚くなければならない。
【0033】
高屈折率層の厚さは、3μmと20μmの間、好ましくは4μmと15μmの間、より好ましくは5μmと12μmの間に含まれるのが有利である。高屈折率層の厚さは、低屈折率層の粗さプロファイルの平均線と高屈折率層の粗さプロファイルの平均線(ISO 4287の3.1.8.1で規定される)との平均の距離である。
【0034】
高屈折率層の表面粗さは、好ましくはできる限り小さくなければならず、そして高屈折率エナメルは3nm未満、好ましくは2nm未満、より好ましくは1nm未満の算術平均偏差Raを有するのが有利である。
【0035】
高屈折率層は好ましくは、それに分散した拡散要素を本質的に含まず、特にそれに分散した拡散性の中実粒子を含まない。実際のところ、そのような中実の拡散性粒子は高屈折率層の表面から不所望に突き出して最終OLEDにおいて漏れ電流の原因となりかねない。
【0036】
高屈折率ガラスフリットによって平坦化した低屈折率無機層(低屈折率粒子+ゾル−ゲル無機結合剤)を支持している、結果的に得られた平坦ガラス基材は一般に、75%と98%の間、好ましくは85%と97%の間、より好ましくは87%と95%の間の曇り度を有する。曇り度の値は、PE Lambda 950又はVarian Carry 5000のような光学分光光度計で測定できるが、BYK Hazemeterのようなより速くより安価な専用装置でも測定できる。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明の透明な拡散性OLED基材は更に、高屈折率エナメル層(c)と直接接触するのが好ましい透明な導電性層(d)を含む。OLEDのためのアノードとして使用することができるこのような透明導電性層は、当該技術分野でよく知られている。使用される最も一般的な材料はITO(酸化スズインジウム)である。透明導電性層は、少なくとも80%の光透過率と、1.8と2.2の間の屈折率を有するべきである。その合計の厚さは一般に、50nmと400nmの間に含まれる。
【0038】
上述のように、本発明は、本発明のOLED基材を作製するための方法も対象としている。
【0039】
この方法は、次の一連の工程、すなわち、
(1)屈折率が1.45と1.65の間の無機ガラス製の透明な平坦基材を用意する工程、
(2)屈折率が1.45と1.65の間の無機粒子を、屈折率が1.45と1.65の間の無機結合剤の少なくとも1種の前駆物質のゾルに分散させる工程、
(3)得られた分散液を前記基材の片面に塗布する工程、
(4)得られた層を加熱により乾燥及び焼成して、無機粒子と無機結合剤とを含む透明な粗い低屈折率層を得る工程、
(5)この粗い低屈折率層に屈折率が1.8と2.1の間の高屈折率ガラスフリットの層を適用する工程、
(6)前記粗い低屈折率層を覆う屈折率が1.8と2.1の間に含まれる高屈折率エナメル層が得られるように、前記ガラスフリットを乾燥及び溶融させる工程、
を含む。
【0040】
工程(1)で用意する平坦なガラス基材は一般に、0.1mmと5mmの間、好ましくは0.3mmと1.6mmの間の厚さを有する。
【0041】
工程(2)では、先に説明したとおりの無機粒子を無機結合剤の少なくとも1種の前駆物質のゾルに分散させる。この前駆物質は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、テトラアルコキシシラン、好ましくはテトラエトキシシラン、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、又はそれらの混合物からなる群より選ぶのが好ましい。ジルコニウムアルコキシドとチタンアルコキシドは、最終的な無機結合剤の最大屈折率(1.65)を超えないように十分少ない量のほかの前駆物質との混合物で使用される。
【0042】
次に、得られたスラリーを、例えば浸漬被覆、ロールコーティング、回転塗布、スロットコーティングなどの公知の方法で、平坦基材の片面に塗布する。
【0043】
その後、ゾル相の溶剤を気化させ、乾燥した層を焼成工程に回す。工程(4)の乾燥と焼成は、少なくとも100℃、好ましくは100℃〜300℃、より好ましくは110〜200℃の温度で加熱して行うのが有利である。使用する無機粒子が有機の表面基、例えばアルキルシリル基などを持つ有機改質粒子である場合は、焼成はこれらの表面基を熱分解させるのに十分高い温度で実施すべきである。
【0044】
その後、工程(5)で、焼成した低屈折率の粗い層の上に高屈折率のガラスフリットを、ガラス粒子の水性又は有機懸濁液の、例えばスクリーン印刷、スプレー塗布、バーコーティング、ロールコーティング、スロットコーティング及び回転塗布などの任意の好適な方法により適用する。好適な高屈折率ガラスフリットとそれらを塗布及び焼成する方法は、例えばヨーロッパ特許出願公開第2178343号明細書で説明されている。
【0045】
ガラスフリットは、450℃と570℃の間に含まれる融点を有するように選ぶ必要があり、そして1.8〜2.2の屈折率を有するエナメルにならなくてはならない。
【0046】
好ましいガラスフリットは、次の組成、すなわち、
Bi23: 55〜75wt%
BaO: 0〜20wt%
ZnO: 0〜20wt%
Al23: 1〜7wt%
SiO2: 5〜15wt%
23: 5〜20wt%
Na2O: 0.1〜1wt%
CeO2: 0〜0.1wt%
の組成を有する。
【0047】
代表的な実施形態では、ガラスフリット粒子(70〜80wt%)を20〜30wt%の有機ビヒクル(エチルセルロース及び有機溶剤)と混合する。得られたフリットペーストを、その後、上記の塗装した拡散性ガラス基材の上にスクリーン印刷又はスロットコーティングにより塗布する。その結果得られた層を120〜200℃の温度で加熱して乾燥させる。有機結合剤(エチルセルロース)を350〜440℃の間の温度で焼き尽くし、そして最終的なエナメルをもたらす焼成工程を510℃と610℃の間、好ましくは520℃と600℃の間の温度で行う。
【0048】
得られたエナメルは、10μm×10μmの面積をAFMで測定して3nm未満の算術平均偏差Ra(ISO 4287)の表面粗さを有することが示された。
【0049】
粗化した表面に塗布する高屈折率ガラスフリットの量は一般に、20g/m2と200g/m2の間、好ましくは25g/m2と150g/m2の間、より好ましくは30g/m2と100g/m2の間、最も好ましくは35g/m2と70g/m2の間に含まれる。
【0050】
本発明で使用する高屈折率ガラスフリットとそれから得られたエナメルは、中実の散乱性粒子、例えば結晶質のSiO2又はTiO2粒子などを実質的に含まないのが好ましい。このような粒子は普通、高屈折率の散乱層で散乱要素として使用されるが、一般に追加の平坦化層を必要とし、それによって高屈折率コーティングの合計の厚さを増加させる。
【0051】
高屈折率エナメルで平坦化した拡散性基材は、底面発光型OLED用の基材として特に有用である。有機発光層の積重体の適用前に、高屈折率エナメルの上に透明導電性層を適用しなければならない。
【0052】
従って、好ましい実施形態では、本発明の方法は、工程(6)から得られた高屈折率エナメルを透明導電性層、好ましくは透明導電性酸化物で覆う追加の工程を更に含む。そのようなTCLの形成は、例えばマグネトロンスパッタリングなどの慣用的な方法により行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】焼成後及び高屈折率フリットで平坦化前の粗い低屈折率層のSEM顕微鏡写真である。
図2】焼成後及び高屈折率フリットで平坦化前の粗い低屈折率層のSEM顕微鏡写真
【実施例】
【0054】
平均直径2.5μmの有機変性シリカビーズ20gを150gの2−メトキシプロパノールに超音波で分散させる。この分散液に、30gのXenios(商標) Surface Perfection(Evonik GmbH社)を加える。その後、得られた分散液をきれいなガラス基材上に浸漬塗布により適用し、そして120℃で約1分間乾燥させる。次いで、被覆し乾燥した基材を5℃/分の速度で500℃の温度まで加熱し、この温度で5分間焼成する。
【0055】
図1図2は、焼成後及び高屈折率フリットで平坦化前の粗い低屈折率層のSEM顕微鏡写真を示している。球状粒子がガラス基材を覆ってどちらかと言うとぎっちり詰まった単層の形で薄く広げられているのが分かる。
【0056】
次に、結果として得られた粗い低屈折率層に高屈折率フリット(n=1.90)のスラリーをスクリーン印刷で塗布した。塗布物を150℃で乾燥させ、IR炉内で10分間545℃で焼成した。
本発明の代表的な態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
次の連続した構成要素又は層、すなわち、
(a)屈折率が1.45と1.65の間の無機ガラス製の透明な平坦基材(1)、
(b)無機粒子を含む粗い低屈折率層であって、当該無機粒子はゾル−ゲル無機結合剤で前記基材の片面に付着していて、当該無機結合剤の表面近くの、又は表面の、又は表面から突出した無機粒子が0.15μmと3μmの間に含まれる算術平均偏差Raで特徴付けられる表面粗さを作り出していて、当該無機粒子と無機結合剤の両方が1.45と1.65の間の屈折率を有している、粗い低屈折率層、
(c)前記粗い低屈折率層を覆っている、屈折率が1.8と2.1の間に含まれるエナメル製の高屈折率層、
を含む透明な拡散性OLED基材。
《態様2》
前記無機粒子が0.3μmと10μmの間、好ましくは0.5μmと8μmの間、より好ましくは0.8μmと7μmの間の平均相当球径を有する、態様1記載の基材。
《態様3》
前記無機粒子が中実のビーズである、態様1又は2記載の基材。
《態様4》
前記無機粒子が、相当球径が15μmより大きい、好ましくは12μmより大きい粒子を本質的に含まない、態様1〜3のいずれかに記載の基材。
《態様5》
前記基材、無機結合剤及び無機粒子の屈折率が1.50と1.60の間に含まれる、態様1〜4のいずれかに記載の基材。
《態様6》
前記高屈折率層の厚さが3μmと20μmの間、好ましくは4μmと15μmの間、より好ましくは5μmと12μmの間に含まれる、態様1〜5のいずれかに記載の基材。
《態様7》
前記高屈折率層の表面粗さが3nm未満、より好ましくは2nm未満、最も好ましくは1nm未満の算術平均偏差Raを有する、態様1〜6のいずれかに記載の基材。
《態様8》
前記高屈折率層が、それに分散した拡散性構成要素を本質的に含まず、特にそれに分散した拡散性の中実粒子を含まない、態様1〜7のいずれかに記載の基材。
《態様9》
前記無機粒子がシリカ粒子から選ばれている、態様1〜8のいずれかに記載の基材。
《態様10》
前記高屈折率のエナメル層の上に透明な導電性層を更に含む、態様1〜9のいずれかに記載の基材。
《態様11》
前記無機粒子の前記無機結合剤に対する体積比が0.3と3の間、好ましくは0.5と2の間、より好ましくは0.7と1.5の間に含まれる、態様1〜10のいずれかに記載の基材。
《態様12》
次の一連の工程、すなわち、
(1)屈折率が1.45と1.65の間の無機ガラス製の透明な平坦基材を用意する工程、
(2)屈折率が1.45と1.65の間の無機粒子を、屈折率が1.45と1.65の間の無機結合剤の少なくとも1種の前駆物質のゾルに分散させる工程、
(3)得られた分散液を前記基材の片面に塗布する工程、
(4)得られた層を加熱により乾燥及び焼成して、無機粒子と無機結合剤とを含む透明な粗い低屈折率層を得る工程、
(5)この粗い低屈折率層に屈折率が1.8と2.1の間の高屈折率ガラスフリットの層を適用する工程、
(6)前記粗い低屈折率層を覆う屈折率が1.8と2.1の間に含まれる高屈折率エナメル層が得られるように、前記ガラスフリットを乾燥及び溶融させる工程、
を含む、態様1〜11のいずれかに記載の透明な拡散性基材の作製方法。
《態様13》
無機結合剤の前記少なくとも1種の前駆物質を、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、テトラアルコキシシラン、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドからなる群より選ぶ、態様12記載の方法。
《態様14》
工程(4)における乾燥及び焼成を、少なくとも100℃、好ましくは100℃〜300℃、より好ましくは110〜200℃の温度での加熱により行う、態様12記載の方法。
《態様15》
前記無機粒子が0.3μmと10μmの間、好ましくは0.5μmと8μmの間、より好ましくは0.8μmと7μmの間の平均相当球径を有する、態様12〜14のいずれかに記載の方法。
図1
図2