【文献】
Andreas Ipsen et al.,A Statistically Rigorous Test for the Identification of Parent-Fragment Pairs in LC-MS Datasets,Analytical Chemistry,2010年 3月 1日,Vol.82, No.5,pp.1766-1778
【文献】
Andreas Ipsen et al.,Construction of Confidence Regions for Isotopic Abundance Patterns in LC/MS Data Sets for Rigorous Determination of Molecular Formulas,Analytical Chemistry,2010年 9月 1日,Vol.82, No.17,pp.7319-7328
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
信頼性がより低いイオンを除外するために、前記プロセッサは、さらに、ステップ(e)において、前記確率が閾値を超過し、かつ前記総カウント数が閾値カウントを超過する前記スペクトルの各イオンのみに対して前記総カウント数によって前記合計されたADC振幅を除算することによって振幅応答を計算し、前記検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成する、請求項1に記載のシステム。
信頼性がより低いイオンを除外するために、ステップ(e)は、前記プロセッサを使用して、前記確率が閾値を超過し、かつ前記総カウント数が閾値カウントを超過する前記スペクトルの各イオンのみに対して前記総カウント数によって前記合計されたADC振幅を除算することによって振幅応答を計算し、前記検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
前記プロセッサは、総イオン値の関数としての補正係数の曲線をプロットすることによって前記較正曲線を計算し、前記曲線に合わされた二次方程式を選択し、前記二次方程式を前記記憶された較正曲線として記憶する、請求項8に記載のシステム。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
システムが、質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正するために開示される。本システムは、イオン源と、質量分析器と、プロセッサとを含む。質量分析器は、検出器と、ADC検出器サブシステムとを含む。質量分析器は、サンプル分子をイオン化するイオン源によって生成されるイオンのビームを分析する。
【0004】
プロセッサは、質量分析器に、イオンビームのN個の抽出を分析し、N個のサブスペクトルを生成するように命令する。N個のサブスペクトルの各サブスペクトルに対して、プロセッサは、ADC検出器サブシステムからの非ゼロ振幅を1つのイオンとしてカウントし、N個のサブスペクトルの各サブスペクトルの各イオンに対して1のカウントを生成する。プロセッサは、N個のサブスペクトルのADC振幅およびカウントを合計し、スペクトルの各イオンに対する合計されたADC振幅および総カウント数を含むスペクトルを生成する。スペクトルの各イオンに対して、プロセッサは、ポアソン統計を使用して、総カウント数が検出器にヒットする単一イオンから生じる確率を計算する。
【0005】
確率が閾値を超過するスペクトルの各イオンに対して、プロセッサは、総カウント数によって合計されたADC振幅を除算することによって振幅応答を計算し、検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成する。プロセッサは、1つ以上の振幅応答を組み合わせ、単一イオンによって生成されたADC振幅の量を表す組み合わされた振幅応答を生成する。スペクトルの各イオンに対して、プロセッサは、組み合わされた振幅応答と、合計されたADC振幅とを使用して、総カウント数を動的に補正する。
【0006】
方法が、質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正するために開示される。検出器と、ADC検出器サブシステムとを含むTOF質量分析器が、プロセッサを使用して、イオンビームのN個の抽出を分析し、N個のサブスペクトルを生成するように命令される。N個のサブスペクトルの各サブスペクトルに対して、ADC検出器サブシステムからの非ゼロ振幅が、プロセッサを使用して、1つのイオンとしてカウントされ、N個のサブスペクトルの各サブスペクトルの各イオンに対して1のカウントを生成する。N個のサブスペクトルのADC振幅およびカウントは、プロセッサを使用して合計され、スペクトルの各イオンに対する合計されたADC振幅および総カウント数を含むスペクトルを生成する。スペクトルの各イオンに対して、総カウント数が検出器にヒットする単一イオンから生じる確率が、プロセッサを使用して、ポアソン統計を使用し、計算される。
【0007】
プロセッサを使用して、確率が閾値を超過するスペクトルの各イオンに対して、振幅応答が、総カウント数によって合計されたADC振幅を除算することによって計算され、検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成する。プロセッサを使用して、1つ以上の振幅応答が組み合わされ、単一イオンによって生成されたADC振幅の量を表す組み合わされた振幅応答を生成する。プロセッサを使用して、スペクトルの各イオンに対して、総カウント数は、組み合わされた振幅応答と、合計されたADC振幅とを使用し、動的に補正される。
【0008】
非一過性の有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含み、そのコンテンツは、質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正する方法を実施するように、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む、コンピュータプログラム製品が、開示される。種々の実施形態では、本方法は、システムを提供することを含み、本システムは、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを備え、個別のソフトウェアモジュールは、制御モジュールと、分析モジュールとを備えている。
【0009】
制御モジュールは、検出器とADC検出器サブシステムとを含み、イオンのビームを分析する質量分析器に、制御モジュールを使用してイオンビームのN個の抽出を分析し、N個のサブスペクトルを生成するように命令する。N個のサブスペクトルの各サブスペクトルに対して、分析モジュールは、ADC検出器サブシステムからの非ゼロ振幅を1つのイオンとしてカウントし、N個のサブスペクトルの各サブスペクトルの各イオンに対して1のカウントを生成する。分析モジュールは、N個のサブスペクトルのADC振幅およびカウントを合計し、スペクトルの各イオンに対する合計されたADC振幅および総カウント数を含むスペクトルを生成する。スペクトルの各イオンに対して、分析モジュールは、ポアソン統計を使用して、総カウント数が検出器にヒットする単一イオンから生じる確率を計算する。
【0010】
確率が閾値を超過するスペクトルの各イオンに対して、分析モジュールは、総カウント数によって合計されたADC振幅を除算することによって振幅応答を計算し、検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成する。分析モジュールは、1つ以上の振幅応答を組み合わせ、単一イオンによって生成されたADC振幅の量を表す組み合わされた振幅応答を生成する。スペクトルの各イオンに対して、分析モジュールは、組み合わされた振幅応答と、合計されたADC振幅とを使用して、総カウント数を動的に補正する。
【0011】
システムが、較正曲線を使用して質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正するために開示される。本システムは、サンプルの分子をイオン化し、イオンのビームを生成するイオン源と、検出器およびADC検出器サブシステムとを含み、イオンのビームを分析する質量分析器とを含み、質量分析器は、測定されたスペクトルを生成する。本システムはさらに、質量分析器から測定されたスペクトルを受信する、質量分析器と通信しているプロセッサを含む。プロセッサはさらに、測定されたスペクトル内のイオンの強度を合計することによって、測定されたスペクトルの総イオン値を計算する。プロセッサはさらに、総イオン値と、総イオン値の関数として補正係数を提供する記憶された較正曲線とを比較することによって、補正係数を決定する。プロセッサはさらに、決定された補正係数によって、測定されたスペクトルの強度を乗算し、補正された測定スペクトルを生成する。
【0012】
方法が、較正曲線を使用して質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正するために開示される。測定されたスペクトルが、検出器と、ADC検出器サブシステムとを含み、プロセッサを使用してサンプルの分子をイオン化するイオン源によって生成されるイオンのビームを分析する質量分析器から受信される。測定されたスペクトルの総イオン値が、プロセッサを使用して、測定されたスペクトル内のイオンの強度を合計することによって計算される。補正係数が、プロセッサを使用して、総イオン値を、総イオン値の関数として補正係数を提供する記憶された較正曲線と比較することによって決定される。プロセッサを使用して、測定されたスペクトルの強度が、決定された補正係数によって乗算され、補正された測定スペクトルを生成する。
【0013】
非一過性の有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含み、そのコンテンツは、較正曲線を使用して質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正する方法を実施するように、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む、コンピュータプログラム製品が、開示される。種々の実施形態では、本方法は、システムを提供することを含み、本システムは、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを備え、個別のソフトウェアモジュールは、制御モジュールと、分析モジュールとを備えている。
【0014】
制御モジュールは、検出器と、ADC検出器サブシステムとを含み、サンプルの分子をイオン化するイオン源によって生成されるイオンのビームを分析する質量分析器から、測定されたスペクトルを受信する。分析モジュールは、測定されたスペクトル内のイオンの強度を合計することによって、測定されたスペクトルの総イオン値を計算する。分析モジュールは、総イオン値を、総イオン値の関数として補正係数を提供する記憶された較正曲線と比較することによって、補正係数を決定する。分析モジュールは、決定された補正係数によって、測定されたスペクトルの強度を乗算し、補正された測定スペクトルを生成する。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正するためのシステムであって、
サンプル分子をイオン化し、イオンのビームを生成するイオン源と、
検出器と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)検出器サブシステムとを含む質量分析器であって、前記質量分析器は、前記イオンのビームを分析する、質量分析器と、
前記質量分析器と通信しているプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
(a)前記質量分析器に、前記イオンビームのN個の抽出を分析し、N個のサブスペクトルを生成するように命令することと、
(b)前記N個のサブスペクトルの各サブスペクトルに対して、前記ADC検出器サブシステムからの非ゼロ振幅を1つのイオンとしてカウントし、前記N個のサブスペクトルの各サブスペクトルの各イオンに対して1のカウントを生成することと、
(c)前記N個のサブスペクトルの前記ADC振幅およびカウントを合計し、前記スペクトルの各イオンに対する合計されたADC振幅および総カウント数を含むスペクトルを生成することと、
(d)前記スペクトルの各イオンに対して、ポアソン統計を使用して、前記総カウント数が前記検出器にヒットする単一イオンから生じる確率を計算することと、
(e)前記確率が閾値を超過する前記スペクトルの各イオンに対して、前記総カウント数によって前記合計されたADC振幅を除算することによって振幅応答を計算し、前記検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成することと、
(f)前記1つ以上の振幅応答を組み合わせ、単一イオンによって生成されたADC振幅の量を表す組み合わされた振幅応答を生成することと、
(g)前記スペクトルの各イオンに対して、前記組み合わされた振幅応答と、前記合計されたADC振幅とを使用して、前記総カウント数を動的に補正することと
を行う、システム。
(項目2)
前記プロセッサは、平均振幅応答を計算することによって、前記1つ以上の振幅応答を組み合わせ、前記組み合わされた振幅応答は、前記平均振幅応答を備えている、前記システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目3)
前記プロセッサは、中間値振幅応答を計算することによって、前記1つ以上の振幅応答を組み合わせ、前記組み合わされた振幅応答は、前記中間値振幅応答を備えている、前記システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目4)
信頼性がより低いイオンを除外するために、前記プロセッサは、さらに、ステップ(e)において、前記確率が閾値を超過し、かつ前記総カウント数が閾値カウントを超過する前記スペクトルの各イオンのみに対して前記総カウント数によって前記合計されたADC振幅を除算することによって振幅応答を計算し、前記検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成する、前記システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目5)
前記プロセッサは、前記スペクトルの質量範囲を、2つ以上のウィンドウに分割し、前記2つ以上のウィンドウの各ウィンドウに対してステップ(f)−(g)をさらに実施する、前記システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目6)
質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正する方法であって、
(a)プロセッサを使用して、検出器とアナログ/デジタルコンバータ(ADC)検出器サブシステムとを含み、イオンのビームを分析する質量分析器に、イオンビームのN個の抽出を分析し、N個のサブスペクトルを生成するように命令することと、
(b)前記プロセッサを使用して、前記N個のサブスペクトルの各サブスペクトルに対して、前記ADC検出器サブシステムからの非ゼロ振幅を1つのイオンとしてカウントし、前記N個のサブスペクトルの各サブスペクトルの各イオンに対して1のカウントを生成することと、
(c)前記プロセッサを使用して、前記N個のサブスペクトルの前記ADC振幅およびカウントを合計し、前記スペクトルの各イオンに対する合計されたADC振幅および総カウント数を含むスペクトルを生成することと、
(d)前記プロセッサを使用して、前記スペクトルの各イオンに対して、前記総カウント数が前記検出器にヒットする単一イオンから生じる確率をポアソン統計を使用して計算することと、
(e)前記プロセッサを使用して、前記確率が閾値を超過する前記スペクトルの各イオンに対して、前記総カウント数によって前記合計されたADC振幅を除算することによって振幅応答を計算し、前記検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成することと、
(f)前記プロセッサを使用して、前記1つ以上の振幅応答を組み合わせ、単一イオンによって生成されたADC振幅の量を表す組み合わされた振幅応答を生成することと、
(g)前記プロセッサを使用して、前記スペクトルの各イオンに対して、前記組み合わされた振幅応答と、前記合計されたADC振幅とを使用し、前記総カウント数を動的に補正することと
を含む、方法。
(項目7)
前記プロセッサを使用して、平均振幅応答を計算することによって、前記1つ以上の振幅応答を組み合わせることをさらに含み、前記組み合わされた振幅応答は、前記平均振幅応答を備えている、前記方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目8)
前記プロセッサを使用して、中間値振幅応答を計算することによって、前記1つ以上の振幅応答を組み合わせることをさらに含み、前記組み合わされた振幅応答は、前記中間値振幅応答を備えている、前記方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目9)
信頼性がより低いイオンを除外するために、ステップ(e)は、前記プロセッサを使用して、前記確率が閾値を超過し、かつ前記総カウント数が閾値カウントを超過する前記スペクトルの各イオンのみに対して前記総カウント数によって前記合計されたADC振幅を除算することによって振幅応答を計算し、前記検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成することをさらに含む、前記方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目10)
前記プロセッサは、前記スペクトルの質量範囲を、2つ以上のウィンドウに分割し、前記2つ以上のウィンドウの各ウィンドウに対してステップ(f)−(g)をさらに実施する、前記方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目11)
非一過性の有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備えているコンピュータプログラム製品であって、前記記憶媒体のコンテンツは、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含み、前記プロセッサは、質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正する方法を実施し、前記方法は、
(a)システムを提供することであって、前記システムは、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを備え、前記個別のソフトウェアモジュールは、制御モジュールと分析モジュールとを備えている、ことと、
(b)前記制御モジュールを使用して、検出器とアナログ/デジタルコンバータ(ADC)検出器サブシステムとを含み、イオンのビームを分析する質量分析器に、イオンビームのN個の抽出を分析し、N個のサブスペクトルを生成するように命令することと、
(c)前記分析モジュールを使用して、前記N個のサブスペクトルの各サブスペクトルに対して、前記ADC検出器サブシステムからの非ゼロ振幅を1つのイオンとしてカウントし、前記N個のサブスペクトルの各サブスペクトルの各イオンに対して1のカウントを生成することと、
(d)前記分析モジュールを使用して、前記N個のサブスペクトルの前記ADC振幅およびカウントを合計し、前記スペクトルの各イオンに対する合計されたADC振幅および総カウント数を含むスペクトルを生成することと、
(e)前記分析モジュールを使用して、前記スペクトルの各イオンに対して、前記総カウント数が前記検出器にヒットする単一イオンから生じる確率をポアソン統計を使用して計算することと、
(f)前記分析モジュールを使用して、前記確率が閾値を超過する前記スペクトルの各イオンに対して、前記総カウント数によって前記合計されたADC振幅を除算することによって振幅応答を計算し、前記検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成することと、
(g)前記分析モジュールを使用して、前記1つ以上の振幅応答を組み合わせ、単一イオンによって生成されたADC振幅の量を表す組み合わされた振幅応答を生成することと、
(h)前記分析モジュールを使用して、前記スペクトルの各イオンに対して、前記組み合わされた振幅応答と、前記合計されたADC振幅とを使用して、前記総カウント数を動的に補正することと
を含む、コンピュータプログラム製品。
(項目12)
較正曲線を使用して質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正するためのシステムであって、
サンプルの分子をイオン化し、イオンのビームを生成するイオン源と、
検出器と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)検出器サブシステムとを含む質量分析器であって、前記質量分析器は、前記イオンのビームを分析し、測定されたスペクトルを生成する、質量分析器と、
前記質量分析器と通信しているプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
(a)前記質量分析器から前記測定されたスペクトルを受信することと、
(b)前記測定されたスペクトル内のイオンの強度を合計することによって、前記測定されたスペクトルの総イオン値を計算することと、
(c)前記総イオン値を、総イオン値の関数として補正係数を提供する記憶された較正曲線と比較することによって、補正係数を決定することと、
(d)前記決定された補正係数によって、前記測定されたスペクトルの強度を乗算し、補正された測定スペクトルを生成することと
を行う、システム。
(項目13)
前記プロセッサは、総イオン値の関数としての補正係数の曲線をプロットすることによって前記較正曲線を計算し、前記曲線に合わされた二次方程式を選択し、前記二次方程式を前記記憶される較正曲線として記憶する、前記システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目14)
前記較正曲線は、
(a)前記イオン源を使用して、既知のサンプルの分子をイオン化し、イオンのビームを生成することと、
(b)前記質量分析器を使用して、前記イオンのビームから抽出されるイオンのある割合を分析し、第1の質量スペクトルを生成することと、
(c)前記質量分析器を使用して、前記第1の割合から次の既知の量だけ増加された、前記イオンのビームから抽出される次のイオンの割合を分析し、次の質量スペクトルを生成することと、
(d)前記プロセッサを使用して、前記次の質量スペクトル内の各次のイオンに対して、前記第1の質量スペクトル内の対応する第1のイオン強度に対する次のイオン強度の比率を計算し、複数の強度比率を生成することによって、前記第1の質量スペクトルと前記次の質量スペクトルとを比較することと、
(e)前記プロセッサを使用して、前記複数の強度比率を組み合わせ、代表的比率を生成することと、
(f)前記プロセッサを使用して、前記代表的比率に対する前記既知の量の比率として補正係数を計算することと、
(g)前記プロセッサを使用して、前記次の質量スペクトル内のイオンの強度を合計し、次の総イオン値を生成することと、
(h)前記プロセッサを使用して、前記補正係数と、前記次の総イオン値とを較正曲線内に記憶することと、
(i)前記プロセッサを使用して、ステップ(c)−(h)を1回以上繰り返し、総イオン値の関数として補正係数を提供する較正曲線を完成させることと
によって決定される、前記システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目15)
前記プロセッサが前記複数の強度比率を組み合わせ、代表的比率を生成することは、平均値を計算することを含む、前記システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目16)
前記プロセッサが前記複数の強度比率を組み合わせ、代表的比率を生成することは、中間値を計算することを含む、前記システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目17)
前記プロセッサが前記複数の強度比率を組み合わせ、代表的比率を生成することは、閾値よりも大きな強度の平均値または中間値を計算することを含む、前記システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目18)
較正曲線を使用して質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正する方法であって、
(a)プロセッサを使用して、質量分析器から測定されたスペクトルを受信することであって、前記質量分析器は、検出器と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)検出器サブシステムとを含み、サンプルの分子をイオン化するイオン源によって生成されるイオンのビームを分析する、ことと、
(b)前記プロセッサを使用して、前記測定されたスペクトル内のイオンの強度を合計することによって、前記測定されたスペクトルの総イオン値を計算することと、
(c)前記プロセッサを使用して、前記総イオン値を総イオン値の関数として補正係数を提供する記憶された較正曲線と比較することによって、補正係数を決定することと、
(d)前記プロセッサを使用して、前記決定された補正係数によって、前記測定されたスペクトルの強度を乗算し、補正された測定スペクトルを生成することと
を含む、方法。
(項目19)
総イオン値の関数としての補正係数の曲線をプロットすることによって前記較正曲線を計算し、前記曲線に合わされた二次方程式を選択し、前記二次方程式を前記記憶される較正曲線として記憶することをさらに含む、前記方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目20)
前記較正曲線は、
(a)前記イオン源を使用して、既知のサンプルの分子をイオン化し、イオンのビームを生成することと、
(b)前記質量分析器を使用して、前記イオンのビームから抽出されるイオンのある割合を分析し、第1の質量スペクトルを生成することと、
(c)前記質量分析器を使用して、前記第1の割合から次の既知の量だけ増加された、前記イオンのビームから抽出される次のイオンの割合を分析し、次の質量スペクトルを生成することと、
(d)前記プロセッサを使用して、前記次の質量スペクトル内の各次のイオンに対して、前記第1の質量スペクトル内の対応する第1のイオン強度に対する次のイオン強度の比率を計算し、複数の強度比率を生成することによって、前記第1の質量スペクトルと前記次の質量スペクトルとを比較することと、
(e)前記プロセッサを使用して、前記複数の強度比率を組み合わせ、代表的比率を生成することと、
(f)前記プロセッサを使用して、前記代表的比率に対する前記既知の量の比率として補正係数を計算することと、
(g)前記プロセッサを使用して、前記次の質量スペクトル内のイオンの強度を合計し、次の総イオン値を生成することと、
(h)前記プロセッサを使用して、前記補正係数と、前記次の総イオン値とを較正曲線内に記憶することと、
(i)前記プロセッサを使用して、ステップ(c)−(h)を1回以上繰り返し、総イオン値の関数として補正係数を提供する較正曲線を完成させることと
によって決定される、前記方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目21)
前記複数の強度比率を組み合わせ、代表的比率を生成することをさらに含み、前記複数の強度比率を組み合わせ、前記代表的比率を生成することは、平均値を計算することを含む、前記方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目22)
非一過性の有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備えているコンピュータプログラム製品であって、前記記憶媒体のコンテンツは、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含み、前記プロセッサは、質量分析器の均一な検出器飽和を補正する方法を実施し、前記方法は、
(a)システムを提供することであって、前記システムは、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを備え、前記個別のソフトウェアモジュールは、制御モジュールと、分析モジュールとを備えている、ことと、
(b)制御モジュールを使用して、質量分析器から測定されたスペクトルを受信することであって、前記質量分析器は、検出器と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)検出器サブシステムとを含み、サンプルの分子をイオン化するイオン源によって生成されるイオンのビームを分析する、ことと、
(c)前記分析モジュールを使用して、前記測定されたスペクトル内のイオンの強度を合計することによって、前記測定されたスペクトルの総イオン値を計算することと、
(d)前記分析モジュールを使用して、前記総イオン値を総イオン値の関数として補正係数を提供する記憶された較正曲線と比較することによって、補正係数を決定することと、
(e)前記分析モジュールを使用して、前記決定された補正係数によって、前記測定されたスペクトルの強度を乗算し、補正された測定スペクトルを生成することと
を含む、コンピュータプログラム製品。
【0015】
本出願者の教示のこれらおよび他の特徴が、本明細書に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本教示の1つ以上の実施形態を詳細に説明する前に、当業者は、本教示が、その適用において、以下の発明を行うための形態に記載される、または図面に図示される、構造、構成要素の配列、およびステップの配列の詳細に限定されないことを理解するであろう。また、本明細書で使用される表現および専門用語は、説明の目的のためであって、制限として見なされるべきではないことを理解されたい。
【0025】
(コンピュータ実装システム)
図1は、種々の実施形態による、コンピュータシステム100を図示するブロック図である。コンピュータシステム100は、情報を通信するためのバス102または他の通信機構と、情報を処理するためにバス102と結合されたプロセッサ104とを含む。コンピュータシステム100は、プロセッサ104によって実行される命令を記憶するために、バス102に結合されるランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスであり得るメモリ106も含む。メモリ106は、プロセッサ104によって実行される命令の実行の間、一時的変数または他の中間情報を記憶するためにも使用され得る。コンピュータシステム100は、プロセッサ104のための静的情報および命令を記憶するために、バス102に結合された読み取り専用メモリ(ROM)108または他の静的記憶デバイスをさらに含む。磁気ディスクまたは光ディスク等の記憶デバイス110は、情報および命令を記憶するために提供され、バス102に結合される。
【0026】
コンピュータシステム100は、情報をコンピュータユーザに表示するために、バス102を介して、ブラウン管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイ112に結合され得る。英数字および他のキーを含む入力デバイス114は、情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信するために、バス102に結合される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信し、ディスプレイ112上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キー等のカーソル制御116である。この入力デバイスは、典型的には、デバイスが平面において位置を指定することを可能にする2つの軸、すなわち、第1の軸(すなわち、x)および第2の軸(すなわち、y)において、2自由度を有する。
【0027】
コンピュータシステム100は、本教示を実施することができる。本教示のある実装によると、結果は、メモリ106内に含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスをプロセッサ104が実行することに応答して、コンピュータシステム100によって提供される。そのような命令は、記憶デバイス110等の別のコンピュータ読み取り可能な媒体から、メモリ106内に読み込まれ得る。メモリ106内に含まれる命令のシーケンスの実行は、プロセッサ104に、本明細書に説明されるプロセスを行わせる。代替として、有線回路が、本教示を実装するためのソフトウェア命令の代わりに、またはそれと組み合わせて、使用され得る。したがって、本教示の実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の具体的組み合わせに限定されない。
【0028】
用語「コンピュータ読み取り可能な媒体」は、本明細書で使用される場合、実行のために、命令をプロセッサ104に提供する際に関与する任意の媒体を指す。そのような媒体は、限定ではないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含む、多くの形態をとり得る。不揮発性媒体は、例えば、記憶デバイス110等の光学または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メモリ106等の動的メモリを含む。伝送媒体は、バス102を備えている配線を含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含む。
【0029】
コンピュータ読み取り可能な媒体の一般的形態として、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD−ROM、デジタルビデオディスク(DVD)、ブルーレイディスク、任意の他の光学媒体、サムドライブ、メモリカード、RAM、PROM、およびEPROM、フラッシュ−EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、あるいはコンピュータが読み取ることができる、任意の他の有形媒体が挙げられる。
【0030】
コンピュータ読み取り可能な媒体の種々の形態は、実行のために、1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスをプロセッサ104に搬送することに関わり得る。例えば、命令は、最初は、遠隔コンピュータの磁気ディスク上で搬送され得る。遠隔コンピュータは、命令をその動的メモリ内にロードし、モデムを使用して、電話回線を介して、命令を送信することができる。コンピュータシステム100にローカルのモデムは、データを電話回線上で受信し、赤外線送信機を使用して、データを赤外線信号に変換することができる。バス102に結合された赤外線検出器は、赤外線信号で搬送されるデータを受信し、データをバス102上に配置することができる。バス102は、データをメモリ106に搬送し、そこから、プロセッサ104は、命令を読み出し、実行する。メモリ106によって受信された命令は、随意に、プロセッサ104による実行の前後に、記憶デバイス110上に記憶され得る。
【0031】
種々の実施形態によると、方法を実施するためにプロセッサによって実行されるように構成される命令は、コンピュータ読み取り可能な媒体上に記憶される。コンピュータ読み取り可能な媒体は、デジタル情報を記憶するデバイスであることができる。例えば、コンピュータ読み取り可能な媒体は、ソフトウェアを記憶するために、当技術分野において周知のように、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)を含む。コンピュータ読み取り可能な媒体は、実行されるように構成される命令を実行するために好適なプロセッサによってアクセスされる。
【0032】
本教示の種々の実装の以下の説明は、例証および説明の目的のために提示されている。これは、包括的でもなく、本教示を開示される精密な形態に限定するものでもない。修正および変形例が、前述の教示に照らして可能である、または本教示の実践から取得され得る。加えて、説明される実装は、ソフトウェアを含むが、本教示は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせとして、またはハードウェア単独において、実装され得る。本教示は、オブジェクト指向および非オブジェクト指向両方のプログラミングシステムによって実装され得る。
【0033】
(TOF強度補正に関するシステムおよび方法)
前述のように、飛行時間(TOF)質量分析器のスペクトルがアナログ/デジタルコンバータ(ADC)検出器サブシステムを用いて記録されると、ピークにおけるイオンの数が、ピーク振幅から計算される。しかしながら、ますます多くのイオンが検出器にヒットし、検出器上の総電荷がある閾値レベルを超過すると、検出器は、均一に振幅を抑制し始める。この飽和のタイプは、本明細書では均一な検出器飽和と称される。
【0034】
種々の実施形態では、均一な検出器飽和は、較正実験から補正係数を計算することによって補正される。例えば、補正係数は、特定の検出器の特性である。補正係数は、各所与のイオン束に対して計算される。補正係数は、所与の検出器負荷における各測定イオン強度によって乗算される。
【0035】
例えば、補正係数が特定のイオン束下で検出器を通して流れる平均電流にのみ依存すると仮定される場合、均一な検出器飽和は、以下のステップに基づく方法を使用して補正されることができる。検出器信号が、測定される。これらの検出器信号を使用して、イオン束の記録のために消費される総検出器電流が、計算される。次いで、補正係数が、総検出器電流の値から決定される。最後に、補正係数が、流入するイオン束のより正確な計算を与えるために、測定された検出器束に適用される。
【0036】
例えば、補正係数は、較正機能を使用して、総検出器電流の値から決定される。所与の検出器のための較正機能は、流入するイオン電流が既知の様式で変動させられ、検出器出力信号が記録される検出器較正手順によって得られる。この機能は、例えば、同じタイプの多くの検出器にわたって使用されることができるように、十分に一般的であり得る。
【0037】
より具体的には、較正実験が、所与の調整電圧において、所与の検出器に対して行われる。既知のピークの振幅が、検出器上の総電荷が増加するにつれて、これがどのように減少するかを決定するために記録される。曲線が、記録された振幅からプロットされ、係数が、曲線に合わされた二次方程式に対して選択される。ランタイムにおいて、二次方程式は、次いで、均一な検出器飽和を補正するために測定された振幅の全てに適用される。
【0038】
しかしながら、本実施形態では、較正実験は、検出器が調整される度に実施される必要がある。
【0039】
種々の代替実施形態では、飽和補正における誤差の潜在性は、データ取得中に飽和補正係数を動的かつ常時計算することによって、著しく減少される。本方法は、データ取得中に低強度または背景イオンを、リアルタイムで監視することを伴う。低強度または背景イオンを監視することによって、収集されるイオンの数に対して、単一低強度または背景イオンに対する振幅応答を計算することが可能である。結果として、収集されるイオンの数に対する単一イオンの応答の比率が、常に計算される。
【0040】
種々の実施形態の重要側面は、イオンの数に対する応答の比率が、単一イオンに対するものであることを決定することである。これは、時間/デジタル(TDC)応答の等価物を全ADC応答と同時に記録することによって決定される。TDC等価応答から、ポアソン分布が、応答が1つのイオンによって生成される確率を決定するために使用される。確率がある閾値を超える場合、応答は、どの時点においても、検出器にヒットする単一イオンからであると見なされ、その単一イオンに対する、イオンの数に対する応答の比率が、補正係数を計算する際に使用される。
【0041】
図2は、種々の実施形態による、TOFチューブ230に進入するイオン210を示す、飛行時間(TOF)質量分光測定システム200の例示的図である。TOF質量分光測定システム200は、TOF質量分析器225と、プロセッサ280とを含む。TOF質量分析器225は、TOFチューブ230と、スキマー240と、抽出デバイス250と、イオン検出器260と、ADC検出器サブシステム270とを含む。スキマー240は、TOFチューブ230に進入するイオンの数を制御する。イオン210は、イオン源(図示せず)からTOFチューブ230に移動する。例えば、TOFチューブ230に進入するイオンの数は、スキマー240を脈動させること(pulsing)によって制御され得る。
【0042】
抽出デバイス250は、一定エネルギーを、スキマー240を通してTOFチューブ230に進入したイオンに加える。例えば、抽出デバイス250は、この一定エネルギーを、固定周波数において固定電圧を印加することによって与え、一連の抽出パルスを生成する。各イオンは、同じエネルギーを抽出デバイス250から受け取るので、各イオンの速度は、その質量に依存する。運動エネルギーに対する方程式に従って、速度は、質量の平方根の逆数に比例する。結果として、より軽いイオンは、TOFチューブ230を通って、より重いイオンよりもはるかに速く飛行する。イオン220は、単一抽出において一定エネルギーを与えられるが、異なる速度においてTOFチューブ230を通って飛行する。
【0043】
TOFチューブ230内のイオンを分離し、イオン検出器260においてそれらを検出するために、抽出パルス間に時間が必要とされる。最も重いイオンが検出され得るように、十分な時間が、抽出パルス間にもたらされる。
【0044】
イオン検出器260は、抽出中にそれにヒットする全イオンに対する電気的検出パルスを生成する。これらの検出パルスは、ADC検出器サブシステム270に通され、ADC検出器サブシステム270は、検出されるパルスの振幅を、デジタル的に記録する。TDC検出器サブシステムでは、例えば、ADC検出器サブシステム270が、TDCに結合されるコンスタントフラクションディスクリミネータ(CFD)に取って代わられる。CFDは、閾値を超過するパルスのみを伝送することによって雑音を除去し、TDCは、電気的検出パルスが発生する時間値を記録する。
【0045】
プロセッサ280は、各抽出中にADC検出器サブシステム270によって記録されたパルスを受信する。各抽出は、着目化合物からの数個のイオンのみを含み得るため、各抽出に対する応答は、サブスペクトルとして考えられ得る。より有用な結果を生成するために、プロセッサ280は、完全なスペクトルを生成するために、いくつかの抽出からの時間値のサブスペクトルを合計し得る。
【0046】
図3は、種々の実施形態による、一連のN回の抽出に関する
図2のプロセッサ280によって受信されるサブスペクトル300のプロットである。i〜Nの抽出に対するサブスペクトルは、検出される各イオンに対する時間値を含む。各サブスペクトルにおける各イオンの水平位置は、抽出パルスに対して、そのイオンが検出されるためにかかる時間を表す。例えば、
図3における抽出iのイオン320は、
図2におけるイオン220に対応する。
【0047】
前述のように、種々の実施形態の重要側面は、イオンの数に対する応答の比率が、単一イオンに対するものであるかどうかを決定することである。
図3のサブスペクトル300に示されるように、ADCは、実質的に同じ時間において検出器にヒットするイオンの数に依存している振幅応答を生成する。例えば、抽出Nにおける2つのイオン330は、抽出iにおける単一イオン340によって生成される振幅応答345よりも大きな振幅応答335を生成する。言い換えると、ADCが生成する応答は、実質的に同じ時間において検出器にヒットするイオンの数に比例する。
【0048】
TDCは、一方、実質的に同じ時間において検出器にヒットするイオンの数に比例する信号を記録しない。代わりに、TDCは、特定の質量の少なくとも1つのイオンが検出器に影響を与える場合に限り、記録する。
【0049】
しかしながら、TDC情報は、ADC情報から決定され得る。例えば、
図3のサブスペクトル300において、
図2のプロセッサ280等のプロセッサは、抽出Nに対して、2つのイオン330の衝突を、単一イオンのヒットとしてカウントし得る。言い換えると、全抽出に対して、ADC応答に加えて、単一のヒットが、所与の質量に対する任意の振幅応答に対して記録される。これは、TDC応答と等価な応答を生成する。イオンの数に対するADC応答の比率は、次いで、ADC応答と、等価TDC応答との両方から決定される。
【0050】
図4は、種々の実施形態による、
図3のN個のサブスペクトルの合計から、
図2のプロセッサ280によって生成されるADCスペクトル400のプロットである。例えば、スペクトル400は、4つの異なる質量のイオンを含む。それらの4つの質量のうちの1つに対して、イオン410が、N個の抽出に対してKの等価TDCイオンカウントを有すると仮定する。単一イオンが検出器にヒットする確率Pは、ポアソン分布を使用して計算される。確率Pは、閾値確率レベルと比較される。
【0051】
Pが閾値レベルを超過する場合、ADC応答420が、どの時点においても、検出器にヒットする単一イオンに対する応答を表す、高い信頼度が存在する。ADC応答420は、次いで、補正係数を計算するために使用され得る。例えば、ADC応答420は、等価TDCイオンカウントKによって除算され、イオンの数に対するADC応答の比率を生成することができる。
【0052】
(均一な検出器飽和を動的に補正するためのシステム)
図2に再び目を向けると、システム200は、均一な検出器飽和を動的に補正するための例示的質量分光測定システムである。前述のように、システム200は、質量分析器225と、プロセッサ280とを含む。質量分析器225は、例えば、TOF質量分析器225であり得る。
【0053】
質量分析器225は、システム200における1つ以上の質量分光測定構成要素(図示せず)と結合され得る。1つ以上の質量分光測定構成要素は、限定ではないが、例えば、四重極を含み得る。質量分析器225はまた、1つ以上の追加の質量分析器とも結合され得る。
【0054】
質量分光測定システム200はまた、1つ以上の分離デバイス(図示せず)も含み得る。分離デバイスは、限定ではないが、液体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、キャピラリー電気泳動、またはイオン移動度を含む、分離技法を実施し得る。質量分析器225は、空間または時間において、別個の質量分光測定段階またはステップを含み得る。
【0055】
プロセッサ280は、限定ではないが、質量分析器225に、およびそれから制御信号およびデータを送信および受信し、データを処理することが可能なコンピュータ、マイクロプロセッサ、または任意のデバイスであり得る。プロセッサ280は、例えば、
図1に示されるコンピュータシステム等のコンピュータシステムである。プロセッサ280は、質量分析器225と通信する。
【0056】
質量分析器225は、検出器260と、ADC検出器サブシステム270とを含む。質量分析器225は、例えば、サンプル分子をイオン化するイオン源(図示せず)によって生成される、イオン210のビームを分析する。
【0057】
プロセッサ280は、質量分析器225に、イオンビームのN個の抽出を分析し、N個のサブスペクトルを生成するように命令する。N個のサブスペクトルの各サブスペクトルに対して、プロセッサ280は、ADC検出器サブシステム270からの非ゼロ振幅を1つのイオンとしてカウントし、N個のサブスペクトルの各サブスペクトルの各イオンに対して1のカウントを生成する。プロセッサ280は、N個のサブスペクトルのADC振幅およびカウントを合計し、スペクトルの各イオンに対する合計されたADC振幅および総カウント数を含むスペクトルを生成する。総カウント数は、例えば、TDC等価カウントである。スペクトルの各イオンに対して、プロセッサ280は、ポアソン統計を使用して、総カウント数が検出器260にヒットする単一イオンから生じる確率を計算する。
【0058】
確率が閾値を超過するスペクトルの各イオンに対して、プロセッサ280は、合計されたADC振幅を総カウント数によって除算することによって振幅応答を計算し、検出器260にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成する。プロセッサ280は、1つ以上の振幅応答を組み合わせ、単一イオンによって生成されるADC振幅の量を表す組み合わされた振幅応答を生成する。スペクトルの各イオンに対して、プロセッサ280は、組み合わされた振幅応答と、合計されたADC振幅とを使用して、総カウント数を動的に補正する。
【0059】
種々の実施形態では、プロセッサ280は、平均振幅応答を計算することによって、1つ以上の振幅応答を組み合わせる。種々の実施形態では、組み合わされた振幅応答は、平均振幅応答を備えている。
【0060】
種々の実施形態では、プロセッサ280は、中間値振幅応答を計算することによって、1つ以上の振幅応答を組み合わせる。種々の実施形態では、組み合わされた振幅応答は、中間値振幅応答を備えている。
【0061】
種々の実施形態では、信頼性がより低いイオンを除外するために、プロセッサ280はさらに、確率が閾値を超過し、総カウント数が閾値カウントを超過する場合のスペクトルの各イオンのみに対して総カウント数によって合計されたADC振幅を除算することによって振幅応答を計算し、検出器260にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成する。
【0062】
種々の実施形態では、プロセッサ280はさらに、スペクトルの質量範囲を、2つ以上のウィンドウに分割し、1つ以上の振幅応答を組み合わせ、2つ以上のウィンドウの各ウィンドウの各イオンを、動的かつ別個に補正するステップを実施する。スペクトルの質量範囲を、2つ以上のウィンドウに分割し、2つ以上のウィンドウ内で振幅応答を組み合わせることは、質量変化としての振幅応答における変化によって引き起こされる、補正係数における誤差を減少させる。
【0063】
図2に再び目を向けると、システム200は、較正曲線を使用して、質量分析器の均一な検出器飽和を補正するための例示的質量分光測定システムである。システム200は、質量分析器225と、プロセッサ280とを含む。
【0064】
質量分析器225は、検出器260と、ADC検出器サブシステム270とを含む。質量分析器225は、例えば、サンプル分子をイオン化するイオン源(図示せず)によって生成される、イオン210のビームを分析する。
【0065】
プロセッサ280は、測定されたスペクトルを質量分析器225から受信し、測定されたスペクトル内のイオンの強度を合計することによって、測定されたスペクトルの総イオン値を計算する。プロセッサ280はさらに、総イオン値を、総イオン値の関数として補正係数を提供する、記憶された較正曲線と比較することによって、補正係数を決定し、決定された補正係数によって、測定されたスペクトルの強度を乗算し、補正された測定スペクトルを生成する。
【0066】
種々の実施形態では、プロセッサ280は、総イオン値の関数としての補正係数の曲線をプロットし、曲線に合わされた二次方程式を選択し、二次方程式を記憶された較正曲線として記憶することによって、較正曲線を計算する。
【0067】
種々の実施形態では、較正曲線は、以下のステップを実施することによって決定される。(a)既知のサンプルの分子が、イオン源を使用してイオン化され、イオンのビームを生成する。(b)イオンのビームから抽出されるイオンのある割合が、質量分析器225を使用して分析され、第1の質量スペクトルを生成する。(c)第1の割合から次の既知の量だけ増加されたイオンのビームから抽出される次のイオンの割合が、質量分析器を使用して分析され、次の質量スペクトルを生成する。(d)プロセッサ280によって、次の質量スペクトル内の各次のイオンに対して、第1の質量スペクトル内の対応する第1のイオン強度に対する次のイオン強度の比率を計算し、複数の強度比率を生成することによって、第1の質量スペクトルと、次の質量スペクトルが、比較される。(e)複数の強度比率が、代表的比率を生成するためにプロセッサ280を使用して組み合わせられる。(f)補正係数が、プロセッサ280を使用して、既知の量と、代表的比率の比率として計算される。(g)次の質量スペクトル内のイオンの強度が、次の総イオン値を生成するために、プロセッサ280を使用して合計される。(h)補正係数と、次の総イオン値とが、プロセッサ280を使用して、較正曲線内に記憶される。(i)ステップ(c)−(h)が、総イオン値の関数として補正係数を提供する較正曲線を完成させるために、1回以上の回数繰り返される。
【0068】
種々の実施形態では、プロセッサ280が代表的比率を生成するために複数の強度比率を組み合わせることは、平均値を計算することを含む。
【0069】
種々の実施形態では、プロセッサ280が代表的比率を生成するために複数の強度比率を組み合わせることは、中間値を計算することを含む。
【0070】
種々の実施形態では、プロセッサ280が代表的比率を生成するために、複数の強度比率を組み合わせることは、閾値よりも大きな強度の平均値または中間値を計算することを含む。
【0071】
(均一な検出器飽和を動的に補正するためのシステム)
図5は、種々の実施形態による、質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正する方法500を示す、例示的流れ図である。
【0072】
方法500のステップ510において、検出器と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)検出器サブシステムとを含む質量分析器が、プロセッサを使用して、イオンビームのN個の抽出を分析し、N個のサブスぺクトルを生成するように命令される。
【0073】
ステップ520において、N個のサブスペクトルの各サブスペクトルに対して、ADC検出器サブシステムからの非ゼロ振幅が、プロセッサを使用して1つのイオンとしてカウントされ、N個のサブスペクトルの各サブスペクトルの各イオンに対して1のカウントを生成する。
【0074】
ステップ530において、N個のサブスペクトルのADC振幅およびカウントが、プロセッサを使用して合計され、スペクトルの各イオンに対する合計されたADC振幅および総カウント数を含むスペクトルを生成する。
【0075】
ステップ540において、スペクトルの各イオンに対して、総カウント数が検出器にヒットする単一イオンから生じる確率が、プロセッサを使用して、ポアソン統計を使用し、計算される。
【0076】
ステップ550において、確率が閾値を超過するスペクトルの各イオンに対して、振幅応答が、プロセッサを使用して、合計されたADC振幅を総カウント数によって除算することによって計算され、検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成する。
【0077】
ステップ560において、1つ以上の振幅応答が、プロセッサを使用して組み合わされ、単一イオンによって生成されたADC振幅の量を表す組み合わされた振幅応答を生成する。
【0078】
ステップ570において、スペクトルの各イオンに対して、総カウント数が、プロセッサを使用して、組み合わされた振幅応答と、合計されたADC振幅とを使用し、動的に補正される。
【0079】
図6は、種々の実施形態による、較正曲線を使用して、質量分析器の均一な検出器飽和を補正する方法600を示す、例示的流れ図である。
【0080】
方法600のステップ610において、測定されたスペクトルが、質量分析器から受信され、質量分析器は、検出器と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)検出器サブシステムとを含み、質量分析器は、プロセッサを使用して、サンプルの分子をイオン化するイオン源によって生成されるイオンのビームを分析する。
【0081】
ステップ620において、測定されたスペクトルの総イオン値が、プロセッサを使用して、測定されたスペクトル内のイオンの強度を合計することによって計算される。
【0082】
ステップ630において、補正係数が、プロセッサを使用して、総イオン値を、総イオン値の関数として補正係数を提供する記憶された較正曲線と比較することによって決定される。
【0083】
ステップ640において、測定されたスペクトルの強度が、プロセッサを使用して、決定された補正係数によって乗算され、補正された測定スペクトルを生成する。
【0084】
(均一な検出器飽和を動的に補正するためのコンピュータプログラム製品)
種々の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含み、そのコンテンツは、質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正する方法を実施するように、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む。本方法は、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを含むシステムによって実施される。
【0085】
図7は、種々の実施形態による、質量分析器の均一な検出器飽和を動的に補正する方法を実施する、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを含む、システム700の概略図である。システム700は、制御モジュール710と、分析モジュール720とを含む。
【0086】
制御モジュール710は、検出器と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)検出器サブシステムとを含み、制御モジュールを使用して、イオンのビームを分析する質量分析器に、イオンビームのN個の抽出を分析し、N個のサブスペクトルを生成するように命令する。N個のサブスペクトルの各サブスペクトルに対して、分析モジュール720は、ADC検出器サブシステムからの非ゼロ振幅を1つのイオンとしてカウントし、N個のサブスペクトルの各サブスペクトルの各イオンに対して1のカウントを生成する。分析モジュール720は、N個のサブスペクトルのADC振幅およびカウントを合計し、スペクトルの各イオンに対する合計されたADC振幅および総カウント数を含むスペクトルを生成する。スペクトルの各イオンに対して、分析モジュール620は、ポアソン統計を使用して、総カウント数が検出器にヒットする単一イオンから生じる確率を計算する。
【0087】
確率が閾値を超過するスペクトルの各イオンに対して、分析モジュール720は、合計されたADC振幅を総カウント数によって除算することによって振幅応答を計算し、検出器にヒットした単一イオンであると見出された1つ以上のイオンに対する1つ以上の振幅応答を生成する。分析モジュール720は、1つ以上の振幅応答を組み合わせ、単一イオンによって生成されたADC振幅の量を表す組み合わされた振幅応答を生成する。スペクトルの各イオンに対して、分析モジュール720は、組み合わされた振幅応答と、合計されたADC振幅とを使用して、総カウント数を動的に補正する。
【0088】
システム700の1つ以上の個別のソフトウェアモジュールはまた、較正曲線を使用して、質量分析器の均一な検出器飽和を補正する方法も実施する。制御モジュール710は、検出器と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)検出器サブシステムとを含み、サンプルの分子をイオン化するイオン源によって生成されるイオンのビームを分析する質量分析器から、測定されたスペクトルを受信する。分析モジュール720は、測定されたスペクトル内のイオンの強度を合計することによって、測定されたスペクトルの総イオン値を計算し、総イオン値と、総イオン値の関数として補正係数を提供する記憶された較正曲線とを比較することによって、補正係数を決定する。分析モジュール720はさらに、決定された補正係数によって、測定されたスペクトルの強度を乗算し、補正された測定スペクトルを生成する。
【0089】
本教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本教示が、そのような実施形態に限定されることを意図するものではない。対照的に、本教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。
【0090】
さらに、種々の実施形態の説明において、本明細書は、ステップの特定のシーケンスとして、方法および/またはプロセスを提示し得る。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載されるステップの特定の順序に依拠しない程度において、方法またはプロセスは、説明されるステップの特定のシーケンスに限定されるべきではない。当業者が理解するであろうように、ステップの他のシーケンスも可能であり得る。したがって、本明細書に記載されるステップの特定の順序は、請求項に関する制限として解釈されるべきでない。加えて、方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、そのステップの実施を書かれた順序に限定されるべきではなく、当業者は、シーケンスが、変動させられ得、依然として、種々の実施形態の精神および範囲内にあることを容易に理解することができる。