(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495912
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】高い平滑性を有する強化プラスチック材料
(51)【国際特許分類】
B32B 5/00 20060101AFI20190325BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20190325BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
B32B5/00 A
B32B5/28 A
C08J5/04CEZ
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-536838(P2016-536838)
(86)(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公表番号】特表2017-503679(P2017-503679A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2014050329
(87)【国際公開番号】WO2015113585
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】511312997
【氏名又は名称】トヨタ モーター ヨーロッパ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン タション
【審査官】
伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0110872(US,A1)
【文献】
特開2005−336407(JP,A)
【文献】
特開2006−051813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 5/00− 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートを含んでいる繊維層、
ガラス繊維を含んでいるベール層、及び
樹脂フィルム
を含んでおり、
前記ベール層が前記繊維層と前記樹脂フィルムの間に配置されており、前記樹脂フィルムの一部分によって、前記ベール層が含浸されており、
前記樹脂フィルムが、ポリアミド樹脂及びポリフェニレンスルフィド樹脂のうち少なくとも一つを含んでいる、
繊維強化プラスチック材料。
【請求項2】
複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートを含んでいる繊維層、
ガラス繊維を含んでいるベール層、及び
樹脂フィルム
を含んでおり、
前記ベール層が前記繊維層と前記樹脂フィルムの間に配置されており、前記樹脂フィルムの一部分によって、前記ベール層が含浸されており、
前記樹脂フィルムが、40μm〜250μmの厚さを有する、
繊維強化プラスチック材料。
【請求項3】
前記ベール層のガラス繊維が、不織である、請求項1又は2に記載の繊維強化プラスチック材料。
【請求項4】
前記複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートのそれぞれが、一方向性である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック材料。
【請求項5】
前記複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シート中の炭素繊維が、前記繊維強化プラスチック材料の乾燥重量の40%から80%の間の範囲で存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック材料。
【請求項6】
前記ベール層内の前記ガラス繊維が4g/m2と60g/m2の間の範囲で存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック材料。
【請求項7】
前記連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートの炭素繊維が、炭素繊維束に束ねられている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック材料。
【請求項8】
前記繊維層とは反対側の前記樹脂フィルムの表面上に配置された仕上層をさらに含んでいる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック材料。
【請求項9】
前記仕上層が、塗料を含んでいる、請求項8に記載の繊維強化プラスチック材料。
【請求項10】
繊維強化プラスチック材料を形成する方法であって、
複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートから形成された繊維層を構築する工程、
ガラス繊維を含んでいるベール層を、前記繊維層の表面に付ける工程、
樹脂リッチ層を前記ベール層上に被着させて樹脂フィルムを前記ベール層上に提供する工程であって、それによって、前記複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートと、前記ベール層と、前記樹脂フィルムとの構築物であって、前記ベール層が前記樹脂フィルムと前記複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートとの間に配置されている構築物を形成する工程、及び
前記構築物を圧縮成型して、前記ベール層が前記樹脂フィルムの一部分により含浸されるようにする工程
を含む、繊維強化プラスチック材料を形成する方法。
【請求項11】
前記ベール層のガラス繊維が、不織である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートのそれぞれが、一方向性である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
構築する前に、前記連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートの炭素繊維を束ねることをさらに含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記樹脂フィルムに仕上層を付けることをさらに含む、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記仕上層が塗料を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
塗料を硬化することをさらに含む、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記仕上層を硬化する工程をさらに含む、請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記硬化が、80℃から160℃の間で行われる、請求項16〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記樹脂フィルムが、40μmから250μmの間の厚さを有するようにもたらされる、請求項10〜18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、強化材料、及びそのような材料を製造する方法に関する。より具体的には、本開示は、高い表面平滑性を有する炭素繊維強化熱可塑性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合において、プラスチック材料は、より重くかつより高価な材料、例えば鋼の代わりに効果的に用いることができる。しかしながら、この様な材料をより重くかつより高価な材料の代わりに用いる場合に、強度及び仕上がりが特に問題となりうる。このようなシナリオの一つの例は、例えば、表面が塗装され、かつ明らかな模様のない高い光沢が求められる、自動車の組立に用いられる鋼パネルである。
【0003】
炭素繊維強化プラスチック材料は、優れた強度重量比を提供し、より重くかつより高価な材料と置き換えるのに非常に適している。しかしながら、この様な炭素繊維強化プラスチック材料は、審美的に良い仕上がりが要求される領域において、欠点がある。例えば、代表的な鋼材料が約0.15μmの粗面度R
aをもたらすところ、代表的な炭素繊維強化プラスチック材料は75%高い、又は最大で0.6μmの粗面度R
aをもたらす。この効果は、この材料が引き続いて仕上げられたとき、例えば塗装されかつ選択的に硬化された場合にさらに悪化する。
【0004】
連続的な炭素繊維強化プラスチック部品の表面の性質は乏しく(例えば高い粗面度)、これは、この繊維が表面平滑性においていくらかの歪みを形成するためである。これらの成分を塗装したとき、繊維の模様が明確に視認でき、これは、この技術において「ファイバープリントスルー」として知られている。
【0005】
この現象は、少なくともある程度、成形工程の冷却時において炭素繊維及び/又は炭素繊維束を取り囲んでいる熱可塑性樹脂が収縮することによって引き起こされる。これは、この技術において成形収縮として知られている。
【0006】
さらに、塗装されたパネルの場合において、塗装中及び硬化(例えば約140℃において)中に、熱可塑性樹脂が再度膨張し、この膨張は炭素繊維よりも大きい。冷却時に、樹脂は、炭素繊維及び炭素繊維束の周囲で再度収縮する。
【0007】
これらの材料の熱膨張率の違いが、塗装時における表面の歪みの原因の一つである。上述の両現象により、一般的に使用されている鋼材料よりも高い粗面度、及び質の低い仕上がりとなる。
【0008】
現在市場で入手可能なパネルを形成している炭素繊維材料は、熱硬化により硬化される材料であり、鋼と同様のウェーブスキャン値を達成するために、徹底的な後処理が必要である。このような後処理は、高額、時間の浪費、及び重労働となり得、しかし鋼の表面の質には及ばない。したがって、仕上がりの質を向上させつつ、さらにこれらの材料の適した仕上がりを得るために必要な資源を減少させることは、有用である。
【0009】
特許文献1は、熱硬化性樹脂を用いた多層繊維プラスチック複合体成分を開示している。この複合体成分は、母材樹脂及び炭素繊維が埋め込まれた繊維材料から作られる繊維プラスチック層を少なくとも一つ有する。目に見える表面には、母材樹脂によって繊維プラスチック層と接続されている透明のガラス層がもたらされる。上述のとおり、この材料は、審美的に良好な仕上がりが求められる適用において使用に耐えるために、追加的な後処理を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE102012007839
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の実施形態は、現在の技術の欠点を克服することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の実施形態によれば、複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートを含んでいる繊維層、ガラス繊維及び炭素繊維のうち少なくとも一つから選択される繊維を含んでいるベール層、及び樹脂フィルムを含んでいる樹脂層を含んでおり、ここで、樹脂フィルムの少なくとも一部分によってベール層が含浸されている、繊維強化プラスチック材料が提供される。
【0013】
このような構造をもたらすことにより、ベール層の繊維は、あたかもメッシュのように機能し、これにより繊維層の炭素繊維が繊維強化プラスチック材料の表面に向かって移動することが阻害される。加えて、樹脂フィルムの熱膨張率も減少し、これにより、特に一部が塗装されかつ所与の温度において硬化される場合に、追加的な利点(すなわち、平滑性特性)をもたらす。
【0014】
ベール層の繊維は不
織であってよい。「不
織」は、連続的な不
織及び/又は切断された不織を含んでいると理解される。
【0015】
複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートのそれぞれは、一方向性であってよい。
【0016】
炭素繊維は、炭素繊維
強化プラスチック材料の乾燥重量の40%から80%の間の範囲で、連続的な炭素繊維熱可塑性シートに存在してよい。
【0017】
ベール層内の繊維は4g/m
2と60g/
m2の範囲で存在していてよい。
【0018】
連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートの炭素繊維は、炭素繊維束に束ねられていてよい。
【0019】
圧縮
成型の結果として、ベール層が樹脂フィルムに含浸されていてよい。
【0020】
繊維強化材料は、ベール層に選択的に適用される仕上層を含んでおり、この仕上層は、塗料を含んでいる。
【0021】
樹脂フィルムは、ポリアミド樹脂及び
ポリフェニレンスルフィド樹脂のうち少なくとも一つを含んでいてよく、樹脂層は40μmから250μmの間の厚さを有していてよい。
【0022】
いくつかの実施形態に基づいて、繊維強化プラスチック材料を形成する方法を提供する。この方法は、複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートを構築すること、ガラス繊維及び炭素繊維のうち少なくとも一つから選択される繊維を含んでいるベール層を、複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートに付けること、樹脂フィルムをベール層に提供すること、及び繊維強化プラスチック材料を圧縮成型して、樹脂フィルムの少なくとも一部分によりベール層が含浸されるようにすることを含んでいる。
【0023】
これらの工程を実施することにより、ベール層が樹脂フィルムによって含浸されている繊維強化プラスチック材料を製造することができる。そうすることで、炭素繊維が表面に向かって移動することが阻害され、かつ樹脂の熱膨張率が減少する。
【0024】
ベール層の繊維は、不
織であってよく、かつ複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートは、一方向性であってよい。
【0025】
この方法は、構築する前に、連続的な炭素繊維強化熱可塑性シートの炭素繊維を束ねることをさらに含んでいてよく、かつ樹脂フィルムが含浸しているベール層に仕上層を付けることをさらに含んでいてよい。
【0026】
仕上層は塗料を含んでいてよく、この塗料は、適用の後で、選択的に硬化されてよい。
【0027】
仕上層は硬化してもよく、この硬化は80℃から160℃の間、好ましくは140℃で行われてよい。
【0028】
樹脂フィルムは、40μmから250μmの間の厚さを有するようにもたらされる。
【0029】
いくつかの実施形態において、繊維強化プラスチック材料は、鋼よりも低い粗面度R
aを有することができる。
【0030】
本発明のさらなる目的及び利点は、後述の記載において論じられ、又は発明の実施により理解することができる。
【0031】
前述の概要及び後述の詳細な記載は共に、例示的、かつ説明のためのみのものであり、請求項に記載される本発明の範囲を限定するものでないと理解されなければならない。
【0032】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する付随的な図面は、本発明の実施形態を記載しており、記述と共に、本開示の原理を説明するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、例示的な公知技術の炭素繊維強化プラスチックの模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に基づく例示的な炭素繊維強化プラスチック材料の模式図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に基づくもう一つの例示的な炭素繊維強化プラスチック材料の模式図である。
【
図4】
図4は、本開示の2つの実施形態に基づく、例示的な微視的な比較材料である。
【
図5】
図5は、PPS樹脂の場合の圧縮成型のための例示的な条件に注目したグラフである。
【
図6】
図6は、本開示の材料を製造する例示的な方法を描写するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
参照は、本開示の本例示的な実施形態を詳細に説明しており、その例は、付随する図面に記載されている。可能な限り、この参照番号は、図を通して同じ又は同様の部分を参照するために使用される。
【0035】
図1は、例示的な公知技術の炭素繊維強化プラスチック材料1の模式図である。
図1に示されるとおり、従来の材料は、互いに0°から90°の角度で配置された一方向性の炭素繊維テープの2以上の層10及び10’を含んでいる繊維層20を含んでいる。他のいかなる角度も可能である。
【0036】
各層内には、加熱時、例えば圧縮成型時に、溶融し、かつ炭素繊維12及び/又は炭素繊維束14に分散される熱可塑性樹脂15がある。この材料が引き続いて冷却されると、樹脂15は、炭素繊維12及び/又は炭素繊維束14の周囲において硬化するまで収縮する。この公知技術の工程では、炭素繊維強化プラスチック材料1の粗面度の程度は、鋼の粗面度よりも大きくなる。
【0037】
さらに、従来の材料1は、成形に引き続いて、塗料層(示されていない)によって塗装(例えば自動車の車体塗装)され得、かつ硬化(例えば、140℃周辺において)され得る。この工程によって樹脂15の膨張が再度起こり、かつ引き続く冷却によって樹脂15の収縮が起こり、適用された塗料膜の歪みが起こる。これらにより、同様な塗装された鋼プレートよりも非常に高い粗面度を有する表面が製造されうる。
【0038】
図2は、本開示の実施形態に基づく例示的な炭素繊維強化プラスチック材料2の模式図である。示されているとおり、複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シート10及び10’を含んでいる繊維層20を提供することができる。このような繊維層は、炭素繊維12、炭素繊維束14、又はこれらのいかなる組み合わせからも形成することができる。例えば、スプレッドトウ、レギュラートウ、又はその他いかなる適切な炭素繊維テープでも用いることができる。商業的に入手可能な製品は、Ticona Celstran社の UDテープPPS−CF60が含まれる。
【0039】
要因に応じて、例えば生産されるパネルの要求される強度及び柔軟性に応じて、いかなる数の層10及び10’をももたらすことができることを、当業者は理解できる。当業者は、この様な設計の検討は、本発明の特殊な適用について決定されることを、理解できる。
【0040】
炭素繊維12は、この様な層20内において、炭素繊維強化プラスチック材料の乾燥重量の20%と80%の間の範囲、例えばこの層の60%で存在することができる。
【0041】
炭素繊維12及び/又は炭素繊維束14に加えて、各層10及び10’は、炭素繊維12及び/又は炭素繊維束14に散在する樹脂15、例えばポリアミド及び/又はPPSのような熱可塑性樹脂を含んでいる。樹脂15は、例えば層の乾燥重量の20〜80%の量で存在していることができる。
【0042】
上記のようにして形成される繊維層20の表面上に、繊維層20上の樹脂フィルムとなる樹脂リッチ層19を被着させることができる。例えば、20μmから250μmの間の厚さを有する樹脂フィルムとなるように、熱可塑性樹脂、例えばポリアミド又はPPSを被着させることができる。いくつかの実施形態に基づくと、樹脂フィルムは125μmの厚さを有していてよい。
【0043】
図3は、本開示の実施形態の改良された炭素繊維強化プラスチック材料3の模式図である。示されているとおり、複数の連続的な炭素繊維強化熱可塑性シート10及び10’を含んでいる繊維層20がもたらされている。このような繊維層は、炭素繊維12、炭素繊維束14、又はこれらのいかなる組み合わせからも形成することができる。例えば、スプレッドトウ、レギュラートウ、又はその他いかなる適切な炭素繊維テープでも用いることができる。
【0044】
炭素繊維12は、この様な層20内において、炭素繊維強化プラスチック材料の乾燥重量の20%と80%の間の範囲、例えば乾燥重量の60%で存在することができる。
【0045】
炭素繊維12及び/又は炭素繊維束14に加えて、各層10及び10’は、炭素繊維12及び/又は炭素繊維束14に散在する樹脂15、例えばポリアミド及び/又はPPSのような熱可塑性樹脂を含んでいる。樹脂15は、例えば層の乾燥重量の20〜80%の量で存在していることができる。
【0046】
繊維層20の表面において、ガラス繊維ベール層30が、繊維層20と樹脂リッチ層19の間になるように配置される。
【0047】
不
織ベールは、例えば、
不織ガラス繊
維を含んでいることができる。商業的に入手可能な製品は、例えば、Orwens corning社のM524−C33を含む。
【0048】
ガラス繊維ベールは4g/m
2から60g/m
2の間であってよい。そして、樹脂の厚さが40μmから250μmの間の厚さになるように、樹脂フィルム19を被着させることができる。いくつかの実施形態によると、樹脂フィルム19は、125μmの厚さを有していることができる。
【0049】
上述の材料は、それらの構築後に圧縮成型することができ、そして所望により、塗料層(示されていない)によって塗装し、硬化させることができる。
【0050】
図5は、PPS樹脂を使用した場合における圧縮成型の例示的な条件に注目したグラフである。他の樹脂(例えばポリアミド)を使用した場合に他の条件が好ましくなりうることを、当業者は理解できる。
【0051】
図6は、本開示に基づく材料を製造する例示的な方法のフローチャートを示している。複数の炭素繊維シート、例えば7層10及び10’の炭素繊維テープは、特定のパネルの製造仕様に基づいて構築することができる(工程605)。例えば製造されるパネルの所望の強度及び柔軟性のような要因に依存して、より多い又はより少ない層10又は10’をもたらすことができることを、当業者は理解できる。このような層は、互いに0°から90°の間で交互に、又は他のいかなる適切な構成によって配置することができる。
【0052】
複数の層10及び10’を配置した後、ガラス繊維35を含んでいるベール層30を繊維層20の表面に配置することができる(工程610)。
【0053】
その後、樹脂リッチ層(例えば熱可塑性樹脂)は、所望の厚さ、例えば125μmでガラス繊維ベール30に被着することができ(工程615)、かつ所望の圧縮成型特性に基づいて、パネルを圧縮成型することができる(工程620)。
【0054】
圧縮成型に引き続いて、所望により、パネルは選択的に塗装し、また塗装硬化することができる(工程625)。
【0055】
本開示の発明の実施を補助するために、下記の非限定的な例を提供する。
【実施例】
【0056】
〈例1‐比較例〉
PPS熱可塑性樹脂を含んでいる7層のUDテープを使用して、層が0/90/0/90/0/90/0に配置されるようにして、パネルとして言及される従来の材料積層材を構築した。炭素繊維は、各層において炭素繊維強化プラスチック材料の乾燥重量の60%の割合で存在していた。
【0057】
材料を、引き続いて300度の温度で1.5分間圧縮成型し、かつ引き続いて冷却した。
【0058】
その後、上表面の表面粗面度を測定するために、製造したパネルを粗面計装置で測定し、結果を記録した。カットオフ長さは2.5mmであり、評価長さは12.5mmである。
【0059】
その後、三層システムを適用することによってパネルを塗装工程にかけた。プライマーは、1成分溶剤型のポリエステルメラミン架橋物であった。プライマーをスプレーして30μmから40μmの乾燥厚さを得た。プライマーを140℃で18分間硬化した。ベースコートは1成分の通常の水溶型のラテックス、メラミン、及びウレタンの架橋物であった。ベースコートを被着して10μmから15μmの乾燥厚さを得た。ベースコートを140℃で7分間硬化した。クリアコートは、高ガラス転移温度(Tg)(80℃以上)の溶媒型2成分アクリル―ウレタンであった。クリアコートを適用して、厚さが30μmから40μmの乾燥フィルムを得た。クリアコートを40℃で18分間硬化した。
【0060】
その後、上表面の表面粗面度を測定するために、製造したパネルを粗面計装置で測定し、90°の角度に沿った結果を記録した。カットオフ長さは2.5mmであり、評価長さは12.5mmである。
【0061】
〈例2‐パネル及び樹脂リッチ層〉
この例において、最初は比較例1と同様にしてパネルを準備した。すなわち、PPS熱可塑性樹脂を含んでいる7層のUDテープを使用して、層が0/90/0/90/0/90/0に配置されるようにして、パネルとして言及される従来の材料積層材を構築した。炭素繊維は、各層において炭素繊維強化プラスチック材料の乾燥重量の60%の割合で存在していた。
【0062】
この準備に引き続いて、約125μmの厚さを有する樹脂リッチ層(例えばPPS)を、材料の最上層にもたらし、そして、比較例と同様の圧縮成型技術を用いて材料を圧縮成型した。押し出し成形により製造され、かつ一方向性に又は二方向性に延伸されたフィルムを、樹脂フィルムは含んでいた。
【0063】
その後、上表面の表面粗面度を測定するために、製造したパネルを粗面計装置で測定し、結果を記録した。この材料の粗面度は、比較例よりも明らかに減少していた。
【0064】
その後、三層システムを適用することによってパネルを塗装工程にかけた。プライマーは、1成分溶剤型のポリエステルメラミン架橋物であった。プライマーをスプレーして30μmから40μmの乾燥厚さを得た。プライマーを140℃で18分間硬化した。ベースコートは1成分の通常の水溶型のラテックス、メラミン、及びウレタンの架橋物であった。ベースコートを被着して10μmから15μmの乾燥厚さを得た。ベースコートを140℃で7分間硬化した。クリアコートは、高ガラス転移温度(Tg)(80℃以上)の溶媒型2成分アクリル―ウレタンであった。クリアコートを適用して、厚さが30μmから40μmの乾燥フィルムを得た。クリアコートを40℃で18分間硬化した。
【0065】
その後、上表面の表面粗面度を測定するために、製造したパネルを粗面計装置によって比較例と同じカットオフで測定し、結果を記録した。
【0066】
塗装後の粗面度R
aは、比較例よりも向上したが、塗装しかつ乾燥した鋼ほどは良くなかった。
【0067】
〈例3‐パネル、ガラス繊維及び樹脂リッチ層〉
この例において、再度、最初は比較例1と同様にしてパネルを準備した。炭素繊維は、各層において炭素繊維強化プラスチック材料の乾燥重量の60%の割合で存在していた。
【0068】
この準備に引き続いて、主たる積層材と樹脂リッチ層との間に、不
織のガラス繊維ベールを配置した。不
織のガラス繊維ベールは、4g/m
2と60g/m
2の間の表面重量を有していた。ガラス繊維ベール上に、再び上述のとおりにして準備された樹脂リッチ層を125μmの厚さでもたらし、比較例と同じ圧縮成型技術を用いて圧縮成型を行った。結果として、ガラス繊維ベールに樹脂リッチ層の一部分が含浸された。
【0069】
その後、上表面の表面粗面度を測定するために、製造したパネルを粗面計装置で測定し、結果を記録した。この材料の粗面度は、比較例よりも明らかに減少しており、驚くべきことに、鋼よりも低かった。
【0070】
その後、三層システムを適用することによってパネルを塗装工程にかけた。プライマーは、1成分溶剤型のポリエステルメラミン架橋物であった。プライマーをスプレーして30μmから40μmの乾燥厚さを得た。プライマーを140℃で18分間硬化した。ベースコートは1成分の通常の水溶型のラテックス、メラミン、及びウレタンの架橋物であった。ベースコートを被着して10μmから15μmの乾燥厚さを得た。ベースコートを140℃で7分間硬化した。クリアコートは、高ガラス転移温度(Tg)(80℃以上)の溶媒型2成分アクリル―ウレタンであった。クリアコートを適用して、厚さが30μmから40μmの乾燥フィルムを得た。クリアコートを40℃で18分間硬化した。
【0071】
その後、上表面の表面粗面度を測定するために、製造したパネルを粗面計装置によって今までの例及び鋼パネルと同じカットオフ値で測定し、結果を記録した。
【0072】
塗装後の粗面度は、例2よりも向上し、かつ鋼よりも低かった。
【0073】
〈例4‐炭素繊維ベール〉
この例において、再度、最初は比較例1と同様にしてパネルを準備した。炭素繊維は、各層において炭素繊維強化プラスチック材料の乾燥重量の60%の割合で存在していた。
【0074】
この準備に引き続いて、主たる積層材と樹脂リッチ層との間に不
織の炭素繊維ベールを配置した。不
織の炭素繊維ベールは、4g/m
2と60g/m
2の間の表面重量を有していた。ガラス繊維ベール上に、再び上述のとおりにして準備された樹脂リッチ層を125μmの厚さでもたらし、比較例と同じ圧縮成型技術を用いて圧縮成型を行った。結果として、ガラス繊維ベールに樹脂リッチ層の一部分が含浸された。
【0075】
その後、上表面の表面粗面度を測定するために、製造したパネルを粗面計装置で測定し、結果を記録した。この材料の粗面度は、比較例よりも明らかに減少しており、驚くべきことに、鋼よりも低かった。
【0076】
その後、三層システムを適用することによってパネルを塗装工程にかけた。プライマーは、1成分溶剤型のポリエステルメラミン架橋物であった。プライマーをスプレーして30μmから40μmの乾燥厚さを得た。プライマーを140℃で18分間硬化した。ベースコートは1成分の通常の水溶型のラテックス、メラミン、及びウレタンの架橋物であった。ベースコートを被着して10μmから15μmの乾燥厚さを得た。ベースコートを140℃で7分間硬化した。クリアコートは、高ガラス転移温度(Tg)(80℃以上)の溶媒型2成分アクリル―ウレタンであった。クリアコートを適用して、厚さが30μmから40μmの乾燥フィルムを得た。クリアコートを40℃で18分間硬化した。
【0077】
その後、上表面の表面粗面度を測定するために、製造したパネルを粗面計装置によって今までの例及び鋼パネルと同じカットオフ値で測定し、結果を記録した。
【0078】
塗装後の粗面度は、例2よりも向上し、かつ鋼よりも低かった。
【0079】
表1は、鋼パネルの結果と並んで4つの例の結果を示している。
【0080】
【表1】
【0081】
図4は、上述の例2及び3に基づく例示的な微視的な比較材料である。
【0082】
樹脂リッチ層と共に圧縮成型したガラス繊維層が、炭素繊維が仕上層に向かって移動することを阻害したことが測定された。炭素繊維が表面に向かって移動することを阻害することにより、大きい平滑さを得ることができ、実際に、いくつかの試験において鋼よりも向上した。
【0083】
本明細書における本開示は、特定の実施形態および例を参照して記載されているが、これらの実施形態および例は、本開示の原則及び適用の単なる説明であると理解されなければならない。
【0084】
請求項を含んだ記載を通して、用語「含んでいる」は、ほかに言及がない限り「少なくとも一つ含んでいる」と同義であると理解される。さらに、請求項を含んだ記載を通して、いかなる範囲の記載も、ほかに言及がない限り端値を含んでいると理解される。記載されている要素についての値は、当業者にとって製造上受け入れられ、又は産業上許容されるものであり、「実質的に」及び/又は「約」及び/又は「通常は」は、そのような受け入れられる許容の範囲内であると理解される。
【0085】
いかなる国内的、国際的、又はその他の基準が参照され(例えば、ISO、等)、この様な参照は、本願明細書の優先日における国内的、国際的、又はその他の基準について参照することを意図している。このような基準の事後的で実質的な変更により、本開示及び/又は請求項の範囲及び/又は定義を変更されることは意図していない。
【0086】
本願明細書及び例は、単に例示的なものとして考慮され、本開示の真の範囲は、後述の請求項によって示される。